以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。ただし、以下に説明する実施形態は、あくまでも例示であり、以下に明示しない種々の変形や技術の適用を排除する意図はない。例えば、本実施形態を、その趣旨を逸脱しない範囲で種々変形して実施することができる。なお、以下の実施形態で用いる図面において、同一符号を付した部分は、特に断らない限り、同一若しくは同様の部分を表す。
〔1〕一実施形態
〔1-1〕画像の加工処理について
上述のように、オペレータがコンピュータを操作して画像の加工処理を行なう場合、RGBの各数値を単純に上昇させるのではなく、ソフトウェアの種々の機能を用いて、オペレータの経験や直感に基づく明るさ調整が行なわれる。
例えば、新聞社や商業印刷会社等のように、日々、定められた期間内に、大量の画像に対して加工処理が行なわれ、加工された画像が印刷物として出力されるような場面では、加工処理の効率化が重要である。加工処理を効率的に実施するために、例えば、加工処理をコンピュータにより自動化することが考えられる。
一例として、或る画素が「青色」であり、当該画素の成分がR=5,G=5,B=255である場合において、当該画素を明るくするために、コンピュータにより、RGBの各数値を上昇させていく場合を想定する。
この場合、Bの数値は、最大値の255であるためこれ以上上昇しない一方、RGBのうちのR及びGの数値のみが上昇する。このため、当該画素の明るさ補正後の成分が、例えば、R=100,G=100,B=255等のように、他の色味が含まれるようになり、カラーバランスが崩れて、元の「青色」とは別の色になる場合がある。
また、RGBの各数値を上昇させていくと、sRGBやAdobeRGBにおける色域を逸脱し、色域外となり、ディスプレイ及び出力媒体で表現できる範囲を超える(「飽和」する)場合がある。このため、特に高彩度域において階調が潰れたり、霞んだりした状態になってしまい、見た目上の正常な階調表現が失われることがある。
図1は、色空間の色域を比較する図である。図1に例示するように、色空間の色域は、Lab色空間、sRGB色空間、CMYK色空間の順に狭まっていく。なお、図1において「D65」と表記される点は白色点である。
ここで、Lab色空間は、a、bが座標を示し、Lが明るさを示す三次元の色空間であり、RGB色空間と同様に、階調の遷移が見た目と連動する均等色空間の一つである。また、CMYK色空間は、プリンタ等の印刷機により画像を印刷する際に利用される色空間である。カラー画像を印刷する際には、RGB色空間からCMYK色空間への変換処理が行なわれる。一実施形態における加工処理には、当該変換処理が含まれてもよい。
例えば、加工処理に際して、カラー画像の色空間を、RGB色空間からLab色空間に変換し、Lab色空間において明るさ調整を行なうことも考えられる。しかし、Lab色空間で画素を明るくすると、RGB色空間で表現できない領域まで数値が飛び出すため、明るさ調整後にLab色空間からRGB色空間に色空間を変換したときに、色飽和やかすれが発生し得る。
そこで、一実施形態に係る加工処理では、色相と輝度とが共存(混在)するRGB色空間ではなく、輝度と色相とが分離されたxyY色空間を利用して、画像の明るさ(又はコントラスト)の補正処理(調整処理)を実行するものとする。なお、図1に示す基準の平面は、xyY色空間のx-y平面である。
輝度と色相とが分離された色空間としては、xyY色空間の他に、例えば、Lab色空間が挙げられる。上述のように、Lab色空間は、均等色空間として、見た目上の色差等が階調ごとに均等になるように(予め)制御されており、RGB色空間と同様に、オペレータによる手動の明るさ補正等に適した色空間である。しかしながら、均等色空間を利用してコンピュータによる加工処理を行なうと、純粋な色空間(非均等色空間)に比べて、色域が可視空間に限定され、また、階調のロストも発生するため、上述した不都合が生じ得る。
そこで、一実施形態においては、通常、画像の加工処理では利用されない、純粋な色空間(非均等色空間)であるxyY色空間を採用する。
例えば、一実施形態では、入力された画像の色空間を、明るさ成分の変化に伴い色相成分が変化する第2色空間の一例であるRGB色空間から、色相成分及び明るさ成分を互いに独立して操作可能な第1色空間の一例であるxyY色空間に変換する。そして、一実施形態では、xyY色空間において、各色域が表現可能な範囲内で輝度(明るさ)の補正を行ない、補正後に、色空間をxyY色空間からRGB色空間に変換する。
一実施形態に係る手法によれば、各色域が表現可能な範囲内で、輝度の補正の可動域が制限されるため、明るさを大きく上昇させても、見た目上の色味や階調性を保持することができる。
換言すれば、RGB色空間ではなく、xyY色空間において画像処理を行なうことにより、各色域ごとに明るさの制御が可能になり、高彩度色域の明るさを上昇させる際に発生する色の飽和や色の転びを防ぐことができる。また、色を保持しつつ、階調性を保つことが可能となる。
従って、加工処理において人的な操作を省略しつつ、色飽和や色の転び、かすれ等の発生を適切に抑制することが可能となる。これにより、加工処理を高速化する(加工処理時間を短縮する)ことができ、例えば、新聞社や商業印刷会社等のように、大量の画像に対して加工処理が行なわれる場面において、加工処理を効率化することができる。
〔1-2〕一実施形態の構成例
次に、一実施形態に係るシステムの構成例を説明する。図2は一実施形態に係る画像加工装置1の機能構成例を示す図である。
画像加工装置1は、入力される画像に対して明るさ補正処理を含む加工処理を施し、加工済みの画像を出力する装置であり、例えば、ネットワーク3を介して端末2と相互に通信可能に接続されてよい。オペレータは、端末2の操作を通じて、画像加工装置1に対して画像を送信し、画像加工装置1から出力される加工済みの画像を受信してよい。
画像加工装置1は、画像補正装置又はコンピュータの一例であり、図2に示すように、例示的に、メモリ部10、及び、処理部20をそなえてよい。
メモリ部10は、画像の加工処理に用いられる種々の情報を記憶する保持部の一例である。メモリ部10は、1以上の記憶部によって実現されてよく、複数の記憶部によってRAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)等のディスクアレイが構成されてもよい。
図2に示すように、メモリ部10は、例示的に、入力画像11、出力画像12、補正制御情報13、及び、3次元LUT(Lookup Table)14を記憶してよい。
処理部20は、入力画像11に対する種々の処理を行なうプロセッサの一例である。処理部20は、例えば、端末2からネットワーク3を介して、入力画像11、及び、補正制御情報13を受信した場合、入力画像11に対して、補正制御情報13に応じた加工処理を行なうことで出力画像12を生成し、生成した出力画像12を端末2に送信する。補正制御情報13は、画像の補正処理に用いられるパラメータの一例であり、後述する明るさ目標値Ytや各種閾値等の情報を含んでよい。
なお、端末2としては、例えば業務サーバや基幹サーバ、或いはクライアントマシン等のコンピュータが挙げられる。図2には1台の端末2が示されているが、2台以上の端末2がネットワーク3を介して画像加工装置1と相互に通信可能に接続されてもよい。
