JP7007806B2 - 地上波測位システム - Google Patents
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Description
従来、地上波測位システムとして、双曲線航法(例えばデッカ航法)を用いたものがある。
双曲線航法は、3つ以上の送信局からの受信電波の到来遅延差に基づいて、2つ以上の双曲線を描き、その交点を受信局の位置(緯度、経度)として算出する方法である。到来遅延差は、受信信号の位相差として求められる。
図9の地上波測位システムは、送信局として、地上に設けられた固定局である主局(M-1)と、従局(S-1)及び従局(S-2)とを備えており、船舶等に設けられた受信局10で各送信局からの信号を受信して測位を行う。つまり、受信局は移動局となるものである。
主局(M-1)がトーン信号を送信すると、従局(S-1),従局(S-2)はそれに同期してトーン信号を送信し、受信局10は各送信局からのトーン信号を受信する。
次に、地上波測位システムで用いられる信号フォーマットについて図10を用いて説明する。図10は、地上波測位システムで用いられる信号フォーマットの説明図である。
図10に示すように、周波数としてf1とf2とが用いられ、1フレーム(760msec)は、40msec×19スロットで構成される。
主局から周波数f2で送信される信号はf1の信号に同期し、ガード信号(G)、送信スロット(S1~S6)、ガード信号(G)で構成される。
送信スロットは、各局に割り当てられたタイムスロットであり、ここでは、主局(M-1)がS1とS4、従局(S-1)がS2とS5、従局(S-2)がS3とS6を用いてトーン信号を送信する。
また、ガード信号の区間は、何も送信しない。
次に、従来の地上波測位システムにおける送信信号と受信信号について図11を用いて説明する。図11は、従来の地上波測位システムにおける送信信号と受信信号のイメージを示す説明図である。
図11では、(a)で送信局の送信信号のイメージを、(b)で受信局10(船)における受信信号のイメージを示している。
各送信局からの送信信号は、位相が一致し、連続したトーン信号となる。
具体的には、受信局10においては、主局(M-1)からのトーン信号(S1)を受信すると、次のスロットで従局(S-1)のトーン信号(S2)を受信するが、ここで、送信局(従局(S-1))と受信局10との距離に応じて遅延が発生するため、図11(b)に示すように、スロットS1とスロットS2の受信信号は連続した信号とはならない。
スロットS3でも同様に、主局(M-1)の送信信号に同期した受信信号から、従局(S-2)と受信局10との距離に応じた位相差が発生する。
ここで、位相ずれの検出例について図12を用いて説明する。図12は、位相ずれの検出例を示す説明図である。
スロットの初めと終わりにはレベル変化等があるため、検出対象外(ガード)とし、主局(M-1)に同期した上段のトーン信号に対して、下段のトーン信号の位相ずれを検出する場合を考える。
しかしながら、ガード部分を除いた領域のみで検出すると、180度なのか540度なのかの区別は困難である。
このように、位相のずれが360度(2π)以上になった場合には、正確なずれを検出することはできない。
そこで、従来の地上波測位システムでは、2つの周波数(f1,f2)を用いて360度を超える位相のずれを検出するようにしている。
図13は、2つの周波数を用いて位相ずれを検出する場合を示す説明図である。
図13に示すように、周波数f1とf2とを用いることにより、周波数f1だけでは区別できない位相ずれについても、周波数f2の位相を比較することで、図13の(0)~(10)の範囲((10)は含まない)で位相のずれを検出することが可能となる。
但し、この方法でも、図13の(10)を越えると判断がつかなくなってしまう。
尚、地上波測位システムに関する従来の技術としては、特開2009-186241号公報「受信装置、測距システム、測位システム、コンピュータプログラム及び受信時点特定方法」(住友電気工業株式会社、特許文献1)、特表2014-513271号公報「無線トランスミッタからレシーバまでの距離を推定する方法、移動端末の位置を計算する方法、移動端末、及び、位置特定装置」(シズベル テクノロジー エス.アール.エル、特許文献2)、特開平5-142326号公報「測位装置」(古野電気株式会社、特許文献3)がある。
[実施の形態の概要]
本発明の実施の形態に係る地上波測位システム(本測位システム)は、双曲線航法によって測位を行う地上波測位システムであって、送信局が、2つの周波数f1とf2とを用いて、各スロットの前半でパルス状の遅延時間検出信号を出力し、後半で連続したトーン信号を送信すると共に、受信局が、f1とf2で受信した遅延時間検出信号に基づいて従局の遅延時間を検出し、トーン信号を用いて当該遅延時間に対応する位相差を含む1波長分(位相差360度)の範囲について、主局に同期した信号からの位相差を検出するものであり、遅延時間検出信号によって遅延時間を把握して位相差360度以内にまで絞りこんだ後、トーン信号によって正確な位相差を検出することができ、大幅な信号フォーマットの変更を行うことなく位相差を精度よく求めることができ、正確な位置を算出することができるものである。
