以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。図1及び図2は本発明の一実施の形態におけるスクリーン印刷装置1を示している。スクリーン印刷装置1は上流工程側から供給された基板KBを搬入し、その基板KBの表面に設けられた複数のランドLDのそれぞれに半田等のペーストPstを印刷して下流工程側に搬出する装置である。ここでは説明の便宜上、作業者OPから見たスクリーン印刷装置1の前後方向をY軸方向とし、作業者OPから見た左右方向(基板KBの搬送方向)をX軸方向とし、上下方向をZ軸方向とする。また、Y軸方向のうち、作業者OPから見た手前側を前方、作業者OPから見た奥側を後方とする。
図1及び図2において、スクリーン印刷装置1は基台11上に基板ステージ12を備えている。基板ステージ12の上方にはマスク13が配置され、マスク13の上方には印刷ヘッド14が設置されている。基板ステージ12とマスク13の間にはカメラ15とマスククリーナ16が備えられている。基台11の内側には、プログラムを実行する演算装置や記憶部等を有する制御部20が収納されている。制御部20はスクリーン印刷装置1を制御し、スクリーン印刷装置1にスクリーン印刷作業やマスク13のクリーニング作業等を実行させる。
図2において、基板ステージ12は基板保持部21と基板保持部移動機構22から構成されている。基板保持部21はY軸方向に平行に並んで設けられた基板搬送用の一対の搬送コンベア31と、一対の搬送コンベア31によって搬送されてきた基板KBを下方から支持する下受け部32と、一対の搬送コンベア31の上部に設けられてY軸方向に開閉自在な一対のクランパ33を備えている。基板保持部21は一対の搬送コンベア31が受け取った基板KBを下受け部32によって下受けし、一対のクランパ33によってクランプしてその基板KBを保持する。基板保持部移動機構22は直交座標テーブル機構等によって構成されており、基板保持部21をXY面内方向、Z軸方向及びZ軸回り方向に移動させて基板保持部21が保持した基板KBを移動させる。
図1及び図2において、マスク13はXY平面に広がった矩形形状を有している。マスク13は金属製の板状部材から構成されており、四辺が枠部材13Wによって支持されている。マスク13の中央部には、基板KBのランドLDの配置に対応して形成されたパターン孔13Hが設けられている。
図1及び図2において、印刷ヘッド14は、X軸方向に延びた形状のヘッドベース41の下方に2つのスキージ42を備えた構成を有している。2つのスキージ42はX軸方向に延びた「へら」状の部材から成り、Y軸方向に対向して配置されている。ヘッドベース41の上面には2つのスキージ42を個別に昇降させるスキージ昇降駆動部43が設けられている。ヘッドベース41はY軸方向に移動自在であり、印刷ヘッド移動機構44(図2)によって駆動されてマスク13の上方をY軸方向に移動する。
図1及び図2において、マスク13の下方にはX軸方向に延びた移動ビーム51が配置されており、カメラ15は移動ビーム51の前側に取り付けられている。移動ビーム51はY軸方向に移動自在であり、Y軸方向移動機構52(図2)によって駆動されてマスク13の下方をY軸方向に移動する。また、カメラ15は移動ビーム51に設けられたX軸方向移動機構53(図3)によって移動ビーム51に沿ってX軸方向に移動する。
カメラ15は上方と下方の双方を撮像する機能を有している。カメラ15は、カメラ15自身のX軸方向への移動と移動ビーム51のY軸方向への移動とによってマスク13の下方を水平面内(XY面内)で移動し、基板保持部21に保持された基板KBを上方から撮像するとともに、マスク13を下方から撮像する。
図1及び図2において、移動ビーム51の後方にはX軸方向に延びたクリーナ取付け部54が装着されている。クリーナ取付け部54は移動ビーム51とともにY軸方向に移動する。クリーナ取付け部54の後側には移動ベース55が昇降自在に設けられており、マスククリーナ16は移動ベース55に取り付けられている(図3も参照)。
図3において、クリーナ取付け部54には昇降機構54Kが設けられており、移動ベース55は昇降機構54Kによって昇降される。昇降機構54Kはエアや油圧によって駆動されるアクチュエータで構成されている。昇降機構54Kが移動ベース55を昇降させると、マスククリーナ16が移動ビーム51に対して昇降する(図3中に示す矢印A)。
