以下、本発明のにおい測定装置、におい測定システム、及び、におい測定方法を適用した実施の形態について説明する。
<実施の形態1>
図1は、実施の形態1のにおい測定装置100を示す図である。図1には、利用者が左手でにおい測定装置100を持ち、測定を行っている状態を示す。なお、実施の形態1のにおい測定方法は、におい測定装置100によって行われる測定方法である。また、以下では、空気とは、におい測定装置100が配置される環境下にある空気であり、所定のにおいを有する所定のガスを含む可能性がある空気をいう。
におい測定装置100は、筐体110、吸気パイプ120A、排気パイプ120B、レーザポインタ130A、カメラ130B、加速度センサ130C、測位部130D、表示部140A、及びタッチパネル140Bを含む。におい測定装置100は、所定のにおいを有する所定のガスをガスセンサで検出するとともに、吸気パイプ120Aの移動によって生じる加速度を加速度センサ130で検出する。加速度センサ130によって検出される加速度は、吸気パイプ120Aが向いている方向を求める際に用いられる。吸気パイプ120Aが向く方向は、吸気パイプ120Aによって吸気されるガスが到来する方向を表し、吸気パイプ120Aに対して、所定のにおいを有する所定のガスが存在する方向を表す。
筐体110の内部には、ポンプ、ガスセンサ、抵抗測定回路、及び測定処理部等が配設され、筐体110の上面からは、表示部140A及びタッチパネル140Bが表出する。図1では、筐体110の内部に配設される構成要素については、表示部140A及びタッチパネル140B以外のものを省略する。また、筐体110は、把手115を有する。利用者は、左手で把手115を握ってにおい測定装置100を保持している。
筐体110には、吸気パイプ120A及び排気パイプ120Bが接続されており、筐体110の内部のポンプを作動させることによって、吸気パイプ120Aを介して吸気パイプ120Aの先端の周りの空気を吸い込み、吸い込んだ空気を排気パイプ120Bを介して、元の場所に戻すようになっている。
吸気パイプ120Aは、筐体110に接続されている。吸気パイプ120Aは、円筒状の金属製のパイプであり、筐体110との接続部は、蛇腹式の金属製のパイプ121Aによって接続されている。吸気パイプ120Aは、一例として、直径が10mm、長さが1mであり、ステンレス製である。
吸気パイプ120Aの先端120A1には、レーザポインタ130Aが固定されている。先端120A1は、吸気パイプ120Aの吸気口である。また、一例として、レーザポインタ130Aが出力するレーザ光の光軸は、吸気パイプ120Aの円筒形状の中心軸と一致している。
また、吸気パイプ120Aの外周部と吸気パイプ120Aの外周部との間には、カメラ130B、加速度センサ130C、及び測位部130Dが固定されている。カメラ130B、加速度センサ130C、及び測位部130Dは、吸気パイプ120Aの先端120A1の近くに配置される。
利用者は、においを測定したい位置で吸気パイプ120Aの先端が地面から約10cmの位置に来るように、におい測定装置100を手で持ち、測定を行う。利用者は、レーザポインタ130Aから出力されるレーザ光が照射される位置を目安として、吸気パイプ120Aを向ける方向を調節する。
排気パイプ120Bは、吸気パイプ120Aと略平行に設けられている。排気パイプ120Bは、吸気パイプ120Aと同様に、円筒状の金属製のパイプであり、筐体110との接続部は、蛇腹式の金属製のパイプ121Bによって接続されている。
排気パイプ120Bは、一例として、直径が10mm、長さが1m5cmであり、ステンレス製である。排気パイプ120Bと吸気パイプ120Aとの間隔は、一例として5cmである。排気パイプ120Bの先端120B1は、筐体110側から見て、吸気パイプ120Aの先端120A1よりも5cm先に位置する。
このように、排気パイプ120Bの先端120B1を吸気パイプ120Aの先端120A1の近くに設けているのは、吸気パイプ120Aで吸引した空気をなるべく元の位置に近い位置に戻すことにより、吸引した場所の空気を乱さないようにするためである。
また、排気パイプ120Bの先端120B1を吸気パイプ120Aの先端120A1よりも先に設けているのは、吸気パイプ120Aで吸引する場所の空気に排気パイプ120Bから排気される空気が入らないようにするためである。
レーザポインタ130Aは、一例として、LED(Light Emitting Diode)を有し、レーザ光を出力する。レーザポインタ130Aは、円筒状の吸気パイプ120Aの先端120A1に、光軸が吸気パイプ120Aの円筒形状の中心軸と一致するように設けられている。レーザポインタ130Aのオン、オフは、におい測定装置100の測定処理部によって行われる。
カメラ130Bは、一例として赤外線CCD(Charge Coupled Device)カメラである。カメラ130Bは、吸気パイプ120Aの外周部と吸気パイプ120Aの外周部との間の先端120A1の近くで、加速度センサ130C及び測位部130Dとともに固定されている。カメラ130Bのレンズの光軸は、吸気パイプ120Aの円筒形状の中心軸と平行であり、先端120A1側を向いている。カメラ130Bは、画像取得部の一例である。
このため、カメラ130Bが撮影する方向は、吸気パイプ120Aの先端120A1が向く方向であり、カメラ130Bによって取得される画像には、吸気パイプ120Aの先端120A1が向く方向の視野に入る物体等が含まれることになる。カメラ130Bの制御は、筐体110内の測定処理部によって行われ、画像データは、測定処理部に伝送される。
加速度センサ130Cは、吸気パイプ120Aの外周部と吸気パイプ120Aの外周部との間に、カメラ130B及び測位部130Dとともに固定されている。加速度センサ130Cは、吸気パイプ120Aが向いている方向を検出するために利用するため、一例として、3軸加速度センサを用いることができる。加速度センサ130Cによって検出される加速度を表すデータは、測定処理部に伝送される。
測位部130Dは、吸気パイプ120Aの外周部と吸気パイプ120Aの外周部との間の先端120A1の近くで、カメラ130B及び加速度センサ130Cとともに固定されている。測位部130Dは、Bluetooth(登録商標)のビーコン信号を受信して測位し、位置データを出力する。位置データは、測定処理部に伝送される。位置データは、吸気パイプ120Aの先端120A1の位置を把握するために利用される。
なお、加速度センサ130C及び測位部130Dは、情報取得部130Sを構築する。情報取得部130Sは、吸気パイプ120Aの先端120A1(吸気口)の位置及び方向を含む情報を取得する。
ここで、加速度センサ130Cによって検出される加速度データは、先端120A1の方向を求めるために利用される情報であり、先端120A1の方向を表す情報を含む。このため、加速度センサ130Cは、先端120A1の方向を含む情報を取得するセンサである。また、測位部130Dは、先端120A1の位置を含む情報を取得する。したがって、情報取得部130Sは、吸気パイプ120Aの先端120A1(吸気口)の位置及び方向を含む情報を取得する部分として捉えることができる。
表示部140Aは、筐体110の上面から表出するように設けられている。表示部140Aは、例えば、液晶パネル又は有機EL(Electroluminescence)パネル等のディスプレイパネルである。表示部140Aの表示内容は、測定処理部によって制御される。
表示部140Aは、タッチパネル140Bの裏側(図中の下側)に設けられており、タッチパネル140Bと一体化されている。利用者は、表示部140A及びタッチパネル140Bを介して操作入力を行うことにより、におい測定装置100を操作することができる。
タッチパネル140Bは、表示部140Aの表面側(図中の上側)に設けられており、表示部140Aに表示されるGUI(Graphic User Interface)ボタン等への操作入力を検出する。タッチパネル140Bが検出する操作入力の位置を表す座標データは、測定処理部に入力される。
図2は、筐体110の内部構成と、レーザポインタ130A、カメラ130B、加速度センサ130C、及び測位部130Dとの接続関係を示す図である。図2には、筐体110の断面構造を示す。
におい測定装置100は、図1に示す構成要素に加えて、さらに、温度センサ130E、湿度センサ130F、ガスセンサ150A、150B、150C、抵抗測定回路160、変換回路165、測定処理部170、通信部180、フィルタ190A、及びポンプ190Bを含む。
筐体110は、吸気口111A、測定室111B、排気口111Cを有する。吸気口111Aは、蛇腹式のパイプ121Aを介して吸気パイプ120Aに接続され、吸気パイプ120Aから測定室111Bにガスを導入する導入口である。なお、図2では、図面の見易さの観点から、吸気口111A及び排気口111Cを離して示すが、実際には、図1に示すパイプ121A及び121Bが接続される箇所にあるため、吸気口111A及び排気口111Cは近接しており、10cm程度の間隔で配置されている。
測定室111Bは、筐体110の内部に設けられた空間(チャンバ)であり、吸気口111A及び排気口111Cのみを介して筐体110の外部空間に繋がっている。測定室111Bと吸気口111Aとの間には、フィルタ190Aが設けられている。排気口111Cにはポンプ190Bが設けられているため、ポンプ190Bを作動させると、測定室111Bには吸気口111Aからフィルタ190Aを通過したガスが導入され、排気口111Cから排気される。
測定室111Bの内部には、温度センサ130E、湿度センサ130F、及びガスセンサ150A、150B、150Cが設けられている。温度センサ130E及び湿度センサ130Fは、測定室111Bの上側の壁面に取り付けられており、ガスセンサ150A、150B、150Cは、測定室111Bの底面に取り付けられている。
