JP7019250B2 - 伸縮性コラーゲンシート - Google Patents
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[1]伸縮性コラーゲンシートを構成するコラーゲンが、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理された再フィブリル化コラーゲンフィブリルであって、上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルは略規則性をもって配向したものであり、上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルの配向方向を第1方向とし、上記伸縮性コラーゲンシート平面上において第1方向との直角方向を第2方向としたときに、少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた後の湿潤状態の上記伸縮性コラーゲンシートが、第1方向及び第2方向のそれぞれに伸縮性を有し、且つ、第2方向の伸長率が第1方向の伸長率よりも大きい伸長異方性を有するものである、伸縮性コラーゲンシート。
[2]以下の工程を含む上記[1]記載の伸縮性コラーゲンシートの製造方法。
略規則性をもって配向した再フィブリル化コラーゲンフィブリルによって構成された未架橋のコラーゲンシートを、その上面及び下面を押圧した状態で、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理する工程。
[3]前記略規則性をもって配向した再フィブリル化コラーゲンフィブリルによって構成された未架橋のコラーゲンシートが、以下の工程A又は工程Bを含む製造方法によって製造されたものである、上記[2]記載の伸縮性コラーゲンシートの製造方法。
工程A:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液を吐出しシート状に展延する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。
工程B:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液をシート状に吐出する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。
[4]上記[1]記載の伸縮性コラーゲンシートに細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法。
[5]前記培養工程が、前記伸縮性コラーゲンシートを伸縮運動させながら細胞培養することを含む、上記[4]記載の細胞培養方法。
[6]上記[1]記載の伸縮性コラーゲンシートを細胞培養基材として用い、細胞培養することによって形成された移植用材料。
[7]上記[1]記載の伸縮性コラーゲンシートを用いた医用材料。
[8]上記[1]記載の伸縮性コラーゲンシートを用いた細胞培養装置。
なお、本発明において、数値範囲に関する「数値1~数値2」という表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
本発明の伸縮性コラーゲンシートは、伸縮性コラーゲンシートを構成するコラーゲンが、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理された再フィブリル化コラーゲンフィブリルであって、上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルは略規則性をもって配向したものであり、上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルの配向方向を第1方向とし、上記伸縮性コラーゲンシート平面上において第1方向との直角方向を第2方向としたときに、少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水(PBS)中に完全に浸漬させた後の湿潤状態の上記伸縮性コラーゲンシートが、第1方向及び第2方向のそれぞれに伸縮性を有し、且つ、第2方向の伸長率が第1方向の伸長率よりも大きい伸長異方性を有するものである。
本発明の伸縮性コラーゲンシートは、再フィブリル化コラーゲンフィブリルが、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種により架橋が施されたものである。以下、これらの架橋を総称するときは「照射架橋」という。
