JP7036675B2 - Ba型電離真空計及びその感度異常検知方法、並びにba型電離真空計を用いた圧力測定方法 - Google Patents

Ba型電離真空計及びその感度異常検知方法、並びにba型電離真空計を用いた圧力測定方法 Download PDF

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Description

本発明は、真空容器などの測定対象物の圧力(真空度)を測定するためのBA型電離真空計及びその感度異常検知方法、並びにBA型電離真空計を用いた圧力測定方法に関する。
真空容器などの測定対象物内の圧力(真空度)を測定する真空計として、電離真空計が一般に知られており、その中には、10-6Pa以下の超高真空まで測定できるBA(Bayard-Alpert)型電離真空計がある。このようなBA型電離真空計は例えば特許文献1で知られている。このものは、真空容器に装着される金属製の筐体を有し、この筐体内には、円筒の輪郭を持つグリッドと、グリッドの軸線上に配置されるイオンコレクタと、グリッドの周囲に配置されるフィラメントとが格納されている。
真空雰囲気の真空容器の圧力を測定するのに際しては、フィラメントに通電して熱電子を放出させ、フィラメントより高い電位をグリッドに付与する。そして、グリッド内にて熱電子と気体(原子・分子)との衝突で生じた正イオンがイオンコレクタで捕集され、このときイオンコレクタを流れるイオン電流が電流計(第1測定手段)により測定され、その測定値から測定対象物内の圧力が求められる。
ここで、この種のBA型電離真空計では、超高真空側の測定下限に影響を与える軟エックス線の照射面積を可及的に小さくするため、イオンコレクタが細線で構成されているが、その表面に例えば有機物イオン等の汚染物質が付着してくる(即ち、イオンコレクタが汚染される)と、正イオンの捕集が妨げられて測定感度の低下を招来し、このとき圧力指示値は、実際の圧力より低いものとなってしまう。そのため、常時、真空雰囲気の真空容器内の圧力を正確に測定しようとすると、イオンコレクタの汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知することが重要となる。
そこで、他の熱陰極電離真空計にみられるように(例えば、特許文献2参照)、圧力測定に用いられるイオンコレクタに加えて、筐体内に他のイオンコレクタを設け、これを利用して測定感度の低下を判定することが考えられる。然し、このような構成を採用しようとすると、他のイオンコレクタ用の接続端子を筐体に設けたり、別電源が必要になったりして構造の複雑化を招来する(言い換えると、既存のBA型電離真空計を利用することができず、BA型電離真空計のセンサ部の構成を再設計する必要がある)。
特許第5127042号公報 特開2016-33509号公報
本発明は、以上の点に鑑み、構造の複雑化を招くことなく、感度異常を可及的速やかに検知できるBA型電離真空計及びその感度異常検知方法を提供することを第1課題とするものである。また、イオンコレクタが汚染されても、正確な圧力測定が可能なBA型電離真空計及びBA型電離真空計を用いた圧力測定方法を提供することを第2課題とするものである。
上記第1課題を解決するために、測定対象物に装着可能な金属製の筐体を有し、筐体内に、円筒の輪郭を持つグリッドと、グリッドの軸線上に配置される細線からなるイオンコレクタと、グリッドの周囲に配置されるフィラメントとが格納され、イオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する第1測定手段を備える本発明のBA型電離真空計は、筐体が、電気的に縁切りされた状態で測定対象物に装着されると共に、筐体を流れる第2イオン電流を測定する第2測定手段を更に備え、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量から、イオンコレクタの汚染に基づく感度異常を検知する検知手段を設けることを特徴とする。
本発明によれば、フィラメントに通電して熱電子を放出させ、フィラメントより高い電位をグリッドに付与すると、グリッド内にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンがイオンコレクタで捕集され、イオンコレクタを流れる第1イオン電流が第1測定手段により測定される。また、グリッド外にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンが筐体(筐体内面)で捕集され、筐体を流れる第2イオン電流が第2測定手段により測定される。ここで、筐体内面の面積は、イオンコレクタの表面積と比較して非常に大きい。このため、イオンコレクタの表面が、感度異常を招く程に汚染されても、筐体内面は然程汚染されているものではない。つまり、イオンコレクタの汚染に応じて、第1イオン電流は小さくなるのに対して、第2イオン電流は殆ど変化せず、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量が次第に大きくなる。