排気口111Cは、蛇腹式のパイプ121Bを介して排気パイプ120Bに接続されており、また、排気口111Cにはポンプ190Bが設けられている。排気口111Cは、測定室111B内のガスを排気する。
温度センサ130Eは、測定室111Bの内部の温度を測るために設けられており、温度を表すデータを測定処理部170に出力する。湿度センサ130Fは、一例として、測定室111Bの内部の湿度を測るために設けられており、湿度を表すデータを測定処理部170に出力する。
ガスセンサ150A、150B、150Cは、一例として、測定室111Bの底面に配置されている。ガスセンサ150A、150B、150Cは、吸気口111Aから排気口111Cに向かう測定室111B内の流路において、流路に沿ってこの順に配列されている。ガスセンサ150A、150B、150Cは、それぞれ異なるにおいを有するガスを検出するセンサである。
ガスセンサ150Aは、一例として、アンモニアガスを検出するセンサである。ガスセンサ150Aは、一例として、臭化第一銅(CuBr)膜を用いたセンサであり、測定室111Bに導入される呼気に含まれる可能性があるアンモニアを検出するために設けられている。臭化第一銅は、アンモニア(NH3)ガスを吸着するため、ガスセンサ150Aは、アンモニア雰囲気下で抵抗値が変化する。ガスセンサ150Aは、第1ガスセンサの一例である。
ガスセンサ150Aは、支持基板151Aの上に、2つの電極152Aと、2つの電極152Aに跨る臭化第一銅膜153Aとを成膜したものである。支持基板151Aは、例えば、熱酸化膜が形成されたSiウェハであり、2つの電極152Aは、例えば、Au(金)/Pt(白金)/Ti(チタン)をそれぞれ50nm/50nm/10nmの厚さで積層した電極である。また、センサ膜としての臭化第一銅膜153Aの厚さは、例えば、500nmである。2つの電極152Aは、抵抗測定回路160に接続される。
抵抗測定回路160は、ガスセンサ150Aの臭化第一銅膜153Aに所定の電圧(例えば、2V)を印加し、臭化第一銅膜153Aに流れる電流値を検出する。電流値は、臭化第一銅膜153Aの抵抗値を表す。電流値を表すデータは、変換回路165に伝送される。
ガスセンサ150Aは、P型半導体である臭化第一銅膜153Aにアンモニア分子が可逆的に吸着・脱離する性質を利用し、臭化第一銅膜153Aの組成及び膜厚を最適化したセンサデバイスである。アンモニアの吸着で銅のキャリア濃度が変化することで、電極間の電気抵抗が変化する現象を利用している。ガスセンサ150Aは、呼気に多く含まれるガスの一つであるアセトンに対して、2500倍の感度差で、10ppbからアンモニアだけを区別した計測が可能である。
また、特にアンモニア以外の有機ガスに対して感度差をつけるために、臭化第一銅膜153Aの表面に有機薄膜を形成してもよい。この場合、相対的に感度を低下させるために、有機薄膜をなるべく薄く形成するようにする方が望ましい。例えば、臭化第一銅膜153Aの表面に金粒子を塗布し、高分子ガスに晒すことにより、有機薄膜の単分子層を形成してもよい。高分子ガスとしては、例えば、アミン系、チオール系、シラン系のカップリング材を含むガスを用いるとよい。
なお、ここでは、ガスセンサ150Aが第1ガス感応素子として臭化第一銅膜153Aを含む形態について説明するが、第1ガス感応素子の組成は、厳密に臭化第一銅ではなくてもよい。第1ガス感応素子の組成は、銅(Cu)又は銀(Ag)を主材料とするハロゲン化合物あるいはハロゲン酸化物であればよい。
ガスセンサ150Bは、一例として、アルコールガスを検出するセンサである。ガスセンサ150Bは、ヒータ155Bの上に配置されており、支持基板151Bの上に、2つの電極152Bと、2つの電極152Bに跨る酸化スズ膜153Bとを成膜したものである。酸化スズ膜153Bは、第2ガス感応素子の一例である。支持基板151B及び電極152Bは、支持基板151A及び電極152Aと同様である。
ガスセンサ150Bは、ヒータ155Bで過熱した状態で、アルコールガスが酸化スズ膜153Bに付着すると、酸化スズ膜153Bの抵抗値が変化する。ガスセンサ150Bは、第2ガスセンサの一例である。
抵抗測定回路160は、ガスセンサ150Bの酸化スズ膜153Bに所定の電圧を印加し、酸化スズ膜153Bに流れる電流値を検出する。電流値は、酸化スズ膜153Bの抵抗値を表す。電流値を表すデータは、変換回路165に伝送される。
酸化スズ膜153Bは、主体とする金属の種類、又は、ガス触媒作用を持つ貴金属を含有させた場合のヒータ155Bの加熱量によって、選択性を持たせることができる。選択性とは、ガス種による酸化スズ膜153Bの抵抗値の変化率の度合の差であり、ここでは、アルコールガスに対する抵抗値の変化率の度合と、アルコールガス以外のガスに対する抵抗値の変化率の度合との差である。
例えば、酸化スズ膜153Bに、貴金属であるパラジウム又は白金、アルミニウム、鉛等の添加金属を含有させることで、ガス種に対する選択性を調整することができる。具体的には、酸化スズ膜153Bは、アルコールガス以外にアセトンガスに対して感度を有する。このため、アセトンガスの選択性に対するアルコールガスの選択性は、10倍程度に設定することが望ましい。
なお、ガスセンサ150Bとしては、上述のような構成のものに限らず、アルコール(エタノール)に含まれる水素を水素イオンと電子に分離して電力を発生させることで、アルコールを検出するセンサを用いてもよく、さらに他の方式でアルコールを検出するセンサを用いてもよい。
ガスセンサ150Cは、一例として、アセトアルデヒドのガスを検出するセンサである。ガスセンサ150Cは、ヒータ155Cの上に配置されており、支持基板151Cの上に、2つの電極152Cと、2つの電極152Cに跨るアセトアルデヒド検出膜153Cとを成膜したものである。アセトアルデヒド検出膜153Cは、第3ガス感応素子の一例である。支持基板151C及び電極152Cは、支持基板151A及び電極152Aと同様である。
アセトアルデヒド検出膜153Cは、Cu(銅)とハロゲン元素を含むベース膜に、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)[poly(3,4-ethylenedioxythiophene)]/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)を結合させた構成を有し、アセトアルデヒドを速い応答速度で、高感度で検出できる検出膜である。アセトアルデヒド検出膜153Cの詳細な構成については、図3を用いて後述する。
ガスセンサ150Cは、ヒータ155Cで過熱した状態で、アセトアルデヒドのガスがアセトアルデヒド検出膜153Cに付着すると、アセトアルデヒド検出膜153Cの抵抗値が変化する。ガスセンサ150Cは、第3ガスセンサの一例である。
抵抗測定回路160は、ガスセンサ150Cのアセトアルデヒド検出膜153Cに所定の電圧を印加し、アセトアルデヒド検出膜153Cに流れる電流値を検出する。電流値は、アセトアルデヒド検出膜153Cの抵抗値を表す。電流値を表すデータは、変換回路165に伝送される。
なお、ガスセンサ150Cとしては、上述のような構成のものに限らず、他の方式でアセトアルデヒドを検出するセンサを用いてもよい。
以上のように、ガスセンサ150A、150B、150Cについては、ガスセンサ150Aにはヒータが取り付けられておらず、ガスセンサ150B及び150Cにはヒータ155B及び155Cが取り付けられている。
したがって、吸気口111Aから排気口111Cに向かう測定室111B内の流路に沿って、ガスセンサ150A、150B、150Cをこの順に配列することにより、ガスセンサ150Aがガスセンサ150B及び150Cのヒータ155B及び155Cの熱の影響を受け難い構成にすることができる。
抵抗測定回路160は、ガスセンサ150A、150B、150Cに接続されており、ガスセンサ150A、150B、150Cに電圧を印加して電流値を測定し、電流値を表すデータを変換回路165に伝送する。ガスセンサ150A、150B、150Cに流れる電流値は、ガスセンサ150A、150B、150Cの抵抗値に反比例した値であり、測定室111Bに吸気された空気中におけるアンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスの濃度を表す。
なお、一例として、ガスセンサ150Aの臭化第一銅膜153Aの抵抗値は、アンモニアガスの濃度が高いほど上昇し、低いほど低下する。ガスセンサ150Bの酸化スズ膜153Bの抵抗値は、アルコールガスの濃度が高いほど低下し、低いほど上昇する。ガスセンサ150Cのアセトアルデヒド検出膜153Cの抵抗値は、アセトアルデヒドガスの濃度が高いほど上昇し、低いほど低下する。
抵抗測定回路160は、ガスセンサ150A、150B、150Cの電流値を表すデータを識別可能な状態で変換回路165に伝送する。
変換回路165は、抵抗測定回路160から入力されるガスセンサ150A、150B、150Cの電流値を表すアナログデータを電圧を表すアナログデータに変換してから、所定のサンプリング周期でデジタル変換する。さらに、変換回路165は、電圧値を表すデジタルデータを抵抗値に変換する。サンプリング周期は、一例として、0.1秒である。
変換回路165は、電流値を表すデータを電圧値を表すデータに変換する抵抗器と、電圧値を表すアナログデータをデジタル変換するA/D(Analog to Digital)変換器とを有する。変換回路165は、抵抗値を表すデータ(抵抗値データ)を測定処理部170に伝送する。
