(1)メッキ部品の製造方法
図1に示すフローチャートに従って、基材上に所定パターンのメッキ膜が形成されたメッキ部品の製造方法について説明する。まず、図2(a)に示す基材10の表面にアミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有するポリマーを含む触媒活性妨害層11を形成する(図1のステップS1)。基材10の材料は特に限定されないが、表面に無電解メッキ膜を形成する観点から絶縁体が好ましく、例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂、セラミックス及びガラス等を用いることができる。中でも、成形の容易性から、本実施形態で用いる基材10は、樹脂から形成される樹脂基材が好ましい。
熱可塑性樹脂としては、ナイロン6(PA6)、ナイロン66(PA66)、ナイロン12(PA12)、ナイロン11(PA11)、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン9T(PA9T)、10Tナイロン、11Tナイロン、ナイロンMXD6(PAMXD6)、ナイロン9T・6T共重合体、ナイロン6・66共重合体等のポリアミドを用いることができる。ポリアミド以外の樹脂としては、ポリプロピレン、ポリメチルメタクリレート、ポリカーボネート、アモルファスポリオレフィン、ポリエーテルイミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリエーテルエーテルケトン、ABS系樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリアミドイミド、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマー等を用いることができる。
特に、ハンダリフロー耐性を要求されるメッキ部品を製造する場合には、耐熱性と成形性を兼ね備えた熱可塑性樹脂として、ナイロン6T(PA6T)、ナイロン9T(PA9T)、10Tナイロン、11Tナイロン、ナイロンMXD6(PAMXD6)等の芳香族ナイロン及びこれらを含む共重合体が好ましい。そして、寸法安定性や剛性向上の観点から、これらの熱可塑性樹脂は、ガラスフィラーやミネラルフィラー等の無機フィラーが充填されてもよい。具体的には、ソルベイ アドバンスト ポリマーズ製のアモデル、クラレ製のジェネスタ、東洋紡製のバイロアミド、三菱エンプラ東洋紡製のレニー等を用いることができる。また、メッキ部品にハンダリフロー耐性が要求されない場合には、汎用エンプラであるABS樹脂、ポリカーボネート(PC)、ABS樹脂とPCとのポリマーアロイ(ABS/PC)等を用いることができる。また、メッキ部品として、高周波用アンテナを製造する場合には、高周波用アンテナに適した電気特性を有する熱可塑性樹脂として、ポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー、シクロオレフィンポリマーが好ましい。また、市販の熱可塑性樹脂を用いる場合、後工程のレーザー光照射工程においてレーザー光を吸収して熱を発生し易いように、黒色グレードとして市販されている黒色の熱可塑性樹脂を用いてもよい。尚、これらの熱可塑性樹脂は、単独で用いてもよいし、2種類以上を混合して用いてもよい。
熱硬化性樹脂としては、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂等を用いることができる。透明な熱硬化性樹脂を用いることで、透明でハンダリフロー耐性を有するデバイス(メッキ部品)を製造できる。光硬化性樹脂としては、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド等を用いることができる。また、セラミックスとしては、アルミナ、窒化アルミ、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸バリウム、シリコンウエハ等を用いることができる。
後工程のレーザー光照射工程において、レーザー光を吸収して熱を発生し易いように、基材10はカーボン等のフィラーや、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジイモニウム化合物、アゾ化合物等の光吸収色素を光吸収剤として含有してもよい。
本実施形態で用いる基材10は、市販品であってもよいし、市販の材料から成形等により製造してもよい。例えば、粉末射出成形方法により複雑形状のセラミックス基材を製造してもよい。また、市販の熱可塑性樹脂を所望の形状に成形して、樹脂成形体(基材)を製造してもよい。熱可塑性樹脂の成形方法としては、汎用の射出成形方法や押出成形方法を用いることができる。樹脂成形体は、押出成形で製造するシート状の成形体であってもよい。また、基材10は、光硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂を用いて3Dプリンターにより造形してもよい。3Dプリンターを用いると、複雑形状の基材が製造でき、この基材を用いて複雑形状のMIDを製造できる。
本実施形態で用いる基材10は、内部に発泡セルを有する発泡成形体であってもよい。基材10として発泡成形体を用いることにより、軽量で寸法精度の高いMIDを製造できる。発泡成形体中の発泡セルは独立気泡であっても連続気泡であってもよい。発泡成形体は、化学発泡剤又は超臨界流体等の物理発泡剤を用いて、熱可塑性樹脂を発泡成形することにより製造できる。
触媒活性妨害層11(以下、適宜、「妨害層」と記載する)は、アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有するポリマーを含む(以下、適宜「アミド基/アミノ基含有ポリマー」と記載する)。アミド基/アミノ基含有ポリマーは、後工程において妨害層11上に付与される無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる(妨害する)又は低下させる触媒活性妨害剤として作用する。触媒活性妨害剤として作用する、アミド基/アミノ基含有ポリマーは、様々な種類の基材の表面を樹脂層(触媒活性妨害層)として均一に覆うことができ、これにより、メッキ膜形成を望まない部分の無電解メッキ反応を抑制できる。したがって、本実施形態の製造方法は、基材選択の幅が広い。
アミド基/アミノ基含有ポリマーは、アミド基のみ有するポリマーであってもよいし、アミノ基のみを有するポリマーであってもよいし、アミド基及びアミノ基の両方を有するポリマーであってもよい。アミド基/アミノ基含有ポリマーは、任意のものを用いることができるが、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる観点からは、アミド基を有するポリマーが好ましく、また、側鎖を有する分岐ポリマーが好ましい。分岐ポリマーにおいては、側鎖がアミド基及びアミノ基の少なくとも一方を含むことが好ましく、側鎖がアミド基を含むことがより好ましい。
アミド基/アミノ基含有ポリマーが無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げるメカニズムは定かではないが、以下のように推測される。アミド基及び/又はアミノ基は、無電解メッキ触媒に吸着、配位、反応等して複合体を形成し、これにより無電解メッキ触媒は、アミド基/アミノ基含有ポリマーにトラップされる。特に、分岐ポリマーの側鎖に含まれるアミド基及び/又はアミノ基は自由度が高く、また、分岐ポリマー1分子中には、多数のアミド基及び/又はアミノ基を含むことができる。このため、分岐ポリマーは、複数のアミド基及び/又はアミノ基により、無電解メッキ触媒を効率的且つ強力にトラップできる。例えば、分岐ポリマーは多座配位子として作用し、複数のアミド基及び/又はアミノ基が無電解メッキ触媒に配位してキレート構造を形成できる。この様にトラップされた無電解メッキ触媒は、触媒活性を発揮できない。例えば、パラジウム等の金属が無電解メッキ触媒として妨害層11上に付与されると、分岐ポリマーのアミド基及び/又はアミノ基がパラジウムをパラジウムイオンの状態でトラップする。パラジウムイオンは無電解メッキ液中に含まれる還元剤によって還元されて金属パラジウムとなり、無電解メッキ触媒活性を発揮する。しかし、分岐ポリマーにトラップされたパラジウムイオンは、無電解メッキ液中に含まれる還元剤によっても還元されず、触媒活性を発揮できない。これにより、妨害層11か形成された基材10の表面では、無電解メッキ膜の形成が抑制される。ただし、このメカニズムは推定に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
