JP7017869B2 - セパレータの捲回体 - Google Patents

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Description

本発明は、セパレータの捲回体に関する。より詳細には、本発明は、基材の少なくとも片面に塗工された熱可塑性ポリマー塗工層を有し、蓄電デバイス用セパレータとして用いられる、セパレータの捲回体に関する。
近年、非水電解液電池等の蓄電デバイスの開発が活発に行われている。通常、蓄電デバイスは、正極と負極との間に、基材を含むセパレータを有する。セパレータは、正負極間の直接的な接触を防ぎ、かつ基材中に保持した電解液を通じてイオンを透過させる機能を有する。
基材としては、典型的には多孔性基材、例えば、ポリオレフィン多孔性基材が挙げられる。ポリオレフィン多孔性基材は、電子絶縁体であるが、多孔構造によりイオン透過性を示すことから、非水電解液電池用セパレータとして広く利用されている。ポリオレフィン多孔性基材は、非水電解液電池が異常発熱を起こした際に、熱溶融により多孔を閉塞させて、電解液中のイオン伝導を遮断し、電気化学反応の進行を停止させるシャットダウン機能も有する。
このようなポリオレフィン多孔性基材の表面に熱可塑性ポリマーを含む塗工層を形成して、セパレータの透過性を維持しつつ、蓄電デバイスに種々の性能、例えば、電極との接着性を付与する試みが行われている。熱可塑性ポリマーを含む塗工層を有するセパレータは、多くの場合、捲回体(「リール」とも呼ばれる。)の状態で製造、販売、流通、及び保管される。
例えば、特許文献1では、基材と、基材の少なくとも一方の面に熱可塑性ポリマーを含む部分と熱可塑性ポリマーを含まない部分とが海島状に存在する熱可塑性ポリマー層と、を有するセパレータの捲回体を記載している。特許文献1は、基材上の熱可塑性ポリマーの島状部分を特定の配置にすることにより、捲回体のしわの発生を抑制することができる旨記載している。
特開2016-197505号公報
しかしながら、特許文献1に記載されているような従来のセパレータの捲回体は、捲回体を製造する際に、あるいは捲回体を製造してから蓄電デバイスの製造に使用されるまでの間に、捲回体に圧力がかかることにより、熱可塑性ポリマー同士及び/又は熱可塑性ポリマーと基材とが接着することがあった。このような現象は、一般に「ブロッキング」と呼ばれる。ブロッキングは、蓄電デバイスの製造において、捲回体からセパレータを取り出すことを困難にし、歩留まりを低下させるため好ましくない。一般的に、捲回体の外層よりも内層の方が大きな圧力がかかるため、ブロッキングは捲回体の外層よりも内層において顕著である。他方、セパレータの捲回体は、輸送時の振動等の外力に対して捲回体の形状を保つこともまた要求される。また、捲回体からセパレータを繰り出して正負極と積層して捲回体を作製する際に、セパレータにシワが入ること等による蓄電デバイスの不良率を抑えるという継続的要求がある。
したがって、本発明の目的の一つは、セパレータ同士のブロッキングを低減することができ、かつ捲回体の形状が崩れにくいため取扱性に優れ、また、蓄電デバイス製造時の不良率を抑えることができるセパレータの捲回体を提供することである。
本願発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、捲回されたセパレータの最内層の特定領域における突刺強度又は圧力を特定範囲に制御することにより上記課題を解決できることを見いだし、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は以下のとおりである。
[1]
セパレータの捲回体であって、上記セパレータは、基材の少なくとも片面に塗工された熱可塑性ポリマー塗工層を有し、捲回された上記セパレータの最内層から1cm以下の領域における上記捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下である、捲回体。
[2]
捲回された上記セパレータの最も内側のセパレータと上記最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとの間における上記捲回体の圧力が0.3MPa以上2.5MPa以下である、項目1に記載の捲回体。
[3]
上記熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付が0.05g/m以上2g/m以下である、項目1又は2に記載の捲回体。
[4]
上記熱可塑性ポリマーが共役ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー、及びフッ素系ポリマーの少なくとも一つを含む項目1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータの捲回体。
[5]
上記熱可塑性ポリマー塗工層の面積占有率が10%以上80%以下である、項目1~4のいずれか1項に記載の捲回体。
[6]
上記基材上に、上記熱可塑性ポリマー塗工層が存在する部分と、上記熱可塑性ポリマー塗工層が存在しない部分とが海島状に存在し、
上記熱可塑性ポリマー塗工層は、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃未満の領域に存在し、
上記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃以上の領域に存在する、
項目1~5のいずれか1項に記載の捲回体。
[7]
上記熱可塑性ポリマー塗工層の塗工パターンがドットパターンである、項目1~6のいずれか1項に記載の捲回体。
本発明によれば、セパレータ同士のブロッキングを低減することができ、かつ捲回体の形状が崩れにくく、取扱性に優れたセパレータの捲回体を提供することができる。また、本発明によれば、捲回体からセパレータを繰り出して正負極と積層して捲回体を作製する際に、セパレータにシワが入りづらいため、蓄電デバイスの不良率を抑えることができる。
本発明の例示的な実施形態及び利点を記載したが、本発明の他の実施形態及び他の利点は、以下の本願明細書から明らかとなる。
図1は、本実施形態における捲回体の内層領域を説明するための、捲回体の側面の模式図である。
以下、本発明の実施形態(以下、「本実施形態」という。)を例示する目的で詳細に説明するが、本発明は本実施形態に限定されるものではない。本願明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は任意に組み合わせることができる。
《セパレータの捲回体》
〈最内層の突刺強度又は圧力〉
本実施形態のセパレータの捲回体は、基材の少なくとも片面に塗工された熱可塑性ポリマー塗工層を有するセパレータの捲回体であって、捲回されたセパレータの最内層から1cm以下の領域(以下、本願明細書において「内層領域」ともいう。)における捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下である。一実施形態において、セパレータを電極と共に捲回した後に捲回体がプレスバックすることを抑制するために、セパレータは、基材の両面に熱可塑性ポリマー塗工層を有してもよい。熱可塑性ポリマー塗工層は、基材の片面又は両面の全体に形成してもよく、セパレータが高いイオン透過性を有するように、片面又は両面の一部のみに形成してもよい。
本願明細書において、「内層領域」とは、図1に模式的に示すように、セパレータ(20)の捲回体(100)において、任意に存在するコア(10)に接する最内層(21)から、最外層(22)に向かって巻厚方向に1cmまでの領域(23)を意味する。捲回体の巻圧が1cmに満たない場合は、全ての領域を意味する。
本実施形態におけるセパレータの捲回体は、内層領域における捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下であることによって、セパレータにかかる圧力を低減し、ブロッキングを抑制することができ、かつ、適度な強さで捲回されているため、輸送時の振動等の外力に曝されても捲回体の形状が崩れにくい。また、捲回体からセパレータを繰り出して正負極と積層して捲回体を作製する際に、セパレータにシワが入りづらいため、蓄電デバイスの不良率を抑えることが可能となる。内層領域における突刺強度の高低は、内層領域における圧力の高低に相関しており、本実施形態の捲回体の構成は、上記内層領域における突刺強度及び内層領域における圧力のいずれか一方、又は両方によって表現することができる。
捲回されたセパレータの内層領域における捲回体の側面の突刺強度の下限値は、好ましくは10N以上、より好ましくは15N以上、更に好ましくは20N以上である。内層領域における捲回体の側面の突刺強度の上限値は、好ましくは100N以下、より好ましくは90N以下、更に好ましくは70N以下である。
捲回されたセパレータの最も内側のセパレータと最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとの間における上記捲回体の圧力の下限値は、好ましくは0.3MPa以上、より好ましくは0.4MPa以上、更に好ましくは0.5MPa以上である。捲回されたセパレータの最も内側のセパレータと最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとの間における上記捲回体の圧力の上限値は、好ましくは2.5MPa以下、より好ましくは2.2MPa以下、更に好ましくは2.0MPa以下である。内層領域における捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下であり、かつ、捲回されたセパレータの最も内側のセパレータと最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとの間における捲回体の圧力が0.3MPa以上2.5MPa以下であると、ブロッキングをより効果的に抑制し、捲回体の形状がより崩れにくく、より取扱性に優れる捲回体が得られる傾向にある。また、捲回体からセパレータを繰り出して正負極と積層して捲回体を作製する際に、セパレータにシワが入りづらいため、蓄電デバイスの不良率を抑えることが可能となる。
セパレータの内層領域における突刺強度及び圧力以外に、ブロッキングの抑制に影響する因子として、例えば、限定されないが、巻取張力、巻長、コアサイズ、塗工層中に含まれる熱可塑性ポリマーの特性(すなわち、ベタつき具合)、塗工層の面積占有率、塗工目付、及び塗工厚み、並びにこれらの組合せ等が挙げられる。以下、これらの因子についてより詳細に説明する。
〈塗工目付〉
熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付は、好ましくは0.05g/m以上2g/m以下、より好ましくは0.1g/m以上1.5g/m以下、更に好ましくは0.2g/m以上1.0g/m以下である。熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付が0.05g/m以上であると、電極等との接着性が良好になる。熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付が2.0g/m以下であると、ブロッキングをより効果的に抑制することができ、また、レート特性がより良好になる。
〈捲回数〉
本実施形態の捲回体において、捲回されているセパレータの捲回数は、好ましくは500回以上10000回以下、より好ましくは1000回以上8000回以下、更に好ましくは1500回以上5000回以下である。捲回数が500回以上であれば、捲回体を輸送する際の体積を低減することができ、また、蓄電デバイスの製造において、捲回体を交換する頻度が少なくなる、といった経済的利点を有する。捲回数が10000回以下であれば、捲回体の内層にかかる圧力が低減するため、ブロッキングを効果的に低減することができる。
〈巻幅〉
本実施形態の捲回体において、捲回されているセパレータの幅(本願明細書において、「巻幅」ともいう。)は、限定されないが、典型的には10mm以上2000mm以下、より典型的には20mm以上1500mm以下である。
〈コア〉
セパレータの捲回体は、典型的にはコア(「芯材」とも呼ばれる)の周りに捲回されている。セパレータの捲回体のコアの材質としては、限定されないが、紙製、樹脂製等が挙げられ、典型的には樹脂製である。
コアの径(本願明細書において、「コアサイズ」ともいう。)は、好ましくは3インチ以上、より好ましくは4インチ以上、更に好ましくは6インチ以上である。コアサイズが3インチ以上であれば、捲回数を低減することができ、捲回体の内層にかかる圧力が低減するため、ブロッキングを効果的に低減することができる。コアサイズが20インチ以下であれば、より小さい体積でより多くのセパレータを捲回することができ、経済的に有利である。
