JP2022057356A - 封止用樹脂組成物および半導体装置 - Google Patents

封止用樹脂組成物および半導体装置 Download PDF

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Abstract

【課題】HTRB耐性に優れた封止用樹脂組成物を提供する。【解決手段】半導体素子の封止に用いる封止用樹脂組成物であって、抽出アンモニウムイオンの量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、6ppm以下であり、当該封止用樹脂組成物の硬化物について、当該硬化物を煮沸した後、85℃、20Hzで測定される誘電率が4.0以上5.2以下である、封止用樹脂組成物。【選択図】図1

Description

本発明は、封止用樹脂組成物およびこれを用いて製造される半導体装置に関する。
各種の電子装置を封止するための封止用樹脂組成物として、エポキシ樹脂を含む樹脂組成物が盛んに開発されている。この種の技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。特許文献1には、エポキシ樹脂、水酸化アルミニウム、無機充填剤を含む、半導体素子を封止する封止用樹脂組成物が記載されている(特許文献1の請求項1)。
特開2012-224774号公報
しかしながら、本発明者が検討した結果、上記特許文献1に記載の封止用樹脂組成物において、高温高湿バイアス耐性(以下、「THB耐性」ということもある)が低いという問題があることが分かった。
本発明は、上記した従来の課題を解決するためになされたものであり、高いTHB耐性を有する封止用樹脂組成物、およびこのような封止用樹脂組成物で封止された高い信頼性を有する半導体装置を提供することを目的とする。
本発明の発明者は、鋭意検討を重ねた結果、封止樹脂組成物の抽出アンモニウムイオンの量が、THB耐性に影響することを見出した。また発明者は、封止用樹脂組成物のTHB耐性は、封止樹脂組成物の硬化物を煮沸した後に測定される誘電率を指標として評価できることを見出した。そこで、封止樹脂組成物中の抽出アンモニウムイオン量を制御するとともに、樹脂組成物の煮沸後の誘電率を適切に制御することにより、その封止用樹脂組成物を用いて得られた半導体装置において、THB試験による不良率を低減でき、よって半導体装置のTHB耐性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明によれば、
半導体素子の封止に用いる封止用樹脂組成物であって、
抽出アンモニウムイオンの量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、6ppm以下であり、
当該封止用樹脂組成物の硬化物について、当該硬化物を煮沸した後、85℃、20Hzで測定される誘電率が4.0以上5.2以下である、封止用樹脂組成物が提供される。
本発明者はさらに検討したところ、封止用樹脂組成物の抽出アンモニウムイオンの量を上記値以下に制御するとともに、封止用樹脂組成物の硬化物の、煮沸後の誘電率を所定の範囲に制御することにより、その封止用樹脂組成物を用いて得られた半導体装置において、THB試験による不良率を低減でき、よって半導体装置のTHB耐性を向上できることを見出し、本発明を完成するに至った。
また本発明によれば、上記の封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ前記半導体素子を封止する封止材と、を備える、半導体装置が提供される。
本発明によれば、THB耐性に優れた封止用樹脂組成物および半導体装置が提供される。
パワーデバイスの一例を示す断面図である。 パワーデバイスの一例(図1とは異なる)を示す断面図である。
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて説明する。尚、すべての図面において、同様な構成要素には同様の符号を付し、適宜説明を省略する。また、図は概略図であり、実際の寸法比率とは一致していない。
<封止用樹脂組成物>
本実施形態の封止用樹脂組成物の概要について説明する。
封止用樹脂組成物は、半導体素子(パワー半導体)の封止に用いるものである。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、抽出アンモニウムイオンの量が、封止樹脂組成物全体に対して、6ppm以下であり、好ましくは、5ppm以下であり、より好ましくは、4ppm以下であり、さらにより好ましくは、3ppm以下である。封止樹脂組成物の抽出アンモニウムイオンの量の下限値は特に限定されないが、例えば、0~1ppmである。抽出アンモニウムイオンの量が、上記上限値以下であることにより、得られる封止用樹脂組成物は、高いTHB耐性を有する。また、抽出アンモニウムイオンの量が、上記下限値程度であれば、過度な精製の必要がなく、よって精製のための工程や特別な装置の必要がないため、得られる封止用樹脂組成物は生産性において優れる。
本実施形態の封止用樹脂組成物は、その硬化物について、煮沸後、85℃、20Hzで測定される誘電率が、4.0以上5.2以下であり、好ましくは、4.0以上5.0以下であり、より好ましくは、4.0以上4.6以下である。
高温高湿環境下での使用に耐え得る半導体装置を評価する方法として、THB試験が採用されている。THB試験は、半導体パッケージに対して高温高湿環境を模擬した試験であり、封止材で封止した半導体素子(パワー半導体)の耐高温高湿性を評価する試験である。
しかしながら、THB試験で使用される環境下における封止材の挙動を評価する方法について、これまで十分に検討されていなかった。このような事情を踏まえ鋭意検討した結果、硬化物を煮沸した後に測定される誘電率を指標とすることで、高温高湿環境下での封止材の誘電特性を安定的に評価することができ、よって煮沸後の誘電率を制御することにより、得られる封止用樹脂組成物のTHB耐性を改善できることが判明した。
封止用樹脂組成物の硬化物の、煮沸後、85℃、20Hzで測定される誘電率を上記範囲内とすることで、THB耐性を向上できる。
本実施形態の封止用樹脂組成物の抽出アンモニウムイオン量、および硬化物の煮沸後の誘電率は、封止用樹脂組成物に含まれる各成分の種類や配合量、封止用樹脂組成物の調製方法等を適切に選択することにより、制御することが可能である。これらの中でも、たとえばカップリング剤の種類、難燃剤の種類、エポキシ樹脂の種類、無機充填材の種類、およびこれらの量等を調整することにより、上記誘電率を所望の範囲に制御することができる。
本実施形態の封止用樹脂組成物が含有する、または含有してもよい成分について説明する。好ましい実施形態において、封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂、硬化剤、無機充填材、およびアミノシランカップリング剤を含む。以下に、各成分について説明する。
