JP7037321B2 - アリ類防除剤 - Google Patents
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Description
例えば、特開2017-8015号公報(特許文献1)には、落花生油および炭素数3~4の多価アルコールを含有するアリ用誘引剤が記載され、各種アリ類に対して高い誘引性を発揮するとしている。また、特表2012-509854号公報(特許文献2)は、殺虫剤および餌組成物を含む固体蟻餌であって、餌組成物が、a)5~95重量%の植物粉、b)1~60重量%のタンパク質源、c)5~60重量%の砂糖、および、d)0.1~10重量%のポリマーバインダー(各重量%は餌組成物に関する)を含む、前記固体蟻餌を開示し、当該蟻餌は0.2~2mmの長さおよび0.2~2mmの直径を有する円筒形状を有する顆粒が好ましい旨述べているが、この粒径は顆粒の製造性の観点から言及されたものであるなど、いずれの提案においてもアリ類の習性が十分研究されているわけではなく、防除効果も満足のいくものではない。
上述したアリ類の習性を考慮すると、ベイト剤に配合する誘引もしくは摂食刺激成分としては、固形状のものに比べると運搬性や伝播性の点で有利な、液状もしくはペースト状の餌を主体に用いる方が合理的と考えられる。しかるに、本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、そのメカニズムは不明ながら、液状もしくはペースト状成分と固形状成分を特定比率で混用して誘引もしくは摂食刺激成分の組成を決定するとともに、ベイト剤の平均粒径を特定することによって、ベイト剤の巣への運搬効率を高め、かつ、アリ類防除成分の巣内伝播効率をも高め得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、アリ類のなかでも特にヒアリ類に対して有効なベイト剤であって、効果的な防除が可能なアリ類防除剤を提供することを目的とする。
(1)遅効性のアリ類防除成分(a)を0.05~10質量%と、アリ類に対する誘引もしくは摂食刺激成分(b)を5.0~70質量%と、ベイト剤基材(c)を含有するベイト剤であって、
前記アリ類に対する誘引もしくは摂食刺激成分(b)は、ベイト剤全体量に対して1.0~20質量%の液状もしくはペースト状成分(b-1)と、ベイト剤全体量に対して4.0~50質量%の固形状成分(b-2)とで構成され、その(b-1)/(b-2)比率は1/2~1/40であり、しかも、前記ベイト剤の平均粒径を0.02~3.0mmとなし、採餌アリによる前記ベイト剤の巣への運搬効率を高め、かつ、巣内の働きアリによる前記アリ類防除成分の巣内伝播効率をも高めたアリ類防除剤。
(2)前記アリ類に対する誘引もしくは摂食刺激成分(b)は、ベイト剤全体量に対して1.5~15質量%の液状もしくはペースト状成分(b-1)と、ベイト剤全体量に対して10~45質量%の固形状成分(b-2)とで構成され、その(b-1)/(b-2)比率は1/5~1/30であり、しかも、前記ベイト剤の平均粒径は0.5~2.0mmである(1)に記載のアリ類防除剤。
(3)前記液状もしくはペースト状成分(b-1)は、植物油及び/又は糖蜜である(1)又は(2)に記載のアリ類防除剤。
(4)前記液状もしくはペースト状成分(b-1)は、植物油及び糖蜜である(3)に記載のアリ類防除剤。
(5)前記植物油は、大豆油、米糠油、ピーナッツ油、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ナタネ油、落花生油及びトウモロコシ油から選ばれる少なくとも1種である(3)又は(4)に記載のアリ類防除剤。
(6)前記固形状成分(b-2)は、蛋白質粉である(1)ないし(5)のいずれか1に記載のアリ類防除剤。
(7)前記遅効性のアリ類防除成分(a)は、ヒドラメチルノン、シラフルオフェン、ピリプロキシフェン、ジノテフラン、及びビストリフルロンから選ばれる少なくとも1種である(1)ないし(6)のいずれか1に記載のアリ類防除剤。
(8)前記アリ類は、ヒアリ又はカミアリである(1)ないし(7)のいずれか1に記載のアリ類防除剤。
