以下、本発明に係る血圧計用の腕帯の実施形態について、図面を用いて説明する。
<腕帯の構成>
図1は本発明の一実施形態である血圧計用の腕帯200が被検者の腕300(被検体)に巻き付けられている様子を示す模式図、図2は図1に示した腕帯200が巻き付け方向Pに丸まった状態を示す斜視図、図3は図1に示した腕帯200を巻き付け方向Pと平行な面で切断した断面を示す断面図、図4は図2に示した腕帯200の丸まった部分に配置されている芯材220を示す斜視図、図5は芯材220の弾性力に逆らって腕帯200の丸まりを開いた状態を示す斜視図である。
腕帯200は、図1に示すように被検者の腕300に巻き付けられる。腕帯200は、図2に示すように、巻き付け方向Pが幅方向Dに対して長い帯状に形成された腕帯カバー250と、腕帯カバー250の内部に収容された芯材220及び空気袋100(流体袋の一例)と、を備えている。
腕帯カバー250は、屈曲自在の布製又は樹脂製である。腕帯カバー250は、図3に示すように、腕300に巻き付けられた状態で外周面側に配置された表布210と、内周面側に配置されて腕300に接する裏布240と、表布210と裏布240との間に配置された仕切り布230(仕切りシートの一例)とを備えている。仕切り布230は、後述するように、巻き付け方向Pの長さが表布210や裏布240よりも短く、主に図2の左端側の丸まった範囲にのみ設けられている。表布210と仕切り布230と裏布240とは、周縁の全周に亘って接合されている。
腕帯カバー250の、図2の左端側の丸まった範囲には、芯材220と空気袋100が配置されている。芯材220は表布210と仕切り布230との間に収容され(図3参照)、空気袋100は、裏布240と仕切り布230との間に収容されている。芯材220は、図4に示すように、略円筒状の樹脂製(例えばPP(ポリプロピレン)製)の板である。芯材220は、板厚の薄い平板状の板を丸めて略円筒状に塑性変形させて形成してもよいし、又は板厚の薄い円筒状の樹脂製筒の周壁を、円筒の軸方向の全長に亘って切断して形成してもよい。
芯材220は樹脂製でなくてもよく、例えば金属製など、略円筒状を平板状に開くような荷重を作用させても、その荷重を取り除けば元の略円筒状に復元する弾性を有するものであればよい。芯材220は、例えば図5の破線で示す腕帯カバー250の左端側の範囲に配置されていて、この範囲は、芯材220の略円筒状の形状に倣って丸まっている。
芯材220によって、図2に示す略円筒状に丸まった左端側の範囲の腕帯カバー250(裏布240)の内径は、一般成人の腕300の太さより細く形成されている。これにより、芯材220によって丸まった腕帯200の左端側を開いて腕300に腕帯200を巻き付けて装着した状態で、腕帯200は、芯材220の弾性力によって腕300を半径方向内側に圧迫するように荷重(垂直荷重)が作用する。そしてこの荷重により、裏布240と腕300の表面との間に腕300の周方向には摩擦力が生じる。
したがって、被検者が自身の一方の腕300に腕帯200の丸まった部分を装着して、他方の手で腕帯200の残り部分を巻き付ける際に、既に装着した部分(腕帯200の丸まった部分)と腕300との間の周方向に沿った摩擦力により、一方の手で腕帯200を押さえなくても、装着した部分が空回りするのを防止し、被検者自身での装着を容易にしている。
仕切り布230は、芯材220の周方向(巻き付け方向P)の端縁が内周側に突出して、その突出した端縁が裏布240を変形させないために設けられている。つまり、裏布240は、腕300に接する部分であるため、比較的軟らかい素材で形成されている。腕帯200を腕300に巻き付ける際に、芯材220の丸まった形状を、芯材220の弾性力に逆らって展開するが、芯材220は弾性力により丸まった状態に戻ろうとするため、芯材220の端縁が半径方向の内側に出っ張る。このとき、仕切り布230が無いものでは、芯材220の端縁が裏布240を半径方向の内側に押すため、軟らかい素材の裏布240は半径方向の内側に向かって押され伸びて変形してしまう。しかし、仕切り布230を備えた腕帯カバー250は、芯材220の端縁を仕切り布230が受け止めるため、裏布240が変形するのを防止する。
このように、仕切り布230は、芯材220の端縁を受け止めればよいため、腕帯カバー250の巻き付け方向Pの全長に亘って設けられている必要はなく、上述した芯材220が配置されている範囲を含み、芯材220の巻き付け方向Pの端縁をカバーする長さ範囲にのみ設けられている。したがって、仕切り布230は、表布210や裏布240よりも短い。また、仕切り布230は、芯材220の弾性力による端縁の変位を受け止めて裏布240の伸びを防止又は抑制するために、裏布240よりも硬い素材で形成されている。
