第1の発明は、誘導加熱により被加熱物を調理する誘導加熱調理器であって、被加熱物を収容する調理容器が載置されるトッププレートと、前記トッププレートに載置された前記調理容器を下方から加熱する加熱部と、前記トッププレート上の温度情報を上方から検知する温度センサと、前記温度センサが検知した前記温度情報を有線または無線にて受信する通信部と、前記通信部が受信した前記温度情報に基づいて、前記トッププレート上の温度状況を判断する温度状況判断部と、前記温度状況判断部が判断した結果に基づいて、前記調理容器からの内容物のふきこぼれが生じるおそれがあるかどうかを判定するふきこぼれ推定部と、を備え、前記温度状況判断部は、前記温度情報に基づいて、前記トッププレート上の領域を、第1の温度帯にある第1の領域と、前記第1の領域の周囲において前記第1の温度帯よりも低い第2の温度帯にある第2の領域と、前記第1の領域および前記第2の領域の外側において前記第2の温度帯よりも低い第3の温度帯にある第3の領域とに分割し、前記第2の領域における少なくとも1つの測定ポイントの温度変化を抽出し、前記ふきこぼれ推定部は、前記測定ポイントでの前記温度変化が所定の閾値を超える場合に、前記調理容器からのふきこぼれが生じるおそれがあると判定し、前記ふきこぼれ推定部によってふきこぼれが生じるおそれがあると判定された場合に、前記加熱部の出力を弱める、停止する、あるいは、報知するように制御する、誘導加熱調理器である。
このような構成によれば、トッププレート上の領域を温度帯に応じて少なくとも3つの領域に分割することにより、トッププレート上の温度状況をより正確に判断することができる。さらに第2の領域に測定ポイントを設けるとともに、測定ポイントの温度変化に基づいてふきこぼれを推定することにより、調理容器からのふきこぼれをより精度良く推定することができる。
第2の発明は、特に、第1の発明における前記温度センサは、前記トッププレート上の温度情報を斜め上方から検知するように配置されており、前記温度状況判断部は、前記第2の領域のうち、前記トッププレートを平面視したときに前記温度センサに近い側の少なくとも一部の領域を前記測定ポイントから除外する。
このような構成によれば、温度センサは斜め上方から温度情報を検知するため、調理容器を平面視したときに温度センサに近い側の調理容器の縁端部は死角となる。このような領域を測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
第3の発明は、特に、第1の発明又は第2の発明における前記温度状況判断部は、前記第2の領域のうち、前記トッププレートを平面視したときに調理ユーザが立つ側の少なくとも一部の領域を前記測定ポイントから除外する。
このような構成によれば、調理容器を平面視したときに調理ユーザが立つ側の領域は、調理ユーザが作業を行う際に温度センサの視野が遮られやすい。このような領域を測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
第4の発明は、特に、第1の発明から第3の発明のいずれか1つにおける前記加熱部は、前記トッププレートの面方向に互いに間隔を空けて配置された第1の加熱部と第2の加熱部とを備え、前記第1の加熱部に対応する前記第2の領域と、前記第2の加熱部に対応する前記第2の領域とが互いに重なる重複領域が存在する場合に、前記温度状況判断部は前記重複領域を前記測定ポイントから除外する。
このような構成によれば、重複領域はふきこぼれ判定に用いるには信頼度が低いと判断して測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
第5の発明は、特に、第1の発明から第4の発明のいずれか1つにおける前記温度状況判断部は、前記測定ポイントの温度変化を所定時間記録し、前記温度情報が更新される前後の前記測定ポイントの位置変更の発生有無を前記温度変化に基づいて判断し、前記測定ポイントの位置変更が発生した場合には、記録された前記測定ポイントと類似の測定ポイントから位置ずれの距離と方向を判定し、前記類似の測定ポイントに前記少なくとも1つの測定ポイントを変更する。
このような構成によれば、調理容器の位置変更があった場合でも、その位置変更に応じて測定ポイントを変更することで、正確な温度検知を継続して行うことができる。
第6の発明は、特に、第1の発明から第4の発明のいずれか1つにおける調理ユーザに情報を提示可能な表示部をさらに備え、前記表示部は、前記温度状況判断部による判断結果を表示する。