ここで、遅効性のアリ類防除成分を用いるのは、採餌アリにベイト剤を巣に持ち帰らせた後、巣内のコロニー全体にアリ類防除成分を伝播させて巣全体の撲滅を図るためで、採餌アリを速効的に殺してはこのような作用効果が得られないからである。
かかる遅効性のアリ類防除成分(a)としては、ピレスロイド剤に見られるような速効性を呈しない防除成分を包含し、例えば、アミノヒドラジン系殺虫剤のヒドラメチルノン、ケイ素系殺虫剤のシラフルオフェン、オキサジアゾン系殺虫剤のインドキサカルブ、幼若ホルモン様活性物質のピリプロキシフェンやメトプレン、ネオニコチノイド系殺虫剤のジノテフランやアセタミプリド、キチン合成阻害剤のビストリフルロン、テフルベンズロン、クロルフルアズロンやフルフェノクスロン等を例示できるがこれらに限定されない。
なかでも、ヒドラメチルノン、シラフルオフェン、ピリプロキシフェン、ジノテフラン及びビストリフルロンが好適に用いられる。
アリ類防除成分(a)のベイト剤全体量に対する配合量は0.05~10質量%の範囲が適当である。0.05質量%未満ではアリ類に対する防除効果が期待できないし、一方、10質量%を越えると、遅効性の防除成分とはいえ、速効的な作用も幾分呈しえるので本発明の趣旨に合致しない懸念を有する。
ここで、成分(b)が5.0質量%未満であるとアリ類に対する誘引もしくは摂食刺激作用が不足し、一方、70質量%を越えて配合すると忌避的な作用を生じる恐れがあるので好ましくない。
すなわち、液状もしくはペースト状成分(b-1)は、採餌アリが小さな素嚢に蓄えて巣に持ち帰り、巣内の働きアリ成虫に移され栄養交換に供される。一方、採餌アリが持ち抱えて巣内に運び込んだ固形状成分(b-2)は、働きアリの幼虫によって吐き戻し液に消化された後、働きアリ成虫に移され、前述の成分(b-1)とブレンドされた形で栄養交換に供される。その明確なメカニズムは不明であるが、成分(b-1)と吐き戻し液が協働して、アリ類防除成分の巣内伝播効率向上に大きく貢献するものと考えられる。
なお、本発明では、液状もしくはペースト状成分(b-1)は、固形状成分(b-2)と均一状に混和されてもよいし、固形状成分(b-2)を覆うようにしてベイト剤を形成してもよく、いずれであっても、高い運搬効率とアリ類防除成分の優れた巣内伝播効率が達成される。
一方、本発明で言う糖蜜には、糖分を含んだ液体、シロップ、糖蜜、蜂蜜、砂糖を原料から精製するときに現れる副産物、モラセス、廃糖蜜などが含まれる。
アリ類の種によって誘引もしくは摂食刺激成分(b)に対する嗜好性に差が見られるので、本発明では、植物油及び糖蜜を混用して液状もしくはペースト状(b-1)成分を構成するのが好ましい。
なお、後述する砂糖、三温糖、ショ糖のような糖質粉に、誘引もしくは摂食刺激成分(b)の固形状成分(b-2)としての作用が幾分か認められる場合もある得るが、これらはベイト剤成形上の役割が大きいので、本発明ではベイト剤基材(c)に含めるものとする。
遅効性のアリ類防除成分(a)としてのシラフルオフェンを1.0質量%と、誘引もしくは摂食刺激成分(b)のうちの液状もしくはペースト状成分(b-1)としての大豆油を1.5質量%及び蜂蜜を2.5質量%と、固形状成分(b-2)としての乾燥アカムシ粉を40質量%とに、ベイト剤基材(c)としてのきな粉を32質量%及び三温糖を20質量%と、固着剤としてのカルボキシメチルセルロース(CMC)を2.0質量%と、更に保存安定化剤としてのソルビン酸カリウムを1.0質量%加えて均一混合した。これらに水を加えて混練後、平均粒径が2.0mmである顆粒状の本発明のアリ類防除剤(約3mg/個)を得た。なお、この製剤の(b-1)/(b-2)比率は10であった。
実施例1に準じて表1に示す実施例2~12の各種アリ類防除剤を調製した。なお、他成分としては、実施例7の粉剤タイプ以外は固着剤としてのCMCを2.0質量%と保存安定化剤としてのソルビン酸カリウムを1.0質量%配合し、実施例7の粉剤タイプはソルビン酸カリウム1.0質量%のみを添加した。これらの各種アリ類防除剤につき、下記に示す(1)ベイト剤の運搬性試験及び(2)アリ類防除成分の伝播効率性試験を行った。また、比較のため、表1に示す比較例1~10の各種アリ類防除剤についても、実施例と同様の試験を行った。
