以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。ただし、本発明はこの実施形態に限定されない。また、図面においては実施形態を説明するため、一部分を大きくまたは強調して記載するなど適宜縮尺を変更して表現している。以下の各図において、XYZ座標系を用いて図中の方向を説明する。このXYZ座標系においては、水平面に平行な平面をYZ平面とする。このYZ平面において主軸7(対向軸8)の軸線AXの方向をZ方向と表記し、Z方向に直交する方向をY方向と表記する。また、YZ平面に垂直な方向はX方向と表記する。X軸は、Z方向に直交し、かつ、ワークに対する切削量を規定する方向である。X方向、Y方向及びZ方向のそれぞれは、図中の矢印の方向が+方向であり、矢印の方向とは反対の方向が-方向であるとして説明する。
図1は、実施形態に係る工作機械100の一例を示す正面図である。図2は、図1に示す工作機械100をZ方向から見た側面図である。図1及び図2に示す工作機械100は、旋盤である。図1及び図2において、工作機械100の+Y側が正面側であり、-Y側が背面側である。また、Z方向は工作機械100の左右方向である。
図1及び図2に示すように、工作機械100は、機械本体部であるベース1を有している。ベース1には、主軸台2と心押し台4とが設けられる。主軸台2は、不図示の軸受け等により主軸7を回転可能な状態で支持している。なお、主軸台2は、ベース1に固定されるが、Z方向、X方向、Y方向等に移動可能に形成され、モータ等の駆動によって移動する構成でもよい。主軸7の+Z側の端部には、チャック駆動部9が設けられている。チャック駆動部9は、複数の把握爪9aを主軸7の径方向に移動させてワークWを保持させる。図1では、主軸7の軸線AXの軸まわり方向に等間隔に配置された3つの把握爪9aを用いてワークWを把持しているが、これに限定されず、把握爪9aの個数や形状は、ワークWを保持可能な任意の構成が用いられる。なお、把握爪9aによって保持されるワークWは、表面Waを有する形状(例えば円柱形など)である。
主軸7の-Z側の端部は主軸台2から-Z方向に突出しており、この端部にプーリ11が取り付けられる。プーリ11と、ベース1に設けられたモータ12(図2参照)の軸線との間にはベルト13が掛け渡されている。これにより、主軸7は、モータ12の駆動によりベルト13を介して回転する。モータ12は、不図示の制御部からの指示により回転数等が制御される。モータ12としては、例えば、トルク制御機構を備えたモータが用いられる。また、主軸7は、モータ12及びベルト13によって駆動されることに限定されず、モータ12の駆動を歯車列等で主軸7に伝達する構成や、モータ12によって直接主軸7を回転させる構成でもよい。
心押し台4は、ベース1上に設置されたZ軸ガイド3に沿って移動可能に形成される。心押し台4は、不図示の軸受け等により対向軸8を回転可能な状態で支持している。主軸7の軸線AXの方向と、対向軸8の軸線AXの方向とはZ方向に一致した状態となっている。心押し台4の-Z側の端部には、センタ10が取り付けられている。なお、対向軸8は、心押し台4に固定され、デッドセンタとして使用されてもよい。
ワークWが長尺である場合(Z方向に長い場合)は、ワークWの+Z側の端部を心押し台4のセンタ10で保持する。これにより、長尺のワークWは主軸7と対向軸8とに挟まれた状態で回転するため、切削加工時に安定してワークWを回転させることができる。ワークWが短尺の場合(Z方向に短い場合)、ワークWは、主軸7の把握爪9aのみにより保持されて回転する。この場合には、心押し台4を用いなくてもよい。
