JP7027692B2 - 粉末材料、立体造形用キット、粉末積層造形方法、及び粉末積層造形装置 - Google Patents
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Description
特許文献1には、高い充填率を達成する目的で、粉末材料の滑り性もしくは流動性を向上させるために、平均粒子径が1乃至100μmの略球状の粒子であって円形度が0.7以上の粉末積層用微小球体の表面の一部または全部を無機材料の凝集防止粒子で被覆した材料構成が開示されている。
本発明は、造形液と粉末材料との濡れ性を制御した粉末材料を提供することを目的とする。
粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方式で使用される粉末材料であって、前記粉末材料は、基材粒子と、粒径が前記基材粒子の1/8未満である有機物粒子とを含み、前記粉末材料は、前記粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnが、40°<θn<60°である粉末材料。
本発明の粉末材料の第1の形態は、
粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方式で使用される粉末材料であって、前記粉末材料は、基材粒子と、粒径が前記基材粒子の1/8未満である有機物粒子とを含み、前記粉末材料は、前記粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnが、40°<θn<60°である粉末材料。
本発明の粉末材料の第2の形態は、
粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方式で使用される粉末材料であって、前記粉末材料は、樹脂被膜を表面に有した基材粒子と、粒径が前記基材粒子の1/8未満である有機物粒子とを含み、前記粉末材料は、前記粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnが、40°<θn<60°である。
要するに、粉末材料に有機物粒子を含有させ、その含有量によって、粉末材料と造形液との濡れ性を制御することが特徴になっている。
本発明の粉末材料は、粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方式で使用される。前記粉末積層造形方式は、バインダージェット方式であることが好ましい。
図1、2は、粉末積層造形装置の一例の造形部の基本構成について説明する図である。
図1では、バインダージェット方式である粉末積層造形装置の、造形部の基本構成について説明する。前記粉末積層造形装置は、供給槽31、造形槽32、粉体搬送機構(リコーター1、ブレード2)、造形液塗布機構21を有している。供給槽31には粉末材料11が蓄積されており、粉体搬送機構(リコーター1、ブレード2)によって造形槽32に粉末材料11が供給される仕組みである。造形液塗布機構21は造形槽32の上を走査し、スライスデータから読み込んだ造形部23に造形液を塗布する。造形液22は、スライスデータの解像度に則り、格子を包含するように濡れ広がることを理想とする。
図3は、本発明における粉末材料11と造形液22との関係を示す図である。造形液22は水を主成分とし、溶剤や界面活性剤を添加することで粘度や表面張力を調整している。インクジェットヘッドで塗布できるように造形液の表面張力は20mN/mから40mN/mに調整されることが好ましく、そのため、造形液が濡れ広がりやすくなっている。したがって、所定の積層厚みで積層造形を行う際、深さ方向よりも平面方向の濡れ広がりが大きくなってしまう。理想的には図1で示したように、所定の解像度で形成される格子を最小面積で包含するように濡れ広がることが望ましい。
有機物粒子13の材質は、基材粒子または樹脂被覆基材粒子12の材質と比べて造形液22に対する接触角が高いものを選択する。そうすることにより、基材粒子または樹脂被覆基材粒子12の表面に有機物粒子13による凹凸が付与されるとともに、表面材質そのものの接触角が高いために、造形液22の濡れ広がりが抑制される。
図3Aには有機物粒子13の添加量が多い場合を、図3Bには有機物粒子13の添加量が少ない場合を図示している。添加量が多く、表面凹凸が多いほど、造形液22の平面方向への濡れ広がりが抑制される。
本発明に用いられる前記基材粒子としては、粒子の形態を有する限り特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
