JP7016365B2 - 転動装置 - Google Patents

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Description

本発明は、転動装置に関するものである。
従来から用いられている機械要素として、例えば、ボールねじやリニアガイド、直動ベアリング、ボールスプライン等といった転動装置が知られている。かかる転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、内方部材の前記軌道面に対向する軌道面を有して内方部材の外側に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された複数の転動体と、を有することにより、外方部材が内方部材の軸線方向又は周方向に往復運動自在又は回転運動自在とされる装置である。
この種の転動装置は、内方部材と外方部材との間に配設される複数の転動体が繰り返し転がり運動を行うことになるので、これら転動装置の構成部材には繰り返し接触応力が加わることとなる。そのため、内方部材、外方部材、および転動体を構成する材料には、一般的に、疲労寿命や耐摩耗性等に優れた金属材料や樹脂材料等が採用されている。
また、この種の転動装置は、クリーンルーム、半導体製造装置、液晶パネル製造装置、食品加工装置等のように清浄な環境を必要とする用途や真空環境下において用いられることがあるため、内方部材、外方部材、および転動体を構成する材料に対しては、固体潤滑剤からなる被膜を形成して用いられることがあった。例えば、下記特許文献1には、一方の移動部材と他方の移動部材とが、それぞれの案内面に接する転動体を介して相対的に直線移動する転動装置において、前記両移動部材又は転動体の少なくとも一つに対して、その表面に無電解ニッケル被膜を介してフッ素樹脂被膜を成膜する技術が開示されている。そして、下記特許文献1の記載によれば、転動装置の構成部材に対して無電解ニッケル被膜を介してフッ素樹脂被膜を成膜することで、半導体製造装置や液晶パネル製造装置、食品加工装置等の清浄な雰囲気を必要とする環境下等において好適に使用でき、また、真空、高温、腐食性雰囲気環境下においても使用することができるとされている。
しかし、下記特許文献1に記載の技術は、金属材料等の基材に対して無電解ニッケル被膜を形成した後に、さらにフッ素樹脂被膜を成膜するものであり、製造工程が多くコストの嵩む技術である。特許文献1にも記載されているが、元来、無電解ニッケル被膜や無電解ニッケル-リン被膜には、膜自体に防錆作用があり、耐食性の向上効果が得られることから、無電解ニッケル被膜や無電解ニッケル-リン被膜のみを施すことで、転動疲労性と防錆性とを兼ね備えた転動装置を実現できれば、産業上の利用価値は非常に高いものとなる。しかしながら、従来公知の通り、無電解ニッケル被膜には、微細なクラックや空孔が存在しているため、このような状態の皮膜を転動装置の構成部材に用いた場合には、繰り返しの接触応力によって皮膜の剥離等が発生したり、クラックや空孔を起点として錆が発生したりするので、転動装置としての性能を十分に発揮することができなかった。このことからも分かる通り、転動装置の摩耗特性や潤滑寿命特性を好適に向上させることのできるコーティング被膜の形成技術は、従来未完成であった。
一方、金属やプラスチックの切削や成形過程に使用する工具には、有効寿命と処理条件の向上のためにコーティングすることが多く、このようなコーティングには、CVDやPVDのような公知の方法が用いられている。
特開平10-325414号公報
しかしながら、構成部材に対して繰り返し接触応力が加わることとなる転動装置において、その構成部材に炭化タングステン(WC)と炭素(C)の混合物からなるコーティングを施すことは従来実施されておらず、そのコーティングの最適条件は未だ明らかとなっていなかった。特に、転動装置では、繰り返し加わる接触応力に応じた高い硬度を備えながらも、母材に対する密着力に優れるとともに弾性変形への追従性が高く、さらには表層の割れ等の不具合が発生し難いコーティングの実現が求められており、そのような様々な要求品質を満足するコーティング技術は実現されていなかった。
本発明は、上述した従来技術に存在する種々の課題に鑑みて成されたものであって、その目的は、構成部材にコーティング層を形成することで金属接触を防止し、摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させた転動装置を実現することにある。
本発明に係る転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有して前記内方部材の外側に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された転動体と、を備える転動装置であって、前記内方部材が有する軌道面、前記外方部材が有する軌道面、および前記転動体のうちの少なくとも1つが、金属系材料からなる母材と、前記母材の表面側に形成された下地層と、前記下地層の表面側に形成された機能層と、によって構成されており、前記機能層が、WC層とC層を交互に積層した積層構造を有する複合層として構成され、前記機能層を構成する複合層の最表面が、C層によって構成され、前記下地層は、主成分がW(タングステン)によって構成されるとともに、前記母材との接続面から前記機能層との接続面に向けてC成分が段階的に増加するように構成されており、前記機能層における前記下地層との接続面が、WC層によって構成されていることを特徴とするものである。