以下、図面を参照して本開示を実施するための各実施の形態について説明する。なお、以下では本開示の目的を達成するための説明に必要な範囲を模式的に示し、本開示の該当部分の説明に必要な範囲を主に説明することとし、説明を省略する箇所については公知技術によるものとする。
<接合物品>
本開示に係る接合装置及び接合物品の製造方法を説明する前に、接合物品の一例としての半導体デバイスについて、その一般的な構造を簡単に説明する。なお、本開示において、半導体デバイスDは光半導体であってよく、より具体的にはレーザーダイオードや光センサ(赤外線センサ等)であってよい。
図1は、接合物品の一例を示したものであって、図1(A)は斜視図、図1(B)は分解説明図である。図1に示す接合物品の一例としての半導体デバイスDは、レーザーダイオード、特にTO-CANパッケージ(型)のレーザーダイオードであって、キャップCとステムSとが接合されて構成されている。ここでいうステムSは第1の部材の一例であってよく、キャップCは第2の部材の一例であってよい。図1(B)では、半導体デバイスDとなる前のキャップCとステムSとが分離した状態を示しており、キャップCを断面図で、ステムSを正面図で、それぞれ表している。
ステムSは、その一方の面(以下、「実装面」ともいう)に種々の回路パターンが形成されると共に電子部品が実装される板状のベース(台座の一例)Sbを含んでいてよい。このベースSbの一方の面には、立設部Sb1が形成されており、この立設部Sb1の一側面には、図示しないセラミック基板(サブマウントともいう)が設けられ、その表面にLDチップScが取り付けられて(実装されて)いてよい。このLDチップScは、一般に直方体形状を有しており、この直方体形状からなるLDチップScの一面Sc1が、ステムSとキャップCとが接合された際にキャップCのレンズCnに対向する。また、このLDチップScは、作動時には前述のLDチップScの一面Sc1の、サブマウントに取り付けられた側とは反対側に位置する部分を中心に発光するものが多い(以下、この発光の中心となる位置を「発光点」という)。このLDチップScは、後述する撮像部材50による撮像対象物の一例を構成することができる。また、ベースSbの他方の面には複数本(多くの場合、3本又は4本)のリードSdが略垂直に延び、このリードSdはベースSbの回路パターンに接続されている。ベースSbの平面形状は種々変更できるが、図1に示すように例えば略円板状であってよい。また、ベースSbの少なくとも一部及びリードSdは金属で形成することができる。
キャップCは、ステムSの実装面を覆うようにベースSbに取り付け可能なものであってよい。このキャップCは、概ね円筒状の外観を呈しており、円筒状の外周部Cpの内部にLDチップScを収容することができるように構成することができる。また、キャップCは、円筒状の側面に相当する外周部Cpに対し、一方の端面が開口し、他方の端面が塞がれている。そして、塞がれている側の端面の中央部には、光を透過可能な円形のレンズCnが設けられていてよい。他方、開口している側の端面の縁Ceは、ステムSに接合された時に加圧を受ける面となるよう、若干外側に拡張されたフランジ状に形成されているとよい。また、この縁CeのベースSbに対向する面、あるいはベースSbの縁Ceが接合される面には、接合の際に溶融あるいは軟化する突起(プロジェクション)が1乃至複数個設けられていてもよい。縁Ceはリング状に形成でき、ベースSbの外周以下の大きさであるとよい。キャップCは、レンズCn以外の部分が金属で形成されていてよい。
ステムS及びキャップCの金属部分は、典型的にはステンレス鋼やコバール等で形成されているが、これら以外の金属で形成されていてもよい。ステムS及びキャップCの金属の部分は、典型的には異種の金属であるが、同種の金属であってもよい。半導体デバイスDは、実装面をキャップCで覆った上で縁CeをベースSbに接合(溶接)して構成されている。
<接合装置>
