JP7012504B2 - 土壌除去用治具及び山留め壁の構築方法 - Google Patents
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Description
汚染土壌側から非汚染土壌側へ地下水を通じて汚染物質が流入することを防止する技術として、汚染土壌側と非汚染土壌側との間に配設される浄化用地下壁が提案されている(特許文献1)。
この浄化用地下壁は、複数の平板状の鋼矢板が継手を介して連続されてなる壁体を、所定の対向間隔をあけて二重に配置し、その二重の壁体間に、浄化作用を有する透過性材料を充填したものである。
また汚染土壌の除去を目的とするものではないが、山留め壁の構築に関連する技術として、地盤の掘削に複数枚の鋼矢板を波板状に連ねてなる鋼矢板壁を用いる鋼矢板工法において、鋼矢板壁の内側に地下構造物等を構築し、掘削箇所を埋め戻した後の鋼矢板壁の引き抜き時に周辺地盤が変形することを防止する方法が提案されている(特許文献2)。
この方法は、前記鋼矢板壁の腹側に現れる波の凹所に合致する形の台形筒状の筒体の下端面を傾斜面とし、この下端面に開閉自在な傾斜底板を取り付けてなるケーシングを用いて、掘削箇所を埋め戻した後に鋼矢板壁の腹側の凹所に沿って前記ケーシングを圧入してケーシングと土壌との付着を断ち、ケーシング内に充填材料を充填するのである。
この場合には、一定の敷地境界線で囲まれた売却予定地から汚染土壌を完全に除去することが求められるのであるが、敷地境界線に沿って汚染土壌を完全に除去することが技術的に容易ではないのである。
特許文献1では浄化用地下壁の設置箇所の土壌を除去することになるが、前述の継手の部分が鋼矢板の残りの板部分より厚みがあり、局部的に壁内外の両側へ突き出ているため、残りの板部分を敷地境界線に合わせると、継手が隣の土地に入ってしまうし、継手を敷地境界線に合わせると、継手以外の箇所で汚染土壌の取り残しが生じてしまう。
もちろん、隣接する土地の所有者の許可を得て敷地境界線の両側に亘って作業をすることができれば問題ないのであるが、そうした許可を得ることは通常は困難である。
土地を売却する場合だけでなく、土壌汚染対策法によって区域指定された土地においてその指定の解除を求めて汚染土壌を除去する場合にも同様の問題を生ずる。
他方、汚染土壌が深くまで存在する場合や地盤条件が悪い場合には山留め壁オープンカット工法で掘削せざるを得ない。山留め壁を設け、その内部を掘削する工法である。山留め壁は曲げ剛性が必要なので、最低でも20cm程度の厚みが必要である。この工法の具体例を以下に説明する。
(1)親杭横矢板工法
この工法は、山留め壁を設置する方向(敷地境界線の方向)に、2枚のフランジを向けてH形鋼の親杭を複数配列するとともに、隣り合うH形鋼のフランジ同士の間に複数の横矢板を架設するものである。通常は、フランジのうちH形鋼の内側部分に横矢板を架設するのであるが(内矢板方式という)、敷地境界線に近い方の型鋼の外側部分に所定の厚みの横矢板を架設して、敷地境界線に沿って山留め壁を構築することができる。しかしながら、この方法は手間がかかる。
(2)建込み式簡易山留め工法
この工法は、2枚の平行鉛直なパネルの両側部の対応箇所を一定の間隔をあけてサポートバーで連結してなるユニット繋ぎピンで連結されてなる土留部材を用いる(非特許文献1)。土留め壁構築予定箇所に深い溝を穿設し、この溝の底に1段目の土留め部材を配置し、下側の土留め部材の上に上側の土留め部材を載置して両者を固定するという作業を繰り返すものである。しかしながら、作業のために溝内に作業員が入らなければならず、手数がかかる。
(3)鋼矢板工法
山留め壁として、前述の鋼矢板を用いる場合には、掘削対象の土地に対する収まり次第で前記特許文献1と同様の問題を生ずる。すなわち、波板状の鋼矢板壁の背側の凹所付近を敷地境界線Bに合わせると突端が隣の土地に侵入してしまうし(本願図10(B)参照)、突端を敷地境界線Bに合わせると、凹所と敷地境界線Bとの間に汚染土壌が残ってしまう(同図(A)参照)。
従来技術では鋼矢板壁の背側の凹所と敷地境界線との間の除去する適当な方法がなかった。前述の特許文献2のケーシングは鋼矢板壁の腹側の凹所に適用されるものであり、鋼矢板壁の背側の凹所に適用すると、ケーシングの圧入により、鋼矢板壁の背側の凹所と敷地境界線との間にあった土壌を敷地境界線の外に押し出すことになり兼ねない。