また、本発明に係る他の転動装置は、外面に軌道面を有する内方部材と、前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有して前記内方部材の外側に配置された外方部材と、前記両軌道面間に転動自在に配置された転動体と、を備える転動装置であって、前記内方部材が有する軌道面、前記外方部材が有する軌道面、および前記転動体のうちの少なくとも1つが、金属系材料からなる母材と、前記母材の表面側に形成された下地層と、前記下地層の表面側に形成された機能層と、によって構成されており、前記機能層が、WC層とC層を交互に積層した積層構造を有する複合層として構成され、前記機能層を構成する複合層の最表面が、C層によって構成され、前記下地層における前記母材との接続面から前記機能層の表面に向けて被膜硬さが増加するように構成されるとともに、前記機能層を構成する複合層の最表面であるC層の被膜硬さが表面に向けて漸減するように構成されることを特徴とするものである。
本発明によれば、構成部材にコーティング層を形成することで金属接触を防止し、摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させた新たな転動装置を実現することができる。
図1は、本発明に係るコーティング層の具体的内容を説明するための図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層の断面構成の一部を示した写真図である。 図2は、油潤滑荷重耐久試験の結果を示すグラフ図であり、縦軸に示された各試験品の試験結果が、横軸に示された走行距離として表されている。 図3は、無潤滑荷重耐久試験の結果を示すグラフ図であり、縦軸に示された各試験品の試験結果が、横軸に示された走行距離比として表されている。 図4は、本発明に係る下地層の変形形態を説明するための図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層を構成する下地層の膜厚方向でのC成分率の変化を示すグラフ図である。 図5は、本発明に係るコーティング層の被膜硬さの最適設計条件の一つを例示した図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層における膜厚方向での硬さ値の設計例を示すグラフ図である。 図6は、本実施形態に係る転動装置をリニアガイド装置として構成した場合の一形態を例示する外観斜視図である。 図7は、図6で示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。 図8は、本実施形態に係る転動装置をボールねじ装置として構成した場合を例示する図である。 図9は、本実施形態に係る転動装置をスプライン装置として構成した場合を例示する図である。 図10は、本実施形態に係る転動装置を回転ベアリング装置として構成した場合の一形態を例示する部分縦断斜視図である。 図11は、図10に示す回転ベアリング装置の縦断面を示す図である。 図12は、本実施形態に係る転動装置を滑りねじ装置として構成した場合の一形態を例示する外観斜視図である。 図13は、本発明の多様な適用事例を説明するための図であり、リニアモーションガイドとボールねじが組み合わされて一体構造となっている形式の転動装置を示す外観斜視部分断面図である。
以下、本発明を実施するための好適な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
まず、図1を用いて、転動装置の構成部材に適用可能な本発明に係るコーティング層の具体的な内容について、説明を行う。ここで、図1は、本発明に係るコーティング層の具体的内容を説明するための図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層の断面構成の一部を示した写真図である。なお、本発明に係るコーティング層は、外面に軌道面を有する内方部材と、内方部材の軌道面に対向する軌道面を有して内方部材の外側に配置された外方部材と、両軌道面間に転動自在に配置された転動体と、を備える転動装置に対して適用されるものであって、内方部材が有する軌道面、外方部材が有する軌道面、および転動体のうちの少なくとも1つが、金属系材料からなる母材と、母材の表面側に形成された下地層と、下地層の表面側に形成された機能層と、によって構成されており、その具体的な実施形態例については、後述することとする。
図1の分図(a)にて示すように、本発明に係るコーティング層は、金属系材料からなる母材11と、母材11の表面側に形成された下地層12と、下地層12の表面側に形成された機能層13と、によって構成されている。
母材11については、転動装置に対して一般的に用いられている金属材料を想定しており、例えば、SUJ2等といった軸受鋼や高炭素鋼、工具鋼などから構成されている。ただし、本発明に係る母材の適用範囲は、このような鉄系金属に限られるものではなく、チタン合金やアルミニウム合金などといった非鉄系の金属合金も含むものである。
下地層12は、例えばW(タングステン)によって構成されており、母材11と後述する機能層13とを好適に接続する層となっている。