図2は、本開示の一実施の形態に係る接合装置の一例を示す概略構造図である。以下には、本実施の形態に係る接合装置1の構造について順に説明を行う。本実施の形態に係る接合装置1は、図1に示した半導体デバイスDの製造に用いられるものであり、ステムSとキャップCとを抵抗溶接を用いて接合する装置であってよい。この接合装置1は、図2に示すように、下電極(第1の電極の一例)10と、上電極20(第2の電極の一例)と、電極チップ30と、加圧装置(移動機構の一例)40と、撮像部材50とを少なくとも含む。また、この接合装置1は、チャンバ2と、電源装置60と、制御装置70とをさらに含んでいてよい。なお、図2は接合装置1を正面から見た図であり、その幅方向をX方向、奥行方向をY方向、及び高さ方向(上下方向)をZ方向として以下の説明を行うものとする。
チャンバ2は、接合装置1の本体を構成するものであって、抵抗溶接を行う際の処理空間を画定しているものであってよい。このチャンバ2の内部には、その下方に下電極10が配設され、この下電極10に対向する上部に上電極20が配設される。チャンバ2内の下電極10及び上電極20の周囲には複数の支柱2Aが立設されており、この支柱2Aの上側端部には、後述する加圧装置40を固定するための固定台2Bが設置されている。また、チャンバ2内は密閉空間とすることができ、図示しない不活性ガス(例えば窒素ガス)や他の処理ガスを供給するための供給路やチャンバ2内の流体を排出する排出路等を備えていてよい。
下電極10は、ステムSを直接又は間接的に支持し、ステムSに所定の電流を供給するための部材であって、金属等の導電部材で主に構成することができる。この下電極10は、その上面にステムSが載置される金属製の下電極本体11と、下電極本体11の上面に配設され、ステムSの水平方向(XY平面方向)における移動を制限するように支持するグリッパ12と、を含むことができる。上記構成のうち、グリッパ12は、下電極本体11上に載置されたステムSに接触してステムSを移動不能に支持する閉位置と、ステムSの支持を開放する開位置との間で移動可能な複数個(例えば2~4個)のクランプ片で構成されていてよい。また、下電極本体11は、少なくともステムSの下面に接触する部分と後述する下電極側配線62との間が導電部材で構成されていればよい。したがって、この下電極本体11は、例えばステムSの下面に位置する部分、すなわち下電極本体11のZ方向に延在する中心部のみが電極として機能し、この中心部を包囲する外周囲は、グリッパ12を支持する台座として機能するものであってもよい。
図3は、図2に示す接合装置の上電極を拡大して示す要部拡大断面図である。上電極20は、図2及び図3に示すように、キャップCを直接又は間接的に支持し、キャップCに所定の電流を供給するための部材であって、下電極10と同様に金属等の導電部材で構成することができる。この上電極20は、その下面に電極チップ30が取り付けられ且つ後述する加圧装置40の可動部41に固定された上電極本体21と、電極チップ30を下電極本体11に固定するためのリング状の電極チップ支持部材22と、上電極本体21に形成され、その一端部が下電極10に支持されたステムSに対向する位置に開口し、他端部が上電極本体21の側面に開口した光学通路23と、光学通路23内に配設された反射ミラー24と、光学通路23の他端部の開口を塞ぐように取り付けられたガラス等からなる透過窓25とを含むことができる。上記構成のうち、反射ミラー24は、例えばプリズムミラーで構成することができ、また反射ミラー24は反射ミラー支持台24Aに取り付けられた状態で、上電極本体21の中央に設けられた貫通孔に上方から挿入されることで、光学通路23内に位置決めされるものであってよい。また、透過窓25は、額縁状の枠体26により光学通路23の他端部に固定されていてよい。
光学通路23は、図3に示すように、下電極10に支持されたステムSに対向する位置に開口する一端部から上方に延在する第1の光学通路23Aと、後述する撮像面ISに対向し透過窓25が取り付けられた他端部から水平面に沿った一方向、例えばX方向に延在し、第1の光学通路23Aに連通する第2の光学通路23Bとで構成することができる。第1の光学通路23Aと第2の光学通路23Bとは実質的に直角に連通するため、光学通路23は略L字状の通路を形成している。第1の光学通路23Aと第2の光学通路23Bとが連結する角部には反射ミラー24が配設されており、この反射ミラー24によって第1の光学通路23A又は第2の光学通路23Bを通過する光が、第2の光学通路23B又は第1の光学通路23Aへ導かれる。
