JP6997299B2 - メタハロイサイト粉末およびその製造方法 - Google Patents
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Description
すなわち、本発明者は、以下の構成により上記課題が解決できることを見出した。
(2) 元素状炭素で覆われたメタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であるメタハロイサイト粉末、
または、チューブ状のメタハロイサイトであるメタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であって、上記メタハロイサイトが元素状炭素を含むことを特徴とするメタハロイサイト粉末。
(3) 上記顆粒が、上記メタハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する第1の細孔と、上記第1の細孔とは異なる第2の細孔とを有する、上記(2)に記載のメタハロイサイト粉末。
(4) 窒素吸着法によるBET比表面積に対する水蒸気吸着法によるBET比表面積の割合(水蒸気吸着法によるBET比表面積/窒素吸着法によるBET比表面積)が0.55以下である、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)もしくは(3)に記載のメタハロイサイト粉末。
(5) 燃焼法による炭素量が、0.1質量%以上である、上記(1に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(4)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(6) 窒素吸着等温線からBJH法により求めた微分細孔分布が、10~100nmの範囲内に、2つ以上の細孔径ピークを示す、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(5)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(7) 平均粒径が、0.5~200μmである、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(6)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(8) 窒素吸着法によるBET比表面積が、10m2/g以上である、である、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(7)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(9) 平均細孔径が、11.0nm以上である、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(8)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(10) 全細孔面積が、12.0m2/g以上である、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(9)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(11) 全細孔容積が、0.10cm3/g以上である、上記(1)に記載のメタハロイサイトまたは上記(2)~(10)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末。
(12) 上記(2)~(11)のいずれかに記載のメタハロイサイト粉末を製造する方法であって、
ハロイサイトナノチューブまたはメタハロイサイトナノチューブと有機炭素とを含有するスラリーを準備する工程と、
上記スラリーから粉末を調製する工程と、
上記調製された粉末を不活性雰囲気下において500℃以上の焼成温度で焼成する工程と、を備えるメタハロイサイト粉末の製造方法。
(13) 上記スラリーから粉末を調製する工程が、上記スラリーをスプレードライする工程である、上記(12)に記載のメタハロイサイト粉末の製造方法。
なお、本明細書において「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値および上限値として含む範囲を意味する。
ハロイサイトとは、Al2Si2O5(OH)4・2H2O、または、Al2Si2O5(OH)4で表される粘土鉱物である。
ハロイサイトは、チューブ状(中空管状)、球状、角ばった団塊状、板状、シート状など多様な形状を示す。
チューブ状(中空管状)のハロイサイトであるハロイサイトナノチューブの内径(チューブ孔の径)は、例えば、10~20nm程度である。ハロイサイトナノチューブは、外表面は主にケイ酸塩SiO2からなり、内表面は主にアルミナAl2O3からなる。
「メタハロイサイト」は、Al2Si2O5(OH)4で表されるハロイサイトのOHが脱水し、低結晶質の状態になったものであり、ハロイサイトの変種を表す用語として、従来、一般的または慣用的に用いられている。
しかし、特定焼成温度の範囲内で焼成した場合には、ハロイサイトを表すピークが消失している一方で、2θ=20°付近にブロードなピークを認めることができる。このようなXRDパターンは、メタハロイサイトの存在を示していると言える。
