以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の第1の実施例の概略を示す図であり、図1中、1はモノポール支持方式の測量装置、2は測定対象を示す。
前記測量装置1は、主に、一脚(モノポール)3、該一脚3の上端に設けられた測量装置本体4、前記一脚3の適宜位置に、例えば測定作業者が立ち姿勢で操作し易い位置に、操作パネル7が設けられる。
該操作パネル7は、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。前記操作パネル7が前記一脚3に取付けられた状態で操作可能であると共に前記操作パネル7を前記一脚3から分離し、該操作パネル7単体で操作可能としても良い。該操作パネル7と前記測量装置本体4とは、有線、無線等各種通信手段を介してデータ通信が可能となっている。
又、前記一脚3の前記操作パネル7より下方の位置に1本の補助脚6が折畳み可能に取付けられている。
前記一脚3の下端は尖端となっており、該下端は基準点R(測定の基準となる点)に設置される。又、前記一脚3の下端から前記測量装置本体4の機械中心(測量装置本体4に於ける測定の基準となる点)迄の距離は既知となっている。
前記測量装置本体4の光学系は、およそ水平方向に延出する基準光軸Oを有し、該基準光軸Oは前記一脚3の軸心Pと直交する線に対して所定角度下方に傾斜する様に設定される。従って、前記一脚3が鉛直に設定されると前記基準光軸Oは水平に対して前記所定角度下方に傾斜する。
前記補助脚6は、上端で前記一脚3に折畳み可能に連結され、前記補助脚6は折畳み状態では、前記一脚3と密着し、密着した状態を保持する様なロック機構が設けられる。或は簡易的に前記一脚3と前記補助脚6とを束ねるバンド(図示せず)が設けられてもよい。前記補助脚6が折畳まれた状態で、作業者が一脚3を把持し、測定を実行できる。
前記補助脚6は、上端を中心に所定の角度回転し、前記一脚3から離反させることが可能となっており、離反させた位置で固定可能となっている。前記補助脚6を使用することで、前記測量装置本体4は該補助脚6と前記一脚3との2点支持となり、前記測量装置本体4の支持は安定し、前記測量装置本体4による測定の安定性が向上する。尚、前記補助脚6は、1本の場合を説明したが2本であってもよい。この場合、前記一脚3は自立可能となる。
前記測量装置本体4は、測距部24(後述)、測定方向撮像部21(後述)を有し、又前記測量装置本体4には下方撮像部5が設けられている。前記測距部24の光学系の基準光軸が前記基準光軸Oである。前記測定方向撮像部21の光軸(以下、第1撮像光軸61)は前記基準光軸Oに対して所定角(例えば6°)上方に傾斜しており、又前記測定方向撮像部21と前記測距部24との距離及び位置関係は既知となっている。前記測距部24と前記測定方向撮像部21は前記測量装置本体4の筐体内部に収納されている。
前記下方撮像部5は、CCD、CMOS等の撮像素子を有し、デジタル画像を取得可能な撮像装置が用いられる。又、撮像素子中の画素の位置が前記下方撮像部5の光軸(以下、第2撮像光軸8)を基準として検出可能となっている。例えば、前記第2撮像光軸8を原点とする座標系での座標が検出可能となっている。又、前記下方撮像部5として、例えば、市販のデジタルカメラが用いられてもよい。
前記下方撮像部5は前記測量装置本体4の筐体に固定され、前記下方撮像部5(即ち、該下方撮像部5の像形成位置)は前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置に設けられる。前記第2撮像光軸8は、下方に向けられ、前記基準光軸Oに対して所定の既知の角度に設定され、前記第2撮像光軸8と前記基準光軸Oとは既知の関係となっている。尚、前記下方撮像部5は前記筐体に収納され、前記測量装置本体4と一体化されてもよい。
前記測定方向撮像部21の画角はθ1であり、前記下方撮像部5の画角はθ2であり、θ1とθ2とは等しくても良く又異なっていても良い。又、前記測定方向撮像部21の画角と前記下方撮像部5の画角はオーバラップしていなくとも良いが、所定量オーバラップすることが好ましい。又、前記下方撮像部5の画角、前記第2撮像光軸8の方向は、前記一脚3の下端が画像中に含まれる様設定される。
図2を参照して、前記測量装置本体4の概略構成を説明する。
該測量装置本体4は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、演算制御部14、第1記憶部15、撮像制御部16、画像処理部17、第1通信部18、光軸偏向部19、姿勢検出部20、前記測定方向撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23を具備し、これらは筐体25に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13、前記光軸偏向部19等は、測距部24を構成する。
前記測距光射出部11は、射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
前記測距演算部13は前記発光素子27を発光させ、前記発光素子27はレーザ光線を発する。前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたレーザ光線を測距光33として射出する。尚、レーザ光線としては、連続光或はパルス光、或は特許文献3に示される断続変調光のいずれが用いられてもよい。
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象2からの反射測距光34が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸35とする。
前記基準光軸O上に前記光軸偏向部19が配設される。該光軸偏向部19の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部19によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31又は前記測距光軸35と合致する。
前記反射測距光34が前記光軸偏向部19を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ38が配設される。又、前記受光光軸31上に受光素子39、例えばアバランシフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ38は、前記反射測距光34を前記受光素子39に結像する。該受光素子39は、前記反射測距光34を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力され、該測距演算部13は受光信号に基づき測距光の往復時間を演算し、測定対象2迄の測距を行う。
