JP7008423B2 - 栽培環境制御システム、栽培システム、栽培環境制御方法、及びプログラム - Google Patents
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露地栽培の植物に二酸化炭素を施用しようとしても、植物が吸収する量に比べて二酸化炭素が拡散する量の方が多くなる。栽培施設内で植物を栽培して二酸化炭素を施用すれば、二酸化炭素が拡散しにくくなる。ただし、栽培施設の内部温度が日射等の影響により上昇することがある。これを避けるために、栽培施設に外気を入れて温度を調整すると、施用するための二酸化炭素が栽培施設から流出することが懸念される。このように、自然環境の二酸化炭素濃度より高い二酸化炭素濃度の環境で植物を栽培することは容易ではない。
ところで、蜂等の生物を利用して、栽培対象の植物の受粉を促進させる栽培方法が知られている。
本発明の一態様の栽培環境制御システムにおいて、前記二酸化炭素を施用する時間帯には、夕方が含まれる。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る栽培環境制御システムを適用する栽培システムの概要について説明するための図である。図2は、図1のA-A’面側から見た栽培システムの立面図である。図3は、実施形態に係る局所区画部(後述のタイプ1)を適用した栽培床周りについて説明するための説明図である。図3に示す断面図は、図1と図2に示すB-B’断面の局所区画部を示すものである。
・栽培施設
実施形態の栽培施設2は、農業ハウス等とも称され、ビニルシート等の樹脂シートでドーム状にしたものや、ガラス等を枠組したハウス等、植物3を栽培するのに用いられるすべての温室構造体が含まれる。栽培施設2は、内外の温度差があるときに断熱効果をあげるため、樹脂シート又はガラス等により2重に構成されていてもよい。
その内部の植栽区域には、植物3を栽培するための栽培床4が配置される。植栽区域には栽培床4の他に、栽培床4に対して作業者が植物3を栽培するための作業、資材の搬入、収穫物の搬送などを行う通路、並びに作業に利用するための空間等が含まれてもよい。
例えば、栽培施設2は、自然光(太陽光)を利用して、その内部で植物3の栽培を可能とする。なお、栽培施設2は、日照量などを補う補光光源を内部に設けてもよいし、植物工場などのように光源を用いてもよい。
栽培施設2は、開度を調整可能な開口部を有する。その開口部の開度を調整することで、植栽区域が過度に高温になることを抑制できる。例えば、図1と図2に示す側壁部23と側壁部24は、外気を取り入れる開口部231、241を有する。側壁部20の面積に対する各開口部の面積の比率に制限はない。開口部231、241には、窓開閉装置8として構成される窓が設けられている。開口部231、241は、窓等を利用して閉じることができ、窓を閉じた状態であれば、外部からの外気の流入が制限される。或いは、外部との空気の出入りが制限される。例えば、側壁部20と開口部231、241に設けられた窓(窓開閉装置8)は、自然光の透過性がある樹脂シート又はガラス等の部材で形成される。図2に示す窓開閉装置8は、その窓を開いた状態のものであり、窓の開度は適宜調整することができる。
屋根部25は、同様に自然光の透過性がある部材で形成される。
局所区画部5(局所区画形成手段)は、その栽培施設2の内部に設けられた植物3の栽培床4を囲み、植物3を栽培するための局所区画をその内部に形成する。局所区画部5は、底部51と、植物3の丈に基づいて決定された高さの局所区画壁52、53とを含む。局所区画部5は、底部51と局所区画壁52、53などの局所区画壁とにより容器状に構成されている。なお、底部51は、その一部又は全部が栽培床4として構成されていてもよい。実施形態では、後述するように植物3に二酸化炭素(以下、CO2という。)を施用するときがある。
ところで、CO2とは、空気より比重が重い。容器状に構成された局所区画部5内に、植物3に施用させるためのCO2が溜まることにより、CO2を栽培床4上に留めておくことができる。
栽培施設2の内部には、受粉手段配置部7が設けられている。受粉手段70は、蜂(ミツバチ等)71などの生物とその巣箱72を総称するものである。受粉手段70は、受粉手段配置部7に配置される。手段配置部7は、栽培施設2の内部であり、かつ局所区画部5により区画された局所区画の外側に設けられる。つまり、受粉手段70は、栽培施設2の内部であり、かつ局所区画部5により区画された局所区画の外側に配置される。受粉手段70は、蜂71等の生物により、局所区画内で栽培されている植物3の受粉を支援する。植物3の生理及び栽培施設2が配置される地点の環境等に合うように、受粉手段70の生物の種類を選択してもよい。なお、イチゴなどの植物3は、その成長過程の内、受粉に適した段階とCO2を施用すべき段階の時期が重なるものの一例である。イチゴの受粉に適した受粉手段70として、ミツバチ等の蜂71が選択される場合がある。イチゴの栽培において、受粉手段70に蜂71を選定することにより、受粉の促進とCO2の施用をより効率よく実施することが可能になる。