アミド基/アミノ基含有ポリマーに含まれるアミド基は、特に限定されず、1級アミド基、2級アミド基、3級アミド基のいずれであってもよく、アミド基/アミノ基含有ポリマーに含まれるアミノ基は、特に限定されず、1級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基のいずれであってもよい。これらのアミド基及びアミノ基は、ポリマー内に1種類のみが含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
アミド基/アミノ基含有ポリマーとして分岐ポリマーを用いる場合、無電解メッキ触媒の触媒活性を効率的に妨害する観点から、分岐ポリマーに含まれるアミド基は、2級アミド基であることが好ましく、また、アミド基の窒素には、イソプロピル基が結合していることが好ましい。また、分岐ポリマーに含まれるアミノ基は、1級アミノ基(‐NH2)又は2級アミノ基(‐NH‐)が好ましい。
分岐ポリマーの側鎖は、アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有し、更に硫黄を含む基を有してもよい。硫黄を含む基は、上述のアミド基及びアミノ基と同様に無電解メッキ触媒を吸着等する傾向がある。これにより、分岐ポリマーが無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる効果が促進される。硫黄を含む基は、特に限定されず、例えば、スルフィド基、ジチオカルバメート基、チオシアン基であり、好ましくは、スルフィド基又はジチオカルバメート基である。これらの硫黄を含む基は、分岐ポリマーの側鎖に1種類のみが含まれてもよいし、2種類以上が含まれてもよい。
分岐ポリマーは、デンドリティックポリマーであることが好ましい。デンドリティックポリマーとは、頻繁に規則的な分岐を繰り返す分子構造で構成されたポリマーであり、デンドリマーとハイパーブランチポリマーに分類される。デンドリマーは、核となる分子を中心に、規則正しく完全に樹状分岐した構造をもつ、直径数nmの球形のポリマーであり、ハイパーブランチポリマーは、完全な樹状構造をもつデンドリマーとは異なり、不完全な樹状分岐をもつポリマーである。デンドリティックポリマーの中でも、ハイパーブランチポリマーは、比較的合成が容易で且つ安価であるため、本実施形態の分岐ポリマーとして好ましい。
本実施形態において、デンドリマー及びハイパーブランチポリマーの核となる分子以外の部分をデンドリマー及びハイパーブランチポリマーの側鎖と定義する。したがって、本実施形態に用いるデンドリマー及びハイパーブランチポリマーは、側鎖である、核となる分子以外の部分にアミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有する。デンドリティックポリマーは、自由度の高い側鎖部分が多いため、無電解メッキ触媒に吸着し易く、効率的に無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害できる。このため、デンドリティックポリマーは、薄膜化しても触媒活性妨害剤として効率よく作用する。また、デンドリティックポリマーの溶液は高濃度でも低粘度であるため、複雑形状の基材に対しても、均一な膜厚の妨害層を形成できる。更に、デンドリティックポリマーは耐熱性が高い。このため、ハンダリフロー耐性を要求されるメッキ部品に好適である。
デンドリティックポリマーは、アミド基及び/又はアミノ基に加えて、基材との親和性が高い官能基を含んでもよい。これにより、図2に示す基材10と妨害層11との密着性を強められる。基材との親和性が高い官能基は、基材の種類により適宜選択することができる。例えば、基材がポリフェニレンサルファイド、液晶ポリマー等の芳香環を有する材料である場合、デンドリティックポリマーは芳香環を含むことが好ましい。基材がガラスである場合、デンドリティックポリマーは、ガラスと親和性の高いシラノール基を含むことが好ましい。
本実施形態のデンドリティックポリマーは、数平均分子量が、3,000〜30,000であり、重量平均分子量が、10,000〜300,000であることが好ましく、数平均分子量が、5,000〜30,000であり、重量平均分子量が、20,000〜200,000であることがより好ましい。数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲より小さいと、1分子あたりの官能基量が減少し、触媒活性妨害剤としての効率が低下する虞がある。一方で、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲より大きいと、例えば、溶剤にデンドリティックポリマーを溶解して触媒活性妨害層11を形成する製造方法を用いた場合、溶剤への溶解度が不十分となり、製造上の不利益が生じる虞がある。
本実施形態のデンドリティックポリマーは、下記式(1)で表される分岐ポリマーであることが好ましい。下記式(1)で表される分岐ポリマーは、触媒活性妨害剤として効率よく作用する。
式(1)において、A
1は芳香環を含む基であり、A
2は硫黄を含む基又はアミノ基であり、R
1は炭素数が1〜5である置換若しくは無置換のアルキレン基又は単結合であり、R
2及びR
3は、それぞれ、炭素数が1〜10である置換若しくは無置換のアルキル基又は水素である。R
1、R
2及びR
3は、それぞれ、直鎖又は分岐鎖であってもよい。また、m1は1〜10であり、n1は5〜100である。
また、式(1)において、A1が下記式(2)で表される基であり、A2がジチオカルバメート基であり、R1が単結合であり、R2が水素であり、R3がイソプロピル基であることが好ましい。
本実施形態の分岐ポリマーは、デンドリティックポリマー以外の分岐ポリマーであってもよい。この場合、分岐ポリマーは、側鎖に加えて主鎖を有する。主鎖と側鎖とを有する分岐ポリマーは、主鎖がアミド基及び/又はアミノ基を含んでもよいし、側鎖がアミド基及び/又はアミノ基を含んでもよい。無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する観点からは、側鎖がアミド基及び/又はアミノ基を含むことが好ましい。分岐ポリマーの主鎖は、基材との親和性が高い官能基を含んでもよい。これにより、図2に示す基材10と妨害層11との密着性を強められる。分岐ポリマーが主鎖と側鎖とを有する場合、主鎖が基材との親和性が高い官能基を含むことにより基材との密着性向上機能を有し、側鎖がアミド基及び/又はアミノ基を含むことにより触媒活性妨害機能を有することが好ましい。このように機能を分離することにより、アミド基及び/又はアミノ基を有する側鎖の自由度がより高まり、分岐ポリマーが無電解メッキ触媒をトラップし易くなると推測される。基材との親和性が高い官能基は、上述したデンドリティックポリマーと同様に、基材の種類により適宜選択することができる。
本実施形態の主鎖と側鎖とを有する分岐ポリマーは、数平均分子量が1,000〜100,000であり、重量平均分子量が1,000〜1,000,000であることが好ましく、数平均分子量が、5,000〜50,000であり、重量平均分子量が、5,000〜200,000であることがより好ましい。数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲より小さいと、1分子あたりの官能基量が減少し、触媒活性妨害剤としての効率が低下する虞がある。一方で、数平均分子量及び重量平均分子量が上記範囲より大きいと、例えば、溶剤に分岐ポリマーを溶解して触媒活性妨害層11を形成する製造方法を用いた場合、溶剤への溶解度が不十分となり、製造上の不利益が生じる虞がある。
本実施形態の主鎖と側鎖とを有する分岐ポリマーは、アクリルアミド系樹脂であってもよく、下記式(3)で表される分岐ポリマーであることが好ましい。下記式(3)で表される分岐ポリマーは、触媒活性妨害剤として効率よく作用する。
式(3)において、R
4は、炭素数が1〜10である置換若しくは無置換のアルキル基、硫黄を含む基、アミノ基、カルボキシル基、イミド基及びシラン基からなる群から選択される基、又は水素であり、R
5は、炭素数が1〜10である置換若しくは無置換のアルキル基、又は水素である。R
4及びR
5は、直鎖又は分岐鎖であってもよい。また、n2は、5〜1000である。
