JP7032965B2 - 反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤 - Google Patents

反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤 Download PDF

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Description

本発明は、NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質を抗原として含有する、反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤などに関連する。
ネオスポラ・カニナム(学名「Neospora caninum」、以下同じ)は、トキソプラズマ症の原因生物であるトキソプラズマ・ゴンディ(学名「Toxoplasma gondii」、以下同じ)に近似するがそれと区別されるアピコンプレックス門の新しい属・種の寄生原虫として1988年に同定された(非特許文献1)。
ネオスポラ・カニナムは、ステージに応じて、栄養型、組織シスト(被嚢)、オーシスト(接合子嚢)の三つの形態をとることが知られている。その生活環は、トキソプラズマ・ゴンディと近似し、概ね次の通りである。まず、中間宿主である反芻動物(草食動物)は、胞子形成オーシストで汚染された土壌・水・草などを摂取することで感染する。中間宿主が胞子形成オーシストを摂取すると、オーシストからタキゾイトと呼ばれる栄養型の虫体が出てきて中間宿主体内の様々な細胞内に侵入し、それらの宿主細胞内に「寄生胞」と呼ばれる細胞内小器官を形成する。タキゾイトは、宿主細胞内の寄生胞の中にdense granuleを分泌しつつ、寄生胞の中で無性生殖(分裂)により急速に増殖する。そして、細胞を破壊して細胞外へ移行し、新しい細胞へ侵入し、寄生胞を形成してその中で増殖をするというサイクルを繰り返す。次に、中間宿主がこの時期を耐過すると、中枢神経系・筋組織などの中に組織シスト(被嚢)を形成する。組織シスト内では、ブラディゾイトが無性生殖(内部出芽)によりゆっくりと増殖する。次に、終宿主である犬(肉食動物)がブラッディゾイトを含む肉を経口摂取すると、組織シストからブラッディゾイトが遊離して腸管上皮に侵入し、数回の無性生殖を行った後、腸の内皮細胞内で雌性・雄性の配偶子が形成され、有性生殖により両者が融合し、オーシストが形成される。オーシストは、未成熟のまま糞便とともに、外界へ排出された後、短時間で胞子を形成する。
また、中間宿主の妊娠個体が胞子形成オーシストで汚染された土壌・水・草などを摂取して感染すると、タキゾイトが胎盤を通過し、胎仔が感染する。
中間宿主である反芻動物のネオスポラ症は、主に、胞子形成オーシストの摂取により感染し、タキゾイトの増殖・移動により発症する。流産を主要症状とし、死産、ミイラ胎仔、新生仔の神経症状などがみられることもある。1989年以降、北米・南米、欧州、アフリカ、オーストラリアなど、世界中で発生が報告されており、米国・ニュージーランド・オランダなどでは、乳用牛の流産の主原因と考えられている。
終宿主である犬のネオスポラ症は、主に、組織シスト(被嚢)の摂取により感染し、遊離したブラッディゾイトの増殖・侵入により発症する。6か月齢以下の子犬での発症報告が多く、その主な感染経路は先天感染、即ち、遊離したブラッディゾイトが親犬から子犬へ移動・侵入(垂直感染)することによると考えられている。発症個体は、運動失調、麻痺、まれに皮膚炎などの症状を呈する。
これまで、牛のネオスポラ症を対象に、ネオスポラ原虫に対するワクチン開発が試みられている。しかし、現時点で、自然感染牛に対するワクチンの効果は実証されていない。
近年、ネオスポラ・カニナムで発現するタンパク質のうち、ワクチン抗原として有用な可能性のあるものの探索・同定・解析が試みられており、いくつかのタンパク質に関する知見が報告されている。
そのうち、NcGRA7(Dense granule protein 7)は、NCDG1とも呼ばれ、ネオスポラ・カニナムのタキゾイトから寄生胞内部へ分泌されるdense granuleに関連する33kDaのタンパク質であり、トキソプラズマ・ゴンディのdense granule proteinに類似する(非特許文献2参照)。近年、NcGRA7がシスト壁にも関与していることが報告されている。また、NcGRA7は、ネオスポラ・カニナムに自然に又は実験的に感染した動物で、強い免疫応答を誘導することが知られている(非特許文献2参照)。
NcGRA7のコード遺伝子はクローン化され、Gen Bankに登録されている(Accession No.U82229、非特許文献3参照)。NcGRA7を構成する217個のアミノ酸残基中、1番目から27番目までがシグナルペプチド、28番目から138番目までの111アミノ酸が細胞外ドメイン、139番目から157番目までの19アミノ酸が膜貫通性領域、158番目から217番目までの60アミノ酸が細胞内ドメインとされている。