ネットワーク3としては、例えばインターネット、又は、LAN(Local Area Network)若しくはWAN(Wide Area Network)等が挙げられる。
次に、図3を参照して、図2に示す画像加工装置1及び端末2のハードウェア構成例を説明する。画像加工装置1、及び、端末2は、いずれもコンピュータとして、互いに同様のハードウェア構成をそなえてよい。以下、これらの一例として、コンピュータ4を例に挙げて、コンピュータ4のハードウェア構成例を説明する。
図3に示すように、コンピュータ4は、例示的に、プロセッサ4a、メモリ4b、記憶部4c、IF(Interface)部4d、I/O(Input / Output)部4e、及び、読取部4fをそなえてよい。
プロセッサ4aは、種々の制御や演算を行なう演算処理装置の一例である。プロセッサ4aは、コンピュータ4内の各ブロックとバス4iで相互に通信可能に接続されてよい。プロセッサ4aとしては、例えば、CPU、MPU、GPU、APU、DSP、ASIC、FPGA等の集積回路(IC;Integrated Circuit)が用いられてよい。CPUはCentral Processing Unitの略称であり、MPUはMicro Processing Unitの略称である。GPUはGraphics Processing Unitの略称であり、APUはAccelerated Processing Unitの略称である。DSPはDigital Signal Processorの略称であり、ASICはApplication Specific ICの略称であり、FPGAはField-Programmable Gate Arrayの略称である。
メモリ4bは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するハードウェアの一例である。メモリ4bとしては、例えばRAM(Random Access Memory)等の揮発性メモリが挙げられる。
記憶部4cは、種々のデータやプログラム等の情報を格納するハードウェアの一例である。記憶部4cとしては、例えばHDD(Hard Disk Drive)等の磁気ディスク装置、SSD(Solid State Drive)等の半導体ドライブ装置、不揮発性メモリ等の各種記憶装置が挙げられる。不揮発性メモリとしては、例えば、フラッシュメモリ、SCM(Storage Class Memory)、ROM(Read Only Memory)等が挙げられる。
図2に示す画像加工装置1のメモリ部10は、例えば、画像加工装置1のメモリ4b及び記憶部4cの少なくとも一方の記憶領域により実現されてよい。
また、記憶部4cは、コンピュータ4の各種機能の全部若しくは一部を実現するプログラム4gを格納してよい。プロセッサ4aは、記憶部4cに格納されたプログラム4gをメモリ4bに展開して実行することにより、図2に示す画像加工装置1、又は、端末2としての機能を実現できる。
例えば、画像加工装置1においては、画像加工装置1のプロセッサ4aが、記憶部4cに格納されたプログラム4g(画像補正プログラム)をメモリ4bに展開して演算処理を実行することで、処理部20の機能を実現できる。処理部20の機能は、後述する、ガンマ補正部21、色空間変換部22、xyY処理部23、及び、印刷用色空間変換部24の機能を含んでよい。
また、端末2においては、端末2のプロセッサ4aが、記憶部4cに格納されたプログラム4gをメモリ4bに展開して演算処理を実行することで、端末2の機能を実現できる。
IF部4dは、ネットワーク3との間の接続及び通信の制御等を行なう通信IFの一例である。例えば、IF部4dは、LAN、或いは、光通信(例えばFC(Fibre Channel;ファイバチャネル))等に準拠したアダプタを含んでよい。例えば、プログラム4gは、当該通信IFを介して、ネットワーク3からコンピュータ4にダウンロードされ、記憶部4cに格納されてもよい。
I/O部4eは、マウス、キーボード、又は操作ボタン等の入力部、並びに、タッチパネルディスプレイ、LCD(Liquid Crystal Display)等のモニタ、プロジェクタ、又はプリンタ等の出力部、の一方又は双方を含んでよい。
読取部4fは、記録媒体4hに記録されたデータやプログラムの情報を読み出すリーダの一例である。読取部4fは、記録媒体4hを接続可能又は挿入可能な接続端子又は装置を含んでよい。読取部4fとしては、例えば、USB(Universal Serial Bus)等に準拠したアダプタ、記録ディスクへのアクセスを行なうドライブ装置、SDカード等のフラッシュメモリへのアクセスを行なうカードリーダ等が挙げられる。なお、記録媒体4hにはプログラム4gが格納されてもよく、読取部4fが記録媒体4hからプログラム4gを読み出して記憶部4cに格納してもよい。
記録媒体4hとしては、例示的に、磁気/光ディスクやフラッシュメモリ等の非一時的な記録媒体が挙げられる。磁気/光ディスクとしては、例示的に、フレキシブルディスク、CD(Compact Disc)、DVD(Digital Versatile Disc)、ブルーレイディスク、HVD(Holographic Versatile Disc)等が挙げられる。フラッシュメモリとしては、例示的に、USBメモリやSDカード等が挙げられる。なお、CDとしては、例示的に、CD-ROM、CD-R、CD-RW等が挙げられる。また、DVDとしては、例示的に、DVD-ROM、DVD-RAM、DVD-R、DVD-RW、DVD+R、DVD+RW等が挙げられる。
上述したコンピュータ4のハードウェア構成は例示である。従って、コンピュータ4内でのハードウェアの増減(例えば任意のブロックの追加や削除)、分割、任意の組み合わせでの統合、又は、バスの追加若しくは削除等は適宜行なわれてもよい。
〔1-3〕処理部の機能構成例
次に、図2に例示する処理部20の機能構成例を説明する。図2に示すように、処理部20は、例示的に、ガンマ補正部21、色空間変換部22、xyY処理部23、及び、印刷用色空間変換部24をそなえてよい。
ガンマ補正部21は、画像に対して、画素ごとに、ガンマ補正、及び、ガンマ逆補正を行なう。色空間変換部22は、変換部の一例であり、画像に対して、画素ごとに、RGB色空間とxyY色空間との間で色空間の変換を行なう。
xyY処理部23は、画像に対して、画素ごとに、xyY色空間における補正処理、例えば輝度(明るさ)調整処理を行なう。xyY処理部23の詳細については後述する。
印刷用色空間変換部24は、印刷用変換部の一例であり、画像に対して、画素ごとに、RGB色空間からCMYK色空間への色空間の変換を行なう。
図4は、処理部20の動作例を示すフローチャートである。図4に示すように、処理部20は、端末2から、RGB色空間で表現された画像を受信し、入力画像11としてメモリ部10に格納する(ステップS1)。
ガンマ補正部21は、入力画像11に対して、画素ごとにガンマ補正を行ない(ステップS2)、ガンマ補正後のデータを色空間変換部22に出力する。
色空間変換部22は、ガンマ補正部21から入力される画像に対して、画素ごとにRGB色空間からxyY色空間への色空間の変換を行ない(ステップS3)、色空間変換後のデータをxyY処理部23に出力する。
