JP2016190425A - 光学用スチレン系多層成形品および導光板 - Google Patents
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Abstract
【課題】色相および透明性に優れ、長期間の使用においても色相および透過率の変化が小さい光学用スチレン系多層成形品および導光板の提供。【解決手段】少なくとも二種以上のスチレン系樹脂組成物からなる多層成形品であって、基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aは、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、表層を構成するスチレン系樹脂組成物Bは、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂Aに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度よりも、スチレン系樹脂Bに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度の方が高い多層成形品。【選択図】なし
Description
本発明は、色相および透明性に優れ、長期の熱安定性に優れたスチレン系樹脂組成物、成形品および導光板に関するものである。
液晶ディスプレイのバックライトには光源を表示装置の正面に配置する直下型バックライトと側面に配置するエッジライト型バックライトがある。導光板はエッジライト型バックライトに組み込まれ、側面からの光を液晶パネルに導く役割を果たし、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューターのモニター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなど幅広い用途で使用される。また、導光板を用いたバックライトは、照明用としても使用される。導光板にはPMMA(ポリメチルメタクリレート)に代表されるアクリル樹脂が使用されているが、吸水性が高いため、成形品に反りの発生や寸法の変化が発生する場合がある。
そのため、これら特性を改善したスチレンと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体であるMS樹脂を用いることが提案されている。MS樹脂の、吸水性や成形時の変色低減等の改良技術としては特許文献1が提案されている。
特許文献1では、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)6〜17万、残存モノマー量3000ppm以下、更にオリゴマー量が2%以下の導光板が開示されているが、吸水性が高く寸法安定性がスチレン系単量体を原料とするスチレン系樹脂よりも悪い傾向にある。
また、特許文献2には芳香族モノビニル樹脂に特定の亜リン酸エステル類を含む芳香族モノビニル樹脂組成物が耐熱分解性に優れることが報告されている。
一方、スチレン系単量体を原料とするスチレン系樹脂は吸水性が低いものの、長期間の使用において熱による変色が発生し、成形品が黄変して透過率が低下することがある。その結果、バックライトの輝度が低下し、色度が変化することがある。これに対し、酸化防止剤を配合することで、長期間の熱安定性が改善することは知られている。
そのため、これら特性を改善したスチレンと(メタ)アクリル酸メチルとの共重合体であるMS樹脂を用いることが提案されている。MS樹脂の、吸水性や成形時の変色低減等の改良技術としては特許文献1が提案されている。
特許文献1では、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル系共重合体樹脂の重量平均分子量(Mw)6〜17万、残存モノマー量3000ppm以下、更にオリゴマー量が2%以下の導光板が開示されているが、吸水性が高く寸法安定性がスチレン系単量体を原料とするスチレン系樹脂よりも悪い傾向にある。
また、特許文献2には芳香族モノビニル樹脂に特定の亜リン酸エステル類を含む芳香族モノビニル樹脂組成物が耐熱分解性に優れることが報告されている。
一方、スチレン系単量体を原料とするスチレン系樹脂は吸水性が低いものの、長期間の使用において熱による変色が発生し、成形品が黄変して透過率が低下することがある。その結果、バックライトの輝度が低下し、色度が変化することがある。これに対し、酸化防止剤を配合することで、長期間の熱安定性が改善することは知られている。
本発明は、色相および透明性に優れ、長期間の使用においても色相および透過率の変化が小さい光学用スチレン系多層成形品および導光板を提供することを課題とする。
本発明者らは上記目的を達成するため、検討を進めたところ、酸化防止剤の量が基材層よりも表層(片面あるいは両面)に高濃度である多層成形品が、酸化防止剤を含む単層の成形品同様に長期間使用時における変色の抑制効果があることが分かり、変色抑制効果を有しながら、従来よりも添加剤の使用量を減らすことや、添加剤による着色を抑制でき、透明性を改善ができることが分かった。本発明はかかる知見に基づくもので、以下の構成を有する。
少なくとも二種以上のスチレン系樹脂組成物からなる多層成形品であって、基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aは、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、表層を構成するスチレン系樹脂組成物Bは、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂Aに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度よりも、スチレン系樹脂Bに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度の方が高い多層成形品。
また、実施形態の一例を以下に示すが、以下の種々の実施形態は互いに組み合わせ可能である。
(1)スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度よりもスチレン系樹脂組成物Bに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度の方が高い多層成形品である。
(2)スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aとスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤を個々の成分で比較した場合、全ての酸化防止剤成分に対して、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる酸化防止剤の濃度の方が高濃度である、多層成形品である。
(3)基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aが酸化防止剤を含まない、スチレン系樹脂Cである多層成形品である。
(4)スチレン系樹脂組成物Aおよびスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤が、(d)(式1)の骨格構造を有する化合物を含み、更に(e)リン系酸化防止剤および/または(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物B100質量%中の(d)の濃度が0.02〜0.40質量%、(e)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%、(f)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%である(ただし、(e)と(f)の濃度が共に0質量%である場合を除く)、多層成形品である。
