JP7004694B2 - 良色相の成形品およびその製造方法 - Google Patents
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Description
1.熱可塑性樹脂からなる成形品に主として波長340nm~575nmの成分を含む光を照射し、光照射成形品を得る製造方法、およびその製造方法により得られた光照射成形品。
2.好ましくは、上記1項記載の光が、主として波長370~510nmの成分を含む光である製造方法、およびその製造方法により得られた光照射成形品。
3.上記1項または2項記載の光の光源がLEDである製造方法、その製造方法により得られた光照射成形品。
4.上記1項~3項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂がスチレン系樹脂である光照射成形品。
5.上記4項記載のスチレン系樹脂がスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸系単量体とを共重合して得られるスチレン-(メタ)アクリル酸共重合樹脂である光照射成形品。
6.上記4項記載のスチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステル系単量体とを共重合して得られるスチレン-(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂である光照射成形品。
7.上記1項~6項のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂が、熱可塑性樹脂と酸化防止剤とを含む熱可塑性樹脂組成物である光照射成形品。
8.上記1項~7項のいずれか1項に記載の光照射成形品を利用した光学用部材。
9.上記1項~8項のいずれか1項に記載の光照射成形品を利用した導光板。
本発明の光照射成形品とは、成形品に光を照射したものを言う。本発明において、成形品に照射する光は主として波長340nm~575nmの成分を含む光である。340nm以下では、成形品を構成する樹脂やその他の種々の成分の劣化により、光学特性や機械特性等の物性が悪化する傾向にあるが、340nm以上とすることでこれを抑制でき、また、光学特性の改善効果が高くなる。また、575nm以下の光が、光学特性の改善に対して効果がある。好ましくは、370~510nmであり、この波長領域では、更に高い効果が得られることが実験的に確認された。
本発明に用いる光源には特に制限はないが、光学特性改善に寄与する光の波長は340nm~575nmであるため、エネルギーの利用効率の観点から、全波長領域における光エネルギーに対し、該波長領域の光エネルギーの割合が高い方が、より高効率の光源となる。なお、本願において「主として」とは、本願で定める波長領域の光エネルギーが、全波長領域の光エネルギーに対し50%以上である事を意味する。このような光として、例えばLED(無機ELを利用した無機LEDや、有機ELを利用したO-LEDも含む)は、特定の波長範囲の光を選択的に利用できるため、本願の要求を満たす光源として特に効果的である。それ以外にも種々の光源を利用可能である。
本願で定める波長領域の光エネルギーは全波長領域の光エネルギーに対し、例えば、60%、70%、80%、90%、100%と割合を高めることで、エネルギーの浪費を抑制できるため、ここで示した数値以上とすることで、より好ましい光源となる。
本願発明に用いる成形品の材料としては、種々の熱可塑性樹脂が利用でき、限定されない。熱可塑性樹脂としては、例えば、オレフィン系樹脂、スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリカーボネート系樹脂などが挙げられる。
熱可塑性樹脂組成物は、熱可塑性樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、熱可塑性樹脂組成物100質量%中の熱可塑性樹脂の割合は、例えば90~99.9質量%であり、95~99.9質量%が好ましい。熱可塑性樹脂の割合は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂は、スチレン系単量体を重合して得ることができる樹脂である。スチレン系単量体とは、芳香族ビニル系モノマーであるが、例えば、スチレン、α-メチルスチレン、o-メチルスチレン、p-メチルスチレン等が挙げられ、これらの単独または2種以上の混合物であり、好ましくはスチレンである。また、本発明の特徴を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合してもよく、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、スチレン系樹脂組成物100質量%中のスチレン系樹脂の割合は、例えば90~99.9質量%であり、95~99.9質量%が好ましい。スチレン系樹脂の割合は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.5、99.9質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
熱分解炉:PYR-2A(株式会社島津製作所製)
熱分解炉温度設定:525℃
ガスクロマトグラフ:GC-14A(株式会社島津製作所製)
カラム:ガラス製3mm径×3m
