以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
図1は本発明の第1の実施例の概略を示す図であり、図1中、1は測量装置、2は測定対象を示す。
前記測量装置1は、主に、ハンドポール3、該ハンドポール3の上端に設けられた測量装置本体4、該測量装置本体4又は前記ハンドポール3に設けられた下方撮像部5、基準点R(測定の基準となる点)に設置される設置基準板6を有する。
前記ハンドポール3は、前記測量装置本体4、前記下方撮像部5の支持部材であると共に測定作業を行う為の操作ハンドルである。作業者が前記ハンドポール3を把持し、前記測量装置本体4により測定作業を実行する場合の、取扱い性、安定性が考慮され、前記ハンドポール3の長さ、太さ、重量等が設定されている。
尚、前記ハンドポール3は、棒状のものに限らず鉤状、或はリング状の取手等適宜な形状でよい。
前記測量装置本体4は、測定方向撮像部21(後述)、測距部24(後述)を有し、又前記測量装置本体4と前記下方撮像部5とは既知の位置関係となっている。
前記測距部24の光学系は基準光軸Oを有している。前記測定方向撮像部21の光学系の光軸(以下、第1撮像光軸61)は前記基準光軸Oに対して所定角(例えば6°)上方に傾斜しており、又測定方向撮像部21と前記測距部24との距離及び位置関係は既知となっている。前記測距部24と前記測定方向撮像部21は前記測量装置本体4の筐体内部に収納されている。
該筐体の背面(作業者と対向する面)には、表示部7、操作部8(図2参照)が設けられる。尚、前記表示部7をタッチパネルとし、操作部と表示部とを兼用してもよい。以下は、前記表示部7をタッチパネルとし、該表示部7が操作部を兼用している場合を説明している。
前記下方撮像部5には、CCD、CMOS等の撮像素子を有し、デジタル画像を取得可能な撮像装置が用いられる。又、撮像素子中の画素の位置が前記下方撮像部5の光軸(以下第2撮像光軸10)を基準として検出可能となっている。前記下方撮像部5として、例えば、市販のデジタルカメラが用いられてもよい。該下方撮像部5は、無線、有線等所要の手段により電気的に前記測量装置本体4と接続されており、前記撮像素子から出力される画像信号は撮像制御部16を介して画像処理部17(図2参照)に入力される。
又、前記下方撮像部5は、前記撮像制御部16によって画像取得の制御が行われ、前記下方撮像部5による画像取得と前記測定方向撮像部21による画像取得についての同期制御が行われる。
前記下方撮像部5は前記測量装置本体4の筐体に固定され、前記下方撮像部5(即ち、該下方撮像部5の像形成位置)は前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置に設けられる。前記第2撮像光軸10は、下方に向けられ、前記基準光軸Oに対して所定の既知の角度に設定され、前記第2撮像光軸10と前記基準光軸Oとは既知の関係となっている。尚、前記基準光軸O、前記第1撮像光軸61、前記第2撮像光軸10は、所定の関係に設定されている。
前記測定方向撮像部21の画角はθ1であり、前記下方撮像部5の画角はθ2であり、θ1とθ2とは等しくても良く又異なっていても良い。又、前記測定方向撮像部21の画角と前記下方撮像部5の画角はオーバラップしていなくても良いが、所定量オーバラップすることが好ましい。又、前記下方撮像部5の画角、前記第2撮像光軸10の方向は、前記設置基準板6が画像中に含まれる様設定される。
図2を参照して、前記測量装置本体4の概略構成を説明する。
該測量装置本体4は、測距光射出部11、受光部12、測距演算部13、演算制御部14、記憶部15、前記撮像制御部16、前記画像処理部17、光軸偏向部19、姿勢検出部20、前記測定方向撮像部21、射出方向検出部22、モータドライバ23を具備し、これらは筐体25に収納され、一体化されている。尚、前記測距光射出部11、前記受光部12、前記測距演算部13、前記光軸偏向部19等は、測距部24を構成する。
前記測距光射出部11は、射出光軸26を有し、該射出光軸26上に発光素子27、例えばレーザダイオード(LD)が設けられている。又、前記射出光軸26上に投光レンズ28が設けられている。更に、前記射出光軸26上に設けられた偏向光学部材としての第1反射鏡29と、受光光軸31(後述)上に設けられた偏向光学部材としての第2反射鏡32とによって、前記射出光軸26は、前記受光光軸31と合致する様に偏向される。前記第1反射鏡29と前記第2反射鏡32とで射出光軸偏向部が構成される。