xyY処理部23は、色空間変換部22から入力される画像に対して、画素ごとにxyY色空間における画像補正、例えば明るさ調整処理(xyY処理)を行ない(ステップS4)、処理済みのデータを色空間変換部22に出力する。明るさ調整処理は、Y値補正処理(ステップS41)及び過補正抑止処理(ステップS42)を含んでよい。
色空間変換部22は、xyY処理部23から入力される画像に対して、画素ごとにxyY色空間からRGB色空間への色空間の変換を行ない(ステップS5)、色空間変換後のデータをガンマ補正部21に出力する。
ガンマ補正部21は、色空間変換部22から入力される画像に対して、画素ごとにガンマ逆補正を行なう(ステップS6)。処理部20は、ガンマ逆補正後のデータを出力画像12としてメモリ部10に格納する(ステップS7)。
印刷用色空間変換部24は、出力画像12の色空間を、RGB色空間からCMYK色空間に変換する(ステップS8)。変換後の画像は、RGB色空間の出力画像12とは別のデータとしてメモリ部10に格納され、端末2に送信されてもよいし、出力画像12としてメモリ部10に格納(例えば上書き)され、端末2に送信されてもよい。
このように、一実施形態に係る処理部20は、RGB色空間において画像補正を行なう従来の手法とは異なり、ガンマ補正部21によるガンマ補正-ガンマ逆補正間で、色空間変換部22及びxyY処理部23によるxyY色空間での画像補正を行なうのである。
〔1-3-1〕xyY処理の説明
以下、図5~図8を参照して、xyY処理部23による明るさ補正処理について説明する。
図5は、xyY色空間の2次元色マップの一例を示す図であり、図6は、xyY色空間の3次元色マップの一例を示す図である。なお、2次元色マップは、xy座標(色度座標)における色相成分の一例であるxy座標値によって色相を示すマップである。3次元色マップは、色相を示すxy座標に加えて、Y軸において明るさ成分の一例であるY値によって輝度(明るさ又は明度と称されてもよい)を示すマップである。
図5に示すように、2次元色マップのxy座標において、RGB色空間で表現可能な色域(色相)の境界となる三角形の各頂点が、R(レッド)、G(グリーン)、B(ブルー)により形成される。C(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)は、線分G-B、線分B-R、線分R-Gのそれぞれの線分上(或いは近傍)の色相である。さらに、W(ホワイト)は、線分R-C、線分G-M、線分B-Yが互いに交差する交点(或いは近傍)の色相である。
なお、符号(1)~(6)で示す領域は、それぞれ、B-C-W、G-C-W、G-Y-W、R-Y-W、R-M-W、B-M-Wで囲まれた(区分けされた)領域であり、図5及び図6において領域分割モデルとして示す。
図5は、符号(1)~(6)をxy座標(xy平面)上の領域として示しており、これにより、xy座標において、三角形内のいずれの点(色相)についても、当該点が属する領域を符号(1)~(6)から特定可能となる。
図6は、図5に示す2次元色マップを、明るさを示すY軸の情報によって拡張したものであり、Y軸の正方向に形成される太実線で囲まれた領域は、RGB色空間において、色飽和が発生する境界を示す。例えば、太実線で囲まれた領域内は、RGB色空間において色飽和が発生せずに表現可能な領域であり、当該領域の外側は、RGB色空間において色飽和が発生する領域である。このように、符号(1)~(6)は、それぞれ、B-C-W、G-C-W、G-Y-W、R-Y-W、R-M-W、B-M-Wの領域における明るさの飽和限界(境界)を示す領域である。
また、3次元色マップからわかるように、太実線で囲まれた領域において、Wで示すホワイトポイント(白色点)が最も明るい(Y値が最も大きい)点であり、RGB色空間の明るさ最大値(例えば255)が得られる点である。
以上のことから、xy座標で特定される色相が符号(1)~(6)のいずれの分割領域に属するか否かが分かれば、3次元色マップにより、xy座標で特定される色相における飽和限界となるY値の閾値(境界値)を特定することができる。例えば、或る色相のxy座標がR-M-Wの分割領域に含まれる場合、当該xy座標を通りY軸に平行な直線と、符号(5)の面(平面或いは曲面)と、の交点におけるY値が、当該xy座標の明るさの飽和限界であると特定できる。
xyY処理部23は、色空間変換部22によりRGB色空間からxyY色空間に変換された画像に対して、画素ごとに、明るさY値を補正してよく、その際に、図7に例示するように、Y値の飽和限界に基づく過補正の抑止制御を行なってよい。
上述のように、xyY処理部23は、xyY色空間において、RGB色空間の各色域を表現可能な範囲内に、明るさ補正の稼動域を制限し、明るさを大きく上昇させても見た目上の色味や階調性が保持されるように、明るさ補正を行なう。例えば、xyY処理部23は、明るさ補正の稼動域をxyY色空間での理論上の色域ではなく、見た目上の色域に制限した上で、輝度成分(xyYの“Y”成分)の数値の上昇幅を色相(xyYの“xy”成分)の値に応じて制御する。
なお、xyY色空間においても、RGB色空間と同様に、機械的に明るさを上昇させると、RGB色空間で表現可能な色の範囲を超えて、階調が潰れて見えたりかすれたりする色飽和現象が発生する。そこで、一実施形態では、明るさと色相とが一体であるために色飽和の抑制が困難であるRGB色空間に代えて、明るさと色相とが分離されたxyY色空間を用いて、色相ごとの明るさの上限値を制御することで、色飽和を抑制するのである。
例えば、Y値の上昇制御により、明るさが飽和限界に達する場合(それ以上上げることができない場合)、xyY処理部23は、表現可能な範囲、すなわち、境界に沿って、色域の内側に入れ込む(グレー側に寄せる)方向に、xy座標及びY値を移動させる。
以下、Y値の上昇制御(過補正の抑制制御)の手法について説明する。一例として、図7に示すように、xyY処理部23は、画素ごとに、当該画素の色相を示すxy座標値(「変換前xy値」参照)を固定したまま、当該画素の明るさを示すY値を、目標とする明るさを示すY値(Yt)に向かって増加させる。
ここで、図7の例では、変換前xy値における変換前Y値を目標Y値まで増加させようとすると、飽和閾値Ythにおいて明るさが符号Aで示す飽和限界を超え、RGB値とした場合に色飽和が発生する。なお、符号Aで示す飽和限界は、変換前xy値の属する分割領域における飽和境界であり、変換前xy値に隣接する隣接境界であるといえる。
上述のように、明るさの最大値(例えばY=255)を得ることのできるxy座標は、ホワイトポイント「W」である。そこで、xyY処理部23は、Y値の増加により飽和限界を超えると判断した場合、Y軸に沿った方向から、飽和限界の傾きに沿ってホワイトポイント「W」に向かう方向に、明るさの増加方向を変更する。すなわち、xyY処理部23は、明るさ(Y値)とともにxy座標値を変化させ、補正後の明るさY値(例えば目標Y値)が飽和限界を超えないようなxy座標値(「変換後xy値」参照)を求める。
換言すれば、xyY処理部23は、変換前xy値と、基準点の一例としてのホワイトポイント「W」との間の線分上において、xy座標に応じて変化する飽和閾値(Yth)が、補正後の明るさY値以上となるxy座標を、変換後xy値として特定するのである。
図8は、2次元色マップにおける変換前後のxy値の一例を示す図である。図8に三角形のマークで示すように、図7の例における変換後xy値は、変換前xy値と、ホワイトポイント「W」との間の線分上で特定される。例えば、変換後xy値は、変換前xy値と、ホワイトポイント「W」との間の線分上のxy座標のうち、飽和閾値(Yth)が補正後の明るさY値以上となる、変換前xy値に最も近い位置の座標値であってよい。