但し、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。
(5)スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が85.0〜99.9質量%、(メタ)アクリル酸単位の含有量が0.1〜15.0質量%である多層成形品である。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単位の含有量の合計を100質量%とする。
(6)スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が40.0〜99.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が1.0〜60.0質量%である多層成形品である。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量の合計を100質量%とする。
(7)上記の多層成形品を利用した導光板である。
(1)スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度よりもスチレン系樹脂組成物Bに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度の方が高い多層成形品である。
(2)スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aとスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤を個々の成分で比較した場合、全ての酸化防止剤成分に対して、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる酸化防止剤の濃度の方が高濃度である、多層成形品である。
(3)基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aが酸化防止剤を含まない、スチレン系樹脂Cである多層成形品である。
(4)スチレン系樹脂組成物Aおよびスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤が、(d)(式1)の骨格構造を有する化合物を含み、更に(e)リン系酸化防止剤および/または(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物B100質量%中の(d)の濃度が0.02〜0.40質量%、(e)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%、(f)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%である(ただし、(e)と(f)の濃度が共に0質量%である場合を除く)、多層成形品である。
但し、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。
(5)スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が85.0〜99.9質量%、(メタ)アクリル酸単位の含有量が0.1〜15.0質量%である多層成形品である。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単位の含有量の合計を100質量%とする。
(6)スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が40.0〜99.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が1.0〜60.0質量%である多層成形品である。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量の合計を100質量%とする。
(7)上記の多層成形品を利用した導光板である。
本発明のスチレン系多層成形品は、PMMAと比較して、吸水性が低く安価であるスチレン系樹脂の特徴を有し、更に長期間の使用における色相および透過率の変化が小さく、無色透明性に優れることから、導光板などの光学用途に好適に用いることが出来る。また、単層の成形品に比べ、酸化防止剤の量を少なくすることができ、省コスト化が図れる。
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<<スチレン系樹脂>>
本発明のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を重合して得ることができる。スチレン系単量体とは、芳香族ビニル系モノマーである、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくはスチレンである。また、本発明の特徴を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合してもよく、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、スチレン系樹脂組成物100質量%中のスチレン系樹脂の割合は、例えば90〜99.96質量%であり、95〜99.96質量%が好ましい。スチレン系樹脂の割合は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.96質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
本発明のスチレン系樹脂は、スチレン系単量体を重合して得ることができる。スチレン系単量体とは、芳香族ビニル系モノマーである、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、m−メチルスチレン、エチルスチレン、p−t−ブチルスチレン等の単独または2種以上の混合物であり、好ましくはスチレンである。また、本発明の特徴を損ねない範囲でスチレン系単量体と共重合してもよく、アクリル酸、メタクリル酸等のアクリル酸モノマー、アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニルモノマー、アクリル酸ブチル、アクリル酸エチル、アクリル酸メチル、メタクリル酸メチル等のアクリル系モノマーや無水マレイン酸、フマル酸等のα,β−エチレン不飽和カルボン酸類、フェニルマレイミド、シクロヘキシルマレイミド等のイミド系モノマー類が挙げられる。
スチレン系樹脂組成物は、スチレン系樹脂と、各種添加剤とで構成されていることが好ましく、スチレン系樹脂組成物100質量%中のスチレン系樹脂の割合は、例えば90〜99.96質量%であり、95〜99.96質量%が好ましい。スチレン系樹脂の割合は、具体的には例えば、90、91、92、93、94、95、96、97、98、99、99.96質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂である場合、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が85.0〜99.9質量%、(メタ)アクリル酸単位の含有量が0.1〜15.0質量%であっても本願の目的を達成できることが実験的に確認された。ただし、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単位の含有量の合計を100質量%とする。(メタ)アクリル酸とは、アクリル酸、メタクリル酸等であり、メタクリル酸が好ましい。
スチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸単位含有量の測定は室温で実施する。スチレン系樹脂0.5gを秤量し、トルエン/エタノール=8/2(体積比)の混合溶液に溶解後、水酸化カリウム0.1mol/Lエタノール溶液にて中和滴定を行い、終点を検出し、水酸化カリウムエタノール溶液の使用量より、(メタ)アクリル酸単位の質量基準の含有量を算出する。なお、電位差自動滴定装置を使用することができ、京都電子工業株式会社製AT−510により測定を行うことができる。スチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸単位の含有量は、スチレン系樹脂の重合時における原料のスチレン系単量体と(メタ)アクリル酸単量体との組成比によって調整することができるが、相溶する範囲において(メタ)アクリル酸単位を含有するスチレン系樹脂と(メタ)アクリル酸単位を含有しないスチレン系樹脂とをブレンドして調整することもできる。
スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂である場合、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が40.0〜99.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が1.0〜60.0質量%であっても本願の目的を達成できることが実験的に確認された。ただし、スチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量の合計を100質量%とする。(メタ)アクリル酸エステルとは、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等のメタクリル酸エステル、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル等のアクリル酸エステル等である。
スチレン系樹脂中の(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量は熱分解ガスクロマトグラフィーで以下の条件にて測定できる。
熱分解炉:PYR−2A(株式会社島津製作所製)
熱分解炉温度設定:525℃
ガスクロマトグラフ:GC−14A(株式会社島津製作所製)
カラム:ガラス製3mm径×3m
充填剤:FFAP Chromsorb WAW 10%
インジェクション、ディテクター温度:250℃
カラム温度:120℃
キャリアーガス:窒素
熱分解炉:PYR−2A(株式会社島津製作所製)
熱分解炉温度設定:525℃
ガスクロマトグラフ:GC−14A(株式会社島津製作所製)
カラム:ガラス製3mm径×3m
充填剤:FFAP Chromsorb WAW 10%
インジェクション、ディテクター温度:250℃
カラム温度:120℃
キャリアーガス:窒素
スチレン系樹脂の重合方法としては、塊状重合法、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法等公知のスチレン重合方法が挙げられる。品質面や生産性の面では、塊状重合法、溶液重合法が好ましく、連続重合であることが好ましい。溶媒として例えばベンゼン、トルエン、エチルベンゼン及びキシレン等のアルキルベンゼン類やアセトンやメチルエチルケトン等のケトン類、ヘキサンやシクロヘキサン等の脂肪族炭化水素等が使用できる。
スチレン系樹脂の重合時に、必要に応じて重合開始剤、連鎖移動剤を使用することができる。重合開始剤としては、ラジカル重合開始剤が好ましく、公知慣用の例えば、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ジ(t−ブチルパーオキシ)ブタン、2,2−ジ(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ジ(t−アミルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール類、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−アミルパーオキシイソノナノエート等のアルキルパーオキサイド類、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ヘキシルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート等のパーオキシエステル類、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、ポリエーテルテトラキス(t-ブチルパーオキシカーボネート)等のパーオキシカーボネート類、N,N’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、N,N’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、N,N’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、N,N’−アゾビス[2−(ヒドロキシメチル)プロピオニトリル]等が挙げられ、これらの1種あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。連鎖移動剤としては、脂肪族メルカプタン、芳香族メルカプタン、ペンタフェニルエタン、α−メチルスチレンダイマー及びテルピノーレン等が挙げられる。
連続重合の場合、まず重合工程にて公知の完全混合槽型攪拌槽や塔型反応器等を用い、目標の分子量、分子量分布、反応転化率となるよう、重合温度調整等により重合反応が制御される。重合工程を出た重合体を含む重合溶液は、脱揮工程に移送され、未反応の単量体及び重合溶媒が除去される。脱揮工程は加熱器付きの真空脱揮槽やベント付き脱揮押出機などで構成される。脱揮工程を出た溶融状態の重合体は造粒工程へ移送される。造粒工程では、多孔ダイよりストランド状に溶融樹脂を押出し、コールドカット方式や空中ホットカット方式、水中ホットカット方式にてペレット形状に加工される。
スチレン系樹脂の重量平均分子量は15万〜70万であり、16万〜70万であることが好ましく、16万〜40万又は18万〜50万であることがさらに好ましい。15万未満では成形品の強度が不十分となり、70万を超えると成形性が著しく低下する。スチレン系樹脂の重量平均分子量は、重合工程の反応温度、滞留時間、重合開始剤の種類及び添加量、連鎖移動剤の種類及び添加量、重合時に使用する溶媒の種類及び量等によって制御することができる。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
重量平均分子量(Mw)及びZ平均分子量(Mz)、数平均分子量(Mn)は、ゲルパーミエイションクロマトグラフィー(GPC)を用いて、次の条件で測定した。
GPC機種:昭和電工株式会社製Shodex GPC−101
カラム:ポリマーラボラトリーズ社製 PLgel 10μm MIXED−B
移動相:テトラヒドロフラン
試料濃度:0.2質量%
温度:オーブン40℃、注入口35℃、検出器35℃
検出器:示差屈折計
分子量は単分散ポリスチレンの溶出曲線より各溶出時間における分子量を算出し、ポリスチレン換算の分子量として算出したものである。
スチレン系樹脂組成物Aに含まれる酸化防止剤の濃度は、スチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤の濃度より低ければ良く、そうすることで、使用する酸化防止剤の量を低減できる。スチレン系樹脂組成物Aが酸化防止剤を含まない場合は、最も使用量を減らすことができるが、その場合に基材層を構成する材料は本願において、スチレン系樹脂Cと称する。
スチレン系樹脂組成物に含まれる酸化防止剤の濃度は、個々の酸化防止剤の濃度については、個々の成分に対して配合や計算ができるが、全てを合計した濃度というのは、全ての酸化防止剤の濃度の和のことをいう。例えば、あるスチレン系樹脂組成物に酸化防止剤(1)を0.1%、酸化防止剤(2)を0.2%、それぞれ含む場合は、全ての酸化防止剤の濃度は0.1%+0.2%=0.3%となる。
