以下、本発明をその実施の形態を示す図面に基づき具体的に説明する。図1及び図2は、本発明の透磁率センサの構成を示す斜視図及び断面図である。
図1及び図2において、10は扁平矩形状の基板である。基板10の一端部の一面(上面)には第1コイル1が形成されている。また、基板10の一端部の他面(下面)には、第1コイル1と同軸をなして、第2コイル2が形成されている(図2参照)。これらの第1コイル1及び第2コイル2は、例えば、基板10への銅箔パターンの印刷により形成される。
基板10の他端部の上面には、他端から一部を突出させてコネクタ3が実装されている。基板10の中央部の上面には、後述する各種の処理を行うマイクロコンピュータからなる電子チップ4が実装されている。さらに、電子チップ4の近傍には、回路部品5が実装されている。回路部品5は、第1コイル1又は第2コイル2と発振回路を構成するためのコンデンサなどを含んでいる。本発明の透磁率センサ20は、以上のような構成をなす。
図3は、本発明の透磁率センサ20の現像ユニットへの取り付け例を示す断面図である。図3において30は、現像ユニットの内外を仕切る隔壁である。隔壁30には、凹部31が形成されており、この凹部31に嵌め込まれるように、ケース21に収納された状態で透磁率センサ20が現像ユニットに取り付けられる。なお、コネクタ3の先端部はケース21から突出している。
この際、図1及び図2に示した基板10の下面側が隔壁30側になるように、透磁率センサ20が現像ユニットの隔壁30に取り付けられる。よって、第2コイル2が第1コイル1よりも、現像ユニット内に近い位置、言い換えると現像ユニット内の現像剤に近い位置に配されることになる。透磁率センサ20が取り付けられた凹部31は、シール32にて封止されている。
図4は、本発明の透磁率センサ20の機能構成を示すブロック図である。図4において、図1及び図2と同一又は同様な部分には同一の符号を付している。
第1コイル1と回路部品5の一部とにより、第1発振回路6が構成されており、第2コイル2と回路部品5の一部とにより、第2発振回路7が構成されている。本発明の透磁率センサ20にあっては、第1発振回路6と第2発振回路7とにおいて、第1コイル1及び第2コイル2を除く他の構成部材は共通としている。よって、第1発振回路6及び第2発振回路7夫々で計測される発振パルス数は、異なる構成部材による特性のばらつきの影響を受けず、正確な値が計測される。よって、透磁率の検出精度は高い。
また、電子チップ4は、記憶部41、初期設定部42、計測部43、調整部44、算出部45、及び変換部46を機能的に有している。記憶部41は感度に応じた発振パルス数の初期値を記憶する。初期設定部42は外部から入力される選択信号に基づいて感度を選択し、選択した感度に対応する初期値を記憶部41から読み出し、発振パルス数の計測時間の初期値(初期計測時間)として設定する。計測部43は、第1発振回路6及び第2発振回路7夫々における発振パルス数を計測する。調整部44は、計測部43での第1発振回路6における発振パルス数の計測時間(第1計測時間)及び第2発振回路7における発振パルス数の計測時間(第2計測時間)の少なくとも一方を調整する。算出部45は、計測部43で計測した発振パルス数の差分を算出する。変換部46は、算出部45にて算出した差分を透磁率に変換する。
図5は、本発明の透磁率センサ20の一構成例を示す回路図である。図5において、コイルL1及びコイルL2は夫々、前述した第1コイル1及び第2コイル2に該当する。また、マイクロコンピュータU1は、前述した電子チップ4に相当する。
コイルL1の一端は、マイクロコンピュータU1の第6端子に接続され、コイルL2の一端は、マイクロコンピュータU1の第3端子に接続されている。コイルL1の他端及びコイルL2の他端はコンデンサC1を介してトランジスタQ1のベースに接続されている。トランジスタQ1のベース、コレクタ間には抵抗R2が設けられ、トランジスタQ1のベース、エミッタ間にはコンデンサC2が設けられている。トランジスタQ1のコレクタは、マイクロコンピュータU1の第2端子に接続されているとともに、抵抗R3を介して接地されている。
マイクロコンピュータU1の第1端子には、電源電圧Vddの入力端子が接続されている。電源電圧Vddの入力端子は、抵抗R1を介してトランジスタQ1のエミッタに接続されている。抵抗R1とトランジスタQ1のエミッタとの間にはコンデンサC3の一端が接続され、コンデンサC3の他端は接地されている。電源電圧Vddの入力端子と前記第1端子との間にはコンデンサC6の一端が接続され、コンデンサC6の他端は接地されている。マイクロコンピュータU1の第8端子には、接地用の端子が接続されている。
