JP7035540B2 - 遷移金属含有複合水酸化物粒子とその製造方法、非水電解質二次電池用正極活物質とその製造方法、および非水電解質二次電池 - Google Patents
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Description
(1)二次粒子の構造
本発明の遷移金属含有複合水酸化物粒子(以下、「複合水酸化物粒子」という)は、一次粒子が凝集することにより形成された二次粒子により構成される。二次粒子のうち、大粒径の粒子は、板状一次粒子と微細一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層し、前記低密度層中の一部に高密度部が存在する、積層構造を少なくとも一つ備えていることを特徴とする。一方、二次粒子のうち、小粒径の粒子は、板状一次粒子が凝集して形成され、前記大粒径の粒子の高密度層の厚みと同等の長さの半径を有する高密度の中実粒子により構成されることを特徴とする。
本発明の複合水酸化物粒子において、大粒径の粒子の粒径に対する中心部の外径、低密度層、および高密度層のそれぞれの厚さの比率を適切に制御することにより、凝集した一次粒子により形成された外殻部と、外殻部の内側に存在し、凝集した一次粒子により形成され、かつ、外殻部と電気的に導通する凝集部と、および、凝集部の中に分散して存在する複数の空間部とにより構成された二次粒子からなる正極活物質が得られる。
[微細一次粒子]
複合水酸化物粒子の低密度層の低密度部を構成する微細一次粒子、および、中心部に存在する微細一次粒子は、平均粒径が、0.01μm~0.3μmの範囲にあることが好ましく、0.1μm~0.3μmの範囲にあることがより好ましい。微細一次粒子の平均粒径が0.01μm未満では、十分な大きさの低密度層が形成されない場合ある。一方、微細一次粒子の平均粒径が0.3μmを超えると、焼成時における収縮が低温域では進行せず、中心部、高密度層および高密度部との収縮差が少なくなり、得られる正極活物質において、十分な大きさの空間部を形成できない場合がある。
複合水酸化物粒子のうち、大粒径の粒子の中心部、高密度層、および高密度部、並びに、小粒径の粒子を構成する板状一次粒子は、平均粒径が0.3μm~3μmの範囲にあることが好ましく、0.4μm~1.5μmの範囲にあることがより好ましく、0.4μm~1.0μmの範囲にあることがさらに好ましい。板状一次粒子の平均粒径が0.3μm未満では、焼成時における収縮が低温域からはじまり、低密度部との収縮差が少なくなるため、得られる正極活物質のうちの大粒径の粒子において、十分な大きさの空間部を形成できない場合がある。一方、板状一次粒子の平均粒径が3μmを超えると、得られる正極活物質の結晶性を十分なものとするためには、大粒径の粒子および小粒径の粒子のいずれの場合も、高温で焼成しなければならなくなり、二次粒子間の焼結が進行し、正極活物質の平均粒径や粒度分布を所定の範囲に制御することが困難となる。
本発明の複合水酸化物粒子は、全体としての二次粒子の平均粒径は、1μm~15μm、好ましくは3μm~12μm、より好ましくは3μm~10μmとなるように調整される。二次粒子の平均粒径は、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径と相関する。このため、二次粒子の平均粒径をこのような範囲に制御することで、この複合水酸化物粒子を前駆体とする正極活物質の平均粒径を所定の範囲に制御することが可能となる。
本発明の複合水酸化物粒子は、その全体としての粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が、0.75以下、好ましくは0.65以下、より好ましくは0.60以下となるように調整される。また、大粒径の粒子および小粒径の粒子についても、同様の粒度分布に規制される。
本発明の複合水酸化物粒子は、上述した構造、平均粒径および粒度分布を有する限り、その組成が制限されることはないが、一般式(A):NixMnyCozMt(OH)2+a(式中、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、および、0≦a≦0.5であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表される複合水酸化物粒子であることが好ましい。このような複合水酸化物粒子を前駆体とすることで、後述する一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができ、より高い電池性能を実現することができる。
本発明の複合水酸化物粒子は、板状一次粒子と微細一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、中心部の外側に、微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層し、前記低密度層中の一部に高密度部が存在する、積層構造を少なくとも一つ備えた大粒径の粒子と、該大粒径の粒子の高密度層の厚みと同等の長さの半径を有する高密度の中実粒子により構成される。大粒径の粒子と小粒径の粒子の存在割合(個数比)は、1:0.5~1:5、好ましくは、1:0.75~1:3、より好ましくは、1:1~1:1.5である。この存在割合は、高い容量特性および特に低SOC領域における高い出力特性を両立させるという観点から決定され、これらの範囲を超えると、大粒径の粒子と小粒径の粒子とを混在させることによる効果が十分に得られない。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、晶析反応によって、正極活物質の前駆体となる複合水酸化物粒子を製造する方法であって、少なくとも遷移金属を含有する金属化合物とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0~14.0となるように制御して核生成を行う、核生成工程と、この核生成工程で得られた核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が、核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5~12.0となるように制御して核を成長させる、粒子成長工程を備える。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、晶析反応を、主として核生成を行う核生成工程と、主として粒子成長を行う粒子成長工程の2段階に明確に分離するとともに、それぞれの工程における晶析条件を調整することにより、特に、所定のタイミングで反応雰囲気を変更することにより、上述した、適切な粒子構造、平均粒径、および粒度分布を備える大粒径の粒子と小粒径の粒子からなる複合水酸化物粒子を得ることを可能としている。また、晶析条件の調整に必要な操作は、基本的には従来技術と同様であるため、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法は、工業規模の生産に容易に適用することができる。
