ところで、この種のカテーテル組立体は、患者の血管内にカテーテルを挿入する際に、カテーテルに対し内針を相対的に進出させることで、カテーテルの内側から内針を突き刺す(以下、外針刺しという)おそれがある。また、カテーテル組立体の使用後には、廃棄予定の内針が露出されることで、患者、ユーザ又は第3者に内針が刺さる(誤刺する)可能性がある。
本発明は、上記の課題を解決するためになされたものであって、簡単な構成によって外針刺しや誤刺を確実に防止することで、その取扱性を高めることが可能なカテーテル組立体を提供することを目的とする。
前記の目的を達成するために、本発明に係るカテーテル組立体は、カテーテルと、前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、針先を有し、前記カテーテルの内部に離脱可能に挿通される内針と、前記内針を固定保持する内針ハブと、前記内針の内部を軸方向に延びる中空部に配置され、前記針先よりも鈍な先端部を有する棒部材と、前記棒部材を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記カテーテルハブとは別体に構成され、前記カテーテルの移動に伴って前記棒部材の先端を前記針先よりも突出させ、前記移動機構は、前記棒部材に移動力を付与する棒部材ハブと、前記カテーテルハブ及び前記棒部材ハブに係合する操作部材と、を有し、前記操作部材は、前記内針ハブとは別体に構成されるとともに前記カテーテルハブに分離可能に取り付けられ、前記カテーテルハブの移動を操作可能であり、前記カテーテルハブの移動に伴って前記棒部材を移動させることを特徴とする。
上記によれば、カテーテル組立体は、棒部材及び移動機構を備えることで、ユーザの操作によりカテーテルを進出させて血管に挿入させる際に、移動機構により棒部材の先端を針先よりも突出させることができる。そして、針先から突出した棒部材は、外針刺しや誤刺を確実に防止することが可能となる。特に、移動機構は、カテーテルの移動に伴って棒部材を移動させるので、ユーザに対し突出操作を別途要求することがなく、操作性に優れる。また、カテーテルハブと移動機構が別体であるため、例えばカテーテル及びカテーテルハブを内針と相対的に回転可能にする等のように、カテーテルハブを任意に設計でき、さらにカテーテルハブの損傷等を抑制することができる。よって、カテーテル組立体は、その取扱性が大幅に高められる。
また、移動機構は、棒部材ハブ及び操作部材を有することで、カテーテルハブに係合した操作部材が移動すると、操作部材に係合する棒部材ハブが移動して、棒部材に移動力を簡単に付与することができる。
さらに、ユーザは、操作部材を操作してカテーテル及びカテーテルハブを移動させると共に、この移動に追従して棒部材を容易に移動させることができる。
また、前記棒部材ハブは、前記内針に対し相対移動自在であり、所定位置に係合部を有し、前記操作部材は、前記係合部に係合する被係合部を有し、前記係合部及び前記被係合部は、前記カテーテル及び前記内針の穿刺前状態で係合が維持され、前記棒部材が前記針先よりも突出した位置で係合が解除される構成であるとよい。
カテーテル組立体は、係合部と被係合部の係合により、操作部材と棒部材ハブを一体的に移動させることができる。また、棒部材が針先よりも突出した位置で係合が解除されるので、係合解除以降はカテーテル及びカテーテルハブを容易に移動させて、患者側に留置させることができる。
また、前記内針ハブは、前記係合部の係合が解除された位置で、前記棒部材ハブを引っ掛けることにより、前記棒部材が前記内針に対し相対的に後退することを規制する後退規制部を有するとよい。
カテーテル組立体は、後退規制部により、係合部の係合が解除された位置で棒部材ハブの後退を規制して、針先から突出した棒部材の後退を簡単且つ確実に抑止することができる。
また、前記棒部材ハブは、前記内針に対し相対的に進出することに伴い、前記係合部と前記被係合部の係合が解除される方向に前記棒部材ハブを動かす力が増加することが好ましい。
棒部材ハブは、進出に伴い係合部と被係合部の係合が解除される方向に棒部材ハブを動かす力が増加することで、所望位置において係合部と被係合部の係合解除及び後退の規制を円滑に実施させることができる。
また、前記内針ハブは、前記棒部材ハブの進出に伴い、前記棒部材ハブを動かす力を増加させるガイド部を有するとよい。
ガイド部は、棒部材ハブの進出に伴って、係合部と被係合部の係合が解除される方向への動作力を簡単に増加させることができる。
また、前記棒部材ハブは、前記棒部材を保持する保持部と、前記保持部に連なり前記保持部の延在方向と直交する方向に突出するヒンジ部と、前記ヒンジ部に連なると共に前記係合部を先端側に有し、前記穿刺前状態で前記保持部と平行に延在するアーム部と、を備え、前記アーム部の基端側には、前記棒部材ハブの進出時に、前記ガイド部にガイドされることで、前記内針ハブの内側方向に移動して前記棒部材ハブを動かす力を増加させる突部が設けられ、さらに前記係合部は、前記棒部材を動かす力により前記内針ハブの横方向に移動する構成であるとよい。
棒部材ハブは、保持部、ヒンジ部及びアーム部を備えることで、ヒンジ部を基点にアーム部を動作させることができる。そして、アーム部は、内針ハブのガイド部にガイドされて棒部材ハブを動かす力が増加することで、係合部を係合が解除される横方向に容易に変形することができる。
また、前記被係合部は、前記操作部材の移動方向と直交する方向に突出する被係合凸部を有し、前記係合部は、前記穿刺前状態で前記被係合凸部よりも先端側に位置して被係合凸部に係合可能な第1係合凸部と、前記被係合凸部よりも基端側に位置して被係合凸部に係合可能な第2係合凸部と、を備え、前記第2係合凸部は、前記第1係合凸部よりも突出しており、前記第1係合凸部と被係合凸部の係合が解除される状態において、前記カテーテル組立体の正面視で前記被係合凸部と前記第2係合凸部が重なるとよい。
カテーテル組立体は、棒部材が突出していない状態で、操作部材の進出時に第1係合凸部が被係合凸部に係合するので、棒部材ハブを円滑に追従進出させることができる。また操作部材の後退時に被係合凸部が第2係合凸部に係合するので、棒部材ハブを円滑に追従後退させることができる。そして、第1係合凸部と被係合凸部の係合が解除された状態でも、カテーテル組立体の正面視で第2係合凸部と被係合凸部が重なるため、操作部材を後退させると、再び係合して棒部材ハブを追従後退させることが可能となる。
また、前記棒部材ハブは、前記内針から基端方向に延在する前記棒部材を摺動自在に挿通して、先端方向に折り返す折り返し部を1以上有することが好ましい。
カテーテル組立体は、棒部材を折り返す折り返し部を有することで、棒部材ハブ(折り返し部)を進出させると、棒部材の基端方向に延在する部分と先端方向に延在する部分とを合わせて、棒部材を進出させることができる。すなわち、棒部材は、棒部材ハブの折り返し部が進出することに伴い、該棒部材ハブの移動量の2倍以上で進出することができ、内針の針先からより早期に送出される。
また、前記棒部材の先端は、前記カテーテル及び前記内針の穿刺前状態で、前記内針の外部と前記中空部を連通する孔部よりも基端側に配置されているとよい。
カテーテル組立体は、棒部材の先端が内針の孔部よりも基端側に配置されていることで、内針を患者に穿刺した際に内針の中空部に流動した血液を孔部から逃がすことが可能となる。これによりユーザは、血液のフラッシュバックを良好に視認することができる。
