JP7031160B2 - 距離測定装置 - Google Patents

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Description

本発明は、例えばレーザー光を用いた距離測定装置に関する。
LIDAR(Light Detection and Ranging)と呼ばれる距離測定装置が知られている。LIDARは、光学的に周囲の物体との距離を測定するセンサである。LIDARは、対象物にパルス状のレーザー光を照射し、対象物で反射されたレーザー光が戻るまでの往復時間から距離を計測する。最近では、LIDARは、先進運転支援システム(ADAS:Advanced Driving Assistant System)や自動運転に使われている。
レーザー光の走査方式としては、ポリゴンミラー、MEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラー、又はガルバノミラーなどを用いる方式が知られている。しかし、これらの走査方式は、可動部が存在するため、車両などの振動により、長期信頼性に懸念がある。また、これらの走査方式は、光学部品を使用するため、LIDARのコストが高くなるとともに、LIDARが大型化してしまう。
米国特許第8,982,313号明細書
本発明は、簡単な電圧制御でレーザー光を偏向させることができるとともに、コストを低減することが可能な距離測定装置を提供する。
本発明の一態様に係る距離測定装置は、レーザー光を発光する光源と、前記レーザー光を偏向し、積層された複数の液晶パネルを有する光偏向素子と、前記光偏向素子が備える複数の電極に電圧を印加する制御部とを具備する。前記複数の液晶パネルの各々は、第1及び第2基板と、前記第1及び第2基板間に充填された液晶層と、前記第1基板に設けられ、第1方向に沿って並んだ複数の電極と、前記第2基板に設けられた共通電極とを含む。前記光偏向素子は、第1ピッチで配置された複数の電極を有する第1液晶パネルと、前記第1ピッチの2倍の第2ピッチで配置された複数の電極を有する第2及び第3液晶パネルとを含む。
本発明によれば、簡単な電圧制御でレーザー光を偏向させることができるとともに、コストを低減することが可能な距離測定装置を提供することができる。
本発明の実施形態に係る距離測定装置のブロック図。 距離測定装置の基本動作を説明する概略図。 距離測定装置によるレーザー光の波形を説明する図。 光偏向素子の模式的な断面図。 1つの液晶パネルの平面図。 図5のA-A´線に沿った液晶パネルの断面図。 光偏向素子の動作を説明する模式的な断面図。 比較例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 実施例及び比較例におけるパネル数とパターン数との関係を説明するグラフ。 実施例及び比較例におけるパネル数とパターン数との関係を説明するグラフ。 第1例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第1例に係る積層構造の基本単位を説明する断面図。 第2例に係る光偏向素子12の模式的な断面図。 第3例に係る光偏向素子12の模式的な断面図。 第4例に係る光偏向素子12の模式的な断面図。 第5例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第5例に係る積層構造の基本単位を説明する断面図。 第6例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第7例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第8例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第9例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第10例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第11例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第12例に係る光偏向素子の模式的な断面図。 第13例に係る光偏向素子の模式的な断面図。
