JP7020960B2 - 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法 - Google Patents

過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法 Download PDF

Info

Publication number
JP7020960B2
JP7020960B2 JP2018029279A JP2018029279A JP7020960B2 JP 7020960 B2 JP7020960 B2 JP 7020960B2 JP 2018029279 A JP2018029279 A JP 2018029279A JP 2018029279 A JP2018029279 A JP 2018029279A JP 7020960 B2 JP7020960 B2 JP 7020960B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
hydrogen peroxide
water
dissolved oxygen
sample water
valve
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2018029279A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2019144143A (ja
Inventor
翔太 森野
雅之 川上
幸福 山下
大作 矢野
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Organo Corp
Original Assignee
Organo Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Organo Corp filed Critical Organo Corp
Priority to JP2018029279A priority Critical patent/JP7020960B2/ja
Publication of JP2019144143A publication Critical patent/JP2019144143A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP7020960B2 publication Critical patent/JP7020960B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Investigating Or Analyzing Non-Biological Materials By The Use Of Chemical Means (AREA)

Description

本発明は、検体水中の微量な過酸化水素濃度を測定するための測定システムおよび測定方法に関する。
従来、過酸化水素の濃度分析方法としては、試験紙または試験試薬による方法、比色法、酸化還元滴定法などが一般に知られている。このような過酸化水素の濃度分析は、種々の目的に使用されるが、例えば過酸化水素を含む排水の排水処理設備等で使用することができる。また、純水や超純水の製造設備においても、紫外線照射設備等で過酸化水素が発生することが知られており、過酸化水素の濃度分析の必要性が認識されつつある。純水や超純水の製造設備で過酸化水素の濃度分析を行うには、分析値がμg/Lレベル程度の微量分析が要求される。上述した各種分析方法のうち、試験紙または試験試薬による方法では、分析値がμg/Lレベルの測定は困難である。
また、比色法や酸化還元滴定法は、比色分析や滴定の操作が複雑であり、また、インラインの自動分析が困難であって、特に人間の介在を極力排除したい純水または超純水製造設備に不向きである。さらに、試薬を必要とするため、薬品コスト、メンテナンスおよび分析後の廃液処理などのために、コストが高くなる。
上記の課題に鑑み、水中の微量の過酸化水素を簡便に且つ高感度に分析できる過酸化水素分析装置および過酸化水素分析方法が特許文献1に開示されている。特許文献1に開示された発明は、過酸化水素分解手段と1台又は2台の溶存酸素濃度計によって検体水中の過酸化水素濃度を算出する方法である。具体的には、検体水中の溶存酸素濃度と過酸化水素分解手段で処理した処理水中の溶存酸素濃度との差分から、検体水中の過酸化水素濃度を算出する。特許文献1に開示された実施形態の構成例を図7に示す。この構成では、検体水および処理水中に含まれる溶存酸素濃度を、交互に1台の溶存酸素濃度計で測定する。
また、特許文献2には、過酸化水素分解手段にモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属を担持させた触媒金属担持体を用いることを特徴とする過酸化水素濃度の測定装置及および測定方法も開示されている。
特開2005-274386号公報 特開2012-63303号公報
図7に示す従来技術の構成では、1台の溶存酸素濃度計を用いて検体水と処理水に含まれる溶存酸素濃度を交互に測定することにより、検体水中に含まれる過酸化水素濃度を算出することができる。しかし検体水と処理水の測定系統の切り替えを行ってから、溶存酸素濃度の測定値が安定するまでに多少の時間が必要であり、その間は過酸化水素濃度の算出ができなかった。
本発明は、1台の溶存酸素濃度計を用い、測定系統を切り替えて検体水中の過酸化水素濃度を測定する場合に、測定系統の切り替え後の測定値が安定するまでの時間を短縮することができる過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するため、本発明に係る過酸化水素濃度測定方法は、
水処理プロセスの所定位置から採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する方法であって、
検体水を採取して第1検体水と第2検体水の2つに分ける工程と、
前記第2検体水を過酸化水素分解手段で処理して処理水を得、該処理水を溶存酸素測定手段を介さずにそのまま排水しながら、前記第1検体水を直接溶存酸素濃度測定手段に導入して該第1検体水中の第1溶存酸素濃度を測定する第1測定工程と、
前記第1検体水を前記溶存酸素測定手段を介さずにそのまま排水しながら、前記第2検体水を前記過酸化水素分解手段で処理して処理水を得、該処理水を前記溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の第2溶存酸素濃度を測定する第2測定工程と、
前記第1溶存酸素濃度と前記第2溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算工程と、
を含
前記第1溶存酸素濃度の測定値をM1とし、前記第2溶存酸素濃度の測定値をM2として、前記演算工程は下式(1)
(M2-M1)×(68/32)・・・(1)
により過酸化水素濃度を算出する
また、本発明に係る過酸化水素濃度測定システムは、
水処理プロセスの所定位置から採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定システムであって、
前記検体水を採取する検体水採取手段と、
採取した前記検体水を2つに分ける手段と、
2つに分けた前記検体水の一方を第1開閉弁を有する第1配管を経由し溶存酸素濃度測定手段に導入して溶存酸素濃度を測定する経路と、
2つに分けた前記検体水の他方を過酸化水素分解手段に導入し、過酸化水素を分解処理した処理水を第2開閉弁を有する第2配管を経由し排水する経路と、
前記第1配管の前記第1開閉弁の上流側と、前記第2配管の前記第2開閉弁の下流側とを連通する、第1連通弁を有する第1連通配管と、
前記第2配管の前記第2開閉弁の上流側と、前記第1配管の前記第1開閉弁の下流側で前記溶存酸素濃度測定手段の上流側とを連通する、第2連通弁を有する第2連通配管と、