電極チップ30は、主に図3に示すように、その中央部に貫通孔31が形成された略円盤状の導電部材で構成することができる。この電極チップ30は、接合物品としての半導体デバイスDの種類やサイズに合わせて取替可能な部材とすることができ、接合物品に合わせて変更できるよう、サイズの異なるものが複数種類準備されていると好ましい。電極チップ30は、上電極本体21の下面に当接した状態で電極チップ支持部材22が取り付けられることにより、上電極本体21と電極チップ支持部材22との間に挟持され、上電極20に固定される。
電極チップ30の貫通孔31は、円盤状の電極チップ30の軸線に沿って上下方向に貫通するように形成される。この貫通孔31の下側端部は、キャップCに接触する第1の開口31Aを形成する。この第1の開口31AはキャップCの少なくとも一部が挿入できるようにその内径が調整されていてよい。また、この第1の開口31Aには、図示しないキャップ保持手段、例えば負圧吸引手段や膨張するバルーン、コレット等を用いた保持手段を採用することができる。このキャップ保持手段を動作させることにより、第1の開口31AにキャップCを保持することが可能となる。さらに、貫通孔31の上側端部は、第1の開口31Aよりも大きな径を有する第2の開口31Bを形成する。この第2の開口31Bの周囲は、上電極20の光学通路23の一端部に挿入可能な挿入部32が形成されていてよい。挿入部32が光学通路23に挿入されると、光学通路23の一端部側の開口と貫通孔31の第2の開口31Bとが連通する。さらにまた、貫通孔31の内壁面には、後述する光源53からの照明光を所定の方向に反射するための反射面33が形成される。反射面33の具体的な形状等については後述する。
加圧装置40は、下電極10と上電極20とを互いに近接する方向及び離間する方向に相対的に移動させる移動機構の一例である。本実施の形態においては、上電極20を上下方向(Z方向)に動作させる加圧装置40を例示している。この加圧装置40は、チャンバ2内に設けられた固定台2Bに取り付けられている。そしてこの加圧装置40は、その内部に備える図示しない周知の直動機構、例えばエアシリンダやサーボモータ付きボールねじ、リニアモータ等を動作させることにより、上電極本体21に接続された可動部41を動作させ、上電極20を上下方向に移動させるものである。
撮像部材50は、LDチップScを含むステムSを、光学通路23を介して撮像することが可能なものであってよい。本実施の形態に係る撮像部材50には、ステムS及びキャップCの両方を撮像可能なものであって、当該撮像部材50の撮像結果をステムS及びキャップCの位置合わせに利用することが可能なものが例示されている。この撮像部材50は、チャンバ2内の複数本の支柱2Aのうちの1つに取り付けられ、水平面に沿った一方向、例えばX方向に延在する略矩形状の撮像部材本体51と、撮像部材本体51の延在方向における一端に設けられ透過窓25に対向する可変倍率レンズ52と、可変倍率レンズ52からLDチップScへ光学通路23を介して照明光を照射する光源53と、撮像部材本体51の延在方向における他端に設けられたCCD(Charge Coupled Devices)カメラあるいはCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)カメラ等からなるカメラ54と、を含むことができる。なお、可変倍率レンズ52の透過窓25に対向する面が撮像面ISを構成する。
