JP7020905B2 - 樹脂マスク剥離用洗浄剤組成物 - Google Patents
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一方、様々な分野において電子化が進みプリント基板等の生産量が増加している。さらに、利用される機器や装置の小型化、処理速度の高速化、消費電力を低減するため、配線が微細化、多層化し、剥離・洗浄工程が増加し、洗浄剤組成物の使用量も増加する傾向にある。この洗浄剤組成物の使用量の増加に伴い、洗浄剤組成物やリンス水等の廃液の排水処理負荷や廃液流入による湖沼の富栄養化も増大していることから、排水処理負荷が小さく、湖沼の富栄養化の原因となる窒素及びリンを含有せず、樹脂マスクを効率よく除去できる洗浄剤組成物が強く要望されている。しかし、前記特許文献に記載の方法では、高い樹脂マスク除去性と低い排水処理負荷の両立が難しい。
一般に、樹脂マスクの剥離は、洗浄剤組成物の成分が樹脂マスクに浸透し、樹脂マスクが膨潤することによる界面ストレスに起因すると考えられている。本開示に係る洗浄剤組成物では、無機アルカリ(成分A)と水(成分D)が樹脂マスクに浸透することにより、樹脂マスクに配合されているアルカリ可溶性樹脂の解離を促進し、さらに電荷反発を起こすことによって樹脂マスクの剥離を促進する。無機アルカリ(成分A)と水(成分D)が樹脂マスクに浸透する際に、界面活性剤や水溶性溶剤が存在すると浸透性が向上する場合がある。水(成分D)の存在下で、多価アルコール(成分B)と特定のハンセン溶解度パラメータを有する有機溶剤(成分C)は複合体を形成し、この複合体が基板表面と樹脂マスクとの間に作用することで、基板-樹脂間の密着力が低下してさらに樹脂マスクの剥離を促進し、樹脂マスク除去性が格段に向上するものと推定される。
また、本開示に係る洗浄剤組成物が、多価アルコール(成分B)と特定のハンセン溶解度パラメータを有する有機溶剤(成分C)を特定の比率で含有する場合、それらの複合体と樹脂マスクの樹脂成分との相溶性が高くなり、樹脂マスクと水との界面において効果的な剥離作用が発揮され、樹脂マスク除去性がより向上すると推定される。
さらに、多価アルコール(成分B)と特定のハンセン溶解度パラメータを有する有機溶剤(成分C)の複合体が樹脂マスクに効率的に作用するため、本開示に係る洗浄剤組成物の使用時における成分Dの水の含有量を多くでき、洗浄剤組成物中の有機物含有量を低減でき、排水処理負荷の増大を抑制できると推定される。これにより、効率よくかつ高い清浄度で基板上に微細な回路(配線パターン)の形成が可能になると考えられる。
但し、本開示はこのメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
本開示に係る洗浄剤組成物は、無機アルカリ(成分A)を含む。成分Aは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
本開示に係る洗浄剤組成物は、多価アルコール(成分B)を含む。成分Bは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。多価アルコールとは、分子内に水酸基を2個以上有する化合物をいう。成分Bの水酸基数は、2個以上であって、樹脂マスク除去性の観点から、2個以上6個以下が好ましく、2個以上5個以下がより好ましく、2個以上4個以下が更に好ましい。成分Bの炭素数は、特に限定されなくてもよく、樹脂マスク除去性の観点から、1個以上20個以下が好ましく、2個以上10個以下がより好ましく、3個以上6個以下が更に好ましい。
本開示に係る洗浄剤組成物は、成分B以外の有機溶剤(成分C)を含む。成分Cは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
δd:分子間の分散力によるエネルギー
δp:分子間の双極子相互作用によるエネルギー
δh:分子間の水素結合によるエネルギー
これら3つのパラメータは3次元空間(ハンセン空間)における座標とみなすことができ、2つの物質のHSPをハンセン空間内に置いたとき、2点間の距離が近ければ近いほど互いに溶解しやすいことを示している。化学工業2010年3月号(化学工業社)等に詳細な説明があり、パソコン用ソフト「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」等を用いることで各種物質のハンセン溶解度パラメータを得ることができる。本開示は、このパソコン用ソフト「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」を用いて得られたハンセン溶解度パラメータを用いている。成分Cが2種以上の混合有機溶剤である場合、混合有機溶媒としてのHSPの距離については、「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」の混合有機溶剤のHSP算出機能を用いて算出できる。
