特許文献1,2に記載された流体アシスト成形では、成形用型から取り出した成形品は、主キャビティに残った樹脂と副キャビティに排出された樹脂とが接続された状態である。このため、成形用型から成形品を取り出した後、副キャビティに排出された部分を成形品から切断する切断工程が別途必要になる。例えば、二層の管状中空体を成形する場合は、外層部の成形工程及び内層部の成形工程の双方において、副キャビティに排出された部分を成形品から切断する切断工程が必要になる。
また、特許文献1,2に記載された流体アシスト成形では、フローティングコアを副キャビティに排出するため、成形された管状中空体は、全域において同径の内周面となる。このため、例えば、管状中空体に連結部材を挿入する場合に、連結部材が管状中空体の内周面に係止されないため、連結部材を高精度に位置決めするのが難しい。
そこで、本発明は、工数の削減を図ることができる管状中空体成形用型及び管状中空体成形方法を提供することを目的とする。また、本発明は、内周面において他部材を係止することができる管状中空体を提供することを目的とする。
本発明の一側面に係る第一の管状中空体成形用型は、管状中空体を成形するための管状中空体成形用型であって、管状中空体の外周面の形状をなして、樹脂が射出される主キャビティと、主キャビティの一端に形成されて、主キャビティに加圧流体が圧入される加圧ポートと、主キャビティの他端に形成されて、主キャビティから樹脂を排出する排出口と、加圧ポートに着脱可能に設けられたフローティングコアと、主キャビティの軸線に沿って排出口から加圧ポート側に向けて延びる筒状のストッパと、を備え、加圧ポートから加圧流体が圧入されることによりフローティングコアが主キャビティを移動した際に、フローティングコアがストッパの内周面に押し付けられる。
この管状中空体成形用型では、主キャビティに樹脂を射出した後に、加圧ポートから加圧流体を圧入すると、樹脂は、排出口から排出され、フローティングコアは、主キャビティを移動してストッパの内周面に押し付けられる。これにより、主キャビティに残った樹脂と主キャビティから排出された樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、主キャビティから樹脂の成形品を取り出すことで、主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、管状中空体を得ることができる。以上より、主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
第一の管状中空体成形用型において、ストッパの外周面は、主キャビティの周壁面から離間していてもよい。
この管状中空体成形用型では、ストッパの外周面が主キャビティの周壁面から離間しているため、成形品の排出口側の端部は、主キャビティの周壁面とストッパの外周面とにより成形される。このため、フローティングコアとストッパとの位置関係によらず、成形品の排出口側の端部を高精度に成形することができる。
第一の管状中空体成形用型において、ストッパの外径は、フローティングコアの外径よりも大きくてもよい。
この管状中空体成形用型では、ストッパの外径がフローティングコアの外径よりも大きいため、フローティングコアをストッパの内周面に押し付けた後、主キャビティから樹脂の成形品を取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型により管状中空体を成形すると、管状中空体の端部の内周面は、ストッパの外周面により成形され、管状中空体の残りの部分の内周面は、フローティングコアの外周面により成形される。そして、ストッパの外径がフローティングコアの外径よりも大きいため、管状中空体の端部の内径は、管状中空体の残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、管状中空体の内周面に段差を設けることができるため、例えば、管状中空体に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
本発明の一側面に係る第二の管状中空体成形用型は、外層部と外層部の内層側に積層される内層部とを備える多層構造の管状中空体を成形するための管状中空体成形用型であって、外層部を成形するための第一型部と、内層部を成形するための第二型部と、を備え、第一型部は、外層部の外周面の形状をなして、第一樹脂が射出される第一主キャビティと、第一主キャビティの一端に形成されて、第一主キャビティに第一加圧流体を圧入する第一加圧ポートと、第一主キャビティの他端に形成されて、第一主キャビティから第一樹脂を排出する第一排出口と、第一加圧ポートに着脱可能に設けられた第一フローティングコアと、第一主キャビティの軸線に沿って第一排出口から第一加圧ポート側に向けて延びる筒状の第一ストッパと、を備え、第一加圧ポートから第一加圧流体が圧入されることにより第一フローティングコアが第一主キャビティを移動した際に、第一フローティングコアが第一ストッパの内周面に押し付けられ、第二型部は、外層部の外周面の形状をなして、第二樹脂が射出される第二主キャビティと第二主キャビティの一端に形成されて、第二主キャビティに第二加圧流体を圧入する第二加圧ポートと、第二主キャビティの他端に形成されて、第二主キャビティから第二樹脂を排出する第二排出口と、第一フローティングコアよりも小径に形成されて第二加圧ポートに着脱可能に設けられた第二フローティングコアと、第二主キャビティの軸線に沿って第二排出口から第二加圧ポート側に向けて延びる筒状の第二ストッパと、を備え、第二加圧ポートから第二加圧流体が圧入されることにより第二フローティングコアが第二主キャビティを移動した際に、第二フローティングコアが第二ストッパの内周面に押し付けられる。