図4及び図5(a),(b),(c)において、マスククリーナ16は全体としてX軸方向に延びた形状を有している。マスククリーナ16は、図6、図7及び図8(a),(b)にも示すように、ベース体61、複数(ここでは6枚)のブレード62、一対のエンド部材63、整流板64等を備えている。ここで、図8(a)は図7における矢視V1-V1から見た断面図(ひとつの梁部73の全部を横断する断面図)であり、図8(b)は図7における矢視V2-V2から見た断面図(梁部73を横断しない断面図)である。
図5(a)、図6及び図9において、ベース体61はマスククリーナ16によるペーストPstの掻取り方向であるY軸方向(ペースト掻取り方向とする)と交差する水平方向を長手方向(X軸方向に相当)として延びており、フレーム71とブレード保持部72を有して構成されている。フレーム71はベース体61の長手方向に延びた矩形枠体状の部材であり、中央部に上下方向に貫通して上方に開放した開口71Sを有している。ブレード保持部72はフレーム71の開口71Sに装着され、ベース体61の長手方向(X軸方向)に間隔を空けて並ぶ複数の梁部73を備えている。
本実施の形態では、ブレード保持部72はフレーム71に着脱自在に取り付けられる複数(ここでは7個)のブロック部材72Bから構成されている(図5(a)、図6及び図9)。これら複数のブロック部材72Bは互いに同一形状を有している。
図10,図11及び図12において、ブレード保持部72(各ブロック部材72B)は、ベース体61の長手方向(X軸方向)に延びてペースト掻取り方向(Y軸方向)に対向する平行な一対の縁部74を有しており、複数の梁部73はこれら一対の縁部74の間に掛け渡されて延びている。ブレード保持部72は(すなわち各ブロック部材72Bは)、一対の縁部74をフレーム71の開口71S内に形成された一対のブロック支持部71Bに載置されてフレーム71に取り付けられている(図8(a),(b))。
ブレード保持部72(7個のブロック部材72B)がフレーム71に取り付けられている状態では、複数の梁部73は、ベース体61の長手方向(X軸方向)に等間隔(各梁部73のペースト掻取り方向の中間位置を基準に見た場合に等間隔)に位置している(図6及び図9)。また、複数の梁部73はそれぞれ、ペースト掻取り方向(Y軸方向)に対して水平面内で斜めに交差して(ベース体61の長手方向に対して直交姿勢からやや傾いて)いる(図5(a)及び図10)。このため複数のブレード62は互いに異なる長手方向の箇所が梁部73によって支持されることとなり、マスククリーナ16をペースト掻取り方向から見た場合、各ブレード62の梁部73によって支持されている箇所と梁部73によって支持されない箇所はブレード62の長手方向にほぼ均等に分散された状態となる。
図10,図11及び図12において、ブレード保持部72には、複数のブレード62を挿入するための複数列(ここでは6列)の溝部75がそれぞれベース体61の長手方向に延びて設けられている。本実施の形態では、ペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向(ここでは前方)の前後の2つの縁部74には溝部75がひとつ(1列)ずつ設けられており、複数の梁部73には4列の溝部75が設けられている。これら4列の溝部75は、ベース体61の長手方向に間隔を空けて並ぶ複数の梁部73にわたって設けられている(図10及び図11)。
図10,図11及び図12において、各溝部75は上方に開口している。ブレード保持部72が備える複数列(6列)の溝部75は互いに平行であり、それぞれ上端側をペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向とは反対の方向(すなわち後方)に傾斜させている。
図6及び図13において、各ブレード62はベース体61の長手方向に延びた薄板状の部材であり、樹脂から構成されている。6枚のブレード62は、図14に示すように、ブレード保持部72に設けられた6列の溝部75に上方から挿入されている。このため、ブレード保持部72に支持された複数のブレード62は、ペースト掻取り方向に互いに平行に並んだ状態となる(図4、図5(a)及び図14)。
図8(a),(b)において、6枚のブレード62のうちの2枚は、ペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向(図8(a),(b)における紙面右方)の前後両端に位置する2列の溝部75によって支持されており、6枚のブレード62のうちの他の4枚は、ブレード保持部72に設けられた4列の溝部75によって支持されている。すなわち、進行方向から見て先頭と最後尾に位置する2枚のブレード62は縁部74に設けられた溝部75によって支持されており、それらの中間に位置する4枚は、梁部73に設けられた溝部75によって支持されている。前述したように各溝部75は上端側が後方に傾斜しているので、溝部75に挿入された各ブレード62は、開口71S内で上端側を後方に傾斜させた姿勢となる。