コアの幅は、上記「巻幅」にほぼ対応する長さであってよい。
〈パターン塗工〉
熱可塑性ポリマー塗工層は、所望のパターンを有するパターン塗工であってもよい。パターン塗工の形状としては、限定されないが、例えば、線状、斜線状、ストライプ状、ドット状、格子目状、縞状、及び亀甲模様状等のパターンが挙げられる。パターン塗工は、好ましくは斜線パターン、ストライプパターン、及びドットパターンであり、より好ましくはドットパターンである。本願明細書において、「ストライプパターン」又は「ストライプ状」とは、ポリオレフィン基材のMD方向(機械方向)に対してほぼ平行な、複数の線を有するパターンを意味する。本願明細書において、「斜線パターン」又は「斜線状」とは、ポリオレフィン基材のMD方向以外の方向に対してほぼ平行な、複数の線を有するパターンを意味する。本願明細書において、「ドットパターン」又は「ドット状」とは、ポリオレフィン多孔性基材上に、熱可塑性ポリマーが存在しない部分と、熱可塑性ポリマーが存在する部分とが海島状である(海:熱可塑性ポリマーが存在しない部分、島:熱可塑性ポリマーが存在する部分である。)ことを意味する。
パターン塗工の寸法は、限定されないが、微細な、例えば数mm~数μm程度のオーダーの構造を有することが好ましい。例えば、パターン塗工は、好ましくは2000μm以下、より好ましくは1000μm以下、更に好ましくは500μm以下、より更に好ましくは200μm以下の構造を有することが好ましい。本願明細書において、パターン塗工が例えば「2000μm以下の構造を有する」とは、パターン塗工の設計上、パターンの幅、長さ、間隔、及び曲率半径等の寸法の少なくとも一部を、2000μm以下に制御することを意味する。パターン塗工の寸法が上記範囲内であることにより、本発明による利点、すなわちパターン塗工性がより顕著になる。
パターン塗工がドットパターンである場合、ドットの径は、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上400μm以下である。「ドットの径」とは、ドットが円形の場合は直径を意味し、円形以外の場合は、その重心を通りかつ最長の径を意味する。ドット同士の間隔は、好ましくは5μm以上2000μm以下、より好ましくは10μm以上1500μm以下、更に好ましくは25μm以上1000μm以下である。「ドット同士の間隔」とは、ドットが円形の場合は中心同士の間隔を意味し、円形以外の場合は、その重心間の距離を意味する。一つのドットの面積は、好ましくは1000μm以上1000000μm以下、より好ましくは2500μm以上250000μm以下、更に好ましくは10000μm以上90000μm以下である。ドットパターンの寸法が上記範囲内であることにより、パターン塗工がドットパターンであることによる上記利点がより顕著になる。
パターン塗工が斜線状又はストライプ状である場合、線の幅は、好ましくは5μm以上500μm以下、より好ましくは20μm以上400μm以下である。線同士の距離は、好ましくは5μm以上2000μm以下、より好ましくは10μm以上1500μm以下、更に好ましくは25μm以上1000μm以下である。
基材上における熱可塑性ポリマーの面積占有率は、好ましくは10%以上80%未満であり、より好ましくは15%以上70%以下、更に好ましくは20%以上60%以下である。「面積占有率」とは、パターン塗工が基材の片面に配置されている場合、基材の片面の全面積に対して、熱可塑性ポリマーが存在する部分の面積割合を意味し、パターン塗工が基材の両面に配置されている場合、基材の両面の全面積に対して、熱可塑性ポリマーが存在する部分の面積割合を意味する。
上記面積占有率に調製することで、セパレータを巻回した際の熱可塑性ポリマー塗工層同士の接触確率が抑制されるためブロッキング性に優れ、また電解液注液工程での注液性が良好となる。更には、基材表面の気孔が維持されるため、セパレータとして使用した際のレート特性に優れる。なお、セパレータの注液性は、電池の製造工程における電解液の侵入し易さを示す指標である。注液性が高いほど、電池の製造工程におけるタクトタイムが短縮されるため好ましい。
パターン塗工の厚さは、好ましくは0.01μm以上、より好ましくは0.1μm以上、更に好ましくは6μm以下、より更に好ましくは5μm以下、特に好ましくは4μm以下である。パターン塗工が多孔性基材の両面に配置されている場合、熱可塑性層の厚さは、多孔性基材の片面当たりの厚さを意味する。
〈基材〉
基材としては、捲回体として製造しうる程度の可撓性を有する基材であれば特に限定されず、典型的には多孔性基材、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分として含むポリオレフィン多孔性基材であってよく、ポリオレフィン樹脂から構成される多孔性基材であることが好ましい。「主成分として含む」とは、特定の成分又は部材を、50質量%を超えて含むことを意味する。「から構成される」とは、不可避成分及び混入等を除いて、特定の成分又は部材から成ることを意味する。
セパレータのシャットダウン機能の観点から、ポリオレフィン多孔性基材の50質量%超、好ましくは75質量%以上、より好ましくは85質量%以上、更に好ましくは90質量%以上、より更に好ましくは95質量%以上、特に好ましくは98質量%以上をポリオレフィン樹脂が占めることが好ましい。
ポリオレフィン樹脂としては、限定されないが、一般的な押出、射出、インフレーション、及びブロー成形に使用されるポリオレフィン樹脂、例えば、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等の、ホモポリマー、コポリマー、及び多段ポリマー等が挙げられる。ポリオレフィン樹脂は、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
ポリオレフィン樹脂としては、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレン等のポリエチレン;アイソタクティックポリプロピレン、及びアタクティックポリプロピレン等のポリプロピレン;エチレン-プロピレンランダムコポリマー、エチレン-プロピレンブロックコポリマー、ポリブテン、及びエチレン-プロピレンラバー等もまた挙げられる。
ポリエチレン樹脂としては、低融点かつ高強度であることから、高密度ポリエチレンが好ましい。柔軟性を付与するために、2種以上のポリエチレンを併用してもよい。ポリエチレンの重合に用いられる重合触媒としては、限定されないが、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、フィリップス系触媒、及びメタロセン系触媒等が挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材の耐熱性を向上させるために、ポリオレフィン樹脂は、ポリプロピレンと、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂とを含むことが好ましい。ポリプロピレンの立体構造は限定されず、アイソタクティックポリプロピレン、シンジオタクティックポリプロピレン、及びアタクティックポリプロピレンのいずれでもよい。ポリオレフィン樹脂組成物中のポリオレフィン樹脂の合計質量に対するポリプロピレンの割合は、限定されないが、耐熱性と良好なシャットダウン機能とを両立させる観点から、好ましくは1~35質量%、より好ましくは3~20質量%、更に好ましくは4~10質量%である。ポリプロピレンの重合に用いられる重合触媒としては、限定されないが、例えば、チーグラー・ナッタ系触媒、及びメタロセン系触媒が挙げられる。
ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、限定されないが、例えば、エチレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテン、1-ヘキセン、及び1-オクテン等のオレフィン炭化水素の、ホモポリマー、及びコポリマーが挙げられる。具体的には、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂としては、ポリエチレン、ポリブテン、及びエチレン-プロピレンランダムコポリマー等が挙げられる。
ポリオレフィン多孔性基材のシャットダウン機能の観点から、ポリプロピレン以外のポリオレフィン樹脂として、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、及び超高分子量ポリエチレン等のポリエチレンを用いることが好ましい。これらの中でも、強度の観点から、JIS K7112に従って測定された密度が0.93g/cm以上であるポリエチレンを使用することがより好ましい。
ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量(Mv)は、限定されないが、好ましくは30,000以上12,000,000以下、より好ましくは50,000以上2,000,000未満、更に好ましくは100,000以上1,000,000未満である。ポリオレフィン樹脂の粘度平均分子量が30,000以上であると、基材を溶融成形する際のメルトテンションが大きく、成形性が良好になると共に、ポリマー同士の絡み合いにより高強度の基材が得られる傾向にあるため好ましい。粘度平均分子量が12,000,000以下であると、より均一に溶融混練をすることができ、シートの成形性、特に厚み安定性に優れる傾向にあるため好ましい。粘度平均分子量が1,000,000未満であると、温度上昇時に基材の孔が閉塞され易く、良好なシャットダウン機能が得られる傾向にあるため好ましい。
粘度平均分子量(Mv)は、ASTM-D4020に基づき、溶剤としてデカリンを用い、測定温度135℃で測定された極限粘度[η]から、下記式により算出される。
ポリエチレン:[η]=6.77×10-4Mv0.67(Chiangの式)
ポリプロピレン:[η]=1.10×10-4Mv0.80
粘度平均分子量が1,000,000未満のポリオレフィンを単独で使用する代わりに、粘度平均分子量が約2,000,000のポリオレフィンと、粘度平均分子量が約270,000のポリオレフィンとの混合物である結果、混合物全体としての粘度平均分子量が1,000,000未満である混合物を用いてもよい。
基材は、任意の添加剤を含有してもよい。添加剤としては、限定されないが、例えば、ポリオレフィン以外のポリマー、無機粒子、酸化防止剤、金属石鹸類、紫外線吸収剤、光安定剤、帯電防止剤、防曇剤、及び着色顔料等が挙げられる。酸化防止剤としては、フェノール系、リン系、及びイオウ系等の酸化防止剤が挙げられる。金属石鹸類としては、ステアリン酸カルシウム、及びステアリン酸亜鉛等の金属石鹸類が挙げられる。任意の添加剤の合計含有量は、基材100質量部に対して、好ましくは0.001質量%以上20質量部以下、より好ましくは10質量部以下、更に好ましくは5質量部以下である。
基材の気孔率は、好ましくは20%以上、より好ましくは35%以上であり、好ましくは90%以下、より好ましくは80%以下である。気孔率が20%以上であれば、イオン透過性の高いセパレータが得られる。気孔率が90%以下であれば、突刺強度の高いセパレータが得られる。
基材の気孔率は、例えば、基材の体積(cm)、質量(g)、膜密度(g/cm)から、下記数式:
気孔率=(体積-質量/膜密度)/体積×100
により求めることができる。例えば、ポリエチレンから構成されるポリオレフィン多孔性基材の場合、膜密度を0.95(g/cm)と仮定して気孔率を計算することができる。気孔率は、基材の延伸倍率を変更すること等により調節可能である。
基材の透気度は、限定されないが、好ましくは10秒/100cc以上、より好ましくは50秒/100cc以上であり、好ましくは1,000秒/100cc以下、より好ましくは500秒/100cc以下である。透気度が10秒/100cc以上であれば、蓄電デバイスの自己放電が抑制されるため好ましい。透気度が1,000秒/100cc以下であれば、良好な充放電特性が得られるため好ましい。本明細書では、透気度は、JIS P-8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気度は、多孔性基材の延伸温度及び/又は延伸倍率等を変更することで調節可能である。
基材の平均孔径は、好ましくは0.15μm以下、より好ましくは0.1μm以下であり、好ましくは0.01μm以上である。平均孔径が0.15μm以下であれば、蓄電デバイスの自己放電が抑制され、かつ容量低下が抑制されるため好ましい。平均孔径は、基材を製造する際の延伸倍率等を変更することにより調節可能である。