撮像部材50は、加圧装置40によって上電極20が所定の位置、具体的には下電極10に取り付けられたステムSに電極チップ30の第1の開口31Aが近接する位置に移動した際に、その撮像面ISが光学通路23の透過窓25が配設された側の開口に対向する位置に配置されているとよい。また、この撮像部材50は、水平面に沿った一方向、例えばX方向に沿って移動可能な図示しない移動機構を有し、撮像タイミングに合わせて撮像部材本体51を透過窓25に近づく方向あるいは遠ざかる方向に移動させると好ましい。さらに、撮像部材50の上述した各構成のうち、可変倍率レンズ52の径は、透過窓25の径よりも大きなものを採用できる。これに関連して、光源53からこの可変倍率レンズ52を介して照射される照明光の照射面積は、透過窓25の面積よりも大きいとよい。さらにまた、可変倍率レンズ52及び光源53は異なる倍率あるいは色のものに適宜取替可能であってよい。
本実施の形態においては、撮像部材50として、図示しないアクチュエータによりX方向には移動可能であるものの、Y方向及びZ方向における位置は上述した通り固定されているものを例示している。このような構成を採用すると、撮像部材50の可動範囲が小さいため、カメラ54や光源53に接続される配線の引回しが簡略化されるという点で有利であるが、撮像面ISが上電極20の透過窓25に常に対向して位置していないため、撮像の際上電極20の位置を考慮する必要がある。この点を考慮して、撮像部材50の少なくとも可変倍率レンズ52を上電極20あるいは加圧装置40の可動部41に固定し、可変倍率レンズ52が加圧装置40の動作に追従して移動するように、その構造を変更してもよい。この場合には、透過窓25と可変倍率レンズ52の相対位置が固定できるため、上電極20の位置を考慮することなく撮像部材50による撮像動作を実行することができる。
電源装置60は、下電極10と上電極20との間に電流を供給するための装置であって、チャンバ2外に設置された電源装置本体61と、電源装置本体61と下電極10との間を電気的に接続する下電極側配線62と、電源装置本体61と上電極20との間を電気的に接続する上電極側配線63とを含むことができる。このうち、電源装置本体61は、例えば、商用電源等からなる外付けの交流電源(図示省略)から供給される交流電流を所望のパルス状電流に変換し、パルス状電流を大電流に変換し、下電極10と上電極20との間への通電タイミングを制御する装置を含むものであってよい。この電源装置本体61を動作させることにより、下電極10に支持されたステムSと上電極20に支持されたキャップCとの間にパルス状電流を供給し、両部材の金属製の接触部分を固相接合あるいは溶接することができる。ここで供給されるパルス状電流は、典型的には単一のパルス状電流である。このパルス状電流により、ステムSとキャップCの接合を確実に行うことができる。なお、電源装置本体61の具体的な構成としては、周知の溶接トランスやコンデンサ、溶接電源(インバータ電源)等を単独であるいは組み合わせて採用することができる。
制御装置70は、接合装置1の各構成要素(例えば加圧装置40の駆動源や撮像部材50のカメラ54等)と有線又は無線通信を介して通信可能となっており、これにより各構成要素を制御可能な装置であってよい。この制御装置70は、例えば周知のコンピュータによって構成することができる。当該周知のコンピュータとは、少なくとも揮発性あるいは不揮発性のメモリ(例えばRAM(Random Access Memory)やHDD(Hard Disc Drive))と、CPU(Central Processing Unit)に代表されるプロセッサとを含むものとすることができる。
本開示の接合装置は、上記の構成に加えて、下電極10及び上電極20の少なくとも一方を水平面(XY平面)に沿って移動させる第2の移動機構を含むことができる。本実施の形態に係る接合装置1においては、上記第2の移動機構として、下電極本体11をX方向及びY方向に移動させる水平移動ステージ80を含んでいてよい。この水平移動ステージ80を動作させると、下電極10に取り付けられたステムSが水平面に沿って移動される。これにより、ステムSと上電極20に取り付けられたキャップCとを接合する際、ステムSとキャップCのX方向及びY方向の位置合わせを行うことが可能となる。水平移動ステージ80の具体的な構造は特に限定されないが、例えば周知の直動機構(ボールねじ、送りねじ、リニアモータ、ラックアンドピニオン、単軸ロボット等)を2つ組み合わせたものを採用することができる。