ここで、上記中間の4枚のブレード62のうち最も後側に位置するブレード62(図8(a),(b)において符号62Tで示す)が挿入される溝部75Tは、後側の縁部74の上面に開口されている。これにより、溝部75Tの上端には縁部74に沿ってブレード62とほぼ同じ長さの傾斜したシール面75Sが形成されている。図12に明瞭に示すように、このシール面75Sは梁部73のない縁部74の上部にも形成されている。このため、溝部75Tに挿入されたブレード62Tの後面はシール面75Sに当接する。
図8(a),(b)において、上記中間の4枚のブレード62はそれぞれ長手方向の中間の一部が複数の梁部73によって部分的に支持されているため梁部73からはみ出した部分は開口71S内に位置した状態となる。このため、先頭のブレード62並びに中間の4枚のブレード62で挟まれた空間62Sは開口71Sに通じている。これに対し、マスククリーナ16の進行方向の最も後側に位置するブレード62は、その長手方向の全体がブレード保持部72によって支持されているうえ、そのひとつ前側に位置するブレード62Tの後面がシール面75Sに当接しているので、進行方向の最も後側に位置するブレード62とそのひとつ前側に位置するブレード62Tに挟まれた空間62STは開口71Sから遮断されている。マスククリーナ16の進行方向の最も前側に位置するブレード62も開口71Sの外部に位置しているので、そのペースト掻取り面の側の空間は開口71Sから遮断されている。
このように本実施の形態のマスククリーナ16は、移動ベース55に取り付けられてペースト掻取り方向と交差する水平方向を長手方向として延びるベース体61と、ベース体61に着脱自在に取り付けられて長手方向に延びるとともにペースト掻取り方向に平行に並んで配置され、ベース体61の上方に突出させたペースト掻取りエッジ62Eを備えた構成となっている。そして、ベース体61は、上方に開放した開口71Sを有するフレーム71と、フレーム71の開口71Sに装着されて長手方向に間隔を空けて並ぶ複数の梁部73を備えたブレード保持部72を有しており、ブレード保持部72は複数(6枚)のブレード62を保持し、複数の梁部73はブレード62(6枚のブレード62のうち、マスククリーナ16の進行方向の最も前側と最も後側に位置する2枚のブレード62を除く4枚のブレード62)の長手方向の中間部を部分的に支持する構成となっている。
また、本実施の形態のマスククリーナ16では、ブレード62で挟まれた複数の空間62Sのうち、少なくともペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も後側に位置する空間62STは開口71Sに通じていない構成となっている。
図4、図5(a),(b),(c)、図6及び図9において、一対のエンド部材63はベース体61の長手方向(Y軸方向)の両端部に取り付けられている。各エンド部材63はそれぞれ樹脂から構成されており、ペースト掻取り方向(Y軸方向)に並んで形成された2つの螺子孔63Hを有している。各エンド部材63は、2つの螺子孔63Hに挿通された2つの螺子63Sがベース体61の長手方向の両端部に設けられた螺子取付け穴61H(図6)に螺入されることによって、ベース体61に着脱自在に装着される。エンド部材63はXY方向に広がった平らな上面63Fを備えている。
図13において、各ブレード62の長手方向の両端部には被押さえ部62Hが形成されている。被押さえ部62Hは、ブレード62の長手方向の外側に突出した上下に対称な半円形状を有している。一対のエンド部材63がベース体61の両端部に取り付けられると、複数のブレード62それぞれの被押さえ部62Hの傾斜面(ここでは円弧面)にエンド部材63の突起部63T(図15(a),(b))が上方から当接し、複数のブレード62がフレーム71に固定される。
このように本実施の形態では、複数のブレード62はそれぞれ長手方向の両端部か長手方向の外側に突出して形成された一対の被押さえ部62Hを有し、複数のブレード62それぞれが有する一対の被押さえ部62Hはベース体61に着脱自在に取り付けられる一対のエンド部材63によって上方から押さえられるようになっている。