スチレン系樹脂組成物に含まれる酸化防止剤は、特定の組合せであると、より高い長期の熱安定性の効果が得られる。スチレン系樹脂組成物に含まれる酸化防止剤は、(d)式1の骨格構造を有する化合物に加えて、更に(e)リン系酸化防止剤と(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の内、少なくとも一方を含有することが好ましい。式1の骨格構造を有する化合物を単独で使用した場合よりも長期の熱安定性がより高い効果となる。
但し、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。
但し、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。
式1のような骨格構造を有する化合物として、例えば、6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンが挙げられる。式1の骨格構造を有する化合物は、同一分子内にヒンダードフェノール系酸化防止剤の骨格とリン系酸化防止剤の骨格をもった加工安定剤である。
スチレン系樹脂組成物Bに含まれる式1の骨格構造を有する化合物の濃度は、スチレン系樹脂組成物B100質量%中0.02〜0.40質量%であり、0.05〜0.20質量%であることが好ましい。式1の骨格構造を有する化合物の濃度が0.02質量%未満では長期の熱安定性に劣る。また、0.40質量%を超えても長期の熱安定性が悪化する。長期の熱安定性は、長期間の使用における熱による色相および透過率の変化を表し、熱安定性に優れるものは色相および透過率の変化が小さい。長期の熱安定性は、加速試験として、樹脂が変形しない程度の高温度条件(60〜90℃)に成形品を保管し、色相および透過率の経時変化によって評価することができる。スチレン系樹脂組成物B100質量%中の式1の骨格構造を有する化合物の濃度は、具体的には例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂組成物Bに含まれるリン系酸化防止剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%中0.02〜0.50質量%含有することが好ましく、0.05〜0.30質量%含有することがより好ましい。また、ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%中0.02〜0.50質量%含有することが好ましく、0.05〜0.30質量%含有することがより好ましい。リン系又はヒンダードフェノール系酸化防止剤を上記濃度で添加した場合、式1の骨格構造を有する化合物との相乗効果によって、変色抑制効果が特に高くなるからである。スチレン系樹脂組成物B100質量%中のリン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤の濃度は、それぞれ、具体的には例えば、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30、0.35、0.40、0.45、0.50質量%であり、ここで例示した数値の何れか2つの間の範囲内であってもよい。
スチレン系樹脂組成物Aに含まれる(d)式1の骨格構造を有する化合物、(e)リン系酸化防止剤、(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤の濃度は、スチレン系樹脂組成物Bに含まれる(d)、(e)、(f)の濃度より低ければ良く、そうすることで、使用する(d)、(e)、(f)の量を低減できる。なお、本願において(d)、(e)、(f)が全て0質量%の場合は、スチレン系樹脂Cと称する。
リン系酸化防止剤とは、三価のリン化合物である亜リン酸エステル類である。リン系酸化防止剤は、例えば、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、4,4’−ビフェニレンジホスフィン酸テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカン、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニルフォスファイト)、ジステアリルペンタエリスリトールジフォスファイト、ビス(ノニルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−[2−メチル−4,6−ビス−(1,1−ジメチルエチル)フェニル]エチルフォスファイト、9,10−ジヒドロ−9−オキサ−10−ホスファフェナントレン−10−オキサイド、テトラキス(2,4−ジ−tert−ブチル−5−メチルフェニル)−4,4’−ビフェニレンジホスホナイト等が挙げられる。リン系酸化防止剤としては、耐加水分解性に優れたものが好ましく、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−tert−ブチル−1−フェニルオキシ)(2−エチルヘキシルオキシ)ホスホラス、ビス(2,4−ジクミルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ〔5.5〕ウンデカンであることが好ましい。特に好ましくは、トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイトである。リン系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
ヒンダードフェノール系酸化防止剤とは、基本骨格にフェノール性水酸基を持つ酸化防止剤である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、4,6−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、4,6−ビス〔(ドデシルチオ)メチル〕−o−クレゾール、2,4−ジメチル−6−(1−メチルペンタデシル)フェノール、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、DL−α−トコフェロール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2−〔1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−t−ペンチルフェニル)エチル〕−4,6−ジ−t−ペンチルフェニルアクリレート、4,4’−チオビス(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、ビス−[3,3−ビス−(4’−ヒドロキシ−3’−tert―ブチルフェニル)−ブタン酸]−グリコールエステル等が挙げられる。好ましくは、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,9−ビス[2−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕−1,1−ジメチルエチル]−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、エチレンビス(オキシエチレン)ビス〔3−(5−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−m−トリル)プロピオネート〕、ペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]である。ヒンダードフェノール系酸化防止剤は、単独でもよいが二種以上を併用してもよい。