前記測距演算部13は前記発光素子27を発光させ、前記発光素子27はレーザ光線を発する。前記測距光射出部11は、前記発光素子27から発せられたレーザ光線を測距光33として射出する。尚、測距光は連続光であってもよく、或はパルス光であってもよく、或は特許文献4に示した断続変調光であってもよい。
前記受光部12について説明する。該受光部12には、測定対象2からの反射測距光34が入射する。前記受光部12は、前記受光光軸31を有し、該受光光軸31には、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32によって偏向された前記射出光軸26が合致する。尚、該射出光軸26と前記受光光軸31とが合致した状態を測距光軸35とする。
前記基準光軸O上に前記光軸偏向部19が配設される。該光軸偏向部19の中心を透過する真直な光軸は、前記基準光軸Oとなっている。該基準光軸Oは、前記光軸偏向部19によって偏向されなかった時の前記射出光軸26又は前記受光光軸31又は前記測距光軸35と合致する。
前記反射測距光34が前記光軸偏向部19を透過し、入射した前記受光光軸31上に結像レンズ38が配設される。又、前記受光光軸31上に受光素子39、例えばアバランシフォトダイオード(APD)が設けられている。前記結像レンズ38は、前記反射測距光34を前記受光素子39に結像する。該受光素子39は、前記反射測距光34を受光し、受光信号を発生する。受光信号は、前記測距演算部13に入力され、該測距演算部13は受光信号に基づき測距光の往復時間を演算し、測定対象2迄の測距を行う。
前記記憶部15には、撮像の制御プログラム、画像処理プログラム、測距プログラム、表示プログラム、通信プログラム、演算プログラム等の各種プログラムが格納される。又測定データ、画像データ等の各種データが格納される。
図3を参照して、前記光軸偏向部19について説明する。
該光軸偏向部19は、一対の光学プリズム41,42から構成される。該光学プリズム41,42は、それぞれ同径の円板形であり、前記測距光軸35上に該測距光軸35と直交して同心に配置され、所定間隔で平行に配置されている。前記光学プリズム41は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム43a,43b,43cを有している。前記光学プリズム42は、光学ガラスにて成形され、平行に配置された3つの三角プリズム44a,44b,44cを有している。尚、前記三角プリズム43a,43b,43cと前記三角プリズム44a,44b,44cは、全て同一偏角の光学特性を有している。
尚、中心に位置する前記三角プリズム43a,44aの幅は、前記測距光33のビーム径よりも大きくなっており、該測距光33は前記三角プリズム43a,44aのみを透過する様になっている。
前記光軸偏向部19の中央部(前記三角プリズム43a,44a)は、前記測距光33が透過し、射出される第1光軸偏向部である測距光偏向部となっている。前記光軸偏向部19の中央部を除く部分(前記三角プリズム43a,44aの両端部及び前記三角プリズム43b,43c、前記三角プリズム44b,44c)は、前記反射測距光34が透過し、入射する第2光軸偏向部である反射測距光偏向部となっている。
前記光学プリズム41,42は、それぞれ前記受光光軸31を中心に独立して個別に回転可能に配設されている。前記光学プリズム41,42は、回転方向、回転量、回転速度が独立して制御されることで、射出される前記測距光33の前記射出光軸26を任意の方向に偏向し、又受光される前記反射測距光34の前記受光光軸31を前記射出光軸26と平行に偏向する。
前記光学プリズム41,42の外形形状は、それぞれ前記測距光軸35(基準光軸O)を中心とする円形であり、前記反射測距光34の広がりを考慮し、充分な光量を取得できる様、前記光学プリズム41,42の直径が設定されている。
前記光学プリズム41の外周にはリングギア45が嵌設され、前記光学プリズム42の外周にはリングギア46が嵌設されている。
前記リングギア45には駆動ギア47が噛合し、該駆動ギア47はモータ48の出力軸に固着されている。同様に、前記リングギア46には駆動ギア49が噛合し、該駆動ギア49はモータ50の出力軸に固着されている。前記モータ48,50は、前記モータドライバ23に電気的に接続されている。
前記モータ48,50は、回転角を検出できるもの、或は駆動入力値に対応した回転をするもの、例えばパルスモータが用いられる。或は、モータの回転量(回転角)を検出する回転角検出器、例えばエンコーダ等を用いて前記モータ48,50の回転量を検出してもよい。該モータ48,50の回転量がそれぞれ検出され、前記モータドライバ23により前記モータ48,50が個別に制御される。尚、エンコーダを直接リングギア45,46にそれぞれ取付け、エンコーダにより前記リングギア45,46の回転角を直接検出する様にしてもよい。