特許文献1には、マンノース糖残基を表面に有するリポソームにNcGRA7を封入した、ネオスポラ・カニナムに対するワクチン製剤が開示されている。その他、非特許文献4には、マウス腹腔マクロファージに完全長NcGRA7及び膜貫通領域欠損型NcGRA7を作用させたところ、完全長NcGRA7では、IL-6、IL-12、一酸化窒素の産生誘導が認められたのに対し、膜貫通領域欠損型NcGRA7ではその活性は認められなかったことが記載されている。
国際公開WO2010/032408 Dubey JP, Carpenter JL, Speer CA, Topper MJ, Uggla A. "Newly recognized fatal protozoan disease of dogs." J Am Vet Med Assoc. 1988 May 1;192(9):1269-85. Alvarez-Garcia G, Pitarch A, Zaballos A, Fernandez-Garcia A, Gil C, Gomez-Bautista M, Aguado-Martinez A, Ortega-Mora LM. "The NcGRA7 gene encodes the immunodominant 17 kDa antigen of Neospora caninum." Parasitology. 2007 Jan;134(Pt1):41-50. Nicola Lally, Mark Jenkins, Susan Liddell, J.P. Dubey, "A dense granule protein(NCDG1) gene from Neospora caninum" Molecular and Biochemical Parasitology 87(1997)239-243. 西川義文、西村麻紀、亀山響子、玄学南、古岡秀文、「Neospora caninum dense granule protein 7の病態生化学的解析」、日本獣医学会 第154回日本獣医学会学術集会 講演要旨集 C-39、2012年9月14日~16日。
本発明では、簡易かつ安価に生産でき、有効性も高い、ネオスポラ・カニナムに対するワクチンを提供することなどを目的とする。
本発明者らは、従来の技術常識(非特許文献4参照)に反し、NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質が、免疫原性を有し、ネオスポラ・カニナムに対するワクチンとしての安全性及び有効性も高いことを新規に見出した。
そこで、本発明では、NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質を抗原として含有する、反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤などを提供する。
ネオスポラ・カニナムは、中間宿主である反芻動物などにおいて、タキゾイトの形態となる。また、上述の通り、NcGRA7は、タキゾイトなどのステージで高発現する。それに対し、NcGRA7の細胞外ドメインと細胞内ドメインとを連結した合成タンパク質は、高い免疫原性を有し、ネオスポラ・カニナムのタキゾイトに対する予防効果も高い。従って、本発明に係るワクチン製剤は、反芻動物のネオスポラ感染症に対し、ワクチンとしての有効性が高い。
加えて、NcGRA7の細胞外ドメインと細胞内ドメインとを連結した合成タンパク質は、疎水性の高い膜貫通性領域などが除外されているため、そのタンパク質の人為的な発現及び精製を簡易かつ定常的に行うことができる。従って、本発明には、この製剤を比較的簡易かつ安価に生産できるという有利性がある。
本発明により、簡易かつ安価に生産でき、有効性も高い、ネオスポラ・カニナムに対するワクチンを提供できる。
<本発明に係るワクチン製剤について>
本発明は、NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質を抗原として含有する、反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤を全て包含する。
上述の通り、NcGRA7は、217個のアミノ酸で構成され(配列番号1参照)、そのアミノ酸配列中に、N末端側から順に、シグナルペプチド領域、細胞外ドメイン、膜貫通性領域、細胞内ドメインを有し、構成するアミノ酸残基中、1番目から27番目までがシグナルペプチド、28番目から138番目までの111アミノ酸が細胞外ドメイン、139番目から157番目までの19アミノ酸が膜貫通性領域、158番目から217番目までの60アミノ酸が細胞内ドメインとされている。
本発明で抗原として用いる合成タンパク質は、原則的には、NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を少なくとも含有していればよく、シグナルペプチド領域も除外された配列であってもよい。また、必要な免疫原性が保持されている限り、その細胞外ドメイン及び/又は細胞内ドメインのアミノ酸配列の一部が欠失、置換、付加されている場合も、本発明に係る合成タンパク質に広く包含される。合成タンパク質中の細胞外ドメイン及び細胞内ドメインに対応する領域のアミノ酸配列は、90%以上の相同性を有していることが好適であり、95%以上がより好適であり、99%以上が最も好適である。