上述した処理を実現するために、xyY処理部23は、図2に例示するように、補正量算出部23a、LUT作成部23b、及び、画像変換部23cをそなえてよい。
補正量算出部23aは、画素ごとに、明るさY値の補正量を算出する。例えば、補正量算出部23aは、色空間変換部22からの画像全体のY値のヒストグラムを求め、ヒストグラム解析によりYの平均値を算出してよい。そして、補正量算出部23aは、Yの平均値と目標とする明るさ閾値(Yth)とに基づいて、各画素の明るさYの補正量(移動量)Mを算出してよい。
また、補正量算出部23aは、図5~図8を参照して説明した論理に従って、画素ごとに、xy座標の補正要否の判定、及び、補正要の場合に、xy座標の補正量(移動量)xymを算出してよい。
LUT作成部23bは、画像の明るさ補正処理に用いる3次元LUT14を作成する。3次元LUT14は、画像データの画素ごとに、色相成分及び明るさ成分と、補正後の色相成分及び補正後の明るさ成分と、を対応付けた対応情報の一例である。
3次元LUT14は、例えば、図9に示すように、補正前のxy座標値及びY値と、補正後のxy座標値及びY値と、の関係を定義した参照テーブルであってよい。
例えば、LUT作成部23bは、補正量算出部23aが算出したY及びxy座標の補正量に基づいて、画素ごとに、補正前のxy座標値及びY値と、補正前又は補正後のxy座標値、並びに、明るさ補正後のY値と、の関係を3次元LUT14に設定してよい。
画像変換部23cは、LUT作成部23bが作成した3次元LUT14を用いて、画像の明るさ及び色相の変換処理を行なう。
このように、一実施形態に係るxyY処理部23は、3次元LUT14を利用して、画像全体の変換処理を行なうことで、画像の加工処理を高速に実現することができる。
〔1-3-2〕xyY処理部の動作例
以下、図10を参照して、上述の如く構成されたxyY処理部23によるxyY処理(明るさ補正処理)の動作例を説明する。
図10に例示するように、xyY処理部23の補正量算出部23aは、色空間変換部22から入力されるxyY色空間の画像データから、全ての画素を参照して、「xyY」のうちのY(明るさ)成分のヒストグラム(分布)を取得する(ステップS11)。
そして、補正量算出部23aは、取得したヒストグラムに基づいて、画像全体のYの平均値を算出する(ステップS12)。Yの平均値は、画像全体の明るさと捉えることができる。換言すれば、補正量算出部23aは、明るさ成分Yのヒストグラムに基づいて、画像全体の明るさを推定するといえる。
補正量算出部23aは、画像全体の明るさが第1の明るさ閾値Yth1未満か否かを判定する(ステップS13)。画像全体の明るさが第1の明るさ閾値Yth1未満ではないと判定した場合(ステップS13でNo)、補正量算出部23aは、画像全体の明るさが第2の明るさ閾値Yth2よりも大きいか否かを判定する(ステップS14)。
ここで、第1の明るさ閾値Yth1及び第2の明るさ閾値Yth2は、目標とする明るさ目標値Ytの範囲、すなわち、許容可能な画像の明るさの範囲を定義する情報であり、例えば、Yth1<Yt<Yth2の関係であってよい。
第1の明るさ閾値Yth1には、例えば、許容可能な下限の明るさ(Y値)が設定されてよく、第2の明るさ閾値Yth2には、例えば、許容可能な上限の明るさ(Y値)が設定されてよい。なお、明るさ目標値Ytには、Yth1とYth2との間の値、例えば中間値等が設定されてよい。Yt、Yth1、Yth2の値は、入力画像11とともに、端末2から受信され、補正制御情報13の少なくとも一部の情報としてメモリ部10に格納されてもよい。Ytは、画像全体で共通の値であってもよいし、例えば、画素ごと、画像内の所定の領域(画素群)ごと、色相(座標)ごと、及び座標W(白)までの距離、の少なくとも1つに応じて、互いに異なる値であってもよい。
画像全体の明るさが第2の明るさ閾値Yth2よりも大きいと判定した場合(ステップS14でYes)、処理が後述するステップS25に移行する。また、画像全体の明るさが第2の明るさ閾値Yth2よりも大きくないと判定した場合(ステップS14でNo)、処理が終了し、図4のステップS5に移行する。
このように、画像全体の明るさが、第1の(低い)明るさ閾値Yth1以上、且つ、第2の(高い)明るさ閾値Yth2以下である場合、画像全体の明るさは、適切な範囲内にあると考えられるため、明るさ補正は省略(スキップ)されてよい。なお、ステップS13及びS14の処理は、逆順で実行されてもよい。
画像全体の明るさが第1の明るさ閾値Yth1未満であると判定した場合(ステップS13でYes)、補正量算出部23aは、低い明るさ目標値Yth1に達していない(暗い)画像全体の明るさを、増加する方向に処理するためのYの移動量を算出する。
例えば、補正量算出部23aは、補正制御情報13内の明るさ目標値Ytから画像全体の明るさ(平均値)を減ずることにより、画素pにおける明るさY(p)の移動量(補正量)Mを算出する(ステップS15)。なお、移動量Mは、画素pごとの移動量(補正量)M(p)として算出されてもよい。Mは、絶対値と、増加又は減少方向を示すフラグと、を含む情報として算出されてもよい。
次いで、補正量算出部23a及びLUT作成部23bは、補正量算出部23aが算出した移動量Mに基づいて、明るさ補正前後のxy座標及びY値を画素pごとに含む3次元LUT14を作成する。
例えば、補正量算出部23aは、未選択の画素pと、当該画素pの色相(座標)xy(p)と、を選択する(ステップS16)。そして、補正量算出部23aは、選択した画素pにおける明るさY(p)に、移動量Mを加算することにより、選択した画素pの補正後明るさ成分Yxを算出する(ステップS17)。
補正量算出部23aは、算出した補正後明るさ成分Yxが、画素pの色相(座標)xy(p)においてRGB色空間で表現可能なYの最大値、換言すれば飽和限界を示すYth(xy(p))を超えるか否かを判定する(ステップS18)。
なお、Yth(xy(p))は、例えば、補正制御情報13の少なくとも一部の情報として予めメモリ部10に格納されてもよいし、補正制御情報13の少なくとも一部の情報として、端末2から画像加工装置1により受信され、メモリ部10に格納されてもよい。Yth(xy(p))は、x及びyの全ての組み合わせとYth(xy(p))の値とが対応付けられた情報であってよく、xyY処理部23が座標xy(p)に基づきYth(xy(p))の値を算出可能な情報、例えば3次元色マップの情報等であってもよい。
補正後明るさ成分YxがYth(xy(p))を超えないと判定した場合(ステップS18でNo)、選択した画素pにおいては、明るさ補正を行なっても色飽和が発生しない。この場合、LUT作成部23bは、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの初期のxy成分及び補正後のY成分と、の関係を3次元LUT14に追加し(ステップS19)、処理がステップS24に移行する。なお、画素pの初期のxy成分及びY成分は、ステップS16で選択した時点の座標xy(p)及びその明るさY(p)であってよく、補正後のY成分は、ステップS17で算出した補正後明るさ成分Yxであってよい。
