JP7009790B2 - 半導体封止用樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents

半導体封止用樹脂組成物および半導体装置 Download PDF

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Description

本発明は、半導体封止用樹脂組成物および半導体装置に関する。
半導体装置は、たとえば基板上に搭載された半導体素子を、封止用樹脂組成物を用いて封止成形することにより形成される。このような半導体装置を封止する樹脂組成物に関する技術として、封止用樹脂組成物中にクリストバライトを含ませる技術が知られている(特許文献1、2参照)。
すなわち、特許文献1においては、硬化後の封止樹脂としての熱伝導性及び低吸水性を付与する目的として、また、特許文献2においては、硬化後の封止樹脂として耐トラッキング性や耐湿特性を付与する目的として、樹脂組成物中にクリストバライトを配合している。
特許文献1、2において、クリストバライトを封止用樹脂組成物に適用する理由としては以下のように考えられる。すなわち、クリストバライトは、その特異な結晶構造により、特に加熱時において顕著な膨張特性を発揮する。よって、熱硬化を行う際に、このクリストバライトが著しく膨張し、硬化物に剛性を持たせ、上記特性を実現することができると考えられる。
特開平11-302506号公報 特開2013-112710号公報
しかしながら、本発明者が検討したところ、上記文献に記載の封止用樹脂組成物を用いて成形された半導体パッケージにおいて、リフロー処理時における反りの発生やクラックの発生の抑制の点で、改善の余地を有していることが判明した。
クリストバライトは、230℃から260℃の高温領域において、結晶構造が相転移するため、急激に膨張するという熱時特性を有している。また、半導体装置の製造プロセス中のリフロー処理温度は、クリストバライトの相転移が生じる温度領域よりも高温で行われており、例えば、一般的に260℃が採用されている。
本発明者は、リフロー処理時におけるクリストバライトの熱時膨張特性に着眼し、検討を進めた結果、このようなクリストバライトを含有する半導体封止用樹脂組成物からなる硬化物において、リフロー処理時の内部応力を低減することにより、反りの発生を抑制するとともに、クラックの発生を抑制できることを見出した。
本発明者はさらに検討したところ、リフロー処理時の内部応力を制御する因子として、硬化物の熱時寸法変化率と、硬化物の熱時曲げ弾性率とに相関があり、これらを小さく制御することにより、反りおよびクラックの発生を抑制できることが分かった。さらに検討を深めた結果、硬化物の熱時寸法変化率として、175℃から260℃における寸法変化率、硬化物の熱時曲げ弾性率として、260℃における曲げ弾性率E260を採用し、これらの積値を指標とすることにより、リフロー処理時の内部応力を安定的に評価することを見出した。このような知見に基づきさらに鋭意研究したところ、寸法変化率と曲げ弾性率E260との積値である指標を所定値以下とすることにより、リフロー処理時に、反りの発生の抑制を抑制できるとともに、クラックの発生の抑制できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、
前記無機充填材は、クリストバライトを含み、
前記エポキシ樹脂がトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の中から選ばれる1種以上を含み、
前記クリストバライトの平均粒径が0.5μm以上20μm以下であり、
熱機械分析(TMA)で測定した当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃における長さをL1(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化量をL1→2(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化率ΔL(%)をL1→2/L1×100と表し、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、260℃における曲げ弾性率をE260(MPa)としたとき、
260℃における熱時応力を示すΔL×E260が、50以上630以下であり、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が155℃以上である、半導体封止用樹脂組成物が提供される
また、本発明によれば、
基板と、
前記基板の一面上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材層と、を備える、半導体装置であって、
前記封止材層は、上記の半導体封止用樹脂組成物の硬化物である、半導体装置が提供される。
本発明によれば、半導体パッケージにおける反りの発生およびクラックの発生を抑制できる半導体封止用樹脂組成物およびそれを用いた半導体装置を提供することができる。
半導体装置の一例を示す断面図である。 構造体の一例を示す断面図である。
以下、実施の形態について、適宜図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。
[半導体封止用樹脂組成物]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の概要について説明する。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含むことができる。当該無機充填材は、クリストバライトを含むことができる。
本実施形態において、熱機械分析(TMA)で測定した当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃での長さをL1(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化量をL1→2(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化率ΔL(%)をL1→2/L1×100と表し、当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、260℃における曲げ弾性率をE260(MPa)としたとき、260℃における熱時応力を示すΔL×E260が、50以上630以下とすることができる。
本実施形態において、上記Lは、次のようにして測定することができる。例えば、半導体封止用樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得る。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化する。この直方体の試験片に対して、熱機械分析装置を用いて、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で熱機械分析を測定する。熱機械分析装置の設置台に試験片の設置面(4mm×4mm)が対向するように載置し、試料設置台とプローブの間が試験片の長手方向(15mm)となるように設置する。
そして、上記Lは、得られた試験片の25℃における長さを基準長さ(例えば、15mm)としたときに、以下の式で表すことができる。
ΔL(175℃から260℃までの寸法変化率:%)=(175℃から260℃までの寸法変化量L1→2:μm)/(175℃の長さL1:μm))×100
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、基板上に搭載された半導体素子(半導体チップ等)を封止する封止樹脂層を形成するために用いられる。当該封止樹脂層は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化体(封止材)で構成される。
本実施形態において、L×Eを上記上限値以下とすることにより、リフロー処理時において、得られる半導体パッケージにおける反りの発生とともにクラックの発生を抑制できる。本実施形態において、L×Eの上限値は、例えば、630以下であり、好ましくは、600以下である。175℃から260℃までの寸法変化率ΔLは、クリストバライトの約230℃における相転移温度近傍を跨ぐ温度を指標としており、それによってクリストバライトの急激な相転移に起因した熱的変化を安定的に評価することが可能になる。
