JP6995373B2 - 炭化水素系燃料油に水を添加して炭化水素系合成燃料を製造する方法 - Google Patents
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Description
このように、水を添加することにより増量された燃料は、大変有用なものであるが、一般的に、水と油は完全な融合が難しく、混合しても時間が経過すると分離してしまう傾向がある。また、融合を十分に行うことが不可能ではないとしても、それには非常に時間がかかり、経済的観点から、実用化には程遠いと予測される。
そのため、水と燃料油を完全に融合させ、時間が経過しても分離することがない炭化水素系合成燃料を製造できるような、短時間で水と燃料油の融合処理を行うことができる技術が望まれている。
本発明は、従来技術におけるこの問題に対処するのもので、元油となる炭化水素系燃料に対する合成燃料の割合を従来に比べて飛躍的に高めることができる、元油に対して水を添加することによる炭化水素系合成燃料製造方法を提供することを目的とする。
本発明の他の目的は、水添加前の燃料である燃料元油と対比して、組成及び物理的特性が実質的に同じであるか、又はこれに近似しており、油水分離の観点からも燃料元油と同等の特性を備えた炭化水素系合成燃料油を、燃料元油の量に比べて大幅に増加した量で製造することができる、炭化水素系合成燃料油の製造方法を提供することである。
すなわち、本発明の一態様による炭化水素系合成燃料油の製造方法は、
a)水に対して活性化処理を施して、活性化された活性化水を生成する活性化水生成工程と、
b)該活性化水を、当初燃料元油として使用される炭化水素系燃料元油に添加して、反応性環境のもとで所定時間撹拌し混合する撹拌混合工程と、
c)該撹拌混合工程を経た炭化水素系燃料元油と活性化水とを反応性環境のもとで融合させる融合工程と、
d)該融合工程を経た混合物から得られる炭化水素系燃料油を一次生成炭化水素系燃料油として収集する一次生成炭化水素系燃料油収集工程と、
を含み、次いで、
該一次生成炭化水素系燃料油を二次燃料元油として使用し、上記b)c)d)の工程を行って、二次生成炭化水素系燃料油を収集し、以下、得られた炭化水素系燃料油を、順次燃料元油として使用し、上記b)c)d)の工程を行う処理を複数回、繰り返すことにより、当初燃料元油よりも大きい体積の、水(H2O)を実質的に含まず、該当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる複数次生成炭化水系合成素燃料油を生成する
ことを含むものである。
a)水に対して活性化処理を施して、活性化された活性化水を生成する活性化水生成工程と、
b)該活性化水を、当初燃料元油として使用される炭化水素系燃料元油に添加して、反応性環境のもとで所定時間撹拌し混合する撹拌混合工程と、
c)該撹拌混合工程を経た炭化水素系燃料元油と活性化水とを反応性環境のもとで融合させる融合工程と、
d)該融合工程を経た混合液を静置して、水(H2O)を実質的に含まず当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる上方の油層と、下方の水層とに相分離させる油水分離工程と、
e)該上方の油層の炭化水素系燃料油を一次生成炭化水素系燃料油として収集する一次生成炭化水素系燃料油収集工程と、
を含み、
f)該撹拌混合工程と融合工程とは、該一次生成炭化水素系燃料油収集工程により得られる一次生成炭化水素系燃料油の体積が当初燃料元油として使用される炭化水素系燃料元油の体積より大きくなる時間にわたり行われるようにし、次いで、
g)該一次生成炭化水素系燃料油を二次燃料元油として使用し、上記b)c)d)e)f)の工程を行って、二次生成炭化水素系燃料油を収集し、以下、得られた炭化水素系燃料油を、順次燃料元油として使用し、上記b)c)d)e)f)の工程を行う処理を複数回繰り返すことにより、当初燃料元油よりも大きい体積の、水(H2O)を実質的に含まず前記当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる複数次生成炭化水素系合成燃料油を生成する
ことを含むものである。
同様に、本発明の方法によれば、燃料元油がA重油である場合には、該A重油と実質的に同等か、これに近似する重油を製造することができる。
また、可燃成分である炭化水素の生成に必要な水素は、活性化された水分子の分解により得られるものと推測される。水分子は、本発明の方法においてマイクロバブルのホットスポットを含むように活性化されており、このように活性化された水分子を含む水に、カタラーゼ、水酸化ナトリウム、過酸化水素水溶液の少なくとも一つを添加した状態で、撹拌することにより、反応に必要な水素が得られることが確認されている。
