JP7014307B2 - 伸縮性配線基板及び伸縮性配線基板の製造方法 - Google Patents

伸縮性配線基板及び伸縮性配線基板の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、伸縮性配線基板及び伸縮性配線基板の製造方法に関する。
近年、生体情報を取得して解析することにより、人体の状態等を管理することが行われている。
例えば、特許文献1に記載されているように、伸縮性基材が生体に貼り付けられて使用される伸縮性配線基板が知られている。
特開2016-145725号公報
特許文献1に示された伸縮性配線基板は、導電性繊維及び樹脂バインダを含む伸縮感知部を有しており、この部分が伸縮することで電気特性が変化し、歪み(伸縮)を感知する歪みセンサとして使用されるとされている。
しかし、このような伸縮性配線基板では、伸縮を繰り返すたびに抵抗値の基準点が変化するゼロドリフトという現象が生じやすく、また、センサ感度の指標である抵抗値変化の傾きが小さいという問題があった。
本発明は上記の問題を解決するためになされたものであり、ゼロドリフトが生じにくく、感度の高い伸縮性配線基板を提供することを目的とする。
本発明の伸縮性配線基板は、伸縮性樹脂シートと上記伸縮性樹脂シートに形成された伸縮性配線とを備える伸縮性配線シートと、上記伸縮性配線シートの少なくとも一方の主面に設けられた固定シートと、を備え、上記伸縮性配線は導電性粒子と、樹脂と、上記導電性粒子と上記樹脂の界面に存在する空隙とを有していることを特徴とする。
本発明の伸縮性配線基板の製造方法は、伸縮性樹脂シートと上記伸縮性樹脂シートに形成された伸縮性配線とを備える伸縮性配線シートを準備する伸縮性配線シート準備工程と、上記伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第1の伸長工程と、上記第1の伸長工程で加えた引張応力を緩める緩和工程と、再度、上記伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第2の伸長工程と、上記第2の伸長工程で加えた引張応力が上記伸縮性配線に加わった状態で上記伸縮性配線シートの少なくとも一方の主面に固定シートを配置して上記伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定する固定工程と、を行うことを特徴とする。
本発明によれば、ゼロドリフトが生じにくく、感度の高い伸縮性配線基板を提供することができる。
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。 図2は、引張応力が加わった状態の伸縮性配線を撮影した電子顕微鏡写真である。 図3は、引張応力が加わっていない状態の伸縮性配線を撮影した電子顕微鏡写真である。 図4は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。 図5は、本発明の第3実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。 図6(a)は引張応力を加えていない伸縮性配線シートを模式的に示す斜視図であり、図6(b)は引張応力を加えた伸縮性配線シートを模式的に示す斜視図であり、図6(c)は固定シートを配置して伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定した状態を模式的に示す斜視図である。 図7(a)は、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層を設け、さらに粘着層に第1の固定シートを設けた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、第1の固定シートにスリットを形成した状態を模式的に示す斜視図であり、図7(c)は、伸縮性配線シート及び第1の固定シートに対して引張応力を加えた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(d)は、第1の固定シートに第2の固定シートを配置して伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定した状態を模式的に示す斜視図である。 図8(a)は、実施例1におけるひずみ、抵抗値、時間の関係を示すグラフであり、図8(b)は、比較例1におけるひずみ、抵抗値、時間の関係を示すグラフである。 図9(a)は、実施例1におけるひずみと抵抗値の関係を示すグラフであり、図9(b)は、比較例1におけるひずみと抵抗値の関係を示すグラフである。 図10(a)は、実施例2の伸縮性配線シートのひずみと抵抗値の関係を示すグラフであり、図10(b)は、比較例2の伸縮性配線シートのひずみと抵抗値の関係を示すグラフである。