(エポキシ樹脂(A))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を含む。
エポキシ樹脂としては、1分子内にエポキシ基を2個以上有する(つまり、多官能の)モノマー、オリゴマー、ポリマー全般を用いることができる。
エポキシ樹脂としては、特に、非ハロゲン化エポキシ樹脂が好ましい。
エポキシ樹脂(A)としては、たとえばビフェニル型エポキシ樹脂;ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、テトラメチルビスフェノールF型エポキシ樹脂等のビスフェノール型エポキシ樹脂;スチルベン型エポキシ樹脂;フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂等のノボラック型エポキシ樹脂;トリフェノールメタン型エポキシ樹脂、アルキル変性トリフェノールメタン型エポキシ樹脂等の多官能エポキシ樹脂;フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂、ビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂等のフェノールアラルキル型エポキシ樹脂;ジヒドロキシナフタレン型エポキシ樹脂、ジヒドロキシナフタレンの2量体をグリシジルエーテル化して得られるエポキシ樹脂等のナフトール型エポキシ樹脂;トリグリシジルイソシアヌレート、モノアリルジグリシジルイソシアヌレート等のトリアジン核含有エポキシ樹脂;ジシクロペンタジエン変性フェノール型エポキシ樹脂等の有橋環状炭化水素化合物変性フェノール型エポキシ樹脂などを挙げることができる。
エポキシ樹脂(A)は、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂(例えばo-クレゾールノボラックエポキシ樹脂)、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂、およびトリフェノールメタン型エポキシ樹脂のうちの少なくとも1つを含むことがより好ましい。
また、パワーデバイスの反りを抑制する観点からは、フェノールアラルキル型エポキシ樹脂およびノボラック型エポキシ樹脂のうちの少なくとも一つを含むことがとくに好ましい。さらに流動性を向上させるためにはビフェニル型エポキシ樹脂がとくに好ましく、高温の弾性率を制御するためにはビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル型エポキシ樹脂がとくに好ましい。
エポキシ樹脂(A)としては、例えば下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、下記一般式(2)で表されるエポキシ樹脂、下記一般式(3)で表されるエポキシ樹脂、下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂、および下記一般式(5)で表されるエポキシ樹脂からなる群から選択される少なくとも1種を含有するものを用いることができる。これらの中でも、下記一般式(1)で表されるエポキシ樹脂、および下記一般式(4)で表されるエポキシ樹脂から選択される一種以上を含むものがより好ましい態様の一つとして挙げられる。
Figure 2022057356000002
一般式(1)中、
Arはフェニレン基またはナフチレン基を表し、Arがナフチレン基の場合、グリシジルエーテル基はα位、β位のいずれに結合していてもよい。
Arはフェニレン基、ビフェニレン基またはナフチレン基のうちのいずれか1つの基を表す。
およびRは、それぞれ独立に炭素数1~10の炭化水素基を表す。
gは0~5の整数であり、hは0~8の整数である。nは重合度を表し、その平均値は1~3である。
Figure 2022057356000003
一般式(2)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子または炭素数1~4の炭化水素基を表す。
は重合度を表し、その平均値は0~4である。
Figure 2022057356000004
一般式(3)中、
複数存在するRおよびRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。
は重合度を表し、その平均値は0~4である。
Figure 2022057356000005
一般式(4)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。
は重合度を表し、その平均値は0~4である。
Figure 2022057356000006
一般式(5)中、
複数存在するRは、それぞれ独立に水素原子又は炭素数1~4の炭化水素基を表す。
は重合度を表し、その平均値は0~4である。
エポキシ樹脂(A)の数分子量は特に限定されず、流動性、硬化性などの観点から適宜選択すればよい。一例として数分子量は100~700程度である。
また、流動性などの観点から、エポキシ樹脂(A)の、150℃でのICI粘度は、0.1~5.0poiseであることが好ましい。
封止用樹脂組成物は、エポキシ樹脂(A)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量は、好ましくは100~400g/eq、より好ましくは150~350g/eqである。なお、封止用樹脂組成物が複数のエポキシ樹脂(A)を含む場合、複数のエポキシ樹脂(A)全体としてのエポキシ当量が、上記数値となることが好ましい。
封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の量の下限値は、封止用樹脂組成物の全体に対して、例えば3質量%以上であることが好ましく、4質量%以上であることがより好ましく、5質量%以上とすることが特に好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記下限値以上とすることにより、封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、成形性の向上を図ることができる。
一方、エポキシ樹脂(A)量の上限値は、封止用樹脂組成物の全体に対して、例えば50質量%以下であることが好ましく、30質量%以下であることがより好ましく、20質量%以下であることがさらに好ましい。エポキシ樹脂(A)の含有量を上記上限値以下とすることにより、封止用樹脂組成物を用いて形成される封止材を備えるパワーデバイスの、耐湿信頼性や耐リフロー性を向上させることができる。
エポキシ樹脂(A)のエポキシ当量を適切に選択したり、封止用樹脂組成物中のエポキシ樹脂(A)の量を適切に調整したりすることで、組成物中の硬化反応が最適化されやすくなる。そのため、よりTHB耐性を高めやすくなると考えられる。
