JP6993819B2 - 概日リズム調節剤 - Google Patents
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近年、交代勤務によりもたらされる不規則な活動・食事、また、航空機による長距離移動などの影響で身体的・精神的不調が生じることが指摘されている(非特許文献4、5)。要因の一つとして、実際の睡眠や食事の時刻と、中枢時計や末梢時計が刻んでいたそれまでのリズムの間で不調和が生じ、是正にかかる時間に組織ごとに差があることが考えられる。
また、概日リズムの評価系として培養細胞や動物の時計遺伝子の発現リズムの位相の変動を指標にした評価系が確立されており、これまでに概日リズムの調節を目的として時計遺伝子を標的にした化合物が多く報告されている(たとえば特許文献1、2、3)。しかしながらこれらの概日リズムを調節する新規化合物は、安全性が確立されていなかったり、服用に注意が必要であったりするため日常的に摂取するには不向きなものが多いのが現状である。
そこで、体内時計の不調和を改善するために概日リズムを調節し、正常に保つ手段として、日常的に摂取することができ概日リズムの乱れを効果的に抑えることができる、安全性の高い食品形態のものが望まれている。
植物に広く含有される生体物質であるトリテルペン類は、生理活性を有する機能性成分として近年注目されており、例えばオレアナン型トリテルペン及びウルサン型トリテルペンについて、マスリン酸について皮膚の美白(特許文献4)、破骨細胞の分化抑制、関節炎予防効果(特許文献5)、コロソリン酸、マスリン酸等を有効成分として含有する組成物について血糖値上昇抑制(特許文献6)、オレアノール酸について抗う蝕(特許文献7)、抗ガン作用(特許文献8)等、オレアノール酸、コロソリン酸、ウルソール酸、マスリン酸等について変形性関節症の予防または治療(特許文献9)、筋肉増強、メタボリックシンドローム・QOL改善(特許文献10)が報告されている。
しかしながら、オレアナン型トリテルペン及びウルサン型トリテルペンが概日リズムの調節に有効であることは知られていなかった。
すなわち本発明は以下の通りである。
[1]オレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン又はそれらの薬理学的に許容される塩を有効成分として含む概日リズム調節剤。
[2]PER2遺伝子の発現リズムの位相を調節する、前記[1]に記載の概日リズム調節剤。
[3]オレアナン型トリテルペンが、マスリン酸及びオレアノール酸またはその混合物から選択され、ウルサン型トリテルペンがコロソリン酸、ウルソール酸又はその混合物から選択される、前記[1]又は[2]に記載の概日リズム調節剤。
[4]請求項1~3のいずれか1項に記載の概日リズム調節剤を含む、概日リズム調節用飲食品。
[5]請求項1~3のいずれか1項に記載の概日リズム調節剤を含む、概日リズムの乱れが引き起こす睡眠障害または時差ぼけの予防、緩和、または治療のための医薬組成物。
本発明において、トリテルペンは炭素数30を基本骨格とする化合物であり、その代表例として五環性トリテルペンが挙げられる。ここで、五環性トリテルペンとは、トリテルペン類の1種であり、イソプレン単位6個から成る五環性の化合物で、炭素数は30個を基本とするが、生合成過程で転位、酸化、脱離あるいはアルキル化され炭素数が前後するものも含まれる。
これらは、天然の植物から得ることも、人工的に得ることもできる。また、市販品も好適に利用することができる。五環性トリテルペンは、一般に、その骨格により分類されており、例えばオレアナン型トリテルペン、ウルサン型トリテルペン、ルパン型トリテルペン、ホパン型トリテルペン、セラタン型トリテルペン、フリーデラン型トリテルペン、タラキセラン型トリテルペン、タラキサスタン型トリテルペン、マルチフロラン型トリテルペン、ジャーマニカン型トリテルペン等が挙げられる。
五環性トリテルペン類のうち、オレアナン型トリテルペン類の代表例としてはマスリン酸、オレアノール酸等が挙げられ、ウルサン型トリテルペンの例としてはコロソリン酸、ウルソール酸等が挙げられる。
オレアナン型トリテルペン又はウルサン型トリテルペンは、前記植物の抽出物の形態で用いても良い。
概日リズムは上記時計遺伝子間の発現変動により生じる。ほぼ全身の細胞に発現している時計遺伝子が組織ごとにタイミングを合わせて(これを同調という)24時間周期で発現変動を繰り返し、その下流で代謝のリズムを作る。時計遺伝子のネガティブフィードバックをコアループとした転写翻訳調節により、24時間のリズムが生まれる。その中心的な役割を担っているPER2遺伝子の発現リズムを制御することにより、一連の時計遺伝子の発現が制御され、その結果として概日リズムの制御が可能である。
代表的な時計遺伝子の一つPer遺伝子に着目し、ヒトPER2遺伝子の発現リズムを概日リズムの指標とし、トリテルペン類の概日リズム調節機能を検討した。ヒトPER2遺伝子の発現リズムを概日リズムの指標とすることは、概日リズムの調節作用を評価する系として確立されており、例えばIsojima et al., PNAS 2009 Sep;106(37):15744-15749、Hirota et al., Science 2012 Aug;337:1094-1097 等に開示されている。
