以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。
図1~図6を参照して、本発明の一実施形態によるシールド掘進機200およびセグメント真円度測定装置100の構成について説明する。
(シールド掘進機)
図1に示すように、シールド掘進機200は、掘進機本体101と、セグメント(覆工体)SGを組み立てるエレクタ装置102と、セグメント真円度測定装置100とを備える。
掘進機本体101は、円筒状の胴部(スキンプレート)110と、胴部110の一方端(掘進方向前面)に配置されたカッタヘッド120と、カッタヘッド120によって掘削された土砂が貯留されるチャンバ130と、セグメントSGを押圧して掘進機本体101を推進させるシールドジャッキ140と、を含む。本明細書において、掘進機本体101は、シールド掘進機200のうち、土砂を掘削しトンネルを形成する構成部分とする。
胴部110は、円筒状の内面111を有し、シールド掘進機200(掘進機本体101)の外周壁を構成する。カッタヘッド120は、正面視で(トンネル前後方向から見て)円形形状を有し、回転して土砂を掘削する。カッタヘッド120は、図示しないカッタ駆動部によって中心軸線CA回りに回転駆動される。カッタ駆動部は、1つまたは複数の油圧モータなどにより構成される。
シールド掘進機200(掘進機本体101)は、カッタヘッド120を中心軸線CA回りに回転させつつ、シールドジャッキ140により既設のセグメントリング(覆工体)1を支持体として掘進方向への推進力を発生させることにより、地山の掘削を行う。カッタヘッド120により掘削された土砂は、チャンバ130内に導入される。シールド掘進機200は、チャンバ130内の土砂を排出する排土装置(図示せず)を備えており、土砂はたとえばスクリュコンベヤからなる排土装置(図示せず)によってシールド掘進機200の後方に排出された後、ベルトコンベヤなどにより後方の坑口へ向けて搬送される。
なお、シールド掘進機200には様々な形式があるが、図1に例示したシールド掘進機200は、泥土圧式のシールド掘進機200の例を示している。シールド掘進機200は、泥水式シールド掘進機であってもよい。泥水式シールド掘進機の場合には、図示しない排泥管を介してチャンバ130内に泥水を送り込んで掘削土砂をスラリー化し、スラリー化した掘削土砂を、排土装置を介して排出する。この場合の排土装置は、スラリー化した掘削土砂を排出する排泥管などにより構成される。
以下では、シールド掘進機200の各方向について、中心軸線CAに沿った方向を掘進方向とし、中心軸線CAを中心とする半径方向をシールド掘進機200の半径方向とする。また、中心軸線CA回りの回転方向(胴部110の内周に沿った方向)をシールド掘進機200の周方向とする。
(エレクタ装置)
エレクタ装置102は、セグメントSGを組み立てて、環状(リング状)のセグメントリング1を構築する装置である。本実施形態では、エレクタ装置102は、円環形状のセグメントリング1を構築する。
掘進機本体101によって所定距離の掘削が行われると、エレクタ装置102によりセグメントSGが組み立てられて、所定距離分のセグメントリング1が既設のセグメントリング1の掘進方向先端部を延長するように追加構築される。組み立てられたセグメントリング1は、シールド掘進機200が構築するトンネルの壁面を構成する。シールド掘進機200は、掘削とセグメントSGの組み立てとを繰り返すことによりセグメントリング1を構築しながら掘進する。
エレクタ装置102は、胴部110の内部に設置されている。エレクタ装置102は、胴部110内において回転可能に支持された旋回リング160と、旋回リング160を駆動する旋回駆動部170と、旋回リング160に設けられたセグメント把持部180と、を含む。
図1および図2に示すように、旋回リング160は、主として円環形状(図2参照)を有する。つまり、旋回リング160は、円形状の外周面および円形状の内周面を有する。旋回リング160は、掘進方向と直交する面内で旋回中心O1を通る軸回りに回転可能に設けられている。本実施形態では、旋回リング160は、胴部110に設けられたリング支持部112によって回転可能に支持されている。旋回リング160は、セグメント把持部180を支持し、旋回リング160自体の回転に伴ってセグメント把持部180を旋回中心O1回りに旋回させるように構成されている。設計上は、旋回中心O1は、旋回リング160の中心に一致する。
図1の構成例では、旋回リング160の外周面には、掘進方向の前方側から順に、駆動歯車161、被測定面162、転動面163が形成されている。駆動歯車161は、外歯のリングギヤとして構成されている。
リング支持部112は、旋回リング160を外周側から回転可能に支持する。すなわち、リング支持部112は、胴部110に対して固定され、旋回リング160の外周面を支持する。具体的には、図2に示すように、リング支持部112は、旋回リング160の周方向の4箇所に配置された支持ローラ112aと、支持ローラ112aを回転可能に支持するローラ台112bとを備えている。4箇所の支持ローラ112aおよびローラ台112bは、掘進方向から見て、旋回リング160に対して下側の左右に2箇所、上側の左右に2箇所配置されるように、周方向に概ね90度となる等角度間隔で配置されている。ローラ台112bは、胴部110の内面111に固定設置されている。支持ローラ112aは、旋回リング160の外周面に形成された転動面163(図1参照)と接触した状態で回転することにより、旋回リング160を回転可能に支持する。図2の構成例では、下側の2箇所の支持ローラ112aによって旋回リング160の重量が支持され、上側の2箇所の支持ローラ112aは、主として旋回リング160の偏心回転を抑制し旋回中心O1回りの回転を案内する機能を果たす。
図1に示すように、旋回駆動部170は、旋回リング160に駆動力を付与して回転させることによって、旋回リング160に設けられたセグメント把持部180を旋回させる。旋回駆動部170は、油圧モータまたは電動モータからなる駆動モータ171と、旋回リング160の外周面に形成された駆動歯車161と噛み合うピニオンギヤ172とを有する。旋回駆動部170は、駆動モータ171の出力軸に設けられたピニオンギヤ172を回転させることにより、駆動歯車161に回転駆動力を伝達して、旋回リング160を回転させる。旋回駆動部170は、胴部110の内面111から立ち上がるように設けられた支持壁113に設置されている。