この合成タンパク質において、前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインとがリンカー配列を介して連結されていてもよい。リンカー配列の長さは特に限定されないが、例えば、1~18アミノ酸、より好適には2~15アミノ酸、最も好適には、2~10アミノ酸にしてもよい。リンカー配列中の各アミノ酸は、その合成タンパク質の免疫原性、発現性などに影響がない限り、それぞれ任意のものを採用でき、特に限定されない。例えば、リンカー配列がグリシンの連続した配列であってもよい。
この合成タンパク質の生産手段は、公知の方法を広く採用でき、狭く限定されない。
例えば、用いる合成タンパク質のアミノ酸配列及びそれをコードする遺伝子配列を設計し、遺伝子工学的方法により、その合成タンパク質をコードするDNAを作製し、それを発現ベクターに挿入又は連結し、その組換え発現ベクターを用いて、大腸菌・酵母などの微生物、動物細胞、植物などに目的の合成タンパク質の遺伝子を導入して形質転換し、そのタンパク質を発現させ、調製することにより、この合成タンパク質を生産してもよい。
目的の合成タンパク質をコードするDNAは、公知の方法、例えば、PCR法を用いた方法により作製することができる。例えば、第一ステップで、公知のNcGRA7遺伝子DNAを鋳型として、適切なプライマーを用いたPCR法により、それぞれ3'末端側に重複配列を含む細胞外ドメイン、及び、5'末端側に重複配列を含む細胞内ドメインのコードDNAを合成・増幅させ、第二ステップで、両コードDNAの混合物を鋳型とし、PCR法により、細胞外ドメインのコードDNAと細胞内ドメインのコードDNAとを連結したDNAを合成・増幅させることで、目的の合成タンパク質をコードするDNAを作製できる。例えば、第二ステップにおいて、適切なプライマーを用いたPCR法により、目的の合成タンパク質をコードするDNAの両端にそれぞれ制限酵素の認識配列が含まれるように、DNAを合成・増幅させてもよい。
目的の合成タンパク質作製のための発現ベクターは、例えば、公知の発現ベクターに、目的の合成タンパク質をコードするDNAを挿入又は連結させることにより、作製することができる。DNA挿入・連結には、公知の方法、例えば、公知のライゲーション技術を採用してもよく、また、その際、公知の適切な制限酵素で両DNAを予め処理してから、ライゲーションなどを行ってもよい。
発現ベクターとしては、公知のもの、例えば、プラスミドベクター、ウイルスベクターなどを広く採用でき、特に限定されない。例えば、プラスミドベクターとして、大腸菌由来のプラスミド(例えば、pBR322、pBR325、pUC18、pUC119、pTrcHis、pBlueBacHisなど)、枯草菌由来のプラスミド(例えば、pUB110、pTP5など)、ブレビバチルス菌由来のプラスミド(例えば、pBICなど)、酵母由来のプラスミド(例えば、YEp13、YEp24、YCp50、pYE52など)、植物細胞宿主用プラスミド(例えば、pBI221、pBI121など)を、ウイルスベクターとして、λファージ、動物用ウイルスベクター(例えば、レトロウイルスベクター、アデノウイルスベクターワクシニアウイルスベクターなど)、昆虫用ウイルスベクター(例えば、バキュロウイルス、など)を用いてもよい。
発現ベクターを導入して形質転換する際の宿主は、採用した発現ベクターに適したものであればよく、公知のものを広く採用でき、狭く限定されない。例えば、大腸菌(学名「Escherichia coli」)などの大腸菌属、「Bacillus subtilis(学名)」などのバチルス属、「Brevibacillus choshinensis(学名)」などのBrevibacilus属、「Pseudomonas putida(学名)」などのシュードモナス属、「Rhizobium meliloti(学名)」などのリゾビウム属などの細菌、サッカロミセス・セレビシエ(学名「Saccharomyces cerevisiae」)、「Schizosaccharomyces pombe(学名)」などの酵母、麹菌(学名「Aspergillus oryzae」)、COS細胞、CHO細胞などの動物細胞、Sf9、Sf21などの昆虫細胞などを採用してもよい。
発現ベクター中のプロモータは、公知のものを広く採用できる。例えば、大腸菌などを宿主とする場合、T7プロモータ、lacプロモータ、trpプロモータ、trcプロモータ、tacプロモータ、λファージのPRプロモータ、PLプロモータ、T5プロモータなど、酵母を宿主とする場合、gal1プロモータ、gal10プロモータ、ヒートショックタンパク質プロモータ、MFα1プロモータ、PHO5プロモータ、PGKプロモータ、GAPプロモータ、ADHプロモータ、AOX1プロモータなど、麹菌を宿主とする場合、GlaA プロモータ、AmyB プロモータ、No.8プロモータなどを、採用してもよい。