この時、大気と窒素の焼成雰囲気によるメタハロイサイトの生成温度域の違いは図23と24から認められない。
なお、900℃で焼成した場合には、γ-Al2O3を表すピークが出現する。
そのほか、他の方法や装置を用いて、メタハロイサイトの特徴を特定する指標を見出すには、著しく多くの試行錯誤を重ねることが必要であり、およそ実際的ではない。
本発明のメタハロイサイトは、元素状炭素で覆われた(表面の少なくとも一部が元素状炭素で覆われた)メタハロイサイト、または、元素状炭素を含むメタハロイサイトである。
また、本発明のメタハロイサイト粉末は、元素状炭素で覆われた(表面の少なくとも一部が元素状炭素で覆われた)メタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であるメタハロイサイト粉末、または、チューブ状のメタハロイサイトであるメタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であって、上記メタハロイサイトが元素状炭素を含むことを特徴とするメタハロイサイト粉末(以下、単に「本発明の粉末」とも言う)である。
本願における炭素は、その製法と黒色であることから、基本的に炭素原子のみを含む元素状炭素と解するのは、ごく当然なことである。
元素状炭素で覆われた、または、元素状炭素を含むメタハロイサイトナノチューブは以下のように作製することができる。
有機炭素(例えば、ポリカルボン酸型界面活性剤(カルボキシ基を有する界面活性剤))を含むハロイサイト、又は、メタハロイサイトを窒素の不活性雰囲気下の特定焼成温度で焼成することにより黒色の粉末が得られる。これは、ポリカルボン酸型界面活性剤(有機炭素)が炭化した元素状炭素が、メタハロイサイトの表面に覆われることによるものと思われる。この炭化は、脱水とカルボン酸の分解を経て、炭化物として元素状炭素が形成されたものである。
用いられる有機炭素は、上記ポリカルボン酸型界面活性剤以外の有機系界面活性剤やその他の多種多様な高分子化合物などが元素状炭素の原料として挙げられる。有機炭素は一種類を単独使用することに限定することなく、複数併用することも可能である。
不活性雰囲気は窒素のほかには、アルゴンなどが挙げられる。
特定焼成温度は有機炭素の種類により適宜選択されるが、概ね500℃以上の範囲である。
有機炭素の種類や配合量が、生成する元素状炭素量に相当し、メタハロイサイトを覆う割合や厚さ、物性などが変化するが、目的や用途、コスト等を満足する範囲で適宜選択される。
過剰の有機炭素があった場合や有機炭素の種類などによっては、メタハロイサイトを覆わないフリーな元素状炭素の量が増すこともあるが、本発明の範囲とする。
平均粒径4.3μmにスプレードライヤで調製された未焼成の顆粒を大気中で焼成した比較例2~6は、その粉末の極微量を、そっと水面にふりかけた時に、直ちに水中に沈降したのに対し、窒素雰囲気で焼成した実施例1~5は水面に浮くことが観察された。
また、空気雰囲気焼成と窒素雰囲気焼成の窒素吸着法によるBET比表面積は同等でありながら、水蒸気吸着のBET比表面積は10m2/gほど小さい。
具体的には、窒素吸着法によるBET比表面積が、比較例4(空気雰囲気焼成)=76.5m2/gに対し、実施例3(窒素雰囲気焼成)=71.4m2/gと同等で、一方、水蒸気吸着法によるBET比表面積は、比較例4(空気雰囲気焼成)=49.3m2/gに対し、実施例3(窒素雰囲気焼成)=37.1m2/gの差が認められる。
同様に、窒素吸着法によるBET比表面積が、比較例9(空気雰囲気焼成)=79.1m2/gに対し、実施例7(窒素雰囲気焼成)=73.6m2/gと同等で、水蒸気吸着法によるBET比表面積は、比較例9(空気雰囲気焼成)=45.9m2/gに対し、実施例7(窒素雰囲気焼成)=36.1m2/gの差がある。
以上のように本発明のメタハロイサイトまたは本発明の粉末の疎水性が高まったことは、元素状炭素の性質が表面に付与されたことによるものと推測される。
本発明の粉末は、このような顆粒を含まない粉末(例えば、単なる元素状炭素で覆われたメタハロイサイトの粉末)と比べて、流動性が良いので、輸送、供給、包装などの自動化、定量化が容易になる;かさ密度が高いため、輸送、貯蔵、包装などの点でコンパクト化できる;微粉が飛散して周辺の環境を汚染する発塵が抑制され、とりわけ、ナノサイズ粒子の人体への安全性への懸念を軽減できる;粒子の形状や大きさなどの違いによる容器内での偏り、すなわち偏析が起こりにくく、また、容器、機壁、包装材などへの付着が減る;触媒や吸着剤などとして、気体や液体と接触させて利用する場合、流体抵抗を減少でき、また、分離・回収や、乾燥・再生がしやすい;等の効果を有する。
本発明の粉末における顆粒は、顆粒を構成する一次粒子でもある元素状炭素で覆われたメタハロイサイトナノチューブの機能を阻害せずに、上記効果を有する。
図23は比較例1~6の粉末のXRDパターンを示すグラフであり(焼成雰囲気が空気の粉末のXRDパターンであり、下から焼成温度が400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃のXRDパターン)、図24は比較例7並びに実施例1~5の粉末のXRDパターンを示すグラフである(焼成雰囲気が窒素の粉末のXRDパターンであり、下から焼成温度が400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃のXRDパターン)。
図23および24に示すように、比較例1(焼成雰囲気:空気、焼成温度:400℃)および比較例7(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:400℃)のXRDパターンにおいては、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4)を表すピークが確認される。
これに対して、図23および24に示すように、比較例2~5(焼成雰囲気:空気、焼成温度:500~800℃)および実施例1~4(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:800℃)のXRDパターンにおいては、ハロイサイトを表すピークが消失し、γ-Al2O3を表すピークは出現していない。一方で、2θ=20°付近にブロードなピークを認めることができる。また、図23および24に示すように、比較例6(焼成雰囲気:空気、焼成温度:900℃)およびの実施例5(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:900℃)XRDパターンにおいては、γ-Al2O3を表すピークが確認され、更に、ブロードなピークも確認される。このようなXRDパターンは、メタハロイサイトの存在を示している。
・使用装置:X線回折分析装置D8ADVANCE(BRUKER社製)
・X線管球:CuKα
・光学系:集中法
・管電圧:35kV
・管電流:40mA
・検出器:一次元半導体検出器
・スキャン範囲:2~70deg
・スキャンステップ:0.021deg
・スキャンスピード:4deg/min
本発明の粉末において、本発明の顆粒が、メタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒であること、および、メタハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する孔(第1の細孔)を有することは、例えば、本発明の粉末の走査型電子顕微鏡(SEM)写真により確認できる。
更に、図9および図10(特に、図10)においては、顆粒表面に、メタハロイサイトナノチューブのチューブ孔(に由来する第1の細孔)の存在も確認できる。
なお、本発明の顆粒が、第1の細孔とは異なる第2の細孔を有することは、例えば、顆粒断面のSEM写真(図示せず)によっても確認できる。顆粒の断面は、例えば、顆粒を集束イオンビーム(FIB)で加工することにより露出させる。
本発明の粉末において、本発明の顆粒が上記特有の構造を有することは、本発明の粉末を細孔分布測定した結果からも、確認することができる。
本発明の粉末は、本発明の効果がより優れる理由から、窒素吸着等温線からBJH法により求めた微分細孔分布(Log微分細孔容積分布)が、2つ以上の細孔径ピークを示すことが好ましい。
このとき、2つ以上の細孔径ピークが現れる範囲は、10~100nmが好ましく、10~70nmがより好ましく、10~50nmが更に好ましく、10~40nmが特に好ましい。
以下、より詳細に説明する。
実施例3の粉末においては、顆粒に第2の細孔が形成されているが、その細孔径が大きく2種類に分かれているものと解される。調製に用いるスラリーの粘度や粒子の分散性などが、第2の細孔に影響を与えると推測される。
本発明の粉末は、本発明の効果がより優れる理由から、図20に示すように、10~100nmの範囲内に2つ以上の細孔径ピークを示すことが好ましい。
第1の細孔に対応する細孔径ピークが現れる範囲は、10nm以上20nm以下が好ましい。一方、第2の細孔に対応する細孔径ピークが現れる範囲は、20nm超100nm以下が好ましく、20nm超70nm以下がより好ましく、20nm超50nm以下が更に好ましく、20nm超40nm以下が特に好ましい。
まず、粉末に前処理(120℃で、8時間の真空脱気)を施した後に、定容法を用いて、下記条件で、窒素による吸脱着等温線を測定する。平衡待ち時間は、吸着平衡状態に達してからの待ち時間である。
BET比表面積[m2/g]は、窒素吸着等温線からBET法を適用することにより求める。
平均細孔径[nm]は、BET比表面積および全細孔容積[cm3/g]の値から算出する。平均細孔径の算出に用いる全細孔容積(便宜的に「算出用全細孔容積」ともいう)は、吸着等温線の相対圧0.99までに存在する細孔で毛管凝縮が成立していると仮定し、吸着等温線の相対圧0.99の吸着量から求める。
更に、窒素吸着等温線からFHH基準曲線を用いてBJH法を適用することにより、Log微分細孔容積分布、全細孔容積[cm3/g]および全細孔面積[m2/g]を求める。約2.6nmから約200nmの細孔のプロット間隔は、解析ソフトウェアの標準条件を使用する。BJH法により求める全細孔容積および全細孔面積を、それぞれ、「BJH全細孔容積」および「BJH全細孔面積」ともいう。
本発明において、単に「全細孔容積」および「全細孔面積」という場合は、特に断りのない限り、それぞれ、「BJH全細孔容積」および「BJH全細孔面積」を意味するものとする。
・吸着温度:77K
・窒素の断面積:0.162nm2
・飽和蒸気圧:実測
・平衡待ち時間:500sec
・前処理装置:BELPREP-vacII(マイクロトラック・ベル社製)
・測定装置:BELSORP-mini(マイクロトラック・ベル社製)
・解析ソフトフェア:BELMaster Version 6.4.0.0(マイクロトラック・ベル社製)