前述のように、可溶化コラーゲン水溶液中では、3本のポリペプチド鎖によって3重らせん構造が形成されたコラーゲン分子がバラバラに存在しているが、これに適当な緩衝液を添加し可溶化コラーゲン水溶液を適度なイオン強度及びpHとすることによって、D周期を有する再フィブリル化コラーゲンフィブリルを取得することができる。本発明の伸縮性コラーゲンシートの任意の場所を例えば倍率10,000倍の走査電子顕微鏡で観察したときに、ファイバー状構造体で構成されたものであることが確認できれば、コラーゲンの形態が再フィブリル化コラーゲンフィブリルであると判断することができる。なお、再フィブリル化コラーゲンフィブリルが水性溶媒の存在下で照射架橋されたものかの判断については、前述の架橋処理で説明したとおりであり、顕微鏡等による観察では困難である。また、再フィブリル化コラーゲンフィブリルがD周期を有することの確認は一般に走査電子顕微鏡では容易とは言えないが、再フィブリル化コラーゲンフィブリルの一部分にでもD周期が確認されれば、再フィブリル化コラーゲンフィブリル全体がD周期を有すると判断しても概ね差し支えない。
再フィブリル化コラーゲンフィブリルが略規則性をもって配向した形態は、本発明の伸縮性コラーゲンシートを全体として観察したときに、大部分の再フィブリル化コラーゲンフィブリルが略平行に配列している状態を意味するものであり、一部の再フィブリル化コラーゲンフィブリルが不規則に存在することが許容されるのは云うまでもない。ここで、「略平行」とは、全く平行はもとより、実質的に平行と認められるものを含む意図である。配向度の測定方法の一例は、本発明の伸縮性コラーゲンシートの任意の場所における10,000倍の走査電子顕微鏡像を、旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト「A像くん(登録商標)」で解析し、配向度を半値幅法により算出するものである。当該配向度の最大値は1であり、値が大きいほど一定方向を向いていることを示す。好適範囲は、0.5~1の範囲である。上記範囲内であれば、略規則性をもって配向している状態と云うことができる。配向度の範囲は、より好ましくは0.6~1の範囲であり、さらに好ましくは0.7~1の範囲である。
本発明の伸縮性コラーゲンシートの伸縮性を調べるときは、本発明の伸縮性コラーゲンシートを少なくとも1日間20℃のPBS中に完全に浸漬させた上で、湿潤状態を保持した条件下で調べる。湿潤状態を保持した条件下とすることにより、コラーゲンシートが柔軟になり、よって伸縮性の評価に適することとなる。浸漬期間は、1日間以上の期間において適宜設定すればよい。また、静置状態で浸漬すればよいが、必要に応じて気泡除去のための操作等を行ってもよい。本発明の複合体が予めPBS中で保管されていれば、液温を20℃に設定して1日間保管する。また、本発明の伸縮性コラーゲンシートがPBS以外の溶媒中で保管されていれば、20℃のPBS中に移して1日間完全に浸漬させる。
本発明の伸縮性コラーゲンシートは、前記伸縮性を有する範囲内であれば、シート厚、密度は特に限定されることはない。シート厚は、本発明の伸縮性コラーゲンシートを少なくとも1日間20℃のPBS中に完全に浸漬させた湿潤状態において、任意の5箇所で測定した厚さの平均値である。シート厚は、例えば、10~1000μmの範囲であることが好ましい。より好ましくは50~500μmの範囲であり、さらに好ましくは100~300μmの範囲である。なお、シート厚の測定方法は特に限定されず、マイクロメータ、ノギス等の既知の測定手段が用いられ得る。
本発明の伸縮性コラーゲンシートの好適な製造方法は、以下の工程を含むものである。即ち、略規則性をもって配向した再フィブリル化コラーゲンフィブリルによって構成された未架橋のコラーゲンシート(以下「シートA」と称する)を、その上面及び下面を押圧した状態で、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理する工程である。
シートAは未架橋であるため、シートAを水性溶媒の存在下となるように設定すると、水性溶媒によってシートAが膨潤する。しかし、シートAの上面及び下面を押圧した状態とすることによって、膨潤を防止することができる。さらに、適当な押圧力を加えることにより、隣接する再フィブリル化コラーゲンフィブリル同士の距離を近くすることができ、よって密接箇所数を増やすことにつながり、架橋密度を高くすることが可能となる。これにより、高強度のシートが得られるとともに、再フィブリル化コラーゲンフィブリルが略規則性をもって配向しているために、再フィブリル化コラーゲンフィブリルの長軸方向のずれによる第1方向の伸長率よりも、再フィブリル化コラーゲンフィブリル同士を引き離す方向である第2方向の伸長率が大きくなる。