距離=[(δdB-17.5)2+(δpB-5.0)2+(δhB-11.5)2]0.5
≦1.5MPa0.5
本開示に係る洗浄剤組成物は、水(成分D)を含む。成分Dとしては、イオン交換水、RO水、蒸留水、純水、超純水が使用されうる。
本開示に係る洗浄剤組成物は、前記成分A~D以外に、必要に応じて任意成分を含有することができる。任意成分としては、通常の洗浄剤に用いられうる成分を挙げることができ、例えば、キレート剤、増粘剤、分散剤、防錆剤、塩基性物質、界面活性剤、高分子化合物、可溶化剤、酸化防止剤、防腐剤、消泡剤、抗菌剤等が挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物の使用時における任意成分の合計含有量は、0質量%以上2質量%以下が好ましく、0質量%以上1.5質量%以下がより好ましく、0質量%以上1.3質量%以下が更に好ましく、0質量%以上1質量%以下がより更に好ましい。
本開示に係る洗浄剤組成物は、前記成分A~D及び必要に応じて上述の任意成分を公知の方法で配合することにより製造できる。例えば、本開示に係る洗浄剤組成物は、少なくとも前記成分A~Dを配合してなるものとすることができる。したがって、本開示は、少なくとも前記成分A~Dを配合する工程を含む、洗浄剤組成物の製造方法に関する。本開示において「配合する」とは、成分A~D及び必要に応じてその他の成分を同時に又は任意の順に混合することを含む。本開示に係る洗浄剤組成物の製造方法において、各成分の好ましい配合量は、上述した本開示に係る洗浄剤組成物の各成分の好ましい含有量と同じとすることができる。
本開示に係る洗浄剤組成物は、一又は複数の実施形態において、樹脂マスクが付着した被洗浄物の洗浄に使用されうる。被洗浄物としては、例えば、電子部品及びその製造中間物が挙げられる。電子部品としては、例えば、プリント基板、ウエハ、銅板及びアルミニウム板等の金属板から選ばれる少なくとも1つの部品が挙げられる。前記製造中間物は、電子部品の製造工程における中間製造物であって、樹脂マスク処理後の中間製造物を含む。樹脂マスクが付着した被洗浄物の具体例としては、例えば、樹脂マスクを使用した半田付けやメッキ処理(銅メッキ、アルミニウムメッキ、ニッケルメッキ等)等の処理を行う工程を経ることにより、配線や接続端子等が基板表面に形成された電子部品等が挙げられる。
本開示は、一態様において、樹脂マスクが付着した被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物に接触させることを含む、樹脂マスクの洗浄方法に関する(以下、本開示に係る洗浄方法ともいう)。本開示に係る洗浄方法は、樹脂マスクが付着した被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を有する。被洗浄物としては、上述した被洗浄物を挙げることができる。被洗浄物に本開示に係る洗浄剤組成物を接触させる方法、又は、被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する方法としては、例えば、洗浄剤組成物を入れた洗浄浴槽内へ浸漬することで接触させる方法や、洗浄剤組成物をスプレー状に射出して接触させる方法(シャワー方式)、浸漬中に超音波照射する超音波洗浄方法等が挙げられる。本開示に係る洗浄剤組成物は、希釈することなくそのまま洗浄に使用できる。本開示に係る洗浄方法は、洗浄剤組成物に被洗浄物を接触させた後、水でリンスし、乾燥する工程を含むことが好ましい。本開示に係る洗浄方法であれば、樹脂マスク、特にメッキ処理及び/又は加熱処理された樹脂マスクを効率よく除去できる。本開示に係る洗浄方法は、本開示に係る洗浄剤組成物の洗浄力が発揮されやすい点から、本開示に係る洗浄剤組成物と被洗浄物との接触時に超音波を照射することが好ましく、その超音波は比較的高周波数であることがより好ましい。前記超音波の照射条件は、同様の観点から、例えば、26~72kHz、80~1500Wが好ましく、36~72kHz、80~1500Wがより好ましい。
本開示に係る電子部品の製造方法は、一態様において、樹脂マスクが付着した被洗浄物を本開示に係る洗浄剤組成物で洗浄する工程を含む。被洗浄物としては、上述した被洗浄物を挙げることができる。本開示に係る電子部品の製造方法は、本開示に係る洗浄剤組成物を用いて洗浄を行うことにより、金属の腐食を抑制しながら、電子部品に付着した樹脂マスクを効果的に除去できるため、信頼性の高い電子部品の製造が可能になる。さらに、本開示に係る洗浄方法を行うことにより、電子部品に付着した樹脂マスクの除去が容易になることから、洗浄時間が短縮化でき、電子部品の製造効率を向上できる。