機能層13は、炭化タングステンからなるWC層と、炭素からなるC層とを交互に積層した積層構造を有する複合層として構成されている。なお、本発明に係るC層は、DLC(Diamond-like Carbon)からなる被膜層として構成されることを想定しており、非常に硬度の高い単層構造からなる被膜層を構成するものである。一方、DLCからなるC層と交互に積層されるWC層は、DLCからなるC層に比べて硬度が低く軟らかい被膜層を構成するものである。したがって、硬度の高いC層と軟らかいWC層とを交互に積層することで、機能層13全体として、弾性変形への追従性が高いとともに、膜の割れ発生がし難い非常に好適なコーティング層となっている。
また、本発明に係るコーティング層は、機能層13を構成する複合層の最表面が、C層によって構成されている。コーティング層を形成される転動装置の構成部材は、繰返しの応力を受けるために、高い表面硬さを付与することが要求されるものである。そこで、本発明では、積層構造からなる機能層13を構成する複合層の最表面にC層が配置されるように構成することで、非常に硬度の高い単層構造からなる被膜層を構成部材の最表面に形成することが可能となる。かかる構成によって、転動装置に要求される応力荷重への耐久性が発揮され、摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させることが可能となっている。
さらに、本発明に係るコーティング層では、上述したように、下地層12はW(タングステン)によって構成されているが、機能層13における下地層12と機能層13との接続面については、WC層となるように構成されている。下地層12の表面側に形成される機能層13における下地層12との接続面が、C層に比べて硬度が低く軟らかい被膜層を構成するWC層であり、また、下地層12を構成するW(タングステン)と同系統の金属材料であるWC層とすることで、母材11と下地層12、機能層13とが高い密着力で結合されることとなる。つまり、本発明に係るコーティング層は、非常に剥離し難いコーティング層であるということができる。したがって、本発明に係るコーティング層によれば、摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させた新たな転動装置を実現することが可能となる。
なお、上述した本発明の構成のうち、機能層13を構成するWC層のW(タングステン)組成比については、
0重量%<w≦30重量%
なる不等式を満たす条件で構成されることが好ましい。この0重量%<w≦30重量%からなる条件式は、発明者らによって行われた実験によって見出されたものであり、当該条件式を満たすことで、機能層13におけるW(タングステン)組成比の最適化が実現するので、転動装置の軌道面において摩耗し難い膜表面を形成するために有効な条件となっている。
さらに、本発明に係るコーティング層を構成する機能層13としての複合層の硬さ値については、ビッカース硬さHvが800~1500となるように構成されている。かかる条件値を見出すに当たって発明者らが行った実験では、複合層の硬さ測定はナノインデンターで行われており、本発明に係るコーティング層を構成する機能層13は、ビッカース硬さHvで800~1500に相当する12GPa~17GPaという値になるように構成されている。機能層13を構成する複合層に対してこのような硬さ値の条件が設定されているのは、ビッカース硬さHvが800(12GPa)未満だと耐摩耗性に課題があり、ビッカース硬さHvが1500(17GPa)より大きいとコーティング割れが発生してしまうからである。機能層13を構成する複合層の硬さ値について、ビッカース硬さHvが800~1500となるように構成することで、高い面圧やせん断力が発生する転動装置に対して好適に用いることのできるコーティング層を実現することが可能となっている。
以上、発明者らが見出した、本発明に係るコーティング層の好適な形成条件についての説明を行った。次に、上述した本発明に係るコーティング層の形成条件を満たすことで得られる効果について、発明者らは検証実験を行っているので、その結果を説明する。
まず、発明者らは、油潤滑を実施した条件下での転動装置の荷重耐久性能についての検証実験を行った。この油潤滑荷重耐久試験は、実験室内の常温環境下に設置された荷重耐久試験機を用い、この試験機に対してリニアガイドをセットして行った。リニアガイドは、構成部材に対して本発明に係るコーティング層を種々の条件値で形成したものと、従来技術である本発明に係るコーティング層の無い既存品を用意し、リニアガイドを構成する軌道レールに対して移動ブロックを繰り返し往復運動させることによって両者の耐久性能を比較することとした。
なお、油潤滑荷重耐久試験のより具体的な条件としては、試験品に比較例1としての既存品と、比較例2として、機能層13の硬さ値が10GPaのもの、さらに本発明の実施形態として機能層13の硬さ値が12、15、17GPaの実施例1、2、3の、5種類を用意した。この5種類の試験品に対して、潤滑グリースを初期封入し、その後、0.5cm/minの条件で給油し続けた。リニアガイドを構成する移動ブロックに対しては、ラジアル荷重12.6kNの一定荷重を常時負荷し、軌道レールに対する移動ブロックの相対移動条件として、最高速度60m/min、加減速度9.8m/s(1.0G)、ストローク350mmの各条件値を設定した。かかる条件下でリニアガイドを構成する軌道レールに対して移動ブロックを繰り返し往復運動させ、リニアガイドが性能を維持しながら往復運動を行った走行距離を記録し、その走行距離によって評価を行った。
