〔第1の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第1の実施の形態について説明する。図1乃至図10は、本実施の形態による基材成形工程の評価方法を説明するための図面である。このうち、図1は、本実施の形態による基材成形工程の品質評価方法に用いられるパターン付き基材の構成を概略的に示す斜視図であり、図2は、図1に示すパターン付き基材を保持するためのクランプの構成を概略的に示す側面図である。また、図3は、図2に示す状態のパターン付き基材を加熱するためのヒータの構成を概略的に示す側面図であり、図4は、図3に示す状態のパターン付き基材を成形するための基材成形部の構成を概略的に示す側面図である。また、図5は、図4に示す状態のパターン付き基材を基材成形部のみにより成形するときの構成を概略的に示す側面図であり、図6は、図4に示す状態のパターン付き基材を基材成形部およびカバーを用いて成形するときの構成を概略的に示す側面図である。また、図7(a)(b)は、それぞれ、成形される前および成形された後における図1に示すパターン付き基材の格子パターンの一部を拡大した構成を示す構成図である。また、図8は、図1に示すパターン付き基材の格子パターンを形成する感温変色インキの輪郭がギザついているときの態様を説明するための説明図である。また、図9(a)(b)は、それぞれ、図8に示す感温変色インキの輪郭がギザついている格子パターンに補助線を追加する方法を説明するための説明図である。また、図10は、本発明の第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法の動作の流れを示すフローチャートである。なお、図9において、感温変色インキの輪郭がギザついている格子パターンに追加した補助線を参照符号XおよびYで示している。また、図7および図9において、格子パターンにおける隣り合う2辺の間の角度を参照符号WおよびZで示している。
本実施の形態による基材成形工程の評価方法は、基材を基材成形具(例えば、金型)により成形する基材成形工程の評価を行う際に用いられるようになっている。より詳細には、図1乃至図10に示すように、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、主として、格子パターン14が基材12に形成されたパターン付き基材10(後述)を準備する工程と、パターン付き基材10を基材成形具42(後述)により成形する工程と、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定する工程と、が順番に行われるようになっている。このような基材成形工程の評価方法およびこのような基材成形工程の評価に用いられるパターン付き基材10について以下に詳細に説明する。
まず、パターン付き基材10およびパターン(本実施の形態においては、格子パターン14)が基材12に形成されたパターン付き基材10を準備する工程について図1を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態による基材成形工程の品質評価方法に用いられるパターン付き基材10は、略長方形形状のフィルムである基材12と、基材12の一方の面に連続的に配置された複数の略正方形からなる格子パターン14とを有している。また、格子パターン14は、温度によって変色する感温変色インキから構成されており、当該感温変色インキが基材12の一方の面に付着されることにより格子パターン14が形成されるようになっている。より詳細には、感温変色インキを用いた印刷機(図示せず)により基材12に格子パターン14が印刷されることにより、パターン付き基材10が作製されるようになっている。なお、上述したパターン付き基材10における格子パターン14は、略1mm角の略正方形が連続的に配置されたものから構成されている。一方、基材12の成形に用いる基材成形具42の形状や、必要な基材成形工程の評価の精度等に基づいて、格子パターン14を構成する略正方形の大きさを変更するようにしてもよい。
また、格子パターン14を形成する際に用いられるインキとして、温度履歴により変色する感温変色インキが用いられるようになっている。このことにより、後述するパターン付き基材10を成形する工程において、成形時の温度変化が他の箇所と比較して大きい箇所を容易に把握することができるようになる。より詳細には、「温度履歴により変色する」とは、感温変色インキが温度に応じて変色するような温度領域内において、その温度に到達するまでの温度の履歴により異なった色を発色するような性質をいう。具体的には、パターン付き基材10をある温度Tまで単純に昇温させたときの温度Tにおける感温変色インキの色と、パターン付き基材10を温度Tよりも高い温度まで昇温させた後に温度Tまで降温させたときの温度Tにおける感温変色インキの色とが異なる色となる。なお、本実施の形態による基材成形工程の評価を行う際には、必ずしも感温変色インキを用いて格子パターン14を形成する必要はない。
また、パターン付き基材10の基材12として、ABSフィルム、PETフィルム、アクリルフィルムのうちのいずれか1つのものが用いられるようになっている。また、パターン付き基材10として、基材成形具42により成形される予定の製品と同一の素材からなる基材12に格子パターン14を印刷したものを用いることが好ましい。このことにより、基材成形具42(後述)により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等をより正確に評価することができるようになる。なお、上記のもの以外の素材からなるフィルムを用いてパターン付き基材10を作製するようにしてもよい。このようにすることで、本実施の形態による基材成形工程の品質評価方法に用いられるパターン付き基材10を準備することができる。
次に、パターン付き基材10を基材成形具42により成形する工程について図2乃至図6を参照して説明する。
図2に示すように、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10は、クランプ20により保持された状態において成形されるようになっている。より詳細には、クランプ20は所定の距離だけ離間した状態で設けられた一対のものから構成されており、各クランプ20は、上方から見て略長方形形状を有するパターン付き基材10の対向する2辺を保持するようになっている。また、各クランプ20は、パターン付き基材10にシワが生じたり、撓んでしまうことがないよう適切な張力をパターン付き基材10に与えるようになっている。