以下、本発明の伸縮性配線基板及び伸縮性配線基板の製造方法について説明する。
しかしながら、本発明は、以下の構成に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲において適宜変更して適用することができる。なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい構成を2つ以上組み合わせたものもまた本発明である。
以下に示す各実施形態は例示であり、異なる実施形態で示した構成の部分的な置換又は組み合わせが可能であることは言うまでもない。第2実施形態以降では、第1実施形態と共通の事項についての記述は省略し、異なる点についてのみ説明する。特に、同様の構成による同様の作用効果については、実施形態毎には逐次言及しない。
以下の説明において、各実施形態を特に区別しない場合、単に「本発明の伸縮性配線基板」という。
まず、本発明の伸縮性配線基板について説明する。
[第1実施形態]
本発明の伸縮性配線基板において、固定シートが伸縮性配線シートの一方の主面に設けられた例を、本発明の伸縮性配線基板の第1実施形態として説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。
図1に示す伸縮性配線基板1は、伸縮性樹脂シート10と、伸縮性樹脂シート10に形成された伸縮性配線20とを備える伸縮性配線シート30を備える。
伸縮性配線シート30は、使用時に生体に実際に貼り付けられてセンサとして機能する基板及び配線となる部分である。
伸縮性配線シート30の2つの主面である主面31及び主面32のうち、伸縮性配線20が設けられていない側の主面32には粘着層40が設けられており、さらに粘着層40には固定シート50が設けられている。
伸縮性樹脂シート10は、例えば、伸縮性を有する樹脂材料から構成される。樹脂材料としては、例えば、熱可塑性ポリウレタン等が挙げられる。
伸縮性樹脂シート10の厚さは特に限定されないが、生体に貼り付けた際に生体表面の伸縮を阻害しない観点からは、それぞれ100μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。
図1には、伸縮性配線20の形状の例として、配線21の両端に電極22が設けられたダンベル型電極を示している。配線及び電極の形状は特に限定されるものではなく、使用する場所や用途に応じて任意に変更することができる。
伸縮性配線20は、図1に両矢印Lで示す方向に引張応力が加わった状態で固定シート50により固定されている。
伸縮性配線は、後述するように導電性粒子と樹脂を有しており、伸縮性を有する配線となっている。例えば、導電性粒子としてのAg、Cu、Niなどの金属粉と、シリコーン樹脂などのエラストマー系樹脂からなる混合物が挙げられる。
導電性粒子の平均粒径は特に限定されるものではないが、0.01μm以上、10μm以下であることが好ましい。また、導電性粒子の形状は球形であることが好ましい。
伸縮性配線の厚さは特に限定されないが、100μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。また、伸縮性配線の厚さは1μm以上であることが好ましい。
引張応力が加わった状態の伸縮性配線の詳細について説明する。
図2は、引張応力が加わった状態の伸縮性配線を撮影した電子顕微鏡写真であり、図3は、引張応力が加わっていない状態の伸縮性配線を撮影した電子顕微鏡写真である。
図2には、伸縮性配線20を構成する導電性粒子23と樹脂24を示しており、さらに、導電性粒子23と樹脂24の界面に空隙25を示している。
一方、図3では、伸縮性配線20を構成する導電性粒子23と樹脂24が存在するものの、導電性粒子23と樹脂24の界面に空隙が存在しない。
このことから、伸縮性配線に引張応力が加わった状態では伸縮性配線に空隙が存在することが分かる。空隙は導電性粒子が引き離されることにより生じるので、導電性粒子と樹脂の界面に存在することになる。