(被験物質)
コロソリン酸((株)常盤植物化学研究所、P2302)、マスリン酸(Cayman Chemical Co., 10009645)、オレアノール酸(SIGMA-ALDRICH、O5504)、ウルソール酸(SIGMA-ALDRICH、U6753)、ベツリン酸(東京化成工業(株))、スクアレン(東京化成工業(株))、スクアラン(東京化成工業(株))は市販されているものを用いた。
各トリテルペンはジメチルスルホキシド(DMSO; Wako, 048-21985)に溶解し、細胞に各試薬を添加するとき、DMSO終濃度が0.1%になるようにした。
(試験方法)
試験系として、ヒトPER2遺伝子(hPER2)プロモーター下にルシフェラーゼ遺伝子を組み込んだ概日リズムレポーターを安定発現するヒト骨肉腫由来U2OS細胞(U2OS-hPER2-Luc)を用いた。ルシフェリンールシフェラーゼ反応による発光値の変化が、PER2遺伝子のプロモーター活性変化を表す。発光を数日間計測し、連続的な発光の波形を得て概日リズムの指標とした。
(1)U2OS-hPER2-Luc細胞を35mm径ディッシュに播種し、10%牛胎児血清、ペニシリンーストレプトマイシンを添加した2mLのDMEM培地(High glucose)でコンフルエントまで培養した。
(2)50%ウマ血清を添加したDMEM培地で2時間培養し、細胞のリズムを合わせた(非特許文献7)。この2時間の50%ウマ血清入り培地での培養を以下血清刺激と表す。血清刺激の後、0.1Mのルシフェリン2μL、ペニシリンーストレプトマイシンを添加したDMEM培地2mL(最終濃度:0.1mMルシフェリン)に交換して、37℃、5%CO2条件下で3日以上連続的に発光を計測した。計測にはATTO社の発光測定装置Kronos dioを用いた。発光量は1分間の積算値を10分間隔で測定した。
(3)計測途中に装置を止め培地中に試薬(トリテルペン類)を添加した。添加後装置を再開し、続けて発光を記録した。
(4)Kronos dioに搭載されている解析システムにより、得られた発光値の経時変化の波形からノイズを除去し、デトレンドして発光リズムを得た。得られた発光リズムの位相を求め、対照群との比較検証を行った。
(結果)
発光の経時変化に対するコロソリン酸、マスリン酸、オレアノール酸、ウルソール酸の影響を図1に示す。概日リズムの位相は発光が示す波形の頂点の時間(ピーク時間、横軸:血清刺激開始時刻を基準とした培養時間)により特徴づけられる。図に示す矢印のタイミングで試薬(トリテルペン類)を添加しているが、試薬添加直後は添加の刺激により発光がやや乱れるため、発光値が回復した後(2つめ以降のピーク)の頂点位相を基準とし、対照と比較したピーク時間の前進又は後退により位相の前進又は後退を判断する。コロソリン酸、マスリン酸、オレアノール酸、ウルソール酸の添加により発現リズムの位相が後退した(図1)。なお、図2に代表例としてコロソリン酸を示すが、発現リズムの位相変異の向き・大きさは添加のタイミングで異なり、発光上昇時に添加すると後退し、発光減少時に添加すると前進する傾向が見られた。図3には、コロソリン酸を被験物質とする上記実験を複数行い、血清刺激開始からコロソリン酸を添加するまでの時間を横軸にとり、縦軸に位相変異(ピーク時刻が対照群と比較して前進した場合+、後退した場合-)をプロットした位相反応曲線を示す。横軸の時刻は血清刺激開始を0とし、血清刺激から何時間たったかを、24時間区切り(24時間を超える場合、24の倍数を引いた時間を時刻とする)で表記している。12~18時間後にコロソリン酸刺激を与えると前進、それ以外では後退する傾向を表している。この結果はコロソリン酸の刺激のタイミングによって、一方向だけでなく両方向に発現リズムの位相を動かすことが出来ることを示している。
図4にはルパン型トリテルペン類であるベツリン酸、鎖状トリテルペンであるスクアレン、スクアランの結果を示すが、添加後の位相が対照群とほぼ一致し、コロソリン酸、マスリン酸、オレアノール酸、ウルソール酸等のオレアナン型トリテルペンやウルサン型トリテルペンでみられるような発現リズム位相変異作用は見られなかった。
Claims (4)
- マスリン酸、オレアノール酸、コロソリン酸及びそれらの薬理学的に許容される塩からなる群から選択される1以上を有効成分として含む概日リズム調節剤。
- Per2遺伝子の発現リズムの位相を調節する、請求項1に記載の概日リズム調節剤。
- 請求項1又は2に記載の概日リズム調節剤を含む、概日リズム調節用飲食品。
- 請求項1又は2に記載の概日リズム調節剤を含む、概日リズムの乱れが引き起こす睡眠障害または時差ぼけの予防、緩和、または治療のための医薬組成物。
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Nature Reviews Drug Discovery,2014年,Vol.13,pp.197-216 |
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