また、本発明の炭化水素系合成燃料油は、既存の燃料油と単位分量当たりの発熱量が同等又はそれ以上であり、かつ、既存の燃料油と比較して、燃焼後の燃焼室、排気管等の劣化や腐食が少ないという効果がある。さらに、本発明の合成燃料油は、完全燃焼性に優れており、一酸化炭素が生成されにくく、また一酸化炭素の排出量も少ないなど、といった効果が達成される。
なお、本実施例で示される合成燃料の製造方法の全体的な構成及び各細部の構成、数値は、下記に述べる実施形態及び実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内、即ち、同一の作用効果を発揮できる形状及び寸法の範囲内で変更することができるものである。
図2を参照すると、本発明の一実施形態において、合成燃料製造装置1は、元油改善槽2、精製水槽3、反応促進剤注入部4、反応槽5、静置槽6、及び製品受槽7から構成される。この装置1の概要を説明すると、元油改善槽2において燃料元油の前処理を行い、精製水槽3で水の活性化処理を行い、反応促進剤注入部4から添加剤を所定の槽に投入する。さらに、反応槽5において燃料元油と水の攪拌混合及び融合を行い、静置槽6においてスカムなどの不要な残留物を除去し、必要な場合には油相と水相の相分離を行い、該静置槽6から製品受槽7に製品である炭化水素系合成燃料油を導入する。
元油改善槽2内の燃料元油は、油温の均一度を高めるために、ポンプ11により、該元油改善槽2から取出し、ヘッダ管202を通して槽内に再投入することにより、循環させてもよい。また、触媒を用いて、前処理として、油の分子を細分化してもよい。
本発明においては、上述した電気エネルギの印加、及び水のプラズマアーク処理を総称して、「電気的刺激」と呼ぶ。
また、超音波を照射することによって、水から酸素が放出され、水の含有水素比率が向上する。
例えば、水200Lを改質するためにトルマリンと水を接触させる場合には、20L/min~50L/minの流量で水を配管からトルマリンに向けて噴出させることが望ましい。反応時間は、1時間程度が適当であるが、20分から1日でも効果を出すことができる。
添加剤としては、カタラーゼ、水酸化ナトリウム、過酸化水素水溶液の一種又は複数種を用いる。添加剤の投入量は、細かく調整する必要がある。前述したように、カタラーゼを使用する場合には、カタラーゼの添加量は、水に対する重量比で、0.04%から0.05%とするのが好適である。0.04%よりも少ないと効果が薄く、0.05%よりも多いと十分溶けず、返ってスカムを増やすこととなり、燃料の品質を下げることとなる。
水酸化ナトリウムについては、水に対して0.001重量%~0.1重量%の添加で添加剤としても効果を十分発揮する。過酸化水素水溶液の場合は、水に対して0.001重量%から0.1重量%の添加で添加剤としても効果を十分発揮する。
例えば、活性化水100Lを燃料元油100Lと混合する場合には、活性化水と燃料元油の混合液は、20L/min~50L/minの流量で、配管サイズ15A~50Aの配管を通して循環させることが好ましい。混合時間は、5分ないし1時間程度とすることができる。
例えば、活性化水100Lを燃料元油100Lに融合させる場合には、混合液に作用させる加圧圧力は、0.3MPa(3気圧)以上とすることが望ましい。温度は、70℃或いはそれ以下の温度でもよい。融合工程における加圧圧力は0.9MPa、温度は50℃とすることが最も有効である。反応時間は、この加圧圧力及び温度に到達してから20分ないし60分が適当である。
また、ろ過フィルターを通過させることによっても、合成燃料とスカムなどを分離することができる。ろ過フィルターは、10μmないし30μm程度のものを用いる。ろ過フィルターを通過させる温度は40℃以下が好ましく、通過時間は、配管サイズ20A~50Aの配管に通す場合には、流量20L/min~50L/min程度が望ましいが、速度は穏やかな方がより望ましい。ろ過フィルター通過の回数は1回又はそれ以上とすることができる。
図1に示すように、得られた一次生成合成燃料油を燃料元油として使用し、同様の工程を繰り返すことにより、二次生成合成燃料油を製造することができる。その後、同様にして、得られた合成油を元油とする工程を複数回繰り返すことにより、複数次生成合成燃料油を製造することが可能である。本発明の方法により製造されるこのような複数次生成合成燃料油は、加水率が非常に高いものとなる。