(強度測定法)
まず伸縮性コラーゲンシートを図3(a)に示すダンベル形に加工する。簡便には、ダンベル形の型で打ち抜く。図3(a)のダンベル形を言葉で説明すると、長辺20mm、短辺10mmの長方形を基本形とした場合に、四隅の角を位置aとし、長辺上の位置aから5mmの位置を位置bとし、長辺上の位置aから7.5mmの位置を位置cとし、位置cを中心とする半径2.5mmの円弧上の点であって位置cを起点とし短辺に平行に2.5mm長方形の内側に入った点を位置dとしたきに、ダンベル形は、長辺上の位置aから5mmの位置(位置b)までの線分(線分ab)、位置bから上記円弧上を通って位置dまでの円弧、長辺に平行に位置d同士を結んだ線分、及び短辺、によって囲まれるものである。図3(b)は、ダンベル形において位置a~dを示したものである。
加工にあたっては、第1方向がダンベル形の長辺方向(図3(a)における縦方向)と平行となるようにする。
ダンベル形を長辺方向が鉛直方向となるようにし、図3(c)における符号75で示した網掛け部、即ち、短辺と線分abで囲まれた部分、をそれぞれプローブで把持し、下方のプローブを固定した状態で、上方のプローブを引張速度0.5mm/秒で鉛直上方向に移動させ、最大応力を測定する。最大応力は、最大応力=最大引張荷重÷強度測定供試前の断面積、の式によって求める。なお、強度の測定にあたっては、ダンベル形を湿潤状態とした条件下で測定する。測定に用いる好適なダンベル形は、伸縮性コラーゲンシートを少なくとも1日間20℃のPBS中に完全に浸漬させた後、湿潤状態を保持させながらダンベル形に加工したもの、又は、伸縮性コラーゲンシートをダンベル形に加工した後、ダンベル形を少なくとも1日間20℃のPBS中に完全に浸漬したもの、である。
シートAの製造方法は、シートAが得られるのであれば特に限定されることはない。好適な製造方法は、次の工程A又は工程Bを含むものである。
・工程A:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液を吐出しシート状に展延する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。
・工程B:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液をシート状に吐出する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。
魚類由来の可溶化コラーゲンは哺乳類由来の可溶化コラーゲンに比べて再フィブリル化速度が速いという特性を一般に有するため、魚類由来の可溶化コラーゲン水溶液を用いたときは再フィブリル化の過程を短時間で終了させることができる、即ち、透明又は半透明なシート状物が白濁し白色を呈するまでの時間が短いということである。
再フィブリル化がゆっくり進行すれば、再フィブリル化コラーゲンフィブリルの配向度の低下につながる種々の要因(例えば、ゲル内の分子運動、温度変化等)の影響を受け易くなる。そのため、再フィブリル化速度の速い魚類由来の可溶化コラーゲン水溶液を用いることはより好ましい材料選択である、と云うことができる。
本発明の目的が阻害されない限り、使用目的に応じて、本発明の伸縮性コラーゲンシートに、その他構成要素として各種添加剤が配合されてもよい。その他構成要素の例として、フィブリン、トロンビン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸等が挙げられる。
ティラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「セルキャンパス FD-08G」(凍結乾燥品)をpH3のHCl溶液に溶解し、コラーゲン濃度1.1質量%の無色透明な可溶化コラーゲン水溶液を調製した。以下、当該可溶化コラーゲン水溶液を「可溶化コラーゲン水溶液A」と称する。
上記と同様にして、コラーゲン濃度15質量%の可溶化コラーゲン水溶液を調製した。以下、当該可溶化コラーゲン水溶液を「可溶化コラーゲン水溶液B」と称する。
可溶化コラーゲン水溶液Bは吸引により15mlシリンジに充填した。シリンジの先端に長さ約2cmの筒を取り付け、平坦なポリスチレン板上に可溶化コラーゲン水溶液Bを吐出方向と逆方向に移動させながら吐出した。続いて、プラスチック製の棒を用いて展延して、厚み約1mmのシート状物を得た。尚、プラスチック製の棒は吐出方向と順方向に押し動かした。