このような構成によれば、調理ユーザの利便性を向上させることができる。
第7の発明は、特に、第5の発明における調理ユーザに情報を提示可能な表示部をさらに備え、前記表示部は、前記測定ポイントの位置ずれの距離と方向に応じて、前記位置ずれを示す情報と前記位置ずれの補正をガイドする情報とを表示する。
このような構成によれば、表示部を設けることで調理ユーザの利便性を向上させることができる。さらに表示部において、測定ポイントの位置ずれの補正をガイドする情報を表示することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
第8の発明は、特に、第1の発明から第7の発明のいずれかにおける前記温度状況判断部は、前記温度情報に基づいて調理ユーザの存在の有無を判断し、調理ユーザが存在しないと判断した場合に、前記測定ポイントの数を増加させる、あるいは前記測定ポイントの温度変化に関する前記閾値を変化させる。
このような構成によれば、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
第9の発明は、特に、第3の発明における前記温度状況判断部は、前記温度情報に基づいて調理ユーザの存在の有無を判断し、調理ユーザが所定時間以上存在しないと判断した場合に、前記測定ポイントの除外を解除する。
このような構成によれば、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
以下に、本発明にかかる実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(実施形態)
以下に、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
図1A、図1Bは、実施形態に係る誘導加熱調理器2の概略構成を示す図である。図1Aは、誘導加熱調理器2を側方から見た概略図であり、図1Bは、誘導加熱調理器2を上方から見た概略図である。
図1A、図1Bに示す誘導加熱調理器2は、誘導加熱により被加熱物4を調理する加熱調理器であり、いわゆるビルトイン型のIHクッキングヒータである。被加熱物4は例えば、麺を茹でる時のお湯、スープ、カレー、ミルクである。被加熱物4は調理容器6に収容されている。調理容器6は例えば、鍋、フライパン、土鍋、(金属製)レトルト容器である。
誘導加熱調理器2は、トッププレート8と、加熱部10と、温度センサ12と、通信部14Aと、通信部14Bと、表示部15(図1B)とを備える。
トッププレート8は、調理容器6を載置するプレート状の台である。
加熱部10は、トッププレート8に載置された調理容器6を下方から加熱する部材である。本実施形態の加熱部10は、トッププレート8の下方に配置された加熱コイルである。加熱部10に高周波電流が供給されると、加熱部10は誘導磁界を発生させる。これにより、加熱部10に対向する調理容器6の底面が加熱され、調理容器6に収容された被加熱物4が加熱調理される。
図1Bに示すように、本実施形態の加熱部10は、3つの加熱部10A、10B、10Cを備える。3つの加熱部10A、10B、10Cを設けることにより、誘導加熱調理器2は3つの被加熱物4を同時に加熱調理可能である。図1Bでは、1つの被加熱物4および1つの調理容器6がそれぞれ載置された例を示す。
図1Aに示す温度センサ12は、トッププレート8上の温度情報を上方から検知するセンサである。図1Bでは、温度センサ12の視野領域Aが点線で示される。本実施形態の温度センサ12は、赤外線温度センサ(IR温度センサ)である。温度センサ12の視野領域Aは、複数の格子状の領域(例えば8×8の64個)に分割されている(図示せず)。分割されたそれぞれの領域が各赤外線検出素子により温度検知される温度検出領域である。
温度センサ12は通信部14Aに接続されている。通信部14Aは、温度センサ12が検知した温度情報を通信部14Bに送信する部材である。図1Aに示すように、温度センサ12および通信部14Aは壁面90の上方から突出した箇所に設けられている。通信部14Bはトッププレート8の内側に設けられている。
本実施形態の温度センサ12は、斜め下方であるB方向を向くように設置されており、トッププレート8上の温度情報を斜め上方から検知する。