前記の目的を達成するために、本発明に係るカテーテル組立体は、カテーテルと、前記カテーテルを固定保持するカテーテルハブと、針先を有し、前記カテーテルの内部に離脱可能に挿通される内針と、前記内針を固定保持する内針ハブと、前記内針の内部を軸方向に延びる中空部に配置され、前記針先よりも鈍な先端部を有する棒部材と、前記棒部材を移動させる移動機構と、を備え、前記移動機構は、前記カテーテルハブとは別体に構成され、前記カテーテルの移動に伴って前記棒部材の先端を前記針先よりも突出させ、前記棒部材の先端は、前記カテーテル及び前記内針の穿刺前状態で、前記内針の外部と前記中空部を連通する孔部よりも先端側に配置され、且つ、前記棒部材は、少なくとも前記先端から前記孔部までの範囲に流動路を有することを特徴とする。
カテーテル組立体は、棒部材の先端が内針の孔部よりも先端側に配置されていても、内針を患者に穿刺した際に、流動路によって内針の中空部に流動した血液を孔部から逃がすことが可能となる。
また、前記棒部材は、前記内針からの突出状態において、突出部分の基端側が硬質部で構成され、突出部分の先端側が該硬質部よりも柔軟な柔軟部で構成されることが好ましい。
棒部材は、硬質部の先端に柔軟部を有することで、仮に、カテーテル、患者、ユーザ又は第3者等に接触しても柔軟に受け流すことができ、外針刺しや誤刺をより良好に抑制することができる。
また、前記内針は、刃面を有し、前記棒部材は、該棒部材及び前記カテーテルを前記内針から突出させて前記カテーテルの先端に30gのおもりを取り付けた状態で、前記針先を水平にしつつ前記内針の刃面を鉛直下方向に向けて前記カテーテルを進退させても、前記内針により前記カテーテルを貫通させない構成であるとよい。
これにより、棒部材は、内針がカテーテルに刺さることを抑制することができる。
本発明によれば、カテーテル組立体は、簡単な構成によって外針刺しや誤刺を確実に防止することで、その取扱性を高めることができる。
以下、本発明に係るカテーテル組立体について好適な実施形態を挙げ、添付の図面を参照して詳細に説明する。
〔第1実施形態〕
第1実施形態に係るカテーテル組立体10は、患者(生体)に輸液や輸血等を行う場合に用いられ、患者の体内にカテーテル12を穿刺及び留置して薬液等の導入部を構築する医療機器である。このカテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルよりも長さが長いカテーテル(例えば、中心静脈カテーテル、PICC、ミッドラインカテーテル等)を挿入可能に構成されている。なお、カテーテル組立体10は、末梢静脈カテーテルを挿入可能な構成でもよい。また、カテーテル組立体10は、静脈用カテーテルに限らず、末梢動脈カテーテル等の動脈用カテーテルを挿入するものでもよい。
図1に示すように、カテーテル組立体10は、カテーテル12、カテーテルハブ20、内針14、内針ハブ30及びカテーテル操作部材60を備える。また、本実施形態に係るカテーテル組立体10は、既述した外針刺しや誤刺を防止するセーフティ機能として、鈍針16、及び鈍針16を支持する鈍針ハブ70を備え、使用時に、内針14から鈍針16を突出させる構成となっている。なお、本実施形態における鈍針16とは、説明の便宜上の名称であり、生体に対して穿刺不能となるように構成された棒部材を指すものである。
カテーテル組立体10は、使用前の状態(穿刺前状態)で、内針14、カテーテル12、鈍針16が重なった多重管部11を構成している。多重管部11は、内針14の針先15がカテーテル12の先端よりも突出し、また鈍針16が針先15よりも基端側(内針14内)に位置している。内針ハブ30は、カテーテル組立体10の基端側においてグリップ部分を構成している。この内針ハブ30内には、多重管部11の基端側部分の他に、カテーテルハブ20、カテーテル操作部材60、鈍針ハブ70が収容されている。
まず、このカテーテル組立体10の理解の容易化のため、カテーテル組立体10の使用時の動作について説明する。カテーテル組立体10の使用において、医師や看護士等のユーザは、内針ハブ30を把持して、内針14及びカテーテル12の先端を患者の血管(静脈又は動脈)内に穿刺する。この穿刺状態を維持したまま、ユーザは、図2Aに示すように、カテーテル操作部材60を内針ハブ30に対し相対的に先端方向に進出操作して、カテーテル12及びカテーテルハブ20を進出させる。また、カテーテル操作部材60の初期進出時には、カテーテル操作部材60の移動に伴って鈍針16及び鈍針ハブ70も一体的に移動する。
カテーテル操作部材60を所定長さ進出させると、所定位置でカテーテル操作部材60からの鈍針ハブ70の離脱(一体化の解除)がなされる。この際、鈍針16の先端は内針14の針先15よりも突出し(図2Cも参照)、且つ先端方向及び基端方向への移動が停止した状態となる。従って、内針14が移動中のカテーテル12に突き刺さる外針刺しが防止される。図2Bに示すように、鈍針ハブ70の離脱後の後期進出時に、カテーテル操作部材60は、カテーテル12及びカテーテルハブ20を進出させる。なお、後期進出時(あるいは初期進出時も含む)には、カテーテル操作部材60に対し内針ハブ30を相対的に後退する操作を行ってもよい。
そして、図2Cに示すように、カテーテル12、カテーテルハブ20及びカテーテル操作部材60が鈍針16の先端よりも進出し、またカテーテル操作部材60が外れることで、カテーテル組立体10は、留置組立体18と廃棄組立体19とに分離する。留置組立体18は、カテーテル12及びカテーテルハブ20であり患者側に留置される。一方、廃棄組立体19は、内針14、内針ハブ30、鈍針16及び鈍針ハブ70を含み、ユーザによって適宜廃棄される。
廃棄組立体19は、内針14の針先15から鈍針16の先端を突出させており、針先15が患者、ユーザ又は第3者に刺さる誤刺が防止される。以下、このカテーテル組立体10の動作を実施する各構成について、具体的に説明していく。
図1及び図3に示すように、カテーテル組立体10のカテーテル12は、適度な可撓性を有し、その内部を軸方向に沿って貫通する内腔12aを備える。内腔12aは、内針14を収容可能且つ薬液や血液等を流動可能な直径に形成されている。カテーテル12の長さは、特に限定されず用途や諸条件等に応じて適宜設計可能であり、例えば、14~500mm程度に設定され、あるいは30~400mm程度に設定され、あるいは76~200mm程度に設定される。
カテーテル12の構成材料は、特に限定されるものではないが、軟質樹脂材料が好適であり、例えば、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、エチレン・テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)等のフッ素系樹脂、ポリエチレン、ポリプロピレン等のオレフィン系樹脂又はこれらの混合物、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド、ポリエーテルナイロン樹脂、オレフィン系樹脂とエチレン・酢酸ビニル共重合体との混合物等があげられる。
カテーテル12の基端部は、かしめ、融着、接着等の適宜の固着手段によってカテーテルハブ20内の先端部に固着される。カテーテルハブ20は、カテーテル12が患者の血管内に挿入された状態で患者の皮膚上に露出され、テープ等により貼り付けられてカテーテル12と共に留置される。