また、式(3)において、R4がメチル基又は下記式(4)で表される基であり、R5がイソプロピル基であることが好ましい。
本実施形態で用いるアミド基/アミノ基含有ポリマーは、アミド基及び/又はアミノ基を有しているポリマーであれば、分岐ポリマー以外のポリマーであってもよい。即ち、側鎖を有さず、主鎖からなる直鎖ポリマーであって、主鎖がアミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有してもよい。アミド基/アミノ基含有ポリマーの主鎖は、更に、イミド基を有してもよい。イミド基は、上述のアミド基及びアミノ基と同様に無電解メッキ触媒を吸着等する傾向がある。これにより、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨げる効果が促進される。イミド基を有するポリマーとしては、例えば、ポリアミドイミドが挙げられる。
妨害層11は、アミド基/アミノ基含有ポリマーに加えて、後工程のレーザー光照射工程においてレーザー光を吸収して熱を発生し易いように、カーボン等のフィラーや、シアニン化合物、フタロシアニン化合物、ジチオール金属錯体、ナフトキノン化合物、ジインモニウム化合物、アゾ化合物等の光吸収色素を光吸収剤として含有してもよい。光吸収剤は、溶剤等に溶解又は分散させて妨害層11の表面に付与してもよいが、作業の簡便性から妨害層11中に予め含有させておくことが好ましい。
妨害層11は、アミド基/アミノ基含有ポリマー以外のポリマーを含まなくてもよいし、また、アミド基/アミノ基含有ポリマーと共に、触媒活性を妨害しない他のポリマーを含んでもよい。触媒活性を妨害する観点からは、アミド基/アミノ基含有ポリマー以外のポリマーを含まない方が好ましいが、基材10への密着性等の他の特性を向上させるために、他のポリマーを含んでもよい。更に、妨害層11は、必要に応じて界面活性剤等の公知の添加剤を含有してもよい。
アミド基/アミノ基含有ポリマーは、妨害層11の主成分であることが好ましい。妨害層11中にアミド基/アミノ基含有ポリマーは、例えば、30重量%〜100重量%で含まれ、好ましくは、50重量%〜100重量%で含まれ、より好ましくは、70重量%〜100重量%で含まれる。上記範囲で妨害層11中にアミド基/アミノ基含有ポリマーを含むことにより、妨害層11は、基材10の上で十分にメッキ膜の生成を抑制できる。
妨害層11は、基材10の耐熱性等の物性や誘電率等の電気特性に影響を与えないように、薄い方が好ましい。妨害層11の厚みは、例えば、5000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、300nm以下が更により好ましい。一方で、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する観点からは、例えば、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更により好ましい。尚、所定パターン以外での無電解メッキ膜の生成を抑制する観点から、妨害層11は、後述する無電解メッキ工程において、少なくとも無電解メッキ液と接触する基材10表面の領域に形成することが好ましく、基材10の表面全面に形成することがより好ましい。
基材10の表面に妨害層11を形成する方法は、特に限定されない。例えば、溶剤にアミド基/アミノ基含有ポリマーを溶解又は分散させたポリマー液を調製し、ポリマー液を基材10に接触させて妨害層11を形成してもよい。ポリマー液を基材10に接触させる方法としては、ポリマー液を基材10に塗布してもよいし、ポリマー液に基材10を浸漬してもよい。具体的な形成方法としては、ディップコート、スクリーンコート、スプレーコート等が挙げられる。中でも、形成される妨害層11の均一性と作業の簡便性の観点から、ポリマー液に基材10を浸漬する方法(ディップコート)が好ましい。
妨害層11の形成においてポリマー液を用いる場合、ポリマー液中のアミド基/アミノ基含有ポリマーの配合量(アミド基/アミノ基含有ポリマー濃度)は、特に限定されず、アミド基/アミノ基含有ポリマー及び溶剤の種類、アミド基/アミノ基含有ポリマーの分子量、形成される妨害層11の膜厚等を考慮して適宜決定できるが、例えば、0.01重量%〜5重量%であり、0.1重量%〜2重量%であることが好ましい。
ポリマー液に用いる溶剤(溶媒)は、アミド基/アミノ基含有ポリマーが溶解又は分散可能な溶剤であり、且つ基材10を変質させない溶剤であれば特に限定されない。例えば、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトンなどケトン類、エタノール、メタノール、イソプロピルアルコールなどアルコール類、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、2−ブトキシエタノールなどグリコールエーテル類、トルエン、ベンゼンなど芳香環を持つ化合物、N-メチルピロリドン、シクロヘキサノン、テトラヒドロフラン及びそれらの混合物が好ましい。ポリマー液は、アミド基/アミノ基含有ポリマー、溶剤に加えて、必要に応じて、上述した光吸収剤、他のポリマー、界面活性剤等の公知の添加剤を含有してもよい。ポリマー液は、これら構成成分を従来公知の方法により混合して調製できる。
ポリマー液に基材10を浸漬するときのポリマー液の温度及び浸漬時間は特に限定されず、アミド基/アミノ基含有ポリマー及び溶剤の種類、アミド基/アミノ基含有ポリマーの分子量、形成される妨害層の膜厚等を考慮して適宜決定できる。ポリマー液の温度は、例えば、0℃〜100℃であり、10℃〜50℃であることが好ましく、浸漬時間は、例えば、1秒〜10分であり、5秒〜2分であることが好ましい。
以上説明した工程(図1のステップS1)によって、図2(a)に示す、基材10と、基材10の表面に形成された、アミド基/アミノ基含有ポリマーを含む樹脂層11とを有する無電解メッキ用の複合材料50が得られる。複合材料50に、後述するレーザー光照射工程(図1のステップS2)、無電解メッキ付与工程(ステップS3)等を経て、無電解メッキを施すことで(ステップS4)、レーザー光照射部分に選択的に無電解メッキ膜を形成することができる。
次に、得られた複合材料50の表面、即ち、妨害層11が形成された基材10の表面の一部に光を照射するか、又は基材10の表面の一部を加熱する(図1のステップS2)。光を照射する方法は、特に限定されず、例えば、レーザー光を基材10の表面に所定パターンに従って照射する方法(レーザー描画)や、光を照射しない部分をマスクした後に、基材10の表面全体に光を照射する方法等が挙げられる。基材10の表面の一部に光を照射することにより、光が熱に変換され、基材10の表面は加熱されると推測される。上述したように、基材10が光吸収剤を含有する場合には、基材10に照射された光を効率的に熱に変換できる。また、基材10の表面に光を照射せずに基材10の表面を加熱する方法としては、凸部によりパターンが形成された簡易金型等で基材10の表面を直接、熱プレスする方法が挙げられる。作業の簡便性及び加熱部分の選択性に優れていること、更に、パターンの変更及び微細化が容易であることから、レーザー描画により基材10を加熱することが好ましい。
レーザー光は、例えば、CO2レーザー、YVO4レーザー、YAGレーザー等のレーザー装置を用いて照射でき、これらのレーザー装置は、妨害層11に用いるアミド基/アミノ基含有ポリマーの種類に応じて適宜選択できる。
本実施形態では、レーザー光を基材10の表面に所定パターンに従って照射すること(レーザー描画)によって、レーザー光の照射された部分が加熱され、加熱部分の妨害層11は除去される。ここで、「妨害層11の除去」とは、例えば、加熱部分の妨害層11が、蒸発により消失することを意味する。妨害層11が付与された基材10の表面に所定パターンのレーザー描画を行うことにより、図2(b)に示すように、所定パターンの妨害層除去部分10aと、妨害層11が残存している妨害層残存部分10bとを形成できる。尚、加熱部分である妨害層除去部分10aでは、妨害層11と共に基材10の表層部分が蒸発して消失してもよい。また、「妨害層11の除去」とは、妨害層11が完全に消失するだけでなく、後工程の無電解メッキ処理の進行に影響がない程度に妨害層11が残存する場合も含む。妨害層11が残存していても、後工程の無電解メッキ処理に影響なければ、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する作用が消失したことになる。更に、本実施形態では、妨害層11の加熱部分が変性又は変質して妨害層11として作用しなくなる場合も、「妨害層11の除去」に含める。例えば、アミド基/アミノ基含有ポリマーのアミド基及び/又はアミノ基が変性又は変質し、その結果、アミド基/アミノ基含有ポリマーが無電解メッキ触媒をトラップできない場合が挙げられる。この場合、妨害層11の加熱部分は完全に消失するのではなく、変性物(変質物)が残存する。この変性物は、触媒活性を妨害しない。このため、妨害層11が変性又は変質した部分も、図2(b)に示す妨害層11が消失した妨害層除去部分10aと同様の作用を生じる。
