JP7032184B2 - 床板中配線構造及び鉄道車両 - Google Patents

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Description

本発明は、鉄道車両の床板の中及び床下に配線される電線のルートに関し、床板内部の構造を利用した配線に関する技術である。
近年、特に高速車両など、長距離の利用客から各座席にコンセントを配置して欲しいという要望が高まっている。これまでにも、鉄道車両にはスポットライトや電光表示板、ディスプレイなどといった電力の供給を必要とする機器も備えられるため、車両構体内部に配線するというケースは増えてきており、そうした検討はなされている。
特許文献1には、鉄道車両構体における断熱材及び配線束の固定構造、並びに断熱材及び配線束の固定構造を備えた鉄道車両構体に関する技術が開示されている。この固定構造は、屋根構体、側構体及び妻構体の各構体又は台枠の車体内面に鉄道車両構体の長手方向に沿って備えられた固定レールと、車体内面に沿って且つ固定レールの長手方向に交差する方向に延びておりかつ固定レールに係止されている係止部を有する固定部材を備えている。この固定部材は、各構体又は台枠の車体内面に沿って置かれた断熱材を保持する保持部と、配線束を挟持する挟持部を備えている。このような配線束を挟持する挟持部を側構体の内部に備えることで、配線束の交換や断熱材の交換にあたって作業時間の短縮を実現している。
特許文献2には、軌条車両構体へのモジュールユニットの取り付け構造及び取り付け方法に関する技術が開示されている。軌条車両構体にモジュールユニットを固定するために、軌条車両構体の一部に形成された取り付けレールと取り付けレール内に挿入されるとともにモジュールユニットを締結固定するモジュール固定機構を備えている。このモジュール固定機構は、モジュールユニットと締結する複数のボルトと、複数のボルトを保持するボルト保持部材と、を含み、ボルト保持部材にはモジュールユニットの取り付けピッチに合わせて複数のボルトが挿入される孔が形成されている。これにより屋根構体や側構体に、軌条車両構体の長手方向に配線を固定することが可能となる。
特開2011-5993号公報 特開2016-74378号公報
しかしながら、特許文献1や特許文献2に記載の技術を用いた場合にも、鉄道車両にクロスシートを採用している場合、そのクロスシートの各個席にコンセントを備える事は困難である。これは、クロスシートに回転式のものが多いため、屋根構体や側構体を通して電源ケーブルを通すのでなく、床側から電源ケーブルを通す必要があるからである。床板を貫通させて各座席のコンセントまで電源を供給するにあたって、特許文献1や特許文献2には床側に電源ケーブルを配線する点について直接的な言及が無く、屋根構体や側構体と床側の構成が異なるため、特許文献1や特許文献2を適用することは困難である。
具体的には、床構体の上には床板が備えられ、床構体と床板の間に給排気用のダクトが鉄道車両の長手方向に連通して設けられるケースが多い。しかし、電源ケーブルをクロスシート側に配線していくためにはこのダクトと交差する方向に配置する必要がある。だが、例えば床上配線をした上でカバーをする様な方法では、見栄えの問題や清掃作業を悪化させるなどの課題が生じると考えられる。一方で、床板の下部に配線する場合には、ダクトを貫通するかこれを避けて配置する必要がある。
そこで、本発明はこの様な課題を解決する為に、床板の内部に電源ケーブルを配線することが可能な床板中配線構造及び鉄道車両の提供を目的とする。
前記目的を達成するために、本発明の一態様による床板中配線構造は、以下のような特徴を有する。
(1)鉄道車両に用いられる床板の床板中配線構造において、前記床板は、複層構造であり、内部を貫通する中空部材を備え、該中空部材の断面高さは前記床板の厚みより小さく、前記中空部材の開口部は、一端を前記鉄道車両の側構体側に側構体側開口部を、他端を座席の下に中央側開口部を備え、前記中空部材の内部に配線していること、を特徴とする。
上記(1)に記載の態様によって、電源ケーブルなどの配線を床板内部に設けた中空部材を通して座席の脚下まで配線することができる。複層構造になっている床板は、所定の厚みを有しており、構造強度を落とすことは好ましくない。この点、中空部材を通してやることでその問題を回避できる。その結果、床上配線などを避けて見栄えの問題や清掃作業の悪化などという問題を回避することが可能となる。
(2)(1)に記載の床板中配線構造において、前記床板の下には、前記鉄道車両に備えられる空調の給気ダクト及び排気ダクトが配置され、前記排気ダクトのダクト開口部が前記座席の下に設けられ、前記ダクト開口部の周囲に保護枠を備え、該保護枠と前記ダクト開口部の間に、前記中空部材の前記中央側開口部を配置し、前記配線は、前記側構体側開口部から前記中央側開口部まで挿通され、前記ダクト開口部と前記保護枠の間を通されること、が好ましい。