本発明のメタハロイサイトおよび本発明の粉末の水蒸気吸着法によるBET比表面積は、例えば、10~200m2/gであり、本発明の効果がより優れる理由から、20~100m2/gが好ましい。
なお、水蒸気吸着法によるBET比表面積は、下記条件で測定したものとする。
・装置:BELSORP 18 PLUS-T(日本BEL社製)
・測定原理:定容法
・吸着温度:298K
・吸着ガス:水蒸気
本発明のメタハロイサイトおよび本発明の粉末において、上述した窒素吸着法によるBET比表面積に対する上述した水蒸気吸着法によるBET比表面積の割合(以下、「BET比」とも言う)は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、0.55以下である。BET比の下限は特に制限されないが、通常0.1以上である。
BET比は表面の親疎水性と相関し、BET比が小さいほど表面の疎水性が高い。
本発明のメタハロイサイトおよび本発明粉末の平均粒径は、特に限定されず、用途に応じて適宜選択されるが、例えば、0.5~200μmである。本発明の粉末がスプレードライによって調製される場合、平均粒径は1~100μmが好ましい。
このような粒径の顆粒は、上述したように造粒してサイズを大きくしてもよい。ただし、その場合、平均粒径は5mm以下が好ましい。
なお、有害性への懸念から呼吸器に侵入するサイズを考慮すると、顆粒の最小サイズは1μm以上であることが好ましい。
本発明のメタハロイサイトおよび本発明の粉末において、燃焼法による炭素量(以下、「燃焼法C量」とも言う)は、通常、0.1質量%以上である。燃焼法C量は主に上述した元素状炭素に由来する。燃焼法C量は、本発明の効果がより優れる理由から、0.2質量%以上であることが好ましく、0.3質量%以上であることがより好ましく、0.4質量%以上であることがさらに好ましく、0.5質量%以上であることが特に好ましい。上限は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、5.0質量%以下であることが好ましい。
ここでの炭素量は、有機炭素(有機物に含まれる炭素)と炭酸塩炭素(炭酸イオンに含まれる炭素)と元素状炭素の合計値になるが、本願における実施例の黒色の粉末では、その大半は元素状炭素の量として見積もれる。
なお、この測定に供した粉末は110℃、12時間以上の乾燥を施して、物理吸着水を除去した後に、炭素量の測定を行ったものである。
本発明のメタハロイサイトおよび粉末は、多種多様な用途に展開できる。
用途の例として、化粧品、色材、精密ポリシングナノ粒子、ナノ磁性材、触媒、触媒担体、調湿材、消臭材、脱臭材、吸着剤、徐放剤、抗菌剤、医薬品、および、人工酵素などが挙げられる。これらの用途には限定されない。
また、本発明の粉末がメタハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する細孔を有する場合、チューブ孔に由来する細孔を有さない粉末と比較して、調湿特性などの特性に優れる。
本発明の粉末は、軽量、断熱、吸音、環境浄化などの特性を付与する充填剤、コーティング材等としても好適である。
また、本発明のメタハロイサイトおよび粉末は、これらの用途に単独で用いられる以外にも、機能性を向上させる目的で、100nm以下のサイズのイオン、分子、高分子、ナノ粒子などの1種以上を包含させたハイブリット体としても適用できる。例えば、薬剤などの有効成分を包含させたハイブリッド体として利用した場合には、その有効成分が均一に作用し、効能を長く維持できる効果が期待できる。
特に、本発明のメタハロイサイトおよび粉末は表面の元素状炭素が作用することで、親油性の性質が付与されるため、元素状炭素が関与しない親水性無機物のメタハロイサイトを上回る性能が発現する用途が期待できるものである。その例には、有機物の吸着能が優れることを利用した消臭剤、脱臭剤、吸着剤など、また、有機物との濡れ性や分散性が向上したことによる、化粧品、色材、徐放剤などへの利用が挙げられる。
具体的には、例えば、本発明の粉末は、耐水性に優れる場合には、水中でウイルス等をトラップする水質浄化フィルタとして好適である。
このような用途以外に、最終製品へ加工される過程で水と接触することがあっても、本発明の粉末は、耐水性に優れる場合には、顆粒構造を維持し、その機能を発現する。
本発明の粉末を製造する方法は特に制限されないが、本発明の効果がより優れる理由から、少なくとも、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイト及び(元素状炭素にするための)界面活性剤などの有機炭素を含有するスラリーを準備する工程(スラリー準備工程)と、上記スラリーから粉末を調製する工程(粉末調製工程)と、上記調製された粉末を窒素雰囲気下において500℃以上の焼成温度で焼成する工程(焼成工程)と、を備える方法(以下、「本発明の製造方法」とも言う)であるのが好ましい。
以下、本発明の製造方法の好適態様について、説明する。
スラリー準備工程は、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイト及び有機炭素が水などの分散媒に分散したスラリーを準備できる工程であれば、特に限定されないが、以下に、スラリー準備工程の好適態様を説明する。以下に説明する態様においては、遠心分離後に回収される分散相が、スラリー準備工程で調製されるスラリーに相当する。
