JP6995437B2 - コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料 - Google Patents

コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料 Download PDF

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本発明は、コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料に関する。
生体原料から抽出したコラーゲンは、その生体適合性の高さから各種材料に利用されている。また、コラーゲンの機能改善・強化を目的として、他の高分子との複合材料も種々開発されている。
コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合材料については、例えば、特許文献1には、コラーゲンとコンドロイチン硫酸(特許文献1では「コンドロイチンサルフェート(Chondroitin sulfate)」と呼称)とを混合した後、γ(ガンマ)線照射してコラーゲンゲルを得る技術が開示されている。
特許第6104818号
特許文献1の実施例における「第4実施形態」(段落[0098])では、3%コラーゲン水溶液と3%コンドロイチン硫酸水溶液とを混合後、γ線(5、25kGy)架橋してコラーゲンゲルを得ている。表15(段落[0100])によれば、5kGy及び25kGyのγ線架橋で得られたいずれのコラーゲンゲルも「不透明」である。
一般に、コラーゲン水溶液は透明であるが、コラーゲン水溶液のイオン強度及びpHを所定の範囲に設定することによって、コラーゲン分子が会合し線維化(再フィブリル化)が起きる。線維化によって形成したフィブリル(一般に「線維化コラーゲン」と称される)は白色であるため、線維化のプロセスは、肉眼による液の白濁化の進行によって確認することができる。特許文献1の実施例における3%コラーゲン水溶液であれば、線維化コラーゲンが形成されると、コラーゲン水溶液全体がゲル化してゲルが得られる。
一方、コラーゲン水溶液をコンドロイチン硫酸水溶液と混合すると、コラーゲンが線維化しなくても白濁することが知られている。特許文献1の「第4実施形態」では、コラーゲン水溶液とコンドロイチン硫酸水溶液との混合によって「不透明」な「混合液」を得ているが、これは液であってゲルではない。つまり、コラーゲンを線維化させる工程がないため、単にコンドロイチン硫酸水溶液との混合によってコラーゲンが線維化することなく「不透明」な「混合液」が得られたものと考えられる。次に、この混合液をγ線照射で架橋することによって「不透明」な「ゲル」を得ているが、これに関しては、線維化していないコラーゲン(非線維化コラーゲン)における架橋について説明がなされた特許第5991624号公報の段落[0058]を根拠として考察すると、コラーゲン分子(トポコラーゲン)の間で架橋が起こることによって水溶液状態からゲル状態に移行したものと考えられる。
線維化コラーゲンは、生体内に存在するコラーゲンの形態により近いものであるため、生体適合性の観点から好ましいものである。本発明は、コラーゲンの形態が線維化コラーゲンであり、特に細胞培養基材として供したときに収縮し難い物性を有するゲル材料を開発することを課題とする。
本発明者らは、上記課題について鋭意検討した結果、意外なことに、コラーゲン水溶液とコンドロイチン硫酸水溶液との混合を特定の方法、即ち、コラーゲン水溶液とコンドロイチン硫酸水溶液との混合によって得られる混合液のイオン強度及びpHがコラーゲンの線維化に適した所定の範囲内となるようなイオン強度及びpH条件をコンドロイチン硫酸水溶液に具備させる方法、で行ったときに、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体が得られることを見出した。この複合体はゲルであり、さらにこのゲルに対し水性溶媒の存在下でのγ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理を施すことによって、細胞培養基材として供したときに収縮し難い物性を有するコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料が得られることを見出し、かかる知見に基づき本発明を完成させたものである。
本発明は以下のとおりである。
[1]以下の構成成分及びその形態を備えた、コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
・構成成分:コラーゲンとコンドロイチン硫酸(ただし、上記構成成分の比率は、質量比として、コラーゲン:コンドロイチン硫酸=5:1~1:3の範囲である)
・構成成分の形態:架橋処理された、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体(ただし、上記架橋処理は、水性溶媒の存在下でのγ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理であり、上記複合体は、均質な外観を呈するものである)
[2]前記コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料が、その表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状を有するものである、上記[1]記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