表示部15は、調理ユーザ26に提示する情報を表示する部材である。表示部15は液晶パネルなど、任意の形態であってもよい。
上述した部材の接続関係を示すブロック図を図2に示す。図2に示すように、通信部14Aと通信部14Bが互いに通信可能に構成されている。通信部14Bは、誘導加熱調理器2の制御部18に含まれている。
制御部18は、加熱部10の加熱を制御する部材である。制御部18は例えばマイクロコンピュータなどにより構成される。制御部18は通信部14Bに加えて、温度状況判断部20と、ふきこぼれ推定部22とを備える。
温度状況判断部20は、通信部14Bが受信した温度情報に基づいて、トッププレート8上の温度状況を判断する。ふきこぼれ推定部22は、温度状況判断部20が判断した結果に基づいて、調理容器6からの内容物のふきこぼれが生じるおそれがあるかどうかを判定する。温度状況判断部20およびふきこぼれ推定部22はともに、これらの機能を発揮できる回路等により構成される。
図2に示す温度センサ12および通信部14Aにおける処理フローの一例を図3に示す。
図3に示すように、まず、通信接続処理を行う(ステップS1)。具体的には、通信部14Aから通信部14Bに所定の信号を送信する。次に、接続成功の判定を行う(ステップS2)。信号に対する正常な応答が検知された場合には、接続成功と判定してステップS3に進む。一方で、正常な応答が検知されなかった場合には、接続失敗と判定してステップS1に戻る。
ステップS3では、温度情報の取得を行う。具体的には、温度センサ12を用いてトッププレート8上の温度情報を検知し、当該温度情報を通信部14Aが取得する。次に、温度情報を送信する(ステップS4)。具体的には、通信部14Aが通信部14Bに温度情報を送信する。次に、所定時間を経過したかどうかを判定する(ステップS5)。所定時間を経過したと判定された場合にはステップS1に戻る。所定時間を経過していないと判定された場合にはステップS5に戻る。
上述したステップS1-S5の実行により、トッププレート8上の温度情報を所定時間ごとに取得し、その温度情報を通信部14Bにリアルタイムで送信することができる。
通信部14Bに送信された温度情報は、制御部18によるふきこぼれ推定処理のために使用される。制御部18による処理フローの一例を図4に示す。
図4に示すように、まず、通信接続処理を行う(ステップS6)。具体的には、通信部14Bが通信部14Aからの信号の受信を試みる。次に、接続成功の判定を行う(ステップS7)。信号を正常に受信できた場合には、接続成功と判定してステップS8に進む。一方で、信号を正常に受信できなかった場合には、接続失敗と判定してステップS6に戻る。
ステップS8では、温度情報を受信する。具体的には、通信部14Bがトッププレート8上の温度情報を通信部14Aから受信する。次に、温度情報を取得する(ステップS9)。具体的には、通信部14Bを備える制御部18が温度情報を取得して内部に記憶する。
次に、温度状況判断処理を行う(ステップS10)。具体的には、温度状況判断部20が、取得した温度情報に基づいてトッププレート8上の温度状況を判断する。温度状況判断部20によるステップS10の具体的な処理内容は後述する。
次に、ふきこぼれ推定処理を行う(ステップS11)。具体的には、温度状況判断部20による判断結果に基づいて、ふきこぼれ推定部22が、調理容器6からの内容物のふきこぼれが生じるおそれがあるかどうかを推定する処理を行う。次に、ふきこぼれが生じるおそれがあるかどうかを判定する(ステップS12)。具体的には、ステップS11による処理結果に基づき、ふきこぼれが生じるおそれがあるかどうかをふきこぼれ推定部22が判定する。ふきこぼれ推定部22によるステップS11、S12の具体的な処理内容は後述する。
ステップS12においてふきこぼれが生じるおそれがあると判定した場合、ステップS13に進む。ステップS13では、加熱部10の出力制御、あるいは報知が行われる。具体的には、加熱部10の出力を弱める、若しくは停止するように制御される。あるいは、ふきこぼれが生じるおそれがある旨が報知される。報知する場合には、前述した表示部15を用いて報知してもよい。このような処理により、ふきこぼれが発生することを事前に推定し、ふきこぼれを防止することができる。
一方で、ステップS12においてふきこぼれが生じるおそれがあると判定されなかった場合はステップS14に進む。ステップS14では、所定時間を経過したかどうかを判定する。所定時間を経過したと判定された場合にはステップS6に戻る。所定時間を経過していないと判定されない場合はステップS14に戻る。