本開示は、本開示に係る洗浄方法及び本開示に係る電子部品の製造方法のいずれかに使用するためのキット(以下、「本開示に係るキット」ともいう)に関する。本開示に係るキットとしては、例えば、成分Aを含有する溶液(第1液)と、成分B及び成分Cを含有する溶液(第2液)とを、相互に混合されない状態で含み、第1液及び第2液の少なくとも一方は、成分Dをさらに含有し、第1液及び第2液が使用時に混合されるキット(2液型洗浄剤組成物)が挙げられる。第1液及び第2液の各々には、必要に応じて上述した任意成分が含まれていてもよい。本開示に係るキットによれば、樹脂マスク除去性に優れ、排水処理負荷の小さい、洗浄剤組成物が得られうる。
有機溶剤のHSPの座標(δd1、δp1、δh1)は、パソコン用ソフトウエア「HSPiP:Hansen Solubility Parameters in Practice」を用いて算出した。そして、有機溶剤のHSPの座標(δd1、δp1、δh1)と成分座標(δd=17.5、δp=5.0、δh=11.5)との距離を下記式により算出した。算出結果を表1に示す。
距離=[(δd1-17.5)2+(δp1-5.0)2+(δh1-11.5)2]0.5
[実施例1~14、参考例1~4及び比較例1~3の洗浄剤組成物の調製]
500mLガラスビーカーに有効分換算で水酸化ナトリウム(成分A)20.0g、プロピレングリコール(成分B)2.5g、プロピレングリコールフェニルエーテル(成分C)1.0g及び水(成分D)476.5gを添加し、それを攪拌して均一に混合することにより、実施例1の洗浄剤組成物を調製した。
そして、実施例2~14、参考例1~3及び比較例1~3の洗浄剤組成物を、実施例1と同様の方法により、成分A~D以外の成分を含む場合はそれらも同時に配合し、表2に示す有効分になる組成比で調製した。各洗浄剤組成物の各成分の含有量(質量%)及び質量比を表2に示した。
(成分A)
水酸化ナトリウム[関東化学株式会社製、鹿特級、固形分48質量%]
水酸化カリウム[関東化学株式会社製、鹿特級、固形分48質量%]
(成分B)
1,2-プロパンジオール[東京化成工業株式会社製]
1,3-ブタンジオール[東京化成工業株式会社製]
1,5-ペンタンジオール[東京化成工業株式会社製]
2-メチル-1,3-プロパンジオール[東京化成工業株式会社製]
ジエチレングリコール[和光純薬工業株式会社製]
2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール[東京化成工業株式会社製]
グリセリン[花王株式会社製、精製グリセリン]
トリメチロールプロパン[東京化成工業株式会社製]
ペンタエリスリトール[東京化成工業株式会社製]
ジグリセロール[ナカライテスク株式会社製]
(非成分B)
1-ブタノール[東京化成工業株式会社製]
テトラヒドロフルフリルアルコール[東京化成工業株式会社製]
1-ペンタノール[東京化成工業株式会社製]
シクロペンタノール[東京化成工業株式会社製]
(成分C)
プロピレングリコールフェニルエーテル[日本乳化剤株式会社製、フェニルプロピレングリコール(PhFG)、HSPの座標δd1:17.4、δp1:5.3、δh1:11.5、HSPの距離:0.32(MPa)0.5]
エチレングリコールモノベンジルエーテル[日本乳化剤株式会社製、ベンジルグリコール(BzG)、HSPの座標δd1:17.8、δp1:5.9、δh1:12.2、HSPの距離:1.18(MPa)0.5]
(非成分C)
2-フェノキシエタノール[東京化成工業株式会社製、HSPの座標δd1:17.8、δp1:5.7、δh1:14.3、HSPの距離:2.90(MPa)0.5]
(成分D)
水[オルガノ株式会社製純水装置G-10DSTSETで製造した1μS/cm以下の純水]
調製した実施例1~14、参考例1~4及び比較例1~3の洗浄剤組成物の樹脂マスク除去性を評価した。
ダイレクトイメージング(直接描画)用感光性フィルム(日立化成株式会社製、フォテック RD-1215、ネガ型ドライフィルムレジスト)をガラスエポキシ多層基板(日立化成株式会社製、MCL-E-679FG)の表面に下記条件でラミネートし、選択的に露光処理して露光部を硬化した後(露光工程)、現像処理することで未露光部を除去し(現像工程)、レジストパターン(下記3つのパターン形状のネガ型樹脂マスク)を有する基板を得た。そして、前記現像処理で未露光部が除去された領域を銅メッキ処理することで、テストピース(4cm×4.5cm)を得た。