上述した構成を備える接合装置1においては、ステムSとキャップCの接合を行う際、LDチップScの発光点と、キャップCのレンズCnの中心点とが平面視で一致していることが好ましい。これは、発光点とレンズ中心点とが平面視でずれていると、レンズで集光したレーザー光の出力が低下するためである。そこで、本実施の形態に係る接合装置1においては、撮像部材50を用いてLDチップScとレンズCnとを撮像し、その撮像結果を用いてLDチップScの発光点とレンズCnの中心点を位置合わせすることが可能な構成を採用している。以下には、本実施の形態に係る接合装置1におけるステムSの撮像手法について説明する。
図4は、図2に示す接合装置を用いてステムを撮像した状態を示す説明図であって、図4(A)は実装されるLDチップの上側の面が水平面に沿って延在しているステムSを撮像した状態を示したものであり、図4(B)は実装されるLDチップの上側の面が水平面に対して傾斜しているステムS’を撮像した状態示したものである。なお、図4においては照明光の経路等の理解を容易にする目的で、上電極20のみ端面図を用いて示し、それ以外の構成は平面図を用いて示している。また、LDチップScに反射する反射光RL1、RL2(図4中には二点鎖線で示されている)の経路が視認しやすいよう、光学通路23内を通過する入射光IL1、IL2(図4中には一点鎖線で示されている)は、LDチップScに入射するもののみを模式的に示している。
撮像部材50においてLDチップScを正確に撮像できれば、LDチップScの発光点も高精度に特定することができる。そこで、本実施の形態に係る接合装置1においては、LDチップScを正確に撮像するべく、LDチップScの一面Sc1に向けて光を照射し、その反射光を含む画像を撮像することで、LDチップScの位置を高精度に特定可能な撮像画像を得ている。以下には、本実施の形態に係る接合装置1を用いてステムSの撮像を行う工程について、図4(A)を用いて簡単に説明する。
ステムSの撮像工程が開始されると、先ず、加圧装置40を動作させて予め下電極10に取り付けられたステムSに近接する位置まで上電極20を降下させる。次いで、撮像部材50の光源53を動作させて可変倍率レンズ52の撮像面ISから照明光を照射する。この照明光の一部は、図4(A)に示すように透過窓25に照射され、光学通路23に入射する入射光IL1となる。この入射光IL1は、透過窓25を透過すると、先ず第2の光学通路23B内をX方向に沿って進み、反射ミラー24で反射してその向きが変更され、第1の光学通路23A内を下方向に向かって進み、ステムSに照射される。ステムSに照射された入射光IL1のうちの一部は、図4(A)に示すように、LDチップScの一面Sc1に照射されて反射し、反射光RL1として、入射光IL1の進行経路を戻るように、第1の光学通路23A、反射ミラー24、第2の光学通路23B及び透過窓25を順に通過し可変倍率レンズ52の撮像面に戻る。そして、撮像面ISに入射した反射光RL1を含む画像がカメラ54で撮像されることにより、反射光RL1によってLDチップScに対応する部分の輝度値が高くなった撮像画像(後述の「第1の撮像画像」に対応)を得ることができる。そして、この撮像画像に基づいてLDチップScの位置を特定することにより、精度よく発光点を特定することができる。
ところで、図4(A)に示すステムSのように、実装されるLDチップScの一面Sc1が、ベースSbに対して略平行に延在している場合には、この面Sc1で反転した反射光RL1は、入射光IL1の進行経路を戻るように進むため、撮像部材50は反射光RL1によってLDチップScに対応する部分の輝度値が高くなった撮像画像を得ることができる。しかし、例えば図4(B)に示すステムS’のように、LDチップScが、その上側に位置する一面Sc1がベースSbの延在方向に対して所定角度θだけ傾斜した状態で実装されている場合、この一面Sc1に入射し反転した反射光は入射光の進行経路を戻るようには進まず、結果撮像面ISに反射光が到達しない場合がある。反射光が撮像面ISに入射しなければ、撮像画像内のLDチップScに対応する部分の輝度値は変化しないため、撮像画像からLDチップScの位置を正確に特定することは困難になり得る。そこで、本実施の形態に係る接合装置1では、前述の課題を解決するために、電極チップ30の貫通孔31に反射面33を採用している。
