次に、図面を参照して、本発明の第1及び第2の実施形態を説明する。第1及び第2の実施形態に係る図面の記載において、同一又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。但し、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、各部材の厚みの比率等は現実のものとは異なることに留意すべきである。したがって、具体的な厚みや寸法は以下の説明を参酌して判断すべきものである。又、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異なる部分が含まれていることは勿論である。
又、第1及び第2の実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示するものであって、本発明の技術的思想は、各構成要素の構成や配置、レイアウト等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
(基本設計:偏心歪円)
特許文献2及び3には回転中心を通る鉛直線に関し、非対称の回転軌道が提案されているが、どのような非対称の回転軌道にすべきかについて開示がない。本発明者は、非対称の回転軌道は特定の設計指針による特定の歪円でなければ一様な回転軌道が得られず、有効に回転トルクを発生させて回転することができないことを見い出した。第1及び第2の実施形態に係る回転トルク発生装置の説明に入る前に、第1及び第2の実施形態に係る回転トルク発生装置の基礎となる特定の歪円からなる回転軌道の基本設計を説明する。図1(a)に、本発明の基本設計に係る回転トルク発生装置の回転子のガイド部21dを構成する直径が一定値となる偏心した歪円(以下において「偏心歪円」とも言う。)の形状を示す。ガイド部21dの2次元形状は直線部分を有する偏心歪円であり、対称軸となる第1軸と、第1軸に直交し第1軸で2分割される第2軸を有する凧状の蒲鉾形である。直線部分が蒲鉾の板付きとなる部分に対応する。ガイド部21dの2次元形状は、対称軸となる第1軸に関し鏡像関係(反射対称)の凸形の歪円であり、歪円の直径が一定値である。幾何数学における「凧形」は、四角形の種類に属するが、凧形は対角線として互いに直交する第1軸と第2軸を有している。凧形においては、隣り合った2本の辺の長さが等しい組が2組ある。一方、図1(a)に示す「凧状」の2次元図形は円弧を基礎とし、隣り合った2本の長円弧の長さが等しい組が1組と、蒲鉾の板付きとなる直線を挟む2本の短円弧の長さが等しい組が1組ある凸形の偏心歪円である。
図1(a)に示した蒲鉾形の偏心歪円の第2軸は、対称軸となる第1軸を1:3に分割する点において、第1軸に直交する。対称軸となる第1軸をx軸、第2軸をy軸とすると、第1軸と第2軸の交点がxy座標平面の原点(0,0)になり、原点(0,0)が偏心歪円の直径を定義するガイド部21dの形状の中心である。図1(a)から分かるように歪円の中心となる原点(0,0)は、偏心している。即ち、図1(a)のxy座標平面の原点(0,0)が、図2に示した基本設計に係る回転トルク発生装置の第1回転子23a及び第2回転子23bの歪円回転運動の回転中心となり、この回転中心を通る直径の長さLが一定値である。よって、図1(a)のガイド部21dを構成する偏心歪円は、原点(0,0)を回転中心として回転する第1回転子23aと第2回転子23bの距離が一定となる軌道が描く包絡線である。
原点(0,0)を基準として、図1(a)に示した蒲鉾形の偏心歪円の内部となる2次元空間を、対称軸となる第1軸(x軸)からの角度θ=45°で等分割すると、第I分割領域~第VIII分割領域の8分割領域が定義される。図1(a)において、第I分割領域、第II分割領域、第III分割領域及び第IV分割領域が含まれる上側の領域と、第V分割領域、第VI分割領域、第VII分割領域及び第VIII分割領域が含まれる下側の領域は、第1軸(x軸)に関して鏡像関係(線対称)になる。本発明では、第III分割領域、第IV分割領域、第V分割領域及び第VI分割領域を「非駆動領域」、第I分割領域、第II分割領域、第VII分割領域及び第VIII分割領域を「駆動領域」と呼ぶ。図1(a)から分かるように、駆動領域の面積は非駆動領域の面積よりも大きい。図1(a)の第2軸(y軸)の正の方向と逆の方向は、鉛直方向、即ち基本設計に係る回転トルク発生装置のエネルギを供給する重力場の力の方向である。通常の真円では互いに連続する半円の面積は等しい。基本設計に係る回転トルク発生装置では、駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域で重力場により発生するモーメントを非駆動領域で重力場により発生するモーメントより大きくしている。
非駆動領域の一部となる第IV分割領域と第V分割領域は、図1(a)の点(-a,a)と点(-a,-a)を結ぶ第2軸(y軸)に沿った縦方向の直線を外形線とする分割領域である。(-a,a)と点(-a,-a)を結ぶ縦方向の直線が、蒲鉾の板付きとなる部分に対応する。後に図11を用いて説明するが、(-a,a)と点(-a,-a)を結ぶ縦方向の直線部分の長さは、対応する真円21aの半径2aに相当する。第IV分割領域に隣接する第III分割領域も非駆動領域の一部であり、図1(a)の点(-a,a)から点(0,2a)に至る、点(0,a)を中心とした半径aの第1の1/4円の外周を共通とする領域である。同様に、第V分割領域に隣接する第VI分割領域も非駆動領域の一部であり、点(-a,-a)から点(0,-2a)までを、点(0,-a)を中心とした半径aの第2の1/4円の外周を共通とする領域である。
図1(a)に示すように点(0,2a)から反時計方向に点(-a,a)と点(-a,-a)を通り点(0,-2a)に至る円弧が非駆動領域の円弧を定義し、非駆動領域の円弧上の点をRとする。点Rから、歪円の中に偏心して定義される回転中心である原点(0,0)を通る、長さ4aの直線RSを直径Lとして引く。点Rを点(0,2a)から反時計方向に点(-a,a)と点(-a,-a)を通り点(0,-2a)に至る偏心歪円の外周を移動させると、直径L=RSの反対側の点Sの軌道が、第VII分割領域、第VIII分割領域、第I分割領域、第II分割領域に、反時計方向に沿って順に得られて、駆動領域が定義される。
図1(a)において、点Sは、第I分割領域、第II分割領域、第VII分割領域及び第VIII分割領域が構成する駆動領域の外周に位置し、点Rは、第III分割領域、第IV分割領域、第V分割領域及び第VI分割領域が構成する非駆動領域の外周に位置する。そして、点Rの軌道と点Sの軌道とを合わせた軌道が、ガイド部21dを構成する偏心歪円の外形線である。図1(a)は、点Sが第I分割領域、点Rが第V分割領域に位置する場合を例示しており、図1(b)は、点Sが第II分割領域、点Rが第VI分割領域に位置する場合を例示している。四角形の種類に属する凧形では、異なる長さを持つ2辺によって造られる2つの向かい合う角の大きさが、互いに等しい線対称をなしている。図1(a)及び(b)に示す蒲鉾形の偏心歪円においては、第II分割領域の円弧と第III分割領域の円弧が連続する部分の曲率半径と、対向する第VII分割領域の円弧と第VI分割領域の短円弧が連続する部分の曲率半径は、互いに等しい線対称をなしている。
図1(a)において、直線RSと第1軸(x軸)とのなす角度をθとし、原点(0,0)から点Sまでの腕長をl1、原点(0,0)から点Rまでの腕長をl2とする。第V分割領域に位置する点Rの座標は図1(a)に定義されるθに対し(-a,-l2sinθ)、第I分割領域に位置する点Sの座標は(l1cosθ,l1sinθ)で表される。但し、図1(a)の第V分割領域に定義されるθは視覚的に理解しやすくした表現であって、後述する回転トルクTを解散するθは、第I分割領域の第1軸(x軸)から測る第I分割領域と同一定義のθとするべきであるので、θを定義し直すと位相角πだけずれるので、点Rの座標は、(-a,l2sinθ)となる。第I分割領域のx軸から定義されるθでは、第V分割領域のsinθは負の値である。第V分割領域の点Rは、点(-a,a)と点(-a,-a)を通る直線上に位置するので、l2cosθ=aである。又、点Rと点Sとの間の距離は一定であるので、l1+l2=4a=Lである。したがって、第I分割領域点Sの軌道は、
l1=4a-l2=4a-a(cosθ)-1=a(4-(cosθ)-1)……(1)
で表される。基本設計に係る回転トルク発生装置においては、第I分割領域に位置する点Sの原点(0,0)からの腕長l1は、式(1)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。対応して第V分割領域に位置する点Rの原点(0,0)からの腕長l2は、第1軸(x軸)となす角度θの変化とともにl2=a(cosθ)-1に従って変化する。
図1(b)において、直線RSと第2軸(y軸)とのなす角度をφとし、原点(0,0)から第II分割領域に位置する点Sまでの腕長をl1、原点(0,0)から第VI分割領域に位置する点Rまでの腕長をl2とする。第II分割領域の点Sの座標は(l1cos(π/2-φ),l1sin(π/2-φ))で表される。第VI分割領域の点Rは、点(0,-a)を中心とした半径aの円弧上に位置するので、余弦定理により:
a2=l2
2+a2-2l2acosφ ……(2)
l2=2acosφ ……(3)
である。又、点Rと点Sとの間の距離Lは一定であるので、l1+l2=4a=Lである。
したがって、点Sの軌道は:
l1=4a-l2=4a-2acosφ=2a(2-cosφ)……(4)
で表される。図1(b)からφ=π/2-θであることが分かるので
l2=2asinθ ……(5)
l1=2a(2-sinθ) ……(6)
となる。即ち、基本設計に係る回転トルク発生装置においては、第II分割領域に位置する点Sの原点(0,0)からの腕長l1は式(6)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。又、第VI分割領域に位置する点Rの原点(0,0)からの腕長l2は式(6)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。
図1(a)のガイド部21dを構成する偏心歪円は第1軸(x軸)に対して線対称であるため、図1(a)におけるガイド部21dを構成する歪円の数学的表現である式(1)~(4)の基本概念は、点Sが第I分割領域、点Rが第V分割領域に位置する場合だけでなく、鏡像関係となる点Sが第VIII分割領域、点Rが第IV分割領域に位置する場合にも適用できる。同様に、図1(b)におけるガイド部21dを構成する歪円の数学的表現の考え方は、点Sが第II分割領域、点Rが第VI分割領域に位置する場合だけでなく、鏡像関係となる点Sが第VII分割領域、点Rが第III分割領域に位置する場合にも適用できる。
図11を参照して、基本設計に係る偏心歪円の直線部分の長さについて説明する。図11では真円21aを太い破線で示し、基本設計に係る回転トルク発生装置のガイド部21dの軌跡を太い実線で示している。そして、細い実線で第1の試行軌跡21bを示し、細い破線で第2の試行軌跡21cを示し、二点鎖線で第3の試行軌跡21eを示している。基本設計に係る回転トルク発生装置のガイド部21dの軌跡は直径が一定値となる歪円であるので、図11に示す、真円21a、第1の試行軌跡21b、第2の試行軌跡21c、ガイド部21dの軌跡、第3の試行軌跡21eは、いずれもxy座標平面の原点(0,0)が直径を定義する回転中心である。
