JP7023461B2 - 耳の疾病の処置のためのtrkb又はtrkcアゴニスト組成物及び方法 - Google Patents

耳の疾病の処置のためのtrkb又はtrkcアゴニスト組成物及び方法 Download PDF

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Description

本出願は、2015年7月28日出願の米国仮出願第61/198,065号の利益を主張し、該仮出願は、引用により本明細書に組み込まれる。
配列表
本出願は配列表を包含しており、これは、ASCIIフォーマットで電子的に提出され、その全体を引用することで本明細書に組み込まれる。2016年7月28日に作成されたASCIIのコピーは、37173-833_601_SL.txtという名称であり、31,180バイトのサイズである。
引用による組み込み
本明細書に言及される全ての刊行物、特許、及び特許出願は、あたかも個々の刊行物、特許、又は特許出願が引用によって組み込まれるよう具体的且つ個別に示されるかのように、及びそれら全体において明記されるかのように、同じ程度まで引用により本明細書に組み込まれる。
脊椎動物は、頭部の両側(opposite side)に対称的に位置する、一対の耳を有している。耳には、音を検出する感覚器官としての役割だけではなく、平衡及び体の位置を保つ器官としての役割もある。耳は通常、3つの部分に分けられる:即ち、外耳、中耳(auris media)(又はmiddle ear)、及び内耳(auris interna)(又はinner ear)に分けられる。
そのため、本明細書には、1つの実施形態において、被験体の耳の疾病を処置する方法が記載され、該方法は、治療上有効な量の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト及び薬学的に許容可能な担体を含む耳科用組成物又はデバイスを、必要とする被験体に投与する工程を含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又はデバイスは、(i)非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト、(ii)ゲル化剤及び粘度増強剤、(iii)pH調整剤、及び(iv)滅菌水を含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又はデバイスは、以下から選択される2以上の特徴を更に含む:(i)約0.001重量%~約60重量%の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩;(ii)約14重量%~約21重量%のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマー;(iii)pHが約5.5~約8.0になるように緩衝化された、適切な量の滅菌水;(iv)約19℃~約42℃のゲル化温度;(v)製剤1gあたりの約50未満の微生物剤のコロニー形成単位(cfu);(vi)被験体の体重1kgにつき約5未満のエンドトキシン単位(EU);及び(vii)約100,000cP~約500,000cPの見掛け粘度。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、モノクローナル抗体、二重特異性抗体(diabody)、直線状の抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、タンデム型抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、ベニヤ抗体(veneered antibody)、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、Fcフラグメント、rIgGフラグメント、又はscFvフラグメントである。幾つかの実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、2256、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。幾つかの実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2253、及び2256から成る群から選択された抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、及び2256から成る群から選択された抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、及び2256から成る群から選択された抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、及び2344から成る群から選択された抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、及び29D7から成る群から選択された抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択された抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択された抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストはTrkB上でエピトープを認識し且つそれに結合し、非天然のTrkCアゴニストはTrkC上でエピトープを認識し且つそれに結合する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープは、自然発生のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープとは異なる。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープは、自然発生のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されたエピトープと同じである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープは、標的のTrkB又はTrkCの受容体の外部ドメインにある。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのドメイン4及び/又はドメイン5においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはTrkCのドメイン4においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは。SEQ ID NO:1を含むエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、SEQ ID NO:118を含むエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは2B7である。幾つかの実施形態において、2B7は、完全長のTrkC受容体に結合し、切断型のTrkC受容体TrkC.T1には結合しない、モノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、2B7は、TrkCの膜近傍領域、膜近傍領域内のペプチド、又はアミノ酸配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.1)を有するペプチドを特異的に認識し且つそれらに結合するモノクローナル抗体;又は、該モノクローナル抗体のフラグメント、部分、変異体、又は誘導体であり、ここで、前記フラグメント、部分、変異体、又は誘導体は、TrkCの膜近傍領域、膜近傍領域内のペプチド、又はアミノ酸配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.1)を有するペプチドに特異的に結合し、抗体2B7はTrkCのドメイン5に結合しない。幾つかの実施形態において、2B7モノクローナル抗体、又はそのフラグメント、部分、変異体、又は誘導体は、ATCC寄託番号090310-02の下で寄託されるハイブリドーマ株により生成される抗体の相補性決定領域(CDR)又は超可変ドメインを含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはA5である。幾つかの実施形態において、A5は、重鎖相補性決定領域(CDR)を含むであり、重鎖CDRは:(a)位置8のXaaがR又はWであり、位置9のXaaがI、L、R、又はMである、式GYTFTSYXaaXaaH(SEQ ID NO:2)のCDR1;(b)位置7のXaaがA、T、S、又はGであり、位置16のXaaがK又はEである、式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(SEQ ID NO:3)のCDR2;及び(c)位置7のXaaがT又はSであり、位置8のXaaがR、Q、K、S、又はYである、式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(SEQ ID NO:4)のCDR3を含み;ここで、アゴニストである抗TrkC抗体は、SEQ ID NO:5のCDR1領域、SEQ ID NO:6のCDR2領域、及びSEQ ID NO:7のCDR3領域を含む重鎖CDRを含む抗体ではない。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、及び2344から成る群から選択されたヒト抗体である。
幾つかの実施形態において、抗体6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、及び2344は、ATCC寄託番号PTA-2150、PTA-2146、PTA-2153、PTA-2151、及びPTA-2144の下で寄託されるハイブリドーマ株によりそれぞれ生成される。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2248、2250、2253、及び2256から成る群から選択されたマウス抗体である。
幾つかの実施形態において、抗体2248、2250、2253、及び2256は、ATCC寄託番号PTA-2147、PTA-2149、PTA-2145、及びPTA-2152の下で寄託されるハイブリドーマ株によりそれぞれ生成される。幾つかの実施形態において、ヒト抗体はTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、マウス抗体はTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは38B8であり、38B8は、ATCC寄託番号PTA-8766の下で寄託されたハイブリドーマ株により生成される、分離されたモノクローナルTrkBアゴニスト抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストはTAM-163である。
幾つかの実施形態において、CDRは、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3、及び/又は、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含み、CDRはSEQ ID NO:2-116から選択される。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、7,8-ジヒドロキシフラボン、7,8,3’-トリヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、デオキシゲズニン(Deoxygedunin)、LM-22A4、TDP6、3,7-ジヒドロキシフラボン、3,7,8,2’-テトラヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、5,7,8-トリヒドロキシフラボン、7,3’-ジヒドロキシフラボン、7,8,2’-トリヒドロキシフラボン、N,N’,N’’トリス(2-ヒドロキシ-エチル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド、N-アセチルセロトニン、及びアミトリプチリンから成る群から選択される。
幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基に1以上の突然変異又は修飾を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基の1以上に突然変異を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基の1以上に修飾を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの例において、1以上の修飾は化学修飾を含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログであり、ここで、神経栄養物質は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、線維芽細胞増殖因子(FGF)、又はインスリン様増殖因子(IGF)である。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、セリン、トレオニン、又はチロシンの残基におけるリン酸化又はスルフリル化により、非天然のアミノ酸の組み込みにより、重い(分子量の多い)アミノ酸の組み込みにより、D-アミノ酸の組み込みにより、ビオチン化により、環化により、アシル化により、ジメチル化により、アミド化により、誘導体化により、担体タンパク質への共役により、ペグ化により、又はペプチドの分枝により、修飾される。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質と同じ親和性をもって、TrkB又はTrkCの受容体のエピトープを認識し、且つそれに結合する。幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質と同等の親和性を持つ、TrkB又はTrkCの受容体により信号を活性化する。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質に比べて高い親和性をもって、TrkB又はTrkCの受容体のエピトープを認識し、且つそれに結合する。幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養質と比較して改善された安定性、より長い循環時間、及び減少した免疫原性を有している。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、少なくとも3日間にわたり組成物又はデバイスから放出される。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、少なくとも5日間にわたり組成物又はデバイスから放出される。
幾つかの実施形態において、耳の疾病は、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、又は微小血管圧迫症候群から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、耳の疾病は感音性難聴である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、耳の神経細胞の細胞増殖を誘発することにより、感音性難聴を処置する。幾つかの実施形態において、耳の疾病は、損傷を受けたリボンシナプスを特徴とする。
そのため、本明細書には、1つの実施形態において、治療上有効な量の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト及び薬学的に許容可能な担体を含む、耳科用医薬組成物又はデバイスが記載される。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又はデバイスは、(i)非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト、(ii)ゲル化剤及び粘度増強剤、(iv)pH調整剤、及び(v)滅菌水を含む。
幾つかの実施形態において、耳科用組成物又はデバイスは、以下から選択される2以上の特徴を更に含む:(i)約0.001重量%~約60重量%の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト、或いはその薬学的に許容可能なプロドラッグ又は塩;(ii)約14重量%~約21重量%のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマー;(iii)pHが約5.5~約8.0になるように緩衝化された、適切な量の滅菌水;(iv)約19℃~約42℃のゲル化温度;(v)製剤1gあたりの約50未満の微生物剤のコロニー形成単位(cfu);(vi)被験体の体重1kgにつき約5未満のエンドトキシン単位(EU);及び(vii)約100,000cP~約500,000cPの見掛け粘度。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、モノクローナル抗体、二重特異性抗体(diabody)、直線状の抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、タンデム型抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、ベニヤ抗体(veneered antibody)、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、Fcフラグメント、rIgGフラグメント、又はscFvフラグメントである。
幾つかの実施形態において、抗体又はその結合フラグメントは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2253、及び2256から成る群から選択された抗体の相補性決定領域(CDR)を含む。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、及び2256から成る群から選択された抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、及び29D7から成る群から選択された抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストはTrkB上でエピトープを認識し且つそれに結合し、非天然のTrkCアゴニストはTrkC上でエピトープを認識し且つそれに結合する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープは、自然発生のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープとは異なる。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されるエピトープは、自然発生のTrkB又はTrkCのアゴニストにより認識され且つ結合されたエピトープと同じである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、完全長のTrkB又はTrkCの受容体の外部ドメインにのみ結合し、TrkB又はTrkCの受容体の細胞内の切断型のアイソフォームの外部ドメインには結合しない、モノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、完全長のTrkC受容体の外部ドメインに結合し、アイソフォームである細胞内の切断型のTrkC.T1受容体の外部ドメインには結合しない、モノクローナル抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのドメイン4及び/又はドメイン5においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはTrkCのドメイン4においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは。SEQ ID NO:1を含むエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、SEQ ID NO:118を含むエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは2B7である。幾つかの実施形態において、2B7は、完全長のTrkC受容体に結合し、切断型のTrkC受容体TrkC.T1には結合しない、モノクローナル抗体である。幾つかの実施形態において、2B7は、TrkCの膜近傍領域、膜近傍領域内のペプチド、又はアミノ酸配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.1)を有するペプチドを特異的に認識し且つそれらに結合するモノクローナル抗体;又は、該モノクローナル抗体のフラグメント、部分、変異体、又は誘導体であり、ここで、前記フラグメント、部分、変異体、又は誘導体は、TrkCの膜近傍領域、膜近傍領域内のペプチド、又はアミノ酸配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.1)を有するペプチドに特異的に結合し、抗体2B7はTrkCのドメイン5に結合しない。幾つかの実施形態において、2B7モノクローナル抗体、又はそのフラグメント、部分、変異体、又は誘導体は、ATCC寄託番号090310-02の下で寄託されるハイブリドーマ株により生成される抗体の相補性決定領域又は超可変ドメインを含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストはA5である。幾つかの実施形態において、A5は、重鎖CDRを含む抗体であり、重鎖CDRは:(a)位置8のXaaがR又はWであり、位置9のXaaがI、L、R、又はMである、式GYTFTSYXaaXaaH(SEQ ID NO:2)のCDR1;(b)位置7のXaaがA、T、S、又はGであり、位置16のXaaがK又はEである、式EIYPSNXaaRTNYNEKFXaaS(SEQ ID NO:3)のCDR2;及び(c)位置7のXaaがT又はSであり、位置8のXaaがR、Q、K、S、又はYである、式KYYYGNXaaXaaRSWYFDV(SEQ ID NO:4)のCDR3を含み;ここで、アゴニストである抗TrkC抗体は、SEQ ID NO:5のCDR1領域、SEQ ID NO:6のCDR2領域、及びSEQ ID NO:7のCDR3領域を含む重鎖CDRを含む抗体ではない。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、及び2344から成る群から選択されたヒト抗体である。幾つかの実施形態において、抗体6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、及び2344は、ATCC寄託番号PTA-2150、PTA-2146、PTA-2153、PTA-2151、及びPTA-2144の下で寄託されるハイブリドーマ株によりそれぞれ生成される。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2248、2250、2253、及び2256から成る群から選択されたマウス抗体である。幾つかの実施形態において、抗体2248、2250、2253、及び2256は、ATCC寄託番号PTA-2147、PTA-2149、PTA-2145、及びPTA-2152の下で寄託されるハイブリドーマ株によりそれぞれ生成される。幾つかの実施形態において、ヒト抗体はTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。幾つかの実施形態において、マウス抗体はTrkCのドメイン5においてエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは38B8であり、38B8は、ATCC寄託番号PTA-8766の下で寄託されたハイブリドーマ株により生成される、分離されたモノクローナルTrkBアゴニスト抗体である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストはTAM-163である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、7,8-ジヒドロキシフラボン、7,8,3’-トリヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、デオキシゲズニン、LM-22A4、TDP6、3,7-ジヒドロキシフラボン、3,7,8,2’-テトラヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、5,7,8-トリヒドロキシフラボン、7,3’-ジヒドロキシフラボン、7,8,2’-トリヒドロキシフラボン、及びN,N’,N’’トリス(2-ヒドロキシ-エチル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド、N-アセチルセロトニン、及びアミトリプチリンから成る群から選択される。
幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基に1以上の突然変異又は修飾を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基の1以上に突然変異を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、アミノ酸残基の1以上に修飾を含む自然発生の神経栄養物質である。幾つかの例において、1以上の修飾は化学修飾を含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログであり、ここで、神経栄養物質は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞株由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン3、ニューロトロフィン4、線維芽細胞増殖因子(FGF)、又はインスリン様増殖因子(IGF)である。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、セリン、トレオニン、又はチロシンの残基におけるリン酸化又はスルフリル化により、非天然のアミノ酸の組み込みにより、重いアミノ酸の組み込みにより、D-アミノ酸の組み込みにより、ビオチン化により、環化により、アシル化により、ジメチル化により、アミド化により、誘導体化により、担体タンパク質への共役により、ペグ化により、又はペプチドの分枝により、修飾される。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、アミノ酸残基の1以上に突然変異を含む自然発生の神経栄養物質である。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質と同じ親和性をもって、TrkB又はTrkCの受容体を認識し、且つそれに結合する。幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質と同等の親和性を持つ、TrkB又はTrkCの受容体により信号を活性化する。幾つかの実施形態において、1以上のアミノ酸残基に突然変異を含む自然発生の神経栄養物質は、TrkB又はTrkCの受容体を選択的に認識し、p75NTRを認識しない。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養物質と比べて高い親和性を持つ、TrkB又はTrkCの受容体を認識し、且つそれに結合する。
幾つかの実施形態において、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログは、未修飾の神経栄養質と比較して改善された安定性、より長い循環時間、及び減少した免疫原性を有している。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、少なくとも3日間にわたり組成物又はデバイスから放出される。幾つかの実施形態において、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、少なくとも5日間にわたり組成物又はデバイスから放出される。
幾つかの実施形態において、医薬組成物又はデバイスは、耳に許容可能な熱可逆性ゲルである。
幾つかの実施形態において、耳の疾病は、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、又は微小血管圧迫症候群から成る群から選択される。幾つかの実施形態において、耳の疾病は感音性難聴である。幾つかの実施形態において、耳の疾病は、損傷を受けたリボンシナプスを特徴とする。幾つかの実施形態において、耳の疾病は神経変性を特徴とする。幾つかの実施形態において、耳の疾病はシナプス変性症を特徴とする。
耳の解剖図を示す。 ラットに0.1%のBDNF(1.05mg/ml)又は0.1%のNT3(1.05mg/ml)の単回の鼓室内注入後の、BDNFの外リンパ濃度を示す。 ラットに0.1%のBDNF(1.05mg/ml)又は0.1%のNT3(1.05mg/ml)の単回の鼓室内注入後の、NT3(図2B)の外リンパ濃度を示す。 ラットに0.1%のTrkCアゴニスト抗体(1mg/ml)(三角形)又は1%のTrkCアゴニスト抗体(10mg/ml)(正方形)の単回の鼓室内注入後の、TrkCアゴニスト抗体の外リンパ濃度を示す。 ラットに0.1%のHu IgG(円)及び1.0%のHu IgG(正方形)の単回の鼓室内注射後の、ヒトIgGの外リンパ濃度を示す。 NT-3及び試験抗体による、ヒトTrkCを発現させる3T3細胞におけるp-ERKの用量依存性の増加を示す。 BDNF及び試験抗体による、ヒトTrkBを発現させるHEK293細胞におけるp-ERKの用量依存性の増加を示す。 培養物におけるラットのらせん神経節ニューロンのTrkアゴニストの神経栄養効果を示す。 ヒトTrkCの完全長の形態に結合し、その切断型の形態には結合しない、2B7を示す。 ヒトTrkCの完全長の形態に結合し、その切断型の形態には結合しない、2B7を示す。
本明細書には、内耳における有毛細胞、神経、及びそれらの接続の破壊、発育阻止、機能不全、損傷、脆弱性、又は欠損から結果として生じる、難聴又は聴力低下を処置又は改善するための耳科用組成物である。1つの実施形態において、耳科用組成物は、治療上有効な量の少なくとも1つのTrkB又はTrkCのアゴニスト、及び耳に許容可能な医薬賦形剤を含む。本明細書には更に、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、及び微小血管圧迫症候群を処置するための、TrkB又はTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物及び製剤が開示される。
特定の実施形態において、本明細書には、耳の疾病を処置するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達デバイスが開示される。幾つかの実施形態において、耳の疾病は、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、老人性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老年性難聴、又は微小血管圧迫症候群である。特定の実施形態において、本明細書には、損傷を受けたリボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置するための、組成物、製剤、方法、使用、キット、及び送達デバイスが開示される。
本明細書にはまた、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、及び微小血管圧迫症候群を含むが、これらに限定されない耳の疾病を処置するための、制御放出の耳科用組成物及び製剤が開示される。本明細書に記載される製剤は、一定の、徐々の、持続した、又は遅延した速度のTrkB又はTrkCのアゴニストの放出を耳の環境にもたらし、そのため、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、又は微小血管圧迫症候群の処置における薬物曝露の変異性を回避する。
本明細書には更に、ストリンジェントな滅菌要件で滅菌され、且つ耳への投与に適した、耳科用製剤が提供される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳に適用可能な組成物は、実質的に発熱物質及び/又は微生物を含まない。
本明細書には、pH、モル浸透圧濃度、イオンバランス、滅菌性、内毒素、及び/又は発熱性に関する特定の基準を満たす耳科用製剤である。本明細書に記載される耳科用組成物は、耳の環境に適合し、且つヒトへの投与に適している。
限定されない例として、以下の一般的に用いられる溶媒、即ち、アルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンの使用は、耳に投与するための薬剤を製剤する場合に、制限され、減らされ、又は排除されねばならない。故に、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、アルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含まない、又は実質的に含まない。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約50ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約25ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約20ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約10ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約5ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。幾つかの実施形態において、耳科用組成物又は製剤は、各々約1ppm未満のアルコール、プロピレングリコール、及びシクロヘキサンを含む。
更に、耳科用調製物は、聴器毒性であると知られる、特に低濃度の様々な潜在的に一般的な汚染物質を必要とする。他の剤形は、このような化合物に起因する汚染を制限することを求める一方で、耳科用調製物が必要とするストリンジェントな使用上の注意を必要としない。例えば、以下の汚染物質、ヒ素、鉛、水銀、及びスズが、耳科用調製物に存在しない、又はほとんど存在してはならない。故に、幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、ヒ素、鉛、水銀、及びスズを含まないか、又は実質的に含まない。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約50ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約25ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約20ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約10ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約5ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。幾つかの実施形態において、本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤は、各々約1ppm未満のヒ素、鉛、水銀、及びスズを含む。
特定の定義
用語「耳に許容可能な」は、製剤、組成物、又は成分に関して、本明細書で使用される場合、処置される被験体の内耳(又はinner ear)に対する有害な効果が持続しないことを含む。「薬学的に耳に許容可能な」とは、本明細書で使用されるように、内耳(又はinner ear)に関連して、化合物の生体活性又は性質を無効化せず、内耳(又はinner ear)に対する毒性を相対的に減少させる又は減少させる、担体又は希釈剤などの物質を指し、即ち、該物質は、望ましくない生物学的効果を引き起こさず、又は前記物質が含まれる組成物の成分の何れかと有害に相互作用しないように、個体に投与される。
本明細書で使用されるように、特定の化合物又は医薬組成物の投与による、特定の耳の疾患、障害、又は疾病の症状の改善又は減少は、化合物又は組成物の投与に起因又は関連する、持続的又は一時的、永続性又は一過性であるかにかかわらず、重症度の減少、発症の遅延、進行の減速、又は持続期間の短縮を指す。
「抗酸化剤」は、薬学的に耳に許容可能な抗酸化剤であり、例えば、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、アスコルビン酸ナトリウム、アスコルビン酸、重亜硫酸ナトリウム、トコフェロールを含む。特定の実施形態において、抗酸化剤は、必要とされる化学安定性を高める。抗酸化剤は、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストと組み合わせて使用される薬剤を含む、特定の治療薬の聴器毒性の効果を中和するためにも使用される。
「内耳(Auris interna)」は、蝸牛及び前庭迷路、並びに蝸牛を中耳に繋げる正円窓を含む、内耳(inner ear)を指す。
「内耳のバイオアベイラビリティ」は、試験される動物又はヒトの内耳に利用可能になる、本明細書に開示される化合物の投与された用量の割合を指す。
「中耳(Auris media)」は、中耳を内耳に繋げる、鼓室、耳小骨、及び卵円窓を含む、中耳(middle ear)を指す。
「平衡障害」は、被験体にふらつきを感じさせる、又は運動感覚を持たせる、障害、病気、又は、疾病を指す。この定義には、めまい、回転性めまい、不平衡、及び失神性めまいが含まれる。平衡障害として分類される疾患は、ラムゼイ・ハント症候群、メニエール病、デバルクマン(mal de debarquement)、良性発作性頭位めまい症、及び迷路炎を含むが、これらに限定されない。
「血漿濃度」は、被験体の血液の血漿成分における、本明細書で提供される化合物の濃度を指す。
「担体材料」は、TrkB又はTrkCのアゴニスト、内耳、及び、耳に許容可能な医薬製剤の放出特性に適合する賦形剤である。このような担体材料は、例えば、結合剤、懸濁化剤、崩壊剤、充填剤、界面活性剤、可溶化剤、安定化剤、潤滑剤、湿潤剤、希釈剤などを含む。「薬学的に耳に適合する担体材料」は、アカシア、ゼラチン、コロイド状二酸化ケイ素、グリセロリン酸カルシウム、乳酸カルシウム、マルトデキストリン、グリセリン、ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン(PVP)、コレステロール、コレステロールエステル、カゼイン塩ナトリウム、大豆レシチン、タウロコール酸、ホスファチジルコリン、塩化ナトリウム、三リン酸カルシウム、リン酸二カリウム、セルロース及びセルロース抱合体、ショ糖ナトリウムステアロイル乳酸、カラギーゲナン、モノグリセリド、ジグリセリド、アルファ化デンプンなどを含むが、これらに限定されない。
用語「希釈剤」は、送達前にTrkB又はTrkCのアゴニストを希釈するために使用され、且つ内耳に適合する、化学化合物を指す。
「分散剤」及び/又は「粘度調節剤」は、液体媒体を通じてTrkB又はTrkCのアゴニストの拡散性及び均質性を制御する物質である。拡散促進剤/分散剤の例は、限定されないが、親水性ポリマー、電解液、Tween(登録商標)60又は80、PEG、ポリビニルピロリドン(PVP;商業上、Plasdone(登録商標)として知られる)、及び炭水化物系の分散剤、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(例えばHPC、HPC-SL、及びHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えばHPMC K100、HPMC K4M、HPMC K15M、及びHPMC K100M)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロースフタレート、ヒドロキシプロピルメチルセルロースアセテートステアレート(HPMCAS)、非晶質セルロースなど)、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S630)、エチレンオキシドとホルムアルデヒドを伴う4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノール・ポリマー(チロキサポールとしても知られる)、ポロクサマー(例えばPluronics F68(登録商標)、F88(登録商標)、F108(登録商標)であり、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックコポリマーである);及びポロキサミン(例えば、Poloxamine908(登録商標)とも知られるTetronic908(登録商標)であり、それは、エチレンジアミンへのプロピレンオキシドとエチレンオキシドの連続的な添加から得られる四官能性ブロックコポリマーである(BASF Corporation,Parsippany,N.J.))、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、又はポリビニルピロリドンK30、ポリビニルピロリドン/酢酸ビニルコポリマー(S-630)、ポリエチレングリコール(例えば、ポリエチレングリコールは、約300から約6000、又は約3350から約4000、又は約7000から約5400の分子量を有している)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ガム、例えばトラガカントガム、アラビアガム(gum acacia)、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタン、糖、セルロース化合物、例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポリエトキシル化モノラウリン酸ソルビタン、ポビドン、カルボマー、ポリビニルアルコール(PVA)、アルギン酸塩、キトサン、及びそれらの組み合わせを含む。セルロース又はトリエチルセルロースのような可塑剤も、分散剤として使用される。本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストのリポソーム分散と自己乳化性分散に有用な分散剤は、ジミリストイルホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルコリン、卵由来の天然ホスファチジルグリセロール、コレステロール、及びミリスチン酸イソプロピルである。
「薬物吸収」又は「吸収」は、TrkB又はTrkCのアゴニストが、投与の局所的な部位(ほんの一例として、内耳の正円窓膜)から、障壁(以下に記載されるように、正円窓膜)を通り、内耳(auris interna又はinner ear)構造へと移動するプロセスを指す。「同時投与」等の用語は、本明細書で使用されるように、TrkB又はTrkCのアゴニストの一人の患者への投与を包含することを意味しており、及び、TrkB又はTrkCのアゴニストが、同じ又は異なる投薬経路で、或いは同じ又は異なる時間に投与される処置レジメンを含むことを意図されている。
用語「有効な量」又は「治療上有効な量」は、本明細書に使用されるように、処置される疾患又は疾病の1以上の症状をある程度まで緩和すると予想される、投与されるTrkB又はTrkCのアゴニストの十分な量を指す。例えば、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストの投与の結果、耳鳴又は平衡障害の徴候、症状、又は原因が減少及び/又は軽減される。例えば、治療用途に「有効な量」は、過度の有害な副作用を伴わずに、疾患症状を減らすか又は改善することを要求される、本明細書に開示されるような製剤を含むTrkB又はTrkCのアゴニストの量である。用語「治療上有効な量」は、例えば、予防に有効な量を含む。本明細書に開示される耳用組成物の神経及び/又は有毛細胞のモジュレータの「有効な量」は、過度の副作用を伴うことなく、所望の薬理学的効果又は治療の向上を達成するのに有効な量である。「有効な量」又は「治療上有効な量」は、幾つかの実施形態において、投与される化合物の代謝、被験体の年齢、体重、健康状態、処置される疾病、処置される疾病の重篤度、及び主治医の判断の変動により、被験体ごとに変動することが理解される。拡張放出の投薬形態における「有効な量」が、薬物動態学及び薬理学に基づいて、持続放出の投薬形態における「有効な量」とは異なる場合があることも理解される。
用語「増強する(enhance)」又は「増強すること(enhancing)」は、TrkB又はTrkCのアゴニストの望ましい効果の効力又は持続時間の何れかの増大又は延長、或いは、治療薬の投与後の結果の任意の有害な症状の縮小を指す。故に、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストの効果を増強することに関し、用語「増強すること」は、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストと組み合わせて使用される他の治療薬の効果を、効力又は持続時間の何れかにおいて、増大する又は延長する能力を指す。「増強に有効な量」は、本明細書で使用されるように、所望の系における標的の耳構造の、別の治療薬又はTrkB又はTrkCのアゴニストの効果を増強するのに適切な、TrkB又はTrkCのアゴニスト或いは他の治療薬の量を指す。患者に用いる時、この用途に有効な量は、疾患、障害、又は疾病の重篤度及び経過、以前の治療、患者の健康状態及び薬物に対する反応、並びに処置を行う医師の判断に依存する。
用語「阻害すること(inhibiting)」は、疾病の進行、例えば、又は処置を必要とする患者の疾病の進行を予防するか、遅らせるか、又は逆行させることを指す。
用語「キット」及び「製品」は、同義語として用いられる。
「薬理学」は、中耳及び/又は内耳内の所望の部位において薬物の濃度に関して観察される、生物応答を決定する要因を指す。
「薬物動態学」は、中耳及び/又は内耳内の所望の部位において薬物の適切な濃度の到達及び維持を決定する要因を指す。
用語「TrkB又はTrkCのアゴニスト」は、TrkB又はTrkCの受容体上で1以上のエピトープを認識し且つそれに結合する薬剤を含む。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは抗体である。TrkB又はTrkCのアゴニストは、神経の成長及び/又は再生、並びにそれらのプロセスと接続、及び/又は耳の有毛細胞の成長及び/又は再生、並びにそれらのプロセスと接続を促進する薬剤である。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞接続の成長及び/又は再生及び/又は表現型の維持、並びにそれらのプロセスと接続(例えば、神経及び/又は有毛細胞)の促進により、治療的な恩恵(例えば難聴の緩和)をもたらす。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞への損傷(例えば耳の神経及び/又は有毛細胞の機能障害)を処置する及び/又は逆行することにより、又は、(例えば、耳を保護する薬剤(otoprotectant)の効果又は栄養効果を及ぼすことにより)耳の感覚細胞への更なる損傷(例えば細胞死)を減少又は遅らせることにより、治療的な恩恵(例えば音響外傷による耳鳴の緩和)をもたらす。
TrkB又はTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞(例えば、耳の神経及び/又は有毛細胞)の生存、成長、及び/又は再生を促進する、自然発生の神経栄養物質(例えばBDNF、NT3、NT4/5、IGF)の化学的に修飾されたアナログ、又はアミノ酸残基に1以上の突然変異を含む自然発生の神経栄養導物質を意味する「神経栄養物質」を含む。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、耳の感覚細胞の酸化的損傷及び/又は骨新生及び/又は悪化を減少又は阻害する。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、(例えば医療機器の外科的な埋込の後に)正常な耳の感覚細胞を維持する。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、免疫抑制剤(例えば耳の手術中に使用される免疫抑制剤)である。幾つかの実施形態において、神経栄養物質は、成長因子(例えば耳細胞の成長を促進するために移植処置の後に使用される成長因子)である。
予防用途において、本明細書に記載されるTrkB又はTrkCのアゴニストを含む組成物は、特定の疾患、障害、又は疾病の影響を受け易く、又はその危険に曝されている患者に投与される。例えば、このような疾病は、限定されないが、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、又は微小血管圧迫症候群、シナプス変性症、耳の神経の薬物により誘発される神経変性を含む。このような量は、「予防に有効な量又は用量」であると定義される。この用途において、正確な量はまた、患者の健康状態、体重などに依存する。
本明細書で使用されるように、「医薬デバイス」は、耳への投与後、本明細書に記載される活性薬剤の持続放出のためのリザーバーを提供する、本明細書に記載される任意の組成物を含む。
用語「実質的に低い分解生成物」は、活性薬剤の約10重量%が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の10重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の9重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の8重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の7重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の6重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の5重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の4重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の3重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。また更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の2重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。更なる実施形態において、この用語は、活性薬剤の1重量%未満が活性剤の分解生成物であることを意味する。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される製剤に存在する任意の個々の不純物(例えば金属不純物、活性薬剤及び/又は賦形剤の分解生成物など)は、活性薬剤の5重量%未満、2重量%未満、1重量%未満である。幾つかの実施形態において、製剤は、保存中に沈殿物を含まず、又は製造及び保存後に変色しない。