この管状中空体成形用型では、第一主キャビティに第一樹脂を射出した後に、第一加圧ポートから第一加圧流体を圧入すると、第一樹脂は、第一排出口から排出され、第一フローティングコアは、第一主キャビティを移動して第一ストッパの内周面に押し付けられる。これにより、第一主キャビティに残った第一樹脂と第一主キャビティから排出された第一樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出すことで、第一主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部を得ることができる。そして、第一主キャビティから取り出した第一成形品を第二主キャビティに設置して、第二主キャビティに第二樹脂を射出した後に、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入すると、第二樹脂は、第二排出口から排出され、第二フローティングコアは、第二主キャビティを移動して第二ストッパの内周面に押し付けられる。これにより、第二主キャビティに残った第二樹脂と第二主キャビティから排出された第二樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出すことで、第二主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部の内層側に積層された内層部を得ることができる。以上より、第一主キャビティから排出された部分を切断する工程及び第二主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
第二の管状中空体成形用型において、第一ストッパの外周面は、第一主キャビティの周壁面から離間しており、第二ストッパの外周面は、第二主キャビティの周壁面から離間していてもよい。
この管状中空体成形用型では、第一ストッパの外周面が第一主キャビティの周壁面から離間しているため、外層部の第一排出口側の端部は、第一主キャビティの周壁面と第一ストッパの外周面とにより成形される。このため、第一フローティングコアと第一ストッパとの位置関係によらず、外層部の第一排出口側の端部を高精度に成形することができる。同様に、第二ストッパの外周面が第二主キャビティの周壁面から離間しているため、内層部の第二排出口側の端部は、第二主キャビティの周壁面と第二ストッパの外周面とにより成形される。このため、第二フローティングコアと第二ストッパとの位置関係によらず、内層部の第二排出口側の端部を高精度に成形することができる。
第二の管状中空体において、第一ストッパの外径は、第一フローティングコアの外径よりも大きく、第二ストッパの外径は、第二フローティングコアの外径よりも大きくてもよい。
この管状中空体成形用型では、第一ストッパの外径が第一フローティングコアの外径よりも大きいため、第一フローティングコアを第一ストッパの内周面に押し付けた後、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出しやすくなる。同様に、第二ストッパの外径が第二フローティングコアの外径よりも大きいため、第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付けた後、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型により管状中空体を成形すると、内層部の端部の内周面は、第二ストッパの外周面により成形され、内層部の残りの部分の内周面は、第二フローティングコアの外周面により成形される。そして、第二ストッパの外径が第二フローティングコアの外径よりも大きいため、内層部の端部の内径は、内層部の残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、例えば、内層部を管状中空体の最内層とした場合に、管状中空体の内周面に段差を設けることができるため、例えば、管状中空体に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
上記の管状中空体成形用型において、第一フローティングコアは、外周面から突出する凸部を備えてもよい。
この管状中空体成形用型では、第一フローティングコアの外周面から凸部が突出しているため、外層部の内周面に、凸部に対応する凹部を成形することができる。これにより、外層部と内層部とは凹凸構造により結合されるため、外層部と内層部との結合強度を向上させることができる。
本発明の一側面に係る第三の管状中空体成形用型は、外層部と外層部の内層側に積層される内層部とを備える多層構造の管状中空体を成形するための管状中空体成形用型であって、外層部を成形するための第一型部と、内層部を成形するための第二型部と、を備え、第一型部は、外層部の外周面の形状をなして、第一樹脂が射出される第一主キャビティを備え、第二型部は、内層部の外周面の形状をなして、第二樹脂が射出される第二主キャビティと、第二主キャビティの一端に形成されて、第二主キャビティに第二加圧流体を圧入する第二加圧ポートと、第二主キャビティの他端に形成されて、第二主キャビティから第二樹脂を排出する第二排出口と、第二加圧ポートに着脱可能に設けられた第二フローティングコアと、第二主キャビティの軸線に沿って第二排出口から第二加圧ポート側に向けて延びる第二ストッパと、を備え、第二加圧ポートから第二加圧流体が圧入されることにより第二フローティングコアが第二主キャビティを移動した際に、第二フローティングコアが第二ストッパの内周面に押し付けられる。