以下、実施形態について図面を参照して説明する。ただし、図面は模式的または概念的なものであり、各図面の寸法および比率等は必ずしも現実のものと同一とは限らない。また、図面の相互間で同じ部分を表す場合においても、互いの寸法の関係や比率が異なって表される場合もある。特に、以下に示す幾つかの実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための装置および方法を例示したものであって、構成部品の形状、構造、配置等によって、本発明の技術思想が特定されるものではない。なお、以下の説明において、同一の機能及び構成を有する要素については同一符号を付し、重複説明は必要な場合にのみ行う。
[1] 距離測定装置の構成
図1は、本発明の実施形態に係る距離測定装置10のブロック図である。
距離測定装置10は、LIDAR(Light Detection and Ranging)とも呼ばれる。LIDARは、レーザー光を用いて例えば車両前方のある範囲を走査し、この走査範囲に存在する対象物によって反射されたレーザー光を検出する。そして、LIDARは、投光したレーザー光と受光したレーザー光とを用いて、対象物の検出、及び車両から対象物までの距離を測定する。
距離測定装置10は、車両の前部(例えば、フロントバンパー、又はフロントグリル)、車両の後部(例えば、リアバンパー、又はリアグリル)、及び/又は、車両の側部(例えば、フロントバンパーの側部)に配置される。また、距離測定装置10は、ルーフやボンネット等、車両の上部に配置されてもよい。
距離測定装置10は、光源11、光偏向素子12、受光素子13、パルスタイミング制御部14、偏向角制御部15、距離演算部16、及び主制御部17を備える。
光源11は、光偏向素子12に向けて、レーザー光を発光する。レーザー光としては、赤外線レーザー光(例えば波長λ=905nm)が用いられる。また、光源11は、所定の周波数を有するパルス信号としてレーザー光を発生する。
光偏向素子12は、光源11からのレーザー光を受け、レーザー光を走査、すなわちレーザー光の偏向角を時分割で変える。これにより、対象物2に対して複数点のレーザー光を照射することができる。光偏向素子12は、積層された複数の液晶パネルを備える。光偏向素子12の具体的な構成については後述する。
受光素子(検出回路)13は、対象物2によって反射されたレーザー光を検出する。受光素子13は、例えば赤外線センサから構成される。赤外線センサは、フォトダイオードやCMOS(complementary metal oxide semiconductor)フォトセンサを含む。その他、受光素子13として赤外線カメラを用いてもよい。
パルスタイミング制御部14は、光源11の動作を制御する。光源11は、パルス信号としてレーザー光を発光する。パルスタイミング制御部14は、レーザー光に含まれるパルスのタイミングを制御する。パルスのタイミングには、パルス信号の周期、パルス信号の周波数、及びパルス幅が含まれる。
偏向角制御部15は、光偏向素子12の動作を制御する。偏向角制御部15は、光偏向素子12に含まれる複数の電極に複数の電圧を印加する。光偏向素子12に供給される電圧は、交流電圧である。偏向角制御部15は、光偏向素子12の屈折率の勾配を制御することで、光偏向素子12から出射されるレーザー光の偏向角を制御する。
距離演算部16は、パルスタイミング制御部14からタイミング情報を受け、偏向角制御部15から偏向角の情報を受け、受信したレーザー光のタイミング情報及び光強度の情報を受光素子13から受ける。距離演算部16は、これらの情報を用いて、車両から対象物までの距離を算出する。具体的には、距離演算部16は、偏向角の情報を用いて、直線距離、水平距離、及び垂直距離を算出する。また、距離演算部16は、偏向角の情報を用いて、対象物の相対座標を算出する。距離演算部16によって算出された距離及び/又は相対座標は、例えばデータDOUTとして外部に出力可能である。
主制御部17は、距離測定装置10の全体動作を統括的に制御する。主制御部17は、データを記憶する記憶部なども備える。
[2] 距離測定装置10の基本動作
次に、距離測定装置10の基本動作について説明する。図2は、距離測定装置10の基本動作を説明する概略図である。なお、図2では、距離測定装置10が車両1の前方を走査する態様を一例として示している。