また、図3に示すように、各クランプ20に保持された状態のパターン付き基材10は、ヒータ30により略均一に加熱されるようになっている。より詳細には、ヒータ30は遠赤外線ヒータからなり、遠赤外線を利用することにより非接触でパターン付き基材10の加熱を行うようになっている。また、ヒータ30は一対のものから構成されており、各クランプ20に保持された状態のパターン付き基材10を挟み込むような加熱位置(図3参照)と、パターン付き基材10の近傍から離れた退避位置(図示せず)との間で移動可能となっている。このことにより、パターン付き基材10を加熱する際に、ヒータ30と格子パターン14とが接触してしまうことによって格子パターン14がかすれてしまうこと等を防止することができるようになっている。なお、後述するように、パターン付き基材10がヒータ30により加熱されることによって軟化すると、ヒータ30は加熱位置から退避位置に向かって移動するようになっている。また、パターン付き基材10の加熱に用いられるヒータは遠赤外線ヒータからなるヒータ30のみに限定されることはなく、他の非接触式の加熱機構あるいは接触式の加熱機構が用いられるようになっていてもよい。さらに、パターン付き基材10は加熱される場合に限定されることはなく、加熱しなくてもよい。
また、ヒータ30は、基材12が軟化するとともに格子パターン14の印刷に用いられた感温変色インキが変色する温度までパターン付き基材10を加熱するようになっている。上述したように、パターン付き基材10は各クランプ20により適切な張力が与えられた状態で保持されているため、ヒータ30によって加熱されたときにパターン付き基材10にシワ等が発生することを防止することができる。
図4および図5に示すように、パターン付き基材10は、基材成形部40により真空成形されるようになっている。より詳細には、基材成形部40は、複数の貫通孔(図示せず)が設けられた基材成形具42(例えば、金型)と、基材成形具42をパターン付き基材10に向かって(すなわち、図4に示す矢印方向に)進退させるための昇降ステージ44と、真空ポンプ46とを有している。また、後述するように、真空ポンプ46は、パターン付き基材10と、当該パターン付き基材10が押し付けられた基材成形具42との間にある空気を基材成形具42に設けられた貫通孔を介して排気することができるようになっている。
また、図5に示すように、ヒータ30によって加熱されることにより軟化したパターン付き基材10は、昇降ステージ44によりパターン付き基材10に向かって進退させられる基材成形具42に押し付けられるようになっている。このことにより、パターン付き基材10の形状と、基材成形具42の形状とをおおまかに一致させることができるようになっている。この状態において真空ポンプ46を動作させることにより、基材成形具42と、パターン付き基材10との間にある空気が排気されるとともに基材成形具42に設けられた各々の貫通孔にパターン付き基材10が吸着されるようになる(図5に示す矢印参照)。このことにより、パターン付き基材10の形状と、基材成形具42の形状とを略一致させることができるようになる。このようにすることで、パターン付き基材10を基材成形具42により成形することができるようになる。
なお、成形時に局所的に大きく引き伸ばされたパターン付き基材10の特定の箇所は、他の箇所と比較して、成形時に温度が大きく下がるようになっている。このため、格子パターン14の成形に用いられている感温変色インキの色は、真空成形時に大きく引き延ばされた所定の箇所と、他の箇所とにおいて異なるようになる。このことにより、感温変色インキの色に基づいて、成形時に局所的に大きく引き伸ばされた箇所(すなわち、シワが発生するか、あるいはシワの発生リスクが高い箇所)をおおまかに判断することができるようになる。また、後述する顕微鏡のデジタルカメラにより成形されたパターン付き基材10の格子パターン14の撮像を行う際にも、真空成形時に局所的に大きく引き伸ばされた箇所をより迅速に撮像することができるようになる。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10の成形の精度を向上させるためのカバー50が用いられるようになっていてもよい。図6に示すように、カバー50は、平坦な底部51と、底部51の端縁から当該底部51に直交する方向に延びるよう形成されている周壁部52とを有している。また、カバー50は、パターン付き基材10の側端縁の近傍を周壁部52により基材成形具42に向かって押し付けることができるようになっている。このことにより、パターン付き基材10と、基材成形具42とをより密着させることができるようになる。また、カバー50には貫通孔が設けられておらず、基材成形具42と、カバー50との間にある空間を密封することができるようになっている。このため、真空ポンプ46を動作させたときに、パターン付き基材10を基材成形具42により容易に密着させることができるようになり(図6における矢印参照)、よってパターン付き基材10の成形の精度を向上させることができるようになる。
なお、カバー50の形状は、図6に示すようなものに限定されることはない。パターン付き基材10の側端縁の近傍を基材成形具42に向かって押し付けることができ、かつ基材成形具42と、カバー50との間にある空間を密封することができる形状であれば、他の形状であってもよい。
また、加工環境の温度、例えば、常温(25℃程度)においても伸びやすい材料からなるパターン付き基材10が用いられる場合には、ヒータ30によりパターン付き基材10を加熱して軟化させる手順を省略するようにしてもよい。
次に、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定する工程について図7乃至図9を参照して説明する。
まず、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14を撮像するための顕微鏡(図示せず)について説明する。本実施の形態による基材成形工程の評価方法に用いられる顕微鏡は、デジタルカメラ等が組み込まれた光学顕微鏡であって、パターン付き基材10(具体的には、格子パターン14)の観察およびデジタルカメラによるパターン付き基材10の撮像を行うことができるようになっている。より詳細には、撮像される画像の中に、略4つの格子パターン14が存在する程度の倍率(すなわち、数mm程度の視野の広さ)においてパターン付き基材10を撮像するようになっている。なお、格子パターン14を撮像する顕微鏡の倍率は上述した倍率に限られず、他の倍率であってもよいし、格子パターン14を構成する各図形の大きさや形状に応じて変更するようにしてもよい。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、顕微鏡のデジタルカメラにより撮像された画像に基づいて、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定するようになっている。このことについて、図7乃至図9を参照しながら以下により詳細に説明する。なお、顕微鏡のデジタルカメラによる格子パターン14の撮像は、成形されたパターン付き基材10の表面の接平面に対して直交する方向(すなわち、法線方向)から行うようにする。このことにより、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を正確に測定することができるようになる。