ベース体61に装着された一対のエンド部材63は、複数のブレード62の被押さえ部62Hの両端部に接触することによって、ペースト掻取り方向(Y軸方向)に隣接するブレード62同士の間に側壁を形成する。このため、後述する空気吸引時において、ブレード62で挟まれた空間62Sの側方からのエアの流入が防止される。なお、ブレード62の被押さえ部62Hの形状は、図13に示したような上下方向に対称な半円形状に限られず、上下方向に対称な半楕円形状や三角形形状、台形形状等であってもよい。
複数のブレード62が一対のエンド部材63によってフレーム71に固定された状態では、複数のブレード62それぞれの上縁は各エンド部材63の上面よりも上方に突出している(図8(a),(b)及び図15(a),(b))。すなわち、ベース体61に取り付けられた各エンド部材63の上面は、複数のブレード62の上縁よりも低い位置に位置している。ベース体61の上方に突出した上縁は、マスク13のクリーニングの際、マスク13の下面に当接されてペーストPstを掻き取るエッジ(ペースト掻取りエッジ62E)となる(図13)。
図13において、各ブレード62は上下方向に対称な形状を有しており、上下方向に対向する2つのエッジ(第1のエッジ62a及び第2のエッジ62b)を有している。このため各ブレード62は任意の一方のエッジ(第1のエッジ62a又は第2のエッジ62b)がペースト掻取りエッジ62Eとなるようにベース体61に取り付けることができる(図15(a),(b))。
図15(a),(b)に示すように、各ブレード62の端部には、第1のエッジ62aと第2のエッジ62bを識別するための識別マーク62M(識別表示)が付されている(図13及び図16も参照)。識別マーク62Mは、ブレード62がベース体61に取り付けられている状態で外部から視認することができる(図16)。このため作業者は、ベース体61からブレード62を取り外すことなく、そのブレード62の第1のエッジ62aと第2のエッジ62bのどちらがペースト掻取りエッジ62Eとなっているかを知ることができる。
図5(c)、図6及び図14において、整流板64はベース体61の下面側に位置して設けられている。整流板64はベース体61の長手方向に並んで設けられた複数の整流孔64Hを有しており、複数の整流板装着螺子64Sによってベース体61に着脱自在に装着されている(図6及び図8(a),(b))。
図6において、移動ベース55の上面のベース体61の下面と接触する部分には、複数(ここでは2つ)の位置決め孔55Hが設けられている。一方、ベース体61を構成するフレーム71の下面には、複数の位置決め孔55Hに対応して配置された複数(ここでは2つ)の位置決めピン61Pが下方に延びて設けられている(図5(b),(c))。これら複数の位置決めピン61Pは、移動ベース55に対してベース体61を位置決めするために設けられている。
マスククリーナ16を移動ベース55に取り付けるときは、マスククリーナ16のベース体61に設けられた複数の位置決めピン61Pを移動ベース55に設けられた複数の位置決め孔55Hに上方から挿入させる(図17(a)中に示す矢印B)これによりマスククリーナ16は移動ベース55上の規定の位置に取り付けられる(図17(b))。
図5(b),(c)及び図8(a),(b)において、ベース体61には下面に表面を露出させた複数の磁石61Mが埋設されている。一方、移動ベース55は磁性体材料から構成されている。このためマスククリーナ16が移動ベース55上の規定の位置に取り付けられると、フレーム71に埋設された複数の磁石61Mがそれぞれ移動ベース55の上面に磁力で吸着し、マスククリーナ16が移動ベース55に固定される(図17(b))。
図18(図17(b)における矢視V3-V3から見た断面図)において、マスククリーナ16が移動ベース55に取り付けられた状態では、マスククリーナ16の開口71Sが移動ベース55に形成された内部空間55S(図6も参照)と連通する。移動ベース55には内部空間55Sに設けられた空気通路55R(図6も参照)を通じて外部に延びる真空吸引管路55Tが設けられている(図3及び図18)。この真空吸引管路55Tには吸出し機構80が接続されており(図3及び図18)、吸出し機構80が真空吸引管路55Tを介して空気を吸引すると、マスククリーナ16の上方の空気が開口71S及び整流板64に設けられた整流孔64Hを通じて内部空間55S側に引き込まれ、マスク13の下面やパターン孔13H内に付着したペーストPstがマスククリーナ16側に吸い出される。