次に、ポリスチレン板ごとD-PBS中に静かに浸漬し、一晩室温で静置し、コラーゲンを再フィブリル化させた。得られた再フィブリル化シート状物は、白色を呈したものであった。
再フィブリル化シート状物の上面及び下面をあらかじめD-PBSに浸漬した2枚のポリウレタンスポンジ(押圧部材)で挟んで押圧した状態とし、この状態のままD-PBS中に投入して、25kGyのγ線を照射することにより、コラーゲンシートを得た。
当該コラーゲンシートを20℃のPBS中に移し、1日間当該PBS中に完全に浸漬させた。これを取り出し、湿潤状態を保持させたままで伸縮性を手で調べた。その結果、第1方向及び第2方向のそれぞれにおいて、伸長性及び元の形状に戻る収縮性、即ち、伸縮性を有しており、且つ、第2方向の伸長程度が第1方向の伸長程度よりも大きい伸長異方性を有していたことより、本発明の伸縮性コラーゲンシートであった。湿潤状態における当該伸縮性コラーゲンシートの平面視の大きさは、縦63mm、横20mmであった。当該伸縮性コラーゲンシートのシート厚(湿潤状態における任意の5箇所を測定した厚さの平均値)は280μmであった。また、密度は220mg/cm3であった。なお、密度は、当該伸縮性コラーゲンシート中のコラーゲンの重量を上記シート厚と湿潤状態におけるコラーゲンシートの面積から求めた体積で除することによって求めた。
可溶化コラーゲン水溶液Aの9容量部と10倍濃い濃度に作製したD-PBSの1容量部とを混合し、この混合液をシリコン製の成形器(縦40mm×横30mm、高さ2.5mm)に注入し、水分の蒸発を防ぐためにスライドグラスで上面を覆い、25℃・12時間保持して線維化コラーゲンゲルを得た。当該線維化コラーゲンゲルを、エタノール/水の容量比が50/50の混合液(以下、50/50のように表記する)、70/30、90/10、100/0に順次浸漬して、脱塩・脱水した後、膜の上下面をポリスチレン板で覆い、側面のみから脱媒させることにより乾燥させて線維化コラーゲン膜を得た。次に、当該線維化コラーゲン膜をD-PBSに浸漬した状態で、25kGyのγ線照射を行うことにより、架橋線維化コラーゲン膜を得た。
架橋線維化コラーゲン膜を20℃のPBS中に移し、1日間当該PBS中に完全に浸漬させた。これを取り出し、湿潤状態を保持させたままで伸縮性を手で調べた。その結果、いずれの方向においても伸縮性は有していたが、伸長度合いはいずれの方向でも同程度であり、伸長異方性を有さないものであった。実施例1と同様にして測定した架橋線維化コラーゲン膜の膜厚は184μmであり、密度は150mg/cm3であった。
実施例1の伸縮性コラーゲンシートと比較例1の架橋線維化コラーゲン膜のそれぞれについて、倍率10,000倍の走査電子顕微鏡像を旭化成エンジニアリング株式会社製の画像解析ソフト「A像くん(登録商標)」で解析し、配向度を半値幅法により算出した。
その結果、配向度は、実施例1では0.778、比較例1では0であった。実施例1の伸縮性コラーゲンシートは、その配向度が0.5~1の範囲内であったことより、略規則性をもって配向している状態と云えるものであった。また、比較例1の架橋線維化コラーゲン膜は配向性が全くない状態、即ち無配向状態と云えるものであった。
図2は、倍率10,000倍の走査電子顕微鏡像であり、図2(a)は実施例1の伸縮性コラーゲンシートであり、図2(b)は比較例1の架橋線維化コラーゲン膜である。図2(a)によっても実施例1の伸縮性コラーゲンシートは略規則性をもって配向していることが確認できる。また、図2(b)からは、比較例1の架橋線維化コラーゲン膜には配向性が全くないことが確認できる。
伸長率の測定には、Stable Micro Systems製の「TEXTURE ANALYSER TA.XT.plus」を用い、プローブとして「Mini Tensile Grips A/MTG」を用いた。
実施例1の伸縮性コラーゲンシートから図3(a)に示したダンベル形2個を加工した。具体的には、実施例1の伸縮性コラーゲンシートを少なくとも1日間20℃のPBS中に完全に浸漬させた後、図3(a)における長辺方向(縦方向)を伸長方向とし、この長辺方向と第1方向が平行となるように加工したダンベル形(以下「ダンベル形1」という)と、この長辺方向と第2方向が平行となるように加工したダンベル形(以下「ダンベル形2」という)である。なお、図3(c)における符号75で示した網掛け部は、プローブで把持した部分である。また、ダンベル形の長辺方向が鉛直方向となるように設置した。