JFEミネラル社の飯豊鉱業所の遅谷工場(山形県西置賜郡飯豊町大字遅谷)においては、珪砂および粘土の鉱床から珪砂が生産されているが、その精製過程で副生する粘土分(以下、便宜的に「飯豊粘土」と呼ぶ)を、原料として用いることができる。
飯豊粘土は、含水率が40質量%程度で可塑性を有する粘土であり、主成分として、ハロイサイトおよびSiO2で表される微砂(石英)を含有する。飯豊粘土は、更に、少量のカチオン系高分子凝集剤を含む場合もある。
飯豊粘土は、含水しているものをそのまま(40質量%程度の水を含んだまま)使用してもよいし、天日によって自然に乾燥(半乾きを含む)したものを使用してもよい。含水している、または、半乾きの飯豊粘土を、設備を使用して乾燥してもよい。
乾燥した飯豊粘土は、粉砕し、更に必要に応じて、乾式精製、分級、磁選、色彩選別などを施してから使用してもよい。
なお、ハロイサイト分の多い飯豊粘土を原料に用いるほかにも、その原鉱を使用できることは言うまでもない。
次に、飯豊粘土が水に分散したスラリー(前スラリー)を得る。飯豊粘土を水に分散させる方法は、特に限定されず、例えば、高速ミキサー、ディスパー、ビーズミルおよびホモミキサーなどの従来公知の装置を使用できる。
前スラリーの固形分濃度は、特に限定されず、例えば、5~20質量%である。
次に、前スラリーを、例えば篩に掛けることにより、粗粒を除去する。使用する篩の目開きとしては、例えば、25~100μmが挙げられる。篩としては、例えば、JIS試験用ふるいが使用できるが、量産時には、一般的な大型の湿式篩い分け装置を使用できる。篩を用いるほかには、沈降分離させたり、湿式サイクロン用いたりして、粗粒を除去してもよい。
次に、粗粒が除去された前スラリーを、フィルタを用いて吸引ろ過し、脱水ケーキとして回収する。量産時には、例えば、フィルタプレスまたはオリバーフィルタなどの脱水機を使用できる。
このろ過を省略し、粗粒が除去されたスラリーをそのまま後述する後スラリーとして使用することもできる。このとき、必要があれば分散剤を添加してもよい。
脱水ケーキに水を加えて高速撹拌することにより、粗粒が除去された飯豊粘土が水に分散したスラリー(後スラリー)を得る。分散機としては、前スラリー化と同様に、例えば、高速ミキサー、ディスパー、ビーズミルおよびホモミキサーなどの従来公知の装置を使用できる。
後スラリーの固形分濃度は、特に限定されず、例えば、5~30質量%である。
界面活性剤としては、本発明の効果がより優れる理由から、アニオン性界面活性剤を用いることが好ましく、なかでも、少ない使用量で安定なスラリーが得られるという理由から、高分子型のアニオン性界面活性剤(アニオン性高分子界面活性剤)を用いることがより好ましい。
目的用途によってはナトリウムおよびカリウムなどの金属イオンを含んでいない、カオーセラ2000、2020または2110(同)なども使用できる。
界面活性剤の含有量が少なすぎると、後スラリー中でのハロイサイトと微砂の粒子の分散が不十分になる場合がある。一方、界面活性剤が多すぎると、凝集状態を起こしたり、コストが増加したりする場合がある。更に、後工程における不具合(遠心分離での分散相の回収率の低下、スプレードライでの乾燥不十分、または、焼成における固結もしくは焼失不十分など)が発生しやすくなる場合がある。
得られた後スラリーについて、遠心分離を行ない、下層の沈降相と、上相の分散相とに分離する。沈降相には微砂が多く含まれ、分散相にはハロイサイトが多く含まれる。分散相(スラリー)の固形分濃度は、例えば、2~10質量%である。
遠心分離に際しての遠心力および処理時間は、一例として、それぞれ、2000~3000Gおよび3~30分間であるが、これに限定されず、分散状態、用途、コストなどを考慮して、適宜設定される。
量産には大型の遠心分離機を使用できる。
遠心分離後、ポンプ等を用いて吸引することにより、分散相を回収できる。分散相の回収にはスキミングノズルを用いてもよい。こうして、ハロイサイトおよび微砂を含む飯豊粘土から、ハロイサイトを精製分離することができる。回収した分散相が、ハロイサイトナノチューブを含むことは、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)写真により確認できる(図1および図2を参照)。
スラリー準備工程は、上記態様に限定されない。例えば、飯豊粘土以外の原料を使用した場合には、後スラリーの固形分濃度、後スラリーにおける界面活性剤の含有量、および、遠心分離の条件などは、適宜変更される。
工程の短縮(例えば、前スラリー化、篩、および/または、ろ過の省略)または追加なども適宜変更される。
例えば、市販品としてSIGMA-ALDRICH社製などのハロイサイト(ハロイサイトナノチューブ)を、従来公知の装置を使用して、水に分散させたものを、本工程で準備されるスラリーとしてもよい。市販品のハロイサイトナノチューブは、必要に応じて、乾式精製、分級、磁選、色彩選別などを施してから使用してもよい。
また、メタハロイサイト(メタハロイサイトナノチューブ)を使用することもできる。
また、元素状炭素の量を増やすためには、スラリーに更に界面活性剤を添加することや、界面活性剤以外の有機炭素を添加することもできる。
粉末調製工程は、スラリー準備工程において調製されたスラリーから粉末を調製する工程である。
