以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
(実施の形態)
<1>衛生洗浄装置の全体構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の全体構成について、図1から図5を用いて説明する。
図1は、本発明の実施の形態における衛生洗浄装置を便器上に設置した状態の斜視図である。図2は、同衛生洗浄装置の本体の前本体ケースを取り外した状態の斜視図である。図3は、同衛生洗浄装置の本体の前本体ケースと制御部を取り外した状態の斜視図である。図4は、同衛生洗浄装置の操作部の上面の斜視図である。図5は、リモートコントローラの外観を示す斜視図である。
図1に示すように、本実施の形態の衛生洗浄装置100は、少なくとも本体200、便座300、便蓋320、リモートコントローラ400、人体検知センサ450などを主構成要素として構成される。本体200、便座300および便蓋320は一体で構成され、便器110の上面に設置される。
なお、以降では、衛生洗浄装置100の本体200の設置側を後方、便座300の設置側を前方とし、前方に向かって右側を右方、前方に向かって左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
操作部210は、本体200の右側側部に突出して、一体的に設けられる。便座便蓋回動機構360は、本体200の前部側に設けられ、便座300および便蓋320を開閉自在に駆動する。なお、便座便蓋回動機構360は、例えば直流モータと複数のギアで構成され、便座300と便蓋320を個別または同時に開閉する。
そして、図1に示すように、便蓋320を開放した場合、便蓋320は衛生洗浄装置100の最後部に位置するように起立する。一方、便蓋320を閉成した場合、便蓋320は便座300の上面を隠す。
便蓋320は、例えばPP(ポリプロピレン)やABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン)などの樹脂材料の成型による部材で構成され、二重構造と断熱材による断熱構造を備える。
便座300は、着座面を加熱する便座ヒータ(図示せず)を備える。便座ヒータは、便座300の着座面が快適な温度になるように加熱する。
また、着座センサ330は、便座300の回動軸を支持する本体200内の軸受部分に配置され、便座300に着座した人体を検知する着座検知部を構成する。着座センサ330は、例えば重量式のセンサで構成され、便座300に使用者が着座することによる重量変化でスイッチを開閉させる。これにより、着座センサ330は、便座300の着座面に使用者が着座しているか否かを検知する。
また、図2および図3に示すように、本体200の内部には、サブタンク600、熱交換器700、ノズル装置800を備える洗浄部500、散布ノズル550、脱臭装置120、制御部130などを備える。ノズル装置800は、例えば人体の局部を洗浄する洗浄ノズルであるお尻洗浄ノズル831などを有する。散布ノズル550は、便器内面に洗浄水または洗浄泡を散布する。脱臭装置120は、排便時の臭気を脱臭する。制御部130は、衛生洗浄装置100の各機能を制御する。なお、以降では、お尻洗浄ノズル831を、洗浄ノズルの例示として説明する場合がある。
洗浄部500の主構成要素であるノズル装置800は、本体200の内部の中央部に、設置される。ノズル装置800の右側で、かつ便器110上に載置して固定設置される本
体200の前方位置に散布ノズル550が設置される。ノズル装置800の左側に、脱臭装置120が設置される。ノズル装置800の左側部に、便座300と便蓋320を開閉駆動する便座便蓋回動機構360が設置される。
ノズル装置800の右側には、さらに、前方に洗浄部500の止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600などが設置される。ノズル装置800の後方には、熱交換器700が設置される。熱交換器700の後方には、吐水量可変部を構成する水ポンプ516が設置される。制御部130は、洗浄部500の上方に設置される。
また、図4に示すように、操作部210には、衛生洗浄装置100の各機能を操作および設定する複数のスイッチと表示灯240などが設置される。操作部210の内部には、操作基板(図示せず)が設置される。操作基板には、図示しない複数のタクトスイッチと複数のLED(発光ダイオード)が設置される。そして、操作部210の上面に貼付されたスイッチ銘板を介して、タクトスイッチの押圧操作とLEDの視認が可能となる。
また、操作部210は、上面後方に赤外線受信部211を備える。赤外線受信部211は、図1に示すリモートコントローラ400および人体検知センサ450から送信される赤外線信号を受信する。
操作部210のスイッチは、洗浄動作を操作する複数の操作スイッチ220と各種機能を設定する複数の設定スイッチ230などから構成される。また、表示灯240は、複数のLEDから構成され、本体200の設定状態を表示する。
操作部210の操作スイッチ220は、例えばお尻洗浄スイッチ221や、ノズル掃除スイッチ222から構成される。お尻洗浄スイッチ221は、リモートコントローラ400の電池切れや故障の場合に補助的に使用される。ノズル掃除スイッチ222は、ノズルの掃除を行う時に操作して、ノズルを清掃する。
操作部210の設定スイッチ230は、例えば温水温度スイッチ231、便座温度スイッチ232、8時間切りスイッチ233、節電スイッチ234、便蓋自動開閉スイッチ235などで構成される。
各スイッチは、使用者の押圧操作により、以下に示す動作を行う。
温水温度スイッチ231は、洗浄水の温度を設定する。便座温度スイッチ232は、便座300の温度を設定する。8時間切りスイッチ233は、設定すると便座300の保温を停止して8時間後に便座300の保温を再開する。節電スイッチ234は、衛生洗浄装置100が使用されない時間帯を自動的に学習して、使用されない時間帯に便座300の保温温度を下げて、節電を行う。便蓋自動開閉スイッチ235は、便座300および便蓋320の自動開閉動作を設定する。
なお、衛生洗浄装置100の多くの操作は、本体200とは別体で構成されたリモートコントローラ400で行われる。そのため、リモートコントローラ400は、便座300に着座した使用者が操作しやすいトイレルームの壁面などに取り付けられる。
リモートコントローラ400の全体形状は、図5に示すように、薄い直方体で形成される。リモートコントローラ400は、例えばPP(ポリプロピレン)やABSなどの樹脂材料で成型された箱状のリモコン本体401の上面および前面に、複数のスイッチと表示灯を備える。リモコン本体401の上部角部近傍には、リモートコントローラ400の操作信号を本体200に赤外線で送信する送信部402が配置される。
リモコン本体401の内部には、リモートコントローラ400の制御機能を構成する制御基板(図示せず)と、リモートコントローラ400の電源である電池(図示せず)などが内蔵される。
リモコン本体401の前面中央部には、例えばお尻洗浄スイッチ410、ビデ洗浄スイッチ411、停止スイッチ412、ムーブ洗浄スイッチ413、リズム洗浄スイッチ414などが配置される。
各スイッチは、使用者の押圧操作などにより、以下に示す動作を行う。
お尻洗浄スイッチ410は、お尻洗浄を開始する。ビデ洗浄スイッチ411は、女性の局部洗浄を洗浄するビデ洗浄を開始する。停止スイッチ412は、お尻洗浄とビデ洗浄を停止する。ムーブ洗浄スイッチ413は、お尻洗浄およびビデ洗浄時に洗浄位置を前後に周期的に移動させて広い範囲の洗浄を可能とする。リズム洗浄スイッチ414は、お尻洗浄時に洗浄強さを周期的に変化させて洗浄する。
リモコン本体401の前面上部には、例えば洗浄強さスイッチ415、洗浄位置スイッチ416、散布スイッチ417などが配置される。洗浄強さスイッチ415は、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄強さを2個のスイッチで調節する。洗浄位置スイッチ416は、お尻洗浄およびビデ洗浄時の洗浄位置を2個のスイッチで調整する。散布スイッチ417は、散布ノズル550から洗浄水または洗浄泡を吐出して、便器内面または洗浄ノズルの表面に散布する。
洗浄強さスイッチ415の上方には、洗浄強さを、例えば5段階で表示するLEDの強さ表示灯421が配置される。さらに、洗浄位置スイッチ416の上方には、洗浄位置を、例えば5段階で表示する位置表示灯422が配置される。
リモコン本体401の上面には、便蓋320を電動で開閉する便蓋スイッチ418と、便座300を電動で開閉する便座スイッチ419が設置される。そして、各スイッチの操作により、使用者が任意に便座300と便蓋320を開閉できるように構成される。ここで、上記便座300の開状態とは、例えば男子小便時のように便座300がおよそ垂直(垂直を含む)に立てられた状態である。一方、便座300の閉状態とは、便座300が便器110の上淵面とおよそ平行(平行を含む)になった状態である。なお、便座300の開状態または閉状態は、便座開閉検知部である便座開閉センサ331からの信号によって検知される。
また、図1に示す人体検知センサ450は、本体200とは別体で構成され、例えばトイレルームの壁面などに取り付けられる。人体検知センサ450は、図示しない、例えば焦電センサ、センサ制御部、赤外線送信部、人体検知センサ450の電源である電池などで構成される。焦電センサは、人体から放出される赤外線を受光する。センサ制御部は、焦電センサの信号で人体を検知する。赤外線送信部は、センサ制御部からの人体検知信号を本体200の制御部に赤外線で送信する。
以上のように、本実施の形態の衛生洗浄装置100が構成される。
<2>衛生洗浄装置の水回路構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の水回路の構成について、図6を用いて説明する。
図6は、同衛生洗浄装置の水回路の構成を示す模式図である。
なお、図6に示す洗浄部500は、本体200に内蔵され、使用者の局部を洗浄する。
図6に示すように、水回路を構成する洗浄部500は、少なくとも洗浄水を噴出するノズル装置800と、給水接続口510からノズル装置800に洗浄水を供給する一連の洗浄水供給流路690などから構成される。
洗浄水供給流路690には、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファタンク750、吐水量可変部を構成する水ポンプ516、流調弁517などが、順次設置される。そして、最終的に、洗浄水供給流路690は、ノズル装置800に接続される。
給水接続口510は、本体200の右側下方に配置され、例えば外部の水道配管と接続される。ストレーナ511は、給水接続口510の内部に配置され、水道水に含まれるごみなどの流入を防止する。逆止弁512は、サブタンク600内に貯溜された水が水道配管に逆流することを防止する。
定流量弁513は、逆止弁512の下流に配置され、洗浄水供給流路690に流れる洗浄水の量を一定に保つ。止水電磁弁514は、制御部130の信号に基づいて、洗浄水供給流路690を電動で開閉する。定流量弁513と止水電磁弁514およびリリーフ弁515は、図7に示すように、一体で構成される。
サブタンク600は、止水電磁弁514の下流に配設され、大気開放口603を備える。熱交換器700は、洗浄水を瞬時に加熱する。バッファタンク750は、熱交換器700で加熱された温水の温度を均一にする。
吐水量可変部を構成する水ポンプ516は、バッファタンク750の下流に接続される。ノズル装置800は、水ポンプ516の下流に配置され、流調弁517を介して水ポンプ516と接続される。流調弁517のそれぞれのポートは、ノズル装置800のお尻洗浄ノズル831、ビデ洗浄ノズル832、ノズルクリーニング部833などと接続される。