マイクロコンピュータU1の第7端子には、抵抗R4を介して、透磁率に相当する検出電圧Voutを出力する出力端子が接続されている。該出力端子と抵抗R4との間にはコンデンサC7の一端が接続され、コンデンサC7の他端は接地されている。マイクロコンピュータU1の第5端子には、抵抗R6を介して、感度選択を行うための制御電圧Vrefを出力する出力端子が接続されている。マイクロコンピュータU1の第5端子と抵抗R6との間にはコンデンサC4の一端が接続され、コンデンサC4の他端は接地されている。
コイルL1、2個のコンデンサC2及びC3並びにトランジスタQ1にて、前述した第1発振回路6(コルピッツ発振回路)が構成され、コイルL2、2個のコンデンサC2及びC3並びにトランジスタQ1にて、前述した第2発振回路7(コルピッツ発振回路)が構成されている。そして、マイクロコンピュータU1の切り替え動作(マイクロコンピュータU1の第3端子及び第6端子で切り替え動作を行っている)により、第1発振回路6と第2発振回路7とが調整部44にて調整された夫々の計測時間ずつ交互に発振するようになっている。
次に、本発明の透磁率センサ20の測定動作について説明する。図6は、本発明の透磁率センサ20の測定動作を説明するためのタイミングチャートである。
調整部44にて調整された第1計測時間に亘って、第1発振回路6を発振させてその発振パルス数を計測部43にて計測する処理と、調整部44にて調整された第2計測時間に亘って、第2発振回路7を発振させてその発振パルス数を計測部43にて計測する処理とを交互に行う。この際、図6に示すように、第1発振回路6を発振させてその発振パルス数を計測する期間では第2発振回路7を発振させず、また、第2発振回路7を発振させてその発振パルス数を計測する期間では第1発振回路6を発振させない。よって、互いに発振の影響を受けることなく、発振パルス数を計測するので、その計測値は精度が高い。
所定時間(第1計測時間及び第2計測時間)ずつの発振パルス数の計測を終了すると、第1発振回路6における(第1コイル1に由来する)計測された発振パルス数と、第2発振回路7における(第2コイル2に由来する)計測された発振パルス数との差分を、算出部45にて算出する。そして、変換部46により、算出した差分を透磁率に変換し、透磁率の変化量を求める。具体的には、選択された感度に対応する透磁率の検出範囲の中央値を0に設定し、この中央値に対応する差分と比べた算出差分の多少に基づいて中央値からの変化量を求める。現像ユニットに取り付けられた透磁率センサ(トナーセンサ)20では、トナーの濃度を検出する。
また、第1発振回路6を発振させて、その発振パルス数を計測する期間では、それ以前の第1発振回路6と第2発振回路7の計測値(例えばA′とB′)の差分を、算出部45にて算出し、変換部46により、算出した差分を透磁率に変換し、透磁率の変化量を求めるので、各発振回路の発振パルス数の計測開始のタイミングで透磁率の変化量の更新が順次行われる。
以下、上述したような手順により、透磁率を検出できる(トナー濃度を検出できる)原理を説明する。
被検出物の透磁率が大きくなった場合、被検出物の近傍に配されたコイルのインダクタンスは、この透磁率の変動に応じて増加する。この結果、そのコイルを含む発振回路の発振パルス数は減少する。ここで、被検出物からの距離を異ならせて2個のコイルを配置している場合、何れのコイルもインダクタンスが増加して、何れの発振回路も発振パルス数は減少する。但し、被検出物に近い方のコイルは、遠い方のコイルに比べて、透磁率の変化の影響を強く受けるので、上記の場合、インダクタンスの増加量が大きくなり、発振パルス数の減少量も大きくなる。よって、2個のコイル夫々を含む2つの発振回路における発振パルス数には、透磁率の変化の程度に応じた分の差異が生じることになる。このように、両発振パルス数の差分と透磁率との間には相関関係が存在するので、本発明では、両発振回路の発振パルス数の差分に基づいて被検出物の透磁率を検出することが可能である。
前述した実施の形態における透磁率センサ20では、第1コイル1が上記の被検出物に遠い方のコイルに該当し、第2コイル2が上記の被検出物に近い方のコイルに該当する。本発明においては被検出物に近い方のコイルを検知コイル、遠い方のコイルを基準コイルとする。
現像ユニット内の現像剤は、トナーと磁性体(鉄粉)とを混合させたものである。複写の際には、用紙にトナーが付着されて磁性体はほとんど付着されない。よって、複写処理が進むにつれて、トナーの量は減少していくが磁性体の量はほとんど変化しないので、現像剤の透磁率は増加する。よって、現像ユニット内の透磁率とトナーの濃度とには、反比例的な相関関係が存在する。本発明では、上述したように被検出物(現像剤)の透磁率を検出できるので、検出した現像ユニット内の現像剤の透磁率に基づきトナーの濃度を検出できる。