ここで、本測位システムの特徴部分に関する概略構成について図1を用いて説明する。図1は、本測位システムの特徴部分に関する概略構成図である。
尚、本測位システムの送信局及び受信局は、本測位システムの特徴部分以外の構成として、従来の送信局及び受信局と同等の構成を備えているが、説明を簡単にするために図示は省略する。
従来と同様に、送信局1は、主局(M-1)、従局(S-1)、従局(S-2)に相当し、受信局2は、船舶に設けられ、移動局となるものである。
また、受信局2は、従来と同様の受信部21及び測位処理部24と、本測位システムの特徴部分である遅延時間検出部22及び位相差検出部23とを備えている。
そして、本測位システムは、送信局1からの送信信号のパターンを従来とは異なるものとして、受信局2において地上波測位システムにおいて重要となる位相のずれを精度よく求めるようにするものである。
送信局1の信号生成部11は、送信信号を生成する。
特に、本測位システムの信号生成部11は、図10に示した送信スロットS1~S6で送信する信号パターンとして、従来とは異なる信号パターンを生成する。
具体的には、1スロット分の送信信号として、パルス状の遅延時間検出信号と、連続したトーン信号とを生成する。信号生成部11で生成される信号パターンについては後述する。
送信部12は、信号生成部11で生成された信号パターンを無線信号として送信する。尚、送信周波数は、f1とf2の2種類としている。
遅延時間検出部22は、本測位システムの特徴部分であり、従局から受信した遅延時間検出信号に基づいて、主局に同期した信号からの遅延時間を検出し、位相差検出部23に遅延時間を出力する。
本測位システムでは、位相差検出部23における位相差の検出精度を向上させるために、遅延時間を利用している。遅延時間検出部22の構成及び動作については後述する。
1波長分とは、f1又はf2の内いずれか一方の1波長分であり、例えば波長の短いほうの1波長分とする。
まず、本測位システムの送信局1から送信される送信信号について図2を用いて説明する。図2は、本測位システムの送信信号を示す概略説明図である。
図2に示すように、従来の地上波測位システムでは、送信局1からの送信信号は送信スロット(S1~S6)の40msec全てを使って連続したトーン信号を送信していたが、本測位システムでは、スロットの前半の特定タイミングでパルス状の遅延時間検出信号を送信し、後半の20msecで連続したトーン信号を送信する。
この信号パターンを、f1とf2の2種類の周波数で送信する。
次に、本測位システムで用いられる遅延時間検出信号の波形について図3を用いて説明する。図3は、本測位システムで用いられる遅延時間検出信号の波形の例を示す説明図である。
本測位システムでは、遅延時間検出信号として、インパルス応答波形信号を用いている。
具体的には、送信局1の信号生成部11において、f1及びf2のトーン信号に窓関数(hann窓)を乗算することにより遅延時間検出信号を生成する。生成される遅延時間検出信号は、図3に示すようなパルス波形となる。
ここで、本測位システムにおける遅延時間検出の概念について図4を用いて説明する。図4は、本測位システムにおける遅延時間を検出するイメージを示す図である。
図4に示すように、本測位システムでは、送信局1が、1スロット(40msec)の前半20msecの中ほどで遅延時間検出信号を送信し、後半20msecはトーン信号を送信する。
本測位システムにおける遅延時間検出信号の生成について図5を用いて説明する。図5は、遅延検出信号の生成例を示す説明図である。
上述したように、遅延時間検出信号はパルス波形であるため、1つの周波数信号のみでも遅延時間を検出することは可能であるが、本測位システムでは、検出精度を向上させるために、送信局1の信号生成部11が、異なる周波数である周波数f1と周波数f2について窓関数を乗算してインパルス応答波形信号を生成する。
ここで、図5に示すように、f1の遅延時間検出信号とf2の遅延時間検出信号とは、窓長(6msec)の1/4区間のずれを生じさせて生成するようにしている。
遅延時間検出部22の構成について図6を用いて説明する。図6は、遅延時間検出部22の概略構成図である。
図6に示すように、遅延時間検出部22は、S1ゼロクロス点検出部25と、S2ゼロクロス点検出部26と、S3ゼロクロス点検出部27と、遅延時間算出部28とを備えている。
また、スロットS4~S6については、それぞれスロットS1~S3と同様の処理が行われるため、以下、説明を省略する。
S3ゼロクロス点検出部27は、周波数f1及びf2で受信したスロットS3の遅延時間検出信号に基づいて、従局(S-2)のゼロクロス点を検出する。
S1ゼロクロス点検出部25、S2ゼロクロス点検出部26、S3ゼロクロス点検出部27(ゼロクロス点検出部)の構成については後述する。
具体的には、遅延時間算出部28は、S1ゼロクロス点検出部25から出力された主局のゼロクロス点と、S2ゼロクロス点検出部26から出力された従局(S-1)のゼロクロス点とを比較して、その差を従局(S-1)の遅延時間として算出する。