核生成工程では、はじめに、この工程における原料となる遷移金属の化合物を水に溶解し、原料水溶液を調製する。なお、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、得られる複合水酸化物粒子の組成比は、原則として、原料水溶液におけるそれぞれの金属の組成比と同様となる。同時に、反応槽内に、アルカリ水溶液と、アンモニウムイオン供給体を含む水溶液を供給および混合して、液温25℃基準で測定するpH値が12.0~14.0の範囲の範囲にあり、かつ、アンモニウムイオン濃度が3g/L~25g/Lの範囲にある反応前水溶液を調製する。また、反応槽内に、不活性ガスを導入し、反応雰囲気を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気に調整する。なお、反応前水溶液のpH値はpH計により、アンモニウムイオン濃度はイオンメータにより測定することができる。
核生成工程終了後、反応槽内の核生成用水溶液のpH値を、液温25℃基準で10.5~12.0の範囲に調整し、粒子成長工程における反応水溶液である粒子成長用水溶液を形成する。pH値の調整は、アルカリ水溶液の供給を停止することでもpH値の調整は可能であるが、粒径の均一性を高めるためには、一旦、すべての水溶液の供給を停止してpH値を調整することが好ましい。核生成用水溶液に、原料となる金属化合物を構成する酸と同種の無機酸、たとえば、原料として硫酸塩を使用する場合には、硫酸を供給することで行うことができる。
上述のようにして得られる複合水酸化物粒子の粒径は、粒子成長工程や核生成工程の時間、核生成用水溶液や粒子成長用水溶液のpH値や、原料水溶液の供給量により制御することができる。たとえば、核生成工程におけるpH値を高い値とすることにより、または、粒子生成工程の時間を長くすることにより、供給する原料水溶液に含まれる金属化合物の量を増やし、核の生成量を増加させることで、得られる複合水酸化物粒子の粒径を小さくすることができる。反対に、核生成工程における核の生成量を抑制することで、得られる複合水酸化物粒子の粒径を大きくすることができる。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、核生成用水溶液とは別に、粒子成長工程に適したpH値およびアンモニウムイオン濃度に調整された成分調整水溶液を用意し、この成分調整用水溶液に、核生成工程後の核生成用水溶液、好ましくは核生成工程後の核生成用水溶液から液体成分の一部を除去したものを添加および混合して、これを粒子成長用水溶液として、粒子成長工程を行ってもよい。
[原料水溶液]
本発明においては、原則として、原料水溶液中の金属元素の比率が、得られる複合水酸化物粒子の組成比となる。このため、原料水溶液は、目的とする複合水酸化物粒子の組成に応じて、それぞれの金属元素の含有量を適宜調整することが必要となる。たとえば、上述した一般式(A)で表される複合水酸化物粒子を得ようとする場合、原料水溶液中の金属元素の比率を、Ni:Mn:Co:M=x:y:z;t(式中、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、および、0≦t≦0.1である)となるように調整することが必要となる。
反応水溶液中のpH値を調整するアルカリ水溶液は、特に制限されることはなく、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどの一般的なアルカリ金属水酸化物水溶液を用いることができる。なお、アルカリ金属水酸化物を、直接、反応水溶液に添加することもできるが、pH制御の容易さから、水溶液として添加することが好ましい。この場合、アルカリ金属水酸化物水溶液の濃度を、20質量%~50質量%とすることが好ましく、20質量%~30質量%とすることがより好ましい。アルカリ金属水溶液の濃度をこのような範囲に規制することにより、反応系に供給する溶媒量(水量)を抑制しつつ、添加位置で局所的にpH値が高くなることを防止することができるため、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を効率的に得ることができる。
アンモニウムイオン供給体を含む水溶液も、特に制限されることはなく、たとえば、アンモニア水、または、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、炭酸アンモニウムもしくはフッ化アンモニウムなどの水溶液を使用することができる。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、液温25℃基準におけるpH値を、核生成工程においては12.0~14.0の範囲に、粒子成長工程においては10.5~12.0の範囲に制御することが必要となる。なお、いずれの工程においても、晶析反応中のpH値の変動幅は、±0.2以内とすることが好ましい。pH値の変動幅が大きい場合、核生成量と粒子成長の割合が一定とならず、粒度分布の狭い複合水酸化物粒子を得ることが困難となる。
核生成工程においては、反応水溶液(核生成用水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、12.0~14.0、好ましくは12.3~13.5、より好ましくは12.5~13.3の範囲に制御することが必要となる。これにより、核の成長を抑制し、核生成を優先させることが可能となり、この工程で生成する核を均質かつ粒度分布の狭いものとすることができる。一方、pH値が12.0未満では、核生成とともに核(粒子)の成長が進行するため、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。また、pH値が14.0を超えると、生成する核が微細になりすぎるため、核生成用水溶液がゲル化するという問題が生じる。