CO2供給装置6は、CO2の供給元である。CO2供給装置6は、CO2を局所区画に供給する。例えば、CO2供給装置6は、CO2を密閉容器に封入されたものであってもよく、燃焼、発酵等の方法でCO2を一次的又は2次的に生成するCO2生成施設であってもよい。
なお、本実施形態におけるCO2の施用とは、制御によりCO2供給装置6から供給されるCO2の供給量を調整し、局所区画部5内のCO2濃度(CL)を、CO2施用前より高めるようにCO2を供給することをいう。
栽培環境制御システム10は、栽培環境制御装置100と、子局装置200とを備える。
例えば、栽培環境制御装置100は、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read only memory)などの記憶装置(記憶部130)と、入出力装置と、インターフェイス部(IF部110、通信部120)と、ソフトウエアプログラムを実行するプロセッサ(制御部140)などを含む所謂コンピュータであってもよい。
各種センサと子局装置200とIF部110とは、有線通信と無線通信のいずれで接続してもよい。さらに、栽培環境制御装置100側のIF部110と各種センサが、直接通信するようしてもよい。
各種設備に係る情報には、蓋部開閉装置50と、CO2供給装置6と、窓開閉装置8と、照明装置9と、カーテン11と等を含む各種設備の情報が含まれる。
さらに、記憶部130は、上記の検出結果の他に、栽培施設2内外の状況の変化、上記の各設備を制御した履歴を記憶する時刻歴情報があり、記憶部130は、制御した時刻と関連付けて制御履歴情報を記憶する。
以下、栽培環境制御装置100による各種制御について順に説明する。
栽培環境制御装置100の制御部140は、外気温TOと、局所区画内温度TLと、地面の温度TBと、照度(LH)の何れか又は組み合わせに基づいて、栽培施設内温度THが所定の許容変動範囲内になるように調整する。栽培施設内温度THの許容変動範囲は、植物3の生理又は受粉手段70の生物の生理から導出される値、照度等により決定される。生物の生理に基づいて導出される値とは、例えば、蜂71が活動(飛行)する適正な温度範囲のことであってもよい。
栽培環境制御装置100の制御部140は、所定の条件を満たす場合に、CO2を施用するように制御する。例えば、制御部140は、外気温TOと、局所区画内温度TLと、地面の温度TBと、照度(LH)の何れか又は組み合わせに基づいて判定した結果に基づいて、施用を決定してもよく、特定の時間帯に施用するようにしてもよい。その時間帯には、日射が有る時間帯又は補光中の期間が含まれる。
局所区画部5内に外気が流入する状態にある場合(外温度TOが所定の温度より高い場合等)には、局所区画に対してCO2を施用しても、CO2濃度を所定の範囲に維持することが困難なことがある。このような場合には、制御部140は、効率化の観点によりCO2の施用を停止してもよい。
例えば、局所区画内には、植物3に照射される光量を補う照明装置9の灯具91が設けられている。灯具91は、照射方向が植物3に向くように局所区画壁又は栽培床4の上方に係止されている。なお、灯具91は、その位置が、植物3の成長に合わせて鉛直方向に調整可能に形成されていてもよい。或いは、鉛直方向に複数の灯具91が設けられていて、植物3の成長に合わせてそれらが切換えられるようにしてもよい。
まず、制御部140は、栽培施設における各種状態を検出し(SA10)、各種状態に関するデータを収集する。例えば、各種状態に関するデータには、各種センサの検出対象の状態(検出値)、CO2供給装置6、窓開閉装置8、蓋部開閉装置50、照明装置9、カーテン11などの各種制御対象機器の状態などを示すデータが含まれる。
さらに、実施形態のように可動蓋54を閉鎖してCO2を施用することにより、上記をより容易に実現できる。これにより、受粉を促進することができる。制御部140は、受粉手段70による受粉活動に影響を与えるCO2濃度より局所区画の外側のCO2濃度が低くなるようにCO2を施用してもよい。
第1の実施形態では、可動蓋54の開閉制御とCO2供給装置6に関わるCO2施用制御の事例を中心に説明した。本変形例では、これに、窓開閉装置8による窓の制御を付加する事例について説明する。