ベース1には、Z方向に配置された2本のZ軸ガイド5が設けられる。2本のZ軸ガイド5は、上下方向(Z方向)に並んで配置され、それぞれZ方向に延びて設けられる。なお、Z軸ガイド5は、図示のように上下に2本設けられることに限定されず、1本又は3本以上設けられてもよい。Z軸ガイド5には、Z軸ガイド5に沿ってZ方向に移動可能なZ軸スライダ17が設けられる。Z軸スライダ17は、Z方向駆動系M1の駆動によりZ方向に移動し、所定位置で保持される。なお、Z方向駆動系M1は、例えば、電気モータや油圧等の駆動装置が用いられる。
Z軸スライダ17の+Y側の面には、2本のX軸ガイド18が形成される。2本のX軸ガイド18は、所定の間隔で平行するように、それぞれがX方向に延びて設けられる。X軸ガイド18には、2本のX軸ガイド18に沿って移動可能なX軸スライダ15が設けられる。X軸スライダ15は、X方向駆動系M2の駆動によりX方向に移動し、所定位置で保持される。なお、X方向駆動系M2は、例えば、電気モータや油圧等の駆動装置が用いられる。
X軸スライダ15の+X側の面には、2本のY軸ガイド16が形成される。2本のY軸ガイド16は、所定の間隔で平行するように、それぞれがY方向に延びて設けられる。なお、2本のX軸ガイド18の中間位置と、2本のY軸ガイド16の中間位置とは一致又はほぼ一致しているが、この構成に限定されず、2本のX軸ガイド18の中間位置と、2本のY軸ガイド16の中間位置とが一致しなくてもよい。2本のY軸ガイド16の間隔は、2本のX軸ガイド18の間隔よりも小さい。また、2本のY軸ガイド16は、2本のX軸ガイド18の間隔内に配置される。さらに、2本のY軸ガイド16は、2本のX軸ガイド18の中間位置に対して対称に配置される。
Y軸ガイド16には、2本のY軸ガイド16に沿って移動可能なY軸スライダ19が設けられる。Y軸スライダ19は、Y方向駆動系M3の駆動によりY方向に移動し、所定位置で保持される。Y方向駆動系M3は、例えば、電気モータや油圧等の駆動装置が用いられる。なお、上記のZ方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3は、制御部CONTによって制御される。従って、制御部CONTで制御されることにより、Z方向駆動系M1、X方向駆動系M2及びY方向駆動系M3の2つ又は3つを同時に駆動させることができる。
Y軸スライダ19の+X側の面には、刃物台としてプレート状刃物台21が設けられる。プレート状刃物台21は、例えば金属などの素材で板状に形成されている。プレート状刃物台21は、下面側(-X側の面)を被取付面とし、この被取付面がY軸スライダ19の取付面に接触した状態で、ボルト等の締結部材によりY軸スライダ19に取り外し可能な状態で取り付けられる。このように、プレート状刃物台21の被取付面と、Y軸スライダ19の取付面とが面接触した状態でプレート状刃物台21がY軸スライダ19に取り付けられるので、プレート状刃物台21の剛性を向上させることができる。
ホルダ24は、例えば、切削工具Tを保持する剛性が異なってもよく、ワークWの切削加工時に切削工具Tに作用する反力の大きさによってホルダ24が選定されてもよい。ホルダ24a、24c、24dと、ホルダ24bとは、切削工具Tの取付座の形態が異なっている。なお、本実施形態では、2種類のホルダ24a、24bを用いているが、この形態に限定されず、1種類のホルダ24a(又はホルダ24b)を用いて複数の切削工具Tを保持してもよい。
図3は、プレート状刃物台21の一例を示す斜視図である。図4は、プレート状刃物台21をY方向から見た場合の図である。図5は、プレート状刃物台21をX方向から見た場合の平面図である。図3から図5に示すように、プレート状刃物台21は、上面21a(-X側の面)に、ワークWを切削するための切削工具T1~T4を保持している。プレート状刃物台21は、切削工具T1~T4を保持する複数のホルダ24(24a、24b、24c、24d)を介して、切削工具T1~T4を保持している。