また、図6に示すように、分岐流路530は開閉弁530aを備え、洗浄水供給流路690の水ポンプ516と流調弁517との間で分岐して配置される。分岐流路530は、洗浄水供給流路690と泡発生部560とを接続する。
泡発生部560は、逆止弁531、泡タンク532、洗剤タンク533、洗剤ポンプ534および空気ポンプ535などで構成される。
分岐流路530は、逆止弁531を介して、泡発生部560の泡タンク532に洗浄水を供給する。
散布ノズル550は、泡タンク532の下流に接続され、散布ノズル駆動部550aにより回転駆動される。洗剤タンク533および洗剤ポンプ534は、泡タンク532に接続され、泡タンク532に洗剤を供給する。
空気ポンプ535は、洗浄水および洗剤が供給された泡タンク532に空気を送り込み、洗剤の場合、洗浄泡を生成させる。そして、生成された洗浄泡や洗浄水などを、泡タン
ク532から散布ノズル550に供給する。
なお、図6に示す破線は、各構成要素が、制御部130と電気的に接続され、制御されることを示している。
また、図7および図8に示すように、洗浄部500を構成する部材のうち、給水接続口510、ストレーナ511、逆止弁512、定流量弁513、止水電磁弁514、リリーフ弁515、サブタンク600、熱交換器700、バッファタンク750、水ポンプ516は、シャーシ501に組み込まれる。シャーシ501は、例えばABSなどの樹脂材料で成型され、図2に示すように、本体200の後本体ケース201に組み付けられる。
具体的には、ストレーナ511と逆止弁512は、給水接続口510と一体に組み込まれる。定流量弁513とリリーフ弁515は、止水電磁弁514と一体に組み込まれる。バッファタンク750は、熱交換器700と一体に構成される。
給水接続口510と止水電磁弁514、止水電磁弁514とサブタンク600、およびサブタンク600と熱交換器700とは、接続チューブなどを介さず、相互の接続口を、例えばOリング(図示せず)などのパッキンを介して直接接続される。そして、上記水回路を構成する各部材は、シャーシ501の所定の位置に設置固定される。
上記構成により、水密構造を実現するとともに、相互の部材の配置精度が向上する。特に、サブタンク600と熱交換器700との配置精度が向上する。これにより、洗浄水の流量の制御精度が向上する。その結果、洗浄部500の性能の向上と、流量の制御精度が向上する。
つぎに、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の構成について、図7および図8を参照しながら、図14および図15を用いて説明する。
図14は、同水回路の水ポンプの外観を示す斜視図である。図15は、同水ポンプの断面図である。
図14および図15に示すように、水ポンプ516は、例えば外形が略L字状(L字状を含む)の容積型ポンプであるピストンポンプで構成される。水ポンプ516は、略円筒形(円筒形を含む)のモータ部516aと、リンク機構部516bと、ピストン部516cなどで構成される。リンク機構部516bは、モータの回転運動を往復運動に変換する。ピストン部516cは、リンク機構部516bの往復運動で駆動され、洗浄水を吸引、排水する。そのため、ピストン部516cは、外面に、接続口として吸水口516dと吐出口516eを有する。
なお、本実施の形態の水ポンプ516の場合、往復運動を伴うリンク機構部516bとピストン部516cに比べ、回転運動のみであるモータ部516aで発生する振動が少ない構成となる。
具体的な水ポンプ516の動作は、まず、モータ部516aを駆動すると、ピストン部516cは往復運動を開始する。これにより、ピストン部516cは、吸水口516dから洗浄水を吸引して、吐出口516eから洗浄水を吐出する。このとき、吐出口516eから吐出する洗浄水は、ピストン部516cの往復運動に伴い、適度の脈動を伴った水流で吐出される。
さらに、上記構成の水ポンプ516の略円柱形(円柱形を含む)のモータ部516aの
外周は、弾性を備えた発泡樹脂製の緩衝部材(図示せず)で包囲される。モータ部516aは、シャーシ501の後部に設けられた略円筒形(円筒形を含む)の水ポンプ設置部501aに挿入される。これにより、水ポンプ設置部501aは、モータ部516aを支持する。このとき、リンク機構部516bとピストン部516cは、下方に垂れ下がるように懸架された状態で設置される。
なお、図7に示すように、水ポンプ設置部501aは、薄い肉厚のABS樹脂などで形成され、シャーシ501の底面から起立したリブ状の脚部501bの上部に形成される。これにより、水ポンプ設置部501aを構成する樹脂の弾性により、水ポンプ516の振動を効果的に吸収できる。
また、バッファタンク750が一体に形成された熱交換器700の接続口である出湯口712と、水ポンプ516の接続口である吸水口516dとは、軟質樹脂製の接続チューブ502(図8参照)で接続される。
上述したように、本実施の形態の水ポンプ516は、振動の少ないモータ部516aが、緩衝部材を介して、シャーシ501の薄い肉厚で形成された水ポンプ設置部501aに設置される。一方、振動が多く発生するリンク機構部516bとピストン部516cは、フリーな状態で懸架して設置される。さらに、ピストン部516cなどは、バッファタンク750と軟質樹脂製の接続チューブ502(図8参照)を介して接続される。これにより、水ポンプ516の駆動時に発生する振動が、シャーシ501、他の部材や本体200に伝わること抑制する。その結果、衛生洗浄装置100の使用時の快適性と耐久性などが向上する。
特に、水ポンプ516は、発泡樹脂製の緩衝部材と、水ポンプ設置部501aを形成する弾性を備えた樹脂との、2つの異なる材質の部材を介して支持される。そのため、広い範囲の周波数の振動を吸収できる。これにより、本体200への振動の伝達を、さらに効果的に抑制できる。
以上のように、本実施の形態の衛生洗浄装置100の水回路が構成される。
<3>サブタンクの構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置のサブタンクの構成について、図9から図11を用いて説明する。
図9は、同水回路のサブタンクの外観を示す斜視図である。図10は、同サブタンクの横方向の断面図である。図11は、同サブタンクの前後方向の断面図である。
まず、図9に示すように、サブタンク600は、少なくとも、例えばABSなどの樹脂材料により成型されたタンク本体610と、水位検知センサ620と、入水温度センサ630などから構成される。水位検知センサ620は、タンク本体610に貯溜された洗浄水の水位を検知する。入水温度センサ630は、例えばサーミスタなどで構成され、タンク本体610内に供給される洗浄水の温度を検知する。
タンク本体610は、タンクの前壁、両側壁、底面、天面を構成する前部タンク611と、タンクの後壁を構成する後部タンク612と、タンク本体610の天面に配置された大気開放部613などの3個の部材で構成される。タンク本体610の全体的な形状は、前壁、後壁、両側壁、底面、天面からなる複数の平面で形成され、図10に示すように、平面視で見た場合の形状が、略四角形(四角形を含む)で形成される。前部タンク611の前壁は、途中から後退する傾斜部を備える。つまり、図11に示すように、側面視で見
た場合の形状においては、タンク本体610は、下部より上部が細くなった略台形形状(台形形状を含む)で形成される。これにより、タンク本体610の上部の断面積が下部より小さい断面積となる。
また、タンク本体610の前部タンク611の一方の側壁下部には入水口601が、タンク本体610の後部タンク612の後壁下部には出水口602が設けられる。
タンク本体610の天面に配置された大気開放部613は、タンク本体610の内部と外部を連通する大気開放口603を備える。大気開放口603は、タンク本体610内に溜まった空気を外部に放出し、タンク本体610の内部圧力を、常時、大気圧に維持する。これにより、サブタンク600の内部が大気圧に維持され、サブタンク600の下流から水ポンプ516の吸水口516dまでの洗浄水供給流路690も大気圧に維持される。そのため、水ポンプ516は、供給される水道水などの水圧変動の影響を受けずに、ノズル装置800に洗浄水を供給できる。その結果、水ポンプ516は、安定したポンプ機能を発揮できる。
また、図10に示すように、水ポンプ516内で大気開放部613の大気開放口603と連通する流路613bは、流路613bの一部の断面積が大きいバッファ部613aを有する。バッファ部613aは、大気開放口603から気泡を伴って洗浄水が衝撃的に流出しようとした場合などに、洗浄水を、一旦貯溜する。これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを抑制する。
さらに、タンク本体610の内部は、仕切壁614を有する。仕切壁614は、タンク本体610の内部を入水槽615と貯溜槽616の、2つの槽に分割する。タンク本体610は、入水槽615の側面(前部タンク611)の底面近傍に入水口601を、貯溜槽616の後壁(後部タンク612)の底面近傍に出水口602を備える。
つまり、タンク本体610は、仕切壁614で入水槽615と貯溜槽616が形成される。これにより、入水口601から流入した洗浄水に空気が含まれている場合、空気は、入水槽615の上部より大気開放口603を通過して外部に放出される。そのため、貯溜槽616に空気を含まない洗浄水のみを流入させることができる。
また、タンク本体610の入水槽615の上方に、入水槽615の上面開口部615aと大気開放部613の間に介在する障壁617を、タンク本体610の前部タンク611の側壁より略水平方向(水平方向を含む)に突出して設けている。障壁617は、入水槽615の上面開口部615aの全面を覆う大きさを有する。
さらに、入水槽615は、内部に、複数の整流リブ618を備える。整流リブ618は、タンク本体610の前部タンク611の側壁と仕切壁614に、略水平方向(水平方向を含む)に交互に突出して設けられる。
つぎに、サブタンク600内の洗浄水の流れについて、説明する。
サブタンク600の入水口601から流入した洗浄水は、まず、入水槽615の下部に流入する。流入した洗浄水は、整流リブ618で流れの方向を変化させながら入水槽615内を上昇する。このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合、整流リブ618は、流れを適度に整流化する。さらに、整流リブ618は、整流リブ618の下流側で渦を発生させ、渦により洗浄水内に含まれる空気を分離する。
入水槽615内を上昇し、空気が分離された洗浄水は、仕切壁614の上端を乗り越えて貯溜槽616に流入して貯溜される。このとき、入水口601から流入する洗浄水の圧力が高い場合、あるいは大量の空気を含んで著しく流れが乱れている場合でも、障壁617により、洗浄水は上方(大気開放部613側)への流れが抑制される。つまり、直接、大気開放部613に当たり、大気開放口603からサブタンク600外部への洗浄水の流出が、障壁617により防止される。
上述したように、サブタンク600の入水口601から流入した洗浄水は、入水槽615内を上昇する間に、整流リブ618などにより、洗浄水に含まれる空気が分離される。分離された空気は、大気開放口603からタンク本体610外に放出される。これにより、貯溜槽616に空気を含まない洗浄水が貯溜され、サブタンク600の出水口602から熱交換器700に洗浄水が供給される。
なお、サブタンク600から熱交換器700に供給される洗浄水に空気が混入している場合、熱交換器700の内部で気泡が発生する。これにより、熱交換器700の内部の温度が異常に上昇して、熱交換器700が損傷する場合がある。そこで、本実施の形態のサブタンク600は、内部に仕切壁614を設け、洗浄水から空気を分離して、空気の混入を防止する。そして、洗浄水のみを熱交換器700に供給する。これにより、熱交換器700の損傷を効果的に防止する。