上述したように、パターン付き基材10の格子パターン14は、基材12の一方の面に連続的に配置された複数の略正方形から構成されている。このため、成形前のパターン付き基材10における格子パターン14を顕微鏡のデジタルカメラにより撮像したときには、例えば図7(a)に示すような拡大された格子パターン14が撮像されるようになる。また、基材成形具42により成形された後のパターン付き基材10であっても、当該パターン付き基材10の成形時にほとんど引き延ばされない箇所における格子パターン14については、図7(a)に示すようなものとなる。
一方、成形される際に基材成形具42の尖った部分等に押し付けられ、局所的に大きく引き伸ばされたパターン付き基材10の特定の箇所においては、成形が行われる際に基材12とともに当該基材12に形成された格子パターン14も引き延ばされるようになっている。このため、成形が行われる際に引き延ばされたパターン付き基材10の特定の箇所においてデジタルカメラにより撮像された画像における格子パターン14は、例えば図7(b)に示すような、もとの略正方形から変形したものとなる。本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度として、図7(b)において参照符号Zにより示す箇所の角度を測定するようになっている。言い換えると、パターン付き基材10の成形後に、成形前の角度である略90度よりも大きな角度となった格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定するようになっている。なお、パターン付き基材10の成形後に、成形前の角度である略90度よりも小さな角度となった格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度(図7(b)において参照符号Wで表示)を測定するようにしてもよい。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10を準備する工程において、格子パターン14の印刷に用いられる感温変色インキが図8に示すように輪郭がギザついてしまうことがある。この場合には、感温変色インキの輪郭がギザついている格子パターン14に補助線を追加することにより、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定するようになっている。具体的には、図9(a)に示すように、輪郭がギザついている感温変色インキの補助線として、例えば図9(b)に示すような近似直線(図9(b)において参照符号XおよびYで表示)を追加することにより、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度(図9(b)において参照符号Zで表示)を測定するようにする。なお、輪郭がギザついている格子パターン14が撮像された画像に補助線を追加する場合において、顕微鏡およびデジタルカメラ等に付属する画像編集機能を利用するようにしてもよい。また、輪郭がギザついている格子パターン14が撮像された画像を他の処理装置(例えば、コンピュータ)に取り込み、この他の装置により感温変色インキの輪郭がギザついている格子パターン14に補助線を追加するようにしてもよい。
また、格子パターン14は、図8や図9に示すような略菱形形状に変形するのではなく、より複雑な曲線等からなる形状に変形することがある。このような場合についても同様に、例えば近似直線その他の適切な補助線を追加することにより、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定するようにする。このようにすることで、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定することができるようになる。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が、成形前の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度(具体的には、略90度)からどの程度変化したかを判定するようになっている。言い換えると、成形されたときのパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度の大きさの変化が、所定の閾値より大きいか否かを判定するようになっている。また、このことに基づいて、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等を定量的に評価するようになっている。
より詳細には、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、第1の閾値として、例えば20度の角度が設定されている。言い換えると、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度の値が70度以下であるか、または110度以上である場合に、第1の閾値を超える大きさの角度の変化があったことを判定するようになっている。この場合には、その基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材にはシワが発生するものと判定する。このような判定は作業者が行ってもよいし、顕微鏡により撮像された画像に基づいて自動で行われるようになっていてもよい。
なお、成形されたパターン付き基材10にシワが発生していることが作業者の触覚や視覚等の五感により検知されたときには、このことに基づいて、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材にはシワが発生するものと判定するようになっていてもよい。
また、第2の閾値として、例えば10度の角度が設定されている。なお、20度以上の角度の変化があった場合には、第1の閾値を超えたと判定されるようになっている。言い換えると、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が70度よりも大きくかつ80度以下である場合と、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が100度以上でありかつ110度よりも小さい角度である場合に、第2の閾値を超える大きさの角度の変化があったことを判定するようになっている。この場合には、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材にはシワは発生しないが、成形時の条件や基材成形具42の形状等をわずかに変更した場合であってもシワが発生する可能性が高い状態である(すなわち、シワの発生リスクが高い)と判定する。