距離測定装置10に含まれる光偏向素子12は、角度2αの走査範囲でレーザー光を投光する。受光素子13は、対象物2によって反射されたレーザー光を受光する。想定する対象物2までの距離L、距離Lにおける走査範囲Rとする。例えば、角度2α=10度、距離L=10mである場合は、走査範囲R=1.7mであり、角度2α=10度、距離L=50mである場合は、走査範囲R=8.7mである。角度2α、距離L、及び走査範囲Rは、距離測定装置10に求められる仕様に応じて任意に設計可能である。
図3は、距離測定装置10によるレーザー光の波形を説明する図である。図3の上側が投光の波形、下側が受光の波形である。図3の横軸が時間であり、図3の縦軸が強度(光強度)である。
光源11は、パルス信号からなるレーザー光を発光する。すなわち、光源11は、時分割でレーザー光を出射する。距離測定装置10は、パルス信号としてレーザー光を投光する。パルス信号の周期P、パルス幅Wとする。1つのパルスを投光してから、このパルスが対象物で反射されたパルスを受光するまでの時間である遅れ量Δ、光の速度Cとする。遅れ量Δは、“Δ=2L/C”で算出される。
例えば、パルス幅W=10nsec、周期P=10μsec(すなわち、周波数f=100kHz)であるものとする。遅れ量Δ=67nsecの場合、距離L=10mが算出される。
このような動作により、対象物が検出でき、また、対象物までの距離が算出できる。
[3] 光偏向素子12の構成
次に、光偏向素子12の構成について説明する。図4は、光偏向素子12の模式的な断面図である。
光偏向素子12は、複数の液晶パネル21を備える。図4には、光偏向素子12が15個の液晶パネル21-1~21-15を備える構成例を示している。図4に示したパネル番号は、液晶パネル21-1~21-15の枝番号に対応する。液晶パネル21-1~21-15は、例えば、透明な接着材を用いて積層される。
図5は、1つの液晶パネル21の平面図である。図6は、図5のA-A´線に沿った液晶パネル21の断面図である。
液晶パネル21は、透過型の液晶素子である。液晶パネル21は、対向配置された基板22、23と、基板22、23間に挟持された液晶層24とを備える。基板22、23の各々は、透明基板(例えば、ガラス基板、又はプラスチック基板)から構成される。基板22は、光源11側に配置され、光源11からのレーザー光は、基板22側から液晶層24に入射する。
液晶層24は、基板22、23間に充填される。具体的には、液晶層24は、基板22、23と、シール材25とによって包囲された領域内に封入される。シール材25は、例えば、紫外線硬化樹脂、熱硬化樹脂、又は紫外線・熱併用型硬化樹脂等からなり、製造プロセスにおいて基板22又は基板23に塗布された後、紫外線照射、又は加熱等により硬化させられる。
液晶層24を構成する液晶材料は、基板22、23間に印加された電圧(電界)に応じて液晶分子の配向が操作されて光学特性が変化する。本実施形態の液晶パネル21は、例えばホモジニアスモードである。すなわち、液晶層24として正の誘電率異方性を有するポジ型(P型)のネマティック液晶が用いられ、液晶分子は、電圧(電界)を印加しない時には基板面に対して概略水平方向に配向する。ホモジニアスモードでは、電圧を印加しない時に液晶分子の長軸(ダイレクタ)が概略水平方向に配向し、電圧を印加した時に液晶分子の長軸が垂直方向に向かって傾く。液晶分子の傾斜角は、印加される実効電圧に応じて変化する。液晶層24の初期配向は、液晶層24を挟むようにして基板22、23にそれぞれ設けられた2つの配向膜によって制御される。
なお、液晶モードとして、ネガ型(N型)のネマティック液晶を用いた垂直配向(VA:Vertical Alignment)モードを用いてもよい。VAモードでは、電界を印加しない時に液晶分子の長軸が概略垂直方向に配向し、電圧を印加した時に液晶分子の長軸が水平方向に向かって傾く。
基板22の液晶層24側には、それぞれがY方向に延びる複数の電極26、及び複数の電極27が設けられる。複数の電極26と複数の電極27とは、Y方向に直交するX方向に沿って、交互に配置される。後述するように、複数の電極26の数、及び複数の電極27の数は、積層される液晶パネルの位置によって異なる。