また、エポキシ当量やエポキシ樹脂の量を適切に調整することで、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することもできると考えられる。なお、硬化/流動特性は、例えばスパイラルフローやゲルタイムにより評価することができる。
(無機充填材(B))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、無機充填材(B)を含む。
無機充填材(B)として具体的には、シリカ、アルミナ、チタンホワイト、タルク、クレー、マイカ、ガラス繊維等が挙げられる。
無機充填材(B)としては、シリカが好ましい。シリカとしては、溶融破砕シリカ、溶融球状シリカ、結晶シリカ、2次凝集シリカ等を挙げることができる。これらの中でも特に溶融球状シリカが好ましい。
無機充填材(B)は、通常、粒子である。粒子の形状は、略真球状であることが好ましい。
無機充填材(B)の平均粒径は、特に限定されないが、典型的には1~100μm、好ましくは1~50μm、より好ましくは1~20μmである。平均粒径が適当であることにより、硬化時の適度な流動性を確保すること等ができる。
無機充填材(B)の平均粒径は、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(例えば、株式会社堀場製作所製の湿式粒度分布測定機LA-950)により体積基準の粒子径分布のデータを取得し、そのデータを処理することで求めることができる。測定は、通常、乾式で行われる。
シリカ等の無機充填材(B)には、あらかじめ(全成分を混合して封止用樹脂組成物を調製する前に)シランカップリング剤などのカップリング剤による表面修飾が行われていてもよい。
これにより、無機充填材(B)の凝集が抑制され、より良好な流動性を得ることができる。また、無機充填材(B)と他の成分との親和性が高まり、無機充填材(B)の分散性が向上する。このことは、硬化物の機械的強度の向上や、マイクロクラックの発生抑制などに寄与すると考えられる。
無機充填材(B)の表面処理に用いられるカップリング剤としては、後述のアミノシランカップリング剤(D)として挙げられたものを用いることができる。なかでも、2級アミノシランを好ましく用いることができる。
無機充填材(B)の表面に、エポキシ樹脂(A)と反応し得る基(アミノ基等)を修飾させることで、封止用樹脂組成物中での無機充填材(B)の分散性を高めることができる。
また、無機充填材(B)の表面処理に使用するカップリング剤の種類を適宜選択したり、カップリング剤の配合量を適宜調整したりすることにより、封止用樹脂組成物の流動性や、硬化後の強度等を制御することができるとともに、得られる封止用樹脂組成物における抽出アンモニウムイオン量を目的の範囲に制御することができる。
カップリング剤による無機充填材(B)の表面処理は、例えば次のように行うことができる。
まず、ミキサーを用いて無機充填材(B)とカップリング剤を混合攪拌する。混合攪拌には、公知のミキサー、例えばリボンミキサー等を用いることができる。ミキサーの稼働方法としては、(i)あらかじめ無機充填材(B)とカップリング剤をミキサー内に仕込んだうえで羽根を回してもよいし、(ii)まずは無機充填材(B)のみを仕込んで羽根を回しつつ、スプレーノズル等でミキサー内に少しずつカップリング剤を加えるようにしてもよい。
混合攪拌の際には、ミキサー内を低湿度(例えば湿度50%以下)とすることが好ましい。低湿度とすることにより、無機充填材(B)の表面に水分が付着するのを抑制することができる。さらに、カップリング剤に水分が混入し、カップリング剤同士が反応してしまうのを抑制することができる。
次いで、得られた混合物をミキサーから取り出し、エージング処理し、カップリング反応を促進させる。エージング処理は、例えば、20±5℃、40~50%RHの条件下で、1日間以上(好ましくは1~7日間)放置することにより行われる。このような条件でおこなうことにより、無機充填材(B)の表面にカップリング剤を均一に結合させることができる。
エージング処理の後、ふるいにかけ、粗大粒子を除去することにより、表面処理(カップリング処理)が施された無機充填材(B)が得られる。
封止用樹脂組成物は、無機充填材(B)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
無機充填材(B)の含有量の下限値は、封止用樹脂組成物の全体に対して35質量%以上であることが好ましく、50質量%以上であることがより好ましく、65質量%以上であることがさらに好ましい。
無機充填材(B)の含有量の上限値は、例えば、95質量%以下であることが好ましく、93質量%以下であることがより好ましく、90質量%以下であることがさらに好ましい。
無機充填材(B)の量を適切に調整することで、十分なTHB耐性を得つつ、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することもできると考えられる。
(硬化剤(C))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化剤(C)を含む。
硬化剤(C)としては、エポキシ樹脂(A)と反応しうるものであれば特に制限は無い。例えば、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤、酸無水物系硬化剤、メルカプタン系硬化剤などが挙げられる。
これらの中でも、耐燃性、耐湿性、電気特性、硬化性、保存安定性等のバランスの点から、フェノール系硬化剤が好ましい。
・フェノール系硬化剤
フェノール系硬化剤としては、封止用樹脂組成物に一般に使用されているものであれば特に制限はない。例えば、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂をはじめとするフェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコール、ビスフェノールA、ビスフェノールF、フェニルフェノール、アミノフェノール、α-ナフトール、β-ナフトール、ジヒドロキシナフタレン等のフェノール類とホルムアルデヒドやケトン類とを酸性触媒下で縮合又は共縮合させて得られるノボラック樹脂、上記したフェノール類とジメトキシパラキシレン又はビス(メトキシメチル)ビフェニルから合成されるビフェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂、フェニレン骨格を有するフェノールアラルキル樹脂などのフェノールアラルキル樹脂、トリスフェニルメタン骨格を有するフェノール樹脂などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・アミン系硬化剤