また、図10および図11に示すように、サブタンク600は、内部にステンレス材料で形成された、共通の電極となるコモン電極621と、水位ごとに設置された複数の水位電極622で構成される水位検知センサ620を備える。なお、本実施の形態では、1個のコモン電極621と2個の水位電極622で構成した例で示しているが、これに限られない。
コモン電極621は、タンク本体610の前壁下部の内面に配置される。水位電極622は、タンク本体610の後壁の内面に配置される。さらに、水位電極622は、上部に設けられる上限電極623と、下部に設けられる下限電極624で構成される。コモン電極621は、水位電極622の下限電極624より低い位置で、かつ通常の使用状態においては、常に洗浄水中に浸水する位置に配置される。
つまり、コモン電極621と、水位電極622である上限電極623および下限電極624とを異なる面に設置する。これにより、タンク本体610の内面に付着した残水を、貯溜水として誤検知することを抑制できる。
ここで、水位電極622による洗浄水の水位の検知方法について、以下に説明する。
まず、コモン電極621と水位電極622との間に直流電圧を印加する。そして、水位電極622が、洗浄水中に浸水しているか否かを、電圧の変化により検知する。これにより、タンク本体610の洗浄水の水位を検知する。つまり、貯溜槽616の水位が上昇すると、下限電極624および上限電極623が浸水する。このとき、コモン電極621と下限電極624および上限電極623との間の電圧が低下する。これにより、制御部130は、電圧の低下から洗浄水の水位を検知する。
また、水位電極622の上限電極623は上限水位の検知に、下限電極624は下限水位の検知に使用される。そのため、上限電極623は、大気開放口603より低い位置に設置される。これにより、大気開放口603から洗浄水が流出することを防止する。また、下限電極624は、熱交換器700へ通流する出水口602より上方に設置される。これにより、熱交換器700に空気が流入することを防止できる。
以上のように、本実施の形態のサブタンク600が構成されている。
<4>熱交換器の構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の熱交換器の構成について、図12および図13を用いて説明する。
図12は、同水回路の熱交換器の外観を示す斜視図である。図13は、同熱交換器の断面図である。
なお、本実施の形態の熱交換器700は、バッファタンク750と一体に形成され、熱交換器700の上部にバッファタンク750が設置される。
まず、熱交換器700は、正面視(図13参照)で略長方形(長方形を含む)の平板状で形成される。熱交換器700は、少なくとも、例えばABS樹脂にガラス繊維をコンパウンドした強化ABS樹脂で成型されたケーシング701と、セラミック製の平板状ヒータ702と、出湯部材703などから構成される。
ケーシング701は、前面部を構成する前面部材710と、背面部を構成する背面部材720で構成される。平板状ヒータ702は、前面部材710と背面部材720との間に形成される空間に設置される。また、加熱流路715は、前面部材710と平板状ヒータ702との対向部と、背面部材720と平板状ヒータ702との対向部との、隙間で形成される。
以上のように構成された熱交換器700は、加熱流路715を流れる洗浄水を平板状ヒータ702で瞬時に加熱して、昇温させる。
また、熱交換器700は、前面部材710の前面下端の右側に接続口である入水口711を備え、前面部材710の右側面上端に設置された出湯部材703の接続口である出湯口712を備える。
さらに、図13に示すように、入水口711に連なる入水流路713がケーシング701の下端部の略全幅(全幅を含む)に亘り設けられる。入水流路713の上面には、全幅に亘り複数のスリット714が設けられる。そして、入水流路713に流入した洗浄水が、スリット714を通過して加熱流路715へ流入するように構成される。なお、スリット714は、洗浄水を加熱流路715の全幅に亘り均等に流入させる機能を有する。
また、加熱流路715の上端部には仕切リブ716が設けられ、仕切リブ716より上方にバッファタンク750が設けられる。仕切リブ716には、略全幅(全幅を含む)に亘り複数の通水孔717が設けられる。これにより、加熱流路715で加熱された洗浄水は、通水孔717を通過してバッファタンク750内に流入する。
さらに、バッファタンク750内には、例えば断面形状が略半円形(半円形を含む)の突起718が、略全幅(全幅を含む)に亘り間隔をあけて設けられる。突起718は、バッファタンク750内を出湯口712に向かって流れる洗浄水の流れを乱す。これにより、洗浄水が混ざり合って洗浄水の温度むらが解消される。その結果、均一な温度の洗浄水が出湯口712より出湯される。
出湯部材703には、出湯温度センサ730と、過昇温度センサ731の2個のサーミスタが設置される。出湯温度センサ730は、洗浄水の出湯温度を検知する。過昇温度セ
ンサ731は、熱交換器700の過昇温度を検知する。これにより、制御部130は、熱交換器700から出湯する洗浄水の温度を制御する。
以上のように、本実施の形態の熱交換器700が構成される。
<5>ノズル装置の構成
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置のノズル装置の構成について、図16から図28を用いて説明する。
図16は、本実施の形態におけるノズル装置の収納状態を示す斜視図である。図17は、図16に示す17-17線断面図である。図18は、同ノズル装置の収納状態を示す縦断面図である。図19は、図18に示すB部の詳細断面図である。図20は、図19に示す20-20線断面図である。図21は、同ノズル装置の収納状態を示す横断面図である。図22は、図21に示すC部の詳細断面図である。図23は、同ノズル装置のお尻洗浄状態を示す縦断面図である。図24は、図23に示すD部の詳細断面図である。図25は、同ノズル装置のビデ洗浄状態を示す縦断面図である。図26は、図25に示すE部の詳細断面図である。図27は、同ノズル装置のビデ洗浄状態を示すノズル部の横断面図である。図28は、図27に示すF部の詳細断面図である。
ノズル装置800は、図16に示すように、少なくとも支持部810と、ノズル部820と、洗浄ノズル駆動部860と、流調弁517などで構成される。支持部810は、例えばPOM(ポリオキシメチレン:polyoxymethylene)やABSなどの樹脂材料で成型した、側面視において略三角形(三角形を含む)の枠状で形成される。ノズル部820は、支持部810に沿って進退移動する。洗浄ノズル駆動部860は、ノズル部820を駆動して進退移動させる。流調弁517は、ノズル部820への洗浄水の供給を切り替える。
なお、以降のノズル装置800の説明では、ノズル部820の収納方向を後方とし、ノズル部820の進出方向を前方とし、後方より前方に向かって右側を右方、左側を左方として各構成要素の配置を説明する。
支持部810は、略水平(水平を含む)な底辺部811に対して、後部より前部に向かって降下した傾斜部812と、底辺部811と傾斜部812の後端を接合する縦辺部813からなる枠状で形成される。傾斜部812には、ノズル部820の進退移動を案内するガイドレール814と、洗浄ノズル駆動部860の可撓ラック861(図17参照)を案内するラックガイド815(図17参照)が略全長(全長を含む)に亘って形成される。傾斜部812の前端下方には、ノズル部820を抱囲するように支持する略円筒形(円筒形を含む)の抱持部816が一体に形成される。
また、図16に示すように、ノズル部820を案内するガイドレール814は、断面が略T字状(T字状を含む)に形成される。可撓ラック861を案内するラックガイド815は、断面視において、一方の側面が開放された略U字状(U字状を含む)を有し、可撓ラック861の上下面と一方の側面とを規制して案内する構成を備える。
ラックガイド815は、傾斜部812から支持部810の後部の縦辺部813と底辺部811にも連続して形成される。ラックガイド815の傾斜部812と縦辺部813、および縦辺部813と底辺部811とのコーナは、例えば円弧形状で接続される。なお、縦辺部813と底辺部811に形成されるラックガイド815の断面形状も略U字状(U字状を含む)で形成される。一方、ラックガイド815の側面は、傾斜部812では左側面が開放され、縦辺部813と底辺部811では反対の右側面が開放される。これにより、
摺動抵抗を低減するとともに、より確実に可撓ラック861を案内できる。そして、ラックガイド815の縦辺部813と底辺部811の開放面は、例えば別部材の支持部蓋などにより閉塞される。
洗浄ノズル駆動部860は、ノズル部820に結合された可撓ラック861と、可撓ラック861と噛合するピニオンギア862と、ピニオンギア862を回転駆動する駆動モータ863などで構成される。洗浄ノズル駆動部860は、ノズル部820をガイドレール814に沿って進退移動させる。
駆動モータ863は、例えばステッピングモータで構成され、パルス信号により回転角度が制御される。そして、駆動モータ863の回転により、ピニオンギア862を介して、可撓ラック861を駆動する。
支持部810の抱持部816の内周面とノズル部820の外周面との間には、間隙が設けられる。これにより、ノズル部820から噴出した洗浄水が、間隙に流入してノズル部820の外周面を洗浄するように構成される。
また、ノズル蓋801は、抱持部816の前方に開閉自在に設けられ、ノズル部820の進退により開閉する。そして、ノズル部820が収納されている状態でノズル蓋801を閉塞する。これにより、ノズル部820が便などで汚染されることを防止する。
支持部810の底辺部811には、洗浄水供給流路690に接続する給水チューブ(図示せず)と、支持部810から流調弁517に洗浄水を供給する接続チューブ802とを相互に接続する給水継手817が設けられる。
ノズル部820は、図21に示すように、少なくとも、例えばABSなどの樹脂材料で成型された棒状のノズル本体830と、ノズルカバー840と、連結部850などで構成される。ノズルカバー840は、筒状で形成され、ノズル本体830の略全体(全体を含む)を覆う。連結部850は、ノズル本体830でノズルカバー840を牽引する。
ノズル部820のノズル本体830は、図6に示すように、局部を洗浄するお尻洗浄ノズル831と、女性の局部を洗浄するビデ洗浄ノズル832と、ノズル部820をクリーニングするノズルクリーニング部833などを備える。
お尻洗浄ノズル831は、図23および図24に示すように、ノズル本体830の先端部に上方に開口したお尻洗浄噴出口834と、ノズル本体830の後端よりお尻洗浄噴出口834に連通するお尻洗浄流路835で構成される。お尻洗浄流路835は、ノズル本体830の下部側に設置され、お尻洗浄噴出口834の下方で上方に向かって屈曲する屈曲部が設けられる。屈曲部には、洗浄水の流れを整流する整流板835aが設置される。これにより、お尻洗浄噴出口834から噴出する洗浄水は、ノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ビデ洗浄ノズル832は、図25および図26に示すように、お尻洗浄噴出口834の後方に配置されたビデ洗浄噴出口836と、ノズル本体830の後端よりビデ洗浄噴出口836に連通するビデ洗浄流路837で構成される。ビデ洗浄噴出口836から噴出する洗浄水は、ノズルカバー840の噴出開口844を通過して上方に向かって噴出される。