[3]前記コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を細胞培養基材として用いて、マウス線維芽細胞株L929を21日間培養したときに、前記細胞培養基材の平面視面積について、培養前に対する21日間培養後の収縮率が30%以下である、上記[1]又は[2]記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
[4]以下の工程を含む、コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料の製造方法。
(1)コラーゲン水溶液又は非線維化コラーゲンからなる固形物と、所定のイオン強度及びpHを有したコンドロイチン硫酸水溶液とを、コラーゲン:コンドロイチン硫酸=5:1~1:3の質量比で混合し、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を形成させ、ゲルを得る第1工程。
(2)第1工程で得られたゲルに対して、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理を施す第2工程。
[5]上記[1]~[3]のいずれか1項記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を含む細胞培養基材。
[6]上記[1]~[3]のいずれか1項記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を用いた医用材料。
3重らせん構造を有するコラーゲン分子の形状で溶解状態となっているコラーゲン水溶液の模式図である。 コラーゲン分子が会合し再フィブリル化することによって得られた線維化コラーゲンの模式図である。 実施例2で得られたゲル材料の走査型電子顕微鏡(SEM)像(倍率:5,000倍)である。 比較例1で得られたゲル材料のSEM像(倍率:5,000倍)である。 実施例2及び比較例1で得られたゲル材料の細胞培養0日目、7日目、14日目、21日目の外観写真である。 実施例2で得られたゲル材料の細胞培養21日目におけるSEM像である。倍率は、(a)が50倍、(b)が200倍、(c)が1,000倍である。
以下、好ましい実施形態に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。
本発明のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料(以下「本ゲル材料」と称す)は、構成成分として、コラーゲンとコンドロイチン硫酸とを含有し、上記構成成分の比率がコラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=5:1~1:3の範囲であり、形態として、架橋処理された、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を備えたものであり、上記架橋処理が水性溶媒の存在下でのγ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理であり、上記複合体が均質な外観を呈するものであることを特徴とするものである。
なお、本明細書における質量比の範囲の表記法は、例えば上記質量比5:1~1:3で説明すると、5:1~1:3の範囲には、まず整数の質量比4:1、3:1、2:1、1:1及び1:2が含まれ、さらに各整数間のいかなる数値の質量比(例えば、5:1と4:1の間に関しては、4.752:1、4.5:1、4.21:1等)も含まれるものである。
(コラーゲン)
コラーゲンの種類については、その由来する原料を含めて特に制限はない。例えば、哺乳類、魚介類、鳥類、爬虫類等の生物原料由来のコラーゲンが使用され得るが、ヒトと共通のウイルスを有しない魚介類由来のコラーゲンが好適に用いられる。特に、魚類由来のコラーゲンが好適であり、採取部位としては鱗、皮等が挙げられる。鱗は、魚臭の原因となる脂質が少ないことが利点である。また、生体内での存在量が多いI型コラーゲンが好ましく、抗原決定基であるテロペプタイドが除去されたアテロコラーゲンがより好ましい。好適な一態様は、魚類由来のI型アテロコラーゲンであり、さらに好ましくは魚類の鱗由来のI型アテロコラーゲンである。特に、魚類由来のコラーゲンは、哺乳類由来のコラーゲンと比べて、線維化(再フィブリル化)の速度が速いという特性を一般に有するため、本ゲル材料の製造において好都合である。また、製造時の操作の利便性の観点から、魚種の好例は、変性温度が高いオレオクロミス属である。オレオクロミス属の中でも中国から東南アジアにかけて食用として主力に養殖されており、入手が容易であるティラピアが特に好ましい。
(コンドロイチン硫酸)
コンドロイチン硫酸の種類については、コンドロイチン硫酸A~Eのいずれであっても構わないが、好適にはコンドロイチン硫酸A又はCであり、より好適にはコンドロイチン硫酸Cである。なお、コンドロイチン硫酸は、コンドロイチン硫酸の塩に由来したものであってもよく、そのような塩の好例はナトリウム塩である。
(コラーゲンとコンドロイチン硫酸の比率)
コラーゲンとコンドロイチン硫酸の比率は、質量比として、コラーゲン:コンドロイチン硫酸=5:1~1:3の範囲である。本ゲル材料は収縮し難いという特性を有するが、とりわけ本ゲル材料を細胞培養基材として用いたときの収縮抑制の観点から、上記比率は、好ましくは3:1~1:3の範囲であり、より好ましくは2:1~1:2の範囲であり、さらに好ましくは1.85:1~1:1.85の範囲であり、さらにより好ましくは1.75:1~1:1.75の範囲である。また、1.75:1~1:1.5、1.75:1~1:1.25、1.75:1~1:1、1.5:1~1:1.75、1.5:1~1:1.5、1.5:1~1:1.25、1.5:1~1:1、1.25:1~1:1.75、1.25:1~1:1.5、1.25:1~1:1.25、1.25:1~1:1、1:1~1:1.75、1:1~1:1.5、1:1~1:1.25の範囲等も好ましい範囲である。