本明細書で使用されるように、用語「抗体」は、免疫グロブリン分子の可変領域に位置する、少なくとも1つの抗原認識部位を介して、炭水化物、ポリヌクレオチド、脂質、ポリペプチドなどの標的に特異的に結合することが可能な免疫グロブリン分子を意味する。本明細書で使用されるように、前記用語は、無傷のポリクローナル又はモノクローナル抗体だけでなく、それらのフラグメント(Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv)、単鎖(ScFv)、それらの突然変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、及び、抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の修飾された構成も包含する。抗体は、IgG、IgA、又はIgM(又はそのサブクラス)などの任意のクラスの抗体を含み、任意の特定のクラスである必要はない。重鎖の不変ドメインの抗体アミノ酸配列に依存して、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てられ得る。5つの主要なクラスの免疫グロブリンが存在する:IgA、IgD、IgE、IgG、及びIgM、並びにこれらの幾つかは更に、サブクラス(アイソタイプ)(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、及びIgA2)に分けられる場合もある。異なるクラスの免疫グロブリンに相当する重鎖不変ドメインは、それぞれアルファ、デルタ、イプシロン、ガンマ、及びミューと称される。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユット構造及び三次元配置は、周知である。
本明細書で使用されるように、用語「モノクローナル抗体」は、実質的に均質な抗体の集まりから得られる抗体を指し、即ち、個々の抗体は、少量で存在し得る可能な自然発生の変異体を除いては、同一である集団を含む。モノクローナル抗体は非常に特異的であり、単一の抗原部位に向けられる。更に、異なる決定因子(エピトープ)に向けられる異なる抗体を典型的に含む、ポリクローナル抗体の調製物とは対照的に、モノクローナル抗体は各々、抗原上で単一の決定因子に向けられる。修飾因子「モノクローナル」は、抗体の実質的に均質な集団から得られるような抗体の特徴を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈されることはない。
本明細書に使用されるように、用語「ヒト抗体」は、ヒトによって生成された抗体のアミノ酸配列に相当するアミノ酸配列を持つ抗体を意味し、及び/又は当該技術分野で既知の或いは本明細書に開示されるヒト抗体を作るための技術の何れかを使用して作られている。このヒト抗体の定義は、少なくとも1つのヒト重鎖ポリペプチド又は少なくとも1つのヒト軽鎖ポリペプチドを含む抗体を含んでいる。ヒト抗体は、当該技術分野で既知の様々な技術を使用して生成され得る。1つの実施形態において、ヒト抗体はファージライブラリーから選択され、ファージライブラリーはヒト抗体を発現させる。ヒト抗体はまた、トランスジェニック動物(例えば、内因性の免疫グロブリン遺伝子が部分的又は完全に不活性化されたマウス)にヒト免疫グロブリンの遺伝子座を導入することにより作られ得る。代替的に、ヒト抗体は、標的抗原に向けられる抗体を生成するヒトBリンパ球を不死化することにより調製される場合がある(そのようなBリンパ球は、個体から回収され、或いはインビトロで免疫化される)。
本明細書に提供される抗体の用語「ベニヤ」のバージョンは、幾つかの実施形態において使用される場合がある。ベニヤ化(veneering)プロセスは、天然のFRタンパク質のフォールディング構造のほぼ全てを保持する抗原結合部分を含む抗体を提供するために、例えばマウスの重鎖又は軽鎖可変領域からのFR残基を、ヒトFR残基と選択的に交換することを含む。ベニヤ化技術は、抗原結合部分の抗原結合特徴が、主として抗原会合表面内の重鎖及び軽鎖のCDRセットの構造及び相対的な配置により決定されるという理解に基づいている。故に、抗原会合特異性は、ヒト化抗体のみに保存することができ、ここで、CDR構造、それらの互いの相互作用、及び可変領域ドメインの残りとの相互作用が、注意深く維持される。ベニヤ化技術の使用により、免疫系により容易に遭遇される、外部(例えば溶解露出)FR残基は、ヒト残基と選択的に交換され、弱い免疫原性の、又は実質的に非免疫原性のベニヤ表面を含むハイブリッド分子をもたらす。本明細書で提供される抗体のベニヤのバージョンは本開示により包含されることを理解されたい。
本明細書に使用されるように、抗体の「抗原結合部分」又は「抗原結合フラグメント」という用語(又は単に「抗体部分」又は「抗体フラグメント」)は、抗原(例えば、TrkCの膜近傍領域ドメイン)に特異的に結合する能力を保持する、抗体の1以上のフラグメントを指す。抗体の抗原結合機能は、完全長の抗体のフラグメントによって実行され得ることが示されてきた。そのような抗体の実施形態はまた、二重特異性(bispecific)、二重特異性、又は多重特異性の形式の場合があり;2以上の異なる抗原に特異的に結合する。抗体の「抗原結合部分」という用語の中に包含される結合フラグメントの例は、(i)VL、VH、CL、及びCH1のドメインから成る一価フラグメントであるFabフラグメント;(ii)ヒンジ領域でのジスルフィド架橋により結合される2つのFabフラグメントを含む二価フラグメントである、F(ab’)2フラグメント;(iii)VHとCH1のドメインから成るFdフラグメント;(iv)抗体の単一の腕のVL及びVHのドメインから成るFvフラグメント;(v)1つの可変ドメインを含むdAbフラグメント;及び(vi)分離された相補性決定領域(CDR)を含む。更に、Fvフラグメントに2つのドメイン、VLとVHは、別個の遺伝子によりコードされるが、これらは、組換え法を使用して、一価分子を形成するようにVLとVHの領域が対になる単一タンパク質鎖としてそれらを作ることを可能にする合成リンカーにより、結合され得る。そのような一本鎖抗体も、本発明内に包含されるように意図される。二重特異性抗体などの一本鎖抗体の他の形態も本明細書に包含される。二重特異性抗体は、VHとVLのドメインが単一のポリペプチド鎖上で発現されるが、短すぎるため同じ鎖の上の2つのドメイン間で対になることができないリンカーを使用し、それにより、ドメインを強制的に別の鎖の相補性ドメインと対にして、2つの抗原結合部位を作り出す、二価の二重特異性抗体である。
本明細書に記載される抗体は、完全長の抗体の結合特性(例えば特異性又は親和性)を保持する、一本鎖抗体又はFabフラグメントなどの、抗体のフラグメント、部分、変異体、又は誘導体を含む。
用語「耳の介入処置」は、1以上の耳構造に対する外部損傷又は外傷を意味し、インプラント、耳の手術、注射、カニューレ挿入などを含む。インプラントは、内耳又は中耳の医療機器を含み、それらの例は、蝸牛移植、聴力付与デバイス、聴力改善デバイス、短い電極、マイクロプロテーゼ又はピストン状プロテーゼ;針;幹細胞インプラント;薬物送達デバイス;任意の細胞ベースの治療薬;などを含む。耳の手術は、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術、開窓(cochleostomy)、迷路切開術、乳突削開術、アブミ骨切除手術、アブミ骨手術、内リンパ球形嚢手術(sacculotomy)などを含む。注入は、鼓室内の注入、蝸牛内の注入、正円窓膜を隔てた注入などを含む。カニューレ挿入は、鼓室内、蝸牛内、内リンパ、外リンパ、前庭のカニューレ挿入などを含む。
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物へと変換されるTrkB又はTrkCのアゴニストを表す。特定の実施形態において、プロドラッグは、1以上の工程又はプロセスによって、化合物の生物学的、薬学的、又は治療上活性な形態へと酵素的に代謝される。プロドラッグを生成するために、薬学的に活性な化合物は、インビボで投与された後で活性化合物が再成されるように修飾される。1つの実施形態において、プロドラッグは、薬物の代謝安定性又は移動特性を変更し、副作用又は毒性を隠し、或いは薬物の他の特性又は性質を変更するように設計される。本明細書に提供される化合物は、幾つかの実施形態において、適切なプロドラッグへと誘導体化される。
「可溶化剤」は、耳に許容可能な化合物を指し、前記化合物は、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストの溶解性を補助又は増大させる、トリアセチン、クエン酸トリエチル、オレイン酸エチル、カプリル酸エチル、ラウリル硫酸ナトリウム、ナトリウムドクサート、ビタミンE TPGS、ジメチルアセトアミド、N-メチルピロリドン、N-ヒドロキシエチルピロリドン、ポリビニルピロリドン、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルシクロデキストリン、エタノール、n-ブタノール、イソプロピルアルコール、コレステロール、胆汁塩、ポリエチレングリコール200-600、グリコフロール、トランスクトール、プロピレングリコール、ジメチルイソソルビドなどである。
「安定化剤」は、内耳の環境に適合する、任意の抗酸化剤、緩衝液、酸、防腐剤などの化合物を指す。安定化剤は、限定されないが、(1)賦形剤と、シリンジ又はガラス瓶を含む容器又は送達システムとの適合性を向上させる、(2)組成物の成分の安定性を向上させる、又は(3)製剤の安定性を向上させる、いずれかの薬剤を含む。
「定常状態」は、本明細書で使用されるように、内耳に投与される薬物の量が、1回の投薬間隔内で排除される薬物の量に等しいことで、結果として標的とする構造内の薬物曝露濃度が定常又は一定のレベルになる状態である。
本明細書で使用されるように、用語「被験体」は、動物、好ましくは、ヒト又は非ヒトを含む哺乳動物を意味するために使用される。患者及び被験体という用語は、互換的に使用され得る。
「界面活性剤」は、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ドクサートナトリウム、Tween60又は80、トリアセチン、ビタミンE TPGS、モノオレイン酸ソルビタン、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート、ポリソルベート、ポロクサマー(polaxomer)、胆汁塩、モノステアリン酸グリセリル、エチレンオキシド及びプロピレンオキシドのコポリマー、例えば、Pluronic(登録商標)(BASF)などの、耳に許容可能な化合物を指す。他の幾つかの界面活性剤は、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリド及び植物油(例えばポリオキシエチレン(60)水素化ヒマシ油);及び、例えばオクトキシノール10、オクトキシノール40などのポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテルを含む。幾つかの実施形態において、界面活性剤は、物理的安定性を高めるために、又は他の目的のために含まれる。
用語「処置する(treat)」、「処置すること(treating)」、又は「処置(treatment)」は、疾患又は疾病(例えば耳鳴)の症状を緩和、軽減、又は改善すること、付加的な症状を予防すること、症状の根本的な代謝原因を改善又は予防すること、疾患又は疾病を阻害すること、例えば、疾患又は疾病の進行を阻むこと、疾患又は疾病を和らげること、疾患又は疾病を退行させること、疾患又は疾病により引き起こされる状態を和らげること、又は、予防的及び/又は治療的の何れかで疾患又は疾病の症状を止めることを含む。
本明細書に記載される方法及び組成物の、他の目的、特徴、及び利点は、後述する詳細な説明から明らかになる。しかし、発明の詳細な説明と特定の実例は、具体的な実施形態を示すものであるが、説明のためだけに与えられたものである。
耳の解剖学
図1に示されるように、外耳は、器官の外側部分であり、耳介(心耳)、耳道(外耳道)、及び鼓膜(ear drumとしても知られる)の外側に面する部分から成る。頭部の側部で目に見える外耳の肉質部分である耳介は、音波を集め、音波を耳道に向ける。従って、外耳の機能は、部分的に、音波を集め、鼓膜及び中耳に向けることである。
中耳は、鼓膜の背後にある、鼓室と呼ばれる空気で満ちた空洞である。鼓膜(ear drumとしても知られる)は、外耳と中耳を分ける薄い膜である。中耳は側頭骨内にあり、この空間内に、ツチ骨、キヌタ骨、アブミ骨といった3つの耳骨(耳小骨)を含む。耳小骨は、小さな靱帯を介して共に結合されており、鼓室の空間にわたって架橋を形成している。ツチ骨は、一端で鼓膜に結合しており、その前端にてキヌタ骨に結合しており、次いで、アブミ骨に結合している。アブミ骨は、卵円窓に結合しており、2つの卵円窓のうち1つは鼓室内に位置している。輪状靱帯として知られる線維組織層は、アブミ骨を卵円窓に結合している。外耳からの音波は最初に鼓膜を振動させる。この振動は、耳小骨及び卵円窓を通って蝸牛に伝わり、内耳中の液体にこの動きが伝わる。従って、耳小骨は、鼓膜と、流体で満ちた内耳の卵円窓との間に、機械的な結合をもたらすように配置されており、そこでは更なる処理のために音が変換され、内耳に伝達される。耳小骨、鼓膜、又は卵円窓の硬化、硬直、又はそれらの動作の損失により、難聴、例えば、耳硬化症、又はアブミ骨の硬直が引き起こされる。
鼓室は耳管を介して咽喉にも結合されている。耳管は、外気と中耳の空洞との間の圧力を等しくする能力をもたらす。正円窓は、内耳の構成要素であるが鼓室内にもアクセス可能であり、内耳の蝸牛に向かって開口している。正円窓は正円窓膜によって覆われ、正円窓膜は、外層又は粘液層、中間層又は線維層、及び内膜といった3つの層から成り、蝸牛の流体と直接繋がっている。従って、正円窓は、内膜を介して内耳に直接連絡している。
卵円窓と正円窓における動作は、相互連絡されており、即ち、アブミ骨が鼓膜から卵円窓へとこの動作を伝えることで、内耳流体に対して内側に移動すると、正円窓(正円窓膜)は対応するように押し出され、蝸牛の流体から離れる。正円窓のこの動作により、蝸牛内の流体の動作が可能となり、次いで、蝸牛内部の有毛細胞の動作が生じ、聴覚信号の伝達が可能となる。正円窓膜における硬化と硬直は、蝸牛の流体における動作の能力が欠如するため、難聴を引き起こす。近年の研究は、卵円窓を通る正常な伝導経路を迂回させ、且つ増幅された入力を蝸牛室にもたらす、正円窓への医療用トランスデューサの移植に焦点を当てている。
聴覚信号の変換は内耳で行われる。流体で満ちた内耳(又はinner ear)は、蝸牛器及び前庭器といった2つの主要な構成要素から成る。内耳は、部分的に、頭蓋骨の側頭骨中の入り組んだ一連の経路である骨又は骨迷路内に位置している。前庭器は平衡感覚の器官であり、3つの半円状の管及び前庭から成る。この3つの半円状の管は、空間の3つの直交面に沿った頭部の動きを、流体の動きと、次いで、膨大部稜と呼ばれる半円状の管の感覚器官による信号処理とによって検出することができるように、互いに相関的に配列されている。膨大部稜は、有毛細胞及び支持細胞を備えており、クプラと呼ばれる半円型のゼラチン状の塊によって覆われている。有毛細胞の毛は、クプラに包埋されている。半円状の管は、動的平衡、回転又は角度移動の平衡状態を検出する。
頭部を迅速に回転させると、半円状の管は、頭部と共に動くが、膜状の半円状の管に位置する内リンパ液は、動かない状態を維持する傾向がある。内リンパ液は、クプラに逆らって押し出され、片側に傾く。クプラは、傾くと、膨大部稜の有毛細胞の毛の一部を曲げ、知覚刺激を引き起こす。半円状の管はそれぞれ異なる面に位置しているため、半円状の管それぞれの対応する膨大部稜は、頭部の同じ動きに対して異なる反応を行う。これにより、刺激の組み合わせ(mosaic)が作られ、内耳神経の前庭枝上の中枢神経系に伝達される。中枢神経系は、この情報を解釈し、平衡を維持するのに適切な反応を開始する。中枢神経系の中で重要なものは小脳であり、これは平衡と均衡の感覚を媒介する。
前庭は内耳の中心部分であり、静的平衡又は重力に対する頭部の位置を確認する有毛細胞を有する、機械受容器を備えている。静的平衡は、頭部に動きがない、又は直線状に動いている時に役割を果たす。前庭中の膜状迷路は、卵形嚢と球形嚢といった2つの嚢状の構造体に分けられる。各構造体は順番に嚢斑と呼ばれる小さな構造体を含み、これは、静的平衡の維持に寄与している。嚢斑は感覚有毛細胞から成り、感覚有毛細胞は、嚢斑を覆うゼラチン状の塊(クプラと似たもの)に包埋されている。耳石と呼ばれる炭酸カルシウムの粒は、ゼラチン状の層の表面に包埋されている。
頭部が直立位置にある時、毛は斑に沿って真っ直ぐになっている。頭部が傾くと、ゼラチン状の塊及び耳石は対応して傾き、斑の有毛細胞上の毛の一部が曲がる。この曲げ作用により、中枢神経系に対して信号刺激が開始され、刺激は内耳神経の前庭枝を介して伝わり、次に適切な筋肉に運動刺激を中継して、平衡を維持する。
蝸牛は、聴覚に関連する内耳の部分である。蝸牛は、先が細くなった管状の構造であり、カタツムリに似た形状で巻かれている。蝸牛の内側は、3つの領域に分かれており、前庭膜及び基底板の位置により更に画定されている。前庭膜より上の位置は前庭階であり、これは卵円窓から蝸牛の頂部まで延びており、カリウム濃度が低く且つナトリウム濃度が高い水溶液である外リンパ液を含有している。基底板は鼓室階の領域を画定しており、これは蝸牛の頂部から正円窓まで延びており、同様に外リンパを含有している。基底板は、数千もの硬い繊維を含有しており、該繊維は、正円窓から蝸牛頂部までに向かって、徐々に長くなっている。基底膜の線維は、音で活性化されると振動する。前庭階と鼓室階との間には蝸牛管があり、これは蝸牛の頂部にある閉じられた嚢として終端となる(ends)。蝸牛管は内リンパ液を含有しており、これは脳脊髄液と同様のものであり、カリウムが豊富である。
聴覚の感覚器官であるコルチ器官は、基底板上に位置し、蝸牛管に向かって上方に延びている。コルチ器官は有毛細胞を含有しており、該有毛細胞は、自由表面から延びる毛状突起を有し、且つ蓋膜と呼ばれるゼラチン状表面と接触している。有毛細胞は、軸索を有していないが、内耳神経の蝸牛枝を形成する感覚神経線維に囲まれている(第VIII脳神経)。
上記のように、楕円形の窓としても知られる卵円窓は、アブミ骨と連絡しており、鼓膜から振動する音波を中継する。卵円窓に伝わった振動は、外リンパ及び前庭階/鼓室階を介して流体で満ちた蝸牛の内圧を増大させ、次いで、それに応じて正円窓膜を膨らませる。卵円窓の内側への加圧/正円窓の外側への膨張の協調により、蝸牛の内圧が変わることなく、蝸牛内の流体の移動が可能となる。しかし、振動は、前庭階において外リンパを介して伝わると、前庭膜に対応する発振をもたらす。このような対応する発振は、蝸牛管の内リンパを介して伝わり、基底板へと伝わる。基底板が振幅する、又は上下に動くと、それに伴ってコルチ器官が動く。次いで、コルチ器官の有毛細胞受容体は、蓋膜に逆らって動き、有毛細胞の不動毛に機械的な変形が生じる。不動毛の偏りは、有毛細胞のリボンシナプスにおいて有毛細胞の脱分極と神経伝達物質グルタミン酸塩の段階的放出をもたらす。グルタミン酸塩は、リボンシナプスの一部として内部の有毛細胞に結合する、蝸牛の求心性線維上で受容体を活性化する。求心性線維は、らせん神経節ニューロンからの樹状突起であり、グルタミン酸塩によるそれらの脱分極は、細胞体へと求心性線維に沿って運ばれ、作用電位が誘発され得る。らせん神経節ニューロンの作用電位は、中枢神経系へと聴覚(VIIIthの頭蓋)神経を形成するそれらの軸索を介して伝達され、これらの信号は音と捉えられる。このように、音は、中枢神経系により音と捉えられるコルチ器官により電気信号へ伝達される、蝸牛内の機械的刺激を生成する。
疾患
耳の障害は、限定されないが、難聴、眼振、回転性めまい、耳鳴、炎症、感染、及びうっ血を含む症状をもたらす。本明細書に開示される組成物で処置される耳の障害は多数存在し、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、メニエール病/症候群、内リンパ水腫、迷路炎、ラムゼイ・ハント症候群、前庭神経炎、耳鳴、老人性難聴、及び微小血管圧迫症候群を含む。
興奮毒性
興奮毒性は、グルタミン酸塩及び/又は同様の物質による、神経及び/又は有毛細胞の死滅又は損傷を指す。
グルタミン酸塩は、中枢神経系において最も大量にある興奮性の神経伝達物質である。シナプス前細胞は、刺激後にグルタミン酸塩を放出する。グルタミン酸塩は、シナプスをわたって流れ、シナプス後細胞に位置する受容体に結合し、これらの神経を活性化させる。グルタミン酸塩受容体は、NMDA、AMPA、及びカイニン酸塩受容体を含んでいる。グルタミン酸塩輸送体は、シナプスから細胞外のグルタミン酸塩を除去する役目を課されている。特定の事象(例えば、乏血又は卒中)は、グルタミン酸塩輸送体を損傷させ得る。これは、シナプス内に蓄積する過剰なグルタミン酸塩を結果としてもたらす。シナプス内の過剰なグルタミン酸塩は、グルタミン酸塩受容体の過剰な活性化を結果としてもたらす。
AMPA受容体は、グルタミン酸塩とAMPAの両方の結合により活性化される。AMPA受容体の特定のアイソフォームの活性化は、神経の原形質膜に位置するイオンチャネルの開放を結果としてもたらす。チャネルが開くと、NaとCa2+イオンは神経へと流れ、Kイオンは神経から流れる。
NMDA受容体は、グルタミン酸塩とNMDAとの両方が結合することにより活性化される。NMDA受容体の活性化は、神経の原形質膜に位置するイオンチャネルの開放を結果としてもたらす。しかし、これらチャネルはMg2+イオンにより遮断される。AMPA受容体の活性化は、イオンチャネルからシナプスへのMg2+イオンの排出を結果としてもたらす。イオンチャネルが開き、イオンチャネルがMg2+イオンを排出すると、NaとCa2+イオンは神経へと流れ、Kイオンは神経から流れる。
興奮毒性は、NMDA受容体及びAMPA受容体が、過剰な量のリガンド、例えば、異常な量のグルタミン酸塩の結合により過剰に活性化されると生じる。これら受容体の過剰な活性化は、それらの制御下でイオンチャネルの過剰な開放を引き起こす。これは、異常に高いレベルのCa2+とNaが神経に侵入することを可能にする。このようなレベルのCa2+とNaの神経への流入は、より頻繁に神経を興奮させ、結果として細胞内に遊離基と炎症性化合物の急速な構築をもたらす。遊離基は最終的にミトコンドリアを損傷し、細胞内の貯蔵エネルギーを消耗させる。更に、過剰レベルのCa2+とNaイオンは、過剰レベルの酵素(ホスホリパーゼ、エンドヌクレアーゼ、プロテアーゼを含むが、これに限定されない)を活性化する。これら酵素の過剰な活性化は、細胞骨格、原形質膜、ミトコンドリア、及び感覚神経のDNAへの損傷を結果としてもたらす。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、グルタミン酸塩受容体反応を調節し、及び/又は、グルタミン酸塩受容体及び/又はそれに関連するタンパク質の発現を修飾することにより、過剰な神経発火及び/又は神経細胞死を低減又は阻害する、機能的なグルタミン酸受容体アンタゴニストである。本明細書には、特定の実施形態において、NMDA受容体の機能障害を特徴とする耳の疾患の処置に使用される医薬組成物が開示される。
耳鳴
本明細書で使用されるように、「耳鳴」は、何の外部刺激も無い状態での音の知覚を特徴とする障害を指す。特定の例において、耳鳴は、継続的又は散発的に片方又は両方の耳に生じ、大抵の場合は響き渡る音として記載される。耳鳴は大抵の場合、他の疾患の診断症状として用いられる。他覚的耳鳴と自覚的耳鳴といった、2つのタイプの耳鳴が存在する。前者は、誰にでも聞こえる、身体において作成された音である。後者は、病気に冒された個体にのみ聞こえるものである。研究により、5000万以上のアメリカ人が耳鳴の幾つかの形態を経験していると、推定されている。これら5000万人のうち、約1200万人が激しい耳鳴を経験している。
耳鳴の様々な処置が存在する。IVにより投与されるリドカインは、病人の約60%-80%の耳鳴に関連した騒音を減少又は排除する。ノルトリプチリン、セルトラリン、及びパロキセチンなどの選択的な神経伝達物質再取摂取阻害剤も、耳鳴に対する効果を実証してきた。ベンゾジアゼピンは、耳鳴を処置するためにも処方される。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、耳鳴に関連付けられた耳の感覚細胞の損傷及び/又は死滅を減少又は阻害する。
感音性難聴
感音性難聴は、内耳の内耳神経(第VIII脳神経としても知られる)又は感覚細胞における異状(先天性、後天性)から結果として生じるタイプの難聴である。内耳の主な異常は、耳の有毛細胞及び感覚神経の異常である。
蝸牛の形成不全、染色体異常、及び先天性真珠腫は、感音難聴を結果として生じ得る、先天性異常の例である。ほんの一例として、炎症性疾患(例えば、化膿性迷路炎、鼓膜炎、流行性耳下腺炎、麻疹、ウイルス性梅毒、及び自己免疫障害)、メニエール病、聴器毒性薬物(例えば、アミノグリコシド、ループ利尿薬、抗代謝物、サリチル塩、シスプラチン)への曝露、身体外傷、老人性難聴、及び音響性外傷(90dBを超える音に長時間曝されることによる)は、後天性感音難聴を結果として生じ得るものである。
感音性難聴を結果としてもたらす異常が聴覚路における異常の場合、感音性難聴は中枢性難聴と呼ばれる。感音性難聴を結果としてもたらす異常が聴覚路における異常の場合、感音性難聴は皮膚性難聴と呼ばれる。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、耳の感覚細胞の成長、及びそのプロセスと結合を促進し、且つ感音性難聴を減少又は逆行させる神経栄養物質(例えば、BDNF、GDNF)である。
騒音性難聴
騒音性難聴(NIHL)は、長時間持続する、大きすぎる音又は大きな音への曝露後に引き起こされる。85デシベル以上の音への、長時間、又は、繰り返しの、又は、突発的な曝露は、難聴を引き起こし得る。難聴は、大きな騒音、例えば、大きな音楽、重機又は機械類、飛行機、銃声、又は他のヒトによる騒音への長時間の曝露によっても生じる場合がある。NIHLは有毛細胞及び/又は聴神経への損傷を引き起こす。有毛細胞は、音響エネルギーを、脳に伝わる電気信号に変換する小感覚細胞である。突発性の音は、永続的な即時難聴を結果としてもたらし得る。この種の難聴は、経時的に鎮静し得る、耳又は頭部の鳴り響く音、飛び回る音(buzzing)、又は轟音といった耳鳴を伴う場合がある。難聴と耳鳴は、片耳又は両耳に生じ、耳鳴は、生涯を通じて継続的に又は時々継続する場合がある。騒音への継続的な曝露は有毛細胞及び感覚神経の構造にも損傷を与え、永続的な難聴及び耳鳴を結果としてもたらすが、このプロセスは、突発性の騒音よりも徐々に生じる。
幾つかの実施形態において、耳を保護する薬剤は、NIHLを逆行、低減、又は改善し得る。NIHLを処置又は予防する耳を保護する薬剤の例は、限定されないが、本明細書に記載される耳を保護する薬剤を含む。
中毒性難聴
中毒性難聴は毒素によって引き起こされる難聴を指す。難聴は、耳の有毛細胞、蝸牛、及び/又は第VIII脳神経への外傷を原因とする場合がある。多剤は聴器毒性であると知られている。多くの場合、聴器毒性は用量依存性である。聴器毒性は、薬の中止後に恒久的又は可逆的となる場合がある。
既知の聴器毒性薬物は、限定されないが、抗生物質のアミノグリコシドクラス(例えば、ゲンタマイシン及びアミカシン)、抗生物質のマクロライドクラスの一部のメンバー(例えば、エリスロマイシン)、抗生物質の糖タンパク質クラスの一部のメンバー(例えば、バンコマイシン)、サリチル酸、ニコチン、一部の化学療法剤(例えばアクチノマイシン、ブレオマイシン、シスプラチン、カルボプラチン、及びビンクリスチン)、及び薬物のループ利尿薬ファミリーの一部のメンバー(例えばフロセミド)、6-ヒドロキシドーパミン(6-OH DPAT)、6,7-ジニトロキノキサリン-2,3-ジオン(DNQX)などを含む。
化学療法剤、及び抗生物質のアミノグリコシドクラスは、活性酸素種(ROS)の産生を誘導する。ROSは、DNA、ポリペプチド、及び/又は脂質を損傷することにより、細胞を直接損傷し得る。抗酸化剤は、細胞に損傷を与える前に、ROSの形成を妨げる又は遊離基を除去する(scavenging)ことにより、ROSの損傷を妨げる。化学療法剤、及び抗生物質のアミノグリコシドクラスの両方は、内耳の血管線条においてメラニンを結合することによって耳に損傷を与えるとも考えられる。幾つかの例において、シスプラチン、アクチノマイシン、ブレオマイシン、カルボプラチン、オキサリプラチン、及びビンクリスチンなどの化学療法剤により誘導される難聴は、化学療法誘導性難聴と称される。
サリチル酸は、ポリペプチドプレスチン(prestin)の機能を阻害するため、聴器毒性と分類される。プレスチンは、外耳の有毛細胞の原形質膜にわたり塩化物と炭酸塩の交換を制御することにより、外耳の有毛細胞の運動性を媒介する。これは外耳の有毛細胞でのみ確認され、内耳の有毛細胞では確認されない。従って、本明細書には、耳を保護する薬剤(例えば抗酸化剤)を含む制御放出型の耳用組成物の使用が開示され、これにより、限定されないがシスプラチン処置、アミノグリコシド又はサリチル酸の投与、或いは他の聴器毒性薬剤を含む、化学療法の聴器毒性効果を予防、改善、又は緩和する。
内リンパ水腫
内リンパ腫は、内耳の内リンパ系内の水圧の増加を指す。内リンパと外リンパとは、複数の神経を含む薄い膜によって分離されている。圧力変動は、それらが収容する膜と神経にストレスを与える。圧力が十分に大きい場合、破壊がこれらの膜に生じる場合がある。この結果、脱分極の遮断及び機能の一時的損失を引き起こし得る、流体の混合がもたらされる。前庭神経発火の速度の変化は大抵、回転性めまいに繋がる。更に、コルチ器官も影響を受ける場合がある。基底膜、及び内側と外側の有毛細胞の歪みは、難聴及び/又は耳鳴を引き起こし得る。
原因は、代謝性障害、ホルモンの不均衡、自己免疫性疾患、及び、ウイルス感染、細菌感染、又は真菌感染を含む。症状は、難聴、回転性めまい、耳鳴、耳の閉塞感を含む。眼振も生じる場合がある。処置は、ベンゾジアゼピン、利尿剤(流体の圧力を下げるため)、コルチコステロイド、及び/又は、抗菌剤、抗ウイルス剤、又は、抗真菌剤を含む。
迷路炎
迷路炎は、内耳の前庭系を含む耳の迷路の炎症である。原因は、細菌感染、ウイルス感染、及び真菌感染を含む。迷路炎は、頭部外傷又はアレルギーによって引き起こされる場合もある。迷路炎の症状は、バランス維持の困難、めまい、回転性めまい、耳鳴、及び難聴を含む。回復には1~6週間かかることもある。しかし、慢性症状は長年存在する場合もある。
迷路炎の様々な処置が存在する。プロクラルペラジンは大抵、制吐剤として処方される。セロトニン再摂取阻害剤は、内耳内の新たな神経発達を刺激することが示された。加えて、原因が細菌感染である場合に抗生物質を用いた処置が処方され、疾病がウイルス感染によって引き起こされる場合にはコルチコイドと抗ウイルス剤を用いた処置が推奨される。
メニエール病
メニエール病は、3~24時間続く場合がある回転性めまい、吐き気、及び嘔吐に突然襲われることを特徴とする特発性の疾病であり、徐々におさまる場合がある。時間を経るにつれて、上述の疾患に、進行性の難聴、耳鳴、及び耳の圧迫感を伴う。メニエール病の原因は、内耳液の生成の増大又は再吸収の減少を含む、内耳液のホメオスタシスの不均衡におそらく関係する。
内耳におけるバソプレシン(VP)媒介性アクアポリン2(AQP2)系の研究は、内リンパ生成物を誘導する際にVPの役割を示唆しており、これにより、前庭と蝸牛の構造の圧力を増大させる。VPのレベルは内リンパ水腫(メニエール病)の場合にアップレギュレートされることが見出され、モルモットにおけるVPの長期投与は内リンパ水腫を誘導することが見出された。鼓室階へのOPC-31260(V2-Rの競合アンタゴニスト)の注入を含む、VPアンタゴニストによる処置は、メニエール病の症状の顕著な軽減を結果としてもたらした。他のVPのアンタゴニストは、WAY-140288、CL-385004、トルバプタン、コニバプタン、SR121463A、及びVPA985を含む。(Sanghi et al. Eur. Heart J. (2005) 26:538-543; Palm et al. Nephrol. Dial Transplant (1999) 14:2559-2562)。
他の研究は、内リンパ生成物を制御する際のエストロゲン関連受容体β/NR3B2(ERR/Nr3b2)の役割を示唆しており、それ故、前庭/蝸牛器を加圧する。マウスへのノックアウト研究は、内リンパ流体の生成を調節する際のNr3b2遺伝子のポリペプチド生成物の役割を実証する。Nr3b2発現は、内リンパ分泌線状辺緑細胞(strial marginal cell)、及び、蝸牛及び前庭器の前庭暗細胞それぞれに局在化される。更に、Nr3b2遺伝子のコンディショナルノックアウトは、聴覚消失、及び内リンパ流体量の減少を結果としてもたらす。ERR/Nr3b2へのアンタゴニストによる処置は、内リンパ量の減少を補助し、故に、内耳構造内の圧力を変更する場合がある。
他の処置は、即時の症状への対処及び再発の予防を目標とする場合がある。低ナトリウム食、カフェイン、アルコール、及びタバコの回避が推奨された。一時的に回転性めまいの発作を緩和する場合がある薬物は、抗ヒスタミン(メクリジン及び他の抗ヒスタミンを含む)、及び、ロラゼパム又はジアゼパムを含む、バルビツール酸塩及び/又はベンゾジアゼピンを含む中枢神経系剤を含む。症状を和らげるのに有用な薬物の他の例は、スコポラミンを含むムスカリン性アンタゴニストを含んでいる。吐き気と嘔吐は、フェノチアジン剤プロクロルベラジンを含む、抗精神病剤を含有する座薬によって和らげられる場合がある。
症状を緩和するために使用される外科的処置は、回転性めまいの症状を緩和するための前庭機能及び/又は蝸牛機能の破壊を含む。これらの手順は、内耳の液圧を下げること、及び/又は内耳の平衡機能を破壊することの何れかを目的とする。液圧を和らげる内リンパのシャント手術は、前庭機能不全の症状を和らげるために内耳に施される場合がある。他の処置は、鼓膜への注入時に有毛細胞の感覚機能を破壊し、それにより内耳の平衡機能を完全に失くす、ゲンタマイシンの適用を含む。前庭神経の切断も利用され得、これにより聴覚を保持しつつ、回転性めまいを制御する。幾つかの実施形態において、耳の感覚細胞のモジュレータは、有毛細胞の成長を促進し、被験体が内耳の平衡機能を回復することを可能にする。
メニエール症候群
メニエール病と似た症状を示すメニエール症候群は、別の疾患プロセスへの二次的な苦痛(例えば、梅毒感染による甲状腺疾患又は内耳炎症)であると考えられる。故に、メニエール症候群は、内分泌異常、電解質不均衡、自己免疫機能不全、機能障害、薬物療法、感染(例えば、寄生虫感染)、又は脂質異状症を含む、内リンパの正常な産生又は再吸収を妨害する様々なプロセスへの二次的な影響である。メニエール症候群を患う患者の処置は、メニエール病と同様である。
ラムゼイ・ハント症候群(帯状疱疹の感染)
ラムゼイ・ハント症候群は、聴神経の帯状疱疹の感染によって引き起こされる。この感染は、激しい耳痛、難聴、回転性めまいの他に、神経によりもたらされる、外耳上、外耳道中、同様に顔又は首の皮膚上の水膨れを引き起こす場合がある。顔面神経が腫れによって圧迫される場合、顔面筋も麻痺する場合がある。難聴は一時的又は恒久的なものであり、回転性めまいの症状は通常は数日から数週まで持続する場合がある。
ラムゼイ・ハント症候群の処置は、アシクロビルを含む抗ウイルス剤の投与を含む。他の抗ウイルス剤は、ファムシクロビルとバラシクロビルを含む。抗ウイルス剤とコルチコステロイドの治療の組み合わせも、帯状疱疹の感染を改善するために使用される場合がある。鎮痛剤又は麻薬も、疼痛を和らげるために投与され、ジアゼパム又は他の中枢神経系剤が、回転性めまいを抑えるために投与される場合がある。カプサイシン、リドカインパッチ、及び神経ブロックが随意に使用される。顔面神経麻痺を和らげるために、圧迫された顔面神経に手術も行なわれる場合がある。
微小血管圧迫症候群
「血管圧迫」又は「神経血管圧迫」とも称される微小血管圧迫症候群(MCS)は、回転性めまい及び耳鳴を特徴とする障害である。微小血管圧迫症候群は、血管による脳神経VIIの刺激作用によって引き起こされる。MCSを有する被験体に見出される他の症状は、限定されないが、重度の動作の不耐性、及び「クイックスピン」のような神経痛を含む。MCSは、カルバマゼピン、TRILEPTAL(登録商標)、及びバクロフェンで処置される。また、MCSは外科的にも処置され得る。
前庭神経炎
前庭神経炎、又は前庭神経病は、末梢性前庭系の急性の持続的な機能障害である。前庭神経炎は、片方又は両方の前庭器からの求心性神経入力の破壊によって引き起こされると、理論付けられている。この破壊の源は、前庭神経及び/又は迷路のウイルス感染及び急性の局所的虚血を含む。
前庭神経炎を診断する時の最も重要な所見は、自発性、一方向性、水平性の眼振である。これには大抵、吐き気、嘔吐、及び回転性めまいが付随する。しかし、難聴又は他の聴覚症状は通常付随しない。
前庭神経炎の様々な処置が存在する。ジメンヒドリナート、ジフェンヒドラミン、メクリジン、及びプロメタジンなどのH1-受容体アンタゴニストは、抗コリン作用によって前庭刺激を減少させて、迷路機能を低下させる。ジアゼパム及びロラゼパムなどのベンゾジアゼピンは、GABAA受容体に対するベンゾジアゼピンの効果による前庭反応を阻害するためにも使用される。抗コリン薬、例えばスコポラミンも処方される。これらは、前庭の小脳の経路における伝導を抑えることにより機能する。最後に、コルチコイド(即ちプレドニゾン)が、前庭神経及び関連する器官の炎症を改善するために処方される。
老人性難聴
加齢性難聴(老人性難聴)は、加齢と共に徐々に生じる聴力の損失である。老人性難聴は、年配者及び高齢者に影響を及ぼす最も一般的な疾病の1つである。65歳~74歳の間でアメリカ合衆国において3人におよそ1人が難聴を有しており、75歳より上の人々のほぼ半分が難聴(difficulty hearing)を有している。聴力に問題があると、医師の助言を理解し且つそれに従い、警告に反応し、及び、電話、ドアベル、及び煙探知器を聞くことが困難になる場合がある。また、難聴により、家族や友人との会話を楽しむことが困難になり、孤立感に繋がってしまう場合もある。加齢性難聴は大抵、片耳又は両耳に生じ、時には両耳に等しく影響を及ぼす。
加齢性難聴の多くの原因が存在する。最も一般的に、難聴は、人が加齢するにつれて内耳の変化から生じるが、幾つかの例において、難聴はまた、中耳の変化、又は耳から脳までの神経経路に沿った複雑な変化から結果として生じる場合もある。特定の医学的状態と薬物療法は同様の役割を果たす場合もある。老人性難聴は、らせん神経節ニューロンの求心性線維及び有毛細胞を持つそれらのシナプス(リボンシナプス)の緩やかな損失から結果として生じる場合があり、音を検出する感覚細胞と、聴性脳にこの情報を伝達する聴神経との間に、離断を引き起こす。らせん神経節ニューロンと有毛細胞の損失も生じる。大きな雑音への事前暴露又は他の耳の傷害は、この加齢のプロセスを悪化させ、聴力の損失の加速を引き起こす場合がある。老人性難聴は「隠れた難聴」にも関係し、これは、聴力閾値の著しい変化の欠如にもかかわらず背景雑音(「雑音中の音声」)に対する音を検出することができないものである。聴力におけるこのようなより繊細な減衰は、らせん神経節ニューロンの求心性線維及び有毛細胞を持つそれらのシナプス結合(リボンシナプス)の損失に関連している。
医薬品
本明細書には、耳の感覚細胞(例えば、神経、及びそれらのプロセスと接続、及び/又は耳の有毛細胞)の変性を調節し、且つそれらの再接続を促進する、TrkB又はTrkCのアゴニストが提供される。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される、TrkB又はTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物又は製剤は、耳の感覚細胞(例えば、神経、及びそれらのプロセスと接続、及び/又は耳の有毛細胞(cells))の悪化を減少、遅延、又は逆行させる。また本明細書には、内耳の有毛細胞の破壊、発育不良、機能不全、損傷、脆弱性、又は欠損から結果として生じる、難聴又は聴力低下を処置又は改善するための、TrkB又はTrkCのアゴニストを含む制御放出の耳科用組成物が開示される。加えて、本明細書には、耳の感覚細胞(例えば、神経、及びそれらのプロセスと接続、及び/又は耳の有毛細胞)の、成長及び/又は再生を促進する、耳科用組成物又は製剤が提供される。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは耳を保護する薬剤であり、耳の感覚細胞(例えば、神経、及びそれらのプロセスと接続、及び/又は耳の有毛細胞)への損傷を減少、逆行、又は遅延させる。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCのアゴニストは、求心性知覚線維及びそれらのリボンシナプスへの損傷を修復する。
耳及び前庭の障害は、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニストに反応する原因及び症状を有している。
本明細書に開示される耳科用組成物又は製剤を含むTrkB又はTrkCは随意に、処置が必要な耳の構造へと直接標的とされる。例えば、考慮される1つの実施形態は、本明細書に開示される製剤を、内耳の正円窓膜又は蝸牛窓稜(crista fenestrae cochlea)に直接適用し、内耳(auris interna又はinner ear)の要素に直接到達させ、処置することである。他の実施形態において、本明細書で開示される製剤は、卵円窓に直接適用される。また他の実施形態において、直接的な到達は、内耳への直接的な微量注入(例えば、蝸牛への微小灌流)により達成される。また、このような実施形態は随意に薬物送達デバイスを含み、該薬物送達デバイスは、針及びシリンジ、ポンプ、マイクロインジェクションデバイス、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質、又はこれらの組み合わせを用いることによって、TrkB又はTrkCのアゴニストを送達する。
幾つかの実施形態において、本明細書に開示されるTrkB又はTrkCのアゴニスト製剤は更に、本明細書に開示される医薬品の聴器毒性を低減、阻害、又は改善し、或いは、過剰な雑音などを含む他の環境要因の影響を低減、阻害、又は改善する耳を保護する薬剤を含む。耳を保護する薬剤の例は、限定されないが、本明細書に記載される耳を保護する薬剤、チオール、及び/又はチオール誘導体、及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩、又は誘導体(例えばプロドラッグ)を含む。
更に、幾つかの医薬賦形剤、希釈剤、又は担体は、潜在的に聴器毒性である。例えば、一般的な防腐剤である塩化ベンザルコニウムは聴器毒性であり、それ故、前庭及び蝸牛の構造体に導入されると潜在的に有害となる。制御放出型のTrkB又はTrkCのアゴニストを製剤する際に、適切な賦形剤、希釈剤、又は担体を避ける又は組み合わせること、製剤から潜在的な聴器毒性の化合物を減少させる又は除去すること、或いは、そのような賦形剤、希釈剤、又は担体の量を減少させることが推奨される。随意に、制御放出型のTrkB又はTrkCのアゴニスト製剤は、特定の治療薬、或いは賦形剤、希釈剤、又は担体の使用から生じ得る、潜在的な聴器毒性の効果を相殺するために、抗酸化物質、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシン、又は鉄キレート剤などの耳を保護する薬剤を含む。
トロポミオシン受容体キナーゼ(Trk)アゴニスト
Trkチロシンキナーゼ受容体は、生存、分化、成長、及び再生を含む、広範囲の神経反応において重要な役割を果たす、マルチドメインの単一の膜貫通受容体である。Trk受容体は、中枢神経系と末梢神経系に広く分布しており、適切な機能の神経生存、分化、及び維持において重要な役割を果たす。Trk受容体機能の関連性は、卒中、脊髄損傷、視神経軸索切断術、緑内障、及び筋萎縮性側索硬化症を含む、多くの神経変性のモデルにおいて実証された。
Trkファミリーの3つのメンバー:TrkA、TrkB、及びTrkCが存在し、これらはそれぞれ、ラット又はマウスの学名において遺伝子Ntrk1、Ntrk2、及びNtrk3により、ヒト遺伝子の学名においてNTRK1、NTRK2、及びNTRK3によりコードされる。天然のTrkA、TrkB、及びTrkCの受容体の細胞外ドメインは、様々な他のタンパク質において識別された相同又は同様の構造に関して定義された、5つの機能ドメインを有している。ドメインは、1)ヒトTrkAのアミノ酸位置1からアミノ酸位置32あたりまで、ヒトTrkBのアミノ酸位置1からアミノ酸位置36あたりまで、及びヒトTrkCのアミノ酸位置1からアミノ酸位置48あたりまで延びる、第1のシステインが豊富なドメイン;2)TrkAのアミノ酸位置33からアミノ酸位置104あたりまで、TrkBのアミノ酸位置37からアミノ酸位置108あたりまで、及びTrkCのアミノ酸位置49からアミノ酸位置120あたりまで広がる、ロイシンが豊富なドメイン;3)TrkAのアミノ酸位置105からアミノ酸位置157あたりまで、TrkBのアミノ酸位置109からアミノ酸位置あたり164まで、及びTrkCのアミノ酸位置121からアミノ酸位置164あたりまでの、第2のシステインが豊富なドメイン;4)TrkAのアミノ酸位置176からアミノ酸位置234あたりまで、TrkBのアミノ酸位置183からアミノ酸位置239あたりまで、及びTrkCのアミノ酸位置196からアミノ酸位置239あたりまで広がる、第1の免疫グロブリン様ドメイン;並びに5)TrkAのアミノ酸位置264からアミノ酸位置330あたりまで、TrkBのアミノ酸位置270からアミノ酸位置334あたりまで、及びTrkAのアミノ酸位置288からアミノ酸位置351あたりまで伸びる、第2の免疫グロブリン様ドメインとして、成熟したTrk受容体のアミノ酸配列のN末端から出発して設計される。
トロポミオシン受容体キナーゼは、自然発生のニューロトロフィン、神経成長因子(NGF)を含むタンパク質成長因子のファミリー、脳由の神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン3(NT-3)、及びニューロトロフィン4/5(NT-4/5)のための高親和性受容体である。NT-3、BDNF、及びNGFは、神経系の発達と維持に不可欠な成長因子である。
D5と称されるTrk受容体外部ドメインは、主要なニューロトロフィン結合部位を含み、且つリガンドに依存する受容体活性化に必要とされている。リガンド結合及び機能的活性化を定義するそのような受容体部位は、「ホットスポット」と称される。以前に、受容体ホットスポットに結合する抗体などの人工リガンドは、機能的に活性となり得ることが実証されている。例えば、TrkA D5ドメインのホットスポットに向けられる、アゴニストのmAb 5C3は、全体が引用により本明細書に組み込まれる、LeSauteur et al., 1996, J. Neurosci. 16: 1308-1316において報告されている。
成熟したニューロトロフィンは、比較的高い親和性を持つ選択的Trk受容体(例えば、TrkB-BDNF、TrkA-NGF、及びTrkC-NT-3)に結合する。TrkCは、NT-3に好ましい受容体であり、神経細胞の死又は生存、及び細胞の分化を含む、NT-3の複数の効果を媒介する。Trk受容体は、神経栄養信号の生存と分化に関連する、チロシンキナーゼ触媒活性を持つ。ニューロトロフィンにより誘発されたTrk活性は、MAPKとAKTを介して栄養(成長/生存)反応をもたらし、一方でPLC-γ及び線維芽細胞増殖因子受容体基質-2(FRS-2)活性は、分化に関与する。
全ての成熟したニューロトロフィンはまた、ニューロトロフィン受容体であるp75NTRに結合し、これは、低親和性を持つ全てのニューロトロフィンに結合するが、遍在性のタンパク質ソルチリンとの複合体において、成熟したニューロトロフィン又はプロニューロトロフィンの前駆物質のための高親和性受容体を作る。p75NTRは受容体タンパク質チロシンキナーゼではなく、Trkにより活性化されるものとは異なると細胞内信号伝達を動員する。p75NTR信号伝達は通常萎縮性であり、アポトーシスを促進し、神経突起成長を阻害し、且つシナプスの強度を低下させる。Trkとは異なり、p75NTRは、神経の他、グリア細胞上にも発現される。末梢神経系において、p75NTRは、軸索切断術後にシュワン細胞上に発現される。p75NTR受容体はTrkの結合又は機能に影響を及ぼし得ることが知られているが、機構は完全には理解されていない。p75NTRはTrk受容体の潜在性の「ホットスポット」を暴露し得ることが示されており、このことは、アロステリック調節の概念を示唆している。
本明細書には、幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCの受容体のための非天然のアゴニストを含む、耳科用組成物が記載される。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCの受容体に適切な非天然のアゴニストは、抗体、その結合フラグメント、変異体、及び誘導体を含む。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCの受容体に適切な非天然のアゴニストは、神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログを含む。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCの受容体に適切な非天然のアゴニストは、抗体と自然発生の神経栄養物質とのキメラを含む。幾つかの実施形態において、TrkB又はTrkCの受容体に適切な非天然のアゴニストは、抗体(例えば、二重特異性抗体)と神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログとのキメラを含む。