前記駆動ギア47,49、前記モータ48,50は、前記測距光射出部11と干渉しない位置、例えば前記リングギア45,46の下側に設けられている。
前記投光レンズ28、前記第1反射鏡29、前記第2反射鏡32、前記測距光偏向部等は、投光光学系を構成する。又、前記反射測距光偏向部、前記結像レンズ38等は、受光光学系を構成する。
前記測距演算部13は、前記発光素子27を制御し、前記測距光33としてレーザ光線を発光又はバースト発光(断続発光)させる。該測距光33が前記三角プリズム43a,44a(測距光偏向部)により、測定対象2に向う様前記射出光軸26(即ち、前記測距光軸35)が偏向される。前記測距光軸35が、測定対象2を視準した状態で測距が行われる。
前記測定対象2から反射された前記反射測距光34は、前記三角プリズム43b,43c及び前記三角プリズム44b,44c(反射測距光偏向部)、前記結像レンズ38を介して入射し、前記受光素子39に受光される。該受光素子39は、受光信号を前記測距演算部13に送出し、該測距演算部13は前記受光素子39からの受光信号に基づき、測距光毎に測定点(測距光が照射された点)の測距を行い、測距データは前記記憶部15に格納される。
前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50に入力する駆動パルスをカウントすることで、前記モータ48,50の回転角を検出する。或は、エンコーダからの信号に基づき、前記モータ48,50の回転角を検出する。又、前記射出方向検出部22は、前記モータ48,50の回転角に基づき、前記光学プリズム41,42の回転位置を演算する。
更に、前記射出方向検出部22は、前記光学プリズム41,42の屈折率と、該光学プリズム41,42を一体とした時の回転位置、両光学プリズム41,42間の相対回転角とに基づき、各測距光毎の前記測距光33の偏角、射出方向を演算する。演算結果(測角結果)は、測距結果に関連付けられて前記演算制御部14に入力される。尚、前記測距光33がバースト発光される場合は、断続測距光毎に測距が実行される。
前記演算制御部14は、前記モータ48,50の回転方向、回転速度、前記モータ48,50間の回転比を制御することで、前記光学プリズム41,42の相対回転、全体回転を制御し、前記光軸偏向部19による偏向作用を制御する。又、前記測距光33の偏角、射出方向から、前記測距光軸35に対する測定点の水平角、鉛直角を演算する。更に、測定点についての水平角、鉛直角を前記測距データに関連付けることで、測定対象2の3次元データを求めることができる。而して、前記測量装置1は、トータルステーションとして機能する。
次に、前記姿勢検出部20について説明する。尚、該姿勢検出部20としては、特許文献1に開示された姿勢検出部を使用することができる。
該姿勢検出部20について図2を参照して簡単に説明する。該姿勢検出部20は、フレーム54を有している。該フレーム54は、前記筐体25に固定され、或は構造部材に固定され、前記測量装置本体4と一体となっている。
前記フレーム54にはジンバルを介してセンサブロック55が取付けられている。該センサブロック55は、直交する2軸を中心に2方向にそれぞれ360°回転自在となっている。
該センサブロック55には、第1傾斜センサ56、第2傾斜センサ57が取付けられている。前記第1傾斜センサ56は水平を高精度に検出するものであり、例えば水平液面に検出光を入射させ反射光の反射角度の変化で水平を検出する傾斜検出器、或は封入した気泡の位置変化で傾斜を検出する気泡管である。又、前記第2傾斜センサ57は傾斜変化を高応答性で検出するものであり、例えば加速度センサである。
前記センサブロック55の、前記フレーム54に対する2軸についての各相対回転角は、エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される様になっている。
又、前記センサブロック55を回転させ、水平に維持するモータ(図示せず)が前記2軸に関してそれぞれ設けられている。該モータは、前記第1傾斜センサ56、前記第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき、前記センサブロック55を水平に維持する様に前記演算制御部14によって制御される。
前記センサブロック55が傾斜していた場合(前記測量装置本体4が傾斜していた場合)、前記センサブロック55(水平)に対する前記フレーム54の各軸方向の相対回転角が前記エンコーダ58,59によってそれぞれ検出される。該エンコーダ58,59の検出結果に基づき、前記測量装置本体4の2軸についての傾斜角、2軸の傾斜の合成によって傾斜方向が検出される。