後述する実施例において、伸縮性配線基板において伸縮性配線に引張応力が加わった状態であることによる効果を示すが、伸縮性配線に引張応力が加わった状態であると、伸縮性配線を構成する導電性粒子と樹脂の界面に空隙が存在することとなる。伸縮性配線にこのような空隙が存在すると空隙の存在により伸縮性配線が多孔体(スポンジ状)の構造となり、伸縮性配線の弾性が増すものと推測される。
そして、伸縮性配線にこのような空隙が存在することによってゼロドリフトが生じにくくなり、伸縮性配線基板の感度が向上する。
伸縮性配線に存在する空隙の状態としては、細かい空隙が点在していることが好ましい。また、空隙の大きさが導電性粒子の大きさと略同様であることが好ましい。
伸縮性配線を固定シートで固定した状態で、伸縮性配線に加わる引張応力の強さは、引張応力が加わっていない場合の伸縮性配線の長さに対する伸縮性配線の長さである伸度を指標とすることができる。伸度は特に限定されるものではなく、伸縮性配線の材料系によって定めればよいが、300%以上、800%以下となるように定めることが好ましい。
なお、伸縮性配線の長さは、図1における配線21及び2つの電極22の、両矢印Lで示す方向での長さの合計である。
粘着層40は、伸縮性配線シート30の2つの主面のうち、伸縮性配線20が設けられていない側の主面32に配置された層である。粘着層40を設けることにより、伸縮性配線基板1の伸縮性配線シート30を生体に貼り付けることができる。
粘着層40の材質は特に限定されないが、例えば、アクリル系重合体、ウレタン系樹脂等の粘着樹脂が挙げられる。また、粘着層40の厚さは特に限定されないが、10μm以下であることが好ましく、1μm以下であることがより好ましい。また、粘着層40の厚さは、0.1μm以上であることが好ましい。
固定シート50は、粘着層40に設けられたシートであり、引張応力が加わった状態で伸縮性配線を固定するためのシートである。そのため、固定シート50は引張応力で変形しない程度の強度が必要である。
固定シート50としては、PETフィルム、ポリスチレンフィルム、ポリプロピレンフィルム、ポリイミドフィルム等の、可撓性があり伸縮性が低いフィルムを使用することができる。
PETフィルムは硬質であり、ロールトゥロール成形に対応することができ、安価であるため好ましい。
固定シート50としてPETフィルムを使用する場合、伸縮性配線を固定するのに充分な強度を有するためにはその厚さが200μm以上であることが好ましい。
また、固定シート50は伸縮性配線基板の使用時に剥離するシートであるので、粘着層40からの剥離性がよい離型性のあるシートであることが好ましい。
[第2実施形態]
本発明の伸縮性配線基板において、固定シートが伸縮性配線シートの両方の主面に設けられた例を、本発明の伸縮性配線基板の第2実施形態として説明する。
図4は、本発明の第2実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。
図4に示す伸縮性配線基板2は、図1に示す伸縮性配線基板1において、伸縮性配線シート30の主面31(伸縮性配線20が設けられている側の主面)にも固定シートが設けられた構成である。
伸縮性配線シート30の主面31に設けられた固定シートを固定シート51、主面32に設けられた固定シート52として示している。
固定シート51と固定シート52は同じ固定シートであっても異なる固定シートであってもよい。
伸縮性配線シート30の主面31と固定シート51の間には粘着層は設けられていない。
伸縮性配線基板において伸縮性配線シートの両方の主面に固定シートが設けられていると、生体に伸縮性配線シートを貼り付ける際の作業性の観点から好ましい。
図4に示す伸縮性配線基板2を使用する場合は、生体への貼り付け作業の直前に固定シート52を剥がして粘着層40を露出させる。そして、粘着層40の粘着力を利用して伸縮性配線シート30の主面32側を生体に貼り付ける。この時点では固定シート51により伸縮性配線20に引張応力が加わった状態が維持されている。生体への貼り付け後に固定シート51を剥離することにより、伸縮性配線20に引張応力が加わった状態での伸縮性配線シート30の貼り付けを完了することができる。
[第3実施形態]
本発明の伸縮性配線基板において、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に設けられた固定シートが、スリットを有する第1の固定シートと、第1の固定シートに設けられた第2の固定シートである例を、本発明の伸縮性配線基板の第3実施形態として説明する。