各供試アリ類防除剤20個を直径7cmの濾紙上に載せ、クロヤマアリ、アルゼンチンアリ又はヒアリの各巣から20cm離れた箇所に置いた。アリが全てのベイト剤を運搬するのに要した時間(分)を記録した。試験はアリの巣及びベイト剤の置き場所を無作為に変えて4回反復し、その平均運搬時間(分)を求めた。結果を表2に示す。
プラスチック製容器(縦50cm、横70cm、高さ20cm)の中に、石膏を敷いたアクリル製シェルター(縦10cm、横20cm、高さ5cmの直方体状ボックスでその4側面にそれぞれ直径1cmの孔を設置)を1個置いたものをいくつか準備した。クロオオアリ、トビイロシワアリ及びヒアリの各巣から働きアリを採取し、それぞれ約50匹を前述の容器に移し馴化させた。容器あたりのアリ類防除成分の合計量が約1mgになるように所定数の供試各アリ類防除剤を容器に入れた。2時間後、各ベイト剤が食餌され尽くされたのを確認し、それぞれの容器に同種のアリを新たに150匹追加した。この処理から3日後、5日後、及び7日後に供試アリ合計200匹の死虫率(%)を求め、アリ類防除成分の伝播効率を評価した。なお、アリ類防除成分の種類や特性によってアリ類に対する殺虫効力の発現に差があるため、伝播効率の評価は供試した各アリ類防除成分ごとに行った。結果を表3に示す。
なお、液状もしくはペースト状成分(b-1)としては、植物油と糖蜜成分の併用が好ましかった。
また、比較例2及び3に示す如く、誘引もしくは摂食刺激成分(b)は、液状もしくはペースト状成分(b-1)と固形状成分(b-2)で構成されることが必須であり、平均粒径が3.0mmを超える比較例6は不適であることも確認された。なお、平均粒径が0.2mm未満の粉剤タイプについては、液状もしくはペースト状成分(b-1)の配合量を高めるとベタツキ等の製剤上の問題を生じやすい傾向が認められた。
なお、実施例における液状もしくはペースト状成分(b-1)としては、植物油と糖蜜成分の併用が好ましく、その伝播効率は、クロオオアリやトビイロシワアリに対するよりヒアリに対して高くなる傾向が認められた。また、アリ類防除成分としてピリプロキシフェンを用いたベイト剤(実施例11及び12、比較例9及び10)では殺虫効力の発現が遅かったが、これはピリプロキシフェンの作用機作に基づくものと考えられる。
また、比較例2及び3に示す如く、誘引もしくは摂食刺激成分(b)は、液状もしくはペースト状成分(b-1)と固形状成分(b-2)で構成されることが必須であり、平均粒径が3.0mmを超える比較例6は不適であることも確認された。
Claims (6)
- 遅効性のアリ類防除成分(a)を0.05~10質量%と、アリ類に対する誘引もしくは摂食刺激成分(b)を5.0~70質量%と、ベイト剤基材(c)を含有するベイト剤であって、
前記遅効性のアリ類防除成分(a)は、ヒドラメチルノン、シラフルオフェン、ピリプロキシフェン、ジノテフラン、及びビストリフルロンから選ばれる少なくとも1種であり、
前記アリ類に対する誘引もしくは摂食刺激成分(b)は、ベイト剤全体量に対して1.5~15質量%の液状もしくはペースト状成分(b-1)と、ベイト剤全体量に対して10~45質量%の固形状成分(b-2)とで構成され、その(b-1)/(b-2)比率は1/5~1/40であり、しかも、前記ベイト剤の平均粒径を0.5~2.0mmとなし、採餌アリによる前記ベイト剤の巣への運搬効率を高め、かつ、巣内の働きアリによる前記アリ類防除成分の巣内伝播効率をも高めたアリ類防除剤。 - 前記液状もしくはペースト状成分(b-1)は、植物油及び/又は糖蜜である請求項1に記載のアリ類防除剤。
- 前記液状もしくはペースト状成分(b-1)は、植物油及び糖蜜である請求項2に記載のアリ類防除剤。
- 前記植物油は、大豆油、米糠油、ピーナッツ油、オリーブ油、コーン油、ゴマ油、ヤシ油、ヒマワリ油、ヒマシ油、ナタネ油、落花生油及びトウモロコシ油から選ばれる少なくとも1種である請求項2又は3に記載のアリ類防除剤。
- 前記固形状成分(b-2)は、蛋白質粉である請求項1ないし4のいずれか1項に記載のアリ類防除剤。
- 前記アリ類は、ヒアリ又はカミアリである請求項1ないし7のいずれか1項に記載のアリ類防除剤。
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