測定処理部170は、制御部171及びメモリ172を有する。測定処理部170は、CPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)、HDD(Hard Disk Drive)、及び内部バス等を含むコンピュータによって実現される。
制御部171は、測定処理部170が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ172は、測定処理部170のメモリを機能的に表したものである。
測定処理部170には、レーザポインタ130A、カメラ130B、加速度センサ130C、温度センサ130E、湿度センサ130F、表示部140A、タッチパネル140B、抵抗測定回路160、変換回路165、通信部180、及びポンプ190Bが接続されている。
制御部171は、タッチパネル140Bへの操作入力の内容に応じて、レーザポインタ130Aの点灯制御、カメラ130Bの撮影制御、表示部140Aの表示制御、及びポンプ190Bの作動制御を行う。
また、制御部171は、カメラ130B、加速度センサ130C、測位部130D、温度センサ130E、湿度センサ130F、及び変換回路165からそれぞれ入力される画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに、タイムスタンプを付与する。これらのデータは、すべてデジタルデータである。
制御部171は、画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データには、制御部171が取得した時点の時刻を表すタイムスタンプを付与する。制御部171がこれらのデータを取得した時刻は、画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データが検出された時刻と殆ど時間差がなく、検出された時刻として取り扱えるからである。
また、制御部171は、抵抗値データには、吸気パイプ120Aの先端120A1からガスセンサ150A、150B、150Cまでの流路の長さと、ポンプ190Bで吸引する場合の流速とによって決まる時間差で補正した時刻を表すタイムスタンプを付与する。
具体的には、流速がA m/sで流路がB mである場合に、B/A秒だけガスの検出が遅れるため、画像データ、加速度データ、温度データ、及び湿度データに付与するタイムスタンプが表す時刻からB/A秒を減算した時刻を表すタイムスタンプを抵抗値データに付与する。
制御部171は、画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに、上述のようなタイムスタンプを付与してから、通信部180を介して後述するデータ処理装置に送信する。この場合に、制御部171は、同一時刻を表すタイムスタンプを有する画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データを後述するデータ処理装置に送信するようにしてもよい。
メモリ172は、制御部171が取得する上述のデータを一時的に格納するとともに、上述のデータを後述するデータ処理装置に送信するために用いるプログラム及びデータ等を格納する。
通信部180は、インターネットを通じて無線通信を行うモデム等の通信デバイスである。
フィルタ190Aは、筐体110の吸気口111Aと測定室111Bとの間に設けられており、吸気パイプ120Aを介して吸気したガスを含む可能性がある空気から塵埃等を除去する。
ポンプ190Bは、筐体110の排気口111Cに設けられており、測定室111Bの内部の空気を排気口111Cから排出する。これにより、吸気パイプ120Aの先端120A1の空気が吸引されて測定室111Bの内部に導入(案内)され、さらにポンプ190Bを作動させることによって排気パイプ120Bから排気される。ポンプ190Bは、吸気口111Aを介して測定室111Bの内部に空気を案内する案内装置の一例である。
ポンプ190Bは、吸気パイプ120Aを介して測定室111Bの内部に空気を案内する案内装置の一例である。ポンプ190Bとしては、測定室111Bの内部の空気を吸引できるものであれば、どのような形式のものであってもよい。
図3は、ガスセンサ150Cの構成を示す図である。図3に示すように、アセトアルデヒド検出膜153Cは、Cu(銅)とハロゲン元素を含むベース膜153C1と、ベース膜153C1に結合したポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)[poly(3,4-ethylenedioxythiophene)]/ポリスチレンスルホン酸(PEDOT/PSS)153C2とを含む。ベース膜153C1は、ハロゲン化銅膜であって、具体的には、臭化第一銅(CuBr)膜である。
このように、アセトアルデヒド検出膜153Cにガスが吸着する部分にPEDOT/PSS153C2を用い、ベース膜(ベース材料)153C1に応答が速く、高感度であるCuBr膜を用いることで、アセトアルデヒドを応答が速く、高感度で検出できるアセトアルデヒド検出膜153Cを実現できる。
PSS単体、PEDOT単体では導電性が低いが、PEDOT/PSS153C2となることで導電性が発生する。
ここで、PEDOT/PSS153C2は、3,4-エチレンジオキシチオフェン[3,4-ethylenedioxythiophene](EDOT)をPSS存在下で、水中で酸化重合させることで、微粒子の水分散体として得られるものである。PEDOT単体はπ共役系ポリマーで、PSSはドーパントと水分散剤の役割をしている。
しかしながら、PEDOT/PSS153C2は、ガスセンサに用いるには抵抗値が著しく高い。一方、ベース膜153C1は、導電性が高く、例えばアンモニアセンサのセンサデバイスに備えられる感応膜に用いられており、応答が速く、高感度であるといった極めて優れた特長を持っている。
そこで、ベース膜にベース膜153C1を用い、ベース膜153C1の上面のガスが吸着する部分にPEDOT/PSS153C2を用いることで、アセトアルデヒドに対する応答が速く、高感度で検出できるアセトアルデヒド検出膜153Cを実現している。
また、アセトアルデヒド検出膜が高抵抗の場合には、簡易な測定回路では測定不可能であり、大型の測定装置が必要となって現実的でないのに対し、アセトアルデヒド検出膜153Cを上述のように構成することで低抵抗化を図ることで、比較的簡易な方法で測定できるようになる。
図3に示すように、PEDOT/PSS153C2は、ベース膜としてのベース膜153C1を構成する結晶粒の粒界及び結晶粒の表面に結合している。すなわち、アセトアルデヒド検出膜153Cは、ベース膜としてのベース膜153C1を構成する結晶粒の粒界及び結晶粒の表面にPEDOT/PSS153C2を結合(吸着)させた膜である。
ここでは、アセトアルデヒド検出膜153Cは、複数の結晶粒(例えば大きさの異なる複数の結晶粒)が並置されたベース膜153C1と、ベース膜153C1を構成する複数の結晶粒に沿ってベース膜153C1と結合したPSSと、PSSに吸着したPEDOTとを備える。
この場合、PEDOT/PSS鎖153C2をCu+が架橋する特性から、CuBr膜を構成する結晶粒の表面を覆うPEDOT/PSSが凹凸形状に沿って均一に結合し、アセトアルデヒドを吸着する表面積が大きくなる。
このように、アセトアルデヒドを吸着する面積が大きくなるため、アセトアルデヒドの濃度あたりの電気抵抗値の変化を大きくすることができ、応答が速く、高感度でアルデヒドを検出することが可能となる。
図4は、タイムスタンプが付与されたデータを示す図である。制御部171は、図4に示すように、画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データにタイムスタンプが関連付けられる。
図4では、一例として、タイムスタンプはT1であり、T1が表す同一時刻に検出された画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データを示す。
なお、抵抗値データには吸気の時間差を補正した時刻のタイムスタンプが関連付けられる。また、制御部171は、同一時刻を表すタイムスタンプを有する画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データを行列式の形式のデータとして、データ処理装置500に送信してもよい。
図5は、画像データの一例を示す図である。図5には、画像データを表示部140Aに表示した状態を示す。ここでは一例として男子トイレで撮影した画像データを示す。吸気パイプ120Aの先端120A1の先には、床30にレーザポインタ130Aのポインタ130A1が照射されている。利用者は、このようにポインタ130A1を見て吸気パイプ120Aの先端120A1が向いている方向及び位置を認識することができる。
図6は、コンピュータシステム10を示すブロック図である。ここでは、測定処理部170(図2参照)として用いるコンピュータシステム10について説明する。
コンピュータシステム10は、バス20によって接続されたCPU21、RAM又はROM等を含むメモリ部22、及びハードディスクドライブ(HDD)23を含む。尚、図2に示すメモリ172は、メモリ部22及びハードディスクドライブ23に相当する。
コンピュータシステム10において、タッチパネル140B(図1参照)は、におい測定装置100の入力部である。表示部140A(図1参照)は、におい測定装置100に対する入力内容及び測定結果等を表示する表示部である。
なお、コンピュータシステム10は、図6に示す構成のものに限定されず、各種周知の要素を付加してもよく、又は、各種周知の要素を代替的に用いてもよい。
