JP6996529B2 - ガス吹込みノズルを備えた高温溶融物の精錬容器 - Google Patents
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Description
一方、(3)の方式で用いられるガス吹込み用プラグ(ノズル)は、マルチプル・ホール・プラグ(以下、MHPという)と呼ばれる。例えば、特許文献1(特開昭59-31810号公報)では、このMHPでは1~20倍のガス流量(0.01~0.20Nm3/min)が制御可能とされている。このため、MHPは二重管方式やスリット方式に比べて採用が容易である。
すなわち、マグネシア原料などの骨材に鱗状黒鉛などの炭素源、ピッチや金属種、フェノール樹脂などのバインダーを加えた原料を、分散性能の高いハイスピードミキサーなどの混練手段を用いて混練し、金属細管を埋設する炭素含有耐火物を構成すべき混練物を得る。そして、この混練物の上に金属細管を敷設しながら積層状に金属細管を埋設した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥・焼成などの加熱処理を行う方法(金属細管は、その後、ガス溜まり用の部材に溶接で接合する)、或いは、予めガス溜まり用の部材に金属細管を溶接で接合しておき、その周囲の混練物を充填した上で、プレス機により所定の圧力で成形を行い、その後、所定の乾燥を行う方法、などによりMHPが製造される。
特許文献2(特開昭63-24008号公報)では、MHPのガス吹込みノズル部分と周囲羽口を一体化させ、目地部からの先行溶損、磨耗の低減が図られている。しかし、この技術では効果が小さく、有効な対策とはなり得ない。
特許文献3(特開2000-212634号公報)には、マグカーボンなどの炭素含有耐火物に埋設されたステンレス製の金属細管の浸炭を抑制するために、金属細管表面に溶射によって酸化物層を形成することが提案されている。しかし、転炉などのように長期間使用される精錬炉(例えば2ヶ月~半年の使用期間)では、酸化物層の膜厚が十分ではなく、浸炭抑制効果が小さいという問題がある。
特許文献5(特開昭58-015072号公報)では、金属Al粉末を添加したマグカーボン煉瓦を500~1000℃で焼成加熱し、その後、炭化収率25%以上の有機物を煉瓦気孔内に含浸させる処理を行い、熱間強度の向上とともに耐食性の向上を図っている。また、特許文献6(特許第3201678号公報)では、仮焼無煙炭を0.5~10重量%添加したマグカーボン煉瓦を600~1500℃にて還元焼成することで、弾性率の低減による耐熱スポール性の改善が図られるとしている。さらに、焼成後にタールを含浸してもよく、この含浸により気孔の密封、強度アップ、耐消化性の向上が図られるとしている。しかし、これらの技術では効果が少なく、有効な対策とはなり得ない。
したがって本発明の目的は、以上のような従来技術の課題を解決し、炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズルを備えた高温溶融物の精錬容器であって、ガス吹込みノズルが高い耐用性を有する精錬容器を提供することにある。
[1]炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズル用耐火物で構成されるガス吹込みノズルを備えた精錬容器において、
前記ガス吹込みノズル用耐火物は、金属細管が埋設された中心部耐火物(a)と、該中心部耐火物(a)の外周を囲む外周部耐火物(b)とからなり、
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円(x)の半径をR(mm)としたとき、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+10mm~R+150mmの円であり、
中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40~80質量%であって、金属Alを3~8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30~1.0倍含有するMgO-C質れんがで構成され、外周部耐火物(b)は、炭素含有量が10~25質量%のMgO-C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
[3]上記[1]又は[2]の精錬容器において、中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40~80質量%であって、金属Alを5~7質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30~1.0倍含有するMgO-C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