粒子成長工程においては、反応水溶液(粒子成長水溶液)のpH値を、液温25℃基準で、10.5~12.0、好ましくは11.0~12.0、より好ましくは11.5~12.0の範囲に制御することが必要となる。これにより、最後の酸化性雰囲気における晶析反応時を除き、新たな核の生成が抑制され、粒子成長を優先させることが可能となり、得られる複合水酸化物粒子を均質かつ粒度分布が狭いものとすることができる。一方、pH値が10.5未満では、アンモニウムイオン濃度が上昇し、金属イオンの溶解度が高くなるため、晶析反応の速度が遅くなるばかりでなく、反応水溶液中に残存する金属イオン量が増加し、生産性が悪化する。また、pH値が12.0を超えると、粒子成長工程中の核生成量が増加し、得られる複合水酸化物粒子の粒径が不均一となり、粒度分布が悪化する。
本発明の複合水酸化物粒子の構造、特に大粒径の粒子の構造は、核生成工程および粒子成長工程における反応水溶液のpH値を上述のように制御するとともに、これらの工程における反応雰囲気を制御することにより形成される。したがって、本発明の複合水酸化物粒子の製造方法においては、それぞれの工程におけるpH値の制御とともに、反応雰囲気を制御することが重要な意義を有する。すなわち、それぞれの工程におけるpH値を上述のように制御した上で、核生成工程と粒子成長工程の初期の反応雰囲気を非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気とすることで、板状一次粒子が凝集した中心部、もしくは、板状一次粒子と微細一次粒子が凝集した中心部が形成される。また、粒子成長工程の途中で、非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気から酸化性雰囲気に切り替えた後、さらに、非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気に切り替えることにより、中心部の外側に、微細一次粒子が凝集した低密度層と、板状一次粒子が凝集した高密度層が積層した構造が形成される。
本発明の製造方法においては、大粒径の粒子の中心部および高密度層を形成する段階、および、小粒径の粒子の少なくとも粒子成長段階における反応雰囲気は、弱酸化性雰囲気ないしは非酸化性雰囲気に制御することが必要となる。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%以下、好ましくは2容量%以下、より好ましくは1容量%以下の非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気となるように、不活性ガスによる雰囲気あるいは酸素と不活性ガスの混合雰囲気に制御することが必要となる。これにより、不要な酸化を抑制しつつ、核生成工程で生成した核を一定の範囲まで粒子成長させることができるため、複合水酸化物粒子を構成する大粒径の粒子において、その中心部および高密度層を、平均粒径が0.3μm~3μmの範囲にあり、粒度分布が狭い板状一次粒子が凝集した構造とすることができる。
一方、本発明の複合水酸化物粒子において、大粒径の粒子の低密度層を形成する段階では、反応雰囲気を、酸化性雰囲に制御することが必要となる。具体的には、反応雰囲気中における酸素濃度が、5容量%を超えるように、好ましくは10容量%以上、より好ましくは大気雰囲気(酸素濃度:21容量%)となるように制御することが必要となる。反応雰囲気中の酸素濃度をこのような範囲に制御することにより、粒子成長が抑制され、一次粒子の平均粒径が0.01μm~0.3μmの範囲に制御されるため、大粒径の粒子において、その中心部および高密度層と十分な密度差を有する低密度層を形成することができる。
粒子成長工程において、上述した雰囲気制御は、目的とする粒子構造を有する大粒径の粒子が形成されるように、適切なタイミングで行うことが必要となる。
反応水溶液中のアンモニウムイオン濃度は、好ましくは3g/L~25g/L、より好ましくは5g/L~20g/Lの範囲内で一定値に保持する。
反応水溶液の温度(反応温度)は、核生成工程と粒子成長工程を通じて、好ましくは20℃以上、より好ましくは20℃~60℃の範囲に制御することが必要となる。反応温度が20℃未満の場合、反応水溶液の溶解度が低くなることに起因して、核生成が起こりやすくなり、得られる複合水酸化物粒子の平均粒径や粒度分布の制御が困難となる。なお、反応温度の上限は、特に制限されることはないが、60℃を超えると、アンモニアの揮発が促進され、反応水溶液中のアンモニウムイオンを一定範囲に制御するために供給するアンモニウムイオン供給体を含む水溶液の量が増加し、生産コストが増加してしまう。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、原料水溶液中に添加元素Mを含有する化合物を添加することで、粒子内部に添加元素Mが均一に分散した複合水酸化物粒子を得ることができる。しかしながら、より少ない添加量で、添加元素Mの添加による効果を得ようとする場合、粒子成長工程後に、得られた複合水酸化物粒子の表面を、添加元素Mを含む化合物で被覆する被覆工程を行うことが好ましい。
本発明の複合水酸化物粒子の製造方法では、反応が完了するまで生成物を回収しない方式の装置、たとえば、バッチ反応槽を用いることが好ましい。このような装置であれば、オーバーフロー方式によって生成物を回収する連続晶析装置のように、成長中の粒子がオーバーフロー液と同時に回収されることがないため、粒度分布が狭い複合水酸化物粒子を容易に得ることができる。
(1)粒子構造
本発明の正極活物質は、複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなる。本発明の正極活物質を構成する二次粒子は、外殻部の内側に、該外殻部と電気的に導通し、かつ、相互に電気的に導通する一次粒子の凝集部と、一次粒子が存在しない空間部とが分散している構造を備えた、大粒径の粒子と、この大粒径の粒子の外殻部もしくは一次粒子の凝集部の厚みと同等の長さの半径を有する、中実の小粒径の粒子とにより構成される。
本発明の正極活物質を構成する二次粒子は、その全体の平均粒径が1μm~15μmの範囲、好ましくは3μm~12μmの範囲、より好ましくは3μm~10μmの範囲となるように調整される。また、本発明の正極活物質の二次粒子を構成する、大粒径の粒子は、その平均粒径が4μm~15μm、好ましくは5μm~12μm、より好ましくは6μm~10μmに調整される。一方、本発明の正極活物質の二次粒子を構成する小粒径の粒子は、その二次粒子の平均粒径が、1μm~4μm、好ましくは1.5μm~3.5μm、より好ましくは2μm~3μmに調整される。