図5及び図6は、2つの電極26-1、26-2と、2つの電極27-1、27-2とを一例として示している。例えば、図5及び図6に示した液晶パネル21は、図4に示した最下層の液晶パネル21-15に対応する。複数の電極26と複数の電極27とは、互いの間隔が同じであり、例えば、この間隔は、電極を加工する際の製造工程に起因する最小加工寸法である。
基板22、及び電極26、27上には、液晶層24の初期配向を制御する配向膜28が設けられる。
基板23の液晶層24側には、共通電極29が設けられる。共通電極29は、基板23全面に平面状に設けられる。基板23、及び共通電極29上には、液晶層24の初期配向を制御する配向膜30が設けられる。なお、基板22に共通電極29を配置し、基板23に電極26、27を配置してもよい。
電極26、27、及び共通電極29はそれぞれ、透明電極から構成され、例えば、例えばITO(インジウム錫酸化物)が用いられる。
図4の各液晶パネルにおいて、ハッチングがない部分(白い部分)は、電極26が配置された領域を示し、ドットハッチングの部分は、電極27が配置された領域を示している。図4に示すように、液晶パネル21-1は、16個の電極26、及び16個の電極27を備える。液晶パネル21-1の電極パターンをパターン“a”と表記する。
2個の液晶パネル21-2、21-3は、同じ構造を有する。液晶パネル21-2、21-3の各々は、8個の電極26、及び8個の電極27を備える。液晶パネル21-2、21-3の電極パターンをパターン“b”と表記する。
4個の液晶パネル21-4~21-7は、同じ構造を有する。液晶パネル21-4~21-7の各々は、4個の電極26、及び4個の電極27を備える。液晶パネル21-4~21-7の電極パターンをパターン“c”と表記する。
8個の液晶パネル21-8~21-15は、同じ構造を有する。液晶パネル21-8~21-15の各々は、2個の電極26、及び2個の電極27を備える。液晶パネル21-8~21-15の電極パターンをパターン“d”と表記する。
光偏向素子12が15個の液晶パネル21-1~21-15を備える構成例である場合、パターン“a”、“b”、“c”、“d”の4種類の液晶パネルを用いて、光偏向素子12を構成することができる。
最大の電極幅を有する液晶パネル21-15において、1つの電極26と1つの電極27との対が繰り返し単位であり、この繰り返し単位の幅は、屈折率変化の周期幅Wである。周期幅Wごとに、屈折率の勾配が繰り返される。
周期幅Wに対応する繰り返し単位は、積層方向に延びる16個の領域を有し、この16個の領域は、最小の電極幅を有する液晶パネル21-1に存在する16個の電極(8個の電極26、及び8個の電極27)に対応する。図4の周期幅Wを積層方向に見ると、電極27の数(ドットハッチングの領域の数)が右に行くにつれて順に増えていくのが分かる。すなわち、上記16個の領域のうち、一番左の領域は、電極27の数がゼロ、左から2番目の領域は、電極27の数が1個、左から3番目の領域は、電極27の数が2個、一番右の領域は、電極27の数が15個である。
パターン“a”の電極ピッチが例えば5μmであるものとする。電極ピッチとは、第1電極(電極26、又は電極27)の幅と、これに隣接する第2電極(電極27、又は電極26)との間隔とを合わせた長さである。パターン“b”の電極ピッチは、10μmであり、パターン“c”の電極ピッチは、20μmであり、パターン“d”の電極ピッチは、40μmである。すなわち、パターン“b”の電極ピッチP2は、パターン“a”の電極ピッチP1の2倍であり、パターン“c”の電極ピッチP3は、パターン“b”の電極ピッチP2の2倍であり、パターン“d”の電極ピッチP4は、パターン“c”の電極ピッチP3の2倍である。
一般化すると、最小パターンであるパターン“a”の電極ピッチP1の2(n-1)倍の電極ピッチを有する液晶パネルの枚数は、2(n-1)である。“n”は、1から連続する自然数である。また、“n”は、最低で2まで増分(インクリメント)される。上記関係を満たすように、液晶パネルを積層することで、屈折率の勾配を形成できる。
具体的には、パターン“b”の電極ピッチP2は、パターン“a”の電極ピッチP1の2倍であるため、パターン“b”の液晶パネルの数は2個である。パターン“c”の電極ピッチP3は、パターン“a”の電極ピッチP1の4倍であるため、パターン“c”の液晶パネルの数は4個である。パターン“d”の電極ピッチP4は、パターン“a”の電極ピッチP1の8倍であるため、パターン“d”の液晶パネルの数は8個である。液晶パネル21の積層数が3個以上であれば、上記関係が成り立つ。