材料は大きく分けると無機材料と有機材料に分けることができ、積層造形用の粉末用材料としては例えば、金属(合金を含む)、セラミックス、ガラス、カーボン、ポリマー、木材、生体親和材料、磁性材料などが挙げられる。
前記ポリマーとしては、例えば、水に不溶な公知の樹脂などが挙げられる。
前記木材としては、例えば、ウッドチップ、セルロースなどが挙げられる。
前記生体親和材料としては、例えば、ポリ乳酸、リン酸カルシウムなどが挙げられる。
これらの材料は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記接触角θnが、40°<θn<60°であることにより、造形液の濡れ性が制御され、図1で示したように、所定の解像度で形成される格子を最小面積で包含するように濡れ広がせることができる。
上記接触角θnは、後述するように、基材粒子または樹脂被覆基材粒子に添加する有機物粒子の量を制御することにより、40°<θn<60°とすることができる。
図4Aおよび図4Bでは、本発明における粉末材料と造形液との接触角の測定方法について説明する。以下に述べる測定方法を本件発明における接触角の測定方法とする。
図4Aは接触角測定時の斜視図であり、図4Bは側面図である。例えば両面テープを貼ったスライドガラスのように、表面に接着成分が付着した平板に粉末材料11を塗る。接着成分に粉末材料が隙間なく埋め尽くされることで、表層が粉末材料11で覆われた平板が用意される。この平板に造形液を6μL滴下する。滴下直後から30秒後の造形液22の液滴端部と粉末材料11で覆われた平板とが形成する接触角25を粉末材料11と造形液22との接触角とした。接触角の測定は、23℃、35RH%で行った。
一例として、基材粒子の表面に樹脂被膜を被覆した材料に、有機物粒子を添加量を変えて添加した粉末材料の、接触角θnを求めた結果を図4C示す。有機物粒子の添加量の増加に伴い、接触角25が直線的に増加することがわかる。この結果は、粉末材料11の表面凹凸を有機物粒子で増やすことで造形液の濡れ性を制御できることを示している。
図5は、本発明における接触角25と造形時の濡れ広がりの関係を示す図である。図4Cでは深さ方向への浸透を除外した平面方向への濡れ広がりが、有機物粒子13の添加量による表面凹凸の制御によって変化したことを示した。ここでは、図4Cで説明した接触角25の数値が実際の造形時の濡れ広がりに対応することを示す。
造形時と同じ条件で粉末材料の搬送を行い、その上に所定の塗布量で造形液22を塗布した。粉末材料として、前記接触角25が異なる5種を用い、造形液22の塗布によって色の変わった造形部24を画処理によって二値で抽出し、面積から直径を算出した結果をグラフにプロットした(図5B)。図5Aに、前記接触角25が小さい方から順に、その色の変わった造形部の大きさを示す。その結果、有機物粒子の添加量を増やして粉末材料11と造形液22との接触角25の数値を高めるほど、造形液22の濡れ広がり径が小さくなることが明らかとなり、図4Aの方法により測定した接触角25が造形時の濡れ広がりの指標になることを示している。
有機物粒子の平均粒径rnは、以下の方法で算出することができる。有機物粒子の平均粒径rnは、公知の粒径測定装置、例えばマイクロトラックHRA(日機装製)、などを用いて、公知の方法に従って測定することができる。
真密度ρnは、材質に由来する。
図6~8で示す有機物粒子14は母材となる基材粒子12の平均粒径をrm、有機物粒子の平均粒径をrnとするとき、rn/rmは1/8未満である。1/8未満であれば、混入比率によって母材となる基材粒子12の隙間に有機物粒子が入り込むような形を取るため、基材粒子間の距離を拡げずに基材粒子を充填できる。有機物粒子は基材粒子表面に各々分散して付着していることが望ましい。有機物粒子が分散して付着していることにより、粉末表面の表面積が増大するため、接触角を向上させることができる。有機物粒子が基材粒子表面に凝集して付着した場合には、有機物粒子による表面積の増大効果が小さくなってしまうためである。有機物粒子の付着量および付着の様子は、顕微鏡等で容易に確認することができる。
[1]200mlの軟膏瓶に、イオン交換水を100ml、界面活性剤を含有した33%ドライウエル水溶液(商品名ドライウエル、富士写真フイルム株式会社製)を4.4ml添加し、その混合液に造形用粉末材料5gを加えて手振り30回でよく混ぜ、1時間以上静置する。
[2]手振り20回で攪拌後、超音波ホモジナイザー(商品名homogenizer、形式VCX750、CV33、SONICS&MATERIALS有限会社製)を用いて、出力30%にダイヤルを設定し、1分間超音波エネルギーを付与する。
超音波条件
振動時間:60秒連続