即ち、真円21a、第1の試行軌跡21b、第2の試行軌跡21c、ガイド部21dの軌跡、第3の試行軌跡21eのいずれも、原点(0,0)を通る直径の長さが等しい2次元図形である。基本設計に係る回転トルク発生装置は一様な重力場の中で、腕長変更棒231の両端に設けた第1回転子23aと第2回転子23bに異なるモーメントが発生するためには、x軸を1:3に分割する点が原点(0,0)であることが必要であることを既に述べた。太い破線で示した真円21aは回転対称の図形であるので、x軸を1:1に分割する点が原点(0,0)である。真円21aのような回転対称の図形では、腕長変更棒231の両端に設けた第1回転子23aと第2回転子23bに異なるモーメントを発生することができない。
細い実線で示した第1の試行軌跡21bは、x軸を3:5に分割する点が原点(0,0)とする場合で、y軸上の長さは1:1の線対称である。x軸を3:5に分割する点が原点(0,0)となる場合に決まる点(-b2,2a-b2)から点(-b2,-(2a-b2)までy軸に平行な直線を引く。点(-b2,2a-b2)から点(-b2,-(2a-b2)までの直線部分の長さは、対応する真円21aの半径2aよりも短く、半径2aの約半分に相当する。次に、図11の第II象限中の点(-b2,2a-b2)から時計方向にy軸上の点(0,2a)までを、点(0,2a-b2)を中心とした半径b2の第1の1/4円の円弧で結ぶ。同様に、図11の第III象限中の点(-b2,-(2a-b2))から反時計方向にy軸上の点(0,―2a)までを、点(0,-(2a-b2))を中心とした半径b2の第2の1/4円の円弧で結ぶ。y軸上の点(0,2a)から第I象限を時計方向に周りx軸上の点(4a-b2,0)を通り、更に第IV象限を時計方向に周り、y軸上の点(0,―2a)までの曲線は、原点(0,0)を通る直径が一定になる条件を用いて、ガイド部21dの軌跡の場合と同様の手順で得ることができる。
基本設計に係る回転トルク発生装置のガイド部21dの形状を第1の試行軌跡21bに置き換えると、第1の試行軌跡21bによっても回転トルクを得ることができるが、動力軸22から腕長変更棒231の両端の回転子までの腕長の差がガイド部21dの軌跡の場合より小さい。したがって動力軸22から腕長変更棒231の両端の回転子までの腕長の差に起因するトルクがガイド部21dの軌跡の場合より小さい。
細い破線で示した第2の試行軌跡21cは、x軸を38:83に分割する点が原点(0,0)とする場合で、y軸上の長さは1:1の線対称である。x軸を38:83に分割する点が原点(0,0)となる場合に決まる図11の第III象限の点(-b1,2a-b1)からy軸に沿って第II象限の点(-b1,-(2a-b1))まで直線を引く。点(-b1,2a-b1)から点(-b1,-(2a-b1))までの直線部分の長さは、対応する真円21aの半径2aよりも短く半径2aの約3/4に相当する。次に、第II象限の点(-b1,2a-b1)からy軸上の点(0,2a)までを、点(0,2a-b1)を中心とした半径b1の第1の1/4円の円弧で時計方向に結ぶ。
同様に、第III象限の点(-b1,-(2a-b1))からy軸上の点(0,-2a)までを、点(0,-(2a-b1))を中心とした半径b1の第2の1/4円の円弧で反時計方向に結ぶ。その後は、原点(0,0)を通る直径が一定になる条件で、第1の試行軌跡21bと同様の手順で第2の試行軌跡21cを得ることができる。第1の試行軌跡21bの場合と同様に、ガイド部21dの形状を第2の試行軌跡21cに置き換えると、第2の試行軌跡21cによっても回転トルクを得ることができるが、動力軸22から腕長変更棒231の両端の回転子までの腕長の差がガイド部21dの軌跡の場合より小さい。したがって動力軸22から腕長変更棒231の両端の回転子までの腕長の差に起因するトルクがガイド部21dの軌跡の場合より小さい。
二点鎖線で示した第3の試行軌跡21eは、x軸を12:49に分割する点が原点(0,0)とする場合で、y軸上の長さは1:1の線対称である。x軸を12:49に分割する点が原点(0,0)となる場合に決まる図11の第III象限の点(-b3,2a-b3)からy軸に沿って第II象限の点(-b3,-(2a-b3))まで直線を引く。点(-b3,2a-b3)から点(-b3,-(2a-b3))までの直線部分の長さは、対応する真円21aの半径2aよりも長く、半径2aの約4/3に相当する。後は、第1の試行軌跡21b及び第2の試行軌跡21cと同様の手順で軌道を得ることができる。しかしながら、図11に示すように、x軸上の点(4a-b3,0)とy軸上の点(0,-2a)との間の第IV象限の軌道の一部が点(0,-2a)よりも低い位置に二点鎖線で示した曲線が位置し、回転トルクを得ることができない。
同様に、y軸上の点(0,2a)からx軸上の点(4a-b3,0)に至る第I象限の軌道の一部が点(0,2a)よりも高い位置に二点鎖線で示した曲線が位置し、回転トルクを得ることができない。よって、図11に示す真円21a、第1の試行軌跡21b、第2の試行軌跡21c、ガイド部21dの軌跡、第3の試行軌跡21eのうち、回転トルクを得るために最も好ましい曲線軌道は、直線部分の長さが対応する真円21aの半径2aに相当し、且つx軸を1:3に分割する点が原点(0,0)であるガイド部21dの軌跡であることがわかる。
歪円には凸型の歪円と凹型の歪円がある。図12を参照して、ガイド部21dを構成する歪円には凸型の歪円が望ましいことを説明する。更に、x軸を1:3に分割する点が、ガイド部21dを構成する偏心歪円の中心であることが必要であることを既に述べたが、ガイド部21dを構成する凸型の歪円の中に偏心して定義される回転中心の位置について検討する。図12ではガイド部21dの軌跡を太い実線で示している。そして細い破線で第4の試行軌跡21qを示し、細い実線で第5の試行軌跡21pを示している。図12に示すガイド部21dの軌跡の直径を定義する回転中心はxy座標平面の原点(0,0)であるので、x軸を1:3に分割する点が原点(0,0)である。一方、細い破線で示した第4の試行軌跡21qの直径を定義する回転中心は(a,0)であり、x軸を1:1に分割する点である。又、細い実線で示した第5の試行軌跡21pの直径を定義する回転中心は点(2a,0)であり、x軸を3:1に分割する点である。
図12では、ガイド部21dの軌跡、第4の試行軌跡21q及び第5の試行軌跡21pのいずれも、x軸を1:3に分割する点が原点(0,0)となる場合に決まる第II象限の点(-a,a)から第III象限の点(-a,-a)までy軸に平行な直線を引く。次に、ガイド部21dの軌跡、第4の試行軌跡21q及び第5の試行軌跡21pのいずれも、図12の第II象限中の点(-a,a)から時計方向にy軸上の点(0,2a)までを、点(0,a)を中心とした半径aの第1の1/4円の円弧で結ぶ。同様に、ガイド部21dの軌跡、第4の試行軌跡21q及び第5の試行軌跡21pのいずれも、図12の第III象限中の点(-a,-a)から反時計方向にy軸上の点(0,―2a)までを、点(0,-a)を中心とした半径aの第2の1/4円の円弧で結んでいる。
しかしながら、ガイド部21dの軌跡、第4の試行軌跡21q及び第5の試行軌跡21pの直径を定義する回転中心は、それぞれ点(0,0)、点(a,0)、点(2a,0)であり、異なる。細い破線で示した直径を定義する回転中心が点(a,0)である第4の試行軌跡21qの場合、凹型の歪円となり、図12における点(3a,0)での軌道の曲率が大きくなるので、ガイド部21dとして採用するのは困難であることが分かる。又、第4の試行軌跡21qの場合、直径を定義する点(a,0)から腕長変更棒のそれぞれの先端までの腕長が、腕長変更棒の位置により、点(a,0)より右側に位置する腕長変更棒の先端の方が長い場合と、点(a,0)より左側に位置する腕長変更棒の先端の方が長い場合とがあるので、有効なトルクが発生できないことが分かる。
一方、細い実線で示した直径を定義する回転中心が点(2a,0)である第5の試行軌跡21pの場合も、凹部のへこみの激しい凹型の歪円となる。このため、第5の試行軌跡21pの場合は、図12における点(3a,0)での軌道の曲率は、第4の試行軌跡21qよりも更に大きくなり、ガイド部21dとして採用するのは不可能と解釈できる。したがって、ガイド部21dの軌跡の中心は図12におけるxy座標平面の原点(0,0)が最適であり、原点(0,0)は凸型の偏心歪円の対称軸となる第1軸を1:3に分割する点において第1軸に直交する第2軸が交わる点であることがわかる。
(回転トルク発生の基本原理)
図2に示すように、基本設計に係る回転トルク発生装置のガイド部21dの形状は直線部分を有する凸型の偏心歪円であり、歪円の中に偏心して定義される回転中心の位置には、図2の紙面と垂直方向に動力軸22の中心が、歪円の直径を定義するように配置されている。基本設計に係る回転トルク発生装置に用いる歪円は、駆動領域とこの駆動領域に連続する非駆動領域で構成され、歪円の直線部分は非駆動領域に設けられている。動力軸22は、凸型の歪円の中に偏心して定義される回転中心に位置する軸の周りを、腕長変更棒231の長さを一定に維持して同軸で回転することが可能となっている。真円では互いに連続する半円の面積は等しいが、駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくし、駆動領域と非駆動領域の境界に偏心して回転中心が定義され、駆動領域と非駆動領域の境界に動力軸22の中心が設定される。動力軸22には、長さが一定の腕長変更棒231を通すための摺動部が動力軸22の軸の方向と垂直となる方向に開けられ、動力軸22の回転に伴い、腕長変更棒231が摺動部の中を案内されて移動して、互いに対向する腕長が変更される。駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域での腕長を非駆動領域で腕長よりも長くなる内部機構が構成できる。逆に言うと、非駆動領域は腕長変更棒231の非駆動領域側の腕長を短く制限するための領域である。駆動領域の腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなるため、駆動領域での重力場の力によるモーメントが非駆動領域での重力場の力によるモーメントより大きくなる。
摺動部は幾何学的には動力軸22の中心を貫通する必要があるが、物理的には動力軸22を貫通する貫通孔ではなく、U溝等の動力軸22の外形に即した形状の溝でも構わない。ただし、力学的な強度を考慮すると貫通孔の方が好ましい。並進移動の精度を高めるためには腕長変更棒231の外径寸法と摺動部の内径寸法の間のクリアランスは、摩擦抵抗が大きくならない程度に小さく設定することが好ましい。即ち腕長変更棒231はこの摺動部の内部を並進移動可能なように案内されて動力軸22の中心を貫通しており、摺動部に並進移動の方向を案内されて腕長変更棒231が移動することにより、非駆動領域における腕長と駆動領域における腕長が変更される。動力軸22は腕長変更棒231の長さを一定に維持するように並進移動を案内しながら回転するが、動力軸22の回転と共に、非駆動領域における腕長と駆動領域における腕長が、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い自動的に変更される。