ホルダ24は、それぞれ1つの切削工具Tを保持しているが、この構成に限定されず、1つのホルダ24で2つ以上の切削工具Tを保持させてもよい。ホルダ24は、ボルト等の不図示の締結部材によって、取り外し可能な状態でプレート状刃物台21に取り付けられる。この締結部材を取り外すことにより、切削工具T1~T4は、ホルダ24とともに交換可能である。
ホルダ24a、24b、24c、24dは、切削工具T1の位置が互いにY方向にずれた状態で、Z方向に並んで配置される。図5では、ワークWを切削工具T3により切削加工する場合のワークWの配置を示している。この構成により、いずれか1つの切削工具T(例えば、切削工具T1)を用いてワークWの切削加工を行う際に、他の切削工具T(例えば、切削工具T2~T4)がワークWに干渉することを防止できる。
ホルダ24は、例えば、切削工具Tを保持する剛性が異なってもよく、ワークWの切削加工時に切削工具Tに作用する反力の大きさによってホルダが選定されてもよい。ホルダ24a、24c、24dと、ホルダ24bとは、切削工具Tの取付座の形態が異なっている。なお、本実施形態では、2種類のホルダ24a、24bを用いているが、この形態に限定されず、1種類のホルダ24a(又はホルダ24b)を用いて複数の切削工具Tを保持してもよい。
切削工具T1~T4のそれぞれは、直線切刃H1~H4を有する。ホルダ24は、直線切刃H1の方向がX方向から見てZ方向に対して傾いた状態となるように切削工具T1~T4を保持している。直線切刃H1~H4のZ方向(母線D)に対する角度θ(図10(A)参照)は任意に設定可能である。また、ホルダ24で切削工具T1~T4を保持する構成は、例えば、楔状の部材を固定ネジにより差し込み、楔状の部材とホルダ24との間で切削工具T1~T4を挟み込んで保持する構成が適用されるが、この構成に限定されず、切削工具T1~T4を保持可能な任意の構成が適用される。
切削工具T1~T4は、ワークWの表面Waに対して接線方向(軸線AXと交差する方向)に移動しながらワークWの切削加工を行う。切削工具T1~T4は、プレート状刃物台21がY方向、又はY方向とZ方向とを含んだ合成方向P(図5参照)に移動することにより、X方向から見てZ方向に沿うワークWの表面Wa上の母線D(図10参照)に対して直線切刃H1~H4の刃先がY方向ずれつつ、かつ母線D上の切削点C(図10参照)がZ方向にずれながらワークWの切削加工を行う。
なお、切削工具T1~T4の1つ又は2つは、直線切刃H1等を持つ切削工具に限定されない。例えば、切削工具Tとして、矩形状のチップの角部分に例えば曲線状の切刃を有する切削工具が用いられてもよい。このような切削工具は、例えば、Y方向には移動させずに、ワークWの母線Dに沿ってZ方向に送られることによりワークWの切削加工を行うシングルポイント加工用の切削工具である。この切削工具を用いる場合、この切削工具を保持するために専用のホルダがプレート状刃物台21に着脱可能に取り付けられる。
また、複数の切削工具T1~T4は、例えば、直線切刃H1~H4の高さL1(X方向の位置)が同一となるようにホルダ24に保持されている(図4参照)。これにより、複数の切削工具T1~T4において直線切刃H1~H4の高さの管理が容易となり、例えば、切削工具T1から他の切削工具T2~T4に切り替えたときに、X方向の位置合わせを不要又は簡略化することができる。なお、複数の切削工具T1~T4は、直線切刃H1~H4の高さを同一とする構成に限定されず、各直線切刃H1~H4が異なる高さに設定されてもよい。
プレート状刃物台21には、複数のノズル30が設けられる。各ノズル30は、複数の切削工具T1~T4のそれぞれの刃先に向けて潤滑用のミストを噴射可能である。各ノズル30は、プレート状刃物台21の-Y側に配置され、+Y方向にミストを噴射する。各ノズル30は、不図示の固定部材によりプレート状刃物台21に固定され、プレート状刃物台21とともに移動する。ノズル30は、切削工具T1~T4の数と同数設けられる。本実施形態では、4つの切削工具T1~T4に対応して、4つのノズル30が設けられている。以下、4つのノズル30を区別する場合、それぞれノズル31、32、33、34と表記する。