図7は、におい測定システム1を示す図である。におい測定システム1は、におい測定装置100とデータ処理装置500を含む。におい測定装置100及びデータ処理装置500は、インターネット600で接続されている。データ処理装置500の機能は、クラウド上のコンピュータの機能によって実現されてもよい。クラウド上のコンピュータの機能は、1又は複数のコンピュータシステムによって実現される。
また、データ処理装置500は、サーバ等のコンピュータシステムであってもよい。この場合には、データ処理装置500は、図6に示すコンピュータシステム10と同様の構成を有する。
図8は、データ処理装置500を示す図である。データ処理装置500は、演算部501、通信部502、及びメモリ503を有する。演算部501及び通信部502は、データ処理装置500が実行するプログラムの機能(ファンクション)を機能ブロックとして示したものである。また、メモリ503は、データ処理装置500のメモリを機能的に表したものである。
演算部501は、カメラ130Bから入力される画像データ、測位部130Dから入力される位置データ、加速度センサ130Cから入力される加速度データ、及び、変換回路165から入力される抵抗値データに基づいて、においの測定結果を表すデータを作成する。
ガスセンサ150A、150B、150Cがそれぞれアンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスを検出することによる抵抗値の変化は微小である。このため、演算部501は、ガスセンサ150A、150B、150Cの基準抵抗値に対する抵抗値の変化量を求め、抵抗値の変化量に基づいてにおいの測定結果を表すデータを作成する。
通信部502は、インターネット600を介して、におい測定装置100とデータ通信を行う。より具体的には、通信部502は、におい測定装置100から画像データ、加速度データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データを受信し、におい測定装置100ににおいの測定結果を表すデータを送信する。
メモリ503は、におい測定装置100から受信する画像データ、加速度データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに基づいて、データ処理装置500がにおいの測定結果を表すデータを作成する際に用いるプログラム及びデータ等を格納する。
図9は、抵抗値補正テーブルを示す図である。抵抗値補正テーブルは、データ処理装置500の演算部501が温度及び湿度に基づいて抵抗値を補正する際に用いるテーブル形式のデータである。
抵抗値補正テーブルは、横軸が温度、縦軸が湿度であり、温度と湿度によって補正係数C00~C105の値が設定されている。温度は10℃刻みで0℃~50℃までの範囲であり、湿度は10%刻みで0%~100%までの範囲である。
ガスセンサ150A、150B、150Cの抵抗値は、温度と湿度によって変動するため、測定日時による温度及び湿度の変動分を除去して定性的な比較を可能にするために、抵抗値補正テーブルを利用する。
なお、補正係数C00~C105の各々の値は、シミュレーション又は実験等で予め決めておけばよい。また、抵抗値補正テーブルは、温度が10℃刻みで湿度が10%刻みであるため、抵抗値補正テーブルに含まれる値を補間して、測定時の温度及び湿度の値に応じた補正係数Cを求めればよい。
図10は、データ処理装置500の演算部501が作成する抵抗分布データを示す図である。抵抗分布データは、演算部501がにおいの測定結果を表すデータを作成する過程で作成するデータである。
演算部501は、におい測定装置100から受信した抵抗値データに基づいて、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)を作成する。
演算部501は、におい測定装置100から入力されるガスセンサ150Aの抵抗値データのうち、タイムスタンプが時刻tmから時刻tnまでの抵抗値と、ガスセンサ150Aの抵抗値の基準値とに基づいて、抵抗値の変化量を演算することにより、抵抗分布データR001(tm-tn)を作成する。
また、同様に、演算部501は、におい測定装置100から入力されるガスセンサ150B及び150Cの抵抗値データのうち、タイムスタンプが時刻tmから時刻tnまでの抵抗値と、ガスセンサ150B及び150Cの抵抗値の基準値とに基づいて、それぞれ、抵抗値の変化量を演算することにより、抵抗分布データR002(tm-tn)及びR003(tm-tn)を作成する。
tm-tnは、抵抗分布データR001(tm-tn)が時刻tmから時刻tnまでのタイムスタンプが付与された抵抗値の変化量を含むことを表し、最も早い時刻がtmであり、最も遅い時刻がtnである。これは、抵抗分布データR002(tm-tn)及びR003(tm-tn)についても同様である。
また、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)の001、002、003は、それぞれ、ガスセンサ150A、150B、150Cに対応する識別子である。
抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)は、におい測定装置100から入力される抵抗値データのうち、時刻tmから時刻tnまでのデータを演算部501が抵抗値の変化量に変換して時系列的に並べたデータである。
図11は、においの測定の様子とデータの処理の流れを説明する図である。図11では、におい測定装置100を簡略化して示し、筐体110、吸気パイプ120A、パイプ121A、カメラ130B、加速度センサ130C、及び測位部130Dのみを示す。
また、説明の便宜上、におい測定装置100の吸気パイプ120Aで吸気する空間にXYZ座標系を示す。XYZ座標系は、測位部130Dが測位する座標系である。
利用者は、破線の矢印(1)に示すように吸気パイプ120AをX軸方向に沿って移動させて(スキャンして)空気を吸気し、Y軸方向に位置をずらしながら、破線の矢印(2)~(4)で示すように繰り返しスキャンする。利用者は、矢印(1)~(4)のそれぞれの始点でポンプ190Bを作動させ、終点でポンプ190Bの作動を停止させる。なお、吸気パイプ120Aの位置をY軸方向にずらす量は予め決めておき、一定間隔で繰り返しずらせばよい。一例として、Y軸方向に位置をずらす量は、30cmである。
このとき、ガスセンサ150Aは、アンモニアガスを検出し、抵抗測定回路160から出力される電流値は変換回路165で抵抗値に変換され、抵抗値データは、通信部180を介してデータ処理装置500に伝送される。演算部501は、矢印(1)~(4)のスキャンで取得された抵抗値から、抵抗分布データR001(tm1-tn1)~R001(tm4-tn4)を作成する。抵抗分布データR001(tm1-tn1)~R001(tm4-tn4)は、それぞれ、矢印(1)~(4)のスキャンで取得したアンモニアガスの濃度を表す。
同様に、ガスセンサ150B、150Cは、それぞれ、アルコールガス、アセトアルデヒドガスを検出し、抵抗測定回路160から出力される電流値は変換回路165で抵抗値に変換され、抵抗値データは、通信部180を介してデータ処理装置500に伝送される。演算部501は、矢印(1)~(4)のスキャンで取得された抵抗値から、抵抗分布データR002(tm1-tn1)~R002(tm4-tn4)、R003(tm1-tn1)~R003(tm4-tn4)を作成する。
また、におい測定装置100は、ポンプ190Bが作動しているときに、カメラ130Bから画像データを取得し、加速度センサ130Cから加速度データを取得し、測位部130Dで吸気パイプ120Aの位置を表す位置データを取得する。また、におい測定装置100は、温度センサ130E及び湿度センサ130Fから温度データ及び湿度データを取得する。
画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データには、上述したようにタイムスタンプが付与されており、抵抗値データには上述のように時間差を補正したタイムスタンプが付与されている。
図11の中央には、抵抗分布データR001(tm1-tn1)~R001(tm4-tn4)が表すアンモニアガスの濃度の分布を示す。データ処理装置500は、さらに多くの抵抗分布データR001(tm-tn)を作成し、タイムスタンプが表す時刻に基づいて抵抗分布データR001(tm-tn)と位置データを関連付けることで、図11の右に示すようなにおい分布データ50を作成する。におい分布データ50は、データ処理装置500からインターネット600を介してにおい測定装置100に送信され、表示部140Aに表示される。データ処理装置500は、におい分布データ作成装置の一例である。
におい分布データ50は、においを有するガスの濃度の分布をXY平面に表すデータである。Z軸の値は、吸気パイプ120Aの先端120A1のZ軸座標である。ここでは、10cmである。におい分布データ50の縦軸は、抵抗値の変化量を表す。抵抗値の変化量は、ガスの濃度(においの分布)を表す。
データ処理装置500は、地面に対する一定の高さのXY平面におけるガスの濃度の分布をにおい分布データ50として作成する。このため、吸気パイプ120Aの先端120A1の地面に対する高さを一定に保持しながらスキャンすることが好ましい。
におい分布データ50には、抵抗値の変化量のピークが表れている。図11では、抵抗値の変化量のピークの位置が分かり易くなるように、ピークの周辺をグレーの楕円で囲って示す。ピークは、各スキャンにおいて抵抗率の変化量が増大する区間において、抵抗率の変化量が最大になる位置を表す。換言すれば、各スキャンにおける抵抗率の変化量の極大値を与える位置を表す。