なお、図3、図4に示す処理フローに関して、上述したように通信部14Aから定期接続送信を行う場合に限らず、通信部14Bからの接続要求により通信部14Aが送信を開始する等、任意の通信接続処理を採用してもよい。
ステップS10における温度状況判断部20の温度状況判断処理について、図5A、図5B、図5Cを用いて説明する。図5Aは、通常加熱中の状態を示し、図5Bは、ふきこぼれ発生時の状態を示す。図5A、図5Bにおいて、(a)はトッププレート8の平面図、(b)は温度センサ12の視野領域Aを示す図である。図5Cは、測定ポイントでの温度変化を示すグラフである。
図5Aでは、被加熱物4の温度が約80℃であり、調理容器6の縁端部24(鍋フチ)の温度が約40℃であり、調理容易6の外側におけるトッププレート8上の温度が約30℃である例が示される。図5Aの(b)に示すように、温度状況判断部20は、通信部14Bから送られてきた温度情報に基づいて、トッププレート8上の領域を複数の領域に分割する。本実施形態では、トッププレート8上の領域をそれぞれの温度帯に応じて3つの領域に分割する。本実施形態では、最も高い温度帯の領域を第1の領域X1、第1の領域X1よりも低い温度帯の領域を第2の領域X2、第2の領域X2よりも低い温度帯の領域を第3の領域X3とする。
本実施形態では、第1の領域X1の温度帯(第1の温度帯)を80℃以上、第2の領域X2の温度帯(第2の温度帯)を40℃以上80℃未満、第3の領域X3の温度帯(第3の温度帯)を30℃以上40℃未満と設定している。図面では、40℃以上80℃未満の領域を「40℃~79℃」、30℃以上40℃未満の領域を「30℃~39℃」と表示している。
図5Aの(b)に示すように、トッププレート8上において被加熱物4の位置する領域が最も温度が高くなっており、第1の領域X1に分類されている。第1の領域X1の周囲で、調理容器6の縁端部24に対応する領域が第2の領域X2に分類されている。さらに、第2の領域X2の外側における非加熱領域が全て、第3の領域X3に分類されている。
本実施形態の温度状況判断部20は、前述した3つの領域のうち第2の領域X2の中から少なくとも1つ測定ポイントを抽出し、温度変化を監視する。図5A、図5Bの(b)に示す例では、第2の領域X2の領域が全て測定ポイントとして抽出可能であり、ある測定ポイントにおける温度TEの変化が監視される。
測定ポイントの温度TEの変化の一例を図5Cに示す。図5Cに示すように、加熱開始から時間が経過するにつれて温度TEが徐々に増加する。調理容器6の縁端部24は加熱部10によって直接的に加熱されず、被加熱物4の温度上昇に伴って間接的に加熱されるため、時間t1を含む初期段階では温度TEの上昇度合いは緩やかである。その後、時間t2において温度TEが急激に上昇する。これは、調理容器6内に収容された被加熱物4が沸騰し始めて調理容器6の縁端部24まで上昇するからである。図5Bの(a)ではそのような沸騰状態が示されており、被加熱物4の温度が100℃、調理容器6の縁端部24の温度が60℃である例が示される。
ふきこぼれ推定部22は、温度TEの変化が所定の閾値ΔTEを超えるかどうかを継続的に判定する。具体的には、所定時間Δts(例えば125ms)経過ごとに測定ポイントの温度TEが更新され、ふきこぼれ推定部22は前回と今回の温度TEの変化量を閾値ΔTEと比較する。温度TEの変化量が閾値ΔTEを超える場合には、ふきこぼれ推定部22はふきこぼれが生じるおそれがあるものと判定する。
図5Cに示す例では、時間t1における温度TEの変化量ΔTE-通常は例えば2℃であり、時間t2における温度TEの変化量はΔTE-ふきこぼれは例えば40℃である。前述した閾値ΔTEを例えば10℃と設定した場合、時間t1ではふきこぼれが生じるおそれがないものと判定され、時間t2で初めてふきこぼれが生じるおそれがあるものと判定される。
ふきこぼれ推定部22がふきこぼれが生じるおそれがあるものと判定した場合には、前述したように加熱部10の出力を弱める、停止する、あるいは報知するように制御される。これにより、ふきこぼれを事前に推定して防止することができる。
このように、第2の領域X2における測定ポイントの温度変化が所定の閾値ΔTEを超えた場合にふきこぼれが生じるおそれがあるものと判定することで、調理容器6の縁端部24の温度を精度良く検知しながら、ふきこぼれを精度良く推定することができる。