一方で、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度の値が80度よりも大きいか、または100度よりも小さい場合には、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワが発生しないと判定するようになっている。また、成形時の条件や基材成形具42の形状等を多少変更した場合であっても、変更後の基材成形具42により成形された基材においてシワが発生する可能性は低い状態である(すなわち、シワの発生リスクが低い)と判定するようになっている。
なお、上述のようなシワの発生の有無やシワの発生リスクの判定プロセスにおいて、格子パターン14の複数箇所において隣り合う2辺の間の角度を測定した場合には、少なくとも1箇所が上述のいずれかの閾値を超えている場合には、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワが発生するか、あるいはシワの発生リスクが高いと判定するようにする。また、上述した第1の閾値および第2の閾値は、それぞれ20度および10度に限定されることはない。パターン付き基材10の材質や基材成形具42の形状等に応じて、第1の閾値および第2の閾値を適宜設定するようにしてもよい。
次に、上述した本実施の形態による基材成形工程の評価方法について図10に示すフローチャートに沿って説明する。
まず、作業者は、感温変色インキを用いた印刷機(図示せず)等により基材12に格子パターン14を印刷することにより、略長方形形状のパターン付き基材10を準備する(STEP1)。なお、ロール状に巻かれた状態の基材12を印刷機により巻き出し、格子パターン14を印刷した後に基材12を所定の長さに切断することによって略長方形形状のパターン付き基材10を準備するようにしてもよい。次に、略長方形形状のパターン付き基材10における対向する2辺を各クランプ20により保持した後、ヒータ30を利用してパターン付き基材10を加熱することにより、当該パターン付き基材10を軟化させる(STEP2)。上述したように、ヒータ30はパターン付き基材10を挟み込むような加熱位置(図3参照)と退避位置(図示せず)との間で移動可能となっており、パターン付き基材10がヒータ30により加熱されて軟化すると、ヒータ30は加熱位置から退避位置に向かって移動するようになっている。
次に、基材成形具42(例えば、金型)によりパターン付き基材10を成形する(STEP3)。より詳細には、昇降ステージ44を用いることにより基材成形具42をパターン付き基材10に向かって移動させ、基材成形具42をパターン付き基材10に押し付けることにより、加熱することによって軟化させたパターン付き基材10を基材成形具42の形状に沿うように変形させる。その後、カバー50を取り付けることにより、パターン付き基材10の側端縁を基材成形具42に密着させるとともに基材成形具42とカバー50との間の空間を密封する。そして、真空ポンプ46を動作させ、基材成形具42と、パターン付き基材10との間にある空気を基材成形具42に設けられた貫通孔を介して排気することにより、パターン付き基材10を基材成形具42に密着させて当該パターン付き基材10を真空成形する。
その後、成形に用いた基材成形具42の形状や成形されたパターン付き基材10の形状、成形されたパターン付き基材10における格子パターン14の色の分布からシワが発生している箇所やシワの発生リスクが高い箇所(例えば、基材成形具42の尖っている部分に対応する箇所等)を判断し、当該箇所の格子パターン14を顕微鏡に設けられたデジタルカメラ等により撮像する(STEP4)。なお、成形されたパターン付き基材10の全面を撮像し、この撮像された画像内における全ての格子パターン14の隣り合う2辺の間の角度を測定するようにしてもよい。
次に、撮像された画像の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定する。このとき、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が20度以上変化している場合には(STEP5の「YES」)、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワが発生やすると判定する(STEP6)。その後、基材成形具42の形状の修正を行う(STEP7)。なお、格子パターン14の撮像を行う際に、作業者の視覚や触覚によりシワが発生していると判定できる場合には、このことに基づいて、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワが発生やすると判定するようにしてもよい。また、撮像された画像に基づいて、判定が自動で行われるようになっていてもよい。
一方、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化しているものがない場合には(STEP5の「NO」)、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が10度を超えて変化しているものがあるか否かを検査する(STEP8)。このとき、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が第2の閾値(すなわち、10度)以上変化しているものがある場合には(STEP8の「YES」)、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワの発生リスクが高いものであると判定する(STEP9)。なお、撮像された画像に基づいて、シワの発生リスクについての判定が自動で行われるようになっていてもよい。その後、基材成形具42の形状の修正を行う(STEP7)。
そして、基材成形具42の形状を修正した場合には、再び成形工程の評価を行うようにする。すなわち、パターン付き基材10を再度準備し(STEP1)、準備したパターン付き基材10を各クランプ20により保持するとともにヒータ30により加熱する(STEP2)。次に、形状を修正した基材成形具42を用いてパターン付き基材10を再び成形し(STEP3)、成形されたパターン付き基材10における格子パターン14を撮像し、当該格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を測定する(STEP4)。そして、形状を修正した基材成形具42により成形されたパターン付き基材10において、格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化しているものがなく(STEP5の「NO」)、かつ第2の閾値(すなわち、10度)以上変化しているものがない場合には(STEP8の「NO」)、基材成形工程の評価を終了する。言い換えると、形状を修正した基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材においてシワの発生やシワの発生リスクがないと判定するようになっている。