以上説明した試験条件にて得られた結果を、図2に示す。ここで、図2は、油潤滑荷重耐久試験の結果を示すグラフ図であり、縦軸に示された各試験品の試験結果が、横軸に示された走行距離として表されている。
図2から明らかな通り、今回実施された油潤滑荷重耐久試験では、すべての実施例で既存品を上回る結果が得られている。しかし、本発明の実施形態として機能層13の硬さ値が12、15、17GPaの実施例1、2、3については、走行距離が2500~4500kmとなり、既存品の約3倍を超えた走行距離を示している。この結果から、本発明の機能層13の条件値として、ナノインデンターで行った機能層13を構成する複合層の硬さ値が12GPa~17GPaであること、との条件は、従来技術に比べて長寿命化を実現するものであると評価できる。すなわち、発明者らの行った油潤滑荷重耐久試験によって、本発明に係るコーティング層が油潤滑環境下での潤滑状態の改善効果を好適に示すことが確認できた。
なお、本発明の実施形態として機能層13の硬さ値が10GPaのものについては、既存品に対して有意な差異が見られなかった。しかし、この結果からは、本発明の機能層13の条件値の下限値を12GPaと設定したことについての有効性が確認できた。
次に、発明者らは、油潤滑を実施しない無潤滑環境下での転動装置の荷重耐久性能についての検証実験を行った。この無潤滑荷重耐久試験は、実験室内の常温環境下に設置された荷重耐久試験機を用い、この試験機に対してリニアガイドをセットして行った。リニアガイドは、構成部材に対して本発明に係るコーティング層の硬さ値が15GPaで形成した実施例と、比較例としてMoS膜を形成したものを用意し、リニアガイドを構成する軌道レールに対して移動ブロックを繰り返し往復運動させることによって両者の耐久性能を比較することとした。なお、本発明に係るコーティング層の硬さ値を15GPaとしたのは、本発明の機能層13の条件値である、ナノインデンターで行った機能層13を構成する複合層の硬さ値が12GPa~17GPaである条件範囲の約中央値を代表的に選択したものである。
また、無潤滑荷重耐久試験のより具体的な条件としては、上記した2種類の試験品を、各1set用意し、各々のデータを採取した。潤滑条件は無潤滑とし、試験実施中の潤滑剤の供給についても停止した。リニアガイドを構成する移動ブロックに対しては、ラジアル荷重3.17kNの一定荷重を常時負荷し、軌道レールに対する移動ブロックの相対移動条件として、最高速度30m/min、加減速度9.8m/s(1.0G)、ストローク350mmの各条件値を設定した。かかる条件下でリニアガイドを構成する軌道レールに対して移動ブロックを繰り返し往復運動させ、リニアガイドが性能を維持しながら往復運動を行った走行距離を記録し、その走行距離によって評価を行った。
以上説明した試験条件にて得られた結果を、図3に示す。ここで、図3は、無潤滑荷重耐久試験の結果を示すグラフ図であり、縦軸に示された各試験品の試験結果が、横軸に示された走行距離比として表されている。
図3から明らかな通り、今回実施された無潤滑荷重耐久試験では、従来から無潤滑環境下で用いられてきた比較例としてのMoS膜を形成した場合の走行距離比を1とした場合、本発明に係るコーティング層の硬さ値が15GPaで形成した実施例については、走行距離比が3.2であった。つまり、本発明に係るコーティング層については、従来技術に比べて約3倍以上の寿命延長効果を示すこととなった。また、無潤滑荷重耐久試験で得られた結果が従来技術に比べて約3倍以上の長寿命化を実現したことについては、油潤滑荷重耐久試験での効果とほぼ同様の改善効果倍率である。この結果から、本発明の機能層13の条件値として、ナノインデンターで行った機能層13を構成する複合層の硬さ値が12GPa~17GPaであること、との条件は、従来技術に比べて長寿命化を実現するものであると評価できる。すなわち、発明者らの行った無潤滑荷重耐久試験によって、本発明に係るコーティング層は、無潤滑環境下であっても長寿命効果を好適に発揮することが確認できた。
以上、発明者らが見出した、本発明に係るコーティング層の好適な形成条件についての説明を行った。上述したように、本発明に係るコーティング層は、繰り返しの転がり負荷や摺動負荷を受けることとなる転動装置に対して好適に用いることが可能であり、従来技術に比べて約3倍以上の長寿命化を達成した。ただし、上述した本発明に係るコーティング層の好適な形成条件は、機能層13に関するものであった。そこで、発明者らは、本発明の更なる改良を検討する中で、下地層12の改良形態にも取り組んだ。そして、発明者らによる鋭意研究の結果、W(タングステン)単独で構成した下地層12に代えて、主成分がW(タングステン)によって構成されるとともに、母材11との接続面から機能層13との接続面に向けてC成分が段階的に増加するように構成した下地層12を採用することで、耐剥離性に優れる下地層12を形成することができることが確認できた。このような新たな下地層12を示す模式図として、図4を示す。ここで、図4は、本発明に係る下地層の変形形態を説明するための図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層を構成する下地層の膜厚方向でのC成分率の変化を示すグラフ図である。