次に、本実施の形態における透磁率センサ20の感度の設定について、説明する。ここでは、予め感度の異なる3つのモードを用意し、動作に1つのモードを選択する。3つモードは感度が高い順に、高感度モード、中感度モード、低感度モードという。以降、高感度モードを単に高感度、中感度モードを単に中感度、低感度モードを単に低感度ともいう。
図7はモード毎の検出トナー濃度と出力電圧との関係例を示すグラフである。図7において、横軸はトナー濃度で、単位は重量%(wt%)である。縦軸は出力電圧で、単位はボルト(V)である。グラフ71は高感度のグラフ例を示す。グラフ72は中感度のグラフ例を示す。グラフ73は低感度のグラフ例を示す。各モードにおいて、検出範囲の中央値において、出力電圧を2.5Vとする。中央値の前後で、それぞれ出力電圧を2V、3Vとする濃度を定めることで、検出濃度に対する出力電圧の変化量が決まるので、感度が設定できる。検出濃度の変化に対する出力電圧の変化量をあげるためには、発振パルス数を計測する時間を長くする。
図7に示す感度の設定では、高感度モード、中感度モード、低感度モードの各モードにおける中央値は異なるようにしているが、それに限らない。全てのモードにおいて、中央値を一致させてもよい。任意の2つのモードで中央値を一致させてもよい。さらにまた、複数のモード間で検出範囲に重なりがあってもよいし、重なりがなくてもよい。
感度の設定にあたっては、トナー濃度に対応する透磁率を有する磁性板(基準磁性板)を用意する。図7に示す値を用いて説明すると、高感度の設定用として、濃度の低い方から、濃度Hb、濃度Hc、濃度Htに対応する透磁率を持った磁性板をそれぞれ計3枚用意する。中感度用として、濃度Mb、濃度Mc、濃度Mtに対応する透磁率を持った磁性板を用意する。低感度用として、濃度Lb、濃度Lc、濃度Ltに対応する透磁率を持った磁性板を用意する。計9枚用意した磁性板を透磁率センサ20で計測し、計測時間を決定する。決定した感度毎の計測時間は、電子チップ4に記憶する。
続いて、動作時の感度選択方法について説明する。感度の選択は、外部の機器から、マイクロコンピュータU1の第5端子に入力されるVref(選択信号)を用いて行う。図8は感度選択方法を示すチャート図である。図8の上から、低感度を選択する場合、中感度を選択する場合、高感度を選択する場合を示している。図8はVrefの波形を示している。縦軸はVrefに与える電圧を示している。横軸は経過時間を示している。Vrefを1秒間、Hレベル(5V)にすると、マイクロコンピュータU1は初期設定モードに移行する。その次の1秒間で、Vrefの電圧により、感度の指定を行う。Vrefを0Vに保つと、低感度で動作する。Vrefを2.5Vに保つと、中感度で動作する。Vrefをオープン状態(ハイインピーダンス)に保つと、中感度で動作するようにしてもよい。Vrefを5Vに保つと、高感度で動作する。図8に示す例では、感度選択後の1秒間で、中央値を設定する。Vrefに入力した電圧が、検出範囲の中央値の出力電圧となる。感度は3段階としたが、それに限らない。感度を指定するためのVrefの値を増やすことにより、4段階以上としてもよい。また、感度指定をマイクロコンピュータU1の1つの端子ではなく、2つ以上の端子で行えるようにしてもよい。
さらに、調整部44における第1計測時間及び第2計測時間の少なくとも一方の調整処理について説明する。
被検出物に近い第1コイル1と被検出物から遠い第2コイル2とでは使用環境が異なるため、透磁率センサの検出特性は、温度変動の影響を受け易い。また、第1コイル1及び第2コイル2は、前述したように、基板10への銅箔パターンの印刷により形成されるため、形成条件の違いに起因する第1コイル1及び第2コイル2の特性の差異は避けられない。
本実施の形態における透磁率センサ20は、このような課題を解決するために、第1計測時間及び第2計測時間の少なくとも一方の調整を行う。この調整処理は、透磁率センサ20の出荷時、又は透磁率センサ20を備えた複写機による複写時など、実際の透磁率検出処理が実行される前に行われる。所望の検出範囲の中央値の状況にあって、第1コイル1及び第2コイル2での1回の計測期間内のパルス数に差がないように、これらの計測時間の調整を行う。なお、この検出範囲の中央値の状況を作り出すためにトナーを準備するのは面倒であるため、同じ透磁率(上記中央値)を有する金属を使用する。このときの環境温度については常温とする。