本実施形態において、レーザー光を照射した後、基材10の表面を洗浄することが好ましい。レーザー光照射によって妨害層除去部分10aに妨害層11の変性物(変質物)が残存した場合、その変性物(変質物)が基材10の表面に広く飛散する虞がある。この変性物(変質物)は触媒活性を妨害しない。このため、妨害層残存部分10bに変性物(変質物)が付着すると、後工程の無電解メッキ時に変性物(変質物)付着部分にメッキ膜が生成してしまう。レーザー光を照射した後、基材10の表面を洗浄することで、基材10の表面に飛散した変性物(変質物)を除去できる。これにより、レーザー光照射部以外でのメッキ膜の生成を抑制し、メッキ選択性が向上する。基材10の表面の洗浄は、基材10の表面の一部を加熱又は光照射する工程と(図1のステップS2)、基材10の表面に無電解メッキ液を接触させる工程(図1のステップS4)との間に行うことが好ましい。基材10の表面の洗浄は、基材10の表面を加熱等する工程と(図1のステップS2)、無電解メッキ工程(図1のステップS4)との間であれば、無電解メッキ触媒の付与工程(図1のステップS)の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。但し、メッキ選択性を向上させる観点からは、基材10の表面の洗浄は、無電解メッキ触媒の付与工程の前に行った方が好ましい。
基材10の表面を洗浄する方法は、基材10の表面に飛散した妨害層11の変性物(変質物)を除去できるのであれば、任意の方法を用いることができる。例えば、妨害層11の変性物(変質物)を溶解可能な洗浄液に、レーザー光を照射した基材10を浸漬してもよい(浸漬法)。洗浄液としては、例えば、脱脂剤、表面調整剤、コンディショナー等のメッキ用前処理剤;界面活性剤の溶液;及びアルカリ溶液等を用いることができる。
次に、レーザー光を照射した基材10の表面に無電解メッキ触媒を付与する(図1のステップS3)。無電解メッキ触媒としては、無電解メッキ触媒能を有するものであれば任意のものを用いることができるが、例えば、Pd、Ni、Pt、Cu等の金属微粒子、金属錯体、金属アルコキシド等を用いることができ、中でも、触媒活性能が高いPdを含む無電解メッキ触媒が好ましい。
無電解メッキ触媒を基材10の表面に付与する方法は、特に限定されない。例えば、無電解メッキ触媒を溶媒に溶解又は分散させた触媒液を調製し、その触媒液を基材10に塗布する、又は触媒液に基材10を浸漬することにより、基材10の表面に無電解メッキ触媒を付与してもよい。触媒付与の均一性の観点からは、触媒液に基材10を浸漬する方法が好ましい。
触媒液に用いる溶媒は、触媒を溶解又は分散できる溶媒であれば特に限定されないが、例えば、水、メタノール、エタノール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブタノール等のアルコール、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素等を用いることができる。炭化水素としては、市販の高沸点溶剤(エクソンモービル社製、アイソパー)等を用いてもよい。触媒液に用いる無電解メッキ触媒は、メッキ触媒活性の高さから、パラジウム錯体が好ましく、具体的には、テトラクロロパラジウム酸ナトリウム、テトラクロロパラジウム酸カリウム、酢酸パラジウム、塩化パラジウム、アセチルアセトナトパラジウム(II)、ヘキサフルオロアセチルアセトナトパラジウム(II)金属錯体等を用いることができる。触媒液中の無電解メッキ触媒の配合量(触媒濃度)は、例えば、0.01重量%〜5重量%とすることができる。
無電解メッキ触媒を基材10の表面に付与する他の方法としては、市販の無電解メッキ用触媒液を用いた汎用の方法、例えば、センシタイザー・アクチベータ法やキャタライザー・アクセラレータ法が挙げられる。センシタイザー・アクチベータ法では、まず、無電解メッキ触媒が吸着し易くなるように、例えばSn2+を含む液で基材10の表面を処理し(センシタイザー処理)、次に、無電解メッキ触媒(例えば、Pd2+)を含む液に基材10を浸漬する(アクチベータ処理)。キャタライザー・アクセラレータ法では、まず、無電解メッキ触媒を含む液(例えば、Sn2+とPd2+の混合によって得られるパラジウムコロイド液)に基材10を浸漬し(キャタライザー処理)、次に基材10を塩酸溶液等に浸せきしてメッキ触媒の金属を基材10の表面に析出させる(アクセラレータ処理)。
次に、前記基材10の表面に無電解メッキ液を接触させる(図1のステップS4)。これにより、図2(c)に示すように、基材10の表面の加熱部分に無電解メッキ膜85を形成し、選択的にメッキ膜が形成されたメッキ部品100を製造できる。無電解メッキ液としては、目的に応じて任意の汎用の無電解メッキ液を使用しできるが、触媒活性が高く液が安定であるという点から、無電解ニッケルリンメッキ液、無電解銅メッキ液、無電解ニッケルメッキ液が好ましい。
無電解メッキ膜85上には、更に、異なる種類の無電解メッキ膜を形成してもよいし、電解メッキにより電解メッキ膜を形成してもよい。基材10上のメッキ膜の総厚みを厚くすることにより、所定パターンのメッキ膜を電気回路として用いた場合に電気抵抗を小さくできる。メッキ膜の電気抵抗を下げる観点から、無電解メッキ膜85上に積層するメッキ膜は、無電解銅メッキ膜、電解銅メッキ膜、電解ニッケルメッキ等が好ましい。また、電気的に孤立した回路には電解メッキを行えないため、このような場合は、無電解メッキにより、基材10上のメッキ膜の総厚みを厚くすることが好ましい。また、ハンダリフローに対応できるようメッキ膜パターンのハンダ濡れ性を向上させるために、錫、金、銀等のメッキ膜をメッキ膜パターンの最表面に形成してもよい。
本実施形態では、妨害層11が残存している妨害層残存部分10bと、加熱により妨害層11が除去された、所定パターンの妨害層除去部分10aが基材10の表面に存在する。そして、この基材10の表面に前記無電解メッキ触媒を付与して、無電解メッキ液を接触させることにより、所定パターンの妨害層除去部分10aのみに、無電解メッキ膜85を形成できる。本実施形態では、様々な材質の基材に対して簡易な製造プロセスにより、所定パターン以外でのメッキ膜の生成を抑制し、所定パターンのみにメッキ膜85を形成できる。
以上説明した本実施形態のメッキ部品の製造方法は、触媒活性妨害剤としてアミド基/アミノ基含有ポリマーを用いる。このため、様々な種類の基材の表面を触媒活性妨害剤の樹脂層(触媒活性妨害層)で均一に覆うことができ、これにより、メッキ膜形成を望まない部分の無電解メッキ反応を抑制できる。したがって、本実施形態の製造方法は、基材選択の幅が広い。例えば、表面粗さが大きい基材、空隙を有する基材、表面に発泡痕ある発泡成形体等の表面にも、均一な膜厚の妨害層を形成できる。このように、基材選択の幅が広い本実施形態のメッキ部品の製造方法は、従来では困難であったレンズやメガネ等光学部材や薄肉シート形状の立体回路成形体を簡便な方法により製造可能である。
また、従来の無電解メッキ方法においては、無電解メッキ触媒付与工程と、無電解メッキ工程との間で基材を固定する固定治具の交換を行わずに、これらの工程を連続して実施すると、固定治具上にも無電解メッキ膜が形成される問題が生じていた。本実施形態では、基材への触媒活性妨害層の形成工程(図1のステップS1)において、基材と共に基材の固定治具上にも触媒活性妨害層を形成することにより、この問題を解決できる。即ち、固定治具上に形成された触媒活性妨害層により、無電解メッキ膜の形成が抑制される。したがって、基材の固定治具の交換を行う必要がなく、メッキ部品の製造効率を改善できる。
(2)メッキ部品
図2(c)に本実施形態で製造する、選択的にメッキ膜が形成されたメッキ部品100を示す。メッキ部品100は、基材10と、基材10の表面の一部に形成されたメッキ膜85と、基材表面のメッキ膜85が形成されていない領域に形成された触媒活性妨害層(樹脂層)11とを有する。メッキ膜85は、基材10の表面に所定パターンを形成してもよく、この場合、所定パターンを除く基材10の表面に触媒活性妨害層(樹脂層)11が形成される。