図5は、本発明の第3実施形態に係る伸縮性配線基板を模式的に示す斜視図である。
図5に示す伸縮性配線基板3は、図4に示す伸縮性配線基板2において、伸縮性配線シート30の主面32(伸縮性配線が設けられていない側の主面)側の固定シートの構成が異なる。
また、図5に示す伸縮性配線基板3は、図4に示す伸縮性配線基板2とは上下を逆にして示しており、伸縮性配線シート30の主面32側を上、主面31側を下にして示している。
伸縮性配線シート30の主面32側の固定シートは、粘着層40に設けられる第1の固定シート53と第1の固定シート53に設けられる第2の固定シート54からなる。
第1の固定シート53は、伸縮性配線20に加わる引張応力の方向(図5中両矢印Lで示す方向)に対して傾いた向きにスリット55を有している。
なお、伸縮性配線に加わる引張応力の方向に対してスリットの向きが傾いているということは、引張応力の方向とスリットの方向が平行ではないことを意味している。
伸縮性配線に加わる引張応力の方向とスリットの方向がなす角は90°であることが好ましい。
このような伸縮性配線基板は、その製造工程において伸縮性配線を引張応力が加わった状態で固定シートにより固定することに適している。
また、伸縮性配線シートの両方の主面に固定シートが設けられていると、第2実施形態の伸縮性配線基板について説明した通り、生体に伸縮性配線シートを貼り付ける際の作業性の観点から好ましい。
本発明の伸縮性配線基板は、伸縮性配線に引張応力が加わった状態で伸縮性配線シートを生体に貼り付けることによって生体情報を取得して解析するためのセンサとして使用することができる。そして、引張応力が加わった状態の伸縮性配線は導電性粒子と、樹脂と、導電性粒子と樹脂の界面に存在する空隙とを有している。このような伸縮性配線を備えるセンサはゼロドリフトが生じにくくなる。また、センサの感度が向上する。
以下には、本発明の伸縮性配線基板の製造方法について説明する。
図6(a)は引張応力を加えていない伸縮性配線シートを模式的に示す斜視図であり、図6(b)は引張応力を加えた伸縮性配線シートを模式的に示す斜視図であり、図6(c)は固定シートを配置して伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定した状態を模式的に示す斜視図である。
(伸縮性配線シート準備工程)
伸縮性樹脂シートと伸縮性樹脂シートに形成された伸縮性配線とを備える伸縮性配線シートを準備する。
図6(a)には引張応力を加えていない伸縮性配線シート30を示している。伸縮性配線シート30の一方の主面32には粘着層40が設けられているが、粘着層はこの段階で設けられていても設けられていなくてもよい。
(第1の伸長工程)
第1の伸長工程では、伸縮性配線シートに対して引張応力を加える。
図6(b)には、図6(a)で示した伸縮性配線シート30に対して両矢印Lで示す方向に引張応力を加えた状態を示している。
この第1の伸長工程により、伸縮性配線を構成する導電性粒子と樹脂の界面に空隙が形成される。
(緩和工程)
緩和工程では、第1の伸長工程で加えた引張応力を緩める。図面で示す状態としては図6(a)に示す引張応力を加えていない伸縮性配線シート30と同様の状態となる。
(第2の伸長工程)
第2の伸長工程では、再度、伸縮性配線シートに対して引張応力を加える。図面で示す状態としては図6(b)に示す引張応力を加えた伸縮性配線シート30と同様の状態となる。
(固定工程)
固定工程では、第2の伸長工程で加えた引張応力が伸縮性配線に加わった状態で、伸縮性配線シートの主面に固定シートを配置する。
図6(c)には、伸縮性配線シート30の主面31に固定シート51を設け、主面32に粘着層40を介して固定シート52を設けた状態を示している。
固定シート51及び固定シート52を設けることによって、第2の伸長工程で加えた引張応力が伸縮性配線20に加わった状態を固定する。
固定シート51には図示しない薄い粘着層が設けられていて、固定シート51を伸縮性配線シート30の主面31に固定する。この粘着層は固定シート51側に強く付着しており、伸縮性配線基板の使用時に固定シート51を剥離する際には固定シート51側に残るので、伸縮性配線シート30の表面には残らない。
このようにして得られた伸縮性配線基板は図4に示した伸縮性配線基板2と同様である。