前記第1通信部18は、前記測定方向撮像部21で取得した画像データ、前記画像処理部17で処理された画像データ、前記測距部24が取得した測距データを前記操作パネル7に送信し、更に該操作パネル7からの操作コマンドを受信する。
前記第1記憶部15には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、操作コマンド作成プログラム、前記姿勢検出部20からの姿勢検出結果に基づき前記一脚3の傾斜角、傾斜方向を演算し、更に傾斜角の鉛直成分(前記一脚3の測定対象2に対する前後方向の傾斜角)、傾斜角の水平成分(前記一脚3の測定対象2に対する左右方向の傾斜角)を演算する傾斜角演算プログラム、測距を実行する為の測定プログラム、前記光軸偏向部19の偏向作動を制御する為の偏向制御プログラム、各種演算を実行する演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又、測距データ、測角データ、画像データ等の各種データが格納される。
前記演算制御部14は、前記測量装置本体4の作動状態に応じて、前記各種プログラムを展開、実行して前記測量装置本体4による前記測距光射出部11の制御、前記受光部12の制御、前記測距演算部13の制御、前記測定方向撮像部21の制御等を行い、測距を実行する。
図3を参照して、前記光軸偏向部19について説明する。
該光軸偏向部19は、一対の光学プリズム41,42から構成される。該光学プリズム41,42は、それぞれ同径の円板形であり、前記測距光軸35上に該測距光軸35と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム41は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム43a,43b,43cを有している。前記光学プリズム42は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム44a,44b,44cを有している。尚、前記三角プリズム43a,43b,43cと前記三角プリズム44a,44b,44cは、全て同一偏角の光学特性を有している。
前記三角プリズム43a,43b,43c、前記三角プリズム44a,44b,44cの幅、形状は全て同じでもよく、或は異なっていてもよい。尚、中心に位置する前記三角プリズム43a,44aの幅は、前記測距光33のビーム径よりも大きくなっており、該測距光33は前記三角プリズム43a,44aのみを透過する様になっている。前記三角プリズム43b,43c,44b,44cについては、多数の小さい三角プリズムで構成してもよい。
更に、中心の前記三角プリズム43a,44aについては、光学ガラス製とし、前記三角プリズム43b,43c,44b,44cについては、光学プラスチック製としてもよい。これは、前記光軸偏向部19から測定対象2迄の距離は大きく、前記三角プリズム43a,44aの光学特性については精度が要求され、一方前記三角プリズム43b,43c,44b,44cから前記受光素子39迄の距離は小さく、高精度の光学特性は必要ないという理由による。
前記光軸偏向部19の中央部(前記三角プリズム43a,44a)は、前記測距光33が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部となっている。前記光軸偏向部19の中央部を除く部分(前記三角プリズム43a,44aの両端部及び前記三角プリズム43b,43c、前記三角プリズム44b,44c)は、前記反射測距光34が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部となっている。
前記光学プリズム41,42は、それぞれ前記受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム41,42は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光33の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光34の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
又、前記測距光33を連続して照射しつつ、前記光学プリズム41,42を連続的に駆動し、連続的に偏向することで、前記測距光33を所定のパターンでスキャンさせることができる。
前記光学プリズム41,42の外形形状は、それぞれ前記測距光軸35(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光34の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム41,42の直径が設定されている。
前記光学プリズム41の外周にはリングギア45が嵌設され、前記光学プリズム42の外周にはリングギア46が嵌設されている。
前記リングギア45には駆動ギア47が噛合し、該駆動ギア47はモータ48の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア46には駆動ギア49が噛合し、該駆動ギア49はモータ50の出力軸に固着されている。前記モータ48,50は、前記モータドライバ23に電気的に接続されている。
前記モータ48,50は、回転角を検出できるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ48,50の回転量を検出してもよい。該モータ48,50の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ48,50が個別に制御される。
又、前記モータ48,50の回転量、即ち前記駆動ギア47,49の回転量を介して前記光学プリズム41,42の回転角が検出される。尚、エンコーダを直接リングギア45,46にそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア45,46の回転角を直接検出する様にしてもよい。
ここで前記光軸偏向部19の偏向角は、前記光学プリズム41,42の回転角に対して小さく(例えば、偏向角±10°させる為の回転角が±40°)、高精度に偏向させることができる。