基材の突刺強度は、限定されないが、好ましくは200g/20μm以上、より好ましくは300g/20μm以上であり、好ましくは2,000g/20μm以下、より好ましくは1,000g/20μm以下である。突刺強度が200g/20μm以上であれば、電池捲回時に脱落した活物質等による破膜が抑制され、また、充放電に伴う電極の膨張及び収縮による短絡が抑制されるため好ましい。突刺強度が2,000g/20μm以下であれば、加熱時の配向緩和による幅収縮が低減されるため好ましい。突刺強度は、基材の延伸倍率及び/又は延伸温度等を調整することにより調節可能である。
基材の膜厚は、限定されないが、好ましくは2μm以上、より好ましくは5μm以上であり、好ましくは100μm以下、より好ましくは60μm以下、更に好ましくは50μm以下である。膜厚が2μm以上であれば、機械強度が向上するため好ましい。膜厚が100μm以下であれば、電池におけるセパレータの占有体積が減り、電池の高容量化に寄与する傾向があるため好ましい。
基材は、蓄電デバイスの自己放電を抑制し、電池におけるセパレータの占有体積を低減して、電池の高容量化を図る観点から、平均孔径が0.15μm以下であり、かつ膜厚が100μm以下の微多孔膜であることがより好ましい。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材は、電池に用いたときの安全性の観点から、シャットダウン温度は、好ましくは120℃以上、200℃以下であり、より好ましくは165℃以下、更に好ましくは140℃以下である。
本実施形態におけるポリオレフィン多孔性基材の耐熱性の指標であるショート温度は、好ましくは140℃以上であり、より好ましくは150℃以上であり、さらに好ましくは160℃以上である。ショート温度を140℃以上とすることは、蓄電デバイス用セパレータとする場合に、蓄電デバイスの安全性の観点から好ましい。
〈セパレータ及びその捲回体の物性〉
(イオン透過性)
セパレータのイオン透過性は、実施例の欄に記載するように、セパレータの透気度によって評価することができる。セパレータの透気度は、好ましくは10~10,000秒/100ccであり、より好ましくは10~1,000秒/100ccであり、更に好ましくは50~500秒/100ccである。透気度が上記範囲内であることにより、セパレータをリチウムイオン二次電池に適用したときには、大きなイオン透過性を示す。
(膜厚)
上記セパレータの最終的な膜厚は、2μm以上200μm以下であることが好ましく、より好ましくは5μm以上100μm以下、更に好ましくは7μm以上30μm以下である。膜厚が2μm以上であると、機械強度が十分となる傾向にある。また、200μm以下であると、セパレータの占有体積が減るため、電池の高容量化の点において有利となる傾向にある。
(電極との間の接着性)
蓄電デバイス用セパレータの接着性は、実施例の欄に記載するように、セパレータと電極との間の剥離強度により評価することができる。蓄電デバイス用セパレータは、セパレータの熱可塑性ポリマーを含有する層側を正極に、100℃において1MPaの圧力で5秒間加圧した場合の剥離強度(以下、「加熱剥離強度」ともいう。)として測定される。上記セパレータの剥離強度としては、前記加熱剥離強度の値が2mN/mm以上であることが好ましい。加熱剥離強度が上記範囲にあるセパレータは、後述の蓄電デバイスに適用する際に、電極とセパレータとの密着性に優れる点で好ましい。上記の加熱剥離強度の測定方法については、後述の実施例において具体的に記載される。
また、本実施形態におけるセパレータは、該セパレータを2枚重ねて、その積層方向に、温度25℃において圧力5MPaで3分間加圧した後の90°剥離強度(以下、「常温剥離強度」ともいう。)が、20mN/mm以下であることが好ましく、10mN/mm以下であることがより好ましい。この要件を満たすことにより、セパレータが耐ブロッキング性に更に優れ、そのハンドリング性がより良好になるという効果が得られる。
《セパレータの捲回体の製造方法》
セパレータの捲回体の製造方法は:
基材の少なくとも片面に、熱可塑性ポリマー及び分散媒を含む塗工用スラリーをパターン塗工することと;
上記塗工用スラリーから分散媒を乾燥させて、基材の少なくとも片面に、熱可塑性ポリマー塗工層を形成することと;
熱可塑性ポリマー塗工層が形成されたセパレータを所定の巻取張力にて捲回することと
を含み、
捲回された上記セパレータの最内層から1cm以下の領域における上記捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下である、方法であることが好ましい。捲回は、セパレータのみを捲回してもよく、セパレータを任意のコア上に捲回してもよい。
〈塗工方法〉
熱可塑性ポリマー塗工層の塗工方法は、特に限定されず、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、及びスプレー塗布法等が挙げられる。パターン塗工を行う場合、熱可塑性ポリマーの塗工形状の自由度が高く、所望の面積割合を容易に得ることができること等から、好ましくはグラビアコーター法である。
グラビアコーター法を用いる場合、所望のパターン加工が施されたグラビアコーターを用いてパターン塗工を行うことができる。グラビアコーターにおけるパターンの形状としては、上記「〈パターン塗工〉」の欄に挙げた形状に対応する形状であることができ、好ましくはドット、斜線、又はストライプのパターンである。それぞれのパターンの好ましい径、幅、距離、面積等は、上記「〈パターン塗工〉」の欄を参照されたい。
塗工に先立ち、多孔性基材の表面に表面処理を施しても良い。表面処理の方法は、基材の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば限定されず、例えば、コロナ放電処理法、プラズマ表面処理、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、及び紫外線酸化法等が挙げられる。
〈乾燥方法〉
分散媒を乾燥させる方法は、塗布後の熱可塑性ポリマー塗工層から分散媒を実質的に除去して多孔性基材上に、熱可塑性ポリマー塗工層を残すことができれば限定されない。乾燥後の熱可塑性ポリマー塗工層に許容量の分散媒が残留してもよい。分散媒を乾燥させる方法としては、例えば、多孔性基材を固定しながらその融点以下の温度で乾燥させる方法、及び低温で減圧乾燥させる方法等が挙げられる。多孔性基材のMD方向(多孔性基材の機械方向)の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、及び巻取り張力等を調整することが好ましい。
〈捲回方法〉
乾燥させた熱可塑性ポリマー塗工層を有するセパレータを捲回する方法としては、限定されず、あらゆる公知の方法を用いることができる。
セパレータを巻き取る際の張力(本願明細書において「巻取張力」ともいう。)は、好ましくは0.005N/mm以上、より好ましくは0.01N/mm以上である。捲回張力が0.005N/mm以上であることにより捲回中や輸送中における捲回体のズレを抑制できる。一方、巻取張力が0.2N/mm以下であれば、捲回体の内層領域にかかる圧力を抑えブロッキングを効果的に低減することができる。
《多孔層》
本実施形態では、蓄電デバイス用セパレータは、ポリオレフィン多孔性基材と熱可塑性ポリマー塗工層に加えて、無機フィラー又は有機フィラーと樹脂製バインダを含む多孔層を備えていてもよい。多孔層の位置は、ポリオレフィン多孔性基材表面の少なくとも一部、熱可塑性ポリマー塗工層表面の少なくとも一部、及び/又はポリオレフィン多孔性基材と熱可塑性ポリマー塗工層との間が挙げられる。前記多孔層はポリオレフィン多孔性基材の片面であっても両面に備えていてもよい。
〈無機フィラー〉
多孔層に使用する無機フィラーとしては、特に限定されないが、200℃以上の融点を持ち、電気絶縁性が高く、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定であるものが好ましい。
無機フィラーとしては、特に限定されないが、例えば、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、マグネシア、セリア、イットリア、酸化亜鉛、酸化鉄等の酸化物系セラミックス;窒化ケイ素、窒化チタン、窒化ホウ素等の窒化物系セラミックス;シリコンカーバイド、炭酸カルシウム、硫酸マグネシウム、硫酸アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化酸化アルミニウム、チタン酸カリウム、タルク、カオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト、モンモリロナイト、セリサイト、マイカ、アメサイト、ベントナイト、アスベスト、ゼオライト、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、ケイ藻土、ケイ砂等のセラミックス、ガラス繊維等が挙げられ、これらは単独で用いてもよいし、複数を併用してもよい。
上記の中でも、電気化学的安定性及び多層多孔膜の耐熱特性を向上させる観点から、アルミナ、水酸化酸化アルミニウム等の酸化アルミニウム化合物;又はカオリナイト、ディカイト、ナクライト、ハロイサイト、パイロフィライト等のイオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物が好ましい。前記酸化アルミニウム化合物としては、水酸化酸化アルミニウムが特に好ましい。イオン交換能を持たないケイ酸アルミニウム化合物としては、安価で入手も容易なため、カオリン鉱物で主に構成されているカオリンがより好ましい。カオリンには湿式カオリン及びこれを焼成処理した焼成カオリンがあるが、焼成カオリンは焼成処理の際に結晶水が放出されるのに加え、不純物が除去されるので、電気化学的安定性の点で特に好ましい。
〈有機フィラー〉
有機フィラーとしては、例えば、架橋ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、架橋ポリシリコーン(ポリメチルシルセスキオキサン等)、架橋ポリスチレン、架橋ポリジビニルベンゼン、スチレン-ジビニルベンゼン共重合体架橋物、ポリイミド、ポリアミドイミド、メラミン樹脂、フェノール樹脂、ベンゾグアナミン-ホルムアルデヒド縮合物等の各種架橋高分子微粒子;ポリスルホン、ポリアクリロニトリル、アラミド、ポリアセタール、熱可塑性ポリイミド等の耐熱性高分子微粒子等が例示できる。また、これらの有機微粒子を構成する有機樹脂(高分子)は、前記例示の材料の混合物、変性体、誘導体、共重合体(ランダム共重合体、交互共重合体、ブロック共重合体、グラフト共重合体)、架橋体(前記の耐熱性高分子の場合)であってもよい。
これらの中でも、架橋ポリアクリル酸、架橋ポリアクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸、架橋ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリメタクリル酸メチル、および架橋ポリシリコーン(ポリメチルシルセスキオキサン等)、ポリイミド、ポリアミドイミド、アラミドから成る群より選ばれる1種以上の樹脂であることが好ましい。
フィラーの平均粒径は、0.1μmを超えて4.0μm以下であることが好ましく、0.2μmを超えて3.5μm以下であることがより好ましく、0.4μmを超えて3.0μm以下であることが更に好ましい。フィラーの平均粒径を上記範囲に調整することは、多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。
フィラーにおいて、0.2μmを超えて1.4μm以下の粒径を有する粒子がフィラー全体に占める割合としては、好ましくは2体積%以上、より好ましくは3体積%以上、更に好ましくは5体積%以上であり、上限としては、好ましくは90体積%以下、より好ましくは80体積%以下である。
フィラーにおいて、0.2μmを超えて1.0μm以下の粒径を有する粒子が無機フィラー全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは2体積%以上であり、上限としては、好ましくは80体積%以下、より好ましくは70体積%以下である。
フィラーにおいて、0.5μmを超えて2.0μm以下の粒径を有する粒子がフィラー全体に占める割合としては、好ましくは8体積%以上、より好ましくは10体積以上であり、上限としては、好ましくは60体積%以下、より好ましくは50体積%以下である。
