JP6996868B2 - 不織布 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、熱可塑性組成物から形成される不織布用繊維の記載がある。前記熱可塑性組成物は、繊維の強度と延性との良好なバランスをとる観点から、複数の個別の主要領域及び空隙が連続相内に分散された形態とされている。特許文献2には、防漏シート用のフィルムについて、透湿性及びガス透過性の観点から、延伸により微細孔を形成したものが記載されている。また、特許文献3には、より低密度な繊維とするために、約800ナノメートル以下の平均断面寸法を持つ複数のナノ細孔を連続相内に含むポリオレフィン繊維が記載されている。
吸収性物品の他にも、マスク、掃除用シート、髪のくせを直すシートなど、これらに付着したゴミが見えることは、使用者等にとって不快なものである。
このような汚れの付着しやすい物品においては、不快感などの精神的な負担をできるだけ軽減して、安心して使用でき、快適に新しい物品に取り換えられることが望まれる。
孔1は、長軸1Yと短軸1Xとを有する形状であり、短軸1Xの長さを100nm以上750nm以下の範囲内としている。長軸1Y及び短軸1Xの長さは、孔1の外形を楕円で近似して求められる長さである。
また、第2領域7とは、第1領域6の繊維よりも短軸1Xの長さが100nm以上750nm以下の孔1の数が少ない繊維、または、孔1を有さない繊維から構成されている領域を意味する。孔1の数が少ない繊維とする場合、第2領域7の繊維が有する孔1の数が、第1領域6の繊維の孔1の数の1/2以下であることが好ましい。
一方、第2領域7は、第1領域6の繊維よりも孔の数が相対的に少ない繊維、孔を有さない繊維のいずれか、又は両方で構成されている。そのため、第1領域6よりも光の屈折率差が大きくなる界面が少ない。これにより、第2領域7は、不織布下及び不織布内の汚れ等が不織布表面から見えやすくされ、汚れ等に対する視認性の高い領域(以下、以下、汚れ視認領域ともいう。)となっている。
このような汚れとしては、例えば次のようなものが挙げられる。すなわち、不織布10を吸収性物品の肌当接部である表面シートとした場合、不織布10自体に加え、不織布10の下方に配される部材(吸収体やセカンドシート等)に生じる、尿や経血によって着色される汚れである。また、不織布10をマスク、掃除用シート、髪のくせを直すシートなどに用いた場合、不織布10自体に生じる、付着したゴミなどによって着色される汚れである。
図1においては、第1領域6及び第2領域7が共に、不織布10の長手方向FY方向に延在し、不織布10の幅方向FXに沿って互いに隣接して交互に配置されている。なお、第1領域6及び第2領域7の配置はこの態様に限定されるものではなく、種々の形態をとり得る。例えば図5に示すように、汚れに対する視認性の高い第2領域7が、ドット(円)状にされて分散して配置され、その間に、汚れに対する遮蔽性の高い第1領域6が配置される態様でもよい。また、図5の態様において、第1領域6と第2領域7とを入れ換えた配置でもよい。さらに個々の第1領域6又は第7領域7の形状は、ドット状以外でもよく、例えば楕円状にされてもよい。また、ドット状や楕円状等にされた第1領域6又は第2領域7が、不織布10の平面方向に、千鳥状、格子状、六角形など規則的に配列されてもよい。
すなわち、前述した色味の差(コントラスト)によって、第1領域6の高い隠蔽性がより強く感じられる。また、第2領域7に関しても、隣接する第1領域6の存在によって錯視効果が得られて全体の色味が緩和される。これらによって、見る人が受ける不快感などの精神的負担が軽減され得る。しかも、第2領域7では、下方の色味の視覚的な印象を弱められながらも、その色味の存在から使用状態を確認することができる。例えば、不織布10を吸収性物品の表面シートとして用いた場合に、複数の第2領域7に亘って視認される着色(汚れ)部分の外縁から、排泄液(尿や経血など)の排泄量を確認できる。これによって、吸収性物品の漏れの無い安心の吸収力を実感できる。また、不織布10をマスク、掃除用シート、髪のくせを直すシートとして用いた場合に、複数の第2領域7に亘って広がる視認される着色(汚れ)部分の色味及び外縁から、ゴミ取りの程度を確認できる。