上記反射面33は、図4(B)に示すように、貫通孔31の内面の少なくとも一部を構成する面で構成される。この反射面33は、第2の開口31Bから第1の開口31Aに向かうにしたがってその径が小さくなるように形成されるが、その径の変位量はLDチップScの取り付け角度を考慮して調整されるとよい。図4(B)に示す電極チップ30の反射面33は、第1の開口31Aから第2の開口31Bに向かうにしたがって拡径する、所定の角度で傾斜したテーパ面で構成されたものが採用されている。このように反射面33をテーパ面で構成する場合、反射面33のなす角度は、計算により特定することができる。具体的には、事前にLDチップScの一面Sc1のベースSbに対する傾斜角度θを測定しておき、光学通路23を通過してきた入射光IL2が反射面33で反射した後、傾斜角度θだけ傾斜したLDチップScの一面Sc1に反射した結果の反射光RL2が、図4(A)に示した反射光RL1と同様の進行経路を進むような角度を、計算により特定すればよい。なお、反射面33をテーパ面で構成する場合は、上述した通り事前に傾斜角度θを測定する必要があるが、本開示はこれに限定されない。具体的には、反射面33の水平面に対する角度を、第1の開口31Aに近づくにしたがって段階的に小さくなるように変化させた湾曲形状とすることで、反射面33に入射する入射光IL2を異なる向きに反射させ、LDチップScの一面Sc1に複数の向きに進行する入射光IL2を照射できるようにしてもよい。このような構成を採用すれば、LDチップScの傾斜角度θに関わらず、図4(A)に示した反射光RL1と同様の進行経路を進む反射光RL2が生成されることが期待でき、撮像部材50において反射光RL1を含む画像が撮像可能となる。
上述の構成を備えることにより、本実施の形態に係る接合装置1は、撮像対象物の取り付け状態に関わらず、撮像対象物に反射した反射光を含む画像を撮像することができる。そして、撮像画像内の撮像対象物は、反射光によってその輝度が高くなっているため、撮像画像内の撮像対象物の位置が正確に特定できる。撮像対象物の正確な位置情報は、接合部品の接合時における位置合わせ等の際に利用することで、製造時に生じ得る位置ズレを抑制できる。
なお、オプションとして、本実施の形態に係る接合装置1の光学通路23は、その他端部が上電極本体21の側面に開口しており、且つ光学通路23内には反射ミラー24が配設され、撮像部材50は、撮像面ISがこの他端部に対向するよう支柱2Aに取り付けられているが、本開示はこれに限定されない。具体的には、例えば上電極本体21内に、この上電極本体21の延在方向に沿って延びる光学通路を設け、この光学通路の下電極側の開口とは反対側の開口に撮像部材が取り付けられていてもよい。
<接合物品の製造方法>
次に、図5乃至図8を参照して、本開示の一実施の形態に係る接合物品の製造方法を説明する。以下に説明する接合物品としての半導体デバイスDの製造方法は、上述した接合装置1を用いて実施される。したがって、以下に説明する半導体デバイスDの製造方法は、上記接合装置1の作用の説明を兼ねている。そして、以下に説明する半導体デバイスDの製造方法は、主に制御装置70からの制御信号に基づいて各部が動作されて実施され得る。
図5は、本開示の一実施の形態に係る接合物品の製造方法の一例を示すフローチャートである。また図6乃至図8は、図5に示す接合物品の製造方法を実施した際の接合装置の動作状態を示す説明図である。なお、図6乃至図8は、接合を行う部分を拡大して示した断面図を用いて示しているが、可変倍率レンズ52及び下電極10は正面図で示されている。