図4は、本発明に係る製造装置の活性化装置として使用可能なプラズマアーク処理装置の一例を示す概略図である。このプラズマアーク処理装置20は、それぞれが高圧トランス(図示せず)に接続されている、装置の中心に配置された(図中六角形で示す)電極21と、この中心電極を取り囲むように配置された複数の(図では12本)電極22を備えている。電極に電力を供給することにより、電極間にアーク放電が発生する。図2に示されている製造装置1中の精製水槽3において、精製水槽3とポンプ11との間にプラズマアーク処理装置20を設置して、精製水槽からの水をプラズマアーク処理装置20に通すことにより、水をプラズマアーク処理によって活性化することができる。このようなプラズマアーク処理装置としては、例えば、株式会社日本理水研社製のウルトラU-MANに使用されているようなプラズマアーク処理装置を好適に使用することができる。
(トルマリン及びカタラーゼの準備)
ブラジル国トカンチン州産出で粒径20mmないし80mmのトルマリンを、有限会社ニュー・ウェーブから購入した。さらに、ナガセケムテックス株式会社から、商品名「レオネットF-35」のカタラーゼを購入した。これらトルマリン及びカタラーゼを、以下の製造例及び実施例において使用した。
(活性水の形成例)
活性水を形成するための水として、軟水である水道水を使用した。常温の水20リットルにトルマリン3kgを浸漬させ、トルマリンに対して周波数30kHzないし40kHzの超音波を、水に対して周波数200kHzないし600kHzの超音波を、20分間照射する。以下の製造例及び実施例では、トルマリンに照射される超音波の周波数は35kHz、水に照射される超音波の周波数は400kHzとした。20分経過後に、上述の超音波照射を続け、水をポンプで循環させながら、ヒータを使用して43℃の水温まで昇温した。水温が43℃に達したとき、水の循環と、ヒータによる加熱及び超音波照射を停止した。この時点で水のORPは約-790mVであり、pHは8ないし9であり、水にはマイクロバブルのホットスポットが形成されており、活性化されていることが認められた。
上述の操作において、マイクロバブルのホットスポットを維持する物質として、トルマリンに、炭酸カルシウムを主成分とする琉球石灰岩を予め混入させた。上記した活性化水の準備工程では、水のORPがマイナス傾向で安定し、pHが8ないし9になれば、活性化は完了したものと考えてよい。
(一次燃料油製造例1)
次のとおりの方法により、A重油を元油とする一次合成燃料油を製造した。
まず、トルマリンを収容する部分と超音波発生装置(35kHzの超音波振動子)、及び温度計を備え、循環ポンプ(24リットル/分×0.5Mpa)を接続した容積25リットルの容器に、トルマリン(有限会社ニュー・ウェーブから購入したブラジル・トカンチン州鉱山直輸入で小サイズのトルマリン原石)3kgと、水道水20リットルとを入れた。この水に、カタラーゼ(ナガセケムテックス株式会社製 レオネットF-35)を20ミリリットル添加した。次いで、超音波振動子を作動させて、「活性化水の形成例1」において述べた条件で、超音波をトルマリンと水に照射しながら、循環用ポンプにより水の循環を開始した。水の循環経路中に設けた3kWのラインヒータの設定温度を40℃として、容器内の水の温度が40℃以上になったことを確認した時点から1時間、循環を続けた。1時間経過後、ORP計によって容器中の水の酸化還元電位を測定したところ、12mVであり、水が活性化されたことが確認できた。
元油として、A重油に代えて市販の軽油(JXエネルギ株式会社(ENEOS)から購入した2号軽油)を使用したことを除き、製造例1と同様にして合成燃料油を製造し、分析のため試料を採取した。採取した試料の量は、20リットルであった。
比較のため、元油として使用したA重油及び軽油についても同様の成分分析を行った。
まず、総発熱量、真発熱量を見ると、実施例1、実施例2とも、元油を上回っており、本発明の効果が出ていることが分かる。
次に、水分の項目を見ると、製造例1、製造例2とも、合成燃料油における水分の容積%は0.00%であり、水を実質的に含まないことが分かる。燃料油と水を1対1で混合し、融合させたものであるから、十分な融合ができていなければ、水分量として検出されるはずである。しかるに、水分の容積%が0.00%であるということは、燃料元油と水が完全に融合し、水成分として、分析されなかったことを示す。
このように、本発明によれば、燃料元油と水を完全融合し、高品質の炭化水素系合成燃料油を生成することができる。
図2及び図3に示したような装置を使用し、元油として軽油を使用して、合成燃料を製造した。