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用製剤は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、2256、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2B7により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、A5により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、E2により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、6.1.2により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、6.4.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2345により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2349により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2.5.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2344により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2345により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2248により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2349により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2250により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2253により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2256により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、1D7により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、TAM-163により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである163。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C2により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C20により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、A10により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、7F5により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、11E1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、17D11により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、19E12により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、36D1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、38B8により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、T1-HuC1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、RN1026Aにより結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、A2により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、4B12により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、4A6により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、TOA1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、37D12により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、19H8(1)により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、1F8により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、23B8により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、18H6により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、29D7により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、5G5D2B5に
より結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、6B72C5により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、B13B15.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C6D11.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C10C3.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C9N9.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、C4l20.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、A10F17.1により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。
幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用製剤は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、2256、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2B7の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体A5の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体E2の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体6.1.2の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体6.4.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2345の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2349の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2.5.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2344の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2345の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2248の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2349の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2250の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2253の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体2256の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体1D7の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体TAM-163の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C2の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C20の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体A10の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体7F5の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体11E1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体17D11の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体19E12の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体36D1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体38B8の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体T1-HuC1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体RN1026Aの相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体A2の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体4B12の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体4A6の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体TOA1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体37D12の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体19H8(1)の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体1F8の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体23B8の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体18H6の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体29D7の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体5G5D2B5の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体6B72C5の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態に
おいて、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体B13B15.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C6D11.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C10C3.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C9N9.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体C4l20.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、本明細書に記載される耳科用組成物は、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含み、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、抗体A10F17.1の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。
TrkB受容体アゴニスト抗体
TrkBは、脳において最も広く分布されたニューロトロフィン受容体の1つであり、その発現は、新皮質、海馬、線条体、及び脳幹などのエリアにおいて高度である。これは、細胞外リガンド結合ドメイン、細胞膜貫通領域、及び細胞内チロシンキナーゼドメインから成る、マルチドメインの膜貫通型タンパク質である。TrkBに結合するBDNFは、TrkBの自己リン酸化、及びその後、細胞外信号により調節されたキナーゼ[マイトジェン活性化タンパク質キナーゼ(MAPK)]、ホスファチジルイノシトール3-キナーゼ/Akt、ホスホリパーゼC-γ、及びそれらの下流の標的を含む、様々なメディエーターキナーゼのリン酸化を誘発する。
幾つかの実施形態において、耳科用組成物は、非天然のTrkBアゴニストを含む。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、アゴニスト抗体、そのフラグメント、変異体、及び誘導体を含む。幾つかの実施形態において、適切なアゴニスト抗体は、TrkBに選択的であり、且つ自然発生のNT4及びBDNFポリペプチド以上の親和性で結合する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7、TAM-163、C2、C20、A10、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、又は29D7である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体7F5、17D11、又は11E1である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、TrkB受容体のドメイン1とドメイン4に結合する。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体1D7である。幾つかの実施形態において、抗体1D7は、TrkB受容体に結合するが、神経栄養因子受容体p75NTRには結合しない。幾つかの実施形態において、抗体1D7の結合エピトープは、TrkB受容体のドメイン1とドメイン4に位置する。幾つかの実施形態において、抗体1D7は、自然発生の神経栄養物質BDNFにより認識されたエピトープと重複しない、TrkB受容体上でTrkBエピトープを認識する。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは抗体29D7である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは抗体TAM-163である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは抗体38B8である。幾つかの実施形態において、38B8抗体は、米国特許公開番号20100086997(出願番号12/519743)に記載されるような、ATCC寄託番号PTA-8766の下で寄託されるハイブリドーマ株により生成される。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、アゴニスト抗体38B8の相補性決定領域(CDR)を含む抗体フラグメントである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、ATCC寄託番号PTA-8766の下で寄託されるハイブリドーマ株により生成される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体フラグメントである。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体C20(C20.i1.1)、A10(A10F18)、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、又はA10F17.1である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体C20(C20.i1.1)(SEQ ID NO:32と33)である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、抗体A10(A10F18)(SEQ ID NO:30と31)である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、米国公開番号2010/0150914に記載される、抗体C20(C20.i1.1)、A10(A10F18)、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、又はA10F17.1である。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、又は29D7から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、C20(C20.i1.1)、A10(A10F18)、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、又はA10F17.1から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、7F5、17D11、又は11E1から成る群から選択される1以上の抗体により結合されるエピトープに特異的に結合する、抗体又はその結合フラグメントである。
幾つかの例において、エピトープは、TITFLESPTSDHHWCIPFTV(SEQ ID NO:118)を含む。場合によっては、非天然のTrkBアゴニストは、SEQ ID NO:118を含むエピトープに特異的に結合する抗体又はその結合フラグメントである。場合によっては、非天然のTrkBアゴニストは、6B72C5又は5G5D2B5を含む。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、1D7、TAM-163、C2、C20、A10、7F5、11E1、17D11、19E12、36D1、38B8、T1-HuC1、RN1026A、A2、4B12、4A6、TOA1、37D12、19H8(1)、1F8、23B8、18H6、29D7、5G5D2B5、6B72C5、B13B15.1、C6D11.1、C10C3.1、C9N9.1、C4l20.1、及びA10F17.1から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントである。幾つかの例において、CDRは、表2に示されるように、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3、及び/又は、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。幾つかの例において、CDRは、表2に示されるように、重鎖CDR1、CDR2、及びCDR3、及び/又は、軽鎖CDR1、CDR2、及びCDR3を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、又は100%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも80%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも85%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも90%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも95%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも96%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも97%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択される。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも98%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択されるCDRに対して少なくとも99%の配列同一性を含む。幾つかの例において、CDRは、SEQ ID NO:14-37及び74-116から選択される。
幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、TrkB受容体に特異的に結合する抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、TrkA又はTrkCの受容体に結合しない抗体である。幾つかの実施形態において、非天然のTrkBアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない抗体である。
幾つかの実施形態において、TrkB受容体への非天然のTrkBアゴニストの結合は、増大したレベルのリン酸化TrkB、リン酸化MAPK、リン酸化Akt、リン酸化ERK1/2、及びリン酸化ホスホリパーゼC-γを結果としてもたらす。幾つかの実施形態において、TrkB受容体への非天然のTrkBアゴニストの結合は、神経細胞の生存の改善を引き起こす。幾つかの実施形態において、TrkB受容体に結合する、非天然のTrkBアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経細胞の生存の改善を引き起こし、耳の疾病を処置又は予防する。幾つかの実施形態において、TrkB受容体に結合する、非天然のTrkBアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経細胞の生存の改善を引き起こし、及び、求心性の感覚線維の再結合及びリボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置又は予防する。幾つかの実施形態において、TrkB受容体に結合する、非天然のTrkBアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、老人性難聴(加齢に関連する難聴)を処置又は予防する。幾つかの実施形態において、TrkB受容体に結合する、非天然のTrkBアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経細胞の生存の改善を引き起こし、感音性難聴を処置する。
幾つかの実施形態では、TrkB受容体に対するTrkBアゴニストの結合親和性は、約0.10乃至約0.80nM、約0.15乃至約0.75nM、約0.18乃至約0.72nMおよび、約1nM乃至約1.5nM、約2nM乃至約5nM、約10nM乃至約20nM、約30nM乃至約50nM、約75nM乃至約100nM、約125nM乃至約150nM、約160nM乃至約200nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pMと22pMの間である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pM未満である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM未満である。他の実施形態では、結合親和性は、約0.1nMまたは約0.07nMである。他の実施形態では、結合親和性は、約0.1nM未満または約0.07nM未満である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまでである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。幾つかの実施形態では、結合親和性は、これらの値のいずれかによって設定された範囲内、例えば、約175nMと約180nMの間にある。幾つかの実施形態では、結合親和性は100nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は200nMである。
幾つかの実施形態では、TrkB受容体に対するTrkBアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-1と約10-6-1の間である。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に対するTrkBアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-2と約10-6-1、約10-3と約10-6-1、約10-4と約10-6-1、約10-2と約10-5-1、約10-2と約10-4-1、約10-2と約10-3-1、約10-3と約10-5-1、約10-3と約10-4-1、約10-4と約10-5-1、約10-1と約10-5-1、約10-1と約10-4-1、約10-1と約10-3-1、または約10-1と約10-2-1の間である。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に対するTrkBアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-1-1、約10-2-1、約10-3-1、約10-4-1、約10-5-1、または約10-6-1である。
<TrkB受容体アゴニスト化合物>
幾つかの実施形態では、耳科用組成物は、TrkBアゴニスト化合物を含む。幾つかの実施形態では、TrkBアゴニストは、7,8-ジヒドロキシフラボン、7,8,3’-トリヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、デオキシゲズニン、LM-22A4、TDP6、3,7-ジヒドロキシフラボン、3,7,8,2’-テトラヒドロキシフラボン、4’-ジメチルアミノ-7,8-ジヒドロキシフラボン、5,7,8-トリヒドロキシフラボン、7,3’-ジヒドロキシフラボン、7,8,2’-トリヒドロキシフラボン、N,N’,N’’トリス(2-ヒドロキシ-エチル)-1,3,5-ベンゼントリカルボキサミド、N-[2-(5-ヒドロキシ-1H-インドール-3-イル)エチル]-2-オキソ-3-ピペリジンカルボキサミド、N-アセチルセロトニン、およびアミトリプチリンから成る群から選択される化合物である。幾つかの実施形態では、TrkBアゴニスト化合物は、微粒子形態にある。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、耳の疾病を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、リボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳科用組成物の投与は、老人性難聴(加齢性難聴)を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkB受容体に結合するTrkBアゴニスト化合物を含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、感音性難聴を処置する。
<TrkC受容体アゴニスト抗体>
TrkCは、メディエーター、phospho-AKT、phospho-Erk、およびphospho-PLC-γを活性化する、「正の」シグナル伝達カスケードを引き起こす固有のチロシンキナーゼ触媒活性を有する膜貫通受容体である。内耳では、TrkC受容体の活性化は、進行の間に感覚神経およびそれらの求心性繊維の成長を促進し、内耳機能にとって重要であるリボンシナプスを介する有毛細胞との適切な連結を確立する助けとなる。成人の騒音外傷後に、TrkC受容体活性化は、リボンシナプスの求心性繊維の成長および再確立を回復させる。
幾つかの実施形態では、耳科用組成物は、非天然のTrkCアゴニストを含む。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、アゴニスト抗体、そのフラグメント、変異体、および誘導体を含む。幾つかの実施形態では、適切なアゴニスト抗体は、TrkCに選択的であり、自然発生の神経栄養物質NT3に類似した又はそれより高い親和性で結合する。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体に選択的に結合する抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkAまたはTrkBの受容体に結合しない抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、全長TrkC受容体に結合する。幾つかの事例では、非天然のTrkCアゴニストは、切断型のTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、小分子である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、切断型のTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない小分子である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、全長TrkC受容体のみに結合する小分子である。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、または2256である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、または2256である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、または2344である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、抗体A5、または抗体2B7である。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、または2256から成る群から選択される1つ以上の抗体によって結合されたエピトープに特異的に結合する、抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2248、2250、2253、または2256から成る群から選択される1つ以上の抗体によって結合されたエピトープに特異的に結合する、抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、または2344から成る群から選択される1つ以上の抗体によって結合されたエピトープに特異的に結合する、抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、A5または2B7から成る群から選択される1つ以上の抗体によって結合されたエピトープに特異的に結合する、抗体またはそれらの結合フラグメントである。
幾つかの実施形態では、エピトープは、TrkCD1、D2、D3、D4及び/又はD5を含む。幾つかの実施形態では、エピトープは、TrkCのD1、D2、D3、D4、D5またはそれらの組み合わせを含む。幾つかの実施形態では、エピトープは、TrkCのD4及び/又はD5を含む。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD1、D2、D3、D4及び/又はD5に特異的に結合する抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD1、D2、D3、D4、D5またはそれらの組み合わせに特異的に結合する抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD4及び/又はD5に特異的に結合する抗体またはそれらの結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD1に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD2に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD3に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD4に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkCのD5に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。
幾つかの実施形態では、エピトープは、TrkCのESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO.1)を含む。幾つかの場合では、非天然のTrkCアゴニストは、SEQ ID NO.1に特異的に結合する抗体またはその結合フラグメントである。
幾つかの実施形態では、米国特許公開番号20140004119(出願番号13/820,715)に記載されるように、非天然のTrkCアゴニストは抗体2B7である。
幾つかの実施形態では、2B7抗体は、全長TrkCに結合する。幾つかの実施形態では、2B7抗体は、切断型のTrkC受容体、TrkC.T1に結合しない。幾つかの実施形態では、2B7抗体は、ヒトTrkCの膜近傍領域近くの1つ以上の特異的なエピトープに結合する。幾つかの実施形態では、2B7抗体は、ヒト、ラットまたはマウスのTrkCの膜貫通ドメインとD5ドメインとの間の領域に特異的に結合する。幾つかの実施形態では、2B7抗体のための結合エピトープは、TrkCの、配列ESTDNFILFDEVSPTPPI(SEQ ID NO:1)である。幾つかの実施形態では、2B7抗体は、TrkA、TrkB、またはp75NTRに結合しない。幾つかの実施形態では、抗体2B7は、モノクローナル抗体と同じエピトープに特異的に結合する、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマ、そのフラグメント、部分、変異体または誘導体によって生成される。幾つかの実施形態では、2B7抗体は、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマによって生成された抗体の相補性決定領域(CDR)及び/又は超可変ドメインを含む。幾つかの実施形態では、ATCC特許寄託指定090310-02を有しているハイブリドーマまたはその抗原結合性フラグメント、部分、変異体または誘導体によって生成されたモノクローナル抗体は、ヒト化されるか、ベニヤ化されるか、またはキメラ的である。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、A5抗体およびその誘導体を含む。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、A5抗体である。抗体A5は、欧州特許公開番号EP2402756(出願番号EP 11183081.6)に記載される抗体A5に相当する。幾つかの実施形態では、A5抗体は、TrkC受容体に結合する。幾つかの実施形態では、A5抗体は、TrkC受容体の1つ以上の結合エピトープに結合する。幾つかの実施形態では、A5抗体は、ATCC NO.PTA-5682の寄託番号を有する宿主細胞によって生成されるポリヌクレオチドによってコードされる軽鎖を含む。幾つかの実施形態では、A5抗体は、ATCC NO.PTA-5683の寄託番号を有する宿主細胞によって生成されるポリヌクレオチドによってコードされる重鎖を含む。幾つかの実施形態では、A5抗体は、(a)抗体A5;(b)抗体A5のフラグメントまたは領域;(c)抗体A5の軽鎖(SEQ ID NO.8);(d)抗体A5の重鎖(SEQ ID NO.9);(e)抗体A5の軽鎖及び/又は重鎖からの1つ以上の可変領域;(f)抗体A5の1つ以上のCDR(1、2、3、4、5または6のCDR)、および(g)(b)から(f)のいずれか1つを含む抗体、を含む。幾つかの実施形態では、A5抗体は、(a)から(f)のいずれか1つ又はそれ以上の抗体である。幾つかの実施形態では、A5抗体は、以下の突然変異:A330P331からS330S331(野生型IgG2a配列に関連したアミノ酸の番号付け;Eur. J. Immunol. (1999) 29:2613-2624を参照)を含有しているヒト重鎖IgG2a定常領域;およびヒト軽鎖κ定常領域をさらに含む。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)および2344(PTA-2144)から成る群から選択されるヒト化抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるマウス抗体である。2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)の、抗体6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)は、引用によってそれら全体が本明細書に組み込まれる、米国特許第7,384,632号に記載される、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)の、抗体6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)に相当する。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体のD5ドメイン上のエピトープを認識し、それに結合する、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkAまたはTrkBの受容体上のどのエピトープも認識せず、結合しない、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、TrkC受容体のD5およびD4のドメイン上のエピトープを認識し、それに結合する、6.1.2(PTA-2148)、6.4.1(PTA-2150)、2345(PTA-2146)、2349(PTA-2153)、2.5.1(PTA-2151)、2344(PTA-2144)、2248(PTA-2147)、2250(PTA-2149)、2253(PTA-2145)、および2256(PTA-2152)から成る群から選択されるヒトまたはマウスの抗体である。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkCアゴニストは、2B7、A5、E2、6.1.2、6.4.1、2345、2349、2.5.1、2344、2345、2248、2349、2250、2253、および2256から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む抗体またはその結合フラグメントである。幾つかの事例では、CDRは、表2に例証されるような重鎖CDR1、CDR2、およびCDR3及び/又は軽鎖CDR1、CDR2、およびCDR3を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも80%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも85%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも90%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも95%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも96%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも97%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも98%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択される。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択されるCDRに対する少なくとも99%の配列同一性を含む。幾つかの事例では、CDRは、SEQ ID NO:2-13および38-73から選択される。
幾つかの実施形態では、TrkCへの非天然のTrkCアゴニスト抗体の結合は、結果として、リン酸化されたTrkC、リン酸化されたAkt、リン酸化されたErk、およびリン酸化されたホスホリパーゼC-γのレベルの増加につながる。幾つかの実施形態では、TrkC受容体への非天然のTrkCアゴニストの結合は、神経生存の改善につながる。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に結合する非天然のTrkCアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、耳の疾病を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に結合する非天然のTrkCアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、求心性知覚繊維の再連結およびリボンシナプスの修復を必要とする耳の疾病を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に結合する非天然のTrkCアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、老人性難聴(加齢性難聴)を処置または予防する。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に結合する非天然のTrkCアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、神経生存の改善につながり、感音性難聴を処置する。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に対するTrkCアゴニストの結合親和性は、約0.10乃至約0.80nM、約0.15乃至約0.75nM、約0.18乃至約0.72nMおよび、約1nM乃至約1.5nM、約2nM乃至約5nM、約10nM乃至約20nM、約30nM乃至約50nM、約75nM乃至約100nM、約125nM乃至約150nM、約160nM乃至約200nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pMと22pMの間である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pM未満である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM未満である。他の実施形態では、結合親和性は、約0.1nMまたは約0.07nMである。他の実施形態では、結合親和性は、約0.1nM未満または約0.07nM未満である。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、 約40pM、約30pM、約10pMのいずれかから、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、または約40pMのいずれかまでである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約10nM、約5nM、約1nM、約900pM、約800pM、約700pM、約600pM、約500pM、約400pM、約300pM、約200pM、約150pM、約100pM、約90pM、約80pM、約70pM、約60pM、約50pM、約40pM、約30pM、約10pMのいずれかである。幾つかの実施形態では、結合親和性は、約2pM、約5pM、約10pM、約15pM、約20pM、約40pMであるか、または約40pMを超える。幾つかの実施形態では、結合親和性は、これらの値のいずれかによって設定された範囲内、例えば、約175nMと約180nMの間にある。幾つかの実施形態では、結合親和性は100nMである。幾つかの実施形態では、結合親和性は200nMである。
幾つかの実施形態では、TrkC受容体に対するTrkCアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-1と約10-6-1の間である。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に対するTrkCアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-2と約10-6-1、約10-3と約10-6-1、約10-4と約10-6-1、約10-2と約10-5-1、約10-2と約10-4-1、約10-2と約10-3-1、約10-3と約10-5-1、約10-3と約10-4-1、 約10-4と約10-5-1、約10-1と約10-5-1、約10-1と約10-4-1、約10-1と約10-3-1、または約10-1と約10-2-1の間である。幾つかの実施形態では、TrkC受容体に対するTrkCアゴニストのオフレート(またはkoff)は、約10-1-1、約10-2-1、約10-3-1、約10-4-1、約10-5-1、または約10-6-1である。
幾つかの事例では、結合親和性(またはK)は、次のように計算され:
=([Ab-受容体]/([Ab][受容体]))=1/K
式中、Ab-受容体は抗体-受容体抱合体であり、AbはTrkC/TrkBアゴニストであり、および受容体はTrkC/TrkB受容体である。幾つかの場合では、KD(または平衡解離定数)は、koff/konの比率として計算される。
幾つかの実施形態では、結合親和性は、当該技術分野に周知の1つ以上の技術によって判定される。適切な技術は、例えば、予め固定されたストレプトアビジンのセンサーチップを装備した、表面プラズモン共鳴(Biacore3000(商標)表面プラズモン共鳴(SPR)システム、Biacore,Inc.)であって、TrkC受容体に対するアゴニストの結合(k)および解離(k)のための速度定数の判定を可能にする、表面プラズモン共鳴;等温滴定熱量測定(ITC);Octet(登録商標)(ForteBio)、KinExA(登録商標)(Kinetic Exclusion Assay, KinExA 3000, Sapidyne Instruments, Inc.)、フローサイトメトリーおよびELISA、を含む。
幾つかの実施形態では、表1に概説されるように、本明細書に記載される抗体は、ハイブリドーマ株によって生成される。
Figure 0007023461000001
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される抗体は、表2にリストされるようなアミノ酸配列を有している。
Figure 0007023461000002
Figure 0007023461000003
Figure 0007023461000004
Figure 0007023461000005
Figure 0007023461000006
Figure 0007023461000007
Figure 0007023461000008
Figure 0007023461000009
Figure 0007023461000010
Figure 0007023461000011
Figure 0007023461000012
<神経栄養物質>
幾つかの実施形態において、本明細書には、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物が記載され、ここで該アゴニストは、神経栄養物質である。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、TrkB受容体に選択的に結合する神経栄養物質である。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、TrkAまたはTrkCの受容体に結合しない神経栄養物質である。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない神経栄養物質である。幾つかの実施形態では、TrkBアゴニストは、神経栄養因子受容体p75NTRに結合しない神経栄養物質である。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、組織及び/又はニューロン及び/又は耳の有毛細胞の成長およびそれらのプロセスおよび接続を促進する因子である。幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、ニューロンおよび耳の有毛細胞の生存およびそれらのプロセスおよび接続、及び/又はニューロンおよび耳の有毛細胞の成長およびそれらのプロセスおよび接続を促進する因子である。幾つかの実施形態では、耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養物質は、増殖因子である。幾つかの実施形態では、増殖因子は、神経栄養因子(neurotroph)である。特定の事例では、神経栄養因子は、細胞死を予防する、細胞損傷を予防する、損傷したニューロンおよびそれらのプロセスおよび接続および耳の有毛細胞を修復する、及び/又は前駆細胞における分化を誘発する増殖因子である。幾つかの実施形態では、神経栄養因子は、脳由来神経栄養因子(BDNF)、毛様体神経栄養因子(CNTF)、グリア細胞由来神経栄養因子(GDNF)、ニューロトロフィン-3、ニューロトロフィン-4、及び/又はそれらの組み合わせである。幾つかの実施形態では、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、上皮増殖因子(EGF)、血小板由来増殖因子(PGF)及び/又はそれらのアゴニストである。幾つかの実施形態では、増殖因子は、線維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、インスリン様増殖因子(IGF)受容体、上皮増殖因子(EGF)受容体、及び/又は血小板由来増殖因子のアゴニストである。幾つかの実施形態では、増殖因子は、肝細胞増殖因子である。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質はBDNFである。幾つかの実施形態では、神経栄養物質はGDNFである。特定の事例では、BDNFおよびGDNFは、損傷した細胞を修復する、ROSの産生を阻害する、及び/又は細胞死を阻害することによって、既存のニューロンおよびそれらのプロセスおよび接続(例えば、らせん神経節ニューロン)、および耳の有毛細胞の生存を促進する神経栄養物質である。幾つかの実施形態では、神経栄養物質はまた、神経および耳の有毛細胞前駆細胞の分化を促進する。さらに、幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、第VIII脳神経を変性から保護する。幾つかの実施形態では、神経栄養物質BDNFは,線維芽細胞増殖因子とともに投与される。幾つかの場合では、BDNFは、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生のBDNFを含む。幾つかの場合では、GDNFは、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生のGDNFを含む。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、ニューロトロフィン-3(NT-3)である。幾つかの実施形態では、ニューロトロフィン-3は、既存の神経細胞および耳の有毛細胞の生存およびそれらのプロセスおよび接続を促進し、神経および耳の有毛細胞前駆細胞の分化を促進する。さらに、幾つかの実施形態では、ニューロトロフィン-3は、第VIII脳神経を変性から保護する。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴う自然発生の神経栄養物質である。幾つかの事例では、神経栄養物質は、ニューロトロフィン-3である。幾つかの事例では、ニューロトロフィン-3は、アミノ酸配列:YAEHKSHRGEYSVCDSESLWVTDKSSAIDIRGHQVTVLGEIKTGNSPVKQYFYETRCKE ARPVKNGCRGIDDKHWNSQCKTSQTYVRALTSENNKLVGWRWIRIDTSCVCALSRKIGRT (SEQ ID NO:117)を有している。
幾つかの実施形態では、アミノ酸残基における1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、アミノ酸位置3、4、5、6、11、15、17、19、22、23、24、25、26、28、31、33、34、36、38、40、42、43、44、45、46、47、48、49、51、54、56、59、61、63、64、65、68、71、72、73、74、76、78、80、83、87、89、91、92、93、94、95、96、97、103、105、114、115、またはそれらの組み合わせで1つ以上の突然変異を含み、ここでアミノ酸位置は、SEQ ID NO:117に従っている。