前記第1開閉弁と前記第2開閉弁と前記第1連通弁と前記第2連通弁とを開閉制御する弁制御手段と、
前記検体水と前記処理水の溶存酸素濃度から前記検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算手段と、
を備え
前記弁制御手段は、前記第1開閉弁が開、前記第2開閉弁が開、前記第1連通弁が閉、前記第2連通弁が閉の検体水測定モードと、前記第1開閉弁が閉、前記第2開閉弁が閉、前記第1連通弁が開、前記第2連通弁が開の処理水測定モードと、をとるように制御可能であり、
前記演算手段は、前記検体水測定モードで得られた溶存酸素濃度の測定値をM1とし、前記処理水測定モードで得られた溶存酸素濃度の測定値をM2として、下式(1)
(M2-M1)×(68/32)・・・(1)
により過酸化水素濃度を算出する
本発明によれば、1台の溶存酸素濃度計を用い、測定系統を切り替えて検体水中の過酸化水素濃度を測定する場合に、測定系統の切り替え後の測定値が安定するまでの時間を短縮することができる過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法を提供することができる。
本発明の一実施形態における過酸化水素濃度測定システムの構成図である。 本発明の他の実施形態における過酸化水素濃度測定システムの構成図である。 本発明の実施例に係る溶存酸素濃度と過酸化水素濃度の測定結果を示すグラフである。 本発明の比較例に係る過酸化水素濃度測定システムの構成図である。 本発明の比較例に係る溶存酸素濃度と過酸化水素濃度の測定結果を示すグラフである。 本発明の一実施形態における過酸化水素濃度測定方法のフローチャートである。 従来技術の過酸化水素濃度測定装置の一例である。
以下、本発明を実施するための形態(以下、実施形態という)を、図面を参照して説明する。ただし、本発明は本実施形態に限定されるものではない。
図1は、本発明の一実施形態に係る過酸化水素濃度測定システム10Aの構成図である。図1に示すように、過酸化水素濃度測定システム10Aは、純水や超純水の製造設備、排水処理設備等の水処理プロセス1で処理する前(図示せず)、又は処理された後の水の一部を検体水として採取し測定システム内に導入する検体水採取用配管(検体水採取手段)31を有する。
採取された検体水は、第1配管32を経由して溶存酸素濃度計(溶存酸素濃度測定手段)12に導入し検体水の溶存酸素濃度を測定する経路と、分岐配管33を経由して過酸化水素分解装置(過酸化水素分解手段)11に導入し、過酸化水素を分解処理した処理水を第2配管37を経由して排水する経路とに分岐される。
第1配管32の途中には第1開閉弁14が設けられている。第2配管37の途中には第2開閉弁17が設けられている。なお、図1に示すように、溶存酸素濃度計12の下流に第1流量安定化装置(第1流量安定化手段)22を設けてもよい。また第2配管37の第2開閉弁17の下流に第2流量安定化装置(第2流量安定化手段)23を設けてもよい。
第1配管32の第1開閉弁14よりも上流側と、第2配管37の第2開閉弁17の下流側とは、第1連通配管35で連通されている。第1連通配管35はその途中に開閉弁である第1連通弁15を有する。
第2配管37の第2開閉弁17の上流側と、第1配管32の第1開閉弁14よりも下流側で溶存酸素濃度計12の上流側とは、第2連通配管36で連通されている。第2連通配管36はその途中に開閉弁である第2連通弁16を有する。
第1開閉弁14、第2開閉弁17、第1連通弁15、第2連通弁16はいずれも電気又は圧空等で作動する自動開閉弁であり、弁制御装置(弁制御手段)25によって開閉のタイミングも含めて開閉制御される。
過酸化水素濃度測定システム10Aは、第1開閉弁14、第2開閉弁17、第1連通弁15、第2連通弁16を所定の組み合わせで開閉することにより、検体水をそのまま溶存酸素濃度計12に送ることもでき(検体水測定モード)、また過酸化水素分解装置11で過酸化水素を分解処理した処理水を溶存酸素濃度計12に送ることもできる(処理水測定モード)。つまり、測定系統(送水系統)を切り替えることにより、溶存酸素濃度計12は検体水中と処理水中の溶存酸素濃度を別々に測定することができる。測定系統の切り替え方法は後述する。溶存酸素濃度計12は、公知の溶存酸素計により構成することができる。
溶存酸素濃度計12で測定された検体水中と処理水中の溶存酸素濃度値は、演算部(演算手段)13に送信されて、検体水中の過酸化水素濃度が算出される。なお、測定された溶存酸素濃度値や計算された過酸化水素濃度値をリアルタイムでモニター画面等に表示する表示装置や、適宜プリンタ等に印刷する出力装置を設けてもよい(図示せず)。
過酸化水素分解装置11に導入された検体水中に含まれる過酸化水素は、以下のように分解される。なお、生成した酸素は水中に溶け込み、溶存酸素となる。
2H → 2HO + O ・・・(1)
過酸化水素分解装置11は、過酸化水素分解能力を有する材料を充填した容器またはカラムにより構成してもよい。過酸化水素分解能力を有する材料は、水中の過酸化水素を水と酸素に分解する能力を有するものであればよく、特に限定されるものではないが、水で溶解されず、過酸化水素分解能力が高く、且つ耐久性に優れたものが好ましい。また、過酸化水素との接触効率を上げるために、粒状、繊維状、多孔質状など表面積の大きいものが好ましい。このような材料の例としては、例えば活性炭、合成炭素系吸着材、イオン交換樹脂、金属触媒(Pd、Pt等)、酵素(カタラーゼ等)、酵素担持体などをあげることができる。
過酸化水素分解触媒としては、白金族金属が担持された触媒金属担持体(白金族金属触媒)を用いることが好ましい。被処理水中の過酸化水素を白金族金属触媒と接触させ、触媒分解によって過酸化水素を分解できる。白金族金属触媒は、例えば、アニオン交換体に担持されている。アニオン交換体は、粒状のアニオン交換樹脂であってもよい。またさらには、アニオン交換樹脂が一体のものとして成形されたモノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属を担持した白金族金属触媒を用いることが以下の理由により好ましい。
モノリス状有機多孔質アニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体は2000h-1を超えるSV(空間速度)で通水しても過酸化水素の分解が可能である。このため、過酸化水素分解装置11の小型化が容易である。しかもSVの増大と過酸化水素分解手段の小型化との相乗効果により、高速での通水が可能である。このため、触媒自身や充填カラムに残存していた酸素が抜けやすく、システムの立ち上がり速度が向上し、迅速な測定が可能となる。継手を通して酸素が混入する場合も、SVが増加することで酸素が排除されやすくなるため、測定精度への悪影響も抑えられる。
白金族金属として特にPdをモノリス状有機多孔質アニオン交換体に担持させたPdモノリスは、高速で被測定水を通水させることができるため、装置の小型化が容易である。また、SVが大きいため、例えば過酸化水素分解装置の上流側の配管から空気が混入した場合にも、その影響を抑えることができる。例えば空気が間欠的に混入する場合、高SVのため空気は直ちに下流側へ押し流され、過酸化水素分解装置に長く滞留することがない。空気が連続的に混入する場合でも、SVが大きいために空気が希釈されて、測定値に及ぼす影響が緩和される。このような理由によって分析精度の向上が可能となる。また、システムの立ち上げ時に触媒自身や充填カラムに空気が残留している場合、空気が抜けて計測値が安定するまで待っている必要があるが、高SVのため残留している空気は速やかに排除され、システムの立ち上げ時間が短縮される。
モノリスアニオン交換体として特に好ましいのは、以下に述べるAタイプ及びBタイプである。これらのモノリスアニオン交換体に白金族金属が担持された触媒金属担持体は、過酸化水素分解装置11に好適に適用できる。