セグメント把持部180は、径方向移動機構181と、軸方向移動機構182とを介して、旋回リング160から後方に突出するように旋回リング160の掘進方向後方側に取り付けられており、旋回リング160によって片持ち状に支持されている。径方向移動機構181は、旋回リング160の掘進方向後方側の表面において、図2に示すように軸方向移動機構182の両側に一対となるように取り付けられ、それぞれ軸方向移動機構182を支持している。径方向移動機構181は、軸方向移動機構182を半径方向に進退移動させることが可能であり、駆動源としてたとえば油圧ジャッキ181aを備えている。軸方向移動機構182は、左右一対の径方向移動機構181に両端部を支持されている。軸方向移動機構182は、図1に示すように掘進方向(軸方向)に延びており、セグメント把持部180を掘進方向に進退移動させることが可能である。軸方向移動機構182は、駆動源としてたとえば油圧ジャッキ(図示せず)を備えている。セグメント把持部180は、図示しないフィーダ機構によって供給されたセグメントSGの把持および把持解除が可能に構成されている。
このような構成により、エレクタ装置102は、旋回リング160を回転させてセグメント把持部180を旋回中心O1回りに旋回させ、径方向移動機構181および軸方向移動機構182によりセグメント把持部180を半径方向および軸方向の各方向に進退移動させて、セグメントリング1を組み立てることが可能である。
セグメントSGの組み立ては胴部110の内部で行われる。図1に示すように、セグメントリング1の外周面1bと胴部110の内面111との間には、所定の大きさでテールクリアランス(隙間)Cが周方向の全周に亘って設けられる。また、胴部110の内面111の掘進方向後端部には、テールシール114が周方向の全周に亘って設けられている。テールシール114は、セグメントSGの外周面1bと当接するように設けられ、テールクリアランスCの部分から外部の土砂や水などがシールド掘進機200の内部に浸入することを防ぐシール部材である。
(セグメント真円度測定装置)
図3に示すように、本実施形態のセグメント真円度測定装置100は、角度検出部10と、第1センサ20と、複数の第2センサ30(図5参照)と、制御部40(図6参照)とを備える。なお、制御部40は、特許請求の範囲の「真円度取得部」、および「クリアランス取得部」の一例である。
角度検出部10は、エレクタ装置102(旋回リング160)の旋回角度θを検出する。旋回角度θは、直接検出してもよいし、検出値を演算して間接的に取得してもよい。たとえば、角度検出部10は、旋回駆動部170が備える駆動モータ171の出力軸の回転角度を検出するロータリーエンコーダ、旋回リング160の駆動歯車161に直接噛み合う検出用ギヤ(図示せず)を備えたロータリーエンコーダ、旋回リング160に設けられた磁気式または光学式スケール(図示せず)を検出するエンコーダなどであり得る。図3では、角度検出部10は、駆動モータ171の出力軸の回転角度を検出するロータリーエンコーダである。角度検出部10は、1つに限らず複数設けられてもよい。
第1センサ20は、エレクタ装置102に設けられ、エレクタ装置102により組み立てられたセグメントリング1の内周面1aまでの半径方向の距離を測定するように構成されている。すなわち、第1センサ20は、エレクタ装置102の旋回部分に設けられ、旋回リング160の回転に伴って旋回中心O1回りに旋回する。旋回部分は、旋回リング160、径方向移動機構181、軸方向移動機構182、セグメント把持部180のいずれかの部分でありうる。第1センサ20の測定精度を確保するためには、第1センサ20が旋回リング160に対して固定されていることが好ましく、たとえば図3では、第1センサ20は、径方向移動機構181を旋回リング160に取り付けるための旋回台164に取り付けられている。図3では、第1センサ20は、旋回台164を介して旋回リング160に対して固定されており、径方向移動機構181および軸方向移動機構182によっては移動されない。なお、旋回台164における第1センサ20の設置位置は、特に限定されず、図示した位置以外でもよい。精度確保の観点からは、測定距離はなるべく短い方が好ましいため、設置位置は、旋回台164の内でセグメントリング1の内周面1aと対向する位置またはその付近が好ましい。
第1センサ20は、第1センサ20から被測定点までの距離を非接触で測定する非接触式の距離センサである。第1センサ20には、たとえば光学式(レーザ式またはLED式)、超音波式などの各種方式の距離センサを採用しうる。本実施形態では、一例としてレーザ式の距離センサにより第1センサ20が構成されている。第1センサ20は、その測定方向を、旋回リング160の中心に対して略半径方向に向けて設置されている。これにより、第1センサ20は、セグメントリング1の構築後においては、第1センサ20からセグメントリング1の内周面1aまでの距離L1を測定し、セグメントリング1の構築前においては、第1センサ20から胴部110の内面111までの距離L2を測定する。そして、第1センサ20は、旋回リング160の回転に伴って周方向に旋回することが可能であり、任意の旋回角度θにおける上記の距離L1または距離L2を測定可能である。
複数の第2センサ30は、いずれもシールド掘進機200に対して固定され、エレクタ装置102が備える旋回リング160の回転に伴う半径方向の変位を測定するように構成されている。このように、第2センサ30は、エレクタ装置102には設けられておらず、エレクタ装置102の外部で胴部110(掘進機本体101)に固定されている。固定的とは、第1センサ20とは異なり、エレクタ装置102の旋回に伴って旋回移動しないことを意味し、たとえば配置位置調節のために旋回リング160に対して手動でまたは機械的に移動することを許容する。第1センサ20は、少なくとも測定中において移動せず固定される。
第2センサ30は、第2センサ30と被測定点との間の変位を測定する変位センサである。第2センサ30には、たとえば光学式(レーザ式またはLED式)、渦電流式、超音波式、接触式などの各種方式の変位センサを採用しうる。本実施形態では、第2センサ30は、非接触式の変位センサにより構成されている。一例として、第2センサ30は、レーザ式の変位センサにより構成されている。
図3および図5に示すように、複数の第2センサ30は、それぞれ旋回リング160よりも外周側に配置され、旋回リング160の外周面に形成された円環状の被測定面162(図3参照)の変位を測定するように設けられている。つまり、それぞれの第2センサ30は、変位の測定方向が旋回リング160の中心を向くように設置されており、旋回リング160の被測定面162の半径方向の変位を測定する。