そこで、本発明においては、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求め、例えば、この求めた変化量が予め実験的に求めた変化量に達すると、イオンコレクタの汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知することができる。このような場合、従来例のBA電離真空計自体に別途の部品を追加する必要はなく、単に測定対象物に電気的に縁切りされた状態で筐体を装着すると共に、筐体に第2測定手段を接続すれば済むため、構造の複雑化を招くことがない(言い換えると、既存のBA型電離真空計を利用できる)。尚、本発明において、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量には、例えば、第2イオン電流と第1イオン電流との差や、第2イオン電流に対する第1イオン電流の比が含まれる。
また、上記第2課題を解決するために、測定対象物に装着可能な金属製の筐体を有し、筐体内に、円筒の輪郭を持つグリッドと、グリッドの軸線上に配置される細線からなるイオンコレクタと、グリッドの周囲に配置されるフィラメントとが格納され、イオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する第1測定手段を備え、第1イオン電流から圧力を求める本発明のBA型電離真空計は、筐体が、電気的に縁切りされた状態で測定対象物に装着されると共に、筐体を流れる第2イオン電流を測定する第2測定手段を更に備え、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量に基づいて、前記第1イオン電流から求めた圧力を補正する補正手段を設けることを特徴とする。
本発明によれば、上述の通りイオンコレクタの汚染に応じて、第1イオン電流は小さくなるのに対して、第2イオン電流は殆ど変化しないため、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量が次第に大きくなる。そこで、本発明においては、例えば、この変化量に基づいて、第1イオン電流から圧力を求める際に使用する感度を補正することで、第1イオン電流から求めた圧力を補正することができる。従って、イオンコレクタが汚染されても、正確な圧力測定が可能である。
本発明においては、前記第1測定手段と前記第2測定手段とが単一の電流計で兼用され、この電流計での第1イオン電流または第2イオン電流の測定を切換る切換手段を更に備えることが好ましい。これによれば、BA型電離真空計の部品点数をより少なくでき、有利である。この場合、切換手段としては、マイクロリレーを好適に用いることができる。
また、上記第1課題を解決するために、測定対象物に装着される金属製の筐体を有するBA型電離真空計の感度異常を検知する本発明のBA型電離真空計の感度異常検知方法は、筐体内に格納されたフィラメントに通電して熱電子を放出させると共に、フィラメントより高い電位をグリッドに付与し、グリッド内にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンをイオンコレクタで捕集し、このときイオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する工程と、グリッド外にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンを筐体内面で捕集し、このとき筐体内面を流れる第2イオン電流を測定する工程と、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求め、その変化量からイオンコレクタの汚染に基づく感度異常を検知する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、上述の通りイオンコレクタの汚染に応じて、第1イオン電流は小さくなるのに対して、第2イオン電流は殆ど変化しないため、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量が次第に大きくなる。従って、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量から、イオンコレクタの汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知することができる。