ノズル31は、ホルダ24aに保持される切削工具T1に向けて配置される。ノズル32は、ホルダ24bに保持される切削工具T2に向けて配置される。ノズル33は、ホルダ24cに保持される切削工具T3に向けて配置される。ノズル34は、ホルダ24dに保持される切削工具T4に向けて配置される。各切削工具T1~T4は、Z方向における位置が互いに異なっている。そのため、ノズル31、32、33、34は、互いに干渉することなくZ方向に1列に並んで配置可能である。
本実施形態に示す例では、直線切刃H1~H4の高さL1が同一又はほぼ同一となっている。従って、複数のノズル30についても、直線切刃H1~H4の高さL1に対応するように、高さL2(X方向の位置)が同一となるように設定されている(図4参照)。この構成により、複数のノズル30の高さを切削工具Tごとに設定する必要がなく、複数のノズル30の高さを容易に設定できる。なお、直線切刃H1~H4が異なる高さに設定されている場合では、ノズル31、32、33、34は、直線切刃H1~H4に対応するように互いに異なる高さに設定されてもよいし、ノズル31、32、33、34の高さを同一として、各ノズル31、32、33、34を、対応する直線切刃H1~H4に向けるように上向き又は下向きとする形態であってもよい。また、複数のノズル31~34は、図5に示すように、プレート状刃物台21の-Y側において、Y方向の位置が同一又はほぼ同一である。この構成により、切削工具T1~T4のいずれかでワークWを切削加工する場合でもワークWがノズル30に干渉しないようにしている。
また、ノズル31~34は、同一形状(例えば同一口径)が用いられてもよいし、異なる形状が用いられてもよい。例えば、各ノズル31~34から切削工具T1~T4までの距離が異なることから、ミストを噴射させる距離に応じて口径等が異なるノズル31~34が用いられてもよい。ノズル31~34は、いずれも+Y方向に向けて水平方向にミストを噴射するが、この構成に限定されない。例えば、ノズル31~34の少なくとも1つは、+Y方向に対して傾いた状態でミストを噴射してもよいし、ミストを上向き又は下向きに噴射してもよい。
各ノズル30から噴射される潤滑用のミストは、ミスト生成部40において生成される。ミスト生成部40は、プレート状刃物台21に対して+Z側に配置され、ネジ等の固定部材によりブラケット26に固定される。ブラケット26は、ネジ等の固定部材によりY軸スライダ19に固定される。従って、ミスト生成部40は、ブラケット26及びY軸スライダ19を介してプレート状刃物台21に固定された状態となっており、プレート状刃物台21とともに移動する。
図6及び図7は、ミスト生成部40の一例を示す模式図である。図6は、ミスト生成部40をX方向から見た断面図を示し、図7は、ミスト生成部40をY方向から見た断面図を示している。図6及び図7に示すように、ミスト生成部40は、ミキシングノズル41と、ガス供給部42と、油供給部43と、水供給部44とを有する。なお、図1及び図2ではガス供給部42、油供給部43、及び水供給部44を総称して供給部と表記している。ミキシングノズル41は、圧縮ガス、潤滑油、及び水により、油膜で覆われた粒状の水からなるミスト(油水ミスト)Mを生成する。ミキシングノズル41は、圧縮ガスを注入するガス注入口41aと、潤滑油を注入する油注入口41bと、水を注入する水注入口41cとを+Z側の端部に有する。
ガス供給部42は、ミキシングノズル41に圧縮ガスを供給する。ガスとしては、例えばエア、窒素などが用いられる。ガス供給部42は、ミキシングノズル41のガス注入口41aに接続され、ガス注入口41aから圧縮ガスをミキシングノズル41内に注入する。油供給部43は、ミキシングノズル41に潤滑油を供給する。油供給部43は、ミキシングノズル41の油注入口41bに接続され、油注入口41bから潤滑油をミキシングノズル41内に注入する。水供給部44は、ミキシングノズル41に水を供給する。水供給部44は、ミキシングノズル41の水注入口41cに接続され、水注入口41cから水をミキシングノズル41内に注入する。