この管状中空体成形用型では、第二主キャビティに第二樹脂を射出した後に、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入すると、第二樹脂は、第二排出口から排出され、第二フローティングコアは、第二主キャビティを移動して第二ストッパの内周面に押し付けられる。これにより、第二主キャビティに残った第二樹脂と第二主キャビティから排出された第二樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出すことで、第二主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、内層部を得ることができる。そして、第二主キャビティから取り出した第二成形品を第一主キャビティに設置し、第一主キャビティに第一樹脂を射出し、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出すことで、外層部の内層側に積層された内層部を得ることができる。以上より、第二主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
第三の管状中空体成形用型において、第二ストッパの外周面は、第二主キャビティの周壁面から離間していてもよい。
この管状中空体成形用型では、第二ストッパの外周面が第二主キャビティの周壁面から離間しているため、内層部の第二排出口側の端部は、第二主キャビティの周壁面と第二ストッパの外周面とにより成形される。このため、第二フローティングコアと第二ストッパとの位置関係によらず、内層部の第二排出口側の端部を高精度に成形することができる。
第三の管状中空体成形用型において、第二ストッパの外径は、第二フローティングコアの外径よりも大きくてもよい。
この管状中空体成形用型では、第二ストッパの外径が第二フローティングコアの外径よりも大きいため、第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付けた後、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型により管状中空体を成形すると、内層部の端部の内周面は、第二ストッパの外周面により成形され、内層部の残りの部分の内周面は、第二フローティングコアの外周面により成形される。そして、第二ストッパの外径が第二フローティングコアの外径よりも大きいため、内層部の端部の内径は、内層部の残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、例えば、内層部を管状中空体の最内層とした場合に、管状中空体の内周面に段差を設けることができるため、例えば、管状中空体に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
第三の管状中空体成形用型において、第二主キャビティは、外層部の厚さ分だけ窪んだ凹部を備えてもよい。
この管状中空体成形用型では、第二主キャビティに凹部が形成されているため、内層部の外周面に、凹部に対応する凸部を成形することができる。これにより、外層部と内層部とは凹凸構造により結合されるため、外層部と内層部との結合強度を向上させることができる。しかも、凹部は、外層部の厚さ分だけ窪んでいるため、内層部の外周面に成形された凸部により、内層部を第一主キャビティに設置した際の内層部の位置決めを行うことができる。
本発明の一側面に係る第一の管状中空体成形方法は、上記の第一の管状中空体成形用型を用いて、管状中空体を成形する管状中空体成形方法であって、主キャビティに樹脂を射出する射出工程と、加圧ポートから加圧流体を圧入することでフローティングコアを加圧ポートから排出口側に向けて移動させ、排出口から樹脂を排出するとともにフローティングコアをストッパの内周面に押し付けるコア移動工程と、主キャビティから樹脂の成形品を取り出す取出工程と、を備える。
この管状中空体成形方法では、主キャビティに樹脂を射出した後に、加圧ポートから加圧流体を圧入して、排出口から樹脂を排出するとともにフローティングコアをストッパの内周面に押し付ける。これにより、主キャビティに残った樹脂と主キャビティから排出された樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、主キャビティから樹脂の成形品を取り出すことで、主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、管状中空体を得ることができる。以上より、主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
本発明の一側面に係る第二の管状中空体成形方法は、上記の第二の管状中空体成形用型を用いて、外層部と外層部の内層側に積層される内層部とを備える多層構造の管状中空体を成形する管状中空体成形方法であって、外層部を成形する第一成形工程と、第一成形工程の後、内層部を成形する第二成形工程と、を備え、第一成形工程は、第一主キャビティに第一樹脂を射出する第一射出工程と、第一射出工程の後、第一加圧ポートから第一加圧流体を圧入することで第一フローティングコアを第一加圧ポートから第一排出口側に向けて移動させ、第一排出口から第一樹脂を排出するとともに第一フローティングコアを第一ストッパの内周面に押し付ける第一コア移動工程と、第一コア移動工程の後、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出す第一取出工程と、を備え、第二成形工程は、第一成形品を第二主キャビティに設置する設置工程と、設置工程の後、第二主キャビティに第二樹脂を射出する第二射出工程と、第二射出工程の後、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入することで第二フローティングコアを第二加圧ポートから第二排出口側に向けて移動させ、第二排出口から第二樹脂を排出するとともに第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付ける第二コア移動工程と、第二コア移動工程の後、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出す第二取出工程と、を備える。
