JP7028033B2 - 複合積層板のせん断加工方法及びせん断加工装置 - Google Patents

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本開示は、金属層の間に樹脂層を含む複合積層板を、金属層と樹脂層との間の剥離を抑制しながらせん断加工を行うせん断加工方法及びせん断加工装置に関する。
自動車、家電製品、建築構造物、船舶、橋梁、建設機械、各種プラント、ペンストック等で用いる部材の製造には、せん断加工が多く利用されている。図1及び2に、従来のせん断加工の態様を模式的に示す。図1に、金属の被加工材に穴を形成するせん断加工の態様を模式的に示し、図2に、金属の被加工材に開断面を形成するせん断加工の態様を模式的に示す。
図1に示すせん断加工においては、ダイ40の上に被加工材10を配置し、パンチ20を被加工材10の板厚方向20aに押し込んで、被加工材10に穴を形成する。図2に示すせん断加工においては、ダイ40の上に被加工材10を配置し、同じく、パンチ20を被加工材10の板厚方向20aに押し込んで、被加工材10に開断面を形成する。
図3に、せん断加工で形成される金属の加工材12のせん断加工面19の断面模式図を示す。図4に、パンチ20、ホルダー30、及びダイ40を用いて、金属の抜き材11及び加工材12を得るせん断加工の断面模式図を示す。
せん断加工面19は、通常、図3及び4に示すように、だれ14、14’、せん断面15、15’、破断面16、及びバリ17、17’によって構成される。だれ14は、被加工材がパンチ20で押し込まれることにより、せん断加工面19のパンチ側表面18aに形成される。せん断面15は、パンチ20とダイ40との間隙に被加工材が引き込まれることにより、被加工材が局所的に引き伸ばされて形成される。破断面16は、パンチ20とダイ40との間隙に引き込まれた被加工材にパンチ側及びダイ側から亀裂が発生し、被加工材が破断して形成される。バリ17は、パンチ20とダイ40との間隙に引き込まれた被加工材が破断して分離する際、せん断加工面19のダイ側表面18bに生じる。
このように、金属部材をせん断加工して所望の形状に打ち抜くことが行われているが、軽量化や制振性能等を付与するために、金属板の間に樹脂層を含む複合積層板が提案されている(特許文献1)。
特開平8-11000号公報
複合積層板は、金属層の間に樹脂層を含む積層構造を有し、材質が異なる複数の層で構成されているので、上記のようなせん断加工を行う際、金属層と樹脂層とで変形抵抗が異なり、金属層と樹脂層とに発生するひずみ量に差が生じる。
そのため、複合積層板のせん断加工面の端面近傍では、金属層の歪み量と樹脂層の歪み量との差が大きくなり、金属層と樹脂層との間で剥離が生じることがあった。
そこで、本発明者は、上記課題を解決することができる新たなせん断加工方法及びせん断加工装置を見出した。
本開示の要旨は、以下のとおりである。
(1)第1面及びその反対側の第2面を有する複合積層板を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記複合積層板の前記第1面から前記第2面に向かって前記複合積層板の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、
前記複合積層板は、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含み、
前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
前記押え部材のヤング率が、前記複合積層板の金属層のヤング率よりも小さく、
前記パンチで前記複合積層板をせん断加工し、前記せん断加工に伴う発熱によりせん断加工面における前記接着を溶融させること、及び
少なくとも前記接着が溶融している際に、前記押え部材を前記複合積層板に押しつけること、
を含む、せん断加工方法。
(2)前記パンチのパンチ速度は、10mm/秒以上4000mm/秒未満である、上記(1)に記載のせん断加工方法。
(3)前記複合積層板が備える金属層の合計厚みに対する前記複合積層板が備える樹脂層の合計厚みの比率が1.00より大きい、上記(1)または(2)に記載のせん断加工方法。
(4)前記複合積層板の全体の板厚は0.8mm以上であり、
前記接着層は、100℃以上225℃以下の融点を有し、
前記樹脂層は、前記接着層の融点よりも高い融点を有し、
前記金属層の線膨張係数ηfに対する前記樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfが3以上である、
上記(1)~(3)のいずれかに記載のせん断加工方法。
(5)第1面及びその反対側の第2面を有する複合積層板を、前記第1面から前記第2面に向かってせん断加工をするように構成されたパンチ及びダイを有し、前記複合積層板をせん断加工して、抜き材及び加工材を得るせん断加工装置であって、
前記複合積層板が、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含み、
前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
前記押え部材のヤング率が、前記複合積層板の金属層のヤング率よりも小さい、
せん断加工装置。
(6)前記パンチは、10mm/秒以上4000mm/秒未満のパンチ速度でせん断加工するように構成されている、上記(5)に記載のせん断加工装置。