本発明の第2の目的は、土壌を除去する箇所を的確に位置決めすることができる工夫を有する土壌除去用治具、及び当該治具を用いた土壌除去方法を提供することである。
下端開口の鉛直の土壌引抜き用の筒壁部を有し、この筒壁部の一部を敷地境界線への差込み用の基板部としたケーシングと、
ケーシングの位置決め用の位置決め機構と、を具備し、
前記筒壁部と位置決め機構とは、上方から見て基板部の延長線を越えて反対側へ突出しないように形成されており、
前記位置決め機構は、上方から見て筒壁部から前記延長線に沿って延出された延長板部の先端から、延長線より離れる向きへ位置合わせ用板部を突設させてなり、かつこれら延長板部及び位置合わせ用板は前記基板部と同様に鉛直板として形成されており、
位置決め機構は、上方から見て前記四角波の一つの線分及び当該線分と連続する凹字部分の位置部分と合致する平面形状を有しており、
また前記筒壁部は、前記敷地境界線と四角波の凹字部分とで囲まれる領域をカバーできる広さの平面形状を有する。
図4の治具は、図6(A)に示すように矢板壁の端部に適用されるもの、図1の治具は矢板壁の他の箇所に適用されるものである。
ケーシング4を構成する筒壁部6の一部は、敷地境界線Bに沿って埋め込むための平らな基板部12に形成されており、位置決め機構14は、基板部12から敷地境界線に沿って延長された延長板部16より敷地境界線と反対側へ位置合わせ用板部18を突出してなる位置合わせ用板部18を含む。従って、敷地境界線に沿って敷地境界線を超えないように土壌を除去することに適している。
「合致する」とは、上方から見て重なるように形成されている。
「ケーシング」は、敷地内に圧入した後に引き抜くことで、その筒壁部内の土壌を引き上げる効果を有する。その筒壁部の下部を内側に窄まる傾斜壁部に形成してもよく、これにより、土壌の落下を防止することができる。
図示例のケーシングは、矢板壁の凹字部分と対応した形状を有するが、少なくとも矢板壁の背側の凹所と敷地境界線Bとの領域をカバーできれば、どのような形状でも構わない。
なお、本明細書において、四角波の「凹字部分」とは、平面形状が凹の文字の形をした波の一部を意味し、四角波状の壁の表面の凹みである「凹所」とは区別して用いる。
前記筒壁部のうち基板部を除く残りの部分は、前記四角波の一つの凹字部分に対応する平面形状を有する・
例えばケーシングの平面形状が前記凹字部分を含む半円形状であるとすれば、その半円形内に埋め戻した土壌のうち凹字部分を超える部分は、前記四角波状の矢板壁を構築したときに、矢板壁の内側にはみ出すことになる。
そうすると、矢板壁の内側を掘削して新しい土壌を埋め戻したときに、そのはみ出し部分は無駄になることになる。汚染土壌を残さないために多少のはみ出しはあっても構わないが、はみ出し部分が大きいと非効率である。そこで前述の残りの部分8の平面形状を上述のように設計した。
「対応する」とは、おおよそ“合致する”という程度の意味であるが、前記凹字部分より若干大きい相似形とすることを含む。余裕(アローアンス)を持たせることにより、汚染土壌の取り残しをなくすためである。
前記位置合わせ用板部の先端部に矢板壁との接合用の継手を付設している。
汚染物質に汚染された土壌を有する地盤の敷地境界線に沿って配設される山留め壁の施工方法であって、
本設矢板の打ち込み予定位置に前記第1の手段から第3の手段の何れかに記載の土壌除去用治具を圧入することにより、前記筒壁部内に土壌を進入させる第1の工程と、
前記土壌除去用治具を引き抜くことで前記土壌を除去する第2の工程と、
前記土壌が除去された空隙に清浄土壌を埋め戻す第3の工程と、
引き抜いた土壌除去用治具に代えて本設矢板を圧入する第4の工程と
を含む。
第3の工程として、汚染土壌の引き上げにより生じた空隙に清浄土壌を埋め戻す。
第4の工程として、引き抜いた土壌除去用治具2に代えて本設矢板Sを圧入する(図8(B)参照)。
これにより、敷地境界線Bに沿って的確に汚染土壌を除去できる。
第2の手段に係る発明によれば、前記筒壁部のうち基板部を除く残りの部分は、前記四角波の一つの凹字部分に対応する平面形状を有するから、汚染土壌を除去した後の土壌の埋め戻しを効率的に行うことができる。
第3の手段に係る発明によれば、前記位置合わせ用板部18の先端部に矢板壁との接合用の継手を付設したから、位置合わせが容易となる。