なお、パターン“a”、“b”、“c”、“d”それぞれの液晶パネルの枚数が規定した通りであればよく、積層順序は、図4と同じでなくてもよい。すなわち、同じパターンの液晶パネルを連続して積層しなくてもよい。
なお、液晶パネル21として、LCOS(Liquid Crystal on Silicon)方式を用いた透過型液晶素子(透過型LCOS)を用いてもよい。透過型LCOSを用いることで、電極を微細加工することが可能となり、より小型の液晶パネル21を実現できる。透過型LCOSでは、シリコン基板(又は透明基板上に形成されたシリコン層)が用いられる。シリコン基板は、バンドギャップとの関係で、特定の波長以上の波長を有する光(赤外線を含む)を透過するため、LCOSを透過型液晶素子として使用することができる。LCOSを使用することにより、セル電極がより小さい液晶素子を実現することができるため、液晶素子を小型化することが可能となる。
[4] 光偏向素子12の動作
次に、光偏向素子12の動作について説明する。図7は、光偏向素子12の動作を説明する模式的な断面図である。図7は、レーザー光を左側に偏向させる例を示している。
偏向角制御部15は、全ての液晶パネル21-1~21-15に対して、共通電極29、及び複数の電極26に0Vを印加し、複数の電極27に正電圧V1を印加する。電圧V1は、液晶層のしきい値電圧に応じて設定される。液晶層の液晶分子を概略垂直方向に配向させる場合、電圧V1は、液晶層のしきい値電圧より若干大きい値に設定される。液晶層に電界を印加することで、液晶分子が垂直方向に傾くため、液晶層の屈折率が低くなる。
なお、液晶層は、交流駆動され、液晶層を挟む2つの電極に印加される電圧は、半周期ごとに、極性が反転される。例えば、共通電極29に0Vが印加され、電極27(又は電極26)に絶対値がV1で極性が正と負との電圧が交互に印加される。以下の説明において、特に言及しない場合でも、液晶層は交流駆動される。
図7の各液晶パネルにおいて、ハッチングがない部分は、液晶層に電界が印加されず、屈折率が高い領域を示している。ドットハッチングの部分は、液晶層に電界が印加され、屈折率が低い領域を示している。
周期幅Wにおいて、左から右に行くにつれて、屈折率が高い領域が多くなる。すなわち、光偏向素子12のうち周期幅Wに対応する領域には、屈折率の勾配が形成される。屈折率が最も高い領域は、光が進む速度が最も遅く、屈折率が最も低い領域は、光が進む速度が最も速い。すなわち、屈折率が最も高い領域を透過したレーザー光と、屈折率が最も低い領域を透過したレーザー光とは、所定の位相差を有する。これにより、周期幅Wの左端と右端とでレーザー光に位相差が生じるため、レーザー光は、左側に偏向する。
なお、レーザー光を右側に偏向させる場合は、電極26の電圧と電極27の電圧とを入れ替えればよい。
また、液晶パネル21(具体的には、電極26、又は電極27)に印加する電圧V1のレベルを変えることで、液晶分子の傾きを変えることができる。電圧V1が大きくなるにつれて、液晶層に印加される電界が高くなり、液晶分子がより垂直方向に傾く。すなわち、電圧V1が大きくなるにつれて、液晶層の屈折率が低くなる。電圧V1の大きさを変えることで、偏向角が調整できる。最大の偏向角は、液晶層のしきい値電圧以上の電圧V1を電極26又は電極27に印加した場合に実現される。
[5] 比較例
次に、比較例について説明する。図8は、比較例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。図8は、レーザー光を左側に偏向させる例を示している。比較例に係る光偏向素子12は、例えば15個の液晶パネル21-1~21-15が積層されて構成される。
図8の各液晶パネルにおいて、ハッチングがない部分は、液晶層に電界が印加されず、屈折率が高い領域を示している。ドットハッチングの部分は、液晶層に電界が印加され、屈折率が低い領域を示している。すなわち、ハッチングがない部分は、電極26が配置された領域を示し、ドットハッチングの部分は、電極27が配置された領域を示している。