粉末調製工程では、ハロイサイトナノチューブを含むスラリーがスプレードライ等されることにより、ハロイサイトナノチューブがそのチューブ形状を維持したまま凝集し、上述した第1の細孔を有する顆粒構造が得られる。また、スプレードライ等によってスラリーが顆粒となる際に、スラリーの分散媒が顆粒(の内部)から蒸発して、上述した第2の細孔が得られる。なお、粉末調製工程で得られる粉末にはスラリー中の界面活性剤等の有機炭素が残存している。
粉末調製工程において得られた粉末は、更に、転動、撹拌、押出し等の処理を施すことによって、造粒してもよい。これにより、粉末を構成する顆粒のサイズを大きくできる。
粉末調製工程としては、例えば、スラリー準備工程において調製されたスラリー(例えば、上述した遠心分離により得られた分散相)をスプレードライすることにより粉末を得る工程が挙げられる。
スプレードライヤにおいては、液体原料を噴霧(微粒化)して得られる液滴のサイズを変更することにより、乾燥して得られる粉末粒子(顆粒)の粒径も制御される。
スプレードライヤを用いて液体原料を微粒化する方式としては、特に限定されず、所望する液滴のサイズに応じて、例えば、二流体ノズル方式、圧力ノズル(加圧ノズル)方式、四流体ノズル方式(ツインジェットノズル方式)、または、回転ディスク方式などの従来公知の方式を、適宜選択できる。乾燥して得られる粉末粒子(顆粒)の粒径は、スラリーの濃度および/または処理量などによっても変化するので、目的の粒径を得るためには、微粒化方式に加え、スラリーの状態を適宜選択することになる。
熱風と噴霧液滴との接触方式についても、例えば、熱風と噴霧液滴とがともに下方向に向かう一般的な並流型;噴霧液滴が下方向に対して熱風が上方向の向流となる向流型;上方に噴霧液滴が向かい、下方に熱風が向かう並向流型;などが適宜選択される。
上記スラリーから粉末を調製する手段としては、上述したスプレードライに限定されず、例えば、媒体流動乾燥(ボール入り流動層乾燥)であってもよい。
すなわち、粉末調製工程は、スラリー準備工程において調製されたスラリーを媒体流動乾燥することにより粉末を得る工程であってもよい。
媒体流動乾燥は、概略的には、例えば、まず、被乾燥物であるスラリーを、流動中の1~3mmφのセラミックボール層に連続的に供給することにより、ボール表面に付着させる。被乾燥物は、加熱されたボールからの熱伝導と流動化熱風からの対流伝熱とによって瞬時に乾燥され、ボールどうしの衝突によりボール表面から剥離する。こうして粉末が得られる。
本発明の製造方法は、粉末調製工程において得られた粉末を窒素雰囲気下において500℃以上の焼成温度で焼成する工程(焼成工程)を備える。このような焼成温度で焼成することにより、顆粒を構成するハロイサイトがメタハロイサイトとなる。また、このような焼成温度で焼成することにより、焼成前の顆粒構造が維持される。さらには、窒素雰囲気下のおいてこのような焼成温度で焼成することにより、粉末調製工程で得られた粉末中の界面活性剤等の有機炭素が炭化して元素状炭素となる。このようにして、上述した本発明の粉末が得られる。
焼成時間は、特に限定されず、例えば、0.5~2時間であり、0.75~1.5時間が好ましい。
例えば、上述した本発明の製造方法において、焼成工程を窒素雰囲気下の代わりに大気雰囲気下において行った場合には、粉末調製工程で得られた粉末中の界面活性剤等の有機炭素は除去されたメタハロイサイト粉末(元素状炭素を含まない粉末)が得られる。得られた粉末を、有機炭素を含有する溶液に浸漬してから、上述した本発明の製造方法と同様に窒素雰囲気下において焼成すると、上記有機物が炭化して元素状炭素となり、上述した本発明の粉末が得られる。
また、一度本発明の粉末を得た後に再度、上記浸漬と焼成を繰り返す操作を加えることや、スラリーを再度調製して、スプレードライなどの操作を繰り返すことで元素状炭素量の割合や物性などをコントロールすることも可能である。
以下のようにして、実施例1~8および比較例1~10の粉末を調製した。
上述した飯豊粘土を、原料として用いた。飯豊粘土のXRD測定を行なったところ、ハロイサイトおよび微砂(石英)を表すピーク(図示せず)が確認された。
高速ミキサー(日本精機製作所社製、ウルトラホモミキサーUHM-20(20リットル))に、飯豊粘土および水を投入し、10分間、8,000rpmの処理を行なうことにより、飯豊粘土が水に分散した前スラリー(固形分濃度:10質量%)を得た。
前スラリーを、目開き45μmのJIS試験用ふるいを全通させることにより、網上+45μmの粗粒(約30%)を除去した。このとき、目詰まりを防ぎ、網下-45μmの回収を高めるために、適宜、篩上には水を加え、はけで篩上を落とす操作を行なった。目開き25μmまたは100μmの篩を使用しても、最終的な品質は同様であった。
網下-45μmの前スラリーを、フィルタを用いて、吸引ろ過し、脱水ケーキとして回収した。
高速ミキサー(日本精機製作所社製、ウルトラホモミキサーUHM-20)に、脱水ケーキおよび水を加え、アニオン性高分子界面活性剤(花王社製、ポイズ520)を添加し、10分間、10,000rpmの処理を行なうことにより、飯豊粘土が水に分散した後スラリー(固形分濃度:20質量%)を得た。後スラリーの全固形分に対するアニオン性高分子界面活性剤の含有量は、1.5質量%とした。
後スラリーを攪拌し、攪拌状態の後スラリーからチューブ1本当たり80mLを採取し、遠心機(コクサン社製、小型卓上遠心機H-19α、ロータ:RF-109L、バケット:MF-109L、チューブ:100mL×4本、PP製、外径45mm、内径40mm、高さ:100mm)にセットした。