腕長変更棒231の両端には、第1回転子23a及び第2回転子23bが、ガイド部21dに沿って回転(自転)可能に取り付けられている。第1回転子23a及び第2回転子23bは、同じ重量及び寸法の円盤状(円柱状)のローラである。図3に示すように、第1回転子23a及び第2回転子23bが回転可能に取り付けるため、腕長変更棒231の両端には、第1回転軸24a及び第2回転軸24bが設けられている。第1回転子23aは、第1回転軸24aを介して回転可能に取り付けられ、第2回転子23bは、第2回転軸24bを介して回転可能に取り付けられている。図2に示すように、第1回転子23a及び第2回転子23bのそれぞれの外周面は、ガイド部21dの内側に常時接して回転するように設定されて配置されている。このため、ガイド部21dが定義する偏心歪円の外形に沿って第1回転子23a及び第2回転子23bが自転しながら、腕長変更棒231が公転する。
通常の回転運動は半径が一定の回転であるが、基本設計に係る回転トルク発生装置においては、第I分割領域に位置する第1回転子23aの動力軸22の中心からの腕長l11は、式(1)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。対応して第V分割領域に位置する第2回転子23bの動力軸22の中心からの腕長l21は、第1軸(x軸)となす角度θの変化とともにl2=a(cosθ)-1に従って変化する。又、第II分割領域に位置する第1回転子23aの動力軸22の中心からの腕長l11は式(6)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。更に、第VI分割領域に位置する第2回転子23bの動力軸22の中心からの腕長l21は式(5)に従って、第1軸(x軸)となす角度θの変化に伴い変化する。
通常の回転運動は半径が一定の回転であるが、基本設計に係る回転トルク発生装置では互いに対向する腕長l11と腕長l21が、d=l11+l21=一定の関係を維持しながら、角度θの変化に伴い変化する。動力軸22の中心の絶対座標は固定であるが、腕長変更棒231を基準に考えると、回転中心が直径の上を相対的に並進移動する「中心移動回転」になる。基本設計に係る回転トルク発生装置における中心移動回転において、直径にほぼ対応する腕長変更棒231の長さdは一定であることから、第1回転子23aと第2回転子23bの間の距離dは一定である。
同様に、基本設計に係る回転トルク発生装置では、動力軸22の中心とガイド部21d上の第1回転子23aとの間の腕長l12,l13は一定ではなく、回転移動に伴い変化する。対応する第2回転子23bと動力軸22の中心との間の腕長l22,l23も一定ではなく、回転移動に伴い変化する。したがって動力軸22の摺動部に通された腕長変更棒23は動力軸22の摺動部に固定されておらず、動力軸22の摺動部の内壁に沿って腕長変更棒231はスライドが可能となっている。即ち、動力軸22の中心の絶対座標は固定であるが、腕長変更棒231を基準に考えると、回転中心が相対的に移動する中心移動回転になる。
図2は、腕長変更棒231が中心移動回転する様子を説明するために、便宜上腕長変更棒231、腕長変更棒232及び腕長変更棒233として異なる符号を付している。しかし、動力軸22の回転に伴う時系列が異なる図面を1図で表現するための便宜上の符号であって、実際には腕長変更棒231、腕長変更棒232及び腕長変更棒233は同一の部材である。図2では動力軸22の摺動部の中を腕長変更棒231がスライド移動する場合のみを模式的に図示しているが、時系列の異なるタイミングにおいては、動力軸22の摺動部の中を腕長変更棒232がスライド移動し、腕長変更棒232の長さl12+l22は腕長変更棒231の長さl11+l21に等しいように維持される。
l12+l22=l11+l21となるのは、元々腕長変更棒232と腕長変更棒231は同じ部材であるので当然である。更に他のタイミングにおいては、動力軸22の摺動部の中を腕長変更棒233がスライド移動するが、腕長変更棒233の長さl13+l23は腕長変更棒231の長さl11+l21に等しい。l13+l23=l11+l21となるのは、元々腕長変更棒233と腕長変更棒231は同じ部材であるから当然である。
図3(a)は図2に示した腕長変更棒231を動力軸22の方向から見た正面図の一例であり、図3(b)は、図3(a)の正面図に直交する方向から見た腕長変更棒231の上面図である。図3(a)と図3(b)の関係から、腕長変更棒231の主部は角棒又は角パイプとして見ることが可能であるが例示であり、腕長変更棒231の主部は丸棒や丸パイプでも構わない。腕長変更棒231の主部が角棒又は角パイプであれば動力軸22を貫通する摺動部は角穴になり、腕長変更棒231の主部が丸棒や丸パイプであれば動力軸22を貫通する摺動部は丸穴になることは勿論である。
既に説明したとおり、腕長変更棒231の両端に第1回転軸24a及び第2回転軸24bが設けられ、第1回転軸24a及び第2回転軸24bを介して、それぞれ第1回転子23a及び第2回転子23bが中心移動回転する。図3(a)及び(b)では図示を省略しているが、実際には第1回転子23aは、転がり軸受である第1回転軸受けを介して第1回転軸24aに摩擦抵抗を低減するように取り付けられ、第2回転子23bは、転がり軸受である第2回転軸受けを介して第2回転軸24bを介して摩擦抵抗を低減するように取り付けられている。第1及び第2回転軸受けには、玉軸受、ころ軸受、すべり軸受、磁気軸受、流体軸受等の種々の転がり軸受が使用可能である。
図4に示すように、基本設計に係る回転トルク発生装置は、高さの低い空洞状の収納容器41を基礎としたトランスミッション機構を備えている。ここで収納容器41の「高さ」は、図2の紙面と垂直な方向に測られるので、図4では水平方向に定義される。収納容器41を構成する対向する上面と下面は、それぞれ図1で説明したような偏心した歪円の形状で、互いに平行に対峙している。基本設計に係る回転トルク発生装置は、更に収納容器41の上面と下面に偏心して定義される回転中心をそれぞれ貫通する動力軸22、収納容器41の外部において動力軸22の端部側に同心で設けられ、動力軸22と同時に回転する駆動ギア43、駆動ギア43によって駆動される従車ギア44及び従車ギア44によって駆動されるフライホイール45から構成される。
既に述べたとおり、動力軸22には腕長変更棒231の並進運動を案内するための、矩形の摺動部42が設けられているが、摺動部42の形状は例示に過ぎない。腕長変更棒231の主部が丸棒や丸パイプであれば動力軸22を貫通する摺動部42は丸穴になる。腕長変更棒231の両端に取り付けられた第1回転子23a及び第2回転子23bは、収納容器41の側壁として定義されるガイド部21dに沿って中心移動回転する。動力軸22は、駆動ギア43及び従車ギア44を介してフライホイール45に接続されており、動力軸22の回転によってフライホイール45が回転する。図4に示したトランスミッション機構は例示に過ぎず、動力軸22が供する回転トルクを用いた種々のトランスミッション機構が採用可能である。
ここで、回転に伴う時系列上の分類をするために、腕長変更棒231、腕長変更棒232及び腕長変更棒233と異なる符号を付した図2に戻る。回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでの腕長をそれぞれl11及びl21とする。第1回転子23aが8分割した第I分割領域に位置する場合、腕長l11が腕長l21よりも長い(l11>l21)。第1回転子23aと第2回転子23bは同じ質量であるため、第1回転子23aに働くモーメントの方が第V分割領域に位置する第2回転子23bに働くモーメントより大きくなる。この結果、第1回転子23a及び第2回転子23bは、図4に示すガイド部21dに沿って中心移動回転する回転トルクを発生させる。
回転トルクによって、腕長変更棒231が動力軸22とともに時計方向に中心移動回転すると、直径を一定にするように、動力軸22の摺動部42に沿って腕長変更棒231がスライド移動する。腕長変更棒231のスライド移動に伴って回転中心から駆動領域に位置する第1回転子23aまでの腕長l11及び回転中心から非駆動領域に位置する第2回転子23bまでの腕長l21が、それぞれ変化する。動力軸22の回転に伴って、図4に示した駆動ギア43及び従車ギア44が回転し、更にフライホイール45が回転する。フライホイール45は動力軸22からの作用力とフライホイール45自身の慣性力を伴う回転によって動力を出力する。
腕長変更棒231が動力軸22の中心を回転中心として回転し、第1回転子23aが8分割した第VII分割領域に位置すると、図2では腕長変更棒232の位置まで移動したことになる。第1回転子23aが駆動領域の第VII分割領域に位置する場合、回転中心から第1回転子23aまでの駆動領域の腕長をl12、回転中心から第2回転子23bまでの非駆動領域の腕長をl22とする。駆動領域の腕長l12と非駆動領域の腕長l22が異なるため、第VII分割領域に位置する第1回転子23a及び第III分割領域に位置する第2回転子23bに加えられる力によるモーメントが異なる。
即ち、第1回転子23aが第VII分割領域に位置する場合の第1回転子23aに働くモーメントは、第1回転子23aが第I分割領域に位置する場合に第1回転子23aに働くモーメントより小さい。第1回転子23aが第VII分割領域に位置する場合は、駆動領域の腕長l12と非駆動領域の腕長l22の差によって生じる腕長変更棒232のトルクは、小さくなるが、フライホイール45の有する慣性力によって中心移動回転する。慣性力による回転により、腕長変更棒232の第1回転子23aは、第VII分割領域と第VI分割領域の境界である第2軸(y軸)上に位置して、腕長変更棒233の位置にまで回転することになる。
腕長変更棒232が腕長変更棒233の位置まで移動したとき、回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでのそれぞれの腕長l13及び腕長l23は互いに等しくなり、第2軸上の腕長l13と第2軸上の腕長l23の差によって生じる腕長変更棒233の回転トルクはゼロになる。しかし、フライホイール45の有する慣性力によって、第1回転子23aは8分割した第VI分割領域を時計方向に移動し、腕長変更棒233は停止することなく回転し続ける。何らかの事情により、慣性力が弱まり、l13=l23の場合に回転トルクがゼロとなる事態を補うために、補助動力機構をオプションとして、別途設けてもよい。補助動力機構を設けた場合であっても、l13=l23となる極点の位置で、トルクT=0の回転体を微少移動させる無視できるレベルの微少な力しか使わないので、重力場を有効利用した省エネルギ機械装置として作用する。
腕長変更棒231の回転機構を、図5を参照して詳細に説明する。図1(a)と同様に、対称軸となる第1軸をx軸、第2軸をy軸とし、図5のxy座標平面の原点(0,0)を、図5に示すガイド部21dの直径を定義する回転中心とする。図5(a)において、回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでのそれぞれの腕長をl1a及びl2aとし、腕長変更棒231と第1軸とのなす角をθとする。第1回転子23aに作用する重力場の力の方向は図5(a)の紙面の下方、即ち図5(a)において、第1回転子23aの中心から鉛直方向に向かう矢印の方向である。第1回転子23aに作用する重力場によるモーメントM1aは、重力mgの腕長変更棒231に直交する方向の分力がmgcosθであるから、第1回転子23aの質量をmとすると、