カテーテルハブ20は、先端方向に先細りの筒状に形成される。カテーテルハブ20の外周面の基端部には、径方向外側に突出するフランジ部21が設けられている。カテーテルハブ20の内部には、カテーテル12の内腔12aに連通して輸液剤を流通可能な内部空間20aが設けられている。この内部空間20aには、内針14の穿刺時に血液の逆流を防ぐ図示しない止血弁、及び輸液チューブのコネクタの挿入に伴い止血弁を貫通して輸液を可能とする図示しないプラグ等が収容されてもよい。
カテーテルハブ20の構成材料は、特に限定されるものではないが、例えば、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリスルホン、ポリアリレート、メタクリレート-ブチレン-スチレン共重合体等の熱可塑性樹脂を適用するとよい。
一方、カテーテル組立体10の内針14は、生体の皮膚を穿刺可能な剛性を有する中空状の管体に構成される。内針14の先端には鋭利な針先15が形成されている。針先15は、刃面の反対側がテーパ状に切り欠かれたバックカット形状に形成されている(図14A等も参照)。なお、針先15の形状は、特に限定されず、内針14の軸心に対し刃面を単純に斜めにカットした形状や、左右2つの刃面が幅方向中心に峰を形成したランセット形状に構成されてもよい。内針14の内部には、軸方向に沿って中空部14aが設けられ、この中空部14aは、針先15に設けられた先端開口14bと、内針14の基端に設けられた基端開口14c(図4A参照)とに連通している。また、針先15から基端方向に向かって多少離れた位置には、中空部14aと内針14の外部を連通する孔部14dが設けられている。
内針14の構成材料としては、例えば、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金、チタン又はチタン合金のような金属材料、あるいは硬質樹脂、セラミックス等があげられる。内針14は、融着、接着、インサート成形等の適宜の固着手段により、内針ハブ30に強固に固定される。
内針ハブ30は、内針14を固定保持して、この内針14と一体的に移動する構造部分にあたり、本実施形態においては複数の部材を組み付けることで、ユーザに把持されるグリップ部分を構成している。複数の部材には、ハウジング31、支持部材40及び針保持部材50が含まれる。
ハウジング31は、下壁32と、下壁32の両側辺から上方向に突出する一対の側壁33とを有し、その内側に収容空間31aが形成されている。ハウジング31を構成する樹脂材料は、特に限定されず、例えば、カテーテルハブ20であげた材料を適宜選択し得る。
下壁32は、幅方向中央部分が下側に窪んだガイド溝34を有している。この下壁32の長手方向中間部よりも基端側は、長手方向中間部よりも先端側に比べて薄肉に形成され、後記の針保持部材50を装着する配置部35が形成されている。また、下壁32の適宜の箇所には、針保持部材50を装着するための複数(本実施形態では3つ)の装着孔36が設けられている。
一対の側壁33は、下壁32と共に長手方向に平行に延び、基端側よりも高く形成された先端側の内面には、溝状のレール部37がそれぞれ設けられている。一対のレール部37は、各側壁33の先端側上部に形成された開放部37aに連なると共に、基端側の各側壁33の上面に連なっている。一対のレール部37は、カテーテル操作部材60の側縁61aを摺動自在に収容する。また、開放部37aは、ハウジング31の上側に切り欠かれることで、カテーテル操作部材60の湾曲を許容する。一対の側壁33のうちの一方(図1中の左側の側壁33)は、幅方向外側に膨出する膨出部38を有し、この膨出部38には、支持部材40を取り付けるための配置用凹部38aが設けられている。
支持部材40は、カテーテル操作部材60に保持されたカテーテル12(多重管部11)の下側を支えるために取り付けられる。この支持部材40は、配置用凹部38a内に回転自在に取り付けられ、穿刺前状態でカテーテル12を適度な弾力で支持する。支持部材40の支持軸の幅方向内側には、レール部37に連なるガイド凹部41が設けられ、このガイド凹部41には、穿刺前状態で、カテーテル操作部材60の側縁61aが配置される。
支持部材40は、カテーテル操作部材60がハウジング31内に収容されている状態で、カテーテル操作部材60の側縁61aがガイド凹部41に存在することで、回転が規制されてカテーテル12を支持可能に待機する。これにより、カテーテル12を下支えして、カテーテル12の撓みを抑制する。一方、カテーテル操作部材60がハウジング31から抜け出す際に、支持部材40は、ガイド凹部41から側縁61aが抜けることで回転可能となる。さらにカテーテル操作部材60が接触することで側壁33の外側に向かって回転する(図2Bも参照)。これにより、カテーテルハブ20、カテーテル操作部材60がハウジング31からスムーズに送出する。
ハウジング31に装着される針保持部材50は、内針14が直接固着される部材であり、ハウジング31の内部に収容固定される。また、針保持部材50は、鈍針16を移動させる移動機構17の一部を構成しており、鈍針ハブ70の移動をガイドすると共に、所定位置において鈍針ハブ70の進出及び後退を規制する機能を有している。
図3、図4A及び図4Bに示すように、針保持部材50は、ハウジング31の収容空間31aに挿入される幅に形成され、下壁32に装着される装着板部51を有する。装着板部51は、下壁32の配置部35(ガイド溝34)に合うようにその幅方向中央部が下側に窪む断面円弧状に形成されている。装着板部51の下面には、複数の装着孔36に各々挿入固定される複数の装着突起51aが設けられている。
また、針保持部材50は、装着板部51の中間部から基端側にかけて、針保持部材50を概ね角筒状とする枠構造52を備える。枠構造52は、装着板部51の幅方向の一側部(図4A中の上側)に側枠53を有すると共に、装着板部51の幅方向の他側部(図4A中の下側)にガイド枠54を有し、さらに側枠53の上部とガイド枠54の上部とを架橋する覆い部55を有する。装着板部51と枠構造52(側枠53、ガイド枠54、覆い部55)の内側には、鈍針ハブ70を摺動自在に配置する配置空間52aが形成されている。
また、覆い部55の先端付近で、該覆い部55と装着板部51との間には、内針14を保持する保持本体部56が連設されている。保持本体部56は、ブロック状に形成され、その基端面は鈍針ハブ70の先端方向の移動限界を規定する。また保持本体部56の所定の高さ位置には、内針14を保持する保持孔56aが設けられている。保持孔56aは、保持本体部56内を前後方向(ハウジング31の軸方向)に貫通して、内針14の基端部を軸方向に連結固定している。
枠構造52のガイド枠54は、下ガイド部57と、上ガイド部58とに分け得る。下ガイド部57は、装着板部51の上面から低く突出すると共に、針保持部材50の基端から覆い部55を越えて先端方向に延びている。下ガイド部57の先端は、装着板部51の先端よりも多少基端側に位置している。この先端は、針保持部材50の延在方向に直交する平坦面に形成され、後記の鈍針ハブ70の後退を規制する後退規制面57a(後退規制部)を構成している。
上ガイド部58は、下ガイド部57の上部と覆い部55の間に連設されている。上ガイド部58の高さ方向の寸法は、下ガイド部57の高さ方向の寸法よりも長い。その一方で、上ガイド部58は、覆い部55の延在長さよりも短い寸法で、下ガイド部57と同方向に延在している。そして、上ガイド部58の基端側には、最基端点から先端方向に向かって幅方向内側(枠構造52の内側)に傾斜する傾斜面58aが形成されている。また、上ガイド部58の傾斜面58aよりも先端側は、側枠53と平行な平坦面58bとなっている。