アミン系硬化剤としては、ジエチレントリアミン(DETA)やトリエチレンテトラミン(TETA)やメタキシリレンジアミン(MXDA)などの脂肪族ポリアミン、ジアミノジフェニルメタン(DDM)やm-フェニレンジアミン(MPDA)やジアミノジフェニルスルホン(DDS)などの芳香族ポリアミンのほか、ジシアンジアミド(DICY)や有機酸ジヒドララジドなどを含むポリアミン化合物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・酸無水物系硬化剤
酸無水物系硬化剤としては、ヘキサヒドロ無水フタル酸(HHPA)やメチルテトラヒドロ無水フタル酸(MTHPA)や無水マレイン酸などの脂環族酸無水物、無水トリメリット酸(TMA)や無水ピロメリット酸(PMDA)やベンゾフェノンテトラカルボン酸(BTDA)、無水フタル酸などの芳香族酸無水物などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・メルカプタン系硬化剤
メルカプタン系硬化剤としては、トリメチロールプロパントリス(3-メルカプトブチレート)、トリメチロールエタントリス(3-メルカプトブチレート)などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
・その他硬化剤
その他の硬化剤としては、イソシアネートプレポリマーやブロック化イソシアネートなどのイソシアネート化合物、カルボン酸含有ポリエステル樹脂などの有機酸類などが挙げられる。これらを単独で用いても2種以上を組み合わせて用いてもよい。
硬化剤(C)については、異種のものを2種以上組み合わせて用いてもよい。例えば、フェノール系硬化剤とアミン系硬化剤とを併用すること等も本実施形態に含まれる。
封止用樹脂組成物は、硬化剤(C)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
硬化剤(C)の量は、封止用樹脂組成物全体に対して0.5質量%以上であることが好ましく、1質量%以上であることがより好ましく、1.5質量%以上であることが特に好ましい。
一方、硬化剤(C)の含有量は、封止用樹脂組成物全体に対して9質量%以下であることが好ましく、8質量%以下であることがより好ましく、7質量%以下であることが特に好ましい。
硬化剤(C)の量を適切に調整することで、十分なTHB耐性を得つつ、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することもできると考えられる。
別観点として、硬化剤(C)の量は、エポキシ樹脂(A)の量との関係で適切に調整されることが好ましい。具体的には、いわゆる「モル当量」(反応性基のモル比)が適切に調整されることが好ましい。
例えば、硬化剤(C)がフェノール系硬化剤である場合、フェノール系硬化剤に対するエポキシ樹脂(A)の量は、官能基のモル当量(エポキシ基/ヒドロキシ基)で、好ましくは0.9~1.5、より好ましくは1.0~1.4、さらに好ましくは1.0~1.3、特に好ましくは1.01~1.20である。
(カップリング剤(D))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、好ましくは、カップリング剤(D)を含む。カップリング剤(D)としては、例えば、官能基としてアミノ基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基、メルカプト基、ビニル基、ウレイド基、スルフィド基等を含むカップリング剤が挙げられる。これらは単独で用いても複数組み合わせて用いてもよい。
アミノ基含有カップリング剤としては、例えばビス(2-ヒドロキシエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルトリエトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N-β(アミノエチル)γ-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N-フェニル-γ-アミノ-プロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。中でも、無機充填材と他の成分との親和性向上の観点から、2級アミノ基を有するカップリング剤が好ましく用いられる。
エポキシ基含有カップリング剤としては、例えばγ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシジルプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アクリル基含有カップリング剤としては、例えばγ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジメトキシシラン、γ-(メタクリロキシプロピル)メチルジエトキシシラン等が挙げられる。
メルカプト基含有カップリング剤としては、例えば3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ビニル基含有カップリング剤としては、例えばビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン等が挙げられる。
ウレイド基含有カップリング剤としては、例えば3-ウレイドプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
スルフィド基含有カップリング剤としては、例えばビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド等が挙げられる。
カップリング剤(D)として、無機充填材と他の成分との親和性向上の観点から、アミノ基含有シランカップリング剤を用いることが好ましいが、アミノシランカップリング剤は、不純物としてアンモニウムイオンを含有するため、得られる封止用樹脂組成物の抽出アンモニウムイオン量が上記範囲内となるように、その使用量を調整する必要がある。
本実施形態の封止用樹脂組成物がアミノシランカップリング剤を含む場合、その配合量は、封止用樹脂組成物の全体に対して、0.15質量%以下であることが好ましく、0.10質量%以下であることがより好ましい。アミノシランカップリング剤の配合の下限値は、特に限定されないが、例えば、0.01質量%以上、好ましくは、0.05質量%以上とすることができる。アミノシランカップリング剤の配合量を上記範囲とすることにより、無機充填材の分散性の効果を得つつ、封止用樹脂組成物の抽出アンモニウムイオン量を低減することができる。
アミノシランカップリング剤を用いる場合、その使用量を制御しつつ、カップリング剤の効果を十分に得るために、上述の他のカップリング剤と組み合わせて用いることが好ましい。使用するすべてのカップリング剤の合計量は、封止用樹脂組成物の全体に対して1質量%以下であることが好ましく、0.5質量%以下であることがより好ましい。カップリング剤の合計量を上記上限値以下とすることにより、封止成形時における封止用樹脂組成物の流動性を向上させ、充填性や成形性の向上を図ることができる。カップリング剤の合計量の下限値は、例えば、封止用樹脂組成物の全体に対して0.15質量%以上であり、好ましくは、0.2質量%以上である。上記範囲であることにより無機充填材の分散性の効果を得ることができる。