前記駆動ギア47,49、前記モータ48,50は、前記測距光射出部11と干渉しない位置、例えば前記リングギア45,46の下側に設けられている。
前記投光レンズ28、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32、前記測距光偏向部等は、投光光学系を構成する。又、前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ38等は、受光光学系を構成する。
前記測距演算部13は、前記発光素子27を制御し、前記測距光33としてレーザ光線をパルス発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光33が前記三角プリズム43a,44a(測距光偏向部)により、測定対象2に向う様前記射出光軸26(即ち、前記測距光軸35)が偏向される。前記測距光軸35が、測定対象2を視準した状態で測距が行われる。
前記測定対象2から反射された前記反射測距光34は、前記三角プリズム43b,43c及び前記三角プリズム44b,44c(反射測距光偏向部)、前記結像レンズ38を介して入射し、前記受光素子39に受光される。該受光素子39は、受光信号を前記測距演算部13に送出し、該測距演算部13は前記受光素子39からの受光信号に基づき、パルス光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記第1記憶部15に格納される。
前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ48,50の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ48,50の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50の回転角に基づき、前記光学プリズム41,42の回転位置を演算する。
更に、前記射出方向検出部22は、前記光学プリズム41,42の屈折率と、該光学プリズム41,42を一体とした時の回転位置、両光学プリズム41,42間の相対回転角とに基づき、各パルス光毎の前記測距光33の前記基準光軸Oに対する偏角、射出方向をリアルタイムで演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部14に入力される。尚、前記測距光33がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距が実行される。
前記演算制御部14は、前記モータ48,50の回転方向、回転速度、前記モータ48,50間の回転比を制御することで、前記光学プリズム41,42の相対回転、全体回転を制御し、前記光軸偏向部19による偏向作用を制御する。又、前記演算制御部14は、前記測距光33の偏角、射出方向から、前記基準光軸Oに対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、前記演算制御部14は、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、前記測定点の3次元データを求めることができる。而して、前記測量装置1は、トータルステーションとして機能する。
次に、前記姿勢検出部20について説明する。該姿勢検出部20は、前記測量装置本体4の水平、又は鉛直に対する傾斜角を検出し、検出結果は前記演算制御部14に入力される。尚、前記姿勢検出部20としては、特許文献1に開示された姿勢検出部を使用することができる。
該姿勢検出部20について簡単に説明する。該姿勢検出部20は、フレーム54を有している。該フレーム54は、前記筐体25に固定され、或は構造部材に固定され、前記測量装置本体4と一体となっている。
前記フレーム54にはジンバルを介してセンサブロック55が取付けられている。該センサブロック55は、直交する2軸を中心に2方向にそれぞれ360°又は360゜以上回転自在となっている。
該センサブロック55には、第1傾斜センサ56、第2傾斜センサ57が取付けられている。前記第1傾斜センサ56は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ57は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
前記センサブロック55の、前記フレーム54に対する2軸についての各相対回転角は、エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される様になっている。
又、前記センサブロック55を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関してそれぞれ設けられている。該モータは、前記第1傾斜センサ56、前記第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき、前記センサブロック55を水平に維持する様に前記演算制御部14によって制御される。
前記センサブロック55が傾斜していた場合(前記測量装置本体4が傾斜していた場合)、前記センサブロック55(水平)に対する前記フレーム54の各軸方向の相対回転角が前記エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される。該エンコーダ58,59の検出結果に基づき、前記測量装置本体4の2軸についての傾斜角、2軸の傾斜の合成によって傾斜方向が検出される。
前記センサブロック55は、2軸について360°又は360゜以上回転自在であるので、前記姿勢検出部20がどの様な姿勢となろうとも、例えば該姿勢検出部20の天地が逆になった場合でも、全方向での姿勢検出(水平に対する傾斜角、傾斜方向)が可能である。
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ57は前記第1傾斜センサ56に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
前記姿勢検出部20では、高精度の前記第1傾斜センサ56と高応答性の前記第2傾斜センサ57を具備することで、該第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢制御を行い、更に前記第1傾斜センサ56により高精度の姿勢検出を可能とする。
