JP7024959B2 - 繊維強化樹脂管状体 - Google Patents
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Description
上記の「連続強化繊維間が、・・相対変位し易くなっている」とは、換言すると、加熱により塑性変形が可能となった熱可塑性樹脂の中で連続強化繊維が動き易い(滑り易い)という意味である。
つまり、当該繊維強化樹脂管状体の軸線に対する連続強化繊維の配向角度が、曲げ予定領域以外の領域よりも曲げ予定領域の方が大きいため、曲げ予定領域を形成する連続強化繊維間は、加熱により塑性変形が可能となった熱可塑性樹脂の中で、曲げ加工するときの曲げ荷重に追従して相対変位し易く破断し難いため、曲げ予定領域が座屈し難い。
さらに、曲げ予定領域においてシワが発生し難い。
このため、曲げ予定領域を形成する連続強化繊維間は、加熱により塑性変形が可能となった熱可塑性樹脂の中で、曲げ加工するときの曲げ荷重に追従してより相対変位する際に干渉し合う(相対変位の妨げとなる)連続強化繊維が、曲げ予定領域以外の領域よりも少ないために相対変位し易く破断し難い。
したがって、曲げ予定領域が座屈し難い。
したがって、前述の第1の特徴を有する繊維強化樹脂管状体の圧縮強度をより一層高めることができる。
したがって、前述の第2の特徴を有する繊維強化樹脂管状体の圧縮強度をより一層高めることができる。
本発明の第1実施形態に係る繊維強化樹脂管状体について図を参照しつつ説明する。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体は、CFRTPにより形成されており、繊維強化樹脂管状体の軸線に対する連続炭素繊維の配向角度が、曲げ予定領域以外の領域よりも曲げ予定領域の方が大きい連続強化繊維の配置構造を有することを特徴とする。
図1に示すように、本実施形態の繊維強化樹脂管状体1は、縦断面形状が円形の円筒形状(中空パイプ状)に形成されている。繊維強化樹脂管状体1の全長はL、外径はφ1、内径はφ2である。繊維強化樹脂管状体1には、曲げ加工を行う予定の領域、つまり、曲げ予定領域VEが設定されている。符号Cにて示す点は、曲げ半径の中心である。繊維強化樹脂管状体1の左端から右端に向けてL1移動した位置から曲げ予定領域VEが始まっており、その幅はL2に設定されている。
図2(a)は、本実施形態の繊維強化樹脂管状体1の説明図であるが、フィラメントの捲回状態が分かるように模式的に表されている。図2において、符号θ1,θ2は、繊維強化樹脂管状体1を形成する連続炭素繊維の配向角度を示す。ここで、配向角度とは、繊維強化樹脂管状体1の軸線G(繊維強化樹脂管状体1の長手方向に沿った中心軸)に対する連続炭素繊維の角度である。図2(b),(c)は、それぞれ曲げ予定領域VEにおける配向角度を示し、図2(d),(e)は、それぞれ曲げ予定領域以外の領域E1,E2における配向角度を示す。なお、フィラメントをマンドレルにヘリカル巻きする場合、フィラメントはマンドレルの軸線に沿って両端を往復するため、マンドレルの左端から右端に向けて巻くとき(往路)の角度をθ1,θ2で示し、右端から左端に向けて巻くとき(復路)の角度を-θ1,-θ2で示す。図示のように、曲げ予定領域VEに捲回された連続炭素繊維の配向角度θ1は、曲げ予定領域VE以外の領域E1,E2に捲回された連続炭素繊維の配向角度θ2よりも大きい。たとえば、配向角度θ1は45度であり、配向角度θ2は20度である。
本願発明者らは、連続炭素繊維の配向角度が曲げ加工に及ぼす影響を調べる実験を行った。
(実験内容)