なお、図2に示すように、裏布240は、左端側の丸まった範囲以外の全面に面ファスナ270のループ状の起毛272を形成し、表布210は、左端側の丸まった範囲の一部に面ファスナ270のフック状の起毛271が形成されていて、腕帯200を腕300に巻き付けた状態で、裏布240のループ状の起毛と表布210のフック状の起毛とが吸着することで、腕帯200を腕300に巻き付けたときの外径が維持される。
図6は折り畳まれた状態の空気袋100を示す斜視図であり、図7は図6に示した空気袋100のうち内周側袋体120のみを示す斜視図、図8は図6に示した空気袋100の、巻き付け方向Pに直交し、幅方向Dを含む面で切断した断面を示す、収縮状態における断面図である。
空気袋100は、例えばPVC(ポリ塩化ビニル)製で、図5に示すように、例えば、腕帯カバー250のうち巻き付け方向Pの範囲として芯材220が配置されている範囲と同じ範囲に設けられている。空気袋100は、空気の供給によって膨張し、空気の排出によって腕帯カバー250の面に沿った平面状に収縮する。空気袋100は、腕帯200が腕300に巻き付けられた状態(図1参照)で、腕300に近い内周側に配置された内周側袋体120と、腕300から遠い外周側に配置された外周側袋体110とが、図6に示すように積み重ねられた2層構造で形成されている。
外周側袋体110と内周側袋体120とは、図6に示すように、空気の入っていない収縮状態での平面視での、空気の入る領域の大きさは略同じであり、収縮状態では外周側袋体110の空気の入る領域と内周側袋体120の空気の入る領域とは平面視で略重なった状態となる。ただし、内周側袋体120は、空気の入る領域の他に、腕帯カバー250に縫合により接合される部分123が形成されているため、この接合される部分123の大きさだけ、外周側袋体110よりも平面視で大きく、接合される部分123は、平面視で外周側袋体110から突出している。
接合される部分123が腕帯カバー250に接合されることで、空気袋100が腕帯カバー250に対して位置ずれするのを防止している。なお、空気袋100が腕帯カバー250に対して位置ずれしないような構造が別に形成されている場合は、接合される部分123を備えなくてもよい。
また、内周側袋体120は、図7に示すように、接合される部分123と空気の入る領域とが溶着部127によって仕切られているため、空気の入る領域から接合される部分123に空気が出入りすることはない。また、接合される部分123は、空気が入っていない状態で全周が溶着されているため、空気が供給されて膨張することはない。
外周側袋体110と内周側袋体120とが互いに接する面には、それぞれ互いに対向する孔112,122が形成されている。そして、これら両孔112,122が重ね合わされた状態で、外周側袋体110の孔112の周囲の部分と内周側袋体120の孔122の周囲部分とが溶着されている。これにより、外周側袋体110の内部110aと内周側袋体120の内部120aとは、図8に示すように、両孔112,122のみを通じて連通している。
この外周側袋体110の孔112の周囲の部分と内周側袋体120の孔122の周囲部分とが全周に亘って溶着された円環状の溶着部122aは、外周側袋体110と内周側袋体120とを接合している唯一の部分である。つまり、外周側袋体110と内周側袋体120とは、溶着部122aのみによって接合されていて、その他の部分は接合されていない。溶着部122aは、例えば3[mm]程度の幅で形成されている。後述する他の溶着部についても同じ幅である。
なお、外周側袋体110には、図6に示すように、外周側袋体110の内部110aに通じる給排気ノズル118が形成されている。給排気ノズル118は、図2に示すように、腕帯カバー250の表布210に形成された孔211から突出し、この給排気ノズル118に、腕帯カバー250の外側でエアチューブ260(図1参照)に接続される。
そして、エアチューブ260を通じて空気を供給することで、外周側袋体110の内部110aに空気が供給されて外周側袋体110は膨張するとともに、両孔112,122を通じて内周側袋体120の内部120aにも空気が供給されて内周側袋体120も膨張する。一方、エアチューブを通じて空気を排出することで、外周側袋体110の内部110aの空気が排出されて外周側袋体110は収縮するとともに、両孔112,122を通じて内周側袋体120の内部120aの空気が排出されて内周側袋体120も収縮する。
次に、この空気袋100の構造について、詳細に説明する。図9A,9B,…,9Hは、空気袋100の製造工程の順にしたがった変化を示す模式図である。この空気袋100は、まず図9Aに示すように、外周側袋体110となる1枚のシート状部材110Aと、内周側袋体120の一部となるシート状部材120Aとが重ね合わされる。シート状部材110Aは、この1枚のシート状部材110Aを丸めて筒状にすることで、外周側袋体110を形成するものである。他方のシート状部材120Aは、内周側袋体120の、外周側袋体110に対向する面に相当するものであり、後述する他の1枚のシート状部材120Bと併せて、内周側袋体120を形成するものである。