全ての液晶パネル21-1~21-15に対して、共通電極29、及び複数の電極26に0Vが印加され、複数の電極27に正電圧V1が印加される。これにより、比較例に係る光偏向素子12には屈折率の勾配が形成されるので、偏向動作を実現できる。
液晶パネル21-1~21-15にそれぞれ含まれる15個の電極26は、最小の電極幅ずつ大きくなるようして、順に長くなる。すなわち、15個の電極26は、階段状に形成される。
液晶パネル21-1~21-15にそれぞれ含まれる15個の電極27は、最小の電極幅ずつ小さくなるようして、順に短くなる。すなわち、15個の電極27は、逆階段状に形成される。
液晶パネル21-1~21-15の電極パターンをそれぞれパターン“A”~“O”と表記する。比較例に係る光偏向素子12は、パターン“A”~“O”の15種類の液晶パネルを用いて構成される。
比較例では、液晶パネルごとに電極パターンが異なるため、電極パターンを加工するためのマスクを液晶パネルの数だけ用意する必要がある。これにより、光偏向素子12の製造コストが高くなる。積層される液晶パネルの数がさらに増えると、液晶パネルの種類が増えてしまう。よって、積層される液晶パネルの数が増えるにつれて、光偏向素子12の製造コストが高くなる。
一方、本実施形態では、15個の液晶パネル21-1~21-15を積層して光偏向素子12を構成した場合、4種類のパターン“a”~“d”を有する4種類の液晶パネルを組み合わせて光偏向素子12を形成できる。これにより、本実施形態は、比較例に比べて、光偏向素子12の製造コストを低減できる。
[6] 実施例
次に、実施例について説明する。図9及び図10は、実施例及び比較例におけるパネル数(液晶パネルの数)と、パターン数(電極パターンの数)との関係を説明するグラフである。以下に、第1例~第13例に係るパターン数について説明する。
(第1例)
図11は、第1例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。図11において、ハッチングがない部分(白い部分)は、電極26が配置された領域を示し、ドットハッチングの部分は、電極27が配置された領域を示している。また、図11は、レーザー光を左側に偏向する例を示している。
第1例に係る光偏向素子12は、3個の液晶パネル21-1~21-3を備える。光偏向素子12は、2種類のパターン(パターン“a”、“b”)を用いて構成される。
図12は、第1例に係る積層構造の基本単位を説明する断面図である。図12における周期幅Wに対応する繰り返し単位の数は、図11における繰り返し単位の数より少ない。繰り返し単位の数は、任意に設定可能である。
(第2例)
図13は、第2例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第2例に係る光偏向素子12は、4個の液晶パネル21-1~21-4を備える。光偏向素子12は、3種類のパターンを用いて構成される。図13の太線で示した四角は、積層構造の基本単位であり、図12の構成に対応する。図13は、図12の基本単位を一部に含む。
(第3例)
図14は、第3例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第3例に係る光偏向素子12は、5個の液晶パネル21-1~21-5を備える。光偏向素子12は、3種類のパターンを用いて構成される。図14は、図12の基本単位を一部に含む。
(第4例)
図15は、第4例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第4例に係る光偏向素子12は、6個の液晶パネル21-1~21-6を備える。光偏向素子12は、4種類のパターンを用いて構成される。図15は、図12の基本単位を一部に含む。
(第5例)
図16は、第5例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。図16は、レーザー光を左側に偏向する例を示している。
第5例に係る光偏向素子12は、7個の液晶パネル21-1~21-7を備える。光偏向素子12は、3種類のパターン(パターン“a”~“c”)を用いて構成される。
図17は、第5例に係る積層構造の基本単位を説明する断面図である。図17における周期幅Wに対応する繰り返し単位の数は、図16における繰り返し単位の数より少ない。繰り返し単位の数は、任意に設定可能である。
(第6例)