一方、補正後明るさ成分YxがYth(xy(p))を超えると判定した場合(ステップS18でYes)、補正量算出部23aは、画素pの色相(座標)xy(p)に、座標xy(p)から座標W(白)方向への移動量xymを加算する(ステップS20)。例えば、補正量算出部23aは、座標xy(p)に対して、移動量(xm,ym)を加算して、移動後の座標x′y′(p)を算出してよい。移動量xm及びymは、それぞれ、移動量xymのx軸成分及びy軸成分である。移動量xymは、固定値であってもよいし、画素p、座標xy、座標Wまでの距離、及び移動回数、の少なくとも1つに応じて変化する値であってもよい。
次いで、補正量算出部23aは、移動後の座標x′y′(p)においてRGB色空間で表現可能なYの最大値(飽和限界)を示すYth(x′y′(p))が、補正後明るさ成分Yx以上であるかを判定する(ステップS21)。
Yth(x′y′(p))がYx以上ではないと判定した場合(ステップS21でNo)、補正量算出部23aは、移動後の座標x′y′(p)に対して、移動量(xm,ym)をさらに加算して、移動後の座標x′y′(p)を算出する(ステップS22)。そして、処理がステップS21に移行する。なお、補正量算出部23aは、ステップS20及びS22において座標xy(p)に加算した移動量xymの合計値を算出してもよい。この場合、補正量算出部23aは、ステップS22において、初期座標xy(p)に対して、移動量xymの合計値を加算することで移動後の座標x′y′(p)を算出してもよい。
一方、Yth(x′y′(p))がYx以上であると判定した場合(ステップS21でYes)、LUT作成部23bは、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの移動後のxy成分及びY成分と、の関係を3次元LUT14に追加する(ステップS23)。なお、画素pの移動後のxy成分及びY成分は、それぞれ、ステップS21でYesとなった時点の座標x′y′(p)及び補正後明るさ成分Yxであってよい。
補正量算出部23aは、入力された画像データに含まれる全ての画素pについて処理を行なったか否かを判定する(ステップS24)。全ての画素pについて処理を行なっていない(未処理の画素pが存在する)と判定した場合(ステップS24でNo)、処理がステップS16に移行し、補正量算出部23aは、未選択の画素p及び当該画素pの座標xy(p)についての処理を行なう。
一方、全ての画素pについて処理を行なったと判定した場合(ステップS24でYes)、画像変換部23cは、LUT作成部23bが作成した3次元LUT14に基づいて、画像データ全体の変換処理を実行し(ステップS25)、処理が終了する。
このように、ステップS15~S24における明るさを上げる方向の処理においては、明るさ補正によりRGB色空間で表現可能な色域を超える場合がある。そこで、xyY処理部23は、各色(各座標)でのYの限界値をそれぞれ算出し、Yの限界値を超える場合に、xy値をグレー方向(例えば白色方向)に移動させながらY値を上げていく制御を行なうのである。
ここで、ステップS14において、画像全体の明るさが第2の明るさ閾値Yth2よりも大きいと判定した場合(ステップS14でYes)、補正量算出部23aは、ステップS26の処理を実行する。
ステップS26では、補正量算出部23aは、高い明るさ目標値Yth2を上回る(明るい)画像全体の明るさを、減少する方向に処理するためのYの移動量を算出する。
例えば、補正量算出部23aは、補正制御情報13内の明るさ目標値Ytから画像全体の明るさ(平均値)を減ずることにより、画素pにおける明るさY(p)の移動量(補正量)Mを算出する。なお、移動量Mは、画素pごとの移動量(補正量)M(p)として算出されてもよい。Mは、絶対値と、増加又は減少方向を示すフラグと、を含む情報として算出されてもよい。
次いで、補正量算出部23a及びLUT作成部23bは、補正量算出部23aが算出した移動量Mに基づいて、明るさ補正前後のxy座標及びY値を画素pごとに含む3次元LUT14を作成する。
例えば、補正量算出部23aは、画素pの各々における明るさY(p)に、移動量Mを加算することにより、各画素pの補正後明るさ成分Yxを算出する(ステップS27)。
LUT作成部23bは、各画素pの初期のxy成分及びY成分と、各画素pの初期のxy成分及び補正後のY成分と、の関係を、画素pごとに、3次元LUT14に追加し(ステップS28)、処理がステップS25に移行する。なお、画素pの初期のxy成分及びY成分は、各画素pにおける座標xy(p)及びその明るさY(p)であってよく、補正後のY成分は、ステップS27で算出した補正後明るさ成分Yxであってよい。
このように、ステップS26~S28における明るさを下げる方向の処理については、色飽和の現象は発生しない。このため、xyY処理部23は、xyY色空間のパラメータのうち、Y値の移動(減少制御)のみを行なえばよく、座標xy(p)の移動に関する制御を省略(スキップ)してよい。
なお、一実施形態に係る手法は、図10に例示するフローチャートによる手順に限定されるものではなく、処理順序は適宜入れ替えて実行されてもよい。また、各処理は、適宜、併合、分離、又は変更されてもよい。
以上のように、補正量算出部23aは、xyY色空間で表現された画像データに対して、メモリ部10に保持された補正制御情報13に基づき、明るさ成分を補正するための明るさ補正量Mを算出する第1算出部の一例である。
また、補正量算出部23aは、明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分が、RGB色空間の色域に含まれるように、色相成分を、RGB色空間において色域が拡張される方向に変化させるための色相補正量を算出する第2算出部の一例である。なお、色相補正量は、ステップS20及びS22における移動量xymの合計(累計)加算量と捉えることができる。また、RGB色空間において色域が拡張される方向とは、xyY色空間において色相成分を表す座標から、xyY色空間において白色を示す色相成分を表す座標への方向を意味してよい。
さらに、画像変換部23cは、画像データの色相成分及び明るさ成分を、色相補正量及び明るさ補正量Mを用いて補正する補正部の一例である。
以上のように、一実施形態に係る処理部20によれば、RGB色空間ではなく、色相成分と明るさ成分とが分離した色空間、例えばxyY色空間において画像処理が行なわれるため、各色域ごとに明るさの制御を行なうことが可能となる。従って、例えばRGB色空間において高彩度色域の明るさを上昇させるときに発生する色の飽和や色の転び等の発生を防ぐことができ、色を保持しつつ階調性を保つことが可能となる。
これにより、例えば、新聞や雑誌、ポスター等の印刷物における明るさ補正後の画像において、特定の色相の物体の色飽和(ツブレ)の抑制や色転びの改善等が実現できる。一例として、明るさ補正によってバラやチューリップ等の赤色が明るくなる際に、色飽和が発生することを抑制できる。また、明るさ補正によって青系の青空やサッカー日本代表のユニホーム等の青色が紫色になる現象(色転び)を改善できる。
なお、図10に示す処理は、図4のステップS4において実行される処理の一例である。例えば、明るさ目標値Ytの情報等、補正制御情報13の情報は、図4のステップS8で出力されるCMYK色空間の画像に基づき作成される印刷物の表示が最適となるように、印刷媒体単位又は顧客単位等に調整されてよい。