振幅:20W(30%)
振動開始温度:23±1.5℃。
[3]分散液をろ紙(商品名 定性ろ紙(No.2、110mm)、アドバンテック東洋株式会社製)で吸引ろ過し、外添剤分離ろ液を作成した。当該分離ろ液を粒度分布測定装置(日機装製、商品名:マイクロトラック3300EXII)により測定することにより、粉末材料表面上の外添剤の個数平均粒子径を測定し、1μm以上のアイランド状の膜を形成していないことを分散して付着している状態とした。
前記有機物粒子は、基材粒子と成る粉末材料に応じて適宜選択することができるが、取扱い性や環境負荷等の観点から、水溶性であることが好ましく、例えば、水溶性樹脂、水溶性プレポリマー、などが挙げられる。有機物粒子が水溶性であると、前記粉末材料を廃棄、リサイクルする際には、水処理により有機物粒子と基材を分離することも容易である。前記水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、セルロース樹脂、デンプン、ゼラチン、ビニル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレングリコール、などが挙げられる。これらは、前記水溶性を示す限りにおいて、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいし、ヘテロポリマー(共重合体)であってもよく、また、変性されていてもよいし、公知の官能基が導入されていてもよく、また塩の形態であってもよい。
よって、例えば、前記ポリビニルアルコール樹脂であれば、ポリビニルアルコールであってもよいし、アセトアセチル基、アセチル基、シリコーン等による変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセチル基変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコールなど)であってもよく、また、ブタンジオールビニルアルコール共重合体等であってもよい。また、前記ポリアクリル酸樹脂であれば、ポリアクリル酸であってもよいし、ポリアクリル酸ナトリウム等の塩であってもよい。前記セルロース樹脂であれば、例えば、セルロースであってもよいし、カルボキシメチルセルロース(CMC)等であってもよい。また、前記アクリル樹脂であれば、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸・無水マレイン酸共重合体などであってもよい。
前記水溶性プレポリマーとしては、例えば、止水剤等に含まれる接着性の水溶性イソシアネートプレポリマー、などが挙げられる。
有機物粒子の表面形状を変えることで、表面の凹凸性を高め、接触角を向上させることができる。
図6に示す有機物粒子14は、平滑な表面を有する球形粒子である。
図7で示す有機物粒子15は多孔質の球形粒子である。平滑な表面である場合に比べて比表面積が高くなり、接触角向上の効果を高めることができる。
図8で示す有機物粒子16は粒子表面に凹凸を有する球形粒子である。平滑な表面である場合に比べて比表面積が高くなり、接触角向上の効果を高めることができる。
図9~11で示す有機物粒子18は母材となる基材粒子12の平均粒径をrm、有機物粒子の平均粒径をrnとするとき、rn/rmは、1/8未満である。1/8未満であれば、混入比率によっては母材となる基材粒子12の隙間に有機物粒子が入り込むような形を取るため、基材粒子間の距離を拡げずに基材粒子を充填できる。有機物粒子は基材粒子表面に各々分散して付着していることが望ましい。有機物粒子が分散して付着していることにより、粉末表面の表面積が増大するため、接触角を向上させることができる。有機物粒子が基材粒子表面に凝集して付着した場合には、有機物粒子による表面積の増大効果が小さくなってしまうためである。有機物粒子の付着量および付着の様子は、顕微鏡等で容易に確認することができる。
有機物粒子18の樹脂成分としては、樹脂被膜17が水溶性樹脂の場合には造形液22には水を主成分とする造形液が使用されるため、非水溶性が望ましいが、樹脂被膜17に対して造形液22との接触角25が高い場合には、水溶性樹脂でも良い。
水溶性樹脂としては、例えば、ポリビニルアルコール樹脂、ポリアクリル酸樹脂、セルロース樹脂、デンプン、ゼラチン、ビニル樹脂、アミド樹脂、イミド樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレングリコール、などが挙げられる。これらは、前記水溶性を示す限りにおいて、ホモポリマー(単独重合体)であってもよいし、ヘテロポリマー(共重合体)であってもよく、また、変性されていてもよいし、公知の官能基が導入されていてもよく、また塩の形態であってもよい。