一方、図3及び図5に示すように、カテーテル操作部材60は、カテーテル12を直接保持すると共に、カテーテルハブ20に装着されることで、カテーテル12及びカテーテルハブ20を内針14及びハウジング31に対し相対的に進退させる。このカテーテル操作部材60は、ハウジング31の長手方向に延びる操作板部61と、操作板部61の基端に連なりカテーテルハブ20を収納するハブ収納部62と、ハブ収納部62の基端に連なり鈍針ハブ70に係合可能な被係合部63とを有する。
操作板部61は、ユーザの指が当てられて進退操作がなされる部位である。操作板部61の一対の側縁61aは、穿刺前状態で、内針ハブ30(ハウジング31)の一対のレール部37と、一対の側壁33の上面とに配置される。操作板部61は、薄肉に形成されることで、内針14から離れる方向に湾曲可能な可撓性を有する。操作板部61(カテーテル操作部材60)を構成する材料は、特に限定されるものではなく、例えば、カテーテルハブ20であげた材料を適宜選択し得る。
操作板部61の下面には、一対の突片64aからなるカテーテル保持部64が長手方向に沿って1以上設けられる。各カテーテル保持部64は、操作板部61の長手方向に等間隔に配置され、各箇所で一対の突片64aによりカテーテル12を咥え込む。そして、操作板部61が湾曲する際には、一対の突片64aがカテーテル12の咥え込みを順次外していく。
一方、カテーテル操作部材60のハブ収納部62は、操作板部61に連なる上板65と、上板65から下方向に突出する一対の側板66とを有し、上板65と一対の側板66の内側に収納室62aを形成している。この収納室62aは下方側が開放している。
上板65には、カテーテルハブ20の形状に応じて略二等辺三角形状に切り欠いた配置穴65aが設けられている。配置穴65aは、収納室62aに配置されたカテーテルハブ20を露出させる。一対の側板66は、ハウジング31の側壁33に合わせて平行に延び、その先端側が内側に湾曲することで収納室62aを遮蔽している。また、一対の側板66の先端側は、カテーテルハブ20よりも狭くカテーテル12(多重管部11)のみを延出させる間隙66aを形成している。間隙66aは下方側が開放されている。
ハブ収納部62の基端側には、一対の側板66の上部を円弧状に架橋するアーチ部67が設けられている。一対の側板66とアーチ部67は、カテーテルハブ20のフランジ部21に接触して適度な摩擦力を付与する。すなわち、カテーテルハブ20は、ハブ収納部62からの適度な摩擦力によって分離可能に保持される。ハブ収納部62は、例えば、カテーテルハブ20がハウジング31から抜け出た後に、ユーザが配置穴65aに指を通してカテーテルハブ20を下方向に押すことで、カテーテルハブ20を離脱させる。
カテーテル操作部材60の被係合部63は、ハブ収納部62の外形に応じて半円状の外観を呈し、基端方向から見た場合に一部を切り欠いたフレーム状に形成されている(図5参照)。被係合部63の幅方向中央部の中間フレーム68には、内針14を通す挿通孔68aが形成されている。また、被係合部63の切り欠かれた部分には、中間フレーム68の側面から被係合凸部69が突出している。
被係合凸部69は、図5及び図6に示すように、中間フレーム68から幅方向外側且つ基端側に傾斜するように突出している。この被係合凸部69は、角柱状に形成されて短く突出する一方で、ある程度の太さを有しており、鈍針ハブ70を先端及び基端方向に係合する機構を備えている。本実施形態に図示されるこの機構は、具体的には、引っ掛ける機能を有している。なお、中間フレーム68は、被係合凸部69よりも先端側の側面68bが、被係合凸部69よりも基端側の側面68cよりも幅方向外側位置にある。すなわち、側面68bと側面68cは、被係合凸部69を挟んで段差状に形成されている。
図1及び図3に戻り、次に、カテーテル組立体10の鈍針16及び鈍針ハブ70について説明する。鈍針16は、内針14よりも長く延在する丸棒状に形成されて、内針14内及びハウジング31内に摺動自在に挿入されることで、多重管部11を構成している。
鈍針16の太さは、内針14の太さに応じて適宜設計されるとよく、例えば、中空部14aよりも僅かに細く形成されるとよい。鈍針16は、その構成材料と太さによって所望の硬質性を得るとよく、例えば外径の実寸としては、0.19mm~1.19mmであるとよい。また、鈍針16の外径は内針14の内径に比べ0.01mmから0.20mm小さいとよい。これにより鈍針16は、針先15からの露出状態でぶれ等が防止され、基端側の軸心に沿った直進性を維持する。
鈍針16の先端面16aは、内針14の針先15よりも鈍な形状、例えば、棒部材の前躯体を切断、研磨等した平坦面(図13A等も参照)に形成されている。また鈍針16の先端面16aと周面と角部は、R状を呈しているとよい。なお、鈍針16は、生体やカテーテル12に刺さり難い構造であれば特に限定されず、種々の形状を適用することができる。他の形状としては、半球状(図17も参照)等があげられる。鈍針16の基端は、溶着、接着等の適宜の固着手段によって、鈍針ハブ70の保持部71に強固に固定される。
鈍針16を構成する材料は、充分な硬質性が得られれば特に限定されるものではなく、例えば、ステンレス鋼、Ni-Ti系合金のような超弾性合金、形状記憶合金、コバルト系合金、金、白金のような貴金属、タングステン系合金等の金属材料、又は所定硬度以上の樹脂材料があげられる。
また、鈍針ハブ70(棒部材ハブ)は、鈍針16を固定保持し、内針14及び内針ハブ30に対し相対移動可能にハウジング31内に収容される。本実施形態において、鈍針ハブ70は、カテーテル操作部材60と係合して、カテーテル操作部材60から操作力(進出力又は後退力)が伝達されることで、ハウジング31内を先端方向又は基端方向に移動する。この鈍針ハブ70の移動時に、内針ハブ30(針保持部材50)は、上述の構成によって鈍針ハブ70の案内、進出規制及び後退規制等を行う。すなわち、針保持部材50(内針ハブ30)、カテーテル操作部材60及び鈍針ハブ70が、カテーテル12の移動に伴い鈍針16を移動させる移動機構17を構成している。
図6、図7A及び図7Bに示すように、鈍針ハブ70は、保持部71、ヒンジ部72及びアーム部73を一体成形した部材であり、穿刺前状態で、針保持部材50の適宜の位置に配置される。鈍針ハブ70を構成する材料としては、適宜の弾性力を有する樹脂材料が適用されるとよい。
保持部71は、内針ハブ30の軸方向に長いブロック状(直方形状)に形成され鈍針16の基端側を保持する。保持部71の先端面の幅方向中間部で上部側の角部には、配置溝部71aが設けられており、この配置溝部71aに鈍針16が固定される。カテーテル組立体10の組立状態において、保持部71の先端面は、保持本体部56の基端面に対向配置される(図8も参照)。そのため、鈍針ハブ70が針保持部材50に対し進出し、保持部71の先端面が保持本体部56の基端面に接触すると、以降の鈍針ハブ70の進出が規制される。
ヒンジ部72は、保持部71の側面から一方の幅方向(保持部71の延在方向と直交する方向:本実施形態では左方向)に短く突出し、平面視で、保持部71に対してアーム部73を回動させる基点として機能する。このヒンジ部72は、保持部71の先端面から連続しており、アーム部73の長手方向中間部より多少基端側の位置を支持している。また、ヒンジ部72は、前後方向に薄肉に形成される一方で、保持部71の上下方向の高さと同一の高さに形成されている。