一方で、L×Eの下限値は、特に限定されないが、例えば、50以上としてもよく、100以上としてもよく、200以上としてもよく、320以上としてもよい。これにより、下地基材に対する熱時特性を高め、反りが大きくなることを抑制できる。
本実施形態によれば、半導体封止用樹脂組成物を使用することにより、リフロー処理時において、得られる半導体パッケージにおける反りの発生とともにクラックの発生を抑制できる。これにより、信頼性に優れた半導体パッケージの構造を実現することができる。
本実施形態では、たとえば半導体封止用樹脂組成物中に含まれる各成分の種類や配合量、半導体封止用樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、上記ΔL×E260を制御することが可能である。これらの中でも、たとえば、硬化剤および硬化促進剤に対するエポキシ樹脂のエポキシ当量を多くすること等のより低架橋密度の硬化物とすること、水酸化アルミニウムの添加量を抑制すること、低応力剤を使用すること、クリストバライトとして、球形状、小粒径、低添加量のもとを使用すること、シリカを併用すること、カップリング剤処理により無機充填材の分散性を向上させること等が、上記ΔL×E260を所望の数値範囲とするための要素として挙げられる。
続いて、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の組成について説明する。
[(A)エポキシ樹脂]
本実施形態における(A)エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有するモノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができ、その分子量や分子構造は特に限定されない。本実施形態においては、(A)エポキシ樹脂として、とくに非ハロゲン化エポキシ樹脂を採用することが好ましい。
本実施形態において、(A)エポキシ樹脂は、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂から選択される一種類または二種類以上を含むものである。
これらのうち、耐湿信頼性と成形性のバランスを向上させる観点からは、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがより好ましい。また、半導体装置の反りを抑制する観点からは、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがとくに好ましい。さらに流動性を向上させるためにはビフェニル型エポキシ樹脂がとくに好ましく、高温の弾性率を制御するためにはフェノールアラルキル型エポキシ樹脂がとくに好ましい。
(A)エポキシ樹脂としては、たとえば下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記式(2)で表されるエポキシ樹脂、下記式(3)で表されるエポキシ樹脂、下記式(4)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(5)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることができる。これらの中でも、下記式(1)で表されるエポキシ樹脂、および下記式(4)で表されるエポキシ樹脂から選択される一種以上を含むものがより好ましい態様の一つとして挙げられる。
Figure 0007009790000001
(式(1)中、Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、Arがナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。Arはフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。RおよびRは、それぞれ独立に炭素数1~10の炭化水素基を表す。gは0~5の整数であり、hは0~8の整数である。nは重合度を表し、その平均値は1~3である。)
Figure 0007009790000002
(式(2)中、複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0~4である。)
Figure 0007009790000003
(式(3)中、複数存在するRおよびRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0~4である。)
Figure 0007009790000004
(式(4)中、複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0~4である。)
Figure 0007009790000005
(式(5)中、複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。nは重合度を表し、その平均値は0~4である。)
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物中における(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体に対して5質量%以上であることが好ましく、7質量%以上であることがより好ましく、10質量%以上とすることが特に好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形性のさらなる向上を図ることができる。
一方で、半導体封止用樹脂組成物中における(A)エポキシ樹脂の含有量は、樹脂組成物の全体に対して40質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましい。(A)エポキシ樹脂の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂を備える半導体装置について、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
本実施形態において、「樹脂組成物の固形分」とは、樹脂組成物中における不揮発分を指し、水や溶媒等の揮発成分を除いた残部を指す。また、本実施形態において、樹脂組成物全体に対する含有量とは、溶媒を含む場合には、樹脂組成物のうちの溶媒を除く固形分全体に対する含有量を指す。
[(B)硬化剤]
本実施形態における(B)硬化剤は、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤、が挙げられる。これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点からフェノール系硬化剤が好ましい。
<フェノール系硬化剤>
フェノール系硬化剤としては、半導体封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はないが、例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェノールメタン骨格を有するフェノール樹脂、などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<アミン系硬化剤>
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DETA)やトリエチレンテトラミン(TETA)やメタキシレリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)やm-フェニレンジアミン(MPDA)やジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)や有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<酸無水物系硬化剤>
酸無水物系硬化剤としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)やメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)や無水マレイン酸などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)や無水ピロメリット酸(PMDA)やベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)、無水フタル酸などの芳香族酸無水物などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<メルカプタン系硬化剤>