該第1傾斜センサ56の検出結果で、前記第2傾斜センサ57の検出結果を較正することができる。即ち、前記第1傾斜センサ56が水平を検出した時の前記エンコーダ58,59の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ57が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ57の傾斜角を較正することができる。
従って、予め、該第2傾斜センサ57の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ56による水平検出と前記エンコーダ58,59の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ57による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。環境変化(温度等)の少ない状態では、傾斜検出は前記第2傾斜センサ57の検出結果と補正値で求めてもよい。
前記演算制御部14は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ57からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部14は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ56が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ56からの信号に基づき、前記モータを制御する。尚、常時、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角を較正することで、該第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき前記姿勢検出部20による姿勢検出を行ってもよい。
尚、前記第1記憶部15には、前記第1傾斜センサ56の検出結果と前記第2傾斜センサ57の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第1傾斜センサ56からの信号に基づき、該第2傾斜センサ57による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ57による検出結果を前記第1傾斜センサ56の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出部20による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
前記演算制御部14は、前記姿勢検出部20からの検出結果から前記一脚3の前後方向の倒れ角(測定対象2に対して近接離反する方向の倒れ角)及び前記一脚3の左右方向の倒れ角を演算する。前後方向の倒れ角は、前記基準光軸Oの水平に対する傾斜角として現れ、左右方向の倒れ角は、前記測定方向撮像部21で取得する画像の傾き(回転)として現れる。
前記演算制御部14は、前記倒れ角と前記光軸偏向部19による偏角により、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角を演算する。又、前記画像の傾きに基づき、表示部68(後述)に表示される画像の傾きを修正し、鉛直画像として表示する。
前記測定方向撮像部21は、前記測量装置本体4の前記基準光軸Oと平行な前記第1撮像光軸61と、該第1撮像光軸61に配置された撮像レンズ62とを有している。前記測定方向撮像部21は、前記光学プリズム41,42による最大偏角θ/2(例えば±30°)と略等しい、例えば50°~60°の画角を有するカメラである。前記第1撮像光軸61と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの関係は既知であり、前記第1撮像光軸61と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとは平行であり、又各光軸間の距離は既知の値となっている。
又、前記測定方向撮像部21は、静止画像又は連続画像或は動画像が取得可能である。前記測定方向撮像部21で取得された画像は、前記操作パネル7に送信され、該操作パネル7の表示部68(後述)に観察画像81として表示され、作業者は該表示部68に表示された画像を観察して測定作業を実行できる。前記観察画像81の中心は、前記第1撮像光軸61と合致し、更に、前記第1撮像光軸61と前記基準光軸Oの既知の関係に基づき前記観察画像81の中心は前記基準光軸Oと合致する様、或は前記基準光軸Oと略合致する様に(所定の画角でずれる様に)制御される。
前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21の撮像を制御する。前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量装置本体4でスキャンし測距するタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部14は画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。又、前記撮像制御部16は、前記第1通信部18、第2通信部67(図5参照)を介して前記測定方向撮像部21と前記下方撮像部5との撮像タイミングの同期制御を行っている。
前記測定方向撮像部21の撮像素子63は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記第1撮像光軸61を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。又、前記第1撮像光軸61と前記基準光軸Oとの関係が既知であるので、前記測距部24による測定位置と前記撮像素子63上での位置との相互関連付けが可能である。前記撮像素子63から出力される画像信号は、前記撮像制御部16を介して前記画像処理部17に入力される。
前記光軸偏向部19の偏向作用、スキャン作用について、図4(A)~図4(C)を参照して説明する。