M1a=mgl1acosθ ……(7)
で表される。
同様に、第2回転子23bに作用する重力場の力の方向は図5(a)の紙面鉛直下方、即ち第2回転子23bの中心から鉛直方向に向かう矢印の方向であり、第2回転子23bに作用する重力場によるモーメントM2aは、重力mgの腕長変更棒231に直交する方向の分力がmgcosθであるから、
M2a=mgl2acosθ ……(8)
で表される。
動力軸22の中心を回転中心とする時計方向の回転のトルクTを与える合成モ-メントは:
T=M1a-M2a=mg(l1a-l2a)cosθ……(9)
となる。l1a>l2aであるから、腕長変更棒231の両端には時計方向の回転のトルクTが発生する。式(9)で表されるトルクTの大きさは、θが90°から0°に近づくに従って大きくなる。このトルクTによって、第1回転子23aと第2回転子23bはガイド部21dに沿って時計方向に回転移動する。
第1回転子23aが8分割した第I分割領域に位置するとき、l2a=a(cosθ)-1であり、式(1)のl1を式(9)のl1aに用いると、式(9)は、
T=mga(4-2(cosθ)-1)cosθ
=2mga(2cosθ-1) ……(10)
と表される。一方、第1回転子23aが8分割した第II分割領域に位置するとき、式(5)のl2を式(9)のl2aに用い、式(6)のl1を式(9)のl1aに用いると、式(9)は、
T=2mga((2-sinθ)-sinθ)cosθ
=4mga(1-sinθ)cosθ ……(11)
と表される。
図5(a)に示す腕長変更棒231が回転し、第1回転子23aと第2回転子23bが同じ高さとなる第1軸上に共に位置する場合を図5(b)に示す。回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでのそれぞれの腕長をl1b及びl2bとする。第1回転子23aに作用する重力場の力の方向は図5(b)の紙面下方であり、式(7)と同様な考え方でcosθ=1とした場合になり、第1回転子23aに作用する重力場によるモーメントM1bはM1b=mgl1bで表される。同様に、第2回転子23bに作用する重力場の力の方向は図5(b)の紙面鉛直下方であり、第2回転子23bに作用する重力場によるモーメントM2bは、式(8)と同様な考え方においてcosθ=1とした場合に対応し、M2b=mgl2bで表される。
動力軸22の中心を回転中心とする時計方向の回転のトルクTを発生する合成モ-メントは:
T=M1b-M2b=mg(l1b-l2b) ……(12)
となる。式(12)は式(9)でcosθ=1とした場合に対応する。式(12)でl1b>l2bであるから、腕長変更棒231の両端には時計方向の回転のトルクTが発生する。式(12)で表されるトルクTによって、第1回転子23aと第2回転子23bはガイド部21dに沿って時計方向に回転移動する。腕長変更棒231の両端に働く時計方向の回転のトルクTの大きさは、図5(b)において最大となる。
ここで、動力軸22の回転に伴い、駆動ギア43及び従車ギア44が回転し、更にフライホイール45が回転する。フライホイール45の回転による慣性力によっても腕長変更棒231の回転力が生じる。回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでの腕長変更棒の長さの差(l1b-l2b)に起因するトルクTと、フライホイール45の有する慣性力に起因する回転力により、第1回転子23aと第2回転子23bはガイド部21dに沿って時計方向に回転移動する。
図5(b)に示す腕長変更棒231が回転し、第1回転子23aが更に下方に移動したときの状態を図5(c)に示す。回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでのそれぞれの腕長をl1c及びl2cとし、腕長変更棒231と第1軸とのなす角をθとする。第1回転子23aに作用する重力場の力の方向は図5(c)の紙面鉛直下方であり、第1回転子23aに作用する重力場によるモーメントMは、式(7)と同様な考え方で、mgl1ccosθで表される。同様に、第2回転子23bに作用する重力場の力の方向は図5(c)の紙面鉛直下方であり、第2回転子23bに作用する重力場によるモーメントMは式(8)と同様な考え方で、mgl2ccosθで表される。
動力軸22の中心を回転中心とする時計方向の回転のトルクTを与える合成モ-メントは:
T=M1c-M2c=mg(l1c-l2c)cosθ ……(13)
となる。式(13)は式(9)と同じ内容を示しているので、式(9)及び式(10)と同じように変換できる。式(13)でl1c>l2cであるから、腕長変更棒231の両端には時計方向の回転のトルクTが発生する。
式(13)で表されるトルクTによって、第1回転子23aと第2回転子23bはガイド部21dに沿って時計方向に回転移動する。式(13)で表されるトルクTは、θが360°(=0°)から時計方向に270°に近づくに従って小さくなる。したがって、この力のモーメントによって生じる腕長変更棒231の回転力は、θが時計方向に270°に近づくに従って小さくなっていく。ここで、フライホイール45の回転における慣性力によって腕長変更棒231の回転力が補われる。式(13)で表されるトルクTと、フライホイール45の有する慣性力に起因する回転力により、第1回転子23aと第2回転子23bはガイド部21dに沿って、8分割した第VII分割領域を時計方向に回転移動する。
図5(c)に示す腕長変更棒231が第VII分割領域の領域で時計方向に回転し、第1回転子23aが最下方に移動して第2軸の上に位置したときの状態を図5(d)に示す。回転中心から第1回転子23a及び第2回転子23bまでのそれぞれの腕長をl1d及びl2dとする。第1回転子23aに作用する重力場の力の方向は図5(d)の紙面鉛直下方であり、第1回転子23aに作用する重力場によるモーメントMは、式(7)と同様な考え方で、mgl1dcosθで表される。同様に、第2回転子23bに作用する重力場の力の方向は図5(d)の紙面鉛直下方であり、第2回転子23bに作用する重力場によるモーメントMは、式(7)と同様な考え方を用いてmgl2dcosθで表される。第1回転子23a及び第2回転子23bが第2軸の上に位置しているときはcosθ=0であり、腕長変更棒231の両端には時計方向の回転のトルクTは発生しない。しかしながら、フライホイール45の回転における慣性力によって腕長変更棒231は回転し続ける。
以上説明したように、基本設計に係る回転トルク発生装置は、一様な重力場のなかで重力モーメントに非対称性を発生させる歪円軌道を有している。基本設計に係る回転トルク発生装置では歪円の非対称性によって、動力軸22に設けられた摺動部に案内される腕長変更棒231の並進移動により、対向する第1回転子23a及び第2回転子23bに作用するモーメントを非対称にして、腕長変更棒231の回転のトルクを発生している。このように、基本設計に係る回転トルク発生装置においては、腕長変更棒231の両端に設けられた第1回転子23a及び第2回転子23bが偏心歪円からなるガイド部に沿って周回し、重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生している。第1回転子23a及び第2回転子23bの回転は、腕長変更棒231を介して動力軸22の回転運動となるので、動力軸22の回転運動が増速機を介してフライホイール45に伝えられると、回転運動の動力が基本設計に係る回転トルク発生装置から出力できる。
(第1の実施形態)
ここで図5に戻る。図5(a)、(b)、(c)及び(d)に示す基本設計に係る回転トルク発生装置の腕長変更棒231の長さdは一定であり、腕長変更棒の長さをdとすると、
l1a+l2a=l1b+l2b=l1c+l2c=l1d+l2d=d……(14)
である。又、第1回転子23a及び第2回転子23bのそれぞれの半径をr、図1(a)に示すガイド部21dの点Rと点Sとの間の腕長変更棒の長さに相当する歪円の直径をLとすると、第1回転子23a及び第2回転子23bのそれぞれの半径rが、腕長変更棒231の長さdに比して十分に小さければ、近似的にd+2r=Lと見なすことが可能である。
しかしながら歪円であるので、腕長変更棒231の延長上に、第1回転子23aとガイド部21dとの接点や、第2回転子23bとガイド部21dとの接点が、常に位置するわけではない。例えば図5(a)のとき、
l1a+l2a=d ……(15A)
d+2r<L ……(15B)
である。したがって、腕長変更棒231の長さは、ギャップ長ΔL=L-(d+2r)が最も大きくなる位置で腕長変更棒231の両端の第1回転子23a及び第2回転子23bがガイド部21dに接するように腕長変更棒231の長さを決定する必要がある。ギャップ長ΔLが最も大きくなるのは図5から分かるように角度θ=45°及び315°のときである。
そこで、基本設計に係る回転トルク発生装置においては、角度θ=45°及び315°のとき、第1回転子23a及び第2回転子23bがガイド部21dに接するように腕長変更棒231の長さdを決定している。角度θ=45°及び315°のときは、腕長変更棒231の延長上に、第1回転子23aとガイド部21dとの接点も、第2回転子23bとガイド部21dとの接点も存在しない。角度θ=45°及び315°の場合を基準に腕長変更棒231の長さdを決定すると、ギャップ長ΔL=0となる図5(b)及び(d)のとき、第1回転子23a及び第2回転子23bはガイド部21dに接しない。図5(b)のときは第1回転子23a及び第2回転子23bがガイド部21dに接していなくても腕長変更棒231の回転運動に影響を与えない。図5(d)のとき、第1回転子23a及び第2回転子23bとガイド部21dとの間に隙間が生じ、腕長変更棒231の自重により腕長変更棒231が鉛直下方に並進移動するように滑り落ちてしまう。図5(d)のときの、腕長変更棒231が滑り落ちるのを防ぐために、図9に示すように、動力軸22に腕長変更棒231の移動を制限するオートロック機構を設置するとよい。
第1の実施形態に係る回転トルク発生装置においては、動力軸22の腕長変更棒23を通す摺動部の内壁に、腕長変更棒23に沿うように逆台形(楔型)の第1溝91a,第2溝91b,第3溝91c,第4溝91d,第5溝93a,第6溝93b,第7溝93c及び第8溝93dが設けられている。そして、図9に示すように、第1溝91a~第4溝91d及び第5溝93a~第8溝93dの中に、それぞれ第1制御子92a,第2制御子92b,第3制御子92c,第4制御子92d,第5制御子94a、第6制御子94b,第7制御子94c及び第8制御子94dを配置する。ここで、第1制御子92a~第4制御子92d及び第5制御子94a~第8制御子94dは、球(ボール)以外の円柱等でも構わない。図9(a)の断面図には第1溝91a,第3溝91c,第5溝93a,第7溝93c、第1制御子92a,第3制御子92c,第5制御子94a及び第7制御子94cのみが図示されている。