アーム部73は、内側面がヒンジ部72に連なり、穿刺前状態で保持部71と平行に延在している。このアーム部73は、ヒンジ部72を基点に、先端方向に向かって充分に長く延びる先端アーム74と、基端方向に向かって短く延びる基端アーム75とを有する。先端アーム74は、穿刺前状態で、針保持部材50の覆い部55より先端方向に延出している。基端アーム75は、保持部71の基端と同じ位置まで延出している。
アーム部73の外側面には、切り欠き76が設けられている。切り欠き76は、アーム部73の下側の角部を肉抜きした構成であり、アーム部73の基端から先端方向に向かって延在している。切り欠き76の先端は、アーム部73の係合部80付近に至っており、切り欠き76を臨む面は、針保持部材50の下ガイド部57の後退規制面57aに引っ掛かる被規制面76aとなっている。すなわち鈍針ハブ70の後退を規制する後退規制機構77は、針保持部材50の後退規制面57aと、鈍針ハブ70の被規制面76aとで構成されている。
また、アーム部73(基端アーム75)の外側面には、幅方向外側に突出する突部78が設けられている。この突部78は、切り欠き76の上部にあって、穿刺前状態で針保持部材50の上ガイド部58に対向する。従って突部78は、鈍針ハブ70の移動時に、上ガイド部58に接触及びガイドされる。なお、アーム部73(先端アーム74)の切り欠き76よりも先端側側面74aは、鈍針ハブ70の移動時に、下ガイド部57に接触及びガイドされる。
突部78は、外側方向に向かって所定量(ハウジング31の側壁33に非接触となる範囲で)突出している。突部78の先端側は、基端方向且つ外側に傾斜するテーパ面78aとなっている。
一方、アーム部73の内側面は、上記の切り欠き76に応じて、上側に対し下側が若干内側に突出した段差状に形成されている。すなわち、アーム部73の下側は、切り欠き76が設けられている分だけ薄肉に形成されて、且つ上側よりも内側に寄るように構成される。そして、先端アーム74の内側面の先端付近には、穿刺前状態で、カテーテル操作部材60の被係合部63と係合する係合部80が設けられている。この係合部80は、先端に位置する第1係合凸部81と、第1係合凸部81よりも基端側に位置する第2係合凸部82とによって構成されている。
第1係合凸部81は、アーム部73の先端から内側に短く突出している。第1係合凸部81の先端面は、アーム部73の延在方向に直交する平坦状に形成されている一方で、第1係合凸部81の基端面は、アーム部73の延在方向に対して斜め且つ湾曲する湾曲面に形成されている。
第2係合凸部82は、第1係合凸部81に対して所定間隔(概ね被係合凸部69の太さ分)離れた位置で、アーム部73の内側に突出している。第2係合凸部82は、第1係合凸部81よりも突出量が大きい。また、第2係合凸部82の先端面は、アーム部73の延在方向に対して傾斜している一方で、第2係合凸部82の基端面は、アーム部73の延在方向に直交する平坦状に形成されている。
図1、図3及び図8に示すように、カテーテル組立体10は、以上の各部材を適宜組み付けて穿刺前状態を形成している。すなわち、カテーテルハブ20、支持部材40、針保持部材50、カテーテル操作部材60及び鈍針ハブ70がハウジング31内に収容されている。また、鈍針16が内針14の中空部14aに挿入され、この内針14がカテーテル12の内腔12aに挿入されることで、多重管部11が形成されている。
針保持部材50は、ハウジング31の装着孔36に装着突起51aが装着されることで、内針ハブ30として一体化される。この状態では、ハウジング31の基端と針保持部材50の基端とが一致している。そして、内針ハブ30の基端側には、針保持部材50の枠構造52の配置空間52aが位置することになる。
一方、カテーテル操作部材60は、ハウジング31において、カテーテルハブ20をハブ収納部62に収納(一対の側板66、アーチ部67によりカテーテルハブ20を保持)して、枠構造52の先端側直前に配置される。このカテーテル操作部材60は、一対の側縁61aがハウジング31の一対のレール部37に挿入されて、内針ハブ30と相対的に進退可能となっている。
そして、鈍針ハブ70は、針保持部材50の配置空間52aにその大部分が収容されると共に、配置空間52aから突出したアーム部73(先端アーム74)の係合部80がカテーテル操作部材60の被係合部63に係合している。この場合、係合部80の第1係合凸部81が被係合部63の被係合凸部69よりも先端側に位置し、係合部80の第2係合凸部82が被係合凸部69よりも基端側に位置している。
また穿刺前状態で、鈍針ハブ70のアーム部73は、鈍針16や保持部71に対して平行に延在している。鈍針ハブ70の突部78は、針保持部材50の上ガイド部58よりも基端側にあって、上ガイド部58に対し非接触となっている。鈍針ハブ70の保持部71は、針保持部材50の保持本体部56に対向して、鈍針16を保持している。
保持部71から直線状に延びる鈍針16は、内針14の中空部14aに挿入されて内針14内を延在している。この鈍針16の先端は、内針14の孔部14dの基端側に位置している。
本実施形態に係るカテーテル組立体10は、基本的には、以上のように構成されるものであり、以下その作用効果について説明する。
カテーテル組立体10は、上述したように、患者への輸液の導入部を構築する際に用いられる。穿刺前に、ユーザは、カテーテル12と内針14の癒着をなくすため、カテーテルハブ20を相対回転させる操作を任意に行う。この際、本カテーテル組立体10は、鈍針ハブ70がカテーテル操作部材60に係合しているので、カテーテルハブ20の回転を容易に実施させる。
使用において、ユーザは、ハウジング31を把持操作して多重管部11を患者に穿刺する。穿刺前状態で、鈍針16の先端面16aは、孔部14dの基端側に位置しているため、穿刺時には、内針14の中空部14aに流入した血液が孔部14dを通してカテーテル12の内腔12aに流動する。すなわちユーザは、血液のフラッシュバックを視認して、血管が確保されたことを確認することができる。
多重管部11の穿刺状態において、図2Aに示すように、ユーザは、カテーテルの初期進出(カテーテル操作部材60の進出操作)を行い、カテーテル12を内針14よりも進出させて血管内に挿入する。この際、カテーテル操作部材60が前進することによりカテーテル操作部材60と係合する鈍針ハブ70が前方へ移動する。具体的には、被係合凸部69が鈍針ハブ70の第1係合凸部81に引っ掛かってアーム部73を引っ張る。またカテーテル操作部材60のスライドに伴い、ハブ収納部62に収納されているカテーテルハブ20も一体的に進出する。従って、カテーテルハブ20に固定されたカテーテル12、及び鈍針ハブ70に固定された鈍針16が内針14と相対的に進出する。
ここで、穿刺前状態では、針保持部材50の上ガイド部58の基端側において、鈍針ハブ70の突部78が離間して対向配置されている。そのため、カテーテル操作部材60の進出時においては、初期段階が最も動作し難い(重い)が、本カテーテル組立体10は、鈍針ハブ70の移動に針保持部材50が殆ど障害とならず、進出をスムーズに実施させることができる。
また、血管に挿入したカテーテル12を一旦引き戻したい場合、ユーザは、カテーテル操作部材60を後退操作する。この際、カテーテル操作部材60が後退することにより、カテーテル操作部材60と係合する鈍針ハブ70が後方へと移動する。具体的には、カテーテル操作部材60の被係合凸部69が鈍針ハブ70の第2係合凸部82に引っ掛かって基端方向に押すことで、鈍針ハブ70も後退する。これによりカテーテル12及び鈍針16が、内針14に対して後退することになる。