本実験では、繊維強化樹脂管状体1を形成するフィラメントとして、連続PAN(ポリアクリロニトリル)系炭素繊維がポリアミド樹脂繊維と混繊されたフィラメントを使用した。連続強化繊維およびポリアミド樹脂の体積含有率は、それぞれ50%である。フィラメントの幅は5~6mmであり、厚さは0.3~0.4mmである。また、旭化成エンジニアリング株式会社製のフィラメントワインディング装置を使用した。
フィラメントワインディングでは、加熱によりフィラメントに含まれるポリアミド樹脂を溶融させながら、ヘリカル巻きによりマンドレルに4層捲回し、自然冷却によりポリアミド樹脂を固化させ、繊維強化樹脂管状体1を作成した。
作成した繊維強化樹脂管状体1は、全長Lが510mm、外径φ1が31.0mm、内径φ2が27.2mmの中空パイプ形状である。また、繊維強化樹脂管状体1の縦断面形状は真円であり、扁平度は1である。また、図1(a)に示したL1=210~220mmであり、L2=約150mmである。また、曲げ加工時に繊維強化樹脂管状体1の変形を防止するため、芯材(中子)を繊維強化樹脂管状体1に充填した。本実験では、芯材として、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)樹脂製で直径が1mm前後で縦断面形状が円形の線状の素材を束ねたものを芯材として使用した。
また、本実験では、連続炭素繊維の配向角度が曲げ予定領域VEおよび曲げ予定領域以外の領域E1,E2の総てにおいて20度の繊維強化樹脂管状体(第1実施形態(1))と、曲げ予定領域VEにおける配向角度θ1が45度であり、曲げ予定領域以外の領域E1,E2における各配向角度θ2がそれぞれ20度の繊維強化樹脂管状体(第1実施形態(2))とを使用した。
本願発明者らは、上述した手法によって曲げ加工された繊維強化樹脂管状体1の曲げ方向の内外方向の外径Aと、曲げ方向の上下方向の外径B(図7(b))と、曲げ半径rとを測定した。また、扁平度(=B/A)を計算した。また、曲がった領域にシワ、座屈および破断などが発生しているか否かを調べた。扁平度は、図7に示すように、繊維強化樹脂管状体1の曲がった領域の曲げ中心Cを縦方向に切断し、内外方向の外径Aと、上下方向の外径Bとの比(B/A)を扁平度として計算した。曲げ加工を行う前の繊維強化樹脂管状体1は、潰れていないため、扁平度は1である。
そして、曲がった領域が座屈または破断しているか否かを検査した結果に基づいて各実験結果を評価した。つまり、曲がった領域に座屈および破断が無い場合は、曲げ加工状態が良好であると判定し、曲げ性の判定結果として○を記した。また、曲がった領域に座屈または破断が発生した場合、規定の引張荷重を掛けても曲がらなかった場合、および曲げ半径rが300mm以上だった場合のいずれかに該当する場合は曲げ性の判定結果として×を記した。
一方、曲げ予定領域VEが45度であり、曲げ予定領域以外の領域E1,E2が20度の繊維強化樹脂管状体(2)は、曲げ条件に沿って曲げることができ、曲がった領域に座屈および破断が発生しなかったため、曲げ性の判定結果は○である。また、曲がった領域においてシワも殆ど発生しなかった。
本願発明者らは、上述した実験結果に基づき、連続炭素繊維の配向角度と曲げ性との関係について考察した。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体1を曲げ加工する際は、曲げ予定領域VEが塑性変形可能な状態になるまで曲げ予定領域VEを加熱する。具体的には、曲げ予定領域VEに捲回されているフィラメントのポリアミド樹脂が溶融した状態になるまで曲げ予定領域VEを加熱する。このため、曲げ予定領域VEを形成するポリアミド樹脂が溶融した状態になると、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維は、溶融したポリアミド樹脂の中を動く(滑る)ことが可能な状態になる。