(硬化促進剤(E))
本実施形態の封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(E)を含んでもよい。硬化促進剤(D)は、エポキシ樹脂(A)と、硬化剤(C)との反応(典型的には架橋反応)を促進させるものであればよい。
硬化促進剤(E)としては、例えば、有機ホスフィン、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等のリン原子含有化合物;1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン-7、ベンジルジメチルアミン、2-メチルイミダゾール等が例示されるアミジンや3級アミン、アミジンやアミンの4級塩等の窒素原子含有化合物から選択される1種類または2種類以上を含むことができる。
これらの中でも、硬化性を向上させる観点からはリン原子含有化合物を含むことがより好ましい。また、成形性と硬化性のバランスを向上させる観点からは、テトラ置換ホスホニウム化合物、ホスホベタイン化合物、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物等の潜伏性を有するものを含むことがより好ましい。
有機ホスフィンとしては、例えばエチルホスフィン、フェニルホスフィン等の第1ホスフィン;ジメチルホスフィン、ジフェニルホスフィン等の第2ホスフィン;トリメチルホスフィン、トリエチルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン等の第3ホスフィンが挙げられる。
テトラ置換ホスホニウム化合物としては、例えば下記一般式(6)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2022057356000007
一般式(6)において、
Pはリン原子を表す。
、R、RおよびRは、それぞれ独立に、芳香族基またはアルキル基を表す。
Aはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸のアニオンを表す。
AHはヒドロキシル基、カルボキシル基、チオール基から選ばれる官能基のいずれかを芳香環に少なくとも1つ有する芳香族有機酸を表す。
x、yは1~3、zは0~3であり、かつx=yである。
一般式(6)で表される化合物は、例えば、以下のようにして得られる。
まず、テトラ置換ホスホニウムハライドと芳香族有機酸と塩基を有機溶剤に混ぜ均一に混合し、その溶液系内に芳香族有機酸アニオンを発生させる。次いで水を加えると、一般式(6)で表される化合物を沈殿させることができる。一般式(6)で表される化合物において、リン原子に結合するR、R、RおよびRがフェニル基であり、かつAHはヒドロキシル基を芳香環に有する化合物、すなわちフェノール類であり、かつAは該フェノール類のアニオンであるのが好ましい。上記フェノール類としては、フェノール、クレゾール、レゾルシン、カテコールなどの単環式フェノール類、ナフトール、ジヒドロキシナフタレン、アントラキノールなどの縮合多環式フェノール類、ビスフェノールA、ビスフェノールF、ビスフェノールSなどのビスフェノール類、フェニルフェノール、ビフェノールなどの多環式フェノール類などが例示される。
ホスホベタイン化合物としては、例えば、下記一般式(7)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2022057356000008
一般式(7)において、
Pはリン原子を表す。
は炭素数1~3のアルキル基、Rはヒドロキシル基を表す。
fは0~5であり、gは0~3である。
一般式(7)で表される化合物は、例えば以下のようにして得られる。
まず、第三ホスフィンであるトリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩とを接触させ、トリ芳香族置換ホスフィンとジアゾニウム塩が有するジアゾニウム基とを置換させる工程を経て得られる。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物としては、例えば、下記一般式(8)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2022057356000009
一般式(8)において、
Pはリン原子を表す。
10、R11およびR12は、炭素数1~12のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
13、R14およびR15は水素原子または炭素数1~12の炭化水素基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよく、R14とR15が結合して環状構造となっていてもよい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるホスフィン化合物としては、例えばトリフェニルホスフィン、トリス(アルキルフェニル)ホスフィン、トリス(アルコキシフェニル)ホスフィン、トリナフチルホスフィン、トリス(ベンジル)ホスフィン等の芳香環に無置換またはアルキル基、アルコキシル基等の置換基が存在するものが好ましく、アルキル基、アルコキシル基等の置換基としては1~6の炭素数を有するものが挙げられる。入手しやすさの観点からはトリフェニルホスフィンが好ましい。
また、ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物に用いるキノン化合物としては、ベンゾキノン、アントラキノン類が挙げられ、中でもp-ベンゾキノンが保存安定性の点から好ましい。
ホスフィン化合物とキノン化合物との付加物の製造方法としては、有機第三ホスフィンとベンゾキノン類の両者が溶解することができる溶媒中で接触、混合させることにより付加物を得ることができる。溶媒としてはアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類で付加物への溶解性が低いものがよい。しかしこれに限定されるものではない。
一般式(8)で表される化合物において、リン原子に結合するR10、R11およびR12がフェニル基であり、かつR13、R14およびR15が水素原子である化合物、すなわち1,4-ベンゾキノンとトリフェニルホスフィンを付加させた化合物が封止用樹脂組成物の硬化物の熱時弾性率を低下させる点で好ましい。
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物としては、例えば下記一般式(9)で表される化合物等が挙げられる。