本発明の正極活物質は、粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が、0.75以下、好ましくは0.65以下、より好ましくは0.60以下であり、きわめて粒度分布が狭いリチウム複合酸化物粒子により構成される。このような正極活物質は、微細粒子や粗大粒子の割合が少なく、これを用いた二次電池は、安全性、サイクル特性および出力特性が優れたものとなる。
本発明の正極活物質は、上述した構造を有する限り、その組成が制限されることはないが、一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(式中、-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、および、0≦t≦0.1であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表される正極活物質に対して好適に適用することができる。
本発明の正極活物質は、比表面積が、0.7m2/g~4.0m2/gであることが好ましく、1.8m2/g~4.0m2/gであることがより好ましい。比表面積がこのような範囲にある正極活物質は、電解液との接触面積が大きく、これを用いた二次電池の出力特性を大幅に改善することができる。これに対して、正極活物質の比表面積が0.7m2/g未満では、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保することができず、出力特性を十分に向上させることが困難となる。一方、正極活物質の比表面積が4.0m2/gを超えると、電解液との反応性が高くなりすぎるため、熱安定性が低下する場合がある。また、この比表面積がこれらの範囲を外れることは、大粒径の粒子と小粒径の粒子の割合のバランスが片より、高い容量特性と高い出力特性の両立という本発明の効果が十分に発揮できないこととなる。
携帯電子機器の使用時間や電気自動車の走行距離を伸ばすために、二次電池の高容量化は重要な課題となっている。一方、二次電池の電極の厚さは、電池全体のパッキングや電子伝導性の問題から数ミクロン程度とすることが要求される。このため、正極活物質として高容量のものを使用するばかりでなく、正極活物質の充填性を高め、二次電池全体としての高容量化を図ることが必要となる。このような観点から、本発明の正極活物質では、充填性の指標であるタップ密度を、1.0g/cm3以上とすることが好ましく、1.3g/cm3以上とすることがより好ましい。タップ密度が1.0g/cm3未満では、充填性が低く、二次電池全体の容量特性を十分に改善することができない場合がある。一方、タップ密度の上限値は、特に制限されるものではないが、通常の製造条件での上限は、3.0g/cm3程度となる。また、タップ密度と、大粒径の粒子と小粒径の粒子の割合との関係は、比表面積と同様であり、タップ密度が上記範囲を外れると、その割合のバランスが崩れて、高い容量特性と高い出力特性の両立という本発明の効果が十分に発揮できないこととなる。
本発明の正極活物質は、単位体積あたりの表面積が、0.5m2/cm3以上である。好ましくは、単位体積当たりの表面積は、1.0m2/cm3~5.0m2/cm3の範囲であり、より好ましくは、2.0m2/cm3~5.0m2/cm3の範囲である。二次電池の出力特性および容量特性を改善するためには、比表面積とタップ密度をそれぞれ増加させることが必要となり、それらの積である単位体積あたりの表面積が大きいほど、優れた出力特性および容量特性を有することを表す。なお、単位体積あたりの表面積とは、上述した比表面積とタップ密度の測定値の積により求めることができる。
本発明の正極活物質のうちの大粒径の粒子では、複数の空間部が粒子内部に分散していることが必要となる。本発明の正極活物質を構成する大粒径の粒子では、二次粒子の断面観察により計測される複数の空間部の全体の面積割合が、大粒径の粒子の断面積に対して5%~60%の範囲にある。この大粒径の粒子の断面積に対する空間部面積の占有率(以下、「空間部率」)は、大きくなるほど、比表面積は増大し、かつ、リチウムイオンの拡散経路長が短くなる傾向となる。すなわち、二次電池を構成した場合に、電解液との反応面積を確保するとともに、大粒径の粒子内部および小粒径の粒子におけるリチウムイオンの拡散経路長を均一に短くし、正極抵抗の低減による低SOC領域における出力特性の向上につながる。この空間部率が、上記範囲を下回ると、十分な空間部が形成されず、内部に空間部を設けることによる効果が十分に得られない。一方、上記範囲を超えると、二次粒子内部に空間部よりも大きな空隙部が存在して、凝集部の割合が低くなりすぎたり、凝集部間の電気的導通が不十分となったりして、所望の特性を得られない。この空間部率は、好ましくは 10%~50%の範囲であり、より好ましくは20%~40%の範囲となる。
本発明の正極活物質の製造方法は、上述した複合水酸化物粒子を前駆体として用い、所定の構造、平均粒径および粒度分布を備える正極活物質を合成することができる限り、特に制限されることはない。しかしながら、工業規模の生産を前提とした場合、上述した複合水酸化物粒子をリチウム化合物と混合し、リチウム混合物を得る混合工程と、得られたリチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃~980℃で焼成する焼成工程とを備える製造方法によって正極活物質を合成することが好ましい。なお、必要に応じて、上述した工程に、熱処理工程や仮焼工程などの工程を追加してもよい。このような製造方法によれば、上述した正極活物質、特に、一般式(B)で表される正極活物質を容易に得ることができる。
本発明の正極活物質の製造方法においては、任意的に、混合工程の前に熱処理工程を設けて、複合水酸化物粒子を熱処理粒子としてからリチウム化合物と混合してもよい。ここで、熱処理粒子には、熱処理工程において余剰水分を除去された複合水酸化物粒子のみならず、熱処理工程により、酸化物に転換された遷移金属含有複合酸化物粒子(以下、「複合酸化物粒子」という)、または、これらの混合物も含まれる。
混合工程は、上述した複合水酸化物粒子または熱処理粒子に、リチウム化合物を混合して、リチウム混合物を得る工程である。