なお、図6(c)には伸縮性配線シート30の主面31と主面32の両方に固定シートを設けた形態を示しているが、いずれか一方の主面だけに固定シートを設けてもよい。
上記工程において、第1の伸長工程及び第2の伸長工程における引張速度及び伸度は特に限定されるものではなく、伸縮性配線の材料系によって変更することができる。
続いて、本発明の伸縮性配線基板の製造方法の別の実施形態について説明する。
この実施形態では、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に設けられた固定シートが、スリットを有する第1の固定シートと第1の固定シートに設けられた第2の固定シートである、図5に示す伸縮性配線基板3を製造する。
図7(a)は、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層を設け、さらに粘着層に第1の固定シートを設けた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(b)は、第1の固定シートにスリットを形成した状態を模式的に示す斜視図であり、図7(c)は、伸縮性配線シート及び第1の固定シートに対して引張応力を加えた状態を模式的に示す斜視図であり、図7(d)は、第1の固定シートに第2の固定シートを配置して伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定した状態を模式的に示す斜視図である。
(第1の固定シート形成工程)
第1の固定シート形成工程では、伸縮性配線シート準備工程ののち、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層を設け、さらに粘着層に第1の固定シートを設ける。
図7(a)には、伸縮性配線シート30の一方の伸縮性配線が設けられていない側の主面3に粘着層40を設け、さらに粘着層40に第1の固定シート53を設けた状態を示している。この時点では引張応力は加えられていない。
(スリット形成工程)
スリット形成工程では、第1の固定シートに、伸縮性配線シートに対して加える予定の引張応力の向きと傾いた向きにスリットを形成する。
図7(b)には、第1の固定シート53にスリット55を形成した状態を示している。
伸縮性配線シートに対して加える予定の引張応力の向きは図7(b)に両矢印Lで示す向きであるので、この向きに対して傾いた方向(平行でない方向)にスリットを形成する。第1の固定シートにスリットを形成することによって、後の第1の伸長工程で第1の固定シートも合わせて伸長させることができる。
(第1の伸長工程)
第1の伸長工程では、伸縮性配線シート及び第1の固定シートに対して引張応力を加える。
図7(c)には、伸縮性配線シート30及び第1の固定シート53に対して引張応力を加えた状態を示している。
第1の固定シート53にはスリット55が設けられているので、第1の固定シート53は伸縮性配線シート30とともに伸長することができる。
また、第1の固定シート53を設けることで粘着層40が露出しない状態のままで第1の伸長工程を行うことができるので作業性に優れている。
この第1の伸長工程により、伸縮性配線を構成する導電性粒子と樹脂の界面に空隙が形成される。
(緩和工程)
緩和工程では、第1の伸長工程で加えた引張応力を緩める。図面で示す状態としては図7(b)に示す引張応力を加えていない伸縮性配線シート30及び第1の固定シート53と同様の状態となる。
(第2の伸長工程)
第2の伸長工程では、再度、伸縮性配線シートに対して引張応力を加える。図面で示す状態としては図7(c)に示す引張応力を加えた伸縮性配線シート30及び第1の固定シート53と同様の状態となる。
(固定工程)
固定工程では、第2の伸長工程で加えた引張応力が伸縮性配線に加わった状態で第1の固定シートに第2の固定シートを配置して伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定する。
図7(d)には、第1の固定シート53に第2の固定シート54を配置して伸縮性配線20に引張応力が加わった状態を固定した状態を示している。また、伸縮性配線シート30の主面31に固定シート51も配置している。
第2の固定シート54及び固定シート51を設けることによって、第2の伸長工程で加えた引張応力が伸縮性配線20に加わった状態を固定する。