スクリーン印刷装置1がスクリーン印刷作業を行う場合には、先ず、スクリーン印刷装置1の外部から供給された基板KBを搬送コンベア31が受け取って所定の位置まで搬入する。そして、下受け部32が上昇して基板KBを下方から支持し、更にクランパ33が作動して基板KBをY軸方向からクランプする。クランパ33が基板KBをクランプしたらカメラ15がY軸方向移動機構52とX軸方向移動機構53の作動によって水平方向に移動しつつ、マスク13と基板KBを撮像する。制御部20はカメラ15が撮像した基板KBとマスク13の画像データから得られる基板KBとマスク13との相対位置関係を算出し、基板KBの各ランドLDとマスク13のパターン孔13Hとが上下に重なるように基板保持部移動機構22を作動させて、基板KBをマスク13に接触させる。
基板KBがマスク13に接触したら、スキージ昇降駆動部43が作動して2つのスキージ42のうちの一方をマスク13の上面に当接させる。スキージ42がマスク13の上面に当接したら印刷ヘッド移動機構44がヘッドベース41をY軸方向に移動させる。これによりマスク13上に供給されたペーストPstがスキージ42によってマスク13上で掻き寄せられ(図2)、マスク13のパターン孔13Hを通じて基板KBの各ランドLDにペーストPstが塗布される。
基板KBの各ランドLDにペーストPstが塗布されたら、基板保持部移動機構22が基板保持部21を下降させて基板KBをマスク13から分離(版離れ)させる。これにより基板KBへのペーストPstの印刷が終了する。基板KBへのペーストPstの印刷が終了したら搬送コンベア31が作動し、基板KBをスクリーン印刷装置1の外部に搬出する。
搬送コンベア31によって基板KBがスクリーン印刷装置1の外部に搬出されたら、マスククリーナ16によるマスククリーニング作業が実行される。マスククリーニング作業では、Y軸方向移動機構52が移動ビーム51をY軸方向に移動させ、マスククリーナ16をマスク13の後下方に位置させる。マスククリーナ16がマスク13の後下方に位置したら、昇降機構54Kが作動してマスククリーナ16を上昇させ、マスククリーナ16を(詳細には6枚のブレード62のペースト掻取りエッジ62Eを)マスク13の下面に当接させる(図19(a))。
マスククリーナ16がマスク13の下面に当接したら、Y軸方向移動機構52が作動して移動ビーム51を前方に移動させる。これによりマスククリーナ16が備える6枚のブレード62がマスク13の下面を摺動し、各ブレード62のペースト掻取りエッジ62Eによってマスク13の下面に付着したペーストPstが掻き取られていく(図19(b)及び図20)。また、6枚のブレード62がマスク13の下面に付着したペーストPstを掻き取っている間、吸出し機構80は空気を吸引する。これによりマスク13に付着しているペーストPstがマスククリーナ16の開口71S及びブレード62で挟まれた複数の空間62Sを通じて吸出し機構80によって強制的に吸い出されるので、ペーストPstの掻取り効率が向上する。
このようにブレード62がマスク13の下面を摺動してマスククリーニングが実行されているときには、ベース体61に取り付けられた一対のエンド部材63は、図20中に示す領域Raの拡大図である図21に示すように、マスク13の下面に下方から当接するようになっている。このためマスククリーニング中に、ブレード62で挟まれた空間62Sの側方から開口71Sにエアが流入するのを防止する。これにより、クリーニングに寄与しない箇所から流入するエアによってマスククリーナ16の吸引力が損なわれないようにすることができる。
図21において、マスククリーニングにおけるペーストPstの掻取りでは、ペースト掻取り方向に並んで配置された6枚のブレード62のうちペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も前側に位置するブレード62は、他のブレード62よりも先に、マスク13の下面に付着したペーストPstを掻き取ることになる。このためペーストPstの掻取り量はペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も前側に位置するブレード62が最も多く、それ以外の5枚のブレード62は後方に位置するものほど掻取り量が少なくなっていく。
また、ペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も前側に位置するブレード62よりも後方に位置する各ブレード62は、そのブレード62が通過する直前のパターン孔13Hから吸出し機構80によって吸い出されたペーストPstも掻き取る。そして、そのブレード62で掻き取り切れなかったペーストPstは、そのブレード62の後方に位置するブレード62が掻き取る。