更に、フィラーにおいて、0.6μmを超えて1.4μm以下の粒径を有する粒子がフィラー全体に占める割合としては、好ましくは1体積%以上、より好ましくは3体積%以上であり、上限としては、好ましくは40体積%以下、より好ましくは30体積%以下である。
フィラーの粒度分布を上記範囲に調整することは、多孔層の厚さが薄い場合(例えば、7μm以下)であっても、高温での熱収縮を抑制する観点から好ましい。なお、フィラーの粒径の割合を調整する方法としては、例えば、ボールミル・ビーズミル・ジェットミル等を用いて無機フィラーを粉砕し、粒径を小さくする方法等を挙げることができる。
フィラーの形状としては、板状、鱗片状、針状、柱状、球状、多面体状、塊状等が挙げられ、上記形状を有するフィラーを複数種組み合わせて用いてもよい。多層多孔膜とした際に、後述の150℃熱収縮を10%以下に抑制することが可能であれば、フィラーの形状は、特に限定されないが、透過性向上の観点からは複数の面から成る多面体状、柱状、紡錘状が好ましい。
フィラーが多孔層中に占める割合としては、フィラーの結着性、多層多孔膜の透過性及び耐熱性等の観点から適宜決定することができ、50質量%以上100質量%未満であることが好ましく、より好ましくは70質量%以上99.99質量%以下、さらに好ましくは80質量%以上99.9質量%以下、特に好ましくは90質量%以上99質量%以下である。
〈樹脂製バインダ〉
樹脂製バインダの種類としては、特に限定されないが、本実施形態において蓄電デバイス用セパレータをリチウムイオン二次電池用セパレータとして使用する場合には、リチウムイオン二次電池の電解液に対して不溶であり、かつリチウムイオン二次電池の使用範囲で電気化学的に安定なものを用いることが好ましい。
樹脂製バインダの具体例としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂;フッ化ビニリデン-ヘキサフルオロプロピレン-テトラフルオロエチレン共重合体、エチレン-テトラフルオロエチレン共重合体等の含フッ素ゴム;スチレン-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン共重合体及びその水素化物、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体及びその水素化物、メタクリル酸エステル-アクリル酸エステル共重合体、スチレン-アクリル酸エステル共重合体、アクリロニトリル-アクリル酸エステル共重合体、エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、ポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、ポリエステル等の融点及び/又はガラス転移温度が180℃以上の樹脂等が挙げられる。
樹脂製バインダとしてポリビニルアルコールを使用する場合、そのケン化度は85%以上100%以下であることが好ましい。ケン化度が85%以上であると、多層多孔膜を電池用セパレータとして使用した際に、短絡する温度(ショート温度)が向上し、より良好な安全性能が得られる傾向にあるため好ましい。ケン化度は、より好ましくは90%以上100%以下、さらに好ましくは95%以上100%以下、特に好ましくは99%以上100%以下である。また、ポリビニルアルコールの重合度は、200以上5000以下であることが好ましく、より好ましくは300以上4000以下、さらに好ましくは500以上3500以下である。重合度が200以上であると、少量のポリビニルアルコールで焼成カオリン等の無機フィラーを多孔膜に強固に結着でき、多孔層の力学的強度を維持しながら多孔層形成による多層多孔膜の透気度増加を抑えることができる傾向にあるため好ましい。また、重合度が5000以下であると、塗布液を調製する際のゲル化等を防止できる傾向にあるため好ましい。
樹脂製バインダとしては、樹脂製ラテックスバインダが好ましい。樹脂製ラテックスバインダを用いた場合、フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した場合は、樹脂製バインダの一部又は全てを溶媒に溶解させた後に、得られた溶液をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層し、貧溶媒への浸漬又は乾燥による溶媒除去等により樹脂製バインダを多孔膜に結着させた場合と比較して、イオン透過性が低下し難く、高出力特性が得られ易い傾向にある。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い傾向にある。
樹脂製ラテックスバインダとしては、電気化学的安定性と結着性を向上させる観点から、脂肪族共役ジエン系単量体及び不飽和カルボン酸単量体、並びにこれらと共重合可能な他の単量体を乳化重合して得られるものが好ましい。乳化重合の方法としては、特に制限はなく、従来公知の方法を用いることができる。単量体及びその他の成分の添加方法については特に制限されるものではなく、一括添加方法、分割添加方法、連続添加方法の何れも採用することができ、また、一段重合、二段重合又は多段階重合等の何れも採用することができる。
脂肪族共役ジエン系単量体としては、特に限定されず、例えば、1,3-ブタジエン、2-メチル-1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3ブタジエン、2-クロル-1,3-ブタジエン、置換直鎖共役ペンタジエン類、置換及び側鎖共役ヘキサジエン類等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に1,3-ブタジエンが好ましい。
不飽和カルボン酸単量体としては、特に限定されず、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等のモノ又はジカルボン酸(無水物)等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特にアクリル酸、メタクリル酸が好ましい。
これらと共重合可能な他の単量体としては、特に限定されず、例えば、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体、不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体、ヒドロキシアルキル基を含有する不飽和単量体、不飽和カルボン酸アミド単量体等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特に不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体が好ましい。不飽和カルボン酸アルキルエステル単量体としては、特に限定されないが、例えば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、ブチルアクリレート、グリシジルメタクリレート、ジメチルフマレート、ジエチルフマレート、ジメチルマレエート、ジエチルマレエート、ジメチルイタコネート、モノメチルフマレート、モノエチルフマレート、2-エチルヘキシルアクリレート等が挙げられ、これらは1種を単独で用いても、2種以上を併用してもよい。上記の中でも、特にメチルメタクリレートが好ましい。
なお、これらの単量体に加えて様々な品質及び物性を改良するために、上記以外の単量体成分をさらに使用することもできる。
樹脂製バインダの平均粒径は、50~500nmであることが好ましく、より好ましくは60~460nm、更に好ましくは80~250nmである。樹脂製バインダの平均粒径が50nm以上である場合、無機フィラーとバインダとを含む多孔層をポリオレフィン多孔膜の少なくとも片面に積層した際、イオン透過性が低下し難く高出力特性が得られ易い。加えて異常発熱時の温度上昇が速い場合においても、円滑なシャットダウン特性を示し、高い安全性が得られ易い。樹脂製バインダの平均粒径が500nm以下である場合、良好な結着性を発現し、多層多孔膜とした場合に熱収縮が良好となり安全性に優れる傾向にある。
樹脂製バインダの平均粒径は、重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH等を調整することで制御することが可能である。
多孔層の層厚は、耐熱性、絶縁性を向上させる観点から1μm以上であることが好ましく、電池の高容量化と透過性を向上させる観点から50μm以下であることが好ましい。多孔層の層厚は、より好ましくは1.5μm以上20μm以下、さらに好ましくは2μm以上10μm以下、さらにより好ましくは3μm以上10μm以下、特に好ましくは3μm以上7μm以下である。
多孔層の層密度は、0.5~2.0g/cmであることが好ましく、0.7~1.5cmであることがより好ましい。多孔層の層密度が0.5g/cm以上であると、高温での熱収縮率が良好となる傾向にあり、2.0g/cm以下であると、透気度が低下する傾向にある。
〈多孔層の形成方法〉
多孔層の形成方法としては、例えば、ポリオレフィン樹脂を主成分とする多孔性基材の少なくとも片面に、無機フィラーと樹脂製バインダとを含む塗布液を塗布して多孔層を形成する方法を挙げることができる。
塗布液の溶媒としては、無機フィラー及び樹脂製バインダを均一かつ安定に分散できるものが好ましく、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
塗布液には、分散安定化又は塗工性の向上のために、界面活性剤等の分散剤;増粘剤;湿潤剤;消泡剤;酸、アルカリを含むpH調製剤等の各種添加剤を加えてもよい。これらの添加剤は、溶媒除去の際に除去できるものが好ましいが、リチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害せず、かつ200℃程度まで安定ならば多孔層内に残存してもよい。
フィラーと樹脂製バインダとを塗布液の溶媒に分散させる方法については、塗布工程に必要な塗布液の分散特性を実現できる方法であれば特に限定はない。例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
塗布液を多孔膜に塗布する方法については、必要とする層厚又は塗布面積を実現できる方法であれば特に限定はなく、例えば、グラビアコーター法、小径グラビアコーター法、リバースロールコーター法、トランスファロールコーター法、キスコーター法、ディップコーター法、ナイフコーター法、エアドクタコーター法、ブレードコーター法、ロッドコーター法、スクイズコーター法、キャストコーター法、ダイコーター法、スクリーン印刷法、スプレー塗布法等が挙げられる。
塗布液の塗布に先立ち、多孔膜表面に表面処理を施すと、塗布液を塗布し易くなると共に、塗布後の無機フィラー含有多孔層と多孔膜表面との密着性が向上するため好ましい。表面処理の方法は、多孔膜の多孔質構造を著しく損なわない方法であれば特に限定はなく、例えば、コロナ放電処理法、機械的粗面化法、溶剤処理法、酸処理法、紫外線酸化法等が挙げられる。
塗布後に塗布膜から溶媒を除去する方法については、多孔膜に悪影響を及ぼさない方法であれば特に限定はなく、例えば、多孔膜を固定しながらその融点以下の温度にて乾燥する方法、低温で減圧乾燥する方法等が挙げられる。多孔膜及び多層多孔膜のMD方向の収縮応力を制御する観点から、乾燥温度、捲回り張力等は適宜調整することが好ましい。
《塗工用スラリー》
本実施形態において、熱可塑性ポリマー塗工層を塗工するための塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマー及び分散媒を含み、上記塗工用スラリーから上記分散媒を乾燥させることにより、基材上に熱可塑性ポリマー塗工層を形成することができる。
セパレータの基材上に熱可塑性ポリマー塗工層を形成する工程は、典型的に、所定の初期固形分を有するスラリーを基材上に塗工して、徐々に固形分を上昇(すなわち、乾燥)させて塗工層を形成することを含む。塗工は、基材の片面又は両面の、一部又は全体に、所望のパターンで形成してもよい。
〈熱可塑性ポリマー〉