第4の手段に係る発明によれば、土壌除去用治具2を圧入し、引き抜くだけで、敷地境界線に沿って土壌を除去できるから、山留め壁の構築を効率的に行うことができる。
図1から図3には標準型の土壌除去用治具2Aを、図4から図5は、矢板壁の端用の土壌除去用治具2Bをそれぞれ示している。
なお、図10に、従来公知の矢板壁の構成を示す。この矢板壁は、複数の鋼矢板Sを相互に連結されてなり、全体として、上方から見て直線状の線分s1と凹字部分s2と交互に繰り返す台形波状に形成されている。こうした矢板壁が図9に示す如く、敷地、すなわち掘削予定地(ターゲット領域Tという)の敷地境界線Bに沿って山留め壁Rとして構築されている。線分s1は敷地境界線Bに沿って配置され、凹字部分s2はターゲット領域T内を通るように構成されている。図示の鋼矢板Sは、上辺と、この上辺の両端から斜めに伸びる2つの側辺と、各側辺の下端から上辺と反対向きに延びる2つの下辺とからなる構成、或いはこの構成を上下反転させた構成を有し、下辺の両側には矢板側継手J2を有する。図8(A)及び(B)に示すように、鋼矢板S同士は、埋設済の先行鋼矢板Sの矢板側継手J2に新たな鋼矢板Sの矢板側継手J2を合わせ、新たな鋼矢板Sを圧入することで順次接続することができる。
なお、筒壁部6の平面形状は、矢板壁の平面形状に代えて変更しても良いものとし、例えば矢板壁の平面形状が矩形波であれば、筒壁部6の形状を長方形状としても良い。さらに本実施形態では、筒壁部6の平面形状は、矢板壁の平面形状に対応させているが、矢板壁の凹字部分s2と敷地境界線Bとの間の領域T2にカバーする限り、矢板壁の平面形状を離れて適宜設計しても良い。
前記筒壁部6は、基本的に鉛直な直筒形状であるが、本実施形態では、側板部8bの下端部を僅かに内側へ傾斜する傾斜板部10に形成している。これら傾斜板部10は形成しなくても構わない。
前記筒壁部6の筒長は、敷地中の汚染物質が存在する層の深さ以上であれば良く、矢板壁の上下方向長さと同じである必要はない。
前記基板部12は、敷地境界線Bに沿って土壌に圧入するためのであり、鉛直な平板として形成される。基板部12の幅方向の長さは、前記四角波の凹字部分s2の両端の幅(図示例では前記台形の長辺の幅)と等しいものとする。
本実施形態の土壌除去用治具を形成するときには、基板部と延長板部と位置合わせ用板部はもともと一枚の鋼材から図1の形状に折り曲げ加工し、別の一枚の鋼材から筒壁本体の形に折り曲げ加工し、さらに筒壁本体の両端部を基板部の両端部に対して溶接させればよい。
前記側板部8bは、土壌除去用治具を土壌に圧入させるときに圧入機構の把持部で把持させる箇所であり、そうした操作に耐えられる程度の強度を有する。
前記延長板部16は、前記基板部12の端部から、上方より見て当該基板部を直線的に延長する方向に延びている。この延長板部の幅方向の長さは、前記四角波の線分S1の巾(又は前記台形の短辺の幅)と等しいものとする。
位置合わせ用板部18は、前記延長板部16から斜めに突出する第1板部18a及び第1板部18aの先端から延長板部と同じ方向に延びる第2板部18bを有しており、この第2板部18bの先端に前述の矢板側継手J2と結合可能な治具側継手J1が付設されている。すなわち、土壌除去用治具2と既に埋設された鋼矢板Sとは、図7(A)及び(B)に示すように、この鋼矢板の矢板側継手J2に治具側継手J1を合わせて土壌除去用治具2を土壌に圧入させることにより、連結することができる。
前記位置合わせ用板部18の平面形状は、延長板部16側の筒壁本体8の一部に一致する。この筒壁本体8の一部とは、台形波状の前記矢板壁の凹字部分の端から矢板側継手J2までの部分である。図示例の矢板壁では、その台形の底辺中間点に相当する箇所に矢板側継手J2が設けられているから、位置合わせ用板部18の平面形状は前記台形の一つの斜辺及び底辺の中間点までの形状である。このような形状とすることにより、前記治具側継手J1を矢板側継手J2と結合するだけで、ケーシング4を所定の位置、すなわち、既に設置した鋼矢板Sの先に鋼矢板Sを順次連結していったときに矢板壁の背側に現れる凹所の位置に合わせることができる。
まず土壌除去用治具の位置決め機構14を用いて、当該治具を圧入する位置を決める。
敷地境界線Bの一辺の端付近の土壌を除去するときには、端用土壌除去用治具2Bの位置決め機構14の先端を前記一辺の端に合わせ、延長板部16及び基板部12を敷地境界線Bに沿わして圧入させる(図6(A)参照)。土壌除去用治具の下端が汚染深度を超えたところで、圧入から引き抜きに反転し、ケーシング4内に詰まった汚染土壌とともに引き抜く。