また、発現ベクターには、プロモータのほか、エンハンサーなどのシスエレメント、スプライシングシグナル、ポリA付加シグナル、形質転換マーカー遺伝子(例えば、ジヒドロ葉酸還元酵素遺伝子、アンピシリン耐性遺伝子、ネオマイシン耐性遺伝子、カナマイシン耐性遺伝子、ハイグロマイシン耐性遺伝子、ビアラフォス耐性遺伝子、カルボキシン耐性遺伝子、フレオマイシン耐性遺伝子など)、リボソーム結合配列(SD配列)などが含まれていてもよい。
発現ベクターを導入して宿主を形質転換した後、その宿主を培養することにより、目的の合成タンパク質が生産される。培養後、目的の合成タンパク質が菌体内又は細胞内に生産される場合には、菌体又は細胞を破砕することによりそのタンパク質を抽出する。目的の合成タンパク質が菌体外又は細胞外に生産される場合には、培養液をタンパク質溶液としてそのまま使用するか、遠心分離等により菌体又は細胞を除去して使用する。
得られた合成タンパク質を、公知の生化学的方法で精製してもよい。例えば、硫酸アンモニウム沈殿、SDS-PAGE、ゲルクロマトグラフィー、イオン交換クロマトグラフィー、疎水クロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィーなどを単独で又は適宜組み合わせて採用することにより、目的の合成タンパク質を単離精製することができる。
本発明では、上述の合成タンパク質がリポソームに封入されていてもよい。
リポソームを構成する脂質は、リポソームを構成することが知られている通常の脂質であればよく、公知のものを広く採用できる。例えば、卵黄、大豆、その他の動植物などの天然物由来の脂質、これらを水素添加によって不飽和度を低下したもの、化学合成したもののいずれも採用でき、また、これらを単独で又は複数組み合わせて使用してもよい。
例えば、リポソームの膜構成成分がリン脂質であってもよい。リン脂質の脂肪酸残基は、天然物由来、合成品由来のいずれのものでもよく、混合脂肪酸、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、重合性脂肪酸などに由来する炭素数4~30のものを適宜採用可能である。飽和脂肪酸由来のものとしては、炭素数12~24のものが好ましく、例えばラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸などを含有するものを採用してもよい。不飽和脂肪酸由来のものとしては、炭素数14~22、不飽和結合1~6のもの、例えばオレイン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキドン酸などを含有するものを採用してもよい。また、アミノ基を有するリン脂質として、天然物由来のものとしては卵黄又は大豆由来のもの、例えば、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン又はホスファチジルスレオニン、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン、ジパルミトイルホスファチジルコリン、大豆レシチン、卵黄レシチン、ホスファチジルグリセロールなどを採用してもよい。
また、例えば、リポソームの膜構成成分がステロール類、脂肪酸、脂肪酸塩などであってもよい。具体的には、コレステロール(Chol)、3β-[N-(ジメチルアミノエタン)カルバモイル]コレステロール(DC-Chol)、N-(トリメチルアンモニオエチル)カルバモイルコレステロール(TC-Chol)などのステロール類、ジパルミトイルホスファチジルエタノールアミン(DPPE)、ジステアロイルホスファチジルエタノールアミン(DSPE)などのホスファチジルエタノールアミン類、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC)などのホスファチジルコリン類、ジパルミトイルホスファチジルセリン(DPPS)、ジステアロイルホスファチジルセリン(DSPS)などのホスファチジルセリン類、ジパルミトイルホスファチジン酸(DPPA)、ジステアロイルホスファチジン酸(DSPA)などのホスファチジン酸類などを適宜採用してもよい。
リポソームへの合成タンパク質の封入手段は、公知のものを広く採用できる。例えば、リン脂質を有機溶媒に溶解し、合成タンパク質溶液を加え、撹拌・混合することで、合成タンパク質の封入されたリポソームを作製してもよい。また、整粒装置などで、形状・粒径などを整えてもよい。
リポソームは、多層タイプ、単層タイプのいずれでもよい。リポソームの粒径は特に限定されないが、0.1~3μmが好適であり、0.2~2.5μmがより好適である。リポソームの粒径は、用いられる投与形態に応じて、例えば、所定の孔サイズのフィルターにより濾過することにより、調整することができる。
前記リポソームが、表面にオリゴ糖を有していてもよい。リポソーム表面にオリゴ糖を存在させることにより、リポソームが抗原提示細胞表面の糖鎖認識受容体と結合可能となるため、封入されたタンパク質がより抗原提示細胞に取り込まれやすくなる可能性がある。
リポソーム表面に存在させるオリゴ糖を構成する糖残基として、例えば、D-マンノース(D-Man)、L-フコース(L-Fuc)、D-アセチルグルコサミン(D-GlcNAc)、D-グルコース(D-Glc)、D-ガラクトース(D-Gal)、D-アセチルガラクトサミン(D-GalNAc)、D-ラムノース(D-Rha)などが挙げられる。