図4に示すように、変形形態に係る下地層12は、主成分がW(タングステン)によって構成されるものであるが、母材11との接続面から一定の膜厚の範囲ではC成分率が0(ゼロ)%となっており、W(タングステン)のみで構成されている。そして、変形形態に係る下地層12は、機能層13との接続面である表層側に向けてC成分率が段階的に増加するように構成されており、機能層13と接続する下地層12の最表面部分は、C成分率が80%となるように構成されている。このように、本発明に係るコーティング層を構成する下地層12について、W(タングステン)中のC成分比率が膜厚方向で段階的に変化するように製膜することで、耐剥離性に優れる下地層12となるという効果を得ることができる。
なお、発明者らは、被膜の改良実験を行うに際して、転動装置に最適な性能として、高面圧環境で剥がれない被膜が必要となるため、母材11との密着度が重要と考えた。また、相手材(転動面)を摩耗させないため、ボール表面の凹凸を小さくすることが必要であり、硬さを上げることに効果があることを確認していた。この両条件のバランスをとるため、母材11に近い箇所を軟らかく、硬さを傾斜させながら積層し、表面をできるだけ硬くするという製法を選定した。このような考えのもと、発明者らが鋭意研究を進めた結果、さらに被膜の密着性に優れた条件を見出すに至った。その結果を図5に示す。ここで、図5は、本発明に係るコーティング層の被膜硬さの最適設計条件の一つを例示した図であり、図中の分図(a)はコーティング層の断面構成を示した模式図であり、分図(b)はコーティング層における膜厚方向での硬さ値の設計例を示すグラフ図である。
図5に示す改良例では、下地層12における母材11との接続面から機能層13の表面に向けて被膜硬さが増加するように構成されるとともに、機能層13を構成する複合層の最表面であるC層(DLC)の被膜硬さが表面に向けて漸減するように構成される形態例が示されている。発明者らは、実験の結果、コーティング層の最表層を硬いC層(DLC)にすると摺動面の摩耗が大きくなるが、機能層12の最終段階(つまり、最表層の少し手前)が最も硬く、最表層のC層(DLC)をやや軟質にすることで、最表層のC層(DLC)がなじみ層として機能し、被膜の密着性が向上する、という効果を得た。このような図5で示す被膜硬さの設計条件を満たすコーティング膜を実現することで、さらに被膜の密着性に優れたコーティング層が実現し、長寿命化を実現した転動装置が得られることが明らかとなった。
以上、発明者らが見出した、本発明に係るコーティング層の好適な形成条件についての説明を行った。上述したように、本発明に係るコーティング層は、繰り返しの転がり負荷や摺動負荷を受けることとなる転動装置に対して好適に用いることが可能である。そこで、次に、本発明に係るコーティング層を転動装置へ適用した場合の事例について、説明を行う。
[転動装置への適用例]
本発明に係るコーティング層を用いた転動装置の具体的な実施形態について、図面を用いて説明する。なお、以下で例示する転動装置の実施形態は、各請求項に係る発明を限定するものではなく、また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。また、本明細書における「転動装置」は、例えば、工作機械などに用いられる転がり軸受全般や真空中で使用される無潤滑軸受、リニアガイドや直線案内装置、ボールスプライン装置、ボールねじ装置、ローラねじ装置、クロスローラリングなどのような、あらゆる転動・摺動動作を伴う装置を含むものである。
(リニアガイド装置への適用例)
本実施形態に係る転動装置は、図6および図7に示すようなリニアガイド装置として構成することが可能であり、かかるリニアガイド装置に対して上述したコーティング層を形成することにより、摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させた新たな転動装置を実現することができる。ここで、図6は、本実施形態に係るリニアガイド装置の一形態を例示する外観斜視図である。また、図7は、図6で示したリニアガイド装置が備える無限循環路を説明するための断面図である。
まず、図6および図7に例示するリニアガイド装置40の構成について説明すると、本実施形態に係る転動装置としてのリニアガイド装置40は、内方部材としての軌道レール41と、軌道レール41に多数の転動体として設置されるボール42を介してスライド可能に取り付けられた外方部材としての移動ブロック43とを備えている。軌道レール41はその長手方向と直交する断面が概略矩形状に形成された長尺の部材であり、その表面(上面および両側面)には、ボール42が転がる際の軌道になる軌道面としての転動体転走面41aが軌道レール41の全長に渡って形成されている。
ここで軌道レール41は、直線的に伸びるように形成されることもあるし、曲線的に伸びるように形成されることもある。また、図6および図7において例示する転動体転走面41aの本数は左右で2条ずつ合計4条設けられているが、その条数はリニアガイド装置40の用途等に応じて任意に変更することができる。
一方、移動ブロック43には、転動体転走面41aとそれぞれ対応する位置に軌道面としての負荷転動体転走面43aが設けられている。軌道レール41の転動体転走面41aと移動ブロック43の負荷転動体転走面43aとによって負荷転走路52が形成され、複数のボール42が挟まれている。さらに、移動ブロック43には、各転動体転走面41aと平行に伸びる4条の無負荷転走路53と、各無負荷転走路53と各負荷転走路52とを結ぶ方向転換路55が設けられている。1つの負荷転走路52および無負荷転走路53と、それらを結ぶ一対の方向転換路55との組み合わせによって、1つの無限循環路が構成される(図7参照)。