充填剤:FFAP Chromsorb WAW 10%
インジェクション、ディテクター温度:250℃
カラム温度:120℃
キャリアーガス:窒素
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC-101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED-B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
本発明の分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
本願記載の成形品の成形方法に特に制限はないが、例えば射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などの目的に応じた各種成形方法で成形品を得ることができる。成形品の形状は目的に応じた形状とすることができ、限定されるものではない。例えば板状成形品であれば、導光板として用いることができる。導光板とする方法として、板状成形品の背面(光を出射する面の反対側)にドットパターンなどの反射パターンを設けることが知られている。樹脂板から導光板に加工する際、光の入射面あるいは樹脂板の端面全面を研磨処理して、鏡面とすることが好ましい。また、出射光の均一性を高めるために、板状成形品の表面(光が出射される面)にプリズムパターンを設けることができる。板状成形品の表面あるいは背面のパターンは、板状成形品の成形時に形成させることができ、例えば射出成形では金型形状、押出成形ではロール転写などによって、パターン形成させることができる。
本願に示す成形品には、滑剤や酸化防止剤などの各種添加剤が含まれていても良い。例えば、ミネラルオイル、ステアリン酸、エチレンビスステアリン酸アミド等の内部潤滑剤やヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤等の添加剤が挙げられる。また、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリン酸アミドが好適であり、含有量としては樹脂組成物中に30~200ppmであることが好ましい。
(スチレン系樹脂A-1~A-3の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレン及びメタクリル酸、メタクリル酸メチルの合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通り。
重合開始剤-1: 2,2-ジ(4,4-t-ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラAを使用した。)
重合開始剤-2: 1,1-ジ(t-ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサCを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
表1に記載のPMAA含有量は、メタクリル酸単量体単位の含有量を表し、PMMA含有量はメタクリル酸メチル単量体単位の含有量を表す。
スチレン系樹脂組成物のMFR(メルトマスフローレート)は、200℃、49N荷重の条件で、JIS K 7210に基づき測定した。
ビカット軟化温度については、JIS K-7206により、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで求めた。
樹脂名称A-4:三菱レイヨン株式会社製PMMA樹脂、VH5-000
樹脂名称A-5:三菱エンジニアリングプラスチック製PC樹脂、HL-4000
得られた板状成形品からメガロテクニカ株式会社製ゲート加工機GCPB-500を用いて115×127×3mmに切削、研磨し、端面に鏡面を有する板状成形品を得た。得られた板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V-670を用いて、大きさ20×1.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm~800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。得られた値が表2のYIである。また、表2に示す透過率とは、波長380nm~780nmの平均透過率を表す。
ΔYIは、光を照射する前の成形品のYIと光を照射した後の成形品のYIの差を表す(式1)。
ΔYI=(光照射後の成形品のYI)-(光照射前の成形品のYI) (式1)
実施例1-1を例にとると、YI=3.1であり、照射する前のYIは比較例1-1のYI=3.5となるため、ΔYI=-0.4となる。ΔYIが負に大きい方が、色相改善効果が大きい。
試験では、以下の光源を利用した。なお、各光源は特定の分光放射分布を有しており、極大波長とは、分光放射分布のグラフが極大値となる波長のことであり、波長範囲とは、放射エネルギー>0となる波長の最も短い波長から最も長い波長までの領域を示す。
緑色LED:日動工業株式会社製、LED照明、LEN-30D-DB-G、極大波長520nm、波長範囲465nm~605nm
青色LED:日動工業株式会社製、LED照明、LEN-30D-DB-B、極大波長450nm、波長範囲415nm~505nm