ノズルクリーニング部833は、図27に示すように、ノズル本体830の側面に配置されたノズルクリーニング噴出口838と、ノズル本体830の後端よりノズルクリーニング噴出口838に連通するノズルクリーニング流路839で構成される。ノズルクリー
ニング噴出口838から噴出する洗浄水は、ノズルカバー840の内部に噴出され、ノズルカバー840の排水口845からノズルカバー840の外部に放出される。なお、ノズルクリーニング噴出口838から噴出する洗浄水は、ノズル部820とその周辺の清掃に使用される。
また、ノズル部820の前方は、支持部810の抱持部816に挿入した状態で支持される。ノズル部820の後部は、ガイドレール814に懸架された状態で摺動自在に設置される。ノズル部820は、図16に示すノズル部820を抱持部816より後方に収納された収納位置と、図23に示すノズル部820が抱持部816より突出したお尻洗浄位置と、図25に示すビデ洗浄位置との間を進退可能に構成される。
ノズルカバー840は、図21に示すように、ノズルカバー本体841と連結部材842から構成される。ノズルカバー本体841は、例えばステンレスの薄板を円筒状に加工し、先端面は閉塞面、後端面は開放面で形成される。連結部材842は、例えばABSなどの樹脂材料で成型された略円筒状(円筒状を含む)で形成され、両側部にノズル本体830と係合する連結片843(図22参照)を備える。
連結部材842の後端右側には、ノズルカバー840の摺動範囲を規制するノズルカバーストッパ(図示せず)が一体に形成される。ノズルカバーストッパは、支持部810に形成された前ストッパ受部と後ストッパ受部(図示せず)に当接することにより、ノズルカバー840の摺動範囲を規制する。
連結部材842の一部は、ノズルカバー本体841の後端の開口よりノズルカバー本体841内に挿入された状態で固定され一体化される。
ノズルカバー本体841の前方上面には、ノズル本体830のお尻洗浄噴出口834およびビデ洗浄噴出口836と対向可能な噴出開口844が、例えば1個設けられる。ノズルカバー本体841の前方下面には、ノズルカバー本体841内に流出した洗浄水を外部に排出する排水口845が設けられる。
なお、ノズルカバー840の内径は、ノズル本体830の外径より僅かに大きい寸法を有する。これにより、ノズルカバー840にノズル本体830を挿入した状態で、ノズル本体830とノズルカバー840が互いにスムーズに摺動可能に構成される。
ノズル本体830の後端面には、流調弁517が設置される。流調弁517は、図6に示すように、例えばディスクタイプの弁本体517aと、切り替え動作を駆動するステッピングモータ517bで構成される。流調弁517は、切り替えにより、お尻洗浄流路835と、ビデ洗浄流路837と、ノズルクリーニング流路839に選択的に洗浄水を供給する。
流調弁517の弁本体517aの外面には、流調弁517に洗浄水を供給する給水口517c(図16参照)が設置される。給水口517cは、支持部810の給水継手817と接続チューブ802を介して接続され、連通する。
つぎに、本実施の形態におけるノズルカバー840の連結部材842とノズル本体830の連結受部851で構成される連結部850について、図22および図28を用いて説明する。
図22および図28に示すように、ノズル本体830の後端部の外周右側には、連結受部851が形成される。連結受部851は、2本の略V字形状(V字形状を含む)の、前
方の前凹陥部851aと後方の後凹陥部851bの溝で形成され、前後に間隔をあけて配置される。なお、前凹陥部851aと後凹陥部851bの間隔は、お尻洗浄噴出口834とビデ洗浄噴出口836の間隔と等しい寸法で設けられる。
一方、ノズルカバー840の連結部材842は、略円筒状(円筒形を含む)の、例えばABSやPOMなどの樹脂材料で成型され、後部両側部に後方に突出した連結片843を備える。連結片843は、後端部に、内方に突出した略V字形状(V字形状を含む)の連結突起843aを備える。
そして、ノズル本体830をノズルカバー840に挿入すると、弾性によりノズルカバー840の連結部材842の連結突起843aが、ノズル本体830の連結受部851に、常時、押し当てられる。このとき、連結突起843aが、前凹陥部851aまたは後凹陥部851bのいずれかに係合されると、ノズル本体830とノズルカバー840が連結された状態となる。これにより、ノズルカバー840は、ノズル本体830に牽引されて移動することが可能となる。
なお、図22に示すように、連結突起843aが前凹陥部851aに入り込んでいる状態では、図26に示すように、ノズル本体830のビデ洗浄噴出口836とノズルカバー840の噴出開口844が対向した状態となる。一方、図28に示すように、連結突起843aが後凹陥部851bに入り込んでいる状態では、図19および図24に示すように、お尻洗浄噴出口834と噴出開口844が対向した状態となる。これにより、所定の噴出口から洗浄水を噴出させることが可能となる。
以上のように、本実施の形態のノズル装置800が構成される。
<6>洗浄部の制御と作用動作
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の洗浄部の制御と作用および動作について、説明する。
はじめに、洗浄部500の基本的な作用および動作について、図6および図26を参照しながら、以下に説明する。
まず、水道配管を流れる水道水が、洗浄水として給水接続口510から供給される。そして、止水電磁弁514が開放されると、サブタンク600へ洗浄水が送給される。このとき、洗浄水供給流路690内を流れる洗浄水の流量は、定流量弁513により一定に維持される。なお、止水電磁弁514の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づいて、制御部130により制御される。
つぎに、サブタンク600に送給された洗浄水は、サブタンク600内に貯溜されるとともに、熱交換器700および吐水量可変部を構成する水ポンプ516に送給される。そして、制御部130は、水ポンプ516を駆動して、洗浄水を、流調弁517を介してノズル装置800に送給する。なお、水ポンプ516の駆動は、リモートコントローラ400および操作部210の操作に基づいて、制御部130により制御される。
つぎに、制御部130は、熱交換器700の平板状ヒータ702に通電して、洗浄水の加熱を開始する。このとき、制御部130は、入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知情報に基づいて、平板状ヒータ702への通電を制御する。つまり、制御部130は、洗浄水が操作部210の温水温度スイッチ231で設定された温度に維持されるように制御する。
つぎに、制御部130は、操作部210およびリモートコントローラ400の操作情報に基づいて、流調弁517の切り替えを制御する。つまり、制御部130は、流調弁517を、ノズル装置800のお尻洗浄ノズル831、ビデ洗浄ノズル832、ノズルクリーニング部833のいずれかに切り替えて、洗浄水を供給する。これにより、お尻洗浄噴出口834、ビデ洗浄噴出口836、ノズルクリーニング噴出口838のいずれかの噴出口から洗浄水を噴出させる。
以下に、本実施の形態のサブタンク600に関わる制御、特に水位検知と流量検知について、詳細を説明する。
まず、本実施の形態の衛生洗浄装置100の初期使用時における洗浄部500の制御について、図29を用いて説明する。
図29は、同衛生洗浄装置の初期使用時における洗浄部のタイミングチャートである。なお、初期使用時とは、衛生洗浄装置100の設置後に初めて使用する場合、あるいは凍結防止のために水抜き操作を実施した後に再使用する場合など、洗浄部に洗浄水が貯溜されていない状態に相当する。
図29に示すように、時点P1で、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)を、使用者が操作する。これにより、制御部130は、止水電磁弁514に通電して、サブタンク600内に洗浄水の供給を開始する。同時に、水位検知センサ620の駆動を開始する。なお、水位検知センサ620の駆動は、時点P14のお尻洗浄の停止後に後洗浄が終了し、サブタンク600に洗浄水が供給されて、水位検知センサ620が上限水位を検知するまで継続される。
つぎに、時点P2で、水位検知センサ620が上限水位を検知すると、制御部130は、時間計測を開始する。そして、所定時間が経過した時点P3において、止水電磁弁514の通電を停止し、洗浄水の供給を停止する。
なお、本実施の形態では、上限水位を検知後、例えば2秒後に通電を停止する。この理由は、上限水位を検知した時点P2において、通常、サブタンク600内と熱交換器700内は満水状態になっている。ここで、さらに2秒間余分に送給を継続する。これにより、熱交換器700および水ポンプ516内を、より確実に洗浄水で充満させて、熱交換器700内などの空気を排除する。その結果、残留空気に起因する熱交換器700の空焚きを、より確実に防止して、安全性や耐久性を向上できる。同時に、吐水量可変部を構成する水ポンプ516へ洗浄水を確実に送給して満水状態にできる。これにより、満水状態の水ポンプ516を起動して、より確実に洗浄水をノズル部820に送水できる。
つぎに、制御部130は、止水電磁弁514の通電を停止した時点P3で、水ポンプ516の駆動を開始する。同時に、流調弁517を駆動して、例えばノズル部820のお尻洗浄流路835に、洗浄水の供給を開始する。このとき、水ポンプ516の駆動により、サブタンク600内の洗浄水の水位が低下し、時点P4で、水位検知センサ620は上限水位の検知を解消する。そこで、時点P4において、制御部130は、熱交換器700の駆動を開始する。つまり、水位の低下の検知により、水ポンプ516の正常な作動が確認できる。これにより、空焚きなどの熱交換器700の異常な温度上昇を防止できる。
お尻洗浄流路835に供給された洗浄水は、お尻洗浄噴出口834より噴出する。噴出した洗浄水は、噴出開口844を通過して支持部810の先端に設けられた抱持部816の内面にあたって反射する。これにより、ノズルカバー840の外周面をクリーニングす
る。以降では、上記クリーニング動作を、「前洗浄」と称する。なお、前洗浄は熱交換器700の出湯温度が、例えば25℃に到達してから、2秒後の時点P5まで継続される。
つぎに、時点P5で前洗浄が終了すると、制御部130は、ノズル装置800の洗浄ノズル駆動部860の駆動を開始する。そして、ノズル部820を収納位置からお尻洗浄位置へと進出させる。このとき、制御部130は、収納位置からお尻洗浄位置への移動の間、流調弁517を切り替えて、ノズルクリーニング流路839に洗浄水を供給する。ノズルクリーニング流路839に供給された洗浄水は、ノズルクリーニング噴出口838よりノズルカバー840の内部に噴出する。噴出した洗浄水は、ノズルカバー840の内面を洗浄した後に排水口845からノズルカバー840の外部に流出する。その間、ノズル部820は、熱交換器700で加熱された洗浄水により温められる。これにより、その後に実施されるお尻洗浄時において、冷水の噴出を未然に防止して、使用者の不快感を抑制できる。
つぎに、ノズル部820がお尻洗浄位置に到達した時点P6で、制御部130は、流調弁517を切り替えて、お尻洗浄流路835に洗浄水の供給を開始する。お尻洗浄流路835に供給された洗浄水は、お尻洗浄噴出口834より噴出する。そして、洗浄水は、噴出開口844を通過して使用者の局部を洗浄する。なお、お尻洗浄は、例えば使用者が洗浄停止の操作を行う時点P11まで継続される。
このとき、制御部130は、熱交換器700の駆動中、入水温度センサ630と出湯温度センサ730の検知データに基づいて、洗浄水の温度を設定された温度になるように制御する。