カテーテル組立体10は、図9に示すように、カテーテル操作部材60が先端方向に移動することにより針保持部材50により突部78が鈍針16の軸方向と直交する方向に移動させられる。具体的には、カテーテル操作部材60が先端方向に多少進出すると、上ガイド部58の傾斜面58aによって鈍針ハブ70の突部78(テーパ面78a)がガイドされる。このため突部78が内側方向に向かう。その一方で、鈍針ハブ70は、カテーテル操作部材60が先端方向に移動することによりカテーテル操作部材60との係合を維持した状態で前方へ進出する。具体的には、先端アーム74は、先端側側面74aが下ガイド部57に接触して進出がガイドされると共に、係合部80による被係合部63の係合状態を継続させる。
よって、鈍針ハブ70のヒンジ部72よりも基端側の基端アーム75が全体的に弾性変形してバネ力(係合部80を動かす力)を溜めることになる。特に、突部78が上ガイド部58の平坦面58bに達した段階では、基端アーム75が大きく湾曲して保持部71に寄った状態となる。なお、図9中の移動段階では、鈍針16が内針14の孔部14dを越えて針先15付近(針先15よりも基端側)に至っている。
カテーテル操作部材60の進出をさらに継続すると、図10に示すように、アーム部73の切り欠き76が、針保持部材50の下ガイド部57の先端に達する。すなわち、先端側側面74aが下ガイド部57のガイドから抜ける。そして、突部78の鈍針16の軸方向と直交する方向への変形により、先端アーム74は当該方向と反対の方向に動く力が作用する。具体的には、上述したように突部78の内側方向の弾性変形によって、アーム部73は、ヒンジ部72を基点に先端アーム74を外側方向に動かす力が増加している。そのため、先端アーム74の先端は、切り欠き76に下ガイド部57を入り込ませつつ、外側方向に開くことになる。
このように、先端アーム74が鈍針16の軸方向と直交する方向と反対の方向に動くと、鈍針ハブ70とカテーテル操作部材60の係合が解除される。すなわち、先端アーム74が外側方向に開くことで、第1係合凸部81と被係合凸部69との係合が解除される。よって、カテーテル操作部材60は、ユーザにより進出操作がなされると鈍針ハブ70から離脱し、カテーテル12及びカテーテルハブ20を進出させる。一方、鈍針16及び鈍針ハブ70は、針保持部材50の保持本体部56の基端側に残留することになる。
また、係合が解除された位置において、鈍針16の先端は、内針14の針先15から突出した状態となっている。つまり、カテーテル組立体10は、鈍針16の先端が内針14の針先15より突出した位置にてカテーテル操作部材60と鈍針ハブ70の係合が解除されるように構成されている。針先15よりも進出したカテーテル12は、鈍針16によって支持されることで、カテーテル12自体の撓み等が抑制され、またカテーテル12に対して内針14を進出させた場合に針先15による外針刺しを防ぐことができる。
突出状態において、アーム部73の先端は、鈍針16の軸方向と直交する方向い変位した状態を維持し、鈍針ハブ70は針保持部材50の一部分によって後退を規制される。具体的には、アーム部73の先端は、突部78と上ガイド部58により幅方向外側に変位したままとなり、この状態では、切り欠き76を構成する被規制面76aが下ガイド部57先端の後退規制面57aに引っ掛かる。これにより、係合解除位置で鈍針ハブ70の後退が規制されることになる。また、鈍針ハブ70は、保持部71の前方に針保持部材50の保持本体部56が存在することで、先端方向への移動も規制される。従って、鈍針16は、針先15からの突出状態を良好に維持することができる。
その後は、後期進出に移行して、上述したように、カテーテル操作部材60をハウジング31から露出させ(図2B参照)、さらにカテーテルハブ20を鈍針16(廃棄組立体19)から離す。またユーザは、カテーテル操作部材60を、カテーテルハブ20から分離させることで(図2C参照)、留置組立体18を患者に留置する。
なお、カテーテル組立体10は、係合解除位置を越えた後にカテーテル操作部材60を再び後退させても、鈍針ハブ70と再び係合することができる。つまり、カテーテル操作部材60と鈍針ハブ70の係合解除状態でも、第2係合凸部82と被係合凸部69は、カテーテル組立体10の正面視において互いに重なっている。そのため図11Aに示すように、カテーテル操作部材60を後退させると、被係合凸部69が第2係合凸部82を引っ掛けて、アーム部73の先端側を内側方向に移動させる。よって、図11Bに示すように、カテーテル操作部材60の後退により係合部80と被係合部63の係合が復活する。
以上のように、第1実施形態に係るカテーテル組立体10は、鈍針16及び移動機構17を備えることで、ユーザの操作によりカテーテル12を進出させて血管に挿入させる際に、移動機構17により鈍針16の先端を針先15よりも突出させることができる。そして、針先15から突出した鈍針16は、外針刺しや誤刺を確実に防止することが可能となる。特に、移動機構17は、カテーテル12の移動に伴って鈍針16を移動させるので、ユーザに対し突出操作を別途要求することがなく、操作性に優れる。また、カテーテルハブ20と移動機構17が別体であるため、例えばカテーテル12及びカテーテルハブ20を内針14と相対的に回転可能にする等のように、カテーテルハブ20を任意に設計でき、さらにカテーテルハブ20の損傷等を抑制することができる。よって、カテーテル組立体10の取扱性が大幅に高められる。
また、カテーテル組立体10は鈍針16を移動させる移動機構17として、カテーテル操作部材60(係合部材)、鈍針ハブ70(棒部材ハブ)を適用している。これにより、カテーテル操作部材60が移動すると、カテーテル操作部材60が係合する棒部材ハブ70が移動して、鈍針16に移動力を簡単に付与することができる。なお、移動機構17は、カテーテルハブ20に係合し鈍針ハブ70に力を伝達する係合部材として、上記の他にも、カテーテルハブ20に係合するセーフティ機構、弁等、あるいはカテーテルハブ20と別体に構成された内針ハブ30や鈍針ハブ70の一部等でもよい。カテーテル組立体10は、鈍針16とセーフティ機構を組み合わせることにより、誤刺防止機能をより高める効果や血液暴露がし難くなる。
さらに、カテーテル組立体10は、係合部80と被係合部63の係合により、カテーテル操作部材60と鈍針ハブ70を一体的に移動させることができる。また、鈍針16が針先15よりも突出した位置で係合が解除されるので、係合解除以降はカテーテル12及びカテーテルハブ20を容易に移動させて、患者側に留置させることができる。またさらに、内針ハブ30は、係合解除位置で鈍針ハブ70の後退を規制するので、針先15から突出した鈍針16の後退を簡単且つ確実に抑止することができる。
そして、鈍針ハブ70は、進出に伴い係合部80と被係合部63の係合が解除される方向にアーム部73を動かすバネ力が増加することで、所望位置において係合部80と被係合部63の係合解除を円滑に実施させることができる。また、内針ハブ30の上ガイド部58は、鈍針ハブ70の進出に伴って、係合部80と被係合部63の係合が解除される方向への動作力を簡単に増加させることができる。特に、鈍針ハブ70は、保持部71、ヒンジ部72及びアーム部73を備えることで、ヒンジ部72を基点にアーム部73を動作させることができる。アーム部73は、内針ハブ30の上ガイド部58によりバネ力が増加することで、係合部80を係合が解除される外側方向に容易に変形することになる。