ミキシングノズル41は、流通管41d及び噴出口41eを有する。流通管41dは、圧縮ガスを第1方向D1に送りながら、ミキシングノズル41内に供給された油及び水によってミストMを生成し、このミストMを第1方向D1に送る。第1方向D1は、Z方向と平行であり、具体的には-Z方向である。噴出口41eは、流通管41dの-Z側の先端に配置され、流通管41dにより送られたミストMを第1方向D1に送り出す。噴出口41eの-Z側、つまり第1方向D1側には、切替部50が設けられている。
切替部50は、ミスト生成部40で生成されたミストMの供給先を複数のノズル30のいずれかに切り替える。切替部50は、プレート状刃物台21に対して+Z側に配置され、ネジ等の固定部材によりブラケット26に固定される。従って、切替部50は、プレート状刃物台21に固定され、プレート状刃物台21及びミスト生成部40とともに移動する。切替部50は、上流側部材51と、下流側部材52と、駆動部60とを有する。上流側部材51は、例えば円柱状の部材であり、回転の中心である軸線AX1が第1方向D1(Z方向)に平行に配置される。切替部50は、駆動部60を備えている。上流側部材51は、駆動部60を駆動することにより、下流側部材52に対して軸線AX1の軸まわり方向に回転可能である。
駆動部60は、回転モータ61と、伝達部62とを有する。回転モータ61は、例えばステッピングモータが用いられるが、他のモータが用いられてもよい。回転モータ61は、回転駆動する回転駆動軸63を有する。回転駆動軸63は、回転の中心である軸線AX2が第1方向D1(Z方向)に平行に配置され、軸線AX2の軸まわり方向に回転する。すなわち、上流側部材51の軸線AX1と、回転駆動軸63の軸線AX2とは平行している。伝達部62は、駆動ギア64及び従動ギア65を有する歯車列である。駆動ギア64は、回転モータ61の回転駆動軸63に固定される。回転モータ61の回転駆動軸63が軸線AX2の軸まわり方向に回転することにより、駆動ギア64が回転駆動軸63と一体で回転する。
従動ギア65は、上流側部材51の-Z側の端面51aに固定される。従動ギア65は、上流側部材51とともに軸線AX1の軸まわり方向に回転する。従動ギア65は、駆動ギア64と噛み合っているので、駆動ギア64が回転することにより、従動ギア65が軸線AX1の軸まわり方向に回転し、従動ギア65とともに上流側部材51が軸線AX1の軸まわり方向に回転する。なお、伝達部62は、駆動ギア64及び従動ギア65の歯車列を用いることに限定されない。例えば、プーリ及びベルト等を用いて回転駆動軸63の回転を上流側部材51に伝達してもよい。
上流側部材51は、1つの一次流路55を有する。一次流路55は、上流側部材51の+Z側の端面51bにミスト流入口55aを有する。ミスト流入口55aは、ミスト生成部40のミキシングノズル41に備える噴出口41eに接続される。一次流路55は、上流側部材51の内部において、軸線AX1に沿った第1直線部55bと、この第1直線部55bの-Z側端部から上流側部材51の外周面51c側に屈曲されて第2方向D2に延びる第2直線部55cとを有する。第2方向D2は、第1方向D1と直交する方向であるが、この方向に限定されず、第1方向D1と交差する方向であれば任意の方向に設定可能である。
一次流路55は、上流側部材51の外周面51cにミスト流出口55dを有する。一次流路55は、第1直線部55bによりミスト生成部40から第1方向D1に送られたミストMを、第2直線部55cにより第1方向D1とは異なる第2方向D2に送り出す。