熱可塑性ポリマーとしては、限定されないが、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、及びα-ポリオレフィン等のポリオレフィン樹脂;ポリフッ化ビニリデン、及びポリテトラフルオロエチレン等の含フッ素樹脂、及びこれらを含むコポリマー;ブタジエン、及びイソプレン等の共役ジエンをモノマー単位として含むジエン系ポリマー、これらを含むコポリマー、及びこれらの水素化物;アクリル酸エステル、及びメタアクリル酸エステル等をモノマー単位として含むアクリル系ポリマー、これらを含むコポリマー、これらの水素化物;エチレンプロピレンラバー、ポリビニルアルコール、及びポリ酢酸ビニル等のゴム類;エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びカルボキシメチルセルロース等のセルロース誘導体;ポリフェニレンエーテル、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、ポリアミド、及びポリエステル等の、融点及び/又はガラス転移点が180℃以上の樹脂、並びにこれらの混合物等が挙げられる。電極との接着性、強度、及び柔軟性に優れることから、ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー、及びフッ素系ポリマーからなる群から選択される少なくとも一つの熱可塑性ポリマーが好ましい。熱可塑性ポリマーは、1種を単独で用いてもよく、又は2種以上を併用してもよい。
(ジエン系ポリマー)
ジエン系ポリマーとしては、限定されないが、例えば、ブタジエン、及びイソプレンなどの共役の二重結合を2つ有する共役ジエンをモノマー単位として含むポリマーが挙げられる。共役ジエンモノマーとしては、限定されないが、例えば、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、及び3-ブチル-1,3-オクタジエン等が挙げられる。これらのモノマーは、単独で重合しても共重合してもよい。
ジエン系ポリマー中の共役ジエンモノマー単位の割合は、限定されないが、例えば、全ジエン系ポリマー中40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
ジエン系ポリマーは、ポリブタジエン、及びポリイソプレン等の共役ジエンモノマーのホモポリマーであってもよく、共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーであってもよい。共役ジエンモノマーと共重合可能なモノマーとしては、例えば、後述の(メタ)アクリレートモノマー、及び下記「その他のモノマー」が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
「その他のモノマー」としては、例えば、アクリロニトリル、及びメタクリロニトリル等のα,β-不飽和ニトリル化合物;アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、及びフマル酸等の不飽和カルボン酸類;スチレン、クロロスチレン、ビニルトルエン、t-ブチルスチレン、ビニル安息香酸、ビニル安息香酸メチル、ビニルナフタレン、クロロメチルスチレン、ヒドロキシメチルスチレン、α-メチルスチレン、及びジビニルベンゼン等のスチレン系モノマー;エチレン、及びプロピレン等のオレフィン類;塩化ビニル、及び塩化ビニリデン等のハロゲン原子含有モノマー;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、及び安息香酸ビニル等のビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、及びブチルビエルエーテル等のビニルエーテル類;メチルビニルケトン、エチルビニルケトン、ブチルビニルケトン、ヘキシルビニルケトン、及びイソプロペニルビニルケトン等のビニルケトン類;N-ビニルピロリドン、ビニルピリジン、及びビニルイミダゾール等の複素環含有ビニル化合物;メチルアクリレート、及びメチルメタクリレート等のアクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル化合物;β-ヒドロキシエチルアクリレート、及びβ-ヒドロキシエチルメタクリレート等のヒドロキシアルキル基含有化合物;アクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、及びアクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸等のアミド系モノマーなどが挙げられる。これらのその他のモノマーは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(アクリル系ポリマー)
アクリル系ポリマーとしては、限定されないが、好ましくは(メタ)アクリレートモノマーをモノマー単位として含むポリマーである。本願明細書において「(メタ)アクリル酸」は「アクリル酸又はメタクリル酸」を意味し、「(メタ)アクリレート」は「アクリレート又はメタクリレート」を意味する。
(メタ)アクリレートモノマーとしては、限定されないが、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-プロピル(メタ)アクリレート、イソプロピル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、n-テトラデシル(メタ)アクリレート、及びステアリル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、及びヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート;アミノエチル(メタ)アクリレート等のアミノ基含有(メタ)アクリレート;グリシジル(メタ)アクリレート等のエポキシ基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。これらのモノマーは、単独で重合しても共重合してもよい。
(メタ)アクリレートモノマー単位の割合は、限定されないが、例えば、全アクリル系ポリマー中40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリレートモノマーのホモポリマーであってもよく、(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーであってもよい。(メタ)アクリレートモノマーと共重合可能なモノマーとしては、上記ジエン系ポリマーの項目で列挙した共役ジエンモノマー、及び「その他のモノマー」が挙げられ、これらを1種又は2種以上を組み合わせて使用してもよい。
(フッ素系ポリマー)
フッ素系ポリマーとしては、限定されないが、例えば、フッ化ビニリデンモノマーのホモポリマー、及びフッ化ビニリデンモノマーと共重合可能なモノマーとのコポリマーが挙げられる。フッ素系ポリマーは、電気化学的安定性の観点から好ましい。
フッ化ビニリデンモノマー単位の割合は、限定されないが、例えば、全フッ素系ポリマー中40質量%以上、好ましくは50質量%以上、より好ましくは60質量%以上である。
フッ化ビニリデンモノマーと共重合可能なモノマーとしては、限定されないが、例えば、フッ化ビニル、テトラフルオロエチレン、トリフルオロクロロエチレン、ヘキサフルオロプロピレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロアクリル酸、パーフルオロメタクリル酸、及びアクリル酸又はメタクリル酸のフルオロアルキルエステル等のフッ素含有エチレン性不飽和化合物;シクロヘキシルビニルエーテル、及びヒドロキシエチルビニルエーテル等のフッ素非含有エチレン性不飽和化合物;ブタジエン、イソプレン、及びクロロプレン等のフッ素非含有ジエン化合物等が挙げられる。
フッ素系ポリマーのうち、フッ化ビニリデンのホモポリマー、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレンコポリマー、及びフッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマー等が好ましい。より好ましいフッ素系ポリマーは、フッ化ビニリデン/テトラフルオロエチレン/ヘキサフルオロプロピレンコポリマーであり、そのモノマー組成は、通常、フッ化ビニリデン30~90質量%、テトラフルオロエチレン50~9質量%、及びヘキサフルオロプロピレン20~1質量%である。これらのフッ素系ポリマーは、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
熱可塑性ポリマーを合成する際に使用するモノマーとして、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、スルホン酸基、アミド基、及びシアノ基からなる群から選択される少なくとも一つのモノマーを用いることもできる。
ヒドロキシ基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、ペンテンオール等のビニル系モノマーを挙げることができる。
カルボキシル基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、及びイタコン酸等のエチレン性二重結合を有する不飽和カルボン酸;並びにペンテン酸等のビニル系モノマーを挙げることができる。
アミノ基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、メタクリル酸2-アミノエチル等を挙げることができる。
スルホン酸基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、ビニルスルホン酸、メチルビニルスルホン酸、(メタ)アリススルホン酸、スチレンスルホン酸、(メタ)アクリル酸-2-スルホン酸エチル、2-アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、及び3-アリロキシ-2-ヒドロキシプロパンスルホン酸等が挙げられる。
アミド基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、アクリルアミド、メタクリルアミド、N-メチロールアクリルアミド、及びN-メチロールメタクリルアミド等が挙げられる。
シアノ基を有するモノマーとしては、限定されないが、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α-クロロアクリロニトリル、α-シアノエチルアクリレート等を挙げることができる。
熱可塑性ポリマーは、粒子状であることが好ましい。熱可塑性ポリマー粒子の平均粒径は、好ましくは0.01μm以上5μm以下、より好ましくは0.05μm以上3μm以下、更に好ましくは0.1μm以上1μm以下である。
熱可塑性ポリマーの平均粒径は、熱可塑性ポリマーの重合時間、重合温度、原料組成比、原料投入順序、pH等を調整することで制御可能である。
(熱可塑性ポリマーのガラス転移点及び融点)
熱可塑性ポリマーは、好ましくは、ガラス転移点(Tg)又は融点(Tm)が20℃以上100℃以下、より好ましくは25℃以上90℃以下、より好ましくは30℃以上80℃以下、更に好ましくは35℃以上70℃以下である熱可塑性ポリマーを含む。ガラス転移点又は融点が上記範囲内であることにより、熱プレス時に多孔性基材上の熱可塑性ポリマーが変形し易くなり、被着体である電極への接着面積が増加する。それによって、多孔性基材と熱可塑性層の接着性又はセパレータと電極との接着性がより良好になる。
融点及びガラス転移点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定される。具体的には、融点は、DSC曲線におけるベースラインと融解吸熱ピークの傾きの接線との交点により、ガラス転移点は、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定される。
本願明細書において、「ガラス転移」とは、DSCにおいてポリマーの状態変化に伴う熱量変化が吸熱側に生じたものを指す。「ベースライン」とは、試験片に転移及び反応を生じない温度領域のDSC曲線のことを示す。「ピーク」とは、DSC曲線において、曲線がベースラインから離れて、再度ベースラインに戻るまでの部分を示す。「階段状変化」とは、DSC曲線において、曲線がそれまでのベースラインから離れて、新たなベースラインに移行するまでの部分を示す。階段状変化は、ピーク及び階段状変化の組み合わさった形状も含む。「変曲点」とは、階段状変化部分のDSC曲線のこう配が最大になるような点を示す。言い換えれば、変曲点とは、階段状変化部分において上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点と表現することもできる。