上記(2)に記載の態様によって、床板の内部に配線した上で、その取り出し口である中央側開口部をダクト開口部と保護枠の間を通すことで、床上に露出させずに配線することができる。この際に、特に床上に配線用のカバーなどを新たに設ける必要が無いため、掃除などの邪魔にはならず、脚下の空間を縮小するようなことにもならないため、乗客の快適性を損なうことが無い。
(3)(1)または(2)に記載の床板中配線構造において、前記配線は、前記座席に設けられたコンセントに電源を供給する電源ケーブルであること、が好ましい。
上記(3)に記載の態様によって、電源ケーブルを露出させずに各座席に設けられた個席コンセントに電力を提供することが可能となる。個席にコンセントを設けることで、壁面にコンセントを設けた場合のように窓際の乗客しか使えないといった問題を解決できる。
また、前記目的を達成するために、本発明の他の態様による鉄道車両は、以下のような特徴を有する。
(4)複層構造の床板を有し、該床板には、内部を貫通する中空部材が備えられ、該中空部材の断面高さは前記床板の厚みより小さく、前記中空部材の開口部は、一端を側構体側に側構体側開口部を、他端を座席の下に中央側開口部を備え、前記中空部材の内部に配線していること、を特徴とする。
上記(4)に記載の態様によって、床板内部に設けた中空部材を通して座席の脚下まで配線した鉄道車両の提供ができる。すなわち(1)に記載の床板中配線構造を採用した鉄道車両を提供する事で、例えばシートの個席に電源を供給するコンセントを設けて、乗客への利便性を図ることができる。
(5)(4)に記載の鉄道車両において、前記床板の下には、空調に用いる給気ダクト及び排気ダクトが配置され、前記排気ダクトのダクト開口部が前記座席下に設けられ、前記ダクト開口部の周囲に保護枠を備え、該保護枠と前記ダクト開口部の間に、前記中空部材の前記中央側開口部を配置し、前記配線は、前記側構体側開口部から前記中央側開口部まで挿通され、前記ダクト開口部と前記保護枠の間を通されること、が好ましい。
上記(5)に記載の態様によって、ダクト開口部の周囲を覆うように配置される保護枠とダクト開口部の外面との間に配線を通すことで、配線が外部に露出しないように配線可能である為、安全性や美観を損なわないように乗客への利便性を図ることができる。
本実施形態の、鉄道車両の断面図である。 本実施形態の、床構体周りの拡大図である。 本実施形態の、座席の斜視図である。 本実施形態の、床板の平面図である。 本実施形態の、床板の拡大平面図である。 本実施形態の、排気口保護枠付近の断面図である。 本実施形態の、床板の断面図である。
まず、本発明の実施形態について、図面を用いて説明を行う。図1に、本実施形態の、鉄道車両の断面図を示す。鉄道車両10は、車両構体100と台車300を有しており、車両構体100は床構体101、側構体102、屋根構体103などよりなる。鉄道車両10は、その構体構造にいわゆるダブルスキン構造を採用している。図2に、床構体周りの拡大図を示す。図2に示される部分は一例としてダブルスキン構造となっており、床構体101には複数の根太110が配置され、その上に床板120が支持されている。
図2に示すように、床構体101の上には複数の根太110が配置され、その上に防振材160が配置されている。床板120は、この防振材160に支持される形で配置されている。この床板120の上には座席250が複数配置されている。図3に、座席の斜視図を示す。なお、座席250は図1では両方とも二人掛けの席として描かれているが、片方は三人掛けの席の場合も同様と考えて差し支えない。
座席250は、座席脚外側251と座席脚内側252とで支持されるシート255と、シート255に取り付けられる外側アーム256と内側アーム257が配置される。このうち外側アーム256の先端に、コンセント260が設けられる。なお、座席250が3列の場合には、2つ設けられる内側アーム257の1つにもコンセント260が設けられることになる。
図4に、床板の平面図を示す。図5に、床板の拡大平面図を示す。図6に、排気口保護枠付近の断面図を示す。図7に、床板の断面図を示す。図7は、図5のCC断面にあたる。床板120はアルミハニカムコア122を用い、上面側に上面板121を張り付けた複層構造となっており、下面側にも下面板123が貼り付けられている。なお、上面板121や下面板123は実際には複数の部材から構成されている場合もあるが、ここではその説明は割愛する。アルミハニカムコア122は、その一部が切り欠かれ、ロ型断面の中空部材124が埋め込まれている。この中空部材124の内部が配線路125として用いられる。なお、中空部材124は必要な強度が確保できる様に、肉厚などが設定されている。