Figure 2022057356000010
一般式(9)において、
Pはリン原子を表し、Siは珪素原子を表す。
16、R17、R18およびR19は、それぞれ、芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基を表し、互いに同一であっても異なっていてもよい。
20は、基YおよびYと結合する有機基である。
21は、基YおよびYと結合する有機基である。
およびYは、プロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
およびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基を表し、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。
20、およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、Y、Y、YおよびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。
は芳香環または複素環を有する有機基、あるいは脂肪族基である。
一般式(9)において、R16、R17、R18およびR19としては、例えば、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ナフチル基、ヒドロキシナフチル基、ベンジル基、メチル基、エチル基、n-ブチル基、n-オクチル基およびシクロヘキシル基等が挙げられ、これらの中でも、フェニル基、メチルフェニル基、メトキシフェニル基、ヒドロキシフェニル基、ヒドロキシナフチル基等のアルキル基、アルコキシ基、水酸基などの置換基を有する芳香族基もしくは無置換の芳香族基がより好ましい。
一般式(9)において、R20は、YおよびYと結合する有機基である。同様に、R21は、基YおよびYと結合する有機基である。YおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。同様にYおよびYはプロトン供与性基がプロトンを放出してなる基であり、同一分子内の基YおよびYが珪素原子と結合してキレート構造を形成するものである。基R20およびR21は互いに同一であっても異なっていてもよく、基Y、Y、Y、およびYは互いに同一であっても異なっていてもよい。このような一般式(9)中の-Y-R20-Y-、およびY-R21-Y-で表される基は、プロトン供与体が、プロトンを2個放出してなる基で構成されるものであり、プロトン供与体としては、分子内にカルボキシル基、または水酸基を少なくとも2個有する有機酸が好ましく、さらには芳香環を構成する隣接する炭素にカルボキシル基または水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物が好ましく、芳香環を構成する隣接する炭素に水酸基を少なくとも2個有する芳香族化合物がより好ましく、例えば、カテコール、ピロガロール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレン、2,2'-ビフェノール、1,1'-ビ-2-ナフトール、サリチル酸、1-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、3-ヒドロキシ-2-ナフトエ酸、クロラニル酸、タンニン酸、2-ヒドロキシベンジルアルコール、1,2-シクロヘキサンジオール、1,2-プロパンジオールおよびグリセリン等が挙げられるが、これらの中でも、カテコール、1,2-ジヒドロキシナフタレン、2,3-ジヒドロキシナフタレンがより好ましい。
一般式(9)中のZは、芳香環または複素環を有する有機基または脂肪族基を表し、これらの具体的な例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基およびオクチル基等の脂肪族炭化水素基や、フェニル基、ベンジル基、ナフチル基およびビフェニル基等の芳香族炭化水素基、グリシジルオキシプロピル基、メルカプトプロピル基、アミノプロピル基等のグリシジルオキシ基、メルカプト基、アミノ基を有するアルキル基およびビニル基等の反応性置換基等が挙げられるが、これらの中でも、メチル基、エチル基、フェニル基、ナフチル基およびビフェニル基が熱安定性の面から、より好ましい。
ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物の製造方法は、例えば以下である。
メタノールを入れたフラスコに、フェニルトリメトキシシラン等のシラン化合物、2,3-ジヒドロキシナフタレン等のプロトン供与体を加えて溶かし、次に室温攪拌下ナトリウムメトキシド-メタノール溶液を滴下する。さらにそこへ予め用意したテトラフェニルホスホニウムブロマイド等のテトラ置換ホスホニウムハライドをメタノールに溶かした溶液を室温攪拌下滴下すると結晶が析出する。析出した結晶を濾過、水洗、真空乾燥すると、ホスホニウム化合物とシラン化合物との付加物が得られる。
封止用樹脂組成物は、硬化促進剤(E)を1種のみ含んでもよいし、2種以上含んでもよい。
硬化促進剤(E)の含有量は、封止用樹脂組成物の全体に対して0.01質量%以上であることが好ましく、0.05質量%以上であることがより好ましく、0.10質量%以上であることがさらに好ましい。
一方で、硬化促進剤(E)の含有量は、封止用樹脂組成物の全体に対して2.0質量%以下であることが好ましく、1.5質量%以下であることがより好ましく、1.0質量%以下であることがさらに好ましい。
硬化促進剤(E)の量を適切に調整することで、十分なTHB耐性を得つつ、組成物の硬化/流動特性などを適切に調整することもできると考えられる。
(その他の成分)
本実施形態の封止用樹脂組成物は、さらに必要に応じて、上記成分(A)~(E)以外に他の成分を含んでもよい。他の成分として、イオン捕捉剤、難燃剤、着色剤、離型剤、低応力剤、酸化防止剤、重金属不活性化剤等の各種添加剤が挙げられる。
イオン捕捉剤(イオンキャッチャー、イオントラップ剤などとも呼ばれる)としては、例えば、ハイドロタルサイトを用いることができる。また、ビスマス酸化物やイットリウム酸化物などもイオン捕捉剤として知られている。
イオン捕捉剤を用いる場合、1種のみを用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
イオン捕捉剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.01~0.5質量%、好ましくは0.05~0.3質量%である。
難燃材としては、無機系難燃剤(例えば、ホウ酸亜鉛、水和金属系化合物)、ハロゲン系難燃剤、リン系難燃剤、有機金属塩系難燃剤などを挙げることができる。
難燃剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