本実施の形態に係る接合部品の製造方法においては、半導体デバイスDの製造を開始する前にいくつかの準備工程を含み得る。具体的には、接合装置1内に、ステムSが複数配列されたステムトレイ(図示省略)と、キャップCが複数配列されたキャップトレイ(図示省略)とを搬入する工程や、上電極20に任意の形状の電極チップ30を固定する工程等が含まれてよい。ステムトレイ及びキャップトレイを搬入する工程において、キャップトレイ(図示省略)の載置位置は、例えば上電極20にキャップCを受け渡しするキャップ搬送用ロボットハンド(図示省略)の移動範囲内で、下電極10から離れた位置とすることができる。また、ステムトレイ(図示省略)の載置位置は、例えば下電極10にステムSを受け渡しするステム搬送用ロボットハンド(図示省略)の移動範囲内で、下電極10から離れた位置とすることができる。ステム搬送用ロボットハンド及びキャップ搬送用ロボットハンドは、複数段階を経てステムSあるいはキャップCを移動させる構成(具体的には、例えば下電極10とステムトレイの間を2段階で移動させる場合は、ステムSを、第1のハンドがステムトレイと中間ステージとの間で搬送し、第2のハンドが中間ステージと下電極10との間で搬送する構成)であってもよい。また、電極チップ30を固定する工程においては、製造する半導体デバイスDの構造、特にキャップCの大きさやLDチップScの取り付け状態を測定し、予め準備された複数の電極チップ30の中から適切な形状のものを選定し、上電極20に固定しておくとよい。
上述した準備工程が完了すると、制御装置70は、半導体デバイスDの製造を開始し、先ず、ステム搬送用ロボットハンドを制御して、ステムSを下電極10の所定位置に搬送し、下電極10上にステムSを支持する(ステップS01)。このとき、制御装置70は、下電極10のグリッパ12を開位置(図6(A)において点線で示した位置)とした状態で、ステム搬送用ロボットハンドを用いてステムSを下電極本体11に設けられた支持位置にセットし、次いでグリッパ12を閉位置に向かって動作させることで、ステムSを挟持するように制御する。下電極10上に支持されたステムSは、図6(A)に示すよう、ベースSbの実装面が上方向を向くように、且つ実装面の反対側に延びるリードSdが下電極本体11に設けられた収容穴に挿入された状態で支持される。
ステムSの支持が完了すると、次に、支持されたステムSの特に発光点の位置を特定するために、ステムSを撮像した第1の撮像画像を取得する(ステップS02)。この撮像画像の取得に際しては、加圧装置40を動作させて上電極20を下方向(図6(A)に示す矢印M1方向)へ、電極チップ30の第1の開口31AがステムSのベースSbに近接する位置まで移動させ、且つ撮像部材50をX方向に沿って前進させて可変倍率レンズ52の撮像面ISを透過窓25に近づける(図6(B)参照)。そして、光源53を動作させて照明光の照射を開始すると共に、カメラ54を動作させ光学通路23を介してステムSを撮像し、第1の撮像画像を取得する。なお、第1の撮像画像を取得する際の上電極20の上下方向における位置は、ステムSに近ければ近いほど光軸のずれが抑えられた高精細な画像が取得できることから、ステムSに近接した位置とすると好ましい。また、可変倍率レンズ52のピントずれを抑制するために、第1の撮像画像を取得する際の上電極20の上下方向における位置は、上電極20の移動の度に変化しないように制御すると好ましい。
第1の撮像画像を取得すると、撮像部材50を後退させると共に加圧装置40を動作させて上電極20を上昇させる。次いで、キャップ搬送用ロボットハンドを用いて、キャップトレイに載置されているキャップCの1つを上電極20へ搬送し、電極チップ30の第1の開口31AにキャップCを支持する(ステップS03)。このとき、キャップCの外周部Cpは貫通孔31内に挿入され、キャップCの縁Ceは第1の開口31A周囲の面に対向する。
上電極20側にキャップCが支持されると、加圧装置40を動作させて上電極20を下方向(図7(A)に示す矢印M2方向)へ、電極チップ30の第1の開口31AがステムSのベースSbに近接する位置まで移動させて、キャップCをステムSに接近移動させる(ステップS04)。この移動後の上電極20の位置は、第1の撮像画像を取得した際の位置と実質的に同様か、この位置よりも僅かに上方の位置であってよい。