そして、複数のボール42が、負荷転走路52と無負荷転走路53と一対の方向転換路55,55とから構成される無限循環路に無限循環可能に設置されることにより、移動ブロック43が軌道レール41に対して相対的に往復運動可能となっている。
以上のような構成を備える本実施形態に係るリニアガイド装置40においては、内方部材としての軌道レール41の転動体転走面41a、外方部材としての移動ブロック43の負荷転動体転走面43a、および複数の転動体として設置されるボール42の少なくとも1つに対して、上述した下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することができる。
例えば、複数の転動体として設置されるボール42の表面に対して下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することで、軌道レール41の転動体転走面41aや、移動ブロック43の負荷転動体転走面43aと、ボール42との金属接触が防止されることとなる。そして、機能層13の最表面は、炭素系のコーティング膜であるC層であり、また、機能層13自体は積層構造からなる複合層であり、コーティング層自体が潤滑性を有しているので、摩擦抵抗の低下や固体潤滑剤としての機能を発揮できる。さらに、ボール42の表面に対して下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することで、油膜が形成されない環境においても金属接触を防止できるので、転動装置であるリニアガイド装置40の製品寿命を延長することが可能となる。
(転動体ねじ装置への適用例)
また、本実施形態に係る転動装置は、例えば、図8において示されるようなボールねじ装置56として構成することが可能である。図8は、本実施形態に係る転動装置をボールねじ装置として構成した場合を例示する図である。かかるボールねじ装置56は、内方部材としてのねじ軸57と、このねじ軸57に複数のボール58を介して相対回転可能に取り付けられる外方部材としてのナット部材59とを備えた装置である。
ねじ軸57は、外周面に螺旋状の軌道面としての転動体転走溝57aが形成される内方部材であり、一方、ナット部材59は、内周面に転動体転走溝57aに対応する螺旋状の軌道面としての負荷転走溝が形成される外方部材である。ねじ軸57のナット部材59に対する相対的な回転運動に伴って、ナット部材59がねじ軸57に対して相対的に往復運動可能となっている。
そして、ボールねじ装置56を構成するねじ軸57の転動体転走溝57aやナット部材59の負荷転走溝、およびボール58の少なくとも1つに対して、上述した下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することができる。かかる構成によって、繰返しの転がり負荷荷重を受けることとなるねじ軸57の転動体転走溝57aやナット部材59の負荷転走溝、およびボール58における金属接触が防止され、ボールねじ装置56の摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させることが可能となる。
(スプライン装置への適用例)
さらに、本実施形態に係る転動装置は、例えば、図9において示されるようなスプライン装置60として構成することが可能である。図9は、本実施形態に係る転動装置をスプライン装置として構成した場合を例示する図である。
ここで、図9に示されるスプライン装置60の構成を簡単に説明すると、スプライン装置60は、内方部材としてのスプライン軸61と、そのスプライン軸61に多数の転動体としてのボール62を介して移動自在に取り付けられた外方部材としての円筒状の外筒63とを有している。スプライン軸61の表面には、ボール62の軌道となり、スプライン軸21の軸線方向に延びる軌道面としての転動体転走面61aが形成されている。スプライン軸61に取り付けられる外筒63には、転動体転走面61aに対応する軌道面としての負荷転動体転走面が形成される。これらの負荷転動体転走面には、転動体転走面61aが伸びる方向に伸びる複数条の突起が形成されている。外筒63に形成した負荷転動体転走面とスプライン軸61に形成した転動体転走面61aとの間で負荷転走路が形成される。負荷転走路の隣には、荷重から解放されたボール62が移動する無負荷戻し通路が形成されている。外筒63には、複数のボール62をサーキット状に整列・保持する保持器64が組み込まれている。そして、複数のボール62が、外筒63の負荷転動体転走面とスプライン軸61の転動体転走面61aとの間に転動自在に設置され、無負荷戻し通路を通って無限循環するように設置されることによって、外筒63がスプライン軸61に対して相対的に往復運動可能となっている。
そして、図9において示すスプライン装置60の場合においても、スプライン装置60を構成するスプライン軸61の転動体転走面61aや外筒63の負荷転動体転走面、およびボール62の少なくとも1つに対して、上述した下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することができる。かかる構成によって、繰返しの転がり負荷荷重を受けることとなるスプライン軸61の転動体転走面61aや外筒63の負荷転動体転走面、およびボール62における金属接触が防止され、スプライン装置60の摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させることが可能となる。