メルカプタン系硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
<その他硬化剤>
その他の硬化剤としては、イソシアネートプレポリマーやブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物、カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられ、これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、上記のうち異なる系の硬化剤の2種以上を組み合わせて用いてもよい。
(B)硬化剤がフェノール系硬化剤の場合、(A)エポキシ樹脂と(B)硬化剤との当量比、すなわち、エポキシ樹脂中のエポキシ基モル数/フェノール系硬化剤中のフェノール性水酸基モル数の比は、特に制限はないが、成形性と耐リフロー性、耐クラック性に優れるエポキシ樹脂組成物を得るために、0.5以上2以下の範囲が好ましく、0.6以上1.8以下の範囲がより好ましく、1.0以上1.5以下の範囲が最も好ましい。
[(C)無機充填材]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、(C)無機充填材を含むことができる。当該(C)無機充填材は、少なくともクリストバライトを含むことができる。
本実施形態に用いることのできるクリストバライトは、特に形状は制限されるものではなく、球状のもの、破砕状のもの、どちらでも使用することができる。クラック抑制の観点から、球状クリストバライトを用いることができる。
本実施形態のクリストバライトの平均粒径の上限値は、例えば、20μm以下が好ましく、15μm以下がより好ましく、13μm以下がさらに好ましい。これにより、半導体封止用樹脂組成物全体に偏りなくクリストバライトを分散させることができ、半導体封止用樹脂組成物の硬化物に対して、熱伝導性や耐吸湿性を効率的に付与することができる。また、クリストバライトの平均粒径の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.5μm以上としてもよく、3μm以上としてもよく、5μm以上としてもよい。これにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性を向上させることができる。本願明細書中の実施例では、平均粒径が0.5μm以上20μm以下のクリストバライトを使用した。
なお、本明細書において、「平均粒径」とは体積50%平均粒子径(D50)を指し、たとえば、(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD-7000を使用して測定することができる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物中におけるクリストバライトの含有量は、樹脂組成物の全体に対して5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、12質量%以上とすることが特に好ましい。クリストバライトの含有量を上記下限値以上とすることにより、樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂を備える半導体装置について、耐熱性や耐吸湿性をより一層向上させることができる。
一方で、半導体封止用樹脂組成物中におけるクリストバライトの含有量は、樹脂組成物の全体に対して60質量%以下であることが好ましく、50質量%以下であることがより好ましい。クリストバライトの含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の高い流動性を確保することや、パッケージ表面の耐クラック性を向上することができる。
また、本実施形態において、(C)無機充填材の構成材料としては、クリストバライト以外の他の無機充填材を併用することができる。併用できる無機充填材の種類は、とくに限定されないが、たとえば溶融シリカ、結晶シリカ、微粉シリカ等のシリカ、アルミナ、窒化珪素、窒化アルミ、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等が挙げられ、これらのうちいずれか1種以上を使用できる。これらの中でも、汎用性に優れている観点から、シリカを用いることがより好ましい。また、(C)無機充填材として、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛、モリブデン酸亜鉛等の難燃性を付与できる成分を含ませることも好ましい態様であるといえる。
また、他の無機充填材の平均粒径(D50)としては、例えば、0.5μm以上でもよく、一方で、50μm以下でもよく、好ましくは35μm以下でもよい。
(C)無機充填材として、シリカを併用する場合、たとえば異なる平均粒径(D50)の球状シリカを二種以上併用することができる。
また、本実施形態においては、シリカとして、平均粒径1μm以下の微粉シリカを含むことが、半導体封止用樹脂組成物の充填性を向上させる観点や、半導体装置の反りを抑制する観点から、好ましい態様の一つとして挙げられる。
(C)無機充填材全体の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して30質量%以上であることが好ましく、45質量%以上であることがより好ましく、50質量%以上であることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記下限値以上とすることにより、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される封止樹脂の低吸湿性および低熱膨張性を向上させ、耐湿信頼性や耐リフロー性をより効果的に向上させることができる。一方で、(C)無機充填材の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して88質量%以下であることが好ましく、85質量%以下とすることがより好ましく、82質量%以下とすることが特に好ましい。(C)無機充填材の含有量を上記上限値以下とすることにより、半導体封止用樹脂組成物の流動性の低下に伴う成形性の低下や、高粘度化に起因したボンディングワイヤ流れ等を抑制することが可能となる。なお、(C)無機充填材の上記上限値については、上記に限られず、有機基板の線膨張係数等の物性や厚み等に合わせて適宜選択することが可能である。このような観点から、(C)無機充填材の含有量は、有機基板の種類にあわせて80質量%以下、または70質量%以下とすることが可能である。
また、(C)無機充填材全体の含有量をこのような範囲に制御することにより、硬化物の線膨張係数α、α、25℃における曲げ弾性率E25や、260℃における曲げ弾性率E260等の物性値を所望の範囲とすることがより容易となる。このため、L×Eを所望の数値範囲にすることが容易になるほか、半導体装置の反りの抑制に寄与することも可能となる。
[(D)硬化促進剤]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば(D)硬化促進剤をさらに含むことができる。(D)硬化促進剤は、(A)エポキシ樹脂と、(B)硬化剤と、の架橋反応を促進させるものであればよく、一般の半導体封止用樹脂組成物に使用するものを用いることができる。
本実施形態において、(D)硬化促進剤は、たとえば有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、前記アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができる有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるテトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007009790000006
(上記一般式(6)において、Pはリン原子を表す。R、R、RおよびRは芳香族基またはアルキル基を表す。Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。x、yは1~3の数、zは0~3の数であり、かつx=yである。)