幾つかの実施形態では、アミノ酸残基における1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、アミノ酸残基E3、H4、K5、S6、Y11、D15、E17、L19、T22、D23、K24、S25、S26、I28、R31、H33、Q34、T36、L38、E40、R42、T43、G44、N45、S46、P47、V48、
K49、Y51、E54、R56、E59、R61、V63、K64、N65、R68、D71、D72、K73、H74、N76、Q78、K80、Q83、R87、L89、S91、E92、N93、N94、K95、L96、V97、R103、D105、R114、K115、またはそれらの組み合わせで1つ以上の突然変異を含み、ここでアミノ酸残基は、SEQ ID NO:117に従っている。
幾つかの実施形態では、アミノ酸残基における1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、1つ以上の突然変異:E3A、H4D、H4A/H7A/R8A/E10A、E3A/K5A/S6A、K5A、S6A、Y11A、D15A、E17A、L19A、E17A/L19A、T22Q、D23A、K24A、S25Q、S26K、S25K/S26Y、I28Q、R31A、H33A、R31A/H33A、Q34A、Q34E、T36E、L38E、E40A、R42A、T43A、R42A/T43A、G44A、N45A、S46A、P47A、V48A、K49A、N45A/S46A/K49A/Y51A、Y51A、Y51F、E54A、R56A、E59A、E59A/R61A、K58A/E59A、R61A、V63A、K64A、N65A、K64A/N65A、R68A、D71A、D71A/K73A/H74A、D71A/H74A、D72A、K73A、H74A、N76A、Q78A、K80A、Q83A、K80A/Q83A、R87M、L89E、S91M、S91E、S91A/E92A、E92A、N93A、N94A、N93A/N94A、K95A、L96A、V97E、R103A、R103M、R103K、D105A、R114A、K115A、R114A/K115A、またはそれらの組み合わせを含み、ここでアミノ酸残基は、SEQ ID NO:117に従っている。
幾つかの実施形態では、アミノ酸残基における1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、YAEHKS(SEQ ID NO:119)からSSSHPIF(SEQ ID NO:120)のNGF-スワップ(swap)を含む。
幾つかの実施形態では、1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、PCT公開番号WO9803546に記載されるようなNT-3(1-119)またはNT-3(1-117)を含む。
幾つかの実施形態では、1つ以上の突然変異を伴う自然発生のニューロトロフィン-3は、Urfer, et al.,“The binding epitopes of neurotrophin-3 to its receptors TrkC and gp75 and the design of a multifunctional human neurotrophin,”EMBO 13(24): 5896-5909 (1994)に記載される、NT-3突然変異体を含む。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、パン-ニューロトロフィンである。幾つかの事例では、パン-ニューロトロフィンは、神経増殖因子(NGF)、脳由来神経栄養因子(BDNF)、およびニューロトロフィン-3(NT-3)の1つ以上のドメインを組み合わせることによって操作された合成栄養因子である。幾つかの事例では、パン-ニューロトロフィンは、Ilag, et al.,“Pan-neurotrophin 1: A genetically engineered neurotrophic factor displaying multiple specificities in peripheral neurons in vitro and in vivo,”PNAS 92: 607-611 (1995)に記載される、パン-ニューロトロフィン-1(PNT-1)である。幾つかの場合では、パン-ニューロトロフィンは、Ibanez, et al,“An extended surface of binding to Trk tyrosine kinase receptors in NGF and BDNF allows the engineering of a multifunctional pan-neurotrophin,”EMBO 12(6): 2281-2293 (1993)に記載される、パン-ニューロトロフィンである。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、キメラ的な神経栄養物質である。幾つかの場合では、キメラ的な神経栄養物質は、例えば、神経増殖因子(NGF)の1つ以上のドメインおよび脳由来神経栄養因子(BDNF)の1つ以上のドメインを含む。幾つかの場合では、神経栄養物質は、Ibanez, et al.,“Chimeric molecules with multiple neurotrophic activities reveal structural elements determining the specificities of NGF and BDNF,”EMBO 10(8): 2105-2110 (1991)に記載される、キメラ的な神経栄養物質である。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質はCNTFである。幾つかの実施形態では、CNTFは、神経伝達物質の合成および神経突起の成長を促進する。幾つかの実施形態では、CNTFは、BDNFととともに投与される。幾つかの場合では、CNTFは、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生のCNTFを含む。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質はGDNFである。さらに、幾つかの実施形態では、外因性のGDNFで処置された細胞は、未処置の細胞より外傷後により高い生存率を有する。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、上皮増殖因子(EGF)である。幾つかの実施形態では、EGFは、ヘレグリン(HRG)である。幾つかの実施形態では、HRGは、卵形嚢感覚上皮の増殖を刺激する。幾つかの実施形態では、HRG結合の受容体は、前庭および聴覚の感覚上皮に見られる。幾つかの場合では、上皮増殖因子(例えばヘレグリン)は、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生の上皮増殖因子(例えばヘレグリン)を含む。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、インスリン様増殖因子(IGF)である。幾つかの実施形態では、IGFはIGF-1である。幾つかの実施形態では、IGF-1はメカセルミンである。幾つかの実施形態では、IGF-1は、アミノグリコシドへの曝露によって誘発された損傷を弱める。幾つかの実施形態では、IGF-1は、蝸牛神経節細胞の分化及び/又は成熟を刺激する。幾つかの場合では、インスリン様増殖因子(例えばIGF-1)は、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生のインスリン様増殖因子(例えばIGF-1)を含む。
幾つかの実施形態では、FGF受容体アゴニストは、FGF-2である。幾つかの実施形態では、IGF受容体アゴニストは、IGF-1である。FGF受容体とIGF受容体の両方は、卵形嚢上皮を含む細胞に見られる。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、肝細胞増殖因子(HGF)である。幾つかの実施形態では、HGFは、騒音に誘導された損傷から蝸牛有毛細胞を保護し、騒音への暴露で引き起こされたABR閾値変動を低減する。幾つかの場合では、肝細胞増殖因子は、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾(例えば、リン酸化、非天然のアミノ酸の取り込み、ビオチン化、環化などの化学修飾など)を伴って自然発生の肝細胞増殖因子を含む。
幾つかの実施形態では、神経栄養物質は、エリトロポイエチン(EPO)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、インスリン様増殖因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)またはそれらの組み合わせから選択される。幾つかの場合では、神経栄養物質は、エリトロポイエチン(EPO)、果粒球コロニー刺激因子(G-CSF)、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM-CSF)、増殖分化因子-9(GDF9)、インスリン様増殖因子(IGF)、ミオスタチン(GDF-8)、血小板由来増殖因子(PDGF)、トロンボポイエチン(TPO)、形質転換増殖因子アルファ(TGF-α)、形質転換増殖因子ベータ(TGF-β)、または血管内皮細胞増殖因子(VEGF)から選択され、アミノ酸残基において1つ以上の突然変異または修飾を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される神経栄養物質は、自然発生の神経栄養物質の化学的に修飾されたアナログである。典型的な化学修飾は、限定されないが、非天然のアミノ酸を組み込むことによる、重いアミノ酸を組み込むことによる、D-アミノ酸を組み込むことによる、ビオチン化による、環化による、アシル化による、ジメチル化による、アミド化による、誘導体化による、担体タンパク質への共役による、またはペプチドの分枝による、セリン、トレオニン、またはチロシンの残基でのリン酸化またはスルフリル化を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるような神経栄養物質を含む耳科用組成物の投与は、内耳における破壊された、発育阻止された、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠損している有毛細胞に起因する難聴または低下を改善する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるような神経栄養物質を含む耳科用組成物の投与は、内耳における破壊された、発育阻止された、機能不全の、損傷した、脆弱な、または欠損している有毛細胞に起因する難聴または低下を改善し、ここで神経栄養物質は、化学的に修飾される。幾つかの実施形態では、難聴は、感音性難聴である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される神経栄養物質の1つ以上は、例えば、宿主細胞系または無細胞系において生成される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される神経栄養物質の1つ以上は、宿主細胞系によって組換え生成される。幾つかの事例では、宿主細胞は、真核細胞(例えば、哺乳動物細胞、昆虫細胞、酵母細胞または植物細胞)または原核細胞(例えば、グラム陽性菌またはグラム陰性菌)である。
幾つかの実施形態では、真核宿主細胞は、哺乳動物宿主細胞である。幾つかの場合では、哺乳動物宿主細胞は、安定した細胞株、または対象の遺伝物質をそれ自体のゲノムに組み込んだ、および細胞分裂の多くの世代後に遺伝物質の生成物を発現する能力を有している、細胞株である。他の場合では、哺乳動物宿主細胞は、一過性の細胞株、または対象の遺伝物質をそれ自体のゲノムに組み込んでおらず、細胞分裂の多くの世代後に遺伝物質の生成物を発現する能力を有していない、細胞株である。
典型的な哺乳動物宿主細胞は、293T細胞株、293A細胞株、293FT細胞株、293F細胞、293H細胞、A549細胞、MDCK細胞、CHO DG44細胞、CHO-S細胞、CHO-K1細胞、Expi293F(商標)細胞、Flp-In(商標)T-REx(商標)293細胞株、Flp-In(商標)-293細胞株、Flp-In(商標)-3T3細胞株,Flp-In(商標)-BHK細胞株、Flp-In(商標)-CHO細胞株、Flp-In(商標)-CV-1細胞株、Flp-In(商標)-Jurkat細胞株、FreeStyle(商標)293F細胞、FreeStyle(商標)CHO-S細胞、GripTite(商標)293 MSR細胞株、GS-CHO細胞株、HepaRG(商標)細胞、T-REx(商標)Jurkat細胞株、Per.C6細胞、T-REx(商標)-293細胞株、T-REx(商標)-CHO細胞株、およびT-REx(商標)-HeLa細胞株を含む。
幾つかの実施形態では、真核宿主細胞は、昆虫宿主細胞である。典型的な昆虫宿主細胞は、ショウジョウバエS2(Drosophila S2)細胞、Sf9細胞、Sf21細胞、High Five(商標)細胞、およびexpresSF+(登録商標)細胞を含む。
幾つかの実施形態では、真核宿主細胞は、酵母宿主細胞である。典型的な酵母宿主細胞は、GS115、KM71H、SMD1168、SMD1168H、およびX-33などのピキア・パストリス(Pichia pastoris)酵母菌株、およびINVSc1などのサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)酵母菌株を含む。
幾つかの実施形態では、真核宿主細胞は、植物宿主細胞である。幾つかの事例では、植物細胞は、藻類からの細胞を含む。典型的な植物細胞株は、コナミドリムシ137c(Chlamydomonas reinhardtii 137c)、またはSynechococcus elongatus PPC 7942を含む。
幾つかの実施形態では、宿主細胞は、原核宿主細胞である。典型的な原核宿主細胞は、BL21、Mach1(商標)、DH10B(商標)、TOP10、DH5α、DH10Bac(商標)、OmniMax(商標)、MegaX(商標)、DH12S(商標)、INV110、TOP10F’、INVαF、TOP10/P3、ccdB Survival、PIR1、PIR2、Stbl2(商標)、Stbl3(商標)、またはStbl4(商標)を含む。
幾つかの事例では、本明細書に記載される神経栄養物質の産生のための適切なポリ核酸分子またはベクターは、真核生物または原核生物の源に由来する適切なベクターを含む。典型的なポリ核酸分子またはベクターは、細菌(例えばE.coli)、昆虫、酵母(例えばピキア・パストリス(Pichia pastoris))、藻類、または哺乳動物の源からベクターを含む。細菌ベクターは、例えば、pACYC177、pASK75、pBAD配列ベクター系、pBADM配列ベクター系、pET配列ベクター系、pETM配列ベクター系、pGEX配列ベクター系、pHAT、pHAT2、pMal-c2、pMal-p2、pQE配列ベクター系、pRSET A、pRSET B、pRSET C、pTrcHis2系、pZA31-Luc、pZE21-MCS-1、pFLAG ATS、pFLAG CTS、pFLAG MAC、pFLAG Shift-12c、pTAC-MAT-1、pFLAG CTC、またはpTAC-MAT-2を含む。
媒介昆虫は、例えば、pFastBac1、pFastBac DUAL、pFastBac ET、pFastBac HTa、pFastBac HTb、pFastBac HTc、pFastBac M30a、pFastBact M30b、pFastBac、M30c、pVL1392、pVL1393、pVL1393 M10、pVL1393 M11、pVL1393 M12、pPolh-FLAG1またはpPolh-MAT2などのFLAGベクター、あるいはpPolh-MAT1またはpPolh-MAT2などのMATベクターを含む。
酵母ベクターは、例えば、Gateway(登録商標)pDEST(商標)14ベクター、Gateway(登録商標)pDEST(商標)15ベクター、Gateway(登録商標)pDEST(商標)17ベクター、Gateway(登録商標)pDEST(商標)24ベクター、Gateway(登録商標)pYES-DEST52ベクター、pBAD-DEST49 Gateway(登録商標)デスティネーションベクター、pAO815 Pichiaベクター、pFLD1 Pichia pastorisベクター、pGAPZA、B,& C Pichia pastorisベクター、pPIC3.5K Pichiaベクター、pPIC6 A,B,& C Pichia pastorisベクター、pPIC9K Pichia pastorisベクター、pTEF1/Zeo、pYES2酵母ベクター、pYES2/CT酵母ベクター、pYES2/NT A,B,& C酵母ベクター、またはpYES3/CT酵母ベクターを含む。
藻類ベクターは、例えば、pChlamy-4ベクターまたはMCSベクターを含む。
哺乳動物ベクターは、例えば、一過性発現ベクターまたは安定した発現ベクターを含む。典型的な哺乳動物の一過性発現ベクターは、p3xFLAG-CMV 8、pFLAG-Myc-CMV 19、pFLAG-Myc-CMV 23、pFLAG-CMV 2、pFLAG-CMV 6a,b,c、pFLAG-CMV 5.1、pFLAG-CMV 5a,b,c、p3xFLAG-CMV 7.1、pFLAG-CMV 20、p3xFLAG-Myc-CMV 24、pCMV-FLAG-MAT1、pCMV-FLAG-MAT2、pBICEP-CMV 3、またはpBICEP-CMV 4を含む。典型的な哺乳動物の安定した発現ベクターは、pFLAG-CMV 3、p3xFLAG-CMV 9、p3xFLAG-CMV 13、pFLAG-Myc-CMV 21、p3xFLAG-Myc-CMV 25、pFLAG-CMV 4、p3xFLAG-CMV 10、p3xFLAG-CMV 14、pFLAG-Myc-CMV 22、p3xFLAG-Myc-CMV 26、pBICEP-CMV 1、またはpBICEP-CMV 2を含む。
幾つかの事例では、無細胞系は、本明細書に記載される神経栄養物質の産生のために使用される。幾つかの場合では、無細胞系は、細胞からの細胞質成分及び/又は核成分の混合物を含み、インビトロでの核酸合成に適している。幾つかの事例では、無細胞系は、原核細胞成分を利用する。他の事例では、無細胞系は、真核細胞成分を利用する。核酸合成は、例えば、ショウジョウバエ細胞(Drosophila cell)、ツメガエル卵子(Xenopus egg)、またはHeLa細胞に基づいた無細胞系において得られる。典型的な無細胞系は、E.coli S30 Extract系、E.coli T7 S30系、またはPURExpress(登録商標)を含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される1つ以上の神経栄養物質は、化学的に合成される。典型的な合成技術は、例えば、手動で又は自動化された市販のシンセサイザーを用いて、ペプチドが、カルボキシル末端アミノ酸からアミノ末端アミノ酸まで残基ごとに構築されることを可能にする、R.B.Merrifiedによって開発された固相法、およびStewart, J. M. et al., Solid Phase Peptide Synthesis (Pierce Chemical Co., 2d ed., 1984)、およびBodanszky, M. et al., The Practice of Peptide Synthesis (Springer-Verlag, 1984)に記載される技術を含む。
<併用療法>
幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される耳科用組成物またはデバイスは、限定されないが、制吐薬、抗菌薬、抗酸化剤、防腐剤などを含む、1つ以上の活性薬剤及び/又は第2の治療薬をさらに含む。
<耳の手術およびインプラント>
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用の製剤、組成物またはデバイスは、インプラント(例えば、蝸牛インプラント)と組み合わせて(例えば、移植、短期使用、長期使用、または除去)使用される。本明細書で使用されるように、インプラントは、内耳または中耳用の医療機器を含み、それらの例としては、蝸牛インプラント、聴覚付与デバイス、聴力改善デバイス、短電極、マイクロプロテーゼまたはピストン状プロテーゼ;針;幹細胞移植片;薬物送達デバイス;任意の細胞ベースの治療薬などが挙げられる。幾つかの事例では、インプラントは、難聴を経験している患者とともに使用される。幾つかの事例では、難聴は、出生時に見られる。幾つかの事例では、難聴は、蝸牛構造の急速な閉塞および深刻な難聴を伴う骨新生及び/又は神経損傷につながる、AIED、細菌性髄膜炎などの疾病に関連付けられる。
幾つかの事例では、インプラントは、耳における免疫細胞または幹細胞の移植片である。幾つかの事例では、インプラントは、耳の後ろに置かれた外側部分、および深刻に聾または重度に難聴である人に音の感覚を提供する助けとなる、皮膚の下に外科的に入れられる第2の部分を有する、小型電子機器である。例として、そのような蝸牛用医療機器インプラントは、耳の損傷部分を回避し、聴神経を直接刺激する。幾つかの事例では、蝸牛インプラントは、片耳聾に使用される。幾つかの事例では、蝸牛インプラントは、両耳の聾のために使用される。
幾つかの実施形態では、耳介入(例えば、鼓室内注入、アブミ骨切除術、医療機器インプラントまたは細胞ベースの移植)と組み合わせた本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイスの投与は、外部の耳介入(例えば、耳における外部デバイスス及び/又は細胞の設置)によって引き起こされる、耳構造への付帯的損害、例えば、刺激、細胞損傷、骨新生及び/又はさらなる神経変性を遅らせるか又は防ぐ。幾つかの実施形態では、インプラントと組み合わせた本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイスの投与は、インプラント単独と比較して、難聴のより有効な回復を可能にする。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイスの投与は、基礎疾患(例えば、細菌性髄膜炎、自己免疫性耳疾患(AIED))によって引き起こされた蝸牛構造への損傷を減少させ、蝸牛用デバイスによる移植(cochlear device implantation)を成功させる。幾つかの実施形態では、耳の手術、医療機器インプラント及び/又は細胞移植を伴う、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイスの投与は、耳の手術、医療機器による移植及び/又は細胞移植に関連付けられた細胞損傷及び/又は細胞死(例えば、耳感覚毛細胞死及び/又は損傷)を減少させるか又は防ぐ。
幾つかの実施形態では、蝸牛インプラントまたは幹細胞移植片とともに本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイス(例えば、増殖因子を含む組成物またはデバイス)の投与には、栄養作用がある(例えば、細胞の健全な成長及び/又はインプラントまたは移植片の領域における組織の治癒を促進する)。幾つかの実施形態では、耳の手術または鼓室内注入の処置中に栄養作用が望まれる。幾つかの実施形態では、医療機器の設置後または細胞移植後に栄養作用が望まれる。そのような実施形態の幾つかでは、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物またはデバイスは、直接の蝸牛注入を介して、蝸牛切開術(chochleostomy)によって、または正円窓上の沈着(deposition)を介して投与される。
幾つかの実施形態では、抗炎症性または免疫抑制の組成物(例えば、コルチコステロイドなどの免疫抑制剤を含む組成物)の投与は、耳の手術、医療機器の移植または細胞移植に関連付けられた炎症及び/又は感染を低減する。幾つかの事例では、本明細書に記載される耳感覚用の細胞モジュレーター製剤(auris sensory cell modulator formulation)による手術領域の灌流は、手術後及び/又は移植後の合併症(例えば、炎症、有毛細胞損傷、神経変性、骨新生など)を低減または除去する。幾つかの事例では、本明細書に記載される製剤による手術領域の灌流は、手術後または移植後の療養時間を短縮させる。幾つかの実施形態では、医療機器は、耳における移植の前に本明細書に記載される組成物でコーティングされる。
一態様では、本明細書に記載される製剤、およびその投与の様式は、内耳区画の直接的な灌流の方法に適用可能である。したがって、本明細書に記載される製剤は、耳介入との組み合わせに有用である。幾つかの実施形態では、耳介入は、移植処置(例えば、蝸牛における聴力デバイスの移植)である。幾つかの実施形態では、耳介入は、限定しない例として、蝸牛切開術、迷路切開術、乳突起削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨手術、内リンパ球形嚢手術、鼓膜切開術などを含む、外科的処置である。幾つかの実施形態では、内耳区画は、耳介入の前、間、または後に、あるいはその組み合わせで、本明細書に記載される製剤で灌流される。
幾つかの実施形態では、灌流が耳介入と組み合わせて実行されるとき、TrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物は、即時放出組成物である。そのような実施形態の幾つかでは、本明細書に記載される即時放出製剤は、非増粘組成物であり、持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)が実質的にない。そのような実施形態の幾つかでは、組成物は、製剤の5重量%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。そのような実施形態の幾つかでは、組成物は、製剤の2重量%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。そのような実施形態の幾つかでは、組成物は、製剤の1重量%未満の持続放出成分(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。そのような実施形態の幾つかでは、手術領域の灌流のために使用される本明細書に記載される組成物は、ゲル化成分を実質的に含有しておらず、即時放出組成物である。
他の実施形態では、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物は、耳介入後(例えば、医療機器または細胞ベースの治療薬の移植後)に投与される。そのような実施形態の幾つかでは、耳介入後に投与される本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物は、中間放出または持続放出の組成物であり、本明細書に記載されるようなゲル化成分を含有している。
<一般的な滅菌の方法>
内耳環境は、隔離された環境である。内リンパおよび外リンパは、静止流体であり、循環系と連続して接触していない。血液内リンパ関門および血液外リンパ関門を含む、血液迷路関門(BLB)は、迷路空間(即ち、前庭および蝸牛の空間)における特定化された上皮細胞間のタイトジャンクションから成る。BLBの存在は、活性薬剤(例えば、TrkBまたはTrkCのアゴニスト)の送達を内耳の隔離された微小環境に制限する。耳有毛細胞は、内リンパまたは外リンパの流体に浸され、カリウムイオンの蝸牛の再利用が、有毛細胞機能にとって重要である。内耳が感染されると、内リンパ及び/又は外リンパへの(例えば微生物感染に応じた)白血球及び/又は免疫グロブリンの流入があり、内耳流体の繊細なイオン組成物は、白血球及び/又は免疫グロブリンの流入によって転覆させられる(upset)。特定の事例では、内耳流体のイオン組成物における変化は、結果として、難聴、平衡感覚障害及び/又は聴覚構造の骨化につながる。特定の事例では、微量な発熱物質及び/又は微生物でさえ、内耳の隔離された微小環境における感染および関連する生理学的変化を引き起こし得る。
本明細書には、低いバイオバーデンで製造されるか又はストリンジェントな無菌要件で滅菌される、および中耳及び/又は内耳への投与に適している、耳用製剤が提供される。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳に適合性のある組成物は、発熱物質及び/又は微生物が実質的にない。
本明細書には、本明細書に記載される耳障害を改善または低減するTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物が提供される。本明細書にはさらに、前記耳科用組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは減菌される。本明細書に開示される実施形態内には、ヒトにおける使用のための本明細書に開示される医薬組成物またはデバイスの減菌のための手段およびプロセスが含まれる。その目的は、感染を引き起こす微生物を比較的含まない、安全な医薬製品を提供することである。米国食品医薬品局は、http://www.fda.gov/cder/guidance/5882fnl.htmで入手可能な刊行物「Guidance for Industry: Sterile Drug Products Produced by Aseptic Processing」において規制手引きを提供しており、これは、その全体が引用によって本明細書に組み込まれる。
本明細書で使用されるように、減菌は、製品またはパッケージング中に存在する微生物を破壊または除去するために使用されるプロセスを意味する。対象および組成物の減菌に利用可能な任意の適切な方法が使用される。微生物の不活性化のために利用可能な方法は、限定されないが、極熱、致死薬、またはガンマ線の適用を含む。幾つかの実施形態において、本明細書には、耳科用治療製剤の調製のためのプロセスが開示され、該プロセスは、製剤を、化学的滅菌、放射線減菌または濾過滅菌から選択される滅菌法にさらすことを含む。使用される方法は、滅菌されるデバイスまたは組成物の性質に大きく依存する。滅菌の多くの方法の詳細な記載は、Lippincott, Williams & Wilkinsによって公開された、Remington: The Science and Practice of PharmacyのChapter 40で与えられ、この主題に関する引用によって組み込まれる。
<化学的滅菌>
化学的滅菌法は、極度の加熱滅菌に耐性のない生成物のための代替方法である。この方法では、酸化エチレン、二酸化塩素、ホルムアルデヒドまたはオゾンなどの、殺菌特性を備えた様々な気体および蒸気が、抗アポトーシス剤として使用される。エチレンオキシドの殺菌活性は、例えば、反応性アルキル化剤として働くその能力から生じる。したがって、減菌プロセスには、エチレンオキシド蒸気が、減菌される生成物と直接接触することが必要とされる。
<放射線減菌>
放射線減菌の1つの利点は、熱分解または他の損害なしに多くのタイプの生成物を減菌する能力である。一般に利用される放射線は、ベータ線であるか、または代替的に、60Co源からのガンマ線である。ガンマ線の透過能力によって、溶液、組成物および不均質混合物を含む多くの生成物タイプの滅菌での使用が可能となる。照射の殺菌効果は、ガンマ線の生体高分子との相互作用から生じる。この相互作用は、荷電種および遊離基を生成する。再構成および架橋結合のプロセスなどの、続く化学反応は、結果として、これらの生体高分子に対する正常機能の損失をもたらす。本明細書に記載される製剤はまた、ベータ照射を使用して随意に滅菌される。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む、本明細書に記載される製剤は溶液の形態にあり、溶液は放射線減菌方法を使用して殺菌される。
<濾過>
濾過滅菌は、溶液から微生物を除去するが破壊しないために使用される方法である。感温性溶液を濾過するために、メンブレンフィルターが使用される。このようなメンブレンフィルターは、混合したセルロースエステル(MCE)、ポリフッ化ビニリデン(PVF;PVDFとしても知られる)、またはポリテトラフルオロエチレン(PTFE)の薄く、強い、均質ポリマーであり、0.1乃至0.22μmの範囲の孔径を有する。様々な特性の溶液が、随意に、異なるメンブレンフィルターを使用して濾過される。例えば、PVFおよびPTFEの膜は、濾過する有機溶媒に十分に合わせられ、一方で、水溶液は、PVFまたはMCEの膜に通して濾過される。濾過デバイスは、シリンジに付けられた単一のユースポイントの(point-of-use)使い捨てフィルターから製造工場での使用のための工業規模のフィルターまで及ぶ、多くの規模での使用に利用可能である。メンブレンフィルターは、オートクレーブまたは化学滅菌によって滅菌される。膜濾過システムの確証が、標準化したプロトコル(Microbiological Evaluation of Filters for Sterilizing Liquids, Vol 4, No. 3. Washington, D.C: Health Industry Manufacturers Association, 1981)に従って実行され、Brevundimonas diminuta(ATCC 19146)などの、既知量(約10/cm)の異常に小さな微生物を用いてメンブレンフィルターを検証する(challenging)ことを含む。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む、本明細書に記載される製剤は溶液の形態にあり、溶液は濾過法を使用して滅菌される。
医薬組成物は、随意に、メンブレンフィルターを通り抜けることによって滅菌される。
ナノ粒子(米国特許公開番号6,139,870)または多重膜小胞(Richard et al., International Journal of Pharmaceutics (2006), 312(1-2):144-50)を含む製剤は、それらの組織化された構造を破壊することなく、0.22μmのフィルターを介して濾過滅菌に適用可能である。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む、本明細書に記載される製剤は、多重膜小胞の形態にあり、多重膜小胞は濾過法を使用して滅菌される。
幾つかの実施形態では、本明細書に開示される方法は、濾過滅菌によって製剤(またはその成分)を滅菌する工程を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、粒子を含み、ここで粒子製剤は濾過滅菌に適している。さらなる実施形態では、前記粒子製剤は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズの粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、ここで粒子の無菌性は、前駆体成分溶液の濾過滅菌によって保証される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、粒子製剤を含み、ここで粒子の無菌性は、低温濾過滅菌によって保証される。さらなる実施形態では、低温濾過滅菌は、0乃至30℃、0乃至20℃、0乃至10℃、10乃至20℃、または20乃至30℃の間の温度で実行される。
別の実施形態では、耳に許容可能な粒子製剤の調製のためのプロセスがあり、該プロセスは、粒子製剤を含有している水溶液を低温で滅菌フィルターに通して濾過すること;無菌液を凍結乾燥すること;および投与前に滅菌水を用いて粒子製剤を再構成すること、を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、微粉化した医薬品有効成分を含有している単一のバイアル製剤中の懸濁液として製造される。単一のバイアル製剤は、滅菌したポロクサマー溶液を滅菌した微粉化した有効成分(例えば、ケタミン)と無菌的に混合し、製剤を滅菌した医薬容器に移すことによって調製される。幾つかの実施形態では、懸濁液として本明細書に記載される製剤を含有している単一のバイアルは、投薬及び/又は投与前に再懸濁される。
具体的な実施形態では、濾過及び/又は充填の手順は、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)より5℃下で、および100cPの理論値より下の粘度で実行され、それにより、蠕動ポンプを使用する妥当な時間内での濾過が可能となる。
別の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、ナノ粒子製剤を含み、ここでナノ粒子製剤は濾過滅菌に適している。さらなる実施形態では、ナノ粒子製剤は、300nm未満のサイズ、200nm未満のサイズ、または100nm未満のサイズのナノ粒子を含む。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、マイクロスフェア製剤を含み、ここでマイクロスフェアの無菌性は、前駆体有機溶液および水溶液の濾過滅菌によって保証される。別の実施形態では、耳に許容可能な製剤は、熱可逆性ゲル製剤を含み、ここで熱可逆性ゲル製剤の無菌性は低温濾過滅菌によって保証される。さらなる実施形態では、低温濾過滅菌は、0乃至30℃、0乃至20℃、0乃至10℃、10乃至20℃、または20乃至30℃の間の温度で生じる。別の実施形態では、耳に許容可能な熱可逆性ゲル製剤の調製のためのプロセスがあり、該プロセスは、熱可逆性ゲル成分を含有している水溶液を低温で滅菌フィルターに通して濾過すること;無菌液を凍結乾燥すること;および投与前に滅菌水を用いて熱可逆性ゲル製剤を再構成すること、を含む。
特定の実施形態では、有効成分は、適切なビヒクル(例えば緩衝液)中に溶解され、(例えば、加熱処理、濾過、ガンマ線によって)別々に滅菌される。幾つかの例では、有効成分は、乾燥状態で別々に滅菌される。幾つかの例では、有効成分は、懸濁液またはコロイド懸濁液として滅菌される。残りの賦形剤(例えば、耳用製剤中に存在する流体ゲル成分)は、適切な方法(例えば、賦形剤の冷却混合物の濾過及び/又は照射)によって別々の工程で滅菌され;別々に滅菌される2つの溶液は、その後、無菌的に混合され、最終的な耳用製剤が提供される。幾つかの例では、最終的な無菌混合は、本明細書に記載される製剤の投与の直前に行われる。
幾つかの例では、慣習的に使用される滅菌の方法(例えば、(例えば、オートクレーブにおける)加熱処理、ガンマ線照射、濾過)は、製剤中のポリマー成分(例えば、熱硬化性、ゲル化、または粘膜付着性のポリマー成分)及び/又は活性薬剤の不可逆な分解につながる。幾つかの例では、膜(例えば、0.2μMの膜)に通す濾過による耳用製剤の滅菌は、耳用製剤が、濾過のプロセスの間にゲル化する揺変性ポリマー(thixotropic polymers)を含む場合、不可能である。
したがって、本明細書には、滅菌のプロセスの間のポリマー成分(例えば、熱硬化性及び/又はゲル化及び/又は粘膜付着性のポリマー成分)及び/又はTrkBまたはTrkCのアゴニストの分解を防ぐ耳用製剤の滅菌のための方法が提供される。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニスト(例えば、本明細書に記載される抗体アゴニスト)の分解は、製剤中の緩衝液成分に対する具体的なpH範囲およびゲル化剤の具体的な比率の使用によって減少または除去される。幾つかの実施形態では、適切なゲル化剤及び/又は熱硬化性ポリマーの選択によって、濾過による本明細書に記載される製剤の滅菌が可能となる。幾つかの実施形態では、製剤のための具体的なpH範囲と組み合わせた、適切な熱硬化性ポリマーおよび適切なコポリマー(例えば、ゲル化剤)の使用によって、治療剤またはポリマー賦形剤の分解が実質的にない記載される製剤の高温滅菌が可能になる。本明細書に提供される滅菌の方法の利点は、特定の例において、製剤が、滅菌工程間に活性薬剤及び/又は賦形剤及び/又はポリマー成分の損失なしでオートクレーブ滅菌を介して最終滅菌にさらされ、微生物及び/又は発熱物質が実質的にないようにされるということである。
<微生物>
本明細書には、本明細書に記載される耳障害を改善または低減する、耳に許容可能な組成物またはデバイスが提供される。本明細書にはさらに、前記耳科用組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは、微生物が実質的にない。許容可能なバイオバーデンまたは滅菌レベルは、限定されないが、United States Pharmacopeia Chapters <1111> et seqを含む、治療上許容可能な組成物を定義する適用可能な基準に基づく。例えば、許容可能な滅菌(例えば、バイオバーデン)レベルは、製剤のグラム当たり約10コロニー形成単位(cfu)、製剤のグラム当たり約50cfu、製剤のグラム当たり約100cfu、製剤のグラム当たり約500cfu、または製剤のグラム当たり約1000cfuを含む。幾つかの実施形態では、製剤のための許容可能なバイオバーデンレベルまたは無菌性は、10cfu/mL未満、50cfu/mL未満、500cfu/mL未満、または1000cfu/mL未満の微生物因子を含む。さらに、許容可能なバイオバーデンレベルまたは無菌性は、指定された好ましくない(objectionable)微生物因子の排除を含む。例として、指定された好ましくない微生物因子は、限定されないが、大腸菌(Escherichia coli)(E.coli)、サルモネラ属細菌(Salmonella sp.)、緑膿菌(P.aeruginosa )及び/又は他の具体的な微生物因子を含む。
耳に許容可能な耳科用治療製剤の無菌性は、United States Pharmacopeia Chapters <61>、 <62>および <71>に従って滅菌保証プログラムによって確認される。滅菌保証の品質管理、品質保証および検証過程の主要な要素は、滅菌試験の方法である。滅菌試験は、ほんの一例として、2つの方法によって行われる。第1の方法は、直接接種であり、ここで試験される組成物のサンプルは、増殖培地に加えられ、最大で21日間までの間インキュベートされる。増殖培地の濁度は、汚染を示す。この方法の欠点は、感受性を低減するバルク材(bulk materials)の小さなサンプリングサイズ(small sampling size)、および目視観測に基づく微生物増殖の検出を含む。代替方法は、膜濾過滅菌試験である。この方法では、大量の生成物が、小さな膜濾紙に通される。その後、濾紙は、微生物の増殖を促進するために培地に入れられる。この方法は、バルク製品(bulk product)全体がサンプリングされると、より大きな感受性を持つ利点を有する。市販のMillipore Steritest滅菌試験システムは、随意に、膜濾過滅菌試験による判定に使用される。クリーム剤または軟膏剤の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TLHVSL210が使用される。エマルジョンまたは粘性生成物の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TLAREM210またはTDAREM210が使用される。予め充填されたシリンジ(pre-filled syringe)の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHASY210が使用される。エアロゾルまたは泡として調合された物質の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHVA210が使用される。アンプルまたはバイアルにおける溶解性粉末の濾過試験のために、SteritestフィルターシステムNo.TTHADA210またはTTHADV210が使用される。
E.coliとサルモネラ菌(Salmonella)のための試験は、24-72時間30-35℃でインキュベートされたラクトース培養液の使用、18-24時間のMacConkey及び/又はEMB寒天中のインキュベーション、及び/又はRappaport培地の使用を含む。P.aeruginosaの検出のための試験は、NAC培地の使用を含む。United States Pharmacopeia Chapters<62>はさらに、指定された好ましくない微生物のための試験手順を列挙している。
特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出製剤は、製剤のグラム当たり微生物因子の約60未満のコロニー形成単位(CFU)、約50未満のコロニー形成単位、約40未満のコロニー形成単位、または約30未満のコロニー形成単位を有している。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤は、内リンパ及び/又は外リンパと等張となるように製剤される。
<エンドトキシン>
本明細書には、本明細書に記載される耳障害を改善または低減する耳科用組成物が提供される。本明細書にはさらに、前記耳科用組成物の投与を含む方法が提供される。幾つかの実施形態では、組成物またはデバイスは、エンドトキシンが実質的にない。減菌プロセスのさらなる態様は、微生物の死滅からの副産物(以後「産物(Product)」)の除去である。発熱物質除去のプロセスは、サンプルから発熱物質を除去することである。発熱物質は、免疫反応を引き起こすエンドトキシンまたはエキソトキシンである。エンドトキシンの一例は、グラム陰性菌の細胞壁で見られるリポ多糖(LPS)分子である。オートクレーブ滅菌またはエチレンオキシドでの処理などの滅菌手順は、細菌を死滅させ、LPS残基は、敗血症性ショックなどの、炎症促進性免疫反応を引き起こす。エンドトキシンの分子サイズが広く変わり得るため、エンドトキシンの存在は、「エンドトキシン単位」(EU)で表わされる。1EUは、E.coliLPSの100ピコグラムと同等である。ヒトは、体重のたった5EU/kgほどに対する反応を進行させる。バイオバーデン(例えば、微生物限度)及び/又は無菌性(例えば、エンドトキシンレベル)は、当該技術分野で認識されるような単位で表わされる。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、慣習的に許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、被験体の体重の5EU/kg)と比較したときに、より低いエンドトキシンレベル(例えば、被験体の体重の<4EU/kg)を含有している。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、被験体の体重の約5EU/kg未満を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、被験体の体重の約4EU/kg未満を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、被験体の体重の約3EU/kg未満を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、被験体の体重の約2EU/kg未満を有している。
幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤またはデバイスは、製剤の約5EU/kg未満を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、製剤の約4EU/kg未満を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、製剤の約3EU/kg未満を有している。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約5EU/kg未満の産物を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約1EU/kg未満の産物を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約0.2EU/kg未満の産物を有している。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約5EU/g未満のユニット(unit)または産物を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約4EU/g未満のユニットまたは産物を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約3EU/g未満のユニットまたは産物を有している。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約5EU/mg未満のユニットまたは産物を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約4EU/mg未満のユニットまたは産物を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、約3EU/mg未満のユニットまたは産物を有している。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、製剤の約1乃至約5EU/mLを含有している。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、製剤の約2乃至約5EU/mL、製剤の約3乃至約5EU/mL、または製剤の約4乃至約5EU/mLを含有している。
特定の実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物またはデバイスは、慣習的に許容可能なエンドトキシンレベル(例えば、製剤の0.5EU/mL)と比較したときに、より低いエンドトキシンレベル(例えば、製剤の<0.5EU/mL)を含有している。幾つかの実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤またはデバイスは、製剤の約0.5EU/mL未満を有している。他の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、製剤の約0.4EU/mL未満を有している。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、製剤の約0.2EU/mL未満を有している。
発熱物質の検出は、ほんの一例として、幾つかの方法によって行われる。無菌性に適した試験は、United States Pharmacopoeia(USP)<71>Sterility Tests (23rd edition, 1995)に記載される試験を含む。ウサギの発熱物質試験およびカブトガニの血球抽出成分試験は、両方とも、United States Pharmacopeia Chapters <85> および <151> (USP23/NF 18, Biological Tests, The United States Pharmacopeial Convention, Rockville, MD, 1995)中に規定されている。代替的な発熱物質アッセイは、単球活性化-サイトカインアッセイに基づいて開発された。品質管理適用に適した均一の細胞株が開発されており、これは、ウサギの発熱物質試験およびカブトガニの血球抽出成分試験を通ったサンプル中の発熱性を検出する能力を実証した(Taktak et al, J. Pharm.Pharmacol.(1990),43:578-82)。追加の実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤は、発熱物質除去の対象となる。さらなる実施形態では、耳に許容可能な耳科用治療製剤の製造のプロセスは、発熱性に関して製剤を試験することを含む。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、発熱物質が実質的にない。
<pHおよび実用的なモル浸透圧濃度>