(架橋複合体)
本ゲル材料は、コラーゲンとコンドロイチン硫酸の存在形態として、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体であって架橋処理されたもの(以下「架橋複合体」と称する)を備えるものである。ここでの架橋処理は、水性溶媒の存在下でのγ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理である。以下、これらの架橋を総称するときは「照射架橋」という。なお、本ゲル材料は、架橋複合体以外の形態の存在も許容するものであり、具体例として、線維化コラーゲンが単独で照射架橋されたもの等が挙げられる。
(架橋複合体:架橋)
ここで、架橋複合体を特定するにあたって、架橋処理の規定を設けた理由を説明する。コラーゲンの架橋法として、物理的架橋法と化学的架橋法が知られている。物理的架橋法の代表例として、照射架橋と熱脱水架橋があり、化学的架橋法の代表例として、水溶性化学架橋剤又は気化能を有する化学架橋剤による架橋がある。以下、架橋法を問わず、架橋されたコラーゲンを「架橋体」と称する。
まず、物理的架橋法について、照射架橋によって得られた架橋体と、熱脱水架橋によって得られた架橋体とは、架橋体同士を見比べても外観的な違いを見出すことは極めて困難であり、また、分析によってもいずれの架橋法によって架橋されたものかを区別することは極めて困難である。
次に、照射架橋によって得られた架橋体と、化学的架橋法によって得られた架橋体とは、架橋体同士を見比べても外観的な違いを見出すことは極めて困難である。化学的架橋法のうち、化学的架橋剤として、例えば、グルタルアルデヒドやポリエポキシ化合物(エチレングリコールジグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル等)を用いた場合は、化学的架橋剤がコラーゲンと結合して架橋反応が起きるために、化学的架橋剤を検出できれば、両者の判別は可能である。しかし、化学的架橋剤として1-エチル-3-(3-ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩等のコラーゲンと結合しないタイプのものを用いたときには、架橋体を分析しても化学的架橋剤の痕跡を見出すことはほぼ不可能である。
また、架橋されていないコラーゲン(以下「未架橋体」と称する)と架橋体との区別も極めて困難である。例えば、分析によって未架橋体と架橋体の違いを見出すことは、特に照射架橋体においては架橋点の多寡の違いしかないため、極めて困難である。未架橋体は架橋体よりも一般に強度的に弱く、水中保存安定性も低い傾向があるが、それら物理的傾向の違いが架橋処理の有無に起因したものであることを立証することも極めて困難である。
以上、コラーゲンについて述べた架橋に関する区別の困難性は、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体についても当て嵌まるものである。即ち、当該複合体が照射架橋されたものであることを、他の架橋法によって架橋処理されたもの及び未架橋のものと区別することは困難である。よって、架橋複合体が照射架橋によって架橋されたものであることを発明特定事項としたのである。
ところで、水性溶媒の存在下で照射架橋された架橋体の一特性は、例えば、特許第5633880号公報に記載されているように、細胞培養環境や生体内環境において分解し難いというものである。例えば、この架橋体をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(D-PBS)中に37℃で5日間浸漬した場合の溶解率が10質量%以下であるとき、この架橋体が上記特性を有するといえる。尚、溶解率とは、D-PBS中への架橋体からの溶出成分の質量の、浸漬前の架橋体の質量に対する割合(%)である。溶解率は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってD-PBS中の溶出成分の分子量分布を測定する方法、又はD-PBS中の溶出成分の質量を測定する方法によって評価できる。本ゲル材料が架橋複合体のみで構成されている場合の溶解率も10質量%以下である。よって、架橋複合体においては、線維化コラーゲン間だけでなく、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との間においても架橋がかかっている可能性が考えられる。ちなみに、本発明者が確認した限りにおいて、コンドロイチン硫酸単独に対して水性溶媒の存在下でγ線による照射架橋を施しても、照射架橋前後で物性の変化が認められなかったため、コンドロイチン硫酸単独ではγ線による照射架橋がかからないものと考えられる。
(架橋複合体:水性溶媒)
架橋処理に適用する水性溶媒としては、水を含んでおり、架橋複合体が得られる限りにおいて限定されるものではなく、例えば、水、生理食塩水、緩衝液、緩衝生理食塩水、酸性塩水溶液、中性塩水溶液、アルカリ性塩水溶液等が挙げられ、これらに有機溶媒を添加した混合溶媒でもよい。好適な水性溶媒として、緩衝液及び緩衝生理食塩水を例示でき、具体例は、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液、酢酸緩衝液、炭酸緩衝液、クエン酸緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)、D-PBS、トリス緩衝生理食塩水、HEPES緩衝生理食塩水等である。