リポソーム表面に存在させるオリゴ糖として、D-マンノースを含む糖残基から成るハイマンノースタイプであることが好適であり、D-マンノースから成るもの、又はD-マンノースとD-アセチルグルコサミンとからなるものがより好適であり、D-マンノースのみから成るものが最も好適である。D-マンノースから成るオリゴ糖として、例えば、マンノビオース(Man2)、マンノトリオース(Man3)、マンノテトラオース(Man4)、マンノペンタオース(Man5)、マンノヘキサオース(Man6)、マンノヘプタオース(Man7)などが挙げられる。
オリゴ糖を構成する糖残基の数は2~11が好適であり、3~8がより好適であり、3~5が最も好適である。また、オリゴ糖を構成する各糖残基の結合は、特に限定されず、α1→2結合、α1→3結合、α1→4結合、α1→6結合、β1→4結合などのものを採用可能である。また、各糖残基は直鎖状に形成されていてもよいし、分岐構造であってもよい。
リポソームへのオリゴ糖の導入は、公知の方法で行うことができる。例えば、アミノ基を有するリン脂質を採用し、リン脂質中のアミノ基とオリゴ糖中のアルデヒド基とを反応させてシッフ塩基を形成し、そのシッフ塩基を還元することにより、人工糖脂質を調製する。この人工糖脂質を用いてリポソームを形成することにより、リポソームにオリゴ糖を導入できる。
本発明に係るワクチン製剤は、少なくとも上述の合成タンパク質を抗原として含有していればよい。また、例えば、その合成タンパク質がリポソームに封入されていてもよく、さらに、そのリポソームが表面にオリゴ糖を有していてもよい。
このワクチン製剤には、目的・用途などに応じて、緩衝剤、等張化剤、無痛化剤、防腐剤、抗酸化剤などを適宜添加してもよい。
緩衝剤の好適な例として、例えば、リン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、クエン酸塩等の緩衝液などを用いることができる。
等張化剤の好適な例として、例えば、塩化ナトリウム、グリセリン、D-マンニトールなどを用いることができる。
無痛化剤の好適な例として、例えば、ベンジルアルコールなどを用いることができる。
防腐を目的とした薬剤の好適な例として、例えば、チメロサール、パラオキシ安息香酸エステル類、フェノキシエタノール、クロロブタノール、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール、デヒドロ酢酸、ソルビン酸、その他、各種防腐剤、抗生物質、合成抗菌剤などを用いることができる。
抗酸化剤の好適な例として、例えば、亜硫酸塩、アスコルビン酸などを用いることができる。
その他、この薬剤には、補助成分、例えば、保存・効能の助剤となる光吸収色素(リボフラビン、アデニン、アデノシンなど)、安定化のためのキレート剤・還元剤(ビタミンC、クエン酸など)、炭水化物(ソルビトール、ラクトース、マンニトール、デンプン、シュークロース、グルコース、デキストランなど)、カゼイン消化物、各種ビタミンなどを含有させてもよい。
ワクチン製剤の剤型などについては、公知のものを採用でき、特に限定されない。例えば、液体製剤として用いてもよい。
このワクチン製剤には、公知のアジュバントを添加してもよい。公知のアジュバントとして、例えば、動物油(スクアレンなど)又はそれらの硬化油、植物油(パーム油、ヒマシ油など)又はそれらの硬化油、無水マンニトール・オレイン酸エステル、流動パラフィン、ポリブテン、カプリル酸、オレイン酸、高級脂肪酸エステルなどを含む油性アジュバント、PCPP、サポニン、グルコン酸マンガン、グルコン酸カルシウム、グリセロリン酸マンガン、可溶性酢酸アルミウム、サリチル酸アルミニウム、アクリル酸コポリマー、メタクリル酸コポリマー、無水マレイン酸コポリマー、アルケニル誘導体ポリマー、水中油型エマルジョン、第四級アンモニウム塩を含有するカチオン脂質などの水溶性アジュバント、水酸化アルミニウム(ミョウバン)、水酸化ナトリウムなどの沈降性アジュバント、コレラ毒素、大腸菌易熱性毒素などの微生物由来毒素成分、その他、ベントナイト、ムラミルジペプチド誘導体、インターロイキンなどが挙げられる。また、これらを混合したものでもよい。
その他、このワクチン製剤は、他の疾患に対する一又は複数のワクチンとの混合ワクチン製剤であってもよい。
<本発明に係るワクチン製剤製造のための合成タンパク質の使用について>
本発明は、ワクチン製剤製造のための、上述の合成タンパク質の使用をすべて包含する。
ワクチン製剤製造のために、上述の合成タンパク質を使用することにより、反芻動物のネオスポラ感染症に対する有効性の高いワクチン製剤を比較的簡易、安価かつ大量に製造できる。
<本発明に係るネオスポラ感染症予防・治療方法について>
本発明は、上述のワクチン製剤を投与する処置を少なくとも含むネオスポラ感染症の予防・治療方法をすべて包含する。