本明細書で使用されるように、「実用的なモル浸透圧濃度」は、活性薬剤、およびゲル化剤及び/又は増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマー、 カルボキシメチルセルロースなど)を除くすべての賦形剤を含めることによって測定される製剤のモル浸透圧濃度を意味する。本明細書に記載される製剤の実用的なモル浸透圧濃度は、任意の適切な方法、例えば、Viegas et. al., Int. J. Pharm., 1998, 160, 157-162に記載されるような凝固点降下方法によって測定される。幾つかの例では、本明細書に記載される組成物の実用的なモル浸透圧濃度は、より高温での組成物のモル浸透圧濃度の判定を可能にする蒸気圧浸透圧法(例えば、蒸気圧降下法)によって測定される。幾つかの例では、蒸気圧降下法は、より高温でのゲル化剤(例えば、熱可逆性ポリマー)を含む製剤のモル浸透圧濃度の判定を可能にし、ここでゲル化剤はゲルの形態である。本明細書に記載される耳科用製剤の実用的なモル浸透圧濃度は、約100mOsm/kgから約1000mOsm/kg、約200mOsm/kgから約800mOsm/kg、約250mOsm/kgから約500mOsm/kg、約250mOsm/kgから約320mOsm/kg、約250mOsm/kgから約350mOsm/kg、または約280mOsm/kgから約320mOsm/kgまでである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤は、約100mOsm/Lから約1000mOsm/L、約200mOsm/Lから約800mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約250mOsm/Lから約320mOsm/L、または約280mOsm/Lから約320mOsm/Lまでの実用的なモル浸透圧濃度を有する。
幾つかの実施形態では、作用の標的部位(例えば外リンパ)でのモル浸透圧濃度は、本明細書に記載される送達された製剤のモル浸透圧濃度(即ち、正円窓膜と交差するか又はそれに浸透する物質のモル浸透圧濃度)とほぼ同じである。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤は、約150mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約500mOsm/L、約250mOsm/Lから約350mOsm/L、約280mOsm/Lから約370mOsm/L、または約250mOsm/Lから約320mOsm/Lまでの送達可能なモル浸透圧濃度を有する。
内リンパに存在する主なカチオンは、カリウムである。さらに、内リンパは、高濃度の正に荷電したアミノ酸を有する。外リンパに存在する主なカチオンは、ナトリウムである。特定の事例では、内リンパおよび外リンパのイオン組成物は、有毛細胞の電気化学的刺激を調節する。特定の事例では、内リンパまたは外リンパのイオンバランスのあらゆる変化は、結果として、耳の有毛細胞に沿った電気化学的刺激の伝導の変化が原因で難聴につながる。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、外リンパのイオンバランスを崩さない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、外リンパと同じ又は実質的に同じであるイオンバランスを有する。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、内リンパのイオンバランスを崩さない。幾つかの実施形態では、本明細書に開示される組成物は、内リンパと同じ又は実質的に同じであるイオンバランスを有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用製剤は、内耳流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)と適合性のあるイオンバランスを提供するために製剤される。
内リンパおよび外リンパは、血液の生理的pHに近いpHを有する。内リンパは、約7.2-7.9のpH範囲を有し、外リンパは、約7.2-7.4のpH範囲を有する。近位の内リンパのインサイツでのpHは約7.4であり、一方で遠位の内リンパのpHは約7.9である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約5.5~9.0の内リンパと適合性のあるpH範囲に調節される(例えば、緩衝液の使用によって)。具体的な実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約5.5~約9.0の外リンパに適切なpH範囲に調節される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約5.5~約8.0、約6~約8.0、または約6.6~約8.0の外リンパに適切な範囲に調節される。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物のpHは、約7.0-7.6の外リンパに適切なpH範囲に調節される。
幾つかの実施形態では、有用な製剤は、1つ以上のpH調整剤または緩衝剤も含む。適切なpH調整剤または緩衝液は、限定されないが、酢酸塩、重炭酸塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、それらの薬学的に許容可能な塩、およびそれらの組み合わせ又は混合物を含む。
一実施形態では、1つ以上の緩衝液は、本開示の製剤に利用されるときに、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わせられ、例えば、約0.1%乃至約20%、約0.5%乃至約10%の範囲の量で、最終的な製剤中に存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHが身体の天然の緩衝系を妨害しないような量である。
一実施形態では、化合物を安定させるために、希釈剤も使用され、なぜなら希釈剤は、より安定した環境を提供することができるからである。(pH制御または維持も提供することができる)緩衝液中に溶解された塩が、限定されないが、リン酸緩衝食塩水溶液を含む、当該技術分野における希釈剤として利用される。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるあらゆるゲル製剤は、医薬品(例えば、TrkBまたはTrkCのアゴニスト)またはゲルを含むポリマーの分解なしで、ゲル製剤の滅菌(例えば、濾過または無菌混合または加熱処理及び/又はオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌)による)を可能にするpHを有する。滅菌中に耳科用剤及び/又はゲルポリマーの加水分解及び/又は分解を低減するために、緩衝液pHは、滅菌のプロセス(例えば、高温オートクレーブ滅菌)の間に7-8の範囲の製剤のpHを維持するように設計されている。
具体的な実施形態では、本明細書に記載されるあらゆるゲル製剤は、医薬品(例えば、TrkBまたはTrkCのアゴニスト)またはゲルを含むポリマーの分解なしで、ゲル製剤の最終滅菌(例えば、加熱処理及び/又はオートクレーブ滅菌による)を可能にするpHを有する。例えば、オートクレーブ滅菌中に耳科用剤及び/又はゲルポリマーの加水分解及び/又は分解を低減するために、緩衝液pHは、高温で7-8の範囲の製剤のpHを維持するように設計されている。製剤に使用される耳科用剤に依存して、あらゆる適切な緩衝液が使用される。幾つかの事例では、温度がおよそ-0.03/℃で増加するにつれTRISのpKaが低下し、温度がおよそ0.003/℃で増加するにつれPBSのpKaが増大するため、250°F(121℃)でのオートクレーブ滅菌は、結果として、TRIS緩衝液における著しい下向きのpHシフトがもたらされ(即ち、より酸性)、一方でPBS緩衝液における比較的少ない上向きのpHシフトももたらされ、それ故、PBSよりもTRISにおける耳科用剤の加水分解及び/又は分解の大きな増加がもたらされる。耳科用剤の分解は、本明細書に記載されるような緩衝液とポリマー添加剤(例えばCMC)の適切な組み合わせの使用によって低減される。
幾つかの実施形態では、約5.0から約9.0の間、約5.5から約8.5の間、約6.0から約7.6の間、約7から約7.8の間、約7.0から約7.6の間、約7.2から7.6の間、または約7.2から約7.4の間の製剤pHが、本明細書に記載される耳用製剤の滅菌(例えば、濾過または無菌混合または加熱処理及び/又はオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌)による)に適している。具体的な実施形態では、約6.0、約6.5、約7.0、約7.1、約7.2、約7.3、約7.4、約7.5、または約7.6の製剤pHが、本明細書に記載されるあらゆる組成物の滅菌(例えば、濾過または無菌混合または加熱処理及び/又はオートクレーブ滅菌(例えば最終滅菌)による)に適している。
幾つかの実施形態では、製剤は、本明細書に記載されるようなpHを有しており、限定しない例として、本明細書に記載されるセルロースベースの増粘剤などの、増粘剤(例えば、粘度増強剤)を含む。幾つかの事例では、二次ポリマー(例えば増粘剤)の追加および本明細書に記載されるような製剤のpHによって、耳科用剤及び/又は耳科用製剤中のポリマー成分の実質的な分解なしで、本明細書に記載される製剤の滅菌が可能になる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載されるようなpHを有する製剤中の増粘剤に対する熱可逆性ポロクサマーの比率は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1である。例えば、特定の実施形態では、本明細書に記載される徐放製剤及び/又は持続放出製剤は、約40:1、約35:1、約30:1、約25:1、約20:1、約15:1、約10:1、または約5:1の比率でポロクサマー407(プルロニック(pluronic)F127)とカルボキシメチルセルロース(CMC)の組み合わせを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約10%、約15%、約20%、約25%、約30%、約35%または約40%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマーの量は、製剤の総重量の約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%または約25%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約7.5%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約10%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約11%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約12%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約13%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約14%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約15%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約16%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約17%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約18%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約19%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約20%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約21%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約23%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の熱可逆性ポリマー(例えばプルロニックF127)の量は、製剤の総重量の約25%である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の増粘剤(例えばゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約0.1%、約0.2%、約0.3%、0.4%、約0.5%、約0.6%、約0.7%、約0.8%、約0.9%、約1%、約5%、約10%、または約15%である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤中の増粘剤(例えばゲル化剤)の量は、製剤の総重量の約0.1%、約0.5%、約1%、約1.5%、約2%、約2.5%、約3%、約3.5%、約4%、約4.5%、または約5%である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週、少なくとも約2週、少なくとも約3週、少なくとも約4週、少なくとも約5週、少なくとも約6週、少なくとも約7週、少なくとも約8週、少なくとも約1か月、少なくとも約2か月、少なくとも約3か月、少なくとも約4か月、少なくとも約5か月、または少なくとも約6か月の間のいずれかの期間にわたって、pHに対して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって、pHに対して安定している。本明細書にはまた、少なくとも約1か月の期間の間、pHに対して安定している製剤が記載される。
<等張化剤>
一般に、内リンパは、外リンパより高い重量モル浸透圧濃度を有する。例えば、内リンパは、約304mOsm /kgのHOの重量モル浸透圧濃度を有し、一方で外リンパは、約294mOsm /kgの耳に適合性のある重量モル浸透圧濃度を有する。特定の実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kg乃至約1000mOsm/kg、約200mOsm/kg乃至約800mOsm/kg、約250mOsm/kg乃至約500mOsm/kg、約250mOsm/kg乃至約350mOsm/kg、または約280mOsm/kg乃至約320mOsm/kgの耳科用製剤の実用的な重量モル浸透圧濃度を提供する量で本明細書に記載される製剤に加えられる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、約100mOsm/L乃至約1000mOsm/L、約200mOsm/L乃至約800mOsm/L、約250mOsm/L乃至約500mOsm/L、約250mOsm/L乃至約350mOsm/L、約280mOsm/L乃至約320mOsm/L、または約250mOsm/L乃至約320mOsm/Lの実用的なモル浸透圧濃度を有する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される送達可能な製剤のモル浸透圧濃度は、標的とされた耳構造(例えば、内リンパ、外リンパなど)と等張であるように設計されている。具体的な実施形態では、本明細書に記載される耳用組成物は、約250乃至約320mOsm/L、および好ましくは約270乃至約320mOsm/Lの作用の標的部位での送達された外リンパに適切なモル浸透圧濃度を提供するために製剤される。具体的な実施形態では、本明細書に記載される耳用組成物は、約250乃至約320mOsm /kgの耳に適合性のある、または約270乃至約320mOsm /kgの耳に適合性のある重量モル浸透圧濃度の作用の標的部位での送達された外リンパに適切な重量モル浸透圧濃度を提供するために製剤される。具体的な実施形態では、製剤の送達可能なモル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度(即ち、ゲル化剤または増粘剤(例えば熱可逆性ゲルポリマー)の不存在化での製剤のモル浸透圧濃度/重量モル浸透圧濃度)は、例えば、適切な塩濃度(例えば、カリウムまたはナトリウム塩の濃度)の使用、または製剤を標的部位への送達で内リンパ適合性及び/又は外リンパ適合性にする(即ち、内リンパ及び/又は外リンパで等張)等張化剤の使用によって調節される。熱可逆性ゲルポリマーを含む製剤のモル浸透圧濃度は、様々な量の水とポリマーの単量体単位との関連性が原因で信頼性の低い尺度である。製剤の実用的なモル浸透圧濃度(即ち、ゲル化剤または増粘剤(例えば熱可逆性ゲルポリマー)の不存在化でのモル浸透圧濃度)は、信頼できる尺度であり、あらゆる適切な方法(例えば、凝固点降下方法、蒸気降下方法)によって測定される。幾つかの事例では、本明細書に記載される製剤は、投与後に、内耳の環境に最小の障害をもたらす、および哺乳動物に最小の不快感(例えば、回転性めまい及び/又は吐き気)をもたらす、(例えば、標的部位(例えば外リンパ)での)送達可能なモル浸透圧濃度を提供する。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、外リンパ及び/又は内リンパと等張である。等張製剤は、等張化剤の追加によって提供される。適切な等張化剤は、限定されないが、デキストロース、グリセリン、マンニトール、ソルビトール、塩化ナトリウム、および他の電解質などの、薬学的に許容可能な糖、塩、またはそれらの任意の組み合わせ又は混合物を含む。
有用な耳用組成物は、組成物の重量モル浸透圧濃度を許容可能な範囲にするのに必要とされる量で1つ以上の塩を含む。そのような塩は、ナトリウムカチオン、カリウムカチオン、またはアンモニウムカチオン、および塩素アニオン、クエン酸アニオン、アスコルビン酸アニオン、ホウ酸アニオン、リン酸アニオン、重炭酸アニオン、硫酸アニオン、チオ硫酸アニオン、または重亜硫酸アニオンを有するものを含み;適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および硫酸アンモニウムを含む。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、約1μMから約10μMの間、約1mMから約100mMの間、約0.1mMから約100mMの間、約0.1mMから約100nMの間の医薬品有効成分の濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の有効成分の約0.001重量%から約60重量%の間、約0.01重量%から約20重量%の間、約0.01重量%から約10重量%の間、約0.01重量%から約7.5重量%の間、約0.01重量%から6重量%の間、約0.01重量%からの5重量%の間、約0.1重量%から約10重量%、または約0.1重量%から6重量%の間の医薬品有効成分の濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の容積で活性薬剤の約0.1mg/mLから約100mg/mLの間、約1mg/mLから約100mg/mLの間で、約1mg/mLから約80mg/mLの間で、約1mg/mLから約60mg/mLの間で、約1mg/mLから約50mg/mLの間、約1mg/mLから約50mg/mLの間、約1mg/mLから約20mg/mLの間、約1mg/mLから約10mg/mLの間、約1mg/mLから約5mg/mLの間、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間の医薬品有効成分の濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の容積で活性薬剤の約1μg/mLから約500μg/mLの間、約1μg/mLから約250μg/mLの間、約1μg/mLから約100μg/mLの間、約1μg/mLから約50μg/mLの間、または約1μg/mLから約20μg/mLの間の医薬品有効成分の濃度を有する。
幾つかの実施形態では、医薬品有効成分は、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む。幾つかの場合では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、約1μMから約10μMの間、約1mMから約100mMの間、約0.1mMから約100mMの間、約0.1mMから約100nMの間のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の有効成分の約0.001重量%から約60重量%の間、約0.01重量%から約20重量%の間、約0.01重量%からの約10重量%の間、約0.01重量%から約7.5重量%の間、約0.01重量%から6重量%の間、約0.01重量%から5重量%の間、約0.1重量%から約10重量%の間、または約0.1重量%から約6重量%の間のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の容積でTrkBまたはTrkCのアゴニストの約0.1mg/mLから約100mg/mLの間、約1mg/mLから約100mg/mLの間、約1mg/mLから約80mg/mLの間、約1mg/mLから約60mg/mLの間、約1mg/mLから約50mg/mLの間、約1mg/mLから約50mg/mLの間、約1mg/mLから約20mg/mLの間、約1mg/mLから約10mg/mLの間、約1mg/mLから約5mg/mLの間、または約0.5mg/mLから約5mg/mLの間のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度を有する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される製剤は、本明細書に記載されるようなpH及び/又は実用的なモル浸透圧濃度を有し、製剤の容積でTrkBまたはTrkCのアゴニストの約1μg/mLから約500μg/mLの間、約1μg/mLから約250μg/mLの間、約1μg/mLから約100μg/mLの間、約1μg/mLから約50μg/mLの間、または約1μg/mLから約20μg/mLの間のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度を有する。
<調整可能な放出特性>
本明細書に記載される製剤、組成物またはデバイスからの非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出は、随意に、望ましい放出特性に調整可能である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物は、ゲル化成分が実質的にない溶液である。そのような事例では、組成物は、本質的にTrkBまたはTrkCのアゴニストの即時放出を提供する。そのような実施形態の幾つかでは、組成物は、例えば手術の間の、耳構造の灌流に有用である。
そのような実施形態の幾つかでは、組成物は、約2日から約4日の非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出を提供する。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される組成物はさらに、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約3日の期間にわたって非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出を提供する。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される組成物はさらに、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1日から約5日の期間にわたって非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出を提供する。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される組成物はさらに、ゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約2日から約7日の期間にわたって非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出を提供する。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される組成物はさらに、約14-17%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約1週から約3週間の期間にわたって持続放出徐放性を提供する。幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される組成物はさらに、約18-21%のゲル化剤(例えばポロクサマー407)を含み、約3週から約6週間の期間にわたって持続放出徐放性を提供する。
幾つかの実施形態では、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む本明細書に記載される製剤の粘度は、耳に適合性のあるゲルからの適切な速度の放出を提供するように設計されている。幾つかの実施形態では、増粘剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)の濃度は、調整可能な平均溶解時間(MDT)を可能にする。MDTは、本明細書に記載される組成物またはデバイスからの活性薬剤の放出速度に反比例する。実験的に、放出された非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストは、随意に、Korsmeyer-Peppas方程式に適合され:
Figure 0007023461000013
式中、Qは時間tで放出された耳科用剤の量であり、Qαは耳科用剤全体的な放出量であり、kはn番目の順番の放出定数であり、nは溶解機構と関連する無次元数であり、およびbは軸切片であり、これは、n=1が侵食制御機構を特徴づける初期バースト放出機構を特徴とする。平均溶解時間(MDT)は、分子の総数で割った、薬物分子が放出前にマトリックスにとどまる異なる期間の合計であり、随意に以下によって計算される:
Figure 0007023461000014
例えば、組成物またはデバイスの平均溶解時間(MDT)とゲル化剤(例えばポロクサマー)の濃度との間の直線関係は、非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストが、拡散によってではなくポリマーゲル(例えばポロクサマー)の侵食が原因で放出されることを示している。別の実施形態では、非直線関係は、拡散及び/又はポリマーゲル分解の組み合わせによる耳科用剤の放出を示している。別の例では、組成物またはデバイスのより速いゲル除去の時間経過(非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストのより速い放出)は、より低い平均溶解時間(MDT)を示している。組成物中のゲル化成分及び/又は活性薬剤の濃度は、MDTのための適切なパラメーターを判定するために試験される。幾つかの実施形態では、前臨床および臨床の研究のための適切なパラメーターを判定するために、注入量も試験される。非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストのゲルの強度および濃度は、組成物からの非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの放出動態に影響を与える。低いポロクサマー濃度では、除去速度は加速される(MDTはより低い)。組成物またはデバイス中の非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度の増加は、耳における非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニストの滞留時間及び/又はMDTを延長させる。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも6時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのポロクサマーに対するMDTは、少なくとも10時間である。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのTrkBまたはTrkCのアゴニストに対するMDTは、約30時間から約48時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのTrkBまたはTrkCのアゴニストに対するMDTは、約30時間から約96時間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのTrkBまたはTrkCのアゴニストに対するMDTは、約30時間から約1週間である。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される組成物またはデバイスからのTrkBまたはTrkCのアゴニストに対するMDTは、約1週間から約6週間である。
特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物は、制御放出性耳科用組成物ではない耳科用組成物と比較して、TrkBまたはTrkCのアゴニストの曝露を増加させ、耳科用流体(例えば、内リンパ及び/又は外リンパ)における曲線下面積(AUC)を、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約100%、または約100%以上増加させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物は、制御放出性耳科用組成物ではない製剤と比較して、TrkBまたはTrkCのアゴニストの曝露時間を増加させ、耳科用流体(例えば内リンパ及び/又は外リンパ)におけるCmaxを、約40%、約30%、約20%、または約10%減少させる。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物は、制御放出性耳科用組成物ではない製剤と比較して、Cmax対Cminの比率を変更する(例えば減少させる)。特定の実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物は、制御放出性耳科用組成物ではない製剤と比較して、TrkBまたはTrkCのアゴニストの曝露を増加させ、TrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度がCminを超える時間の長さを、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、または約90%増加させる。特定の実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストの曝露の増加、およびTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度が本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物によってCminを超える時間の長さの増加は、制御放出性耳科用組成物でない製剤と比較して100%以上である。特定の例では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物は、Cmaxまでの時間を遅らせる。特定の例では、薬物の安定した制御放出は、TrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度がCminを超えてとどまる時間を延長させる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用組成物は、内耳におけるTrkBまたはTrkCのアゴニストの滞留時間を延長させ、安定した薬物曝露特性を提供する。幾つかの例では、耳科用組成物中のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度の増加は、除去プロセスを飽和状態にし(saturates)、より迅速且つ安定した定常状態の到達が可能となる。
特定の例では、TrkBまたはTrkCのアゴニストへの曝露(例えば、内リンパまたは外リンパ中の濃度)が、定常状態に達すると、内リンパまたは外リンパ中のTrkBまたはTrkCのアゴニストの濃度は、長期間(例えば、1日、2日、3日、4日、5日、6日、または1週、3週、6週、2か月)の治療量で、またはそのあたりでとどまる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される制御放出性耳科用組成物から放出されたTrkBまたはTrkCのアゴニストの定常状態の濃度は、制御放出性耳科用組成物でない製剤から放出されたTrkBまたはTrkCのアゴニストの定常状態の濃度の約20倍乃至約50倍である。
<医薬製剤>
本明細書には、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニスト、および薬学的に許容可能な希釈剤、賦形剤、または担体を含む、耳科用医薬組成物またはデバイスが提供される。幾つかの実施形態では、医薬組成物は、他の薬剤または医薬品、担体、保存剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、浸透圧を制御するための塩、及び/又は緩衝液を含む。幾つかの実施形態では、耳科用組成物またはデバイスは、(i)非天然のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、(ii)ゲル化剤および粘度増強剤、(iii)pH調整剤、および(iv)滅菌水を含む。
他の実施形態では、耳科用医薬組成物はまた、他の治療物質を含有している。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用医薬組成物またはデバイスは、適用されたときにゲルの可視化を増強する助けとなるために色素を含む。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳に許容可能な組成物またはデバイスと適合性のある色素は、エバンスブルー(例えば、耳科用製剤の総重量の0.5%)、メチレンブルー(例えば、耳科用製剤の総重量の1%)、イソスルファンブルー(例えば、耳科用製剤の総重量の1%)、トリパンブルー(例えば、耳科用製剤の総重量の0.15%)、及び/又はインドシアニングリーン(例えば、25mg/vial)を含む。他の一般的な色素、例えば、FD&C レッド40、FD&C レッド3、FD&C イエロー5、FD&C イエロー6、FD&C ブルー1、FD&C ブルー2、FD&C グリーン3、蛍光色素(例えば、フルオレセインイソチオシアネート、ローダミン、Alexa Fluor、DyLight Fluors)、及び/又はMRI、CATスキャン、PETスキャンなどの、非侵襲性の撮像技術とともに可視化される色素、ガドリニウムベースのMRI色素、ヨードベースの色素、バリウムベースの色素なども、本明細書に記載される耳科用組成物との使用のために熟考される。本明細書に記載される製剤または組成物と適合性のある他の色素は、色素下でSigma-Aldrichのカタログにリストされる(これはそのような開示のための引用によって本明細書に含まれる)。
幾つかの実施形態では、聴力、平衡または他の耳障害をモニタリングする又は調査するために、機械的または画像化のデバイスが使用される。例えば、磁気共鳴画像(MRI)デバイスは、実施形態の範囲内で具体的に熟考され、ここでMRI装置(例えば、3 Tesla MRI装置)は、メニエール病の進行、および本明細書に開示される医薬製剤による続く処置を評価することができる。ガドリニウムベースの色素、ヨードベースの色素、バリウムベースの色素なども、本明細書に記載される耳に適合性のある組成物またはデバイス、及び/又は本明細書に記載される機械的または画像化のデバイスとの使用のために熟考される。特定の実施形態では、本明細書に記載される耳疾患(例えばメニエール病)における疾患重症度(例えば内リンパ水腫の大きさ)、内耳への製剤の浸透度、及び/又は医薬製剤/デバイスの治療有効性を評価するために、ガドリニウム水和物が、本明細書に記載されるMRI及び/又は医薬組成物またはデバイスと組み合わせて使用される。
本明細書に記載される耳科用医薬組成物またはデバイスは、蝸牛窓稜、正円窓、鼓室、鼓膜、中耳または外耳と接触させられることによって投与される。
本明細書に記載される耳に許容可能な制御放出性TrkBまたはTrkCのアゴニストの医薬製剤の1つの具体的な実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、本明細書で「耳に許容可能なゲル製剤」、「内耳に許容可能なゲル製剤」、「中耳に許容可能なゲル製剤」、「外耳に許容可能なゲル製剤」、「耳用ゲル製剤」またはそれらの変形とも呼ばれる、ゲルマトリックス中に提供される。ゲル製剤の成分はすべて、標的とされた耳構造と適合性がなければならない。さらに、ゲル製剤は、標的とされた耳構造内の望ましい部位へのTrkBまたはTrkCのアゴニストの制御放出を提供し、幾つかの実施形態では、ゲル製剤はまた、望ましい標的部位へのTrkBまたはTrkCのアゴニストの送達のための即時または急速な放出成分を有する。他の実施形態では、ゲル製剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニストの送達のための徐放成分を有する。幾つかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、生分解性である。他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、正円窓膜の外部粘液層への付着を可能にする粘膜付着性賦形剤を含む。さらに他の実施形態では、耳用ゲル製剤は、浸透増強賦形剤(penetration enhancer excipient)を含み、さらなる実施形態では、耳用ゲル製剤は、約500乃至1,000,000センチポアズ、約750乃至1,000,000センチポアズ;約1000乃至1,000,000センチポアズ;約1000乃至400,000センチポアズ;約2000乃至100,000センチポアズ;約3000乃至50,000センチポアズ;約4000乃至25,000センチポアズ;約5000乃至20,000センチポアズ;または約6000乃至15,000センチポアズの間の粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含有している。幾つかの実施形態では、耳用ゲル製剤は、約500,000乃至1,000,000センチポアズの間の粘度を提供するのに十分な粘度増強剤を含有している。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用医薬組成物またはデバイスは、体温では低粘度の組成物またはデバイスである。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約1%から約10%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約2%から約10%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、約5%から約10%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、低粘度の組成物またはデバイスは、粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)が実質的にない。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約100cPから約10,000cPまでの見掛け粘度を提供する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約500cPから約10,000cPまでの見掛け粘度を提供する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約1000cPから約10,000cPまでの見掛け粘度を提供する。そのような実施形態の幾つかでは、低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、外部の耳介入、例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術(typanostomy)、蝸牛切開術、迷路切開術、乳突起削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨手術、内リンパ球形嚢手術などを含む、外科的処置と組み合わせて投与される。そのような実施形態の幾つかでは、低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、耳介入の間に投与される。他のそのような実施形態では、低粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、耳介入の前に投与される。
幾つかの実施形態では、本明細書に記載される耳科用医薬組成物またはデバイスは、体温では高粘度の組成物またはデバイスである。幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約10%から約25%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約14%から約22%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、高粘度の組成物またはデバイスは、約15%から約21%までの粘度増強剤(例えば、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーなどのゲル化成分)を含有している。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約100,000cPから約1,000,000cPまでの見掛け粘度を提供する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約150,000cPから約500,000cPまでの見掛け粘度を提供する。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される高粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、約250,000cPから約500,000cPまでの見掛け粘度を提供する。そのような実施形態の幾つかでは、高粘度の組成物またはデバイスは、室温では液体であり、室温と体温との間あたりでゲル化する(例えば、最大約42℃までで、深刻な熱を持った個体を含む)。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む高粘度の耳科用組成物またはデバイスは、本明細書に記載される耳の疾患または疾病の処置のための単独療法として投与される。幾つかの実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む高粘度の耳科用組成物またはデバイスは、外部の耳介入、例えば、限定されないが、中耳手術、内耳手術、鼓膜切開術、蝸牛切開術、迷路切開術、乳突起削開術、アブミ骨切除術、アブミ骨手術、内リンパ球形嚢手術などを含む、外科的処置と組み合わせて投与される。そのような実施形態の幾つかでは、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む高粘度の耳科用組成物またはデバイスは、耳介入の後に投与される。他のそのような実施形態では、高粘度のTrkBまたはTrkCのアゴニストの組成物またはデバイスは、耳介入の前に投与される。
他の実施形態では、本明細書に記載される耳科用医薬製剤はさらに、耳に許容可能なヒドロゲルを提供し、さらに他の実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能なマイクロスフェアまたは微粒子を提供し、さらに他の実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能なリポソームを提供する。幾つかの実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能な泡を提供し、さらに他の実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能な塗料を提供し、またさらなる実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質を提供する。幾つかの実施形態では、耳科用医薬製剤は、耳に許容可能な溶媒放出ゲルを提供する。幾つかの実施形態では、耳科用医薬製剤は、化学線硬化性ゲルを供給する。さらなる実施形態は、耳科用医薬製剤中に熱可逆性ゲルを含に、それによって、室温以下でのゲルの調製後に、製剤は流体であるが、鼓室、正円窓膜または蝸牛窓稜を含む、内耳及び/又は中耳の標的部位への又はその近くのゲルの適用後に、耳科用医薬製剤は、ゲル状物質へと硬直または硬化する。
さらなる又は代替的な実施形態では、耳科用ゲル製剤は、鼓室内注入によって正円窓膜の上またはその近くで投与されることが可能である。他の実施形態では、耳科用ゲル製剤は、耳後部切開術および正円窓または蝸牛窓稜の領域への外科的処置による進入を介して、正円窓または蝸牛窓稜上に又はその近くに投与される。代替的に、耳科用ゲル製剤は、シリンジおよび針によって適用され、ここで針は、鼓膜に通して挿入され、正円窓または蝸牛窓稜の領域に誘導される。その後、耳科用ゲル製剤は、自己免疫性の耳障害の局部的処置のために正円窓または蝸牛窓稜上またはその近くにで堆積させられる。他の実施形態では、耳科用ゲル製剤は、患者へと移植されたマイクロカテーテルを介して適用され、またさらなる実施形態では、耳科用ゲル製剤は、正円窓膜上またはその近くにポンプ装置を介して投与される。またさらなる実施形態では、耳科用ゲル製剤は、マイクロインジェクションデバイスを介して正円窓膜に又はその近くに適用される。また他の実施形態では、耳科用ゲル製剤は、鼓室へと適用される。幾つかの実施形態では、耳科用ゲル製剤は、鼓膜上に適用される。さらに他の実施形態では、耳科用ゲル製剤は、耳道上へと又は耳道に適用される。
<制御放出製剤>
一般に、制御放出性薬物製剤は、身体内の放出の部位および放出の時間に対する薬物の放出の制御を与える。本明細書で議論されるように、制御放出は、即時放出、遅延放出、徐放、持続放出、可変放出、パルス放出および二峰性放出(bi-modal release)を指す。多くの利点が制御放出によって提示される。第1に、医薬品の制御放出によって、それほど頻繁に薬注する必要がなくなり、それ故、処置の繰り返しが最小限にされる。第2に、制御放出は、結果としてより効率的な薬物利用につながり、残基として残る化合物はより少なくなる。第3に、制御放出は、送達デバイスによる薬物送達の局所化または疾患の部位での製剤の可能性を提示する。またさらに、制御放出は、各々は特有の放出プロフィールを有する、2つ以上の異なる薬物を投与および放出する機会、または単一の投与ユニット(dosage unit)によって、異なる割合で又は異なる持続期間の間、同じ薬物を放出する機会を提示する。
したがって、本明細書に開示される実施形態の一態様は、自己免疫疾患及び/又は炎症性障害の処置のための制御放出性のTrkBまたはTrkCのアゴニストの耳に許容可能な組成物またはデバイスを提供することである。本明細書に開示される組成物及び/又は製剤及び/又はデバイスの制御放出態様は、限定されないが、内耳または他の耳構造における使用に許容可能である賦形剤、薬剤または物質を含む、様々な薬剤によって与えられる。ほんの一例として、そのような賦形剤、薬剤または物質は、耳に許容可能なポリマー、耳に許容可能な粘度増強剤、耳に許容可能なゲル、耳に許容可能な塗料、耳に許容可能な泡、耳に許容可能なキセロゲル、耳に許容可能なマイクロスフェアまたは微粒子、耳に許容可能なヒドロゲル、耳に許容可能なインサイツ形成海綿状物質、耳に許容可能な化学線硬化性ゲル、耳に許容可能な溶媒放出ゲル、耳に許容可能なリポソーム、耳に許容可能なナノカプセルまたはナノナノスフェア、耳に許容可能な熱可逆性ゲル、またはそれらの組み合わせを含む。
<耳に許容可能なゲル>
時にゼリーと呼ばれるゲルは、様々な方法で定義されている。例えば、米国薬局方は、ゲルを、液体が浸み込んだ小さな無機粒子または大きな有機粒子のいずれかで構成された懸濁液から成る半固体系として定義している。ゲルは、単相系または二相系を含む。単相ゲルは、分散した巨大分子と液体との間に明らかな境界が存在しないような方法で、液体全体に均一に分布された有機巨大分子から成る。幾つかの単相ゲルは、合成巨大分子(例えば、カルボマー)または天然ゴム(例えば、トラガント)から調製される。幾つかの実施形態では、単相ゲルは、一般的に水性であるが、アルコールおよび油を用いても作られる。二相ゲルは、小さな別々の粒子のネットワークから成る。
ゲルはまた、疎水性または親水性として分類され得る。特定の実施形態では、疎水性ゲルの基剤は、コロイド状シリカ、アルミニウム石鹸、または亜鉛石鹸でゲル化した、ポリエチレンを有する液体パラフィンまたは脂肪油から成る。対照的に、親水性ゲルの基剤は、適切なゲル化剤(例えば、トラガント、デンプン、セルロース誘導体、カルボキシビニルポリマー、およびケイ酸アルミニウムマグネシウムでゲル化した、通常、水、グリセロール、またはプロピレングリコールから成る。特定の実施形態では、本明細書に開示される組成物またはデバイスのレオロジー(rheology)は、擬塑性、塑性、揺変性、または膨張性である。
一実施形態では、増強した粘度の本明細書に記載される耳に許容可能な製剤は、室温では液体でない。特定の実施形態では、増強した粘度の製剤は、室温と体温との間の相転移を特徴とする(例えば、最大約42℃までで、深刻な熱を持った個体を含む)。幾つかの実施形態では、相転移は、体温より1℃下で、体温より2℃下で、体温より3℃下で、体温より4℃下で、体温より6℃下で、体温より8℃下で、または体温より10℃下で生じる。幾つかの実施形態では、相転移は、体温より約15℃下で、体温より約20℃下で、または体温より約25℃下で生じる。具体的な実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約20℃、約25℃、または約30℃である。特定の実施形態では、本明細書に記載される製剤のゲル化温度(Tgel)は、約35℃、または約40℃である。一実施形態では、体温あたりでの本明細書に記載される製剤の投与は、耳科用製剤の鼓室内投与に関連する回転性めまいを減少させるか又は阻害する。体温の定義内には、健康な個体、または熱(最大42℃まで)を持った個体を含む、不健康な個体の体温が含まれる。幾つかの実施形態では、本明細書に記載される医薬組成物またはデバイスは、室温あたりで液体であり、室温で又は室温あたりで投与され、例えば回転性めまいなどの副作用を低減または改善する。
ポリオキシプロピレンおよびポリオキシエチレンから構成されるポリマーは、水溶液に組み入れられたときに熱可逆性ゲルを形成する。これらのポリマーは、体温に近い温度で液態からゲル状態まで変化する能力を有し、それ故、標的とした耳構造に適用される有用な製剤が可能となる。液態からゲル状態への相転移は、溶液中のポリマー濃度および成分に左右される。