触媒活性妨害層11は、アミド基/アミノ基含有ポリマーを含有する樹脂層であり、妨害層の主成分はアミド基/アミノ基含有ポリマーである。妨害層11中にアミド基/アミノ基含有ポリマーは、例えば、30重量%〜100重量%で含まれ、好ましくは、50重量%〜100重量%で含まれ、より好ましくは、70重量%〜100重量%で含まれる。また、触媒活性妨害層11の膜厚は、例えば、5000nm以下が好ましく、1000nm以下がより好ましく、300nm以下が更により好ましい。一方で、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する観点からは、例えば、10nm以上が好ましく、30nm以上がより好ましく、50nm以上が更により好ましい。
所定パターンのメッキ膜85は導電性を有していてもよい。この場合、所定パターンのメッキ膜85は、電気配線パターン、電気回路、アンテナパターン等として作用し、所定パターンのメッキ膜85を有するメッキ部品100は、回路部品やアンテナを含む、電子部品として作用する。また、所定パターンのメッキ膜85は、基材10の一面のみに平面的に形成させてもよいし、基材10の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成されてもよい。所定パターンのメッキ膜85が基材10の複数の面に亘って、又は球面等を含む立体形状の表面に沿って立体的に形成され、且つ導電性を有する場合、所定パターンのメッキ膜85は立体電気回路や立体アンテナとして作用し、このような所定パターンのメッキ膜85を有するメッキ部品100は、立体回路成形部品(MID)やMIDアンテナとして作用する。
メッキ膜85を含むパターンが電気配線パターンとして作用する場合、隣接する電気配線間に触媒活性妨害層11が存在する。この触媒活性妨害層11により電気配線間の絶縁性が向上し、電子部品の配線密度を高められる。また、電子部品においては、電圧の印加により電気配線から金属イオンが排出されるマイグレーションという課題がある。本実施形態のメッキ部品100は、隣接する電気配線間の触媒活性妨害層11が電気配線から排出される金属イオンをトラップし、配線間での電気ショートを未然に防止することも期待できる。また、メッキ膜85を含むパターンがアンテナパターンである場合においても、アンテナパターン以外の領域に絶縁体である触媒活性妨害層11が存在することで、アンテナ特性が向上する。
<変形例>
上で説明した本実施形態において製造されたメッキ部品100は、図2(c)に示すように、アミド基/アミノ基含有ポリマーを含む触媒活性妨害層11を有するが、本実施形態はこれに限定されない。本実施形態の製造方法は、更に、基材10の表面から妨害層11を除去する工程を含んでもよい。本変形例では、基材10の表面に無電解メッキ触媒を付与する工程(図1のステップS3)の後、又は無電解メッキ膜85を形成する工程(同、ステップS4)の後に、基材10から触媒活性妨害層11を除去する。したがって、本変形例で製造されるメッキ部品は、図2(c)に示すメッキ部品100とは異なり、妨害層11を有さない。
基材10から妨害層11を除去する方法としては、基材10を洗浄液で洗浄することによって、アミド基/アミノ基含有ポリマーを洗浄液に溶出させて除去する方法が挙げられる。洗浄液は、アミド基/アミノ基含有ポリマーを溶解させ、かつ基材10を変質させない液であれば特に限定されず、基材10及びアミド基/アミノ基含有ポリマーの種類に応じて、適宜、選択できる。例えば、上述したポリマー液に用いる溶剤(溶媒)と同様のものを用いることができる。
以下、実施例及び比較例により本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例及び比較例により制限されない。尚、実験1〜26に用いたポリマーA〜Fの化学構造式を表す式(5)〜(10)については、実験26の説明の後にまとめて記載する。
[実験1]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるアミド基/アミノ基含有ポリマーとして式(5)で表されるポリマーAを用いた。
(1)ポリマーAの合成
式(8)で表される、市販のハイパーブランチポリマー(ポリマーD)にアミド基を導入して、式(5)で表されるポリマーAを合成した。式(5)で表されるポリマーAは、式(1)で表されるポリマーであり、式(1)において、A1が式(2)で表される基であり、A2がジチオカルバメート基であり、R1が単結合であり、R2が水素であり、R3がイソプロピル基である。
まず、式(8)で表されるハイパーブランチポリマー(日産化学工業製、ハイパーテック HPS−200)(1.3g、ジチオカルバメート基:4.9mmol)、N‐イソプロピルアクリルアミド(NIPAM)(1.10g、9.8mmol)、α,α’‐アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)(81mg、0.49mmol)、脱水テトラヒドロフラン(THF)(10mL)をシュレンク管へ加え、凍結脱気を3回行った。その後、オイルバスを用いて70℃で一晩(18時間)撹拌して反応させ、反応終了後、氷水によって冷却し、THFで適度に希釈した。次に、ヘキサン中で再沈殿させ、得られた固体の生成物を60℃で一晩真空乾燥させた。生成物のNMR(核磁気共鳴)測定及びIR(赤外吸収スペクトル)測定を行った。この結果、式(8)で表される市販のハイパーブランチポリマーにアミド基が導入されて、式(5)で表されるポリマーAが生成していることが確認できた。次に、生成物の分子量をGPC(ゲル浸透クロマトグラフィー)で測定した。分子量は、数平均分子量(Mn)=9,946、重量平均分子量(Mw)=24,792であり、ハイパーブランチ構造独特の数平均分子量(Mn)と重量平均分子量(Mw)とが大きく異なった値であった。ポリマーAの収率は、92%であった。
(2)樹脂成形体(基材)の成形
汎用の射出成形機(日本製鋼所製、J180AD−300H)を用いて、ガラス繊維強化ポリフェニレンサルファイド(PPS)(帝人株式会社製、1040G、黒色)を4cm×6cm×0.2cmの板状体に成形した。
(3)触媒活性妨害層の形成
合成した式(5)で表されるポリマーAをメチルエチルケトンに溶解して、ポリマー濃度0.5重量%のポリマー液を調製した。成形した基材を調製したポリマー液に室温で5秒間ディッピングし、その後、85℃乾燥機中で5分間乾燥した。これにより、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。
触媒活性妨害層の膜厚を以下に説明する方法により測定した。まず、本実験と同一の条件で樹脂層を形成した膜厚測定用試料を作製した。膜厚測定用試料の樹脂層の一部を金属製スパチュラで傷をつけて基材を露出させ、レーザー顕微鏡(キーエンス製、VK−9710)で樹脂層表面と露出した基材表面との段差を測定し、この測定値を触媒活性妨害層の膜厚とした。触媒活性妨害層の膜厚は、約70nmであった。
(4)レーザー描画
触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体に、レーザー描画装置(キーエンス製、MD−V9929WA、YVO4レーザー、波長1064nm)を用いて、レーザー強度80%、描画速度500mm/sec、周波数50kHzでレーザー描画を行った。描画したパターンは、5mm×5cm領域を0.1mmピッチで複数個並べたパターンである。
(5)無電解メッキ触媒の付与
レーザー描画を行った成形体の表面に、市販の無電解メッキ用触媒液を用い汎用の方法により、無電解メッキ触媒を付与した。まず、レーザー描画を行った成形体を常温の感応性付与剤(奥野製薬工業製、センシタイザー)に浸漬し、5分間超音波を照射してセンシタイザー処理を行い、成形体表面にスズコロイドを吸着させた。その後、成形体を感応性付与剤から取り出し、十分に水洗した。次に、成形体を常温の触媒化処理剤(奥野製薬工業製、アクチベータ)に浸漬し、2分間放置してアクチベータ処理を行い、成形体表面にパラジウムを吸着させた。その後、樹脂成形体を触媒化処理剤から取り出し、十分に水洗した。
(6)無電解メッキ
無電解メッキ触媒を付与した成形体を61℃の無電解銅メッキ液(奥野製薬工業製、OPC−NCA)に15分浸漬して、成形体表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験2]