よって、例えば、前記ポリビニルアルコール樹脂であれば、ポリビニルアルコールであってもよいし、アセトアセチル基、アセチル基、シリコーン等による変性ポリビニルアルコール(アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、アセチル基変性ポリビニルアルコール、シリコーン変性ポリビニルアルコールなど)であってもよく、また、ブタンジオールビニルアルコール共重合体等であってもよい。また、前記ポリアクリル酸樹脂であれば、ポリアクリル酸であってもよいし、ポリアクリル酸ナトリウム等の塩であってもよい。前記セルロース樹脂であれば、例えば、セルロースであってもよいし、カルボキシメチルセルロース(CMC)等であってもよい。また、前記アクリル樹脂であれば、例えば、ポリアクリル酸、アクリル酸・無水マレイン酸共重合体などであってもよい。
前記被覆厚みが5nm以上500nm以下の範囲において、立体造形物の強度と焼結時の寸法精度が向上する。
前記基材粒子の表面に樹脂を被覆させる被覆方法としては、特に制限はなく、公知の被覆方法に従って被覆することができ、例えば、転動流動コーティング法、スプレードライ法、撹拌混合添加法、ディッピング法、ニーダーコート法などが挙げられる。これらの中でも、被覆膜を綺麗にコーティングできる点から、転動流動コーティング法が好ましい。
有機物粒子の表面形状を変えることで、表面の凹凸性を高め、接触角を向上させることができる。
図9に示す有機物粒子18は、平滑な表面を有する球形粒子である。
図10で示す有機物粒子19は多孔質の球形粒子である。平滑な平面である場合に比べて、樹脂被膜17による接触角向上の効果があり、有機物粒子19による比表面積の増加で接触角向上の効果が期待できる。
図11で示す有機物粒子20は粒子表面に凹凸を有する球形粒子である。平滑な表面である場合に比べて、樹脂被膜17による接触角向上の効果があり、有機物粒子20による比表面積の増加で接触角向上の効果が期待できる。
前記粉末材料が含み得る公知のその他の成分としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、流動化剤、フィラー、レベリング剤、焼結助剤、界面活性剤などが挙げられる。前記粉末材料が、前記流動化剤を含むと前記粉末材料による層等を容易にかつ効率よく形成し得る点で好ましく、前記フィラーを含むと得られる硬化物(立体造形物、焼結用硬化物)に空隙等が生じ難くなる点で好ましく、前記レベリング剤を含むと該粉末材料の濡れ性が向上し、ハンドリング等が容易になる点で好ましく、前記焼結助剤を含むと、得られた硬化物(立体造形物、焼結用硬化物)につき焼結処理を行う場合において、より低温での焼結が可能となる点で好ましい。
本発明の立体造形用キットは、本発明の前記粉末材料と、表面張力が20mN/n~40mN/nの造形液とを有する。
本発明の立体造形用キットは、各種の成形物、構造物の製造に好適に用いることができ、後述する本発明の立体造形物の製造方法、本発明の立体造形物の製造装置に特に好適に用いることができる。
前記造形液は、溶媒を含有し、さらに架橋剤を含有することが好ましく、更に必要に応じてその他の成分を含有してなる。
立体造形用キットに用いる造形液の表面張力は、20mN/n~40mN/nであることが好ましい。
造形液の表面張力は以下の方法で測定した。協和界面科学社製自動表面張力計DY-200型を用いて、温度制御(25℃)下で、Wilhelmy法(吊り板法)により行った。
前記溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、前記基材粒子が樹脂により被覆されている場合は、被覆する樹脂を溶解可能なものが好ましい。例えば、水、エタノール等のアルコール、エーテル、ケトンなどの水性媒体、脂肪族炭化水素、グリコールエーテル等のエーテル系溶剤、酢酸エチル等のエステル系溶剤、メチルエチルケトン等のケトン系溶剤、高級アルコールなどが挙げられる。これらの中でも、水が好ましい。前記水としては、例えば、イオン交換水、限外濾過水、逆浸透水、蒸留水等の純水、又は超純水などを用いることができる。前記造形液の溶媒として水を用いると、溶媒が乾燥しても、造形液の増粘が生じることが回避され、インクジェット方式に用いた場合にも吐出不良を生じることなく使用できることから好ましい。
前記粉末材料に前記造形液が付与されることで、前記造形液中の溶媒により前記粉末材料中の樹脂が溶解し、溶媒である水が乾燥することで基材粒子同士が接着し、立体造形物が形成される。その際、前記造形液中に架橋剤が含有されていると前記樹脂との架橋構造が形成され、立体造形物の強度が更に向上する。前記架橋剤は、樹脂の官能基と架橋反応するものであれば特に制限はないが、有機金属塩から目的に応じて適宜選択することが好ましい。