(架橋複合体:照射架橋)
照射架橋は、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの1種だけを実施してもよいし、2種以上を組み合わせて実施してもよい。また、1種の照射架橋を2回以上実施してもよい。照射架橋を例えば2回実施するときは、1回目で低架橋度、2回目で高架橋度が得られるように設定することが好ましい。また、2種以上を組み合わせて実施するときは、基本的には架橋度が低い照射法の後に架橋度が高い照射法を実施することが好ましく、例えば、UV照射後にγ線照射する組合せである。好適には、透過力が高く、均一に架橋させることができるγ線照射によって照射架橋を1回で行う方法である。特に、γ線照射による架橋処理では、照射線量を適宜設定することによって、架橋複合体の架橋度を高めることができ、よって高強度な本ゲル材料を得ることもできる。γ線照射では、線量率が固定の線源を用い、照射時間等の条件を適宜設定することにより、所定の照射線量を簡便に得ることができる。例えば、コバルト60線源を用いる場合、照射線量5~75kGyで架橋処理を行うことができる。照射線量として、好ましくは5~50kGyであり、より好ましくは10~50kGyであり、さらに好ましくは15~30kGyである。さらに、照射条件を適宜設定すれば架橋処理と同時に滅菌処理を行うことができる。そのため、架橋処理中及び架橋処理後の密封状態を保つようにすることで、滅菌済み製品として、そのまま市場に流通させることも可能である。
(架橋複合体:構成要素)
架橋複合体の構成要素は、フィブリルである。架橋複合体がフィブリルで構成されていることは、例えば、倍率5,000倍の走査電子顕微鏡による観察によって確認することができる。なお、線維化コラーゲンが有するD周期の確認は、線維化コラーゲン単独が照射架橋されたものであっても容易とは言えないため、架橋複合体においてはより困難と言える。
(架橋複合体:複合化)
架橋複合体において、コラーゲンとコンドロイチン硫酸がどのように複合化しているかについては定かではない。走査電子顕微鏡(倍率5,000倍)で観察すると、線維化コラーゲン単独系と架橋複合体とでは、その構成するフィブリルの形状が明確に相違することが見て取れる。線維化コラーゲン単独系では、個々のフィブリルの形状に違いがほとんどなく均質性が高いが、架橋複合体ではフィブリルが集合化した部分やフィブリルが太くなった部分等の存在が確認できたりする。また、複合化していることの根拠となる一助は、架橋複合体を肉眼観察したときに、表面が均質なこと、即ち、表面にまだらな部分や凝集塊が見られることなく一様な外観を呈することである。
ここで、線維化コラーゲン単独系と架橋複合体におけるフィブリルの形状の相違について、コラーゲン単独系において線維化コラーゲンが形成されるメカニズムを通して考察してみる。図1と2は、コラーゲン単独系のものであり、図1は3重らせん構造を有するコラーゲン分子の形状で溶解状態となっているコラーゲン水溶液である。このコラーゲン水溶液のイオン強度及びpHを所定の範囲に設定すると、コラーゲン分子が会合し再フィブリル化することによって、図2に示した線維化コラーゲンが得られる。このことから、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体が形成されるメカニズムとして、コラーゲン分子が会合し再フィブリル化するときに水溶液中に共存するコンドロイチン硫酸がそれに巻き込まれることによって、線維化コラーゲンを構成するコラーゲン分子の隙間にコンドロイチン硫酸が入り込んで存在することにより複合化している可能性が推測される。そして、コンドロイチン硫酸の巻き込まれ具合によって、異なる形状のフィブリルが形成されるものと考えられる。
(本ゲル材料の形状)
本ゲル材料の形状は、特に制限されることはなく、例えば、膜状、立方体状、直方体状、円柱状等の各種形状が挙げられる。また、本ゲル材料は、その表面の少なくとも一部に凹形状及び/又は凸形状(以下「パターン形状」と称する)を有したものであっても構わない。パターン形状の存在箇所は、本ゲル材料の表面の一部であっても全体であってもよい。パターン形状は、架橋複合体の表面の少なくとも一部に備わっていてもよい。パターン形状の個数は、1個であっても複数個であってもよい。複数個のパターン形状を有する場合、それらが規則的なパターンで配列されたものでもよいし、不規則なパターンで配列されたものでもよい。パターン形状の種類や大きさは、特に制限されることはなく、平面視形状として多角形(正方形、長方形、三角形等)、円、楕円等が例示でき、断面視形状として、半円、長方形、三角形、台形等が例示できる。
(細胞培養基材)
本ゲル材料は、これを細胞培養基材として供したときに収縮し難い物性を有するものである。本ゲル材料の好適な一形態は、本ゲル材料を細胞培養基材として用いて、マウス線維芽細胞株L929を21日間培養したときに、細胞培養基材の平面視面積について、培養前に対する21日間培養後の収縮率が30%以下であるものである。なお、「21日間培養」とは、細胞培養播種日を0日目とし、その翌日を1日目としたときに、21日目まで培養することを意味する。また、後掲の実施例における細胞培養試験では、本ゲル材料として、パターン形状を有したものを供試しているが、パターン形状の有無は上記収縮率の評価試験に実質的には影響を及ぼさない。
マウス線維芽細胞株L929は、細胞培養基材を収縮させる力として発揮される細胞牽引力が強いために、収縮程度の評価に好適である。培養条件は、常法に従って設定すればよい。培養条件の好適な一態様は、培養容器として12wellプレートを用い、本ゲル材料としてこのwell内に設置するのに適した大きさに調整したものを用い、培地としてDMEM+10%FBSを用いるものである。