ポロクサマー407(PF-127)は、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーから構成される非イオン性界面活性剤である。他のポロクサマーは、188(F-68グレード)、237(F-87グレード)、338(F-108グレード)を含む。ポロクサマーの水溶液は、酸、アルカリ、および金属イオンの存在下で安定している。PF-127は、13,000の平均モル質量を有する、一般式E106 P70 E106の市販のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマーである。ポリマーは、ポリマーのゲル化性を増強する適切な方法によってさらに精製され得る。それは、およそ70%のエチレンオキシドを含有しており、これはその親水性を構成している(accounts for)。それは、ポロクサマーABA型ブロックコポリマーのシリーズの1つであり、そのメンバーは、以下に示される化学式を共有する。
Figure 0007023461000015
コポリマーの濃縮溶液(>20%w/w)が、体温への加熱時に低粘度の透明溶液から固体ゲルまで変化させられるために、PF-127は特に興味深い。したがって、この現象は、ゲル製剤が、身体と接触させられたときに、半固体構造および持続放出徐放性デポー(sustained release depot)を形成することを示唆している。さらに、PF-127は、優れた可溶化能力および低毒性を有しており、それ故、薬物送達システムにとっての優れた培地であると考えられる。
代替的な実施形態では、サーモゲル(thermogel)は、PEG-PLGA-PEG トリブロックコポリマーである(Jeong etal, Nature (1997), 388:860-2; Jeong etal, J. Control. Release (2000), 63:155-63; Jeong etal, Adv. Drug Delivery Rev.(2002),54:37-51)。ポリマーは、約5%w/w乃至約40%w/wの濃度にわたってゾルーゲル挙動を示す。望まれる特性によって、PLGAコポリマー中のラクチド/グリコリドのモル比は、約1:1から約20:1の範囲に及ぶ。結果として生じるコポリマーは、水に可溶性であり、室温で自由流動性の液体を形成するが、体温でヒドロゲルを形成する。市販のPEG-PLGA-PEG トリブロックコポリマーは、Boehringer Ingelheimによって製造されたRESOMER RGP t50106である。この物質は、50:50のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)PGLAコポリマーから構成され、10%w/wのPEGであり、約6000の分子量を有している。
ReGel(登録商標)は、米国特許第6,004,573号、第6,117,949号、第6,201,072号、および第6,287,588号に記載されるような逆熱ゲル化特性を有する、低分子量の、生分解性ブロックコポリマーのクラスに関するMacroMed Incorporatedの商標名である。それはまた、係属中の米国特許出願第09/906,041号、第09/559,799号および第10/919,603号に開示される生分解性ポリマー薬物担体を含む。生分解性薬物担体は、ABA型またはBAB型のトリブロックコポリマーあるいはその混合物を含み、ここで、Aブロックは、比較的疎水性であり、生分解性ポリエステルまたはポリ(オルトエステル)を含み、Bブロックは、比較的親水性であり、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、前記コポリマーは、50.1重量%乃至83重量%の間の疎水性含量および17重量%乃至49.9重量%の間の親水性含量、並びに2000乃至8000ダルトンの間の総ブロックコポリマー分子量を有している。薬物担体は、正常な哺乳動物の体温より下の温度で水溶性を示し、可逆性熱ゲル化を受けて、その後、生理学的な哺乳動物の体温と等しい温度でゲルとして存在する。生分解性の疎水性Aポリマーブロックは、ポリエステルまたポリ(オルトエステル)を含み、そこで、ポリエステルは、D,L-ラクチド、D-ラクチド、L-ラクチド、D,L-乳酸、D-乳酸、L-乳酸、グリコリド、グリコール酸、ε-カプロラクトン、ε-ヒドロキシヘキサン酸、γ-ブチロラクトン、γ-ヒドロキシ酪酸、δ-バレロラクトン、δ-ヒドロキシバレリアン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、およびそれらのコポリマーから成る群から選択され、約600乃至3000ダルトンの間の平均分子量を有している、モノマーから合成される。親水性Bブロックセグメントは、好ましくは、約500乃至2200ダルトンの間の平均分子量を有しているポリエチレングリコール(PEG)である。
追加の生分解性の熱可塑性ポリエステルは、AtriGel(登録商標)(Atrix Laboratories,Inc.によって提供される)及び/又は、例えば、米国特許第5,324,519号;第4,938,763号;第5,702,716号;第5,744,153号;および第5,990,194号に開示されるものを含み、ここで、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは、熱可塑性ポリマーとして開示される。適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルの例としては、ポリラクチド、ポリグリコリド、ポリカプロラクトン、それらのコポリマー、それらのターポリマー、およびそれらの任意の組み合わせが挙げられる。そのような幾つかの実施形態では、適切な生分解性の熱可塑性ポリエステルは、ポリラクチド、ポリグリコリド、それらのコポリマー、それらのターポリマー、またはそれらの組み合わせである。一実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基を有している50/50のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約30重量%から約40重量%中に存在し;および約23,000乃至約45,000の平均分子量を有している。代替的に、別の実施形態では、生分解性の熱可塑性ポリエステルは、カルボキシ末端基のない75/25のポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)であり;組成物の約40重量%から約50重量%中に存在し;および約15,000乃至約24,000の平均分子量を有している。さらなる又は代替的な実施形態では、ポリ(DL-ラクチド-co-グリコリド)の末端基は、重合の方法に依存して、ヒドロキシル、カルボキシル、またはエステルのいずれかである。乳酸またはグリコール酸の重縮合は、末端のヒドロキシルおよびカルボキシルの基を有するポリマーを提供する。水、乳酸、またはグリコール酸との環式のラクチドまたはグリコリドの単量体の開環重合は、同じ末端基を有するポリマーを提供する。しかしながら、メタノール、エタノール、または1-ドデカノールなどの単官能アルコール(monofunctional alcohol)との環式モノマーの開環は、1つの水酸基および1つのエステル末端基を有するポリマーを提供する。1,6-ヘキサンジオールまたはポリエチレングリコールなどのジオールとの環式モノマーの開環重合は、ヒドロキシル末端基のみを有するポリマーを提供する。
熱可逆性ゲルのポリマー系が還元温度でより完全に溶解するため、可溶化の方法は、還元温度において必要とされる量のポリマーを使用される量の水に加える工程を含む。一般に、振盪によってポリマーを湿らせた後、混合物をキャップして約0-10°Cの冷室または一定温度の容器に置くことでポリマーを溶解させる。混合物を撹拌または振盪することで熱可逆性ゲルポリマーの急速な溶解を引き起こす。TrkBまたはTrkCのアゴニストと、緩衝液、塩および防腐剤などの様々な添加剤がその後加えられ、溶かされる。いくつかの例では、TrkBまたはTrkCのアゴニストおよび/または他の薬学的に有効な薬剤は、水に不溶性である場合に懸濁される。pHは適切な緩衝剤を加えることで調整される。正円窓膜の粘膜付着特性は、Carbopol(登録商標)934Pなどの正円窓膜の粘膜付着性カルボマーの組成物への取り込みによって、熱可逆性のゲルに随意に与えられる(Majithiya etal, AAPS PharmSciTech (2006), 7(3), p. E1; EP0551626。両文献とも開示のために参照により本明細書に組み込まれる)。
1つの実施形態では、粘度増強剤を加えて使用する必要のない耳に許容可能な医薬ゲル製剤がある。こうしたゲル製剤は少なくとも1つの薬学的に許容可能な緩衝液を組み込む。1つの態様において、TrkBまたはTrkCのアゴニストと薬学的に許容可能な緩衝液を含むゲル製剤がある。別の実施形態では、薬学的に許容可能な賦形剤または担体はゲル化剤である。
他の実施形態において、有用なTrkBあるいはTrkCのアゴニストの耳に許容可能な医薬製剤は、内リンパまたは外リンパに適切なpHを供給するために、1つ以上のpH調整剤あるいは緩衝剤をさらに含む。適切なpH調整剤または緩衝剤は、限定されないが、酢酸塩、炭酸水素塩、塩化アンモニウム、クエン酸塩、リン酸塩、その薬学的に許容可能な塩、およびその組み合わせ、またはその混合物を含む。そのようなpH調整剤と緩衝液は、約5から約9のpH、一実施形態では約6.5から約7.5の間のpHで、およびさらに別の実施形態では約6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、あるいは8.0のpHで組成物のpHを維持するのに必要な量で含まれる。1つの実施形態では、1つ以上の緩衝剤が本開示の製剤で利用される場合、これらは、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、および、例えば、約0.1%から約20%、約0.5%から約10%までの範囲の量で最終製剤中に存在する。本開示の特定の実施形態では、ゲル製剤に含まれる緩衝液の量は、ゲル製剤のpHが、中耳また内耳の天然緩衝系に干渉しないか、あるいは内リンパまた外リンパの天然pHに干渉しないような量であり:これは、TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤が蝸牛のどこで標的にされるかに依存する。いくつかの実施形態では、約10μMから約200mMの濃度の緩衝液がゲル製剤中に存在する。特定の実施形態では、約5mMから約200mMの濃度の緩衝液が存在する。特定の実施形態では、約20mMから約100mMの濃度の緩衝液が存在する。1つの実施形態では、弱酸性のpHの酢酸塩またはクエン酸塩のような緩衝液を有する。1つの実施形態では、緩衝剤は、約4.5-約6.5のpHを有する酢酸ナトリウム緩衝液である。1つの実施形態では、緩衝剤は、約5.0-約8.0または約5.5-約7.0のpHを有するクエン酸ナトリウム緩衝液である。
他の実施形態では、使用される緩衝液は、わずかに塩基性のpHのトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン、重炭酸塩、炭酸塩、あるいはリン酸塩である。1つの実施形態では、緩衝液は、約6.5-約8.5または約7.0-約8.0のpHを有する重炭酸ナトリウム緩衝液剤である。別の実施形態では、緩衝液は、約6.0-約9.0のpHを有するリン酸ナトリウム二塩基性緩衝液である。
さらに、rkBまたはTrkCのアゴニストと粘度増強剤を含む制御放出製剤あるいはデバイスが本明細書に記載される。適切な粘度増強剤としては、ほんの一例として、ゲル化剤および懸濁化剤が挙げられる。1つの実施形態では、粘度を増強する製剤は緩衝液を含んでいない。他の実施形態では、粘度を増強する製剤は薬学的に許容可能な緩衝液を含んでいる。必要に応じて、塩化ナトリウムまたは他の等張化剤が張性を調節するために随意に使用される。
ほんの一例として、耳に許容可能な粘性薬剤は、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、ヒアルロン酸ナトリウムを含む。標的とされた耳構造と適合する他の粘度増強剤としては、限定されないが、アカシア(アラビアゴム)、寒天、ケイ酸マグネシウムアルミニウム、アルギン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ヒバマタ、ベントナイト、カルボマー、カラギーナン、Carbopol、キサンタン、セルロース、微結晶性セルロース(MCC)、セラトニア、キチン、カルボキシメチル化キトサン、ツノマタ、デキストロース、ファーセレラン、ゼラチン、ガハッチゴム、グアーガム、ヘクトライト、ラクトース、スクロース、マルトデキストリン、マンニトール、ソルビトール、ハチミツ、トウモロコシデンプン、コムギデンプン、コメデンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、アラヤゴム、キサンタンガム、トラガカントゴム、エチルセルロース、エチルヒドロキシエチルセルロース、エチルメチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリ(ヒドロキシエチルメタクリレート)、オキシポリゼラチン、ペクチン、ポリゲリン、ポビドン、炭酸プロピレン、メチルビニルエーテル/無水マレイン酸共重合体(PVM/MA)、ポリ(メトキシエチルメタクリレート)、ポリ(メトキシエトキシエチルメタクリレート)、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)カルボキシルメチルセルロースナトリウム(CMC)、二酸化ケイ素、ポリビニルピロリドン(PVP:ポビドン)、Splenda(登録商標)(デキストロース、マルトデキストリン、およびスクラロース)またはそれらの組み合わせが挙げられる。特定の実施形態では、粘度を増強する賦形剤はMCCとCMCの組み合わせである。別の実施形態では、粘度増強剤はカルボキシメチル化キトサンまたはキチンとアルギン酸塩の組み合わせである。本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストと、キチンおよびアルギン酸塩の組み合わせは、制御放出製剤として作用し、製剤からのTrkBまたはTrkCのアゴニストの拡散を制限する。さらに、カルボキシメチル化キトサンとアルギン酸塩の組み合わせは、正円窓膜を通るTrkBまたはTrkCのアゴニストの透過性を増加させるのを助長するために随意に使用される。
いくつかの実施形態において、増強された粘性製剤は、約0.1mM-約100mMのTrkBまたはTrkCのアゴニスト、薬学的に許容可能な粘性薬剤、および注入のための水を含み、水の中の粘性薬剤の濃度は約100から約100,000cPのまでの最終粘度を、増強された粘性製剤に与えるのに十分なものである。特定の実施形態では、ゲルの粘度は、約100から約50,000cP、約100cPから約1,000cP、約500cPから約1500cP、約1000cPから約3000cP、約2000cPから約8,000cP、約4,000cPから約50,000cP、約10,000cPから約500,000cP、約15,000cPから約1,000,000cPまでの範囲である。他の実施形態において、さらに粘着性の強い媒体が望ましい場合、生体適合性のゲルは、TrkBまたはTrkCアゴニストの少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約75重量%、あるいは少なくとも約80重量%程度を含む。高濃縮サンプルでは、生体適合性の増強された粘性製剤は、TrkBまたはTrkCアゴニストの少なくとも約25重量%、少なくとも約35重量%、少なくとも約45重量%、少なくとも約55重量%、少なくとも約65重量%、少なくとも約75重量%、少なくとも約85重量%、少なくとも約90重量%、あるいは少なくとも約95重量%以上を含む。
いくつかの実施形態において、本明細書で提示されるゲル製剤の粘度は記載される任意の手段によって測定される。例えば、いくつかの実施形態では、LVDV-II+CPCone Plate Viscometer とCone Spindle CPE-40を用いて本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。他の実施形態では、Brookfield(スピンドルとカップ)粘度計を用いて、本明細書に記載されるゲル製剤の粘度を計算する。いくつかの実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は室温で測定される。他の実施形態では、本明細書で言及される粘度範囲は、体温(例えば、健康なヒトの平均体温)で測定される。
1つの実施形態では、薬学的に許容可能な増強された粘性の耳に許容可能な製剤は、少なくとも1つのTrkBあるいはTrkCのアゴニストと、少なくとも1つのゲル化剤とを含む。ゲル製剤の調製で使用される適切なゲル化剤としては、限定されないが、セルロース、セルロース誘導体、セルロースエーテル(例えば、カルボキシメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース)、グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、アルギン酸塩(例えばアルギン酸)、ケイ酸塩、デンプン、トラガント、カルボキシビニルポリマー、カラギーナン、パラフィン、ワセリン、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。他のいくつかの実施形態では、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(Methocel(登録商標))はゲル化剤として利用される。特定の実施形態では、本明細書に記載される粘度増強剤は、本明細書で提示されるゲル製剤のためのゲル化剤として利用される。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストは耳に許容可能な塗料として分注される。本明細書で使用されるように、塗料(膜形成剤としても知られている)は、溶媒、モノマーまたはポリマー、活性薬剤、および随意に1つ以上の薬学的に許容可能な賦形剤で構成される溶液である。組織への適用後、溶媒和物は、モノマーまたはポリマーとTrkBまたはTrkCのアゴニストで構成された薄いコーティングをあとに残して蒸発する。該コーティングはTrkBまたはTrkCのアゴニストを保護し、適用部位で固定された状態でこれらを維持する。これにより、失われることもあるTrkBまたはTrkCのアゴニストの量が減少し、呼応して被験体に送達される量が増える。非限定的な例として、塗料はコロジオン(例えば、Flexible Collodion(USP))や糖類シロキサンコポリマーと架橋剤を含む溶液を含んでいる。コロジオンはピロキシリン(ニトロセルロース)を含むエチルエーテル/エタノールの溶液である。塗布後、エチルエーテル/エタノールの溶液はピロキシリンの薄膜を残して蒸発する。糖類シロキサンコポリマーを含む溶液では、溶媒の蒸発が糖類シロキサンコポリマーの架橋結合を引き起こした後、糖類シロキサンコポリマーは被膜を形成する。塗料に関するさらなる開示については、主題に関して本明細書により組み込まれるRemington: The Science and Practice of Pharmacyを参照。本明細書において使用することが企図される塗料は、圧力波が耳を通って伝播するのを妨げることのないように、軟性である。さらに、塗料は、液体(つまり、溶液、懸濁液、またはエマルジョン)、半固体(つまり、ゲル、泡、ペースト、またはゼリー)、またはエアロゾルとして塗布されることもある。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストは制御放出泡として分注される。本明細書で開示される組成物中で使用される適切な発泡性の担体の例としては、限定されないが、アルギン酸塩とその誘導体、カルボキシメチルセルロースとその誘導体、コラーゲン、例えば、デキストラン、デキストラン誘導体、ペクチン、デンプン、付加的なカルボキシルおよび/またはカルボキサミド基を有するおよび/または親水性の側鎖を有するデンプンなどの加工デンプンを含む多糖類、セルロースとその誘導体、寒天とその誘導体、ポリアクリルアミドで安定化させた寒天、ポリエチレンオキシド、メタクリル酸グリコール、ゼラチン、キサンタンガムのようなゴム、グアーガム、カラヤゴム、ジェランガム、アラビアゴム、トラガントゴム、およびローカストビーンガム、またはこれらの組み合わせが挙げられる。さらに、前述の担体、例えば、アルギン酸ナトリウムの塩も適切である。製剤は随意に、界面活性剤または外用の噴霧剤を含む、泡の形成を促す発泡剤をさらに含む。適切な発泡剤の例としては、セトリミド、レシチン、石鹸、シリコーンなどが挙げられる。さらに、Tween(登録商標)のような市販の界面活性剤も適している。
いくつかの実施形態において、他のゲル製剤は、特定のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、使用される他の医薬品あるいは賦形剤/添加剤に応じて有用であり、そのようなものとして本開示の範囲内にあると考えられる。例えば、他の市販のグリセリンベースのゲル、グリセリン由来の化合物、共役したまたは架橋結合したゲル、マトリックス、ヒドロゲル、およびポリマー、同様に、ゼラチンおよびその誘導体、アルギン酸塩およびアルギン酸塩ベースのゲル、ならびに様々な天然および合成のヒドロゲルとヒドロゲル由来の化合物はすべて、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤に役立つと予想される。いくつかの実施形態では、耳に許容可能なゲルとしては、限定されないが、アルギン酸塩ヒドロゲルSAF(登録商標)-ゲル(ConvaTec,Princeton、N.J.)、Duoderm(登録商標)Hydroactive Gel(ConvaTec)、Nu-gel(登録商標)(Johnson & Johnson Medical,Arlington、Tex.);Carrasyn(登録商標)(V)Acemannan Hydorogel(Carrington Laboratories,Inc.,Irving、Tex.);グリセリン・ゲルElta(登録商標)Hydrogel(Swiss-American Products, Inc., Dallas, Tex.)、およびK-Y(登録商標)Sterile(Johnson & Johnson)。さらなる実施形態では、生分解性の生体適合性のゲルは、本明細書で記載および開示される耳に許容可能な製剤中に存在する化合物を表す。
哺乳動物への投与のために、およびヒトへの投与のために処方される組成物向けに開発されたいくつかの製剤では、耳に許容可能なゲルは、実質的に全重量の組成物を含む。他の実施形態では、耳に許容可能なゲルは約98重量%または約99重量%もの組成物を含む。実質的に流体ではないか、あるいは実質的に粘着性の製剤が必要な場合に、これは望ましい。さらなる実施形態では、わずかに粘着性の弱いまたはわずかに流動性の強い耳に許容可能な医薬ゲル製剤が望ましい場合、製剤の生体適合性のゲル部分は、少なくとも約50重量%、少なくとも約60重量%、少なくとも約70重量%、少なくとも約80重量%もの、または少なくとも90重量%の化合物を含む。こうした範囲内の中間の整数は本開示の範囲内であると企図され、複数の他の実施形態では、さらにより流動性の強い(従って粘性の弱い)耳に許容可能なゲル組成物、例えば、混合物のゲルまたはマトリックス成分が約50重量%以下、約40重量%以下、約30重量%以下、または、約15重量%以下、または約20重量%以下の化合物を含む組成物が処方される。
耳に許容可能な懸濁化剤
1つの実施形態において、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストは薬学的に許容可能な増強された粘性製剤に含まれ、ここで、該製剤は少なくとも1つの懸濁化剤を含み、懸濁化剤は製剤に制御放出特性を与える際に役立つ。いくつかの実施形態において、懸濁化剤は耳に許容可能なTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤と組成物の粘性を増加させる役目も果たす。
懸濁化剤としては、ほんの一例として、ポリビニルピロリドン、例えば、ポリビニルピロリドンK12、ポリビニルピロリドンK17、ポリビニルピロリドンK25、あるいはポリビニルピロリドンK30、ビニルピロリドン/酢酸ビニル共重合体(S630)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(ヒプロメロース)、ヒドロキシメチルセルロースアセテートステアラート、ポリソルベート80、ヒドロキシエチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ゴム、例えば、トラガカントゴムおよびアラビアガム、グアーガム、キサンタンガムを含むキサンタンなど、砂糖、セルロース化合物、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースなど、ポリソルベート80、アルギン酸ナトリウム、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポリエトキシル化ソルビタンモノラウレート、ポビドンなどが挙げられる。いくつかの実施形態では、有用な水性懸濁液は懸濁化剤として1つ以上のポリマーをさらに含む。有用なポリマーは、セルロース酸ポリマー(例えばヒドロキシプロピルメチルセルロース)などの水溶性ポリマーと、架橋したカルボキシル含有ポリマーなどの不水溶性のポリマーを含む。
1つの実施形態では、本開示は、ヒドロキシエチルセルロースゲル中にTrkBまたはTrkCのアゴニストの治療上有効な量を含む耳に許容可能なゲル組成物を提供する。ヒドロキシエチルセルロース(HEC)は、水中で再構成される乾燥粉末として、または所望の粘性(一般に約200cps~約30,000cps、約0.2~約10%のHECに相当する)を与える水性の緩衝液として得られる。1つの実施形態では、HECの濃度は、約1%~約15%、約1%~約2%、または約1.5%~約2%である。
他の実施形態において、ゲル製剤と粘度を増強する製剤を含む耳に許容可能な製剤は、賦形剤、他の薬剤または医薬品、担体、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤およびこれらの組み合わせをさらに含む。
耳に許容可能な化学線硬化性ゲル
他の実施形態において、標的とされた耳構造へのあるいはその付近での投与、化学線(あるいは、UV光、可視光あるいは赤外光を含む光)の使用後に、所望のゲル特性が形成されるように、ゲルは化学線硬化性ゲルである。ほんの一例として、光ファイバーが、所望のゲル特性を形成するために化学線を提供するように使用される。いくつかの実施形態では、光ファイバーとゲル投与デバイスは単一のユニットを形成する。他の実施形態では、光ファイバーとゲル投与デバイスは別々に提供される。
耳に許容可能な溶媒放出ゲル
いくつかの実施形態では、ゲルは溶媒放出ゲルであり、そのため、標的とされる耳構造またはその付近への投与の後に所望のゲル特性が形成され、すなわち、注入されるゲル製剤中の溶媒がゲルを拡散すると、所望のゲル特性が形成される。例えば、ショ糖酢酸イソ酪酸エステル、薬学的に許容可能な溶媒和物、1つ以上の添加剤、およびTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む製剤は、正円窓膜であるいはその近くで投与され、注入された製剤からの溶媒の拡散は、所望のゲル特性を有するデポー剤を提供する。例えば、溶媒が注入された製剤から迅速に拡散するとき、水溶性の溶媒を用いることで高粘度のデポー剤が得られる。他方で、疎水性の溶媒(例えば安息香酸ベンジル)を用いると、粘着性の低いデポー剤が得られる。耳に許容可能な溶媒放出ゲル製剤の1つの例は、DURECT Corporationから発売されているSABER(商標)Delivery Systemである。
耳に許容可能なインサイツ形成海綿状材料
さらに、内耳あるいは中耳内においてインサイツで形成される海綿状材料の使用が、実施形態の範囲内で企図される。いくつかの実施形態において、海綿状材料はヒアルロン酸またはその誘導体から形成される。海綿状材料にTrkBまたはTrkCのアゴニストをしみ込ませ、中耳の中へ入れることで中耳内でのTrkBまたはTrkCのアゴニストの制御放出がもたらされるか、あるいは正円窓膜に接触させることで内耳にTrkBまたはTrkCのアゴニストの制御放出がもたらされる。いくつかの実施形態において、海綿状材料は生物分解性である。
正円窓膜の粘膜付着性
さらに、本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤と組成物とデバイスを用いて正円窓膜の粘膜付着性を加えることが、実施形態の範囲内で企図される。用語「粘膜付着」は、3層の正円窓膜の外部膜などの生体膜のムチン層に結合する材料に使用される。正円窓膜の粘膜付着性ポリマーとして役立つために、ポリマーは、多くの水素結合形成基に対する顕著にアニオン性の親水性、粘液/粘膜の組織表面を湿らせるのに適切な表面特性、あるいは粘液ネットワークに浸透する十分な柔軟性などのいくつかの一般的な生理化学的な特徴を有する。
耳に許容可能な製剤と共に使用される正円窓膜用の粘膜付着剤としては、限定されないが、少なくとも1つの可溶性のポリビニルピロリドンポリマー(PVP);水膨潤可能であるが不水溶性の、繊維状の、架橋されたカルボキシ機能性ポリマー;架橋されたポリ(アクリル酸)(例えば、Carbopol(登録商標)947P);カルボマーホモポリマー;カルボマーコポリマー;親水性の多糖類ゴム、マルトデキストリン、架橋されたアルギン酸ゴム・ゲル、水分散可能なポリカルボキシル化ビニルポリマー、二酸化チタン、二酸化ケイ素、および粘土、あるいはこれらの混合物からなる群から選択された少なくとも2つの微粒子成分が挙げられる。正円窓膜用の粘膜付着剤は、耳に許容可能な粘性を増加させる賦形剤と組み合わせて随意に使用されるか、あるいは粘膜層の標的耳成分との組成物の相互作用を増加させるために単独で使用される。1つの非限定的な例において、粘膜付着性の薬剤はマルトデキストリンである。いくつかの実施形態において、粘膜付着剤はアルギン酸ゴムである。組成物に与えられた正円窓膜の粘膜付着性の特徴は、使用される際、例えば、粘膜を覆う量で、正円窓膜の粘膜層あるいは蝸牛窓稜に、TrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物の有効な量を送達し、その後、ほんの一例として、内耳の前庭および/または蝸牛構造を含む影響を受けた領域に組成物を送達するのに十分なレベルである。使用時、本明細書で提供される組成物の粘膜付着特性が決定され、この情報を(本明細書で提供される他の教示とともに)用いて、適切な量が決定される。十分な粘膜付着性を判定するための1つの方法は、限定されないが、粘膜付着性の賦形剤のある状態とない状態とで組成物の滞留時間あるいは保持時間の変化を測定する工程を含む、粘膜層を有する組成物の相互作用の変化をモニタリングする工程を含む。
粘膜付着剤は、例えば、U.S. Patent Nos.6,638,521、6,562,363、6,509,028、6,348,502、6,319,513、6,306,789、5,814,330、および4,900,552に記載されており、これらの各々は開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
別の制限しない例において、粘膜付着剤は、組成物ここで、例えば二酸化チタン、二酸化ケイ素および粘土から選択された少なくとも2つの微粒子の成分である、さらにない、二酸化ケイ素の投与とレベルに先立った任意の液体で薄くなった、場合、現在、約3%から約15%まである、組成物の重量によって。二酸化ケイ素は、もし存在する場合、いぶされた二酸化ケイ素、沈殿した二酸化ケイ素、コアセルベート化された二酸化ケイ素、ゲル二酸化ケイ素、およびこれらの混合物を含んでいる。粘土は、存在する場合、カオリン鉱物、蛇紋石無機質、スメクタイト、イライトあるいはこれらの混合物を含んでいる。例えば、粘土はラポナイト、ベントナイト、ヘクトライト、サポナイト、モンモリロナイトあるいはこれらの混合物を含んでいる。
1つの非限定的な例において、正円窓膜用の粘膜付着剤はマルトデキストリンである。マルトデキストリンは、トウモロコシ、ジャガイモ、小麦、あるいは他の植物生成物に随意に由来するデンプンの加水分解によって生成された炭水化物である。マルトデキストリンは本明細書で開示される組成物に粘膜付着特性を与えるために、随意に単独で、あるいは他の正円窓膜用の粘膜付着剤と組み合わせて使用される。1つの実施形態において、マルトデキストリンとcarbopolポリマーの組み合わせは、本明細書で開示される組成物あるいはデバイスの正円窓膜用の粘膜付着特性を増加させるために使用される。
別の実施形態では、正円窓膜用の粘膜付着剤は、アルキル-グリコシドのおよび/または糖類アルキルエステルである。本明細書で使用されるように、「アルキル-グリコシド」は、疎水性のアルキルに結合された任意の親水性の糖類(例えば、スクロース、マルトースあるいはグルコース)も含む化合物を意味する。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシドは、アミド結合、アミン結合、カルバマート結合、エーテル結合、チオエーテル結合、エステル結合、チオエステル結合、グリコシド結合、チオグリコシド結合、および/または、ウレイド結合によって、疎水性のアルキル(例えば、約6-約25の炭素原子を含むアルキル)に結合された砂糖を含む。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤は、ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-、あるいはβ-Dマルトシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-あるいはβ-D-グルコシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ノニル-、デシル-、ウンデシル-、ドデシル-、トリデシル-、テトラデシル-、ペンタデシル-、ヘキサデシル-、ヘプタデシル-、およびオクタデシルα-あるいはβ-D-スクロシド;ヘキシル-、ヘプチル-、オクチル-、ドデシル-、トリデシル-、およびテトラデシル-β-D-チオマルトシド;ドデシルマルトシド;ヘプチル-あるいはオクチル-1-チオ-α-あるいはβ-D-グルコピラノシド;アルキルチオスクロース;アルキルマルトトリオシド;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミド;アミド結合によってアルキル鎖に結合したパラチノーゼまたはイソマルトアミンの誘導体、および尿素によってアルキル鎖に結合したイソマルトアミンの誘導体;スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸ウレイドと、スクロースβ-アミノ-アルキルエーテルの長鎖脂肪族炭酸アミドである。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシドは、グリコシド結合によって9-16の炭素原子(例えば、ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル・スクロシド;ノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシル・グルコシド;ならびにノニル-、デシル-、ドデシル-、およびテトラデシルマルトシド)のアルキル鎖に結合した、マルトース、スクロース、グルコースあるいはこれらの組み合わせである。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシドは、ドデシルマルトシド、トリデシルマルトシドおよびテトラデシルマルトシドである。
いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシドは少なくとも1つのグルコースを有する二糖であるいくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤は、α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシド、n-ドデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシド、および/またはn-テトラデシル-4-O-α-D-グルコピラノシル-β-グリコピラノシドを含む界面活性剤である。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここでアルキル・グリコシドは、純水あるいは水溶液中に約1mM未満の臨界ミセル濃度(CMC)を有する。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシド内の酸素原子は硫黄原子で置換される。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシドはβアノマーである。いくつかの実施形態において、正円窓膜用の粘膜付着剤はアルキル・グリコシドであり、ここで、アルキル・グリコシド、βアノマーの90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、99.1%、99.5%、あるいは99.9%を含む。耳に許容可能な制御放出粒子
本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストおよび/または他の医薬品は、TrkBまたはTrkCのアゴニストの局所送達を増強するか促進する、制御放出粒子、脂質複合体、リポソーム、ナノ粒子、微粒子、マイクロスフェア、コアセルベート、ナノカプセル剤、あるいは他の薬剤内に随意に組み込まれる。いくつかの実施形態において、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストが存在する単一の増強された粘性製剤が使用され、他の実施形態では、少なくともTrkBまたはTrkCのアゴニストが存在する、2つ以上の明確な増強された粘性製剤の混合物を含む医薬製剤が使用される。いくつかの実施形態において、ゾル、ゲル、および/または、生体適合性のマトリックスの組み合わせは、制御放出TrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物あるいは製剤の望ましい特性を提供するために使用される。ある実施形態では、制御放出TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤あるいは組成物は、組成物の特性を変更あるいは改善するために1つ以上の薬剤によって架橋される。
本明細書で開示される医薬製剤に関連するマイクロスフェアの例としては、以下が挙げられる:Luzzi, L. A., J. Pharm. Psy. 59:1367 (1970); U.S. Pat. No. 4,530,840; Lewis, D. H., “Controlled Release of Bioactive Agents from Lactides/Glycolide Polymers” in Biodegradable Polymers as Drug Delivery Systems, Chasin, M. and Langer, R., eds., Marcel Decker (1990); U.S. Pat. No. 4,675,189; Beck et al., “Poly(lactic acid) and Poly(lactic acid-co-glycolic acid) Contraceptive Delivery Systems,” in Long Acting Steroid Contraception, Mishell, D. R., ed., Raven Press (1983); U.S. Pat. No. 4,758,435; U.S. Pat. No. 3,773,919; U.S. Pat. No. 4,474,572。マイクロスフェアとして製剤されるタンパク質治療薬の例としては、以下が挙げられる:U.S. Pat. No. 6,458,387; U.S. Pat. No. 6,268,053; U.S. Pat. No. 6,090,925; U.S. Pat. No. 5,981,719; and U.S. Pat. No. 5,578,709。これらは開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
マイクロスフェアは通常球形であるが、不規則に形作られた微粒子も起こり得る。マイクロスフェアはサブミクロンから1000ミクロンの直径までサイズが異なることがある。本明細書で開示される耳に許容可能な製剤とともに使用するのに適しているマイクロスフェアは、サブミクロンから250ミクロンの直径のマイクロスフェアであり、標準的なゲージ針を用いる注入による投与を可能にしている。耳に許容可能なマイクロスフェアは、注入可能な組成物中で使用するのに許容可能な大きさの範囲のマイクロスフェアを背勢するあらゆる方法によって調製される。注入は、液体組成物を投与するために使用される標準的なゲージ針で随意に実行される。
耳に許容可能な制御放出粒子中で使用されるポリマーマトリックス材料の適切な例としては、本明細書にポリ(グリコール酸)およびポリ-d,l-乳酸、ポリ-l-乳酸、前述のもののコポリマー、ポリ(脂肪族カルボン酸)、コポリオキシラート、ポリカプロラクトン、ポリジオキサノン、ポリ(オルトカルボナート)、ポリ(アセタール)、ポリ(乳酸カプロラクトン)、ポリオルトエステル、ポリ(グリコール酸カプロラクトン)、ポリジオキサノン、ポリ酸無水物、ポリホスファチジン、およびアルブミン、カゼイン、ならびにグリセロール・モノステアラートおよびジステアラートなどの複数のワックスを含む天然のポリマーなどが挙げられる。様々な市販のポリ(ラクチド-co-グリコリド)材料(PLGA)は、本明細書で開示される方法で随意に使用される。例えば、ポリ(d,l-乳酸-co-グリコール酸)は、RESOMER RG 503HとしてBoehringer-Ingelheimから市販で入手可能である。この製品は50%のラクチドと50%のグリコリドのモルパーセント組成物を有する。これらのコポリマーは、グリコール酸対乳酸の広範な分子量と比率において利用可能である。1つの実施形態は、ポリマー・ポリ(d,l-ラクチド-co-グリコリド)の使用を含む。こうしたコポリマー中のラクチド対グリコリドのモル比は、約95:5~約50:50の範囲を含む。
ポリマーマトリックス材料の分子量は非常に重要である。分子量は、満足なポリマー・コーティングを形成するように十分に多くなければならず、つまり、ポリマーは優れた膜形成剤でなければならない。通常、満足な分子量は5,000~500,000ダルトンの範囲である。ポリマーの分子量は、分子量がポリマーの生分解速度に影響を及ぼすという観点から重要である。薬物放出の拡散メカニズムについて、すべての薬が微粒子から放出されて分解するまで、ポリマーは無傷のままでなければならない。TrkBまたはTrkCのアゴニストはさらに、ポリマー賦形剤が生体浸食されると、微粒子から放出される。ポリマー材料の適切な選択によって、マイクロスフェア製剤は、結果として生じるマイクロスフェアが拡散放出と生分解剥離の両方の特性を示すように、調製される。これは多相放出パターンを与える際に役立つ。
化合物がマイクロスフェアでカプセル化される様々な方法が知られている。これらの方法では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは一般に、壁を生ずる材料を含む溶媒和物中で、撹拌機、掻き混ぜ機、あるいは他の動的な混合技術を駆使して、分散されるか乳化される。その後、溶媒はマイクロスフェアから取り除かれ、その後、マイクロスフェア製品が得られる。
1つの実施形態において、制御放出TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニストおよび/または他の医薬品の、エチレン酢酸ビニル共重合体マトリックスへの取り込みによって作られる。(U.S. Patent No. 6,083,534を参照。この文献は開示のために本明細書に組み込まれる)。別の実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストは、ポリ(乳酸グリコール酸)またはポリ-L-乳酸マイクロスフェアに組み入れられる。Id。さらに別の実施形態では、TrkBまたはTrkCのアゴニストはアルギン酸塩マイクロスフェアへカプセル化される。(U.S. Patent No. 6,036,978を参照。この文献は開示のために本明細書に組み込まれる)。TrkBまたはTrkCのアゴニスト化合物あるいは組成物をカプセル化するための生体適合性のメタクリレートベースのポリマーは、本明細書で開示される製剤と方法で随意に使用される。広範なメタクリレート・ベースポリマー系は、Evonikによって市販されているEUDRAGITポリマーなど、市販で入手可能である。メタクリル酸エステル重合体の1つの有用な態様は、様々なco-ポリマーを組み込むことにより、製剤の特性が変えられるということである。例えば、ポリ(アクリル酸-co-メタクリル酸メチル)微粒子は、ポリ(アクリル酸)中のカルボン酸基がムチンと水素結合を形成するため、増強された粘膜付着特性を示す(Park etal, Pharm. Res. (1987) 4(6):457-464)。アクリル酸とメタクリル酸メチルのモノマー間の比率の変動は、co-ポリマーの特性を調節する役割を果たす。メタクリレートベースの微粒子はタンパク質治療製剤中で使用されている(Naha et al, Journal of Microencapsulation 04 February, 2008 (online publication))。1つの実施形態において、本明細書に記載される粘度を増強した耳に許容可能な製剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニストマイクロスフェアを含み、ここで、マイクロスフェアは、メタクリル酸ポリマーまたはコポリマーから形成される。追加の実施形態では、本明細書に記載される粘度を増強した製剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニストマイクロスフェアを含み、ここで、マイクロスフェアは粘膜付着性である。TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む固体または中空の球へのポリマー材料またはマトリックスの取り込みあるいは沈着を含む他の制御放出系も、本明細書で開示される実施形態内に明示的に企図される。TrkBまたはTrkCのアゴニストの活性を著しく失うことなく利用可能な制御放出系のタイプは、本明細書で開示される教示、例、および原則を使用して決定される。
医薬品の従来のマイクロカプセル化プロセスの一例は、開示のために参照により本明細書に組み込まれるU.S. Pat. No. 3,737,337で示されている。カプセル化されるか埋め込まれるTrkBまたはTrkCのアゴニスト物質は、バイブレータと高速撹拌機などを含む(分散液の調製において)従来のミキサーを使用して、ポリマーの有機溶液中に溶かされるか、分散する(相A)。溶液または懸濁液にコア材料を含む相(A)の分散は、水相(B)において、高速ミキサー、振動ミキサー、あるいはスプレーノズルなどの従来のミキサーを再び使用して行われ、この場合、マイクロスフェアの粒径は、相(A)の濃度だけではなく、エマルジョン(emulsate)またはマイクロスフェアの大きさによって決定される。TrkBまたはTrkCのアゴニストのマイクロカプセル化のための従来の技術を用いて、しばしば比較的長時間のあいだ、攪拌、揺動、振動、または他の動力学的な混合技術によって、活性薬剤およびポリマーを含有する溶媒が不混和溶液中で乳化または分散されると、マイクロスフェアが形成される。
マイクロスフェアを作り上げるための方法は、U.S. Pat. No. 4,389,330,およびU.S. Pat. No. 4,530,840に記載されており、当該文献は開示のために参照することにより本明細書に組み込まれる。所望のTrkBまたはTrkCのアゴニストを適切な溶媒和物に溶かすか、分散させる。活性成分に相対する量で、ポリマーマトリクス材料を、薬剤を含有する培地に加えること、TrkBまたはTrkCのアゴニストを所望通りに充填する生成物が与えられる。随意に、TrkBまたはTrkCのアゴニストのマイクロスフェア生成物のすべての成分を、溶媒培地中で一緒に混ぜ合わせることができる。アゴニストとポリマーマトリックス材料に適切な溶媒和物としては、アセトンのような有機溶媒、クロロホルムのようなハロゲン化炭化水素、塩化メチレンなど、芳香族炭化水素化合物、ハロゲン化芳香族炭化水素化合物、環状エーテル、アルコール、酢酸エチルなどの有機溶媒が挙げられる。
溶媒和物中の成分の混合物は連続相処理培地内で乳化され、連続相処理培地とは、示された成分を包含する微小液滴の分散が連続相培地内で形成されるようなものである。当然ながら、連続相処理培地と有機溶媒とは不混和でなければならず、水を含んでいるが、キシレン、トルエン、合成油、天然油などの非水系の培地も随意に用いられる。随意に、マイクロスフェアが凝集するのを防止するために、および、エマルジョン中の溶媒の微小液滴のサイズを制御するために、界面活性剤が連続相処理培地に添加される。好ましい界面活性剤-分散培地の組み合わせは、水混合物中における1~10重量%のポリ(ビニルアルコール)である。分散液は、その混合された物質の機械的な攪拌によって形成される。エマルジョンは、連続相処理培地にTrkBまたはTrkCのアゴニスト壁成形材料溶液の小滴を加えることにより随意に形成される。エマルジョン形成中の温度は、特に重要ではないが、マイクロスフェアのサイズおよび性質と、連続相中の薬剤の溶解性とに影響を与える。連続相中のTrkBまたはTrkCのアゴニストをできるだけ少なくすることが望ましい。さらに、使用される溶媒と連続相処理培地によっては、温度は低すぎてはならず、さもなければ、溶媒と処理培地が凝固したり、または処理培地が実用的な目的には粘りがありすぎるか、粘着性が強すぎて処理培地が蒸発したり、または、流体処理培地が維持されなくなる。さらに、培地の温度は、マイクロスフェアに取り込まれている特定の薬剤の安定性が悪影響を受けるほど高くてはいけない。従って、分散プロセスは、安定な動作状態を保つ任意の温度で行われ、好ましい温度は、選択された薬物と賦形剤に依存して、約15℃~60℃である。
形成される分散液は安定したエマルジョンであり、この分散液から、有機的な溶媒不混和性の流体は随意に、溶剤除去プロセスの第1の工程で部分的に取り除かれる。溶媒は、加熱、減圧の適用、またはその両方の組み合わせなどの一般的な技術によって除去される。微小液滴から溶媒を蒸発させるために採用される温度は、重要ではないが、所定の微小粒子の調製に用いられるTrkBまたはTrkCのアゴニストを分解するほど高すぎてはならず、壁を形成する材料に欠陥を引起こすような急激な速度で溶媒を蒸発させるほど高すぎてもならない。通常、溶媒の5~75%が、第1の溶媒除去工程で除去される。
第1の段階の後、溶媒不混和流体培地中の分散した微粒子を、任意の適切な分離方法によって流体培地から単離させる。従って、例えば、流体は、マイクロスフェアからデカントされるか、マイクロスフェアの懸濁液はろ過される。必要に応じて、分離技術のさらに別の様々な組み合わせを用いる。
連続相処理培地からマイクロスフェアを単離させた後、マイクロスフェア中の溶媒の残りを抽出によって除去する。この段階で、マイクロスフェアは、界面活性剤と共に、または界面活性剤なく、第1の工程において使用された同じ連続相処理培地中に、あるいは別の液体中に、懸濁される。抽出培地は、マイクロスフェアから溶媒を除去するが、マイクロスフェアを溶解しない。抽出中、溶解された溶媒を含む抽出培地は随意に除去され、新しい抽出培地に取り替えられる。これは連続的に行うことが最良である。所定のプロセスの抽出培地補充の速度は変わり易く、工程が行われている時に決定され、従って、速度の正確な限界はあらかじめ定めてはならない。溶媒の大部分がマイクロスフェアから除去された後に、マイクロスフェアを空気にさらして、あるいは真空乾燥や乾燥剤による乾燥などの他の従来の乾燥技術によって乾燥させる。このプロセスは、最大で80重量%まで、好ましくは最大で60重量%までのコア充填(core loadings)が得られるため、TrkBまたはTrkCのアゴニストをカプセル化する際に効果的である。