まず、トルマリンを収容する部分に製造例1で使用したものと同じトルマリンを充填した精製水槽に、水道水を150リットル注入した。該精製水槽に設置されたヒータの電源を入れ、温度を40℃に設定した。さらに、製造例1で使用したものと同じカタラーゼを150ミリリットル添加した。次いで、精製水槽に接続された循環ポンプを作動させ(吐出圧力0.5MPa)、精製水槽に設置された超音波発生装置を作動させて、水の温度が40℃に達するまで60分間、40℃に達した後さらに60分間、トルマリンと水に超音波(周波数40kHz)を照射した。水を精製水槽に投入する際、4本の噴射管のうち1本のみを使用(3本を閉止)して、噴射管先端部での流速を3.3m/sとした。ORP計によって得られた水の酸化還元電位を測定したところ、20mVであった。このようにして活性化水を得た。
精製水槽と、元油改善槽、及び反応槽の温度を、製造例3の場合よりも高く、それぞれ42℃、41℃、及び44℃に設定し、精製水槽及び元油改善槽での循環時間を製造例3の場合の半分(すなわちいずれも60分)としたことを除き、製造例3と同様の工程を行って合成燃料油を製造した。なお、ORP計によって精製水槽で得られた水の酸化還元電位を測定したところ、26mVであった。反応槽で得られた液体から、分析のための合成燃料油の試料を採取した。採取した試料の量は、114リットルであった。
元油としてA重油(富士興産株式会社から購入した1種1号A重油)を使用し、反応槽温度を36℃に設定し、精製水槽及び元油改善槽での循環時間をいずれも90分とするとともに、カタラーゼの精製水槽及び反応槽への添加量をそれぞれ230ミリリットル及び130ミリリットルとしたことを除き、製造例3と同様に合成燃料を製造した。なお、ORP計によって精製水槽で得られた水の酸化還元電位を測定したところ、18mVであった。反応槽で得られた液体から、分析のための合成燃料油の試料を採取した。採取した試料の量は、114リットルであった。
製造例3において軽油を燃料元油として本発明の方法により得られた合成燃料油の試料について、ガスクロマトグラム質量分析法(GC-MS)による定性分析を行った。分析試料として、製造例3で得られた試料をn-ヘキサンで1000倍に希釈したものを準備した。カラムはHP-5MS(長さ30m、内径2.5mm、膜厚0.25μm)を使用し、キャリアーガスはHeとした。分析試料の注入量は1マイクロリットル、注入方法はスプリットレスモードとし、オーブン温度は50℃で3分間保持、その温度から100℃まで毎分5℃の昇温速度で昇温し、さらにそこから300℃まで毎分15℃の昇温速度で昇温し、300℃で3分間保持した。結果として得られたGC-MSのチャートを図5に示す。(a)はTICクロマトグラム、(b)は18.4分付近のピークのマススペクトルである。
製造例4で得られた合成燃料の試料についても、同様の定性分析を行った。結果を図6に示す。
比較のため、燃料元油として使用した軽油についても、同様の定性分析を行った。結果を図7に示す。
図5及び図6を図7と対比すると、炭素数の多い成分(C19よりも大きいもの)が、元油に比べて減少する傾向が認められるものの、製造例3及び4で得られた炭化水素系合成燃料油は、その成分組成が元油とよく一致することが確認された。
比較のため、元油として使用したA重油についても、同様の定性分析を行った。結果を図9に示す。
図8を図9と対比すると、製造例5で得られた一次生成合成燃料油も、その成分組成が元油とよく一致することが確認された。
製造例3及び4において軽油を元油として本発明の方法により得られた合成燃料油の試料について、性状試験を行った。性状試験の項目と方法は、次のとおりとした。
・密度(振動式15℃): JIS K2249
・動粘度(30℃): JIS K2283
・窒素定量分析: JIS K2609
・硫黄分(紫外蛍光法): JIS K2541-6
・酸素分: ASTM D5622
・軽油組成分析(JPI法): JPI-5S-49
比較のため、元油として使用した軽油についても、同様の性状試験を行った。
結果を表3に示す。
表3から、本発明の方法により得られた一次生成合成燃料油では、元油に比べて芳香族分が減少し、飽和分が増加していることが認められる。芳香族分が少なく飽和分が多い軽油は、効率や排ガスの毒性分及びPMの削減の観点から望ましいとされている。
製造例3及び4において軽油を元油として本発明の方法により得られた一次生成合成燃料油の試料について、酸化安定度試験(試験方法:ASTM D2274)を遂行した。比較のため、元油として使用した軽油についても、同様の酸化安定度試験を行った。
測定されたスラッジ量は、いずれの試料についても、測定限界である0.1mg/100ミリリットルを下回っていた。
製造例3で軽油を燃料元油として本発明の方法により得られた一次生成合成燃料油について、JC08モード走行試験を行った(使用車:日産自動車 NV350 型式LDF-VW2E26 重量1840kg)。比較のため、市販の軽油(JIS2号)についても、同様の走行試験を行った。