平面視面積は、細胞培養基材を平面視したときの平面面積である。培養前の平面視面積をS0、21日間培養後の平面視面積をS1としたときに、上記収縮率は、(S0-S1)/S0×100により求めることができる。上記収縮率は、好ましくは25%以下である。特に、魚介類由来のコラーゲンは、細胞培養基材として供したときに収縮し易い物性を有するので、上記収縮率が30%以下であれば、収縮し難い物性を有すると評価することができる。
(製造方法)
本ゲル材料の製造方法は、以下の第1~2工程を含むものである。
(1)コラーゲン水溶液又は非線維化コラーゲンからなる固形物と、所定のイオン強度及びpHを有したコンドロイチン硫酸水溶液とを、コラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=5:1~1:3の範囲で混合し、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を形成させ、ゲルを得る第1工程。
(2)第1工程で得られたゲルに対して、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理を施す第2工程。
なお、製造方法に関する以下の説明では、「コラーゲン水溶液又は非線維化コラーゲンからなる固形物」を「原料A」と称し、「所定のイオン強度及びpHを有したコンドロイチン硫酸水溶液」を「原料B」と称す。
(第1工程:原料A)
原料Aにおけるコラーゲンの種類については、前記「(コラーゲン)」のとおりである。なお、コンドロイチン硫酸の存在下ではコラーゲンの線維化が遅くなることがあるので、この点からも魚類由来のコラーゲンの方が哺乳類由来のコラーゲンよりも有利と言える。
コラーゲン水溶液は、図1に示したように、コラーゲンがコラーゲン分子の形態で溶解状態となったものである。コラーゲン水溶液には、特にコラーゲン濃度の違いによって、流動性のあるものから水飴状のものまで含まれる。コラーゲン水溶液中のコラーゲン濃度については、特に制限はなく、コンドロイチン硫酸水溶液との混合を勘案して適宜設定すればよい。コラーゲン水溶液中のコラーゲン濃度は、例えば、0.01~30質量%の範囲である。下限は、0.05質量%であることが好ましく、より好ましくは0.1質量%であり、さらに好ましくは0.3質量%である。上限は、20質量%であることが好ましく、より好ましくは10質量%であり、さらに好ましくは5質量%である。とりわけハンドリング性の観点からは、0.5~3質量%の範囲が好ましい。
なお、数値範囲に関する「数値1~数値2」という本明細書における表記は、数値1を下限値とし数値2を上限値とする、両端の数値1及び数値2を含む数値範囲を意味し、「数値1以上数値2以下」と同義である。
非線維化コラーゲンからなる固形物は、コラーゲン分子の状態で固形状となった物である。好例は、コラーゲン水溶液を凍結乾燥したもの(凍結乾燥体)及びその粉砕物である。別の好例は、生物原料から抽出等により得た粗コラーゲン水溶液を精製のために塩析した物である。
(第1工程:原料B)
原料Bに用いるコンドロイチン硫酸の種類については、前記「(コンドロイチン硫酸)」のとおりである。ここで、原料Bにおける「所定のイオン強度及びpH」とは、原料Aと原料Bとを混合して得られる混合液(以下「混合液C」という)において、コラーゲンの線維化を引き起こし、これによって線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を形成させ、ゲルが得られるように設定したイオン強度及びpHのことである。一般に、コンドロイチン硫酸水溶液を含有せずに所定のイオン強度及びpHを有した水溶液を用いたときにおいて、コラーゲンの線維化は液の白濁化によって確認することができるが、原料Bを用いたときでも同様に混合液Cの白濁によってコラーゲンの線維化を確認することができる。このときに、前記メカニズムで推測したように、コラーゲン分子が会合し再フィブリル化するときにコンドロイチン硫酸がそれに巻き込まれることによって、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体が形成されると考えられる。なお、コラーゲンの線維化を促進させるために所定の温度に設定することが必要なときは、適宜温度設定することが好ましい。温度設定は、コラーゲンの変性温度未満に設定することが好ましく、必要に応じて加温してもよい。また、所定の温度で所定の時間保持することも好ましい態様である。
原料Bは、コンドロイチン硫酸を溶解させた水溶液に塩類を添加して調製したものであってもよいが、簡便には、常法において、コラーゲン水溶液中のコラーゲンの線維化を引き起こしゲル形成させるために用いる水溶液をベース水溶液とし、このベース水溶液にコンドロイチン硫酸を溶解させる。一例として、ベース水溶液としてPBS組成の水溶液を用いる場合において、コラーゲン水溶液と原料Bとを質量比で9:1の割合で混合するときは、ベース水溶液として10倍濃い濃度に作製したPBS(以下「10倍濃度PBS」と称する)を用いる。
原料Bが有するイオン強度及びpHは、混合液Cにおけるイオン強度が0.1~1.2の範囲内となり、且つ、pHが6~9の範囲内となるように設計したものであることが特に好ましい。混合液Cにおけるイオン強度は、0.1~1の範囲内となることがより好ましく、極めて速い線維化速度が不要であれば、0.1~0.5の範囲内となることが特に好ましい。また、混合液CにおけるpHは、6~8の範囲内がより好ましい。ここで、イオン強度は、特開2016-77410号公報の段落[0022]に記載されているように、混合液Cに含まれるすべての無機塩由来のイオン種について、それぞれのイオンのモル濃度と電荷の二乗との積を加算し、さらにそれに1/2を乗じて算出されるものである。ちなみに、通常濃度(1倍濃度)におけるPBS(以下「1倍濃度PBS」と称する)のイオン強度は、約0.17である。