前記センサブロック55は、2軸について360°回転自在であるので、前記姿勢検出部20がどの様な姿勢となろうとも、例えば該姿勢検出部20の天地が逆になった場合でも、全方向での姿勢検出(水平に対する傾斜角、傾斜方向)が可能である。
姿勢検出に於いて、高応答性を要求する場合は、前記第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢検出と姿勢制御が行われるが、該第2傾斜センサ57は前記第1傾斜センサ56に比べ検出精度が悪いのが一般的である。
前記姿勢検出部20では、高精度の前記第1傾斜センサ56と高応答性の前記第2傾斜センサ57を具備することで、該第2傾斜センサ57の検出結果に基づき姿勢制御を行い、更に前記第1傾斜センサ56により高精度の姿勢検出を可能とする。
該第1傾斜センサ56の検出結果で、前記第2傾斜センサ57の検出結果を較正することができる。即ち、前記第1傾斜センサ56が水平を検出した時の前記エンコーダ58,59の値、即ち実際の傾斜角と前記第2傾斜センサ57が検出した傾斜角との間で偏差を生じれば、該偏差に基づき前記第2傾斜センサ57の傾斜角を較正することができる。
従って、予め、該第2傾斜センサ57の検出傾斜角と、前記第1傾斜センサ56による水平検出と前記エンコーダ58,59の検出結果に基づき求めた傾斜角との関係を取得しておけば、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角の較正(キャリブレーション)をすることができ、該第2傾斜センサ57による高応答性での姿勢検出の精度を向上させることができる。環境変化(温度等)の少ない状態では、傾斜検出は前記第2傾斜センサ57の検出結果と補正値で求めてもよい。
前記演算制御部14は、傾斜の変動が大きい時、傾斜の変化が速い時は、前記第2傾斜センサ57からの信号に基づき、前記モータを制御する。又、前記演算制御部14は、傾斜の変動が小さい時、傾斜の変化が緩やかな時、即ち前記第1傾斜センサ56が追従可能な状態では、該第1傾斜センサ56からの信号に基づき、前記モータを制御する。尚、常時、前記第2傾斜センサ57に検出された傾斜角を較正することで、該第2傾斜センサ57からの検出結果に基づき前記姿勢検出部20による姿勢検出を行ってもよい。
尚、前記記憶部15には、前記第1傾斜センサ56の検出結果と前記第2傾斜センサ57の検出結果との比較結果を示す対比データが格納されている。前記第1傾斜センサ56からの信号に基づき、該第2傾斜センサ57による検出結果を較正する。この較正により、該第2傾斜センサ57による検出結果を前記第1傾斜センサ56の検出精度迄高めることができる。よって、前記姿勢検出部20による姿勢検出に於いて、高精度を維持しつつ高応答性を実現することができる。
前記測定方向撮像部21は、前記測量装置本体4の前記基準光軸Oと平行な前記第1撮像光軸61と、該第1撮像光軸61に配置された撮像レンズ62とを有している。前記測定方向撮像部21は、前記光学プリズム41,42による最大偏角θ/2(例えば±30°)と略等しい、例えば50°~60°の画角を有するカメラである。前記第1撮像光軸61と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとの関係は既知であり、前記第1撮像光軸61と前記射出光軸26及び前記基準光軸Oとは平行であり、又各光軸間の距離は既知の値となっている。
又、前記測定方向撮像部21は、静止画像又は連続画像或は動画像が取得可能である。前記測定方向撮像部21で取得された画像は、前記表示部7に表示され、作業者は該表示部7に表示された画像を観察して測定作業を実行できる。
前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21の撮像を制御すると共に該測定方向撮像部21と前記下方撮像部5との同期制御を行う。又、前記撮像制御部16は、前記測定方向撮像部21が前記動画像、又は連続画像を撮像する場合に、該動画像、又は連続画像を構成するフレーム画像を取得するタイミングと前記測量装置本体4でスキャンするタイミングとの同期を取っている。前記演算制御部14は画像と測定データ(測距データ、測角データ)との関連付けも実行する。
前記測定方向撮像部21の撮像素子63は、画素の集合体であるCCD、或はCMOSセンサであり、各画素は画像素子上での位置が特定できる様になっている。例えば、各画素は、前記第1撮像光軸61を原点とした座標系での画素座標を有し、該画素座標によって画像素子上での位置が特定される。又、前記第1撮像光軸61と前記基準光軸Oとの関係が既知であるので、前記測距部24による測定位置と前記撮像素子63上での位置との相互関連付けが可能である。前記撮像素子63から出力される画像信号は、前記撮像制御部16を介して前記画像処理部17に入力される。