〔1-4〕変形例
次に、一実施形態の変形例を説明する。変形例においては、xyY処理部23は、画像の見た目上、明るくしたくない色域(換言すれば、明るさ補正を制限したい色域)に対して重み付けを行ない、明るさを上げる方向への移動量を抑制する。
例えば、草花の緑や、バラの赤、菜の花の黄色等のように、RGB色空間における1次色や2次色の高彩度の色域については、他の色域と同様のレベルで(一律に)明るさ補正処理を行なう場合、本来の色味が損なわれることがある。そこで、変形例においては、特定の色域、例えば高彩度の色域に対して、明るさ補正処理の抑制を個別に行なうことで、明るさ補正前後で色味(カラーバランス)を保つことを可能とする。
例えば、重み付けは、マップデータによって定義され、各色について0~100の値で設定されてよい。一例として、マップデータは、色相ごとの重み付け情報の一例であり、補正制御情報13の少なくとも一部の情報として、例えば印刷媒体や顧客ごとのパラメータとして、メモリ部10に格納されてよい。また、マップデータは、補正制御情報13の少なくとも一部の情報として、端末2から画像加工装置1により受信され、メモリ部10に格納されてもよい。
図11はマップデータの一例を示す図である。なお、図11では、便宜上、マップデータをマトリクス形式で示しているが、このようなデータ形式に限定されるものではなく、マップデータは、配列やデータベース等の種々の形態でメモリ部10に格納されてよい。なお、図11の例では、横軸をxyY色空間におけるx軸とし、縦軸をxyY色空間におけるy軸として、重み付けが設定される座標単位を9×9のマトリクスで示しているが、これに限定されるものではなく、座標単位はより細分化或いは統合されてもよい。
図11に例示するように、一実施形態と同様の手法で明るさ補正を行なう(換言すれば、明るさ補正を制限しない)色域(色相)に対しては、重みとして“100”が設定されてよい。一方、重み付けが設定される(換言すれば、明るさ補正が抑制される)色域には、例えば、緑に“80”、黄に“60”、赤に“40”等の重みが設定されてよい。
例えば、重みの数値が“100”である場合、移動量Mに対する重み付けの影響はなく、重みの数値が小さいほど、移動量M(p)に対する重み付けの影響が強くなるように、明るさの上昇及び座標の移動が抑制されてよい。
なお、重み付けの数値がパラメータの明るさ固定値以下である場合、座標xy(p)及び移動量M(p)の移動量は、いずれも“0”となるように制御されてもよい。明るさ固定値は、重み付けに用いられる閾値であり、補正制御情報13の少なくとも一部の情報であってよい。
重み付けの数値は、上述したものに限定されず、例えば、重みの数値が大きいほど、移動量M(p)に対する重み付けの影響が強くなるように制御されてもよい。また、重み付けの数値に代えて、重み付けの程度を示す段階的なレベルが用いられてもよい。レベルとしては、重み付けを行なう程度として、「最大(移動量=“0”)」、「大」、「中」、「小」、「最小(重み付け無し)」等が含まれてもよい。
図12は、重み付けを適用した明るさ補正処理の一例を示す図であり、(a)は重み“100”の例を示し、(b)は重み“60”の例を示し、(c)は重み“40”であり、明るさ固定値が“40”である場合の例を示す。
図12(a)の例では、明るさ補正は重みによる抑制を受けない。このため、LUT作成部23bは、一実施形態に係る手法と同様に、飽和限界に沿って、明るさYを明るさ目標値Ytまで上昇させる。
図12(b)の例では、LUT作成部23bは、重みに応じた割合で、明るさY及び座標xyの移動量を減少させる(移動を抑制する)。
図12(c)の例では、重みが明るさ固定値以下であるため、LUT作成部23bは、明るさ補正による明るさY及び座標xyの移動が無効となるように制御する(移動を抑制する)。
このように、重みは、明るさYの増加量を制限するための情報であり、また、他の観点からみると、明るさYの増加限界(飽和限界)を引き下げるための情報であるといえる。xyY処理部23は、マップデータに基づき、明るさ補正量M及び色相補正量、又は、明るさ補正量Mを減少させる制御を行なうのである。
次に、図13を参照して、変形例に係るxyY処理部23の動作例を説明する。図13は、変形例に係るxyY処理部23の動作例を示すフローチャートであり、図10に示すステップS16~S24の区間に着目したものである。図13の例では、図10に対して、ステップS31~S38を追加している。
図13に示すように、LUT作成部23bは、ステップS16が完了すると、マップデータを参照して、座標xy(p)の重みwを抽出し(ステップS31)、処理がステップS17に移行する。
また、LUT作成部23bは、ステップS18でNoの場合(Yxが飽和限界を超えないと判断した場合)、Y値移動量Mに対して、重みwに応じた割合Rwを乗算することで、重みwを適用したY値移動量M′(p)を算出する(ステップS32)。
割合Rwとしては、例えば、最大値“100”に対する重みwの割合(重みwが“60”の場合、Rw=“0.6”)であってもよいし、重みwの有効範囲(明るさ固定値~最大値)に基づく割合であってもよく、その他、重みwに基づく種々の割合であってよい。
なお、重みwが明るさ固定値(例えば“40”)以下の場合、LUT作成部23bは、重みによる制限が最大となるように、Rwを“0”に設定してよい。また、重みwが最大値(例えば“100”)の場合、LUT作成部23bは、重みによる制限を行なわないように、Rwを“1”に設定してよい。
次いで、LUT作成部23bは、初期明るさY(p)に対してY値移動量M′(p)を加算することで、重みwを適用した補正後明るさ成分Yxwを算出する(ステップS33)。
そして、LUT作成部23bは、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの初期のxy成分及び画素pの補正後且つ重み付け適用後のY成分と、の関係を3次元LUT14に追加し(ステップS34)、処理がステップS24(図10参照)に移行する。なお、画素pの補正後且つ重みw適用後のY成分は、ステップS33で算出された補正後明るさ成分Yxwであってよい。
また、LUT作成部23bは、ステップS21でYesの場合(Yth(x′y′(p))≧Yxの場合)、補正後の座標x′y′(p)から初期座標xy(p)を減じることで、座標移動量xyd(p)を算出する(ステップS35)。
座標移動量xyd(p)は、x軸成分及びy軸成分を含む2次元の値であってよい。なお、LUT作成部23bは、ステップS35の実行に代えて、ステップS20及びS22の処理において、座標xy(p)及びx′y′(p)に加算する移動量xymの累積値を座標移動量xyd(p)として算出しておいてもよい。この場合、補正量算出部23aは、ステップS22において、初期座標xy(p)に対して、移動量xymの合計値を加算することで移動後の座標x′y′(p)を算出してもよい。
次いで、LUT作成部23bは、座標移動量xyd(p)及びY値移動量Mのそれぞれに対して、重みwに応じた割合Rwを乗算することで、重みwを適用した座標移動量xyd′(p)及びY値移動量M′(p)をそれぞれ算出する(ステップS36)。なお、座標移動量xyd(p)に対して乗じる割合Rwと、Y値移動量Mに対して乗じる割合Rwとは、互いに異なる値であってもよい。