本実験では、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形及び触媒活性妨害層の形成
実験1と同様の方法により、基材として樹脂成形体(PPS)を成形し、基材表面に、ポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。
(2)レーザー描画
触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体に、レーザー描画装置として、CO2レーザー描画装置(パナソニック製、LP−310、光源CO2、レーザー発振部の出力:平均12W、発光ピーク波長:10.6μm)を用い、レーザー強度80%、描画速度500mm/secでレーザー描画を行った。描画パターンは、実験1と同様とした。
(3)無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
レーザー描画を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験3]
本実験では、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形、触媒活性妨害層の形成、レーザー描画及び無電解メッキ触媒の付与
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形し、基材表面に、ポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画及び無電解メッキ触媒の付与をこの順に行った。
(2)無電解メッキ
無電解メッキ触媒を付与した成形体を85℃の無電解ニッケルリンメッキ液(カニゼン製、SE−666)に15分浸漬して、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。尚、本実験で用いた無電解ニッケルリンメッキ液は、実験1で用いた無電解銅メッキ液と比較して、還元剤の含有量が多い。このため、無電解メッキ触媒(Pd)の量が少なくとも、メッキ反応が進行し易い。
[実験4]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(6)で表されるポリマーBを用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成
本実験では、ポリマーAに代えて、式(6)で表されるポリマーB(フナコシ株式会社製、ポリ(N‐イソプロピルアクリルアミド) )(PNIPAM)を用いた以外は実験1と同様の方法により、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。式(6)で表されるポリマーBは、式(3)で表されるポリマーであり、式(3)において、R4がメチル基であり、R5がイソプロピル基である。ポリマーBの分子量は、重量平均分子量(Mw)=40、000であった。形成した触媒活性妨害層の厚みを実験1と同様の方法により測定した。触媒活性妨害層の厚みは、約80nmであった。
(3)レーザー描画、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験5]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(7)で表されるポリマーCを用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成
本実験では、ポリマーAに代えて、式(7)で表されるポリマーC(シグマ−アルドリッチジャパン製、PNIPAM,amine terminated)を用いた以外は実験1と同様の方法により、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。式(7)で表されるポリマーCは、式(3)で表されるポリマーであり、式(3)において、R4が式(4)で表される基であり、R5がイソプロピル基である。ポリマーCの分子量は、重量平均分子量(Mw)=5,500であった。形成した触媒活性妨害層の厚みを実験1と同様の方法により測定した。触媒活性妨害層の厚みは、約80nmであった。
(3)レーザー描画、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験6]
本実験では、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形、触媒活性妨害層の形成及びレーザー描画
実験1と同様の方法により、基材として樹脂成形体(PPS)を成形し、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成し、触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体にレーザー描画を行った。
(2)樹脂成形体(基材)の洗浄
レーザー描画を行った樹脂成形体を、60℃の市販のメッキ用前処理剤(奥野製薬工業製、コンディクリーンMA)に15分間浸漬した。その後、50℃の純水で1回、室温の純水で3回水洗した。樹脂成形体は、水洗後に風乾せずに次の工程に用いた。
(3)無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験7]
本実験では、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、基材として樹脂成形体(PPS)を成形し、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。次に、実験2と同様の方法により、触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体にレーザー描画を行った。そして、実験6と同様の方法により、樹脂成形体の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験8]
本実験では、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形し、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成し、レーザー描画を行った。そして、実験6と同様の方法により、樹脂成形体の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキを行った。これにより、基材表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験9]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(6)で表されるポリマーBを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形し、実験4と同様の方法により基材表面にポリマーBを含む触媒活性妨害層を形成した。次に、実験1と同様の方法により、触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体にレーザー描画を行った。そして、実験6と同様の方法により、樹脂成形体の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験10]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(7)で表されるポリマーCを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形し、実験5と同様の方法により基材表面にポリマーCを含む触媒活性妨害層を形成した。次に、実験1と同様の方法により、触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体にレーザー描画を行った。そして、実験6と同様の方法により、樹脂成形体の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験11]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(9)で表されるポリマーEを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成