一般式(6)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られるがこれに限定されるものではない。まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007009790000007
(上記一般式(7)において、Pはリン原子を表す。Rは炭素数1~3のアルキル基、Rはヒドロキシル基を表す。fは0~5の数であり、gは0~3の数である。)
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。しかしこれに限定されるものではない。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007009790000008
(上記一般式(8)において、Pはリン原子を表す。R10、R11およびR12は炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。R13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。)
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が半導体封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物で用いることができるホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 0007009790000009
(上記一般式(9)において、Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。R16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。式中R20は、基YおよびYと結合する有機基である。式中R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。R20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。Zは芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。)
一般式(9)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
また、一般式(9)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(9)中の-Y-R20-Y-、およびY-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2’-ビフェノール、1,1’-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
また、一般式(9)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法としては、メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。しかし、これに限定されるものではない。
本実施形態において、(D)硬化促進剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましく、0.25質量%以上であることがとくに好ましい。(D)硬化促進剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止成形時における硬化性を効果的に向上させることができる。
一方で、(D)硬化促進剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましい。(D)硬化促進剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止成形時における流動性の向上を図ることができる。
[(E)カップリング剤]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば(E)カップリング剤を含むことができる。(E)カップリング剤としては、たとえばエポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシラン、ビニルシラン、メタクリルシラン等の各種シラン系化合物、チタン系化合物、アルミニウムキレート類、アルミニウム/ジルコニウム系化合物等の公知のカップリング剤を用いることができる。これらを例示すると、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アニリノプロピルトリメトキシシラン、γ-アニリノプロピルメチルジメトキシシラン、γ-[ビス(β-ヒドロキシエチル)]アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β-(アミノエチル)-γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン、γ-(β-アミノエチル)アミノプロピルジメトキシメチルシラン、N-(トリメトキシシリルプロピル)エチレンジアミン、N-(ジメトキシメチルシリルイソプロピル)エチレンジアミン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、N-β-(N-ビニルベンジルアミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-クロロプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラン、ビニルトリメトキシシラン、γ-メルカプトプロピルメチルジメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3-トリエトキシシリル-N-(1,3-ジメチル-ブチリデン)プロピルアミンの加水分解物等のシラン系カップリング剤、イソプロピルトリイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリス(ジオクチルパイロホスフェート)チタネート、イソプロピルトリ(N-アミノエチル-アミノエチル)チタネート、テトラオクチルビス(ジトリデシルホスファイト)チタネート、テトラ(2,2-ジアリルオキシメチル-1-ブチル)ビス(ジトリデシル)ホスファイトチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)オキシアセテートチタネート、ビス(ジオクチルパイロホスフェート)エチレンチタネート、イソプロピルトリオクタノイルチタネート、イソプロピルジメタクリルイソステアロイルチタネート、イソプロピルトリドデシルベンゼンスルホニルチタネート、イソプロピルイソステアロイルジアクリルチタネート、イソプロピルトリ(ジオクチルホスフェート)チタネート、イソプロピルトリクミルフェニルチタネート、テトライソプロピルビス(ジオクチルホスファイト)チタネート等のチタネート系カップリング剤が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、エポキシシラン、メルカプトシラン、アミノシラン、アルキルシラン、ウレイドシランまたはビニルシランのシラン系化合物がより好ましい。また、充填性や成形性をより効果的に向上させる観点からは、フェニルアミノプロピルトリメトキシシランに代表される2級アミノシランを用いることが特に好ましい。
(E)カップリング剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.1質量%以上であることが好ましく、0.15質量%以上であることがより好ましい。(E)カップリング剤の含有量を上記下限値以上とすることにより、(C)無機充填材の分散性を良好なものとすることができる。一方で、(E)カップリング剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。(E)カップリング剤の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止成形時における樹脂組成物の流動性を向上させ、充填性や成形性の向上を図ることができる。
[(F)その他の成分]