より具体的には、複数の第2センサ30は、旋回リング160の被測定面162と対向するように、シールド掘進機200の胴部110に設けられたセンサ支持部116に設置されている。そして、複数の第2センサ30は、図4に示すように、旋回リング160を外周側から回転可能に支持するリング支持部112に対して旋回軸方向にずれて配置され、リング支持部112に対する旋回リング160の転動面163とは異なる位置に形成された被測定面162の変位を測定するように設けられている。なお、旋回軸方向とは、旋回リング160の回転中心軸線の延びる方向であり、掘進方向(中心軸線CAの延びる方向)と言い換えてもよい。
図4に示す例では、旋回リング160の外周面において、転動面163よりも掘進方向前方側の位置に、被測定面162が形成されている。被測定面162は、旋回リング160の転動面163と駆動歯車161との間に形成されている。被測定面162の形成位置は、図4に示した例に限定されず、たとえば転動面163よりも掘進方向後方側の位置であってもよい。たとえば被測定面162は、転動面163よりも半径方向内側に段差状に形成された面である。被測定面162は、第2センサ30による測定を行うため、十分な真円度(加工精度)で機械加工された面である。第2センサ30は、被測定面162から半径方向に所定間隔を隔てて対向する位置で、センサ支持部116に取り付けられている。第2センサ30と被測定面162との間の所定間隔は、第2センサ30の仕様による。たとえば、第2センサ30は、測定範囲(測定可能な変位量)が数十mm、測定精度が0.1mm以下とされ、所定間隔はたとえば測定範囲の中間値に設定される。
図4に示した例では、センサ支持部116は、胴部110の内面111から延びる支持壁113と、支持壁113から掘進方向(旋回軸方向)の後方に突出するブラケット115とを含む。このため、複数の第2センサ30への配線処理は、エレクタ装置102の旋回部分を通ることなく、エレクタ装置102の外部から第2センサ30へ直接行われる。センサ支持部116の構造は特に限定されず、第2センサ30をシールド掘進機200(胴部110)内において固定した状態で保持可能であればよい。
図5に示すように、複数の第2センサ30は、周方向(旋回方向)に所定の角度間隔を隔てて配置され、それぞれが旋回リング160のうちで周方向に離れた点の変位測定を行うように設けられている。つまり、複数の第2センサ30は、旋回リング160が回転する面内において直交する2方向をそれぞれX方向、Y方向として設定した場合に、各測定結果から旋回リング160の変位のX方向成分とY方向成分とを取得できるように配置される。複数の第2センサ30の角度間隔が小さすぎる(角度間隔が0度に近すぎる)場合や、角度間隔が大きすぎる(角度間隔が180度に近すぎる)場合、変位のX方向およびY方向成分のうち一方が小さくなり過ぎるため、複数の第2センサ30の角度間隔は、90度に近い方が好ましい。複数の第2センサ30の角度間隔は、たとえば45度以上135度以下、好ましくは60度以上120度以下、さらに好ましくは90度±5度の範囲である。
本実施形態では、複数の第2センサ30は、旋回リング160の周方向において略90度の角度間隔を隔てた位置に配置されている。このため、略90度の角度間隔を隔てた2つの第2センサ30の測定方向をそれぞれX方向、Y方向とすることによって、変位のX方向およびY方向成分を直接測定できる。なお、略90度とは、たとえば第2センサ30の組付(設置)誤差などによって不可避的に90度から外れるのを許容することを意味する。第2センサ30が3つ以上ある場合、たとえば360度を等分割した角度間隔で配置してもよい。
図5の構成例では、第2センサ30は、シールド掘進機200(セグメント真円度測定装置100)に2個設けられている。第2センサ30は、3個以上設けられていてもよい。また、複数の第2センサ30は、非接触式の変位センサにより構成され、いずれもシールド掘進機200の上部側に配置されている。なお、本明細書において、「シールド掘進機の上部側」とは、シールド掘進機の高さ方向の2分の1以上の範囲内の位置であり、シールド掘進機の高さ方向の中間位置(高さの2分の1の位置)をも含む概念である。すなわち、それぞれの第2センサ30が、シールド掘進機200(胴部110)の上下方向の中間位置HCまたは中間位置HCよりも上方となる位置に配置されている。
図5の構成例では、略鉛直方向に向けた1つ目の第2センサ30aがシールド掘進機200(胴部110)の上部で旋回リング160の中心の直上位置に配置されている。略水平方向に向けた2つ目の第2センサ30bが、シールド掘進機200(胴部110)の上下方向の中間位置HCに配置されている。この構成では、水平方向をX方向、鉛直方向をY方向とすると、1つ目の第2センサ30aによって変位のY方向(鉛直方向)成分が測定され、2つ目の第2センサ30bによって変位のX方向(水平方向)成分が測定される。
本実施形態では、第1センサ20は、第2センサ30と同数または第2センサ30よりも少数、設けられている。具体的には、第1センサ20は、エレクタ装置102に対して1つ設けられている。このため、エレクタ装置102の旋回部分への配線処理は、1つの第1センサ20に対する配線処理のみで済む。
図6に示すように、制御部40は、角度検出部10の検出結果(旋回角度θ)、第1センサ20の測定結果(距離L1)、複数の第2センサ30の各測定結果(変位Ld1および変位Ld2)から、セグメントリング1の真円度を取得するように構成されたコンピュータである。
コンピュータは、CPUなどのプロセッサ41と、揮発性および/または不揮発性のメモリ42とを有し、真円度を取得するためのプログラムを実行することにより、制御部40として機能する。制御部40は、たとえばシールド掘進機200のオペレーションルーム(運転室)150の制御盤に設けられており、表示部50に真円度の測定値を含む各種情報を出力することが可能である。本実施形態では制御部40は、シールド掘進機200の動作制御を行うための制御装置として構成されており、カッタヘッド120、シールドジャッキ140、エレクタ装置102(旋回駆動部170、径方向移動機構181、軸方向移動機構182)などの動作制御を行う。セグメント真円度測定装置100の真円度取得部としての機能は、シールド掘進機200の制御部40が実行する機能の一部である。