(Aタイプのモノリスアニオン交換体)
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、モノリスにアニオン交換基を導入することで得られるものであり、気泡状のマクロポア同士が重なり合い、この重なる部分が水湿潤状態で平均直径30~300μm、好ましくは30~200μm、特に好ましくは40~100μmの開口(メソポア)となる連続マクロポア構造体である。Aタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの開口の平均直径よりも大となる。水湿潤状態での開口の平均直径が30μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、水湿潤状態での開口の平均直径が大き過ぎると、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体および担持された白金族金属ナノ粒子との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。なお、乾燥状態のモノリス中間体の開口の平均直径、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径及び乾燥状態のモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径は、乾燥状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの開口の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの開口の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のAタイプのモノリスアニオン交換体の開口の平均直径を算出することもできる。
Aタイプのモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の切断面のSEM画像において、断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25~50%、好ましくは25~45%である。断面に表れる骨格部面積が、画像領域中、25%未満であると、細い骨格となり、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくなく、50%を超えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
また、Aタイプのモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5~5ml/g、好ましくは0.8~4ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過流体量が小さくなり、処理能力が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にAタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とAタイプのモノリスアニオン交換体およびそれに担持された白金族金属ナノ粒子との接触効率が低下し、触媒効果も低下してしまうため好ましくない。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、水銀圧入法により測定される値を意味する。また、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
なお、Aタイプのモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、これを1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001~0.1MPa/m・LVの範囲、特に0.005~0.05MPa/m・LVであることが好ましい。
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.4~1.0mg当量/mlである。体積当りのアニオン交換容量が0.4mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、Aタイプのモノリスアニオン交換体の重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、アニオン交換基が多孔質体の表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5~4.5mg当量/gである。
Aタイプのモノリスアニオン交換体において、連続マクロポア構造体の骨格を構成する材料は、架橋構造を有する有機ポリマー材料である。該ポリマー材料の架橋密度は特に限定されないが、ポリマー材料を構成する全構成単位に対して、0.3~10モル%、好適には0.3~5モル%の架橋構造単位を含んでいることが好ましい。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、10モル%を越えると、アニオン交換基の導入が困難になる場合があるため好ましくない。該ポリマー材料の種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレン等の芳香族ビニルポリマーが挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、連続マクロポア構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、芳香族ビニルポリマーの架橋重合体が好ましく、特に、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド-ジビニルベンゼン共重合体が好ましい材料として挙げられる。
Aタイプのモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシエチルアンモニウム基、ジメチルヒドロキシプロピルアンモニウム基、メチルジヒドロキシエチルアンモニウム基等の四級アンモニウム基等が挙げられる。
導入されたアニオン交換基は、多孔質体の表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布している。ここで言う「アニオン交換基が均一に分布している」とは、アニオン交換基の分布が少なくともμmオーダーで表面および骨格内部に均一に分布していることを指す。アニオン交換基の分布状況は、対アニオンを塩化物イオン、臭化物イオンなどにイオン交換した後、EPMAを用いることで、比較的簡単に確認することができる。また、アニオン交換基が、モノリスの表面のみならず、多孔質体の骨格内部にまで均一に分布していると、表面と内部の物理的性質及び化学的性質を均一にできるため、膨潤及び収縮に対する耐久性が向上する。
Aタイプのモノリスアニオン交換体は、骨太のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えば骨太モノリスの1.4~1.9倍のように大きく膨潤する。このため、骨太モノリスの開口径が小さいものであっても、モノリスイオン交換体の開口径は概ね、上記倍率で大きくなる。また、開口径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、Aタイプのモノリスイオン交換体は、開口径が格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。
(Bタイプのモノリスアニオン交換体)