重ね合わされたシート状部材110Aとシート状部材120Aとには、図9Bに示すように、これら両シート状部材110A,120Aを貫通する孔112,122が開けられる。続いて、図9Cに示すように、シート状部材110Aの孔112の周囲の部分と、シート状部材120Aの孔122の周囲の部分とが溶着され、この溶着された部分(溶着部122a)によって、シート状部材110Aとシート状部材120Aとは接合された状態となる。
次に、シート状部材110Aをシート状部材120Aとは反対側に丸めることで、図9Dに示すように、シート状部材110Aの、巻き付け方向Pに沿った両側縁114a,114b同士を重ね合わせ、この重ね合わされて両側縁114a,114b同士を溶着して接合する。これにより、シート状部材110Aは、巻き付け方向Pに沿って延びた筒状となる。ここで、両側縁114a,114b同士が溶着された溶着部114は、巻き付け方向Pに平行に延びている。
なお、「巻き付け方向Pに沿って」は、巻き付け方向Pに対して厳密に沿うものに限定されず、また、「巻き付け方向Pに平行に」は、巻き付け方向Pに対して厳密に平行であるものに限定されず、空気袋100として腕300の圧迫に影響がない範囲で、巻き付け方向Pにほぼ沿うものや、巻き付け方向Pにほぼ平行であるものを含む。このことは、後述する「幅方向D」についての「沿って」や「平行に」の表現についても同様で、幅方向Dにほぼ沿うものや、幅方向Dにほぼ平行なものであるものを含む。
次に、図9Eに示すように、シート状部材120Aと同じ大きさのシート状部材120Bを、図9Fに示すように、シート状部材120Aに重ね、図9Gに示すように、これら2枚のシート状部材120A,120Bの全周縁を溶着により接合する。また、内周側袋体120の、腕帯カバー250に接合される部分123を仕切る境界部(溶着部127)も、シート状部材120A,120Bを溶着により接合する。
これにより、2枚のシート状部材120A,120Bは、巻き付け方向Pに沿った両側縁の溶着部126,126と、巻き付け方向Pの一方の端縁の溶着部125と、接合される部分123との仕切りとなる溶着部127とによって、全周が囲まれた、空気が供給される内部空間を形成し、内周側袋体120を構成する。この状態では、内周側袋体120は、空気の入っていない潰された収縮状態となっていて、この収縮状態で、巻き付け方向Pに沿った両側縁の溶着部126,126は、シート状部材120A,120Bの接合により、接合せずに折り畳まれた折り目の部分に比べて硬化した部分となっている。
次に、図9Gに示すように筒状となったシート状部材110Aを、図9Hに示すように、収縮した状態の内周側袋体120に重なるように潰す。このとき、両側縁114a,114b同士が溶着された溶着部114は、巻き付け方向Pに沿った両側縁とは異なる位置となるように形成されている。これにより、外周側袋体110は、巻き付け方向Pに沿った両側縁は、シート状部材110Aが折り畳まれた折り目116,116とすることができる。
次いで、巻き付け方向Pの一方の端縁において重なり合ったシート状部材110Aの2つの部分同士を溶着して接合し、同じく他方の端縁において重なり合ったシート状部材110Aの2つの部分同士を溶着して接合する。これにより、1枚のシート状部材110Aは、巻き付け方向Pに沿った両側縁が折り畳まれた折り目116,116と、巻き付け方向Pの両端縁の溶着部115,115とによって、全周が囲まれた、空気が供給される内部空間を形成し、外周側袋体110を構成する。
以上のように構成された空気袋100は、外周側袋体110及び内周側袋体120に空気が入れられずに収縮した状態では、図8に示すように、収縮した外周側袋体110と収縮した内周側袋体120とは、平面視で、幅方向Dの両端縁の位置が一致した状態で、鉛直方向(腕300に腕帯200を巻き付けた状態での半径方向)に積み重なった状態となる。図10,11は、腕帯カバー250の内部に収容された収縮状態の空気袋の様子を模式的に表した要部模式図であり、図10は本実施形態の空気袋100を示し、図11は本発明が適用されない比較例の空気袋800を示す。
ここで、比較例の空気袋800は、外周側袋体810は本実施形態の空気袋100における外周側袋体110と同じであるが、内周側袋体820は本実施形態の空気袋100における内周側袋体120とは異なって、外周側袋体810(外周側袋体110)と同じ構造で形成されている。すなわち、内周側袋体820は、外周側袋体810と同様に1枚のシート状部材により形成されていて、内周側袋体820の、巻き付け方向Pに沿った両側縁が溶着されているのではなく、折り畳まれた折り目826となっている。
本実施形態の腕帯200は、図10に示すように、使用していない丸められた状態では空気袋100がだぶついて、半径方向の内側に突出した谷折り状の皺128が生じ易い。比較例の空気袋800を有する腕帯も同様であり、図11に示すように、使用していない丸められた状態では空気袋800がだぶついて、半径方向の内側に突出した谷折り状の皺828が生じ易い。