前記光軸偏向部19の偏向作用、スキャン作用について、図4(A)~図4(C)を参照して説明する。
尚、図4(A)では、説明を簡略化する為、前記光学プリズム41,42について、前記三角プリズム43a,44aと、前記三角プリズム43b,43c,44b,44cとを分離して示している。又、図4(A)は、前記三角プリズム43a,44a、前記三角プリズム43b,43c,44b,44cが同方向に位置した状態を示しており、この状態では最大の偏角(例えば、±30°)が得られる。又、最少の偏角は、前記光学プリズム41,42のいずれか一方が180°回転した位置であり、該光学プリズム41,42の相互の光学作用が相殺され、偏角は0°となる。従って、前記光学プリズム41,42を経て射出、受光されるレーザ光線の光軸(前記測距光軸35)は、前記基準光軸Oと合致する。
前記発光素子27から前記測距光33が発せられ、該測距光33は前記投光レンズ28で平行光束とされ、前記測距光偏向部(前記三角プリズム43a,44a)を透過して測定対象2に向けて射出される。ここで、前記測距光偏向部を透過することで、前記測距光33は前記三角プリズム43a,44aによって所要の方向に偏向されて射出される(図4(A))。
前記測定対象2で反射された前記反射測距光34は、前記反射測距光偏向部を透過して入射され、前記結像レンズ38により前記受光素子39に集光される。
前記反射測距光34が前記反射測距光偏向部を透過することで、前記反射測距光34の光軸は、前記受光光軸31と合致する様に前記三角プリズム43b,43c及び前記三角プリズム44b,44cによって偏向される(図4(A))。
前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との回転位置の組合わせにより、射出する前記測距光33の偏向方向、偏角を任意に変更することができる。
又、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42との位置関係を固定した状態で(前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とで得られる偏角を固定した状態で)、前記モータ48,50により、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを一体に回転すると、前記測距光偏向部を透過した前記測距光33が描く軌跡は前記基準光軸O(図2参照)を中心とした円となる。
従って、前記発光素子27よりレーザ光線を発光させつつ、前記光軸偏向部19を回転させれば、前記測距光33を円の軌跡でスキャンさせることができる。尚、前記反射測距光偏向部は、前記測距光偏向部と一体に回転していることは言う迄もない。
図4(B)は、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを相対回転させた場合を示している。前記光学プリズム41により偏向された光軸の偏向方向を偏向Aとし、前記光学プリズム42により偏向された光軸の偏向方向を偏向Bとすると、前記光学プリズム41,42による光軸の偏向は、該光学プリズム41,42間の角度差θとして、合成偏向Cとなる。
従って、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42を逆向きに同期して等速度で往復回転させた場合、前記光学プリズム41,42を透過した前記測距光33は、直線状にスキャンされる。従って、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42とを逆向きに等速度で往復回転させることで、図4(B)に示される様に、前記測距光33を合成偏向C方向に直線の軌跡64で往復スキャンさせることができる。
更に、図4(C)に示される様に、前記光学プリズム41の回転速度に対して遅い回転速度で前記光学プリズム42を回転させれば、角度差θは漸次増大しつつ前記測距光33が回転される。従って、該測距光33のスキャン軌跡はスパイラル状となる。
又、前記光学プリズム41、前記光学プリズム42の回転方向、回転速度を個々に制御することで、前記測距光33のスキャン軌跡を前記基準光軸Oを中心とした種々の2次元のスキャンパターンが得られる。