算出された各従局の遅延時間は位相差検出部23に出力される。
次に、図6に示した各ゼロクロス点検出部25~27の構成について図7を用いて説明する。図7は、ゼロクロス点検出部の概略構成図である。尚、S1ゼロクロス点検出部25、S2ゼロクロス点検出部26、S3ゼロクロス点検出部27は、いずれも同じ構成である。
BPF41は、受信信号から周波数f2の信号を抽出する。
バッファ32,42は、一時的に信号を保持して周波数f1の受信信号と周波数f2の受信信号のスロット先頭のタイミングを合わせる。
直交検波部33,43は、入力された信号を直交検波する。
包絡線検出部34,44は、直交検波された信号について包絡線(信号のエンベロープ)を検出する。
ゼロクロス点検出部51は、差分信号に基づいてゼロクロス点を検出する。尚、ゼロクロス点は、差分信号のグラフが横軸と交わる点であり、出力(振幅)がゼロとなる点(タイミング)である。
このように、2つの周波数を用いてゼロクロス点を検出し、図6に示した遅延時間算出部28で、主局のゼロクロス点と従局のゼロクロス点とのずれを求めることで、1つの周波数のみを用いる場合よりも遅延時間を精度よく求めることができるものである。
ここで、ゼロクロス点検出の例について図8を用いて説明する。図8は、ゼロクロス点検出の例を示す説明図である。
図7に示したように、バッファ32,42によってf1とf2のスロットタイミングを合わせて包絡線を検出し、加算部50において、f1のエンベロープからf2のエンベロープを減算すると、図8に示すように差分信号が算出される。
ゼロクロス点算出部51は、差分信号が横軸と交わる点をゼロクロス点として検出する。
これにより、ゼロクロス点の検出精度を向上させることができるものである。
次に、位相差検出部23における位相差の検出について説明する。
上述したように、本測位システムでは、遅延時間検出部22でおおよその遅延時間を求め、位相差検出部23で、当該遅延時間に対応する位相差近傍の1波長分(位相差360度分)で位相差を算出するようにしている。
具体的には、位相差検出部23は、遅延時間を中心とする1波長分を位相差検出範囲とし、当該検出範囲について主局に同期した信号からの位相のずれを算出する。
これにより、地上波測位システムの測位精度を向上させることができるものである。
具体的には、主局から受信した遅延時間検出信号の受信タイミングと、従局から受信した遅延時間検出信号の受信タイミングとを比較して、従局の遅延時間を算出する。
その場合でも、算出された遅延時間に対応する位相差を中心とする1波長分(位相差360度分)を用いてトーン信号による位相差検出を行うことにより、従来に比べて精度の高い位相差検出を短時間で行うことができ、測位の精度及び処理速度を向上させることができるものである。
本発明の実施の形態に係る地上波測位システムによれば、送信局1の信号生成部11が、1スロット内に、パルス波形の遅延時間検出信号とトーン信号とを含む信号パターンを生成し、受信局2の遅延時間検出部22が、遅延時間検出信号に基づいて遅延時間を検出し、位相差検出部23が、トーン信号を用いて、当該遅延時間に対応する位相差を中心としてトーン信号の1波長分で位相差を検出するようにしているので、遅延時間によって位相差の範囲を360度以内に絞り込んでからトーン信号による位相差検出ができ、遅延が大きい場合であっても正確な位相差を検出して、測位の精度を向上させ、測位処理の時間を短縮することができる効果がある。
Claims (3)
- 地上波を送信する送信局としての主局及び従局と、前記主局からの受信信号と前記従局からの受信信号との位相差を求め、前記位相差に基づいて測位を行う移動可能な受信局とを備えた地上波測位システムであって、
前記送信局の主局及び従局が、それぞれ、遅延時間検出信号としてインパルス応答信号を生成する信号生成部を備え、送信スロット内の特定のタイミングで前記遅延時間検出信号を送信すると共に、前記特定のタイミングに続く別のタイミングでトーン信号を送信し、
前記受信局が、前記主局及び前記従局からの遅延時間検出信号の受信タイミングに基づいて、前記従局の遅延時間を検出する遅延時間検出部と、前記検出された遅延時間に基づいて、前記従局からのトーン信号の位相差検出範囲を1波長以内に絞り込んで、前記主局からのトーン信号に対する位相差を検出する位相差検出部とを備えたことを特徴とする地上波測位システム。 - 各送信局が、第1の周波数と第2の周波数を用いて遅延時間検出信号をタイミングをずらして送信し、
受信局が、前記第1の周波数と前記第2の周波数で送信された遅延時間検出信号を包絡線検波して両者の差分を取り、差分信号がゼロとなるゼロクロス点を主局と従局について検出し、前記主局のゼロクロス点と前記従局のゼロクロス点とを比較して前記従局の遅延時間を算出することを特徴とする請求項1記載の地上波測位システム。 - インパルス応答信号は、第1の周波数及び第2の周波数にそれぞれ窓関数を乗算して生成することを特徴とする請求項2記載の地上波測位システム。
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