2470Gの遠心力で、10分間の遠心操作を行ない、沈降相と分散相とに分離した。
沈降相から高さ+5mm以上の部分を、ポンプで吸引することにより、分散相を回収した。回収した分散相(スラリー)の固形分濃度は、下記表1に示すように、4.7~6.7質量%であった。
図1および図2は、実施例1において遠心分離後に回収された分散相のTEM写真である。図1と図2とは互いに視野が異なる。図1および図2に示すように、回収した分散相においては、ハロイサイトナノチューブの存在を確認できた。より詳細には、図1には長尺のハロイサイトナノチューブが、図2にはハロイサイトナノチューブの側面(断面)が視認される。TEM写真には示さないが、チューブ状以外の形状(例えば、シート状など)のハロイサイトも確認された。
回収した分散相(スラリー)を、スプレードライヤを用いてスプレードライすることにより、粉末(ハロイサイト粉末)を得た。
スプレードライヤとしては、大川原化工機社製のスプレードライヤL-8iを用い、スラリーをポンプで定量供給して、スラリーの微粒化(噴霧)を行なった。熱風と噴霧液滴との接触方式については、熱風と噴霧液滴とがともに下方向に向かう並流型で行なった。
スプレードライ条件(スラリーの固形分濃度、微粒化方式、水分蒸発量[kg/h]、入口温度[℃]および出口温度[℃])、微粒化方式として四流体ノズル方式(ツインジェットノズル方式)を採用した場合の噴霧エア圧力[MPa]、および、微粒化方式として回転ディスク方式を採用した場合の回転ディスクの回転数[rpm]は下記表1に記載のとおりである。
スプレードライ後の粉末に焼成を施した。
具体的には、シリコニット発熱体の電気炉を用いて、スプレードライ後の粉末を、上記表1に示す焼成雰囲気(空気雰囲気、窒素雰囲気)下において、室温から5℃/分の昇温速度で昇温し、上記表1に示す焼成温度で1時間保持し、その後、炉冷した。炉内には一定量の空気または窒素を供給しつつ、排気を行なった。
実施例1~8および比較例1~10の粉末を、次のように評価した。
なお、実施例1~8の粉末は、上述した本発明の粉末であった。一方、比較例2~6および8~10の粉末は、メタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含むが、元素状炭素を含まず、上述した本発明の粉末ではなかった。また、比較例1の粉末は、ハロイサイトナノチューブを含むハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であり、元素状炭素を含むものでもなく、上述した本発明の粉末ではなかった。
実施例1~8および比較例1~10の粉末の外観を評価したところ、実施例1~8の粉末は黒色であるのに対して、比較例1~10の粉末は褐色であった。このことから、実施例1~8の粉末には元素状炭素が生成しているのに対して、比較例1~10の粉末には元素状炭素が生成していないことが示唆された。
実施例1~5並びに比較例1~7の粉末について、XRD測定した。測定条件は、上述したとおりである。
図23は比較例1~6の粉末のXRDパターンを示すグラフであり(焼成雰囲気が空気の粉末のXRDパターンであり、下から焼成温度が400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃のXRDパターン)、図24は比較例7並びに実施例1~5の粉末のXRDパターンを示すグラフである(焼成雰囲気が窒素の粉末のXRDパターンであり、下から焼成温度が400℃、500℃、600℃、700℃、800℃、900℃のXRDパターン)。
図23および24に示すように、比較例1(焼成雰囲気:空気、焼成温度:400℃)および比較例7(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:400℃)のXRDパターンにおいては、ハロイサイト(Al2Si2O5(OH)4)を表すピークが確認された。
これに対して、図23および24に示すように、比較例2~5(焼成雰囲気:空気、焼成温度:500~800℃)および実施例1~4(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:800℃)のXRDパターンにおいては、ハロイサイトを表すピークが消失し、γ-Al2O3を表すピークは出現していなかった。一方で、2θ=20°付近にブロードなピークがあるXRDパターンの特徴を認めることができた。また、図23および24に示すように、比較例6(焼成雰囲気:空気、焼成温度:900℃)および実施例5(焼成雰囲気:窒素、焼成温度:900℃)のXRDパターンにおいては、γ-Al2O3を表すピークが確認され、更に、ブロードなピークも確認された。このようなXRDパターンは、メタハロイサイトの存在を示している。
なお、2θ=26°付近のピークは、石英を表すピークであり、原料に含まれていた石英が微量存在していることを示している。
また、図23(焼成雰囲気:空気)のXRDパターンと図24(焼成雰囲気:窒素)のXRDパターンとでは大きな差異はなく、焼成雰囲気が空気であっても窒素であってもハロイサイトやメタハロイサイトの生成に差異は無いことが示唆された。
実施例1~8および比較例1~10の粉末のSEM写真を撮影した。
図3~図6は、比較例4の粉末を示すSEM写真であり、図4は図3の拡大写真であり、図5は図4の拡大写真であり、図6は図5の拡大写真である。