本実験では、ポリマーAに代えて、式(9)で表されるアミノエチル化アクリルポリマー(日本触媒製、ポリメントNK−350)(ポリマーE)を用いた以外は実験1と同様の方法により、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。ポリマーEの分子量は、重量平均分子量(Mw)=100,000であった。形成した触媒活性妨害層の厚みを実験1と同様の方法により測定した。触媒活性妨害層の厚みは、80nmであった。
(3)レーザー描画、樹脂成形体(基材)の洗浄、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験12]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(6)で表されるポリマーBを用い、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用い、更にレーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験4と同様の方法により、式(6)で表されるポリマーBを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体に、実験2と同様の方法により、CO2レーザー描画装置を用いてレーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験13]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(7)で表されるポリマーCを用い、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用い、更にレーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験5と同様の方法により、式(7)で表されるポリマーCを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体に、実験2と同様の方法により、CO2レーザー描画装置を用いてレーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験14]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(9)で表されるポリマーEを用い、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用い、更に、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験11と同様の方法により、式(9)で表されるポリマーEを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した樹脂成形体に、実験2と同様の方法により、CO2レーザー描画装置を用いてレーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験15]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(6)で表されるポリマーBを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験4と同様の方法により、式(6)で表されるポリマーBを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験16]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(7)で表されるポリマーCを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験5と同様の方法により、式(7)で表されるポリマーCを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験17]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(9)で表されるポリマーEを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験11と同様の方法により、式(9)で表されるポリマーEを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験18]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして、式(10)で表されるポリマーFを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成
本実験では、ポリマーAに代えて、式(10)で表されるポリアミドイミド(東レ株式会社)(ポリマーF)を用いた以外は実験1と同様の方法により、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。形成した触媒活性妨害層の厚みを実験1と同様の方法により測定した。触媒活性妨害層の厚みは、約100nmであった。
(3)レーザー描画、樹脂成形体(基材)の洗浄、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験19]
本実験では、触媒活性妨害層に含まれるポリマーとして式(10)で表されるポリマーFを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験18と同様の方法により、式(10)で表されるポリマーFを用いて、基材表面に触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験20]
本実験では、基材として板状に成形したポリアミドを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
本実験では、PPSに代えてポリアミド(PA)(東洋紡株式会社製、バイロアミド)を用いた以外は実験1と同様の方法により、樹脂成形体を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成、レーザー描画、樹脂成形体(基材)の洗浄、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
実験1と同様の方法により、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験21]
本実験では、基材として板状に成形したポリアミドを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験20と同様の方法により、樹脂成形体(PA)を成形した。次に、実験1と同様の方法により、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験22]
本実験では、基材として板状に成形したポリアミドを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
本実験では、PPSに代えてポリアミド(PA)(ソルベイジャパン株式会社製、アモデルAS−1566HS)を用いた以外は実験1と同様の方法により、樹脂成形体を成形した。
(2)触媒活性妨害層の形成、レーザー描画、樹脂成形体(基材)の洗浄、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
実験1と同様の方法により、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験23]
本実験では、基材として板状に成形したポリアミドを用い、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験22と同様の方法により、樹脂成形体(PA)を成形した。次に、実験1と同様の方法により、基材表面にポリマーAを含む触媒活性妨害層を形成した。触媒活性妨害層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行った。次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験24]
本実験では、触媒活性妨害層に代えて、式(8)で表されるポリマーDを含む樹脂層を基材上に形成し、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行ったこと以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