なお、従来技術では、ABSフィルム等の基材に対する真空成形において、以下のような問題があった。すなわち、成形された基材にシワが発生したか否かは目視で確認することができるものの、シワの程度を定量的に評価することができず、かつシワの発生リスクが高い箇所等は予想することができないという問題があった。また、従来の真空成形においては、発生したシワの程度を定量的に評価することができないため、基材成形具の形状を修正する際の明確な指針が存在せず、試行錯誤や手戻りが多くなってしまうという問題があった。また、シワの発生リスクが高い箇所を予測することができないため、シワの発生リスクを経験等にのみ基づいて評価しており、基材成形具の形状を変更した場合にシワの発生リスクにどの程度の悪影響を与えるのかを予測することができないという問題があった。これに対し、上述した本実施の形態による基材成形工程の評価方法によれば、格子パターン14が形成されたパターン付き基材10を基材成形具42により成形し、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14を評価することにより、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等を評価することができるようになっている。このことにより、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、基材成形具42の形状を修正する際の明確な指針を与えることができるようになり、よって基材成形具42の形状を修正する際の試行錯誤や手戻りを極力抑えることができるようになる。また、基材成形具42の形状を変更した場合におけるシワの発生リスクへの悪影響の程度を予測することができるようになる。
以上のような構成からなる本実施の形態による基材成形工程の評価方法によれば、パターン(例えば、格子パターン14)が基材に形成されたパターン付き基材10を準備する工程と、パターン付き基材10を基材成形具42により成形する工程と、成形されたパターン付き基材10のパターンにおける隣り合う2辺の間の角度を測定する工程と、を備えているため、成形されたパターン付き基材10のパターンにおける隣り合う2辺の間の角度を測定することにより、基材成形具42により基材12の成形を行ったときの成形された基材12におけるシワの発生やシワの発生リスク等を定量的に評価することができる。また、成形されたパターン付き基材10のパターンを撮像する工程を更に備えているため、撮像された画像に基づいて、成形されたパターン付き基材10のパターンにおける隣り合う2辺の間の角度を測定することができる。また、基材成形具42によりパターン付き基材10の成形を行う前に当該パターン付き基材10を加熱する工程を更に備えているため、パターン付き基材10をより容易に成形することができる。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10の成形は真空成形により行われるようになっているため、パターン付き基材10の一方の面を基材成形具42と接触させることなく、パターン付き基材10の成形を行うことができる。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターンは、温度によって変色する感温変色インキが基材12に付着されたものであるため、パターン付き基材10を成形する際に、当該パターン付き基材10における温度分布を視覚的かつ定量的に評価することができるようになる。また、パターンは、印刷により形成されるようになっているため、容易にパターン付き基材10を作製することができる。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、測定されたパターンにおける隣り合う2辺の間の角度に基づいて、自動で基材成形工程の評価が行われるようになっている。このため、客観的に基材成形工程の評価を行うことができるようになる。また、本実施の形態の基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10に形成されたパターンは、格子パターン14である。
また、本実施の形態による基材成形工程の評価方法に用いられるパターン付き基材10においては、パターンの形成に用いられる感温変色インキは、温度履歴により変色するようになっているため、パターン付き基材10の成形時の温度履歴を視覚的に把握することができるようになる。また、基材12は、ABSフィルム、PETフィルム、アクリルフィルム、PEフィルム、PPフィルム、PCフィルムのうちのいずれか1つのものである。
〔第2の実施の形態〕
以下、図面を参照して本発明の第2の実施の形態について説明する。本実施の形態によるプログラムは、パターン付き基材10を基材成形具42(例えば、金型)により成形する基材成形工程の評価をコンピュータ60により行う際に用いられるようになっている。図11は、本実施の形態による基材成形工程の品質評価方法に用いられるプログラムを実行するためのコンピュータ60を概略的に示すブロック図である。また、図12は基材を基材成形具42により成形する基材成形工程をコンピュータ60により評価するためのプログラムの動作の流れを示すフローチャートである。
図11に示すように、本実施の形態によるプログラムを実施するためのコンピュータ60は、CPU61と、ROM62と、RAM63と、不揮発性メモリ64と、を有しており、これらがバス65を介して入出力インターフェース66に接続されている。ここで、CPUとは、中央演算処理装置のことであり、ROMとは、読み出し専用メモリのことであり、RAMとは、ランダムアクセスメモリのことである。
また、入出力インターフェース66には、コンピュータ60にデータ等を入力するためのキーボード71と、コンピュータ60による演算結果等を表示するためのディスプレイ72と、マウス73と、記録媒体75と、記録媒体としてのCD-ROMやDVD-ROMが抜き差し可能なCD/DVDドライブ77が接続されている。また、マウス73は、ディスプレイ72に表示されたカーソルを所望の位置に移動させたり、カーソル位置のメニュー項目やオブジェクト等の選択、選択解除およびドラッグ等を行うために用いられるようになっている。また、記録媒体75には、本実施の形態のプログラムが記憶されているとともに、これらの実行に必要な各種パラメータやデータ等が記憶されている。また、CPU61は、記録媒体75に記録されている本実施の形態のプログラムを読み込んで実行するようになっている。
なお、後述する本実施の形態のプログラムは、例えばCD/DVDドライブ77を用いてCD-ROM等に対して読み書き可能とすることもできるようになっている。このため本実施の形態のプログラムをあらかじめCD-ROM等に記録しておき、CD/DVDドライブ77を介してCD-ROM等に記録されたプログラムを読み込んでコンピュータ60により実行するようにしてもよい。また、抜き差し可能な記録媒体としては、CD-ROMおよびDVD-ROM等の光ディスクに限らず、MD、MO等の光磁気ディスクを用いるようにしてもよい。