例えば、前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の、一方の光学プリズム41を25回転、他方の光学プリズム42を逆方向に5回転することで、図6に示される様な、花びら状の2次元の閉ループスキャンパターン(花びらパターン74(内トロコイド曲線))が得られる。
前記下方撮像部5について説明する。
該下方撮像部5は、前記測量装置本体4と電気的に接続されており、前記撮像制御部16によって画像の取得が制御され、前記下方撮像部5による撮像タイミングと前記測定方向撮像部21による撮像タイミングとは、前記撮像制御部16によって同期制御が実行されている。前記下方撮像部5で取得された画像データは前記測量装置本体4の撮像制御部16を介して前記画像処理部17に入力される。
前記下方撮像部5は、前記測量装置本体4の機械中心に対して既知の位置に設けられており、前記下方撮像部5と前記ハンドポール3下端との距離も既知となっている。
更に、前記下方撮像部5の前記第2撮像光軸10は前記基準光軸Oと既知の関係にあり、前記下方撮像部5で取得した画像データは、前記演算制御部14によって前記測定方向撮像部21で取得した画像、前記測距部24で測定した測距データと関連付けられて前記記憶部15に格納される。
前記表示部7は、前記測量装置本体4の測定状態、測定結果等を表示し、又前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21が取得した画像を表示する。前記表示部7から前記測量装置本体4に測定作業に関する指令等、各種指令を入力できる様になっている。
図5を参照して前記設置基準板6について説明する。
該設置基準板6自体の形状は、円板であっても矩形の板であっても、或は他の形状であってもよい。前記設置基準板6の上面に、基準マーカ66が形成される。
該基準マーカ66は、中心と水平方向の方向を示す形状を有している。前記基準マーカ66は、該基準マーカ66の中心と同心で、且つ既知の直径を有する真円の外円線67、該外円線67と同心で、且つ既知の直径を有する真円の内円線68、更に前記基準マーカ66の中心から放射状に延出し、前記外円線67と前記内円線68との間に形成された放射線から構成されている。該放射線は円周を等分割した位置に形成されている。例えば、放射線は円周が16等分(22.5゜間隔)された位置に設けられている。前記放射線の1つは、方向基準線69aであり、該方向基準線69aを基準として円周4等分した位置の放射線は副方向基準線69bであり、残りの放射線は方向補助線69cとなっている。又、前記方向基準線69a、前記副方向基準線69b、前記方向補助線69cは、識別可能な様に、前記方向基準線69aは太線、前記副方向基準線69bは中太線、前記方向補助線69cは細線となっている。
尚、識別の方法としては、前記下方撮像部5が取得する画像が色彩を有する場合は、前記方向基準線69a、前記副方向基準線69b、前記方向補助線69cは色分けしてもよい。又、形状で識別する場合は、前記の方向線(69a,69b,69c)の代わりに方向基準を狭角とした二等辺三角形にしてもよい。
前記設置基準板6は、該設置基準板6の中心が前記基準点Rに合致する様に設置される。従って、該設置基準板6の中心と前記基準点Rとを合致し易い様に、前記設置基準板6が透明板であり、或は前記内円線68の内部が刳貫れている。
図1~図6を参照して、前記測量装置1の測定作用について説明する。
以下の測定作用は、前記記憶部15に格納されたプログラムを前記演算制御部14が実行することでなされる。
測定を開始する準備として、前記設置基準板6の中心を基準点Rに位置決めし、前記方向基準線69aを所定或は任意の方向に向ける。
前記ハンドポール3を略垂直として作業者が保持する。又、前記下方撮像部5、前記測定方向撮像部21は作動状態で前記測量装置1の設置は行われ、前記下方撮像部5で取得した第2画像、前記測定方向撮像部21が取得した第1画像が前記表示部7に表示される。尚、所定の測定点を測定する場合は、前記光軸偏向部19による偏向は休止し、前記測距光軸35と前記基準光軸Oとは合致させておく。
作業者は、前記表示部7に表示された画像を観察し、前記設置基準板6が第2画像中に含まれていることを確認しつつ、前記測定対象2を前記測定方向撮像部21で取得した第1画像の中心に捉える。