なお、時点P3から水ポンプ516の駆動を継続すると、サブタンク600内の洗浄水の水位は、徐々に低下する。そこで、水位検知センサ620が下限水位を検知した時点P7で、制御部130は、止水電磁弁514に通電を開始し、洗浄水を供給する。その後、制御部130は、水位検知センサ620が上限水位を検知する時点P8まで、止水電磁弁514への通電を継続する。
上限水位を検知した時点P8で、制御部130は、止水電磁弁514の通電を停止するとともに、時間計測を開始する。そして、つぎに水位検知センサ620が下限水位を検知する時点P9までの経過時間を計測する。
つぎに、下限水位を検知した時点P9で、制御部130は、計測した経過時間と、上限水位から下限水位までの水量(例えば、65cc)とを演算して、流量を算出する。流量演算処理部による演算が終了した時点P10で、洗浄強さごとに設定された流量と、噴出した流量とに差がある場合、制御部130は水ポンプ516の出力を調整して、洗浄水の流量を補正する。
つぎに、使用者が操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄停止の操作を行う時点P11で、制御部130は、水ポンプ516と熱交換器700への通電を停止する。同時に、制御部130は、ノズル装置800の洗浄ノズル駆動部860を駆動して、ノズル部820をお尻洗浄位置から収納位置へと後退させる。
ノズル部820が収納位置に後退した時点P12で、制御部130は、洗浄ノズル駆動部860の駆動を停止する。同時に、制御部130は、水ポンプ516と熱交換器700を、再度駆動して、ノズル部820をクリーニングする「後洗浄」を開始する。
つぎに、所定時間が経過した時点P13で、制御部130は、水ポンプ516と熱交換
器700の駆動を停止する。これにより、「後洗浄」が終了する。
つぎに、ノズル部820の後洗浄が終了した時点P13で、制御部130は、止水電磁弁514に再度通電して、サブタンク600に洗浄水を供給する。そして、水位検知センサ620が上限水位を検知した時点P14で、制御部130は、止水電磁弁514への通電を停止し、お尻洗浄の一連の制御を終了する。これにより、サブタンク600は上限水位の満水状態で、洗浄部500は待機状態となる。
以上により、本実施の形態の衛生洗浄装置100の初期使用時における洗浄部の制御が実行される。
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置100の通常使用時における洗浄部の制御について、図30を用いて説明する。
図30は、同衛生洗浄装置の通常使用時における洗浄部のタイミングチャートである。なお、通常使用時とは、初期使用時を以前に実施した待機状態にある衛生洗浄装置で、洗浄動作を実施する場合に相当する。
ここで、図30に示す通常使用時の洗浄部の制御は、洗浄操作を行う時点P20で、サブタンク600が既に満水状態である点と、制御部130が初期使用を実施したことを記憶している点で、図29に示す初期使用時の洗浄部の制御とは異なる。
まず、図30に示すように、時点P20のサブタンク600が満水状態の待機状態において、操作部210またはリモートコントローラ400の洗浄スイッチ(例えば、お尻洗浄スイッチ221または410)を、使用者が操作する。これにより、制御部130は、水ポンプ516に通電して、所定のノズル部へ洗浄水の供給を開始する。同時に、初期操作の制御を既に実施した記憶データに基づいて、熱交換器700の通電を開始する。
そして、ノズル装置800の「前洗浄」動作を、同時に開始する。さらに、制御部130は、水位検知センサ620の駆動を開始する。
つまり、図29で説明した初期使用時の場合と、通常使用時の場合とは、洗浄操作をした時点から熱交換器700の通電開始の時点までの制御が異なる。なお、ノズル装置800の駆動が開始される時点P5以降の制御や作用および動作は、図29と同様であるので、説明は省略する。
上述したように、本実施の形態の衛生洗浄装置は、サブタンクに設けた水位検知センサにより洗浄水の水位の変化を検知し、流量を演算により算出する。これにより、洗浄部に、流量を検知する専用の流量センサなどを別途設ける必要がない。その結果、洗浄部の構成を簡素化して、コストの削減を図ることができる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、水位検知における電極間の出力電圧の変化を判定する閾値を温度により補正する。これにより、水位検知と流量検知の精度を向上させ、広い範囲で導電率の異なる水を衛生洗浄装置の洗浄水として使用することが可能となる。その結果、衛生洗浄装置の使用範囲と使い勝手を、さらに向上させることができる。
また、本実施の形態の衛生洗浄装置は、初期使用時において、サブタンクの満水状態を検知した後、所定時間、通水を継続する。同時に、水ポンプの駆動後に、さらに水位検知センサが上限水位の解消を検知した場合、熱交換器への通電を開始する。これにより、熱交換器へ、確実に洗浄水が供給されていると判断できる、その結果、熱交換器の空焚きを
防止できる。そのため、一般的な流量センサを使用して空焚きを防止する構成に比べて、シンプルな構成にできる。その結果、低コストで、高い安全性と信頼性を備える衛生洗浄装置を実現できる。
以上のように、本実施の形態における衛生洗浄装置の洗浄部の制御と作用および動作が実行される。
<7>散布ノズルによる便器内面への吐出の制御と作用動作
以下に、本実施の形態における衛生洗浄装置の散布ノズルによる便器内面への吐出制御と作用および動作について、図31から図34を用いて説明する。
図31は、同衛生洗浄装置の散布ノズルの外観を示す斜視図である。図32は、同散布ノズルの縦断面図である。図33は、同衛生洗浄装置における散布ノズルの設置位置および散布ノズルの吐出口の回転角度を示す平面図である。図34は、同散布ノズルの吐出口の回転角度における吐水量可変部のポンプ出力を示すチャートである。
散布ノズル550は、図31および図32に示すように、散布ノズル駆動部550aと、ボディ550cと、回転ノズル550dなどから構成される。散布ノズル駆動部550aは、例えばモータなどで構成され、回転ノズル550dを回転駆動する。ボディ550cは、入り口流路550bと入り口孔550hを備え、図6に示す泡発生部560で生成した洗浄泡や洗浄水などを回転ノズル550dに供給する。さらに、ボディ550cは、内部に、Oリング550e、Oリング550fで軸シールされた回転ノズル550dを回転自在に保持する。なお、Oリング550fの代わりにXリングを用いてもよい。これにより、回転ノズル550dの回転駆動に必要なトルクを小さくできる。また、回転ノズル550dの固着を、より確実に防止できる。その結果、散布ノズル駆動部550aに、小型・低トルクのモータを使用できる。
また、回転ノズル550dは、回転駆動体のシャフト550nを介して、散布ノズル駆動部550aと嵌合され、回転駆動される。
以上のように、本実施の形態の散布ノズル550が構成され、以下のように動作する。
まず、図6の泡発生部560で生成される洗浄水または洗浄泡は、散布ノズル550のボディ550cの入り口流路550bから供給される。供給された洗浄水または洗浄泡は、回転ノズル550dの周囲に開けられた、ボディ550cの複数の入り口孔550hから回転ノズル550d内に供給される。その後、回転ノズル550dの吐出口550uから、便器の内面やお尻洗浄ノズル831などに向けて吐出される。
散布ノズル550は、図33に示すように、本体200の中央より右側に配置される。この理由は、人体局部を洗浄するお尻洗浄ノズル831などを中央に優先的に配置するためである。そのため、散布ノズル550は、中央ではなく、左右どちらかに配置される。なお、上記配置は、逆にしてもよいことは言うまでもない。
つぎに、散布ノズル550の洗浄泡などの吐出制御について、図6を参照しながら、説明する。
なお、以下では、使用者が非着座状態で、かつ便座が閉状態の場合における散布ノズル550の吐出制御について、説明する。
まず、衛生洗浄装置100の制御部130は、使用者がトイレルームに入室すると、人
体検知センサ450で、人の入室を検知する。同時に、制御部130は、便器泡散布の動作に移行して、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の運転を開始する。さらに、制御部130は、分岐流路530の開閉弁530aを開く。
この場合、お尻洗浄ノズル831やビデ洗浄ノズル832、ノズルクリーニング部833などへの流路の切り替えを行う流調弁517は、閉止状態である。そのため、熱交換器700からの洗浄水は、分岐流路530および、泡発生部560を構成する逆止弁531、泡タンク532を介して、散布ノズル550に供給される。供給された洗浄水は、散布ノズル550の吐出口550uから便器の内面やお尻洗浄ノズル831などに向けて吐出される。
このとき、制御部130は、散布ノズル駆動部550aを駆動して、散布ノズル550の回転ノズル550dの吐出口550uを回転駆動する。これにより、吐出口550uから吐出される洗浄水または洗浄泡は、便器内面の全周やお尻洗浄ノズル831などに散布され、水膜または泡膜を形成する。これにより、汚物などの付着を未然に防止する。
なお、図33に示すように、散布ノズル550の吐出口550uから便器内面までの距離は、散布ノズル550の回転角度方向により異なる。
つまり、上述した位置に配置した散布ノズル550の回転角度を変化させる場合、図33に示すように、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度が160°のとき、吐出口550uから便器内面までの距離が最も長く(遠く)なる。一方、吐出口550uの回転角度が340°(上記160°から180°回転した位置に相当)のとき、吐出口550uから便器内面までの距離が最も短く(近く)なる。
そこで、制御部130は、図34に示すように、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の出力を変化させるように制御する。
以下に、散布ノズル550の回転角度に応じて、水ポンプ516の出力を制御する方法について、説明する。
まず、制御部130は、使用者のトイレルームへの入室を人体検知センサ450で検知すると、上記制御を開始する。
つぎに、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の出力を、図34のように、「高」から「低」の範囲で変化させながら洗浄泡などを吐出する。
具体的には、図33に示す便器内面までの距離が最も長く(遠く)なる回転角度160°付近で、制御部130は水ポンプ516の出力を大(高)とする。一方、便器内面までの距離が最も短く(近く)なる回転角度340°付近で、制御部130は水ポンプ516の出力を小(低)にする。
つまり、制御部130は、散布ノズル550の回転角度、すなわち吐出口550uと便器内面との距離に応じて、吐出口550uからの洗浄泡や洗浄水の噴出量(および噴出速度)を制御する。
より具体的には、散布ノズル550の吐出口550uから最も遠い距離に位置する便器前方へ洗浄泡や洗浄水を吐出する場合、水ポンプ516の出力を「高」にして、洗浄泡や
洗浄水を最も強い勢いで吐出する。これにより、便器前方の内面まで、充分に洗浄泡や洗浄水を行き届かすことができる。
一方、散布ノズル550の吐出口550uから最も近い距離に位置する便器後方へ洗浄泡や洗浄水を吐出する場合、水ポンプ516の出力を「低」にして、洗浄泡や洗浄水を最も弱い勢いで吐出する。これにより、洗浄泡や洗浄水の跳ね返りなどの不具合の発生を未然に防止する。
そして、使用前に予め便器内面全体に洗浄水または洗浄泡を吐出して水膜または泡膜を形成する、これにより、使用時における汚れの付着を未然に抑制できる。