原料B中のコンドロイチン硫酸の濃度は、次で説明するコラーゲンとコンドロイチン硫酸との混合比の範囲内となるように、原料Aの使用量に応じて適宜設定することが好ましい。原料B中のコンドロイチン硫酸の濃度は、例えば、0.02~55質量%の範囲が好ましい。下限は、0.1質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは1質量%である。上限は、50質量%であることがより好ましく、さらに好ましくは30質量%である。とりわけ溶液混合性の観点からは、1~30質量%の範囲が好ましい。
(コラーゲンとコンドロイチン硫酸との混合比)
コラーゲンとコンドロイチン硫酸との混合比は、質量比として、5:1~1:3の範囲である。好ましくは3:1~1:3の範囲であり、より好ましくは2:1~1:2の範囲であり、さらに好ましくは1.85:1~1:1.85の範囲であり、さらにより好ましくは1.75:1~1:1.75の範囲である。また、1.75:1~1:1.5、1.75:1~1:1.25、1.75:1~1:1、1.5:1~1:1.75、1.5:1~1:1.5、1.5:1~1:1.25、1.5:1~1:1、1.25:1~1:1.75、1.25:1~1:1.5、1.25:1~1:1.25、1.25:1~1:1、1:1~1:1.75、1:1~1:1.5、1:1~1:1.25の範囲等も好ましい範囲である。
(第2工程)
水性溶媒の種類は、前記「(架橋複合体:水性溶媒)」で説明したとおりである。少なくとも架橋処理が完了するまでは、コンドロイチン硫酸と複合化した線維化コラーゲンが脱線維化せずに、そのまま保たれるものを使用することが好ましいが、比較的脱線維化し易い水性溶媒を用いたとしても、水性溶媒との接触後速やかに架橋処理すればよい。
水性溶媒の量は、特に限定されるものではないが、例えば、第1工程で得られたゲルの少なくとも表面全体が水性溶媒で覆われる状態が好ましい。特に好ましくは、ゲル全体が水性溶媒に完全に浸漬した状態である。ただし、ゲルが水性溶媒に完全に浸漬していない状態、例えば、ゲルの一部が水性溶媒に浸漬していない場合であっても、当該部分における浸潤性が確保できていれば、水性溶媒に浸漬した状態と言える。本願明細書では、以上例示したような状態を「水性溶媒の存在下」と称するものである。
照射架橋処理の方法については、本ゲル材料が得られるように、前記「(架橋複合体:照射架橋)」の説明に従って行えばよい。
(パターン形状の付与)
本ゲル材料の製造方法には、表面にパターン形状を有するものを製造するためのプロセスも包含される。当該プロセスとして、例えば、(i)第2工程後に得られたゲル材料に対して切削等によりパターン形状を付与する方法、(ii)第1工程においてパターン形状が付けられたゲルを第2工程における架橋処理によってパターン形状を固定化させる方法、等が挙げられる。
上記(ii)は、特開2017-149814号公報に記載された「第1製法」及び「第2製法」を参考としてもよい。具体的方法として、例えば、(a)混合液Cを調製した後、パターン形状を付与するための部材(以下「転写部材」と称する)を混合液C上に載置し、次に線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を形成させ、パターン形状が付けられたゲルを得る方法、(b)第1工程において得られたゲルに対し、転写部材を押圧する方法、等が挙げられる。上記(a)の方法ではゲルに転写部材を付けたままの状態で、また、上記(b)の方法ではゲルが転写部材で押圧されたままの状態で、第2工程に供してもよい。
転写部材は、例えば、網、織布、不織布等の凹凸を有した平面形状部材、パンチングメタルのような多孔板、印判のように特定の部分に転写部を有したもの等を適宜選択すればよい。転写部材の材質は、本ゲル材料に悪影響を及ぼさないものであれば特に制限なく用いることができる。特に、転写部材も第2工程に供されるときは、照射架橋によって変質しないものを用いることが好ましく、具体例として熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂(アクリル樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、スチロール樹脂、シリコーン樹脂、ウレタン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂等)、無機材料(ステンレス、アルミニウム等の金属、ガラス等)等が挙げられる。また、転写部材と接触した部分も架橋されるように、通水性を有するものを用いることも好ましい態様の1つである。
(その他構成要素)
本ゲル材料には、使用目的に応じてその他構成要素を有してもよい。その他構成要素が含有成分であるときの例として、フィブリン、トロンビン、ゼラチン、ヒアルロン酸、コンドロイチン硫酸、アルギン酸等が挙げられる。
その他構成要素は、本ゲル材料への付加物であっても構わない。付加物の形状としては、例えば、シート状、フィルム状、ヒモ状、棒状、板状等の各種形状が挙げられる。付加物の付着形態についても、本ゲル材料の外周面全面に対する付着、一部に対する付着等の形態が例示できる。また、本ゲル材料に付加物が嵌装(嵌装には、嵌合、遊嵌等の概念も含まれるものとする)した形態であってもよい。付加物の構成材料として、例えば、乳酸系ポリマー(グリコール酸、カプロラクトン等との共重合体も含む)等の生分解性ポリマー、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリウレタン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、寒天、アルギン、ゼラチン、キチン、キトサン、コラーゲン等が挙げられる。