図9(b)の側面図の上段側には、簡潔に表示するため、第1溝91a,第2溝91b及び第4溝91dのみが隠線で表示されている。第1溝91a,第2溝91b及び第4溝91dのそれぞれには、対応する第1制御子92a,第2制御子92b及び第4制御子92dが配置されている。図9(b)の側面図の下段側には、第5溝93a,第6溝93b及び第8溝93dのみが隠線で表示されている。第5溝93a,第6溝93b及び第8溝93dのそれぞれには、対応する第5制御子94a、第6制御子94b及び第8制御子94dが配置されている。
第1の実施形態に係る回転トルク発生装置によれば、図9に示す腕長変更棒23が動力軸22の周りで周回する際に、図5(d)に示すタイミングのように、腕長変更棒23が直立、又は直立に近い状態となったとき、オートロック機構が設けられているので、重力により腕長変更棒23が下方に並進移動して滑り落ち、周回の運動を妨げる。即ち、腕長変更棒23が直立、又は直立に近い状態となったとき、図9に示す第1制御子92a~第4制御子92d及び第5制御子94a~第8制御子94dのうち、上側にある第1制御子92a~第4制御子92dが上側にある第1溝91a~第4溝91dの下方に移動する。第1溝91a~第4溝91dは楔型のテーパ形状を有しているので、第1溝91a~第4溝91dの下方の切込みの最も狭い部分に入り込んだ第1制御子92a~第4制御子92dが腕長変更棒23の側壁を押圧する。第1制御子92a~第4制御子92dが腕長変更棒23の側壁を押圧することにより、腕長変更棒23の下方への落下が阻止できる。即ち、第1制御子92a~第4制御子92dの自重による移動が、腕長変更棒23を動力軸22にロックして、腕長変更棒23の下方への滑りを防止する。
腕長変更棒23が回転して、腕長変更棒23が直立、又は直立に近い状態でなくなると、第1制御子92a~第4制御子92dが、第1溝91a~第4溝91dの切込みの最も狭い部分から自重によって離れるため、ロックは解放状態となる。更に腕長変更棒23が回転して、図9に示した状態とは180°異なるトポロジになったとき、図9に示す第5制御子94a~第8制御子94dが第5溝93a~第8溝93dの切込みの最も狭い部分の方向に移動する。第5溝93a~第8溝93dも楔型のテーパ形状を有しているので、第5溝93a~第8溝93dの切込みの最も狭い部分に入り込んだ第5制御子94a~第8制御子94dが腕長変更棒23の側壁を押圧する。第5制御子94a~第8制御子94dが腕長変更棒23の側壁を押圧することにより、腕長変更棒23の下方への落下が阻止できる。即ち、第5制御子94a~第8制御子94dの自重による移動が、腕長変更棒23を動力軸22にロックして、腕長変更棒23の下方への滑りを防止する。腕長変更棒23が更に回転して、腕長変更棒23が直立、又は直立に近い状態でなくなると、第5制御子94a~第8制御子94dが、第5溝93a~第8溝93dの切込みの最も狭い部分から自重によって離れるため、ロックは解放状態となる。
第1の実施形態に係る回転トルク発生装置は、重力場による力以外の力の供給を受けることなくその回転状態を維持し、回転動力を出力するが、その本質は重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生する省エネルギ機械装置である。よって、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置はエネルギ保存則を満たしており、いわゆる永久機関ではない。一定の重力場から回転トルクを発生させる第1の実施形態に係る回転トルク発生装置の内部構造は単純であり、部品数も少なく、又製造時の精度要求も高くなく、製作時間は短く安価で製作可能である。特にオートロック機構が設けられているので騒音の発生もなく、第1回転子23a及び第2回転子23b等の摩耗、消耗を抑制して長寿命が達成出来る。このため、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置は、地球上のどのような場所に設置しても、重力場が存在する限り、一定の重力場から回転トルクを発生させることが可能であり、設置条件の幅は格段に広い。重力場が非常に弱い宇宙船の内部等を除けば、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置の設置場所は、ほぼ制限がないに等しいので、発電装置に限らず、広範な分野に於ける回転トルク発生装置として機能できる。
第1の実施形態に係る回転トルク発生装置によれば、重力場の力以外の力の供給が不要であるので、ランニングコストは原則的には必要ない。又、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置はコンパクトな構造の回転トルク発生装置であるので、随所に必要に応じて設置が可能である。このため、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置で発電した場合、長距離の送電線や送電装置を必要しない使用の態様も可能となる。しかしながら、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置を大型の装置にして大電力を発電して、送電することも可能である。
(第1の変形例)
図13に示すように、第1の実施形態の第1の変形例に係る回転トルク発生装置の逆回転ガイド部21rの形状は直線部分を有する凸型の偏心歪円であり、図1及び図2等に例示した凸型の偏心歪円とは左右逆のトポロジである。逆回転ガイド部21rが構成する歪円の中に偏心して定義される回転中心の位置には、図13の紙面に対し垂直方向に逆回転動力軸32の中心が、歪円の直径を定義するように配置されている。更に逆回転動力軸32の中心軸と平行の中心軸を有して、逆回転動力軸32に近接する紙面の奥の位置に順回転ガイド部21dの順回転動力軸22が、破線で示したように配置されている。破線で示した順回転ガイド部21dと順回転動力軸22は図2に既に示した構造であるので重複した説明を省略する。逆回転動力軸32と順回転動力軸22は図4に示したようなトランスミッション機構を用いて一体として動作するように連結したり、回転を切り替えるように連結したりすることが可能である。
図4には、順回転動力軸22と同時に回転する駆動ギア43が示されているが、逆回転動力軸32に対しても、図4と同様に逆回転動力軸32と同時に回転する逆回転駆動ギアを組み込むことが可能である。破線で示した順回転運動をする駆動ギア43に対し、実線で示した逆回転運動をする逆回転駆動ギアを、互いの歯が噛み合うように結合すれば、互いに逆方向に回転する順回転動力軸22と逆回転動力軸32の動力を一体として取り出すことができる。一方、順回転運動をする駆動ギア43に対し逆回転運動をする逆回転駆動ギアを離間しておき、いずれかの駆動ギアに従車ギア44を自在に結合するような、従車ギア44の移動機構を設ければ、順回転動力軸22の順回転方向の動力と、逆回転動力軸32の逆回転動力のいずれかを選択して取り出すようにできる。
第1の変形例に係る回転トルク発生装置に用いる逆回転用歪円は、駆動領域とこの駆動領域に連続する非駆動領域で構成されるが、図1及び図2等に例示した順回転用歪円とは左右逆である。左右逆であるが、逆回転用歪円の直線部分は非駆動領域に設けられている。逆回転動力軸32は、凸型の逆回転用歪円の中に偏心して定義される回転中心に位置する軸の周りを、腕長変更棒235の長さを一定に維持して同軸で回転することが可能となっている。図9に示した構造と同様なオートロック機構が、逆回転動力軸32に設けられて、腕長変更棒235の移動を制御するが、図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。又、順回転動力軸22にもオートロック機構が設けられて、腕長変更棒231の移動を制御するが図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。逆回転用歪円においても、駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくし、駆動領域と非駆動領域の境界に偏心して回転中心が定義され、駆動領域と非駆動領域の境界に逆回転動力軸32の中心が設定される。
即ち、逆回転動力軸32には、長さが一定の腕長変更棒235を通すためのオートロック機構を備えた摺動部が逆回転動力軸32の軸の方向と垂直となる方向に開けられ、逆回転動力軸32の回転に伴い、腕長変更棒235が摺動部の中を案内されて移動して、互いに対向する腕長が変更され、オートロック機構により移動が制限される。駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域での腕長を非駆動領域で腕長よりも長くなる内部機構が構成できる。逆に言うと、非駆動領域は腕長変更棒235の非駆動領域側の腕長を短く制限するための領域である。駆動領域の腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなるため、逆回転の場合においても、駆動領域での重力場の力によるモーメントが非駆動領域での重力場の力によるモーメントより大きくなる。
腕長変更棒235の両端には、第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qが、逆回転ガイド部21rに沿って回転(自転)可能に取り付けられている。第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qは、同じ重量及び寸法の円盤状(円柱状)のローラである。図3に示したのと同様に、第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qが回転可能に取り付けるため、腕長変更棒235の両端には、第1回転軸及び第2回転軸が設けられていてもよい。第1逆回転子23pは、第1回転軸を介して回転可能に取り付けられ、第2逆回転子23qは、第2回転軸を介して回転可能に取り付けられている。図13に示すように、第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qのそれぞれの外周面は、逆回転ガイド部21rの内側に常時接して回転するように設定されて配置されている。このため、逆回転ガイド部21rが定義する偏心逆回転用歪円の外形に沿って第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qが自転しながら、腕長変更棒235が公転する。
順方向(時計回り)の回転機構について図5を参照して説明したとおり、逆回転においても腕長変更棒235の両端には、式(13)と同様な反時計方向の回転のトルクTが発生する。式(13)で表されるトルクTによって、第1逆回転子23pと第2逆回転子23qは逆回転ガイド部21rに沿って反時計方向に回転移動する。式(13)で表されるトルクTは、θが180°から反時計方向に270°に近づくに従って小さくなる。したがって、この力のモーメントによって生じる腕長変更棒235の回転力は、θが反時計方向に270°に近づくに従って小さくなっていく。ここで、順回転運動をする駆動ギア43と逆回転駆動ギアを噛み合せ、腕長変更棒235と腕長変更棒231の回転トルクを一体として出力するようにし、実線で示した腕長変更棒235と、破線で示した腕長変更棒231とが直交するように位相を調整しておけば、式(13)で表されるトルクT=0となる問題は解消する。