このとき、その谷折り状の皺828に隣接する両隣は、山折り状の折り目829,829となるが、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに沿った両側縁)は折り目826となっているため、この折り目826に山折り状の折り目829が重なった角830となり、角830には強い負荷が発生する。しかも、山折り状の折り目829では、内周側袋体820が外周側袋体810の内側にあるため、内周側袋体820の折り目829の角度は外周側袋体810の折り目829の角度よりも小さくなって、相対的に負荷が強くなる。この折り目829は、腕帯を使用する度に伸ばされるが、使用後に丸められた状態ではまた発生し、折り癖となる。したがって、使用頻度が高くなるにしたがって、疲労が発生し、耐久性が低下し易い。
これに対して、本実施形態の腕帯200においては、谷折り状の皺128に隣接する両隣は、山折り状の折り目129,129となるが、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに沿った両側縁)は折り目826ではなく溶着部126となっているため硬化し、折り目826よりも強度が強くなっている。したがって、溶着部126に山折り状の折り目129が重なって形成された角130は、2つの折り目同士が重なった角830とは異なり、角830ほどの強い負荷は発生しない。しかも、角130は角830よりも強度が強くなっているため、山折り状の折り目129における折り曲げ角度は折り目829における折り曲げ角度よりも大きくなり、疲労の程度も低下する。
このように、本実施形態の腕帯200は、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに沿った両側縁)に生じる負荷を、両側縁が折り目で形成された内周側袋体に比べて低減し、内周側袋体120の耐久性を向上させることができる。なお、図10,11においては、角130,830において、外周側袋体110,810の幅方向Dに沿って延びた折り目が表されているが、これは内周側袋体120と外周側袋体110とが重なっている様子を分かり易く記載したためであり、実際には、角130,830において、外周側袋体110,810の幅方向Dに沿って延びた折り目は、内周側袋体120,820の背面側に隠れて見えない。
本実施形態の腕帯200は、外周側袋体110の幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに沿った両側縁)は折り目116で形成されているが、外周側袋体110は、山折り状の折り目129において内周側袋体120の外側にある。そのため、外周側袋体110は、内周側袋体120よりも大きな円弧を描き、その山折り状態の折り目129における折り曲げ角度が、そもそも内周側袋体120の折り曲げ角度よりも大きくなり、内周側袋体120に比べて疲労の程度は少ない。
しかも、本実施形態の腕帯200は、内周側袋体120の角130が、山折り状の折り目829(比較例)における角830の折り曲げ角度よりも大きくなっているため、内周側袋体120の外側に配置されている外周側袋体110の山折り状態の折り目129は、折り曲げ角度が一層大きくなっていて、疲労の程度も一層低下している。したがって、外周側袋体110については、巻き付け方向Pに沿った両側縁は溶着部とする必要が無い。
なお、腕帯カバー250の内部に収容されている空気袋100は、その丸められたときの径が小さくなるにしたがって、だぶつき易くなるため、上述した皺128が形成され易くなる。特に、使用していない状態で腕帯カバー250(裏布240)の内径が、一般成人の腕300の太さより細い状態となる本実施形態の腕帯200は、使用していない状態で、皺128による山折り状の折り目129が常時発生し易い構造である。このような腕帯200において、本実施形態の腕帯200に用いた空気袋100は、耐久性を向上させる効果が一層顕著に発揮される。
また、本実施形態の腕帯200は、腕帯カバー250の内部に芯材220が設けられ、その芯材220から裏布240を保護するために、収容された芯材220と裏布240との間に、仕切り布230(仕切りシート)が設けられている。そのため、仕切り布230は裏布240よりも硬い材料で形成されているが、仕切り布230も、腕帯200を丸めた状態ではだぶつき易く、丸めた状態での半径方向内側に向けて突出する皺が形成され易い。しかも、仕切り布230は比較的硬いため皺も硬くなり、その硬い皺によって空気袋100が半径方向内側に押圧されて、空気袋100には、上述した皺128が一層発生し易くなる。