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物には、さらに必要に応じて、ハイドロタルサイト等のイオン捕捉剤;カーボンブラック、ベンガラ等の着色剤;カルナバワックス等の天然ワックス、モンタン酸エステルワックス等の合成ワックス、ステアリン酸亜鉛等の高級脂肪酸およびその金属塩類もしくはパラフィン等の離型剤;酸化防止剤等の各種添加剤を適宜配合してもよい。
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば低応力剤を含むことができる。低応力剤は、たとえばシリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン等のポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ-ε-カプロラクトン等の熱可塑性エラストマー、ポリスルフィドゴム、およびフッ素ゴムから選択される一種または二種以上を含むことができる。これらの中でも、シリコーンゴム、シリコーンオイル、およびアクリロニトリル-ブタジエンゴムのうちの少なくとも一方を含むことが、曲げ弾性率や寸法変化率を所望の範囲に制御して、得られる半導体パッケージの反りの発生を抑える観点から、とくに好ましい態様として選択し得る。
この低応力剤を用いる場合、低応力剤全体の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して0.05質量%以上であることが好ましく、0.10質量%以上であることがより好ましい。一方で、低応力剤の含有量は、半導体封止用樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。低応力剤の含有量をこのような範囲に制御することにより、得られる半導体パッケージの反りをより確実に抑制することができる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば前述の各成分を、公知の手段で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、冷却した後に粉砕したもの、粉砕後にタブレット状に打錠成型したもの、また必要に応じて適宜分散度や流動性等を調整したもの等を用いることができる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の特性について説明する。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、175℃から260℃までの線膨張係数αの下限値は、例えば、50ppm/K以上が好ましく、60ppm/K以上がより好ましく、65ppm/K以上がとくに好ましい。これにより、熱時における基板の線膨張係数に近づけることができる。一方、上記硬化物の線膨張係数αの上限値は、例えば、200ppm/K以下としてもよく、150ppm/K以下が好ましく、100ppm/K以下がさらに好ましい。また、175℃から260℃は、クリストバライトの約230℃における相転移温度を跨ぐ温度になる。線膨張係数αは、このようなクリストバライトの相転移温度の前後における平均線膨張係数とすることができる。これにより、リフロー処理等の熱時におけるクリストバライトの熱時挙動を考慮した上で、基板の線膨張係数と硬化物の線膨張係数との差が広がることを抑制できる。
先に述べたように、昨今、特に薄型の半導体装置について、反りの発生を抑制することへの要求が高まってきている。また、半導体装置の適用範囲を拡大する観点から、熱時における反りを抑制する要求も高い。
このような要求に対し、本発明者らが鋭意検討した結果、半導体封止用樹脂組成物の硬化物について、上記線膨張係数αを上記特定の範囲に調整することにより、半導体素子を搭載する基板との線膨張係数の差を緩和することができ、半導体装置全体としての反りを抑制するということを知見した。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、260℃における曲げ弾性率E260の下限値は、例えば、100MPa以上でもよく、好ましくは200MPa以上でもよく、さらに好ましくは300MPa以上でもよい。260℃における曲げ弾性率E260を上記下限値以上とすることにより、安定的に半導体装置の反りを制御することができる。
一方、260℃における曲げ弾性率E260の上限値は、特に制限されないが、たとえば1Gpa以下であり、950MPa以下が好ましく、900MPa以下がより好ましい。260℃における曲げ弾性率E260を上記上限値以下とすることにより、封止樹脂としての適度な柔軟性を付与することができ、外部からの応力や、熱応力を効果的に緩和し、リフロー時の耐半田信頼性等を向上させることができる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を用いてなる硬化物においては、上記線膨張係数αと260℃における曲げ弾性率E260とを同時に満たすことができる。これにより、高温環境下における半導体装置全体の反りをよく低減することが可能になる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物の、60℃から80℃における平均線膨張係数αの下限値は、例えば、5ppm/K以上が好ましく、10ppm/K以上がより好ましく、15ppm/K以上がさらに好ましい。一方、ガラス転移温度未満における線膨張係数αの上限値は、例えば、40ppm/K以下が好ましく、35ppm/K以下がより好ましく、30ppm/K以下がさらに好ましい。上記60℃から80℃における平均線膨張係数αを上記数値範囲内とすることにより、比較的低温条件下においても基板と封止樹脂との線膨張係数の差に起因した半導体パッケージにおける反りの発生を抑制することが可能となる。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を、たとえば175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理して得られる硬化物の、25℃における曲げ弾性率E25の下限値は、例えば、1.0GPa以上でもよく、好ましくは3.0GPa以上でもよく、さらに好ましくは5.0GPa以上でもよい。25℃における曲げ弾性率E25を上記下限値以上とすることにより、室温における半導体装置の反りをより効果的に抑制することが可能となる。
一方で、上記硬化物の25℃における曲げ弾性率E25の上限値は、特に限定されないが、例えば、40GPa以下が好ましく、30GPa以下が好ましく、20GPa以下がさらに好ましい。硬化物の25℃における曲げ弾性率E25を上記上限値以下とすることにより、外部からの応力を効果的に緩和して、半導体装置の信頼性向上を図ることができる。
また、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を175℃、3分で熱処理した後、175℃、4時間で熱処理することにより得られる硬化物のガラス転移温度の下限値は、例えば、150℃以上が好ましく、155℃以上がより好ましく、160℃以上がさらに好ましい。ガラス転移温度を上記温度以上とすることで、熱時であっても半導体素子を安定的に封止することができる。一方、当該硬化物のガラス転移温度の上限値は、特に限定されないが、たとえば、250℃以下としてもよく、230℃以下としてもよい。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を硬化してなる硬化物の線膨張係数α、αおよびガラス転移温度は、たとえば熱機械分析装置(セイコー電子工業株式会社製、TMA100)を用い、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下にて測定することができる。260℃および25℃での曲げ弾性率の測定は、JIS K 6911に準拠して行うことができる。
本実施形態の半導体装置について説明する。
本実施形態の半導体装置は、基板、半導体素子、封止樹脂層を備えるものである。
本実施形態において、基板としては、たとえばインターポーザ等の有機基板を用いることができる。半導体素子(半導体チップ)は、基板の一面上の搭載されている。半導体素子は、例えば、ワイヤボンディングまたはフリップチップ接続等により、基板と電気的に接続される。複数の半導体素子が実装されていてもよい。例えば、複数の半導体素子は、互いに離間して基板の実装面に配置されてもよいが、互いに積層して配置されていてもよい。複数の半導体素子は、異なる種類を用いてもよい。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、基板上に搭載された半導体素子を封止する封止樹脂層を形成するために用いられる。半導体封止用樹脂組成物を用いた封止成形は、とくに限定されないが、たとえばトランスファー成形法、または圧縮成形法等が挙げられる。