難燃材の量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0~15質量%、好ましくは0~10質量%である。
着色剤としては、具体的には、カーボンブラック、ベンガラ、酸化チタン等が挙げられる。
着色剤を用いる場合、1種または2種以上を組み合わせて用いることができる。
着色剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.8質量%、好ましくは0.2~0.5質量%である。
離型剤としては、天然ワックス、モンタン酸エステル等の合成ワックス、高級脂肪酸もしくはその金属塩類、パラフィン、酸化ポリエチレン等が挙げられる。
離型剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
離型剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~0.8質量%、好ましくは0.2~0.5質量%である。
低応力剤としては、例えば、ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール-グリシジルエーテル共重合体等に代表されるシロキサン化合物、シリコーンオイル、シリコーンゴム、ポリイソプレン、1,2-ポリブタジエン、1,4-ポリブタジエン等のポリブタジエン、スチレン-ブタジエンゴム、アクリロニトリル-ブタジエンゴム、ポリクロロプレン、ポリ(オキシプロピレン)、ポリ(オキシテトラメチレン)グリコール、ポリオレフィングリコール、ポリ-ε-カプロラクトン等の熱可塑性エラストマー、ポリスルフィドゴム、フッ素ゴム等を挙げることができる。これらの中でも、シロキサン化合物、シリコーンゴム、およびアクリロニトリル-ブタジエンゴム等が、得られる封止用樹脂組成物の硬化物の煮沸後の誘電率を低減できる点で好ましい。
低応力剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
また上記の特定の低応力剤を、適宜組み合わせて用いることにより、得られる封止用樹脂組成物の硬化物の煮沸後の誘電率をさらに低減することができる。例えば、シロキサン化合物とアクリロニトリル-ブタジエンゴムとの組み合わせを用いることが、得られる封止用樹脂組成物の硬化物の煮沸後の誘電率を低減できる点で特に好ましい。
低応力剤の量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0.1~5質量%、好ましくは0.1~3質量%である。
酸化防止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤(ジブチルヒドロキシトルエン等)、イオウ系酸化防止剤(メルカプトプロピオン酸誘導体等)、リン系酸化防止剤(9,10-ジヒドロ-9-オキサ-10-ホスファフェナントレン-10-オキシド等)などが挙げられる。
酸化防止剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
酸化防止剤を用いる場合、その量は、封止用樹脂組成物の全体に対して例えば0~3質量%、好ましくは0~2質量%である。
重金属不活性化剤としては、例えば、アデカスタブCDAシリーズ(株式会社ADEKA社製)などを挙げることができる。
重金属不活性化剤を用いる場合、1種のみ用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
重金属不活性化剤の量は、封止用樹脂組成物の全体に対して、例えば0~1質量%、好ましくは0~0.5質量%である。
(封止用樹脂組成物の製造方法)
例えば、上述の各成分を、公知のミキサー等で混合し、さらにロール、ニーダーまたは押出機等の混練機で溶融混練し、そして冷却、粉砕することで封止用樹脂組成物を得ることができる。
封止用樹脂組成物の性状は、粉砕したままのパウダー状または顆粒状のもの、粉砕後にタブレット状に打錠成型したもの、粉砕したものを篩分したもの、遠心製粉法、ホットカット法などで適宜分散度や流動性等を調整した造顆方法により製造した顆粒状のもの等であることができる。
(パワーデバイス)
本実施形態のパワーデバイスは、基板と、基板上に搭載された半導体素子(パワー素子)と、半導体素子を封止する封止材とを備える。そして、封止材が、上記の封止用樹脂組成物の硬化物を含む。
図1は、本実施形態のパワーデバイス100の一例を示す断面図である。
パワーデバイス100は、基板30上に搭載されたパワー素子20と、パワー素子20を封止している封止材50とを備えている。
パワー素子20は、例えば、Si、SiC、GaN、Ga、ダイヤモンド等のいずれかにより形成されたパワー半導体素子である。
封止材50は、本実施形態の封止用樹脂組成物を硬化して得られる硬化物により構成されている。
パワーデバイス100において、パワー素子20は、上述したように、例えば、Si、SiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドにより形成されたパワー半導体素子である。これは、150℃以上の高温で動作することができる。
パワーデバイス100は、本実施形態の封止用樹脂組成物を用いて形成された封止材50を備えることにより優れたTHB耐性を示し得る。よって、高温高湿環境での長時間使用においても信頼性を高くすることができる。
なお、パワー素子20は、たとえば入力電力が1.7W以上であるパワー半導体素子とすることができる。
図1においては、基板30が回路基板である場合が例示されている。この場合、図1に示されるように、基板30のうちのパワー素子20を搭載する一面とは反対側の他面には、たとえば複数の半田ボール60が形成されていてもよい。電子素子20は、基板30上に搭載され、かつワイヤ40を介して基板30と電気的に接続される。一方で、パワー素子20は、基板30に対してフリップチップ実装されていてもよい。ここで、ワイヤ40は、たとえば銅で構成される。
封止材50は、例えばパワー素子20のうちの基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うようにパワー素子20を封止する。すなわち、本実施形態の封止用樹脂組成物は、基板30上に搭載されたパワー素子20の面のうち、基板30と対向する一面とは反対側の他面を覆うように封止することができる。図1においては、パワー素子20の上記他面と側面を覆うように封止材50が形成されている。
封止材50は、例えば封止用樹脂組成物をトランスファー成形法や圧縮成形法等の公知の方法を用いて封止成形することにより形成することができる。
図2は、本実施形態のパワーデバイス100の一例を示す断面図であって、図1とは異なる例である。
図2のパワーデバイス100は、基板30としてリードフレームを使用している。この場合、パワー素子20は、たとえば基板30のうちのダイパッド32上に搭載され、かつワイヤ40を介してアウターリード34へ電気的に接続される。