前記キレート剤としては、例えば、有機チタンキレート、有機ジルコニアキレートなどが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記その他の成分としては、例えば、流動性調整剤、界面活性剤、保存剤、防腐剤、安定化剤、pH調整剤、水溶性溶剤、湿潤剤などを含有することが可能である。
本発明の粉末積層造形方法は、粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方法であって、前記粉末材料および前記造形液として、本発明の立体造形用キットを用いる。
本発明の粉末積層造形装置は、粉末材料を供給する供給槽と、前記粉末材料を積層して粉末材料層を形成する造形槽とを有する粉末材料層形成手段と、形成された粉末材料層に造形液を塗布する造形液付与手段と、硬化・乾燥手段とを有する粉末積層造形装置であって、さらに、前記粉末材料と前記造形液との接触角を造形前に検知する手段と、粉末材料に有機物粒子を添加する手段とを有することが好ましい。
前記粉末材料と前記造形液との接触角を造形前に検知する手段は、前記粉末材料を供給槽に供給する前に設置されていることが好ましい。供給槽の前に配置されていることにより、造形中に造形の邪魔にならない。
そして、前記粉末材料に有機物粒子を添加する手段が、前記粉末材料と造形液との接触角を造形前に検知する手段で検知された接触角と所定の接触角設定値との差分から、予め登録された検量線に基づき有機物粒子を添加する手段であることが好ましい。
前記粉末材料と前記造形液との接触角を造形前に検知する手段で検知された接触角と所定の接触角設定値との差分から、予め登録された検量線に基づき有機物粒子を添加する手段を有することにより、複数回使用による有機物粒子の減少分を添加することで、粉体と造形液との接触角を制御し、造形物の精度を保つことができる。
前記所定の接触角設定値は、前記粉末材料と前記造形液の接触角θnが、40°<θn<60°とすることが好ましい。
また、前記粉末材料に有機物粒子を添加する手段が、前記粉末材料を蓄積しているタンク内で有機物粒子の添加・撹拌を行う手段であることが好ましい。前記タンク内の密閉空間での十分な撹拌により、粉末材料表面に均一に有機物粒子が付着し、接触角が制御できる。
図13では、本発明の粉末積層造形装置の初期動作をフローチャートについて説明する。複数回の造形を行うと、有機物粒子13の添加量が変化してしまう恐れがある。したがって、造形開始前に所定の接触角であるかを確認し、所定の接触角となっていない場合には、粉体のメンテナンスを行うことが好ましい。
まず、装置を起動した後、ヘッドクリーニングが実行される。その後、粉末材料と造形液との接触角を造形前に検知する手段である接触角検知部41に粉体を供給し、接触角を確認する。接触角が所定の角度であることを確認できた後、供給槽31に粉末材料11を堆積させる。接触角が所定の角度よりも小さいことを確認した場合には、予め登録されている検量線から現在の有機物粒子13の含有量を算出し、不足分の有機物粒子13を粉末材料貯蔵部内で添加、撹拌を行う。粉末材料貯蔵部3は密閉空間であるため、粉末材料11や有機物粒子13をこぼすことなく撹拌し、有機物粒子13を均一に付着させることができる。撹拌方法は、たとえば、回転羽による撹拌で、10000rpmで1分間回転、1分間静置を5回繰り返す手法で行う。
図14および15に示す接触角検知部41は、供給槽31の手前側(粉末材料を供給槽に供給する前)に設置される。接触角検知部41には、粉体接着部42、回転軸43および44、光源45、カメラ46が取り付けられている。粉体接着部42は、粉末材料11を表面に結着し、造形液との接触角を測定する測定部となる。メンテナンス毎に新たな接着部を設けるため、回転軸43および44が回転する。また、回転軸43および44は、測定時の平面性を確保するための作用も行う。光源45が光ることにより、カメラ46に図4で説明した液滴濡れ広がりを観察し、接触角を算出する。
検知部41の動作を横から見た図が図16である。粉末材料貯蔵部3から少量の粉末材料11を供給槽手前に供給する。その後、リコーター1が進行方向と反対方向に回転しながら粉体接着部42に粉末材料11を付着させる。リコーター1が初期位置に戻ると、造形液塗布機構21が粉体接着部42の上に配置し、造形液を測定位置に塗布する。造形液の塗布は、複数ノズルであってもよいし、単一ノズルであってもよい。測定に十分な液適量を塗布できればよく、6μL以下であればよい。塗布後から30秒後の接触角を測定し、測定値と所定の接触角値との差から追加で添加する有機物粒子13の量を算出する。