尚、図4(A)では、説明を簡略化する為、前記光学プリズム41,42について、前記三角プリズム43a,44aと、前記三角プリズム43b,43c,44b,44cとを分離して示している。又、図4(A)は、前記三角プリズム43a,44a、前記三角プリズム43b,43c,44b,44cが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、30°)が得られる。又、最少の偏角は、前記光学プリズム41,42のいずれか一方が他方に対して180°回転した位置であり、該光学プリズム41,42の相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。従って、前記光学プリズム41,42を経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸35)は、前記基準光軸Oと合致する。
前記発光素子27から前記測距光33が発せられ、該測距光33は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記測距光偏向部(前記三角プリズム43a,44a)を透過して測定対象2に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光33は前記三角プリズム43a,44aによって所要の方向に偏向されて射出される(図4(A))。
ここで、前記測距光33は全て前記三角プリズム43a,44aを透過し、該三角プリズム43a,44aの光学作用を受けるが、単一の光学部材からの光学作用であるので、光束の乱れがなく偏向精度は高い。更に、前記三角プリズム43a,44aとして光学ガラスが用いられることで、更に偏向精度が高められる。
前記測定対象2で反射された前記反射測距光34は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ38により前記受光素子39に集光される。
前記反射測距光34が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光34の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に前記三角プリズム43b,43c及び前記三角プリズム44b,44cによって偏向される(図4(A))。
ここで、前記反射測距光偏向部に用いられる前記三角プリズム43b,43c及び前記三角プリズム44b,44cには、光学プラスチックが用いられてもよく、或は微小な三角プリズムの集合であるフレネルプリズムが用いられてもよい。前記光軸偏向部19と前記受光素子39間の距離が短いので、前記反射測距光偏向部には高精度が要求されない。
前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光33の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
又、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ48,50により、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光33が描く軌跡は前記基準光軸O(図2参照)を中心とした円となる。
従って、前記発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部19を回転させれば、前記測距光33を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部は、前記測距光偏向部と一体に回転していることは言う迄もない。
図4(B)は、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム41により偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム42により偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム41,42による光軸の偏向は、該光学プリズム41,42間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
従って、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42を逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記光学プリズム41,42を透過した前記測距光33は、直線状にスキャンされる。従って、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを逆向きに等速度で往復回転させることで、図4(B)に示される様に、前記測距光33を合成偏向C方向に直線の軌跡64で往復スキャンさせることができる。
更に、図4(C)に示される様に、前記光学プリズム41の回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム42を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光33が回転される。従って、該測距光33のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
又、前記光学プリズム41、前記光学プリズム42の回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光33のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした種々の2次元のスキャンパターンが得られる。
例えば、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の、一方の光学プリズム41を25回転、他方の光学プリズム42を逆方向に5回転することで、図6に示される様な、花びら状の2次元の閉ループスキャンパターン(花びらパターン74(内トロコイド曲線))、或は、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の回転比率を1:2とすることで、図7に示される様な8の字状の2次元の8の字パターン79が得られる。
前記下方撮像部5について説明する。
該下方撮像部5は、前記測量装置本体4と電気的に接続されており、前記下方撮像部5で取得された画像データは前記測量装置本体4に入力される。
前記下方撮像部5の撮像は、前記撮像制御部16によって前記測定方向撮像部21の撮像、前記測距部24の測距と同期制御される。前記下方撮像部5は、前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置に設けられており、前記下方撮像部5と前記一脚3下端との距離も既知となっている。