しかし、本実施形態の腕帯200は、上述した溶着部126,126によって、角130での耐久性が向上している、したがって、本実施形態の腕帯200は、このように仕切り布230によって皺128が形成されても、耐久性を向上させることができる。なお、本発明に係る腕帯は、仕切りシートを有しないものであってもよい。
また、本実施形態の腕帯200は、腕帯カバー250の内部に、丸まった状態の芯材220が設けられていることにより、被検者自身での腕帯200の装着を容易にしている。なお、本発明に係る腕帯は、芯材を有しないものであってもよい。
図12は、図6に示した空気袋100の、巻き付け方向Pに直交し、幅方向Dを含む面で切断した断面を示す、膨張状態における断面図である。本実施形態の腕帯200における空気袋100に、給排気ノズル118及びエアチューブ260を通じて空気が供給されると、図12に示すように空気袋100が膨張して、腕300を外方から圧迫する。
ここで、空気袋100は、外周側袋体110と内周側袋体120との2層構造となっていて、しかも、外周側袋体110と内周側袋体120とは外周縁よりも内側の部分、具体的には孔112,122の周囲の溶着部122aで接合されていて、外周縁は接合されていない。これにより、空気袋100は、膨張した状態で、外周側袋体110と内周側袋体120とが略独立した厚さ(図12において鉛直方向の厚さ)に膨らむ。したがって、空気袋100は、外周側袋体110の単独の厚さと内周側袋体120の単独の厚さとを積み重ねた厚さまで膨らむことができる。
一方、空気袋100が、仮に外周側袋体110と内周側袋体120とが外周縁で接合されたものである場合は、空気袋100が膨張したとき、外周側袋体110も内周側袋体120も、接合された外周縁が他方の袋体に引っ張られて膨らみが規制される。この結果、空気袋100は、外周側袋体110の単独の厚さと内周側袋体120の単独の厚さとを積み重ねた厚さまでは膨らまない。つまり、本実施形態における空気袋100は、2層に積み重ねられた外周側袋体110と内周側袋体120とが、外周縁で接合されていない構造により、膨張時の厚さを効果的に確保することができる。
そして、本実施形態の空気袋100の外周側袋体110は、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに平行な両側縁)がシート状部材110Aの折り目116で形成されているため、膨張したとき、図12に示すように、折り目116が大きく開く。つまり、膨張状態の外周側袋体110は、幅方向Dの両端の面が、折り目116によって絞られる(開きが制限される)ことなく、折り畳まれて重なっていた上面の部分と下面の部分とが略180[度]の角度で開いて一つの面を形成する。
一方、内周側袋体120は、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに平行な両側縁)は、溶着部126であるため、膨張したとき、図12に示すように、幅方向Dの両端の面が、溶着部126によって絞られた状態となり、180[度]未満の角度(図12においては90[度]程度)で交わる2つの傾斜面となる。したがって、図12における鉛直方向の寸法は、外周側袋体110よりも内周側袋体120の方が小さくなる。ここで、外周側袋体110は、幅方向Dの両端縁の折り目116が大きく開いているため、幅方向Dの位置ごとにおける鉛直方向の寸法に大きな差は無く、略均一な寸法となる。
外周側袋体110の図示の上面側(腕300に巻き付けられた状態での、外周側袋体110の半径方向の外側)は、腕帯カバー250の仕切り布230や表布210によって抑えられているため、外周側袋体110の膨張は、内周側袋体120を図示の下方(腕300に巻き付けられた状態での、腕帯200の半径方向の内側)に押圧する圧力となる。このとき、外周側袋体110は、上述したように幅方向Dの両端まで大きく膨張するため、外周側袋体110の図示下面が内周側袋体120の図示上面と接する幅方向Dの寸法D1を比較的大きく確保することができる。
これにより、外周側袋体110により内周側袋体120を介して腕300まで伝わる圧迫の範囲が、寸法D1のように広範囲になる。また、これにより、内周側袋体120も、外周側袋体110の圧迫によって幅方向Dに広がり、広範囲に腕300を圧迫し易くなる。
図13は、内周側袋体920が本実施形態の腕帯200の空気袋100における内周側袋体120と同じであり、外周側袋体910が本実施形態の空気袋100における外周側袋体110と異なる比較例の空気袋900を示す図12相当の断面図である。
比較例の腕帯の空気袋900は、図13に示すように、内周側袋体920が本実施形態の腕帯200の空気袋100における内周側袋体120と同じであり、溶着部926は溶着部126と同じである。また、比較例の空気袋900は、外周側袋体910が、空気袋100における外周側袋体110とは異なり、内周側袋体920と同様に、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに平行な両側縁)が溶着部926と同様に溶着された溶着部916である。