結果を表4に示す。参考のため、排ガス規制値も併記した。
表4から、本発明の方法により得られた一次生成合成燃料油では、特にCO2排出量が市販の軽油に比べて低い点が注目される。
製造例3で得られた一次生成合成燃料油は、体積比率で42%が水由来である。燃料元油に混合した水の燃料への転換率は、これまでの実験結果から略70%と推定され、生成された燃料の総量のうち、水由来の燃料の体積比率は、式
〔水由来の燃料の体積比率〕=(42×0.7)/(58+42×0.7)=34%
により求めることができる。このことから、製造例3の場合には、得られた燃料のうち、34%は石油由来でないと評価できる。したがって、製造例3により得られた燃料は、炭素排出量を34%程度削減していると見ることができる。
先に「活性化水の形成」において述べた手順により形成した活性化水5リットルと、元油改善槽2に通した市販の軽油(JXエネルギ株式会社(ENEOS)から購入した2号軽油)10リットルを、反応槽5内に投入し、製造例2におけると同様の条件で、混合、撹拌、融合の各工程を遂行した。その後、生成された混合液を静置槽6に移し、1時間静置した。その結果、混合液は、上方の油相と下方の水相に相分離した。そこで、上方の油相に存在する油を一次生成合成燃料油として取り出した。一次生成合成燃料油の量は、11リットルであった。水相に残る水の量は4リットルであった。この工程により、5リットルの水のうち、1リットルが合成燃料油に変換されたことが確認できた。元油に比べて合成燃料油は10%増量されたことが分かる。
本発明の実施例として、一次燃料油製造例6において生成された合成燃料油を元油として使用し、二次合成燃料油を製造した。具体的に述べると、一次燃料油製造例6において生成された合成燃料油10リットルを、元油改善槽2に通して調整したのち、反応槽5内に投入した。同時に、「活性化水の形成」において述べた手順により形成した活性化水5リットルを反応槽5に投入し、製造例2におけると同様の条件で、混合、撹拌、融合の各工程を遂行した。その後、生成された混合液を静置槽6に移し、1時間静置した。その結果、混合液は、上方の油相と下方の水相に相分離した。そこで、上方の油相に存在する油を二次生成合成燃料油として取り出した。取り出された二次生成合成燃料油の量は、11リットルであった。水相に残る水の量は4リットルであった。この工程により、5リットルの水のうち、1リットルが合成燃料油に変換されたことが確認できた。元油として使用された一次生成合成燃料油に比べて二次合成燃料油は10%増量されたことが分かる。
一次燃料油製造例6により製造した一次生成合成燃料油と、実施例1で製造した二次生成合成燃料油の発熱量測定及び成分分析を行った。結果を、一次燃料油製造例6において元油として使用した市販の軽油のものと対比して表5に示す。
2 元油改善槽
3 精製水槽
4 反応促進剤注入部
5 反応槽
6 静置槽
7 製品受槽
8 ヒータ
9 触媒
10 超音波発生部
11 ポンプ
12 OHRミキサ
13 反応槽容器
14 噴射管
15 排出口
20 プラズマアーク処理装置
21、22 電極
Claims (8)
- 炭化水素系燃料元油に水を加えて該炭化水素系燃料元油の体積より大きい体積の炭化水素系合成燃料油を製造する炭化水素系合成燃料油の製造方法であって、
a)水に対して超音波を水に照射することで行う活性化処理を施して、活性化された活性化水を生成する活性化水生成工程と、
b)前記活性化水を、当初燃料元油として使用される炭化水素系燃料元油に添加して、反応性環境のもとで所定時間撹拌し混合する撹拌混合工程であって、前記反応性環境は、カタラーゼを添加した前記水に超音波を照射しながら、該水を撹拌することにより形成される、前記撹拌混合工程と、
c)前記撹拌混合工程を経た炭化水素系燃料元油と前記活性化水とを前記反応性環境のもとで融合させる融合工程と、
d)前記融合工程を経た混合物から得られる炭化水素系燃料油を一次生成炭化水素系燃料油として収集する一次生成炭化水素系燃料油収集工程と、
を含み、次いで、
前記一次生成炭化水素系燃料油を二次燃料元油として使用し、前記b)c)d)の工程を行って、二次生成炭化水素系燃料油を収集し、以下、得られた炭化水素系燃料油を、順次燃料元油として使用し、前記b)c)d)の工程を行う処理を複数回繰り返すことにより、前記当初燃料元油よりも大きい体積の、水(H2O)を実質的に含まず、前記当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる複数次生成炭化水素系合成燃料油を生成する