第1の実施形態では、各種センサによって検出された状態に基づいて、可動蓋54の開閉制御とCO2供給装置6に関わるCO2施用の制御を実施する事例を中心に説明した。本変形例では、スケジュール制御を単独で実施する事例について説明する。
図7(a)に示すように、制御部140は、窓を、朝と夕方に閉鎖する。昼間と夜間は、窓を、代表点温度 摂氏20度を閾値(T1)として開放し、摂氏15度を閾値(T2)として閉鎖することで、栽培施設2内の温度を調整する。例えば、冬季の場合には、外気温TOが比較的低いため、窓開閉装置8の窓を閉鎖する時間が長くなる。
朝の7時からの1時間は、所定の条件に従い制御される。
このモデルでは、外気温TO、(h)栽培施設2内の温度、(i)局所区画内温度TLが、(g)外気温TOの変化に従い単調に変化するため、夕方になるまで状態の変化はない。
このような状態が、翌日の朝まで継続する。
第1の実施形態では、各種センサによって検出された状態に基づいて、可動蓋54の開閉制御とCO2供給装置6に関わるCO2施用の制御を実施する事例を中心に説明した。その変形例その2において、スケジュール制御を単独で実施する事例を中心に説明した。本変形例では、第1の実施形態の事例と、上記の変形例その2のスケジュール制御とを組み合わせた事例について説明する。
本変形例では、第1の所定期間にCO2を供給し、第2の所定期間にCO2の供給を中断するという間欠的な供給方法でCO2を施用する事例について説明する。例えば、本変形例の制御部140は、第1の所定期間と第2の所定期間を加えた期間を1周期とし、1周期内の第1の所定期間と第2の所定期間の比率を定めて、定めた比率に従いCO2の供給量を調整する。
第1の実施形態では、温度センサと照度センサによって検出された状態に基づいて、可動蓋54の開閉制御とCO2供給装置6に関わるCO2施用の制御を実施する事例を中心に説明した。また、その変形例その2において、スケジュール制御を単独で実施する事例を中心に説明した。これに代えて、本変形例では、照度センサ230によって検出された状態(栽培施設2内の照度(LH)の測定値に従って、制御する事例について説明する。
蜂71の活動量は、日射量が少ない時間帯に低下する。この蜂71の生理を利用して、制御部140は、蜂71の活動が活性化する日中の時間帯を、照度センサ230の検出結果から推定する。つまり、制御部140は、照度センサ230によって検出された栽培施設2内の照度(LH)の測定値に従って、CO2の施用を制御することができる。
図7と図9と図10を参照して、第2の実施形態について説明する。第1の実施形態では、局所区画部の密閉型(タイプ1)を利用する事例を説明した。これに代えて、本実施形態では、開放型(タイプ2)を利用する事例について説明する。
窓の制御は、第1の実施形態の変形例その3と同様である。CO2の施用は、時間帯により決定される制御条件に従い制御する。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例その3に対する上記の相違点以外は、第1の実施形態及び、その各変形例を適用することができる。
図7と図11を参照して、第3の実施形態について説明する。第1の実施形態では、タイプ1の密閉型を利用する事例を説明した。第2の実施形態では、タイプ2の開放型を利用する事例を説明した。
窓の制御は、第1の実施形態の変形例その3と同様である。CO2の施用は、時間帯により決定される制御条件に従い制御する。
本実施形態は、第1の実施形態の変形例その3に対する上記の相違点以外は、第1の実施形態及び、その各変形例を適用することができる。
図12を参照して、第4の実施形態について説明する。第1から第3の実施形態では、栽培施設2に対する各種制御における主な制御について説明した。これに加えて実施する処理として、本実施形態では、各実施形態に共通する例外処理の事例について説明する。
前述の図4を参照して、第5の実施形態について説明する。第1から第4の実施形態では、栽培施設2毎に実施する各種制御について説明した。これに加えて、本実施形態では、集中管理センターC等に設けられた集中管理装置500を利用する処理について説明する。
さらに、位置情報から算出した緯度経度を基に、日照時間情報を抽出し、各種制御のための変数、閾値などの情報を変更してもよい。
Claims (12)
- 栽培施設において、植物を栽培するための環境を制御する栽培環境制御システムであって、