上述したように、本実施形態の誘導加熱調理器2によれば、トッププレート8上の領域を温度帯に応じて少なくとも3つの領域X1、X2、X3に分割している。最も高い温度帯の第1の領域X1は被加熱物4の領域に対応し、最も低い温度帯の第3の領域X3は非加熱領域に対応し、いずれの領域にも属さない温度帯の第2の領域X2は調理容器6の縁端部24に対応するものと判断される。これにより、トッププレート8上の温度状況をより正確に判断することができる。
さらに、調理容器6の縁端部24に対応する第2の領域X2から測定ポイントを抽出し、当該測定ポイントの温度変化に基づいてふきこぼれを推定することにより、調理容器6からのふきこぼれを精度良く推定することができる。
なお、図5A、図5Bでは、第1の領域X1の全周を囲む位置に長方形状の第2の領域X2が生じているが、第2の領域X2の形状はこのような例に限らず、例えば図6A、図6Bに示すような例も考えらえる。図6Aは、16×16の温度センサ12を用いた例を示し、図6Bは、32×32の温度センサ12を用いた例を示す。図6A、図6Bに示すように、長方形状とは異なる形状の第2の領域X2が第1の領域X1の全周を囲むように生じている。
次に、第2の領域X2を予め予測する方法について、図7を用いて説明する。図7は、調理容器6の例としてフライパンが登録されている。フライパンに対応する領域を「登録形状」、フライパンの縁端部に対応する領域を「特徴領域」として予め記憶している。温度状況判断部20は、トッププレート8上の温度情報およびフライパンの登録形状に基づいて、フライパンの位置を特定する。温度状況判断部20は、特定したフライパンの位置に対応する特徴領域が第2の領域X2として表れることを予測する。これにより、より精度良い温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
次に、図5A、図5B、図6A、図6Bの例とは異なる例を図8A、図8Bに示す。図8Aは、16×16の温度センサ12を用いた例を示し、図8Bは、32×32の温度センサ12を用いた例を示す。図8A、図8Bに示す例では、第1の領域X1の周囲の一部を囲むように第2の領域X2が現れている。第1の領域X1と第3の領域X3が第2の領域X2を介さずに直接的に隣接している箇所が存在する。このような場合も、第2の領域X2から少なくとも1つの測定ポイントを抽出し、測定ポイントの温度TEの変化に基づいてふきこぼれを推定することで、ふきこぼれを精度良く推定することができる。
次に、調理ユーザの介在により温度が変化する例について、図9、図10A、図10Bを用いて説明する。図9はトッププレート8の平面図、図10A、図10Bは温度センサ12の視野領域Aを示す図である。図10Aは、16×16の温度センサ12を用いた例を示し、図10Bは、32×32の温度センサ12を用いた例を示す。
図9に示すように、トッププレート8の前に調理ユーザ26が立っており、調理器具28を使用して被加熱物4を調理している。調理ユーザ26と調理器具28が介在することにより、温度センサ12が検知する温度情報に変化が生じる。
具体的には、図10A、図10Bに示すように、被加熱物4に対応する第1の領域X1の内側に、最も温度の低い第3の領域X3-1が現れている。第3の領域X3-1は、前述した調理器具28および調理ユーザ26によって被加熱物4が遮られることにより、温度が低下した領域に相当する。調理ユーザ26がいる位置には第2の領域X2-1が現れている。
調理容器6の縁端部24に対応する第2の領域X2は、第3の領域X3-1を除く第1の領域X1の周囲に現れている。このような場合も、第2の領域X2における測定ポイントの温度変化に基づいてふきこぼれが生じるおそれがあるものと判定することで、調理容器6の縁端部24の温度を精度良く検知しながら、ふきこぼれを精度良く推定することができる。
ふきこぼれの推定精度をより向上させるために、第2の領域X2における測定ポイントの抽出を工夫してもよい。例えば、第2の領域X2のうち、トッププレート8を平面視したときに調理ユーザ26の立つ側の少なくとも一部の領域を測定ポイントから除外してもよい。図10A、図10Bに示す例では、点線で示す領域を測定ポイントから除外する除外領域E1と設定している。このような領域は調理ユーザ26が調理する際に温度センサ12の視野が遮られやすい領域であるため、除外領域E1を測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