キャップCの移動が完了すると、撮像部材50をX方向に沿って前進させて可変倍率レンズ52の撮像面ISを透過窓25に近づける。そして、上電極20に支持されたキャップCの特にレンズCnの中心点を特定するために、キャップCを撮像した第2の撮像画像を取得する(ステップS05)。第2の撮像画像の取得は、第1の撮像画像を取得したときと同様の手法で実施できる。
第2の撮像画像が取得されると、この第2の撮像画像とステップS02で取得した第1の撮像画像とを用いて、ステムSとキャップCの水平方向における位置合わせを行う(ステップS06)。この位置合わせに際し、制御装置70は、先ず第1の撮像画像内の発光点及び第2の撮像画像内のレンズCnの中心点を特定する。発光点の特定は、第1の撮像画像内のLDチップScの位置及び形状に基づいて、レンズCnの中心点は、第2の撮像画像内のレンズCnの位置及び形状に基づいて、それぞれ特定することができる。次いで、当該発光点とレンズCnの中心点とが平面視で重なるように、水平移動ステージ80を動作させてステムSが支持された下電極本体11をX方向及びY方向に移動させる。なお、図7(B)中では、下電極本体11のX方向における調整動作を矢印M3で示している。
本実施の形態に係る接合物品の製造方法にあっては、位置合わせの基準となる位置(以下、単に「基準位置」ともいう)、詳しくはLDチップScの発光点とレンズCnの中心点とを、各撮像画像から正確に特定できる。特に接合装置1の電極チップ30に反射面33が設けられていることで、LDチップScがベースSbに対して傾斜して取り付けられていても、LDチップScの一面Sc1に反射させた反射光RL2が撮像面ISに入射するため、発光点の位置を精度良く特定することができる。そして、発光点及びレンズCnの中心点を正確に特定できるため、ステムSとキャップCの位置合わせも高精度に、例えばミクロン又はサブミクロンオーダーで精度よく実現できる。
ステムSとキャップCの位置合わせが完了すると、次にステムSとキャップCの接合工程を実施する。具体的には、先ず加圧装置40を動作させて上電極20を更に下方向(図8(A)の矢印M4方向)に下降させ、キャップCの縁CeをステムSのベースSbに接触させると共に縁Ceを下方向にさらに加圧する(ステップS07)。この加圧動作に追従してあるいは加圧動作と同時に電源装置60を動作させ、ステムSとキャップCの接触部分の通電を行う(ステップS08)。このとき、電源装置本体61から供給されるパルス状電流は、例えば上電極側配線63、上電極20、電極チップ30、キャップC、ステムS、下電極10及び下電極側配線62の順に流れる。この通電及び加圧により、キャップCの縁CeとステムSのベースSbの間の固相接合あるいは抵抗溶接が行われる。
ステムSとキャップCの接合が完了すると、図8(B)に示すように、上電極20へのキャップCの支持を解除し、加圧装置40を動作させて上電極20を上昇させた後、半導体デバイスDの取り出しを行う(ステップS09)。半導体デバイスDの取り出しに際しては、グリッパ12を閉位置から開位置に移動させると共にデバイス搬送用ロボットハンド(図示省略)で半導体デバイスDを保持し、半導体デバイスDが配列されるデバイストレイ(図示省略)に搬送するとよい。デバイス搬送用ロボットハンド及びデバイストレイは、ステム搬送用ロボットハンド及びステムトレイと兼用であってもよい。以上の工程により、1つの半導体デバイスDの製造が完了する。続いて新たな半導体デバイスDを製造する場合は、図5に示す一連の工程を繰り返せばよい。
以上説明した通り、本実施の形態に係る接合物品の製造方法によれば、ステムS及びキャップCの基準位置を、光源を備えた撮像部材によって撮像される撮像画像に基づいて特定するため、接合を行う前にステムS及びキャップCの位置合わせを高精度で行うことができる。これにより、接合時の位置ズレを効果的に抑制できる。
本開示は上述した実施の形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することが可能である。そして、それらはすべて、本開示の技術思想に含まれるものである。