次に、コンピュータ60で実行される本実施の形態のプログラムの動作の流れを図12に示すフローチャートを参照して説明する。なお、本実施の形態によるプログラムの動作は、公知の数値解析手法により実行することができるようになっている。例えば、有限要素法を用いることができる。
まず、格子パターン14が基材12に形成されたパターン付き基材10を仮想空間上で再現する(STEP101)。より詳細には、記録媒体75に記録されている各種パラメータやデータを読み込むことにより、基材12の材質等について設定を行うとともに、基材12のサイズや格子パターン14を構成する正方形のサイズおよび大きさ等をキーボード71等によりコンピュータ60に入力する。なお、公知の数値解析手法として有限要素法を用いる場合には、格子パターン14はメッシュに対応し、格子パターン14を構成する正方形は四角形要素に対応する。
次に、評価の対象となる基材成形具42を仮想空間上で再現する(STEP102)。すなわち、基材成形具42の設計案(例えば、形状、構造および材料等)に基づいて基材成形具42のモデルを作製する。なお、STEP102の後にSTEP101を行うようにしてもよい。
その後、仮想空間上でパターン付き基材10を基材成形具42により成形する(STEP103)。より詳細には、仮想空間において再現したパターン付き基材10を、仮想空間において作製した基材成形具42の形状に仮想的に変形させることにより、仮想空間上でパターン付き基材10を基材成形具42により成形するようにする。この際に、仮想空間上で再現したパターン付き基材10における、基材成形具42のモデルにおける尖った部分に対応する箇所にある格子パターン14を細分化(リメッシュ)することにより、計算精度を向上させることができる。より具体的には、本実施の形態においては、パターン付き基材10を仮想的に変形させる過程において、パターン付き基材10におけるある箇所の曲率が所定の閾値を超えたときに、当該箇所の周辺にある格子パターン14をリメッシュするようになっている。このように、曲率の大きい(すなわち、形状が複雑な)箇所の近傍にある格子パターン14のみをリメッシュすることにより、全ての格子パターン14をリメッシュする場合と比較して、計算に必要な時間を短縮することができる。
そして、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の角度を測定するようにする(STEP104)。なお、本実施の形態によるプログラムを用いた基材成形工程の評価方法においては、各手順は全てコンピュータ60により仮想空間上で行われるようになっている。このため、顕微鏡等により撮像した画像に基づいて格子パターン14における隣り合う2辺の角度を測定する必要はない。また、コンピュータ60による演算結果のみに基づいて、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の角度を測定することができるようになっている。
次に、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の角度の測定結果に基づいて、隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第1の閾値(例えば、20度)以上変化しているものがあるか否かを調べる(STEP105)。
そして、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化している箇所がある場合には(STEP105の「YES」)、以下のような判定を行うようになっている。すなわち、仮想空間上において作製した基材成形具42と略同一の形状を有する基材成形具42を実際に作製し、当該基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材には、シワが発生すると判定するようになっている(STEP106)。
なお、本実施の形態によるプログラムにおいては、測定された格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が第1の閾値よりも大きいと判定されたパターン付き基材10の箇所を特定する手順がコンピュータ60により実行されるようになっている。このため、STEP105において、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化している箇所がある場合には(STEP105の「YES」)、当該箇所についても特定されるようになっている。すなわち、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10において特定された上記の箇所に対応する、基材成形具42の箇所についても特定することができるようになる。このことにより、仮想空間上で作製された基材成形具42において形状を修正すべき箇所を容易に把握することができる。
次に、仮想空間上で作製された基材成形具42において形状を修正すべき箇所の形状を仮想空間上で修正する(STEP107)。その後、STEP101から再度基材成形工程の評価を繰り返す。
一方、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化しているものがない場合には(STEP105の「NO」)、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第2の閾値(例えば、10度)以上変化しているものがあるか否かを調べる(STEP108)。そして、隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第2の閾値(すなわち、10度)以上変化している箇所がある場合には(STEP108の「YES」)、以下のような判定を行うようになっている。すなわち、仮想空間上において作製した基材成形具42と略同一の形状を有する基材成形具42を実際に作製し、当該基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材には、仮想空間上において格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第2の閾値(すなわち、10度)以上変化していた箇所に対応する箇所にシワが発生する可能性が高いと判定するようになっている(STEP109)。
なお、上述したように、測定された格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度が所定の閾値よりも大きいと判定されたパターン付き基材10の箇所を特定する手順がコンピュータ60により実行されるようになっているため、仮想空間上で作製された基材成形具42において形状を修正すべき箇所を容易に把握することができるようになる。