図18は、第6例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第6例に係る光偏向素子12は、8個の液晶パネル21-1~21-8を備える。光偏向素子12は、4種類のパターンを用いて構成される。図18の太線で示した四角は、積層構造の基本単位であり、図17の構成に対応する。図18は、図17の基本単位を一部に含む。
(第7例)
図19は、第7例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第7例に係る光偏向素子12は、9個の液晶パネル21-1~21-9を備える。光偏向素子12は、4種類のパターンを用いて構成される。図19は、図17の基本単位を一部に含む。
(第8例)
図20は、第8例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第8例に係る光偏向素子12は、10個の液晶パネル21-1~21-10を備える。光偏向素子12は、5種類のパターンを用いて構成される。図20は、図17の基本単位を一部に含む。
(第9例)
図21は、第9例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第9例に係る光偏向素子12は、11個の液晶パネル21-1~21-11を備える。光偏向素子12は、4種類のパターンを用いて構成される。図21は、図17の基本単位を一部に含む。
(第10例)
図22は、第10例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第10例に係る光偏向素子12は、12個の液晶パネル21-1~21-12を備える。光偏向素子12は、5種類のパターンを用いて構成される。図22は、図17の基本単位を一部に含む。
(第11例)
図23は、第11例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第11例に係る光偏向素子12は、13個の液晶パネル21-1~21-13を備える。光偏向素子12は、5種類のパターンを用いて構成される。図23は、図17の基本単位を一部に含む。
(第12例)
図24は、第12例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第12例に係る光偏向素子12は、14個の液晶パネル21-1~21-14を備える。光偏向素子12は、5種類のパターンを用いて構成される。図24は、図17の基本単位を一部に含む。
(第13例)
図25は、第13例に係る光偏向素子12の模式的な断面図である。
第13例に係る光偏向素子12は、15個の液晶パネル21-1~21-15を備える。光偏向素子12は、4種類のパターンを用いて構成される。図25は、図17の基本単位を一部に含む。
第1乃至第13例のいずれにおいても、電極を階段状に形成する比較例と比べて、パターン数を低減できる。図9及び図10に示すように、パネル数が増えると、パターンの削減効果が大きくなる。例えば、63個の液晶パネルを用いて光偏向素子を構成した場合、6種類のパターンのみで光偏向素子を構成することができる。
[7] 実施形態の効果
レーザー光を光偏向素子で偏向させる場合、大きな偏向角(屈折角)を得るには液晶層を厚くする必要がある。液晶層を厚くした場合、電圧印加による応答性が悪化する問題がある。さらに、効率の高い屈折を生じさせるためには、液晶パネル内の屈折率を一定の割合で変化させる必要があり、電極ごとに印加電圧レベルを正確に制御する必要がある。
本実施形態では、距離測定装置10は、積層された例えば7個の液晶パネル21を備える光偏向素子12を含む。7個の液晶パネル21の各々は、基板22、23と、基板22、23間に充填された液晶層24と、基板22に設けられ、第1方向に沿って並んだ複数の電極26と、基板23に設けられた共通電極29とを含む。光偏向素子12は、第1ピッチP1で配置された複数の電極26を有する第1液晶パネル21-1と、第1ピッチP1の2倍の第2ピッチP2で配置された複数の電極26を有する第2及び第3液晶パネル21-2、21-3と、第2ピッチP2の2倍の第3ピッチP3で配置された複数の電極26を有する第4乃至第7液晶パネル21-4~21-7とを含む。