換言すると、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維間は、溶融したポリアミド樹脂の中で相対変位可能な状態になる。その結果、溶融したポリアミド樹脂の中では、連続炭素繊維は配向角度が大きい方が曲げ加工するときの曲げ荷重に追従して動き易く、連続炭素繊維の伸びやせん断変形が小さく抑制されるために破断し難いと推測した。また、曲げ加工を行うと、曲げ予定領域VEの外側では連続炭素繊維に対する引張方向への荷重が大きくなるが、曲げ予定領域VEにおける連続炭素繊維の配向角度が大きいため、連続炭素繊維は配向角度を小さくなる様に変位させることにより、その荷重に追従することができるので、破断にまで至らないと推測した。また、曲げ予定領域VEの内側でも同様に荷重に追従して連続炭素繊維が変位しやすくなることが、連続炭素繊維の折れ、座屈および破断を妨げたと推測した。
つまり、連続炭素繊維の配向角度が大きい方が連続炭素繊維間が相対変位し易いために破断し難く、よって曲げ予定領域に座屈や破断が発生し難く、かつ、シワも発生し難いと推測した。
本願発明者らは、上述した実験結果および考察から、曲げ予定領域における強化繊維の配置構造が、強化繊維間が前記曲げ予定領域以外の領域よりも曲げ加工に対して相対変位し易くなっている配置構造を有する繊維強化樹脂管状体を作成すれば、曲げ予定領域に座屈および破断が発生し難い繊維強化樹脂管状体を提供することができると結論した。
次に、本発明の第2実施形態に係る繊維強化樹脂管状体について図を参照しつつ説明する。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体は、CFRTPにより形成されており、連続炭素繊維の体積含有率が、曲げ予定領域以外の領域よりも曲げ予定領域の方が小さい連続強化繊維の配置構造を有することを特徴とする。
本願発明者らは、連続炭素繊維の体積含有率が曲げ加工に及ぼす影響を調べる実験を行った。
(実験内容)
本実験では、実験1において使用したフィラメントと同じフィラメントを使用し、実験1と同じ寸法の繊維強化樹脂管状体を作成した。
また、本実験では、総ての領域における連続強化繊維の配向角度が20度であり、連続炭素繊維の体積含有率が曲げ予定領域VEおよび曲げ予定領域以外の領域E1,E2の各領域においてそれぞれ50%の繊維強化樹脂管状体(第2実施形態(1))と、総ての領域における連続強化繊維の配向角度が20度であり、連続炭素繊維の体積含有率が曲げ予定領域VEにおいて40%であり、曲げ予定領域以外の領域E1,E2においてそれぞれ50%の繊維強化樹脂管状体(第2実施形態(2))と、総ての領域における連続強化繊維の配向角度が20度であり、連続炭素繊維の体積含有率が曲げ予定領域VEにおいて30%であり、曲げ予定領域以外の領域E1,E2においてそれぞれ50%の繊維強化樹脂管状体(第2実施形態(3))とを使用した。また、本実験は、実験1と同じ実験装置および手順にて行った。
図8に記載したとおり、第2実施形態(1)および第2実施形態(2)の各繊維強化樹脂管状体は、いずれも規定の引張荷重を掛けても曲がらなかったが(曲げ性の判定が×)、第2実施形態(3)の繊維強化樹脂管状体は曲がり、曲げ性の判定は○であった。
本願発明者らは、上述した実験結果に基づき、連続炭素繊維の体積含有率と曲げ性との関係ついて考察した。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体1を曲げ加工する際は、曲げ予定領域VEが塑性変形可能な状態になるまで曲げ予定領域VEを加熱する。具体的には、曲げ予定領域VEに捲回されているフィラメントのポリアミド樹脂が溶融した状態になるまで曲げ予定領域VEを加熱する。