制御部40は、角度検出部10、第1センサ20およびそれぞれの第2センサ30と電気的に接続されている。制御部40は、角度検出部10からエレクタ装置102の旋回角度θを取得する。制御部40は、第1センサ20から距離L1または距離L2を取得する。制御部40は、複数の第2センサ30の各々から、変位の測定値を取得する。図5および図6の例では、制御部40は、2つの第2センサ30aおよび30bから、それぞれ変位Ld1および変位Ld2を取得する。
制御部40は、角度検出部10により検出された旋回角度θと、複数の第2センサ30の各測定結果とに基づいて、旋回に伴うエレクタ装置102の旋回中心O1の位置ずれを取得し、取得された旋回中心O1の位置ずれと第1センサ20の測定結果とに基づいてセグメントリング1の真円度を取得するように構成されている。また、本実施形態では、制御部40は、セグメントリング1が組み立てられる前後における第1センサ20の各測定結果と、旋回中心O1の位置ずれと、に基づいて、セグメントリング1の外周面1bと胴部110の内面111との間の距離であるテールクリアランスC(図1参照)を取得するように構成されている。
(セグメント真円度測定方法)
次に、セグメント真円度測定装置100によるセグメント真円度測定方法について説明する。セグメント真円度の測定処理は、制御部40の制御により行われる。まず、セグメント真円度測定方法の説明のため、便宜的に、真円度を取得するための座標系および変数を以下のように定義する。
図7(A)に示すように、以下では、数学的表現に用いる一般的な座標系として、図5の紙面上向き(掘進方向後方)をZ軸正方向として右手系を用いて説明する。水平方向をX方向、垂直(鉛直)方向をY方向とする。水平方向の右側(第1象限)を旋回角度θの0度とし、反時計回りを回転方向の正方向とする。シールド掘進機の分野では、図7(B)に示すように、掘進機本体内から掘進方向前方をZ軸正方向とし、時計回り方向を回転方向の正方向とする座標系が広く用いられるが、このような座標系で表現してもよいことはいうまでもない。
図5に示すように、エレクタ装置102の旋回角度θ(旋回リング160の回転角度)は、水平方向からの角度(度)とする。第1センサ20は、エレクタ装置102において、旋回リング160の中心から取付半径(中心からの距離)RL、取付角度γの位置に配置されている。取付半径は、旋回リング160の中心から第1センサ20までの距離(半径)である。図5の例では、γ=約330度である。
セグメント真円度測定方法は、エレクタ装置102により1つまたは複数個のセグメントリング1が組み立てられる度に定期的に実施される。
図9に示すように、セグメント真円度測定方法は、エレクタ装置102を旋回させるとともに旋回角度θを検出するステップS1と、旋回に伴って、第1センサ20により、エレクタ装置102により組み立てられたセグメントリング1の内面までの半径方向の距離L1(図8参照)を測定するステップS2と、シールド掘進機200に対して固定された複数の第2センサ30により、旋回リング160の回転に伴う半径方向の変位(Ld1、Ld2、図10参照)を測定するステップS3と、検出された旋回角度θと、複数の第2センサ30の各測定結果とに基づいて、旋回に伴うエレクタ装置102の旋回中心O1の位置ずれ(Δx、Δy、図8参照)を取得するステップS4と、取得された旋回中心O1の位置ずれと第1センサ20の測定結果とに基づいて、セグメントリング1の真円度(ΔR、図15参照)を取得するステップS5と、を備える。
ステップS1において、制御部40は、エレクタ装置102を旋回中心O1周りに360度回転(1回転)するように制御(図10、図11参照)する。ステップS2およびS3において、制御部40は、エレクタ装置102を旋回中心O1周りに360度回転(1回転)させる間の第1センサ20と各第2センサ30との測定結果を、角度検出部10により取得されるエレクタ装置102の旋回角度θと対応付けて取得する。制御部40は、所定の旋回角度(本実施形態では、1度)ごとに、たとえば、θ=0度から359度までの360点の測定結果を取得する。
これにより、第1センサ20により、エレクタ装置102により組み立てられたセグメントリング1の内周面1aまでの距離L1(θ)(図8参照)が測定される。それぞれの第2センサ30によりエレクタ装置102の旋回に伴う旋回リング160の変位が測定される。図10および図11のように、第2センサ30aの測定結果(変位)を、Ld1(θ)とし、第2センサ30bの測定結果(変位)を、Ld2(θ)とする。制御部40は、L1(θ)、Ld1(θ)、Ld2(θ)の各測定結果を、各360点取得する。
図10および図11に示すように、旋回中心O1は、旋回時のエレクタ装置102やセグメントSGの重心変化や、自重による撓みの影響によって、旋回角度θに応じて位置ずれ(変位)を生じる。なお、図8では、説明の便宜のため、旋回中心O1の位置ずれの幾何学的関係を誇張して図示している。制御部40は、ステップS4において、旋回角度θと、Ld1(θ)、Ld2(θ)とに基づいて、旋回中心O1の位置ずれのX方向成分Δx(θ)およびY方向成分Δy(θ)を取得する。
制御部40は、エレクタ装置102を1回転させて取得した第2センサ30の各測定結果の平均値(1回転平均値mLd1、mLd2)に対する、エレクタ装置102の各旋回角度θにおける第2センサ30の測定結果(Ld1(θ)、Ld2(θ))の差分を、各旋回角度θにおける旋回中心O1の位置ずれとして取得する。
第2センサ30aの1回転平均値mLd1および第2センサ30bの1回転平均値mLd2は、下式(1)で表される。
mLd1=ΣLd1(θ)/N (θ=0度~359度)
mLd2=ΣLd2(θ)/N (θ=0度~359度) ・・・(1)
Nは、第2センサ30の測定結果のデータ点数であり、第1実施形態ではN=360である。
制御部40は、下式(2)により、旋回中心O1の位置ずれのX方向成分Δx(θ)およびY方向成分Δy(θ)を取得する。
ここで、αは、第2センサ30aの取付角度であり、βは、第2センサ30bの取付角度である。図5の例では、α=90度、β=0度となる。そのため、本実施形態では、上記式(2)は、下式(3)で表現できる。
Δx(θ)={mLd2-Ld2(θ)}
Δy(θ)={mLd1-Ld1(θ)} ・・・(3)