以下に示す、樹脂被覆基材粒子と外添剤とを混合・攪拌し、粉末材料を得た。
・樹脂被覆基材粒子の粒径:8 μm
・樹脂被覆基材粒子の組成:SUS316L(基材),ポリビニルアルコール(樹脂)
・外添剤の粒径:150 nm
・外添剤の組成:ポリアクリル
・外添剤の添加量:樹脂被覆基材粒子に対して0.25質量%
得られた粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnは、42°を示した。
得られた粉末材料について、有機物粒子の付着状態を、顕微鏡で確認したところ、樹脂被覆基材粒子の樹脂被膜表面に分散して付着していた。
実施例1において、外添剤の添加量を、樹脂被覆基材粒子に対して0.625質量%とした以外は、実施例1と同様にして、実施例2の粉体材料を得、造形液との接触角を測定した。
得られた粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnは、55°を示した。
得られた粉末材料について、有機物粒子の付着状態を、顕微鏡で確認したところ、樹脂被覆基材粒子の樹脂被膜表面に分散して付着していた。
実施例1において、外添剤の添加量を、樹脂被覆基材粒子に対して0.125質量%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例1の粉体材料を得、造形液との接触角を測定した。
得られた粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnは、34°を示した。
得られた粉末材料について、有機物粒子の付着状態を、顕微鏡で確認したところ、樹脂被覆基材粒子の樹脂被膜表面に分散して付着していた。
実施例1において、外添剤の添加量を、樹脂被覆基材粒子に対して1.0質量%とした以外は、実施例1と同様にして、比較例2の粉体材料を得、造形液との接触角を測定した。
得られた粉末材料と、表面張力が30mN/mの造形液との接触角θnは、72°を示した。
得られた粉末材料について、有機物粒子の付着状態を、顕微鏡で確認したところ、樹脂被覆基材粒子の樹脂被膜表面に分散して付着していた。
2 ブレード
3 粉末材料貯蔵部
11 粉末材料
12 基材粒子
13 有機物粒子
14、15、16、18、19、20 有機物粒子
17 樹脂被膜
21 造形液塗布機構
22 造形液
23 造形部
24 造形部
25 接触角
31 供給槽
32 造形槽
33 供給槽ステージ
34 造形槽ステージ
41 接触角検知部
42 粉体接着部
43、44 回転軸
45 光源
46 カメラ
Claims (8)
- 粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方式で使用される粉末材料であって、
前記粉末材料は、樹脂被膜を表面に有した基材粒子と、粒径が前記基材粒子の1/8未満である有機物粒子とを含み、
前記基材粒子は金属粒子であり、
前記樹脂皮膜は前記造形液に溶解するものであり、
前記有機物粒子は、前記基材粒子の樹脂被膜表面に付着しており、
前記有機物粒子は、前記樹脂被膜が水溶性樹脂の場合には非水溶性樹脂を含み、前記樹脂被膜が非水溶性樹脂の場合には水溶性樹脂を含み、
前記有機物粒子の含有量Wnが、前記基材粒子の質量をWm、平均粒径をrm、真密度をρm、前記有機物粒子の平均粒径をrn、真密度をρnとしたとき、下記(1)式を満たし、
- 前記樹脂被膜が水溶性樹脂であり、前記有機物粒子が非水溶性樹脂を含む請求項1に記載の粉末材料。
- 前記金属粒子がSUS粒子である請求項1又は2に記載の粉末材料。
- 前記樹脂被膜がポリビニルアルコールである請求項1~3のいずれかに記載の粉末材料。
- 前記有機物粒子がポリアクリルである請求項1~4のいずれかに記載の粉末材料。
- 前記有機物粒子の含有量が、樹脂被膜を有する基材粒子を100質量%としたときに、前記樹脂被膜を有する基材粒子に対して0.25質量%~0.625質量%である請求項1~5のいずれかに記載の粉末材料。
- 請求項1~6のいずれかに記載の粉末材料と、表面張力が20mN/m~40mN/mの造形液と、を有する立体造形用キット。
- 粉末材料を積層し、造形液を塗布する工程を繰り返すことで積層造形物を造形する粉末積層造形方法であって、前記粉末材料および造形液として、請求項7に記載の立体造形用キットを用いる粉末積層造形方法。
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