リチウム化合物として、水酸化リチウムや炭酸リチウムを使用する場合には、混合工程後、焼成工程の前に、リチウム混合物を、後述する焼成温度よりも低温、かつ、350℃~800℃、好ましくは450℃~780℃で仮焼する仮焼工程を行ってもよい。これにより、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中に、リチウムを十分に拡散させることができ、より均一なリチウム複合酸化物粒子を得ることができる。
焼成工程は、混合工程で得られたリチウム混合物を所定条件の下で焼成し、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムを拡散させて、リチウム複合酸化物粒子を得る工程である。
リチウム混合物の焼成温度は、650℃~980℃とすることが必要となる。焼成温度が650℃未満では、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物粒子または熱処理粒子が残存したり、得られるリチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなったりする。一方、焼成温度が980℃を超えると、リチウム複合酸化物粒子間が激しく焼結し、異常粒成長が引き起こされ、不定形な粗大粒子の割合が増加することとなる。
焼成時間のうち、上述した焼成温度での保持時間は、少なくとも2時間以上とすることが好ましく、4時間~24時間とすることがより好ましい。焼成温度における保持時間が2時間未満では、複合水酸化物粒子または熱処理粒子中にリチウムが十分に拡散せず、余剰のリチウムや未反応の複合水酸化物粒子または熱処理粒子が残存したり、得られるリチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなったりするおそれがある。
焼成時の雰囲気は、酸化性雰囲気とすることが好ましく、酸素濃度が18容量%~100容量%の雰囲気とすることがより好ましく、上記酸素濃度の酸素と不活性ガスの混合雰囲気とすることが特に好ましい。すなわち、焼成は、大気ないしは酸素気流中で行うことが好ましい。酸素濃度が18容量%未満では、リチウム複合酸化物粒子の結晶性が不十分なものとなるおそれがある。
焼成工程によって得られたリチウム複合酸化物粒子は、凝集または軽度の焼結が生じている場合がある。このような場合、リチウム複合酸化物粒子の凝集体または焼結体を解砕することが好ましい。これによって、得られる正極活物質の平均粒径や粒度分布を好適な範囲に調整することができる。なお、解砕とは、焼成時に二次粒子間の焼結ネッキングなどにより生じた複数の二次粒子からなる凝集体に、機械的エネルギを投入して、二次粒子自体をほとんど破壊することなく分離させて、凝集体をほぐす操作を意味する。
本発明の非水電解質二次電池は、正極、負極、セパレータ、非水電解液などの、一般の非水電解質二次電池と同様の構成要素を備える。なお、以下に説明する実施形態は例示にすぎず、本発明の非水電解質二次電池は、本明細書に記載されている実施形態を基づいて、種々の変更、改良を施した形態に適用することも可能である。
(1-a)正極
本発明により得られた非水電解質二次電池用正極活物質を用いて、たとえば、以下のようにして非水電解質二次電池の正極を作製する。
負極には、金属リチウムやリチウム合金など、あるいは、リチウムイオンを吸蔵および脱離できる負極活物質に、結着剤を混合し、適当な溶剤を加えてペースト状にした負極合材を、銅などの金属箔集電体の表面に塗布し、乾燥し、必要に応じて電極密度を高めるべく圧縮して形成したものを使用する。
セパレータは、正極と負極との間に挟み込んで配置されるものであり、正極と負極とを分離し、電解質を保持する機能を有する。このようなセパレータとしては、たとえば、ポリエチレンやポリプロピレンなどの薄い膜で、微細な孔を多数有する膜を用いることができるが、上記機能を有するものであれば、特に限定されることはない。
非水電解液は、支持塩としてのリチウム塩を有機溶媒に溶解したものである。
以上の正極、負極、セパレータおよび非水電解液で構成される本発明の非水電解質二次電池は、円筒形や積層形など、種々の形状にすることができる。
本発明の非水電解質二次電池は、上述したように、本発明の正極活物質を正極材料として用いているため、容量特性、出力特性およびサイクル特性に優れる。しかも、従来のリチウムニッケル系酸化物粒子からなる正極活物質を用いた二次電池との比較においても、熱安定性や安全性において優れているといえる。
本発明の非水電解質二次電池は、上述のように、容量特性、出力特性およびサイクル特性に優れており、これらの特性が高いレベルで要求される小型携帯電子機器(ノート型パーソナルコンピュータや県電話端末など)の電源に好適に利用することができる。また、本発明の非水電解質二次電池は、安全性にも優れており、小型化および高出力化が可能であるばかりでなく、高価な保護回路を簡略することができるため、搭載スペースに制約を受ける輸送用機器の電源としても好適に利用することができる。
(a)複合水酸化物粒子の製造
[核生成工程]
はじめに、反応槽内に、水を14L入れて撹拌しながら、槽内温度を40℃に設定した。この際、反応槽内に、窒素ガスを30分間流通させ、反応雰囲気を、酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とした。続いて、反応槽内に、25質量%水酸化ナトリウム水溶液と25質量%アンモニア水を適量供給し、pH値が、液温25℃基準で12.8、アンモニウムイオン濃度が10g/Lとなるように調整することで反応前水溶液を形成した。
核生成終了後、一旦、すべての水溶液の供給を一旦停止するとともに、硫酸を加えて、pH値が、液温25℃基準で11.6となるように調整することで、粒子成長用水溶液を形成した。pH値が所定の値になったことを確認した後、核生成工程と同様の割合で原料水溶液を供給し、核生成工程で生成した核(粒子)を成長させた。
ICP発光分光分析装置(株式会社島津製作所島津製作所製、ICPE-9000ICPE-9000)を用いた分析により、この複合水酸化物粒子は、一般式:Ni0.333Mn0.333Co0.333(OH)2で表されるものであることが確認された。
図1に示すように、本発明の複合水酸化物粒子は、大粒径の粒子と小粒径の粒子とにより構成されていることが確認された。所定の画像範囲について、大粒径の粒子と小粒径の粒子との存在割合を計測したところ、1:1であった。
上述のようにして得られた複合水酸化物粒子を、空気(酸素濃度:21容量%)気流中、120℃の温度で12時間熱処理した後、Li/Meが1.21となるように、シェーカーミキサ装置(ウィリー・エ・バッコーフェン(WAB)社製、TURBULA TypeT2C)を用いて炭酸リチウムと十分に混合し、リチウム混合物を得た(混合工程)。