以下、1回転平均値mLd1、mLd2から取得される、エレクタ装置102を1回転させた際の旋回リング160の中心座標の平均位置を、仮想中心O2と定義する。図8に示すように、Δx(θ)、Δy(θ)は、仮想中心O2に対する、実際の旋回中心O1の位置ずれの各方向成分である。そのため、各旋回角度θにおける測定結果に対して、旋回中心O1の位置ずれΔx(θ)、Δy(θ)を加味すれば、旋回角度θで仮想中心O2(位置ずれが補償された旋回中心O1)を基準とした測定結果を取得できる。
ステップS5において、制御部40は、旋回中心O1の位置ずれと第1センサ20の測定結果とに基づいて、各旋回角度θにおける位置ずれが補償された仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの距離を取得する。
図8に示すように、旋回中心O1から見たセグメントリング1の内周面1aの座標をr1x(θ)、r1y(θ)とすると、r1x(θ)およびr1y(θ)は、下式(4)で表される。
r1x(θ)=(RL+L1(θ))×cos(θ+γ)
r1y(θ)=(RL+L1(θ))×sin(θ+γ) ・・・(4)
そして、各旋回角度θにおける仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離(半径)R1(θ)は、下式(5)で表される。
式(5)から分かるように、制御部40は、図12に示す旋回中心O1から見たセグメントリング1の内周面1aの座標(r1x(θ)、r1y(θ))を、旋回中心O1の位置ずれ(Δx(θ)、Δy(θ))を用いて補正することにより、位置ずれが補償された仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離R1(θ)を取得する。距離R1(θ)は、旋回中心O1の位置ずれを含まない一点(旋回リング160の中心座標の平均位置、仮想中心O2)からの距離として取得される。
ここで、旋回角度θは、エレクタ装置102の向きを表しており、旋回角度θにおける第1センサ20によるセグメントリング1の内周面1aの測定点P1の位置は、第1センサ20の取付角度γを考慮する必要がある。そこで、仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離R1(θ)を、下式(6)によって測定点P1の位置(旋回方向の位置)を基準に変換する。
RR1(θ)=R1{(θ+γ)mod360°} ・・・(6)
式(6)において、mod関数は、数値(θ+γ)を除数(360度)で割った余りを求めることを意味する。距離RR1(θ)は、旋回角度θにおいて、第1センサ20の取付角度γの分だけ回転させた位置(角度)の仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離であるから、図13に示すように、角度θで表される測定点P1に対する旋回中心O1(仮想中心)からの距離(半径)を表す。
次に、制御部40は、各旋回角度θにおける仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの距離RR1(θ)に基づいて、セグメントリング1の中心O3の位置を取得する。すなわち、図14に誇張して示したように、補償されたエレクタ装置102の仮想中心O2と、セグメントリング1の中心O3とは、必ずしも一致しない。そのため、制御部40は、仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離(RR1(θ))の分布に基づいて、セグメントリング1の中心O3の位置を求める。
まず、仮想中心O2からセグメントリング1の測定点P1までの距離(RR1(θ))(図13参照)を、下式(7)によりXY座標値(RR1x(θ),RR1y(θ))に変換する。
RR1x(θ)=RR1(θ)×cos(90°-θ)
RR1y(θ)=RR1(θ)×sin(90°-θ) ・・・(7)
次に、仮想中心O2から見たセグメントリング1の中心O3の座標(RS1x,RS1y)を、下式(8)により取得する。
RS1x=ΣRR1x(θ)/N (θ=0度~359度)
RS1y=ΣRR1y(θ)/N (θ=0度~359度)・・・(8)
このように、制御部40は、位置ずれ補償後の仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの位置座標(RR1x(θ),RR1y(θ))を取得し、セグメントリング1の内周面1aの位置座標の分布に基づいてセグメントリング1の中心O3の位置を取得する。
次に、制御部40は、各旋回角度θにおけるセグメントリング1の中心O3からのセグメントリング1の内周面1aの距離に基づいて、セグメントリング1の真円度を取得する。
まず、位置ずれ補償後の仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの位置座標(RR1x(θ),RR1y(θ))を、下式(9)により、セグメントリング1の中心O3から見た内周面1aの位置座標(RS1x(θ),RS1y(θ))(図14参照)に座標変換する。
RS1x(θ)=RR1x(θ)-RS1x
RS1y(θ)=RR1y(θ)-RS1y ・・・(9)
上式(9)より、セグメントリング1の中心O3からのセグメントSGの内周面1aの距離(半径)RS1(θ)は、下式(10)で表される。
上式(10)により、制御部40は、エレクタ装置102の1回転分の、セグメントリング1の中心O3からの半径RS1(θ)(θ=0度~359度)の全周にわたる分布(図15参照)を取得する。
そして、制御部40は、得られた半径RS1(θ)(θ=0度~359度)の分布のから、下式(11)により、真円度ΔRを取得する。
ΔR=±(RS1max-RS1min)/2 ・・・(11)
ここで、RS1maxは、半径RS1(θ)(θ=0度~359度)の分布のうちの最大値Max{RS1(θ)}であり、RS1minは、半径RS1(θ)(θ=0度~359度)の分布のうちの最小値Min{RS1(θ)}である。
このように、制御部40は、図15に示すように、取得したセグメントリング1の中心O3からの半径RS1(θ)の最大値と最小値との差分値として真円度ΔRを取得する。上式(11)では真円度ΔRを最大値と最小値との中間値からの半値幅として示している。
(テールクリアランスの測定)
次に、図16および図17を参照して、制御部40によるテールクリアランスの測定方法について説明する。テールクリアランスの測定は、セグメントリング1が組み立てられる前の胴部110の内面111に対する第1センサ20の測定結果(距離L2、図3参照)と、セグメントリング1が組み立てられた後のセグメントリング1の内周面1aに対する第1センサ20の測定結果(距離L1)と、を用いて行う。このように、テールクリアランスの測定行う構成では、第1センサ20は、セグメントリング1が組み立てられる前に、シールド掘進機200の胴部110の内面111までの距離L2を取得し、セグメントリング1が組み立てられた後に、セグメントリング1の内周面1aまでの半径方向の距離L1を取得する。