代替的に、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む制御放出マイクロスフェアは、スタティックミキサーの使用によって調製される。あるいは、を含んでいる制御放出マイクロスフェアは静的ミキサーを用いて調製される。静的ミキサーあるいは静止型ミキサーは、多くの静的な混合剤を受ける導管あるいはチューブからなる。静的なミキサーは、比較的短い長さの導管の中で、かつ、比較的短時間で均質な混合を与える。静的なミキサーを用いると、ブレードなどのミキサーの一部分が流体を通って動くというよりも、流体がミキサーを通って移動する。
静的なミキサーは、エマルジョンを形成するために任意の方法で使用される。エマルジョンを形成するために静的なミキサーを使用する場合、混合される様々な溶液や相の密度や粘度、相の容積比、相の間の界面張力、静的なミキサーのパラメータ(導管の直径、混合要素の長さ;混合要素の数)、および静的なミキサーを通過する直線速度を含む複数の因子がエマルジョンの粒径を決定する。温度は、密度や、粘度、および界面張力に影響するので変数である。制御変数は、直線速度、ずり速度、および静的なミキサーの単位長さ当たりの圧力降下である。
静的なミキサープロセスを用いてTrkBまたはTrkCのアゴニストを含むマイクロスフェアを形成するために、有機相と水相を組み合わせる。有機相と水相は、ほとんどあるいは実質的に不混和であり、水相は、エマルジョンの連続相を形成する。有機相は、壁を形成するポリマーまたはポリマーマトリクス材料と同様に、TrkBまたはTrkCのアゴニストも含む。有機相は、有機溶媒または他の適切な溶媒中にTrkBまたはTrkCのアゴニストを溶解させることによって、あるいは、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む分散液またはエマルジョンを形成するによって、調製される。有機相と水相は、静的なミキサーを介して同時に流れ、それによって、ポリマーマトリクス材料内にカプセル化されたTrkBまたはTrkCのアゴニストを含有するマイクロスフェアを含むエマルジョンが形成されるように、ポンプで送り込まれる。有機相と水相は、有機溶媒を抽出あるいは除去するために、静的なミキサーを介して大量のクエンチ液にポンプで送り込まれる。有機溶媒は、マイクロスフェアがクエンチ液の中で洗浄あるいは攪拌されている間に、マイクロスフェアから任意の方法で除去される。マイクロスフェアをクエンチ液で洗浄した後、ふるいなどによって単離し、乾燥させる。
1つの実施形態では、マイクロスフェアは、静的なミキサーを用いて調製される。そのプロセスは、上述の溶媒抽出技術に限定されず、他のカプセル化技術も併せて使用される。例えば、その工程は随意に、相分離カプセル化技術と共に使用される。そうするために、ポリマー溶液の中に懸濁または分散したTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む有機相が調製される。非溶媒の第2相は、ポリマーおよび活性薬剤のための溶媒を含んでいない。好ましい非溶媒の第2相はシリコンオイルである。有機相と非溶媒の相は、静的なミキサーによってヘプタンなどの非溶媒のクエンチ液にポンプで送り込まれる。半固体の粒子は、完全な硬化と洗浄のためにクエンチされる。マイクロカプセル化のプロセスとしては、スプレー乾燥、溶媒蒸発、蒸発と抽出の組み合わせ、および溶融押出が挙げられる。
別の実施形態では、マイクロカプセル化プロセスは、単一の溶媒とともに静的なミキサーの使用を含む。このプロセスは、U.S. application Ser. No. 08/338,805に詳細に記載されており、当該文献は開示のために参照により本明細書に組み込まれる。代替的なプロセスは、共溶媒とともに静的なミキサーを使用することを含む。このプロセスでは、生分解性ポリマー充填剤とTrkBまたはTrkCのアゴニストとを含む生分解性マイクロスフェアが調製され、これは、薬剤とポリマーの両方を溶解させるためのハロゲン化炭化水素を含まず、少なくとも2つの実質的に無毒の溶媒の混合物を含んでいる。溶解した薬剤とポリマーを含む溶媒の混合物を水溶性の溶液中に分散させることで、液滴が形成される。その後、生成されたエマルジョンを、好ましくは混合物の溶媒の少なくとも1つを含む水性抽出培地に加え、それによって各溶媒の抽出速度を制御し、その後、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む生分解性のマイクロスフェアが形成される。水中の1つの溶媒の溶解性が他の溶媒とは実質的に無関係であり、溶媒の選択性が増えることから、とりわけ、抽出が困難な溶媒では、このプロセスには、必要とされる抽出培地が少なくて済むという利点がある。
本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストとともに用いられるナノ粒子も企図されている。ナノ粒子は、約100nm以下のサイズの材料構造である。粒子表面の溶媒との相互作用は、密度の相違を克服するほど十分に強いことから、医薬組成物におけるナノ粒子の1つの用途は、懸濁液の形成である。ナノ粒子懸濁液は、ナノ粒子が滅菌ろ過を受けるほどに十分小さいため、無菌化される(例えば、U.S. Patent No. 6,139,870参照。当該文献は開示のために参照により本明細書に組み込まれる)。ナノ粒子は、界面活性剤、リン脂質、または脂肪酸の溶液または水溶性分散液中に乳化した、少なくとも1つの疎水性の、水不溶性の、および水に分散しないポリマーまたはコポリマーを含む。TrkBまたはTrkCアゴニストは随意に、ポリマーまたはコポリマーと共にナノ粒子中に導入される。
正円窓膜を貫通し、内耳および/または中耳の標的に到達する、制御放出構造としての脂質ナノカプセルも本明細書で企図されている。脂質ナノカプセルは、カプリン酸およびカプリル酸トリグリセリド(Labrafac WL1349;avg.mw 512)、大豆レシチン(LIPOID(登録商標)S75-3; 69%のホスファチジルコリンおよび他のリン脂質)、界面活性剤(例えば、SOLUTOL HS15)、ポリエチレングリコール660ヒドロキシステアレートと遊離ポリエチレングリコール660の混合物;NaClおよび水を乳化させることによって随意に形成される。この混合物を室温で攪拌することで、水中のオイルエマルジョンが得られる。磁気攪拌下において4℃/minの速度で徐々に加熱した後、70℃近くで短期間の透明化が起こり、85℃で逆相(油中の水滴)が得られる。その後、冷却と加熱の3サイクルを4 ℃/minの速度で85℃と60℃の間で適用し、そして0℃近くの温度で冷たい水の中で急速に希釈させて、ナノカプセルの懸濁液が生成される。TrkBまたはTrkCのアゴニストをカプセル化するために、冷水で希釈する直前にアゴニストを随意に加える。
TrkBまたはTrkCのアゴニストはさらに、TrkBまたはTrkCのアゴニストの水溶性ミセル溶液を用いて90分間インキュベートすることにより、脂質ナノ粒子に導入される。懸濁液は、その後、15分毎にボルテックスされ(vortexed)、その後、1分間、氷水浴でクエンチされる。
適切な耳に許容可能な界面活性剤としては、ほんの一例として、コール酸またはタウロコール酸塩が挙げられる。タウロコール酸は、コール酸とタウリンから形成された抱合体であり、完全に代謝可能なスルホン酸の界面活性剤である。タウロコール酸のアナログである、タウロウルソデオキシコール酸(TUDCA)は、自然発生する胆汁酸であり、タウリンとウルソデオキシコール酸(UDCA)の抱合体である。他の自然発生する陰イオン性界面活性剤(例えば、硫酸ガラクトセレブロシド)、中性の界面活性剤(例えば、ラクトシルセラミド)、または双性イオン性界面活性剤(例えば、スフィンゴミエリン、ホスファチジルコリン、パルミトイルカルニチン)が、ナノ粒子を調製するために随意に使用される。
耳に許容可能なリン脂質は、一例として、例えば、天然、合成、または半合成のリン脂質から選択され、例えば、精製した卵または大豆レシチン(レシチンE100、レシチンE80およびホスホリポン、例えば、ホスホリポン90)などのレシチン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジパルミトイルホズファチジルコリン、ジパルミトイルグリセロホズファチジルコリン、ジミリストイルホズファチジルコリン、ジステアロイルホズファチジルコリン、およびホスファチジン酸、またはそれらの混合物が特に用いられる。
耳に許容可能な製剤と共に使用される脂肪酸は、一例として、ラウリン酸、ミリスチン酸(mysristic acid)、パルミチン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、アラギジン酸、ベヘン酸、オレイン酸、ミリストレイン酸、パルミトレイン酸、リノール酸、α-リノール酸、アラキドン酸、エイコサペンタエン酸、エルカ酸、ドコサヘキサエン酸などから選択される。
適切な耳に許容可能な界面活性剤は、既知の有機および無機の薬学的賦形剤から選択される。そのような賦形剤は様々なポリマー、低分子量オリゴマー、天然物および界面活性剤を含んでいる。好ましい表面改質剤は非イオンとイオン性界面活性剤を含んでいる。2つ以上の表面改質剤が併用して使用される。
耳に許容可能な界面活性剤の代表的な例としては、塩化セチルピリジニウム、ゼラチン、カゼイン、レシチン(リン脂質)、デキストラン、グリセリン、アラビアゴム、コレステロール、トラガカントゴム、ステアリン酸、ステアリン酸カルシウム、グリセロールモノステアレート、セトステアリルアルコール、セトマクロゴール乳化ろう、ソルビタンエステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル;ドデシルトリメチル臭化アンモニウム、ステアリン酸ポリオキシエチレン、コロイド状二酸化ケイ素、リン酸塩、ナトリウム硫酸ドデシル、カルボキシメチルセルロースカルシウム、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC、HPC-SLおよびHPC-L)、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル-セルロースフタル酸塩、非晶質セルロース、ケイ酸アルミニウムマグネシウム、トリエタノールアミン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、エチレンオキシドおよびホルムアルデヒドを備える4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-フェノールポリマー(チロキサポール、スペリオン(superione)、およびトリトンとしても知られている)、ポロクサマー、ポロキサミン、ジミリストイルホスファチジルグリセロールなどの荷電リン脂質、ジオクチルスルホコハク酸(DOSS);Tetronic(登録商標)1508、スルホコハク酸ナトリウムのジアルキルエステル、Duponol P、Tritons X-200、Crodestas F-110、p-イソノニルフェノキシポリ-(グリシドール)、Crodestas SL-40(Croda社);および、C1837CH(CON(CH)-CH(CHOH)(CHOH)であるSA9OHCO(Eastman Kodak Co.);デカノイル-N-メチルグルカミド;n-デシルβ-D-グルコピラノシド;n-デシルβ-D-マルトピラノシド(maltopyranoside);n-ドデシルβ-D-グルコピラノシド;n-ドデシルβ-D-マルトシド;ヘプタノイル-N-メチルグルカミド;n-ヘプチル-β-D-グルコピラノシド;n-ヘプチルβ-D-チオグルコシド(thioglucoside);n-ヘキシルβ-D-グルコピラノシド;ノナノイル-N-メチルグルカミド;n-noylβ-D-グルコピラノシド;オクタノイル-N-メチルグルカミド;n-オクチル-β-D-グルコピラノシド;オクチルβ-D-チオグルコピラノシド;などが挙げられる。これらの界面活性剤のほとんどは医薬用賦形剤として知られており、アメリカ薬剤師会(American Pharmaceutical Association)とイギリス薬学会(Pharmaceutical Society of Great Britain)によって共同で出版されたHandbook of Pharmaceutical Excipients, published jointly by the American Pharmaceutical Association and The Pharmaceutical Society of Great Britain (The Pharmaceutical Press, 1986)に詳細に記載されており、当該文献は開示のために参照により本明細書に組み込まれる。
疎水性で、水不溶性で、水非分散性のポリマーまたはコポリマーは、生体適合性かつ生分解性のポリマー、例えば、乳酸ポリマー若しくはグリコール酸ポリマーおよびそれらのコポリマー、あるいはポリ乳酸/ポリエチレン(またはポリプロピレン)オキシドコポリマーから、好ましくは、分子量が1000~200,000の、ポリヒドロキシブチル酸ポリマー、少なくとも12個の炭素原子を含む脂肪酸のポリラクトン、またはポリ酸無水物を含むものから選択される。
ナノ粒子は、リン脂質およびオレイン酸塩の水性の分散液または溶液から、コアセルベーションまたは溶剤の蒸発の技術によって得ることができ、その中に、活性な有効成分と、疎水性、水不溶性、および水に非分散性のポリマーまたはコポリマーを含む不混和性の有機相が加えられる。その混合物をあらかじめ乳化し、その後、均質化と有機溶媒の蒸発に晒すことで、超極小のナノ粒子の水性懸濁液が得られる。
実施形態の範囲内にあるTrkBまたはTrkCのアゴニストナノ粒子を作り出すために、様々な方法が随意に用いられる。これらの方法としては、自由噴流膨張、レーザー蒸発、放電加工、電子爆発および化学蒸着法のような気化法;溶媒置換後の機械的な研磨(例えば、「パールミリング(pearlmilling)」技術、Elan Nanosystems社)、超臨界CO2および界面沈殿を含む物理的方法が挙げられる。1つの実施形態では、溶媒置換方法が使用される。この方法によって生成されたナノ粒子のサイズは、有機溶媒中のポリマーの濃度;混合速度;およびプロセスで使用された界面活性剤に敏感である。連続流れミキサーは、小さな粒径を確保するために必要な乱流を与える。ナノ粒子を調製するために随意に使用される連続流れ混合デバイスの1つのタイプが記載されている(Hansen et al J phys Chem 92、2189-96, 1988)。他の実施形態では、超音波デバイス、フロースルー(flow through)ホモジナイザーまたは超臨界CO2デバイスが、ナノ粒子を調製するために使用されてもよい。
直接合成によって適切なナノ粒子の均質性が得られない場合、分子ふるいクロマトグラフィーを用いて均一性の高い薬物を含有する粒子を作成し、該粒子には生成に関与する他の成分が含まれていない。ゲルろ過クロマトグラフィーのような分子ふるいクロマトグラフィー(SEC)技術を駆使して、粒子に結合したTrkBまたはTrkCのアゴニストや他の医薬化合物を、遊離TrkBまたはTrkCのアゴニストあるいは他の医薬化合物から分離させるか、あるいは、TrkBまたはTrkCのアゴニストを含有するナノ粒子の適切なサイズ範囲を選択する。Superdex 200、Superose 6、Sephacryl 1000のような様々なSEC媒体が市販されており、このような混合物のサイズに基づく分画のために利用される。さらに、遠心分離、膜ろ過により、および、他の分子ふるいデバイス、架橋結合したゲル/材料、および膜の使用により、ナノ粒子を随意に精製する。
耳に許容可能なシクロデキストリンと他の安定化製剤
特定の実施形態において、耳に許容可能な製剤は代替的にシクロデキストリンを含む。シクロデキストリンは、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、またはγ-シクロデキストリンとそれぞれ呼ばれる、6、7、または8つのグルコピラノース単位を含む、環状のオリゴ糖である。シクロデキストリンは、水溶性を増強する親水性の外部と、空洞を形成する疎水性の内部を有する。水性の環境では、他の分子の疎水性部分はしばしばシクロデキストリンの疎水性の空洞に入って包接化合物を形成する。さらに、シクロデキストリンは、疎水性の空洞の内部にはない分子と他のタイプの非結合型の相互作用を行うこともできる。シクロデキストリンは、各グルコピラノース単位につき3つの遊離ヒドロキシル基、すなわち、α-シクロデキストリン上に18のヒドロキシル基、β-シクロデキストリン上に21のヒドロキシル基、およびγ-シクロデキストリン上に24のヒドロキシル基を有する。これらのヒドロキシル基の1つ以上は、ヒドロキシプロピルエーテル、ヒドロキシプロピルスルホン酸塩、およびヒドロキシプロピルスルホアルキルエーテルを含む、多種多様なシクロデキストリン誘導体を形成するために、多くの試薬のいずれかと反応させることができる。β-シクロデキストリンとヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)の構造を以下に示す。
Figure 0007023461000016
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される医薬組成物中のシクロデキストリンの使用は、薬の溶解性を改善する。包接化合物は、溶解性の強化の多くの例に関与するが、しかしながら、シクロデキストリンと不溶性の化合物との間の他の相互作用も溶解性を改善する。ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン(HPβCD)は、発熱物質を含まない生成物として市販されている。これは水に容易に溶ける非吸湿性の白色粉末である。HPβCDは熱的に安定しており、中性のpHでは分解しない。したがって、シクロデキストリンは、組成物または製剤中の治療薬の溶解性を改善する。これに応じて、いくつかの実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤内で耳に許容可能なTrkBまたはTrkCのアゴニストの溶解性を増加させるために含まれる。他の実施形態では、シクロデキストリンは、本明細書に記載される製剤内での制御放出賦形剤としても役立つ。
ほんの一例として、使用されるシクロデキストリン誘導体は、α-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、ヒドロキシエチルβ-シクロデキストリン、ヒドロキシプロピルγ-シクロデキストリン、硫酸化β-シクロデキストリン、硫酸化α-シクロデキストリン、スルホブチルエーテルβ-シクロデキストリンを含む。
本明細書で開示される組成物および方法で使用されるシクロデキストリンの濃度は、治療上有効な薬剤あるいはその塩またはプロドラッグ、あるいはその組成物中の他の賦形剤の特性に関連する生理化学的特性、薬物動態特性、副作用または有事事象、製剤考察(formulation consideration)、あるいは他の因子によって変化する。したがって、特定の状況下では、本明細書で開示される組成物と方法に合わせて使用されるシクロデキストリンの濃度または量は、必要に応じて変わる。使用時には、TrkBまたはTrKアゴニストの溶解性を高め、および/または本明細書中に記載される任意の製剤中の制御放出型賦形剤として機能するのに必要とされるシクロデキストリンの量は、本明細書中に記載される原理、実施例、および教示を用いて選択される。
本明細書で開示される耳に許容可能な製剤に有用な他の安定剤としては、例えば、脂肪酸、脂肪アルコール、アルコール、長鎖脂肪酸エステル、長鎖エーテル、脂肪酸の親水性誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、ポリビニルアルコール、炭化水素、疎水性ポリマー、吸湿性ポリマー、およびこれらの組み合わせが挙げられる。いくつかの実施形態では、安定化剤のアミドアナログも使用される。さらなる実施形態では、選択された安定化剤は、製剤の疎水性を変えるか(例えば、オレイン酸、ワックス)、あるいは、製剤中の種々の成分の混合を改善し(例えば、エタノール)、製剤(formula)中の水分レベルを制御し(例えば、PVPまたはポリビニルピロリドン)、相の移動を制御し(例えば、長鎖脂肪酸、アルコール、エステル、アミド等、またはそれらの混合物などの室温よりも高い融点を備える物質;ワックスの)、および/または、製剤の封入材料との親和性を改善する(例えば、オレイン酸、またはワックス)。別の実施形態では、こうした安定化剤のいくつかは溶媒/共溶媒として使用される(例えばエタノール)。他の実施形態において、安定化剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニストの分解を阻害するのに十分な量で存在する。そのような安定化剤の例としては、限定されないが、以下が挙げられる:(a)約0.5%~約2%w/vのグリセリン、(b)約0.1%~約1%w/vのメチオニン、(c)約0.1%~約2%w/vのモノチオグリセロール、(d)約1mM~約10mMのEDTA、(e)約0.01%~約2%w/vのアスコルビン酸、(f)0.003%~約0.02%w/vのポリソルベート80、(g)0.001%~約0.05%w/vのポリソルベート20、(h)アルギニン、(i)ヘパリン、(j)硫酸デキストラン、(k)シクロデキストリン、(l)ペントサンポリサルフェートおよび他のヘパリノイド、(m)マグネシウムと亜鉛などの2価カチオン;または(n)これらの組み合わせが挙げられる。
さらなる有用なTrkBまたはTrkCのアゴニストの耳に許容可能な製剤は、タンパク質凝集の率を下げることによりTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤の安定性を高めるために1つ以上の抗凝集添加剤を含んでいる。選択された抗凝集添加剤は、TrkBまたはTrkCのアゴニスト、例えば、TrkBまたはTrkCのアゴニスト抗体が晒される状態の性質に依存する。例えば、撹拌と熱応力を経る特定の製剤は、凍結乾燥と再構成を経る製剤とは異なる抗凝集添加剤を必要とする。有用な抗凝集添加剤は、ほんの一例として、尿素、塩化グアニジウム、グリシンまたはアルギニンなどの単純なアミノ酸、糖、多価アルコール、ポリソルベート、ポリエチレングリコールとデキストランのようなポリマー、アルキル・グリコシドなどのアルキル糖類、および界面活性剤を含む。
他の有用な製剤は、必要に応じて化学的安定性を増強するために1つ以上の耳に許容可能な抗酸化剤を随意に含む。適切な抗酸化剤としては、ほんの一例として、アスコルビン酸、メチオニン、チオ硫酸ナトリウム、およびメタ重亜硫酸ナトリウムが挙げられる。1つの実施形態では、抗酸化剤は、金属キレート剤、チオール含有化合物、および他の一般的な安定化剤から選択される。
さらに他の有用な組成物は、物理的安定性を高めるために、または他の目的のために、1以上の耳に許容可能な界面活性剤を含んでいる。適切な非イオン界面活性剤としては、限定されないが、ポリオキシエチレン脂肪酸グリセリドと植物油、例えば、ポリオキシエチレン(60)硬化ヒマシ油;および、ポリオキシエチレンアルキルエーテルとアルキルフェニルエーテル、例えば、オクトキシノール10、オクトキシノール40などが挙げられる。
いくつかの実施形態において、本明細書に記載される耳に許容可能な医薬製剤は、少なくとも約1日、少なくとも約2日、少なくとも約3日、少なくとも約4日、少なくとも約5日、少なくとも約6日、少なくとも約1週間、少なくとも約2週間、少なくとも約3週間、少なくとも約4週間、少なくとも約5週間、少なくとも約6週間、少なくとも約7週間、少なくとも約8週間、少なくとも約3カ月、少なくとも約4カ月、少なくとも約5カ月、または少なくとも約6カ月の期間にわたって化合物分解に対して安定している。他の実施形態では、本明細書に記載される製剤は、少なくとも約1週間の期間にわたって化合物の分解に関して安定している。さらに、少なくとも約1か月の期間にわたって化合物の分解に関して安定している製剤が本明細書に記載されている。
他の実施形態では、さらなる界面活性剤(共界面活性剤(co-surfactant))および/または緩衝剤は、界面活性剤および/または緩衝剤が、安定性のために最適なpHで生成物を維持するように、本明細書に前述される1以上の薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされる。適切な共界面活性剤としては、限定されないが、以下が挙げられる:a)天然および合成の親油性の薬剤、例えば、リン脂質、コレステロール、およびコレステロール脂肪酸エステルとそれらの誘導体;例えば、ポリオキシエチレン脂肪族アルコールエステル、ソルビタン脂肪酸エステル(Spans)、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル(例えば、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(Tween80)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(Tween60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(Tween 20)、および、他のTween、ソルビタンエステル、グリセリンエステル、例えば、Myrjおよびグリセリントリアセタート(トリアセチン)、ポリエチレングリコール、セチルアルコール、セトステアリルアルコール、ステアリルアルコール、ポリソルベート80、ポロクサマー、ポロキサミン、ポリオキシエチレンヒマシ油誘導体(例えばCremophor(登録商標)RH40、Cremphor A25、Cremphor A20、Cremophor(登録商標)EL)および他のCremophors、スルホコハク酸、アルキル硫酸塩(SLS);PEG-8カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(Labrasol)、PEG-4カプリル酸グリセリル/カプリン酸グリセリル(LabrafacヒドロWL 1219)、PEG-32ラウリン酸グリセリル(Gelucire 444/14)、PEG-6モノオレイン酸グリセリル(Labrafil M 1944 CS)、PEG-6リノール酸グリセリル(Labrafil M 2125 CS)などのPEGグリセリル脂肪酸エステル;ラウリン酸プロピレングリコール、カプリル酸プロピレングリコール/カプリン酸カプラートプロピレングリコールなどのプロピレングリコール・モノ-およびジ-脂肪酸エステル;Brij(登録商標)700、アスコルビル-6-パルミチン酸塩、ステアリルアミン、ラウリル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレングリセロールトリイリシンオレイン酸、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物を含む、非イオン性界面活性剤;c)陰イオン性界面活性剤としては、限定されないが、カルボキシメチルセルロースカルシウム、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ナトリウムスルホサクシネート、ジオクチル、アルギン酸ナトリウム、ポリオキシエチレン硫酸アルキル、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸トリエタノールアミン、ラウリン酸カリウム、胆汁酸塩、およびこれらの任意の組み合わせあるいは混合物が挙げられる;および、d)セチルトリメチルアンモニウム臭化物およびラウリルジメチルベンジル-塩化アンモニウムなどの陽イオン性界面活性剤。
さらなる実施形態では、1以上の共界面活性剤が本発明で開示される耳に許容可能な製剤に利用される場合、共界面活性剤は、例えば、薬学的に許容可能なビヒクルと組み合わされ、約0.1%から約20%の範囲、約0.5%から約10%の範囲の量で最終製剤中に存在する。
1つの実施形態では、界面活性剤は0~20のHLB値を有する。さらなる実施形態では、界面活性剤は、0~3、4~6、7~9、8~18、13~15、10~18のHLB値を有する。
1つの実施形態において、希釈剤はより多くの安定した環境を提供するため、TrkBまたはTrkCのアゴニストあるいは他の医薬品化合物を安定させるために使用される。緩衝液(pHの調整または保守ももたらし得る)中に溶かされた塩は、限定されないが、リン酸緩衝生理食塩水を含む希釈剤として利用される。他の実施形態において、ゲル製剤は、TrkBまたはTrkCアゴニスト製剤が標的としている蝸牛の部分に依存して、内リンパまたは外リンパと等張である。等張な製剤は等張化剤を加えることで提供される。適切な等張化剤としては、限定されないが、任意の薬学的に許容可能な糖、塩、またはこれらの任意の組み合わせまたは混合物、限定されないが、デキストロースおよび塩化ナトリウムが挙げられる。さらなる実施形態では、等張化剤は、約100mOsm/kgから約500mOsm/kgの量で存在する。いくつかの実施形態では、等張化剤は、約200mOsm/kgから約400mOsm/kg、約280mOsm/kgから約320mOsm/kgの量で存在する。本明細書に記載されるように、等張化剤の量は医薬製剤の標的構造によって変わる。
有用な等張化組成物は、組成物の重量モル浸透圧濃度を外リンパまたは内リンパに許容可能な範囲にするのに必要な量の1つ以上の塩をさらに含む。こうした塩は、ナトリウム、カリウム、またはアンモニウムのカチオン、ならびに塩化物、クエン酸塩、アスコルビン酸塩、ホウ酸塩、リン酸塩、炭酸水素塩、硫酸塩、チオ硫酸塩、または重亜硫酸塩のアニオンを含み、適切な塩は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、および、硫酸アンモニウムを含む。
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される耳に許容可能なゲル製剤は、代替的にあるいは追加的に、微生物の増殖を防ぐための防腐剤を含む。本明細書に記載される粘度を増強した製剤中で使用される適切な耳に許容可能な防腐剤としては、限定されないが、安息香酸、ホウ酸、p-ヒドロキシ安息香酸塩、アルコール、四級化合物、安定化した二酸化塩素、merfenとthiomersalなどの水銀剤、前述の混合物などが挙げられる。
さらなる実施形態では、防腐剤は、ほんの一例として、本明細書で提示される耳に許容可能な製剤内の抗菌薬である。1つの実施形態では、製剤は、一例として、メチルパラベン、亜硫酸ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、フェニルエタノールなどの保存剤を含む。別の実施形態では、メチルパラベンは、約0.05%-約1.0%、約0.1%-約0.2%までの濃度である。さらなる実施形態では、ゲルは水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース、およびクエン酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる実施形態では、ゲルは水、メチルパラベン、ヒドロキシエチルセルロース、および酢酸ナトリウムを混合することにより調製される。さらなる実施形態では、混合物を約20分間120°Cでオートクレーブ滅菌することにより殺菌し、適切な量の本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストと混合する前に、pH、メチルパラベン濃度、および粘度について試験した。
薬物送達ビヒクル中で用いられる適切な耳に許容可能な水溶性の防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルビン酸塩、クロロブタノール、チメロサール、パラベン、ベンジルアルコール、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、フェニルエタノール、およびそれ以外のものを含む。これらの薬剤は通常、約0.001重量%~約5重量%の量で、好ましくは、約0.01重量%~約2重量%の量で存在する。いくつかの実施形態では、本明細書に記載される耳に適合した製剤は、保存剤を含まない。
正円窓膜浸透促進剤
別の実施形態では、製剤は1以上の正円窓膜浸透促進剤をさらに含む。正円窓膜への浸透は、正円窓膜浸透促進剤の存在により改善される。正円窓膜浸透促進剤は、同時投与された物質の正円窓膜への輸送を促す化学物質である。正円窓膜浸透促進剤は化学構造によって分類される。イオン性と非イオン性との両性の界面活性剤、例えば、ラウリル硫酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-20-セチルエーテル、ラウレス-9、ドデシル硫酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレン-9-ラウリルエーテル(PLE)、Tween(登録商標)80、ノニルフェノキシポリエチレン(NP-POE)、ポリソルベートなどは、正円窓膜浸透促進剤として機能する。胆汁塩(例えば、グリココール酸ナトリウム、デオキシコール酸ナトリウム、タウロコール酸ナトリウム、タウロジヒドロフシジン酸ナトリウム、グリコジヒドロフシジン酸ナトリウムなど)、脂肪酸および誘導体(例えば、オレイン酸、カプリン酸、モノグリセリドおよびジグリセリド、ラウリル酸、アシルコリン、カプリル酸、アシルカルニチン、カプリル酸ナトリウムなど)、キレート剤(例えば、EDTA、クエン酸、サリチル酸塩キレートなど)、スルホキシド(例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)、デシルメチルスルホキシドなど)、およびアルコール(例えば、エタノール、イソプロパノール、グリセロール、プロパンジオールなど)も正円窓膜浸透促進剤として機能する。
いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤はアルキル・グリコシドを含む界面活性剤であり、ここで、アルキル・グリコシドはテトラデシル-β-D-マルトシドである。いくつかの実施形態において、耳に許容可能な浸透促進剤はアルキル・グリコシドを含む界面活性剤であり、ここで、アルキル・グリコシドはドデシルマルトシドであるある例では、浸透促進剤はヒアルロニダーゼである。ある例では、ヒアルロニダーゼはヒトまたはウシのヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒトのヒアルロニダーゼ(例えば、ヒトの精子で見られるヒアルロニダーゼ、PH20(Halozyme)、Hyelenex(登録商標)(Baxter International,Inc.))である。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ウシのヒアルロニダーゼ(例えば、ウシの睾丸のヒアルロニダーゼ、Amphadase(登録商標)(Amphastar Pharmaceuticals)、Hydase(登録商標)(PrimaPharm,Inc.))である。いくつかの例では、ヒアルロニダーゼは、ヒツジのヒアルロニダーゼ、Vitrase(登録商標) (ISTA Pharmaceticals)である。ある例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは組み換えヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼは、ヒト化組み換えヒアルロニダーゼである。いくつかの例では、本明細書に記載されるヒアルロニダーゼはペグ化ヒアルロニダーゼ(例えばPEGPH20(Halozyme))である。加えて、U.S. Patent Nos. 7,151,191, 6,221,367、および5,714,167に記載されているペプチド様浸透促進剤もさらなる実施形態として企図され、当該文献は開示のために参照することにより本明細書に組み込まれる。これらの浸透促進剤は、アミノ酸とペプチドの誘導体(derviatives)であり、膜または細胞間の密着結合の完全性に影響を与えることなく、受動的な細胞間拡散による薬物吸収を可能にする。
正円窓膜浸透リポソーム
リポソームあるいは脂質粒子はさらに、TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤あるいは組成物をカプセル化するために使用されてもよい。水溶性培地中にゆっくりと分散したリン脂質は多層構造の小胞を形成し、封入された水溶性媒体の領域は脂質層を分離する。これらの多層構造の小胞の超音波処理または激しい攪拌により、通常リポソームと呼ばれる、約10~1000nmの大きさの単層の小胞が形成される。こうしたリポソームはTrkBまたはTrkCのアゴニストあるいは他の医薬品担体として多くの長所を持つ。これらは生物学的に不活性で、生物分解性で、無毒で、および非抗原性である。リポソームは様々な大きさで、および変動する組成物と表面特性を伴って形成される。さらに、これらは多種多様な薬剤を封入し、リポソーム崩壊の部位で薬剤を放出することができる。
本明細書の耳に許容可能なリポソームに使用される適切なリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミンおよびホスファチジルセリン、スフィンゴミエリン、カルジオリピン、プラズマロゲン、ホスファチジン酸およびセレブロシドなどであり、特に、非毒性で薬学的に許容可能な有機溶媒中で本明細書のTrkBまたはTrkCのアゴニストとともに溶解可能なものである。好ましいリン脂質は、例えば、ホスファチジルコリン、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、リゾホズファチジルコリン、ホスファチジルグリセロールなどと、それらの混合物、特にレシチン、例えば大豆レシチンである。本発明の製剤に使用されるリン脂質の量は、約10%~約30%、好ましくは約15%~約25%、特に約20%である。
親油性の添加剤は、リポソームの特徴を選択的に修飾するために有効に利用され得る。そのような添加剤の例としては、ほんの一例として、ステアリルアミン、ホスファチジン酸、トコフェロール、コレステロール、 コレステロールヘミコハク酸(hemisuccinate)、およびラノリン抽出物が挙げられる。使用される親油性の添加剤の量は、0.5~8%、好ましくは、1.5~4%の範囲で、特に約2%である。通常、親油性の添加剤の量とリン脂質の量の比率は、約1:8~約1:12の範囲であり、特に約1:10である。リン脂質、脂溶性添加物、およびTrkBまたはTrkCのアゴニストおよび他の医薬化合物は、上記成分を溶解する非毒性の薬学的に許容可能な有機溶媒系とともに用いられる。上記溶媒系は、TrkBまたはTrkCのアゴニストを完全に溶解しなければならないだけでなく、安定した単一の二重層リポソーム製剤の形成を可能にするものでなければならない。溶媒系は、約8~約30%の量のジメチルイソソルビドおよびテトラグリコール(グリコフロル、テトラヒドロフルフリルアルコールポリエチレングリコールエーテル)を含有している。上記溶媒系において、ジメチルイソソルビド量対テトラグリコール量の比率は、約2:1~約1:3、特に約1:1~約1:2.5の範囲であり、好ましくは約1:2である。最終組成物中のテトラグリコールの量は従って、5~20%、特に5~15%まで変動し、好ましくは約10%である。最終組成物中のジメチルイソソルビドの量は従って、3~10%の範囲、特に3~7%の範囲であり、好ましくは約5%である。
本明細書で以下に使用される用語「有機成分」は、リン脂質、親油性添加剤、および有機溶媒を含む混合物を指す。TrkBまたはTrkCのアゴニストは、有機成分、あるいは薬剤の完全な活性を維持するための他の手段に溶かされてもよい。最終製剤中のTrkBまたはTrkCのアゴニストの量は、0.1から5.0%まで変動することがある。加えて、抗酸化剤などの他の成分が有機成分に加えられることがある。例としては、トコフェロール、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、アスコルビルパルミテート(ascorbyl palmitate)、アスコルビルオリエート(ascorbyl oleate)などが挙げられる。
リポソーム製剤は、適度に耐熱性を有するTrkBまたはTrkCのアゴニストあるいは他の医薬品のために、(a)容器中でリン脂質および有機溶剤系を約60-80℃に加熱し、活性成分を溶解し、その後、任意の追加の製剤化剤を添加し、および完全な溶解物が得られるまで混合物を撹拌すること;(b)第2の容器中で水溶液を90-95℃に加熱して防腐剤をその中に溶解させ、混合物を冷まし、自補助用の製剤化剤の残りと水の残りを添加し、および、完全な溶解物が得られるまで混合物を撹拌することであって;このようにして水性成分を調製すること;(c)高機能混合装置、例えば、高剪断力ミキサーを用いて混合物を均質化しながら、水性成分へ有機相を直接送り込むこと;および、(d)さらに均質化しながら、結果として生じた混合物に粘度増強剤を添加することにより、代替的に調製される。水性成分はホモジナイザーが装備された適切な容器に随意に入れられ、有機成分を注入する間に乱流を作ることで均質化がもたらされる。混合物に高い剪断力を作用させるための任意の混合方法またはホモジナイザーが使用され得る。通常、約1,500~20,000rpm、とりわけ約3,000~約6,000rpmの速度が可能なミキサーが使用され得る。処理工程(d)で使用される適切な粘度増強剤は、例えば、キサンタンガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、またはこれらの混合物である。粘度増強剤の量は、他の成分の性質と濃度に依存し、通常、約0.5~2.0%の範囲、またはは約1.5%である。リポソーム製剤の調製中に使用される材料の分解を防止するためには、窒素またはアルゴンなどの不活性ガスで全ての溶液をパージすることと、不活性な環境下で全ての工程を行うことが有用である。上記方法によって調製されたリポソームは、通常、脂質二重層中の結合した活性成分のほとんどを含んでおり、カプセル化していない材料からリポソームを分離することは要求されない。
他の実施形態において、ゲル製剤および粘度を増強する製剤を含む、耳に許容可能な製剤はさらに、賦形剤、他の治療用または医薬用の薬剤、担体、防腐剤、安定化剤、湿潤剤、または乳化剤などのアジュバント、溶解促進剤、塩、可溶化剤、消泡剤、抗酸化剤、分散剤、湿潤剤、界面活性剤、およびこれらの組み合わせをさらに含む。
本明細書に記載される耳に許容可能な製剤中で使用される適切な担体としては、限定されないが、標的とされた耳構造の生理的環境と適合する任意の薬学的に許容可能溶媒が挙げられる。他の実施形態において、塩基は薬学的に許容可能な界面活性剤と溶媒の組み合わせである。
いくつかの実施形態において、他の賦形剤としては、フマル酸ステアリルナトリウム、ジエタノールアミンセチル硫酸、イソステアレート、ポリエトキシ化ヒマシ油、ノンオキシル10、オクトキシノール9、ラウリル硫酸ナトリウム、ソルビタンエステル(モノラウリン酸ソルビタン、モノオレイン酸ソルビタン、モノパルミチン酸ソルビタン、モノステアリン酸ソルビタン、セスキオレイン酸ソルビタン、トリオレイン酸ソルビタン、トリステアリン酸ソルビタン、ラウリン酸ソルビタン、オレイン酸ソルビタン、パルミチン酸ソルビタン、ステアリン酸ソルビタン、ジオレイン酸ソルビタン、セスキイソステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸ソルビタン、トリイソステアリン酸ソルビタン)、レシチン、これらの薬学的に許容可能な塩、およびこれらの組み合わせまたは混合物が挙げられる。
他の実施形態において、担体はポリソルベートである。ポリソルベートはソルビタンエステルの非イオン性界面活性剤である。本開示で役立つポリソルベートとしては、限定されないが、ポリソルベート20、ポリソルベート40、ポリソルベート60、ポリソルベート80(Tween80)、およびこれらの任意の組み合わせまたは混合物が挙げられる。さらなる実施形態では、ポリソルベート80は薬学的に許容可能な担体として利用される。
1つの実施形態において、医薬的送達ビヒクルの調製に用いられる水溶性グリセリンをベースとした耳に許容可能な粘度を増強した製剤は、少なくとも0.1%以上の水溶性グリセリン化合物を含有する少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む。いくつかの実施形態において、TrkBまたはTrkCのアゴニストの比率は、医薬製剤全体の約1%から約95%、約5%から約80%、約10%から約60%またはそれ以上の重量または体積で変化する。いくつかの実施形態において、治療上有用なTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤のそれぞれにおける化合物の量は、適切な投与量が化合物の任意の一定の単位用量で得られるような手法で調製される。溶解度、バイオアベイラビリティ、生物学的半減期、投与ルート、製品貯蔵期間と、他の薬理学的考察などの因子が本明細書で企図される。
望ましい場合、耳に許容可能な医薬品ゲルは、緩衝剤に加えて共溶媒(co-solvent)、防腐剤、共溶媒(cosolvent)、イオン強度、および重量モル浸透圧濃度調整剤、および他の賦係形剤も包含している。適切な耳に許容可能な水溶性緩衝剤は、アルカリまたはアルカリ土類金属炭酸塩のリン酸塩、重炭酸塩、クエン酸塩、ホウ酸塩、酢酸塩、コハク酸塩などであり、例えば、リン酸ナトリウム、クエン酸ナトリウム、ホウ酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、重炭酸ナトリウム、炭酸ナトリウムおよびトロメタミン(TRIS)ナトリウムなどである。これらの薬剤は、系のpHを7.4±0.2、好ましくは7.4に維持するのに十分な量で存在する。このように、緩衝剤は組成物全体の重量ベースで5%もの量である。
共溶媒はTrkBまたはTrkCのアゴニストの溶解度を高めるために用いられるが、いくつかのTrkBまたはTrkCのアゴニストあるいは他の医薬化合物は不溶性である。これらは、しばしば適切な懸濁化剤または粘度増強剤を用いて、ポリマービヒクル中に懸濁される。
さらに、いくつかの薬学的な賦形剤、希釈剤または担体は潜在的には耳毒性である。例えば、一般的な防腐剤である塩化ベンザルコニウムは耳毒性であり、従って、前庭または蝸牛の構造に取り込まれると潜在的に有害である。制御放出TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤を製剤化する際、適切な賦形剤、希釈剤または担体を避けるかまたは組み合わせること、製剤から潜在的に耳毒性の化合物を減少させるか除去すること、もしくはそのような賦形剤、希釈剤または担体の量を減少させることが推奨される。随意に、制御放出TrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤は、特定の治療薬、賦形剤、希釈剤または担体を使用することで生じる潜在的な耳毒性効果に対向するために、酸化防止剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤などの耳を保護する薬剤を含む。
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本明細書に開示された製剤は、特定の治療薬または賦形剤、稀釈剤、または担体の使用から発生し得る潜在的な耳毒性効果に対向するために、限定されないが、酸化防止剤、アルファリポ酸、カルシウム、ホスホマイシンまたは鉄キレート剤などの薬剤を含む、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストおよび/または賦形剤に加えて、耳を保護する薬剤を包含する。
処置のモード
投与方法とスケジュール
内耳に送達される薬物は、経口経路、静脈経路、筋肉内経路で投与されてきた。 しかしながら、内耳に対する局所的な病理に関する全身投与により、全身への毒性および副作用の可能性を増大し、薬物の非生産的な分布が形成され、この分布では、血清中で高濃度の薬物が見られ、これに呼応して内耳では低濃度の薬物が見られる。
治療薬の鼓室内注入は、鼓膜の裏側に治療薬を注入し、中耳および/または内耳へと到達させる技術である。1つの実施形態において、本明細書に記載される本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤は、鼓室内注入を介して正円窓膜に直接投与される。他の実施形態において、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニストの耳に許容可能な製剤は、内耳への非鼓室内注入方法によって正円窓膜に投与される。さらなる実施形態において、本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニストの耳に許容可能な製剤は、蝸牛窓稜の改変を含む正円窓膜に対する外科的な方法を介して、正円窓膜に投与される。
1つの実施形態において、送達システムは、鼓膜を貫通し、正円窓膜または内耳の蝸牛窓稜に直接アクセスすることができるシリンジおよび注射針の装置である。いくつかの実施形態において、シリンジ上の針は18ゲージの針よりも幅広い。別の実施形態では、針ゲージは18ゲージから31ゲージまである。さらなる実施形態では、針ゲージは25ゲージから30ゲージまである。TrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物あるいは製剤の厚さまたは粘度に応じて、シリンジまたは皮下注射針のゲージの水準は適宜変更され得る。他の実施形態では、適切な針ゲージを維持しながら、針が目詰まりする可能性を減らすために、針(一般に薄肉または超薄肉な針と呼ばれる)の壁厚を減らすことにより針の内径を増やすことができる。
別の実施形態では、針はゲル製剤の即時送達に使用される皮下注射針である。皮下注射針は単回用の針あるいは使い捨ての針であってもよい。いくつかの実施形態において、シリンジは、本明細書に開示された薬学的に許容可能なゲルベースのTrkBまたはTrkCのアゴニスト含有組成物の送達に用いられてもよく、シリンジは圧入(press-fit)(Luer)またはツイスト-オン(twist-on) (Luer-lock)フィッティングを有する。1つの実施形態において、シリンジは、皮下注射シリンジである。別の実施形態において、シリンジは、プラスチックまたはガラスで作られている。さらに別の実施形態において、皮下注射シリンジは、一回使用のシリンジである。さらなる実施形態において、ガラスシリンジは、滅菌することができる。さらに別の実施形態において、滅菌は、オートクレーブによって行う。別の実施形態において、シリンジは、ゲル製剤が使用前に蓄えられる、円筒形のシリンジ本体を含む。他の実施形態において、シリンジはシリンジ本体を含み、本明細書で開示されるTrkBまたはTrkCのアゴニストの薬学的に許容可能なゲルベースの組成物は、適切な薬学的に許容可能な緩衝液との混合を都合よく行うことを可能にする使用の前に、保存される。他の実施形態において、シリンジは、安定化させるために他の賦形剤、安定化剤、懸濁剤、希釈剤またはこれらの組み合わせを含むことができるか、あるいは、内部に含まれるTrkBまたはTrkCのアゴニストまたは他の医薬化合物を安定的に保存する。
いくつかの実施形態において、シリンジは円筒形のシリンジ本体を含み、該本体は、各区画(compartment)が、耳に許容可能なTrkBまたはTrkCのアゴニストゲル製剤の少なくとも1つの成分を貯蔵することができるように、区画化される。さらなる実施形態において、区画化される本体を有するシリンジは、中耳または内耳への注入の前に、成分を混合させることができる。他の実施形態において、送達システムは複数のシリンジを含み、その複数のシリンジの各シリンジは、ゲル組成物の少なくとも1つの成分を含むことで、各成分が注入前に予め混合されるか、または注入後に混合されるようになる。さらなる実施形態において、本明細書で開示されるシリンジは、少なくとも1つのリサーバー(reservoir)を含み、その少なくとも1つのリザーバーは、TrkBまたはTrkCのアゴニストか、または、薬学的に許容可能な緩衝液か、または、ゲル化剤のような粘度増強剤か、あるいは、これらの組み合わせを含む。市販の注射デバイスは、鼓室内注入を行うために、シリンジバレルを備えたすぐに使えるプラスティックシリンジ、針を備えた針アセンブリ、プランジャーロッドを備えたプランジャー、および、保持フランジのような最もシンプルな形態で随意に使用される。