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された全構成単位中、架橋構造単位を0.3~5.0モル%含有する芳香族ビニルポリマーからなる平均太さが水湿潤状態で1~60μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10~100μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体であって、全細孔容積が0.5~5ml/gであり、水湿潤状態での体積当りのイオン交換容量が0.3~1.0mg当量/mlであり、アニオン交換基が該多孔質イオン交換体中に均一に分布している。
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、アニオン交換基が導入された平均太さが水湿潤状態で1~60μm、好ましくは3~58μmの三次元的に連続した骨格と、その骨格間に平均直径が水湿潤状態で10~100μm、好ましくは15~90μm、特に好ましくは20~80μmの三次元的に連続した空孔とからなる共連続構造体である。すなわち、共連続構造は、連続する骨格相と連続する空孔相とが絡み合ってそれぞれが共に3次元的に連続する構造である。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリスや粒子凝集型モノリスに比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なイオンの吸着挙動を達成できる。また、骨格が太いため機械的強度が高い。
Bタイプのモノリスアニオン交換体の骨格の太さ及び空孔の直径は、モノリスにアニオン交換基を導入する際、モノリス全体が膨潤するため、モノリスの骨格の太さ及び空孔の直径よりも大となる。この連続した空孔は、従来の連続気泡型モノリス状有機多孔質アニオン交換体や粒子凝集型モノリス状有機多孔質アニオン交換体に比べて空孔の連続性が高くてその大きさに偏りがないため、極めて均一なアニオンの吸着挙動を達成できる。三次元的に連続した空孔の平均直径が水湿潤状態で10μm未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、100μmを超えると、被処理水と有機多孔質アニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、被処理水中の溶存酸素の除去が不十分となるため好ましくない。また、骨格の平均太さが水湿潤状態で1μm未満であると、体積当りのアニオン交換容量が低下するといった欠点のほか、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にBタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とBタイプのモノリスアニオン交換体との接触効率が低下し、触媒効果が低下するため好ましくない。一方、骨格の太さが60μmを越えると、骨格が太くなり過ぎ、通水時の圧力損失が増大するため好ましくない。
上記連続構造体の空孔の水湿潤状態での平均直径は、水銀圧入法で測定した乾燥状態のモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの空孔の平均直径に、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の空孔の平均直径を算出することもできる。また、上記連続構造体の骨格の水湿潤状態での平均太さは、乾燥状態のBタイプのモノリスアニオン交換体のSEM観察を少なくとも3回行い、得られた画像中の骨格の太さを測定し、その平均値に、膨潤率を乗じて算出される値である。また、アニオン交換基導入前の乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さ、及びその乾燥状態のモノリスにアニオン交換基導入したときの乾燥状態のモノリスに対する水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の膨潤率がわかる場合は、乾燥状態のモノリスの骨格の平均太さに、膨潤率を乗じて、水湿潤状態のBタイプのモノリスアニオン交換体の骨格の平均太さを算出することもできる。なお、骨格は棒状であり円形断面形状であるが、楕円断面形状等異径断面のものが含まれていてもよい。この場合の太さは短径と長径の平均である。
また、Bタイプのモノリスアニオン交換体の全細孔容積は、0.5~5ml/gである。全細孔容積が0.5ml/g未満であると、通水時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくなく、更に、単位断面積当りの透過水量が小さくなり、処理水量が低下してしまうため好ましくない。一方、全細孔容積が5ml/gを超えると、体積当りのアニオン交換容量が低下し、白金族金属ナノ粒子の担持量も低下し触媒効果が低下するため好ましくない。また、機械的強度が低下して、特に高流速で通水した際にBタイプのモノリスアニオン交換体が大きく変形してしまうため好ましくない。更に、被処理水とBタイプのモノリスアニオン交換体との接触効率が低下して、過酸化水素分解効果も低下してしまうため好ましくない。三次元的に連続した空孔の大きさ及び全細孔容積が上記範囲にあれば、被処理水との接触が極めて均一で接触面積も大きく、かつ低圧力損失下での通水が可能となる。なお、モノリス(モノリス中間体、モノリス、モノリスアニオン交換体)の全細孔容積は、乾燥状態でも、水湿潤状態でも、同じである。
なお、Bタイプのモノリスアニオン交換体に水を透過させた際の圧力損失は、多孔質体を1m充填したカラムに通水線速度(LV)1m/hで通水した際の圧力損失(以下、「差圧係数」と言う。)で示すと、0.001~0.5MPa/m・LVの範囲、特に0.005~0.1MPa/m・LVである。
Bタイプのモノリスアニオン交換体において、共連続構造体の骨格を構成する材料は、全構成単位中、0.3~5モル%、好ましくは0.5~3.0モル%の架橋構造単位を含んでいる芳香族ビニルポリマーであり疎水性である。架橋構造単位が0.3モル%未満であると、機械的強度が不足するため好ましくなく、一方、5モル%を越えると、多孔質体の構造が共連続構造から逸脱しやすくなる。該芳香族ビニルポリマーの種類に特に制限はなく、例えば、ポリスチレンが挙げられる。上記ポリマーは、単独のビニルモノマーと架橋剤を共重合させて得られるポリマーでも、複数のビニルモノマーと架橋剤を重合させて得られるポリマーであってもよく、また、二種類以上のポリマーがブレンドされたものであってもよい。これら有機ポリマー材料の中で、共連続構造形成の容易さ、アニオン交換基導入の容易性と機械的強度の高さ、および酸又はアルカリに対する安定性の高さから、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体やビニルベンジルクロライド-ジビニルベンゼン共重合体が好ましい。
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量が0.3~1.0mg当量/mlのイオン交換容量を有する。Bタイプのモノリスアニオン交換体は、三次元的に連続した空孔の連続性や均一性が高いため、全細孔容積を低下させても圧力損失はさほど増加しない。そのため、圧力損失を低く押さえたままで体積当りのアニオン交換容量を飛躍的に大きくすることができる。体積当りのアニオン交換容量が0.3mg当量/ml未満であると、体積当りの白金族金属のナノ粒子担持量が低下してしまうため好ましくない。一方、体積当りのアニオン交換容量が1.0mg当量/mlを超えると、通水時の圧力損失が増大してしまうため好ましくない。なお、Bタイプのモノリスアニオン交換体の乾燥状態における重量当りのアニオン交換容量は特に限定されないが、イオン交換基が多孔質体の骨格表面及び骨格内部にまで均一に導入しているため、3.5~4.5mg当量/gである。