(回転ベアリング装置への適用例)
またさらに、本実施形態に係る転動装置は、例えば、図10および図11において示されるような回転ベアリング装置70として構成することが可能である。ここで、図10は、本実施形態に係る転動装置を回転ベアリング装置として構成した場合の一形態を例示する部分縦断斜視図である。また、図11は、図10に示す回転ベアリング装置の縦断面を示す図である。
図10および図11に示すように、回転ベアリング装置70として構成される転動装置は、外周面に断面V字形状の内側軌道面72を有する(内方部材又は外方部材としての)内輪71と、内周面に断面V字形状の外側軌道面74を有する(外方部材又は内方部材としての)外輪73と、内側軌道面72と外側軌道面74とによって形成される断面略矩形状の軌道路75の間に転動可能にクロス配列される複数の転動体としてのローラ77とを有することにより、内輪71および外輪73が周方向に相対的な回転運動を行うものである。
このような回転ベアリング装置70においても、回転ベアリング装置70を構成する内輪71の内側軌道面72や外輪73の外側軌道面74、およびローラ77の少なくとも1つに対して、上述した下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することができる。かかる構成によって、繰返しの転がり負荷荷重を受けることとなる内輪71の内側軌道面72や外輪73の外側軌道面74、およびローラ77における金属接触が防止され、回転ベアリング装置70の摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させることが可能となる。
(滑りねじ装置への適用例)
上述した各装置については、内方部材と外方部材の間に複数の転動体が介装された形態の装置を例示して説明した。しかしながら、転動装置の構成部材に対してコーティング層を形成することを特徴とする本発明の適用範囲は、かかる転動体を用いたものには限られず、転動体を介さずに内方部材と外方部材とが直接接触して相対運動可能に構成される装置に対しても好適に用いることが可能である。
例えば、図12に示すように、滑りねじ装置80として構成される転動装置に対して、本発明を適用することも可能である。ここで、図12は、本実施形態に係る転動装置を滑りねじ装置として構成した場合の一形態を例示する外観斜視図である。そして、図12に示す滑りねじ装置80は、外周面に螺旋状の軌道面としてのねじ溝が形成される内方部材としてのねじ軸81と、内周面にねじ溝に対応する螺旋状の軌道面としてのナット溝が形成される外方部材としてのナット部材83と、を有することにより、ねじ軸81のナット部材83に対する相対的な回転運動に伴って、ナット部材83がねじ軸81に対して相対的に往復運動することができるように構成されている。
そして、図12に示す滑りねじ装置80についても、その構成部材であるねじ軸81のねじ溝やナット部材83のナット溝に対して、上述した下地層12と機能層13からなるコーティング層を形成することができる。かかる構成によって、繰返しの滑り負荷荷重を受けることとなるねじ軸81のねじ溝やナット部材83のナット溝における金属接触が防止され、滑りねじ装置80の摩耗特性や潤滑寿命特性を向上させることが可能となる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態に記載の範囲には限定されない。上記実施形態には、多様な変更又は改良を加えることが可能である。
例えば、図13において示されるような、リニアモーションガイドとボールねじが組み合わされて一体構造となっている形式の転動装置90について、本発明を適用することが可能である。なお、図13において示す転動装置90の場合、ねじ軸91と移動ブロック93とは、複数のボール95を介して設置されているが、複数のボール95を介さずにねじ軸91と移動ブロック93とが滑りねじとして構成されるようにすることも可能である。
その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、請求の範囲の記載から明らかである。
なお、上述した本発明に係る転動装置については、多様な産業上の利用可能性を備えている。例えば、原子力・エネルギー関連の技術分野では、放射線被ばく環境下で転動装置を使用する場合があるが、油や樹脂は放射線により分解され、その分解物質は汚染物質となってしまう。しかし、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、オイルフリー化が実現できるので、本発明によれば、放射線被ばく環境下であっても好適に用いることのできる転動装置を実現することが可能となる。
また例えば、転動装置における転がり運動や滑り運動が低速かつ高荷重で行われる使用方法の場合、従来の油やグリースを用いる潤滑剤では油膜の形成が困難となって摩耗が進行してしまうといった課題が存在していた。しかしながら、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、オイルフリー化が実現できるので、低速かつ高荷重での使用条件に有効な転動装置を提供することが可能となる。