(7)前記複合積層板が備える金属層の合計厚みに対する前記複合積層板が備える樹脂層の合計厚みの比率が1.00より大きい、上記(4)に記載のせん断加工装置。
(8)前記複合積層板の全体の板厚が0.8mm以上であり、
前記接着層は、100℃以上225℃以下の融点を有し、
前記樹脂層は、前記接着層の融点よりも高い融点を有し、
前記金属層の線膨張係数ηfに対する前記樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfが3以上である、
上記(5)~(7)のいずれかに記載のせん断加工装置。
本開示によれば、金属層と樹脂層との間で剥離を生じさせずに、複合積層板をせん断加工することができる。
図1は、被加工材に穴を形成するせん断加工の態様を示す断面模式図である。 図2は、被加工材に開断面を形成するせん断加工の態様を示す断面模式図である。 図3は、被加工材のせん断加工面の断面模式図である。 図4は、抜き材及び加工材を得るせん断加工の断面模式図である。 図5は、複合積層板をせん断加工したときの金属層と樹脂層との間の剥離状態を表す断面模式図である。 図6は、本開示の方法で複合積層板をせん断加工したときの金属層と樹脂層との間の接着状態を表す断面模式図である。 図7は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図8は、本開示のせん断加工方法における破断面形成時の断面模式図である。 図9は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図10は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図11は、本開示のせん断加工方法の一態様を説明する断面模式図である。 図12は、5層構造を有する複合積層板の断面模式図である。 図13は、内板を配置して外板の複合積層板をヘミング加工したときの断面模式図である。 図14は、図13のヘミング加工した複合積層板を、熱処理及び冷却処理したときの断面模式図である。 図15は、従来のハット形鋼(A)及び(C)、並びに複合積層板を用いて得られた負角構造体(B)の断面形状、断面二次モーメント、占有面積(体積)、及び部材剛性の断面効率を比較する表である。 図16は、曲げ剛性を評価する方法を説明する断面模式図である。 図17は、曲げ剛性を表すグラフである。
複合積層板は、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含む。図5に、複合積層板をせん断加工したときの金属層と樹脂層との間の剥離状態を表す断面模式図を示す。図5においては、接着層を省略しているが、金属層50と樹脂層70との間を接着層が接着している。複合積層板100を、パンチ20、ホルダー30、及びダイ40を用いてせん断加工すると、金属層50と樹脂層70とで変形抵抗が異なるため、せん断加工面の近傍では、金属層50の歪み量と樹脂層70の歪み量との差が大きくなり、金属層50と樹脂層70との間で剥離が生じやすい。
これに対して、パンチと一体型の押え部材を設ければ、金属層及び樹脂層を含む複合積層板をせん断加工する場合でも、押え部材がせん断加工面の端部を押えながらせん断加工を行うことができるため、端面近傍における金属層と樹脂層との間の剥離を防止することができる。
本開示は、第1面及びその反対側の第2面を有する複合積層板を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記複合積層板の前記第1面から前記第2面に向かって前記複合積層板の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、前記複合積層板は、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含み、前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、前記押え部材のヤング率が、前記複合積層板の金属層のヤング率よりも小さく、前記パンチで前記複合積層板をせん断加工し、前記せん断加工に伴う発熱によりせん断加工面における前記接着剤を溶融させること、及び少なくとも前記接着剤が溶融している際に、前記押え部材を前記複合積層板に押しつけること、を含む、せん断加工方法を対象とする。
図6に、本開示の方法で複合積層板をせん断加工したときの金属層と樹脂層との間の接着状態を表す断面模式図を示す。図6においては、接着層を省略しているが、金属層50と樹脂層70との間を接着層が接着している。複合積層板100を、パンチ20の側面に接するようにパンチ20の上部に固定された押え部材22を備えたパンチ20、ホルダー30、及びダイ40を用いてせん断加工すると、せん断加工に伴う発熱によりせん断加工面近傍の接着剤が溶融する。少なくとも接着剤が溶融している際に、パンチ20の上部に固定され一部がパンチ20と一体化された押え部材22を、複合積層板に押しつける。押え部材22が、複合積層板をパンチの刃先(側面)まで押さえることができるので、せん断加工において金属層と樹脂層との間で剥離が生じることを抑制することができる。
一般的なせん断加工速度(数百mm/秒)におけるせん断加工時のせん断加工面の発熱温度は、速度依存性はあるが、概して400~500℃程度である。本開示の方法においては、この発熱を活用して接着剤を溶融させ、押え部材が圧下することで金属層と樹脂層との間の剥離を防止し、あるいは剥離しても再接着させて、良好なせん断加工面を得ることができる。