なお、図13に示した位相関係は例示であり、実線で示した腕長変更棒235と、破線で示した腕長変更棒231とが直交していなくても、位相差があれば、式(13)で表されるトルクT=0となる問題は解消する。実線で示した腕長変更棒235と、破線で示した腕長変更棒231が同位相で回転する場合は、腕長変更棒235と腕長変更棒231の回転トルクを一体として出力する場合であっても、式(13)のトルクT=0のタイミングが発生するので、図4に示したようなフライホイールや補助動力機構を設けることが好ましい。フライホイールは、図4に示したような構成でそれぞれに独立して設けておくか、或いは、順回転運動をする駆動ギア43と逆回転駆動ギアを噛み合せて、共通のフライホイールを用いる構成でも構わない。
以上説明したように、第1の変形例に係る回転トルク発生装置は、一様な重力場のなかで重力モーメントに非対称性を発生させる順方向歪円軌道と逆方向歪円軌道を有している。第1の変形例に係る回転トルク発生装置では逆方向歪円の非対称性によって、逆回転動力軸32に設けられたオートロック機構で制御されて案内される腕長変更棒235の並進移動により、対向する第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qに作用するモーメントを非対称にして、腕長変更棒235の回転のトルクを発生している。同時に、順方向歪円の非対称性によって、順回転動力軸22に設けられたオートロック機構で制御されて案内される腕長変更棒235の並進移動により、対向する第1順回転子23a及び第2順回転子23bに作用するモーメントを非対称にして、腕長変更棒231の回転のトルクを発生するのは既に説明したとおりである。このように、第1の変形例に係る回転トルク発生装置においては、実線で示した腕長変更棒235の両端に設けられた第1逆回転子23p及び第2逆回転子23qが偏心逆回転用歪円からなる逆回転ガイド部21rに沿って周回し、破線で示した腕長変更棒231の両端に設けられた第1順回転子23a及び第2順回転子23bが偏心順回転用歪円からなる順回転ガイド部21dに沿って周回し、それぞれ重力モーメントの非対称性から互いに反対方向の回転トルクを発生している。
(第2の変形例)
図6に示すように、第1の実施形態の第2の変形例に係る回転トルク発生装置は、互いに直交する2本の第1の腕長変更棒61、第2の腕長変更棒62を有する。第1の腕長変更棒61の両端には第1回転子61a及び第2回転子61bがそれぞれ設けられている。オートロック機構に関しては図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。第2の腕長変更棒62の両端には第3回転子62a及び第4回転子62bがそれぞれ設けられている。ガイド部21dが、対称軸となる第1軸に直交する線分を有する非駆動領域、及び第1軸に線分と異なる位置で直交する第2軸を介して非駆動領域と連続し、非駆動領域よりも面積の大きな駆動領域からなる凸型の歪円の外周に沿った形状をなすことは基本設計に係る回転トルク発生装置と同様である。駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域での腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなる内部機構が構成できる。非駆動領域が第1の腕長変更棒61、第2の腕長変更棒62の非駆動領域側の腕長を短く制限している。駆動領域の腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなるため、駆動領域で重力場により発生するトルクが非駆動領域で重力場により発生するトルクより大きくなる。又、動力軸22が、第1軸と第2軸の交点を、一定長の歪円の直径を定義する回転中心とし、この回転中心と同軸で回転することについては基本設計に係る回転トルク発生装置と同様である。
動力軸22には、第1の腕長変更棒61の並進移動を案内する第1の摺動部が動力軸22の軸の方向と垂直の方向に設けられ、動力軸22の軸の方向に沿った第1の摺動部とは異なる位置に、第2の腕長変更棒62の並進移動を案内する第2の摺動部が、第1の摺動部と直交する方向に設けられている。第1の腕長変更棒61、第2の腕長変更棒62は第1及び第2の摺動部を介して動力軸22を貫通しており、それぞれの摺動部において第1の腕長変更棒61、第2の腕長変更棒62はスライド移動して、回転と共に腕長を変化させる。
第2の変形例に係る回転トルク発生装置においても、一様な重力場のなかで重力モーメントに非対称性を発生させる歪円軌道を有している。第2の変形例に係る回転トルク発生装置では歪円の非対称性によって、動力軸22に設けられた第1の摺動部に案内される第1の腕長変更棒61の並進移動により腕長を変更して、第1の腕長変更棒61において対向する第1回転子61a及び第2回転子61bに作用するモーメントを非対称にして、第1の腕長変更棒61の回転のトルクを発生している。同様に、第1の腕長変更棒61に直交する第2の腕長変更棒62を、動力軸22を第1の腕長変更棒61とは直交する方向に貫通する第2の摺動部に案内されて並進移動する。第2の腕長変更棒62の並進移動により腕長を変更して、第2の腕長変更棒62において対向する第3回転子62a及び第4回転子62bに作用するモーメントを非対称にして、第2の腕長変更棒62の回転のトルクを発生している。
このように、第2の変形例に係る回転トルク発生装置においては、第1の腕長変更棒61の両端に設けられた第1回転子61a及び第2回転子61bが偏心歪円からなるガイド部21dに沿って周回し、90°位相がずれた第2の腕長変更棒62の両端に設けられた第3回転子62a及び第4回転子62bが偏心歪円からなるガイド部21dに沿って周回することにより、重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生している。第1回転子61a、第2回転子61b、第3回転子62a及び第4回転子62bの回転は、対応する第1の腕長変更棒61及び第2の腕長変更棒62を介して動力軸22の回転運動となるので、動力軸22の回転運動が増速機を介して、図4に示したようなフライホイール45に伝えられると、回転運動の動力が第2の変形例に係る回転トルク発生装置から出力できる。第2の変形例に係る回転トルク発生装置によれば、図6に示すように、腕長変更棒の数を増やすことによって、動力軸22から第1回転子61a、第2回転子61b、第3回転子62a及び第4回転子62bまでの腕長の差に起因する回転力を増やすことができる。図示を省略したが、第2の変形例に係る回転トルク発生装置にも、オートロック機構が設けられているので騒音の発生もなく、第1回転子23a及び第2回転子23b等の摩耗、消耗を抑制して長寿命が達成出来る。
(第3の変形例)
図7に、第1の実施形態の第3の変形例に係る回転トルク発生装置のガイド部21dと腕長変更棒の関係を示す。第1の実施形態の第3の変形例に係る回転トルク発生装置は、互いに60°の角度を持って交差する第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73を有する。オートロック機構に関しては図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。第1の腕長変更棒71の両端には第1回転子71a及び第2回転子71bがそれぞれ設けられている。第2の腕長変更棒72の両端には第3回転子72a及び第4回転子72bがそれぞれ設けられている。更に、第3の腕長変更棒73の両端には第5回転子73a及び第6回転子73bがそれぞれ設けられている。
ガイド部21dが、対称軸となる第1軸に直交する線分を有する非駆動領域、及び第1軸に線分と異なる位置で直交する第2軸を介して非駆動領域と連続し、非駆動領域よりも面積の大きな駆動領域からなる凸型の歪円の外周に沿った形状をなすことは基本設計に係る回転トルク発生装置と同様である。駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域での腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなる内部機構が構成できる。非駆動領域が第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73の非駆動領域側の腕長を短く制限している。駆動領域の腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなるため、駆動領域で重力場により発生するトルクが非駆動領域で重力場により発生するトルクより大きくなる。又、動力軸22が、第1軸と第2軸の交点を、一定長の歪円の直径を定義する回転中心とし、この回転中心と同軸で回転することについては基本設計に係る回転トルク発生装置と同様である。
動力軸22には、第1の腕長変更棒71を通すための第1のオートロック機構を備えた第1の摺動部が動力軸22の軸の方向と垂直の方向に設けられている。動力軸22には、更に第2の腕長変更棒72を通すための第2のオートロック機構を備えた第2の摺動部が動力軸22の軸の方向に沿った第1の摺動部とは異なる位置に第1の摺動部と60°の位相関係で開けられている。動力軸22には、更に第3の腕長変更棒73を通すための第3のオートロック機構を備えた第3の摺動部が動力軸22の軸の方向に沿った第1及び第2の摺動部とは異なる位置に、第1及び第2の摺動部とそれぞれ60°の位相関係で開けられている。第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73は、動力軸22の第1~第3の摺動部にそれぞれ通されており、第1~第3の摺動部において第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73はそれぞれスライド移動して、回転と共に腕長を変化させる。
第3の変形例に係る回転トルク発生装置においても、一様な重力場のなかで重力モーメントに非対称性を発生させる歪円軌道を有している。第3の変形例に係る回転トルク発生装置では歪円の非対称性によって、動力軸22に設けられた第1のオートロック機構で制御されて案内される第1の腕長変更棒71の並進移動により腕長を変更して、第1の腕長変更棒71において対向する第1回転子71a及び第2回転子71bに作用するモーメントを非対称にして、第1の腕長変更棒71の回転のトルクを発生している。同様に、第1の腕長変更棒71に60°の方向で交わる第2の腕長変更棒72を、動力軸22を第1の腕長変更棒71とは60°の方向で交わる方向に貫通する第2のオートロック機構で制御されて案内されて並進移動する。
第2の腕長変更棒72の並進移動により腕長を変更して、第2の腕長変更棒72において対向する第3回転子72a及び第4回転子72bに作用するモーメントを非対称にして、第2の腕長変更棒72の回転のトルクを発生している。更に、第1の腕長変更棒71及び第2の腕長変更棒72に互いに60°の方向で交わる第3の腕長変更棒73を、動力軸22を第1の腕長変更棒71及び第2の腕長変更棒72とは60°の方向で交わる方向に貫通する第3のオートロック機構で制御されて案内されて並進移動させる。第3の腕長変更棒73の並進移動により腕長を変更して、第3の腕長変更棒73において対向する第5回転子73a及び第6回転子73bに作用するモーメントを非対称にして、第3の腕長変更棒73の回転のトルクを発生している。