第1領域6を構成する繊維は、繊維径×繊維径の平方視野範囲内の孔1の数(L1)を5以上とし、10以上とすることがより好ましく、20以上とすることが更に好ましい。また、前記孔1の数(L1)は、繊維の強度を保持する観点から、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、3000以下が更に好ましい。
一方、第2領域7を構成する繊維は、繊維径×繊維径の平方視野範囲内の孔1(短軸1Xの長さが100nm以上750nm以下)の数(L2)を、第1領域6を構成する繊維の孔1の数に対して、1/2以下とすることが好ましく、1/10以下とすることがより好ましく、1/20以下とすることが更に好ましく、0(ゼロ)とすることが特に好ましい。
孔については、次の方法により観察し、測定できる。
(i)測定対象が吸収性物品の表面材等に用いられている繊維である場合、吸収性物品にコールドスプレーを吹きかけて接着剤を固化し、表面材等を吸収性物品から丁寧に剥がす。剥がした表面材を赤色標準板(日本電子)の上において、交互に隠蔽性の違いがある2領域を目視で確認する。次いで、ピンセットを用いて繊維を3本取り出す。このとき繊維を抜き出す場所は任意だが、エンボス等で融着してフィルム化している領域は除く。また、測定対象が吸収性物品などに複合化されていない繊維である場合や、不織布である場合も任意に3本の繊維をピンセットで取り出す。
(ii)1本の繊維を観察しやすい長さに切り、試料台にカーボンテープ等を用いてセットする。走査型電子顕微鏡で電荷のチャージを防ぐため表面を金やオスミウム等でコーティングする。
(iii)走査型電子顕微鏡(JCM-5100 商品名、日本電子株式会社製)を用いて、印加電圧2.0kV以上、50倍の低倍率で繊維を測定画面の中央部分に移動させる。
(iv)繊維表面の任意の場所で、繊維の中央部分(繊維径の端点と端点を結んだ線分の中心)にピントを合わせ、倍率を増加させる。このとき、観察する倍率は繊維径によるものとし、繊維中のある点において繊維径が画面内に入るように倍率を変える(繊維が細い径の場合は、倍率を増加して観察し、太径の繊維では倍率を低減して観察する。)。測定視野は、孔の数を確認する場合は、縦80μm×横120μm、孔の短軸長さを測定する場合は、縦9μm×横12μmとする。
(v)繊維表面の観察結果を写真撮影する。
(vi)写真を印刷し、写真の上に紙をのせて孔の外形をトレースする、あるいはImage Jなどの画像解析ソフトで画像を2値化して、孔の外形がわかるようにする。
(vii)孔の外形のある一点から孔の中心を通り、孔の外形のある一点までを結ぶ線分を引いたとき、一番長い線分の方向を長軸、それに直交して、孔の外形のある点から中心を通り孔のある点を通過する線分方向を短軸と呼ぶ。
(viii)短軸と長軸の長さは、写真の上に、JIS番号7516の金属製定規をあてて、それぞれの長さを測定する。また、短軸1Xの長さが100nm以上750nmの孔1の数を確認する。
なお、後述する孔の形成のための延伸加工を行う場合、繊維内部と繊維表面の両方に張力がかかり延伸されるため、繊維表面の孔を観察及び測定することによって、内部でも同様であると判断できる。
上記(孔1の存在の確認方法、並びに孔1の短軸1Xの長さ及び長軸の長さ1Yの測定方法)に示した(i)~(iv)処理を行う。観察視野は、繊維径が画面に入る視野、おおよそ画面の縦の長さに対し、繊維径が0.1倍~0.3倍となるような視野を選択する。次いで、
(v)繊維表面の観察結果を写真撮影し、繊維50本の平均値を繊維径とする。
(vi)3本の繊維につき、同様に観察して、繊維径とする。
すなわち、不織布10を平面視したとき、不織布10の面積に対する第1領域6の面積率(M1)は、汚れに対する隠蔽性の効果を見る人に明確に認識させる観点から、5%以上が好ましく、10%以上がより好ましく、20%以上が更に好ましい。また、前記面積率(M1)は、第1領域6と第2領域7との間における汚れ(着色)のコントラストの効果を見る人に明確に認識させ、見た目の安心感につなげる観点から、90%以下が好ましく、80%以下がより好ましく、70%以下が更に好ましい。
色のついた紙等の上に置き、隠蔽性の違う部分を領域1・2として、領域1を構成する交互に配されたパターンの形状や大きさ、ピッチ等を定規で測定して、面積率を算出する。