更に、前記下方撮像部5の前記第2撮像光軸8は、前記基準光軸Oとの成す角、基準光軸Oと前記第2撮像光軸8との交点の位置が既知である等、既知の関係にあり、前記下方撮像部5で取得した画像データは、前記演算制御部14によって前記測定方向撮像部21で取得した画像及び前記測距部24で測定した測距データと関連付けられて前記第1記憶部15に格納される。
前記操作パネル7について図5を参照して略述する。
該操作パネル7は、上記した様に、前記一脚3に対して固定的に設けられてもよく、或は着脱可能であってもよい。又、着脱可能な場合は、前記操作パネル7を前記一脚3から取外し、前記操作パネル7単体の状態で、作業者が保持し、操作可能としてもよい。
前記操作パネル7は、主に演算部65、第2記憶部66、前記第2通信部67、前記表示部68、操作部69を具備している。尚、前記表示部68をタッチパネルとし、前記表示部68に前記操作部69を兼用させてもよい。又、前記表示部68をタッチパネルとした場合は、前記操作部69は省略してもよい。
前記第2記憶部66には、前記測量装置本体4との間で通信を行う為の通信プログラム、前記下方撮像部5で取得した画像、前記測定方向撮像部21で取得した画像の合成等の処理を行う画像処理プログラム、前記下方撮像部5で取得した画像、前記測定方向撮像部21で取得した画像、前記測距部24で測定した測定情報を前記表示部68に表示させる為の表示プログラム、前記操作部69で操作された情報から前記測量装置本体4へのコマンドを作成する為のコマンド作成プログラム等の各種プログラムが格納されている。
前記第2通信部67は前記画像処理部17との間で、測定データ、画像データ、コマンド等のデータを前記演算制御部14、前記第1通信部18を経由して、通信する。
前記表示部68は、前記測量装置本体4の測定状態、測定結果等を表示し、又前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21が取得した画像、或は前記画像処理部17で画像処理された画像を表示する。又、前記表示部68は、前記測定方向撮像部21が取得した全画角画像を観察画像81として表示する。更に、観察画像81上で測定点(視準点)を指定すると、前記画像処理部17が前記視準点を中心として観察画像81から所要範囲を切出し、切出した画像を拡大して視準画像82として表示する(図9(A)、図9(B)参照)。
ここで、前記視準画像82とは前記光軸偏向部19によって偏向された前記測距光軸35(偏向されていない場合は、該測距光軸35と前記基準光軸Oとは合致する)を中心とする画像であり、前記表示部68に所定の倍率(例えば、3倍~10倍)で拡大されて表示される。前記操作部69から前記測量装置本体4に測定作業に関する指令等、各種指令を入力できる様になっている。又、観察画像81の表示、視準画像82の表示は前記操作部69から切替え可能となっている。
前記操作パネル7として、例えばスマートフォン、タブレットが用いられてもよい。又、前記操作パネル7がデータコレクタとして使用されてもよい。
図1~図6を参照して、前記測量装置1の測定作用について説明する。以下の測定作用は、前記第1記憶部15に格納されたプログラムを前記演算制御部14が実行することでなされる。
測定を開始する準備として、前記一脚3の下端を基準点Rに位置決めし、前記一脚3を略垂直として作業者が保持する。尚、前記操作パネル7は前記一脚3に取付けられた状態とする。又、前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21は作動状態で前記測量装置1の設置は行われる。
前記基準光軸Oを測定対象2に向ける場合、前記一脚3を前記一脚3の下端を中心に回転し、或は前記一脚3を前後、左右に傾斜し、或はみそすり回転する。前記基準光軸Oを中心とする観察画像81が前記表示部68に表示され、観察画像81から前記基準光軸Oの方向、位置を確認することができる。
前記基準光軸Oの方向が確定したら、前記観察画像81は、前記基準光軸Oを保持した状態で、測定可能な範囲を示しており、前記観察画像81中の任意の点を測定点(測定対象2)として指定し、測定対象2の測定が可能である。前記測定対象2の指定で前記演算制御部14は前記光軸偏向部19を用いて前記測距光軸35を前記測定対象2に向ける。
前記測距光軸35が前記測定対象2に向けられ、前記測距光33が照射され、前記測定対象2の測定(測距、測角)が実行される。前記表示部68には視準画像82が表示されると共に、該視準画像82上に前記測距光33の方向、測距結果等が表示される。尚、観察画像81に対する前記視準画像82の位置を確認したい場合は、該視準画像82から前記観察画像81への切替えを行う。該観察画像81には前記視準画像82の位置を示す、枠83等が表示されることが好ましい。
測定対象2を変更又は他の箇所の測定対象2への移動を行う場合、前記表示部68の表示を前記観察画像81に戻し、観察画像81から再度測定点を指定することも可能であるが、視準画像82を表示したまま、前記一脚3の傾動、回転により測定点を移動させることも可能である。
前記視準画像82の中心が前記測距光軸35の位置(方向)であるので、視準画像82の中心が測定点に合致する様に前記一脚3を操作することで、前記測距光軸35を測定点に一致させることができる。この時、前記測距光軸35と前記基準光軸Oとは一致しているとは限らないが、前記撮像素子63上での視準画像82の中心と観察画像81の中心との位置偏差は、前記測距光軸35と前記基準光軸Oとの方向角の角度差に換算できる。又、基準光軸Oの水平に対する傾斜は、前記姿勢検出部20により検出されるので、該姿勢検出部20の検出結果と前記位置偏差に基づき、前記測距光軸35の傾斜角が検出される。又、測距光33が照射されて測定が行われる。
更に、前記一脚3を操作し(傾動し)、視準画像82を用いて前記測距光軸35を測定点に視準させる場合に、作業性を向上させる為、前記一脚3の倒れ角、或は倒れ角の変化に対して、視準画像82を所定の移動倍角(例えば、前記一脚3の傾斜角に対して0.5倍、1倍、2倍、3倍の角度、等)で移動させてもよい。尚、移動倍角は固定であっても、切替え可能であってもよい。尚、上記した様に、前記一脚3の倒れ角及び倒れ角の変化は、前記姿勢検出部20によって検出される。