このため、曲げ予定領域VEを形成するポリアミド樹脂が溶融した状態になると、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維は、溶融したポリアミド樹脂の中を動く(滑る)ことが可能な状態になる。換言すると、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維間は、溶融したポリアミド樹脂の中で相対変位可能な状態になる。その結果、溶融したポリアミド樹脂の中では、連続炭素繊維の体積含有率が小さい方が、曲げ加工するときの曲げ荷重に追従して相対変位する際に干渉し合う(相対変位の妨げとなる)連続炭素繊維が少ないために相対変位し易く破断し難いと推測した。つまり、連続炭素繊維の体積含有率が小さい方が連続炭素繊維間が相対変位し易いために破断し難く、よって曲げ予定領域に座屈や破断が発生し難いと推測した。
本願発明者らは、上述した実験結果および考察から、曲げ予定領域の方が曲げ予定領域以外の領域よりも、連続炭素繊維の体積含有率が小さい連続炭素繊維の配置構造を有する繊維強化樹脂管状体を作成すれば、曲げ予定領域に座屈や破断が発生し難い繊維強化樹脂管状体を提供することができると結論した。
本発明の第3実施形態に係る繊維強化樹脂管状体について図を参照しつつ説明する。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体は、CFRTP製のテープが、その一部が重なるように螺旋状に捲回された炭素繊維の配置構造を有することを特徴とする。
図5(d)に示すように、テープTの幅をdとすると、テープTは、幅d1にて重なっており、幅Δdにてずれている。つまり、テープTは、1回(マンドレル1周)の捲回につき、幅Δdずらしながら捲回されている。
本願発明者らは、繊維強化樹脂管状体を形成するテープの幅および重なり幅が曲げ加工に及ぼす影響を調べる実験を行った。
(実験内容)
本実験では、前述したテープTを使用して実験1と同じ寸法の繊維強化樹脂管状体を作成した。
また、本実験では、テープTを、完成される繊維強化樹脂管状体の軸線G(マンドレルの軸線)に対する捲回角度が約80度となるように捲回した。そして、テープ幅dが10mmのテープTを重なり幅d1が5mm(ずらし幅Δdが5mm)にて捲回して作成した繊維強化樹脂管状体(第3実施形態(1))と、テープ幅dが15mmのテープTを重なり幅d1が10mm(ずらし幅Δdが5mm)にて捲回して作成した繊維強化樹脂管状体(第3実施形態(2))と、テープ幅dが15mmのテープTを重なり幅d1が5mm(ずらし幅Δdが10mm)にて捲回して作成した繊維強化樹脂管状体(第3実施形態(3))と、テープ幅dが20mmのテープTを重なり幅d1が15mm(ずらし幅Δdが5mm)にて捲回して作成した繊維強化樹脂管状体(第3実施形態(4))と、テープ幅dが20mmのテープTを重なり幅d1が10mm(ずらし幅Δdが10mm)にて捲回して作成した繊維強化樹脂管状体(第3実施形態(5))とを使用した。また、本実験は、実験1と同じ実験装置および手順にて行った。
図8の実験結果に示すように、第3実施形態(1)の繊維強化樹脂管状体は、曲げ予定領域が折れたが(曲げ性判定が×)、第3実施形態(2)~(5)の繊維強化樹脂管状体はそれぞれ曲がった(曲げ性の判定が○)。
本願発明者らは、上述した実験結果に基づき、テープの幅および重なり幅と曲げ性との関係ついて考察した。