以下、本開示の方法について、図面を参照しながら説明する。
本開示の方法で用いられるパンチは、パンチの側面に接するようにパンチの上部に固定された押え部材を備える。図7に、本開示の方法に用い得るパンチを含むせん断加工装置の断面模式図を示す。図7は、複合積層板に開断面を形成するせん断加工の態様を一例として示しているが、複合積層板に穴を形成する場合にも適用される。以下の説明においても同様である。
図7に示すように、せん断加工装置は、第1面101及びその反対側の第2面102を有する複合積層板100を、第1面101から第2面102に向かってせん断加工するパンチ20、ダイ40、及び複合積層板100をダイ40との間で保持するホルダー30を有する。ホルダー30は、弾性体31を備えてもよい。図7にはホルダー30を示しているが、本方法においては押え部材を用いるので、ホルダー30は任意構成であり、以下の説明において特に断りがない限り同様である。
図7に示すせん断加工においては、第1面101及びその反対側の第2面102を有する複合積層板100を、第1面がパンチ20側に配置され、第2面102がダイ40側に配置されるように、ダイ40とパンチ20との間に配置する。パンチ20が、複合積層板100の第1面101から第2面102に向かって複合積層板100を打ち抜くことで、抜き材及び加工材を得ることができる。ホルダー30は、パンチ20による打ち抜きの際、複合積層板100を、第1面101側からダイ40側に向かう方向に抑えつけ、複合積層板100を固定することができる。
パンチ20は、上部が拡がったT字またはL字形状を有し、パンチ20の側面に接するようにパンチ20の上部21に保持された押え部材22を備える。押え部材22は、パンチ20の上部21のみに固定され、パンチ20の側面には実質的に固定されていない。そのため、パンチ20が複合積層板100の板厚方向に押し込まれるとともに、押え部材22が複合積層板100の第1面101に押しつけられ、変形することによって、パンチ20の側面に接しながら複合積層板100の板厚方向(せん断加工方向)にパンチ20とは別個に動くことができる。言い換えれば、押え部材22は変形にともない、パンチ20の側面に対して摺動することができる。ただし、押え部材22がパンチ20の側面に接しながら複合積層板100の板厚方向(せん断加工方向)にパンチ20とは実質的に別個に動くことができる限り、押え部材22の一部がパンチ20の側面に固定される態様を除くものではない。
押え部材22のパンチ20の上部21への固定は、接着剤等を用いた接着や、ボルトによる固定によって行うことができる。
本開示の方法においては、上部においてパンチと一体化されている押え部材によって、せん断加工によって複合積層板に形成されるだれの先端まで押さえることができる。少なくとも接着剤が溶融している際に、押え部材がだれを押さえることができるため、せん断加工面近傍における金属層と樹脂層との間の剥離を防止、または剥離しても再接着することができる。
図8に、本開示のせん断加工方法における破断面形成時の断面模式図を示す。破線は、亀裂が発生して破断面16が形成される状態を示している。図8は、せん断加工中の破断面16の形成時に、押え部材22を複合積層板100の第1面101に押しつけながら、せん断加工を行う態様を例示する。押え部材22とダイ40との間で複合積層板100のだれ14の先端まで押さえ込むことによって、せん断加工面の近傍における金属層と樹脂層との間の剥離を防止、または剥離しても再接着することができる。
押え部材のヤング率は、金属層のヤング率よりも小さく、好ましくは複合積層板のヤング率よりも小さい。このようなヤング率を有する押え部材を用いることによって、図8に示すように、押え部材を複合積層板の第1面に押しつける際に押え部材が変形して、押え部材22がだれ14を押さえることができる。
押え部材に用いられる材料のヤング率は、複合積層板のヤング率の好ましくは60%以下、より好ましくは30%以下、さらに好ましくは1%以下である。押え部材が上記範囲のヤング率を有することにより、押え部材が複合積層板のだれの先端までより良好に抑えることができ、せん断加工面の近傍における金属層と樹脂層との間の剥離をより安定して防止、または剥離してもより安定して再接着することができる。
押え部材に用いられる材料のヤング率の下限は、好ましくは0.1MPa以上である。この範囲のヤング率を有する押え部材であれば、せん断加工面の近傍における金属層と樹脂層との間の剥離を十分に防止、または剥離しても十分に再接着することができる。
押え部材は、金属、合金、セラミックス、及び樹脂から選択される少なくとも1つの材料であることができる。押え部材は、好ましくは樹脂である。
例えば、押え部材に用いられ得る金属材料は、銅(ヤング率:130GPa)、アルミニウム(ヤング率:71GPa)等の柔らかい金属であることができる。
押え部材に用いられ得る合金材料は、アルミニウム合金(ヤング率:68GPa)、黄銅(ヤング率:100GPa)等であることができる。
押え部材に用いられ得るセラミックス材料は、ステアタイト(ヤング率:120GPaGPa)等であることができる。
押え部材に用いられ得る樹脂材料は、ポリウレタン(ヤング率:50MPa)、エチレンゴム(ヤング率:約2~4MPa)、フッ素ゴム(ヤング率:約3~5MPa)等であることができる。押え部材は、好ましくはポリウレタンである。