地上に引き上げた土壌除去用治具のケーシング4内部から汚染土を掻き出し、必要に応じて洗浄して、完全に汚染土を取り除く。
ケーシング4が引き抜かれた箇所には、完全に汚染土を取り除いた空洞ができる。この空洞内に、汚染されていない砂等の清浄土壌Qを埋め戻す(図6(B)参照)。そして緩みが残らないように、十分に締め固める。
次に敷地境界線の一辺を起点として、通常の半分のサイズの鋼矢板Sを圧入する(図6(C)参照)。
この鋼矢板Sの矢板側継手J2に治具側継手J1を合わせて、標準型の土壌除去用治具2Aを圧入し(図6(D)参照)、
再び汚染深度に達した後に引き上げて砂等の清浄土壌Qを埋め戻し(図6(E)参照)、
鋼矢板の左右が清浄な砂等で埋め戻された状態で新しい通常サイズの鋼矢板を圧入し(図6(F)参照)、
さらに標準型の土壌除去用治具2Aの圧入(図6(G)参照)、治具の引き抜き及び清浄土壌Qの埋め戻し(図6(H)参照)、新たな鋼矢板Sの圧入(図6(I)参照)という一連の工程を繰り返し、一方向に直線的に連なる矢板壁を施工する。この作業を敷地境界線の4辺に繰り返すことで、山留め壁Rが完成される。
山留め壁Rが完成された時点では、矢板壁の背側の凹所と敷地境界線との間の領域T2では、汚染土壌は全て除去され、図9(A)に示すように、清浄な土壌Qで埋め戻されている。
しかる後に山留め壁Rの内側の汚染土を掘削除去すると、ターゲット領域T内の汚染土壌は完全に除去される(図9(B)参照)。
4…ケーシング 6…筒壁部 8…筒壁本体 8a…底板部 8b…側板部
10…傾斜板部 12…基板部
14…位置決め機構 16…延長板部 18…位置合わせ用板部
18a…第1板部(側板相当部) 18b…第2板部(底板相当部)
B…敷地境界線
O…外部領域 Q…入れ替え土壌(清浄土壌) R…山留め壁
S…鋼矢板 s1…直線部分 s2…凹字部分 J1…治具側継手 J2…矢板側継手
T…ターゲット領域 T1…鋼矢板内側領域 T2…鋼矢板と敷地境界線との間の領域
Claims (4)
- 敷地境界線の内側に、敷地境界線に重なる線分と敷地境界線の内側を通る凹字部分とが交互に繰り返される四角波状の矢板壁を埋設する工法において埋設箇所付近の土壌を予め取り除くために使用される土壌除去用治具であって、
下端開口の鉛直の土壌引抜き用の筒壁部を有し、この筒壁部の一部を敷地境界線への差込み用の基板部としたケーシングと、
ケーシングの位置決め用の位置決め機構と、を具備し、
前記筒壁部と位置決め機構とは、上方から見て基板部の延長線を越えて反対側へ突出しないように形成されており、
前記位置決め機構は、上方から見て筒壁部から前記延長線に沿って延出された延長板部の先端から、延長線より離れる向きへ位置合わせ用板部を突設させてなり、かつこれら延長板部及び位置合わせ用板は前記基板部と同様に鉛直板として形成されており、
位置決め機構は、上方から見て前記四角波の一つの線分及び当該線分と連続する凹字部分の位置部分と合致する平面形状を有しており、
また前記筒壁部は、前記敷地境界線と四角波の凹字部分とで囲まれる領域をカバーできる広さの平面形状を有することを特徴とする、土壌除去用治具。 - 前記筒壁部のうち基板部を除く残りの部分は、前記四角波の一つの凹字部分に対応する平面形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の土壌除去用治具。
- 前記位置合わせ用板部の先端部に矢板壁との接合用の継手を付設したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の土壌除去用治具。
- 汚染物質に汚染された土壌を有する地盤の敷地境界線に沿って配設される山留め壁の施工方法であって、
本設矢板の打ち込み予定位置に前記請求項1から請求項3の何れかに記載の土壌除去用治具を圧入することにより、前記筒壁部内に土壌を進入させる第1の工程と、
前記土壌除去用治具を引き抜くことで前記土壌を除去する第2の工程と、
前記土壌が除去された空隙に清浄土壌を埋め戻す第3の工程と、
引き抜いた土壌除去用治具に代えて本設矢板を圧入する第4の工程と
を含むことを特徴とする、山留め壁の施工方法。
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