作業者が前記基準光軸O(即ち、前記測距光軸35)が前記測定対象2に合致したと確認した時点で、作業者が前記表示部7より測定の指令を入力してもよく、或は所定時間間隔で測距を継続し、作業者が前記測量装置本体4を前記測定対象2に向ける作業をしている過程で、前記測定対象2と前記基準光軸Oとが合致したことを画像処理で確認し、前記測定対象2と前記基準光軸Oとが合致した時点の測距値を取得する様にしてもよい。尚、前記光軸偏向部19の状態は前記射出方向検出部22によって検出され、前記基準光軸Oと前記測距光33の方向は前記光軸偏向部19の状態に基づき関係付けられ、前記基準光軸Oと前記第1撮像光軸61は既知の関係であるので、前記測距光33の方向を第1画像中に例えば十字線で表示させ、前記測定対象2を十字線に捉える様にしてもよい。
測距値取得時の前記下方撮像部5による画像が取得され、画像処理で前記基準マーカ66に基づき前記下方撮像部5(即ち、前記測量装置本体4)の前記基準点Rに対する斜距離、前記設置基準板6の面に対する傾斜角、傾斜方向が演算される。
図1に示される様に、前記下方撮像部5の第2撮像光軸10は傾斜しており、前記下方撮像部5で取得される画像は、楕円形となっている。楕円の長径は、元の円の直径に等しいので、例えば前記外円線67の像の長径を求めれば、該外円線67の第2画像上での直径を求めることができる。第2画像上での前記外円線67の大きさと前記基準マーカ66と下方撮像部5間の距離の関係を予め求めておくことで、前記基準マーカ66と前記下方撮像部5間の斜距離を演算することができる。
更に、前記外円線67の長径と短径の比率を求めることで、前記第2撮像光軸10の前記設置基準板6の面に対する傾斜角を演算することができ、更に、前記外円線67の長径又は短径が前記基準マーカ66のどの位置に現れるかを求めることで、前記第2撮像光軸10が前記測定対象2に対してどの方向に傾斜しているかを演算することができる。
上記説明は、前記基準マーカ66が真円を有する場合を説明したが、真円でなくても、既知の形状を有する基準マーカであればよい。正対している時の基準マーカの形状(画像)に対して基準マーカが傾斜した場合の形状(画像)の変化を求めれば、傾斜角、傾斜方向が求められる。尚、使用される基準マーカとしては、左右、上下対称であることが好ましい。
而して、演算により求められた、前記下方撮像部5(即ち、前記測量装置本体4)と前記基準点R間の斜距離、前記設置基準板6の面に対する傾斜角、傾斜方向、前記第2撮像光軸10の前記測定対象2に対する傾斜方向に基づき、前記測量装置本体4により取得した前記測定対象2についての測距結果を補正することができる。該測距結果の補正により、該基準点Rを基準とした座標を測定することができる。
次に、前記基準マーカ66の画像処理で、前記測量装置本体4の傾斜角、傾斜方向を演算したが、前記姿勢検出部20による姿勢検出結果に基づき鉛直、水平を基準にした前記測量装置本体4の傾斜角、傾斜方向を検出できる。
前記測量装置1の水平に対する傾斜は、前記姿勢検出部20によってリアルタイムで検出されるので、前記測定対象2の前記基準点Rを基準とした鉛直座標をリアルタイムで測定することができる。
次に、図6を参照して前記基準点Rの中心を通る鉛直線を中心とする水平回転角の検出について説明する。
尚、図6中、71は前記測定方向撮像部21の第1画像取得範囲、72は前記下方撮像部5の第2画像取得範囲、73は前記光軸偏向部19による前記測距光軸35の偏向範囲、74は測距光を照射しつつ前記光軸偏向部19により花びらパターンでスキャンした場合の軌跡を示している。前記花びらパターン74に示されるドットは複数測距光の照射点を示す。又、75は前記第1画像取得範囲71の画像中心(該画像中心75は前記基準光軸Oと合致する)、76は前記第2画像取得範囲72の画像中心(該画像中心76は、前記第2撮像光軸10と合致する)を示している。
又、図1に於いて、θ1は前記測定方向撮像部21の画角、θ2は前記下方撮像部5の画角、θ3は前記測量装置本体4のスキャン範囲をそれぞれ示している。
更に、図6は、前記基準光軸Oと前記第2撮像光軸10間の角度がθ4に設定され、前記測距光軸35が前記基準光軸Oに対して6°下方に傾斜した状態を示している。
前記第2撮像光軸10は下方に向けられ、前記第2画像取得範囲72が前記基準マーカ66を含む様に、前記下方撮像部5の方向が設定されている。従って、前記下方撮像部5が取得する画像には、前記基準点Rを含み、更に測定者側の範囲(図示では略80°)の画像が含まれている。
この前記基準点Rを中心とした所定半径の画像を水平角検出用の水平角検出画像77として設定し、リアルタイムで取得する。
測定開始時の前記水平角検出画像77を取得し、該水平角検出画像77を水平基準画像77aとして設定する。
測定開始以降の水平角を検出する場合は、前記水平基準画像77aに対する前記水平角検出画像77の変位を検出し、変位に基づき水平回転角を演算する。