配線路125は、図5に示される様に、第1シート固定部151と第2シート固定部152の間を通るように配置されており、第4シート固定部154付近に開口する構造となっている。床板120の下には、RAダクト140の隣にはCAダクト130が配置されている。CAダクト130とRAダクト140は鉄道車両10の客室内の空調に用いている配管である。したがって配線路125は、床板120の内部に設けられ、これが車両構体100の内部に座席250の列に応じて配置されることになる。
第3シート固定部153と第4シート固定部154の間には排気口141が開口しており、この排気口141はRAダクト140と連通している。排気口141の周囲には保護枠150が設けられている。保護枠150は排気口141を覆うカバーの役割を果たしている。配線路125の開口部はこの排気口141と保護枠150の間に設けられる。第1シート固定部151乃至第4シート固定部154は、座席脚外側251及び座席脚内側252が固定される部分である。
この配線路125に配線されるのが電源ケーブル200で、電源ケーブル200は、中空部材124の内部を通されて、保護枠150と排気口141の間を通され、図6に示される様な形で、座席250に配線される。保護枠150の内部でコネクタ205に接続され、座席250側からの配線210と接続される。配線210は座席脚内側252の内部を通されて座席250の外側アーム256内部を通過し、コンセント260に連通される。
本実施形態の床板中配線構造及び鉄道車両は上記構成であるため、以下に示すような作用及び効果を奏する。
まず、本実施形態の床板120の内部に電源ケーブル200を配線することが可能な床板中配線構造を提供することが可能となる。これは、鉄道車両10に用いられる床板120の床板中配線構造において、床板120は、複層構造であり、内部を貫通する中空部材124を備え、中空部材124の断面高さは床板120の厚みより小さく、中空部材124の開口部は、一端を鉄道車両10の側構体102側に側構体側開口部を、他端を座席250の下に中央側開口部を備え、中空部材124の内部に電源ケーブル200を通していることを特徴とするからである。
また、床板120の下には、鉄道車両10に備えられる空調の給気ダクトであるCAダクト130及び排気ダクトであるRAダクト140が配置され、RAダクト140のダクト開口部である排気口141が座席250の下に設けられ、排気口141の周囲に保護枠150を備え、保護枠150と排気口141の間に、中空部材124の中央側開口部を配置し、電源ケーブル200は、側構体側開口部から中央側開口部まで挿通され、排気口141と保護枠150の間を通されること、が好ましい。
電源ケーブル200は、クロスシートタイプになっている座席250に配線され、個席にある肘掛け部分、外側アーム256の先端に設けられたコンセント260に給電することができる。この際に、床板120の内部に中空部材124を通してあることで、電源ケーブル200を鉄道車両10の客室内に露出させないで配線することができる。床板120の上に配線カバーを設置するような手法の場合、美観を損なう虞や清掃の妨げになる虞があるため好ましくないが、予めこの様な配線経路を設けておくことでこの様な問題を回避できる。
床板120の内部に中空部材124を設けるにあたって、図7に示すように床板120が複層構造になっているので、アルミハニカムコア122部分を切り欠いて中空部材124を這わせ、接着施工などを行うことで、一体的に床板120を形成する事ができる。中空部材124の肉厚を工夫すれば、床板120の強度を落とす心配も無い。このような床板120を配置した上で、第1シート固定部151と第2シート固定部152の間を通る位置に中空部材124が設けられることで、第3シート固定部153と第4シート固定部154の間に設けられた排気口141の付近に電源ケーブル200を通すことができる。
排気口141の周りには保護枠150が配置されることから、この保護枠150と排気口141の間に電源ケーブル200を通すことで、結果的に外部に電源ケーブル200を露出させずに座席250まで配線することが可能である。また、電源ケーブル200は、保護枠150の内部にコネクタ205を設けておくことで、座席250側から通した電源ケーブル200と接続し、座席250の取り付け、取り外しの際にも、スムーズに施工を行うことが可能となる。または座席枠側にコネクタ205を設けても良い。