例えば、図8、図9(A)、図9(B)に示される様に、移動倍角を固定倍率の2倍とすると、前記一脚3の傾斜角aに対し、前記視準画像82を前記一脚3の傾斜方向に傾斜角a分だけ移動させることで前記視準画像82を2倍角で移動させることができる。つまり前記一脚3の倒れ量aと前記視準画像82の移動量aの合計で2aが得られる。従って、前記測距光軸35の傾斜角を40゜とする場合、前記一脚3の傾斜量は20゜ですみ、前記一脚3を大きく傾ける必要がなくなり、作業性が向上する。
尚、前記視準画像82の移動については、前記観察画像81から視準画像82を切取る場合に、前記一脚3を傾斜角aの移動、傾斜方向に対し、前記観察画像81上で前記一脚3の傾斜方向に対応する方向で、傾斜角aに相当する位置を中心に前記視準画像82を切取ればよい。
更に、前記一脚3の傾斜角aの移動に対して視準画像82の移動を前記表示部68にリアルタイムで表示すれば、作業の状態、視準位置の変化を視覚で確認できるので、作業性が更に向上する。
更に、移動倍角を切替え可能とした場合、視準画像82の中心(即ち、測距光軸35)が測定点近傍となった場合、移動倍率を1倍、或は0.5倍とすることで前記一脚3の傾斜量(操作量)に対して前記視準画像82の移動量が小さくなり、測距光軸35を測定点に一致させることが容易となる。
前記測距光軸35の視準状態、即ち、前記測距光軸35を前記測定対象2に合わせた状態を維持する場合、測定作業者が前記一脚3を保持してもよいし、或は前記補助脚6を引出し、前記一脚3を前記補助脚6で支持してもよい。
該補助脚6で前記一脚3を支持することで、前記一脚3の前後方向の倒れ、前記一脚3の下端を中心とする回転が規制され、前記測量装置1の支持状態が安定する。
尚、前記測量装置1の水平に対する傾斜は、前記姿勢検出部20によってリアルタイムで検出されるので、前記測量装置1の水平に対する傾斜角、傾斜方向がリアルタイムで検出され、検出結果に基づき測定結果をリアルタイムで補正することができる。従って、前記測量装置1を水平に調整する為の整準作業は必要なく、又前記一脚3を作業者が保持することで生じる微小な揺れ等による傾斜角の変動についても、リアルタイムで補正することができる。
次に、図6を参照して前記一脚3の下端を中心とする水平方の回転角の検出について説明する。
図6中、71は前記測定方向撮像部21の第1画像取得範囲、72は前記下方撮像部5の第2画像取得範囲、73は前記光軸偏向部19による前記測距光軸35の偏向範囲、74は測距光を複数回照射しつつ前記光軸偏向部19により花びらパターンでスキャンした場合の軌跡を示している。前記花びらパターン74に示されるドットは複数回の測距光の照射点を示す。又、75は前記第1画像取得範囲71の画像中心(該画像中心75は前記第1撮像光軸61と合致する)、76は前記第2画像取得範囲72の画像中心(該画像中心76は、前記第2撮像光軸8と合致する)を示している。
又、図1に於いて、θ1は前記測定方向撮像部21の画角、θ2は前記下方撮像部5の画角、θ3は前記測量装置本体4のスキャン範囲をそれぞれ示している。
更に、図6は、前記第1撮像光軸61と前記第2撮像光軸8間の角度が例えば60°に設定され、前記基準光軸Oが前記第1撮像光軸61に対して例えば6°下方に傾斜している、つまり、θ4は54°となる。又前記一脚3が後方(前記測定対象2から離反する方向)に5゜傾いて保持された状態を示している。
前記第2撮像光軸8は、下方に向けられ、前記一脚3の下端を含む様に、画像取得範囲が設定されている。従って、前記下方撮像部5が取得する画像には、前記基準点Rを含み、更に測定者側の範囲(図示では略80゜の範囲)の画像が含まれている。
この前記基準点Rを中心とした所定半径の回転検出画像77として設定し、リアルタイムで取得する。
測定開始時の前記回転検出画像77を取得し、該回転検出画像77を回転基準画像77aとして設定する。
測定開始以降の回転角を検出する場合は、前記回転基準画像77aに対する前記回転検出画像77の前記基準点Rを中心とした回転変化を検出し、回転変化に基づき前記回転角を演算する。前記回転角は前記姿勢検出部20の検出結果に基づき水平角に変換される。尚、前記水平角の検出は、前記回転検出画像77を前記姿勢検出部20の検出結果に基づき射影変換を施して、水平画像に変換してから水平回転変化検出して水平角を求めてもよい。
次に、図1に示される様に、前記測量装置本体4により前記測定対象2を測定すると、前記測定対象2迄の斜距離が測定され、更に前記第1撮像光軸61に対する前記基準光軸Oの偏角(図6では6゜)と前記基準光軸Oに対する前記測距光軸35の偏角が前記射出方向検出部22によって検出され、又前記測量装置本体4の水平に対する傾斜角が前記姿勢検出部20によって検出され、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角が演算され、前記一脚3の水平回転変化が前記回転検出画像77から検出される。
前記測距光軸35の水平に対する傾斜角に基づき、前記斜距離が水平角に補正され、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角、検出された前記水平角に基づき方向角が演算される。又、前記一脚3の長さと前記第1撮像光軸61に対する前記一脚3の倒れが既知であることから、前記一脚3の下端(即ち、前記基準点R)を基準とした前記測定対象2の3次元座標が求められる。
尚、前記水平角の演算、前記測距光軸35の傾斜角の演算、水平距離の演算等の演算については、前記演算制御部14が実行してもよく、或は前記演算部65が実行してもよい。
上記説明では、前記測距光軸35を測定点に固定した状態で、トータルステーションと同様な作用で測定したが、測量装置1をレーザスキャナとしても測定することができる。
図6に示される様に、前記光軸偏向部19は前記偏向範囲73の範囲で、前記測距光軸35を自在に偏向できる。前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の回転を制御することで、前記花びらパターン74の軌跡でスキャンさせることができる。スキャン過程でパルス測距光を照射することで、前記花びらパターン74の軌跡に沿った測距データを取得することができる。又、測距データ密度(スキャン密度)を上げる場合は、前記花びらパターン74が1パターンスキャンされる度に前記花びらパターン74を周方向に所定角度回転させればよい。又、スキャンと同期して第1画像、第2画像が取得される。ここで、偏向範囲73(即ち、光軸偏向部19の最大偏向範囲)をスキャンする場合を全域スキャンと称す。