Bタイプのモノリスアニオン交換体のアニオン交換基としては、Aタイプのモノリスアニオン交換体の説明で挙げたものと同様のものを挙げることができる。また、アニオン交換基の分布状態や、「アニオン交換基が均一に分布している」ことの意味内容や、アニオン交換基分布状態の確認方法や、アニオン交換基がモノリスの表面のみならず多孔質体の骨格内部にまで均一に分布することの効果もAタイプのモノリスアニオン交換体と同様である。
モノリス中間体のポリマー材料の種類は、Aタイプのモノリスアニオン交換体のモノリス中間体のポリマー材料の種類と同様であり、その説明を省略する。
モノリス中間体の全細孔容積は、16ml/gを超え、30ml/g以下、好適には16ml/gを超え、25ml/g以下である。すなわち、このモノリス中間体は、基本的には連続マクロポア構造ではあるが、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)が格段に大きいため、モノリス構造を構成する骨格が二次元の壁面から一次元の棒状骨格に限りなく近い構造を有している。これを重合系に共存させると、モノリス中間体の構造を型として共連続構造の多孔質体が形成される。全細孔容積が小さ過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの構造が共連続構造から連続マクロポア構造に変化してしまうため好ましくなく、一方、全細孔容積が大き過ぎると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの機械的強度が低下したり、体積当たりのアニオン交換容量が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体の全細孔容積をBタイプのモノリスアニオン交換体の特定の範囲とするには、モノマーと水の比を、概ね1:20~1:40とすればよい。
また、モノリス中間体は、マクロポアとマクロポアの重なり部分である開口(メソポア)の平均直径が乾燥状態で5~100μmである。開口の平均直径が乾燥状態で5μm未満であると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が小さくなり、流体透過時の圧力損失が大きくなってしまうため好ましくない。一方、100μmを超えると、ビニルモノマーを重合させた後で得られるモノリスの開口径が大きくなりすぎ、被処理水とモノリスアニオン交換体との接触が不十分となり、その結果、過酸化水素分解特性が低下してしまうため好ましくない。モノリス中間体は、マクロポアの大きさや開口の径が揃った均一構造のものが好適であるが、これに限定されず、均一構造中、均一なマクロポアの大きさよりも大きな不均一なマクロポアが点在するものであってもよい。
Bタイプのモノリスアニオン交換体は、共連続構造のモノリスにアニオン交換基が導入されるため、例えばモノリスの1.4~1.9倍に大きく膨潤する。また、空孔径が膨潤で大きくなっても全細孔容積は変化しない。従って、Bタイプのモノリスアニオン交換体は、3次元的に連続する空孔の大きさが格段に大きいにもかかわらず、骨太骨格を有するため機械的強度が高い。また、骨格が太いため、水湿潤状態での体積当りのアニオン交換容量を大きくでき、更に、被処理水を低圧、大流量で長期間通水することが可能である。
過酸化水素分解装置11として過酸化水素分解能力を有する材料を充填したカラムを使用する場合、カラム通水流速は、充填材の種類や分析する検体水の過酸化水素濃度などの諸条件によって適宜決定される。流速を下げると、過酸化水素と充填材との接触時間が増えて過酸化水素の分解率が上がり、酸素の生成率が増加する傾向にあるが、カラムや配管系を介する大気中の酸素の透過により溶存酸素濃度上昇の影響が生じやすくなる。一方、流速を上げると、大気中の酸素の透過による溶存酸素濃度上昇の影響は生じ難くなるが、過酸化水素と充填材との接触時間が減少し、過酸化水素が十分に分解されず、酸素の生成率が減少して分析精度が低下する可能性がある。
過酸化水素分解能力を有する材料を充填するカラムの材質は、特に制限されるものではないが、酸素の透過率が低いものが好ましい。また、システムの立ち上げ時にカラム内の気泡の有無を確認できるように透明なものであり、耐久性に優れたものが好ましい。このような材質の例としては、例えばアクリル、塩化ビニル、ポリカーボネートなどをあげることができる。
測定された溶存酸素濃度から過酸化水素濃度を求めるには、次の計算により求めることができる。すなわち、処理水と検体水中の溶存酸素濃度の差分は式(1)に由来するものであり、測定された溶存酸素濃度の差分より、検体水中に含まれている過酸化水素濃度は、以下の式から算出できる。
検体水測定モード(検体水測定工程)で得られた検体水中の溶存酸素濃度値(検体水DO)をM1とし、処理水測定モード(処理水測定工程)で得られた処理水中の溶存酸素濃度値(処理水DO)をM2とすると、処理水と検体水中の溶存酸素濃度値の差分は(M2-M1)なので、
検体水中の過酸化水素濃度 =(M2-M1)×(68/32)・・・(2)
ここで68は式(1)左辺の過酸化水素の分子量(2分子なので2倍)、 32は式(1)右辺の酸素分子量である。左辺の単位は右辺のDOの単位と同じである。
溶存酸素濃度計は所定の流量範囲で最も誤差が少ないように調整されているため、その範囲に流量を調節することが好ましい。そのため、溶存酸素濃度計の後段には、流量計を設けるのが好適である。これにより、過酸化水素分解触媒や溶存酸素濃度計に適切な流量で検体水又は処理水を供給することができる。
さらには、流量を示し、その流量を適切な値で安定させるような機構(以下、流量安定化手段という。)を設けるのが好適である。図1に示す実施形態では、溶存酸素濃度計12の下流側に流量安定化装置(流量安定化手段)22を設けている。流量安定化手段22は、特に制限されるものではないが、例として流量計と流量調節のできる弁の組合せ(流量指示制御計)などがあげられる。流量安定化装置22は、継ぎ目から酸素が侵入するおそれがあるため、溶存酸素濃度計の下流に設けることが好ましい。なお、過酸化水素分解装置11の最下流側にも流量安定化装置23を設けてもよい。その他、警報装置などのプロセス制御系に周知の構成は任意に追加することができる。溶存酸素濃度を測定した検体水又は処理水は、流量測定後に排水される。測定試薬等を添加していないため、排水処理も容易である。
次に弁の開閉制御(測定系統の切り替え方法)について説明する。検体水中の過酸化水素濃度を測定する場合(検体水測定モード)は、第1開閉弁14を開、第1連通弁15を閉、第2連通弁16を閉、第2開閉弁17を開とし、検体水を第1配管32から溶存酸素濃度計12へ導入する。一方、分岐配管33に分岐された検体水は過酸化水素分解装置11を通過し過酸化水素が分解処理され、その処理水は第2配管37を経由してそのまま排水される。
処理水中の過酸化水素濃度を測定する場合(処理水測定モード)は、第1開閉弁14を閉、第1連通弁15を開、第2連通弁16を開、第2開閉弁17を閉に切り替え、過酸化水素分解装置11で処理した処理水を第2連通配管36により溶存酸素濃度計12へ導入する。一方、第1配管32に流入した検体水は第1連通配管35を経由し第2配管37に送られて排水される。
以上の検体水測定工程と処理水測定工程が交互に繰り返され、各工程で得られた溶存酸素濃度値から式(2)より過酸化水素濃度を算出する。それぞれの工程の順番や時間は特に限定されるものではない。
また、各工程での測定値を得るタイミングは、弁切り替え後、測定値が安定するまで一定時間放置した後、ある一定時間の測定値の平均値を得ることが好ましい。例えば測定値を一定時間の移動平均を取ることでばらつきを抑えることが可能である。