押え部材は、複数の材料の組み合わせで構成されてもよい。押え部材は、例えば樹脂のみで構成されてもよいし、樹脂と金属、合金、セラミックス、ばね、またはダンパーとの組み合わせで構成されてもよい。例えば、樹脂だけでは荷重が不十分の場合、金属等のより大きなヤング率の材料と組み合わせてもよい。押え部材が複数の材料から構成されている場合、押え部材のヤング率は、押え部材全体のヤング率である。複合積層板のヤング率は、複合積層板全体のヤング率である。
図9に例示するように、押え部材22は、先端部に比較的ヤング率が小さい樹脂221を備え、パンチ20の上部21に保持される側に比較的ヤング率が大きい材料、ばね、またはダンパー222を備えてもよい。また、押え部材22は、先端部に比較的ヤング率が大きい樹脂を備え、パンチ20の上部21に保持される側にばねまたはダンパーを備えてもよい。
パンチ速度は、好ましくは10mm/秒以上、より好ましくは100mm/秒以上である。上記範囲のパンチ速度でせん断加工を行うことにより、せん断加工面を約400~500℃以上に発熱させて接着剤を溶融させて、金属層と樹脂層との間の剥離をより安定して防止、または剥離してもより安定して再接着することができる。例えば、金属層の厚みに対して樹脂層の厚みの比率が大きい場合、例えば前記比率が1.5以上の場合でも、上記範囲のパンチ速度でせん断加工を行うことにより、金属層と樹脂層との間の剥離を安定して防止、または剥離しても安定して再接着することができる。パンチ速度が速すぎると、ブランキングラインのずれが発生し得るので、パンチ速度の上限は、好ましくは4000mm/秒未満、より好ましくは2000mm/秒以下、さらに好ましくは1000mm/秒以下、さらにより好ましくは500mm/秒以下である。
パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの、複合積層板の第2面から第1面に向かう板厚方向の距離Hは、接着剤が溶融している際に押え部材が複合積層板を押さえることができる範囲であればよい。図10に、せん断加工前のパンチの先端部と押え部材の先端部との相対位置を表す断面模式図を示す。
距離Hは、実質的にゼロ、またはマイナスであってもよい。すなわち、せん断加工を行う際に、パンチが複合積層板に接するのと実質的に同時に押え部材も複合積層板に接するか、または押え部材が複合積層板に接した後にパンチが複合積層板に接してもよい。距離Hがこのような範囲であることにより、複合積層板がせん断加工される全行程で、押え部材が変形しながら複合積層板を押さえることができる。
距離Hは、好ましくは、複合積層板の板厚の60%以上100%以下である。距離Hが、この範囲内であることにより、押え部材が複合積層板を押し過ぎないように且つ接着剤が溶融している際に押え部材が複合積層板を安定して押さえることができる。
複合積層板の板厚方向に対して垂直方向の押え部材の寸法Wは、パンチの刃先周囲の複合積層板を押さえることができれば特に限定されないが、例えば1~5mmであることができる。
押え部材は、好ましくは、先端部においてパンチの刃先(側面)に向かって高さが増加する傾斜部を有する。図11に、せん断加工前のパンチと押え部材の断面模式図を示す。せん断加工において、複合積層板にはだれが形成されるが、図11に示すように、押え部材22が、先端部においてパンチ20の刃先(側面)に向かって長さが増加する傾斜部223を有する場合、傾斜部223が、複合積層板のだれ形成による隙間を埋めることができるので、より効果的に押え部材で複合積層板を押さえることができる。
ダイは、パンチが備える押え部材と同様の押え部材を、ダイの側面に接する位置に備えてもよい。ダイが押え部材を備えることによって、複合積層板のせん断加工時に複合積層板の第2面を押さえ、複合積層板の倒れを抑制することができるので、金属層と樹脂層との間の剥離をより安定して抑制することができる。ただし、抜き材の排出工程が複雑になるので、ダイは、好ましくは、押え部材を備えない。
パンチとダイとの間のクリアランスは特に限定されないが、例えば、パンチとダイとの間のクリアランスは、複合積層板の板厚の5~15%程度であることができる。
ホルダーを用いる場合、ホルダーの配置位置は特に限定されず、従来と同様の位置に配置することができる。例えば、複合積層板の板厚方向に対して垂直方向におけるホルダーとパンチの側面(刃先)との間隔は約2~6mmであり、押え部材とホルダーとの間隔は約0.5~3mmであることができる。
本開示の方法に用いられる複合積層板は、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含む。複合積層板に含まれる層数は特に限定されるものではなく、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含む限り、複合積層板は所望の構成を有することができる。
例えば、図12の断面模式図に示すように、複合積層板100は、金属層50/接着層60/樹脂層70/接着層60/金属層50の5層構造を有してもよく、この5層構造に金属層、接着層、及び樹脂層のうち少なくとも1層をさらに加えた構造を有してもよく、あるいは、線材を用いて網状に形成した網状の線材層をさらに含んでもよい。例えば、複合積層板は、金属層/接着層/網状の線材層/樹脂層/網状の線材層/接着層/金属層の7層構造を有してもよい。複合積層板は、好ましくは、金属層/接着層/樹脂層/接着層/金属層の5層構造を有する。