カテーテル組立体10は、カテーテル操作部材60の進出時に第1係合凸部81が被係合凸部69に係合するので、鈍針ハブ70を円滑に追従進出させることができる。またカテーテル操作部材60の後退時に被係合凸部69が第2係合凸部82に係合するので、鈍針ハブ70を円滑に押し込むことができる。そして、第1係合凸部81と被係合凸部69の係合が解除された状態でも、カテーテル組立体10の正面視で第2係合凸部82と被係合凸部69が重なるため、操作部材を後退させると、鈍針ハブ70を追従後退させることが可能となる。
なお、カテーテル組立体10は、種々の応用例や変形例を採用し得る。例えば、鈍針16の移動機構17は、カテーテル操作部材60と鈍針ハブ70を係合させカテーテル操作部材60から移動力が付与される構造に限定されるものではない。他の例として、移動機構17は、カテーテルハブ20の基端に装着され、カテーテルハブ20の内部空間を閉塞する弁機構(不図示)に被係合凸部69を設けて、鈍針ハブ70の係合部80を係合する構造でもよい。
以下、他の変形例について図12A~図12Dを参照して幾つか説明する。なお、以降の説明において、第1実施形態に係るカテーテル組立体10の各構成と同一の構成又は同一の機能を有する構成については、同一の符号を付し、その詳細な説明は省略する。
図12Aに示す第1変形例に係る移動機構17Aは、鈍針ハブ70の突部79が平面視で矩形状に形成され、針保持部材50の上ガイド部58だけが傾斜面58aを有する。この構成でも、鈍針ハブ70の進出時に、突部78の角部が傾斜面58aに当たって内側方向に弾性変形される。
逆に、図12Bに示す第2変形例に係る移動機構17Bは、鈍針ハブ70の突部78先端がテーパ面78aに形成され、針保持部材50の上ガイド部59が平面視で矩形状に形成された構成でもよい。
さらに、図12Cに示す第3変形例に係る移動機構17Cは、アーム部73の先端側に突部85を有する。このようにアーム部73の先端側に突部85を備えていても、例えば、針保持部材50の保持本体部56に突部85が接触することによって、アーム部73の外側方向への変位をガイドすることができる。
またさらに、図12Dに示す第4変形例に係る移動機構17Dは、ヒンジ部72が保持部71の基端側に設けられ、またアーム部73の延在部分の所定位置に突部78に代えて案内ピン86を備えている。そして、内針ハブ30は、案内ピン86をガイドするピン用溝部39を有し、このピン用溝部39はアーム部73の先端側を外側方向に変位するように誘導する構成となっている。
要するに、鈍針ハブ70のヒンジ部72やアーム部73の形状、形成位置等は、アーム部73の係合部80を係合解除可能であれば特に限定されるものではない。また、鈍針ハブ70の変形をガイドする内針ハブ30の形状も鈍針ハブ70に合わせて適宜の構成であればよい。
〔第2実施形態〕
第2実施形態に係るカテーテル組立体10Aは、図13Aに示すように、鈍針90の先端領域の形状が第1実施形態に係るカテーテル組立体10の鈍針16と異なる。鈍針90以外の他の構成については、基本的にカテーテル組立体10と同じである。
この場合、鈍針90は、先端面90aから基端方向に向かって所定長さ延在する凹状溝部91を有している。この凹状溝部91は、内針14内で血液を流動させる流動路として機能する。例えば、凹状溝部91は、鈍針90の周方向全周のうちの一範囲(1/4~1/8程度の周長)を内側に向かって切り欠き、また中心軸に達しない深さの溝底を有するように形成される。
図14Aに示すように、鈍針90の先端面90aは、穿刺前状態の内針14の中空部14aに収容された状態で、内針14の先端開口14b付近(先端開口14bよりも若干基端位置)に配置されている。また、鈍針90の先端面90aは、カテーテル12の先端位置よりも先端側に位置している(又は一致している)ことが好ましい。鈍針90の凹状溝部91は、穿刺前状態で、先端面90aから内針14の孔部14dの基端側の範囲にわたって形成されている。
以上のように形成されることで、鈍針90は、多重管部11を血管に穿刺した状態で、先端開口14bから凹状溝部91を通して血液が流入して、この血液を孔部14dまで導くことができる。そのため血液は、孔部14dを介してカテーテル12の内腔12aに流れることになり、ユーザは、フラッシュバックを確認することができる。
また図14Bに示すように、鈍針90は、移動機構17によって進出することにより、内針14の針先15の先端側に直ぐに送出される。このため、内針14による外針刺しを、カテーテル12の移動初期段階の早期に防ぐことが可能となる。また、鈍針90は、周方向の一部に凹状溝部91が設けられているだけなので、先端が充分に鈍な形状のままとなり、外針刺しや誤刺を良好に抑制することができる。
なお、鈍針90に設けられる血液の流動路は、凹状溝部91に限定されず種々の形状を採用し得る。例えば、図13Bに示すように、鈍針92の周方向の半分を切り欠いた半円状切り欠き部93であってもよい。
〔第3実施形態〕
図15に示すように、第3実施形態に係るカテーテル組立体10Bは、鈍針ハブ95が内針14から基端方向に延在する鈍針16を摺動自在に挿通して、先端方向に折り返す折り返し部96を有している点で、カテーテル組立体10、10Aと異なる。このカテーテル組立体10Bは、折り返し部96を有することで、鈍針16の先端の移動量を大きくすることが可能となる。
具体的には、鈍針ハブ70の保持部71が幅方向に大きなブロック状に形成されており、この保持部71の内部に折り返し部96として機能する通路97が形成されている。通路97の両端の口部97a、97bは、保持部71の先端面に連なっており、一方の口部97aは、穿刺前状態で、針保持部材50に保持された内針14の基端開口14cに対向している。従って、鈍針16は内針14の基端開口14cと通路97の口部97aの間を直線状に延在する。
また、通路97は、平面視で、一方の口部97aから基端方向に多少延びた後、湾曲部97cにおいて180°湾曲して他方の口部97bに至るように設けられる。このため、通路97に挿通された鈍針16は、該通路97の形状によって一方の口部97aと他方の口部97bとの間を摺動可能に折り返される。
また、内針ハブ30には、鈍針16の端部(鈍針16の先端と反対側端部)を固定する固定部98が設けられている。保持部71の他方の口部97bから送出された鈍針16は、ハウジング31の軸方向に沿って延在して、固定部98に固着されている。
以上のように構成されたカテーテル組立体10Bは、移動機構17により鈍針ハブ95が進出すると、折り返し部96自体が進出する。この場合、鈍針16は、固定部98に固定された反対側端部が不動であるため、固定部98から基端方向に延在する部分が折り返し部96(通路97)に入り込むことになる。その一方で、口部97aから先端方向に延在する部分は、保持部71に押されることで先端方向に移動することになる。つまり、折り返し部96により基端方向に延在する分の鈍針16が加わることで、鈍針16の先端は、鈍針ハブ70の進出量よりも大きく進出することになる。
例えば、図16の上段に示すように、内針14内で移動過程にある鈍針16の先端が、カテーテル12の先端の位置と略同位置にあるとする。鈍針16は、移動機構17によって進出がなされると、図16の下段に示すようにカテーテル12の先端が進出した進出量に対し、その先端が2倍進出することになる。このように折り返し部96によって、鈍針16は、穿刺前状態で、内針14の針先15よりもある程度基端側に配置されていても、内針14から早期に送出されて、外針刺しを良好に抑制することが可能となる。なお、折り返し部96は、鈍針ハブ70と内針ハブ30とに複数設けられることも可能であり、複数の折り返し部96に応じて鈍針16の進出量を増加させる、すなわち3、4、5、…倍とすることができる。