比較例の空気袋900の外周側袋体910は、幅方向Dの両端縁(巻き付け方向Pに平行な両側縁)が溶着部916であるため、膨張した状態で、内周側袋体920と同様に、幅方向Dの両端の面が、溶着部916によって絞られた状態となり、180[度]未満の角度(図13においては90[度]程度)で交わる2つの傾斜面となる。したがって、図13の外周側袋体910における幅方向Dの寸法は、外周側袋体910と内周側袋体920とは同程度となる。このため、外周側袋体910における圧迫範囲の寸法を、本実施形態の空気袋100と同程度の寸法D1で確保するためには、外周側袋体910の幅方向Dの寸法を大きくする必要がある。
そして、比較例の空気袋900の鉛直方向の寸法が、空気袋100と同程度まで膨張した状態では、外周側袋体910も内周側袋体920も、幅方向Dの両端が絞られているため、外周側袋体910の図示下面と内周側袋体920の図示上面とが接する幅方向Dの寸法D2が、実施形態の空気袋100における寸法D1よりも小さくなる。
したがって、本実施形態の空気袋100は、外周側袋体910及び内周側袋体920が共に、幅方向Dの両端縁が溶着された比較例の空気袋900に比べて、膨張状態における外周側袋体910と内周側袋体920との、幅方向Dにおける接触の寸法を大きくすることができ、幅方向Dにおいて、外周側袋体110が内周側袋体120を押下する荷重の均一性を高めることができる。この結果、内周側袋体120が腕300を圧迫するときの、幅方向Dにおける荷重の均一性を、比較例の空気袋900に比べて広い範囲で向上させることができ、腕300を適切に圧迫することができる。すなわち、本実施形態の腕帯200は、前述した耐久性の向上と腕300の適切な圧迫とを両立することができる。
また、本実施形態の腕帯200は、空気袋100が収縮した状態で、外周側袋体110と内周側袋体120とが幅方向Dの両端縁の位置が一致した状態となるため、外周側袋体110と内周側袋体120とが幅方向Dの両端縁の位置が一致せずにずれているものに比べて、空気袋100を収容する腕帯カバー250の幅を狭く形成することができる。
図14Aは、内周側袋体120の巻き付け方向Pに沿った長さの約2倍の長さを有する1枚のシート状部材120Cが折り畳まれて形成される内周側袋体120の例を示す模式図であり、図14Bは、内周側袋体120の幅方向Dに沿った長さの約2倍の長さを有する1枚のシート状部材120Dが折り畳まれて形成される内周側袋体120の例を示す模式図である。
本実施形態の腕帯200は、内周側袋体120が2枚のシート状部材120A,120Bにより形成されているが、3枚以上のシート状部材によって形成されていてもよいし、外周側袋体110と同様に1枚のシート状部材によって形成されていてもよい。
すなわち、例えば図14Aに示すように、内周側袋体120の巻き付け方向Pに沿った長さの約2倍の長さを有する1枚のシート状部材120Cを、その巻き付け方向Pの長さの中央部で、幅方向Dに平行な線で半分に折り返し、この折り返して得られた2枚重ねの部材の全周縁を、折り返した折り目も含めて溶着して、内周側袋体120を形成してもよい。なお、幅方向Dに平行な折り目については、溶着を行わずに折り目のままでもよい。
また、例えば図14Bに示すように、内周側袋体120の幅方向Dに沿った長さの約2倍の長さを有する1枚のシート状部材120Dを、その幅方向Dの長さの中央部で、巻き付け方向Pに平行な線で半分に折り返し、この折り返して得られた2枚重ねの部材の全周縁を、折り返した折り目も含めて溶着して、内周側袋体120を形成してもよい。
本実施形態の腕帯200は、空気袋100のうち内周側袋体120についてのみ、その巻き付け方向Pに沿った両側縁を溶着部126,126として、溶着されていない部分よりも硬化させたものであるが、この内周側袋体120の巻き付け方向Pに沿った両側縁は、接合によって硬化した部分であればよく、接合の種類としては、上述した溶着以外の接着や圧着など、他の接合を適用することもできる。
また、外周側袋体110は、2枚のシート状部材で構成することも可能である。例えば、図9(A)におけるシート状部材110Aが、幅方向Dの所定の位置から巻き付け方向Pに沿って右側部分と左側部分とに分離されていて、これらの2枚のシート状部材を巻き付け方向Pに沿って一部を重ね、重なり部分を溶着等により接合して一枚のシート状部材110Aを形成する。これにより、外周側袋体110を構成する2枚のシート状部材を用いて、図9に示した製造工程で空気袋100を製造することができる。この場合、幅方向Dの所定の位置は、外周側袋体110の孔112と折り目116を避けるとよい。
本実施形態の腕帯200は、被検者の腕300に巻き付けられるものであるが、本発明に係る腕帯は腕に巻き付けられるものに限定されない。すなわち、本発明に係る腕帯は手首に巻き付けられるものであってもよいし、指に巻き付けられるものであってもよい。