好ましくは、複合積層板の全体の板厚は0.8mm以上であり、接着層は、100℃以上225℃以下の融点を有し、樹脂層は、接着層の融点よりも高い融点を有し、金属層の線膨張係数ηfに対する樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfは3以上である。これにより、複合積層板は軽量であり且つ良好な曲げ剛性を有し、さらには、この複合積層板を用いれば、複雑な工程や特別な金型を要せずに、密着性の良いかしめ継ぎ手を得ること、及び負角成形を容易に行うことができる。
複合積層板の全体の板厚は、0.8mm以上、好ましくは1.0mm以上、より好ましくは1.2mm以上、さらに好ましくは1.4mm以上である。複合積層板が上記範囲の板厚を有することにより、曲げ剛性を確保して外板の高級感を高めることができる。複合積層板の全体の板厚の上限は、特に限定されないが、例えば2.3mmであることができる。
曲げ剛性は、素材の弾性係数と形状の断面2次モーメントIの積で表わされる。弾性係数は素材固有の値であり、断面2次モーメントIは以下の式:
I=b×t/12
(式中、bは幅であり、tは板厚である)
で表され、板厚の3乗に比例する。
複合積層板が備える金属層の合計厚みは、好ましくは0.03~0.40mm、より好ましくは0.05~0.20mm、さらに好ましくは0.07~0.15mmである。
複合積層板が備える樹脂層の合計厚みは、好ましくは0.06~0.80mm、より好ましくは0.10~0.50mm、さらに好ましくは0.14~0.30mmである。
金属層及び樹脂層が上記範囲の厚みを有することにより、複合積層板の軽量化及び曲げ剛性をより向上することができる。
複合積層板が備える樹脂層の合計厚み/複合積層板が備える金属層の合計厚みの比率は、好ましくは1.00より大きく6.00以下、より好ましくは1.50以上5.50以下、より好ましくは1.75以上5.00以下、さらに好ましくは2.00以上4.00以下である。
金属層及び樹脂層が、上記樹脂層の厚み/金属層の厚みの比率を有することにより、複合積層板のさらなる軽量化及び曲げ剛性のさらなる向上を図ることができ、より優れた密着性を有するかしめ継ぎ手を得ること、及びより容易に負角形成を行うことが可能となる。また、上記樹脂層の厚み/金属層の厚みの比率が2以上の場合、樹脂層が厚いため、せん断加工時に金属層と樹脂層との界面で剥離がさらに生じやすくなるが、本開示の方法によれば、金属層と樹脂層との界面における剥離を抑制することができる。
接着層は接着剤で構成され、接着剤は、100℃以上225℃以下の融点を有する。接着剤は、好ましくは180℃以下、より好ましくは170℃以下、さらに好ましくは160℃以下の融点を有する。
接着剤は、好ましくは、熱圧着型変性ポリプロピレン接着剤、熱可塑性樹脂系接着剤、エラストマー系接着剤、及び無機系接着剤のうち少なくとも1つである。熱圧着型変性ポリプロピレン接着剤は約160℃~170℃の融点を有し得る。
一般に、自動車の外板を作製する際、外板に接するように外板の端部に沿って内板を配置し、外板が内側に配置される内板に密着するように外板にヘミング加工が行われ、かしめ継ぎ手を形成して外板を内板に密着させる。さらに、かしめ継ぎ手を有する外板に、100~225℃、特に170~180℃で20~30分間、焼付け塗装処理(BH処理)が行われる。プレス加工またはフランジ加工を行って溝形構造体またはハット形構造体を成形する場合も、同様のBH処理が行われ得る。
接着層の接着剤が上記範囲の融点を有することにより、加熱を伴うBH処理工程で、接着剤の流動性を高めて、ヘミング加工またはプレス加工の際に金属層と樹脂層との間に発生した応力を緩和し、その後の冷却過程で、外力無しに、ヘミング加工またはプレス加工で形成した曲げ角度をさらに閉じることができるので、良好な密着性を有するかしめ継ぎ手を得ることができ、または容易に負角構造体を得ることができる。
樹脂層は樹脂で構成される。樹脂層の樹脂は、接着層の接着剤の融点よりも高い融点、好ましくは接着層の接着剤の融点+20℃以上の融点を有する。樹脂層の樹脂は、好ましくは熱可塑性である。樹脂層の樹脂はまた、好ましくは225℃超、より好ましくは250℃以上、さらに好ましくは270℃以上、さらにより好ましくは290℃以上の融点を有する。樹脂層の樹脂が、上記範囲の融点を有することにより、熱処理において樹脂層が溶融することをより確実に防止することができる。
樹脂層の樹脂は、好ましくは、ポリアミド6(PA6)、アセチルセルロース、ポリブチレンテレフタレート、ポリアミド66(PA66)、ポリエチレンテレフタレート、ポリフェニレンスルファイド、及びポリアミドイミドのうち少なくとも1つである。ポリアミド6(PA6)は約225℃の融点、アセチルセルロースは約230℃の融点、ポリブチレンテレフタレートは約245℃の融点、ポリアミド66(PA66)は約265℃の融点、ポリエチレンテレフタレートは約255℃の融点、ポリフェニレンスルファイドは約290℃の融点、ポリアミドイミドは約300℃の融点を有し得る。
図13に、内板80を配置して外板の複合積層板100をヘミング加工したときの断面模式図を示す。図14に、図13のヘミング加工した複合積層板100を、上記所定の温度で熱処理し、次いで100℃未満に冷却処理したときの断面模式図を示す。図13に示すように、ヘミング加工後はスプリングバックが起こるため、複合積層板のかしめ継ぎ手の曲げ角度が開いて、外板と内板との密着性が低下する。複合積層板をヘミング加工後に上記所定の熱処理及び冷却処理を行うことにより、図14に示すように、かしめ継ぎ手の曲げ角度が閉じるために、密着性の高いかしめ継ぎ手を得ることができる。