下流側部材52は、上流側部材51が挿入され、上流側部材51を軸線AX1の軸まわり方向に回転可能に支持する。すなわち、上流側部材51と下流側部材52とは、相対的に移動可能となっている。下流側部材52は、上流側部材51が挿入され、上流側部材51の外周面51cに対向する円筒状の内周面52cを有する。下流側部材52は、二次流路70を有する。二次流路70は、軸線AX1の軸まわり方向に間隔を空けて複数並んで放射状に配置される。複数の二次流路70は、上流側部材51が各回転位置に回転したときのミスト流出口55dの位置に合わせるように設けられている。このため、複数の二次流路70は、上流側部材51の回転位置に応じて一次流路55の接続先が切り替わる。複数の二次流路70は、複数のノズル30のそれぞれに1対1で接続される。複数の二次流路70を区別する場合、それぞれ二次流路71、72、73、74と表記する。
各二次流路71~74は、下流側部材52の内周面52cにそれぞれミスト流入口70aを有する。ミスト流入口70aのそれぞれは、上流側部材51の外周面51cに設けられるミスト流出口55dに接続可能である。つまり、複数のミスト流入口70aのうち、いずれかのミスト流入口70aが上流側部材51の回転位置に応じたミスト流出口55dに接続される。切替部50は、上流側部材51と下流側部材52との相対的な回転移動により、一次流路55を複数の二次流路70のいずれかに接続する。下流側部材52においては、ミスト流出口55dから第2方向D2に流出したミストMが、いずれかのミスト流入口70aから1つの二次流路70に流入する。
各二次流路70は、それぞれ配管56(図2又は後述する図8等参照)を介してノズル30に接続される。具体的には、二次流路71がノズル31に接続され、二次流路72がノズル32に接続され、二次流路73がノズル33に接続され、二次流路74がノズル34に接続される。配管56は、金属製の配管が用いられてもよいし、フレキシブル配管が用いられてもよい。
回転モータ61の駆動は、例えば回転制御部66により制御される。回転制御部66は、図1に示す制御部CONTに含まれてもよいし、制御部CONTとは別に設けられてもよい。上流側部材51は、回転制御部66により制御された回転モータ61の回転量に応じて、ノズル30の個数に応じた複数の回転位置に停止可能である。回転制御部66は、複数の切削工具T1~T4のいずれかが選択されたことに応じて、選択された切削工具T1~T4に対応したノズル30にミストMを供給するように、上流側部材51の回転位置を制御する。なお、駆動部60を回転制御部66により制御することに限定されず、例えば、作業者等のマニュアル操作により駆動部60を駆動して、上流側部材51を所望の回転位置を設定してもよい。
図8(A)及び図8(B)は、上流側部材51を回転させる場合の一例を示す図である。図8(A)及び図8(B)に示すように、本実施形態では、ノズル30が4つ配置されるため、上流側部材51は4つの回転位置P1~P4にそれぞれ設定可能である。図8(A)は、切削工具T2が選択された場合を示している。回転制御部66は、回転モータ61を制御して、上流側部材51の第2直線部55c(図7参照)が二次流路72と接続する回転位置P2となるように上流側部材51を回転させる。その結果、ミスト生成部40で生成されたミストMは、一次流路55から二次流路72に送り出され、配管56を介してノズル32から切削工具T2の刃先に向けて噴射される。
また、回転制御部66は、回転モータ61を制御することにより、上流側部材51の第2直線部55c(図7参照)が二次流路71、73、74のいずれかと接続する回転位置P1、P3、P4となるように上流側部材51を回転させる。図8(B)では、上流側部材51が回転位置P3まで回転し、一次流路55が二次流路73に接続した例を示している。なお、図8(B)において一点鎖線で示すように、上流側部材51を回転位置P1、P4まで回転させ、一次流路55を二次流路71、74に接続することも可能である。このように、上流側部材51を回転させることにより、切削加工を行う切削工具T1~T4に対応したノズル31~34からミストMを噴射させることができる。