本実施形態の血圧計用の腕帯200は、流体袋の一例として空気の供給により膨張し、空気の排出により収縮する空気袋100を適用したものであるが、本発明に係る流体袋は空気袋に限定されるものではない。すなわち、本発明に係る流体袋は、空気以外の気体の供給により膨張し、その気体の排出により収縮する気体袋であってもよいし、水やその他の液体(ゲル状のものを含む)の供給により膨張し、その液体の排出により収縮する液体袋であってもよい。
図15は、巻き付け方向Pに沿った両側縁のうち一方の側縁だけが折り目116として形成された外周側袋体110を含む空気袋100の例を示す、図8相当の断面図である。
本実施形態の腕帯200の空気袋100は、外周側袋体110が、図8,9Hに示すように、収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁(幅方向Dの両端縁)の両方がシート状部材110Aの折り畳まれた折り目116,116であるが、本発明に係る腕帯は、外周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った2つの側縁が両方とも折り目である必要はない。
すなわち、本発明に係る腕帯は、外周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った両側縁のうち少なくとも一方の側縁が、シート状部材の折り畳まれた折り目であればよい。具体的には、空気袋100は、外周側袋体110が図15に示すように収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った両側縁のうち一方の側縁だけが、シート状部材110Aの折り畳まれた折り目116であってもよい。この場合、両側縁のうち折り目116でない他方の側縁は、シート状部材110Aを接合した部分(例えば、溶着部)117となっていてもよい。
図15に示した外周側袋体110は、巻き付け方向Pに沿った両側縁のうち、折り目116となっている側縁は、図12に示したものと同様の効果を発揮する。すなわち、図15に示した外周側袋体110は、図13に示した空気袋900と比較して、折り目116となっている側縁が腕300を広範囲に圧迫し易くなる。
図15に示した外周側袋体110によっても、血圧の測定の際に腕300を十分な範囲に亘って圧迫することができる。したがって、図15に示した外周側袋体110を本発明の一態様として採用することができる。
図16は、巻き付け方向Pに沿った両側縁のうち一方の側縁だけが溶着部126として形成された内周側袋体120を含む空気袋100の例を示す、図8相当の断面図である。
本実施形態の腕帯200の空気袋100は、内周側袋体120が、図8,9Gに示すように、収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁(幅方向Dの両端縁)の両方が、シート状部材120A,120Bの接合により硬化した部分(溶着部126)であるが、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った2つの側縁が両方とも接合部である必要はない。
すなわち、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った両側縁のうち少なくとも一方の側縁が、シート状部材の接合により硬化した部分であればよい。具体的には、空気袋100は、内周側袋体120が図16に示すように収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った両側縁のうち一方の側縁だけが、シート状部材の接合により硬化した部分(溶着部126)であってもよい。
この場合、両側縁のうち溶着部126でない他方の側縁は、シート状部材120A又はシート状部材120Bを折り畳んだ折り目137になっていてもよい。つまり、シート状部材120Aとシート状部材120Bとは、内周側袋体120の収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁のうち一方の側縁において接合されているとともに、他方の側縁とは異なる幅方向Dの位置において、巻き付け方向Pに沿って接合された溶着部136であってもよく、この場合、他方の側縁はシート状部材120Bの折り目137になる。
例えば、内周側袋体120の巻き付け方向Pに沿った2つの側縁のうち、仮に、一方の側縁だけに空気漏れが生じる傾向がある場合は、その空気漏れが生じる側縁だけを、図16に示すような溶着部126として形成することで、空気漏れの原因である折れ曲がりによる亀裂を防止することができる。
図17は巻き付け方向Pに沿った側縁の全長の一部分だけが溶着部126として形成された内周側袋体120を含む空気袋100の例を示す図である。