マスククリーニングを繰り返すと、ブレード62に付着する掻き取られたペーストPstの量が次第に増加し、ブレード62がペーストPstを掻き取る性能も付着するペーストPstの量が増えるに従って低下する。このため、複数枚のブレード62を使用することによってできるだけ長くクリーニング性能を維持するようにしている。これに加え、本実施の形態ではマスククリーナ16の進行方向の最も後側に位置するブレード62に付着するペーストPstの量を少なくすることでより長くクリーニング性能を維持する工夫がなされている。
本実施の形態では、前述したように、ペースト掻取り方向に並んで配置された6枚のブレード62のうち、ペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も後側に位置するブレード62とその1つ前方に位置するブレード62Tとの間の空間62STは開口71Sから遮断されており、吸出し機構80の吸引力はほとんど及ばない。よって、空間62STではパターン孔13Hの内部に残存しているペーストPstをマスク13の下面に移動させる空気の流れが発生しない。
このため、6枚のブレード62のうち進行方向の最も後側に位置するブレード62のペースト掻取り面には吸出し機構80によって強制的に吸い出されたペーストPstが流入せず、最も後側に位置するブレード62が掻き取るペーストPstの量は他のブレード62よりも少なくなる。別の言い方をすれば、進行方向の最も後側に位置する空間62STにはパターン孔13Hの内部に残存しているペーストPstが流入しないので、最も後側に位置するブレード62はその前のブレード62Tが掻き取れなかったわずかなペーストPstのみを掻き取るだけで済む。よって、最も後側に位置するブレード62はその前方に位置する他のブレード62よりもペーストPstで汚れていない状態を保つことができ、前方のブレード62が掻き取り残したペーストPstを確実に掻き取ることができる。これによりクリーニング性能を長期間維持することが可能であり、クリーニングユニットの清掃等回数やそれに伴うクリーニング印刷装置の稼働停止時間を従来よりも少なくすることができる。
このようなスクリーン印刷装置1において、各ブレード62はペーストPstの掻取りによって汚れるため、所定のタイミングで清掃を行う必要がある。ブレード62はベース体61から取り外して清掃するが、本実施の形態では、前述したようにブレード62は樹脂から構成されているため、ブレード62を清掃する際、誤ってブレード62を大きく曲げてしまったとしても塑性変形することがなく、清掃後(ベース体61に取り付けた後)にペースト掻取りエッジ62Eがマスク13の下面に面当りしなくなるようなことがない。このためブレード62の清掃時等においてブレード62を変形させてしまうことに起因するクリーニング品質の低下を防止できる。なお、ブレード62の清掃にはペーストPstを溶解させ得るアルコール系の溶剤が用いられるため、ブレード62は樹脂の中でも、アルコール系の溶剤に対する耐用性を有するものが用いられることが好ましい。
また、本実施の形態では、ブレード62が上下方向に対称な形状となっており、上下方向に対向して位置する2つのエッジ(第1のエッジ62a及び第2のエッジ62b)のうちの任意の一方をペースト掻取りエッジ62Eとして使用できる。このため第1のエッジ62aと第2のエッジ62bのうちの一方がペーストPstの掻取りの耐用限度に達したときはブレード62をベース体61から取り外し、上下を反転させてベース体61に取り付けなおすことで、ブレード62を再度耐用限度まで使用できす。このように本実施の形態におけるマスククリーナ16ではブレード62の耐用期間を増大(倍増)させることができ、コストの低減を図ることができる。
ここで、前述したように、各ブレード62に第1のエッジ62aと第2のエッジ62bを識別するための識別表示としての識別マーク62Mが付されているので、作業者は、予め定めておいた第1のエッジ62aと第2のエッジ62bの使用順序と照らし合わせることで、ブレード62の状況(ブレード62の上下を反転させる前なのか反転させた後なのか)を的確に知ることができる。なお、本実施の形態では、識別マーク62Mは、第1のエッジ62aの側に頂角を向けた三角形の図形を例示したが(図15(a),(b))、これは一例に過ぎず、識別マーク62Mの形態は限定されない。
また、マスククリーナ16のブレード保持部72が備える複数の梁部73はそれぞれペースト掻取り方向(Y軸方向)に対して水平面内で斜めに延びており、複数のブレード62は互いに異なる長手方向の箇所が梁部73によって支持されている。このためマスク13のクリーニング時には、各ブレード62の梁部73によって支持されている箇所と梁部73によって支持されない箇所はブレード62の長手方向に分散されることになり、マスク13に対するブレード62の当たり具合がマスククリーナ16全体として均一化される。これによりマスク13の下面に梁部73の位置に対応した筋が残るようなことがなくなり、クリーニング品質を向上させることができる。