〔第4実施形態〕
図17に示す第4実施形態に係るカテーテル組立体10Cは、鈍針100がその全長の大部分を構成する硬質部101と、硬質部101の先端に設けられ該硬質部101よりも柔軟な柔軟部102とを有する点で、カテーテル組立体10、10A、10Bと異なる。
硬質部101の構成材料は、上述した鈍針16の材料であげたものを適用し得る。柔軟部102は、硬質部101よりも柔軟な適宜の材料を用いて構成されるのが好ましく、例えばニッケルチタン合金等の金属材料や、ポリウレタン等の樹脂材料を適用することができる。柔軟部102の形状を変更することでも柔軟化でき、例えば、コイル状にしたり、複数のワイヤをよった形状にしたり、断面形状を非円形にしたり、小径にしたりすることができる。柔軟部102の全長は、特に限定されるものではないが、例えば0.3mm~2.0mmの範囲であるとよい。
鈍針100は、硬質部101の先端に柔軟部102を有することで、仮に、カテーテル12、患者、ユーザ又は第3者等に接触しても柔軟に受け流して、外針刺しや誤刺をより良好に抑制することができる。また、柔軟部102の先端部は、角部を削った半球状に形成されており、これにより鈍針100は、外針刺しや誤刺を一層確実に抑制することができる。
特に、鈍針100は、鈍針ハブ70の後退が規制された位置(係合部80と被係合部63の係合解除位置)で、内針14の針先15から柔軟部102を全て露出した状態、すなわち、硬質部101の先端が針先15よりも突出した状態とする。これにより、先端側の柔軟部102が湾曲等を起こしても、針先15から突出した硬質部101によって誤刺を防止することができる。
なお、本発明は、上述の実施形態に限定されず、発明の要旨に沿って種々の改変が可能である。
第1実施形態に係る鈍針16及び第4実施形態に係る鈍針100について、その効果を検証する実験を行った。今回の実験では、比較のために、図18に示す第1~第5サンプルを用意した。
第1サンプル:第1実施形態に係るカテーテル12、内針14、鈍針16を用いた。内針14の内径は0.395mmであり、鈍針16の外径は0.377mmである。また上述したように、内針14の針先15は、バックカット形状を呈しており、バックカットの長さは0.035mm、バックカットの高さは0.029mmとなっている。また、カテーテル12の外径は20Gとなっている。
第2サンプル:第4実施形態に係るカテーテル12、内針14、鈍針100(硬質部101、柔軟部102を有するもの)を用いた。内針14の内径は0.395mmであり、鈍針16の外径は0.376mmである。また、内針14の針先15は、第1サンプルと異なるバックカット形状に形成しており、バックカットの長さは0.105mm、バックカットの高さは0.087mmとなっている。また、カテーテル12の外径は20Gとなっている。
第3サンプル:第1及び第2サンプルと異なる内針、鈍針を用いた。具体的に、内針の内径は0.595mmであり、また内針はランセット形状に形成されている。さらに、鈍針は、断面円形状の周方向の一部分を切り欠いて平坦にした非円形状に形成したものである。この場合、平坦面から該平坦面と反対側の円弧面までの外径は0.237mmであり、平坦面と平行な方向の外径は0.385mmである。また、カテーテル12の外径は20Gとなっている。
第4サンプル:第1~第3サンプルと異なる内針、鈍針を用いた。具体的に、内針の内径は0.442mmであり、バックカット長さは0.107mmであり、バックカット高さは0.083mmである。また、鈍針の代わりにガイドワイヤを適用し、このガイドワイヤの外径は0.357mmとなっている。この場合、ガイドワイヤの内針からの突出長さは、第1~第3サンプルの各鈍針の突出長さよりも充分に長い。また、カテーテル12の外径は20Gとなっている。
第5サンプル:第1~第4サンプルと異なる内針、鈍針を用いた。具体的に、内針は、内径が0.598mmであり、またランセット形状に形成している。さらに、鈍針の代わりにガイドワイヤを適用し、このガイドワイヤの外径は0.453mmとなっている。また、ガイドワイヤの内針からの突出長さは、第1~第3サンプルの各鈍針の突出長さよりも充分に長い。また、カテーテル12の外径は16Gとなっている。
そして第1実験として、図19に示すように、各サンプルの内針14(代表的に第1実施形態の符号を付す。以下同じ)を、刃面が下方向に向くようにし、針固定治具200により内針14を固定した。固定状態では、針固定治具200の先端が刃面の基端に一致するように配置した。そして、内針14から各サンプルの部材(第1サンプルの鈍針16、第2サンプルの鈍針100、第3サンプルの鈍針、第4サンプルのガイドワイヤ、第5サンプルのガイドワイヤ)を突出させた。さらに、各サンプルの部材の突出部分を、押込部材202により押し込む。この押込部材202は、内針14(針先15)の先端から2mm離れた位置で、各サンプルの部材を一定速度で押し込むように構成されており、押込力を図示しないセンサにより測定可能な構成となっている。そして、押込強度を、所定の押込量当たりの押込力で算出した。
第1~第5サンプルの押込強度を図18に示す。第1実験結果から分かるように、第1及び第2サンプルは、他の第3~第5サンプルに比べて押込強度が高い値となった。特に、第2サンプルは、硬質部101及び柔軟部102を有する鈍針100であるが、内針14からの突出状態で硬質部101が突出することで、第1サンプルと同じ押込強度が得られた。
また第2実験として、図20Aに示すように、内針14からカテーテル12及び各サンプルの部材を突出させた状態として、カテーテル12の先端から1cmの位置におもり210を取り付けた。そして、内針14の刃面を鉛直下方向に向けた状態で、内針14の針先15が水平になるように姿勢を調整しながらカテーテル12を前後に進退させた。そして、カテーテル12が支障なく動いた場合には、おもり210を3g以内で増加させ、以下同様の実験を繰り返した。その一方で、カテーテル12が動かなくなった場合は、そのサンプルの実験を終了した。カテーテル12が動かなくなった場合とは、カテーテル12に内針14又は鈍針16が刺さった状態と見なすことができる。
カテーテル12が動かなくなったときのおもり210の重さを図18に示す。第2実験結果から分かるように、第1サンプルでは40.77g、第2サンプルでは84.42gで動かなくなったのに対し、第3サンプルでは13.17g、第4サンプルでは10.38g、第5サンプルでは17.50gで動かなくなった。従って、第1及び第2サンプルは、他のサンプルに比べてカテーテル12に内針14が刺さることを大幅に抑制することができると言える。つまり、鈍針16、100は、鈍針16、100及びカテーテル12を内針14から突出させてカテーテル12の先端に30gのおもり210を取り付けた状態で、針先15を水平にしつつ内針14の刃面を鉛直下方向に向けてカテーテル12を進退させても、内針14によりカテーテル12を貫通させない。
なお、第1サンプルの部材(鈍針16)は、おもり210が40.77gの際に、鈍針16がカテーテル12に当たった抵抗により、カテーテル12が動かなくなった(図20A参照)。これに対し、第2サンプルの部材(鈍針100)は、図20Bに示すように、柔軟部102がカテーテル12に応じて曲がることで、鈍針100がカテーテル12に刺さらずに、内針14がカテーテル12に刺さるまでカテーテル12を支えることができた。その結果、第2サンプルのおもり210の重さが84.42gと高くなったと考えられる。