式1の骨格構造を有する化合物、リン系酸化防止剤及びヒンダードフェノール系酸化防止剤の添加方法としては、スチレン系樹脂の重合工程、脱揮工程、造粒工程で添加混合する方法や成形加工時の押出機や射出成形機などで添加混合する方法、酸化防止剤を高濃度に調整した樹脂組成物を無添加のスチレン系樹脂によって目的の濃度に希釈混合する方法などが挙げられ、特に限定されることではない。
本願の成形品は、上記のような長期の熱安定性を付与するための酸化防止剤を含むスチレン系樹脂組成物Bと、それらがスチレン系樹脂組成物Bより低濃度であるスチレン系樹脂組成物Aからなる多層構造、またはスチレン系樹脂組成物Bと酸化防止剤を含まないスチレン系樹脂Cからなる多層構造を有している。多層構造の構成は、スチレン系樹脂組成物A、またはスチレン系樹脂Cを基材層として、表層にスチレン系樹脂組成物Bとなる構成である。このような構成とすることで、酸化防止剤を含まないスチレン系樹脂からなる単層の成形品に比べ、長期の熱安定性が高くなり、またスチレン系樹脂組成物Bのみからなる単層の成形品に比べ、添加剤の量を減らすことができ、色相などの光学特性も良好となる。
多層構造として例えば、スチレン系樹脂組成物Aあるいはスチレン系樹脂Cを基材層(中芯)とし、その両面をスチレン系樹脂組成物Bとするサンドイッチのような構造が挙げられる。また、スチレン系樹脂組成物Aあるいはスチレン系樹脂Cの片面にスチレン系樹脂組成物Bからなる層を有するような2層成形品でも、スチレン系樹脂組成物Bの層を有しない面(この場合、スチレン系樹脂組成物Aあるいはスチレン系樹脂Cが外気に触れている面)が空気に触れないような措置を施すことでも同様の効果を得ることができる。このような方法として、例えば枠で囲う等が挙げられる。これらの構成以外にも、本願の目的を損なわない範囲の多層構造を取ることができる。なお、基材層とは、多層成形品を構成する層の中で最も厚い層のことを言う。
<<その他の添加剤>>
スチレン系樹脂組成物には、本発明の無色透明性を損なわない範囲でミネラルオイルを含有しても良い。また、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアミド等の内部潤滑剤や、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、帯電防止剤、外部潤滑剤等の添加剤が含まれていても良い。また、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドが好適であり、濃度としては樹脂組成物中に30〜200ppmであることが好ましい。
スチレン系樹脂組成物には、本発明の無色透明性を損なわない範囲でミネラルオイルを含有しても良い。また、ステアリン酸、エチレンビスステアリルアミド等の内部潤滑剤や、イオウ系酸化防止剤、ラクトン系酸化防止剤、紫外線吸収剤、ヒンダードアミン系安定剤、帯電防止剤、外部潤滑剤等の添加剤が含まれていても良い。また、外部潤滑剤としては、エチレンビスステアリルアミドが好適であり、濃度としては樹脂組成物中に30〜200ppmであることが好ましい。
紫外線吸収剤は、紫外線による劣化や着色を抑制する機能を有するものであって、例えば、ベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、トリアジン系、ベンゾエート系、サリシレート系、シアノアクリレート系、蓚酸アニリド系、マロン酸エステル系、ホルムアミジン系などの紫外線吸収剤が挙げられる。これらは、単独又は2種以上組み合わせて用いることができ、ヒンダートアミン等の光安定剤を併用してもよい。
本願のスチレン系樹脂組成物には、ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤を含有しても良い。スチレン系単量体を重合して得ることができるスチレン系樹脂は温度や湿度、温水浸漬などの環境変化により成形品が白濁することがあるが、スチレン系樹脂組成物にポリエーテル鎖を有する親水性添加剤を含有する事で白濁を防止できる。
ポリエーテル鎖(またはポリオキシエチレン鎖ともいう)を有する親水性添加剤として、ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン型陰イオン性界面活性剤、ポリオキシエチレン型陽イオン型界面活性剤、ポリオキシエチレン型両性界面活性剤などのポリオキシエチレン型界面活性剤やポリエチレングリコール等が挙げられる。ポリオキシエチレン型界面活性剤ではポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤が好ましい。
ポリオキシエチレン型非イオン性界面活性剤は、下記一般式(2)で示されるポリオキシエチレンアルキルエーテルや下記一般式(3)で示されるポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ひまし油、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルが挙げられるがポリオキシエチレンアルキルエーテル及び/又はポリオキシエチレン脂肪酸エステルの郡から選ばれる1種類以上であることが好ましい。また、一分子中に複数個のポリオキシエチレンアルキルエーテル骨格を有する多価ポリオキシエチレンアルキルエーテルや一分子中に複数個のポリオキシエチレン脂肪酸エステル骨格を有する多価ポリオキシエチレン脂肪酸エステルを用いても本発明の目的を達成できる。ポリオキシエチレンアルキルエーテルやポリオキシエチレン脂肪酸エステルの価数とは、一分子中に存在するポリオキシエチレンアルキルエーテル骨格やポリオキシエチレン脂肪酸エステル骨格の数をいう。
(式中、Rは炭素数8〜20のアルキル基を示す。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル骨格を複数個有する6価までの多価ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル骨格を複数個有する6価までの多価ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであっても良い。nは整数でエチレンオキサイド単位の付加モル数を表す。)
(式中、Rは炭素数8〜20のアルキル基を示す。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル骨格を複数個有する6価までの多価ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル骨格を複数個有する6価までの多価ポリオキシエチレン脂肪酸エステルであっても良い。nは整数でエチレンオキサイド単位の付加モル数を表す。)
ポリオキシエチレンアルキルエーテルはアルコールにエチレンオキサイドを付加させて作られ、ポリオキシエチレン脂肪酸エステルは脂肪酸にエチレンオキサイドを付加させるか脂肪酸とポリエチレングリコールを直接エステル化させて作られ、エチレンオキサイドの平均付加モル数は7〜100であることが好ましく、10〜50であることがより好ましい。
ポリエチレングリコールの平均分子量は200〜10000が好ましい。200〜4000であることがより好ましく、300〜1000であることが更に好ましい。ポリエチレングリコールの平均分子量が200未満では成形加工時にガスが発生し、金型やロールを汚すため好ましくない。また、10000を超えると白化現象を防止する効果が低下する傾向にある他、スチレン系樹脂との相溶性が低下し、スチレン系樹脂組成物やその成形品が白濁する場合がある。平均分子量は、ピリジン無水フタル酸法にて測定された水酸基の濃度(JIS K1557に準拠)から計算されるものである。
ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルドエシルエーテル、ポリオキシエチレンミリスチルエーテル、ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルなどのポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレートなどのポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、テトラオレイン酸ポリオキシエチレンソルビットなどのポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールモノラウレート、ポリエチレングリコールモノステアレート、ポリエチレングリコールジステアレート、ポリエチレングリコールモノオレエートなどのポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、ポリエチレングリコール、ポリオキシエチレンモノメチルエーテル、ポリオキシエチレンジメチルエーテル、ポリオキシエチレングリセリルエーテル、ポリオキシエチレンテトラオレイン酸、ポリオキシエチレントリイソステアリン酸、ポリオキシエチレンヤシ脂肪酸グリセリル、ジグリセリン、ポリグリセリン、ポリオキシエチレンポリグリセリルエーテル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどが挙げられる。
ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤のHLB値は、8以上であることが好ましく、10〜20であることがより好ましい。HLB(Hydrophilic−lipophilic balance)は、添加剤の親水性を表す値であり、HLB値が8〜10では水中に安定に分散し、10を超えると透明感のある分散状態から透明に完全溶解する状態となる。ポリエーテル鎖を有する非イオン性界面活性剤では、HLB=(親水基部分の分子量)/(添加剤の分子量)×20で計算され、親水基を含まないパラフィンのようなものはHLB=0で、親水基のみのポリエチレングリコールではHLB=20となり、非イオン性界面活性剤ではHLBは0〜20の間となる。
ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤の温度200℃、窒素雰囲気下における加熱減量は10質量%以下であることが好ましい。温度200℃、窒素雰囲気下における加熱減量は、熱重量分析(TGA)にて求めることができ、窒素雰囲気で室温状態から10℃/分の昇温速度で加熱し、温度200℃での重量減少量から求めることができる。温度200℃、窒素雰囲気下における加熱減量が10質量%を超える添加剤は揮発性が高く、スチレン系樹脂の成形加工時にガスが発生して金型やロール汚れの可能性がある。
ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤は、スチレン系樹脂組成物100質量%中の含有量が0.4〜2.0質量%であり、0.7〜1.6質量%であることが好ましい。ポリエーテル鎖を有する親水性添加剤の含有量が0.4質量%未満では環境変化による白化現象の防止が困難であり、2.0質量%を超えるとスチレン系樹脂組成物の耐熱性が低下する。
親水性添加剤の添加方法としては、スチレン系樹脂の重合工程、脱揮工程、造粒工程で添加混合する方法や成形加工時の押出機などで添加混合する方法、親水性添加剤を高濃度に調整した樹脂組成物を無添加のスチレン系樹脂によって目的の含有量に希釈混合する方法などが挙げられ、特に限定されることではない。
例えば、親水性添加剤を0.5〜50.0質量%含有するスチレン系樹脂組成物と無添加のスチレン系樹脂を、押出機や射出成形機を用いて混合し、目的の濃度のスチレン系樹脂組成物や、成形品、導光板を得る方法が挙げられる。
本発明の多層成形品を構成するスチレン系樹脂組成物のビカット軟化温度は95〜104℃であることが好ましく、97〜104℃であることがより好ましい。ビカット軟化温度が95℃未満では耐熱性が不足し、使用環境によっては成形品が変形する可能性がある。ビカット軟化温度は、JIS K 7206に準拠し、昇温速度50℃/hr、試験荷重50Nで測定する。
本発明の多層成形品を構成するスチレン系樹脂組成物の曇り度は、4mm厚みの成形品で、5%以下であることが好ましく、1%以下であることがより好ましい。曇り度は、JIS K 7136に準拠し、測定する。
<<多層成形品>>
本発明の多層成形品は、異なる種類のスチレン系樹脂組成物からなる別々の層を有している。このような構成の成形品を得る方法としては、特に限定されることはないが、例えば次の方法が挙げられる。予め成形した成形品同士を加熱することで接着する方法や、予め成形した成形品に溶融した樹脂を重ねて成形する方法、別々に溶融した樹脂による共押出やダイス内で多層化する方法等である。
本発明の多層成形品は、異なる種類のスチレン系樹脂組成物からなる別々の層を有している。このような構成の成形品を得る方法としては、特に限定されることはないが、例えば次の方法が挙げられる。予め成形した成形品同士を加熱することで接着する方法や、予め成形した成形品に溶融した樹脂を重ねて成形する方法、別々に溶融した樹脂による共押出やダイス内で多層化する方法等である。
本発明の多層成形品は、射出成形、押出成形、ブロー成形、圧縮成形などの目的に応じた各種成形方法で得ることができる。成形品の形状は目的に応じた形状とすることができ、限定されるものではない。例えば板状成形品であれば、導光板として用いることができる。
本発明のスチレン系樹脂組成物Aまたはスチレン系樹脂Cからなる基材層の厚さは特に制限はないが、例えば、0.05mm以上とすることで使用しやすくなる。
本発明のスチレン系樹脂組成物Bからなる表層の厚さは、10μm以上とすることが好ましい。10μm以上とすることで、長期間の使用における色相および透過率の変化が小さくなる。厚さの上限にとりわけ制限はないが、厚くなりすぎると使用する添加剤の量が多くなり、本発明の目的に沿わなくなる。
本発明の多層成形品の厚さは、特に制限はないが、例えば0.1mm〜100mmであると、使用しやすい。
本発明の多層成形品は、スチレン系樹脂の特徴である、透明性を損なわず、また、長期間の使用においても色相および透過率の変化が小さいため、テレビやPCモニター等のディスプレイや、照明、レンズ等、各種光学用途に好適に用いることができる。
導光板は、板状の成形品の端面(側面)から光を入射し、成形品の後面(非発光面)に形成された反射パターンにより、成形品の前面(発光面)に光を導き、面発光させる機能を持った部材である。導光板とする方法として、板状成形品の背面(光を出射する面の反対側)にドットパターンなどの反射パターンを設けることが知られている。反射パターンは、スクリーン印刷法、射出成形法、レーザー法やインクジェット法などの方法によって形成することができる。板状成形品から導光板に加工する際、光の入射面あるいは板状成形品の端面全面を研磨処理して、鏡面とすることが好ましい。また、出射光の均一性を高めるために、板状成形品の表面(光が出射される面)にプリズムパターンを設けることができる。板状成形品の表面あるいは背面のパターンは、板状成形品の成形後以外にも成形時に形成させることができ、例えば射出成形では金型形状、押出成形ではロール転写などによって、パターン形成させることができる。
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
(スチレン系樹脂PS−1〜PS−3の製造)
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレン及びメタクリル酸の合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通り
重合開始剤−1 :2,2−ジ(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラAを使用した。)
重合開始剤−2 :1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサCを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