また、本実施に形態では、人体検知センサ450で使用者のトイレルームへの入室を検知した場合や、操作部210またはリモートコントローラ400を介して使用者が散布スイッチ417を操作した場合、便器の内面に洗浄泡を散布する。このとき、制御部130は、図34に示すように、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の出力を変化させながら、便器内面に洗浄泡を散布する。具体的には、制御部130は、まず、散布ノズル駆動部550aを正回転(例えば、時計回り)させて、散布ノズルの吐出口550uの方向を便器後方から便器前方を経て便器後方に移動させながら洗浄泡を散布する。さらに、制御部130は、散布ノズル駆動部550aを逆回転(例えば、反時計回り)させて、散布ノズル550の吐出口550uの方向を便器後方から便器前方を経て便器後方に戻る方向に移動させながら洗浄泡を散布する。つまり、便器内周面に亘って、散布ノズル550の吐出口550uを正逆方向に回転移動させて、少なくとも一往復の回転動作により洗浄泡を散布する。
これにより、洗浄泡が便器110のリム110a付近まで届くように吐水量可変部の出力を制御して、洗浄泡を便器110内面のほぼ全周(全周を含む)に散布できる。その結果、便器前方から後方の内面まで泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
なお、この場合、制御部130は、図34に示すように、散布ノズル駆動部550aの正回転時における吐水量可変部の出力を、散布ノズル駆動部550aの逆回転時より低い出力で洗浄泡を吐出するように制御してもよい。このとき、図33の点線で示す洗浄泡の散布移動軌跡TFのように、正回転(時計回り)においては、散布ノズルの吐出口550uの方向を便器110のリム110aより内側の喫水面110bに近い側に洗浄泡が散布される。一方、逆回転(反時計回り)においては、図33の破線で示す散布移動軌跡TRのように、散布ノズルの吐出口550uの方向を、便器110のリム110aに近い側に洗浄泡が散布される。
これにより、洗浄泡の散布開始の初期(正回転時)において、まず便器110の排出口115上部の喫水面110bを洗浄泡で覆うことができる。その後、逆回転時において、リム110aに近い便器110内面のほぼ全周に洗浄泡を散布できる。その結果、便器前方から後方の内面まで泡膜を形成して、汚れの付着を効果的に抑制できる。
また、本実施の形態では、散布ノズル550を、図2で示すように、便器110上に載置して固定設置される本体200の前方の位置に配置する。つまり、洗浄ノズルを収納位置からお尻洗浄またはビデ洗浄位置まで突出させて人体洗浄するノズル装置800が収納された状態の前方先端位置よりも、前方側に散布ノズル550を設置する。そのため、回転駆動時において、散布ノズルの吐出口550uの方向を便器110の後方に向けて、洗浄泡を散布できる。これにより、便器110の前方から後方の内面まで、洗浄泡の泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
なお、上記では、正回転は図33の上方から見て、時計回り回転を正回転、反時計回り回転を逆回転として説明したが、これに限られない。例えば、正回転が反時計回り回転で、逆回転が時計回り回転でもよい。つまり、洗浄泡の散布時において、散布ノズルの吐出口550uが回転を始める方向を正回転、戻る方向を逆回転と称しているもので、回転方向を限定するものではない。
以上のように、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、水ポンプ516の出力を変化させる。これにより、距離の異なる便器内面の前方、側方、後方へ、洗浄水または洗浄泡を確実に行き届くように吐出できる。その結果、便器内面の広い範囲に水膜または泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
なお、上記実施の形態では、水ポンプ516の出力の平均レベル「中」を基準に、「高」および「低」を設定する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、水ポンプ516の出力の平均レベル「中」自体を高く、または低くして、基準レベルを変更できるように構成してもよい。この場合、平均レベルを調整するレベル切り替えスイッチを、操作部210またはリモートコントローラ400に設けることが好ましい。これにより、衛生洗浄装置100を設置する便器110の大きさなどが異なる場合でも、洗浄水または洗浄泡を便器内面の全周に行き届くように吐出することができる。さらに、便器110の内面に散布する洗浄泡の高さ位置(水平面に対する)を、任意に変更できる。その結果、便器内面の全体に、より確実に水膜または泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
また、上記実施の形態では、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、水ポンプ516の出力を変化させる吐出制御を例に説明したが、これに限られない。例えば、水ポンプ516の出力の変化に加えて、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、散布ノズル駆動部550aの回転速度を変化させるように制御してもよい。
つまり、本実施の形態では、水ポンプ516の出力を変化させて、洗浄水または洗浄泡の吐出の勢いを変化させている。これにより、洗浄水または洗浄泡を遠い便器内面まで確実に散布するとともに、近い便器内面での跳ね返りを効果的に抑制している。
しかし、散布ノズル550の吐出口550uを一定の回転速度で回転した場合、便器内面までの距離が遠い箇所では、洗浄泡や洗浄水の散布密度が疎になる。一方、便器内面までの距離が近い箇所では、洗浄泡や洗浄水の散布密度が密になる。
そこで、本実施の形態において、上述したように、さらに、吐出口550uの回転角度に応じて、散布ノズル駆動部550aで散布ノズル550の回転速度を変化させる。これにより、便器内面の全周に対して、洗浄水または洗浄泡の散布密度を、より均等にできる。
なお、水ポンプ516の出力を変化させて洗浄泡や洗浄水を散布する場合でも、洗浄泡や洗浄水の散布密度を、ある程度は均等にできる。
しかし、散布ノズル550の回転角度に応じて、散布ノズル駆動部550aの回転速度を変化させて洗浄泡や洗浄水を散布すると、散布密度を、より均等にできる。言い換えると、洗浄泡や洗浄水を、散布ノズル550の吐出口550uから吐出させて、便器内面の全周に亘って、より均等な散布密度で散布できる。
つまり、回転速度が一定の場合、図33に示すように、散布ノズル550の吐出口550uから最も遠い距離となる回転角度160°付近、すなわち便器の前方へ散布される洗
浄水または洗浄泡は、分散して散布密度が疎になる。そこで、洗浄泡や洗浄水を便器前方へ吐出する場合、散布ノズル550の回転速度を最も遅くする。これにより、散布ノズル550の吐出口550uが便器前方近傍を通過する時間を長くして、散布密度を高める。
一方、散布ノズル550の吐出口550uから最も近い距離となる回転角度340°付近、すなわち便器の後方へ吐出される洗浄泡や洗浄水は、集合して散布密度が密になる。そこで、散布ノズル550の回転速度を最も速くする。これにより、散布ノズル550の吐出口550uが便器後方近傍を通過する時間を短くして、散布密度を低める。
その結果、便器内面に散布される洗浄水または洗浄泡の散布分布を、回転速度によらず、均等化(濃淡をなくす)にできる。そのため、便器内面の全周に亘って、より効果的に汚れの付着を抑制できる。
以上のように、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、散布ノズル駆動部550aの回転速度を変化させる。例えば、散布ノズル550の吐出口550uの方向が、便器内面までの距離が長い便器前方に向かう回転角度の場合、散布ノズル駆動部550aの回転速度を小(低速)とする。一方、吐出口550uの方向が、便器内面までの距離が短い便器後方に向かう回転角度の場合、散布ノズル駆動部550aの回転速度を大(高速)とする。
これにより、距離の異なる便器の前方、側方、後方へ、洗浄水または洗浄泡を、散布密度のムラなく、均等に吐出できる。その結果、便器内面に均等に形成した水膜または泡膜により、より効果的に汚れの付着を抑制できる。
ここで、本実施の形態においては、制御部130は、人体検知センサ450で人の入室を検知すると、散布ノズル550から便器内面に、予め洗浄水または洗浄泡を散布するように制御する。具体的には、制御部130は、便器に洗浄泡などを散布するとき、散布ノズル駆動部550aで回転ノズル550dを、例えば少なくとも1往復、回転駆動しながら泡散布して自動停止するように制御する。これにより、使用者が衛生洗浄装置を使用する前に、便器内面に水膜または泡膜を形成する。その結果、使用時における、便器内面への汚れの付着を効果的に抑制できる。
なお、上記では、使用前に散布ノズル550を1往復回転させて洗浄泡や洗浄水を散布する例で説明したが、これに限られない。例えば、散布される洗浄泡や洗浄水が便器内面に充分に行き亘る回数であれば、回数は任意である。この場合、便器内面に洗浄泡を散布する往復回数は、使用者が操作部210またはリモートコントローラ400により選択設定することができる。
また、上記実施の形態では、散布ノズル550の回転方向は、特に言及せず、図34で示すように、回転ノズル550dを1往復回転する構成としている。この理由は、散布ノズル550の回転ノズル550dを、右方向または左方向のうち、いずれか一方向のみに全周回転する構成の場合、洗浄水または洗浄泡の散布方向が常に同じ方向となる。そこで、本実施の形態のように往復回転で散布することにより、正逆回転による二方向から洗浄泡や洗浄水を、便器内面に散布できる。これにより、いわゆる散布抜け部の発生を、より少なくできる。そのため、より均一に便器内面に洗浄泡や洗浄水が行き亘る散布が可能になる。その結果、少ない散布回数(時間)で、汚れの付着を抑制できる。なお、上記往復回転は、1往復に限られず、2往復または3往復などの複数回に設定してもよいことはいうまでもない。
具体的には、図34に示すように、まず、便器の前方側に相当する回転角度0°から回
転角度340°まで、散布ノズル550の回転ノズル550dを正回転(例えば、時計回り)して、一旦停止する。その後、回転角度340°から回転角度0°まで、回転ノズル550dを逆回転(例えば、反時計回り)して、往復回転後に停止する。
この場合、散布ノズル550の回転ノズル550dの回転可能な範囲を回転角度0°から回転角度340°に規制する、例えば機械的ストッパである回転規制部(図示せず)を設ける。
具体的には、回転規制部は、例えば回転ノズル550dの外周の一部に形成された突起と、ボディ550cの回転規制壁により構成する。この構成より、突起が回転して回転規制壁と物理的に当接すると、回転しようとする回転ノズル550dの動作が規制される。つまり、散布ノズル駆動部550aを構成するモータが、当接により、スリップして空転する。これにより、回転ノズル550dは、回転可能な範囲以上の回転ができないように構成される。
以上のように、上記構成の散布ノズル550は、回転範囲を規制する回転規制部を設け、回転規制部で規制されていない回転可能な範囲内で散布ノズル550を往復回転する。そして、往復による逆方向、すなわち正逆回転による二方向から洗浄泡や洗浄水を便器内面に散布する。これにより、いわゆる散布抜け部の発生が少なくなる。そのため、より均一に便器内面に洗浄泡や洗浄水が行き亘る散布が可能となる。その結果、少ない散布回数(時間)で、汚れの付着を抑制できる。