伸長率の測定において、図3(c)における符号77で示した部分の長さ、即ち、プローブで把持した網掛け部を除いた中央部分の長さをL0とした(ただし、L0の長さは把持の仕方により変化する)。符号77で示した部分を伸長させて最大応力を示したときの長さをL1とした。なお、伸長にあたっては、下方のプローブを固定した状態とし、上方のプローブを引張速度0.5mm/秒で鉛直上方向に移動させた。伸長率の測定は、ダンベル形1とダンベル形2のそれぞれについて実施した。伸長率は、伸長率(%)=(L1-L0)/L0×100の式によって求めた。なお、伸長率の測定中は湿潤状態を保持させた。
比較例1の架橋線維化コラーゲン膜についても同様にダンベル形に加工したものを用いて伸長率を測定した。ただし、比較例1の架橋線維化コラーゲン膜は配向性を有さないため、任意の方向(方向A)と、方向Aに直角な方向(方向B)の2つの方向でダンベル形に加工した。
なお、最大応力は、最大応力=最大引張荷重÷伸長率測定供試前の断面積、の式から求めた。
伸長率の測定結果を表1に示した。
また、図4に、経時的な引張荷重の変化を示したグラフを掲載した。横軸は時間(秒)であり目盛り間隔は20秒、縦軸は引張荷重(g)であり目盛り間隔は25gである。
図5(a)は、第2方向をダンベル形の長辺方向と平行にしたものを長辺方向の両端部分をそれぞれピンセットで挟んで保持した状態のものである。なお、図5(a)ではまだ伸長させていない。
図5(b)は、図5(a)の状態から手動により第2方向と平行な方向に伸縮性コラーゲンシートを伸長させたものである。この段階では、まだ最大応力を示すには至っていない。ちなみに、同一辺上のダンベル部開始点2点間の長さについての伸長率を計算したところ、伸長率は105%であった。
Claims (6)
- 伸縮性コラーゲンシートを構成するコラーゲンが、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理された再フィブリル化コラーゲンフィブリルであって、
上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルは略規則性をもって配向したものであり、
上記再フィブリル化コラーゲンフィブリルの配向方向を第1方向とし、上記伸縮性コラーゲンシート平面上において第1方向との直角方向を第2方向としたときに、
少なくとも1日間20℃のリン酸緩衝生理食塩水中に完全に浸漬させた後の湿潤状態の上記伸縮性コラーゲンシートが、第1方向及び第2方向のそれぞれに伸縮性を有し、且つ、第2方向の伸長率が第1方向の伸長率よりも大きい伸長異方性を有するものであり、
伸長異方度=(第2方向の伸長率)/(第1方向の伸長率)の式から求められる伸長異方度が、3以上である、
伸縮性コラーゲンシート。 - 以下の工程を含む請求項1記載の伸縮性コラーゲンシートの製造方法。
略規則性をもって配向した再フィブリル化コラーゲンフィブリルによって構成された未架橋のコラーゲンシートを、その上面及び下面を押圧した状態で、水性溶媒の存在下、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうち少なくとも1種によって架橋処理する工程。
ただし、前記略規則性をもって配向した再フィブリル化コラーゲンフィブリルによって構成された未架橋のコラーゲンシートは、以下の工程A又は工程Bを含む製造方法によって製造されたものである。
工程A:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液を吐出しシート状に展延する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。
工程B:可溶化コラーゲン水溶液中のコラーゲン分子に配向性を付与しながら、可溶化コラーゲン水溶液をシート状に吐出する方法によって得られたシート状物を、所定のイオン強度とpHを有する水溶液と接触させることによって再フィブリル化させる工程。 - 請求項1記載の伸縮性コラーゲンシートに細胞を播種する播種工程と、この細胞を培養する培養工程とを含む細胞培養方法。
- 前記培養工程が、前記伸縮性コラーゲンシートを伸縮運動させながら細胞培養することを含む、請求項3記載の細胞培養方法。
- 請求項1記載の伸縮性コラーゲンシートを用いた医用材料。
- 請求項1記載の伸縮性コラーゲンシートを用いた細胞培養装置。
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