このように、第3の変形例に係る回転トルク発生装置においても、第1の腕長変更棒71の両端に設けられた第1回転子71a及び第2回転子71bが偏心歪円からなるガイド部に沿って周回し、60°位相がずれた第2の腕長変更棒72の両端に設けられた第3回転子72a及び第4回転子72bが偏心歪円からなるガイド部に沿って周回することにより、重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生している。更に、第1の腕長変更棒71及び第2の腕長変更棒72からともに60°位相がずれた第3の腕長変更棒73の両端に設けられた第5回転子73a及び第6回転子73bが偏心歪円からなるガイド部に沿って周回することにより、重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生している。
第1回転子71a、第2回転子71b、第3回転子72a、第4回転子72b、第5回転子73a及び第6回転子73bの回転は、対応する第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73を介して動力軸22の回転運動となるので、動力軸22の回転運動が増速機を介して、図4に示したようなフライホイール45に伝えられると、回転運動の動力が第3の変形例に係る回転トルク発生装置から出力できる。第3の変形例に係る回転トルク発生装置によれば、図6に示した第2の変形例と同様に、腕長変更棒の数を増やすことによって、動力軸22から第1回転子71a、第2回転子71b、第3回転子72a、第4回転子72b、第5回転子73a及び第6回転子73bまでの腕長の差に起因する回転力を増やすことができる。
(第4の変形例)
図14に、第1の実施形態の第4の変形例に係る回転トルク発生装置の逆回転ガイド部21rと3本の腕長変更棒の関係を実線で示し、順回転ガイド部21dと3本の腕長変更棒の関係を破線で示す。即ち、第1の実施形態の第4の変形例に係る回転トルク発生装置は、互いに60°の角度を持って交差する第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73を破線で示し、第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77を互いに60°の角度で有する構造を実線で示している。オートロック機構に関しては図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。実線で示した第4の腕長変更棒75の両端には第1逆回転子75p及び第2逆回転子75qがそれぞれ設けられている。実線で示した第5の腕長変更棒76の両端には第3逆回転子76p及び第4逆回転子76qがそれぞれ設けられている。更に、実線で示した第6の腕長変更棒77の両端には第5逆回転子77p及び第6逆回転子77qがそれぞれ設けられている。既に図7で説明したとおり、破線で示した第1の腕長変更棒71の両端には第1回転子71a及び第2回転子71bが、破線で示した第2の腕長変更棒72の両端には第3回転子72a及び第4回転子72bが、破線で示した第3の腕長変更棒73の両端には第5回転子73a及び第6回転子73bがそれぞれ設けられている。
図13に示した構成と同様に、第1の実施形態の第4の変形例に係る回転トルク発生装置の逆回転ガイド部21rの形状は直線部分を有する凸型の偏心歪円であり、図7に例示した凸型の偏心歪円とは左右逆のトポロジである。実線で示した逆回転ガイド部21rが構成する歪円の中に偏心して定義される回転中心の位置には、図14の紙面に対し垂直方向に逆回転動力軸32の中心が、歪円の直径を定義するように配置されている。更に逆回転動力軸32の中心軸と平行の中心軸を有して、逆回転動力軸32に近接する紙面の奥の位置に破線で示した順回転ガイド部21dの順回転動力軸22が配置されている。破線で示した順回転ガイド部21dと実線で示した逆回転ガイド部21rは、互いの回転面を平行とするように紙面に垂直方向に配列されている。破線で示した順回転ガイド部21dと順回転動力軸22は図7に既に示した構造であるので重複した説明を省略する。逆回転動力軸32と順回転動力軸22は、図4に示したようなトランスミッション機構を用いて一体として動作するように連結したり、回転を切り替えるように連結したりすることが可能である。
逆回転ガイド部21rが、対称軸となる第1軸に直交する線分を有する非駆動領域、及び第1軸に線分と異なる位置で直交する第2軸を介して非駆動領域と連続し、非駆動領域よりも面積の大きな駆動領域からなる凸型の逆回転用歪円の外周に沿った形状をなすことは第1の変形例に係る回転トルク発生装置と同様である。駆動領域の面積を非駆動領域の面積よりも大きくすることにより、駆動領域での腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなる内部機構が構成できる。非駆動領域が第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77の非駆動領域側の腕長を短く制限している。駆動領域の腕長が非駆動領域の腕長よりも長くなるため、駆動領域で重力場により発生するトルクが非駆動領域で重力場により発生するトルクより大きくなる。又、逆回転動力軸32が、第1軸と第2軸の交点を、一定長の逆回転用歪円の直径を定義する回転中心とし、この回転中心と同軸で回転するとは第1の変形例に係る回転トルク発生装置と同様である。
逆回転動力軸32には、第4の腕長変更棒75を通すためのオートロック機構を備えた第4の摺動部が逆回転動力軸32の軸の方向と垂直の方向に設けられ、第5の腕長変更棒76を通すためのオートロック機構を備えた第5の摺動部が逆回転動力軸32の軸の方向に沿った第4の摺動部とは異なる位置に第4の摺動部と60°の位相関係で開けられている。逆回転動力軸32には、更に第6の腕長変更棒77を通すためのオートロック機構を備えた第6の摺動部が逆回転動力軸32の軸の方向に沿った第4及び第5の摺動部とは異なる位置に、第4及び第5の摺動部とそれぞれ60°の位相関係で開けられている。第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77は、逆回転動力軸32の第4~第6の摺動部にそれぞれ通されており、第4~第6の摺動部において第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77はオートロックで制御されながら、それぞれスライド移動して、逆方向の回転と共に腕長を変化させる。
第4の変形例に係る回転トルク発生装置においても、一様な重力場のなかで重力モーメントに非対称性を発生させる順方向歪円軌道と逆方向歪円軌道を有している。第4の変形例に係る回転トルク発生装置では逆方向歪円軌道の非対称性によって、逆回転動力軸32に設けられた第4のオートロック機構で制御されて案内される第4の腕長変更棒75の並進移動により腕長を変更して、第4の腕長変更棒75において対向する第1逆回転子75p及び第2逆回転子75qに作用するモーメントを非対称にして、第4の腕長変更棒75の回転のトルクを発生している。同様に、第4の腕長変更棒75に60°の方向で交わる第5の腕長変更棒76を、逆回転動力軸32を第4の腕長変更棒75とは60°の方向で交わる方向に貫通する第5のオートロック機構で制御されて案内されて並進移動する。
第5の腕長変更棒76の並進移動により腕長を変更して、第5の腕長変更棒76において対向する第3逆回転子76p及び第4逆回転子76qに作用するモーメントを非対称にして、第5の腕長変更棒76の回転のトルクを発生している。更に、第4の腕長変更棒75及び第5の腕長変更棒76に互いに60°の方向で交わる第6の腕長変更棒77を、逆回転動力軸32を第4の腕長変更棒75及び第5の腕長変更棒76とは60°の方向で交わる方向に貫通する第6のオートロック機構で制御されて案内されて並進移動させる。第6の腕長変更棒77の並進移動により腕長を変更して、第6の腕長変更棒77において対向する第5逆回転子77p及び第6逆回転子77qに作用するモーメントを非対称にして、第6の腕長変更棒77の回転のトルクを発生している。
第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73の回転のトルクの発生については第4の変形例に係る回転トルク発生装置で説明したとおりであるから重複した説明を省略する。このように、第4の変形例に係る回転トルク発生装置においても、第4の腕長変更棒75の両端に設けられた第1逆回転子75p及び第2逆回転子75qが偏心逆回転用歪円からなる逆回転ガイド部21rに沿って周回し、60°位相がずれた第5の腕長変更棒76の両端に設けられた第3逆回転子76p及び第4逆回転子76qが偏心逆回転用歪円からなる逆回転ガイド部21rに沿って周回することにより、重力モーメントの非対称性から逆方向の回転トルクを発生している。更に、第4の腕長変更棒75及び第5の腕長変更棒76からともに60°位相がずれた第6の腕長変更棒77の両端に設けられた第5逆回転子77p及び第6逆回転子77qが偏心逆回転用歪円からなる逆回転ガイド部21rに沿って周回することにより、重力モーメントの非対称性から逆方向の回転トルクを発生している。
第4の変形例に係る回転トルク発生装置においては、互いに60°の角度を持って交差する第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73並びに60°の角度を持って交差する第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77を有しているので、式(13)で表されるトルクT=0となる問題は生じないが、式(13)は角度θに依存する特性を示している。よって、順回転運動をする駆動ギア43と逆回転駆動ギアを噛み合せ、第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73と第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77の回転トルクを一体として出力するようにし、実線で示した第5の腕長変更棒76と、破線で示した第1の腕長変更棒71とが直交するように位相を調整しておけば、式(13)が示す角度θ依存性は緩和される。
なお、図14に示した位相関係は例示であり、実線で示した第5の腕長変更棒76と、破線で示した第1の腕長変更棒71とが直交する位相関係でなくても、位相差があれば、式(13)で表される角度θ依存性は緩和される。但し、第5の腕長変更棒76と第1の腕長変更棒71が直交する位相関係は、第5の腕長変更棒76と第3の腕長変更棒73との位相角が150°となる関係であり、角度θ依存性の緩和の目的としては好ましく、より平滑な回転動力を取り出すことができる。他の例としては、第5の腕長変更棒76と第1の腕長変更棒71ととの位相角を30°としても式(13)の角度θ依存性は緩和される。