熱可塑性ポリマーのTgは、例えば、熱可塑性ポリマーの製造に用いるモノマーの種類及び各モノマーの配合比を変更することにより、適宜調整できる。熱可塑性ポリマーのTgは、その製造に用いられる各モノマーについて一般に示されているそのホモポリマーのTg(例えば、「ポリマーハンドブック」(A WILEY-INTERSCIENCE PUBLICATION)に記載)とモノマーの配合比とから、概略で推定することができる。例えば約100℃のTgのポリマーを与えるスチレン、メチルメタクリレ-ト、及びアクリルニトリル等のモノマーを高比率で配合する熱可塑性ポリマーは、高いTgを有する。また、例えば約-80℃のTgのポリマーを与えるブタジエン、約-50℃のTgのポリマーを与えるn-ブチルアクリレ-ト及び2-エチルヘキシルアクリレ-ト等のモノマーを高い比率で配合した熱可塑性ポリマーは、低いTgを有する。熱可塑性ポリマーのTgは、FOXの式(下記式1)により概算することができる。熱可塑性ポリマーのガラス転移点としては、上記DSCを用いた方法により測定したものを採用する。
1/Tg=W/Tg+W/Tg+…+W/Tg+…W/Tg (1)
{式中、Tg(K)は、コポリマーのTgを示し、Tg(K)は、各モノマーiのホモポリマーのTgを示し、Wは、各モノマーの質量分率を示す}。
熱可塑性ポリマー塗工層は、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移点を少なくとも2つ有していることも好ましい。この場合、熱可塑性ポリマーのTgのうち少なくとも1つが40℃未満であることが好ましく、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは-30℃以上15℃以下の領域に存在する。これにより、塗工層と多孔性基材との密着性により優れ、その結果、セパレータが電極との密着性により優れるので、蓄電デバイスの剛性、及びサイクル特性が向上する。熱可塑性ポリマーと多孔性基材との密着性を向上させ、セパレータのハンドリング性を向上させ、及び/又は熱可塑性層の粉落ちを抑制するために、40℃未満の領域に存在するTgは、-30℃以上35℃以下の領域にのみ存在することがより更に好ましい。
熱可塑性ポリマーがガラス転移点を少なくとも2つ有する場合、熱可塑性ポリマーのTgのうちの少なくとも1つが40℃以上であることが好ましく、より好ましくは45℃以上120℃以下、更に好ましくは50℃以上100℃以下である。これにより、熱可塑性層は、蓄電デバイスの作製のためにセパレータが加熱又は加圧されるときに、熱可塑性ポリマーの少なくとも一部が粒子の状態を維持するため、セパレータのハンドリング性及び電極とセパレータの密着性を保持することができる。
ガラス転移点を少なくとも2つ有する熱可塑性ポリマーは、例えば、2種類以上の熱可塑性ポリマーをブレンドすること、コアシェル構造を備える熱可塑性ポリマーを用いること等によって得ることができる。本明細書において「コアシェル構造」とは、ポリマーが中心部分(コア)と、コアを覆う外殻部分(シェル)との二重構造の形態を有し、かつコアのポリマー組成とシェルのポリマー組成とが異なるポリマーをいう。ポリマーブレンド及びコアシェル構造において、Tgの高いポリマーとTgの低いポリマーとを組み合せることにより、熱可塑性ポリマー全体のガラス転移点を制御し、かつ熱可塑性ポリマー全体に複数の機能を付与することができる。
ポリマーブレンドの場合は、ガラス転移点が40℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移点が40℃未満の領域に存在するポリマーとを、2種類以上ブレンドすることにより、耐ベタツキ性と基材への塗れ性とを両立させることができる。ブレンドする場合の混合比としては、ガラス転移点が40℃以上の領域に存在するポリマーと、ガラス転移点が40℃未満の領域に存在するポリマーとの質量比は、好ましくは0.1:99.9~99.9:0.1、より好ましくは5:95~95:5、更に好ましくは50:50~95:5、より更に好ましくは60:40~90:10である。
コアシェル構造の場合は、シェルのポリマーの種類を変えることにより、他の材料(例えば基材等)に対する接着性及び相溶性を調整することができる。コアのポリマーの種類を変更することにより、例えば、熱プレス後の電極に対するポリマーの接着性を調整することができる。コアシェル構造の場合は、粘性の高いポリマーと弾性の高いポリマーとを組み合わせることにより、粘弾性を制御することもできる。コアシェル構造を有する熱可塑性ポリマーの場合、シェルのポリマーのガラス転移点は、限定されないが、好ましくは40℃以上120℃以下、より好ましくは45℃以上100℃以下である。コアのポリマーのガラス転移点は、限定されないが、好ましくは40℃未満、より好ましくは35℃以下、更に好ましくは-30℃以上35℃以下である。
〈分散媒〉
分散媒は、熱可塑性ポリマーに対して貧溶媒であることが好ましい。分散媒としては、限定されないが、例えば、N-メチルピロリドン、N,N-ジメチルホルムアミド、N,N-ジメチルアセトアミド、水、エタノール、メタノール、トルエン、熱キシレン、塩化メチレン、ヘキサン等が挙げられる。
分散媒は、水、又は水と水溶性有機媒体との混合溶媒であること好ましい。水溶性有機媒体としては、例えば、アセトン、エタノール、及びメタノール等を挙げることができる。分散媒は水を含むことが好ましく、水であることが更に好ましい。スラリーの分散媒として水を用いると、スラリーが基材の内部に浸透しにくくなり、熱可塑性ポリマーが概ね基材の表面上に存在し易くなるため、パターン塗工層を形成する場合、設計したとおりのパターンを形成することがより容易になり、かつ、透過性の低下を効果的に抑制することができるので好ましい。
〈その他の成分〉
本実施形態において、塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマー及び分散媒から成ってもよく、熱可塑性ポリマー及び分散媒以外の添加剤を含んでもよい。添加剤としては、例えば、界面活性剤(「分散剤」とも呼ばれる。)、増粘剤、及びpH調整剤等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば低分子量分散剤、例えば、カルボン酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩を複数有するモノマー(Cii)、及びカルボン酸のアンモニウム塩又はアルカリ金属塩を複数有する非重合性化合物(例えば、アルギン酸ソーダ、及びヒアルロン酸ソーダ)等が挙げられる。
界面活性剤等の分散剤、増粘剤、湿潤剤、消泡剤、酸やアルカリを含むpH調製剤等の各種添加剤を、塗工用スラリーに加えてもよい。これらの添加剤は、溶媒除去や可塑剤抽出の際に除去できるものが好ましいが、リチウムイオン二次電池の使用範囲において電気化学的に安定で、電池反応を阻害しないものであれば、電池内に残存してもよい。好ましい添加剤としては、界面活性剤または増粘剤、更には両方を含むことが好ましい。
界面活性剤としては、例えばイオン解離性の酸基、例えばカルボキシル基、スルホン酸基、アミノ酸基、及びマレイン酸基等、またはイオン解離性の酸塩基、例えばカルボン酸塩基、スルホン酸塩基、及びマレイン酸塩基等を複数含有するものが好ましい。具体的には、イオン解離性有機分散剤としては、ポリカルボン酸塩、ポリアクリル酸塩、ポリメタクリル酸塩がより好ましい。イオン解離性有機分散剤は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
増粘剤としては、例えば、ポリエチレングリコール、ウレタン変性ポリエーテル、ポリアクリル酸、ポリビニルアルコール、及びビニルメチルエーテル-無水マレイン酸共重合体などの合成高分子;カルボメトキシセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、及びヒドロキシプロピルセルロースなどのセルロース誘導体;キサンタンガム、ダイユータンガム、ウェランガム、ジェランガム、グアーガム、及びカラギーナンガムなどの天然多糖類;並びにデキストリン、及びアルファー化でんぷんなどのでんぷん類が挙げられる。増粘剤は、スラリーの粘度、ポットライフ及び粒度分布の観点から適宜選択される。添加剤は1種を単独で又は2種以上を組み合わせても用いられる。
《塗工用スラリーの製造方法》
本実施形態の塗工用スラリーの製造方法は限定されない。例えば、塗工用スラリーは、熱可塑性ポリマー及び分散媒等の成分を任意の手段で混合して、分散媒中に成分を分散させることによって製造することができる。分散方法は、限定されないが、例えば、ボールミル、ビーズミル、遊星ボールミル、振動ボールミル、サンドミル、コロイドミル、アトライター、ロールミル、高速インペラー分散、ディスパーザー、ホモジナイザー、高速衝撃ミル、超音波分散、撹拌羽根等による機械撹拌等が挙げられる。
熱可塑性ポリマーを乳化重合によって合成し、乳化重合によって得られるエマルジョンを塗工用スラリーとして使用することが好ましい。乳化重合の方法及び条件は限定されない。
《蓄電デバイス》
本実施形態の蓄電デバイスは、正極と、負極と、電解質と、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータとを有する。蓄電デバイスは、典型的には、正極と、本実施形態の蓄電デバイス用セパレータと、負極とが、この順に積層した電極積層体、又は電極積層体を捲回した電極捲回体を有する。
蓄電デバイスとしては、限定されないが、例えば、非水系電解液二次電池等の電池、コンデンサー、及びキャパシタが挙げられる。本実施形態の効果による利益がより有効に得られる観点から、蓄電デバイスは、好ましくは電池であり、より好ましくは非水系電解液二次電池であり、更に好ましくはリチウムイオン二次電池である。蓄電デバイスがリチウムイオン二次電池等の非水系電解液二次電池である場合について、好適な態様を以下に説明する。
本実施形態のセパレータの捲回体を用いて、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン二次電池を製造する場合、正極、負極、及び電解液は限定されず、それぞれ既知の材料を用いることができる。
正極としては、正極集電体上に、正極活物質を含む正極活物質層が形成された正極を好適に用いることができる。正極集電体としては、例えばアルミニウム箔等が挙げられる。正極活物質としては、例えば、LiCoO、LiNiO、スピネル型LiMnO、及びオリビン型LiFePO等のリチウム含有複合酸化物等が挙げられる。正極活物質層は、正極活物質に加えて、バインダ、及び導電材等を含んでもよい。
負極としては、負極集電体上に、負極活物質を含む負極活物質層が形成された負極を好適に用いることができる。負極集電体としては、例えば銅箔等が挙げられる。負極活物質としては、例えば、黒鉛質、難黒鉛化炭素質、易黒鉛化炭素質、及び複合炭素体等の炭素材料;シリコン、スズ、金属リチウム、及び各種合金材料等が挙げられる。
電解液としては、非水電解液を用いることができる。非水電解液としては、限定されないが、電解質を有機溶媒に溶解した電解液を用いることができる。有機溶媒としては、例えば、プロピレンカーボネート、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、及びエチルメチルカーボネート等が挙げられる。電解質としては、例えば、LiClO、LiBF、及びLiPF等のリチウム塩が挙げられる。
本実施形態の蓄電デバイスは、イオン透過性、電極との接着性等に優れる本実施形態のセパレータを有するため、レート特性に優れる。
以下、実施例及び比較例により本発明の実施形態を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例及び比較例に限定されるものではない。
《測定及び評価方法》
〈塗工用スラリーの固形分(トルエン不溶分)〉
塗工用スラリーをアルミ皿上に約1g精秤し、このとき量り取った試料の質量をa(g)とした。これを、130℃の熱風乾燥機で1時間乾燥し、乾燥後の試料の乾燥質量をb(g)とした。下記式により塗工用スラリーの固形分を算出した。
固形分=(b/a)×100(%)
〈熱可塑性ポリマーの平均粒径〉
熱可塑性ポリマーの平均粒径は、粒子径測定装置(日機装株式会社製、Microtrac UPA150)を使用して測定した。測定条件は、ローディングインデックス=0.15~0.3、測定時間300秒であった。得られたデータにおける50%粒子径の数値(D50)を平均粒径として記載した。
〈熱可塑性ポリマーのガラス転移点(Tg)及び融点(Tm)〉
熱可塑性ポリマーのガラス転移点及び融点は、示差走査熱量測定(DSC)で得られるDSC曲線から決定した。
熱可塑性ポリマーを含む水分散体(固形分=38~42質量%、pH=9.0)を、アルミ皿に適量取り、130℃の熱風乾燥機で30分間乾燥した。乾燥後の乾燥皮膜約17mgを測定用アルミ容器に詰め、DSC測定装置(島津製作所社製、DSC6220)にて窒素雰囲気下におけるDSC曲線及びDDSC曲線を得た。測定条件は下記のとおりとした。