すなわち、第1領域6の目付(g/m2)の第2領域7の目付(g/m2)に対する比(N1)は、繊維同士の重なりにより光の散乱効果をより高める観点から、1/5以上が好ましく、2/9以上がより好ましく、1/4以上が更に好ましい。また、前記比(N1)は、開孔させるために十分な延伸倍率の観点から、1/3以下が好ましく、2/7以下がより好ましく、5/18以下が更に好ましい。
一般的に、不織布の状態で延伸すると、通常目付が低減する。そこで、目付の低減部分を補うべく、延伸前に繊維量を変えた不織布を用いることで、第1領域6の目付を増加させることができる。巻き取り後など、圧力がかかった後の状態でも、第1領域6が第2領域7に覆いかぶさることを防ぐ観点から、前記比は、2以下が好ましく、1以下が好ましく、1/3以下がさらに好ましい。
先ず、測定対象の不織布を、第1領域6及び第2領域7について、50mm×50mmの大きさに裁断し、これを各部位での測定サンプルとする。電子天秤(メーカー問わず)に、この測定サンプルを載置し、この状態での質量を測定し、その質量を面積で割ることにより、目付(g/m2)を求める。
50mm×50mmの大きさがない場合は、交互に配されたパターンに応じて、繰り返しの構成単位の部分の大きさに裁断して測定する。その場合、面積が小さすぎて誤差が大きくなると考えられるため、最大長さをとる、もしくは複数繰り返し領域をとって測定する。例えば、十分な長さを持ったストライプであれば、ストライプ幅×製品長さに裁断する、ドットであれば、ドット部分を複数切り取り、平均の目付を算出するなどする。
繊維が扁平な形状を有することにより、第1領域6における繊維同士の重なる体積が増加する。これにより、第1領域6の目付が同じであっても、繊維が扁平な形状を有する場合は、繊維が円形断面を有する場合よりも光の散乱性が高まり、汚れに対する隠蔽性がより高くなる。
とりわけ、孔1の短軸1Xの長さ180nm以上415nm以下は、可視光の波長域360nm以上830nm以下の半分の大きさにあたる。この場合、Mie散乱となり、光の散乱効率が高いものとなって好ましい。
孔1のアスペクト比は、前述した(孔1の存在の確認方法、並びに孔1の短軸1Xの長さ及び長軸1Yの長さの測定方法)に基づいて、長軸の長さ/短軸の長さの比を算出する。
観察視野は、縦9μm×横12μmとし、繊維径と直行する方向に観察視野をずらして、任意の3ヶ所について測定して、平均値をアスペクト比とする。
すなわち、前記(孔1の存在の確認方法、並びに孔1の短軸1Xの長さ及び長軸1Yの長さの測定方法)の(i)~(iv)と同様の手順でサンプルを調整し、観察を行う。その際、観察視野は、繊維径が画面に入る視野、おおよそ画面の縦の長さに対し、繊維径が0.8倍~0.9倍となるような視野を選択する。次いで、(v)繊維表面の観察結果を写真撮影する。さらに、写真に定規を用いて、粒状物の径を測定し、その平均値を平均粒径とする。
不織布10が凹凸形状を有することによって、平坦である場合よりも散乱した光が互いに交差しやすくなり、第1領域6の隠蔽性がより向上する。また、不織布10に対し角度を変えて見たときの汚れの見え方が変わり、見る人の印象が変化する。これにより、汚れの印象は軽減され、不織布10の本来の色(典型的には白色)を認識しやすくなり、汚れに対する隠蔽性を強く感じやすくなる。
本発明の不織布は、前述した光の散乱に有効な特定の大きさの孔を繊維に形成するための延伸加工工程を含む製造方法によって製造することができる。
延伸加工工程は、不織布化後の処理工程において、いずれの段階で行ってもよく、また、複数の段階で行ってもよい。延伸加工工程をどの段階で行うかは不織布の製造方法に合わせて決めることができる。そのため、種々の不織布の製造方法においても、本発明の不織布を製造することができる。いずれの場合でも、延伸加工の条件を適宜調整することにより、上記の光の散乱に有効な特定の大きさの孔を形成することができる。後述するように繊維の延伸倍率3倍以上となるよう制御して延伸加工を行うことが好ましい。
加えて、孔を明確に形成する観点から、繊維を形成する前の溶融樹脂に離間剤および粒状物を添加する工程があってもよく、繊維を形成する前の溶融樹脂に、発砲する界面活性剤を添加させる工程があってもよい。