LUT作成部23bは、初期座標xy(p)に対して座標移動量xyd′(p)を加算することで、重みwを適用した移動後座標xyw(p)を算出する。また、LUT作成部23bは、初期明るさY(p)に対してY値移動量M′(p)を加算することで、重みwを適用した補正後明るさ成分Yxwを算出する(ステップS37)。
そして、LUT作成部23bは、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの移動後且つ重み付け適用後のxy成分及びY成分と、の関係を3次元LUT14に追加し(ステップS38)、処理がステップS24(図10参照)に移行する。なお、画素pの移動後且つ重みw適用後のxy成分及びY成分は、それぞれ、ステップS36で算出された座標xyw(p)及び補正後明るさ成分Yxwであってよい。
なお、一実施形態の変形例に係る手法は、図13に例示するフローチャートによる手順に限定されるものではなく、処理順序は適宜入れ替えて実行されてもよい。また、各処理は、適宜、併合、分離、又は変更されてもよい。
一例として、ステップS31の処理は、ステップS17よりも後、且つ、ステップS32及びS35の前のいずれのタイミングで実行されてもよい。
また、ステップS32及びS36において、割合Rwが“0”の場合、ステップS34及びS38において、3次元LUT14に追加されるxy成分及びY成分は、補正前及び補正後において変化しないため、同一となる。例えば、LUT作成部23bは、割合Rwが“0”の場合、3次元LUT14へのxy成分及びY成分の追加を抑止してもよい。
以上のように、一実施形態の変形例に係るLUT作成部23bによれば、画像の見た目上、明るくしたくない色域について、色域ごとに重み付けを行なったマップデータに基づいて、明るさYの限界値を調整する(下げる)制御を行なう。これにより、数値上の色飽和とは別に、見た目上明るくしたくない色の明るさの増加を抑制することができる。
また、変形例によれば、或る画素pの座標xy(p)の重みwが明るさ固定値以下の場合、LUT作成部23bによる、当該画素pに対する明るさY及び座標xy(p)の補正値の算出処理を抑止できる。従って、画像加工装置1の処理負荷の低減及び処理速度の向上を図ることができる。
なお、LUT作成部23bは、図13に示す手法に代えて、例えば、図14に示す手法によって、明るさ補正に対して重みwを適用してもよい。図14は、他の変形例に係るxyY処理部23の動作例を示すフローチャートであり、図13に対して、ステップS32、S33、S36、S37を削除し、ステップS51~S53を追加している。
図14に例示するように、LUT作成部23bは、ステップS31で重みwを抽出すると、Mに対して、重みwに応じた割合Rwを乗算することで、重みwを適用したY値移動量M(p)を算出する(ステップS51)。
そして、LUT作成部23bは、ステップS17において、ステップS51で算出したY値移動量M(p)を用いて、補正後明るさ成分Yxを算出する。
また、LUT作成部23bは、ステップS18でNoの場合、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの初期のxy成分及び画素pの補正後且つ重み付け適用後のY成分と、の関係を3次元LUT14に追加する(ステップS34)。なお、画素pの補正後且つ重みw適用後のY成分は、ステップS17で算出された補正後明るさ成分Yxであってよい。
さらに、LUT作成部23bは、ステップS35で座標移動量xyd(p)を算出すると、座標移動量xyd(p)に対して、重みwに応じた割合Rwを乗算することで、重みwを適用した座標移動量xyd′(p)を算出する(ステップS52)。なお、座標移動量xyd(p)に対して乗じる割合Rwと、ステップS51でY値移動量Mに対して乗じる割合Rwとは、互いに異なる値であってもよい。
LUT作成部23bは、初期座標xy(p)に対して座標移動量xyd′(p)を加算することで、重みwを適用した移動後座標xyw(p)を算出する(ステップS53)。
そして、LUT作成部23bは、画素pの初期のxy成分及びY成分と、画素pの移動後且つ重み付け適用後のxy成分及びY成分と、の関係を3次元LUT14に追加し(ステップS38)、処理がステップS24(図10参照)に移行する。なお、画素pの移動後且つ重みw適用後のxy成分及びY成分は、それぞれ、ステップS53で算出された座標xyw(p)及びステップS17で算出された補正後明るさ成分Yxwであってよい。
このように、LUT作成部23bは、重み付けが適用された補正後明るさ成分Yxに基づいて、座標xy(p)の移動要否の判定、及び座標xy(p)の移動量を制御してもよい。これにより、図13に示す例よりも、Yの補正量が重み付けにより減少することで飽和限界を超えない(すなわちxy座標の移動が発生しない)画素pが増加することが期待できる。従って、図13に示す例よりも、明るさ補正による色味(色域)の変化の発生率、変化量等を減少させた明るさ補正を行なうことができる。
〔2〕その他
上述した一実施形態に係る技術は、以下のように変形、変更して実施することができる。
例えば、図2に示す処理部20の各機能ブロックは、それぞれ任意の組み合わせで併合してもよく、分割してもよい。
また、画像加工装置1の機能は、マルチプロセッサやマルチコアプロセッサであるプロセッサ4aによって実現されてもよい。さらに、画像加工装置1が有する機能の少なくとも一部は、例えばクラウド環境のように、複数のコンピュータに分散又は冗長化して配置されてもよい。
さらに、画像加工装置1は、端末2ごと、ユーザごと、顧客ごと、印刷媒体ごと、或いはプロジェクトごと、等の所定の単位ごとに、プロファイルとして、補正制御情報13を格納してよい。これにより、プロファイルの切り替えによって、明るさ目標値Ytや閾値Yth1及びYth2、マップデータ等を容易に切り替えることができ、画像加工処理を効率化することができる。
また、一実施形態では、処理部20は、明るさ補正を行なう色空間としてxyY色空間を用いる場合を例に挙げたが、これに限定されるものではない。処理部20は、xyY色空間に代えて、色相と明るさとが分離した種々の色空間(一例として、非均等色空間)において明るさ補正を行なってよい。また、処理部20への入力画像として、RGB色空間以外の色空間で表現された画像が入力されてもよい。例えば、色空間変換部22は、入力画像の色空間と、明るさ補正を行なう色空間と、の間で、色空間の変換を行なえばよい。
〔3〕付記
以上の実施形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
色相成分及び明るさ成分を互いに独立して操作可能な第1色空間で表現された画像データに対して、保持部に保持されたパラメータに基づき、前記明るさ成分を補正するための明るさ補正量を算出し、
前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分が、前記第1色空間とは異なる第2色空間の色域に含まれるように、前記色相成分を、前記第2色空間において色域が拡張される方向に変化させるための色相補正量を算出し、
前記画像データの前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量及び前記明るさ補正量を用いて補正する、