ICP発光分光分析装置を用いた分析により、この正極活物質は、一般式:Li1.21Ni0.333Mn0.333Co0.333O2で表されるものであることが確認された。
上述のようにして得られた正極活物質:52.5mgと、アセチレンブラック:15mgと、PTEE:7.5mgを混合し、100MPaの圧力で、直径11mm、厚さ100μmにプレス成形した後、真空乾燥機中、120℃で12時間乾燥することにより、正極(1)を作製した。
[初期放電容量]
2032型コイン電池を作製してから24時間程度放置し、開回路電圧OCV(Open Circuit Voltage)が安定した後、正極に対する電流密度を0.1mA/cm2として、カットオフ電圧が4.3Vとなるまで充電し、1時間の休止後、カットオフ電圧が3.0Vになるまで放電したときの放電容量を測定する充放電試験を行ない、初期放電容量を求めた。この際、充放電容量の測定には、マルチチャンネル電圧/電流発生器(株式会社アドバンテスト製、R6741A)を用いた。
充電電位4.1Vで充電した2032型コイン電池を用いて、交流インピーダンス法により抵抗値を測定した。測定には、周波数応答アナライザおよびポテンショガルバノスタット(ソーラトロン製)を使用し、図10に示すナイキストプロットを得た。プロットは、溶液抵抗、負極抵抗と容量、および、正極抵抗と容量を示す特性曲線の和として表れているため、等価回路を用いてフィッティング計算し、正極抵抗の値を算出した。
上述した充放電試験を繰り返し、初期放電容量に対する、500回目の放電容量を測定することで、500サイクルの容量維持率を算出した。
粒子成長工程の開始時から24分(粒子成長工程全体に対して1.9%)経過後に、反応雰囲気を酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作1)、切替操作1を行ってから5分(粒子成長工程全体に対して0.4%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作2)、切替操作2を行ってから、140分(粒子成長工程全体に対して10.9%)経過後、反応槽内に、単位時間あたりに反応槽に送り込む酸素の物質量と反応槽に供給する原料の遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が1.4となる流量(30L/min)の空気を流通させ、反応雰囲気を酸素濃度が20容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作3)、切替操作3を行ってから17分(粒子成長工程全体に対して1.3%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作4)、切替操作4を行ってから1100分(粒子成長工程全体に対して85.5%)経過後、粒子成長工程を終了したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。
粒子成長工程の開始時から24分(粒子成長工程全体に対して1.9%)経過後に、反応雰囲気を酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作1)、切替操作1を行ってから5分(粒子成長工程全体に対して0.4%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作2)、切替操作2を行ってから、140分(粒子成長工程全体に対して10.9%)経過後、反応槽内に、単位時間あたりに反応槽に送り込む酸素の物質量と反応槽に供給する原料の遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が0.10となる流量(2.2L/min)の空気を流通させ、反応雰囲気を酸素濃度が20容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作3)、切替操作3を行ってから17分(粒子成長工程全体に対して1.3%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作4)、切替操作4を行ってから1100分(粒子成長工程全体に対して85.5%)経過後、粒子成長工程を終了したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。
粒子成長工程の開始時から24分(粒子成長工程全体に対して1.9%)経過後に、反応雰囲気を酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作1)、切替操作1を行ってから2分(粒子成長工程全体に対して0.2%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作2)、切替操作2を行ってから、140分(粒子成長工程全体に対して11.0%)経過後、反応槽内に、単位時間あたりに反応槽に送り込む酸素の物質量と反応槽に供給する原料の遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が0.20となる流量(4.3L/min)の空気を流通させ、反応雰囲気を酸素濃度が20容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作3)、切替操作3を行ってから10分(粒子成長工程全体に対して0.8%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作4)、切替操作4を行ってから1100分(粒子成長工程全体に対して86.2%)経過後、粒子成長工程を終了したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。