パワー素子20は、図1の例と同様に、例えば、Si、SiC、GaN、Ga、またはダイヤモンドにより形成されたパワー半導体素子である。
封止材50は、図1の例と同様、本実施形態の封止用樹脂組成物を用いて形成される。
以上、本発明の実施形態について述べたが、これらは本発明の例示であり、上記以外の様々な構成を採用することができる。また、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれる。
以下、本発明について実施例を参照して詳細に説明するが、本発明は、これらの実施例の記載に何ら限定されるものではない。
<封止用樹脂組成物の製造>
表1に記載された各成分を記載された量比で混合し、混合物を得た。混合は、常温でヘンシェルミキサーを用いて行った。
その後、その混合物を、70~100℃でロール混練し、混練物を得た。
得られた混練物を冷却し、その後、粉砕し、封止用樹脂組成物を得た。
表1に記載の各成分の情報は、以下の通りである。
(無機充填材)
・無機充填材1:シリカ(株式会社マイクロン製、TS13-006)
・無機充填材2:シリカ(株式会社アドマテックス製、平均粒子径d50:0.5μm)
(着色剤)
・着色剤1:カーボンブラック(東海カーボン株式会社製)
(カップリング剤)
・カップリング剤1:フェニルアミノプロピルトリメトキシシラン
・カップリング剤2:3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(チッソ株式会社製、S810)
(エポキシ樹脂)
・エポキシ樹脂1:テトラメチルビフェノール型エポキシ樹脂(三菱化学株式会社製、YX-4000K)
(硬化剤)
・硬化剤1:フェノール・ビフェニレン樹脂(明和化成社製、MEH-7851SS)
(硬化促進剤)
・硬化促進剤1:4-ヒドロキシ-2-(トリフェニルホスホニウム)フェノラート(ケイ・アイ化成株式会社製、TPP-BQ)
(離型剤)
・離型剤1:1-アルケン・マレイン酸無水物の縮合物とステアリルアルコールとの反応物(エア・ウォーター株式会社製)
(低応力剤)
・低応力剤1:エポキシ・ポリエーテル変性シリコーンオイル(東レダウコーニング社製、FZ-3730)
・低応力剤2:ジメチルシロキサン-アルキルカルボン酸-4,4'-(1-メチルエチリデン)ビスフェノール グリシジルエーテル共重合体(住友ベークライト株式会社製、M69B)
・低応力剤3:カルボキシル基末端ブタジエン・アクリロニトリル共重合体(ピイ・ティ・アイ・ジャパン株式会社、CTBN1008SP)
得られた封止用樹脂組成物について、下記の物性、評価項目について評価を行った。
(封止用樹脂組成物の抽出アンモニウムイオン量の測定)
まず、上記で得られた封止用樹脂組成物を用いて、金型温度175℃、注入圧力10.0MPa、硬化時間2分の条件で成形し、その後、175℃、4時間の条件で後硬化して硬化物を得た。その硬化物を粉砕ミルにより3分間粉砕したものを、200メッシュの篩で篩分し、篩を通過した粉を試料として調製した。
得られた試料5gと純水50mlとを、テフロン(登録商標)製耐圧容器に入れて密閉し、温度125℃、相対湿度100%RH、24時間の処理(熱水抽出)を行なった。次に、室温まで冷却した後、抽出水を遠心分離し、20μmフィルターにてろ過し、ろ液を抽出水とした。
得られた抽出水を、イオンクロマト装置(サーモフィッシャーサイエンティフィック社製)を用いたイオンクロマトグラフにより分析し、その抽出水中のアンモニウムイオン濃度を測定した。得られたアンモニウムイオン濃度を、硬化物の抽出アンモニウムイオン濃度とした。結果を、表1に示す。
(試験片の作製)
各実施例および各比較例で得られた封止用樹脂組成物を、トランスファー成形機を用いて、金型温度175℃、注入圧力9.8MPa、硬化時間2分の条件で金型に注入成形し、直径100mm、厚さ2mmの円形状に成形した。成形後、オーブンを用い、175℃、4時間の条件でアフターキュアを行った。その後、室温まで放冷し、評価用の試験片を得た。
(誘電率)
得られた評価用の試験片(封止用樹脂組成物の硬化物)について、アジレント・テクノロジー社製precision LCR meter HP-4284Aにより、以下の物性を測定した。結果を表1に示す。
・誘電率1:1MHz、室温(25℃)における誘電率
・誘電率2:試験片を煮沸した後、20Hz、85℃における誘電率
(THB試験:THB耐性の評価)
定格電圧1200VのIGBT(絶縁ゲートバイポーラトランジスタ)素子を、パッケージ仕様:TO-247のフレームに半田を用いてダイボンディングし、そしてAlワイヤでワイヤボンディングした。これを、実施例または比較例の封止用樹脂組成物で封止し、THB評価用のパッケージを作成した。なお、封止用樹脂組成物の成形条件は175℃で2分、アフターキュア条件は175℃で4時間とした。
上述の方法で得られた各例の評価試料を、THB試験装置にて85℃、85%、960Vの電圧下、1000時間処理した。処理前後のリーク電流を測定し、以下の基準で評価した。試験数は10であった(n=10)。
○:処理後のリーク電流不良率 0%
△:処理後のリーク電流不良率 0%超、50%以下。
×:処理後のリーク電流不良率 50%超、100%以下。
Figure 2022057356000011
実施例の封止樹脂組成物は、THB耐性において優れるものであった。
100 パワーデバイス
20 パワー素子
30 基板
32 ダイパッド
34 アウターリード
40 ワイヤ
50 封止材
60 半田ボール

Claims (5)

  1. 半導体素子の封止に用いる封止用樹脂組成物であって、
    抽出アンモニウムイオンの量が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、6ppm以下であり、
    当該封止用樹脂組成物の硬化物について、当該硬化物を煮沸した後、85℃、20Hzで測定される誘電率が4.0以上5.2以下である、
    封止用樹脂組成物。
  2. エポキシ樹脂と、
    硬化剤と、
    無機充填材と、
    カップリング剤と、を含み、
    前記カップリング剤が、アミノシランカップリング剤を含む、請求項1に記載の封止用樹脂組成物。
  3. 前記アミノシランカップリング剤が、当該封止用樹脂組成物全体に対して、0.15質量%以下の量である、請求項2に記載の封止用樹脂組成物。
  4. 低応力化剤をさらに含む、請求項2または3に記載の封止用樹脂組成物。
  5. 半導体素子と、
    請求項1~4のいずれかに記載の封止用樹脂組成物の硬化物により構成され、かつ前記半導体素子を封止する封止材と、
    を備える、半導体装置。
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