本発明は、ネオスポラ・カニナム感染症に対する予防・治療に適用できる。例えば、中間宿主である牛・羊・山羊などの反芻動物、終宿主である犬などの食肉動物など、ネオスポラ・カニナムに感染しうる非ヒト動物に適用可能である。上述の通り、本発明に関連するNcGRA7は、タキゾイトなどのステージで高発現することが知られている。そのため、本発明は、ネオスポラ・カニナムがタキゾイトの形態で存在する中間宿主(牛などの反芻動物など)に対する感染症の予防に特に有用性が高い。牛などの反芻動物では、ネオスポラ・カニナム感染による流産、死産、ミイラ胎仔、新生仔の神経症状などが発生している。これに対し、例えば、本発明に係るワクチン製剤を、牛などの反芻動物の妊娠前又は妊娠中の雌個体に投与することにより、これらの症状を有効に予防できる。
このワクチン製剤を、例えば、液剤を皮下・皮内・筋肉・静脈注射などにより投与してもよい。投与量は、動物種・投与経路などにより異なり、特に限定されないが、例えば、抗原量(合成タンパク質のタンパク量)が、一回当たり1μg~100,000μgの範囲であってもよい。投与回数は、特に限定されないが、1回又は1週間~3カ月間隔で数回が好適である。また、1年に1回以上の投与が好適である。
実施例1では、NcGRA7の細胞外ドメインと細胞内ドメインを、リンカーを介して連結した合成タンパク質を作製した。
pGEX-4Tベクターに組み込まれたNcGRA7コード配列(配列番号1)を鋳型とし、配列番号2のcDNAをフォワードのプライマー、配列番号3のcDNAをリバースのプライマーとして、PCRを行うことにより、NcGRA7の細胞外ドメインのコードDNAを増幅した。市販のDNA精製カラムを用いて、PCR産物を精製した。なお、フォワードのプライマー(配列番号2)の先頭部分には、pBIC2へクローニングするための15塩基の配列が、リバースのプライマー(配列番号3)の末尾部分には5つのグリシンを連結するための15塩基の配列が、それぞれ付加されている。
また、pGEX-4Tベクターに組み込まれたNcGRA7コード配列(配列番号1)を鋳型とし、配列番号4のcDNAをフォワードのプライマー、配列番号5のcDNAをリバースのプライマーとして、PCRを行うことにより、NcGRA7の細胞内ドメインのコードDNAを増幅した。市販のDNA精製カラムを用いて、PCR産物を精製した。なお、フォワードのプライマー(配列番号4)の先頭部分には5つのグリシンを連結するための15塩基の配列が、リバースのプライマー(配列番号5)の末尾部分にはpBIC2へクローニングするための15塩基の配列が、それぞれ付加されている。
次に、両PCR産物の混合DNAを鋳型とし、配列番号2のcDNAをフォワードのプライマー、配列番号5のcDNAをリバースのプライマーとして、再度、PCRを行うことにより、NcGRA7の細胞外ドメインと細胞内ドメインを連結した合成タンパク質のコードDNAを増幅した。市販のDNA精製カラムを用いて、PCR産物を精製した。なお、得られたPCR産物は、5'末端側から順に、(1)pBIC2へクローニングするための15塩基の配列、(2)NcGRA7の細胞外ドメインのコード配列、(3)リンカーのコード配列、(4)NcGRA7の細胞内ドメインのコード配列、(5)pBIC2へクローニングするための15塩基の配列、となっている。
次に、Brevibacillus Expression System(タカラバイオ株式会社製)を用いて、付属プロトコルに従い、目的タンパク質の発現プラスミドを構築した。PCR産物と直鎖状ベクターpBICとを混合後、Brevibacillus Competent Cellsに形質転換し、TMNm寒天プレートに播種した。なお、TMNm寒天培地プレートは、ポリペプトン 10.0g/L、カツオエキス 5.0g/L、酵母エキス 2.0g/L、FeSO4・7H20 10.0mg/L、MnSO4・4H20 10.0mg/L、ZnSO4・7H20 1.0mg/Lに調製し、水酸化ナトリウムを加えてpH7.0に調整し、Bacto Agarを1.5%加え、高圧蒸気滅菌後にグルコース 10.0g/L、ネオマイシン 50mg/Lを添加し、作製した。
TMNm寒天プレート上のシングルコロニーを、TMNm液体培地1mL中に植菌し、37℃で15~18時間培養後、菌体を集め、プラスミド抽出キットを用いて、その発現プラスミドを抽出した。制限酵素を用いて発現プラスミド中にインサートが含まれていることを確認した後、シーケンス解析を行い、プラスミドのインサート部分に、目的の遺伝子配列(5'末端側から、NcGRA7の細胞外ドメインのコード配列、リンカーのコード配列、NcGRA7の細胞内ドメインのコード配列の順で連結された配列。配列番号6参照。)が挿入されていることを確認した。
次に、その発現プラスミドでBrevibacillus Competent Cellsを形質転換し、TMNm寒天プレートに播種し、37℃で一晩培養した後、TMNm寒天プレート上のシングルコロニーを、TMNm液体培地5mL中に植菌し、前培養として、30℃、120rpmで24~48時間振盪培養した。培養液の一部を採取してSDS-PAGEにより目的タンパク質の発現を確認した。次に、本培養として、2LコルベンフラスコにTMNm液体培地を800mL入れ、そこに前培養液を0.1~0.5%濃度添加し、30℃、120rpmで48~72時間振盪培養した。培養液の一部を採取してSDS-PAGEに供し、目的の合成タンパク質の発現を確認した。残りの培養液を遠心分離(8,500rpm、15min、4℃)して菌体を分離し、培養上清を4℃で保存した。