次に、本実施形態の変形例について説明する。図1Aでは、温度センサ12が調理ユーザ26の立つ側とは逆側の壁面90に取り付けられていたが、図11に示すように、調理ユーザ26の立つ側に取り付けられてもよい。この場合、温度センサ12の視野領域のうち、温度センサ12に近い側の調理容器6の縁端部24に死角領域25が生じる。これを受けて、死角領域25を測定ポイントから除外するようにしてもよい。
具体的には、図12A、図12Bに示す通りである。図12Aは、16×16の温度センサ12を用いた例を示し、図12Bは、32×32の温度センサ12を用いた例を示す。図12A、図12Bに示すように、第2の領域X2のうち、トッププレート8を平面視したときに温度センサ12に近い側の領域を測定ポイントから除外する除外領域E2と設定している。除外領域E2は前述した死角領域25に対応するものであり、このような領域を測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
測定ポイントの除外はその後、所定条件を満たした場合に解除するようにしてもよい。その例について、図13A、図13Bを用いて説明する。図13Aは、調理ユーザ26(領域X2-1)がいる状態を示し、図13Bは、調理ユーザ26がいなくなった状態を示す。
図13Aに示すように、調理ユーザ26がいる場合、非加熱領域において調理ユーザ26に対応する位置に第2の領域X2-1が生じる。この温度情報に基づき、温度状況判断部20は調理ユーザ26が存在するものと判断し、前述した所定の除外領域E1を測定ポイントから除外するように制御する。
その後、調理ユーザ26がいなくなると、図13Bに示すように非加熱領域から第2の領域X2-1がなくなり、第3の領域X3となる。この温度情報に基づき、温度状況判断部20は調理ユーザ26がいなくなったものと判断する。温度状況判断部20は、除外領域E1における測定ポイントの除外を解除する。これにより、第2の領域X2の全ての領域が測定ポイントとして抽出可能となる。このように、調理ユーザ26が存在しないと判断した場合に測定ポイントの除外を解除することで、測定ポイントの数を増加させることができ、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
上記では、測定ポイントの数を増加させる場合について説明したが、このような場合に限らない。例えば、前述した測定ポイントの温度変化に関する閾値ΔTEを大きく又は小さく変化させてもよい。
次に、本実施形態の変形例について、図14A、図14Bを用いて説明する。図14A、図14Bはそれぞれ、変形例における誘導加熱調理器2の正面図と側面図である。図14A、図14Bに示す例では、温度センサ12の取付位置が実施形態と異なっている。
図14A、図14Bに示すように、温度センサ12はレンジフード27に取り付けられている。温度センサ12は特に、調理ユーザ26の立つ側から見て右側(図14A)、かつ、奥行き方向の略中央位置(図14B)に設けられている。
このような配置によれば、トッププレート8を平面視したときに温度センサ12に近い側の領域、すなわち、調理ユーザ26から見て右側の領域が死角領域となる。これを受けて、死角となる領域を測定ポイントから除外するようにしてもよい。この例を図15A、図15Bに示す。
図15A、図15Bに示す例では、前述した調理ユーザ26の介在に関する除外領域E1に加えて、温度センサ12の死角領域に対応する除外領域E3が設定されている。このような除外領域E1、E3を測定ポイントから除外することで、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
図15A、図15Bでは、温度センサ12の視野領域を真上から見たものとして模式的に示しているが、実際には、図16A、図16B、図16Cに示すように斜め上方からの温度情報が取得される。図16A、図16B、図16Cは、前方からではなく右側から見た温度センサ12による視野領域を表している。図16A、図16B、図16Cでは、調理容器6の縁端部24が楕円形に見えている。
次に、複数の被加熱物4を同時に加熱調理する場合について、図17を用いて説明する。図17は、16×16の温度センサ12を用いた場合の温度センサ12による温度情報を示す図である。