固定シート51には図示しない薄い粘着層が設けられていて、固定シート51を伸縮性配線シート30の主面31に固定する。この粘着層は固定シート51側に強く付着しており、伸縮性配線基板の使用時に固定シート51を剥離する際には固定シート51側に残るので、伸縮性配線シート30の表面には残らない。
また、第2の固定シート54にも図示しない薄い粘着層が設けられていて、第2の固定シート54を第1の固定シート53に固定する。第2の固定シート54と第1の固定シート53の間の固定は強固に行ってよい。伸縮性配線基板の使用時には第2の固定シート54と第1の固定シート53は一括して剥離するので、第2の固定シート54と第1の固定シート53の間での剥離が生じないことが好ましい。
このようにして得られた伸縮性配線基板は図5に示した伸縮性配線基板3と同様である。
なお、図7(d)には伸縮性配線シート30の主面31に固定シート51を設けた形態を示しているが、固定シート51は設けなくてもよい。
以下、本発明の伸縮性配線基板をより具体的に開示した実施例を示す。なお、本発明は、これらの実施例のみに限定されない。
伸縮性樹脂シートとしての熱可塑性ポリウレタン樹脂に、金属粉とエラストマー樹脂からなる混合物により形成されたダンベル型配線を形成して伸縮性配線シートを作製した。
この伸縮性配線シートに対し、引張応力を加える伸長工程を行ったものを実施例1、引張応力を加える伸長工程を行わなかったものを比較例1として、伸縮性配線シートに加わったひずみと抵抗値の関係を測定した。測定は伸長工程を行った直後に実施した。
図8(a)は、実施例1におけるひずみ、抵抗値、時間の関係を示すグラフであり、図8(b)は、比較例1におけるひずみ、抵抗値、時間の関係を示すグラフである。
この試験では、ひずみは0%-20%の間で50秒で3回程度の繰り返し回数になるように加えて、ひずみに対する抵抗値の変化を測定した。
この結果から、実施例1ではひずみが0%のときの抵抗値がひずみを繰り返し加えたのちにも変化していないことがわかる。一方、比較例1ではひずみが0%のときの抵抗値がひずみを繰り返し加えるにつれて上昇しているのがわかる。すなわち、実施例1ではゼロドリフトが生じておらず、比較例1ではゼロドリフトが生じている。
図9(a)は、実施例1におけるひずみと抵抗値の関係を示すグラフであり、図9(b)は、比較例1におけるひずみと抵抗値の関係を示すグラフである。
この試験では、ひずみを0%-20%の間で徐々に上昇させていき、ひずみに対する抵抗値の変化を測定した。複数本の線は繰り返し試験を行った場合の複数の結果を示している。
実施例1ではひずみ0%に対する抵抗値は7~9Ω程度、ひずみ20%に対する抵抗値は22~25Ω程度となっている。一方、比較例1ではひずみ0%に対する抵抗値は0.8~1.4Ω程度、ひずみ20%に対する抵抗値は1.5~2.0Ω程度となっている。
抵抗の変化量が約10倍異なるので、実施例1の方が感度が高いセンサとして使用できることが分かる。また、ひずみに対する抵抗値の変化が実施例1では線形であるのに対し、比較例1では線形ではなくややS字カーブになっている。
このことから、実施例1のほうがひずみと抵抗値の関係が明瞭であり、ひずみを抵抗値変化により計測するセンサとしての性能が高いことが分かる。
次に、伸長工程後に伸縮性配線に引張応力が加わった状態を保持することの効果を確認するための試験結果を示す。
実施例1と同様に伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第1の伸長工程を行い、緩和工程を行った後、第2の伸長工程を行い、固定シートにより伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定して、1日保管したものを実施例2とした。実施例1と同様に伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第1の伸長工程を行ったのち、緩和工程を行い、第2の伸長工程は行わず、さらに固定シートによる固定を行わずに1日保管したものを比較例2とした。
実施例2と比較例2の伸縮性配線シートに対し、伸縮性配線シートに加わったひずみと抵抗値の関係を測定した。実施例2の伸縮性配線シートは、固定シートを剥離して剥離直後に測定を行った。
図10(a)は、実施例2の伸縮性配線シートのひずみと抵抗値の関係を示すグラフであり、図10(b)は、比較例2の伸縮性配線シートのひずみと抵抗値の関係を示すグラフである。