このように、検体水測定工程と処理水測定工程のいずれの工程においても、溶存酸素濃度計12と過酸化水素分解装置11の両方に連続的に水が流入している。一方従来技術では、検体水測定工程では過酸化水素分解装置に水が流入せず、処理水測定工程では検体水側の導入配管に水が流入しなかった。そのため、滞留していた間に酸素等が混入した水が溶存酸素濃度計に流入するため、定常値に達するまで比較的長い時間がかかっていた。しかし上記の実施形態では、いずれの工程においても第1配管32や過酸化水素分解装置11回りの両方の系統に定常的に検体水が流入するため、常に定常状態が保たれている。そのため、別の測定工程に切り替えたときに溶存酸素濃度測定値がすみやかに定常状態に達する。
溶存酸素濃度計は、校正をして用いることが望ましい。溶存酸素濃度計の校正は通常、センサを大気に晒した場合での大気校正および/または亜硫酸ナトリウム等の還元剤を過剰に溶解せしめ溶存酸素濃度を除去した水溶液でのゼロ点校正が一般に行われる。センサ校正を行う頻度は、1日毎から1年毎の間、より好ましくは1週間毎から半年毎の間であることが好ましい。1日毎以下では、頻繁に校正を行うため煩雑であり、1年以上では、センサの校正頻度としては長過ぎ、測定値の信頼性が乏しくなる。
図2に示す過酸化水素濃度測定システム10Bのように、検体水を採取する配管31に脱気装置(脱気手段)21を設けて、検体水中に溶存している酸素を脱気処理してもよい。脱気装置21としては、例えば膜式脱気装置等が使用される。膜式脱気装置は、気体分離膜で仕切られた一方の室に被処理水を流すとともに、他方の室を減圧することにより、被処理水中に含まれるガスが気体分離膜を通して他方の室に移行し除去する装置である。気体分離膜としては、通常、テトラフルオロエチレン系、シリコーンゴム系等の疎水性の高分子膜を中空糸膜状等の適宜形状に形成したものが使用される。このような脱気装置は、検体水中の溶存酸素濃度が高い場合や、大きく変動する場合に、高精度で過酸化水素濃度を測定するために有効である。
検体水中の過酸化水素濃度(測定レンジ)にもよるが、例えば純水、超純水系の過酸化水素濃度は数10μg/L以下なので、ブランク値を下げるため溶存酸素濃度を100μg/L以下、特に好ましくは10μg/L以下まで脱気(脱酸素)するのが好適である。また、脱気(脱酸素)の方法は特に限定しないが、コンパクトに高度な脱気処理ができる点で、上記膜式脱気装置による処理が好ましい。なお、検体水中の過酸化水素濃度が高い場合あるいは高精度での分析が必要でない場合、また元々検体水中の溶存酸素濃度が低い場合には、必ずしも脱気装置を設置する必要はない。
以上に述べた過酸化水素濃度測定システムに用いられる配管、特に、検体水を導入するサンプル採取点から溶存酸素濃度計までの配管には、ガス透過性の低いステンレス鋼あるいはナイロン等の材料を用いることが好ましい。これらは酸素透過率が小さく、また不純物の溶出が少なく好ましい。
また、過酸化水素濃度測定システムの配管にステンレス鋼の材料を用いる場合、配管の分岐部や屈曲部には、エルボやチーズなどの継手類は極力使わずに、溶接や曲げ加工とすることが好ましい。その理由は、大気中の酸素が継手類のつなぎ目や配管を透過して大量に検体水に溶け込むと、溶存酸素濃度が上昇し、正確な測定ができなくなるからである。
上述の実施形態では、配管31で採取した検体水を第1配管32と分岐配管33に分岐させた。しかし2つの系統の検体水を独立して採取してもよい(図示せず)。ただし、採取位置が大きく離れると溶存酸素濃度等の条件が異なるおそれがあるため、1箇所で採取した検体水を分岐させるほうが好ましい。
以上の過酸化水素濃度の測定方法を図6を参照して説明する。まず検体水を採取して2つに分ける(図6のステップS11)。次に、検体水の一方を直接溶存酸素濃度測定手段に導入して該検体水中の溶存酸素濃度を測定しながら、検体水の他方を過酸化水素分解手段で処理してそのまま排水する(図6のステップS12)。これが検体水測定工程である。次に測定系統を切り替え、検体水の一方をそのまま排水しながら、検体水の他方を過酸化水素分解手段で処理して処理水を得、溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の溶存酸素濃度を測定する(図6のステップS13)。これが処理水測定工程である。次に、検体水中の溶存酸素濃度と処理水中の溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する(図6のステップS14)。検体水測定工程と処理水測定工程を交互に繰り返しつつ検体水中の過酸化水素濃度を算出することが好ましい。
以上の実施形態によれば、1台の溶存酸素濃度計を用いて検体水中の過酸化水素濃度を測定する場合に、過酸化水素濃度の算出ができない時間を大幅に低減することができる。特に、検体水中の過酸化水素濃度の測定を自動化できるので、人間の介在を極力回避すべき純水または超純水製造設備に特に適した過酸化水素分析システムおよび過酸化水素分析方法が実現できる。
以下、本発明の具体例を実施例として説明する。
(実施例1)
検体水を図2に示された過酸化水素濃度測定システム10Bに過酸化水素が含有している超純水を検体水として導入し、過酸化水素濃度を測定した。第1開閉弁14を開、第1連通弁15を閉、第2連通弁16を閉、第2開閉弁17を開とし、検体水を第1配管32から溶存酸素濃度計12へ導入し、検体水の溶存酸素濃度を5分間測定した。その間、過酸化水素分解装置11にも検体水を連続的に導入し、過酸化水素を分解処理した処理水は第2配管37を経由して排水した。
その後、第1開閉弁14を閉、第1連通弁15を開、第2連通弁16を開、第2開閉弁17を閉とし、処理水を第2連通配管36を経由して溶存酸素濃度計12へ導入し、処理水の溶存酸素濃度を5分間測定した。その間、第1配管32からの検体水は第1連通配管35を経由してそのまま排水した。
それぞれの工程において、測定系統を切り替える直前の1分間の溶存酸素濃度測定値の平均値を、その工程での溶存酸素濃度とし、一つ前の工程で求めた溶存酸素濃度と式(2)より過酸化水素濃度を算出した。
実施例1の結果を図3に示す。図3から明らかなように、1分以内で溶存酸素濃度計12の測定値が安定することがわかった。
(比較例1)
検体水を図4に示された過酸化水素濃度測定装置に過酸化水素を含有している超純水を検体水として導入し、過酸化水素濃度を測定した。検体水は、検体水採取用配管31から採取し、脱気装置21を通過し、配管18又は配管33に分岐される。まず、弁14を開、弁16を閉とし、検体水を配管18から溶存酸素濃度計12へ導入し、検体水の溶存酸素濃度を5分間測定した。その後、測定系統を切り替え、弁14を閉、弁16を開とし、検体水を配管33から過酸化水素分解装置11へ導入し、処理された処理水を配管20を通じて溶存酸素濃度計12へ導入し、溶存酸素濃度を5分間測定した。
それぞれの工程において、測定系統を切り替える直前の1分間の溶存酸素濃度測定値の平均値を、その工程での溶存酸素濃度とし、一つ前の工程で求めた溶存酸素濃度と式(2)より過酸化水素濃度を算出した。比較例1の結果を図5に示す。
図5から明らかなように、測定系統を切り替えた後の溶存酸素濃度計12の測定値は、一つ前の工程の間に通水していない配管18または20の滞留水に酸素が溶け込むため、実施例1と比較すると高い測定値を示した。その結果、各系統に切り替えてから、溶存酸素濃度の測定値が安定するまでに、2分以上要した。
1 水処理プロセス
10A、10B 過酸化水素濃度測定システム
11 過酸化水素分解装置(過酸化水素分解手段)
12 溶存酸素濃度計(溶存酸素濃度測定手段)
13 演算部(演算手段)
14 第1開閉弁
15 第1連通弁
16 第2連通弁
17 第2開閉弁
21 脱気装置(脱気手段)
22 第1流量安定化装置(第1流量安定化手段)
23 第2流量安定化装置(第2流量安定化手段)
25 弁制御装置(弁制御手段)
31 検体水採取用配管(検体水採取手段)
32 第1配管
33 分岐配管
35 第1連通配管
36 第2連通配管
37 第2配管