1段目昇温プログラム:70℃スタート、毎分15℃の割合で昇温。110℃に到達後5分間維持。
2段目降温プログラム:110℃から毎分40℃の割合で降温。-50℃に到達後5分間維持。
3段目昇温プログラム:-50℃から毎分15℃の割合で130℃まで昇温。この3段目の昇温時にDSC及びDDSCのデータを取得。
融点は、DSC曲線におけるベースラインと融解吸熱ピークの傾きの接線との交点により決定した。ガラス転移点は、DSC曲線における低温側のベースラインを高温側に延長した直線と、ガラス転移の階段状変化部分の変曲点における接線との交点により決定した。
〈熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度〉
熱可塑性ポリマー又は熱可塑性ポリマーを分散させた溶液を130℃のオーブン中に1時間静置した後、乾燥させた熱可塑性ポリマーを0.5gになるように切り取り、エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒10gと一緒に50mLのバイアル瓶に入れ、3時間浸透させた後、サンプルを取り出し、上記混合溶媒にて洗浄し、重量(Wa)を測定した。その後、150℃のオーブン中に1時間静置したあと重量(Wb)を測定し、以下の式より熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度を測定した。
熱可塑性ポリマーの電解液に対する膨潤度(倍)=(Wa-Wb)÷(Wb)
〈熱可塑性ポリマーの粘度平均分子量(Mv)〉
熱可塑性ポリマーについて、ASRM-D4020に準拠して、デカリン溶剤中、135℃における極限粘度[η]を求めた。この[η]値を用いて、下記数式の関係から熱可塑性ポリマーの粘度平均分子量(Mv)を算出した。
ポリエチレンの場合:[η]=0.00068×Mv0.67
ポリプロピレンの場合:[η]=1.10×Mv0.80
〈基材の膜厚〉
基材から10cm×10cm角の試料を切り取り、格子状に9箇所(3点×3点)の測定箇所を選んで、微小測厚器(株式会社東洋精機製作所 タイプKBM)を用いて、室温23±2℃で、各測定箇所の膜厚を測定した。得られた9個の測定値の平均値を、基材の膜厚として算出した。
〈基材の気孔率〉
基材から10cm×10cm角の試料を切り取り、その体積(cm)及び質量(g)を求めた。これらの値を用い、基材の密度を0.95(g/cm)として、以下の式により気孔率を計算した:
気孔率(%)=(1-質量/体積/0.95)×100
〈基材の透気度〉
基材の透気度は、一般的な多孔性基材の透気度と同様に、JIS P-8117に準拠して測定される透気抵抗度である。透気抵抗度は、単位面積及び単位圧力差当たり、規定された体積の空気が透過するのに要する時間であり、100mL当たりの時間(秒)で表される。東洋精器(株)製のガーレー式透気度計G-B2(商標)により測定した透気抵抗度を透気度(s-1)とした。
〈基材の突刺強度〉
カトーテック製のハンディー圧縮試験器KES-G5(商標)を用いて、開口部の直径11.3mmの試料ホルダーで基材(ポリオレフィン微多孔膜)を固定した。次に固定されたポリオレフィン微多孔膜の中央部を、針先端の曲率半径0.5mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、最大突刺荷重として生の突刺強度(g)を得た。
〈熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付〉
10cm×10cm角の試料を基材(ポリオレフィン微多孔膜又は、ポリオレフィン微多孔膜+無機フィラー多孔層)から切り取り、(株)島津製作所製の電子天秤AEL-200を用いて重量を測定した。得られた重量を100倍することで1m当りの基材膜の目付け(g/m)を算出した。次に、10cm×10cm角の試料をセパレータ(熱可塑性ポリマー層+基材)から切り取り、(株)島津製作所製の電子天秤AEL-200を用いて質量を測定した。得られた質量を100倍することにより、1m当りのセパレータの目付(g/m)を算出した。1m当りのセパレータの目付(g/m)から1m当りの基材の目付(g/m)を減算することにより、1m当りの熱可塑性ポリマー層の目付(熱可塑性ポリマー層の基材に対する担持量、g/m)を算出した。
〈捲回体の内層領域の突刺強度〉
IMADA製ZTSを用いて、捲回したセパレータの側面が上になるように設置し、固定した。次に、固定されたセパレータのコア側から10mm以内の部分を、針先端の曲路率0.75mm、突刺速度2mm/secで、25℃雰囲気下にて突刺試験を行うことにより、針の先端が10mm刺さるまでの最大突刺荷重を突刺強度として得た。
〈捲回体の内層領域の圧力〉
最内層となるセパレータの上面に感圧素子(TEKSCAN社製 型番A201-25)を取り付け、その後セパレータを捲回し、捲回体を作製した。その後、23±1℃の環境下にて、抵抗測定機(三和電気計器株式会社 型番:デジタルマルチメータCD771型)にて抵抗値を測定した。
抵抗値から圧力への換算については、プレス機を用いて、上記感圧素子を異なる圧力でプレスして得られた抵抗値から検量線を作成し、その検量線を用いて算出した。
〈塗工面積〉
熱可塑性ポリマー被覆層によって被覆されるポリオレフィン微多孔膜の面積割合は、走査型電子顕微鏡(SEM)「型式S-4800、HITACHI社製」を用いて測定した。蓄電デバイス用セパレータをオスミウム蒸着し、加速電圧1.0kV、50倍にて観察して得られた面積を用いて、以下の式から面積割合を算出した。なお、SEM画像にてポリオレフィン微多孔膜表面が見えない領域を熱可塑性ポリマー領域とした。上記測定を3回行い、その平均値を各サンプルの面積割合とした。
熱可塑性ポリマーの面積割合(%)=熱可塑性ポリマーの面積÷画像全体の面積×100
〈捲回体のハンドリング性(最内層の剥離強度)〉
捲回体のハンドリング性は、最内層の剥離強度で評価した。捲回体をコアに固着していない最内層まで繰出していき、最も内側のセパレータと、この最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとが重なった状態で切り出してサンプルを得た。得られたサンプルは、MD方向に75mm、TD方向に20mmに切り出して測定用サンプルを作製した。測定用サンプルはセパレータ間の90°剥離強度を、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、引張速度50mm/分で測定し、以下の基準で評価した。
◎:最内層の剥離強度が3.0mN/mm未満
○:最内層の剥離強度が3.0mN/mm以上7.0mN/mm未満
△:最内層の剥離強度が7.0mN/mm以上10.0mN/mm未満
×:最内層の剥離強度が10.0mN/mm以上
〈電池初期不良率の評価〉
(電池の作製)
本評価では、下記のとおりに円筒型リチウムイオン電池を作製し、それを用いて評価を行った。
厚み15μmのアルミニウム箔集電体に、正極活物質としてリチウム遷移金属複合酸化物を含む正極合剤をほぼ均等に塗工し、これを幅51mm、長さ約750mmの帯状に切断し、正極を作製した。
厚み10μmの銅箔集電体に、負極活物質としてリチウムイオンを可逆的に吸蔵、放出可能な黒鉛等から成る炭素粉末材料を含む負極合剤をほぼ均等に塗工し、これを幅54mm、長さ約800mmの帯状に切断し、負極を作製した。
これら帯状の正極および負極には、捲回後に所定の位置に導電リードが来るように、電極端部の電極合剤(正極合剤又は負極合剤)を塗っていない集電体に、電流を流すための導電リードを超音波溶接機で取り付けた。
実施例及び比較例のセパレータを、幅57mm、長さ約900mmの帯状に切断して用いた。
これら部材を、直径約4mmで半割れ構造の捲回軸を備える捲回装置を使用して、以下のように積層及び捲回した。ロール状に巻かれた2本のセパレータを引きだし、捲回軸の半割れ部分に挟み込んで捲回軸を数回回転させて巻取り、セパレータとセパレータとの間に正極および負極を挿入して捲回した。正極、負極およびセパレータには、捲回軸の回転方向と反対方向に0.5~1.5kgf/cm(0.05~0.15MPa)の張力を加え、捲回中の巻きずれ又は緩み発生を防止した。正極および負極を巻き終えた後、さらにセパレータを数回巻いて切断した。
以上の様に作製した捲回体に対して、負極側を下に、正極側を上にして上下に絶縁板を取り付け、表面がニッケルメッキされた電池缶内に収納した。電極の中央の穴に溶接抵抗機の電極棒を挿入し、電池缶の缶底に負極リードを溶接した。次に、電池缶の上部に電池蓋を取り付けるための溝を付け、その溝の上側にガスケットを入れた後、正極リードと電池蓋を溶接した。このようにして得られたアセンブリを真空乾燥機に入れ、60℃の真空雰囲気で約16時間保持し、付着している水分を除去した。
次に、乾燥されたアセンブリをアルゴンガス雰囲気のグローブボックス内に移し、所定量の電解液を注入した。電解液として、エチレンカーボネート、ジメチルカーボネート、エチルメチルカーボネート等の混合溶媒中に六フッ化燐酸リチウムを1mol/Lの濃度で溶解したものを用いた。電解液を注入後、電池缶上部のガスケットに電池蓋を軽く入れ、かしめ機に装着して電池缶をかしめて密封した。
(電池初期不良率の評価)
実施例又は比較例で得られたセパレータを用いて上記のように電池を5個作製し、初期充放電効率から下記の基準で不良率を評価した。
電池の不良率(%)=[初期充放電効率が85%以下の電池の個数]/評価電池(5個)×100
電池の不良率は下記基準で評価した。評価結果を表3に記載した。
◎:電池の不良率が0%以上20%未満
○:電池の不良率が20%以上40%未満
△:電池の不良率が40%以上60%未満
×:電池の不良率が60%以上
〈基材との接着性〉
セパレータの熱可塑性ポリマー被覆層に対し、幅12mm×長さ100mmのテープ(3M社製)を貼りつけた。テープをサンプルから50mm/分の速度で剥がすときの力を、90°剥離強度測定器(IMADA社製、製品名IP-5N)を用いて測定した。得られた測定結果に基づいて、下記評価基準で接着力を評価した。
○:6gf/mm以上
△:4gf/mm以上6gf/mm未満
×:2gf/mm未満
〈電極との接着性〉
セパレータと、被着体としての正極(enertech社製、正極材料:LiCoO、導電助剤:アセチレンブラック、バインダ:PVDF、LiCoO/アセチレンブラック/PVDF(重量比)=95/2/3、L/W:両側について36mg/cm、密度:3.9g/cc、Al集電体の厚み:15μm、プレス後の正極の厚み:107μm)とを、それぞれ幅15mm及び長さ60mmの長方形状に切り取った。セパレータの熱可塑性ポリマー層と正極活物質とが相対するようにこれらを重ね合わせて積層体を得た。得られた積層体を、以下の条件でプレスした。
プレス圧:1MPa
温度:100℃
プレス時間:5秒
プレス後の積層体について、(株)イマダ製のフォースゲージZP5N及びMX2-500N(製品名)を用いて、電極を固定し、セパレータを把持して引っ張る方式によって、剥離速度50mm/分にて90°剥離試験を行い、剥離強度を調べた。このとき、上記の条件で行った長さ40mm分の剥離試験における剥離強度の平均値を剥離強度とした。電極との接着性を以下の基準で評価した。
評価基準
◎:40N/m以上
○:20N/m以上40N/m未満
△:5N/m以上20N/m未満
×:5N/m未満
〈レート特性〉
a.正極の作製
正極活物質としてニッケル、マンガン、コバルト複合酸化物(NMC)(Ni:Mn:Co=1:1:1(元素比)、密度4.70g/cm)を90.4質量%、導電助材としてグラファイト粉末(KS6)(密度2.26g/cm、数平均粒子径6.5μm)を1.6質量%及びアセチレンブラック粉末(AB)(密度1.95g/cm、数平均粒子径48nm)を3.8質量%、並びにバインダとしてポリフッ化ビニリデン(PVDF)(密度1.75g/cm)を4.2質量%の比率で混合し、これらをN-メチルピロリドン(NMP)中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを、正極集電体となる厚さ20μmのアルミニウム箔の片面にダイコーターを用いて塗布し、130℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機を用いて圧縮成形することにより、正極を作製した。この時の正極活物質塗布量は109g/mであった。
b.負極の作製