[4]上記[1]~[3]のいずれかの精錬容器において、炉底部にガス吹込みノズルを備えることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。
上述のとおり、MHP羽口の損耗の主因は熱衝撃である。特に、MHP羽口の金属細管周辺部は、金属細管を流れるガスによって冷却されるため、熱応力も大きくなる。熱衝撃や熱応力を抑制するためには、MgO-C質れんがのC含有量を高くすることが有効であるが、一方で、C含有量を高くすると溶鋼に対して溶解しやすくなり、耐摩耗性、耐溶損性が低下することが知られている。この点に関して、本発明者らは、C含有量を高くした金属細管周辺部は、高熱伝導率であるために金属細管を流れるガスにより冷却され、その結果、稼働面側にスラグや金属のマッシュルームが形成され、このマッシュルームにより溶鋼から耐火物表面が保護され、摩耗や溶損による損耗を抑制する効果が得られることを見出した。このため本発明では、精錬容器のガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物を、金属細管が埋設された中心部耐火物aと、この中心部耐火物aの外周を囲む外周部耐火物bで構成し、中心部耐火物aを高C含有量のMgO-C質れんがで構成する。しかし、様々な鋼種を製造する転炉においては、例えば高温出鋼材の生産が続いた場合など、しばしばマッシュルームの縮小、消失が起こる。この場合、溶鋼と羽口中心部の接触が発生する。このような場合にも損耗速度の低下が起こらないようにする対策について検討した結果、通常は酸化防止剤として1.5質量%以下(最大でも2.5質量%以下)の範囲で添加される金属Alを3質量%以上添加し、さらに消化防止のために金属Siを質量比で金属Alの0.30~1.0倍添加することにより、耐溶鋼性が著しく向上し、消化も防げることを見出した。
以上の観点からより好ましい条件としては、中心部耐火物aの外形を、仮想円xと同心であって半径がR+40mm~R+70mmの円とすること、すなわち、図1において、中心部耐火物aの外形をなす円の半径がR+rであってr=40~70mmであることが好ましい。
炭素含有耐火物内に埋設される金属細管の本数は特に制限はなく、必要とされるガス吹き流量や稼働部の面積によって適宜選択される。転炉などの高流量が必要とされるものでは、一般に60~250本程度の金属細管が埋設される。また、電気炉や取鍋のようにガス吹き流量が小さい場合には、一般に1本~数10本程度の金属細管が埋設される。
炭素含有耐火物(中央部耐火物a、外周部耐火物b)の主たる原料は、骨材と炭素源、金属Al、金属Siであるが、その他の添加材料及びバインダーなどを含む場合がある。
炭素含有耐火物の骨材には、マグネシア、アルミナ、ドロマイト、ジルコニア、クロミア、スピネル(アルミナ-マグネシア、クロミア-マグネシア)などが適用できるが、本発明では、溶融金属や溶融スラグに対する耐食性の観点から主たる骨材としてマグネシアを用いる。
上述した骨材と炭素源、金属Al、金属Si以外の添加材料としては、例えば、Al-Mg合金などの金属種、SiC、B4Cなどの炭化物が挙げられ、これらを1種以上を含む場合がある。これら添加材料の配合量は、通常3.0質量%以下である。
炭素含有耐火物の原料は、一般にバインダーを含む。バインダーには、フェノール樹脂、液状ピッチなど、一般的に定形耐火物のバインダーとして適用できるものが使用できる。バインダーの配合量は、通常1~5質量%(外掛け質量%)程度である。
まず、中心部耐火物a用と外周部耐火物b用の各耐火物原料をそれぞれ混合し、ミキサーで混練して混練物とする。金属細管を中心部耐火物a用の混練物内の所定の位置に配置した後、一軸プレスにて成形し、金属細管が埋設された中心部耐火物aを製作する。さらに、この中心部耐火物aの周囲に外周部耐火物b用の混練物を充填した上で、等方静圧成形(コールド・アイソスタティック・プレス。以下「CIP成形」という。)により一体化し、ガス吹込みノズル用耐火物となる母材を成形する。その後、その母材に定法により乾燥などの所定の加熱処理を施す。また、必要に応じて、外形を整えるための加工などを適宜行ってもよい。
また、金属細管とガス溜まり部との接合は、中心部耐火物aの成形後、母材の成形後、或いは母材の加熱処理後のいずれかの段階で両者を溶接する方法、中心部耐火物aの成形時に、予めガス溜まり部の上面板を溶接した金属細管を中心部耐火物a用の混練物内に配置する方法などを適宜選択することができる。