また、上記第2課題を解決するために、測定対象物に装着される金属製の筐体を有するBA型電離真空計を用いて測定対象物内の圧力を測定する本発明の圧力測定方法は、筐体内に格納されたフィラメントに通電して熱電子を放出させると共に、フィラメントより高い電位をグリッドに付与し、グリッド内にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンをイオンコレクタで捕集し、このときイオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定し、第1イオン電流の測定値から圧力を求める工程と、グリッド外にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンを筐体内面で捕集し、このとき筐体内面を流れる第2イオン電流を測定する工程と、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求め、この変化量に基づいて、前記第1イオン電流から求めた圧力を補正する工程とを含むことを特徴とする。
本発明によれば、上述の通りイオンコレクタの汚染に応じて、第1イオン電流は小さくなるのに対して、第2イオン電流は殆ど変化しないため、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量が次第に大きくなる。従って、この変化量に基づき、第1イオン電流から求めた圧力を補正することで、イオンコレクタが汚染されても、正確な圧力測定が可能である。
本発明の実施形態のBA型電離真空計を模式的に示す図。 汚染前のイオンコレクタを流れる第1イオン電流と、第2イオン電流との関係を示すグラフ。 本発明の効果を確認する実験結果を示すグラフ。 BA型電離真空計の変形例を模式的に示す図。
以下、図面を参照して、測定対象物を真空容器Vcとし、この真空容器Vcに装着されるものを例に、本発明のBA型電離真空計IGの実施形態を説明する。以下においては、図1に示す姿勢で真空容器Vcの接続ポートPcにBA型電離真空計IGの筐体1が装着されるものとし、その装着方向前方を上方として説明する。
図1を参照して、BA型電離真空計IGは、センサ部Suと、このセンサ部Suの作動を制御するコントローラCrとを備える。センサ部Suは、センサ本体としての有底円筒状の筐体1を有する。筐体1は、空間電荷の安定性等の理由からステンレス(SUS)やアルミニウムなどの金属で構成されている。筐体1の上端には、左右方向にのびるフランジ部10が形成され、フランジ部10がシール手段たるOリングRoを介して接続ポートPcに接続され、この状態で例えば樹脂等の絶縁物製のクランプ部材Rcにより固定されている。これにより、筐体1と真空容器Vcとが電気的に縁切りされた状態で、真空容器Vcに筐体1が装着され、後述の如く筐体1を流れる第2イオン電流を測定できるようにしている。尚、OリングRoを位置決めするために、センターリングのような芯材を用いる場合には、芯材も絶縁物製とすることで筐体1と真空容器Vcとが電気的に縁切りされる。
筐体1内には、グリッド2と、グリッド2の軸線上に配置される細線からなるイオンコレクタ3と、グリッド2の周囲に配置されるフィラメント4とが格納されている。グリッド2は、例えば白金クラッドモリブデン線といった金属細線を円筒の輪郭を持つように巻回して構成され、圧力の測定時にはフィラメント4より高い電位が付与される。イオンコレクタ3は、軟エックス線の照射面積を可及的に小さくするために、タングステン等の金属製の細線で(針状に)形成されている。フィラメント4は、イリジウムからなる母材金属の表面を酸化イットリウムで被覆したものである。これらのグリッド2、イオンコレクタ3及びフィラメント4は、筐体1の底部12を貫通させて筐体1内に突設させた接続端子11a~11eにより位置決め支持されている。接続端子11a~11eは、公知の真空端子で構成することができるため、ここではこれ以上の詳細な説明を省略する。
コントローラCrは本体Fbを備え、本体Fb内には、フィラメント4に直流電流を通電する電源E1,E2と、グリッド2に対してフィラメント4より高い電位を付与する電源E3と、イオンコレクタ3を流れる第1イオン電流を測定する第1測定手段としての第1電流計A1と、筐体1を流れる第2イオン電流を測定する第2測定手段としての第2電流計A2とが組み込まれている。そして、各電源E1,E2,E3並びに各電流計A1,A2がセンサ部Suの接続端子11a~11eにケーブル接続されている。