処理をコンピュータに実行させる、画像補正プログラム。
(付記2)
前記画像データの画素ごとに、前記明るさ補正量の算出、前記色相補正量の算出、及び、前記色相成分及び前記明るさ成分の補正、を含む補正処理を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記1に記載の画像補正プログラム。
(付記3)
前記色相成分及び前記明るさ成分の補正は、
前記画像データの画素ごとに、前記色相成分及び前記明るさ成分と、前記補正後の色相成分及び前記補正後の明るさ成分と、を対応付けた対応情報を前記保持部に格納し、
前記対応情報に基づいて、前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量を用いた補正後の色相成分及び前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分に変換する、ことを含む、付記2に記載の画像補正プログラム。
(付記4)
前記第2色空間で表現された画像データを、前記第1色空間で表現された、前記補正処理の処理対象となる画像データに変換し、
前記補正処理が行なわれた前記画像データを、前記第2色空間で表現された画像データに変換して前記保持部に格納する、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記2又は付記3に記載の画像補正プログラム。
(付記5)
前記補正処理が行なわれた前記画像データを、前記第2色空間で表現された画像データに変換した後に、当該画像データを印刷用の色空間で表現された画像データに変換して前記保持部に格納する、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記4に記載の画像補正プログラム。
(付記6)
前記パラメータは、色相ごとの重み付け情報を含み、
前記重み付け情報に基づき、前記明るさ補正量及び前記色相補正量、又は、前記明るさ補正量を減少させる制御を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記1~5のいずれか1項に記載の画像補正プログラム。
(付記7)
前記明るさ補正量が前記画像データの明るさ成分を増加させる補正量の場合であって、前記明るさ成分が前記第2色空間の色域外となる場合に、前記色相補正量の算出を行なう、
処理を前記コンピュータに実行させる、付記1~6のいずれか1項に記載の画像補正プログラム。
(付記8)
前記第2色空間において明るさ成分の色域が拡張される方向は、前記第1色空間において前記色相成分を表す座標から、前記第1色空間において白色を示す色相成分を表す座標への方向である、付記1~7のいずれか1項に記載の画像補正プログラム。
(付記9)
前記第2色空間は、明るさ成分の変化に伴い色相成分が変化する色空間である、付記1~付記8のいずれか1項に記載の画像補正プログラム。
(付記10)
前記第1色空間は、非均等色空間であり、
前記第2色空間は、均等色空間である、付記9に記載の画像補正プログラム。
(付記11)
前記第1色空間は、xyY色空間であり、
前記第2色空間は、RGB色空間である、付記10に記載の画像補正プログラム。
(付記12)
コンピュータのプロセッサが、色相成分及び明るさ成分を互いに独立して操作可能な第1色空間で表現された画像データに対して、保持部に保持されたパラメータに基づき、前記明るさ成分を補正するための明るさ補正量を算出し、
前記プロセッサが、前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分が、前記第1色空間とは異なる第2色空間の色域に含まれるように、前記色相成分を、前記第2色空間において色域が拡張される方向に変化させるための色相補正量を算出し、
前記プロセッサが、前記画像データの前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量及び前記明るさ補正量を用いて補正する、画像補正方法。
(付記13)
前記プロセッサが、前記画像データの画素ごとに、前記明るさ補正量の算出、前記色相補正量の算出、及び、前記色相成分及び前記明るさ成分の補正、を含む補正処理を行なう、付記12に記載の画像補正方法。
(付記14)
前記色相成分及び前記明るさ成分の補正は、
前記画像データの画素ごとに、前記色相成分及び前記明るさ成分と、前記補正後の色相成分及び前記補正後の明るさ成分と、を対応付けた対応情報を前記保持部に格納し、
前記対応情報に基づいて、前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量を用いた補正後の色相成分及び前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分に変換する、ことを含む、付記13に記載の画像補正方法。
(付記15)
前記プロセッサが、前記第2色空間で表現された画像データを、前記第1色空間で表現された、前記補正処理の処理対象となる画像データに変換し、
前記プロセッサが、前記補正処理が行なわれた前記画像データを、前記第2色空間で表現された画像データに変換して前記保持部に格納する、
付記13又は付記14に記載の画像補正方法。
(付記16)
色相成分及び明るさ成分を互いに独立して操作可能な第1色空間で表現された画像データに対して、保持部に保持されたパラメータに基づき、前記明るさ成分を補正するための明るさ補正量を算出する第1算出部と、
前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分が、前記第1色空間とは異なる第2色空間の色域に含まれるように、前記色相成分を、前記第2色空間において色域が拡張される方向に変化させるための色相補正量を算出する第2算出部と、
前記画像データの前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量及び前記明るさ補正量を用いて補正する補正部と、をそなえる
画像補正装置。
(付記17)
前記第1算出部、前記第2算出部、及び前記補正部は、前記画像データの画素ごとに、前記明るさ補正量の算出、前記色相補正量の算出、及び、前記色相成分及び前記明るさ成分の補正、を含む補正処理を行なう、付記16に記載の画像補正装置。
(付記18)
前記補正部は、
前記画像データの画素ごとに、前記色相成分及び前記明るさ成分と、前記補正後の色相成分及び前記補正後の明るさ成分と、を対応付けた対応情報を前記保持部に格納し、
前記対応情報に基づいて、前記色相成分及び前記明るさ成分を、前記色相補正量を用いた補正後の色相成分及び前記明るさ補正量を用いた補正後の明るさ成分に変換する、付記17に記載の画像補正装置。
(付記19)
前記第2色空間で表現された画像データを、前記第1色空間で表現された、前記補正処理の処理対象となる画像データに変換し、前記補正処理が行なわれた前記画像データを、前記第2色空間で表現された画像データに変換して前記保持部に格納する変換部、をそなえる
付記17又は付記18に記載の画像補正装置。
(付記20)
前記補正処理が行なわれた前記画像データを、前記変換部が前記第2色空間で表現された画像データに変換した後に、当該画像データを印刷用の色空間で表現された画像データに変換して前記保持部に格納する印刷用変換部、をそなえる
付記19に記載の画像補正装置。