図7~図10は、実施例3の粉末を示すSEM写真であり、図8は図7の拡大写真であり、図9は図8の拡大写真であり、図10は図9の拡大写真である。
図11~図14は、比較例9の粉末を示すSEM写真であり、図12は図11の拡大写真であり、図13は図12の拡大写真であり、図14は図13の拡大写真である。
図15~図18は、実施例7の粉末を示すSEM写真であり、図16は図15の拡大写真であり、図17は図16の拡大写真であり、図18は図17の拡大写真である。
図3~図18のSEM写真から、実施例3および7ならびに比較例4および9の粉末は、メタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含むこと、その顆粒にメタハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する孔(第1の細孔)が存在すること、および、その顆粒にメタハロイサイトナノチューブのチューブ孔よりも大径の孔(第2の細孔)が存在することが確認できた。
これは、他の実施例および比較例の粉末のSEM写真(図示せず)においても同様であった。
実施例1~8および比較例1~10の粉末について、窒素吸脱着等温線を測定した。測定条件は、上述したとおりである。
図19~図22は、それぞれ、窒素吸着等温線からBJH法により求めた、比較例4、実施例3、比較例9、および、実施例7の粉末の微分細孔分布を示すグラフである。各グラフにおいて、横軸は細孔径[nm]を表し、縦軸は微分細孔容積(dVp/dlogDp)[cm3/g]を表す。
いずれにおいても、10~100nmの範囲内に2つ以上の細孔径ピークが確認された。
これは、他の実施例および比較例の粉末の微分細孔分布を示すグラフ(図示せず)においても同様であった。
実施例3および7ならびに比較例4および9の粉末について、水蒸気吸脱着等温線を測定した。測定条件は、上述したとおりである。そして、BET比表面積(水蒸気吸着法によるBET比表面積)を求めた。結果を下記表2に示す。
上述のとおり求めた窒素吸着法によるBET比表面積および水蒸気吸着法によるBET比表面積から、窒素吸着法によるBET比表面積に対する水蒸気吸着法によるBET比表面積の割合(BET比)を求めた。結果を下記表2に示す。
一部の実施例および比較例の粉末について、粉末を構成する顆粒の平均粒径を測定した。測定方法は上述のとおりである。結果を下記表2に示す。
一部の実施例および比較例の粉末について、燃焼法による炭素量(燃焼法C量)を分析した。分析方法は上述のとおりである。結果を下記表2に示す。
Claims (11)
- 元素状炭素で覆われたメタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であるメタハロイサイト粉末、
または、チューブ状のメタハロイサイトであるメタハロイサイトナノチューブを含むメタハロイサイトが集合してなる顆粒を含む粉末であって、上記メタハロイサイトが元素状炭素を含むことを特徴とするメタハロイサイト粉末であって、
前記顆粒が、前記メタハロイサイトナノチューブのチューブ孔に由来する第1の細孔と、前記第1の細孔とは異なる第2の細孔とを有し、
窒素吸着等温線からBJH法により求めた微分細孔分布が、10nm以上の範囲内に、2つ以上の細孔径ピークを示す、メタハロイサイト粉末。 - 燃焼法による炭素量が、5.0質量%以下である、請求項1に記載のメタハロイサイト粉末。
- 窒素吸着法によるBET比表面積に対する水蒸気吸着法によるBET比表面積の割合(水蒸気吸着法によるBET比表面積/窒素吸着法によるBET比表面積)が0.55以下である、請求項1または2に記載のメタハロイサイト粉末。
- 燃焼法による炭素量が、0.1質量%以上である、請求項1~3のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 平均粒径が、0.5~200μmである、請求項1~4のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 窒素吸着法によるBET比表面積が、10m2/g以上である、請求項1~5のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 平均細孔径が、11.0nm以上である、請求項1~6のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 全細孔面積が、12.0m2/g以上である、請求項1~7のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 全細孔容積が、0.10cm3/g以上である、請求項1~8のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末。
- 請求項1~9のいずれか1項に記載のメタハロイサイト粉末を製造する方法であって、
ハロイサイトナノチューブまたはメタハロイサイトナノチューブと有機炭素とを含有するスラリーを準備する工程と、
前記スラリーから粉末を調製する工程と、
前記調製された粉末を不活性雰囲気下において500℃以上の焼成温度で焼成する工程と、を備えるメタハロイサイト粉末の製造方法。 - 前記スラリーから粉末を調製する工程が、前記スラリーをスプレードライする工程である、請求項10に記載のメタハロイサイト粉末の製造方法。
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