ことを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。 - 炭化水素系燃料元油に水を加えて該炭化水素系燃料元油の体積より大きい体積の炭化水素系合成燃料を製造する炭化水素系合成燃料の製造方法であって、
a)水に対して超音波を水に照射することで行う活性化処理を施して、活性化された活性化水を生成する活性化水生成工程と、
b)前記活性化水を、当初燃料元油として使用される炭化水素系燃料元油に添加して、反応性環境のもとで所定時間撹拌し混合する撹拌混合工程であって、前記反応性環境は、カタラーゼを添加した前記水に超音波を照射しながら、該水を撹拌することにより形成される、前記撹拌混合工程と、
c)前記撹拌混合工程を経た炭化水素系燃料元油と前記活性化水とを前記反応性環境のもとで融合させる融合工程と、
d)前記融合工程を経た混合物を静置して、水(H2O)を実質的に含まず前記当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる上方の油層と、下方の水層とに相分離させる油水分離工程と、
e)前記上方の油層の炭化水素系燃料油を一次生成炭化水素系燃料油として収集する一次生成炭化水素系燃料油収集工程と、
を含み、
f)前記撹拌混合工程と前記融合工程とは、前記一次生成炭化水素系燃料油収集工程により得られる一次生成炭化水素系燃料油の体積が前記当初燃料元油として使用される前記炭化水素系燃料元油の体積より大きくなる時間にわたり行われ、次いで、
g)前記一次生成炭化水素系燃料油を二次燃料元油として使用し、前記b)c)d)e)f)の工程を行って、二次生成炭化水素系燃料油を収集し、以下、得られた炭化水素系燃料油を、順次燃料元油として使用し、前記b)c)d)e)f)の工程を行う処理を複数回繰り返すことにより、前記当初燃料元油よりも大きい体積の、水(H2O)を実質的に含まず前記当初燃料元油と実質的に同等であるか、又はこれに近似する組成の炭化水素系燃料油からなる複数次生成炭化水素系合成燃料油を生成する
ことを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。 - 請求項1又は請求項2に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、
前記活性化された活性化水は、マイクロバブルのホットスポットを含むように活性化されたものであることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。 - 請求項1から請求項3までのいずれか1項に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、前記活性化水生成工程は、水を35℃から45℃の範囲の温度に昇温し電圧を印加した状態で、該水に超音波を照射することにより行われることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。
- 請求項4に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、前記電圧の印加は、前記水に浸漬したトルマリンに超音波を照射して該トルマリンを励起状態にすることにより行われることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。
- 請求項3に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、前記水には、マイクロバブルのホットスポットを保持するのに有効な物質が添加されており、該物質が、トルマリンに炭酸カルシウムを主成分とする琉球石灰岩を混入させたものであることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。
- 請求項5又は請求項6に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、前記マイクロバブルのホットスポットの生成は、前記トルマリンに照射される超音波の周波数とは異なる周波数の超音波を前記水に対して照射することにより行われることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。
- 請求項1から請求項7までのいずれか1項に記載した炭化水素系合成燃料の製造方法であって、前記撹拌は、水と燃料元油の混合物の液面に波立ちを生じさせるように行われることを特徴とする炭化水素系合成燃料の製造方法。
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