従って、本実施形態によれば、光偏向素子12の電極26に同じ電圧を印加することで、光偏向素子12に屈折率の勾配を形成できる。これにより、簡単な電圧制御でレーザー光を偏向させることができる。
また、例えば7個の液晶パネルを積層する場合、3種類の電極パターンを有する3種類の液晶パネルを組み合わせて、光偏向素子12を構成できる。これにより、電極パターンを形成するマスクの数を低減できるため、光偏向素子12の製造コストを低減できる。積層される液晶パネルの数が多くなるほど、液晶パネルの種類の削減効果が大きい。
また、複数の液晶パネルを積層することで、光偏向素子12全体の液晶層の厚さを厚くできる。これにより、偏向角を大きくすることができる。
また、積層する液晶パネルの数が少ない場合、マスク数、及びパネル数を低減できるため、コストを削減することができる。また、液晶パネルによるレーザー光の減衰が少なくなるため、光偏向素子12の透過率が向上する。
なお、上記実施形態では、光偏向素子12が左右両側にレーザー光を偏向させる構成例を示している。片側のみに偏向させる場合は、各液晶パネル21は、電極26及び電極27の一方のみを備えていればよい。この場合の電極ピッチは、1つの電極と、これに隣接するもう1つの電極との間隔とを合わせた長さである。
上記実施形態では、距離測定装置が扱うレーザー光として赤外線レーザー光を用いている。しかし、これに限定されず、距離測定装置は、赤外線以外の光線にも適用可能である。
上記実施形態では、車両に搭載される距離測定装置について説明している。しかし、これに限定されず、距離測定装置は、レーザー光を走査する機能を有する様々な電子機器に適用できる。
本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内で、構成要素を変形して具体化することが可能である。さらに、上記実施形態には種々の段階の発明が含まれており、1つの実施形態に開示される複数の構成要素の適宜な組み合わせ、若しくは異なる実施形態に開示される構成要素の適宜な組み合わせにより種々の発明を構成することができる。例えば、実施形態に開示される全構成要素から幾つかの構成要素が削除されても、発明が解決しようとする課題が解決でき、発明の効果が得られる場合には、これらの構成要素が削除された実施形態が発明として抽出されうる。
10…距離測定装置、11…光源、12…光偏向素子、13…受光素子、14…パルスタイミング制御部、15…偏向角制御部、16…距離演算部、17…主制御部、21…液晶パネル、22,23…基板、24…液晶層、25…シール材、26,27…電極、28,30…配向膜、29…共通電極

Claims (4)

  1. レーザー光を発光する光源と、
    前記レーザー光を偏向し、積層された複数の液晶パネルを有する光偏向素子と、
    前記光偏向素子が備える複数の電極に電圧を印加する制御部と
    前記光偏向素子から投光されたレーザー光が対象物によって反射されたレーザー光を受光する受光素子と
    を具備し、
    前記複数の液晶パネルの各々は、
    第1及び第2基板と、
    前記第1及び第2基板間に充填された液晶層と、
    前記第1基板に設けられ、第1方向に沿って並んだ複数の電極と、
    前記第2基板に設けられた共通電極と
    を含み、
    前記光偏向素子は、
    それぞれが第1幅を有する複数の電極を有する第1液晶パネルと、
    それぞれが前記第1幅の2倍の第2幅を有する複数の電極を有する第2及び第3液晶パネルと
    を含む
    距離測定装置。
  2. 前記光偏向素子は、それぞれが前記第2幅の2倍の第3幅を有する複数の電極を有する第4乃至第7液晶パネルをさらに含む
    請求項1に記載の距離測定装置。
  3. 前記光偏向素子は、それぞれが前記第3幅の2倍の第4幅を有する複数の電極を有する第8乃至第15液晶パネルをさらに含む
    請求項2に記載の距離測定装置。
  4. 前記複数の電極は、交互に配置された複数の第1電極及び複数の第2電極を含み、
    前記制御部は、前記共通電極、及び前記複数の第1電極に第1電圧を印加し、前記複数の第2電極に第2電圧を印加する
    請求項1乃至3のいずれかに記載の距離測定装置。
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