また、におい分布データ50は、抵抗値の変化量のピークに付される矢印を含む。ピークに付される矢印は、方向データが示す方向を表す。方向データは、吸気パイプ120Aによって吸引されるガスが到来する方向を表し、吸気パイプ120Aに対して、所定のにおいを有する所定のガスが存在する方向を表す。データ処理装置500は、タイムスタンプが表す時刻に基づいて抵抗分布データR001(tm-tn)のピークと方向データを関連付けることで、ピークに矢印を付与する。
このように、データ処理装置500は、においを有するガスの濃度、位置、方向を表すにおい分布データ50を作成する。
また、データ処理装置500は、抵抗分布データR002(tm-tn)、R003(tm-tn)に基づいて、アルコールガス、アセトアルデヒドガスについても、におい分布データ50を作成する。
なお、図11に示すにおい分布データ50は、抵抗値の変化量のピークに付される矢印を含む。矢印は、方向データが示す方向を表す。しかしながら、におい分布データ50は、すべての抵抗値の変化量を表すデータに、方向データの方向を表す矢印を付してもよい。また、すべての抵抗値の変化量を表すデータに方向データの方向を表す矢印を付すのではなく、例えば、所定のデータ数毎の抵抗値の変化量と、抵抗値の変化量のピークとに方向データの方向を表す矢印を付してもよい。
図12は、測定で得られたピークに関するデータを関連付けたピーク関連テーブルデータを示す図である。ここでは、アンモニアガスについて作成するピーク関連テーブルデータについて説明する。
データ処理装置500は、抵抗値の変化量のピークを与える抵抗値を測定した時刻、ピークレベル、画像データ、距離データ、位置データ、及び方向データを関連付けることによって、ピーク関連テーブルデータを作成する。
ピークを与える抵抗値を測定した時刻は、におい分布データ50で得られる抵抗値の変化量のピークを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻であり、抵抗分布データR001(tm-tn)から取得すればよい。
図12では、時刻tp1、tp2、tp3、・・・を示す。なお、抵抗値の変化量のピークとは、抵抗分布データR001(tm-tn)に含まれる複数の抵抗値の変化量のうち、極大値を与える1又は複数の抵抗値の変化量である。
ピークレベルは、におい分布データ50で得られる抵抗値の変化量のピークを表すレベルである。図12では、レベルap1、ap2、ap3、・・・を示す。
画像データは、ピークを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻と同一のタイムスタンプを有する画像データである。図12では、画像データPct1、Pct2、Pct3、・・・を示す。
距離データは、ピークを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻と同一のタイムスタンプを有する画像データにおいて、吸気パイプ120Aの先端120A1からレーザポインタ130Aが照射するポインタまでの距離を表し、画像データに対して画像処理を行うことによって求められる。図12では、距離データが表す距離として、0.5m、0.6m、0.5m、・・・を示す。
位置データは、ピークを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻と同一のタイムスタンプを有する位置データである。図12では、位置データ(X1,Y1,Z1)、(X2,Y2,Z2)、(X3,Y3,Z3)、・・・を示す。
方向データは、ピークを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻と同一のタイムスタンプを有する加速度データから演算部501が演算によって求める方向であり、吸気パイプ120Aが向いている方向を表す。
方向データは、ベクトルで方向を表すデータであり、ベクトルの成分はXYZ座標系で表される。図12では、方向データ(Xd1,Yd1,Zd1)、(Xd2,Yd2,Zd2)、(Xd3,Yd3,Zd3)、・・・を示す。
また、データ処理装置500は、アルコールガス、アセトアルデヒドガスについても、ピーク関連テーブルデータを作成する。
図13は、演算部501が作成するピークレベルのランキング表を示す図である。演算部501は、ピーク関連テーブルデータ(図12参照)からピークレベルの上位4位までを抽出し、図13に示すようにピークレベルが高い方から順番に並べたピークレベルのランキング表を作成する。
ピークレベルのランキング表は、順位、座標、ピークレベル、現場写真、距離、時刻、及び方向を含む。ピークレベルのランキング表は、ピーク関連テーブルデータ(図12参照)の画像データの代わりに現場写真を含む。現場写真としては、画像データが表す現場写真をビットマップで貼り付ければよい。なお、図13では、時刻を記号ではなく具体的な時刻を表す数値で示す。
ピークレベルのランキング表は、ガスの種類毎に作成すればよいが、すべてのガスの中でのランキングであってもよい。なお、上位4位までのデータを抽出するのは一例であり、上位何位までであってもよい。また、何位までのデータを抽出するかを利用者がタッチパネル140Bへの操作入力で選択できるようにしてもよい。
図14は、におい測定装置100の処理を示すフローチャートである。
制御部171は、処理を開始(スタート)すると、レーザポインタ130Aを点灯する(ステップS1)。処理を開始するのは、におい測定装置100の電源がオンにされ、スキャンを開始する操作入力がタッチパネル140Bに行われたときである。
制御部171は、カメラ130Bで撮影を行う(ステップS2)。
制御部171は、カメラ130B、加速度センサ130C、測位部130D、温度センサ130E、及び湿度センサ130Fから画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データをそれぞれ取得する(ステップS3)。
制御部171は、ポンプ190Bを作動させて、測定室111Bに空気を導入する(ステップS4)。なお、フローが繰り返し実行されることによる2回目以降のステップS4において、すでにポンプ190Bが作動している場合には、作動状態を保持する。
制御部171は、変換回路165から抵抗値を取得する(ステップS5)。ステップS5では、ガスセンサ150A、150B、150Cに対応する3つの抵抗値を取得する。
制御部171は、画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データに現在時刻を表すタイムスタンプを付与するとともに、抵抗値データに時間差を補正した時刻を表すタイムスタンプを付与してメモリ172に格納する(ステップS6)。
制御部171は、ステップS6でタイムスタンプを付与した画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データを通信部180を介してデータ処理装置500に送信する(ステップS7)。
制御部171は、ポンプ190Bを停止するかどうかを判定する(ステップS8)。ポンプ190Bを停止するのは、タッチパネル140Bへの操作入力によって、スキャンの停止が選択された場合である。
制御部171は、ポンプ190Bを停止しない(S8:NO)と判定すると、フローをステップS2にリターンさせる。この結果、ステップS2からS8の処理が繰り返し実行される。
また、制御部171は、ポンプ190Bを停止する(S8:YES)と判定すると、ポンプ190Bを停止し、レーザポインタ130Aを消灯する(ステップS9)。以上で、一連の処理が終了する(エンド)。
図15は、データ処理装置500の演算部501が抵抗分布データを作成する処理を示すフローチャートである。
演算部501は、処理を開始(スタート)すると、通信部502を介してにおい測定装置100から抵抗値データを受信したかどうかを判定する(ステップS11)。なお、演算部501は、抵抗値データを受信するまでステップS11の処理を繰り返し実行する。
演算部501は、におい測定装置100から受信した抵抗値データを温度データ及び湿度データと抵抗値補正テーブルを用いて補正する(ステップS12)。抵抗値データの補正に用いる温度データ及び湿度データは、抵抗値データのタイムスタンプと等しい時刻のタイムスタンプを有する温度データ及び湿度データである。
演算部501は、抵抗値データのタイムスタンプと等しい時刻のタイムスタンプを有する温度データ及び湿度データに基づいて、抵抗値補正テーブルから補正係数Cの補間値を求め、補間値を抵抗値に乗算することにより、抵抗値を補正する。
演算部501は、ステップS12で補正された抵抗値データを用いて、基準抵抗値に対する抵抗値の変化量を演算する(ステップS13)。演算部501は、ステップS13では、ガスセンサ150A、150B、150Cの各々の抵抗値について、基準抵抗値に対する抵抗値の変化量を演算する。
演算部501は、ステップS13で演算した抵抗値の変化量を抵抗分布データに追加する(ステップS14)。ステップS14の処理により、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)に、新たな抵抗値の変化量が追加されることになる。抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)は、メモリ503に格納される。
演算部501は、処理を終了するかどうかを判定する(ステップS15)。処理を終了するのは、例えば、におい測定装置100から処理を終了する旨の通知を受けた場合等である。
演算部501は、処理を終了しない(S15:NO)と判定すると、フローをステップS11にリターンする。演算部501は、ステップS11~S15の処理を繰り返し実行することにより、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)に、新たな抵抗値の変化量を追加する。