(2)露光:プリント基板用直接描画装置(株式会社SCREENグラフィックアンドプレシジョンソリューションズ製、Mercurex LI-9500)を用い、露光量15mJ/cm2で露光を行う。
(3)パターン形状:下記の3パターン
塗りつぶしパターン(ベタ):30μm×30μm以上の面積を有する部分
縞状パターン1:ライン幅Lとライン間隔Sとの比(L/S)=20μm/20μmの縞状パターン
縞状パターン2:L/S=15μm/15μmの縞状パターン
(4)現像:基板用現像装置(揚博科技株式会社製、LT-980366)、30℃の1質量%炭酸ナトリウム水溶液を用いて、スプレー圧0.2MPa、47秒間で、未露光部の樹脂マスクを除去する。
100mLガラスビーカーに、実施例1~14、参考例1~4及び比較例1~3の各洗浄剤組成物を100g添加して60℃に加温し、回転子(フッ素樹脂(PTFE)、φ8mm×25mm)を用いて回転数400rpmで撹拌した状態で、テストピースを3分間浸漬する。そして、100mLガラスビーカーに水を100g添加したすすぎ槽へ浸漬してすすいだ後、自然乾燥する。
洗浄試験を行い、目視にて、塗りつぶしパターン(ベタ)が完全にテストピースから剥離するまでの時間(秒)を測定する。結果を表2に示す。
光学顕微鏡「デジタルマイクロスコープVHX-2000」(株式会社キーエンス製)を用いて、洗浄試験を行った後のテストピースの各部位に残存する樹脂マスクの有無を300倍に拡大して目視確認し、樹脂マスク除去性を評価する。各縞状パターン1~2の中で、完全に除去できた縞状パターンのL/Sの値を計測し、下記評価基準で評価した結果を表2に示す。
<評価基準>
1:すべての縞状パターンが完全剥離できた
2:縞状パターン1のみ完全剥離できた
3:いずれの縞状パターンも剥離できなかった
Claims (11)
- 無機アルカリ(成分A)、多価アルコール(成分B)、成分B以外の有機溶剤(成分C)及び水(成分D)を含有し、
成分Cのハンセン溶解度パラメータの座標が、δd=17.5、δp=5.0、δh=11.5を中心とする半径1.5MPa0.5の球の範囲内であり、
洗浄剤組成物の使用時における成分Dの含有量が80質量%以上であり、
窒素含有化合物及びリン含有化合物の合計含有量が0.01質量%以下である、樹脂マスク剥離用洗浄剤組成物。 - 洗浄剤組成物の使用時における成分Aの含有量が0.1質量%以上15質量%以下であり、
洗浄剤組成物の使用時における成分Bの含有量が0.1質量%以上7質量%以下であり、
洗浄剤組成物の使用時における成分Cの含有量が0.01質量%以上3質量%以下である、請求項1に記載の洗浄剤組成物。 - 成分Bが水酸基を2以上4以下有する多価アルコールである、請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
- 成分Bと成分Cの質量比(成分B/成分C)が1以上10以下である、請求項1から3のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
- 洗浄剤組成物中の有機物の総含有量が、10質量%以下である、請求項1から4のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
- 樹脂マスクが、露光及び現像の少なくとも一方の処理が施されたネガ型ドライフィルムレジストである、請求項1から5のいずれかに記載の洗浄剤組成物。
- 樹脂マスクが付着した被洗浄物を請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を含む、樹脂マスクの洗浄方法。
- 被洗浄物が、電子部品の製造中間物である、請求項7に記載の洗浄方法。
- 樹脂マスクが付着した被洗浄物を請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物で洗浄する工程を含む、電子部品の製造方法。
- 請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物の、電子部品の製造への使用。
- 請求項7又は8の洗浄方法及び請求項9に記載の電子部品の製造方法のいずれかに使用するためのキットであって、
請求項1から6のいずれかに記載の洗浄剤組成物を構成する成分A~Dのうち、成分Aを含有する第1液と、成分B及び成分Cを含有する第2液とを相互に混合されない状態で含み、
前記第1液及び前記第2液の少なくとも一方は、成分Dを更に含有する、キット。
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