水平回転角の演算には、先ず前記水平基準画像77aの前記基準点R(前記基準マーカ66の画像中心)と前記水平角検出画像77の前記基準点R(前記基準マーカ66の画像中心)を合致させ、前記水平角検出画像77と前記水平基準画像77a間の偏差を求める。
前記水平角検出画像77と前記水平基準画像77a間の偏差には、水平回転角と前記第2撮像光軸10の倒れ角が含まれている。前記偏差の内、前記基準点Rを中心とする周方向の偏差成分は、水平回転角の変化に対応し、前記基準点Rを中心とする半径方向の偏差成分は、前記第2撮像光軸10の倒れ角の変化に対応する。
前記第2撮像光軸10の倒れ角の変化は前記基準マーカ66の画像の変化と前記姿勢検出部20によって検出でき、又前記基準点Rと前記下方撮像部5との距離は前記基準マーカ66の画像によって演算できるので、演算距離と前記第2撮像光軸10の倒れ角の検出結果とに基づき前記周方向の偏差成分から前記第2撮像光軸10の倒れ角の影響を除去することができる。
而して、前記水平回転角を前記下方撮像部5の撮像素子の画素単位で、高精度、且つリアルタイムに検出することができる。
次に、図1に示される様に、前記測量装置本体4により前記測定対象2を測定すると、前記測定対象2迄の斜距離が測定され、更に前記第1撮像光軸61に対する前記基準光軸Oの偏角(図6では6°)と前記基準光軸Oに対する前記測距光軸35の偏角が前記射出方向検出部22によって検出され、又前記測量装置本体4の水平に対する傾斜角が前記基準マーカ66の図形から、或は前記姿勢検出部20によって検出され、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角が演算され、前記測量装置本体4の水平回転変化が前記水平角検出画像77の画像から検出される。
前記測距光軸35の水平に対する傾斜角に基づき、前記斜距離が水平回転角に補正され、前記測距光軸35の水平に対する傾斜角が演算され、検出された水平回転角に基づき方向角が演算され、前記基準点Rと前記測量装置本体4との斜距離が演算され、前記第2撮像光軸10の倒れ角が演算され、前記基準点Rを基準とした前記測定対象2の3次元座標が求められる。
上記説明では、前記測距光軸35を固定した状態で、即ち前記光軸偏向部19を休止状態で測定したが、前記測量装置本体4をレーザスキャナとしても測定することができる。
図6に示される様に、前記光軸偏向部19は前記偏向範囲73の範囲で、前記測距光軸35を自在に偏向できる。前記光学プリズム41と前記光学プリズム42の回転を制御することで、前記花びらパターン74の軌跡でスキャンさせることができる。スキャン過程で測距光を照射することで、前記花びらパターン74の軌跡に沿った測距データ(3次元座標を有する)を取得することができる。又、測距データ密度を上げる場合は、前記花びらパターン74が1パターンスキャンされる度に前記花びらパターン74を周方向に所定角度回転させればよい。又、スキャンと同期して前記第1画像と前記第2画像が取得される。
又、スキャン中心を変更する場合(スキャン範囲を変更する場合)は、前記ハンドポール3を軸心を中心に回転させるか、或は前記ハンドポール3の倒れ角を変更する。而して、所望の方向の、所望の範囲の点群データを容易に取得することができる。
又、前記測定方向撮像部21で取得した第1画像と、前記下方撮像部5で取得した第2画像とを合成する場合は、両画像のオーバラップ部分を用いて行うことができる。或は、図6に示される様に、前記花びらパターン74の一部が前記第2画像取得範囲72に含まれる様にスキャンを実行し、前記第1画像中の軌跡に沿った測距データ、前記第2画像中の軌跡に沿った測距データを用いて直ちに前記第1画像と前記第2画像との合成が可能である。
尚、合成に用いられる軌跡に沿ったデータは、前記第1画像、前記第2画像に共通に含まれる軌跡に沿ったデータを用いてもよく、或は前記第1画像、前記第2画像に個別に含まれる軌跡に沿ったデータの座標値を用いて前記第1画像と前記第2画像とを合成してもよい。
前記第1画像と前記第2画像を合成することで、前記基準点Rから測定対象2迄を含む広範囲の観察画像が取得でき、測定範囲、測定位置の確認が容易になり、作業性が向上する。又、第1画像、或は合成画像と2次元スキャンで得られた軌跡に沿ったデータとを関連付けることで3次元データ付の画像が取得できる。
尚、上記実施例では、測量装置本体として光軸偏向部19を有し、2次元スキャン可能な測量装置本体4を用いたが、測距機能のみを有する測量装置本体を設けてもよい。この場合、点群データは取得できないが、測量装置1の整準作業等の設置作業が不要で簡単に設置でき、所望の測定点の3次元座標の測定が可能である。
更に、この場合、市販のレーザ距離計を測量装置本体4として使用することができ、測量装置1を安価に構成することができる。