演算部501は、処理を終了する(S15:YES)と判定すると、抵抗分布データを作成する処理を終了する。
図16は、データ処理装置500がにおい分布データ50及びピークレベルのランキング表を作成する処理を示すフローチャートである。図16の処理は、図15のフローが終了した後に実行される処理である。
前提条件として、データ処理装置500は、におい測定装置100からタイムスタンプが付与された画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、及び湿度データを受信しており、メモリ503に格納してあることとする。
なお、抵抗値データについては、図15で説明したように、抵抗値の変化量に変換されて、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)に組み込まれている。
演算部501は、メモリ503に格納されている抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)を読み出し、ノイズ等を除去するためにフィルタ処理を行う(ステップS21)。
演算部501は、ステップS21でフィルタ処理を行った後の抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)をメモリ503に格納されている位置データと関連付けることにより、抵抗値の変化量を表すデータをXY座標系に配置した平面分布データを作成する(ステップS22)。抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)と位置データとの関連付けは、互いに等しい時刻を表すタイムスタンプを有するもの同士を関連付ることによって行えばよい。
また、平面分布データは、図11に示すにおい分布データ50から、方向データの方向を表す矢印を取り除いた状態の抵抗値の変化量のXY座標系における分布を表すデータである。なお、Z軸座標は、吸気パイプ120Aの先端120A1の高さの位置であり、におい分布データ50では一定値とされる。
ステップS22の処理は、ガスの種類毎に行う処理である。このため、演算部501は、抵抗分布データR001(tm-tn)を位置データと関連付けた平面分布データを作成し、抵抗分布データR002(tm-tn)を位置データと関連付けた平面分布データを作成し、抵抗分布データR003(tm-tn)を位置データと関連付けた平面分布データを作成する。
より具体的には、抵抗分布データR001(tm-tn)については、演算部501は、抵抗分布データR001(tm-tn)に含まれる抵抗値の変化量を与える抵抗値に付与されたタイムスタンプが表す時刻と、位置データに付与されたタイムスタンプが表す時刻とに基づいて、抵抗分布データR001(tm-tn)を位置データと関連付ける。また、演算部501は、抵抗分布データR002(tm-tn)、R003(tm-tn)についても同様の処理を行う。
これにより、アンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスの各々について、図11に示すにおい分布データ50から、方向データの方向を表す矢印を取り除いた状態の抵抗値の変化量のXY座標系における平面分布データが完成する。
演算部501は、ステップS22で作成した平面分布データから、抵抗値の変化量のピークレベルを抽出する(ステップS23)。演算部501は、ステップS23の処理をアンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスの各々について別々に行う。
演算部501は、抵抗値の変化量のピークレベルを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプと等しい時刻のタイムスタンプを有する方向データをメモリ503から読み出し、読み出した方向データが表す方向を示す矢印をステップS22で生成した平面分布データに追加する(ステップS24)。これにより、におい分布データ50が完成する。
演算部501は、抵抗値の変化量のピークレベルを与える抵抗値に付与されたタイムスタンプと等しい時刻のタイムスタンプを有する画像データに対して画像処理を行い、吸気パイプ120Aの先端120A1からレーザポインタ130Aが照射するポインタまでの距離を演算する(ステップS25)。
演算部501は、時刻と、ピークレベルと、位置データと、方向データと、画像データと、距離とを関連付けてピーク関連テーブルデータを作成する(ステップS26)。
時刻は、ステップS23で抽出したピークレベルを与える抵抗値が有するタイムスタンプが表す時刻である。ピークレベルは、ステップS23で抽出したピークレベルである。位置データ及び方向データは、におい分布データ50の中で抵抗値の変化量のピークに関連付けられている位置データ及び方向データである。画像データは、ステップS25で利用した画像データである。距離は、ステップS25で演算した距離である。
演算部501は、ガスの種類毎に、ピークレベルの上位4位までを抽出し、ピークレベルのランキング表を作成する(ステップS27)。
演算部501は、ステップS24で完成したにおい分布データ50と、ステップS27で作成したランキング表とを表示部140Aに表示する(ステップS28)。以上で一連の処理が終了する(エンド)。
以上、実施の形態1のにおい測定装置100によれば、加速度センサ130C及び測位部130Dで、加速度データ及び位置データを取得することができる。加速度データ及び位置データは、吸気パイプ120Aの先端120A1(吸気口)の方向及び位置を含む情報である。先端120A1(吸気口)の方向は、ガスが到来する方向を表し、先端120A1(吸気口)の位置は、ガスが存在する位置を表す。
したがって、所定のにおいを有するガスが到来する方向と、ガスの位置とを含む情報を取得することができる、におい測定装置100、におい測定システム1、及び、におい測定方法を提供することができる。
また、実施の形態1のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、におい測定装置100から受信する画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに基づいて、におい分布データ50を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの平面的な分布と、ガスが到来する方向とを把握することができる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。また、におい分布データ50を表示部140Aに表示することにより、所定のにおいを有するガスの分布の見える化を図ることができる。ここでいう見える化とは、視認可能なデータ化を行うことである。
また、実施の形態1のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、におい分布データ50からピークレベルのランキング表を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの分布を見える化した上で、においの強さをランキング化できる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。
なお、以上では、におい測定装置100が3個のガスセンサ150A、150B、150Cを含む形態について説明したが、少なくともいずれか1個のガスセンサを含めばよい。また、以上では、におい測定装置100がアンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスを検出するガスセンサ150A、150B、150Cを含む形態について説明したが、これら以外のガスを検出するガスセンサを用いてもよい。
また、以上では、におい測定装置100がアンモニアガスを検出するガスセンサ150A、アルコールガスを検出するガスセンサ150B、アセトアルデヒドガスを検出するガスセンサ150Cを含む形態について説明した。
しかしながら、におい測定装置100が含むガスセンサは、アンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスを別々に検出するセンサではなくてもよい。例えば、アンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスに対する抵抗値の変化(アンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスに対する感度)が異なる3つのガスセンサを用い、3つのガスセンサの検出値を連立方程式で解くことによって、アンモニアガス、アルコールガス、アセトアルデヒドガスの各々の濃度を求めるようにしてもよい。
また、以上では、データ処理装置500とにおい測定装置100が無線通信で通信可能に接続される形態について説明したが、データ処理装置500がサーバのようなコンピュータである場合には、データ処理装置500とにおい測定装置100は、LAN(Local Area Network)ケーブルのようなケーブルによる有線通信で通信可能に接続されてもよい。
また、以上では、測位部130DがBluetooth(登録商標)のビーコン信号を受信して測位し、位置データを出力する形態について説明した。しかしながら、測位部130Dは、Wifiの無線通信用の電波を受信して測位することで位置データを出力するものであってもよいし、GPS(Global Positioning System)衛星から送信されるGPS信号を受信して測位することで位置データを出力するものであってもよいし、さらに他の形式のものであってもよい。