現像剤に近い位置に配される第2コイル2は、磁性体(現像剤)の影響を大きく受けてインダクタンスは大きくなる。一方、現像剤から遠い位置に配される第1コイル1は、磁性体(現像剤)の影響をほとんど受けずにインダクタンスもあまり大きくならない。発振周波数はインダクタンスにほぼ反比例するため、第2発振回路7の発振パルス数は第1発振回路6の発振パルス数より少なくなる。そこで、このような磁性体(現像剤)の影響の大小による差を補償する分だけ、第2計測時間が第1計測時間より相対的に長くなるような調整を行っている。具体的には第1発振回路6の発振パルス数と、第2発振回路7の発振パルス数が同じになるように計測時間を調整する。
このような第2計測時間が第1計測時間より相対的に長くなる調整を行う場合、第2計測時間は変更せずに第1計測時間を短くする調整、第1計測時間は変更せずに第2計測時間を長くする調整、第1計測時間を短くして第2計測時間を長くする調整の何れであっても良い。
計測時間の調整は次のように行う。計測にあたってはまず、夫々の計測時間(初期計測時間t0という)は同じとし、第1発振回路6による発振パルス数の計測と第2発振回路7による発振パルス数の計測を行った後、その差分を計測し差分が無くなるようにどちらか一方の計測時間を調整する。この場合、1回の計測時間の調整で同じ発振パルス数にならない場合がありその場合には以下のように調整する。具体的には、調整された計測時間で再度第1発振回路6による発振パルス数と、第2発振回路7による発振パルス数を計測し、発振パルス数の差分を計算し、差分が無くなるようにどちらか一方の計測時間を調整する。最終的には、第1発振回路6による発振パルス数と第2発振回路7による発振パルス数の差が最も小さい状態を初期値と設定し(検出範囲の中央値と設定し)、実際の計測を行っても良い。この補正は後述のステップ2(補正処理)に該当している。
以上の計測時間調整の全体について、フローチャートを用いて、説明する。図9は計測時間調整処理の処理手順例を示すフローチャートである。電子チップ4は、感度の設定を行う(ステップS1)。初期設定部42は制御電圧Vrefの値から対応する感度を決定し、決定した感度に対する初期計測時間を記憶部41から読み出す。電子チップ4の調整部44は初期補正処理を行う(ステップS2)。初期補正処理は主として電子チップ4のクロックの誤差を補正することを目的とする処理である。調整部44は補正処理を行う(ステップS3)。補正処理は主として検出範囲の中央値と想定する環境で第1発振回路6と第2発振回路7との計測パルス数の差分を最小値(0を含む)にすることを目的とする処理である。調整部44は強制補正処理を行う(ステップS4)。強制補正処理は主として検出範囲の中央値と想定する環境で第1発振回路6と第2発振回路7との計測パルス数の差分を強制的に0にする処理である。強制補正処理は補正処理にて得られた差分の最小値を強制的に0とする処理であり、補正処理にて差分が最小値となったことを確認する意味を含む処理である。調整部44は計測時間調整処理を終了する。
その後、図6に示す手順にて透磁率の測定を繰り返し行う(ステップS5)。
図10は初期補正処理の処理手順例を示すフローチャートである。第1発振回路6を構成するコイルを基準コイル、第2発振回路7を構成するコイルを検知コイルとし、また第1発振回路6を基準発振回路、第2発振回路7を検知発振回路とする。調整部44は初期計測時間(t0)で第1発振回路6の発振パルス数を、計測部43で計測する(ステップS11)。調整部44は算出部45により計測したパルス数と所定値との差分を算出する(ステップS12)。所定値に基づき、第1発振回路6の発振パルス数が所定値となるように、第1発振回路6の計測時間を補正する(ステップS13)。調整部44は初期補正処理を終了し、処理を呼び出し元に戻す。補正後の計測時間は例えば、t0+αとする。ステップ13で初期補正は完了する。なお、ステップS13の後に、計測時間t0+αで、計測部43により第1発振回路6の発振パルス数を計測し、計測した発振パルス数が所定値となる否かを確認する処理を行う。計測時間t0+αで、第1発振回路6の発振パルス数を計測する(ステップS14)。調整部44は発振パルス数が所定値となったか否かを判定する(ステップS15)。調整部44は発振パルス数が所定値となっていないと判定した場合(ステップS15でNO)、処理をステップS12に戻す。調整部44は発振パルス数が所定値となっていると判定した場合(ステップS15でYES)、処理を終了し呼び出し元に戻す。なお、発振パルス数が所定値とならない場合やαが収束しない場合は、発振パルス数と所定値の差分が最も小さくなる値をαに設定する。なお、処理を簡略化するため、ステップS14、S15の処理を省略してもよい。