粒子成長工程の開始時から24分(粒子成長工程全体に対して1.9%)経過後に、反応雰囲気を酸素濃度が21容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作1)、切替操作1を行ってから20分(粒子成長工程全体に対して1.6%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作2)、切替操作2を行ってから、140分(粒子成長工程全体に対して10.9%)経過後、反応槽内に、単位時間あたりに反応槽に送り込む酸素の物質量と反応槽に供給する原料の遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が0.20となる流量(4.3L/min)の空気を流通させ、反応雰囲気を酸素濃度が20容量%の酸化性雰囲気とし(切替操作3)、切替操作3を行ってから100分(粒子成長工程全体に対して7.8%)経過後、反応雰囲気を酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気とし(切替操作4)、切替操作4を行ってから1000分(粒子成長工程全体に対して77.9%)経過後、粒子成長工程を終了したこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。
粒子成長工程において、反応雰囲気の切替操作3において流通させる空気の流量を、単位時間あたりに反応槽に送り込む酸素の物質量と反応槽に供給する原料の遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が0.05となる流量(1.0L/min)の空気を流通させたこと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。得られた正極活物質の表面および断面のFE-SEM写真をそれぞれ図5および図6に示す。
前駆体水酸化物粒子の晶析工程において、粒成長工程をすべて酸素濃度が2容量%以下の非酸化性雰囲気にて行い、かつ、粒径が約3.5μmとなるように、反応時間を制御した(粒子成長工程全体で240分)こと以外は、実施例1と同様にして、複合水酸化物粒子、正極活物質、および、非水電解質二次電池を作製し、これらの評価を行った。得られた正極活物質の表面および断面のFE-SEM写真をそれぞれ図7および図8に示す。
2 負極
3 セパレータ
4 ガスケット
5 正極缶
6 負極缶
B 2032型コイン電池
Claims (19)
- 少なくとも遷移金属を含有する金属化合物からなる原料とアンモニウムイオン供給体とを含む核生成用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が12.0~14.0となるように制御して、前記原料を供給しつつ核生成を行う、核生成工程と、該核生成工程で得られた核を含有する粒子成長用水溶液を、液温25℃基準におけるpH値が、前記核生成工程のpH値よりも低く、かつ、10.5~12.0となるように制御して、前記原料を供給しつつ前記核を成長させる、粒子成長工程とを備え、
前記核生成工程および前記粒子成長工程の初期における反応雰囲気を、酸素濃度が5容量%以下の非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気とし、その後、前記非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気から酸素濃度が5容量%を超える酸化性雰囲気に切り替え、かつ、該酸化性雰囲気から前記非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気に切り替える、反応雰囲気の制御を少なくとも1回行い、
前記反応雰囲気の制御は、セラミック散気管を用いて雰囲気ガスを前記核生成用水溶液および前記粒子成長用水溶液の液中に吹き込むことで行うとともに、該反応雰囲気の切り替え中において、前記原料の供給は継続して行い、
最後の非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気による晶析工程の直前の酸化性雰囲気による晶析工程において、単位時間あたりに前記粒子成長用水溶液の液中に送り込む酸素の物質量と前記粒子成長用水溶液の液中に供給する原料のうちの遷移金属イオンの物質量の比(酸素/遷移金属)が0.10~2.0の範囲となるように酸素の流量を設定し、および、
前記粒子成長工程の初期を、該粒子成長工程の開始時から、該粒子成長工程時間の全体に対して1%~35%の範囲として、前記非酸化性雰囲気ないしは弱酸化性雰囲気から前記酸化性雰囲気に切り替える、ことを特徴とする遷移金属含有複合水酸化物粒子の製造方法。 - 前記反応雰囲気の制御を1回のみ行い、前記粒子成長工程における前記酸化性雰囲気における晶析反応時間を、該粒子成長工程時間の全体に対して1%~30%の範囲とする、請求項1に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子の製造方法。
- 前記反応雰囲気の制御を2回以上行い、前記粒子成長工程における前記酸化性雰囲気における全晶析反応時間を、該粒子成長工程時間の全体に対して2%~40%の範囲とし、かつ、1回あたりの前記酸化性雰囲気における晶析反応時間を、前記粒子成長工程時間の全体に対して1%~20%の範囲とする、請求項1に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子の製造方法。
- 前記遷移金属含有複合水酸化物粒子は、一般式(A):NixMnyCozMt(OH)2+a(式中、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、および、0≦a≦0.5であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表される組成を有する、請求項1~3のいずれかに記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子の製造方法。
- 前記晶析工程の終了後に、前記遷移金属含有複合水酸化物粒子を、前記添加元素Mを含む化合物で被覆する、被覆工程をさらに設ける、請求項4に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子の製造方法。
- 複数の板状一次粒子および該板状一次粒子よりも小さな微細一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
前記二次粒子は、前記板状一次粒子が凝集して形成された、あるいは、該板状一次粒子と微細一次粒子が凝集して形成された中心部を有し、該中心部の外側に、前記微細一次粒子が凝集して形成された低密度層と、該板状一次粒子が凝集して形成された高密度層とが積層した積層構造を少なくとも1つ備えている大粒径の粒子と、前記板状一次粒子が凝集して形成され、前記大粒径の粒子の高密度層の厚みと同等の長さの半径を有する高密度で中実の小粒径の粒子とにより構成され、および、