また、以上では、加速度センサ130Cによって検出される加速度データに基づいて吸気パイプ120Aが向いている方向を判別し、測位部130Dによって検出される位置を吸気パイプ120Aの先端120A1の位置として利用する形態について説明した。
しかしながら、におい測定装置100が加速度センサ130Cを含まずに、データ処理装置500がカメラ130Bが取得する画像から、吸気パイプ120Aが向いている方向を求めてもよい。この場合には、カメラ130B及び測位部130Dが情報取得部になる。
また、におい測定装置100が測位部130Dを含まずに、データ処理装置500がカメラ130Bが取得する画像から、吸気パイプ120Aの位置を求めてもよい。この場合は、加速度センサ130C及びカメラ130Bが情報取得部になる。
また、におい測定装置100が加速度センサ130C及び測位部130Dを含まずに、データ処理装置500がカメラ130Bが取得する画像から、吸気パイプ120Aが向いている方向と位置を求めてもよい。この場合は、カメラ130Bが情報取得部になる。
また、データ処理装置500が加速度データからガスが到来する方向を求める際に、カメラ130Bによって取得された画像データをさらに利用してもよい。
また、以上では、におい分布データ50を作成した段階で、抵抗値の変化量のピークに方向データの矢印を付与する形態について説明したが、抵抗分布データR001~004(tm-tn)を作成した段階で、抵抗値の変化量のピークに方向データの矢印を付与してもよい。
また、以上では、演算部501がガスセンサ150A、150B、150Cの基準抵抗値に対する抵抗値の変化量を求め、抵抗値の変化量に基づいてにおいの測定結果を表すデータを作成する形態について説明した。しかしながら、基準抵抗値に対する抵抗値の変化量ではなく、ガスセンサ150A、150B、150Cの抵抗値を用いて、においの測定結果を表すデータを作成してもよい。
また、以上では、吸気パイプ120Aを介して測定室111Bの内部に空気を案内する案内装置としてポンプ190Bを用いる形態について説明したが、ポンプ190Bの代わりにファンを用いてもよい。ファンとしては、例えば、軸流ファン又はシロッコファン等を用いればよい。また、ポンプ190Bは、排気口111Cではなく吸気口111Aに設けられていてもよく、測定室111Bの内部に設けられていてもよい。
また、以上では、筐体110に表示部140A及びタッチパネル140Bが設けられている形態について説明したが、におい測定装置100は表示部140A及びタッチパネル140Bを含まなくてもよい。この場合には、例えば、タブレットコンピュータ又はスマートフォン端末機をBluetooth(登録商標)のような近距離無線通信又はケーブルを介しての有線通信によってにおい測定装置100に接続し、タブレットコンピュータ又はスマートフォン端末機の表示部及びタッチパネルを利用してもよい。
また、以上では、演算部501が図15に示す処理を実行し、抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)を作成する形態について説明した。しかしながら、図15に示す処理は、におい測定装置100が行ってもよい。におい測定装置100が抵抗分布データR001(tm-tn)、R002(tm-tn)、R003(tm-tn)を作成し、データ処理装置500に送信してもよい。
また、以上では、演算部501が図16に示す処理を実行し、におい分布データ50、ピーク関連テーブルデータ、ピークレベルのランキング表を作成し、におい分布データ50及びピークレベルのランキング表を表示部140Aに表示する形態について説明した。
しかしながら、におい測定装置100が図15に示す処理に加えて図16に示す処理を行ってもよい。この場合は、におい測定装置100がにおい分布データ50、ピーク関連テーブルデータ、ピークレベルのランキング表を作成し、におい分布データ50及びピークレベルのランキング表を表示部140Aに表示すればよい。この場合は、データ処理装置500が処理を行うことなく、におい測定装置100がにおい分布データ50、ピーク関連テーブルデータ、ピークレベルのランキング表を作成することになる。
<実施の形態2>
図17は、実施の形態2のにおい測定装置200を示す図である。図17(A)には、におい測定装置200の正面側を示し、図17(B)には、におい測定装置200の背面側を示す。以下では、実施の形態1のにおい測定装置100の構成要素と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
におい測定装置200は、実施の形態1のにおい測定装置100から吸気パイプ120A、排気パイプ120Bを取り除いた構成を有する。具体的には、におい測定装置200は、筐体210、レーザポインタ130A、カメラ130B、表示部140A、及びタッチパネル140Bを含む。
筐体210の内部に配設される構成要素は、実施の形態1の加速度センサ130C、測位部130D、温度センサ130E、湿度センサ130F、ガスセンサ150A、150B、150C、抵抗測定回路160、変換回路165、測定処理部170、通信部180、フィルタ190A、及びポンプ190Bと同様の構成要素である。
筐体210は、吸気口211A、排気口211C、及び、実施の形態1の筐体110の測定室111Bと同様の測定室を有する。筐体210の測定室には、吸気口211Aと排気口211Cが接続されている。また、カメラ130Bは、吸気口211Aが向く方向と同一の方向を撮影するように設けられている。
温度センサ130E、湿度センサ130F、ガスセンサ150A、150B、150Cは、筐体210の測定室の内部に配設されており、フィルタ190Aは、吸気口211Aと測定室との間に配設され、ポンプ190Bは測定室と排気口211Cとの間に配設されている。
吸気口211Aと排気口211Cは、吸気口211Aで吸気した空気を排気口211Cから下の場所に戻せるように、筐体210の表面において近接して配置されている。筐体210の表面における吸気口211Aと排気口211Cの間隔は、一例として10cmである。
このように、吸気口211Aと排気口211Cを近くに設けているのは、吸気口211Aで吸引した空気をなるべく元の位置に近い位置に戻すことにより、吸引した場所の空気を乱さないようにするためである。
また、筐体210には、把手215が取り付けられている。利用者は、把手215を手で握ることで、におい測定装置200を保持する。把手215は、50cm程の長さがあり、利用者は、把手215を握って腕を伸ばすことにより、においを有するガスを収集できる。
におい測定装置200は、実施の形態1のにおい測定装置100と同様に、カメラ130B、加速度センサ130C、測位部130D、温度センサ130E、湿度センサ130F、及び変換回路165からそれぞれ入力される画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データにタイムスタンプを付与して、データ処理装置500に送信する。
そして、データ処理装置500から、におい分布データ50、ピーク関連テーブルデータ、ピークレベルのランキング表を受信し、におい分布データ50及びピークレベルのランキング表を表示部140Aに表示する。
以上のように、におい測定装置200によれば、加速度センサ130C及び測位部130Dで、加速度データ及び位置データを取得することができる。
したがって、所定のにおいを有するガスが到来する方向と、ガスの位置とを含む情報を取得することができる、におい測定装置200、におい測定システム1、及び、におい測定方法を提供することができる。
また、実施の形態2のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、実施の形態1と同様であり、におい測定装置200から受信する画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに基づいて、におい分布データ50を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの平面的な分布と、ガスが到来する方向とを把握することができる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。また、におい分布データ50を表示部140Aに表示することにより、所定のにおいを有するガスの分布の見える化を図ることができる。
また、実施の形態2のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、におい分布データ50からピークレベルのランキング表を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの分布を見える化した上で、においの強さをランキング化できる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。
図18は、実施の形態2の変形例を示す図である。図18(A)に示す吸気口211AMは、吸気口211AM1と、吸気口211AM1よりも開口の小さい3つの吸気口211AM2とを有する。吸気口211AM1と3つの吸気口211AM2とは、筐体210の内部で連通しており、測定室に繋がっている。吸気口211AM1は、図17の吸気口211Aに対応する開口であり、3つの吸気口211AM2は、吸気口211AM1よりも排気口211CM側に位置する。
また、図18(A)に示す排気口211CMは、排気口211CM1と、排気口211Cm1よりも開口の小さい3つの排気口211CM2とを有する。排気口211CM1と3つの排気口211CM2とは、筐体210の内部で連通しており、測定室に繋がっている。排気口211CM1は、図17の排気口211Cに対応する開口であり、3つの排気口211CM2は、排気口211CM1よりも吸気口211AM側に位置している。