負極活物質としてグラファイト粉末A(密度2.23g/cm、数平均粒子径12.7μm)を87.6質量%及びグラファイト粉末B(密度2.27g/cm、数平均粒子径6.5μm)を9.7質量%、並びにバインダとしてカルボキシメチルセルロースのアンモニウム塩1.4質量%(固形分換算)(固形分濃度1.83質量%水溶液)及びジエンゴム系ラテックス1.7質量%(固形分換算)(固形分濃度40質量%水溶液)を精製水中に分散させてスラリーを調製した。このスラリーを負極集電体となる厚さ12μmの銅箔の片面にダイコーターで塗布し、120℃において3分間乾燥した後、ロールプレス機で圧縮成形することにより、負極を作製した。この時の負極活物質塗布量は5.2g/mであった。
c.非水電解液の調製
エチレンカーボネート:エチルメチルカーボネート=1:2(体積比)の混合溶媒に、溶質としてLiPFを濃度1.0mol/Lとなるように溶解させることにより、非水電解液を調製した。
d.電池組立
各実施例及び比較例で得られたセパレータを24mmφ、正極及び負極をそれぞれ16mmφの円形に切り出した。正極と負極の活物質面とが対向するように、負極、セパレータ、正極の順に重ね、プレス又はヒートプレスをして、蓋付きステンレス金属製容器に収容した。容器と蓋とは絶縁されており、容器は負極の銅箔と、蓋は正極のアルミニウム箔と、それぞれ接していた。この容器内に上記非水電解液を0.2ml注入して密閉することにより、電池を組み立てた。
e.レート特性の評価
上記d-2.で組み立てた簡易電池を、25℃において、電流値3mA(約0.5C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を3mAから絞り始めるという方法により、電池作成後の最初の充電を合計約6時間行った。その後、電流値3mAで電池電圧3.0Vまで放電した。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値6mAで電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を1C放電容量(mAh)とした。
次に、25℃において、電流値6mA(約1.0C)で電池電圧4.2Vまで充電した後、4.2Vを保持するようにして電流値を6mAから絞り始めるという方法により、合計約3時間充電を行った。その後、電流値60mA(約10C)で電池電圧3.0Vまで放電した時の放電容量を10C放電容量(mAh)とした。
そして、1C放電容量に対する10C放電容量の割合を算出し、この値をレート特性とした。
レート特性(%)=(10C放電容量/1C放電容量)×100
評価基準
◎:50%以上
○:30%以上50%未満
△:20%以上30%未満
×:20%未満
《熱可塑性ポリマー粒子の合成》
[製造例1B](アクリルエマルジョンの塗工液の製造)
撹拌機、還流冷却器、滴下槽及び温度計を取りつけた反応容器に、イオン交換水70.4部と「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)0.32部と「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)0.32部を投入し、反応容器内部温度を80℃に昇温し、80℃の温度を保ったまま、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)を7.5部添加した。
過硫酸アンモニウム水溶液(APS)を添加した5分後に、メタクリル酸メチル(MMA)55.5部、アクリル酸n-ブチル(BA)34.9部、アクリル酸2-エチルヘキシル(EHA)2部、メタクリル酸(MAA)0.1部、アクリル酸(AA)0.1部、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEMA)2部、アクリルアミド(AM)5部、メタクリル酸グリシジル(GMA)0.4部、トリメチロールプロパントリアクリレート(A-TMPT、新中村化学工業株式会社製)0.4部、「アクアロンKH1025」(登録商標、第一工業製薬株式会社製25%水溶液)2.6部、「アデカリアソープSR1025」(登録商標、株式会社ADEKA製25%水溶液)2.6部、p-スチレンスルホン酸ナトリウム(NaSS)0.05部、過硫酸アンモニウム(2%水溶液)7.5部、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン0.3部、イオン交換水52部の混合物をホモミキサーにより5分間混合させて作製した乳化液を、滴下槽から反応容器に150分かけて滴下した。
乳化液の滴下終了後、反応容器内部温度を80℃に保ったまま90分間維持し、その後室温まで冷却した。得られたエマルジョンを、水酸化アンモニウム水溶液(25%水溶液)でpH=9.0に調整し、熱可塑性ポリマー含有塗布液1Bを得た。得られた1Bについて、上記方法により評価した。得られた結果を表2に記す。
〈水分散体2B~4B〉
原材料の種類及び配合比を表2に示すように変更した以外は、水分散体1Bと同様にして、水分散体2B~4Bを得た。
〈水分散体5B、6B〉
シードポリマー、モノマー及びその他使用原料の組成を、それぞれ、表2に記載のとおりに変更する以外は、原料ポリマー(水分散体)1Bと同様にして、多段重合によって各コポリマーラテックスを得た。得られた原料ポリマー(水分散体)について、それぞれ、上記方法により評価した。得られた結果を表2に示す。
得られた水分散体1B~6Bの共重合体について、上記方法により、粒子径、及びガラス転移点(Tg)を測定した。得られた結果を表2に示す。なお、表中、原材料の組成は質量基準である。
《ポリオレフィン多孔性基材の製造》
〈基材1A〉
Mvが70万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが30万であるホモポリマーの高密度ポリエチレンを45質量部と、
Mvが40万であるホモポリマーのポリプロピレン5質量部と、
を、タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドした。
得られたポリオレフィン混合物99質量部に酸化防止剤としてテトラキス-[メチレン-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタンを1質量部添加し、再度タンブラーブレンダーを用いてドライブレンドすることにより、混合物を得た。
得られた混合物を、窒素雰囲気下で二軸押出機へフィーダーにより供給した。
また、流動パラフィン(37.78℃における動粘度7.59×10-5/s)を押出機シリンダーにプランジャーポンプにより注入した。
押し出される全混合物中の、流動パラフィンの割合が65質量部、及びポリマー濃度が35質量部となるように、フィーダー及びポンプの運転条件を調整した。
次いで、それらを二軸押出機内で230℃に加熱しながら溶融混練し、得られた溶融混練物を、T-ダイを経て表面温度80℃に制御された冷却ロール上に押し出し、その押出物を冷却ロールに接触させ成形(cast)して冷却固化することにより、シート状成形物を得た。
このシートを同時二軸延伸機にて、温度112℃において倍率7×6.4倍に延伸した。その後、延伸物を塩化メチレンに浸漬して、流動パラフィンを抽出除去後、乾燥し、更にテンター延伸機を用いて温度130℃において横方向に2倍延伸した。
その後、この延伸シートを幅方向に約10%緩和して熱処理を行い、ポリオレフィン微多孔膜1Aを得た。得られた基材1Aの物性を表1に示す。
〈基材2A〉
水酸化酸化アルミニウム(平均粒径1.0μm)を96.0質量部とアクリルラテックス(固形分濃度40%、平均粒径145nm、最低成膜温度0℃以下)4.0質量部、及びポリカルボン酸アンモニウム水溶液(サンノプコ社製 SNディスパーサント5468)1.0質量部を100質量部の水に均一に分散させて塗布液を調製し、ポリオレフィン微多孔膜1Aの表面にマイクログラビアコーターを用いて塗布した。60℃にて乾燥して水を除去し、多孔層を2μmの厚さで形成して、ポリオレフィン微多孔膜2Aを得た。得られたポリオレフィン微多孔膜2Aを製造例1Aと同様に上記方法により評価した。得られた結果を表1に示す。
[実施例1]
表2に記載の原料ポリマー1Bを表1に記載のポリオレフィン微多孔膜1Aの片面の表面にグラビアコーターを用いて塗工液を塗布し、60℃にて乾燥して塗工液の水を除去した。さらに、もう片面も同様に塗工液を塗布し、再度乾燥させることにより、ポリオレフィン微多孔膜の両面に熱可塑性ポリマーを有するセパレータの捲回体(実施例1)を得た。得られたセパレータについて、上記方法により、評価した。製造条件及び得られた結果を表3に示す。
[実施例2~5、比較例1~4]
また、同様にして、実施例2~10、比較例1~4の捲回体を得た。
[実施例6、7]
原料ポリマー3Bと4Bの固形分比率が3B:4B=80:20となるようにスラリーを調整し、それをポリオレフィン微多孔膜1Aに塗工した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。製造条件及び得られた結果を表3に示す。
[実施例8]
原料ポリマー6Bと4Bの固形分比率が6B:4B=80:20となるようにスラリーを調整し、それをポリオレフィン微多孔膜1Aに塗工した以外は、実施例1と同様にセパレータを作製した。製造条件及び得られた結果を表3に示す。
[実施例9]
ポリオレフィン微多孔膜2Aに塗工した以外は、実施例8と同様にセパレータを作製した。製造条件及び得られた結果を表3に示す。
[実施例10]
ドット径200μm、塗工面積40%となるようにドット塗工した以外は、実施例9と同様にしてセパレータを作製した。製造条件及び得られた結果を表3に示す。
Figure 0007017869000001
Figure 0007017869000002
Figure 0007017869000003
本発明のセパレータの捲回体は、蓄電デバイス、例えばリチウムイオン電池の製造に用いることができる。
10 コア
20 セパレータ
21 最内層
22 最外層
23 内層領域
100 セパレータの捲回体

Claims (7)

  1. セパレータの捲回体であって、前記セパレータは、基材の少なくとも片面に塗工された熱可塑性ポリマー塗工層を有し、捲回された前記セパレータの最内層から1cm以下の領域における前記捲回体の側面の突刺強度が10N以上100N以下であり、
    前記基材が、ポリオレフィン樹脂を主成分として含むポリオレフィン多孔性基材であり、
    前記熱可塑性ポリマー塗工層は、
    (i)ガラス転移点(Tg)又は融点(Tm)が20℃以上100℃以下である熱可塑性ポリマーを少なくとも1種含み、かつ/または
    (ii)少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃未満の領域に存在し、前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃以上の領域に存在し、
    前記熱可塑性ポリマーが、含フッ素樹脂、含フッ素樹脂を含むコポリマー、ジエン系ポリマー、ジエン系ポリマーを含むコポリマー、ジエン系ポリマーの水素化物、アクリル系ポリマー、アクリル系ポリマーを含むコポリマー、及びアクリル系ポリマーの水素化物からなる群から選択される少なくとも一つを含む、捲回体。
  2. 捲回された前記セパレータの最も内側のセパレータと前記最も内側のセパレータの上に捲回されたセパレータとの間における前記捲回体の圧力が0.3MPa以上2.5MPa以下である、請求項1に記載の捲回体。
  3. 前記熱可塑性ポリマー塗工層の塗工目付が0.05g/m以上2g/m以下である、請求項1又は2に記載の捲回体。
  4. 前記熱可塑性ポリマーが共役ジエン系ポリマー、アクリル系ポリマー、及びフッ素系ポリマーの少なくとも一つを含む請求項1~3のいずれか1項に記載の蓄電デバイス用セパレータの捲回体。
  5. 前記熱可塑性ポリマー塗工層の面積占有率が10%以上80%以下である、請求項1~4のいずれか1項に記載の捲回体。
  6. 前記基材上に、前記熱可塑性ポリマー塗工層が存在する部分と、前記熱可塑性ポリマー塗工層が存在しない部分とが海島状に存在し、
    前記熱可塑性ポリマー塗工層は、少なくとも2種の熱可塑性ポリマーを含み、全体としてガラス転移温度を少なくとも2つ有しており、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃未満の領域に存在し、
    前記ガラス転移温度のうち少なくとも一つは40℃以上の領域に存在する、
    請求項1~5のいずれか1項に記載の捲回体。
  7. 前記熱可塑性ポリマー塗工層の塗工パターンがドットパターンである、請求項1~6のいずれか1項に記載の捲回体。
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