例えば、第1発振回路6が10MHzで発振する設計とする。そして、発振パルス数を3万回、計測するものとする。この場合、初期計測時間t0を3msとする。計測部43で3ms間、第1発振回路6の発振パルス数を計測する。計測した発振パルス数が3万を下回る場合は下回るパルス数の分、計測時間を長くする。すなわち、αを正の値とする。計測した発振パルス数が3万を上回る場合は上回るパルス数の分、計測時間を短くする。すなわち、αを負の値とする。計測した発振パルス数が3万となった場合は、αを0とする。
図11は補正処理の処理手順例を示すフローチャートである。補正処理は検出範囲の中心と透磁率を計測されるような環境で行う。すなわち、感度に応じた磁性板(基準磁性板)を用いる。調整部44は初期補正処理で求めた計測時間t0+αで、計測部43により第1発振回路6の発振パルス数を計測する(ステップS21)。調整部44は計測した第1発振回路6の発振パルス数を記憶する(ステップS22)。調整部44は初期補正処理で求めた計測時間t0+αで、計測部43により第2発振回路7の発振パルス数を計測する(ステップS23)。調整部44は算出部45により計測した第2発振回路7の発振パルス数と記憶した第1発振回路6の発振パルス数との差分を算出する(ステップS24)。調整部44は補正処理を終了し、処理を呼び出し元に戻す。差分が0となるように、第2発振回路7の計測時間を補正する(ステップS25)。調整部44は補正後の計測時間は例えば、t0+α+βとする。第2発振回路7のパルス数が第1発振回路6の発振パルス数よりも小さい場合は、βを正の値とする。第2発振回路7のパルス数が第1発振回路6の発振パルス数よりも大きい場合は、βを負の値とする。第2発振回路7のパルス数が第1発振回路6の発振パルス数と等しい場合は、βは0とする。ステップS25の後に、計測時間t0+αで第1発振回路6の発振パルス数を計測し、計測時間t0+α+βで第2発振回路7のパルス数を計測し、両パルス数が等しいか否かを確認する処理を行ってもよい。等しくない場合には、再度、βを設定し直す。βが収束しない場合は、発振パルス数と所定値の差分が最も小さくなる値とする。具体的にはステップS25の後に、調整部44は計測した第1発振回路6の発振パルス数と第2発振回路7のパルス数とが一致するかを判定する。調整部44は両パルス数が一致すると判定した場合、補正処理を終了する。調整部44は両パルス数が一致しないと判定した場合、S21へ戻り、ステップS21以降を繰り返す工程となる。この際の計測時間は第1発振回路6ではt0+αであり(ステップS21)、第2発振回路7ではt0+α+βとする(ステップS23)。同様の要領で第2発振回路7の時間を補正しながら発振パルス数が同じになるように補正する。また、第2発振回路7の計測時間を補正するのではなく、第1発振回路6の計測時間を補正してもよい。
図12は強制補正処理の処理手順例を示すフローチャートである。強制補正処理は補正処理にて設定した計測時間での発振パルス数も差分を最終確認し差分を強制的に0とする処理である。強制補正処理も補正処理と同様に基準磁性板を用い検出範囲の中心となる透磁率が計測されるような環境で行う。調整部44はt0+αで、計測部43により第1発振回路6の発振パルス数を計測する(ステップS31)。調整部44は計測した第1発振回路6の発振パルス数を記憶する(ステップS32)。調整部44はt0+α+βで、計測部43により第2発振回路7の発振パルス数を計測する(ステップS33)。調整部44は計測した第2発振回路7の発振パルス数を記憶する(ステップS34)。調整部44は算出部45により、第1発振回路6の発振パルス数と第2発振回路7の発振パルス数との差分を算出する(ステップS35)。その後差分を強制的に0とする。この処理により基準磁性板で計測した値を透磁率の中央値と設定することとなる(ステップS36)。この工程は後述のS52からS57を示している。