また例えば、宇宙・航空産業における技術分野では、極低温環境下での転動装置の使用が求められるが、従来の油やグリースを用いる潤滑剤では、低温での粘性抵抗上昇のためにトルクが高くなってしまうという課題が存在していた。しかしながら、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、オイルフリー化が実現できるので、温度による摩擦抵抗の差が無くなり、どのような温度条件下であっても好適に使用可能な転動装置を提供することができる。
また例えば、食品製造機械・医療機器の技術分野では、従来の油やグリースを用いる場合に潤滑剤の漏れや垂れに敏感にならざるを得ないといった課題が存在していた。しかしながら、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、オイルフリー化が実現できるので、潤滑剤の漏れや垂れに敏感な環境下であっても安心して使用することのできる転動装置を提供することが可能となる。
また例えば、転動装置に対して振動が付加される使用環境の場合、従来の油やグリースを用いる潤滑剤では油膜の形成が困難となり、摩耗が進行してしまうといった課題が存在していた。しかしながら、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、金属接触が防止できるので、振動が付加される使用環境に有効な転動装置を提供することが可能となる。
以上説明したように、本発明に係るコーティング層を転動装置に用いることで、転動装置の適用範囲が大いに拡大することとなる。
11 母材、12 下地層、13 機能層、40 リニアガイド装置、41 軌道レール、41a 転動体転走面、42 ボール、43 移動ブロック、43a 負荷転動体転走面、48,49 ねじ孔、52 負荷転走路、53 無負荷転走路、55 方向転換路、56 ボールねじ装置、57 ねじ軸、57a 転動体転走溝、58 ボール、59 ナット部材、60 スプライン装置、61 スプライン軸、61a 転動体転走面、62
ボール、63 外筒、64 保持器、70 回転ベアリング装置、71 内輪、72 内側軌道面、73 外輪、74 外側軌道面、75 軌道路、77 ローラ、80 滑りねじ装置、81 ねじ軸、83 ナット部材、90 転動装置、91 ねじ軸、93 移動ブロック、95 ボール。

Claims (5)

  1. 外面に軌道面を有する内方部材と、
    前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有して前記内方部材の外側に配置された外方部材と、
    前記両軌道面間に転動自在に配置された転動体と、
    を備える転動装置において、
    前記内方部材が有する軌道面、前記外方部材が有する軌道面、および前記転動体のうちの少なくとも1つが、
    金属系材料からなる母材と、
    前記母材の表面側に形成された下地層と、
    前記下地層の表面側に形成された機能層と、
    によって構成されており、
    前記機能層が、WC層とC層を交互に積層した積層構造を有する複合層として構成され、
    前記機能層を構成する複合層の最表面が、C層によって構成され
    前記下地層は、主成分がW(タングステン)によって構成されるとともに、前記母材との接続面から前記機能層との接続面に向けてC成分が段階的に増加するように構成されており、
    前記機能層における前記下地層との接続面が、WC層によって構成されていることを特徴とする転動装置。
  2. 請求項1に記載の転動装置において、
    前記機能層を構成するWC層のW(タングステン)組成比が、
    0重量%<W≦30重量%
    なる不等式を満たす条件で構成されることを特徴とする転動装置。
  3. 請求項1又は2に記載の転動装置において、
    前記機能層を構成する複合層のビッカース硬さHvが800~1500であることを特徴とする転動装置。
  4. 請求項1又は2に記載の転動装置において、
    ナノインデンターで行った前記機能層を構成する複合層の硬さ値が12GPa~17GPaであることを特徴とする転動装置。
  5. 外面に軌道面を有する内方部材と、
    前記内方部材の軌道面に対向する軌道面を有して前記内方部材の外側に配置された外方部材と、
    前記両軌道面間に転動自在に配置された転動体と、
    を備える転動装置において、
    前記内方部材が有する軌道面、前記外方部材が有する軌道面、および前記転動体のうちの少なくとも1つが、
    金属系材料からなる母材と、
    前記母材の表面側に形成された下地層と、
    前記下地層の表面側に形成された機能層と、
    によって構成されており、
    前記機能層が、WC層とC層を交互に積層した積層構造を有する複合層として構成され、
    前記機能層を構成する複合層の最表面が、C層によって構成され
    前記下地層における前記母材との接続面から前記機能層の表面に向けて被膜硬さが増加するように構成されるとともに、前記機能層を構成する複合層の最表面であるC層の被膜硬さが表面に向けて漸減するように構成されることを特徴とする転動装置。
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