次に、仮想空間上で作製された基材成形具42において形状を修正すべき箇所の形状を仮想空間上で修正する(STEP107)。その後、STEP101から再度基材成形工程の評価を繰り返す。
そして、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第1の閾値(すなわち、20度)以上変化しているものがなく(STEP105の「NO」)、かつ仮想空間上で成形されたパターン付き基材10の隣り合う格子パターン14における隣り合う2辺の角度が第2の閾値(すなわち、10度)以上変化しているものがない場合には(STEP108の「NO」)、以下のような判定を行うようになっている。すなわち、仮想空間上において作製した基材成形具42と略同一の形状を有する基材成形具42を実際に作製し、当該基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材には、シワが発生することはなく、かつシワが発生する可能性も低いと判定するようになっている。そして、このような判定がされた場合には、評価結果を出力するようになっている(STEP110)。なお、STEP110において出力されるデータの例として、仮想空間上で作製されたパターン付き基材10の材料、格子パターン14を構成する正方形の大きさ(ピッチ)、基材成形具42の3DのCADデータ等が挙げられる。このようにして、本実施の形態によるプログラムを用いた基材成形工程の評価が終了する。
なお、STEP110において、仮想空間上において作製した基材成形具42と略同一の形状を有する基材成形具42を実際に作製し、当該基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材にシワが発生するか、あるいはシワが発生する可能性が高いことが判定されたとき(STEP106およびSTEP109)の基材成形具42の形状の3DのCADデータ等も追加的に出力されるようになっていてもよい。
また、本実施の形態によるプログラムを用いた基材成形工程の評価方法においては、評価結果に基づいて(すなわち、STEP110において出力されたデータに基づいて)、実際に基材成形具42を作製することができるようになっている。すなわち、本実施の形態のプログラムによる基材成形工程の評価結果を利用することにより、現実空間においてパターン付き基材10や基材成形具42等を作製した後に当該基材成形具42の評価および形状の修正を行う工程を省略することができるようになる。このことにより、適切な形状を有する基材成形具42を作製するために必要なコストを大幅に低減させることができるようになる。
以上のような構成からなる本実施の形態によるプログラムおよび当該プログラムを記録した記録媒体75によれば、仮想空間上で再現される、パターン(例えば、格子パターン14)が基材に形成されたパターン付き基材10を基材成形具42により成形する手順と、仮想空間上で成形されたパターン付き基材10のパターンにおける隣り合う2辺の間の角度を測定する手順と、をコンピュータ60に実行させることにより、実際には基材成形具42を作製することなく、当該基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等をコンピュータ60のみにより定量的に評価することができるようになる。
また、本実施の形態によるプログラムおよび当該プログラム記録した記録媒体75によれば、測定されたパターンにおける隣り合う2辺の間の角度が所定の閾値よりも大きいか否かを判定する手順と、角度が所定の閾値よりも大きいと判定されたパターン付き基材10の箇所を特定する手順とを更にコンピュータ60に実行させるため、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワが発生する箇所やシワの発生リスクが高い箇所をより容易に判定することができるようになる。
なお、各実施の形態による基材成形工程の評価方法は、上述したような態様に限定されることはなく、様々な変更を加えることができる。
例えば、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法において、格子パターン14のみが印刷されたパターン付き基材10を用いる代わりに、絵柄等が既に印刷された基材の絵柄等の上に格子パターン14を重ねて印刷することにより、格子パターン14の歪みを評価するとともに実際の絵柄の歪み等も評価するようになっていてもよい。
また、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法において、基材12に形成された格子パターン14を構成する各々の格子のサイズが大きい等により、顕微鏡やデジタルカメラを用いずに角度を測定できる場合には、顕微鏡やデジタルカメラを利用せずに角度の測定を行うようにしてもよい。
また、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法および第2の実施の形態による基材成形工程の評価方法において、自動で基材成形工程の評価を行う場合には次のようにしてもよい。すなわち、基材成形具42の尖った部分等に対応するパターン付き基材10の格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度を直接測定するのではなく、当該格子パターン14の周辺に位置する格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度に基づいて、基材成形工程の評価を行うようにしてもよい。より具体的には、基材成形具42の立体形状における稜線部分に対応するパターン付き基材10の格子パターン14が大きく変形してしまい、当該格子パターン14の隣り合う2辺の間の角度が常に上述したいずれかの閾値を超えてしまうことがあると考えられる。このような場合には、当該箇所の周辺に位置する格子パターン14における隣り合う2辺の間の角度に基づいて、シワの発生リスクを評価するようにしてもよい。
また、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法および第2の実施の形態による基材成形工程の評価方法において基材12に形成される格子パターンが、三角形や五角形その他の多角形形状が連続的に配置された格子パターンであってもよい。この場合にも、基材成形具42により成形された後のパターン付き基材10における格子パターンを評価することにより、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等を定量的に評価することができる。