本実施形態の半導体装置としては、とくに限定されないが、たとえばQFP(Quad Flat Package)、SOP(Small Outline Package)、BGA(Ball Grid Array)、CSP(Chip Size Package)、QFN(Quad Flat Non-leaded Package)、SON(Small Outline Non-leaded Package)、LF-BGA(Lead Flame BGA)が挙げられる。また、BGAやCSPについては、半導体素子の上面(実装面とは反対側の天面)が封止樹脂層に覆われているオーバーモールドタイプでもよく、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのパッケージであってもよい。
また、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物は、上記のパッケージの成形に多く適用されるMAP(Mold Array Package)成形により形成される構造体にも利用することができる。当該構造体は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物を用いて、基板上に搭載される複数の半導体素子を一括して封止することにより得られる。
本実施形態における半導体装置の反りを抑制する効果は、BGAやCSPの中でも、封止樹脂の厚さが基板の厚さよりも薄いタイプのBGAやCSP、半導体素子の上面が封止樹脂から露出したエクスポーズドタイプのBGAやCSP等の、封止樹脂が基板の膨張収縮による変形を抑制する力が十分に及ばないパッケージにおいて特に顕著となる。
本実施形態においては、半導体封止用樹脂組成物を用いて形成される半導体装置の一例として、有機基板の一面上に半導体素子を搭載した半導体パッケージが挙げられる。この場合、有機基板のうちの上記一面と、半導体素子と、が半導体封止用樹脂組成物によって封止されることとなる。すなわち、片面封止型のパッケージとなる。また、有機基板の上記一面とは反対の他面には、たとえば外部接続端子として複数の半田ボールが形成される。なお、このような半導体パッケージにおいては、半導体素子の上面が封止樹脂により封止されていてもよく、封止樹脂から露出していてもよい。
このような半導体パッケージにおいては、たとえば封止樹脂の半導体素子上の厚さを0.4mm以下としてもよく、0.3mm以下としてもよい。これにより、半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また、このような薄型の半導体パッケージであっても、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を用いることによって、パッケージ反りの発生を抑制することが可能となる。ここで、封止樹脂の半導体素子上の厚さとは、有機基板の実装面(外部接続用のバンプが形成された面とは反対側の一面)上に搭載された半導体素子の上面を覆っている封止樹脂層の厚さを指す。
また、本実施形態においては、たとえば封止樹脂の厚さを、有機基板の厚さ以下とすることができる。これにより、半導体パッケージをより効率的に薄型化することができる。ここで、封止樹脂層の厚さとは、基板の実装面(外部接続用のバンプが形成された面とは反対側の一面)から、封止樹脂層の天面までの最短距離とする。
本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、たとえば粉末状、顆粒状またはタブレット状である。これにより、トランスファー成形法や圧縮成形法等を用いて封止成形を行うことが可能となる。本実施形態において、粉粒体とは、粉末状または顆粒状のいずれかを指すものである。また、タブレット状の半導体封止用樹脂組成物は、Bステージ状態としてもよい。
次に、図1を用いて、半導体装置100について説明する。
図1は、半導体装置100の一例を示す断面図である。
半導体装置100は、基板10と、基板10の一面上に搭載された半導体素子20と、基板10のうちの上記一面および半導体素子20とを封止する封止樹脂層30と、を備えた半導体パッケージである。すなわち、半導体装置100は、基板10のうちの上記一面とは反対の他面が封止樹脂層30によって封止されない、片面封止型の半導体パッケージである。封止樹脂層30は、本実施形態の半導体封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、熱時における封止樹脂層30の線膨張係数を大きくできるので、封止樹脂層30と基板10との熱時線膨張係数の差を小さくできる。そのため、高温環境での使用時において、半導体装置100の全体の反りを抑制することができる。
本実施形態において、半導体素子20の上面は、封止樹脂層30により覆われていてもよく(図1)、封止樹脂層30から露出していてもよい(不図示)。
図1に示す例では、基板10には有機基板が用いられる。基板10のうち半導体素子20を搭載する表面(搭載面)とは反対側の裏面には、たとえば複数の半田ボール12が設けられる。また、半導体素子20は、たとえば基板10上にフリップチップ実装される。半導体素子20は、たとえば複数のバンプ22を介して基板10へ電気的に接続される。変形例として、半導体素子20は、ボンディングワイヤを介して基板10へ電気的に接続されていてもよい。
図1に示す例では、半導体素子20と基板10との間の隙間は、たとえばアンダーフィル32によって充填される。アンダーフィル32としては、たとえばフィルム状または液状のアンダーフィル材料を使用することができる。アンダーフィル32と封止樹脂層30とは異なる材料で構成されていてもよいが、同一の材料で構成されていてもよい。本実施形態の半導体封止用樹脂組成物は、モールドアンダーフィル材料として用いることができる。このため、アンダーフィル32と封止樹脂層30とを同一材料で構成できるとともに同一工程で形成することも可能である。具体的には、半導体素子20を半導体封止用樹脂組成物で封止する封止工程と、基板10と半導体素子20との間の隙間に半導体封止用樹脂組成物を充填する充填工程とを同一工程(一括)で実施することができる。
本実施形態において、封止樹脂層30の厚さは、例えば、基板10の実装面(外部接続用のバンプ12が形成された面とは反対側の一面)から、封止樹脂層30の天面までの最短距離とする。また、封止樹脂層30の半導体素子上の厚さとは、基板10の実装面上に搭載された半導体素子20の上面を覆っている封止樹脂層30の厚さを指す。この場合、封止樹脂層30の半導体素子上の厚さの上限値は、たとえば、0.4mm以下としてもよく、0.3mm以下としてもよく、0.2mm以下としてもよい。一方、封止樹脂層30の半導体素子上の厚さの下限値は、特に限定されないが、例えば、0mm以上としてもよく(エクスポーズドタイプ)、0.01mm以上としてもよい。
また、基板10の厚さの上限値は、例えば、0.8mm以下としてもよく、0.4mm以下としてもよい。一方、基板10の厚さの下限値は、特に限定されないが、例えば、0.1mm以上としてもよい。
本実施形態によれば、このように半導体パッケージの薄型化を図ることができる。また、薄型の半導体パッケージであっても、本実施形態に係る半導体封止用樹脂組成物を用いて封止樹脂層30を形成することにより、半導体装置100の反りを抑制することが可能となる。また、本実施形態においては、たとえば封止樹脂層30の厚さを、基板10の厚さ以下とすることができる。これにより、半導体装置100をより効率的に薄型化することができる。
次に、構造体102について説明する。
図2は、構造体102の一例を示す断面図である。構造体102は、MAP成形により形成された成形品である。このため、構造体102を半導体素子20毎に個片化することにより、複数の半導体パッケージが得られることとなる。
構造体102は、基板10と、複数の半導体素子20と、封止樹脂層30と、を備えている。複数の半導体素子20は、基板10の一面上に配列されている。図2においては、各半導体素子20が、基板10に対してフリップチップ実装される場合が例示されている。この場合、各半導体素子20は、複数のバンプ22を介して基板10へ電気的に接続される。一方で、各半導体素子20は、ボンディングワイヤを介して基板10に電気的に接続されていてもよい。なお、基板10および半導体素子20は、半導体装置100において例示したものと同様のものを用いることができる。