完全混合型撹拌槽である第1反応器と第2反応器及び静的混合器付プラグフロー型反応器である第3反応器を直列に接続して重合工程を構成し、表1に示す条件によりスチレン系樹脂の製造を実施した。各反応器の容量は、第1反応器を39リットル、第2反応器を39リットル、第3反応器を16リットルとした。表1に記載の原料組成にて、原料溶液を作成し、第1反応器に原料溶液を表1に記載の流量にて連続的に供給した。重合開始剤は、第1反応器の入口で表1に記載の添加濃度(原料スチレン及びメタクリル酸の合計量に対する質量基準の濃度)となるように原料溶液に添加し、均一混合した。表1に記載の重合開始剤は次の通り
重合開始剤−1 :2,2−ジ(4,4−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン(日油株式会社製パーテトラAを使用した。)
重合開始剤−2 :1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン(日油株式会社製パーヘキサCを使用した。)
なお、第3反応器では、流れの方向に沿って温度勾配をつけ、中間部分、出口部分で表1の温度となるよう調整した。
続いて、第3反応器より連続的に取り出した重合体を含む溶液を直列に2段より構成される予熱器付き真空脱揮槽に導入し、表1に記載の樹脂温度となるよう予熱器の温度を調整し、表1に記載の圧力に調整することで、未反応スチレン及びエチルベンゼンを分離した後、多孔ダイよりストランド状に押し出しして、コールドカット方式にて、ストランドを冷却および切断しペレット化した。
(スチレン系樹脂組成物の製造)
表2、表3に示す各層のスチレン系樹脂組成物となるよう、スチレン系樹脂PS−1と、式1の骨格構造を有する化合物D、添加剤Eおよび添加剤Fをスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。表2、表3で用いた式1の骨格構造を有する化合物、EおよびFを次に示す。式1の骨格構造を有する化合物Dは、6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンであり、以下添加剤Dと称する。添加剤Eは、(e)リン系酸化防止剤、添加剤Fは、(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を表す。また、スチレン系樹脂PS−2、PS−3についても同様に溶融混練してペレットを得た。
添加剤D:6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 スミライザーGP)
添加剤E:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
添加剤F:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
表2、表3に示す各層のスチレン系樹脂組成物となるよう、スチレン系樹脂PS−1と、式1の骨格構造を有する化合物D、添加剤Eおよび添加剤Fをスクリュー径40mmの単軸押出機を用いて、シリンダー温度230℃、スクリュー回転数100rpmで溶融混錬してペレットを得た。表2、表3で用いた式1の骨格構造を有する化合物、EおよびFを次に示す。式1の骨格構造を有する化合物Dは、6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピンであり、以下添加剤Dと称する。添加剤Eは、(e)リン系酸化防止剤、添加剤Fは、(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を表す。また、スチレン系樹脂PS−2、PS−3についても同様に溶融混練してペレットを得た。
添加剤D:6−〔3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロポキシ〕−2,4,8,10−テトラ−tert−ブチルジベンゾ〔d,f〕〔1,3,2〕ジオキサホスフェピン(住友化学株式会社製 スミライザーGP)
添加剤E:トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)フォスファイト(BASFジャパン株式会社製 Irgafos 168)
添加剤F:オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート(BASFジャパン株式会社製 Irganox 1076)
得られた各々のスチレン系樹脂組成物、およびスチレン系樹脂PS−1〜PS−3を用いて、表2、表3の層構成となるようにTダイ方式の多層押出機にて厚さ2mmの多層成形品を得た。表2、表3において、多層成形品の各層は第1層、第2層、第3層の順に積層されていることを意味する。なお、多層押出機は、第2層用が65mmφのフルフライトスクリューの単軸押出機1台、第1層、第3層用に30mmφのフルフライトスクリューの単軸押出機2台からなり、各々の溶融樹脂がフィードブロックで合流多層化される押出機を使用した。単層成形品は、第1層、第3層用の単軸押出機を使用せず作製した。
光路長115mmの透過率及びYI値は、次の手順にて測定を行った。上記の方法により得られた多層成形品から加工が容易な大きさに切り出し、端面をバフ研磨によって研磨し、端面に鏡面を有する成形品を作製した。成形品の大きさは115×85mmとした。研磨後の板状成形品について、日本分光株式会社製の紫外線可視分光光度計V−670を用いて、大きさ20×0.6mm、広がり角度0°の入射光において、光路長115mmでの波長350nm〜800nmの分光透過率を測定し、C光源における、視野2°でのYI値をJIS K7105に倣い算出した。更に、長期の熱安定性を評価する成形品は、80℃のオーブン内に1000時間保管した後、同様に透過率およびYI値を測定した。
次に、以下の式に基づいてΔYI1、ΔYI2、およびΔYI3を算出した。
ΔYI1=(80℃×1000時間後のYI)−(初期のYI)
ΔYI2=(当該実施例の80℃×1000時間後のΔYI1)−(層2単層でのΔYI1)
ΔYI3=(当該実施例(多層品)の、初期YI)−(層2単層での初期YI)
ΔYI1は長期の熱安定性の指標であり、これが小さいほど長期の熱安定性が高い事を示す。
ΔYI2は多層にする事での耐熱性改善効果を表す指標であり、これが負に大きいほど層2に対して耐熱性の改善効果が大きい事を示す。
ΔYI3は多層にする事での初期色相の変化を示しており、これが小さいほど単層の場合の初期色相に近い色相である事を示す。実際にはゼロに近い値をとることで、層2と同等の色相である事を示す。
ΔYI1=(80℃×1000時間後のYI)−(初期のYI)
ΔYI2=(当該実施例の80℃×1000時間後のΔYI1)−(層2単層でのΔYI1)
ΔYI3=(当該実施例(多層品)の、初期YI)−(層2単層での初期YI)
ΔYI1は長期の熱安定性の指標であり、これが小さいほど長期の熱安定性が高い事を示す。
ΔYI2は多層にする事での耐熱性改善効果を表す指標であり、これが負に大きいほど層2に対して耐熱性の改善効果が大きい事を示す。
ΔYI3は多層にする事での初期色相の変化を示しており、これが小さいほど単層の場合の初期色相に近い色相である事を示す。実際にはゼロに近い値をとることで、層2と同等の色相である事を示す。
一例を取ると、実施例1−1では、初期のYI=4.2であり、80℃×1000時間後のYI=8.2であるため、実施例1−1のΔYI1=8.2−4.2=4.0である。また、層2単層は比較例1−1に相当するので、比較例1−1の初期YI=4.0、比較例1−1のΔYI1=7.5である。したがって、実施例1−1のΔYI2=4.0−7.5=−3.5となり、実施例1−1のΔYI3=4.2−4.0=0.2となる。