また、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法および第2の実施の形態による基材成形工程の評価方法において、パターン付き基材10の形状は、略長方形形状のものに限られることはない。例えば、三角形や五角形その他の多角形形状や、円形形状あるいは楕円形形状であってもよい。
また、第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法および第2の実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、基材12に形成されるパターンは、上述したような連続的に配置された複数の略正方形からなる格子パターン14に限られることはない。例えば、図13および図14に示すような、パターン付き基材10a、10bが用いられるようになっていてもよい。より具体的には、図13に示すような複数のドットが規則的に配置されたパターン付き基材10aや、図14に示す複数の十字マークが規則的に配置されたパターン付き基材10bを用いて格子パターンを形成するようにしてもよい。すなわち、パターン付き基材10a、10bを基材成形具42によって成形した後に、各ドットや各十字マークを接続する線を追加するによって格子パターンを形成するようにしてもよい。また、成形された後のパターン付き基材10aにおける各ドットを適切に接続して格子パターン形成する方法として、例えば色が異なるドットを交互に規則的に配置するようにしてもよい。また、成形された後のパターン付き基材10aにおいて、あるドットと、このドットの近傍に位置する当該ドットとは色の異なるドットを接続するようにしてもよい。なお、パターン付き基材10bにおいても同様にしてもよい。この場合にも、パターン付き基材10a、10bにおける格子パターンを評価することにより、基材成形具42により実際の製品用の基材の成形を行ったときの成形された基材におけるシワの発生やシワの発生リスク等を定量的に評価することができる。
また、上述した第1の実施の形態による基材成形工程の評価方法においては、パターン付き基材10のみを基材成形部40により成形し、成形されたパターン付き基材10の格子パターン14を評価するようになっているが、このような態様に限定されることはない。例えば、樹脂の射出成形を行う射出成形機を含んだ基材成形部を用いることにより、パターン付き基材10と樹脂成型品とを一体的に成形し、この成形品を評価するようにしてもよい。ここで、一般的な射出成型機は、位置固定で設けられた固定金型と、固定金型に向かって進退可能な可動金型を有しており、これらの金型が互いに接触しているときに可動金型と固定金型との間に形成されるキャビティ(空洞部分)に熱可塑性樹脂等の樹脂が供給されることにより、樹脂成型品が形成されるようになっている。すなわち、基材成形工程の評価方法の他の態様として、上述した基材成形具42を樹脂成型機における固定金型として用いるようにしてもよい。また、パターン付き基材10を上述した手順によって基材成形具42により成形した後に可動金型を移動させて金型を閉じ、その後に樹脂の射出成形を行うようにしてもよい。そして、パターン付き基材10と樹脂が一体的に成形された成形品におけるパターン付き基材10の格子パターン14を評価するようにしてもよい。なお、このような工法は、いわゆるインモールド(転写)工法と呼ばれるものであり、射出成形機の金型の内部でフィルムによる樹脂成型品の加飾を行うことができるシンプルな工法である。なお、加工環境の温度、例えば、常温(25℃程度)においても伸びやすい材料からなるパターン付き基材10が用いられる場合には、インモールド工法においてパターン付き基材10を固定金型(すなわち、基材成形具42)により成形する際に、ヒータ30によりパターン付き基材10を加熱して軟化させる手順が省略されるようになっていてもよい。
また、格子パターン14を樹脂成型品に転写することが可能であるパターン付き基材10が用いられる場合には、パターン付き基材10に形成された格子パターン14を直接評価する代わりに、樹脂成型品に転写された後の格子パターン14を評価するようにしてもよい。
また、基材成形工程の評価方法の更に他の態様として、射出成形機により成形された樹脂成型品に対してパターン付き基材10を接着させる、いわゆる真空粘着ラミーネート工法(TOM工法ともいう)が用いられるようになっていてもよい。また、このように樹脂成型品に接着されたパターン付き基材10における格子パターン14を評価するようにしてもよい。ここで、図15および図16を参照して説明すると、TOM工法では、まず、基材成形工程の評価の対象となる形状の樹脂成型品(図15および図16において参照符号Fで表示)を図示しない射出成型機によって作製する。その後、樹脂成型品における、パターン付き基材10が接着されるべき箇所に、接着剤を例えばスプレー等により付着させる。そして、この接着剤が付着された樹脂成型品と、パターン付き基材10とを、基材接着部80により接着する。より詳細には、基材接着部80は、真空チャンバ82と、クランプ84と、ヒータ86とを有しており、接着剤が付着された樹脂成型品は真空チャンバ82に投入される。そして、パターン付き基材10がクランプ84により保持され、その後に真空チャンバ82が密閉状態とされる。この状態において、真空チャンバ82内部の気体が真空ポンプ(図示せず)により排気されるとともに、クランプ84により保持されたパターン付き基材10がヒータ86によって加熱されることにより軟化する。より詳細には、図15に示すように、ヒータ86は一対のものから構成されている。また、ヒータ86は、クランプ84によって保持されたパターン付き基材10を挟み込むような加熱位置(図15参照)と、パターン付き基材10の近傍から離れた退避位置との間で移動可能となっている。また、パターン付き基材10がヒータ86により加熱されることによって軟化すると、ヒータ86は加熱位置から退避位置に向かって退避するようになっている。
次に、樹脂成型品が上方に向かって移動させられ、樹脂成型品にパターン付き基材10が接着される。その後、真空チャンバ82を大気圧に戻すことにより、樹脂成型品とパターン付き基材10とをより強く接着することができる。なお、真空チャンバ82の内部に圧縮空気等を送る機構を追加的に設けることにより、圧縮空気等の圧力によって樹脂成型品とパターン付き基材10とをさらに強く接着するようにしてもよい。このようにして、樹脂成型品に接着されたパターン付き基材10における格子パターン14を評価することができるようになる。なお、TOM工法においては、パターン付き基材10として樹脂成型品よりも大きなものが用いられるようになっており、パターン付き基材10における樹脂成型品からはみ出た部分はトリミングされるようになっている。このような方法によれば、パターン付き基材10に形成されたパターン(テクスチャ)を乱さずに、樹脂成型品にパターン付き基材10を接着することができる。また、接着剤を利用して樹脂成型品とパターン付き基材10とを接着するため、樹脂成形品およびパターン付き基材10の材質によらずにTOM工法を適用することができる。