本ゲル材料がその他構成要素を有するための方法は、特に限定されることはなく、その他構成要素に応じて適宜設計すればよい。例えば、その他構成要素が含有成分であるときは、原料A及び原料Bのいずれか一方又は双方に含有させる態様が挙げられるが、第1工程においてゲルが得られるようにする。また、その他構成要素が付加物であるときは、付加物の付着又は嵌装のタイミングは、照射架橋処理の前と後のいずれであってもよい。
(用途)
本ゲル材料の好適な用途として、細胞培養用基材が挙げられる。その他好適な用途として、医用材料、例えば、移植用材料、再生医療用の足場材料等が挙げられる。
以下に、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに制限されるものではない。また、コラーゲン水溶液を「水溶液A」、所定のイオン強度及びpHを有したコンドロイチン硫酸水溶液を「水溶液B」と称する。
(水溶液A)
ティラピアの鱗から製造された多木化学(株)製「セルキャンパス FD-08G」(凍結乾燥品)の所定量をpH3のHCl溶液に溶解して、コラーゲン濃度の異なる以下の各種水溶液Aを調製した。
・水溶液A1:コラーゲン濃度1.6質量%
・水溶液A2:コラーゲン濃度2.2質量%
・水溶液A3:コラーゲン濃度3.3質量%
(水溶液B)
10倍濃度PBSをベース水溶液とし、これに所定量のコンドロイチン硫酸(生化学工業(株)製「コンドロイチン硫酸ナトリウム ND-K」)を溶解して、コンドロイチン硫酸濃度の異なる以下の各種水溶液Bを調製した。
・水溶液B1:コンドロイチン硫酸濃度11質量%
・水溶液B2:コンドロイチン硫酸濃度22質量%
〔実施例1〕
水溶液Aとして水溶液A1を、水溶液Bとして水溶液B2を用いた。水溶液Aと水溶液Bとを質量比で9:1の割合で混合し(コラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=1:1.53)、得られた混合液をシリコンモールド(φ20mm、高さ2.5mm)に0.78mL注入した後25℃で12時間以上保持し、ゲルを得た。次に、このゲルを1倍濃度PBS中に浸漬し、25kGyのγ線照射を行い、架橋と同時に滅菌を行い、平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。
〔実施例2〕
水溶液Aとして水溶液A2を、水溶液Bとして水溶液B2を用いた。水溶液Aと水溶液Bとを質量比で9:1の割合で混合し(コラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=1:1.11)、得られた混合液をシリコンモールド(φ20mm、高さ2.5mm)に0.78mL注入した。注入後、メッシュパターンを付与させるために、ナイロンメッシュ(スペクトラムラボラトリーズ(株)製 目開き300μm、厚み200μm)を混合液上に配した。これを25℃で12時間以上保持し、ゲルを得た。次に、このゲルをナイロンメッシュを付けたまま1倍濃度PBS中に浸漬し、25kGyのγ線照射を行った。その後、ナイロンメッシュを取り外して、表面に凹凸パターンを有し平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。なお、肉眼でも表面の凹凸パターンを確認できた。
〔実施例3〕
水溶液Aとして水溶液A3を用いた以外は、実施例1と同様にして(混合液のコラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=1.35:1)、平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。
〔実施例4〕
水溶液Aとして水溶液A2を用い、水溶液Bとして水溶液B1を用いた以外は、実施例1と同様にして(混合液のコラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=1.80:1)、平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。
〔実施例5〕
水溶液Aとして水溶液A3を用い、水溶液Bとして水溶液B1を用いた以外は、実施例1と同様にして(混合液のコラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=2.70:1)、平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。
〔比較例1〕
水溶液Aとして水溶液A2を用い、水溶液Bの代わりに10倍濃度PBSを用いた以外は、実施例2と同様にして、表面に凹凸パターンを有し平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。
以下の比較例2と3では、コンドロイチン硫酸として、生化学工業(株)製「コンドロイチン硫酸ナトリウム ND-K」を用いた。
〔比較例2〕
1倍濃度PBSにコンドロイチン硫酸濃度が22質量%となるように溶解させたコンドロイチン硫酸水溶液に対し、25kGyのγ線照射を行ったが、ゲル化せずに水溶液状のままであった。このことから、コンドロイチン硫酸にはγ線による照射架橋がかからないと判断した。
〔比較例3〕