また、添加剤使用量とは、単層の成形品に使用される添加剤の量に対する多層成形品に使用される添加剤量の割合である。ただし、ここで言う単層の成形品とは、層1(層3)を構成するスチレン系樹脂組成物で、多層成形品と同じ厚さの物である。
一例を取ると、実施例1−1は2.0mmの多層成形品であり、その厚さの構成は層1が0.25mm、層2が1.5mm、層3が0.25mmとなっている。層1と層3は同じ酸化防止剤の濃度であり、層2は酸化防止剤を含んでいない。層1(層3)の酸化防止剤濃度を基準(100)とすると、層2は酸化防止剤濃度が0であるため、多層成形品に使われる酸化防止剤の量は、層1(層3)の2mm厚さの場合に比べて、以下の様に計算される。
(0.25mm×100+1.5mm×0+0.25mm×100)/(2.0mm×100)=25%
すなわち、層1(層3)単層の場合に比べ、多層成形品では各酸化防止剤の量が25%であり、使用量が75%低減している事を示す。
表2、表3に各成形品の評価結果を示す。なお、多層成形品は層1、層2、層3の順に積層されている事を意味する。
一例を取ると、実施例1−1は2.0mmの多層成形品であり、その厚さの構成は層1が0.25mm、層2が1.5mm、層3が0.25mmとなっている。層1と層3は同じ酸化防止剤の濃度であり、層2は酸化防止剤を含んでいない。層1(層3)の酸化防止剤濃度を基準(100)とすると、層2は酸化防止剤濃度が0であるため、多層成形品に使われる酸化防止剤の量は、層1(層3)の2mm厚さの場合に比べて、以下の様に計算される。
(0.25mm×100+1.5mm×0+0.25mm×100)/(2.0mm×100)=25%
すなわち、層1(層3)単層の場合に比べ、多層成形品では各酸化防止剤の量が25%であり、使用量が75%低減している事を示す。
表2、表3に各成形品の評価結果を示す。なお、多層成形品は層1、層2、層3の順に積層されている事を意味する。
実施例の成形品は、単層の成形品の場合に比べ添加剤の量を削減でき、初期の透過率とYI値に優れ、80℃×1000時間での保管におけるYI変化量が小さく、長期の熱安定性にも優れていた。また、実施例1−7や実施例1−8を参照すると、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂やスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂の場合にも同様の効果が得られることが判った。
本発明の光学用スチレン系樹脂組成物および成形品は、色相や透明性に優れ、また、従来の単層の成形品よりも酸化防止剤の量を低減でき、長期の熱安定性も優れる。スチレン系樹脂の長所である透明性を維持することができ、好適に用いることができる。例えば、テレビ、デスクトップ型パーソナルコンピューター、ノート型パーソナルコンピューター、携帯電話機、カーナビゲーションなどの導光板用途で好適に用いることができる。
Claims (8)
- 少なくとも二種以上のスチレン系樹脂組成物からなる多層成形品であって、基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aは、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、表層を構成するスチレン系樹脂組成物Bは、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂Aに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度よりも、スチレン系樹脂Bに含まれる酸化防止剤全てを合計した濃度の方が高い多層成形品。
- スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度よりもスチレン系樹脂組成物Bに含まれる最も高濃度の酸化防止剤の濃度の方が高い請求項1に記載の多層成形品。
- スチレン系樹脂組成物Aが、スチレン系樹脂に酸化防止剤を含まないか、あるいは1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Bが、スチレン系樹脂および1または複数種類の酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物Aとスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤を個々の成分で比較した場合、全ての酸化防止剤成分に対して、スチレン系樹脂組成物Aに含まれる酸化防止剤の濃度の方が高濃度である、請求項1又は請求項2に記載の多層成形品。
- 基材層を構成するスチレン系樹脂組成物Aが酸化防止剤を含まない、スチレン系樹脂Cである請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の多層成形品。
- スチレン系樹脂組成物Aおよびスチレン系樹脂組成物Bに含まれる酸化防止剤が、(d)(式1)の骨格構造を有する化合物を含み、更に(e)リン系酸化防止剤および/または(f)ヒンダードフェノール系酸化防止剤を含み、スチレン系樹脂組成物B100質量%中の(d)の濃度が0.02〜0.40質量%、(e)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%、(f)の濃度が0質量%または0.02〜0.50質量%である(ただし、(e)と(f)の濃度が共に0質量%である場合を除く)、請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の多層成形品。
但し、R1、R2、R3、R4はそれぞれ独立に水素、または炭素数1〜8のアルキル基を表し、Xは炭素数2〜8のアルキレン基を表す。 - スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸とを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が85.0〜99.9質量%、(メタ)アクリル酸単位の含有量が0.1〜15.0質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多層成形品。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸単位の含有量の合計を100質量%とする。
- スチレン系樹脂が、スチレン系単量体と(メタ)アクリル酸エステルとを共重合して得られるスチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合樹脂であって、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位の含有量が40.0〜99.0質量%、(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量が1.0〜60.0質量%である請求項1〜請求項5のいずれか1項に記載の多層成形品。ただし、スチレン系樹脂のスチレン系単量体単位と(メタ)アクリル酸エステル単位の含有量の合計を100質量%とする。
- 請求項1〜請求項7のいずれか1項に記載の多層成形品を利用した導光板。
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WO2013094642A1 (ja) * | 2011-12-20 | 2013-06-27 | 東洋スチレン株式会社 | 光学用スチレン系樹脂組成物、成形品および導光板 |
JP2013154546A (ja) * | 2012-01-30 | 2013-08-15 | Mitsubishi Gas Chemical Co Inc | 積層体およびそれを備えた保護部材 |
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