ヘミング加工は、プレス曲げ、ローラーヘム等の従来方法により行うことができる。外板は、ヘミング加工された後、密着性確保のためにシーラー塗布され得る。
理論に束縛されるものではないが、熱処理及び冷却処理により曲げ角度が閉じる方向に変形する理由は次のように考えられる。
複合積層板から得られたかしめ継ぎ手または溝形構造体若しくはハット形構造体の熱処理過程で、金属層と樹脂層との間の線膨張係数差に起因する熱歪みが発生する。ここで、接着剤の(融点-20℃)以上の温度で熱処理を行うと、接着剤が軟化または溶融するため、金属層と樹脂層との間の接着力が低下して金属層と樹脂層との間でずれが生じ、金属層と樹脂層との線膨張係数差に起因する熱歪みが緩和する。熱処理をした後、100℃未満までの冷却過程で、金属層と樹脂層との間で硬化または再接着が生じ、金属層及び樹脂層は収縮し、線膨張係数差により金属層と樹脂層との間にせん断応力が発生して、曲げ角度が閉じる方向に変形すると考えられる。
100℃未満では金属層と樹脂層との層間は固定され、熱処理の際に接着剤が軟化または溶融し金属層と樹脂層との層間がずれる必要がある。
金属層は、225℃超の融点を有する金属板または合金板で構成され、好ましくは鋼板、アルミニウム合金板、銅合金板、純チタン板、チタン合金板、またはマグネシウム合金板であることができる。鋼板は、好ましくは270~590MPaの引張強度を有し、例えばめっき鋼板、電気めっき鋼板、ぶりき、または缶用鋼板(TFS:ティンフリースチール)であることができる。
接着層の一層の厚みは、好ましくは0.001~0.200mm、より好ましくは0.050~0.100mm、さらに好ましくは0.100~0.050mmである。接着層が上記範囲の厚みを有することにより、樹脂層と金属層とを良好に接着することができる。
外板をヘミング加工して内板とかしめ継ぎ手を形成する場合、外板を曲げた部分(フランジ部分)の内板と外板との密着性が重要である。内板は、特に限定されず、従来より用いられている金属板等であることができる。
複合積層板のヘミング加工後またはプレス加工後に、熱処理及び冷却処理を行うことにより、熱処理前よりも曲げ角度を低減することができる。熱処理前の曲げ角度に対する曲げ角度の低減角度(閉じ角度)は、好ましくは0.55°以上、より好ましくは2.00°以上、さらに好ましくは2.30°以上、さらにより好ましくは2.50°以上、さらにより好ましくは2.60°以上、さらにより好ましくは5.00°以上、さらにより好ましくは5.10°以上である。曲げ角度の低減角度の上限は特に限定されないが、例えば20°または10°であることができる。
金属層の線膨張係数ηfに対する樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfが大きいほど、熱処理後の冷却過程での曲げ角度の閉じ角度(変化量)が大きくなり、密着性に優れたかしめ継ぎ手を得ることができ、または容易に負角構造体を得ることができる。
金属層の線膨張係数ηfに対する樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfは、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは7以上である。かしめ継ぎ手を成形する場合、比率ηp/ηfが大きいほど、熱処理後の冷却過程での曲げ角度の閉じ角度(変化量)が大きくなり、密着性に優れたかしめ継ぎ手を得ることが可能であり、上記範囲で、工業的に必要なかしめ力を得ることができる。負角構造体を成形する場合も、比率ηp/ηfが大きいほど、熱処理後の冷却過程での曲げ角度の閉じ角度(変化量)が大きくなり、複雑な工程や特別な金型を要せずに、曲げ角度がより小さい負角構造体を容易に得ることができる。曲げ角度がより小さい負角構造体は、断面2次モーメントを得るための効率がより高く、剛性がより優れている。ηp/ηfの上限値は特に限定されるものではないが、例えばηp/ηfを20以下にしてもよい。
90°曲げの場合にηp/ηfが3であると、熱処理及び冷却処理により、曲げ角度の閉じ角度(変化量)は0.55°になる。稜線開き角度の合計が180°以上となる部品においては、閉じ角度の合計は、1.1°になる。一般に、ヘミング加工により、内板と外板とでかしめ継ぎ手を形成する場合に必要なフランジ長さは25mmであり、面精度は±0.5mmである。すなわち、面精度が低い場合は0.5mmの隙間が生じ、接合不良が生じ得る。ηp/ηfを3以上にすることによって、フランジ端の隙間を0.5mm(25mm×sin(1.1°)=0.5mm)狭めて、隙間を塞ぐことができる。
例えば、樹脂層の材料として好ましいポリアミド6(PA6)の線膨張係数は、5.9~10×10-5/℃であり、アセチルセルロースの線膨張係数は、8~18×10-5/℃であり、ポリブチレンテレフタレートの線膨張係数は、6.0~9.5×10-5/℃であり、ポリアミド66(PA66)の線膨張係数は、8~10×10-5/℃であり、ポリエチレンテレフタレートの線膨張係数は、6.5×10-5/℃であり、ポリフェニレンスルファイドの線膨張係数は、4.9×10-5/℃であり、ポリアミドイミドの線膨張係数は、3.1×10-5/℃である。例えば、金属層の材料として好ましい鋼板の線膨張係数は、9.0~12.8×10-6/℃であり、アルミニウム板の線膨張係数は、23×10-6/℃であり、銅板の線膨張係数は、17.7×10-6/℃である。ηp/ηfが所望の比率になるように、金属層及び樹脂層の材料を選択することができる。