前記大粒径の粒子を構成する前記低密度層中の一部に前記板状一次粒子が凝集して形成された高密度部が存在する、
遷移金属含有複合水酸化物粒子。 - 前記二次粒子は、その全体の平均粒径が1μm~15μmの範囲にあり、かつ、その全体の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.65の範囲にあり、前記大粒径の粒子は、その平均粒径が4μm~15μmの範囲にあり、かつ、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.65の範囲にあり、該大粒径の粒子を構成する前記高密度層のそれぞれの厚さの該大粒径の粒子に対する平均比率は、5%~40%の範囲にあり、および、前記小粒径の粒子は、その平均粒径が1μm~4μmの範囲にあり、かつ、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.65の範囲にあり、および、
前記大粒径の粒子と前記小粒径の粒子の存在割合は、1:0.5~1:5の範囲にある、
請求項6に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子。 - 前記遷移金属含有複合水酸化物粒子は、一般式(A):NixMnyCozMt(OH)2+a(式中、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、0≦t≦0.1、および、0≦a≦0.5であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表される組成を有する、請求項6または7に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子。
- 前記添加元素Mは、前記二次粒子の内部に均一に分布、および/または、該二次粒子の表面を均一に被覆している、請求項8に記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子。
- 請求項6~9のいずれかに記載の遷移金属含有複合水酸化物粒子とリチウム化合物を混合して、リチウム混合物を形成する混合工程と、前記混合工程で形成された前記リチウム混合物を、酸化性雰囲気中、650℃~980℃で焼成する焼成工程とを備える、非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記混合工程において、前記リチウム混合物を、該リチウム混合物に含まれるリチウム以外の金属の原子数の和と、リチウムの原子数との比が、1:0.95~1.5となるように調整する、請求項10に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記混合工程前に、前記遷移金属含有複合水酸化物粒子を105℃~750℃で熱処理する、熱処理工程をさらに備える、請求項10または11に記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 前記非水電解質二次電池用正極活物質は、一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(式中、-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、および、0≦t≦0.1であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表され、層状岩塩型で六方晶系の結晶構造を有するリチウムニッケルマンガン複合酸化物粒子からなる、請求項10~12のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質の製造方法。
- 複数の一次粒子が凝集して形成された二次粒子からなり、
前記二次粒子は、外殻部の内側に、該外殻部と電気的に導通し、かつ、相互に電気的に導通する一次粒子の凝集部と、一次粒子が存在しない空間部とが分散している構造を備えている大粒径の粒子と、前記大粒径の粒子の外殻部もしくは一次粒子の凝集部の厚みと同等の長さの半径を有する、中実の小粒径の粒子とにより構成される、
非水電解質二次電池用正極活物質。 - 前記二次粒子は、その全体の平均粒径が1μm~15μmの範囲にあり、かつ、その全体の粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.70の範囲にあり、該二次粒子を構成する、前記大粒径の粒子は、その平均粒径が4μm~15μmの範囲にあり、かつ、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.70の範囲にあり、該大粒径の粒子の断面積に対する前記空間部全体の面積の占有率は、5%~60%の範囲にあり、および、前記小粒径の粒子は、その平均粒径が1μm~4μmの範囲にあり、かつ、その粒度分布の広がりを示す指標である〔(d90-d10)/平均粒径〕が0.30~0.70の範囲にある、請求項14に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- BET比表面積が、0.7m2/g~4.0m2/gの範囲にある、請求項14または15に記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 単位体積あたりの表面積が、0.5m2/cm3~5.0m2/cm3の範囲にある、請求項14~16のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 一般式(B):Li1+uNixMnyCozMtO2(式中、-0.05≦u≦0.50、x+y+z+t=1、0.3≦x≦0.95、0.05≦y≦0.55、0≦z≦0.4、および、0≦t≦0.1であり、Mは、Mg、Ca、Al、Ti、V、Cr、Zr、Nb、Mo、Hf、Ta、および、Wから選択される1種以上の添加元素である)で表され、層状岩塩型で六方晶系の結晶構造を有するリチウム遷移金属含有複合酸化物粒子からなる、請求項14~17のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質。
- 正極と、負極と、セパレータと、非水電解質とを備え、前記正極の正極材料として、請求項14~18のいずれかに記載の非水電解質二次電池用正極活物質が用いられている、非水電解質二次電池。
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