Claims (5)

  1. 水処理プロセスの所定位置から採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する方法であって、
    検体水を採取して第1検体水と第2検体水の2つに分ける工程と、
    前記第2検体水を過酸化水素分解手段で処理して処理水を得、該処理水を溶存酸素測定手段を介さずにそのまま排水しながら、前記第1検体水を直接溶存酸素濃度測定手段に導入して該第1検体水中の第1溶存酸素濃度を測定する第1測定工程と、
    前記第1検体水を前記溶存酸素測定手段を介さずにそのまま排水しながら、前記第2検体水を前記過酸化水素分解手段で処理して処理水を得、該処理水を前記溶存酸素濃度測定手段に導入して該処理水中の第2溶存酸素濃度を測定する第2測定工程と、
    前記第1溶存酸素濃度と前記第2溶存酸素濃度とから、検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算工程と、
    を含
    前記第1溶存酸素濃度の測定値をM1とし、前記第2溶存酸素濃度の測定値をM2として、前記演算工程は下式(1)
    (M2-M1)×(68/32)・・・(1)
    により過酸化水素濃度を算出する、過酸化水素濃度測定方法。
  2. 前記検体水を採取した後であって、第1検体水と第2検体水の2つに分ける前に、前記検体水を脱気処理する脱気工程を有する、請求項に記載の過酸化水素濃度測定方法。
  3. 水処理プロセスの所定位置から採取した検体水中の過酸化水素濃度を測定する過酸化水素濃度測定システムであって、
    前記検体水を採取する検体水採取手段と、
    採取した前記検体水を2つに分ける手段と、
    2つに分けた前記検体水の一方を第1開閉弁を有する第1配管を経由し溶存酸素濃度測定手段に導入して溶存酸素濃度を測定する経路と、
    2つに分けた前記検体水の他方を過酸化水素分解手段に導入し、過酸化水素を分解処理した処理水を第2開閉弁を有する第2配管を経由し排水する経路と、
    前記第1配管の前記第1開閉弁の上流側と、前記第2配管の前記第2開閉弁の下流側とを連通する、第1連通弁を有する第1連通配管と、
    前記第2配管の前記第2開閉弁の上流側と、前記第1配管の前記第1開閉弁の下流側で前記溶存酸素濃度測定手段の上流側とを連通する、第2連通弁を有する第2連通配管と、
    前記第1開閉弁と前記第2開閉弁と前記第1連通弁と前記第2連通弁とを開閉制御する弁制御手段と、
    前記検体水と前記処理水の溶存酸素濃度から前記検体水中の過酸化水素濃度を算出する演算手段と、
    を備え
    前記弁制御手段は、前記第1開閉弁が開、前記第2開閉弁が開、前記第1連通弁が閉、前記第2連通弁が閉の検体水測定モードと、前記第1開閉弁が閉、前記第2開閉弁が閉、前記第1連通弁が開、前記第2連通弁が開の処理水測定モードと、をとるように制御可能であり、
    前記演算手段は、前記検体水測定モードで得られた溶存酸素濃度の測定値をM1とし、前記処理水測定モードで得られた溶存酸素濃度の測定値をM2として、下式(1)
    (M2-M1)×(68/32)・・・(1)
    により過酸化水素濃度を算出する、過酸化水素濃度測定システム。
  4. 前記検体水採取手段に脱気手段を備える、請求項に記載の過酸化水素濃度測定システム。
  5. 前記溶存酸素濃度測定手段の下流側に流量安定化手段を備える、請求項3又は4に記載の過酸化水素濃度測定システム。
JP2018029279A 2018-02-22 2018-02-22 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法 Active JP7020960B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018029279A JP7020960B2 (ja) 2018-02-22 2018-02-22 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018029279A JP7020960B2 (ja) 2018-02-22 2018-02-22 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2019144143A JP2019144143A (ja) 2019-08-29
JP7020960B2 true JP7020960B2 (ja) 2022-02-16