図17に示す例では、第1の加熱部10Aと第2の加熱部10Bが使用されている。図17に示すように、第1の加熱部10Aおよび第2の加熱部10Bのそれぞれに対応して、第1の領域X1、第2の領域X2、第3の領域X3が現れている。
第1の加熱部10Aに対応する第2の領域X2と、第2の加熱部10Bに対応する第2の領域X2とが互いに重複する重複領域Pが発生している。このような重複領域Pは、第1の加熱部10Aと第2の加熱部10Bの両方によって温度の影響を受ける領域であるため、ふきこぼれ判定に用いるには信頼度が低いとして測定ポイントから除外してもよい。このような制御により、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
次に、温度状況判断処理およびふきこぼれ推定処理の結果を表示部15に表示する例について、図18A、図18B、図18Cを用いて説明する。
図18Aに示す例では、第2の領域X2のうち、調理ユーザ26から遠い側の領域(太字で囲われた部分)のみが測定ポイントとして用いられている。
図18Aに示す温度情報を、例えば図18Bの例のように表示部15に表示してもよい。図18Bでは、被加熱物4の高温領域Qが白く表示され、非加熱領域Rが黒く表示されている。これにより、ユーザはトッププレート8上の温度状況を視覚的に認識することができる。
あるいは、図18Aに示す温度情報を、例えば図18Cの例のように表示部15に表示してもよい。図18Cでは、被加熱物4の高温領域Qに加えて、測定ポイントSがグレー表示されている。これにより、ユーザは測定ポイントを含めてトッププレート8上の温度情報に関する情報を視覚的に認識することができる。
次に、調理容器6の位置ずれについて、図19A、図19Bを用いて説明する。図19Aは、16×16の温度センサ12を用いた場合の温度センサ12による温度情報を示し、図19Bは、図19Aに示す温度情報に基づく処理結果を表示部15に表示する例を示す。
図19Aに示す例では、ふきこぼれ推定処理において、「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」の点が測定ポイントとして抽出されている。「A」、「B」、「C」、「D」、「E」、「F」は当初、調理容器6の縁端部24に対応する箇所にあったが、その後、調理容器6が右方向に1マス分ずれたことにより、縁端部24の位置から外れている。図19Aに示す温度情報によれば、「A」、「B」、「C」は、最も温度の低い第3の領域X3として示され、「E」、「F」は、最も温度の高い第1の領域X1として示されている。このような点を測定ポイントとして引き続き使用した場合には、調理容器6の縁端部24とは異なる部分の温度情報をもとにふきこぼれの推定処理を行うことになり、誤検知につながるおそれがある。よって、本実施形態では調理容器6の位置ずれを補正する。
具体的には、図19Aに示す温度情報に基づき、調理容器6の位置ずれの方向および距離を判定する。図19Aに示す例では、位置ずれの方向が右方向、位置ずれの距離が1マスと判定される。これに基づき、調理容器6を元の位置に戻すガイド情報を表示部15に表示する。
図19Bに示す表示部15においては、調理容器6の表示箇所Qの右側に、左方向の矢印Tが表示される。これにより、調理ユーザ26に対して調理容器6の位置ずれの補正をガイドする情報を表示することができる。調理ユーザ26が表示部15の案内にしたがって調理容器6の位置ずれを補正することで、調理容器6を元の位置に戻し、本来の調理容器6の縁端部24に測定ポイントを合わせることができる。これにより、より正確な温度検知およびふきこぼれの推定を行うことができる。
位置ずれの「距離」の表示方法としては、矢印Tの大きさを変化させる、あるいは、位置ずれの距離を直接的に表示する等、任意の手法を採用してもよい。
以上、上述の実施形態を挙げて本開示の発明を説明したが、本開示の発明は上述の実施形態に限定されない。
本開示は、添付図面を参照しながら好ましい実施形態に関連して充分に記載されているが、この技術の熟練した人々にとっては種々の変形や修正は明白である。そのような変形や修正は、添付した特許請求の範囲による本開示の範囲から外れない限りにおいて、その中に含まれると理解されるべきである。また、各実施形態における要素の組合せや順序の変化は、本開示の範囲及び思想を逸脱することなく実現し得るものである。