図2に示す例では、各半導体素子20と基板10との間の隙間は、たとえばアンダーフィル32によって充填される。アンダーフィル32としては、たとえばフィルム状または液状のアンダーフィル材料を使用することができる。一方で、前述の半導体封止用樹脂組成物を、モールドアンダーフィル材料として用いることもできる。この場合、半導体素子20の封止と、基板10と半導体素子20との間の隙間の充填と、が一括して行われる。
封止樹脂層30は、複数の半導体素子20と、基板10のうちの上記一面と、を封止している。この場合、基板10のうちの上記一面とは反対の他面は、封止樹脂層30により封止されない。また、封止樹脂層30は、上述した半導体封止用樹脂組成物の硬化物により構成される。これにより、構造体102や、構造体102を個片化して得られる半導体パッケージの反りを抑制することができる。封止樹脂層30は、たとえば半導体封止用樹脂組成物をトランスファー成形法または圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成される。また、本実施形態において、各半導体素子20の上面は、図2に示すように封止樹脂層30により封止されていてもよく、封止樹脂層30から露出していてもよい。
以上、実施形態に基づき、本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を変更しない範囲でその構成を変更することもできる。
以下、本発明の参考形態の一例を示す。
[1]
エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、
前記無機充填材は、クリストバライトを含み、
熱機械分析(TMA)で測定した当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃における長さをL1(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化量をL 1→2 (μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化率ΔL(%)をL 1→2 /L1×100と表し、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、260℃における曲げ弾性率をE 260 (MPa)としたとき、
260℃における熱時応力を示すΔL×E 260 が、50以上630以下である、半導体封止用樹脂組成物。
[2]
[1]に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、ガラス転移温度が150℃以上250℃以下である、半導体封止用樹脂組成物。
[3]
[1]または[2]に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃から260℃までの平均線膨張係数α が、50ppm/K以上200ppm/K以下である、半導体封止用樹脂組成物。
[4]
[1]から[3]のいずれか一つに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記クリストバライトが球状クリストバライトを含む、半導体封止用樹脂組成物。
[5]
[1]から[4]のいずれか一つに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記クリストバライトの平均粒径が20μm以下である、半導体封止用樹脂組成物。
[6]
[1]から[5]のいずれか一つに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
前記無機充填材がシリカを含む、半導体封止用樹脂組成物。
[7]
[1]から[6]のいずれか一つに記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
カップリング剤をさらに含む、半導体封止用樹脂組成物。
[8]
基板と、
前記基板の一面上に搭載された半導体素子と、
前記半導体素子を封止する封止材層と、を備える、半導体装置であって、
前記封止材層は、[1]から[7]のいずれか一つに記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物である、半導体装置。
以下、実施例を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
各実施例、各比較例1~2で用いた成分について、以下に示す。
(半導体封止用樹脂組成物の調製)
まず、表1に従い配合された各原材料を常温でミキサーを用いて混合した後、70~100℃でロール混練した。次いで、得られた混練物を冷却した後、これを粉砕して半導体封止用樹脂組成物を得た。表1中における各成分の詳細は下記のとおりである。
(A)エポキシ樹脂
エポキシ樹脂1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製、NC-3000、エポキシ当量276g/eq)
エポキシ樹脂2:トリフェノールメタン型エポキシ樹脂(三菱化学(株)製、1032H-60、エポキシ当量171g/eq)
(B)硬化剤
硬化剤1:ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(日本化薬(株)製、GPH-65、水酸基当量198g/eq)
硬化剤2:フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂(明和化成(株)製、MEH-7800、水酸基当量175g/eq)
(C)無機充填材
無機充填材1:下記の製造方法により得られた球状クリストバライト(新日鉄住金マテリアルズ(株)製、HT-2)
[無機充填材1:球状クリストバライトの製造方法]
不純物含有量(金属アルミニウム換算で400~5000ppmのアルミニウム)の原料シリカ粉末を溶射して、球状シリカ粒子を作製した。得られた球状シリカ粒子を大気中で昇温速度200℃/時で1300℃まで昇温し、1300℃で6時間保持した後、降温速度200℃/時で常温まで冷却した。
無機充填材2:球状溶融シリカ(電気化学工業(株)社製、商品名「FB560」、平均粒径(D50):30μm)。
無機充填材3:球状溶融シリカ(微粉)((株)アドマテックス製、SO-C2、平均粒径(D50):0.5μm)
無機充填材4:水酸化アルミニウム(住友化学(株)製、CL-303、平均粒径(D50):5.2μm)
なお、本実施例における平均粒径は(株)島津製作所製レーザー回折散乱式粒度分布計SALD-7000を使用して測定した。
(D)硬化促進剤
硬化促進剤1:下記式(13)で示される化合物
Figure 0007009790000010
[上記式(13)で示される化合物の合成方法]
撹拌装置付きのセパラブルフラスコに4,4’-ビスフェノールS37.5g(0.15モル)、メタノール100mlを仕込み、室温で撹拌溶解し、更に攪拌しながら予め50mlのメタノールに水酸化ナトリウム4.0g(0.1モル)を溶解した溶液を添加した。次いで予め150mlのメタノールにテトラフェニルホスホニウムブロマイド41.9g(0.1モル)を溶解した溶液を加えた。しばらく攪拌を継続し、300mlのメタノールを追加した後、フラスコ内の溶液を大量の水に撹拌しながら滴下し、白色沈殿を得た。沈殿を濾過、乾燥し、白色結晶の上記式(13)で示される化合物を得た。
(E)カップリング剤
カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン(東レ・ダウコーニング(株)製、CF4083)
(F)その他の成分
離型剤1:モンタン酸エステルワックス(WE―4(クラリアントジャパン(株)製))
着色剤1:カーボンブラック(カーボン#5(三菱化学(株)製))
低応力剤1:シリコーンオイル(東レ・ダウコーニング(株)製、FZ―3730)
Figure 0007009790000011
[評価項目]
(175℃から260℃までの寸法変化率(ΔL)、線膨張係数(α、α)、ガラス転移温度(Tg))