いくつかの実施形態において、送達デバイスは、中耳および/または内耳への治療薬の投与のために設計された器具である。ほんの一例として、GYRUS Medical Gmbhは、正円窓の隙間の可視化および正円窓の隙間への薬物送達のために、マイクロオトスコープを提供している。Arenbergは、U.S. Patent Nos. 5,421,818; 5,474,529; and 5,476,446において、内耳構造に流体を送達するための医療デバイスを記載している。これらの文献の各々は、そのような開示目的のために、参照することにより本明細書に組み込まれる。そのような開示目的のために参照することにより本明細書に組み込まれるU.S. Patent Application No. 08/874,208は、内耳に治療薬を送達するための流体輸送管を埋め込む外科的方法について記載している。U.S. Patent Application Publication 2007/0167918は、そのような開示のために本明細書に参照として取り込まれているが、内耳内の流体サンプリングおよび薬剤投与のために組み合わされた耳のアスピレーターと投薬ディスペンサーについてさらに記載している。
本明細書に記載されるTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む耳に許容可能な組成物または製剤は、予防的処置および/または治療的処置として投与される。治療的用途において、TrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物は、自己免疫疾患、症状または疾病に既に苦しんでいる患者に対して、疾患、症状または障害の兆候を治癒、または少なくとも部分的に進行を止めるのに十分な量で投与される。この使用に対する効果的な量は、疾患、症状または障害の重症度および経過、薬歴、患者の健康状態および薬物応答性、および処置する医師の判断による。
投与の頻度
いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、必要としている個体に一度投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、必要としている個体に1回を超えて投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の第1の投与の後に、本明細書で開示される組成物の第2の投与が続く。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の第1の投与の後に、本明細書で開示される組成物の第2の投与と第3の投与が続く。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の第1の投与の後に、本明細書で開示される組成物の第2の投与、第3の投与、および第4の投与が続く。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の第1の投与の後に、本明細書で開示される組成物の第2の投与、第3の投与、第4の投与、および第5の投与が続く。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物の第1の投与の後に、休薬日が続く。
組成物が必要としている個体に投与される回数は、医療用専門家の裁量、障害、障害の重症度、および固体の製剤に対する反応に依存する。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、軽度の急性の疾病を抱えた必要としている個体に一度投与される。いくつかの実施形態において、本明細書で開示される組成物は、中程度または重篤な急性の疾病を抱える必要としている個体に1回を超えて投与される。患者の症状が改善しない場合、医者の裁量によって、耳感覚細胞調節細胞モジュレータの投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するため、またはさもなければ、それらを制御もしくは制限するために、習慣的に、すなわち、患者の生命が続く期間を含む、長時間にわたって行われてもよい。
患者の症状が改善しない場合、医者の裁量によって、TrkBまたはTrkCのアゴニスト化合物の投与は、患者の疾患または疾病の症状を改善するため、またはさもなければ、それらを制御もしくは制限するために、習慣的に、すなわち、患者の生命が続く期間を含む、長時間にわたって行われてもよい。
患者の状態が改善する場合、医者の裁量によって、TrkBまたはTrkCのアゴニストの投与は継続的に行われるか、あるいは、投与される薬物の投与量は、特定の期間、一時的に減らされるか、一時的に中止される(すなわち、休薬期間)。休薬期間の長さは、2日から1年の間で変化し、ほんの一例として、2日、3日、4日、5日、6日、7日、10日、12日、15日、20日、28日、35日、50日、70日、100日、120日、150日、180日、200日、250日、280日、300日、320日、350日、および、365日を含む。休薬期間の投与量の減少は、10%から100%であり、ほんの一例として、10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%および100%を含む。
いったん患者の耳の疾病が改善すると、必要に応じて、TrkBまたはTrkCのアゴニストの維持量が投与される。引き続いて、投与の用量または頻度またはその両方は、症状に応じて、改善した疾患、障害、または、疾病が維持されるレベルまで随意に減らされる。特定の実施形態において、患者は、任意の症状の再発時に長期的な間欠的処置を必要とする。
このような量に対応するTrkBまたはTrkCのアゴニストの量は、例えば、投与される特定のTrkBまたはTrkCのアゴニスト、投与経路、処置される自己免疫疾患、処置される標的領域、および、処置される被験体または宿主などを含む、そのケースの周囲の特定の環境に応じて、特定の化合物、疾病、および、その重症度などの要因に依存して変化する。しかしながら、一般に、成人の処置に用いられる投与量は、概して1回の投与につき0.02-50mgの幅であり、好ましくは1回の投与につき1-15mgである。所望の投与量は、1回の投与量または分割された投与量で表され、同時に(または短期間をおいて)または適切な間隔をおいて投与される。
いくつかの実施形態において、初回投与は特定のTrkBまたはTrkCのアゴニストであり、その後の投与は異なる製剤またはTrkBまたはTrkCのアゴニストである。
制御放出製剤の薬物動態
1つの実施形態において、本明細書で開示される製剤はさらに、組成物からTrkBまたはTrkCのアゴニストの即時放出、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内または30分以内、または60分以内、または90分以内の放出を与える。他の実施形態において、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストの治療上有用な量が、即時に、または1分以内、または5分以内、または10分以内、または15分以内、または30分以内、または60分以内、または90分以内に組成物から放出される。特定の実施形態において、組成物は、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストの即時放出をもたらす、耳に薬学的に許容可能なゲル製剤を含む。さらなる製剤の実施形態は、本明細書に記載された製剤の粘度を増大させる薬剤をも含み得る。
他のあるいはさらなる実施形態では、製剤は、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストの持続放出製剤を与える。特定の実施形態において、製剤からの少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストの拡散は、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または5ヶ月、または6ヶ月、または9ヶ月、または1年を超える期間生じる。他の実施形態において、治療上有効な量の少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストは、5分、または15分、または30分、または1時間、または4時間、または6時間、または12時間、または18時間、または1日、または2日、または3日、または4日、または5日、または6日、または7日、または10日、または12日、または14日、または18日、または21日、または25日、または30日、または45日、または2ヶ月、または3ヶ月、または4ヶ月、または55ヶ月、または6ヶ月、または9ヶ月、または1年を超える期間、製剤から放出される。
他の実施形態において、製剤は、即時放出静と持続放出性のTrkBまたはTrkCのアゴニストの製剤を提供する。さらに他の実施形態において、製剤は、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、または1:15の比率、または1:20比率の即時放出性および持続放出性の製剤を含む。さらなる実施形態において、製剤は、第1のTrkBまたはTrkCのアゴニストの即時放出と、第2のTrkBまたはTrkCのアゴニストまたは他の治療薬の持続放出を与える。さらに他の実施形態において、製剤は、少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストの即時放出性および持続放出性の製剤、ならびに少なくとも1つの治療薬を提供する。ある実施形態において、製剤は、0.25:1の比率、または0.5:1の比率、または1:1の比率、または1:2の比率、または1:3の比率、または1:4の比率、または1:5の比率、または1:7の比率、または1:10の比率、または1:15の比率、または1:20の比率の、それぞれ第1のTrkBまたはTrkCのアゴニストと第2の治療薬の即時放出性および持続放出性の製剤を提供する。
特定の実施形態では、製剤は、実質的に全身曝露をまったく伴うことなく疾患の部位で治療上有効な量の少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストを提供する。補足実施形態では、製剤は、実質的に検出可能な全身曝露を伴わずに疾患の部位で治療上有効な量の少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストを提供する。他の実施形態において、製剤は、検出可能な全身曝露をほとんどまたはまったく伴わずに、疾患の部位で治療上有効な量の少なくとも1つのTrkBまたはTrkCのアゴニストを提供する。
即時放出性、遅延放出性、および/または持続放出性のTrkBまたはTrkCのアゴニスト組成物または製剤の組み合わせは、賦形剤、希釈剤、安定化剤、等張化剤、および本明細書中に開示された他の組成物とだけでなく、他の医薬品とも組み合わせてもよい。そのため、使用されるTrkBまたはTrkCのアゴニスト、所望の厚みまたは粘度、あるいは選択される送達のモードに依存して、本明細書中に開示される実施形態の代替的な態様は、即時放出性、遅延放出性、および/または持続放出性の実施形態に適宜組み合わされる。
ある実施形態では、本明細書中に記載されるTrkBあるいはTrkCアゴニスト製剤の薬物動態は、試験動物(ほんの一例として、モルモットまたはチンチラを含む)の正円窓膜または正円窓膜の付近に、製剤を注入することによって決定される。決定される期間(1週間にわたって製剤の薬物動態を試験するために、例えば、6時間、12時間、1日、2日、3日、4日、5日、6日、および7日)に、試験動物を安楽死させ、外リンパ流体の5mLのサンプルを試験する。内耳を取り除き、TrkBまたはTrkCのアゴニストが存在しているかどうか試験する。必要に応じて、TrkBまたはTrkCのアゴニストのレベルを他の器官で測定する。加えて、TrkBまたはTrkCのアゴニストの全身レベルを、試験動物から血液サンプルを採血することによって測定する。製剤が聴覚を妨げるかどうかを判定するために、試験動物の聴覚を随意に試験する。
代替的に、内耳が提供され(試験動物から除去されて)、TrkBまたはTrkCのアゴニストの移動が測定される。さらにもう1つの実施形態において、正円窓膜のインビトロモデルが提供され、TrkBまたはTrkCのアゴニストの移動が測定される。
キット/製造品
本開示は、哺乳動物の疾患または障害の症状を予防、処置、改善するためのキットも提供する。このようなキットは一般的に、本明細書で開示される1以上のTrkBまたはTrkCのアゴニスト制御放出型組成物またはデバイスと、キットを使用するための指示書を含む。本開示は、内耳障害を有しているか、有していると疑われるか、または発症するリスクがあるヒトなどの哺乳動物の疾患、機能障害、または障害の症状を処置し、軽減し、減らし、あるいは改善するための薬物の製造における1以上のTrkBまたはTrkCのアゴニスト制御放出組成物の使用も企図している。
いくつかの実施形態において、キットは、バイアル、チューブなどの1以上の容器を収容するため区画化された運搬体、パッケージ、または容器を備え、容器の夫々は、本明細書中に記載される方法で使用される別の要素の1つを含む。適切な容器は、例えば、ボトル、バイアル、シリンジ、および試験管を含む。他の実施形態において、容器はガラスまたはプラスチックなどの様々な材料から形成される。
本明細書で提供される製品は包装材料を含む。医薬品を放送する際に使用される包装材料も本明細書で提供される。例えば、U.S. Patent Nos. 5,323,907, 5,052,558、および5,033,252を参照。医薬包装材料の例としては、ブリスターパック、瓶、チューブ、吸入器、ポンプ、バッグ、バイアル、容器、注射器、瓶、および選択された製剤および意図された様式による投与や処置に適切な任意の包装材料が挙げられるが、これらに限定されない。本明細書で提供される多様なTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤組成物は、内耳へのTrkBまたはTrkCのアゴニストの制御放出投与によって効果を得ることになる、任意の疾患、障害、または疾病の多様な処置として企図されている。
いくつかの実施形態において、キットは1以上の追加の容器を含み、夫々の容器は、本明細書に記載される製剤の使用に関して、商業上の観点およびユーザーの観点から望ましい1以上の様々な材料(随意に濃縮された形態の試薬、および/またはデバイスなど)を備える。こうした材料の非限定的な例としては、限定されないが、緩衝液、賦形剤、フィルタ、針、シリンジ;担体、包装、容器、バイアル、チューブ、内容物を列挙するラベルおよび/または使用説明書、ならびに使用説明書を備えたパッケージ挿入物が挙げられる。説明書のセットが随意に含まれる。さらなる実施形態では、ラベルは容器上にあるか、容器に付随している。さらなる実施形態において、ラベルを形成している文字、数字または他の符号が添付され、容器自体に成型され、あるいはエッチングされる場合、ラベルは容器上にあり、ラベルは、例えば添付文書として容器を保持するレセプタクルまたは運搬体内に存在するとき、容器に付随する。他の実施形態において、ラベルは、内容物が特定の治療用途に使用されるべきであることを示すために使用される。さらに他の実施形態において、ラベルはさらに、本明細書に記載される方法などにおいて、内容物の使用のための指示を示す。
ある実施形態では、医薬組成物は、本明細書で提供された化合物を含む1以上の単位剤形を含むパックまたはディスペンサーデバイスで提示される。他の実施形態では、ブリスターパックなどのパックは、金属またはプラスチック箔を包含する。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーデバイスは投与のための説明書を伴う。さらなる実施形態では、パックまたはディスペンサーには、医薬品の製造、使用または販売を規制する政府機関によって規定された形態の容器に関連する通知も添えられ、通知は、人間または動物への投与に関して薬物の形態の政府機関による承認を反映したものである。別の実施形態では、そうした通知は、例えば、処方薬について米国食品医薬品局で承認されたラベルであるか、承認された製品の挿入物である。さらに他の実施形態において、適合性のある医薬中で製剤される本明細書で提供された化合物を含む組成物も調製され、適切な容器に入れられ、表示された疾病の処置に関してラベルを付けられる。
実施例1-熱可逆性ゲルTrkBまたはTrkCのアゴニスト製剤の調製
Figure 0007023461000018
例えば、1.0%のTrkBまたはTrkCのアゴニストを含むゲル製剤の典型的なバッチは、5.5-8.0の間のpHを備えた滅菌水中で最初にポロクサマー407(BASF社)を懸濁することにより調製される。ポロクサマー407とpHを調整された滅菌水は、ポロクサマー407とpHを調整された滅菌水が完全に溶解するために、4°Cで撹拌しながら夜通し混合される。TrkBまたはTrkCのアゴニストの溶液を加え、均質のゲルが生成されるまで組成物を混合する。混合物を、使用するまで室温以下に維持する。
実施例2-ゲル化温度のインビトロ比較
ポロクサマー407製剤のゲル化温度と粘度に対するポロクサマー188とTrkBまたはTrkCのアゴニストの効果は、ゲル化温度を操作する目的で評価される。
PBS緩衝液中の25%ポロクサマー407保存溶液。BASFのポロクサマー188NFが使用される。TrkBまたはTrkCのアゴニストの2%の製剤を得るために、適切な量のTrkBまたはTrkCのアゴニストが表4に記載される溶液に加えられる。
PBS緩衝液(pH7.3)は、606mgの無水第2リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)の805.5mgの塩化ナトリウム(Fisher Scientific)、247mgの無水の一塩基リン酸ナトリウム(Fisher Scientific)、その後、適量(QS)から200gまでの無菌のろ過されたDI水を溶かすことにより調製される。
Figure 0007023461000019
上記の製剤のゲル化温度を本明細書に記載される手順を使用して測定する。
得られたデータに方程式を適合させ、方程式を利用して、(17-20%のF127と0-10%のF68について)F127/F68混合物のゲル化温度を推測する。
gel=-1.8(%F127)+1.3(%F68)+53
方程式を得られたデータに適合させ、これを利用して、上記の例で得られた結果を使用して、(17-25%のF127と0-10%のF68について)F127/F68混合物のゲル化温度に基づいて平均溶解時間(hr)を推測する。
MDT=-0.2(Tgel)+8
実施例3-BDNFとNT3の鼓室内注入の薬物動態
16%のポロクサマー407ゲルを冷たい方法を用いてい調製した。簡潔にまとめると、ポロクサマー407の16%w/w保存溶液を、冷たい緩衝溶液(10mM PBS、pH7.4)にゆっくりと加えて調製した。濾過により滅菌を達成した。1.05mg/mlのBDNFの濃度に達するために、ヒト組み換えBDNFを適切な量のポロクサマー407溶液で懸濁した。1.05mg/mlのNT-3の濃度に達するために、ヒト組み換えNT-3を適切な量のポロクサマー407溶液で懸濁した。
およそ生後12-16週で体重が200-300gの雌のラット(Charles River)を、被験体(1つの群当たりN=4)とした。任意の手順の前に、腹腔内経路を介してキシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表わす手術時の追加免疫は腹腔内投与した。
鼓室内注入-正円窓窩への注入に好都合なように頭がある角度傾くように、各動物を位置付ける。簡潔に言えば、外科用顕微鏡を用いる可視下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用して、20μLの製剤を、鼓膜を通って上後部の四分円(superior posterior quadrant)へ注入した。製剤を、2μL/秒の速度で注入ポンプを使用して送達した。正円窓膜との接触は動物を横臥位に置くことにより30分間維持された。手順のあいだ、および回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識を回復すると生体動物園に戻した。
外リンパサンプリング手順-麻酔をかけたラットの耳の後ろの皮膚を剪毛してポビドン-ヨードで消毒した。その後、耳の後ろを切開し、水疱全体から筋肉を慎重に引っ込ませた。中耳を露出させてアクセスできるように、歯科用バーを用いて水疱に穴を開けた。蝸牛と正円窓膜を立体外科用顕微鏡下で可視化した。水疱の基底回転を、小片の綿を使用して浄化した。正円窓に隣接する蝸牛(蝸牛嚢(cochlear capsule)の骨質の殻にハンドドリルで特有の微細な穴を開けた。その後、2μL量の外リンパを、蝸牛の鼓室階に挿入されたマイクロキャピラリーを使用して集めた。外リンパサンプルを、18μLのアセトニトリル/水(50/50v/v)を含むバイアルに加え、解析まで-80°Cで保存した。
外リンパと血漿のサンプル中のBDNFとNT-3の濃度を、市販のELISAキットを使用して決定した。ヒトBDNFの検出限界は80pg/mLであった。ヒトNT-3の検出限界は<4pg/mLであった。
図2Aと図2Bに示される結果は、BDNFとNT-3の両方が単回の鼓室内注入後7日間、外リンパ中に存在したことを示す。
実施例4-耳鳴の治療としてのTrkBまたはTrkCのアゴニストの臨床試験
有効成分:TrkBあるいはTrkCアゴニスト
投与量:10ngを10μLの熱可逆性ゲルで送達した。TrkBまたはTrkCのアゴニストの放出は制御放出であり、30(30)日間生じる。
投与経路:鼓室内注入
処置持続時間:12週
方法
・単心性
・プロスペクティブ
・無作為化された
・二重盲検
・プラセボ対照
・並行群
・適応型
包含基準
・18-64歳の男女。
・自覚的耳鳴を経験している被験体。
・耳鳴の持続時間が3か月を越えている。
・4週以内に耳鳴の処置を受けていない。
評価基準
・有効性(一次)
1.耳鳴質問表の合計点数
・有効性(二次)
1.聴力検査測定(モード、頻度、耳鳴の大きさ、純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)
2.生活の質の質問表
・安全性
1.処置群を、中途終止、治療中の有害反応、実験室での異常、およびECG異常の発生率に関して比較した。
研究設計
被験体を3つの処置群に分ける。第1の群は安全性サンプルである。第2の群は処置する意図(ITT)のサンプルである。第3の群は有効性(VfE)が確実な群である。
各群について、被験体の2分の1にはTrkBまたはTrkCのアゴニストを与え、残りにはプラセボを与える。
統計的手法
主要有効性分析は、ITTサンプル中の耳鳴の質問表の合計点数に基づく。統計的分析は共変としてベースラインを含む共分散分析(ANCOVA)に基づき、行われた最後の観察は値を従属変数として進める。因子は「処置」である。退行勾配の均質性が試験される。その分析はVfEサンプルのために繰り返される。
生活の質と同様に、聴力検査の測定値(モード、頻度、耳鳴の大きさ、純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)も前述のモデルによって分析される。モデルの適切さは試験されない。P値は予備的なものであり、多重度について調節されない。
実施例5-騒音により誘発された難聴の治療としてのTrkBまたはTrkCのアゴニストの臨床試験
有効成分:TrkBまたはTrkCのアゴニスト
投与量:TrkBまたはTrkCのアゴニストの4重量%を含む組成物は、熱可逆性のゲルの10μLの投与量を送達した。TrkBまたはTrkCのアゴニストの放出は制御放出であり、3週間にわたり生じる。
投与経路:鼓室内注入
処置持続時間:3週ごとに1回の注入での12週間
方法
・単心性
・プロスペクティブ
・無作為化された
・二重盲検
・プラセボ対照
・並行群
・適応型
包含基準
・18-64歳の男女。
・少なくとも15dBの内耳性難聴を抱えたオージオグラムと医療報告書によって文書化される難聴を伴う音響性外傷
・少なくとも3か月間続いた急性の耳鳴。
・4週間以内に難聴の事前処置を受けていない。
評価基準
・有効性(一次)
1.聴力検査の測定値(純音オージオグラム、スピーチオージオグラム)
2.生活の質の
質問表
・安全性
1.処置群を、中途終止、治療中の有害反応、実験室での異常、およびECG異常の発生率に関して比較した。
研究設計
被験体を3つの処置群に分ける。第1の群は安全性サンプルである。第2の群は処置する意図(ITT)のサンプルである。第3の群は有効性(VfE)が確実な群である。
各群について、被験体の2分の1にTrkBまたはTrkCのアゴニストを与え、残りにプラセボを与える。
統計的手法
主要有効性分析は、ITTサンプル中の純音オージオグラムに基づく。統計的分析は共変としてベースラインを含む共分散分析(ANCOVA)に基づき、行われた最後の観察は値を従属変数として進める。因子は「処置」である。退行勾配の均質性が試験される。その分析はVfEサンプルのために繰り返される。
実施例6-蝸牛用補聴器の移植と組み合わせた処置としてのTrkBまたはTrkCのアゴニストの臨床試験
有効成分:TrkBまたはTrkCのアゴニスト投与量:TrkBまたはTrkCのアゴニストを含む組成物は、手術前の潅注溶液と手術後の潅注溶液として使用される。TrkBまたはTrkCのアゴニストの放出は即時放出である。
研究設計
20人の患者が研究に登録される。10人の患者が対照群に属し、10人の患者が治療群に属する。
適格基準
・両耳に深刻な~重度の感音難聴を抱えている
・機能する聴神経を持っている
・何も聞こえずに(平均して約70+デシベルの難聴)少なくとも短い期間生きていた
・優れた発話、言語およびコミュニケーションのスキルを持っており、幼児や幼い子供の場合、セラピーによって発話と言語のスキルに向けて努力する意欲のある家族がいる
・他の種類の補聴器から十分な利益が得られない
・外科手術を回避する医学的な理由がない
各患者は蝸牛切開術(chochloestomy)と電極の挿入にさらされる。処置群は手術の前後に試験組成物を用いる手術領域の潅流にさらされる。患者は6週間モニタリングされる。蝸牛内外傷は、聴力検査の測定値、スピーチオージオグラムと同様に、生活の質に基づいて評価される。二次感染および/または炎症の発生がモニタリングされる。
実施例7-シスプラチンと組み合わせたTrkBまたはTrkCのアゴニストの臨床試験
実施例7-シスプラチンと組み合わせたTrkBまたはTrkCのアゴニストの臨床試験
この研究の目的は、シスプラチンと組み合わせて投与されたTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む組成物が、患者で化学療法により引き起こされた難聴を防ぐおよび/または処置する際に安全であり、かつ効果的であるかどうかを判断することである。
研究タイプ:介入
研究設計:これは、最新の標準治療対シスプラチンと組み合わせた持続放出性の鼓室内組成物の使用を比較する非劣性の非盲検研究である。この研究は、シスプラチンと組み合わせた徐放性組成物の投与が、化学療法により引き起こされる難聴を防ぐか、および/または処置するかどうかを試験するために設計されている。
包含基準:
・片耳または両耳に難聴を抱えている、18~64歳の男女の被験体
・重度の頭頚部癌あるいは重度の肺癌の診断の確認
・患者は研究の行為に負の影響を与える疾患あるいは症状を抱えていてはならないこともある。
・鎮痛薬の使用(アセトアミノフェン以外)は認められない。
除外基準:
・年齢
・過去90日以内に難聴を引き起こすと知られている化学療法、抗生物質あるいは利尿薬で以前治療を受けた被験体
・重大な心臓血管、肺、肝、腎臓、血液、胃腸、内分泌腺、免疫性、皮膚、神経、耳、または精神医学の疾患の病歴または存在
・アルコール中毒または薬物乱用の存在
・研究前30日以内に別の治験薬あるいはデバイスを用いる臨床試験に参加したこと
・妊娠しているか授乳中の女性の被験体
20人の患者を2つの群に分ける。患者の第1の群は、シスプラチンと組み合わせてTrkBまたはTrkCのアゴニストを含む持続放出組成物の注入を受ける。患者の第2の群はシスプラチンと組み合わせてプラセボを与えられる。
患者は1か月間にわたって毎週の追跡調査来院によりモニターされる。2つの群の間の処置結果のどんな差も記録する。
主要評価項目:シスプラチンにより誘発された難聴の減少および/または停止、あるいは、シスプラチンにより誘発された難聴の重症度;および、有害事象を抱えた参加者の数。
副次的評価項目:臨床的治癒率;治療の失敗;疾患の再発。
実施例8-TrkCアゴニスト抗体の徐放
16%のポロクサマー407ゲルを冷たい方法を用いて調製した。簡潔にまとめると、ポロクサマー407の16%w/w保存溶液を、冷たい緩衝溶液(10mM PBS、pH7.4)にゆっくりと加えて調製した。濾過により滅菌を達成した。1mg/ml(0.1%の投与量)と10mg/ml(1%の投与量)の濃度に達するために、実施例2B7としてのTrkCアゴニストmAbを、適切な量のポロクサマー407溶液で懸濁した。
およそ生後12-16週で体重が200-300gの雌のラット(Charles River)を、被験体(1つの群当たりN=4)とした。任意の手順の前に、腹腔内経路を介してキシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表わす手術時の追加免疫は腹腔内投与した。
鼓室内注入-正円窓窩への注入に好都合なように頭がある角度傾くように、各動物を位置付ける。簡潔に言えば、外科用顕微鏡を用いる可視下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用して、20μLの製剤を、鼓膜を通って上後部の四分円(superior posterior quadrant)へ注入した。製剤を、2μL/秒の速度で注入ポンプを使用して送達した。正円窓膜との接触は動物を横臥位に置くことにより30分間維持された。手順のあいだ、および回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識を回復すると生体動物園に戻した。
外リンパサンプリング手順-麻酔をかけたラットの耳の後ろの皮膚を剪毛してポビドン-ヨードで消毒した。その後、耳の後ろを切開し、水疱全体から筋肉を慎重に引っ込ませた。中耳を露出させてアクセスできるように、歯科用バーを用いて水疱に穴を開けた。蝸牛と正円窓膜を立体外科用顕微鏡下で可視化した。水疱の基底回転を、小片の綿を使用して浄化した。正円窓に隣接する蝸牛(蝸牛嚢(cochlear capsule)の骨質の殻にハンドドリルで特有の微細な穴を開けた。その後、外リンパ(約2μL)を、蝸牛の鼓室階に挿入されたマイクロキャピラリーを使用して集めた。外リンパサンプルを、18μLの水を含むバイアルに加え、解析まで-80°Cで保存した。
外リンパサンプル中のTrkCアゴニスト抗体(例えば抗体2B7)の濃度は、市販のELISAによって決定された。ヒトBDNFの検出限界は80pg/mLであった。ヒトNT-3の検出限界は<4pg/mLであった。
図2Aと図2Bは、ラットに0.1%BDNF(1.05mg/ml)あるいは0.1%NT3(1.05mg/ml)の単回の鼓室内注入後の、BDNF(図2A)とNT3(図2B)の外リンパ濃度を示す。
図3は、ラットへの0.1%TrkCアゴニスト抗体(1mg/ml)(三角形)あるいは1%TrkCアゴニスト抗体(10mg/ml)(正方形)の単回の鼓室内注入後の、TrkCアゴニスト抗体の外リンパ濃度を示す。
実施例9-ヒトIgGの鼓室内注入の薬物動態
16%のポロクサマー407ゲルを冷たい方法を用いて調製した。簡潔にまとめると、ポロクサマー407の16%w/w保存溶液を、冷たい緩衝溶液(10mM PBS、pH7.4)にゆっくりと加えて調製した。濾過により滅菌を達成した。1mg/ml(0.1%)から50mg/ml(5%)までの範囲の濃度に達するように、ヒトIgGを適切な量のポロクサマー407溶液で懸濁させた。
およそ生後12-16週で体重が200-300gの雌のラット(Charles River)を、被験体(1つの群当たりN=4)とした。任意の手順の前に、腹腔内経路を介してキシラジン(10mg/kg)とケタミン(90mg/kg)の組み合わせを最大で1時間使用して動物に麻酔をかけた。必要に応じて、もとの投与量の10分の1を表わす手術時の追加免疫は腹腔内投与した。
鼓室内注入-正円窓窩への注入に好都合なように頭がある角度傾くように、各動物を位置付ける。簡潔に言えば、外科用顕微鏡を用いる可視下で、25G(ゲージ)11/2の針を使用して、20μLの製剤を、鼓膜を通って上後部の四分円(superior posterior quadrant)へ注入した。製剤を、2μL/秒の速度で注入ポンプを使用して送達した。正円窓膜との接触は動物を横臥位に置くことにより30分間維持された。手順のあいだ、および回復するまで、動物を意識が回復するまで温度制御した(40°C)温熱パッドに置き、意識を回復すると生体動物園に戻した。
外リンパサンプリング手順-麻酔をかけたラットの耳の後ろの皮膚を剪毛してポビドン-ヨードで消毒した。その後、耳の後ろを切開し、水疱全体から筋肉を慎重に引っ込ませた。中耳を露出させてアクセスできるように、歯科用バーを用いて水疱に穴を開けた。蝸牛と正円窓膜を立体外科用顕微鏡下で可視化した。水疱の基底回転を、小片の綿を使用して浄化した。正円窓に隣接する蝸牛(蝸牛嚢(cochlear capsule)の骨質の殻にハンドドリルで特有の微細な穴を開けた。その後、外リンパ(約2μL)を、蝸牛の鼓室階に挿入されたマイクロキャピラリーを使用して集めた。外リンパサンプルを、18μLの水を含むバイアルに加え、解析まで-80°Cで保存した。
外リンパサンプル中のIgGの濃度は市販のELISAキットを使用して決定された。
図4は、ラットへの0.1%Hu IgG(円)と1.0%のHu IgG(正方形)の単回の鼓室内注入後のヒトIgGの外リンパ濃度を示す。
実施例10-TrkBとTrkCの受容体測定
試験抗体を含む細胞と試験抗体を用いるインキュベーション:ヒトTrkBあるいはTrkC(それぞれHEK293または3T3細胞の背景中の)を安定して発現する細胞株は、10%のウシ胎児血清と1%のペニシリンおよびストレプトマイシンを用いるダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)を含む培養物中で維持された。アッセイの48時間前、細胞を96ウェルのプレートに移した(HEK293細胞向けに5000細胞/ウェル;3T3細胞向けに2500細胞/ウェル)。アッセイの日に、培地をダルベッコ改変イーグル培地(DMEM;100μl/ウェル)に取り換え、37°Cで3-4時間インキュベートすることにより、細胞を血清不足にした。その後、細胞を、室温においてリン酸緩衝食塩水(PBS)中で20分間、BDNF、NT-3、試験抗体、および適切なアイソタイプ対照でインキュベートした(50μl/ウェル)。インキュベーション培地を吸引後、溶解緩衝液(1xAlphaSure Lysis Buffer Ultra;3T3またはHEK293向けにそれぞれ100μl/ウェルあるいは50μl/ウェル)の添加によって細胞を溶解した。
AlphaLisaを用いるphospho-ERK(p-ERK)の判定:10μlの細胞溶解産物は384のウェルプレートに置いた。10μlの抗体試薬を各ウェルに添加し、その後、キットの説明書(Perkin Elmer キット:ALSU-PERK-A10K)に従って、受容体/ドナービーズ混合物10μlを加えた。培養を暗所において室温で4時間継続し、384のウェルプレーを、Enspire(Perkin Elmer)プレートリーダを使用して、680/520-620励起/放射で読み取った。得られた値(相対的な光の単位)は細胞中のp-ERKの定量的な表現である。未処理細胞から背景を取り除いた後、NT-3と試験抗体に対する値を、TrkBまたはTrkCのそれぞれについて10nMのBDNFまたは10nMのNT-3(100%)の値に対して表され、用量反応曲線はGraphPad Prismで生成された。EC50と最大有効値を、GraphPad Prismの曲線適合プログラムを用いて個々の用量反応曲線について求めた。
ERKのリン酸化はTrkBまたはTrkC受容体活性化の重要な下流の結果である。天然のリガンドBDNFとNT-3はそれぞれの受容体TrkBおよびTrkCによって用量依存的にp-ERKの細胞内レベルを増加させる。結果的にTrkBまたはTrkCを選択的に発現する細胞株におけるp-ERKの増加は、試験抗体がNT-3あるいはBDNFに比べて、どれくらい良くその受容体を活性化するのかという尺度である。これはEC50値(親和性の尺度)と、NT-3あるいはBDNFに関連する最大効果(有効性の尺度)の両方を決定することにより評価可能である。図5と表6は、NT-3が0.3nMのEC50でTrkCを発現する細胞中のp-ERKにおいて用量依存的な増加をもたらしたことを例証する。M1とM2はさらに、NT-3の場合に近いEC50値と最大効果値で用量依存的にp-ERKを増加させ、このことはこのような抗体がNT-3に類似する親和性と最大応答を備えるTrkCアゴニストであることを示している。2B7は、TrkCを発現する細胞中のp-ERKを同様に増加させるが、NT-3と比較して親和性と最大効果は低い。TrkCの推定されるD1ドメイン内のペプチドを用いて生成されたTrkC抗体C44H5は、最大で100nMまでの濃度ではアゴニスト効果がなかった。図6と表7は、BDNFが0.3nMのEC50でTrkBを発現する細胞中のp-ERKの用量依存的な増加をもたらしたことを例証する。M4とM5はさらに、EC50値がNT-3の場合に近いが最大効果はより低い用量依存的なやり方でp-ERKを増加させ、このことはこうした抗体がBDNFに類似する親和性を備えるTrkBアゴニストであることを示す。M3はさらにTrkBを発現する細胞中のp-ERKを増加させるが、BDNFと比較して親和性と最大効果は低い。
Figure 0007023461000020
Figure 0007023461000021
実施例11-ラットのらせん神経節ニューロン培養物中のTrkアゴニストの神経栄養効果
NT-3とBDNFは、TrkCとTrkBのそれぞれの受容体の活性化を通じて蝸牛内のらせん神経節ニューロンに栄養面の支援を行うことが知られている。結果的に、培養物中のラットらせん神経節ニューロンの生存は、ラット蝸牛組織中のTrkBあるいはTrkCを活性化し、それによって、らせん神経節ニューロンに栄養面のサポートを行う試験抗体の能力を判定するために使用可能である。
らせん神経節解剖と培養物:
両方の性別の生後のスプラーグドーリーラット(P2-4)をイソフルランで麻酔をかけて、首を切り落とした。側頭骨を取り除き、氷のように冷たいCa2+/Mg2+を含有するリン酸緩衝食塩水(PBS;Invitrogen)を含む細胞培養皿へ移した。顕微鏡的な可視化の下で、鉗子を用いて蝸牛嚢を側頭骨から慎重に取り除き、氷のように冷たいPBSを含む新しい細胞培養皿に移した。その後、細い鉗子を使用して蝸牛を蝸牛嚢から解剖した。血管条とコルチ器官を蝸牛の組織から取り除き、らせん神経節ニューロンをその後蝸牛軸から切り離した。らせん神経節ニューロンを含むこの鎖は、0.5mLの氷冷のCa2+/Mg2+を含まないハンクス液(HBSS;Invitrogen)を含んでいる1.5mLの微量遠心管に移した。いったん、これらの鎖(6匹の動物を表す)の~12を冷HBSS中に集め、酵素および機械的な解離を以下に記載されるように進めた。
1mg/mLのサーモリシン(Promega)と混合した0.5mLの温かい(37°C)HBSSを、(~1mLの量中の0.5mg/mLのサーモリシンの終濃度のための)らせん神経節収集物に加え、30-35分間37°Cでインキュベートした。その後、細胞は簡単に遠心分離機にかけ、上清を廃棄し、細胞を培地(10%のウシ胎児血清を備えるダルベッコ改変イーグル培地;以下を参照)で2度洗浄した。細胞を1mlの培地中に再懸濁し、4回の研和のために1000μlのピペットで機械的に解離させた。4回の研和後、細胞を簡単に遠心分離機にかけ、上清を40μmの細胞ストレーナ(Millipore)に塗布した。組織が完全に解離して、目に見える細胞集団がなくなるまで、これを繰り返した。トリパンブルーを使用してCountess II(Thermo Fisher)を駆使して残存細胞を数え、その後、96ウェルプレート(ポリ-L-オルニチンとラミニン(Corning)であらかじめコーティングされる)に播種し、その後、1ウェル当たり1.4×10細胞の密度で10ug/mLのポリ-L-リジンで3-4時間インキュベートした。
NT-3、BDNFおよび試験抗体を用いた処置は37°Cで4日間行われた。播種直後に、検査薬を10xの濃度で調製された培地に加え、接種された細胞に加えるときにその量を10倍に希釈した。翌日、付着した細胞を無血清培地で一度洗浄し、その後、新鮮な無血清培地を補充した。10倍の濃縮処置を再度、10倍希釈した細胞に加えた。培養物を固定させ、染色し、撮像する前に、さらに3日間インキュベータ内で維持した。
免疫組織化学:細胞を20分間冷たい4%パラホルムアルデヒド中で固定し、その後、0.5%トリトン(PBST)を含むPBS中で2度洗浄した。その後、細胞を、10%ヤギ血清を含むPBS-T中の一次抗体(Anti-200 kDNeurofilament Heavy 抗体;Abcam)において15RPM回転子上において室温で1-2時間インキュベートした。PBS中で3回洗浄した後、細胞を第2の抗体(ヤギ抗トリIgY H&L(Alexa Fluor(登録商標)488)血清吸着処理済み;Abcam)を用いて15RPM nutator上において室温において1時間でインキュベートした。その後、細胞を2度洗浄し、5-10分間DAPI核染色法で処置し、その後、画像化の前にPBSでもう2回洗浄した。各ウェル中で残存している多くのらせん神経節ニューロン(神経細糸着色によって識別された)の数を数えた。
NT-3とBDNFは両方とも培養物中のらせん神経節ニューロンの生存を支えた(図7)。典型的に、未処置のウェル中の0-1のニューロンと比較して、約10-20ニューロン/ウェルが1nMのNT-3では存在していた。1nM NT-3(100%まで正規化)と比較して、10nM BDNFの効果は92%であり、試験された抗体(M1-5、M7、2B7、1D7、およびANT-020)は、様々なレベルの栄養面のサポートを与えた。対照として使用されるアイソタイプ(マウスIgG1あるいはヒトIgG4)は、SGNの生存を支援しなかった。
実施例12-TrkCアゴニストmAb 2B7はTrkC.T1ではなくTrkC-FLに結合する。
細胞:HEK293細胞に、ヒトまたはラットの完全長TrkC(293-TrkC-FL)をコードするか、あるいは、ヒトTrkC.T1(293-TrkC.T1)をコードするプラスミドをトランスフェクトした。高レベルのTrkC-FLまたはTrkC.T1受容体を発現する安定的にトランスフェクトされた細胞株は、(ベクター、0.5mg/mlのG418、あるいは2mg/mlのピューロマイシン、あるいは、10mg/mlのblastocidinに依存して)薬物の選択中に生成され、サブクローン化された。
記載されるように(Guillemard et al. Dev Neurobiol 70:150-164, 2010)、FAC分析を行った。簡潔に言えば、細胞を、0.1mLの結合緩衝液中に再懸濁し、4°Cで20分間mAb 2B7または対照mIgGでインキュベートし、余分な一次抗体を取り除くために結合緩衝液中で洗浄し、および、4°Cで20分間FITC-mIgG2次抗体で免疫染色した。細胞を獲得し、Cell Questプログラムを用いてFACScan-BD Sciencesで分析した。陰性対照として、非原発性(背景蛍光)または無関係のマウスIgG(Sigma)を用いて、その後、第2の抗体を用いた。
ウェスタンブロット:TrkCタンパク質の定量化については、293-TrkCあるいは293-TrkC.T1細胞の洗浄剤溶解物を、MAb 2B7を用いるウェスタンブロッティングにより、あるいはTrkC.T1に特異的な抗体750により分析した。
図8Aで示されるように、2B7は平均のチャネル蛍光~300で、細胞表面TrkC-FLタンパク質との結合を示した。複数のアイソタイプと一致した対照は、すべて平均のチャネル蛍光~10で背景について示される。293-TrkC.T1細胞上のmAb 2B7(平均のチャネル蛍光~15)を使用して、細胞表面とのいかなる有意な結合も検知されなかった。図8Bでは、HEK293-TrkC-FLあるいはHEK293-TrkC.T1細胞の非還元ウェスタンブロットは、2B7だけが溶解物がTrkC-FL細胞を形成すること認識していることを示す。対照抗体750(mRNAスプライシングにより現われる細胞内の新エピトープに対する)だけがTrkC.T1を認識し、細胞がTrkC.T1タンパク質を発現することを実証している。これらのデータは、2B7がTrkCの切断した形態ではなく完全長の形態に特異的に結合することを示す。
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されているが、こうした実施形態はほんの一例として提供されている。本明細書に記載される実施形態の様々な代替物が本発明を実施する際に随意に用いられる。以下の請求項は本発明の範囲を定義するものであり、この請求項とその均等物の範囲内の方法、および構造体がそれによって包含されるものであるということが意図されている。

Claims (11)

  1. 耳の疾病の処置に使用するための耳科用組成物であって、治療上有効な量の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト及び薬学的に許容可能な担体を含み、ここで、非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、6.4.1(M2)、C2(M3)、C20(M5)、及びA10(M4)から成る群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントであり、CDRは、
    SEQ ID NO:8-10に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:11-13に対応する重鎖CDR1-3と、
    SEQ ID NO:14-16に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:17-19に対応する重鎖CDR1-3と、
    SEQ ID NO:26-28に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:29-31に対応する重鎖CDR1-3と、
    SEQ ID NO:32-34に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:35-37に対応する重鎖CDR1-3と、
    からなる群から選択され、
    前記耳の疾病は、聴器毒性、化学療法誘導性難聴、興奮毒性、感音性難聴、騒音性難聴、又は老人性難聴から成る群から選択される、ことを特徴とする耳科用組成物。
  2. 耳科用組成物は更に、
    (i)約0.001重量%~約60重量%の非天然のTrkB又はTrkCのアゴニスト、或いはその薬学的に許容可能な塩;
    (ii)約14重量%~約21重量%のポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレントリブロックコポリマー;
    (iii)pHが約5.5~約8.0になるように緩衝化された、適切な量の滅菌水;
    (iv)約19℃~約42℃のゲル化温度;及び
    (v)約100,000cP~約500,000cPの見掛粘度
    から選択される2以上の特徴を含む、ことを特徴とする請求項1に記載の耳科用組成物。
  3. 抗体又はその結合フラグメントは、モノクローナル抗体、二重特異性抗体、一本鎖抗体、二重特異性抗体、抗体フラグメントから形成された多重特異性抗体、タンデム型抗体、キメラ抗体、マウス抗体、ヒト化抗体、ベニヤ抗体、F(ab’)2フラグメント、Fab’フラグメント、Fabフラグメント、Fvフラグメント、Fcフラグメント、rIgGフラグメント、又はscFvフラグメントである、ことを特徴とする請求項1乃至2の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  4. 耳科用組成物は、非天然のTrkCのアゴニストを含み、前記非天然のTrkCのアゴニストは、6.4.1(M2)の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントであり、ここで、CDRはSEQ ID NO:8-10に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:11-13に対応する重鎖CDR1-3である、ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  5. 耳科用組成物は、非天然のTrkBのアゴニストを含み、前記非天然のTrkBアゴニストは、C2(M3)、C20(M5)、及びA10(M4)から成る群から選択される抗体の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントであり、CDRは、
    SEQ ID NO:14-16に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:17-19に対応する重鎖CDR1-3と、
    SEQ ID NO:26-28に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:29-31に対応する重鎖CDR1-3と、
    SEQ ID NO:32-34に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:35-37に対応する重鎖CDR1-3と、
    からなる群から選択される、
    ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  6. 非天然のTrkBのアゴニストは、C2(M3)の相補性決定領域(CDR)を含む、抗体又はその結合フラグメントであり、ここで、CDRはSEQ ID NO:14-16に対応する軽鎖CDR1-3、および、SEQ ID NO:17-19に対応する重鎖CDR1-3である、ことを特徴とする請求項5に記載の耳科用組成物。
  7. 非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、少なくとも3日又は少なくとも5日の期間にわたり組成物から放出される、ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  8. 非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストを含む耳科用組成物の投与は、耳の神経細胞の細胞増殖を誘発することにより感音性難聴を処置する、ことを特徴とする請求項1乃至7の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  9. 耳の疾病は、損傷を受けたリボンシナプス、神経変性、又はシナプス変性症を特徴とする、請求項1乃至8の何れか1つに記載の耳科用組成物。
  10. 非天然のTrkB又はTrkCのアゴニストは、TrkB又はTrkCの受容体を認識し、p75NTRを認識しない、ことを特徴とする請求項に記載の耳科用組成物。
  11. 耳科用組成物は、耳に許容可能な熱可塑性ゲルである、ことを特徴とする請求項1乃至10の何れか1つに記載の耳科用組成物。
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