透磁率の補正処理の一連の流れ(補正後から強制補正)について、フローチャートを用いて、説明する。図13は透磁率補正処理の補正後から強制補正の処理手順例を示すフローチャートである。調整部44は第1発振回路6の計測時間(第1計測時間t1)をt0+αとする。調整部44は第2発振回路7の計測時間(第2計測時間t2)をt0+α+βとする(ステップS51)。計測部43は第1計測時間t1で第1発振回路6の発振パルス数を計測する(ステップS52)。計測部43は計測した第1発振回路6の発振パルス数を記憶する(ステップS53)。計測部43は第2計測時間t2で第2発振回路7の発振パルス数を計測する(ステップS54)。計測部43は計測した第2発振回路7の発振パルス数を記憶する(ステップS55)。調整部44は強制補正処理で求めた差分(強制差分)で、第1発振回路6の発振パルス数又は第2発振回路7の発振パルス数を補正する。強制補正処理で、第1発振回路6の発振パルス数が第2発振回路7の発振パルス数より大きかった場合、第2発振回路7の発振パルス数の値に強制差分を足す。第1発振回路6の発振パルス数が第2発振回路7の発振パルス数より小さかった場合、第2発振回路7の発振パルス数の値に強制差分を引く(差分を強制的に0とする)ことで補正は完了する(ステップS56、S57)。この処理により、基準磁性板での計測値が透磁率の中央値として設定される。
上述したような調整を行っておくことにより、温度変動による検出出力の変動を抑えることができる。また、上述したような形成時における第1コイル1及び第2コイル2の特性の差異分などの補償も結果的に行えていることになる。したがって、本発明の透磁率センサ20では、温度変動の影響を抑制して高精度に現像剤の透磁率を検出することができ、トナーの正確な濃度を得ることが可能である。
なおステップS1の初期補正、ステップS3の強制補正は必須ではなく、要求される仕様に応じて適宜組み合わせても良い。
初期補正を行ったのちに補正及び強制補正を行う場合には、基準コイル(本明細書では第1コイル1)の計測時間を一定とし検知コイル(本明細書では第2コイル2)の計測時間を調整するのが望ましい。
本実施の形態においては、次の効果を奏する。予め複数の感度を用意し動作時に選択可能とした。それにより、使用されるトナーの種類によって、トナー濃度の制御範囲が変わる場合であっても、感度を変更することにより対応可能となる。なお、感度は3つとしたが、それに限らない。2つでもよいし、4つ以上でもよい。
また近年は、電子写真方式によっては高画質を得るためにトナー自体の粒径も小さくなる傾向にある。また、不要なトナーの量を極力減らして低コスト、軽量化の傾向にあり、結果として検出できる透磁率の変化が小さくなる傾向にある。小さくなった透磁率の変化を正確に検知するためには小さい透磁率の変化を大きくするために増幅等の方法で計測感度を大きくする必要がある。この場合、透磁率の変化に直線性がなくなり、正確な透磁率の計測ができないことがある。本発明によれば、線形補正等のソフトウェアを利用した方法を用いることにより、悪くなった直線性を改善することが可能になり、透磁率の変化を正確に把握できることが可能になる。
なお、図5には一例として端子を8個有するマイクロコンピュータを記載したが、この構成に限定されるものではない。必要な場合には異なる端子数のマイクロコンピュータを使用し透磁率の変化などの情報をシリアル通信などの手段で、上位の制御側に伝達し、また上位側からの制御信号を受けることも可能である。
上述した実施の形態では、同軸状に基板10に配した2個のコイル(第1コイル1及び第2コイル2)のインダクタンスの変化を、マイクロコンピュータ(電子チップ4)に内蔵された発振器の正確なクロック信号で駆動される2つの発振回路(第1発振回路6及び第2発振回路7)における発振パルス数の差分として検出し、その差分(発振パルス数の変化量)をマイクロコンピュータにて演算処理して透磁率の変化を検出している。ここで、2個のコイル夫々を交互に発振回路に接続させて、夫々所定時間に亘って交互にマイクロコンピュータにて発振パルス数を計測し、その差分を算出して透磁率の変化を検出している。
本実施の形態では、第1コイル1及び第2コイル2を基板10の上下面に同軸状に配しているので、コイルの配置に必要な面積を低減でき、水平方向での狭小化を図れる。また、基板10に導体パターンを印刷してコイルを形成するようにしたので、高さ方向における低背化を図れる。さらに、マイクロコンピュータを用いて各種の処理を行うようにしたので、部品点数を低減できて、回路部品を実装する面積は少なくて済む。以上のことから、透磁率センサの大幅な小型化を実現できる。
2つの発振回路における発振パルス数の計測を交互に行うようにしているので、一方のコイルを含む発振回路の計測が他方のコイルで発生する磁束(他方のコイルでのインダクタンス変化)の影響を受けないため、正確な発振パルス数を計測することができ、この結果、高い精度にて透磁率を検出することが可能である。
本実施の形態では、2つの発振回路を構成するトランジスタとコンデンサを共通とし、コイルを発振回路それぞれに配置したので、部品の数を少なくすることができて、コストダウンが図れる。又部品数が少ないため部品特性のばらつきを低減でき、さらに温度変化、ノイズといった外乱の影響を受け難く、正確な計測が可能となる。