テールクリアランスCの測定は、エレクタ装置102により1つまたは複数個のセグメントリング1が組み立てられる度に定期的に実施される。テールクリアランスの測定とは、セグメントリング1の外周面1bと胴部110の内面111との間の隙間の半径方向の大きさ(距離)を測定することである。
図17に示すように、ステップS11において、制御部40は、セグメントリング1が組み立てられる前の状態で、上記ステップS1~S3と同様の処理を実行する。すなわち、制御部40は、エレクタ装置102を旋回中心O1周りに360度回転(1回転)するように制御し、エレクタ装置102を1回転させる間の第1センサ20と各第2センサ30との測定結果を、角度検出部10により取得される旋回角度θと対応付けて取得する。これにより、図16に示すように、第1センサ20により、シールド掘進機200の胴部110の内面111までの距離L2(θ)が測定される。また、それぞれの第2センサ30によりエレクタ装置102の旋回に伴う旋回リング160の変位が測定される。
ステップS12において、制御部40は、旋回中心O1の位置ずれのX方向成分Δx(θ)およびY方向成分Δy(θ)を取得する。ステップS12は、上記ステップS4の処理と同様であるので説明を省略する。
ステップS13において、制御部40は、取得された旋回中心O1の位置ずれと第1センサ20の測定結果とに基づいて、テールクリアランスCを取得する、
まず、旋回中心O1から見たセグメントリング1の内周面1aの座標を、r2x(θ)、r2y(θ)とすると、r2x(θ)およびr2y(θ)は下式(12)で表される。
r2x(θ)=(RL+L2(θ))×cos(θ+γ)
r2y(θ)=(RL+L2(θ))×sin(θ+γ) ・・・(12)
そして、旋回角度θにおける仮想中心O2から胴部110の内面111までの距離(半径)R2(θ)は、下式(13)で表される。
上式(5)と同様、上式(13)において、制御部40は、旋回中心O1から見たセグメントリング1の内周面1aの座標(r2x(θ)、r2y(θ))を、旋回中心O1の位置ずれ(Δx(θ)、Δy(θ))を用いて補正することにより、位置ずれが補償された仮想中心O2から胴部110の内面111までの距離R2(θ)を取得する。距離R2(θ)は、旋回中心O1の位置ずれを含まない一点(旋回リング160の中心座標の平均位置、仮想中心O2)からの距離として取得される。
次に、仮想中心O2から胴部110の内面111までの距離R2(θ)を、下式(14)によって、胴部110の内面111上の測定点P2の位置(角度)を基準に変換する。
RR2(θ)=R2{(θ+γ)mod360°} ・・・(14)
距離RR2(θ)は、角度θで表される測定点P2に対する仮想中心O2からの距離(半径)を表す。
次に、制御部40は、同一の角度θにおける、セグメントリング1の内周面1aまでの距離RR1(θ)および胴部110の内面111までの距離RR2(θ)と、セグメントSGの厚みBとに基づいて、下式(15)により、テールクリアランスC(θ)を取得する。
C(θ)=RR2(θ)-RR1(θ)-B ・・・(15)
なお、セグメントSGの厚みBは、セグメントの仕様から既知である。セグメントSGの厚みBは角度θによらずに一定であると見なしてよい。
以上により、制御部40は、θ=0度から359度までの360点のテールクリアランスC(θ)の測定値を取得する。なお、ステップS11の第1センサ20による胴部110の内面111までの距離L2(θ)の取得は、セグメントリング1が組み立てられる前に行われる。一方、ステップS13において上式(15)に用いるセグメントリング1の内周面1aまでの距離RR1(θ)は、セグメントリング1が組み立てられた後に取得される。そのため、テールクリアランスCの測定の実際の処理順序としては、セグメントリング1が組み立てられる前にステップS11を前もって実施しておき、セグメントリング1が組み立てられた後、上記の真円度測定処理(ステップS1~S5)を行ってセグメントリング1の内周面1aまでの距離RR1(θ)が取得され、取得された距離RR1(θ)と、前もって測定された距離L2(θ)の測定結果とを用いてステップS12およびS13が行われることになる。第2センサ30の測定結果の取得および旋回中心O1の位置ずれの取得も、真円度測定処理において取得した値を用いることができ、その場合にはステップS12を省略できる。
制御部40は、セグメント真円度の測定結果およびテールクリアランスの測定結果を、表示部50などに出力する。制御部40は、取得した真円度ΔRの測定値と、テールクリアランスC(θ)の測定値とを、それぞれ表示部50に出力する。制御部40は、たとえば図18に示すように、各旋回角度θにおけるセグメントリング1の中心からのセグメントSGの内周面1aの距離RS1(θ)をプロットした分布図を、表示部50に出力する。また、制御部40は、たとえば真円度の許容範囲(距離RS1(θ)の許容上限値AR1および許容下限値AR2を示す同心円)を分布図上に表示する。オペレータは、分布図によって、プロットされた距離RS1(θ)が許容範囲内に位置するか否かを判断して容易に真円度の評価を行うことが可能である。図18のように、制御部40は、算出した真円度ΔRの範囲を分布図上に表示させてもよいし、真円度ΔRについては算出した数値のみを表示させてもよい。
(本実施形態の効果)
本実施形態では、以下のような効果を得ることができる。