白色LED:日動工業株式会社製、LED照明、LEN-30D-ES-W、極大波長450nm、565nm、波長範囲415nm~760nm
紫色LED:アイグラフィックス株式会社製、LED照明、極大波長405nm波長範囲385nm~430nm
紫外LED(1):アイグラフィックス株式会社製、LED照明、極大波長395nm波長範囲375nm~420nm
紫外LED(2):アイグラフィックス株式会社製、LED照明、極大波長385nm波長範囲365nm~410nm
紫外LED(3):アイグラフィックス株式会社製、LED照明、極大波長365nm波長範囲345nm~390nm
赤色LED:日動工業株式会社製、LED照明、LEN-30D-DB-R、極大波長630nm、波長範囲575nm~670nm
ここで、本試験で使用した白色LEDは、青色LEDと黄色蛍光体を用いた擬似白色LEDであり、それぞれに由来する二つの極大波長がある。
また、分光放射分布に対して、340nm、345nm、・・・のように、5nm毎の値をとり、全ての光エネルギーをEA、340nm~575nmの光のエネルギーをE1、370~510nmの光エネルギーをE2として、それぞれの比であるE1/EAおよびE2/EAを求めた。数学的にはEA、E1およびE2は、各光源における、それぞれの範囲でのエネルギーの積算値である。例として図2にEA、E1の一例を網掛け部で図示した。
また、蛍光灯、太陽光、高圧水銀灯は、それぞれの照明の室内、あるいは屋外に成形品を設置した。
放射照度は、日置電機株式会社製照度計Lux HiTESTER3423、またはアイグラフィックス株式会社製UV METER UVPF-A1 PD-405(紫色LED、紫外LED(1)~紫外LED(3)のみ)で照度を計測し、照度計の可視域相対分光応答度特性またはUV METERの分光感度特性、および光源の分光放射分布より放射照度を計算した。
樹脂A-1の成形品に、表2に示す光学特性の光源を120分照射し、光照射成形品を得た。照射は115×127mmの面に対して行ったため、光が成形品中を通過する距離は3mmである。この時の放射照度は100W/m2であった。また、光照射成形品の透過率、YIの測定を実施した。
実施例1-1同様に樹脂A-1~A-5からなる成形品に、表2に示す光学特性の光源、照射時間、放射照度で光照射し、光照射成形品を得た。また、光照射成形品の透過率、YIの測定を実施した。
比較例1-2は、表2に示す光学特性の光源、それ以外の比較例は樹脂A-1~A-5からなる成形品に光照射せず、透過率、YIの測定を実施した。
樹脂A-1からなる成形品に、太陽光、蛍光灯、高圧水銀灯、および白熱電球の光を所定の時間照射した。また、照射後の成形品の透過率、YIの測定を実施した。
実施例1-7や実施例1-13~1-15を参照すると、340nm~575nmの光エネルギーの割合が比較的高くない光でも高い効果が得られているが、これは、この白色LEDが青色LEDと黄色蛍光体を用いた擬似白色LEDであり、青色LED由来の光である、波長415nm~505nm光の影響が大きいためと考えられる。
樹脂A-1は、試験1と同様の方法で得た。次に表3に示す含有量となるよう、上記で得られたスチレン系樹脂のペレットと添加剤として酸化防止剤をスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。使用した添加剤を以下に示す。なお、実施例2-1、比較例2-1で用いた樹脂は添加剤を添加せずに溶融混練した。
添加剤1:オクタデシル-3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
添加剤2:トリス(2,4-ジ-tert-ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
得られたペレットは、試験1と同様の条件で射出成形、切削・研磨を行い、端面に鏡面を有する板状成形品を得た。色相評価や放射照度の測定等も試験1と同様の方法で実施した。
表3に記載の樹脂A-1、添加剤1、添加剤2からなるそれぞれの樹脂組成物の成形品に、表Xに記載の光学特性を有する光源の光を照射し、光照射成形品を得た。照射は115×127mmの面に対して行ったため、光が成形品中を通過する距離は3mmである。照射時間は60分であり、放射照度は630W/m2であった。また、照射後の成形品の透過率、YIの測定を実施した。
表3に記載の樹脂A-1、添加剤1、添加剤2からなるそれぞれの樹脂組成物の成形品に光照射せず、透過率、YIの測定を実施した。
また、本発明の製造方法は、従来の熱可塑性樹脂からなる成形品を更に良色相の成形品とするための手段として活用できる。
Claims (2)
- スチレン系樹脂である熱可塑性樹脂からなる成形品に波長370nm~510nmの波長領域の光エネルギーが、全波長領域の光エネルギーに対し50%以上である光を10分以上照射し、光照射成形品を得る製造方法であって、
前記スチレン系樹脂が、スチレン系単量体を重合して得られる樹脂である、製造方法(ただし、γ線滅菌された成形品に、波長340nm~575nmの波長領域の光エネルギーが、全波長領域の光エネルギーに対し50%以上である光を照射して光照射成形品を得る製造方法、及び液晶ディスプレイのバックライトに組み込まれ、光を照射して得られる光照射成形品を得る製造方法を除く)。 - 照射する光の光源がLEDである、請求項1に記載の製造方法。
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