電流計A1,A2に接続されるケーブル13a,13bとしては、漏れ電流が少ない同軸ケーブルを用いることが好ましい。また、グリッド2やフィラメント4に接続されるケーブル13c,13d,13eとしては、グリッド2やフィラメント4に印加される電圧より高い耐電圧を持ち、グリッド2やフィラメント4に流れる最大電流から電圧降下を考慮して設定される太さを有するものを用いることが好ましい。また、外来ノイズを防ぐために、これらのケーブル13a~13eが図示省略するシールドで囲まれていることが好ましい。また、本体Fbには、コンピュータ、メモリやシーケンサ等の制御手段Cが設けられ、電源E1~E3の作動や、電流計A1,A2で測定した電流値から圧力に換算するといったことを統括制御するようになっている。以下に、BA型電離真空計IGの感度異常検知方法を含め、真空容器Vc内の圧力測定方法について説明する。
圧力測定に先立ち、絶縁物製のクランプ部材Rcを用いて筐体1を真空容器Vcに装着することで、筐体1と真空容器Vcとを電気的に縁切りする。筐体1の装着後、図示省略する真空ポンプにより真空容器Vc内を真空引きする。そして、フィラメント4に通電(例えば、0.2~10V)して熱電子を放出させ、フィラメント4より高い電位(例えば、150~200V)をグリッド2に付与する。これにより、グリッド2内にて熱電子と気体とが衝突して生じた正イオンがイオンコレクタ3で捕集され、このときイオンコレクタ3を流れる第1イオン電流が第1電流計A1により測定され、この測定値から真空容器Vc内の圧力が求められる。求めた圧力値は、図示省略する表示部に表示することができる。尚、第1イオン電流から圧力を求める(換算する)方法としては、後述する式(1)を含めて公知のものを用いることができるため、ここでは詳細な説明を省略する。
他方、グリッド2外にて熱電子と気体とが衝突して生じた正イオンが筐体1(筐体内面14)で捕集され、このとき筐体1(筐体内面14)を流れる第2イオン電流が第2電流計A2により測定される。
ここで、グリッド2内の空間よりもグリッド2外の空間の体積の方が大きく、また、筐体内面14の面積は非常に大きいため、第2イオン電流は軟エックス線の影響を受ける(つまり、第2イオン電流は疑似イオン電流を含む)。このため、イオンコレクタ3が感度異常を招く程には汚染されていない状態では、図2に示すように、第2イオン電流が第1イオン電流よりも大きくなり、これら第2イオン電流と第1イオン電流との間には相関がある。
また、イオンコレクタ3の表面積と比較して、筐体内面14の面積は非常に大きいため、イオンコレクタ3が感度異常を招く程に汚染されても、筐体内面14は然程汚染されない。このため、イオンコレクタ3の汚染に応じて、第1イオン電流は小さくなるのに対して、第2イオン電流は殆ど変化せず、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量Dが次第に大きくなる(後述する図3参照)。
そこで、本実施形態では、検知手段としての制御手段Cにより、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量として両イオン電流の差Dを求め、求めた差Dが許容範囲内であるか否か、例えば、予め実験的に求めた閾値以上であるか否かを判別する。この場合、両イオン電流の差Dが閾値よりも小さいと、イオンコレクタ3が感度異常を招く程には汚染されていないと判定される一方で、両イオン電流の差Dが閾値以上であると、イオンコレクタ3が汚染されたと判定される。この判定結果は、例えば図示省略するディスプレイ等に報知してもよい。
このように、本実施形態によれば、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求めることで、イオンコレクタ3の汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知することができる。しかも、従来例のBA型電離真空計の筐体内に他のイオンコレクタを設けたり、他のイオンコレクタ用の接続端子を筐体の底部に設けたり、別電源を別途設けたりする必要がない。つまり、単に真空容器Vcに電気的に縁切りされた状態で筐体1を装着すると共に、筐体1に第2電流計A2を接続すれば済むため、構造の複雑化を招くことがない(言い換えると、既存のBA型電離真空計を利用できる)。
次に、本発明の効果を確認するために、上記BA型電離真空計IGを用いて実験を行った。即ち、本実験では、真空容器Vcの所定箇所に、真空容器Vcへの油の拡散を防止するバッフルを外し、真空容器Vcへ油が拡散されるように改造した油拡散ポンプを接続し、真空容器Vc内を真空引きできるようにすると共に、油拡散ポンプの接続箇所付近に筐体1を装着して、筐体1内に油拡散ポンプの油が流入してその炭化物でイオンコレクタ3が汚染されるようにした。尚、筐体1としては、SUS304製、内径Φ23mmのものを用い、この筐体1内に格納されるグリッド2としては、Φ0.25の白金クラッドモリブデン線を、直径がΦ10、高さ20mm、7ターンの巻き線としたものを用いた。イオンコレクタ3としては、Φ0.1、高さ20mmのタングステン線を用い、フィラメント4は、直径Φ0.127のイリジウム線の表面を酸化イットリウムで被覆し、高さ10mmのV字型に2本配置したものを用いた。