又、全域スキャンを実行している状態で、スキャン中心を移動する場合(スキャン範囲を移動する場合)は、前記一脚3を軸心を中心に回転させるか、或は下端を中心にみそすり回転させるか、或は前記一脚3の倒れ角を変更する。スキャン中心を移動した後の基準光軸Oの方向角は、前記姿勢検出部20によってリアルタイムで検出される。而して、所望の方向の、所望の範囲の測距データを容易に取得することができる。
又、前記測定方向撮像部21で取得した第1画像と、前記下方撮像部5で取得した第2画像とを合成する場合は、両画像のオーバラップ部分を用いて行うことができる。或は、図6に示される様に、前記花びらパターン74の一部が前記第2画像取得範囲72に含まれる様にスキャンを実行し、前記第1画像中の軌跡に沿った測距データ、前記第2画像中の軌跡に沿った測距データを用いて直ちに前記第1画像と前記第2画像との合成が可能である。
尚、合成に用いられる軌跡に沿ったデータは、前記第1画像、前記第2画像に共通に含まれる軌跡に沿ったデータを用いてもよく、或は前記第1画像、前記第2画像の個別に含まれる軌跡に沿ったデータの座標値を用いて前記第1画像と前記第2画像とを合成してもよい。
前記第1画像と前記第2画像を合成することで、前記基準点Rから測定対象2迄を含む広範囲の観察画像が取得でき、測定範囲、測定位置の確認が容易になり、作業性が向上する。又、第1画像、或は合成画像と2次元スキャンで得られた軌跡に沿ったデータとを関連付けることで画素毎に3次元データを有する画像が取得できる。
前記光学プリズム41,42の回転を制御することで、前記測距光33を種々のパターンでスキャンさせることができるが、前記偏向範囲73の一部の範囲に限って前記測距光33をスキャンさせることも可能である。ここで、前記偏向範囲73の一部の範囲をスキャンすることを局所スキャンと称す。
局所スキャンは、例えば前記視準画像82の範囲で実行され、前記視準画像82の範囲で点群データが取得される。
局所スキャンを実行するパターンとしての例を図10(A)、図10(B)に示す。その他、円、8の字パターン等がある。
図10(A)に示すスキャンパターン85は、図4(B)で示される直線スキャンを一スキャン毎に前記光学プリズム41,42を一体に所定角度ステップP1だけ回転させることで得られる。尚、図10(A)中、S1はスキャン方向を示す。
図10(B)に示すスキャンパターン86は、前記光学プリズム41,42により前記測距光軸35の偏角を設定した後、前記光学プリズム41,42を一体に所定角度回転させ、周方向に円弧スキャンさせ、1円弧スキャン毎に偏角を半径方向に所定送りステップP2で変更させることで得られる。尚、図10(B)中、S2はスキャン方向を示す。
又、局所スキャンを実行する際、前記基準光軸Oを中心とする範囲では、前記光軸偏向部19の構造上、効果的な局所スキャンは得られないので、局所スキャンを実行する場合は、前記基準光軸Oから所要角度離れた位置に設定される。
例えば、局所スキャンの中心が前記基準光軸Oから5゜以内とならない様に、局所スキャンがプログラミングされる。局所スキャンが前記視準画像82の範囲で実行される場合は、該視準画像82の初期設定位置が、該視準画像82の中心が前記基準光軸Oから5゜以上離れた位置に設定される。
モノポール支持方式では、安定性に限度があり、前記一脚3は測定中変動している。この為、前記測距光軸35も測定中常に変動している。本実施例では、この変動を利用して所定枚数、例えば8枚の画像を取得し、更に平均画像を作成する(図11参照)。前記測距光軸35の変動は、取得画像間の移動として現れる。
各画像中に含まれる測定点は、同一位置(同一座標)であり、画像の傾きについては前記姿勢検出部20からの検出結果により鉛直画像(或は水平画像)に修正することができる。従って、各画像間の測定点の位置を多数比較することで、画像間の移動量を画像の画素以下(サブピクセル)で検出することができる。検出結果に基づき画像を重ね合せ平均することで高精細化を行うことができる。実際には、画素を4×4で表して重ね平均する。これにより、前記発光素子27の総画素数の4倍の画素数と同等の精度で画像を取得することができる。
尚、前記観察画像81から前記視準画像82を切出す場合、前記一脚3の左右方向の倒れによって前記表示部68には傾斜した観察画像81′が表示されるが、前記表示部68の表示画面上で切出す方向を常に鉛直方向とすれば、容易に鉛直の視準画像82を得ることができる(図11参照)。更に、得られた視準画像を重ね合せることで、平均画像82′が取得できる。
又、得られた局所スキャン(例えば、微小円)のデータを、上記移動量に応じて移動させ、前記平均画像82′に重ね合せ、測定スキャン軌跡を表示する。変動に応じた測定スキャン軌跡87(図11参照)となり、結果的に面スキャンを得ることができる。
図12は第2の実施例を示している。図12中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
第2の実施例では、一脚3が伸縮可能であり、該一脚3は既知の所定間隔(例えば、10cm間隔)毎に伸縮し、且つ伸縮した長さが固定できる構造を有している。
又、第2の実施例では、下方撮像部5が測量装置本体4に対して分離可能となっており、該測量装置本体4が前記一脚3の伸縮部に取付けられ、前記下方撮像部5が前記一脚3の固定部に取付けられ、前記一脚3を伸縮した場合、前記測量装置本体4の高さのみが変更される構成である。
第2の実施例では、測定対象2の高さに対応して前記測量装置本体4の高さが変更でき、測距データの補正等が容易となる。
図13は、第3の実施例を示している。図13中、図1中で示したものと同等のものには同符号を付しその説明を省略する。
第3の実施例では、補助脚6の回転範囲を拡大し、該補助脚6を略水平、或は水平以上に回転可能としている。更に、前記補助脚6を伸縮可能な構造としている。
第3の実施例の測定作業の1態様としては、前記補助脚6を短縮させ、該補助脚6を作業者の脇に挟み、一脚3を固定する。第3の実施例では、作業者の両手が明き、両手作業が可能となる。更に、前記補助脚6を前記一脚3の軸心を中心として回転させる場合、或は下端を中心として傾動、或はみそすり回転させる場合のハンドルとして使用でき、作業性が向上する。
尚、上記実施例では、測量装置本体として光軸偏向部19を有し、2次元スキャン可能な測量装置本体4を用いたが、測距機能のみを有する測量装置本体を設けてもよい。この場合、走査データは取得できないが、測量装置1を整準作業等の設置作業が不要で簡単に設置でき、所望の測定点の3次元座標の測定が可能である。
更に、この場合、市販のレーザ距離計を測量装置本体4として使用することができ、測量装置1を安価に構成することができる。