このような、座席250の個席にそれぞれコンセント260を設けるといった、快適装備のニーズはこれからも高まっていくと考えられ、特に長距離を移動する場合には重宝されると考えられる。一方で、電源ケーブル200の外部への露出も好まれない上、清掃時の妨げになる虞もあるため、このようなスマートな施工ができる手法は、乗客にとっても鉄道会社にとってもメリットとなる。
そして、このような複層構造の床板120の内部に中空部材124を設けて、この中空部材124の内部を配線路125として活用することで、例えば温度センサーなどの配線などを通したり、LAN配線を通したり、といった他の配線を通すような用途にも活用することが期待される。ルームライトのようなものの配線に使うなどという事も考えられる。つまり、電源ケーブル200の他にも信号線を通す用途にも用いる事が可能である。また、特に排気口141から取り出す手法に拘る必要も無い。鉄道車両の構造によっては排気口141が都合の良い場所に無いケースも考えられるが、例えば座席250の足下から目立たないように配線することも可能である。
以上、本発明に係る床板中配線構造及び鉄道車両に関する説明をしたが、本発明はこれに限定されるわけではなく、その趣旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。例えば、鉄道車両10の断面を示しているが、あくまで一例である為、この構成にかかわらず採用が可能である。また、床板120の構造についても、アルミハニカムコア122を採用した例を示したが、複層構造であれば中空部材124を設けることは容易になると思われるので、本発明の適用がし易いと考えられる。また、配線位置についても設計事項の範囲で変更することを妨げない。
また、本実施形態の中では、鉄道車両10にCAダクト130及びRAダクト140を用いた例を示しているが、こうしたダクトを用いない鉄道車両にも本発明の適用が可能である。この場合は、床構体101の内部の空間を用いて配線されることが好ましい。また、座席250の構成やコンセント260の配置などはあくまで一例であるので、発明の趣旨を逸脱しない範囲内での変更を妨げない。例えば、外側アーム256などの肘掛けを通さずに、座席250の内部に配線を通して、スイッチを設けるなどといった用途にも用いる事ができる。
10 鉄道車両
100 車両構体
101 床構体
102 側構体
103 屋根構体
110 根太
120 床板
124 中空部材
130 CAダクト
140 RAダクト
150 保護枠
200 電源ケーブル
250 座席

Claims (5)

  1. 鉄道車両に用いられる床板の床板中配線構造において、
    前記床板は、複層構造であり、内部を貫通する中空部材を備え、該中空部材の断面高さは前記床板の厚みより小さく、
    前記中空部材の開口部は、一端を前記鉄道車両の側構体側に側構体側開口部を、他端を座席の下に中央側開口部を備え、
    前記中空部材の内部に配線していること、
    を特徴とする床板中配線構造。
  2. 請求項1に記載の床板中配線構造において、
    前記床板の下には、前記鉄道車両に備えられる空調の給気ダクト及び排気ダクトが配置され、前記排気ダクトのダクト開口部が前記座席の下に設けられ、前記ダクト開口部の周囲に保護枠を備え、
    該保護枠と前記ダクト開口部の間に、前記中空部材の前記中央側開口部を配置し、
    前記配線は、前記側構体側開口部から前記中央側開口部まで挿通され、前記ダクト開口部と前記保護枠の間を通されること、
    を特徴とする床板中配線構造。
  3. 請求項1または請求項2に記載の床板中配線構造において、
    前記配線は、前記座席に設けられたコンセントに電源を供給する電源ケーブルであること、
    を特徴とする床板中配線構造。
  4. 複層構造の床板を有し、
    該床板には、内部を貫通する中空部材が備えられ、該中空部材の断面高さは前記床板の厚みより小さく、
    前記中空部材の開口部は、一端を側構体側に側構体側開口部を、他端を座席の下に中央側開口部を備え、
    前記中空部材の内部に配線していること、
    を特徴とする鉄道車両。
  5. 請求項4に記載の鉄道車両において、
    前記床板の下には、空調に用いる給気ダクト及び排気ダクトが配置され、前記排気ダクトのダクト開口部が前記座席下に設けられ、前記ダクト開口部の周囲に保護枠を備え、
    該保護枠と前記ダクト開口部の間に、前記中空部材の前記中央側開口部を配置し、
    前記配線は、前記側構体側開口部から前記中央側開口部まで挿通され、前記ダクト開口部と前記保護枠の間を通されること、
    を特徴とする鉄道車両。
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