感度異常を招く程にはイオンコレクタ3が汚染されていない状態では、第1イオン電流と第2イオン電流を測定すると、第2イオン電流は軟エックス線の照射に起因する疑似イオン電流を含むため、第2イオン電流が第1イオン電流よりも大きくなる(図2参照)。本実験では、第1及び第2の両イオン電流の差(第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量)Dの変化を理解し易くするため、第1イオン電流を補正し、図3に示すように、検知開始時(経過時間=0)の第1及び第2の両イオン電流の圧力指示値を1.0×10-3Paとした(つまり、検知開始時の差Dをゼロとした)。尚、必ずしも第1イオン電流を補正する必要はなく、補正しない場合には、検知開始時の第2イオン電流と第1イオン電流との差を初期値とし、この初期値からの変化を求めればよい。
検知開始後、イオンコレクタ3の汚染に伴い第1イオン電流は低下し始め、2日経過後には第1イオン電流の圧力指示値は1.0×10-4Pa以下、3日経過後には1.0×10-5Pa以下となることが確認された。これに対して、第2イオン電流は、検知開始から30日が経過しても殆ど変化せず、圧力指示値は1.0×10-3Paであることが確認された。このように、イオンコレクタ3の汚染に応じて、両イオン電流の差Dは次第に大きくなるため、この差Dからイオンコレクタ3の汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知できることが判った。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記のものに限定されるものではなく、本発明の技術思想の範囲を逸脱しない範囲で適宜変形することができる。例えば、上記実施形態では、第2イオン電流を第2電流計A2により測定する場合を例に説明したが、図4に示すように、第1イオン電流及び第2イオン電流の測定を単一の電流計A1で兼用するように構成することもできる。この場合、センサ部SuとコントローラCrとをコネクタCn付きのケーブルで接続し、コネクタCn内に切換手段Sw1を設け、この切換手段Sw1により電流計A1での第1イオン電流または第2イオン電流の測定を切換ればよい。本変形例によれば、コネクタCn付きのケーブルを変更すれば、既存のコントローラ(すなわち、1つの電流計A1を内蔵するもの)Crを利用することができ、部品点数をより少なくでき、コスト上昇を抑えることができる。また、切換手段Sw1としては、手動で切換るトグルスイッチを用いることができるが、外部から信号を入力することにより駆動するマイクロリレーを用いることが好ましい。また、上記切換手段Sw1をコネクタCn内に設けるのではなく、コントローラCr内に設けてもよい。尚、第1イオン電流が電流計A1で測定される間、他の切換手段Sw2を操作して筐体1を接地電位にすることで、測定ノイズを低減することができる。
また、上記実施形態では、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量として両イオン電流の差Dを求める場合を例に説明したが、変化量として、第2イオン電流に対する第1イオン電流の比を求めるようにしてもよい。この場合も、イオンコレクタ3の汚染に応じて、第2イオン電流に対する第1イオン電流の比は次第に大きくなるため、求めた比が予め実験的に求めた比以上になった場合に、イオンコレクタ3が汚染されたと判定することができ、上記実施形態と同様に、イオンコレクタ3の汚染に基づく感度異常を可及的速やかに検知することができる。
また、上記変化量たる差Dまたは比に基づき、第1イオン電流から求められる圧力値を補正し、補正した圧力値を表示することもできる。上記変化量たる比に基づき、第1イオン電流で測定される圧力値を補正する場合を例に説明すると、第1イオン電流をIi1、エミッション電流をIe、感度をSとすると、第1イオン電流Ii1から求められる圧力Pは、下式(1)で表される。
P=Ii/Ie/S・・・(1)
ここで、第2イオン電流をIi2とし、初期の比がIi1/Ii2=0.2であったものが、イオンコレクタ3の汚染により比が0.1まで低下したとすると、感度Sは0.1/0.2=0.5となる。補正手段としての制御手段Cは、この0.5を上式(1)のSとして再設定することにより、圧力Pを補正することができ、補正した圧力値を表示することができる。これにより、イオンコレクタ3が汚染されても、真空容器内の圧力をより正確に測定することができる。