このような離間剤としては、例えば、ジステアリルフタレート、トリオクチルトリメリテート、テトラオクチルピロメリテート、ジステアリルアジペート、ジステアリルセバテート、トリメチロールプロパントリラウレート、ペンタエリスリトールテトラカプレートなどのエステル化合物、シリコン、シリコン-ポリエステル共重合体、脂肪族ポリエステル、芳香族ポリエステル、アルキレングリコール(例えば、エチエングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリブチレングリコールなど)、アルカンジオール(例えば、1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、2,2,4-トリメチル-1,6 ヘキサンジオール、1,3-シクロヘキサンジメタノール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、2,2,4,4-テトラメチル-1,3-シクロブタンジオールなど)、アミンオキシド(例えば、オクチルジメチルアミン・オキシド)、ステアリン酸、パルミチン酸、ミリスチン酸、ラウリン酸、エルカ酸アミド等が挙げられる。
なお、図9に示すように、歯溝ロール91、92の前後に、一対のインフィードロール97、97及び一対のアウトフィードロール98、98を配していてもよい。この場合、インフォードロールとアウトフィードロールとの回転周速度を異ならせる等により、原料不織布100に適度なテンションを与えて延伸加工の強さを設定することができる。
例えば、ピン(凸部)91Bとピン(凸部)92Bとが、かみ合わせ時に、千鳥状の配列となるようにしたり(図12(A))、格子状にしたり(図12(B))、六角形状にしたり(図12(C)にすることができる。この場合も、ピン(凸部)91Bとピン(凸部)92Bとの間で、原料不織布100に延伸部101が形成される(図12(A)~(C)において一点鎖線で示す領域)。
このピンロールを用いた延伸加工においては、第1領域6と第2領域7との交互配置をドット状にする場合に、ピンの先端を、不織布が破れない程度に鋭くすることが好ましい。また、ドット状にするために、ピン(凸部)91Bとピン(凸部)92Bとの間の間隔を調整することもできる。
上記の倍率とするには、不織布の製造工程における各種の設定を調整することにより実現することができる。例えば、かみ合い加工における凸部の押し込み量を制御したりすることで実現できる。また、前述のとおり樹脂を切れにくくする剤として可塑剤を入れると、延伸しやすくなり、好ましい。
(1)
不織布化後の延伸倍率に関しては、下記の通りに測定する。
例えばギアの押し込みによる延伸倍率、ピンロールの押し込みによる延伸倍率は、不織布に延伸処理を施す、ロール91の凸部91A又は91Bと、ロール92の凸部92A又は92Bとのかみ合い形状により求めた値のうち、延伸倍率が最も高い部分の延伸倍率を意味する。
複数箇所それぞれの機械延伸倍率は、ロール91における周方向に隣り合う凸部同士の距離(ピッチP1)、ロール91における回転軸方向に隣り合う凸部同士の距離(ピッチP2)、及びロール91の各凸部とロール92の各凸部とのかみ合いの深さD、及びロール91における凸部の頂点の周方向の距離(ドット直径A1)、ロール91における凸部頂点の回転軸方向の距離(ドット直径A2)により、下記(式1)、(式2)に示す数式で求められる(図10参照。なお、図10は周方向について示し、回転軸方向については省略している。)。(式1)は周方向の機械延伸倍率を示し、(式2)は回転軸方向の機械延伸倍率を示す。
ロール91の凸部の形状とロール92の凸部の形状が異なる場合は、ドット直径A1をロール91とロール92それぞれの頂点の周方向の距離の平均値として求められる。ドット直径A2も同様にロール91とロール92それぞれの頂点の回転軸方向の距離の平均値として求められる。また、ドット上面の形状が長方形以外に円形、楕円、そして多角形の場合も同様に求められる。このときの機械延伸倍率は、延伸倍率が最も高い部分(ロール91の凸部とロール92の凸部が最も接近した部位)の延伸倍率とする。これを延伸倍率とする。周方向の機械延伸場率と回転軸方向の機械延伸倍率が異なる場合は、高い方の機械延伸倍率を不織布化後の延伸倍率とする。なお、ロールにおける歯の配列が、周方向又は回転軸方向のいずれか1方のみである場合は、歯の配列方向の機械延伸倍率を不織布化後の延伸倍率とする。