図9は、上流側部材51を回転させる場合の他の例を示す図である。図9に示す例では上流側部材51が回転位置P0まで回転し、一次流路55が二次流路71~74のいずれにも接続されていない。すなわち、回転位置P0は、ミストMの噴射を規制するための上流側部材51の回転位置である。図9に示すように、上流側部材51が回転位置P0となることにより、ミストMをノズル31~34のいずれからも噴射されない。従って、回転制御部66は、例えば、切削工具T1~T4によりワークWの切削加工が終了したタイミングで、上流側部材51を回転位置P0に回転させることにより、ノズル31~34からミストMの噴射を規制することができる。
図9では、回転位置P0として、下流側部材52の内周面52cのうち、二次流路71から時計回りに二次流路74までの領域に設定されているが、この領域に限定されず、例えば、二次流路71と二次流路72との間、二次流路72と二次流路73との間、又は二次流路73と二次流路72との間に回転位置P0が設定されてもよい。なお、ノズル31~34からミストMの噴射を規制するために、上流側部材51を回転位置P0まで回転させるか否かは任意である。例えば、ミストMの噴射を規制するために、二次流路71~74のそれぞれに開閉弁等が設けられてもよいし、ミスト生成部40の駆動を適宜停止させてもよい。
次に、以上のように構成された工作機械100の動作について説明する。まず、切削工具T1をワークWの軸線AXと交差する方向に移動しながらワークWの切削加工を行う加工動作について説明する。図10は、X方向からワークWを見たときの切削工具T1の動きの一例を示す平面図であり、(A)は切削加工前の図、(B)は切削加工中の図、(C)は切削加工後の図である。
以下、図10を適宜参照しながら加工動作について説明する。なお、以下の説明に際して、適宜図1から図9の内容を参照する。図10では、切削工具T1~T4のうち、切削工具T1を用いてワークWを切削加工する場合について説明している。先ず、加工対象であるワークWを主軸7に保持させる。ワークWを把持した後、モータ12を駆動して主軸7を回転させることにより、ワークWを軸線AXの軸まわり方向に回転させる。なお、主軸7と対向軸8とでワークWを把持する場合には、主軸7と対向軸8とを同期させて回転させる。また、ワークWの回転数は、加工処理に応じて適宜設定される。
続いて、切削工具T1のX方向の位置が調整される。この調整では、直線切刃H1がワークWの表面Waに対応するように、X方向駆動系M2によってプレート状刃物台21をX方向に移動させる。直線切刃H1のX方向の位置は、ワークWの表面Waに対する切削量(切削深さ)を規定する。切削量は、制御部CONTによって予め設定された値に設定されてもよく、また、作業者等のマニュアル操作によって設定されてもよい。
続いて、ワークWの回転が安定した段階で、切削工具T1のY方向及びZ方向の位置合わせを行う。切削工具T1のY方向及びZ方向の位置合わせ、並びに後述する合成方向Pへの移動は、Z軸スライダ17のZ方向への移動、及びY軸スライダ19(プレート状刃物台21)のY方向への移動によって行われる。切削工具T1は、ワークWの切削範囲Lに応じて位置合わせされる。図10(A)に示すように、切削工具T1の直線切刃H1の+Y側の端部H1aが、ワークWの母線Dの-Y側近傍であって切削範囲Lの+Z側に配置される。このとき、他の切削工具T2~T4は、ワークWに対して-Y側に位置するため(図5参照)、ワークWと干渉することはない。