また、上記実施形態では、絶縁物製のクランプ部材Rcを用いることで金属製の真空容器Vcと金属製の筐体1とを電気的に縁切りしているが、縁切りする方法としてはこれに限定されない。また、上記実施形態では、測定対象物が金属製の真空容器Vcである場合を例に説明したが、測定対象物が絶縁物製のものである場合にも本発明を適用することができる。この場合、金属製のクランプ部材を用いて絶縁物製の測定対象物に筐体1を装着しても、測定対象物と筐体1とが電気的に縁切りされる。
A1…第1電流計(第1測定手段)、A2…第2電流計(第2測定手段)、C…制御手段(検知手段、補正手段)、D…第2イオン電流と第1イオン電流との差(第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量)、IG…BA型電離真空計、Sw1…切換手段、Vc…真空容器(測定対象物)、1…筐体、14…筐体内面、2…グリッド、3…イオンコレクタ、4…フィラメント。

Claims (5)

  1. 測定対象物に装着可能な金属製の筐体を有し、筐体内に、円筒の輪郭を持つグリッドと、グリッドの軸線上に配置される細線からなるイオンコレクタと、グリッドの周囲に配置されるフィラメントとが格納され、イオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する第1測定手段を備えるBA型電離真空計において、
    筐体は、電気的に縁切りされた状態で測定対象物に装着されると共に、筐体を流れる第2イオン電流を測定する第2測定手段を更に備え、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量から、イオンコレクタの汚染に基づく感度異常を検知する検知手段を設けることを特徴とするBA型電離真空計。
  2. 測定対象物に装着可能な金属製の筐体を有し、筐体内に、円筒の輪郭を持つグリッドと、グリッドの軸線上に配置される細線からなるイオンコレクタと、グリッドの周囲に配置されるフィラメントとが格納され、イオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する第1測定手段を備え、第1イオン電流から圧力を求めるBA型電離真空計において、
    筐体は、電気的に縁切りされた状態で測定対象物に装着されると共に、筐体を流れる第2イオン電流を測定する第2測定手段を更に備え、第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量に基づいて、前記第1イオン電流から求めた圧力を補正する補正手段を設けることを特徴とするBA型電離真空計。
  3. 前記第1測定手段と前記第2測定手段とが単一の電流計で兼用され、この電流計での第1イオン電流または第2イオン電流の測定を切換る切換手段を更に備えることを特徴とする請求項1記載のBA型電離真空計。
  4. 測定対象物に装着される金属製の筐体を有するBA型電離真空計の感度異常を検知する感度異常検知方法において、
    筐体内に格納されたフィラメントに通電して熱電子を放出させると共に、フィラメントより高い電位をグリッドに付与し、グリッド内にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンをイオンコレクタで捕集し、このときイオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定する工程と、
    グリッド外にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンを筐体内面で捕集し、このとき筐体内面を流れる第2イオン電流を測定する工程と、
    第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求め、その変化量からイオンコレクタの汚染に基づく感度異常を検知する工程とを含むことを特徴とするBA型電離真空計の感度異常検知方法。
  5. 測定対象物に装着される金属製の筐体を有するBA型電離真空計を用いて測定対象物内の圧力を測定する圧力測定方法において、
    筐体内に格納されたフィラメントに通電して熱電子を放出させると共に、フィラメントより高い電位をグリッドに付与し、グリッド内にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンをイオンコレクタで捕集し、このときイオンコレクタを流れる第1イオン電流を測定し、第1イオン電流の測定値から圧力を求める工程と、
    グリッド外にて熱電子と気体との衝突で生じた正イオンを筐体内面で捕集し、このとき筐体内面を流れる第2イオン電流を測定する工程と、
    第2イオン電流に対する第1イオン電流の変化量を求め、この変化量に基づいて、前記第1イオン電流から求めた圧力を補正する工程とを含むことを特徴とするBA型電離真空計を用いた圧力測定方法。

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