複合積層板は、金属板の間に接着剤を介して樹脂を挟み、熱間圧着して、作製され得る。熱間圧着は、例えば、温度を100~200℃に加熱しながら、0.01~5.00MPaの圧力で1.0×10~1.0×10秒間、プレスすることによって行われる。
上記複合積層板は、プレス加工による曲げ加工後に熱処理及び冷却処理を行うことによって曲げ角度を閉じることができるため、負角成形を容易に行うことができる。負角成形とは、90°よりも小さい曲げ角度を有する成形部を形成することをいう。通常のプレス工法では負角構造体を成形することはできない。負角構造体を成形するには、多工程化や斜めから金型を移動させるカム工法が必要となるが、コストが高くなる。
上記複合積層板を用いて得られる負角構造体は、優れた断面二次モーメント、占有面積(体積)、及び部材剛性の断面効率を両立することができる。
図15に、金属板を用いて従来工法で作製したハット形鋼(A)、上記複合積層板を用いてハット形鋼(A)と同じ断面形状のハット形鋼を従来工法で作製し、次いで熱処理及び冷却処理して作製した負角構造体(B)、及び金属板を用いてフランジ部が負角構造体(B)と同じ幅を有するようにした通常工法で作製したハット形鋼(C)の断面形状、断面二次モーメント、占有面積(体積)、及び部材剛性の断面効率の比較を示す。
断面二次モーメントについては、断面積が最も大きいハット形鋼(A)が優れているが、負角構造体(B)も線長(図芯からの距離)が大きいので良好であり、ハット形鋼(C)は断面積が小さいので劣っている。
占有面積(体積)については、断面積が最も大きいハット形鋼(A)が劣っており、負角構造体(B)及びハット形鋼(C)は優れている。
部材剛性の断面効率については、ハット形鋼(A)及びハット形鋼(C)は不十分であるが、負角構造体(B)は優れている。
本方法において、パンチ、ダイ、及びホルダーは、上記で説明した構成以外は特に限定されず、従来と同様の材質、寸法、及び形状を有することができる。
本開示の方法はまた、第1面及びその反対側の第2面を有する複合積層板を、前記第1面から前記第2面に向かってせん断加工をするように構成されたパンチ及びダイを有し、前記複合積層板をせん断加工して、抜き材及び加工材を得るせん断加工装置であって、前記複合積層板が、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含み、前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、前記押え部材のヤング率が、前記複合積層板の金属層のヤング率よりも小さい、せん断加工装置を対象とする。
パンチは、好ましくは10mm/秒以上、より好ましくは100mm/秒以上のパンチ速度でせん断加工するように構成されている。上記範囲のパンチ速度でせん断加工を行うことにより、せん断加工面を約400~500℃以上に発熱させて樹脂層の流動応力を低下させ、第1の押え部材及び第2の押え部材で複合積層板の金属層を押し込み、複合積層板の内部の樹脂を端面から流出させて、金属層の端面を樹脂で被覆することができる。パンチ速度が速すぎると、ブランキングラインのずれが発生し得るので、パンチ速度の上限は、好ましくは4000mm/秒未満、より好ましくは2000mm/秒以下、さらに好ましくは1000mm/秒以下、さらにより好ましくは500mm/秒以下である。
その他、せん断加工方法の構成について説明した上記記載は、せん断加工装置の構成にも適用される。
(複合積層板の準備)
それぞれの板厚が0.2mmで線膨張係数ηfが11.7×10-6/℃の缶用鋼板(TFS)を2枚用意した。2枚の缶用鋼板の間に、融点が160℃の熱圧着型変性ポリプロピレン接着剤を介して、0.54mmの板厚、225℃の融点、及び8×10-5/℃の線膨張係数ηpを有するポリアミド6(PA6)を挟み、180℃、10000kgで、1.0×10秒間、熱間圧着して、板厚が1.1mmの5層の複合積層板を得た。圧着後の複合積層板の縦横寸法は、400mm×600mmであった。缶用鋼板の線膨張係数ηfに対するポリアミド6の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfは、6.8であった。金属層の合計厚みに対する樹脂層の合計厚みの比率は1.35であった。
(曲げ剛性の評価)
作製した複合積層板について、図16に示す方法にしたがって、曲げ剛性を評価した。図16は、寸法が1.1mm×30mm×200mmの複合積層板100を、100mm間隔で配置したR5.0mmの支持点の上に配置し、中央部を、R5.0mmのパンチで押し込んで曲げ成形したときの曲げ剛性を測定する方法を表す。アルミニウム板及び缶用鋼板(TFS)についても、同様に曲げ剛性を評価した。
図17に示すように、作製した複合積層板は、0.50mm厚の缶用鋼板(TFS)と同等の質量で0.50mm厚の缶用鋼板の曲げ剛性よりも大幅に高い曲げ剛性が得られた。この曲げ剛性は1.3mm厚のアルミニウム板と同等であった。このように、複合積層板は、軽量且つ高い曲げ剛性を示した。
(実施例1~6及び参考例1)