水溶液Aとして、水溶液A2を用いた。水溶液A2にコンドロイチン硫酸をコラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=1:1.11となるように添加し混合した。この混合液と10倍濃度PBSとを質量比で9:1の割合で混合し、得られた混合液をシリコンモールド(φ20mm、高さ2.5mm)に0.78mL注入した。これを25℃で12時間以上保持し、ゲルを得た。次に、このゲルを1倍濃度PBS中に浸漬し、25kGyのγ線照射を行うことにより、平面視円形の平膜状のゲル材料を得た。当該ゲル材料は、白色の凝集塊が点在するなど全体的にまだらな外観を呈するものであり、均質なものではなかった。
〔走査型電子顕微鏡による観察〕
実施例2及び比較例1の各ゲル材料を走査型電子顕微鏡(日本電子(株)製「JSM-6010LA」)で観察した。図3は実施例2、図4は比較例1のゲル材料のSEM像であり、いずれも倍率5,000倍である。図3と図4から、フィブリルの形状に明確な相違が認められる。図4では、フィブリルの形状の均質性が高いが、図3では、フィブリルが集合化した部分や太くなった部分が確認できるものであった。ちなみに、実施例1~5で得られたゲル材料は、肉眼観察において、いずれもその表面は、実施例2における表面の凹凸パターンの部分も含めて、まだらな部分や凝集塊が存在することなく一様な外観を呈するものであり、よって均質なものであった。
〔細胞培養試験〕
細胞培養基材として、実施例2と比較例1で得られた各ゲル材料を供試した。また、培地として、DMEM+10%FBSを用いた。12wellプレートのwell内に各ゲル材料を設置し、マウス線維芽細胞株L929を1.0×106cells/mL含有した細胞懸濁液100μLと培地100μLを滴下した。2時間静置後、培地を1000μL添加し、通常の細胞培養方法に従って21日間細胞培養を行った。
実施例2は、肉眼では多少の収縮が認められたが、比較例1はかなり収縮していた。なお、図5は、実施例2と比較例1の細胞培養0日目、7日目、14日目、21日目の外観写真である。実施例2と比較例1の各ゲル材料の平面視面積について、培養前に対する21日間培養後の収縮率を求めたところ、実施例2は24.5%、比較例1は78.8%であった。実施例2は、細胞牽引力による収縮を抑制できていたことが収縮率の値からも明らかとなった。
実施例2について、細胞培養21日目におけるSEM像を図6に示した。倍率は、(a)が50倍、(b)が200倍、(c)が1,000倍である。図6(a)と(b)では、約100μmオーダーの凹凸が確認でき、その形状も明瞭であった。図6(c)より、L929細胞が一面に存在し、その形状は丸い形状であることが確認できた。このような丸い形状は、生体内に存在する線維芽細胞の形状に近いものである。

Claims (6)

  1. 以下の構成成分及びその形態を備えた、コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
    ・構成成分:コラーゲンとコンドロイチン硫酸
    ただし、上記構成成分の比率は、質量比として、コラーゲン:コンドロイチン硫酸=5:1~1:3の範囲である。
    ・構成成分の形態:架橋処理された、線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体
    ただし、上記架橋処理は、水性溶媒の存在下でのγ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理であり、上記複合体は、均質な外観を呈するものである。
  2. 前記コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料が、その表面の少なくとも一部に、凹形状及び/又は凸形状を有するものである、請求項1記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
  3. 前記コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を細胞培養基材として用いて、マウス線維芽細胞株L929を21日間培養したときに、
    前記細胞培養基材の平面視面積について、培養前に対する21日間培養後の収縮率が30%以下である、
    請求項1又は2記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料。
  4. 以下の工程を含む、コラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料の製造方法。
    (1)コラーゲン水溶液又は非線維化コラーゲンからなる固形物と、所定のイオン強度及びpHを有したコンドロイチン硫酸水溶液とを、コラーゲン:コンドロイチン硫酸(質量比)=5:1~1:3の範囲で混合し、得られる混合液においてコラーゲンの線維化を引き起こし、これによって線維化コラーゲンとコンドロイチン硫酸との複合体を形成させ、ゲルを得る第1工程。ただし、上記所定のイオン強度及びpHとは、上記混合液におけるイオン強度が0.1~1.2の範囲内となり、且つ、pHが6~9の範囲内となるように設計したものである。
    (2)第1工程で得られたゲルに対して、水性溶媒の存在下で、γ線照射、電子線照射、UV照射及びプラズマ照射のうちの少なくとも1種の架橋処理を施す第2工程。
  5. 請求項1~3のいずれか1項記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を含む細胞培養基材。
  6. 請求項1~3のいずれか1項記載のコラーゲン-コンドロイチン硫酸のゲル材料を用いた医用材料。
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