本実施形態では、上記のように、複数の第2センサ30を設けることによって、旋回リング160が回転する面内における、旋回角度θに応じた旋回リング160の変位(Ld1、Ld2)を取得することができる。ここで、旋回リング160が回転する面内において、エレクタ装置102の旋回中心O1に位置ずれが生じれば、その分だけ旋回リング160が変位するので、エレクタ装置102の任意の旋回角度θにおける旋回中心O1の位置ずれを、複数の第2センサ30の測定結果に基づく旋回リング160の変位として取得し、測定値から位置ずれ量を補償することができる。そして、旋回中心O1の位置ずれを取得するための複数の第2センサ30は、エレクタ装置102の旋回部分ではなく、シールド掘進機200に固定されるため、複数の第2センサ30への電源や信号のための配線処理等をエレクタ装置102の旋回部分へ行う必要がなく、その分だけ装置構成を簡素化することができる。これにより、従来のように3個以上の距離計を旋回部分に設ける場合と比べて、エレクタ装置102の旋回中心O1の位置ずれ量を補償した高精度な真円度測定を、より簡素な構成で実現することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の第2センサ30は、それぞれ旋回リング160よりも外周側に配置され、旋回リング160の外周面に形成された円環状の被測定面162の変位を測定するように設けられている。このように構成すれば、旋回中心O1の位置ずれに起因する旋回リング160(被測定面162)の変位を、複数の第2センサ30によって直接測定できるので、旋回中心O1の位置ずれを精度よく取得することができる。その結果、真円度測定の測定精度を向上させることができる。また、旋回リング160の外周面に形成された被測定面162を旋回リング160の外側から測定できるので、旋回リング160の内周側に第2センサ30を配置して内周面1aを測定する場合と比較して、エレクタ装置102の動作の妨げになりにくく、配線処理等もさらに簡素にすることができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の第2センサ30は、旋回リング160を外周側から回転可能に支持するリング支持部112に対して旋回軸方向にずれて配置され、リング支持部112に対する旋回リング160の転動面163とは異なる位置に形成された被測定面162の変位を測定するように設けられている。このように構成すれば、転動面163とは別個に設けられた被測定面162を第2センサ30によって測定するので、旋回リング160の転動面163を第2センサ30によって測定する場合と比較して、転動に伴う表面状態の劣化の影響を受けることがない。その結果、より高精度に、旋回中心O1の位置ずれを取得することができる。
また、本実施形態では、上記のように、複数の第2センサ30は、旋回リング160の被測定面162と対向するように、シールド掘進機200の胴部110に設けられたセンサ支持部116に設置されている。このように構成すれば、複数の第2センサ30がシールド掘進機200の胴部110に設けられたセンサ支持部116に固定設置されるだけの単純な構成を採用できるので、複数の第2センサ30への配線処理や必要な中継機器の設置を、極力簡素な構成によって実現することができる。
また、本実施形態では、上記のように、第1センサ20は第2センサ30よりも少数設けられている。このように構成すれば、第1センサ20の数が必要以上に増大することを抑制できるので、エレクタ装置102の旋回部分へ行う必要がある配線処理点数を減少させて、装置構成を効果的に簡素化することができる。
また、本実施形態では、上記のように、第1センサ20は、セグメントリング1が組み立てられる前に、胴部110の内面111までの距離L2を取得し、セグメントリング1が組み立てられた後に、セグメントリング1の内周面1aまでの半径方向の距離L1を取得するように構成され、セグメントリング1が組み立てられる前後における第1センサ20の各測定結果(L1、L2)と、旋回中心O1の位置ずれと、に基づいて、セグメントリング1の外周面1bと胴部110の内面111との間の距離であるテールクリアランスCを取得する制御部40を設ける。このように構成すれば、セグメントリング1の真円度ΔRを取得するための第1センサ20を利用して、第1センサ20からセグメントリング1の内周面1aまでの距離L1および胴部110の内面111までの距離L2をそれぞれ取得することによって、テールクリアランスCを測定できる。そのため、テールクリアランスCを測定するための専用の測定機構を設ける場合と比べて、装置構成を簡素化できる。なお、テールクリアランスCの測定では、エレクタ装置102に設けた第1センサ20を用いるため、真円度測定と同様に旋回中心O1の位置ずれの影響を受けることになるが、上記構成により取得した旋回中心O1の位置ずれに基づいて位置ずれの影響を補償できるので、テールクリアランスCの測定を高精度に行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、エレクタ装置102を1回転させて取得した第2センサ30の各測定結果の平均値に対する、エレクタ装置102の各旋回角度θにおける第2センサ30の測定結果の差分を、各旋回角度θにおける旋回中心O1の位置ずれとして取得する。このように構成すれば、第2センサ30の各測定結果の平均値となる点を仮想的な旋回中心(仮想中心O2)として定めて、旋回中心O1の位置ずれを仮想中心O2からの変位として容易に取得することができる。また、仮想中心O2を、1回転分の測定結果の平均値とすることによって、エレクタ装置102を1回転させる過程に生じる位置ずれを考慮した高精度な位置算出を行うことができる。
また、本実施形態では、上記のように、制御部40は、旋回中心O1の位置ずれと第1センサ20の測定結果とに基づいて、各旋回角度θにおける位置ずれが補償された仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの距離R1(θ)(上式(5)参照)を取得し、各旋回角度θにおける仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの距離RR1(θ)に基づいて、セグメントリング1の中心O3の位置(RS1x、RS1y)(上式(8)参照)を取得し、各旋回角度θにおけるセグメントリング1の中心O3の位置からのセグメントリング1の内周面1aの距離RS1(θ)に基づいて、セグメントリング1の真円度ΔR(上式(11)参照)を取得する。このように構成すれば、第2センサ30の測定結果から得られる旋回中心O1の位置ずれに基づいて、旋回中心O1の位置ずれの影響を除去した仮想中心O2を基準に、セグメントリング1の内周面1aの距離R1(θ)の値を取得することができる。そして、取得した仮想中心O2からのセグメントリング1の内周面1aの距離R1(θ)から、旋回中心O1の位置ずれの影響を除いたセグメントリング1の中心O3の位置を精度よく取得することができる。その結果、セグメントリング1の中心O3からのセグメントリング1の内周面1aの距離RS1(θ)を精度よく取得できるので、真円度を精度よく求めることができる。