次に、培養上清を、1.2μm濾過膜(PALL社製、製品番号「KA1J012P1」)及び0.45μm濾過膜(PALL社製、製品番号「KA1DBLP1」)に透過させ、菌体を除去した後、3kDa限外濾過膜(Pellicon XL)で10倍濃縮し、10kDa透析膜を用いて、20mMクエン酸バッファー(pH3.0)でバッファー置換した。付属プロトコルに従い、得られた溶液を、強イオン交換カラム(「HiTrap SP FF」、GEヘルスケア社製)に通して合成タンパク質を吸着させた後、0M、0.1M、0.3M、0.5M、0.7M、1.0Mの6段階のNaClを溶解した各20mMクエン酸バッファー(pH3.0)を順にアプライして溶出させ、それぞれの溶出画分を個別に回収した。回収した各画分をSDS-PAGEに供し、目的の合成タンパク質のバンドが検出された画分について、10kDa遠心濃縮チューブ(「Centriprep」、ミリポア社製)で5mg/mL以上に濃縮した後、10kDa透析膜を用いて、PBS(-)にバッファー置換し、4℃又は-80℃で保存した。以下、得られた、NcGRA7の細胞外ドメインと細胞内ドメインをリンカーを介して連結した合成タンパク質を、「DM1-L-DM2」とする。DM1-L-DM2の配列を配列番号7に記述した。
実施例2では、実施例1で得られた合成タンパク質DM1-L-DM2をOML(オリゴマンノースリポソーム)へ封入した。
マンノトリオース(Man(α1→6)[Man(α1→3)]Man)2.5~5mgに蒸留水600μLを加えて撹拌溶解したオリゴ糖溶液600μmg/mLに、DPPE溶液9.4mL及びNaBH3CN溶液1mLを加え、撹拌混合し、混合液を60℃で16時間インキュベートした後、シリカゲルカラム及びC18逆相カラムで精製し、人工糖脂質Man3-DPPEを得た。
300nmol(0.353mg)のMan3-DPPE、3,000nmol(2.2mg)のDPPC、3,000nmol(1.159mg)のコレステロールを、それぞれクロロホルム/メタノール(2:1)溶液に溶解し、各溶液を混合してからその混合液に窒素ガスを吹き付け、されに簡易型真空乾燥で減圧乾燥させ、乾燥固結させた。その混合物をブタノール85μLに溶解し、72℃で10分間撹拌し、溶液が透明になったら、撹拌を続けながら45℃まで温度を下げた。
そこに、45℃で撹拌したまま、実施例1で得られた合成タンパク質DM1-L-DM2を400μL(5mg/mL)、ゆっくりと滴下した後、さらに45℃で10分間撹拌を続け、次に室温で10分間ボルテックスした後、4℃で10分間、静置した。そして、遠心分離(14,600g、30分間、4℃)により、DM1-L-DM2の封入されたリポソームを回収し、PBSで6回洗浄した後、4℃で保存した。
実施例3では、実施例2で調製したDM1-L-DM2封入リポソームの免疫原性を検討した。
感作抗原で再刺激されたT細胞からインターフェロンγが分泌されることが知られている。この現象を利用して、合成タンパク質封入リポソームで免疫したマウスから脾細胞を採取し、その脾細胞(T細胞)を感作抗原で刺激した際に、その脾細胞(T細胞)からインターフェロンγが分泌されるかどうかを、ELISpot法で測定することにより、免疫原性を調べた。
実施例2で調製したDM1-L-DM2封入リポソームを、BALB/cマウスに、一回当たりタンパク量で5μgずつ、一週間間隔で計三回、皮下投与して免疫した後、最終投与から五日後に、脾臓を摘出してホモジネートし、RPMI1640培地で懸濁して、脾細胞懸濁液を得た。
捕捉抗体(抗インターフェロンγ抗体)を底面に固定化したウエルに脾細胞懸濁液を50,000cells/wellになるように入れ、細胞への刺激として、合成タンパク質DM1-L-DM2を最終濃度2.5μg/mLになるように、若しくはNcGRA7全長のGSTタグ付き合成タンパク質を最終濃度5μg/mLになるように添加し、37℃で48時間インキュベートした後、洗浄により細胞を除去した。なお、各合成タンパク質の添加量は、そのモル数が同じになるように調整した。次に、ビオチン化された検出抗体(ビオチン化抗インターフェロンγ抗体)を添加して2時間静置し、酵素標識ストレプトアビジンを添加して1時間静置し、基質を添加して30分間静置した。そして、インターフェロンγを分泌した細胞の位置に形成されたスポットの数を測定した。
なお、陰性対照では、免疫していないマウスから採取した脾細胞を用いて、同様の手順で実験を行った。また、陽性対照では、免疫時において、実施例2と同様の手順でリポソームに封入されたNcGRA7全長のGSTタグ付き合成タンパク質を、一回当たり11.5μg(タンパク量)ずつ皮下投与し、同様の手順で実験を行った。その際、免疫時に投与した一回当たりのタンパク量を、DM1-L-DM2封入リポソームで免疫した場合のタンパク量と、そのモル数が同じになるように調整した。