前記植物の栽培床を囲むように配置された局所区画形成手段の内側に前記植物を栽培するための局所区画が形成され、前記局所区画内に二酸化炭素を供給して、前記局所区画内の二酸化炭素濃度を調整するCO2濃度調整手段と、
前記栽培施設の内部であり、かつ前記局所区画の外側に他家受粉のための虫が配置され、推定される前記虫が活動する時間をさけて前記二酸化炭素を施用するように前記CO2濃度調整手段を制御することで、前記虫による受粉に影響を与えないように前記環境を制御する制御部と、
を備え、
前記植物としてイチゴを栽培する場合に、同時期に前記虫による前記他家受粉と、前記CO2濃度調整手段による前記二酸化炭素の施用とを実施する栽培環境制御システム。 - 前記二酸化炭素を施用する時間帯には、夕方が含まれる、
請求項1に記載の栽培環境制御システム。 - 前記二酸化炭素を施用する時間帯は、日射が有る時間帯又は補光中の期間が含まれる、
請求項1又は請求項2に記載の栽培環境制御システム。 - 前記制御部は、
前記栽培施設の外気温度又は前記栽培施設内の温度に基づいて前記虫の活動が推定されて、前記推定の結果に基づいて予め決定された制御のスケジュールにおける時間帯をさけて前記二酸化炭素を施用する、
請求項1から請求項3の何れか1項に記載の栽培環境制御システム。 - 前記制御部は、
前記虫による受粉活動に影響を与える二酸化炭素濃度より前記栽培施設内の二酸化炭素濃度が低くなるように前記二酸化炭素を施用する、
請求項1から請求項4の何れか1項に記載の栽培環境制御システム。 - 前記制御部は、
前記栽培施設内に外気の流入を許可する状態にある場合には、前記局所区画に対する二酸化炭素の施用を停止する、
請求項1から請求項5の何れか1項に記載の栽培環境制御システム。 - 前記局所区画内の二酸化炭素濃度の変動範囲は、前記植物の生理又は前記虫の生理に基づいて決定される、
請求項1から請求項6の何れか1項に記載の栽培環境制御システム。 - 栽培施設において、植物を栽培するための栽培システムであって、
前記植物の栽培床を囲むように配置され、前記植物を栽培する環境が調整される局所区画を内側に形成する局所区画形成手段と、
前記局所区画内に二酸化炭素を供給して、前記局所区画内の二酸化炭素濃度を調整するCO2濃度調整手段と、
前記栽培施設の内部であり、かつ前記局所区画の外側に他家受粉のための虫が配置され、推定される前記虫が活動する時間をさけて前記二酸化炭素を施用するように前記CO2濃度調整手段を制御することで、前記虫による受粉に影響を与えないように前記環境を制御する制御部と、
を備え、
前記植物としてイチゴを栽培する場合に、同時期に前記虫による前記他家受粉と、前記CO2濃度調整手段による前記二酸化炭素の施用とを実施する栽培システム。 - 前記局所区画形成手段は、
前記植物の丈に基づいて決定された高さの局所区画壁を含む、
請求項8に記載の栽培システム。 - 前記局所区画形成手段は、前記局所区画を閉じる可動蓋を有する、
請求項8又は請求項9に記載の栽培システム。 - 栽培施設において、植物を栽培するための環境を制御する栽培環境制御方法であって、
前記植物の栽培床を囲むように配置された局所区画形成手段の内側に前記植物を栽培するための局所区画が形成され、前記局所区画内に二酸化炭素を供給して、前記局所区画内の二酸化炭素濃度をCO2濃度調整手段に調整させて、
前記栽培施設の内部であり、かつ前記局所区画の外側に他家受粉のための虫が配置され、推定される前記虫が活動する時間をさけて前記二酸化炭素を施用するように前記CO2濃度調整手段を制御することで、前記虫による受粉に影響を与えないように前記環境を制御して、
前記植物としてイチゴを栽培する場合に、同時期に前記虫による前記他家受粉と、前記CO2濃度調整手段による前記二酸化炭素の施用とを実施する、
栽培環境制御方法。 - 栽培施設において、植物を栽培するための環境を制御するコンピュータに、
前記植物の栽培床を囲むように配置された局所区画形成手段の内側に前記植物を栽培するための局所区画が形成され、前記局所区画内に二酸化炭素を供給して、前記局所区画内の二酸化炭素濃度をCO2濃度調整手段に調整させるステップと、
前記栽培施設の内部であり、かつ前記局所区画の外側に他家受粉のための虫が配置され、推定される前記虫が活動する時間をさけて前記二酸化炭素を施用するように前記CO2濃度調整手段を制御することで、前記虫による受粉に影響を与えないように前記環境を制御して、前記植物としてイチゴを栽培する場合に、同時期に前記虫による前記他家受粉と、前記CO2濃度調整手段による前記二酸化炭素の施用とを実施するステップと、
を実行させるためのプログラム。
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