また、上記構成の散布ノズル550は、散布ノズル駆動部550aを構成するモータで駆動される回転ノズル550dの突起が回転規制部と当接した位置で、常に、散布ノズル駆動部550aの回転位置の原点として認識させることができる。つまり、散布ノズル550の回転ノズル550dの往復動作による原点のズレは発生しない。これにより、便器内面に対する回転角度の位置精度を高めることができる。そのため、便器内面の所定の位置に対して、位置ズレなどのばらつきを小さくできる。その結果、便器内面の正確な回転角度位置に、適切な吐出出力や回転速度で、散布ノズル550の吐出口550uから洗浄泡や洗浄水を散布ができる。
なお、上記では、物理的に、散布ノズル550の回転範囲を規制する構成で説明したが、これに限られない。散布ノズル550の原点の位置ズレが問題にならない場合、単に、散布ノズル駆動部550aで散布ノズル550の正逆回転動作を行ってもよい。これにより、回転規制部が不要になるとともに、正逆回転や一方向回転など多様な動作が可能になる。その結果、便器内面の汚れなどの状況に応じて、より適切な動作を実現できる。この場合、反転する回転角度160°近傍に設定して、その近傍で回転速度を徐々に遅くすることが好ましい。これにより、散布ノズル駆動部550aの急激な反転時に加わる負荷を軽減できる。
以下に、本実施の形態の衛生洗浄装置の泡発生部560の構成について、説明する。
泡発生部560は、図6を用いて、上述したように、吐水量可変部を構成する水ポンプ516と、流調弁517との間の洗浄水供給流路690から分岐された分岐流路530に、開閉弁530aを介して接続される。そして、開閉弁530aの開閉により、分岐流路530を介して泡発生部560に洗浄水が供給される。
泡発生部560は、逆止弁531、泡タンク532、洗剤タンク533、洗剤ポンプ534、空気ポンプ535などから構成される。泡タンク532は、逆止弁531を介して、分岐流路530に接続される。
泡タンク532の下流には、上述した散布ノズル550が接続される。泡タンク532は、洗剤ポンプ534を介して、洗剤を供給する洗剤タンク533と接続される。
泡タンク532は、さらに空気ポンプ535と接続される。空気ポンプ535は、泡タンク532に空気を送り込み、洗浄泡などを発生させる。そして、空気ポンプ535は、洗浄水や発生した洗浄泡を散布ノズル550に供給する。
以上のように、泡発生部560は構成され、以下のように動作する。
まず、制御部130は、開閉弁530aを開く。そして、制御部130は、水ポンプ516を駆動して、熱交換器700から泡発生部560の泡タンク532に、洗浄水を送水する。
このとき、泡タンク532内では、洗剤ポンプ534により洗剤タンク533から供給される洗剤と、熱交換器700から供給された洗浄水が混合される。
つぎに、制御部130は、空気ポンプ535を駆動して、泡タンク532内に空気を供給する。これにより、泡タンク532内で、洗浄泡が生成される。生成された洗浄泡は、散布ノズル550に供給され、回転ノズル550dの吐出口550uから、便器内面に吐出される。
このとき、水ポンプ516および空気ポンプ535の出力の増減に応じて、散布ノズル550から吐出される洗浄水または洗浄泡の吐出量および吐出の勢い(吐出速度および吐出圧)が増減される。これにより、図34を用いて説明したと同様に、便器内面に洗浄泡や洗浄水を均等に散布できる。つまり、泡発生部560の空気ポンプ535も、水ポンプ516と同様に、吐水量可変部として機能する。
なお、上記では、分岐流路530に開閉弁530aを設けた構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、分岐流路530と洗浄水供給流路690の分岐部に流路切換弁を設ける構成としてもよい。
つまり、本実施の形態の泡発生部560は、開閉弁530aと散布ノズル550との間に泡タンク532を備える。泡タンク532は、洗剤タンク533から洗剤が供給されて洗浄泡を生成する。生成された洗浄泡は、散布ノズル550の吐出口550uから便器内面に吐出する構成を有する。
これにより、便器内面に水または温水の散布による単なる水膜ではなく、洗剤を含む洗浄泡による泡膜が形成される。その結果、洗浄泡により、汚れの付着を、さらに効果的に抑制できる。
また、洗剤を含む洗浄泡により、汚物などから発生する臭いを効果的に抑制できる。さらに、洗浄泡は、使用者に対して、視覚的に清潔なイメージを与える。その結果、使用者の快適感が、より向上する。
なお、上記実施の形態では、便器内面への洗浄水または洗浄泡の散布を、人体検知センサ450で人の入室を検知した場合に実行する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、操作部210またはリモートコントローラ400に設けた散布スイッチ417を、人が操作することにより、散布を実行する構成としてもよい。これにより、衛生洗浄装置であるトイレを使用しない場合でも、便器内面の汚れが気になる場合、便器内面に洗
剤を含む洗浄泡などを散布して、汚れを落とすことができる。さらに、喫水面110bなどに乾いた頑固な汚れが付着することを未然に防止できる。つまり、使用者が散布スイッチ417を操作することにより、いつでも洗剤を含む洗浄泡による泡膜を便器内面に形成できる。その結果、便器内面を清潔に維持できる。
また、上記実施の形態において、便器内面に洗浄水と洗浄泡のどちらを散布するかを、予め、使用者が操作部210またはリモートコントローラ400の散布選択スイッチ(図示せず)で、任意に選択する構成を備えてもよい。これにより、便器内面の汚れ具合や、臭いなどの発生状況に応じて、任意に選択できる。その結果、洗剤の無駄な使用を抑制して、コストパフォーマンスなどが向上する。
また、上記実施の形態において、便器内面に洗浄泡を散布する場合、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの回転角度に応じて、図34を用いて説明した水ポンプ516の出力と同様に、空気ポンプ535の出力を変化させる構成としてもよい。つまり、空気ポンプ535を、吐水量可変部として用いてもよい。これにより、距離の異なる便器内面の前方、側方、後方へ、洗浄泡や洗浄水を効果的に行き届くように吐出することができる。その結果、便器前方の内面まで泡膜や水膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
具体的には、図34で説明したと同様に、散布ノズル550の吐出口550uから便器内面までの距離が最も長く(遠く)なる回転角度160°付近で、制御部130は空気ポンプ535の出力(空気圧)を大(高)にする。これにより、空気ポンプ535による空気圧を高めて、散布ノズル550の吐出口550uから洗浄泡や洗浄水を遠くまで飛ばす勢いを強めることができる。
一方、吐出口550uから便器内面までの距離が最も短く(近く)なる回転角度340°付近で、空気ポンプ535の出力(空気圧)を小(低)にする、これにより、空気ポンプ535による空気圧を低くして、洗浄泡や洗浄水を飛ばす勢いを弱くできる。つまり、散布ノズル550の吐出口550uから便器内面までの距離に応じて、空気ポンプ535から排出する空気圧を調整する。その結果、洗浄泡や洗浄水を便器内面に、万遍なく、かつ均一に吐出できる。
また、上記実施の形態において、例えばCCD(Charge Coupled Device)などの撮像素子で便器の汚れを検知する汚れ検知部(図示せず)を、さらに備える構成としてもよい。このとき、制御部130は、汚れ検知部の検知結果に基づいて、汚れが残っている部分を往復して、散布ノズル550から集中的に洗浄泡や洗浄水を散布させる。これにより、付着する汚れを、効果的に抑制、除去できる。なお、汚れ部分のみを往復する方法以外に、汚れ部分を通過する散布ノズル550の吐出口550uの回転速度を、より低速で回転駆動してもよい。さらに、汚れ部分を通過する際に、水ポンプ516や空気ポンプ535の出力をより増大させる構成としてもよい。これにより、同様の効果が得られる。
以上のように本実施の形態の衛生洗浄装置は、便器110に起倒自在に設置された便座300と、便座を起倒自在に支持する本体200と、洗浄水を加熱する熱交換器700と、人体を洗浄する洗浄ノズル831と、洗浄泡を生成する泡発生部560と、便器内面に洗浄水または洗浄泡を吐出する散布ノズル550を備える。さらに、散布ノズルへ送出する洗浄水または洗浄泡の流量を可変する吐水量可変部516と、散布ノズルの吐出口550uを所定の方向に回転駆動する散布ノズル駆動部550aと、散布ノズルへの分岐流路を開閉する開閉弁530aと、制御部130と、操作部210を備える。そして、制御部130は、便器内面の高さが異なる複数の周囲領域に、散布ノズル550から洗浄水また
は洗浄泡を散布するように、散布ノズル550を制御する構成を備える。
これにより、散布ノズル550から洗浄泡を便器110に散布する時に、制御部130は、図33に示すように、便器110の内面の高さ位置が高い領域と、それよりも低い領域のほぼ全周に散布できる。その結果、便器110内面の前方から後方の周囲領域に亘って、泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
以上では、散布ノズルによる便器内面へ洗浄泡を吐出する制御と作用および動作を、非着座状態で、かつ便座閉状態において実行する例で説明した。
つまり、制御部130は、散布ノズル550の吐出口550uの方向を、広い回転角度範囲で回転させる。このとき、制御部130は、吐水量可変部を構成する水ポンプ516の出力を、「低」から「高」までの出力で制御し、洗浄泡を便器内面の全周に吐出する。これにより、洗浄泡を便器内面の広い範囲に行き届くように吐出させる。その結果、便器内面の広い範囲に泡膜を形成して、汚れの付着を効果的に抑制できる。
なお、上記の水ポンプ516を「高」の出力で制御するという意味は、後述の<8>項および<9>項で説明する動作条件における水ポンプ516の出力に比べて、相対的に出力が高いことを意味する。
<8>着座状態における散布ノズルによる便器内面への吐出制御と作用および動作
以下に、使用者が便座300に着座した状態で、散布スイッチ417を操作する場合における、散布ノズル550の吐出制御について、図35Aおよび図35Bを用いて説明する。
図35Aは、同散布ノズルによる便器内面への吐出動作におけるポンプ出力を示す説明図である。図35Bは、同散布ノズルによる便器内面への吐出方向を示す説明図である。
この場合、便座開閉検知部331は便座閉状態を、着座検知部330は着座状態を検知する。
上記状態において、使用者が、操作部210またはリモートコントローラ400の散布スイッチ417を押す。
これにより、制御部130は、図35Bに示すように、まず、散布ノズル550の吐出口550uの方向が便器後方に向く位置まで、散布ノズル駆動部550aを駆動する。そして、散布ノズル550の駆動を停止する。なお、便器後方とは、本実施の形態の場合、図35Aに示すように吐出口550uの回転角度が、例えば100°付近の位置(図33参照)に相当する。なお、上記回転角度に限定されず、例えば反時計回りに100°から240°程度の範囲内であればよい。
つぎに、吐水量可変部を構成する水ポンプ516または空気ポンプ535の吐出出力を「低」の出力で制御する。そして、図35Bの矢印で示す方向に向けて、散布ノズル550から洗浄泡を便器後方近傍に所定時間吐出する。なお、本実施の形態では、所定時間は、例えば8秒間に設定している。
つまり、上記条件の場合、洗浄泡は、便器後方の位置に、弱い勢い(「低」の出力)で吐出される。そのため、便座300に着座している使用者に、吐出した洗浄泡が飛び散る虞がない。さらに、便器後方に散布された洗浄泡は、便器内の喫水面110bまで覆う。これにより、排泄に伴う、臭いの拡散および便器内面の汚れの付着を抑制できる。