但し、図4に示したようなフライホイールや補助動力機構を設けても構わない。図7を用いて説明したとおり、第1回転子71a、第2回転子71b、第3回転子72a、第4回転子72b、第5回転子73a及び第6回転子73bの回転は、対応する第1の腕長変更棒71、第2の腕長変更棒72及び第3の腕長変更棒73を介して順回転動力軸22の順回転運動となるので、順回転動力軸22の順回転運動が増速機を介して、図4に示したようなフライホイール45に伝えられると、順回転運動の動力が第4の変形例に係る回転トルク発生装置から出力できる。一方、第1逆回転子75p、第2逆回転子75q、第3逆回転子76p、第4逆回転子76q、第5逆回転子77p及び第6逆回転子77qの回転は、対応する第4の腕長変更棒75、第5の腕長変更棒76及び第6の腕長変更棒77を介して逆回転動力軸32の回転運動となるので、逆回転動力軸32の逆回転運動が増速機を介して、図4に示したのと同様なフライホイールに伝えられると、逆回転運動の動力が第4の変形例に係る逆方向の回転トルク発生装置から出力できる。
第4の変形例に係る逆方向の回転トルク発生装置によれば、図7に示した第3の変形例と同様に、腕長変更棒の数を増やすことによって、式(13)が示す角度θ依存性は緩和される。更に腕長変更棒の数を増やすことによって、逆回転動力軸32から第1逆回転子75p、第2逆回転子75q、第3逆回転子76p、第4逆回転子76q、第5逆回転子77p及び第6逆回転子77qまでの腕長の差に起因する逆回転力を増やし、同時に順回転動力軸22から第1回転子71a、第2回転子71b、第3回転子72a、第4回転子72b、第5回転子73a及び第6回転子73bまでの腕長の差に起因する回転力を増やすことができる。逆回転動力軸32と順回転動力軸22は種々のトランスミッション機構を用いて一体として動作するように連結したり、回転を切り替えるように連結したりすることが可能である。
(第5の変形例)
図8(a)に示すように、第1の実施形態の第5の変形例に係る回転トルク発生装置は、腕長変更棒23と、腕長変更棒23を補強する第1補助腕81a及び第2補助腕81bを備える。オートロック機構に関しては図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。第5の変形例に係る回転トルク発生装置の第1補助腕81a及び第2補助腕81bは、図8(a)に示すように、動力軸22の周面に接しないようなブリッジ構造をなしている。第1補助腕81a及び第2補助腕81bのそれぞれの左端は、腕長変更棒23の左端の第1回転子23aを回転させる第1回転軸24aの付近で、腕長変更棒23に接続されている。一方、第1補助腕81a及び第2補助腕81bのそれぞれの右端は、腕長変更棒23の右端の第2回転子23bを回転させる第2回転軸24bの付近で、腕長変更棒23に接続されている。
(第6の変形例)
図8(b)に示すように、第1の実施形態の第6の変形例に係る回転トルク発生装置は、腕長変更棒23と、腕長変更棒23を補強する第1補助腕81c及び第2補助腕81dを備える。オートロック機構に関しては図9に示した構造と本質的に同様であるので、重複した説明を省略する。第5の変形例に係る回転トルク発生装置と同様に、第6の変形例に係る回転トルク発生装置の第1補助腕81c及び第2補助腕81dはブリッジ構造をなすが、ブリッジ構造の曲がる方向が第5の変形例に係る回転トルク発生装置と90°異なる。ブリッジ構造をなす第1補助腕81c及び第2補助腕81dのそれぞれの左端は、腕長変更棒23の左端の第1回転子23aを回転させる第1回転軸24aの付近で、腕長変更棒23に接続されている。一方、ブリッジ構造をなす第1補助腕81c及び第2補助腕81dのそれぞれの右端は、腕長変更棒23の右端の第2回転子23bを回転させる第2回転軸24bの付近で、腕長変更棒23に接続されている。
第1補助腕81c及び第2補助腕81dのブリッジ構造の曲がる方向が第5の変形例に係る回転トルク発生装置と90°異なって、動力軸22の軸方向のため、第6の変形例に係る回転トルク発生装置では、第1補助腕81c及び第2補助腕81dが動力軸22の軸と交差するトポロジである。このため、図8(b)に示すように、動力軸22に、腕長変更棒23を通すための摺動部に加えて、第1補助腕81cを通す第1補助貫通孔と、第2補助腕81dを通す第2補助貫通孔があけられている。第1補助腕81c及び第2補助腕81dは、それぞれ第1及び第2補助貫通孔に通される。このため、腕長変更棒23の動力軸22の周りの回転に伴う腕長変更棒23の並進移動と同時に、第1補助腕81c及び第2補助腕81dが動力軸22の第1及び第2補助貫通孔の内部を並進移動して非駆動領域の腕長と駆動領域の腕長を変更する。
(第2の実施形態)
図10に示すように、第2の実施形態に係る回転トルク発生装置は、腕長変更棒102の外周側の両面に2つの回転子104を設けて、断面形状が十字になる凸状の形状を有する。断面形状が十字になる2つの回転子104に対応して、空洞状の収納容器101には2つの凹状のガイド部103がそれぞれ設けられている。図4を用いて基本設計に係る回転トルク発生装置で説明したとおり、収納容器101の「高さ」は、図10の水平方向に定義される。収納容器101を構成する対向する上面と下面は、それぞれ図1で説明したような偏心した歪円の形状であってもよく、他の形状でもよいが互いに平行に対峙している。
しかし、第2の実施形態に係る回転トルク発生装置では、互いに対向する収納容器101の上面と下面のガイド部103が設けられている部分の平面形状が、図1で説明した偏心歪円の形状をなしている点が特徴である。基本設計に係る回転トルク発生装置と同様に、ガイド部103の形状は、対称軸となる第1軸に直交する線分を有する非駆動領域、及び第1軸に線分と異なる位置で直交する第2軸を介して非駆動領域と連続し、非駆動領域よりも面積の大きな駆動領域からなる凸型の歪円である。図10は例示であり、腕長変更棒102の外周側の一方の面に1つの回転子104を設け、この1つの回転子104に対応して、収納容器101の上面又は下面のいずれかにガイド部103を設けてもよい。収納容器101の上面又は下面のいずれかにガイド部103が設けられる構造であっても、ガイド部103が設けられている部分の平面形状は、図1で説明した偏心歪円の形状をなす。
図10では図示を省略しているが、基本設計に係る回転トルク発生装置と同様に、第1軸と第2軸の交点を、一定長の歪円の直径を定義する回転中心とし、この回転中心と同軸で回転する動力軸が備えられている。この動力軸22の回転中心を貫通するように摺動部が設けられている。腕長変更棒102は、摺動部に並進移動の方向を案内されて移動する。並進移動することにより、非駆動領域における腕長と駆動領域における腕長を変更する。更に腕長変更棒102は、ガイド部103に回転軌道を案内されて、動力軸と共に中心移動回転する。
重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生するためには、図10に示した腕長変更棒102が中心移動回転する回転軌道が描く平面は水平方向から傾いている必要がある。より効率良く重力モーメントの非対称性から回転トルクを発生するためには、回転軌道が描く平面は鉛直方向であることが好ましい。第2の実施形態に係る回転トルク発生装置の場合も、非駆動領域における腕長変更棒102の一端側のモーメントと駆動領域における腕長変更棒102の他端側のモーメントの差異を、腕長変更棒102の回転に必要なトルクとしている。第2の実施形態に係る回転トルク発生装置においては、腕長変更棒102の両端には、基本設計に係る回転トルク発生装置で説明した第1回転子23a及び第2回転子23bではなく、質量mの重り105を有している。
重り105の質量mは、第1回転子23a及び第2回転子23bと同じ質量でもよく、異なる質量でもよい。質量mの重り105を腕長変更棒102の先端に延長形成し、腕長変更棒102の実効的な長さを、基本設計に係る回転トルク発生装置の腕長変更棒231よりも長くすることで、腕長変更棒102の回転トルクを高めることができる。収納容器101を構成する対向する上面と下面が図1で説明した偏心した歪円の形状ではない場合は、重り105が自由に運動できるスペースを設ける必要があることは勿論である。
第2の実施形態に係る回転トルク発生装置においては、第1の実施形態に係る回転トルク発生装置の説明で、式(15A)及び(15B)を用いたギャップ長ΔL=L-(d+2r)の問題はなくなる。なお、基本設計に係る回転トルク発生装置において、腕長変更棒231の両端に第1回転子23a及び第2回転子23bを取り付けることで腕長変更棒231がガイド部21dに接する部分の摩擦を減らしていたが、第2の実施形態に係る回転トルク発生装置においては、例えば磁気エネルギを利用し、ガイド部103の中で回転子104が磁気浮上することによりガイド部103と回転子104との間の摩擦を減らすことができる。
第2の実施形態に係る回転トルク発生装置においても、図4に示したトランスミッション機構と同様な種々のトランスミッション機構が採用可能である。
(その他の実施の形態)
上記のように、本発明は基本設計並びに第1及び第2の実施形態によって記載したが、この開示の一部をなす論述及び図面は本発明を限定するものであると理解すべきではない。この開示から当業者には様々な代替実施の形態、実施例及び運用技術が明らかとなろう。例えば、図2や図5の説明では、ガイド部21dが規定する回転軌道が描く平面は鉛直方向であるとして説明したが、必ずしもガイド部21dが規定する回転軌道が描く平面は鉛直方向に限られない。重力場によるモーメントが第1回転子23a及び第2回転子23b等に作用すればよいので、回転軌道が描く平面は水平方向から傾いていればよい。しかし、重力場の力を効率よく回転トルクに変換するためには、回転軌道が描く平面は鉛直方向であることが好ましい。
図1、図2,図5~図7等では、対称軸となる第1軸に直交する線分を有する非駆動領域が紙面の左側に位置し、第1軸に線分と異なる位置で直交する第2軸を介して非駆動領域と連続し非駆動領域よりも面積の大きな駆動領域が右側に位置する凸型の歪円を例示したが、本発明は、これらの例示したトポロジに限定されるものではない。反対に、非駆動領域が紙面の右側に位置し駆動領域が左側に位置する凸型の歪円でも構わない。又、図1、図2,図5~図7等では時計回りの場合を例示したが、線分を有する非駆動領域を紙面の右側に配置し、駆動領域を左側に配置すれば反時計回りの回転トルク発生装置が構成できる。
図10では腕長変更棒102の外周から少し内周よりとなる位置の両面に2つの回転子104を設け、対応して収納容器101の内壁に2つの凹状のガイド部103がそれぞれ設け、腕長変更棒102の最外周となる両端に重り105を設けた構造を例示した。しかし、腕長変更棒102の最外周側に回転子104を設け、対応して収納容器101の最外周側に凹状のガイド部103を設けた構造でもよい。この場合、図10とは逆に、重り105が内周側に位置しても構わない。
基本設計や第1実施形態に係る回転トルク発生装置の説明では、第1回転子23a及び第2回転子23bが、腕長変更棒231の両端に設けられた第1回転軸24a及び第2回転軸24bを介して回転可能に取り付けられる場合を例示したが、例示に過ぎない。本発明は第1実施形態に係る回転トルク発生装置の説明に用いた構造等に限定されるものではない。例えば、腕長変更棒231の両端に第1回転軸24a及び第2回転軸24b等を設けず、ガイド部21dの軌道を点接触等の小さい摩擦で摺動する構造でも構わない。ガイド部21dの軌道を摺動する場合、磁気浮上の機構を採用しても構わない。
よって、本発明はここでは記載していない様々な実施の形態等を含むことは勿論である。したがって、本発明の技術的範囲は上記の説明から妥当な請求の範囲に係る発明特定事項によってのみ定められるものである。