混練物の成形には、油圧式プレス、フリクションプレスなどの一軸成形機やCIP成形機など、耐火物の成形に使用される一般的なプレス機が使用できる。
成形した炭素含有耐火物は、乾燥温度180~350℃、乾燥時間5~30時間程度で乾燥させればよい。
以上のようにして製造されるガス吹込みノズル用耐火物は、転炉や電気炉などの精錬容器に取り付けられ、ガス吹込みノズルが構成される。ガス吹込みノズルの位置は一般に炉底部であるが、これに限定されない。炉底部の場合、底吹き羽口周辺の炉底煉瓦としてガス吹込みノズル用耐火物が取り付けられ、ガス吹込みノズルが構成される。
本発明の精錬容器において、ガス吹込みノズルを構成するガス吹込みノズル用耐火物の中心部耐火物(a)に用いるMgO-C質れんがについて、その耐溶鋼性を評価するため、表1及び表2に示す原料配合で30mm角×160mm長さの耐火物試料(本発明相当材、比較材)を作成し、これら耐火物試料を高周波偏芯炉を用いて1650℃の溶鋼(SS400)中に30分浸漬した後の残厚を測定し、試験前の厚さとの差から損耗量を求めた。同じく耐消化性を評価するため、表1及び表2に示す原料配合で25mm×25mm×25mmの耐火物試料(本発明相当材、比較材)を作成し、これら耐火物試料をコークス粉中で1000℃×3時間熱処理後、100℃の水蒸気雰囲気で3時間処理した後の耐火物試料の亀裂の有無を調査した。亀裂の有無の判断は、目視による外観観察により行った。
図1に示すように同心円状に81本の金属細管を配置したガス吹込みノズル用耐火物を表3~表6に示す条件で製造した。
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円xの半径Rは50mmであり、r=8~200mmの範囲で中心部耐火物aの半径R+rを変化させた。
炭素含有耐火物に埋設する金属細管としては、普通鋼又はステンレス鋼(SUS304)製の外径3.5mm、内径2.0mmのものを用いた。
各耐火物原料を表3~表6に示す割合でそれぞれ混合し、ミキサーで混練した。金属細管を中心部耐火物a用の混練物内に配置して一軸プレスにて中心部耐火物aを成形した。さらに、その中心部耐火物aの周囲に外周部耐火物b用の混練物を充填した上で、CIP成形により母材を成形した。その後、その母材を定法により乾燥処理し、製品とした。
それらの結果を表3~表6に併せて示す。これによれば、本発明例のガス吹込みノズルは、損耗速度が小さく、優れた耐用性を有していることが判る。また、本発明例のなかでも、中心部耐火物aの半径がR+40mm~R+70mmのガス吹込みノズルを備えたものは、特に優れた耐用性を有している。
b 外周部耐火物
x 仮想円
Claims (4)
- 炭素含有耐火物にガス吹込み用の金属細管が1本以上埋設されたガス吹込みノズル用耐火物で構成されるガス吹込みノズルを備えた精錬容器において、
前記ガス吹込みノズル用耐火物は、金属細管が埋設された中心部耐火物(a)と、該中心部耐火物(a)の外周を囲む外周部耐火物(b)とからなり、
ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、埋設された全部の金属細管を包含する最小半径の仮想円(x)の半径をR(mm)としたとき、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+10mm~R+150mmの円であり、
中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40~80質量%であって、金属Alを3~8質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30~1.0倍含有するMgO-C質れんがで構成され、外周部耐火物(b)は、炭素含有量が10~25質量%のMgO-C質れんがで構成されることを特徴とする高温溶融物の精錬容器。 - ガス吹込みノズル用耐火物の平面において、中心部耐火物(a)の外形は、仮想円(x)と同心であって半径がR+40mm~R+70mmの円であることを特徴とする請求項1に記載の高温溶融物の精錬容器。
- 中心部耐火物(a)は、炭素含有量が40~80質量%であって、金属Alを5~7質量%、金属Siを質量比で金属Alの0.30~1.0倍含有するMgO-C質れんがで構成されることを特徴とする請求項1又は2に記載の高温溶融物の精錬容器。
- 炉底部にガス吹込みノズルを備えることを特徴とする請求項1~3のいずれかに記載の高温溶融物の精錬容器。
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