図10(a)と図10(b)を比較すると、実施例2の伸縮性配線シートはひずみに対する抵抗値の変化の線形性が高く、ばらつきが小さい。また、抵抗値の変化量も大きく感度が高いセンサとして使用できることが分かる。
比較例2の伸縮性配線シートはひずみに対する抵抗値の変化の線形性が低く、ばらつきが大きい。また、抵抗値の変化量が小さいためセンサとしての感度が低いことが分かる。
1、2、3 伸縮性配線基板
10 伸縮性樹脂シート
20 伸縮性配線
21 配線
22 電極
23 導電性粒子
24 樹脂
25 空隙
30 伸縮性配線シート
31 伸縮性配線シートの主面(伸縮性配線側の主面)
32 伸縮性配線シートの主面(伸縮性配線側でない主面)
40 粘着層
50、51、52 固定シート
53 第1の固定シート
54 第2の固定シート
55 スリット

Claims (8)

  1. 伸縮性樹脂シートと前記伸縮性樹脂シートに形成された伸縮性配線とを備える伸縮性配線シートと、
    前記伸縮性配線シートの両方の主面に設けられた剥離可能な固定シートと、を備え、
    前記伸縮性配線は導電性粒子と、樹脂と、前記導電性粒子と前記樹脂の界面に存在する空隙とを有していることを特徴とする伸縮性配線基板。
  2. 前記伸縮性配線は、配線の延在方向に対向する電極を有する請求項1に記載の伸縮性配線基板。
  3. 前記伸縮性配線は引張応力が加わった状態で前記固定シートにより固定されている請求項1又は2に記載の伸縮性配線基板。
  4. 前記伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層が設けられ、前記粘着層に前記固定シートが設けられている請求項1~3のいずれか1項に記載の伸縮性配線基板。
  5. 前記伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層が設けられ、前記粘着層には第1の固定シートが設けられ、前記第1の固定シートは前記伸縮性配線に加わる引張応力の方向に対して傾いた向きにスリットを有しており、
    前記第1の固定シートにさらに第2の固定シートが設けられている請求項1~4のいずれか1項に記載の伸縮性配線基板。
  6. 伸縮性樹脂シートと前記伸縮性樹脂シートに形成された、導電性粒子と、樹脂とを含む伸縮性配線とを備える伸縮性配線シートを準備する伸縮性配線シート準備工程と、
    前記伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第1の伸長工程と、
    前記第1の伸長工程で加えた引張応力を緩める緩和工程と、
    再度、前記伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第2の伸長工程と、
    前記第2の伸長工程で加えた引張応力が前記伸縮性配線に加わった状態で前記伸縮性配線シートの両方の主面に剥離可能な固定シートを配置して前記伸縮性配線に引張応力が加わった状態とし、前記伸縮性配線が前記導電性粒子と前記樹脂の界面に存在する空隙を有する状態で固定する固定工程と、を行うことを特徴とする伸縮性配線基板の製造方法。
  7. 前記伸縮性配線シート準備工程において、配線の延在方向に対向する電極を有する伸縮性配線を備える伸縮性配線シートを準備する請求項6に記載の伸縮性配線基板の製造方法。
  8. 前記伸縮性配線シート準備工程ののち、伸縮性樹脂シートの伸縮性配線が設けられていない側の主面に粘着層を設け、さらに前記粘着層に第1の固定シートを設ける第1の固定シート形成工程と、
    前記第1の固定シートに、伸縮性配線シートに対して加える予定の引張応力の向きと傾いた向きにスリットを形成するスリット形成工程と、
    前記伸縮性配線シート及び前記第1の固定シートに対して引張応力を加える第1の伸長工程と、
    前記第1の伸長工程で加えた引張応力を緩める緩和工程と、
    再度、前記伸縮性配線シートに対して引張応力を加える第2の伸長工程と、
    前記第2の伸長工程で加えた引張応力が前記伸縮性配線に加わった状態で前記第1の固定シートに第2の固定シートを配置して前記伸縮性配線に引張応力が加わった状態を固定する固定工程と、を行う請求項6又は7に記載の伸縮性配線基板の製造方法。
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