また、便器内の喫水面110bを覆う洗浄泡は、使用者が着座状態で排泄した大便・小便が喫水面110bに落下する際、クッションの役目を果たす。その結果、洗浄泡のクッション効果により、便器の周囲や使用者への跳ね返りを抑制できる。
上記散布ノズル550の動作によれば、制御部130は、使用者が着座状態で、かつ便座が閉状態において、散布スイッチ417により泡散布信号が入力された場合、散布ノズル550の吐出口550uの方向が便器後方に向く位置まで散布ノズル駆動部550aを駆動して停止する。その後、水ポンプ516や空気ポンプ535を「低」の出力で制御して、洗浄泡を便器後方に吐出する。
つまり、使用者が便座300に着座した状態の場合、洗浄泡を便器内面の後方に向けて弱い勢いで吐出する。これにより、洗浄泡が使用者に飛び散ることなく、排出口115の喫水面110bを洗浄泡で覆うことができる。その結果、排泄時の臭いの拡散および便器内面の汚れの付着を抑制できる。
<9>便座開・非着座状態における散布ノズルによる吐出制御と作用および動作
以下に、男子小便時のように、使用者が便座300に着座しない状態で、かつ便座300がほぼ垂直に開いた状態において、使用者が散布スイッチ417を操作した場合における、散布ノズルの吐出制御について、図36Aおよび図36Bを用いて説明する。
図36Aは、同散布ノズルによる便器内面への吐出動作におけるポンプ出力を示す説明図である。図36Bは、同散布ノズルによる便器内面への吐出方向を示す説明図である。
この場合、使用者は立位姿勢であるため、便座300は開いた状態である。つまり、便座開閉検知部331は便座開状態を、着座検知部330は非着座状態を検知する。
上記状態において、使用者が、操作部210またはリモートコントローラ400の散布スイッチ417を押す。
これにより、制御部130は、図36Bに示すように、まず、散布ノズル550の吐出口550uの方向が便器の排出口115に向く位置まで散布ノズル駆動部550aを駆動する。そして、散布ノズル550の駆動を停止する。なお、本実施の形態の場合、図36Aに示す吐出口550uの回転角度が、例えば150°付近の位置(図33参照)で停止させる。これにより、吐出口550uの方向は、便器の排出口115に向く。
つぎに、制御部130は、吐水量可変部を構成する水ポンプ516または空気ポンプ535の吐出出力を、図36Aに示すように、「中」程度の出力に制御する。そして、図36Bの矢印で示す方向に向けて、散布ノズル550から洗浄泡を便器110の排出口115に所定時間吐出する。なお、本実施の形態では、所定時間は、例えば8秒間に設定している。これにより、吐出された洗浄泡は、排出口115の上部の水面いわゆる喫水面110bを覆う状態となる。なお、上記「中」程度の出力とは、本実施の形態の場合、洗浄泡などが、直接便器の排出口115に届く程度の出力を意味する。
つまり、上記条件の場合、制御部130は、吐水量可変部を構成する水ポンプ516を「中」程度の出力で、洗浄泡などを吐出するように制御する。そして、事前に、洗浄泡を排出口115上部の喫水面110b付近に吐出して、すばやく喫水面110bを洗浄泡で覆う。これにより、小便などの排泄に伴う、臭いの拡散および便器110の喫水面110b付近の汚れの付着を抑制できる。
また、排泄された小便が喫水面110b付近に落下する際、喫水面110bを覆った洗浄泡がクッションの役目を果たす。その結果、洗浄泡のクッション効果により、便器110の周囲への跳ね返りを抑制できる。
なお、図36Aおよび図36Bでは、洗浄泡を便器110の排出口115の中心近くの一点に吐出するように図示しているが、これに限られない。例えば、散布ノズル550の吐出口550uの方向を、排出口115の喫水面110bの範囲内に向けて、洗浄泡を吐出すればよい。この場合、洗浄泡を散布する位置は、排出口115の喫水面110b付近の便器前方側、中心、後方側または左右のいずれであってもよい。つまり、洗浄泡を排出口115の喫水面110bの略範囲内(範囲内を含む)に散布する。これにより、吐出し始めて数秒の短い時間で喫水面110bに洗浄泡を散布できる。その結果、便器110の喫水面110b付近の汚れの付着を、より確実に抑制できる。
このとき、吐出口550uの回転角度を停止した状態で洗浄泡を吐出する必要はない。例えば、散布ノズル550を、排出口115の喫水面110b付近の狭い範囲を往復移動させながら、洗浄泡を散布してもよい。さらに、水ポンプ516や空気ポンプ535の吐出出力を変化させて、洗浄泡を吐出してもよい。これにより、より効率的に排出口115の喫水面110bを洗浄泡で覆うことができる。
上記散布ノズル550の動作によれば、制御部130は、使用者が非着座状態で、かつ便座が開状態において、散布スイッチ417により泡散布信号が入力された場合、散布ノズル550の吐出口550uの方向が便器の排出口に向く位置まで散布ノズル駆動部550aを駆動して停止する。その後、水ポンプ516や空気ポンプ535を「中」程度の出力で制御して、洗浄泡を便器110の排出口115の喫水面110bに向けて吐出する。
つまり、使用者が便座300に着座していない状態で、かつ便座が開状態において、散布スイッチ417が操作された場合、洗浄泡を便器110の排出口115の喫水面110bに向けて、「中」程度の勢いで吐出する。これにより、便器110の排出口115上部の喫水面110bを洗浄泡で覆うことができる。その結果、小便時の臭いの拡散および便器110の喫水面110b付近の汚れの付着を抑制できる。
以上のように、本実施の形態の衛生洗浄装置は、制御部130が、便座300への着座状態および便座の開閉状態に応じて、散布ノズル550の吐出口550uの方向および吐水量可変部である水ポンプ516の出力を変化させる。これにより、衛生洗浄装置100が使われる場面に応じて、洗浄泡を吐出する散布ノズル550の多様な使用を可能にできる。その結果、適切な泡量で場面に応じた制御が可能となり、洗剤の使用量を節約できる。
なお、本実施の形態では、散布ノズル駆動部550aとしてモータを用いた構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、散布ノズル550の吐出口550uから洗浄泡を吐出する際の反作用により、散布ノズル550を回動させる構成としてもよい。これにより、構成の簡略化とともに、電力消費を抑制できる。
また、本実施の形態では、1つの散布ノズル550を備える構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、便器110のリム110a付近に洗浄泡を散布する散布ノズルと、便器110の排出口115付近に洗浄泡を散布する散布ノズルなどのように複数の散布ノズルを設ける構成としてもよい。この場合、複数の散布ノズルは、独立して回動させてもよく、連動させて回動させてもよい。これにより、短時間で洗浄泡を便器内面に散布することができる。
また、本実施の形態では、散布ノズル550に、1つの吐出口550uを設ける構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、散布ノズル550に、便器110のリム110a付近に洗浄泡を散布する吐出口と便器110の排出口115付近に洗浄泡を散布する吐出口など、複数の吐出口を設けてもよい。これにより、短時間で洗浄泡を便器内面に散布することができる。
また、本実施の形態では、散布ノズル550は、便器110のリム110a付近と、便器110の排出口115付近の2箇所に散布する構成を例に説明したが、これに限られない。例えば、上記以外に、さらに、便器110のリム110aと排出口115との中間位置(高さ)などに、散布ノズル550で洗浄泡を散布する構成としてもよい。これにより、散布抜け部の発生を、より少なくできる。
以上で説明したように、本発明の衛生洗浄装置は、便器に起倒自在に設置された便座と、便座を起倒自在に支持する本体と、洗浄水を加熱する熱交換器と、人体を洗浄する洗浄ノズルと、洗浄泡を生成する泡発生部と、便器内面に洗浄水または洗浄泡を吐出する散布ノズルを備える。さらに、散布ノズルへ送出する洗浄水または洗浄泡の流量を可変する吐水量可変部と、散布ノズルの吐出口を所定の方向に回転駆動する散布ノズル駆動部と、散布ノズルへの分岐流路を開閉する開閉弁と、制御部と、制御部に指示設定する操作部を備える。そして、制御部は、便器内面の高さが異なる領域に、散布ノズルから洗浄水または洗浄泡を散布するように、散布ノズル550を制御する構成としてもよい。
この構成によれば、散布ノズルから泡(以下、「洗浄泡」と記す)を便器に散布する時に、制御部は、便器内面の高さ位置が高い領域や低い領域に応じて、洗浄泡を散布し、便器内面のほぼ全周に散布する。これにより、便器前方から後方の内面まで、万遍なく泡膜を形成して、汚れの付着を効果的に抑制できる。
また、本発明の衛生洗浄装置の制御部は、散布ノズルから便器に洗浄泡を散布する際、吐水量可変部の出力を変化させながら、散布ノズル駆動部を正逆回転させる。そして、制御部は、散布ノズルの吐出口の方向を、便器の内周に亘って、少なくとも一往復の回転動作で洗浄泡を散布するように制御してもよい。
この構成によれば、制御部は、まず、散布ノズル駆動部を正回転させて、散布ノズルの吐出口の方向を便器後方から便器前方を経て便器後方に移動させて、散布ノズルから便器に洗浄泡を散布する。その後、散布ノズル駆動部を逆回転させて、散布ノズルの吐出口の方向が便器後方から便器前方を経て便器後方に戻る方向に移動させて散布ノズルから便器に洗浄泡を散布する。つまり、便器内周面を少なくとも一往復の回転駆動により、散布ノズルから洗浄泡を散布する。このとき、正回転時または逆回転時において、洗浄泡が便器のリム付近または喫水面付近まで届くように吐水量可変部の出力を制御して、散布ノズルから洗浄泡を散布する。これにより、洗浄泡を便器内面のほぼ全周に散布して、便器前方から後方の内面まで泡膜を形成できる。その結果、汚れの付着を効果的に抑制できる。
また、本発明の衛生洗浄装置の制御部は、散布ノズル駆動部の正回転時における吐水量可変部の出力を、散布ノズル駆動部の逆回転時より低い出力で、散布ノズルの吐出口から洗浄泡を吐出するように制御する構成としてもよい。
この構成によれば、一往復で回転駆動される散布ノズルの正回転時においては、吐水量可変部の出力を弱めて、便器のリムより内側の喫水面に近い側に洗浄泡を散布する。一方、逆回転時においては、吐水量可変部の出力を強めて、便器のリムに近い側に洗浄泡を散布する。これにより、洗浄水の散布開始の初期に、便器の排出口上部の喫水面を洗浄泡で覆うことができる。さらに、リムに近い便器内面のほぼ全周に洗浄泡を散布できる。その
結果、便器前方から後方の内面まで泡膜を形成して、汚れの付着を抑制できる。
また、本発明の衛生洗浄装置は、トイレルーム内への使用者の入出を検知する人体検知センサを、さらに備え、制御部は、人体検知センサがトイレルーム内への使用者の入室を検知したときに、便器内に洗浄泡を散布するように、散布ノズルを制御してもよい。
この構成によれば、人体検知センサでトイレルーム内への使用者の入室を検知した場合、予め便器の内面のほぼ全周に洗浄泡を散布する。これにより、使用前に、確実に便器内面に泡膜を形成して、汚れの付着を未然に抑制できる。
また、本発明の衛生洗浄装置の泡発生部は、熱交換器から洗浄水が吐水量可変部によって給水される泡タンクと、洗剤タンク内の洗剤を泡タンクへ供給する洗剤ポンプと、空気を泡タンクへ供給する空気ポンプを備える。そして、制御部は、泡タンクの洗浄水または洗浄泡を吐出させるように、散布ノズルを制御してもよい。
この構成によれば、水または温水のみを洗浄ノズルの表面または便器内面に吐出するだけではなく、洗剤を含む洗浄泡を吐出することができる。これにより、洗浄効果および汚れの付着を抑制する効果を高めることができる。さらに、洗剤を含む洗浄泡によって、嫌な臭いの拡散などを抑制できる。その結果、使用者に、視覚的な清潔感や、使用時の快適感を提供できる。