それぞれの板厚が0.2mm、線膨張係数ηfが11.7×10-6/℃、及びヤング率が200GPaのブリキ鋼板を2枚用意した。2枚のブリキ鋼板の間に、融点が160℃の熱圧着型変性ポリプロピレンの接着剤を介して、樹脂層として0.7mmの板厚、225℃の融点、及び8×10-5/℃の線膨張係数ηfを有するポリアミド(PA6)を挟み、180℃、10000kgで、1.0×10秒間、熱間圧着して、板厚が1.0mmの5層の複合積層板を得た。圧着後の複合積層板の縦横寸法は、400mm×600mmであった。ブリキ鋼板の線膨張係数ηfに対するポリアミド6の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfは、6.8であった。金属層の合計厚みに対する樹脂層の合計厚みの比率は1.75であった。
図10に模式的に示すように、押え部材として、外径12.5mm、内径10mmのリング形状を有するウレタンゴム(ヤング率:50MPa、ショアA硬さ:30)を、直径10mmの打ち抜き部分を有するT字形状のパンチの上部に接着剤で固定した。パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの、複合積層板の第2面から第1面に向かう板厚方向の距離Hをゼロにした。すなわち、せん断加工を行う際に、パンチが複合積層板に接するのと実質的に同時に押え部材も複合積層板に接するようにした。ブリキ鋼板のヤング率に対するウレタンゴムのヤング率の比率は、0.025%であった。
パンチとダイとの間のクリアランスは、複合積層板の板厚の10%である0.1mmとした。パンチの刃先とホルダーとの板厚方向に対して垂直方向の間隔を3.0mmとし、押え部材とホルダーとの板厚方向に対して垂直方向の間隔を0.5mmとした。パンチ、ダイ、及びホルダーの材質は工具鋼であった。
参考例1ではパンチ速度を5mm/秒にして、実施例1~6ではパンチ速度をそれぞれ、10mm/秒、50mm/秒、100mm/秒、200mm/秒、400mm/秒、1000mm/秒にして、複合積層板のせん断加工によるΦ10mmの丸穴抜きを行った。
(実施例7)
金属層として、それぞれの板厚が0.4mm、線膨張係数ηfが11.7×10-6/℃、及びヤング率が200GPaのブリキ鋼板を2枚用意し、2枚のブリキ鋼板の間に、融点が160℃の熱圧着型変性ポリプロピレンの接着剤を介して、樹脂層として0.3mmの板厚、225℃の融点及び8×10-5/℃の線膨張係数ηfを有するポリアミド(PA6)を挟んだこと以外は、参考例1と同じ条件で複合積層板のせん断加工を行った。複合積層板が備える金属層の合計厚みに対する複合積層板が備える樹脂層の合計厚みの比率は0.375であった。
(比較例1)
押え部材を用いなかったこと以外は、実施例3と同じ条件で複合積層板のせん断加工を行った。
せん断加工面の端面近傍における金属層と樹脂層との間の剥離有無の観察結果を表1に示す。
Figure 0007028033000001
10 被加工材
100 複合積層板
101 複合積層板材の第1面
102 複合積層板の第2面
11 抜き材
12 加工材
14 だれ
14’ だれ
15 せん断面
15’ せん断面
16 破断面
17 バリ
17’ バリ
18a パンチ側表面
18b ダイ側表面
19 せん断加工面
20 パンチ
20a 被加工材または複合積層板の板厚方向
21 パンチの上部
22 押え部材
221 樹脂
222 比較的ヤング率が大きい材料、ばね、またはダンパー
223 傾斜部
30 ホルダー
31 弾性部材
40 ダイ
50 金属層
60 接着層
70 樹脂層
80 内板
H パンチの先端部の位置から押え部材の先端部の位置までの距離

Claims (4)

  1. 第1面及びその反対側の第2面を有する複合積層板を、前記第2面がダイ側に配置されるように、前記ダイ上に配置し、前記複合積層板の前記第1面から前記第2面に向かって前記複合積層板の板厚方向に、前記第1面側に配置されたパンチでせん断加工を行うせん断加工方法であって、
    前記複合積層板は、接着層を介して樹脂層を金属層で挟んだ構造を含み、
    前記パンチは、前記パンチの側面に接するように前記パンチの上部に固定された押え部材を備え、
    前記押え部材のヤング率が、前記複合積層板の金属層のヤング率よりも小さく、
    前記パンチで前記複合積層板をせん断加工し、前記せん断加工に伴う発熱によりせん断加工面における前記接着を溶融させること、及び
    少なくとも前記接着が溶融している際に、前記押え部材を前記複合積層板に押しつけること、
    を含む、せん断加工方法。
  2. 前記パンチのパンチ速度は、10mm/秒以上4000mm/秒未満である、請求項1に記載のせん断加工方法。
  3. 前記複合積層板が備える金属層の合計厚みに対する前記複合積層板が備える樹脂層の合計厚みの比率が1.00より大きい、請求項1または2に記載のせん断加工方法。
  4. 前記複合積層板の全体の板厚は0.8mm以上であり、
    前記接着層は、100℃以上225℃以下の融点を有し、
    前記樹脂層は、前記接着層の融点よりも高い融点を有し、
    前記金属層の線膨張係数ηfに対する前記樹脂層の線膨張係数ηpの比率ηp/ηfが3以上である、
    請求項1~3のいずれか一項に記載のせん断加工方法。
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