マイクロコンピュータを用いてソフトウェアにより種々の処理を行うようにしたので、ハードウェアとしての回路部品の点数を減少できて、回路部品における特性のばらつきの影響を受けることが少なくなる。また、ソフトウェアにて処理するので、環境(温度、湿度など)の影響を受けにくくなる。よって、検出される透磁率の精度を高めることができる。
また、設定されるトナーの濃度が異なる場合にあっても、ソフトウェアの内容を変更するのみで簡単に対応できる。よって、トナー濃度の異なる設定値毎の管理が不要であるため、大量生産が容易となって、低コスト化を図ることができる。
次に、本実施の形態と従来例との特性(トナー濃度の検出)の比較について説明する。本実施の形態の透磁率センサ(トナーセンサ)は、前述した図1及び図2に示した構成を有し、前述した図3に示すように現像ユニットに取り付けられている。
図14は、従来例の透磁率センサの現像ユニットへの取り付け例を示す断面図である。図14において、図3と同一又は同様な部分には同一番号を付している。
基板10の一端部の上面側には差動トランス51が設けられている。差動トランス51は、交流の発振信号が印加される駆動コイル、並びに駆動コイルに結合した差動コイル(基準コイル及び検知コイル)から構成されている。隔壁30には、差動トランス51に対向する位置に孔33が形成されており、孔33から差動トランス51の一部(検知コイル側)が突出し、検知コイルが現像ユニット内の現像剤に直接触れるようになっている。基板10の他端部の下面には、他端から一部を突出させてコネクタ3が形成されており、基板10の中央部の下面には、各種の回路部品5が実装されている。このような構成をなす透磁率センサが、ケース21に収納された状態で隔壁30の凹部31に取り付けられている。
従来例の透磁率センサでは、差動トランス51が突出しているため、隔壁30に孔33を形成しておく必要があり、現像剤が漏れる虞がある。また、従来例の透磁率センサは、本発明例と比べて構成が大型である。
図15は、本実施の形態と従来例とにおけるトナー濃度の検出感度特性を示すグラフである。図15において、横軸はトナー濃度を表し、縦軸は透磁率の検出結果としての出力電圧を表している。また、図15中の(a)、(b)は夫々、本実施の形態、従来例の特性を示している。
本実施の形態と従来例とを比較した場合、本実施の形態では、トナー濃度の変化に対して出力電圧がリニアに変動していく部分が従来例に比べて広くなっている。よって、本実施の形態の検出精度は、従来例の検出精度より優れていることが分かる。
図16は、本実施の形態と従来例とにおけるオフセット制御を行うための制御電圧特性を示すグラフである。図16において、横軸は印加する制御電圧を表し、縦軸は出力電圧を表している。また、図16中の(a)、(b)は夫々、本実施の形態、従来例の特性を示している。
本実施の形態と従来例とを比較した場合、従来例では制御電圧の変化に対して出力電圧が一部でしかリニアに変動していないのに対して、本実施の形態では、制御電圧の変化に対して出力電圧が全体に亘ってリニアに変動している。よって、本実施の形態におけるオフセット制御の精度は、従来例の精度より優れていることが分かる。
ところで、上述した実施の形態では、ケース21内に収納した状態で透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けることとしたが、本実施の形態では現像剤が漏れる虞がないため、ケース21は必ずしも設けなくて良い。このような場合には、基板10の複数箇所に切欠きを形成し、この切欠きに現像ユニットの爪を引っ掛けて透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けるか、又は、両面テープにより基板10及び隔壁30を接着させて透磁率センサ20を現像ユニットに取り付けるようにすれば良い。
上述した実施の形態では、基板10の上面及び下面に夫々導体パターンを印刷して、第1コイル1及び第2コイル2を同軸状に形成するようにしたが、第1コイル1及び第2コイル2の形成手法は、これに限らず、他の手法であっても良い。以下、これらの他の手法について変形例として説明する。
(第1変形例)