本実施形態の腕帯200の空気袋100は、内周側袋体120が、図9Gに示すように、2枚のシート状部材120A,120Bの全周縁を接合することで形成されているため、内周側袋体120が収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁は、いずれもその側縁の全長に亘って接合により硬化した部分(溶着部126)となっている。しかし、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った側縁の全長が、接合されて硬化している部分である必要はない。
すなわち、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った側縁の全長のうち少なくとも一部の長さ範囲が、接合により硬化した部分であればよい。具体的には、空気袋100、内周側袋体120が外周側袋体110と同様に1枚のシート状部材を筒状に丸めて端縁同士を接合して形成したものとすると、図17に示すように収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁が全長に亘って折り目137,137として形成されるものもあるが、このとき、2つの側縁の全長に亘る折り目137,137のうち一部分だけを、その折り目137,137の部分で重なっているシート状部材同士を接合した溶着部126として硬化させてもよい。
ここで、接合により硬化した部分となっているべき一部分は、実験的、経験的に、上述した皺128が形成される部分を含む部分として予め設定された部分である。例えば、内周側袋体120は、長手方向の一端部(接合された部分123)が腕帯カバー250に縫合されていて、丸まった状態になっても腕帯カバー250に対して巻き付け方向Pに移動できない。また、空気袋100には、図2に示すように、縫合されている部分(接合された部分123)から所定の長さの部分に、給排気ノズル118が設けられていて、給排気ノズル118は腕帯カバー250に形成された孔211から外側に突出するため、給排気ノズル118の部分も腕帯カバー250に対して移動できない。
このように、空気袋100は、接合された部分123と給排気ノズル118が設けられた部分とで腕帯カバー250に対して位置決めされているところ、腕帯カバー250が丸められると空気袋100も丸くなるが、空気袋100は上述したように腕帯カバー250に対して拘束されて移動ができないため、外周側袋体110よりも内周側袋体120は、この範囲で余剰部分ができ易くなり、皺128が形成され易い。したがって、溶着部126を形成する上述した「一部分」は、一例として、巻き付け方向Pの全長のうち、少なくとも、腕帯カバー250に接合された部分123と給排気ノズル118との間の部分を含めることができる。
また、空気袋100の巻き付け方向Pの他方の端部側は腕帯カバー250に拘束されていないが、その他方の端部と給排気ノズル118との間の部分も、経験的に皺128が形成され易いことが判明している。したがって、上述した「一部分」は、一例として、少なくとも、腕帯カバー250に縫合されていない他端部と、給排気ノズル118との間の部分を含めることができる。
図18は、巻き付け方向Pに沿った側縁よりも幅方向Dの内側に溶着部126が形成された内周側袋体120を含む空気袋100の例を示す、図8相当の断面図である。
本実施形態の腕帯200の空気袋100は、内周側袋体120が、図8,9Gに示すように、収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った2つの側縁(幅方向Dの端縁)が、シート状部材120A,120Bの接合により硬化した部分(溶着部126)であるが、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った2つの側縁そのものが接合部である必要はない。
すなわち、本発明に係る腕帯は、内周側袋体が、収縮した状態での巻き付け方向に沿った側縁よりも内周側袋体の幅方向の内側の、巻き付け方向に沿った部分の全部又は一部が、シート状部材の接合により硬化した部分であればよい。具体的には、空気袋100は、内周側袋体120が図18に示すように収縮した状態での巻き付け方向Pに沿った両側縁よりも幅方向Dの内側で、巻き付け方向Pに沿った部分が、シート状部材120A,120Bの接合により硬化した部分(溶着部126)であってもよい。この場合、溶着部126として接合された部分よりも、幅方向Dの外側の部分は、空気の入出がないため膨縮には寄与しない部分となる。
例えば、内周側袋体120の、幅方向Dにおける側縁の溶着位置が、側縁よりも外側にずれる可能性がある場合は、図18に示した溶着部126の位置で確実に溶着することも可能である。図18に示した内周側袋体120によっても、血圧の測定の際に腕300を十分な範囲に亘って圧迫することができる。したがって、図18に示した内周側袋体120を本発明の一態様として採用することができる。