また、本実施の形態では、ブレード保持部72はフレーム71に着脱自在に取り付けられる同一形状の複数のブロック部材72Bから構成されているため、ブレード62の清掃時に併せて行うベース体61の清掃において、ブレード保持部72の清掃が極めて容易となる。ブレード保持部72は超音波洗浄機等を用いて清掃することが多いが、この場合、洗浄槽は少なくともひとつのブロック部材72Bが入る大きさを有していればよいので超音波洗浄機は小型のものでよく、清掃に要するコストを低減することができる。
また、前述したように、最も後側に位置するブレード62が掻き取るペーストPstの量は他のブレード62よりも少なく、その前方に位置する他のブレード62が掻き取り残したペーストPstを確実に掻き取ることができるので、マスク13のクリーニング品質を向上させることができる。更には、最も後側に位置するブレード62そのものもペーストPstの掻き取り残しを生じにくくなるので、マスク13の下面に残留するペーストPstを極めて少量に抑えることができ、この面からもマスク13のクリーニング品質を向上させることができる。
また、マスククリーナ16が取り付けられる移動ベース55が磁性体材料から構成される一方、マスククリーナ16のベース体61には、移動ベース55の上面に磁力で吸着する磁石61Mが備えられている。このためマスククリーナ16をワンタッチで移動ベース55に着脱させることができ、メンテナンス時等における作業性を向上させることができる。
また、前述したように、マスククリーニングが実行されている間、ベース体61に取り付けられた一対のエンド部材63の上面63Fはマスク13の下面に下方から当接することで、ブレード62で挟まれた空間62Sの側方からのエアの流入が防止されるので、マスククリーニングの際にペーストPstを効率よく吸い出すことができる。よって、この面からもクリーニング品質を向上させることができる。また、エンド部材63は過剰な力でブレード62をマスク13に押し当てないようにするためのストッパとして機能する。すなわち、エンド部材63の上面63Fとマスク13の下面が接触することでブレード62の変形が一定範囲に保たれ、ブレード62の摩耗の進行を想定の範囲内にコントロールする。
以上説明したように、本実施の形態におけるスクリーン印刷装置1では、マスククリーナ16のブレード保持部72に支持された複数のブレード62それぞれの両端部に接触してベース体61に取り付けられる一対のエンド部材63が、複数のブレード62がマスク13の下面に当接した状態でマスクの下面に当接するようになっているので、ベース体の開口を通じて吸引する空気がマスククリーニング中にブレード同士の端部の隙間から漏れてしまうことがない。このためペーストPstを効率よく吸い出すことができ、クリーニング品質を向上させることができる。
これまで本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上述したものに限定されない。例えば、上述の実施の形態では、マスククリーナ16が備えるブレード62の数は6枚であったが、これは一例であり、ブレード62の数は特に限定されない。また、マスク13を介して基板KBにペーストPstを印刷する印刷ヘッド14はマスク13上でスキージ42を摺動させる構成を有するものであったが、カートリッジに封入したペーストPstをマスク13上に圧出する構成のもの等であってもよい。
また、上述の実施の形態では、ブレード保持部72に支持された複数(6枚)のブレード62のうち、ペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も前方に位置するブレード62と最も後方に位置するブレード62が開口71Sの外側に位置するようになっていたが、最も前方に位置するブレード62は開口71Sの内側に位置するようになっていても構わない。すなわち、ブレード62で挟まれた複数の空間62Sのうち、少なくともペーストPstの掻取り時のマスククリーナ16の進行方向の最も後側に位置する空間62Sが開口71Sから遮断されるような構成であればよい。
また、上述の実施の形態では、移動ベース55の全体が磁性体材料から構成されるとしていたが、これは、ベース体61に埋設された複数の磁石61Mにより磁力で吸着されればよいので、移動ベース55の少なくとも上面を含む部分が磁性体材料から構成されていればよい。