各実施例および各比較例について、得られた半導体封止用樹脂組成物の硬化物の175℃から260℃までの寸法変化率ΔL、線膨張係数(α、α)およびガラス転移温度を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、15mm×4mm×4mmの試験片を得た。得られた試験片の長辺15mmを測定対象の基準長さとした(室温25℃での長さL0)。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した後、熱機械分析装置(セイコー電子工業(株)製、TMA100)を用いて、圧縮モードで、測定温度範囲0℃~320℃、昇温速度5℃/分の条件下で測定を行った。この測定結果から、175℃での長さ(L1)、260℃での長さ(L2)、175℃から260℃までの寸法変化量(L1→2=(L2-L1))、175℃から260℃までの寸法変化率ΔL、60℃から80℃までの平均線膨張係数(α)、175℃から260℃までの平均線膨張係数(α)、ガラス転移温度、を算出した。表1中、175℃から260℃までの寸法変化率ΔLの単位は%であり、αとαの単位はppm/Kであり、ガラス転移温度の単位は℃である。結果を表1に示す。
175℃から260℃までの寸法変化率ΔLは、以下の式で表される。
寸法変化率ΔL(%)=(175℃から260℃までの寸法変化量L1→2(μm)/175℃での長さL1(μm))×100
(曲げ弾性率)
各実施例および各比較例について、得られた半導体封止用樹脂組成物の硬化物の曲げ弾性率を、次のように測定した。まず、トランスファー成形機を用いて金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間3分で半導体封止用樹脂組成物を注入成形し、幅10mm×厚さ4mm×長さ80mmの試験片を得た。次いで、得られた試験片を175℃、4時間で後硬化した。次いで、試験片の、25℃における曲げ弾性率E25と、260℃におけるおよび曲げ弾性率E260と、をJIS K 6911に準じて測定した。曲げ弾性率の単位はMPaである。結果を表1に示す。
(クラック発生率)
各実施例および各比較例について、次のように耐クラック性の評価を行った。まず、得られた半導体封止用樹脂組成物を使用して、次のタイプのパッケージ(以下、PKGと略す)をMAP成形用のトランスファー成形機を用いて準備した(成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間2分)。サイズ240mm×70mm×0.23mmの基板に10×10×0.20mmのSiチップを64(4×16)枚マウントした。そして、樹脂厚みが0.45mmになるように設計したPKGを用いた。次いで、PKGの耐クラック性を測定した。上記で作成したPKGを乾燥機で175℃2時間のポストモールドキュアを実施し、それをリフロー装置で260℃処理を1回実施した。リフロー処理後のクラック発生率(%)を測定した。結果を表1に示す。
(反り評価)
各実施例および各比較例について、次のように反り抑制の評価を行った。まず、得られた半導体封止用樹脂組成物を使用して、次のタイプのパッケージ(以下、PKGと略す)をMAP成形用のトランスファー成形機を用いて準備した(成形温度175℃、成形圧力6.9MPa、硬化時間2分)。PKGはサイズが14×14×0.53mmで、10×10×0.1mmのSiチップをマウントした厚み0.28mmの基板に、樹脂厚みが0.25mmになるように樹脂を封止したものである。次いで、PKGの反りを測定した。反りの測定はShadow moire(akrometrix製)を用いて、25℃から260℃へ昇温して、25℃、260℃でのPKG反りを測定することにより行った。そして、25℃、260℃の各条件について、PKG反りが100μm未満であるものを○とし、100μm以上であるものを×として、反り抑制評価を行った。結果を表1に示す。なお、比較例2は260℃の条件において、パッケージ表面の封止材にクラックが発生したため、PKG反りを測定することが不可能であった。
実施例1から5の半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、比較例2と比べて、得られる半導体パッケージにおけるクラック発生を抑制できることが分かった。また、実施例1から5の半導体封止用樹脂組成物を用いることにより、比較例1と比べて、得られる半導体パッケージにおける反り発生を抑制できることが分かった。
100 半導体装置
102 構造体
10 基材
12 半田ボール
20 半導体素子
22 バンプ
30 封止樹脂
32 アンダーフィル

Claims (11)

  1. エポキシ樹脂と、硬化剤と、無機充填材と、を含む半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記無機充填材は、クリストバライトを含み、
    前記エポキシ樹脂がトリフェノールメタン型エポキシ樹脂、およびフェノールアラルキル型エポキシ樹脂の中から選ばれる1種以上を含み、
    前記クリストバライトの平均粒径が0.5μm以上20μm以下であり、
    熱機械分析(TMA)で測定した当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃における長さをL1(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化量をL1→2(μm)とし、175℃から260℃までの寸法変化率ΔL(%)をL1→2/L1×100と表し、
    当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、260℃における曲げ弾性率をE260(MPa)としたとき、
    260℃における熱時応力を示すΔL×E260が、50以上630以下であり、
    当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物のガラス転移温度が155℃以上である、半導体封止用樹脂組成物。
  2. 請求項1に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、ガラス転移温度が250℃以下である、半導体封止用樹脂組成物。
  3. 請求項1または2に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    当該半導体封止用樹脂組成物の硬化物の、175℃から260℃までの平均線膨張係数αが、50ppm/K以上200ppm/K以下である、半導体封止用樹脂組成物。
  4. 請求項1から3のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記クリストバライトが球状クリストバライトを含む、半導体封止用樹脂組成物。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記無機充填材がシリカを含む、半導体封止用樹脂組成物。
  6. 請求項1から5のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    カップリング剤をさらに含む、半導体封止用樹脂組成物。
  7. 請求項1から6のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記エポキシ樹脂のエポキシ基モル数の前記硬化剤のフェノール性水酸基モル数に対する当量比は、0.5以上2以下である、半導体封止用樹脂組成物。
  8. 請求項1から7のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記クリストバライトの含有量が、前記半導体封止用樹脂組成物の全体に対して5質量%以上60質量%以下である、半導体封止用樹脂組成物。
  9. 請求項1から8のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    前記無機充填材の含有量が、前記半導体封止用樹脂組成物の全体に対して30質量%以上88質量%以下である、半導体封止用樹脂組成物。
  10. 請求項1から9のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物であって、
    低応力剤をさらに含む、半導体封止用樹脂組成物。
  11. 基板と、
    前記基板の一面上に搭載された半導体素子と、
    前記半導体素子を封止する封止材層と、を備える、半導体装置であって、
    前記封止材層は、請求項1から10のいずれか1項に記載の半導体封止用樹脂組成物の硬化物である、半導体装置。
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