孔の有無や繊維形状から延伸されていることを確認できた場合に、延伸されているであろう部分と、延伸されていないと思われる部分の坪量比を次の方法により測定し、延伸倍率を算出する。
すなわち、不織布を色のついた紙の上で、肉眼で観察することにより、隠蔽性の高い延伸部分と隠蔽性の低い非延伸部分を区別し、それぞれの領域から一定面積の不織布を切り取って、それぞれの単位面積あたりの重量を測定し、比を計算することで、延伸倍率を求める。切り取れないほどの小さな幅での延伸の場合、不織布断面の顕微鏡撮影を行い、厚みを測定し、厚みの比から幾何的に計算する。
二酸化チタンからなる平均粒径230nmの粒状物3質量%と、離間剤としてステアリン酸3質量%とを、溶融したポリプロピレン(PP)樹脂に添加し、ラボブラストミル(2軸押し出し機)を用いて190℃5分混練りした。これを基に、キャピログラフを用いて繊維径40μmの繊維を作製(紡糸)し、得た繊維を基にエンボスで加熱・加圧することにより、5cm×5cmの原料不織布を作製した。
作製した原料不織布に対し、かみ合い加工により、不織布全体の延伸倍率4.1倍、繊維の延伸倍率4.1倍の延伸加工処理を施し、実施例1の不織布試料を作製した。
該不織布試料においては、図8に示す凹凸形状を備え、凹凸の斜面に第1領域が配されるようにして、図1に示すストライプ状のパターンで第1領域6と第2領域7とを、不織布試料の幅方向に交互に形成した。第1領域6及び第2領域における、孔1の数、孔1の開孔部の短軸長さ及び長軸長さ、面積率、並びに目付比は、表1に示すとおりのものとした。ここで、実施例1、2、3は、原料が同じで延伸倍率も同じ、孔の数、大きさも同じであるが、延伸した繊維を幅方向に寄せる、もしくは、広げることで面積率を調整した。
第1領域6における孔1の数、第1領域6及び第2領域7の面積率を表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして、実施例2の不織布試料を作製した。
第1領域6における孔1の数、第1領域6及び第2領域7の面積率を表1のとおりとした以外は実施例1と同様にして、実施例3の不織布試料を作製した。
第1領域6における孔1の数を表1のとおりとし、不織布の形状を凹凸では無く平坦なものとした以外は実施例1と同様にして、実施例4の不織布試料を作製した。
二酸化チタンの代わりに、炭酸カルシウムからなる平均粒径230nmの粒状物3質量%を添加した以外は実施例1と同様にして、実施例5の不織布試料を作製した。
離間剤として、ステアリン酸3質量%の代わりに、エルカ酸アミド5質量%を添加した以外は実施例2と同様にして、実施例6の不織布試料を作製した。
不織布の両端を固定して左右に引っ張る方法の方法によって延伸加工処理を行い、第1領域6及び第2領域7の領域区分なく全面に孔1を形成した以外は、実施例4と同様にして、比較例1の不織布試料を作製した。
粒状物及び離間剤を添加せず、延伸加工処理を施さなかった以外は比較例1と同様にして、比較例2の不織布試料を作製した。
粒状物及び離間剤を添加せず、延伸加工処理を施さなかった以外は比較例1と同様にして、比較例2の不織布試料を作製した。
二酸化チタンからなる平均粒径900nmの粒状物3質量%を添加し、孔1の開孔部の短軸長さ及び長軸長さを表1のとおりとした以外は、実施例4と同様にして、比較例3の不織布試料を作製した。
隠蔽率は、日本電色工業株式会社製の簡易型分光色差計NF333を用いて、次のようにして測定を行った。初めに、付属の標準板(赤色面を測定面とする)について測定した。得られた吸収波長の中でも特に500cm-1を選択し、この際の反射率を記録した(Ra)。次に標準板(赤色板)を外して、試料台に不織布試料を置き、更に不織布試料裏面(測定面とは逆の面)と標準板(赤色板)の赤色面が向き合うように標準板(赤色板)を置いた。測定は1サンプルについて異なる部位で計5回測定し、500cm-1の反射率の平均値(Rb)を算出した。得られたRa、Rbの値より、赤色隠蔽率を下記式(6)により求めた。
赤色色隠隠蔽率(%)=〔(Rb-Ra)/(100-Ra)〕×100 (式6)