(1)樹脂成形体(基材)の成形
実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。
(2)樹脂層の形成
本実験では、ポリマーAに代えて、式(8)で表されるハイパーブランチポリマー(日産化学工業製、ハイパーテック HPS−200)(ポリマーD)を用いた以外は実験1と同様の方法により、基材表面に樹脂層を形成した。ポリマーDの分子量は、重量平均分子量(Mw)=23,000であった。形成した樹脂層の厚みを実験1と同様の方法により測定した。樹脂層の厚みは、80nmであった。
(3)レーザー描画、樹脂成形体(基材)の洗浄、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキ
樹脂層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験25]
本実験では、触媒活性妨害層に代えて、式(8)で表されるポリマーDを含む樹脂層を基材上に形成し、レーザー描画にCO2レーザー描画装置を用い、更に、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行った以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験24と同様の方法により、式(8)で表されるポリマーDを用いて、基材表面に樹脂層を形成した。樹脂層を形成した樹脂成形体に、実験2と同様の方法により、CO2レーザー描画装置を用いてレーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄した基材に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与及び無電解メッキをこの順に行った。これにより、基材表面に無電解銅メッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[実験26]
本実験では、触媒活性妨害層に代えて、式(8)で表されるポリマーDを含む樹脂層を基材上に形成し、レーザー描画の後に樹脂成形体(基材)の洗浄を行い、更に、メッキ液として無電解ニッケルリンメッキ液を用いた以外は、実験1と同様の方法によりメッキ部品を製造した。
まず、実験1と同様の方法により、樹脂成形体(PPS)を成形した。次に、実験24と同様の方法により、式(8)で表されるポリマーDを用いて、基材表面に樹脂層を形成した。樹脂層を形成した成形体に、実験1と同様の方法により、レーザー描画を行い、次に、実験6と同様の方法により、樹脂成形体(基材)の洗浄を行った。洗浄を行った成形体に、実験1と同様の方法により、無電解メッキ触媒の付与を行い、実験3と同様の方法により、無電解ニッケルリンメッキ液を用いて、成形体表面に無電解ニッケルリンメッキ膜を1μm成長させた。以上説明した製造方法により、本実験のメッキ部品を得た。
[評価]
以上説明した実験1〜26において製造したメッキ部品を目視にて観察し、以下の評価基準に従ってメッキ析出性とメッキ選択性を評価した。結果を表1に示す。
<メッキ析出性の評価基準>
○:レーザー描画部にメッキ膜が成長している。
×:レーザー描画部にメッキ膜が成長していない。
<メッキ選択性の評価基準>
○:レーザー描画部のみにメッキ膜が成長している。
△:レーザー描画部以外にも一部メッキ膜が成長している。
×:メッキ膜が基材全体に成長している。
(1)実験6〜19及び24〜26について
実験6〜19及び24〜26は、全て、基材にポリフェニレンサルファイド(PPS)を用い、レーザー光照射後の基板洗浄を行った実験である。実験6〜8で用いたポリマーA、実験9、12及び15で用いたポリマーB、実験10、13及び16で用いたポリマーC、実験24〜26で用いたポリマーD、実験11、14及び17で用いたポリマーE、及び実験18及び19で用いたポリマーFの6種類のポリマーについて、表1に示すメッキ選択性の評価結果に基づき、以下の評価基準に従って総合評価を行った。結果を表2に示す。
<総合評価の評価基準>
◎:無電解銅メッキ及び無電解ニッケルリンメッキのメッキ選択性が共に○。
○:無電解銅メッキのメッキ選択性は○であるが、無電解ニッケルリンメッキのメッキ選択性が×。
△:無電解銅メッキのメッキ選択性は△であるが、無電解ニッケルリンメッキのメッキ選択性が×。
×:無電解銅メッキ及び無電解ニッケルリンメッキのメッキ選択性が共に×。
表1及び表2に示すように、アミド基及びアミノ基の少なくとも一方を有するポリマーA〜C、E及びFを用いて作製したメッキ部品は、無電解銅メッキのメッキ析出性及びメッキ選択性が共に良好であった(総合評価結果:◎〜△)。レーザー描画部においては、触媒活性妨害層が除去されたために無電解銅メッキ膜が生成し、一方、それ以外の部分においては、触媒活性妨害層の存在により無電解銅メッキ膜の生成が抑制されたと推測される。この結果から、ポリマーA〜C、E及びFが触媒活性妨害剤として作用することがわかった。ポリマーA〜C、E及びFに含まれるアミド基及び/又はアミノ基が、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害したと推測される。
中でも、側鎖にアミド基を有する分岐ポリマーであるポリマーA〜Cを用いて作製したメッキ部品は、ポリマーE及びFを用いて作製したメッキ部品と比較して、無電解銅メッキのメッキ選択性が良好であった(総合評価結果:◎又は○)。ポリマーEは、アミノ基を有する分岐ポリマーであり、ポリマーFは、直鎖にアミド基を有するポリマーである。この結果から、側鎖にアミド基を有する分岐ポリマーであるポリマーA〜Cは、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する効果が高いと推測される。
更に、ハイパーブランチポリマーであるポリマーAを用いて作製したメッキ部品は、無電解銅メッキに加えて、無電解ニッケルリンメッキのメッキ選択性も良好であった(総合評価結果:◎)。無電解ニッケルリンメッキ液は、無電解銅メッキ液と比較して還元剤の含有量が多い。このため、無電解ニッケルリンメッキは、無電解銅メッキと比較して無電解メッキ反応が進み易い。このような無電解ニッケルリンメッキにおいても、ポリマーAは、無電解メッキ触媒の触媒活性を妨害する触媒活性妨害剤として十分に作用した。この原因は、以下のように推測される。ポリマーAは、自由度の高い側鎖部分が多いため、無電解メッキ触媒であるパラジウム(Pd)に吸着し易く、多座配位子として作用して無電解メッキ触媒(パラジウムイオン)と強固なキレート構造を形成した推測される。これにより、還元剤の含有量が多い無電解ニッケルリンメッキ液中においても、パラジウムイオンの還元が抑制され、この結果、無電解メッキ膜の生成が抑制されたと推測される。
一方、ポリマーD用いて作製したメッキ部品は、無電解銅メッキ及び無電解ニッケルリンメッキ共に、メッキ膜が基材全体に成長してしまい、選択的なメッキ膜が形成できなかった(メッキ析出性:○、メッキ選択性:×、総合評価:×)。この結果から、ポリマーDは、触媒活性妨害剤として作用しないことがわかった。ポリマーDは、硫黄を含む基(ジチオカルバメート基)を有するハイパーブランチポリマーである。ジチオカルバメート基は、無電解メッキ触媒を吸着等する傾向があると考えられる。しかし、アミド基及び/又はアミノ基を有さないポリマーDは、無電解メッキ触媒を強固にトラップすることができず、このため、触媒活性妨害剤として作用しなかったと推測される。
(2)実験1〜5について
実験1〜5は、レーザー光照射後の基板洗浄を行っていないこと以外は、それぞれ、実験6〜10と同様の条件で行った実験である。実験1〜5におけるメッキ選択性の評価結果は、実験6〜10におけるメッキ選択性の評価結果と比較して、やや劣っている。この結果から、レーザー光照射後の基板洗浄によって、メッキ選択性が向上すると推測される。
(3)実験20〜23について
実験20及び22は、基材としてポリアミドの樹脂成形体を用いたこと以外、実験6と同様の条件で行った実験であり、実験21及び23は、基材としてポリアミドの樹脂成形体を用いたこと以外、実験8と同様の条件で行った実験である。実験20〜23におけるメッキ選択性の評価結果も、実験6及び8におけるメッキ選択性の評価結果と同様に良好であった。この結果から、ポリアミドの樹脂成形体を用いても選択的なメッキが可能であることが確認できた。