このように、吸気口211AMと排気口211CMの形状を工夫することにより、吸気口211AMから吸気されるガスが排気口211CMから排気されるガスを誘導するように、又は、排気口211CMから排気されるガスが吸気口211AMから吸気されるガスを誘導するような構成にしてもよい。また、このように吸気口211AMと排気口211CMの形状を工夫することにより、吸気口211AMから吸気されるガスと、排気口211CMから排気されるガスとの干渉が少なくなるようにしてもよい。
また、図18(B)に示すように、吸気口211Aと排気口211Cの両脇に風防壁214Aを設けてもよい。風防壁214Aを吸気口211Aと排気口211Cの両外側に配置すれば、吸気口211Aで吸気したガスを排気口211Cから排気する際に、周囲の空気の変動を抑制することができる。
また、図18(C)に示すような風防壁214Bを設けてもよい。風防壁214Bは、図18(B)に示す2つの風防壁214AをC字型に繋いだ構成を有する。繋いだ部分からの気流の影響を抑制できるため、吸気口211Aで吸気したガスを排気口211Cから排気する際に、周囲の空気の変動を抑制することができる。
<実施の形態3>
図19は、実施の形態3のにおい測定装置300を示す図である。以下では、実施の形態1のにおい測定装置100の構成要素と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
におい測定装置300は、実施の形態1のにおい測定装置100から排気パイプ120Bを取り除き、排気口111Cにガス捕集容器312を接続した構成を有する。その他は、実施の形態1のにおい測定装置100と同様の構成を有する。
実施の形態3のにおい測定装置300は、排気を吸気した場所に戻さなくて済む。ガス捕集容器312に貯まるガスは、適宜廃棄すればよい。
このようなにおい測定装置300によっても、実施の形態1のにおい測定装置100と同様に、所定のにおいを有する所定のガスを採取することができる。
図20は、実施の形態3の変形例のにおい測定装置300Mを示す図である。測定装置300Mは、図19に示す測定装置300のガス捕集容器312の代わりに、洗浄ガス容器312Mを含む。洗浄ガス容器312Mには、ガスセンサ150A、150B、150Cを清掃するための洗浄ガスが充填されている。このような洗浄ガスとしては、例えば、活性炭フィルタを通して、有機物を除去した清浄空気を用いることができる。
におい測定装置300Mは、測定時には、排気口111C(図2参照)に何も接続せずに、測定室111Bの内部の洗浄ガスを排気口111Cから直接的に廃棄してもよいし、排気口111Cに排気パイプ120Bを接続してもよい。
におい測定装置300Mは、測定後又は測定開始前に、排気口111Cに洗浄ガス容器312Mを接続し、内部の洗浄ガスを測定室111Bに送り込むことによって、ガスセンサ150A、150B、150Cを清掃する。洗浄ガスを測定室111Bに送り込むためのポンプを洗浄ガス容器312Mに設けてもよいし、洗浄ガス容器312Mをペットボトルのように柔軟性のある容器にすることにより、利用者が手で押し潰すことで内部の洗浄ガスを測定室111Bに送り込んでもよい。
このようなにおい測定装置300Mによっても、所定のにおいを有する所定のガスを採取することができる。また、洗浄ガスを測定室111Bに送り込むことによって、ガスセンサ150A、150B、150Cを清掃することができる。
以上のように、におい測定装置300及び300Mによれば、加速度センサ130C及び測位部130Dで、加速度データ及び位置データを取得することができる。
したがって、所定のにおいを有するガスが到来する方向と、ガスの位置とを含む情報を取得することができる、におい測定装置300及び300M、におい測定システム1、及び、におい測定方法を提供することができる。
また、実施の形態3のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、実施の形態1と同様であり、におい測定装置300及び300Mから受信する画像データ、加速度データ、位置データ、温度データ、湿度データ、及び抵抗値データに基づいて、におい分布データ50を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの平面的な分布と、ガスが到来する方向とを把握することができる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。また、におい分布データ50を表示部140Aに表示することにより、所定のにおいを有するガスの分布の見える化を図ることができる。
また、実施の形態3のデータ処理装置500及びにおい測定システム1は、におい分布データ50からピークレベルのランキング表を作成し、表示部140Aに表示する。
したがって、所定のにおいを有するガスの分布を見える化した上で、においの強さをランキング化できる、データ処理装置500及びにおい測定システム1を提供することができる。
以上、本発明の例示的な実施の形態のにおい測定装置、におい測定システム、及び、におい測定方法について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
以上の実施の形態に関し、さらに以下の付記を開示する。
(付記1)
測定室と、前記測定室に接続される吸気口とを有する筐体と、
前記測定室に配置され、所定のにおいを有する所定のガスを検出するガスセンサと、
前記吸気口の位置及び方向を含む情報を取得する情報取得部と
を含む、におい測定装置。
(付記2)
前記筐体は、前記測定室に接続され、前記吸気口と同一方向を向く排気口をさらに有する、付記1記載のにおい測定装置。
(付記3)
前記吸気口に取り付けられる吸気パイプをさらに含む、付記1又は2記載のにおい測定装置。
(付記4)
前記筐体は、前記測定室に接続され、前記吸気口と同一方向を向く排気口をさらに有し、
前記吸気口に取り付けられる吸気パイプと、
前記排気口に取り付けられ、前記吸気パイプに沿って延在する排気パイプと
をさらに含む、付記1記載のにおい測定装置。
(付記5)
前記排気パイプの先端は、前記吸気パイプの先端よりも前記筐体から離れた位置にある、付記4記載のにおい測定装置。
(付記6)
前記測定室に接続され、前記測定室に吸気される空気を貯容する貯容容器をさらに含む、付記1記載のにおい測定装置。
(付記7)
前記測定室に接続され、前記測定室に供給される洗浄ガスを貯容する洗浄ガス貯容容器をさらに含む、付記1記載のにおい測定装置。
(付記8)
前記吸気口を介して前記測定室の内部に空気を案内する案内装置をさらに含む、付記1乃至7のいずれか一項記載のにおい測定装置。
(付記9)
前記情報取得部は、
前記吸気口の位置を測定する位置測定部と、前記吸気口の方向を測定する方向測定部とを有し、前記吸気口の位置及び方向を含む情報として、前記位置測定部によって測定される前記吸気口の位置と、前記方向測定部によって測定される前記吸気口の方向とを表す情報を取得する情報取得部である、又は、
前記吸気口の位置及び方向を含む情報として、前記吸気口の位置及び方向を含む画像を取得する画像取得部である、付記1乃至8のいずれか一項記載のにおい測定装置。
(付記10)
前記吸気口を移動に伴って前記情報取得部によって取得される前記吸気口の位置及び方向を含む情報と、前記吸気口の移動に伴って前記ガスセンサによって検出される検出値とに基づいて、位置に対する前記所定のにおいの強度の分布を表す、におい分布データを作成する、におい分布データ作成部をさらに含む、付記1乃至9のいずれか一項記載のにおい測定装置。
(付記11)
前記におい分布データ作成部によって作成される、におい分布データを表示する表示部をさらに含む、付記10記載のにおい測定装置。
(付記12)
前記におい分布データにおいて、前記所定のにおいの強度は、前記ガスセンサの検出値の基準値に対する変化量によって表される、付記10又は11記載のにおい測定装置。
(付記13)
前記ガスセンサは、複数種類のガスをそれぞれ検出する複数のガス検出部を有する、付記1乃至12のいずれか一項記載のにおい測定装置。
(付記14)
前記複数のガス検出部のうちの1つは、銅又は銀を主材料とするハロゲン化合物又は酸化物を感ガス材として含むガス検出部である、付記13記載のにおい測定装置。
(付記15)
前記ガスセンサは、銅又は銀を主材料とするハロゲン化合物又は酸化物を感ガス材として含むガスセンサである、付記1乃至12のいずれか一項記載のにおい測定装置。
(付記16)
におい測定装置と、
前記におい測定装置とデータ通信可能に接続される、におい分布データ作成装置と
を含む、におい測定システムであって、
前記におい測定装置は、
測定室と、前記測定室に接続される吸気口とを有する筐体と、
前記測定室に配置され、所定のにおいを有する所定のガスを検出するガスセンサと、
前記吸気口の位置及び方向を含む情報を取得する情報取得部と
を有し、
前記におい分布データ作成装置は、
前記吸気口を移動に伴って前記情報取得部によって取得される前記吸気口の位置及び方向を含む情報と、前記吸気口の移動に伴って前記ガスセンサによって検出される検出値とに基づいて、位置に対する前記所定のにおいの強度の分布を表す、におい分布データを作成する、におい分布データ作成部を有する、におい測定システム。
(付記17)
測定室と、前記測定室に接続される吸気口とを有する筐体と、
前記測定室に配置され、所定のにおいを有する所定のガスを検出するガスセンサと
を含む、におい測定装置において、
コンピュータが、前記吸気口の位置及び方向を含む情報を取得する、におい測定方法。