また、本実施形態では、上記のように、シールド掘進機200に、角度検出部10と、第1センサ20と、複数の第2センサ30と、制御部40と、を設ける事によって、エレクタ装置102の旋回中心O1の位置ずれ量を補償した高精度な真円度測定を、より簡素な構成で実現することが可能なシールド掘進機200を提供することができる。
また、本実施形態のセグメント真円度測定方法では、上記のように、上記ステップS1~S5によって、エレクタ装置102の旋回中心O1の位置ずれ量を補償した高精度な真円度測定を、より簡素な構成で実現することが可能なセグメント真円度測定方法を提供することができる。
(変形例)
なお、今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記した実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更(変形例)が含まれる。
たとえば、上記実施形態では、1つ目の第2センサ30aを旋回リング160の中心の鉛直上方(90度)に配置し、2つ目の第2センサ30bを旋回リング160の中心から水平方向(0度)に配置した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図19に示す変形例のように、2つの第2センサ30を鉛直方向および水平方向とは異なる方向に配置してもよい。図19では、2つの第2センサ30が、シールド掘進機200の上部側に、所定の角度間隔を隔てて配置されている。図19では、2つの第2センサ30の角度間隔(第2センサ30aの取付角度αと第2センサ30bの取付角度βとの差)は、90度よりも小さい。この場合、位置ずれ(Δx(θ)およびΔy(θ))の算出に上式(3)を適用できないため、上式(2)から求める。この他、第2センサ30はシールド掘進機200の下部に配置されてもよい。
また、上記実施形態では、第1センサ20を1つ設け、第2センサ30を2つ設けた例を示したが、本発明はこれに限られない。図19に示した変形例では、2つ(第2センサ30と同数)の第1センサ20a、20bと、2つの第2センサ30a、30bとを設けた例を示している。この他、第1センサ20が3つ以上設けられてもよいし、第2センサ30が3つ以上設けられてもよい。第1センサ20の数は、第2センサ30と同数または第2センサ30よりも少数が好ましいが、必ずしもこれには限定せず、第1センサ20の数が第2センサ30よりも多くてもよい。
また、上記実施形態では、エレクタ装置102の旋回リング160が、リング支持部112によって外周側から回動可能に支持される構成の例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、図20に示す変形例のように、旋回リング160が、シールド掘進機200(掘進機本体101)内に固定された軸部212により、内周側から回転可能に支持されてもよい。図20では、軸部212は、中空で円形状の外周面を有し、この外周面において旋回リング160の内周面を支持している。この場合、旋回リング160の転動面163は、旋回リング160の内周面に形成される。
また、上記実施形態では、第2センサ30が旋回リング160よりも外周側に配置され、旋回リング160の外周面(被測定面162)の変位を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2センサ30が旋回リング160よりも内周側で、半径方向外側に向けて配置され、旋回リング160の内周面の変位を測定してもよい。
また、上記実施形態では、第2センサ30が旋回リング160の転動面163とは異なる被測定面162を測定する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2センサ30が旋回リング160の転動面163を測定してもよい。
また、上記実施形態では、第2センサ30がシールド掘進機200の胴部110に設けられたセンサ支持部116に設置される例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2センサ30が胴部110の内面111上に設置されてもよい。
また、上記実施形態では、エレクタ装置が360度回転(1回転)される際に、各距離計により、1度ごとに第1センサ20および第2センサ30の測定結果を取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、たとえば0.1度、0.2度、0.5度、2度、3度、5度など、1度以外の所定の旋回角度ごとに測定結果を取得してもよい。また、測定時に、エレクタ装置を複数回回転(360度以上回転)させて、第1センサ20および第2センサ30の測定結果を取得してもよい。また、たとえば0度~150度の範囲と、180度~330度の範囲とで測定結果を取得するなど、1回転にわたって測定結果を取得しなくてもよい。
また、上記実施形態では、仮想中心O2からセグメントリング1の内周面1aまでの距離R1(θ)を取得し、距離R1(θ)に基づいてセグメントリング1の中心O3の位置を取得し、セグメントリング1の中心O3からセグメントリング1の内周面1aまでの距離RS1(θ)を求めて真円度ΔRを取得した例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、第2センサ30の測定結果から得られた旋回中心O1の位置ずれと、第1センサ20の測定結果とに基づいて真円度ΔRを取得する限り、上記方法以外の方法により真円度ΔRを取得してもよい。
また、上記実施形態では、シールド掘進機200の各部の動作制御を行う制御部40により、真円度ΔRを取得する例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、シールド掘進機200の制御部40とは別に、真円度測定を行うための専用の真円度取得部(プロセッサを含むコンピュータ)を設けてもよい。
また、上記実施形態では、共通の制御部40により、真円度ΔRの取得とテールクリアランスCの取得とが行われる例を示したが、本発明はこれに限られない。本発明では、真円度ΔRの取得を行うための真円度取得部と、テールクリアランスCの取得を行うためのクリアランス取得部(プロセッサを含むコンピュータ)とを別々に設けてもよい。この他、本発明では、少なくとも真円度ΔRを測定すればよく、テールクリアランスCの測定を行わなくてもよい。テールクリアランスCの測定を行わない場合、第1センサ20は、セグメントリング1が組み立てられる前の胴部110の内面111までの距離L2の測定を行う必要はない。