上記の結果得られた値が高い値であるほど、不織布の隠蔽性として高い性能を示し、白色の不織布越しに見た赤みを隠蔽することができる。
不織布試料を吸収性物品の表面シートとして用いた場合の吸収力をどの程度実感できるか(印象評価)を下記の方法により試験した。
まず、各不織布試料を用いて吸収力評価用の吸収性物品試料を作製した。具体的には、吸収性物品の一例として生理用ナプキン(花王株式会社製:スリムガード、2016年製)から表面シートを取り除き、その代わりに各不織布試料を表面シートとして積層し、その周囲を固定して得た評価用のサンプルを作製した。
次いで、経血を模擬した、色見本として、赤色標準板(日本電子)を吸収体と表面シートの間に入れ、表面シートの上から見た時の赤みを経血として考えたときに見た目をどう感じるか(吸収力を実感することによる不快感のなさや自身の排泄量を確認できるのに十分か)を点数化してもらった。その際、生理用ナプキン(花王株式会社製:スリムガード、2016年製)の表面シートで評価を実施した際の見た目を基準(3点)とした。
パネル(成人女性)5人が、標準版(赤色板)の赤色を比較基準にして、不織布の白色の印象を以下の基準で評価した。パネル5人の平均点(小数点以下を四捨五入)を印象評価点とした。
5点:不快感が軽減され、よく吸収されていることが分かる。
4点:不快感が軽減され、吸収されていることがわかる。
3点:日常で使用している程度の見た目である。
2点:日常で使用しているときより、不快な見た目である。
1点:吸収性が悪く感じられる、もしくは、漏れを想起する。
これにより、実施例1~6は、比較例1~3よりも、隠蔽率及び印象評価(吸収力の実感)の結果が優れていた。すなわち、実施例1~6は、比較例1~3では達成できない、物品の外見から排泄量や汚れ拭き取り量など物品の使用状態を目視で確認でき、かつ、見る人が受ける不快感などの精神的負担を軽減することができていた。
2 繊維成分
6 第1領域
7 第2領域
10 不織布
20 繊維
Claims (9)
- 繊維径×繊維径の平方視野範囲内に5個以上の孔を有し、該孔は短軸の長さを100nm以上750nm以下とし、前記孔に粒状物及び離間剤が含有されている繊維で構成された、第1領域と、
前記第1領域を構成する繊維の前記孔の数に対して該孔の数が1/2以下である繊維または該孔を有さない繊維の少なくとも一方で構成された、第2領域とが、
不織布の平面方向に互いに隣接して交互に配置されており、
前記粒状物が酸化チタン又は炭酸カルシウムよりなり、
前記離間剤がステアリン酸又はエルカ酸アミドよりなる、不織布。 - 前記不織布を平面視したとき、前記不織布の面積に対する前記第1領域の面積率が5%以上90%以下である請求項1記載の不織布。
- 前記第1領域の目付の前記第2領域の目付に対する比が、1/5以上である請求項1又は2記載の不織布。
- 前記第1領域が扁平形状の繊維を含む請求項1~3のいずれか1項に記載の不織布。
- 前記第1領域及び前記第2領域が配置される層を含む面に凹凸形状を有する請求項1~4のいずれか1項に記載の不織布。
- 前記凹凸形状の斜面部に前記第1領域を有する請求項5記載の不織布。
- 樹脂に、平均粒径100nm以上700nm以下の酸化チタン又は炭酸カルシウムよりなる粒状物と、ステアリン酸又はエルカ酸アミドよりなる離間剤とを添加して紡糸する工程と、
紡糸した繊維を不織布化する工程と、
不織布化された原料不織布を一対の凹凸ロールのかみあい加工により延伸加工して、繊維径×繊維径の平方視野範囲内に5個以上の孔を有し、該孔は短軸の長さを100nm以上750nm以下とし、前記孔に粒状物及び離間剤が含有されている繊維で構成された、第1領域と、前記第1領域を構成する繊維の前記孔の数に対して該孔の数が1/2以下である繊維または該孔を有さない繊維の少なくとも一方で構成された、第2領域とを、前記原料不織布の平面方向に互いに隣接して交互に配置して形成する工程と、
を有する、不織布の製造方法。 - 前記かみ合い加工に用いるロールの不織布と接する凸部の長さが、0.1mm以上10mm以下である、請求項7記載の不織布の製造方法。
- 前記延伸加工における繊維の延伸倍率が3倍以上である請求項7又は8記載の不織布の製造方法。
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