本実験において曲げ加工に成功した第3実施形態(2)~(5)の繊維強化樹脂管状体を形成するテープTを観察したところ、曲げ加工により、テープT間が相対変位していることが分かった。図6は、図5(a)に示す繊維強化樹脂管状体を形成するテープの変位を説明するための説明図であり、(a)は変位前のテープの説明図、(b)は変位後のテープの説明図である。なお、図6において符号T1~T3は、捲回されたテープTの1巻き分を示す。また、図6は、テープTの変位状態を分かり易くするため、実際の変位量よりも大きい変位量にて記載されている。図6(a)に示すように、曲げ加工を行う前のテープT(T2,T3)の重なり幅をd1とすると、図6(b)に示すように、曲げ加工を行った後では、曲げた領域の曲げ方向の外側におけるテープT(T2,T3)の重なり幅d2は、曲げ加工前の重なり幅d1よりも小さくなっていた(d2<d1)。また、曲げた領域の曲げ方向の内側におけるテープTの重なり幅d3は、曲げ加工前の重なり幅d1よりも大きくなっていた(d3>d1)。
本願発明者らは、上記の観察結果から、テープT間は、繊維強化樹脂管状体1に矢印F2で示す方向の引張荷重が掛かったときに相対変位することで、曲げ荷重が吸収され、曲げ予定領域VEを形成する炭素繊維が破断しなかったため、曲げ予定領域VEに座屈や破断が発生しなかったと推測した。
本願発明者らは、上述した実験結果および考察から、熱可塑性樹脂を伴った炭素繊維を織って形成されたテープが、その一部が重なるように螺旋状に捲回された配置構造を有する繊維強化樹脂管状体を作成すれば、曲げ予定領域に座屈や破断が発生し難い繊維強化樹脂管状体を提供することができると結論した。
本発明の第4実施形態に係る繊維強化樹脂管状体について図を参照しつつ説明する。
本実施形態の繊維強化樹脂管状体は、前述した第1実施形態の繊維強化樹脂管状体に対して、熱可塑性樹脂を伴った強化繊維を織って形成されたテープが、その一部が重なるように螺旋状に捲回されたことを特徴とする。
本願発明者らは、本実施形態の繊維強化樹脂管状体の曲げ性を調べる実験を行った。
(実験内容)
本実験では、前述した第1実施形態と同じ方法により、曲げ予定領域VEおよび曲げ予定領域VE以外の領域E1,E2を形成する連続炭素繊維の配向角度をそれぞれ45度に設定された繊維強化樹脂管状体を作成した。そしてさらに、前述した第3実施形態において使用したテープTを、完成される繊維強化樹脂管状体の軸線G(マンドレルの軸線)に対する捲回角度が約80度となるように捲回した(第4実施形態(1))。使用したテープTのテープ幅dは20mmであり、重なり幅d1は10mm(ずらし幅Δdが10mm)である。そして、前述した実験1と同じ装置および方法により、曲げ加工を行った。
図8の実験結果に示すように、第4実施形態(1)の繊維強化樹脂管状体は曲がった(曲げ性の判定が○)。
本願発明者らは、上述した実験結果に基づき、本実施形態の繊維強化樹脂管状体の構造と曲げ性との関係について考察した。
第4実施形態(1)の繊維強化樹脂管状体は、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維の配向角度が45度であることに加え、さらに曲げ予定領域VEに捲回されたテープTの捲回角度が約80度、つまり、テープTを形成する連続炭素繊維の配向角度が約80度であるため、曲げ予定領域VEを形成する連続強化繊維は総て45度以上になっている。このため、曲げ予定領域VEを形成する連続炭素繊維間は、溶融した熱可塑性樹脂の中で曲げ荷重に追従して相対変位し易いために破断し難く、よって曲げ予定領域VEに座屈や破断が発生しないと推測した。さらに、曲げ予定領域VEには、捲回されたテープTにより、軸線Gの方向に沿った緯糸we(図5(c))が配置されているため、曲げ予定領域VEにおける曲げ強度(剛性)を高めることができたと推測した。さらに、曲げ予定領域VE以外の領域E1,E2を形成している連続炭素繊維の配向角度も45度であり、配向角度を45度よりも小さい、たとえば20度とした場合と比較すると、曲げ強度(剛性)の点では劣るものの、曲げ予定領域VE以外の領域E1,E2にはテープTが捲回されているため、曲げ強度の低下を抑制できたと推測した。