Family

ID=67773732

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018029279A Active JP7020960B2 (ja) 2018-02-22 2018-02-22 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP7020960B2 (ja)

Families Citing this family (3)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
CN112881585B (zh) * 2021-01-12 2023-03-31 赣南师范大学 一种基于纳米酶催化驱动的银源检测方法
CN116380981B (zh) * 2023-06-07 2023-09-05 中国电子工程设计院有限公司 一种气相定量测定亚ppb级污染物的方法
JP7544210B1 (ja) 2023-07-28 2024-09-03 栗田工業株式会社 過酸化水素濃度測定システム及び過酸化水素濃度測定方法

Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005274386A (ja) 2004-03-25 2005-10-06 Japan Organo Co Ltd 過酸化水素分析装置及び過酸化水素分析方法
US20070238188A1 (en) 2006-03-29 2007-10-11 Carr Gregory E Peroxide monitor
JP2014185904A (ja) 2013-03-22 2014-10-02 Kurita Water Ind Ltd 水質測定方法
JP2017000970A (ja) 2015-06-11 2017-01-05 野村マイクロ・サイエンス株式会社 超純水製造システム及び超純水製造方法

Patent Citations (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2005274386A (ja) 2004-03-25 2005-10-06 Japan Organo Co Ltd 過酸化水素分析装置及び過酸化水素分析方法
US20070238188A1 (en) 2006-03-29 2007-10-11 Carr Gregory E Peroxide monitor
JP2014185904A (ja) 2013-03-22 2014-10-02 Kurita Water Ind Ltd 水質測定方法
JP2017000970A (ja) 2015-06-11 2017-01-05 野村マイクロ・サイエンス株式会社 超純水製造システム及び超純水製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2019144143A (ja) 2019-08-29

Similar Documents

Publication Publication Date Title
KR102360586B1 (ko) 과산화수소 농도의 측정 시스템 및 측정 방법
JP7020960B2 (ja) 過酸化水素濃度の測定システムおよび測定方法
Imbrogno et al. Comparative study of nanofiltration membrane characterization devices of different dimension and configuration (cross flow and dead end)
KR101668132B1 (ko) 백금족 금속 담지 촉매, 과산화수소의 분해 처리수의 제조 방법, 용존 산소의 제거 처리수의 제조 방법 및 전자 부품의 세정 방법
Micari et al. Experimental and theoretical characterization of commercial nanofiltration membranes for the treatment of ion exchange spent regenerant
JP5484278B2 (ja) 過酸化水素濃度の測定装置及び測定方法
Xiao et al. Phenol rejection by cellulose triacetate and thin film composite forward osmosis membranes
Ho et al. Measurement of membrane pore interconnectivity
JP2012061443A (ja) 純水または超純水の製造装置及び製造方法
Evdochenko et al. Charge distribution in polyelectrolyte multilayer nanofiltration membranes affects ion separation and scaling propensity
JP2010216823A (ja) 液中の陰イオンの検出方法及び検出装置
JP2006297244A (ja) イオンクロマトグラフィー装置用前処理カラム、その回生方法及びイオンクロマトグラフィー装置
Min et al. A note on fluoride removal by reverse osmosis
JP2005274386A (ja) 過酸化水素分析装置及び過酸化水素分析方法
JP7195097B2 (ja) 過酸化水素濃度分析装置および過酸化水素濃度分析方法
JP4671272B2 (ja) 液中の陰イオン検出方法及び検出装置
CN112051198A (zh) 一种多孔膜孔径的量化评估方法
JP7333706B2 (ja) 濃度分析装置
JP7252044B2 (ja) 濃度分析装置
Chilyumova et al. Nanofiltration of bivalent nickel cations—model parameter determination and process simulation
CN105651979A (zh) 检测弱酸性树脂是否失效的方法和设备
CN213091444U (zh) 一种多孔膜孔径的量化评估装置
Tang et al. A novel positively charged asymmetry membranes from poly (2, 6-dimethyl-1, 4-phenylene oxide) by benzyl bromination and in situ amination: Part II: Effect of charged group species on membrane performance and morphologies
KR100372908B1 (ko) 용질의 특정분자량 부분제거율을 이용한 막공 크기분포측정방법 및 장치
JP3907892B2 (ja) イオンクロマトグラフ

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20201124

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20210622

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20210625

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210819

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20211116

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20220106

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20220125

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20220203

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 7020960

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150