続いて、図10(A)に示すように、直線切刃H1を、+Y方向と-Z方向とを合成した合成方向Pに移動させる。合成方向Pは、例えば、直線切刃H1の刃先に沿った長さと、ワークWの切削範囲Lとに応じて設定される。すなわち、切削工具T1が母線Dの-Y側から+Y側に抜けた際に(1回のパスで)切削範囲Lを直線切刃H1で切削加工するような合成方向Pに設定されている。ただし、合成方向Pに代えてY方向のみに切削工具T1を移動させてもよいし、合成方向Pとして1回のパスで切削範囲Lの一部を切削加工するような方向に設定されてもよい。
続いて、切削工具T1の直線切刃H1を、合成方向Pに移動させることによりワークWの表面Waに対して切削加工を行う。切削工具T1の直線切刃H1は、ワークWの表面Wa上のZ方向の母線Dに対して-Y側から+Y側に移動し、直線切刃H1の+Y側の端部H1aが先にワークWに当接し、この端部H1aにおいて表面Waの切削を行う。続いて、切削工具T1は、合成方向Pに移動しながらワークWの切削加工を行う。なお、合成方向Pは、ワークWの表面Waに対する接平面に沿った方向である。また、切削工具T1は、直線切刃H1の刃先に沿った方向が、母線Dと平行を保ちながら合成方向Pに移動する。また、切削加工を行う際、回転制御部66(あるいは制御部CONT)は、上流側部材51を回転位置P1まで回転させ、一次流路55を二次流路71に接続させることにより、選択された切削工具T1に対応したノズル31からミストMを噴射させる。
直線切刃H1は、図10(B)に示すように、表面Waに沿って合成方向Pに移動することにより、ワークWへの切削部分が端部H1aから端部H1bに向けて徐々にずれていく。さらに、直線切刃H1が合成方向Pに向けて移動する間に、ワークWの表面Waにおいて母線D上の切削点Cは、母線Dに沿って-Z方向に進んでいく。また、直線切刃H1(切削工具T1)の移動にともなって、ノズル31も合成方向Pに移動する。このため、直線切刃H1(切削部分)に対して連続してミストMを供給することができ、このミストMによって切削部分が冷却され、ワークW及び切削工具T1に対する熱の影響を低減することができる。
その後、図10(C)に示すように、直線切刃H1の端部H1bが母線Dから+Y側に離れた段階で、切削工具T1による表面Waの切削加工が終了する。上記した切削動作では、切削工具T1の直線切刃H1において端部H1aから端部H1bまでの全体を用いて表面Waの切削加工を行っているが、これに限定されず、直線切刃H1の一部を用いて表面Waの切削範囲Lを切削加工してもよい。また、回転制御部66は、切削工具T1による切削加工が終了するまで、ノズル31からミストMを噴射させ、切削加工が終了した段階でミストMの噴射を停止させる。
このように、本実施形態に係る工作機械100によれば、ミスト生成部40から一次流路55に供給されるミストMを切替部50により複数の二次流路70のいずれかに供給するため、複数の切削工具T1~T4をプレート状刃物台21に保持している場合でも、切削工具T1~T4の数よりミスト生成部40の数を少なくすることができる。これにより、ミスト生成部40及びこのミスト生成部40に接続される配管56の設置スペースを小さくすることができ、プレート状刃物台21の大型化を抑制することができる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は、上記した実施形態に限定されない。上記した実施形態では、複数の切削工具T1~T4がプレート状刃物台21に保持された構成を例に挙げて説明したが、この構成に限定されない。例えば、プレート状刃物台21に代えて、くし歯状刃物台が用いられてもよいし、タレット刃物台が用いられてもよい。
また、上記した実施形態において、複数の切削工具T1~T4は、直線切刃H1~H4の向きがZ方向に対して同一の角度θ(図10(A)参照)に設定されてもよいし、互いに異なる角度θに設定されてもよい。直線切刃H1~H4が互いに異なる角度θに設定される場合、例えば、複数の切削工具T1~T1のうち、いずれか1つが粗加工に用いられ、他の1つが仕上げ加工に用いられてもよい。