結果を図1に示す。図1は、ELISpot法による測定結果であり、感作抗原刺激によってインターフェロンγを分泌した細胞数の相対量を示すグラフである。同グラフ中の「DM1-L-DM2」は、脾細胞への刺激として合成タンパク質DM1-L-DM2を添加した場合の結果であることを、「NcGRA7」は、脾細胞への刺激としてGSTタグ付き全長NcGRA7を添加した場合の結果であることを、それぞれ表し、同グラフの縦軸は、インターフェロンγを分泌した細胞の量を表す。また、同グラフ中、「DM1-L-DM2免疫群」のバーは、DM1-L-DM2封入リポソームで免疫したマウスの脾細胞懸濁液を供した場合における、インターフェロンγを分泌した細胞の量を、「NcGRA7免疫群」のバーは、GSTタグ付き全長NcGRA7封入リポソームで免疫したマウスの脾細胞懸濁液を供した場合における、インターフェロンγを分泌した細胞の量(陽性対照)を、「非免疫群」は、免疫していないマウスの脾細胞懸濁液を供した場合における、インターフェロンγを分泌した細胞の量(陰性対照)を、それぞれ表す。なお、各インターフェロンγ分泌細胞量の値は、免疫していないマウスの脾細胞懸濁液を供し、脾細胞への刺激として合成タンパク質DM1-L-DM2を添加した場合における、インターフェロンγを分泌した細胞の量(陰性対照)を1とした場合の相対量で表している。
図1に示す通り、DM1-L-DM2封入リポソームで免疫したマウスでは、脾細胞への刺激としてGSTタグ付き全長NcGRA7を添加した場合においても、免疫していないマウスと比較して、感作抗原刺激によってインターフェロンγを分泌した脾細胞の量が多かったほか、GSTタグ付き全長NcGRA7封入リポソームで免疫したマウスと比較しても、感作抗原刺激によってインターフェロンγを分泌した脾細胞の量が顕著に多かった。
この結果より、NcGR7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質が、従来の技術常識(非特許文献4参照)に反し免疫原性を有しており、さらに、その免疫原性が、全長NcGRA7よりも顕著に高いことが示された。
実施例4では、実施例2で調製したDM1-L-DM2封入リポソームについて、ネオスポラ・カニナムに対するワクチンとしての安全性及び有効性を評価した。
第I~III実験群のマウス(BALB/c、雌)に対し、実施例2で調製したDM1-L-DM2封入リポソームを、一回当たりタンパク量で5μgずつ、一週間間隔で計三回、皮下投与して免疫した。第I実験群及び第II実験群のマウスについては、2回目の免疫の4日後(3回目の免疫の3日前)に交配・妊娠させ、第III実験群のマウスについては、3回目の免疫の7日後に交配・妊娠させた。第IV実験群(対照)のマウス(BALB/c、雌)については、免疫せずに交配・妊娠させた。
次に、第I実験群のマウスについては、交配後妊娠中に原虫による攻撃は行わず、第II~IV実験群のマウスについては、交配の10日後(即ち、第II実験群では3回目の免疫の4日後、第III実験群では3回目の免疫の17日後)に、ネオスポラ・カニナム原虫(タキゾイト)を1×105個、腹腔内に接種して攻撃した。そして、出産の30日後における新生仔マウスの生残率を調べた。
結果を表1に示す。
Figure 0007032965000001
表1の第I実験群の結果が示す通り、実施例2で調製したDM1-L-DM2封入リポソームを3回投与して免疫し、原虫による攻撃は行わなかった場合、出生30日後における新生仔の生残率は90.9%であった。この結果より、このDM1-L-DM2封入リポソームのワクチンとしての安全性が実証された。
また、表1の第IV実験群の結果が示す通り、ワクチンを投与せずにネオスポラ・カニナム原虫による攻撃を行った場合、出生30日後における新生仔の生残率が19.4%と低く、多くの個体が致死であった。それに対し、表1の第II実験群及び第III実験群の結果が示す通り、ワクチンを妊娠中又は妊娠前に投与した場合、ネオスポラ・カニナム原虫による攻撃を被っても、出生30日後における新生仔の生残率が63.6%又は72.7%であり、ワクチンを投与しなかった場合と比較して、顕著に高かった。この結果より、このDM1-L-DM2封入リポソームの、ネオスポラ・カニナムに対するワクチンとしての有効性が実証された。
実施例3において、ELISpot法による測定結果(感作抗原刺激によってインターフェロンγを分泌した細胞数の相対量)を示すグラフ。

Claims (4)

  1. NcGRA7のアミノ酸配列中、膜貫通性領域が除外され、細胞外ドメインと細胞内ドメインとが連結された配列を有する合成タンパク質を抗原として含有する、反芻動物のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤。
  2. 前記細胞外ドメインと前記細胞内ドメインとがリンカー配列を介して連結された請求項1記載のネオスポラ感染症に対するワクチン製剤。
  3. 前記合成タンパク質がリポソームに封入された請求項1又は請求項2記載のワクチン製剤。
  4. 前記リポソームが、表面にオリゴ糖を有する請求項3記載のワクチン製剤。
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