本願発明者らは、上述した実験結果および考察から、曲げ加工に対して強化繊維間が相対変位し易くなる配向角度にて連続炭素繊維を捲回して繊維強化樹脂管状体の母体を形成し、さらに、フィラメントを平織りしたテープを母体の上に捲回することにより、繊維強化樹脂管状体を作成すれば、曲げ予定領域に座屈や破断が発生し難く、かつ、曲げ強度(剛性)の高い繊維強化樹脂管状体を提供することができると結論した。
(1)第1実施形態において作成した繊維強化樹脂管状体を母体とし、その母体にテープTを捲回することにより繊維強化樹脂管状体を作成することもできる。この繊維強化樹脂管状体を実施すれば、曲げ予定領域VEに座屈や破断が発生し難く、かつ、圧縮強度の高い繊維強化樹脂管状体を提供することができる。また、曲げ予定領域VEだけにテープTを捲回しても良い。
(2)第2実施形態において作成した繊維強化樹脂管状体を母体とし、その母体にテープTを捲回することにより繊維強化樹脂管状体を作成することもできる。この繊維強化樹脂管状体を実施すれば、曲げ予定領域VEに座屈や破断が発生し難く、かつ、圧縮強度の高い繊維強化樹脂管状体を提供することができる。また、曲げ予定領域VEだけにテープTを捲回しても良い。
(4)熱可塑性樹脂として、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ABS、PES、PEEK、ポリイミド、PMMAなどを用いることもできる。
(5)炭素繊維に代えてガラス繊維、PBO(ポリパラフェニレンベンズオキサゾール)繊維、ポリアリレート繊維、アラミド繊維、ポリイミド繊維、ポリフェニレンサルファイド(PPS)繊維、フッ素繊維、鉱物繊維などを用いることもできる。
(6)繊維強化樹脂管状体の曲げ方式としてストレッチベンド方式に代えて、曲げ加工対象に金型を押し当てて曲げる、いわゆるスライドベンド方式を用いることもできる。
(7)繊維強化樹脂管状体の両端に引張荷重を掛けて曲げ加工する方法を用いることもできる。
CFRTPが請求項1に記載の繊維強化熱可塑性樹脂に対応し、ポリアミド樹脂または熱可塑性エポキシ樹脂が熱可塑性樹脂に対応し、炭素繊維が強化繊維に対応する。
2 曲げ加工装置
3 金型
3a R部
4 固定クランプ
5 移動クランプ
E1,E2 曲げ予定領域以外の領域
S 連続炭素繊維
T テープ
VE 曲げ予定領域
wa 経糸
we 緯糸
θ1,θ2 配向角度
θ3 曲げ角度
Claims (4)
- 繊維強化熱可塑性樹脂により形成されており、曲げ予定領域の熱可塑性樹脂が加熱により塑性変形が可能となった状態で前記曲げ予定領域の曲げ加工が可能になる繊維強化樹脂管状体であって、
前記繊維強化熱可塑性樹脂は、少なくとも連続強化繊維と熱可塑性樹脂とから形成されたフィラメントであり、
当該繊維強化樹脂管状体の軸線に対する前記連続強化繊維の配向角度が、前記曲げ予定領域以外の領域よりも前記曲げ予定領域の方が大きくなるように前記フィラメントがフィラメントワインディングされていることにより、曲げ加工に対する連続強化繊維間が、前記曲げ予定領域以外の領域よりも前記曲げ予定領域の方が相対変位し易くなっていることを特徴とする繊維強化樹脂管状体。 - 前記連続強化繊維の体積含有率が、前記曲げ予定領域以外の領域よりも前記曲げ予定領域の方が小さいことを特徴とする請求項1に記載の繊維強化樹脂管状体。
- 請求項1に記載の繊維強化樹脂管状体に対して、前記熱可塑性樹脂を伴った強化繊維を織って形成されたテープが、その一部が重なるように螺旋状に捲回されたことを特徴とする繊維強化樹脂管状体。
- 請求項2に記載の繊維強化樹脂管状体に対して、前記熱可塑性樹脂を伴った強化繊維を織って形成されたテープが、その一部が重なるように螺旋状に捲回されたことを特徴とする繊維強化樹脂管状体。
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