図17は、第1変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。図17において、図1及び図2と同一又は同様な部材には同一番号を付している。第1変形例では、基板10の下面に、例えば銅箔のパターン印刷により、第1コイル1と第2コイル2とを、絶縁層を挟んで同軸状に積層させて形成している。また、基板10の上面には、コイルは形成されておらず、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。第1コイル1及び第2コイル2は、電子チップ4及び回路部品5の実装位置の直下に形成されている。よって、透磁率センサの構成の更なる小型化を図ることができる。
(第2変形例)
図18は、第2変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。図18において、図1及び図2と同一又は同様な部材には同一番号を付している。第2変形例では、基板10の一端部の下面に、別部品の空心コイルを実装して第2コイル2を形成し、基板10の一端部の上面に、第2コイル2と同軸をなして、別部品の空心コイルを実装して第1コイル1を形成している。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。
(第3変形例)
図19は、第3変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。図19において、図1及び図2と同一又は同様な部材には同一番号を付している。第3変形例では、基板10の一端部の上面に、別部品の2個の空心コイルを積層実装して第1コイル1及び第2コイル2を形成している。2個の空心コイルは基板上に第2コイル2、第1コイル1の順に積層する。第2コイル2と第1コイル1との間には絶縁層を設ける。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。なお、図19に示す構成とは異なり、基板10の下面に、上記のような2個の空心コイルの積層構成をなす第1コイル1及び第2コイル2を形成するようにしても良い。
(第4変形例)
図20は、第4変形例における透磁率センサの構成を示す断面図である。図20において、図1及び図2と同一又は同様な部材には同一番号を付している。第4変形例では、基板10の一端部の下面に、複数のチップコイルを実装して第2コイル2を形成し、基板10の一端部の上面に、第2コイル2と同軸をなして、複数のチップコイルを実装して第1コイル1を形成している。基板10の上面の残りの領域には、上述した実施の形態と同様な電子チップ4、回路部品5及びコネクタ3が実装されている。
上述の実施の形態においては、第1コイル及び第2コイルを静電シールドで覆ってもよい。上述の実施の形態に記載のコイルは空芯コイルを使用しており、コイル近傍に誘電率の近いものがあると静電容量の変化により計測値がばらつく場合がある。このような場合にはコイルを銅等からなるシールド部材で覆うことで、外部からの影響を抑えることができる。但し、本発明の透磁率センサの場合には、透磁率の変化、即ち、磁力線の変化によりシールド部材に渦電流が発生し、この渦電流により透磁率センサに計測誤差が生じることが考えられる。よって、渦電流への対策を考慮したシールド部材を設けることが必要である。
図21A-Cは、本実施の形態の透磁率センサに適したシールド部材の構成を示す平面図である。図21Aに示す例では、複数の櫛歯を同一方向に延設させた形状をなす銅製のシールド部材61を、基板10に形成したコイル60の上方に設けている。シールド部材61は接地している。また、図21Bに示す例では、複数の櫛歯を交互に逆方向きに延設させた形状をなす銅製のシールド部材62を、基板10に形成したコイル60の上方に設けている。シールド部材62は接地している。このような構成のシールド部材を設けることにより、渦電流を低減できる。
図21Cは、環状のシールド部材を示している。銅製のリングの一部を欠損してC字状にしたシールド部材63が、基板10に形成したコイル60の外周側に設けられている。シールド部材63は接地している。シールド部材63を設けることにより、渦電流を低減することが可能である。この図21Cの例では、コイル60と同一平面にシールド部材63を設けるため、透磁率センサの薄肉化を図れる、但し、図21A、Bに示すようなコイル60を上から覆う形態に比べて、シールド効果は小さい。
なお、上記のようなシールド部材は、基板10の両面側に設けても良く、現像ユニットとは反対側の面にのみ設けても良い。また、上述したようにシールド部材は接地することが好ましいが、接地していなくても効果は得られる。
なお、開示された実施の形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上述の説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。