この管状中空体成形方法では、第一主キャビティに第一樹脂を射出した後に、第一加圧ポートから第一加圧流体を圧入して、第一排出口から第一樹脂を排出するとともに第一フローティングコアを第一ストッパの内周面に押し付ける。これにより、第一主キャビティに残った第一樹脂と第一主キャビティから排出された第一樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第一主キャビティから第一成形品を取り出すことで、第一主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部を得ることができる。そして、第一主キャビティから取り出した第一成形品を第二主キャビティに設置して、第二主キャビティに第二樹脂を射出した後に、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入して、第二排出口から第二樹脂を排出するとともに第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付ける。これにより、第二主キャビティに残った第二樹脂と第二主キャビティから排出された第二樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティから第二成形品を取り出すことで、第二主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部の内層側に積層された内層部を得ることができる。以上より、第一主キャビティから排出された部分を切断する工程及び第二主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
第二の管状中空体成形方法において、第一成形工程では、第一成形品の内周面に凹部を成形してもよい。
この管状中空体成形方法では、第一成形品の内周面に凹部を成形することで、第一成形工程に続く第二成形工程で、第二樹脂が当該凹部に入り込む。これにより、外層部と内層部とは凹凸構造により結合されるため、外層部と内層部との結合強度を向上させることができる。
本発明の一側面に係る第三の管状中空体成形方法は、上記の第三の管状中空体成形用型を用いて、外層部と外層部の内層側に積層される内層部とを備える多層構造の管状中空体を成形する管状中空体成形方法であって、内層部を成形する第二成形工程と、第二成形工程の後、外層部を成形する第一成形工程と、を備え、第二成形工程は、第二主キャビティに第二樹脂を射出する第二射出工程と、第二射出工程の後、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入することで第二フローティングコアを第二加圧ポートから第二排出口側に向けて移動させて、第二排出口から第二樹脂を排出するとともに第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付ける第二コア移動工程と、第二コア移動工程の後、第二主キャビティから第二樹脂の第二成形品を取り出す第二取出工程と、を備え、第一成形工程は、第二成形品を第一主キャビティに設置する設置工程と、設置工程の後、第一主キャビティに第一樹脂を射出する第一射出工程と、第一射出工程の後、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出す第一取出工程と、を備える。
この管状中空体成形方法では、第二主キャビティに第二樹脂を射出した後に、第二加圧ポートから第二加圧流体を圧入して、第二排出口から第二樹脂を排出するとともに第二フローティングコアを第二ストッパの内周面に押し付ける。これにより、第二主キャビティに残った第二樹脂と第二主キャビティから排出された第二樹脂とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティから第二成形品を取り出すことで、第二主キャビティから排出された部分が除去された成形品、つまり、内層部を得ることができる。そして、第二主キャビティから取り出した第二成形品を第一主キャビティに設置し、第一主キャビティに第一樹脂を射出し、第一主キャビティから第一樹脂の第一成形品を取り出すことで、外層部の内層側に積層された内層部を得ることができる。以上より、第一主キャビティから排出された部分を切断する工程及び第二主キャビティから排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
第三の管状中空体成形方法において、第二成形工程では、第二成形品の外周面に外層部の厚さ分だけ突出した凸部を成形してもよい。
この管状中空体成形方法では、第二成形品の外周面に凸部を成形するため、第二成形工程に続く第一成形工程において、第一樹脂が凸部を取り囲む。これにより、外層部と内層部とは凹凸構造により結合されるため、外層部と内層部との結合強度を向上させることができる。しかも、凸部は、外層部の厚さ分だけ突出しているため、当該凸部により、内層部を第一主キャビティに設置した際の内層部の位置決めを行うことができる。
第二又は第三の管状中空体成形方法において、第一樹脂と第二樹脂とは、互いに異なる樹脂であってもよい。
この管状中空体成形方法では、第一樹脂と第二樹脂とが互いに異なる樹脂であるため、各層に様々な性質を持たせることができる。
本発明の一側面に係る管状中空体は、樹脂製の管状中空体であって、管状中空体の少なくとも一方の端部の内周面は、第一内周面部と、第一内周面部から管状中空体の端面に至る第二内周面部と、を備え、第二内周面部の内径は、第一内周面部の内径よりも大径である。
この管状中空体では、少なくとも一方の端部において、第二内周面部の内径が第一内周面部の内径よりも大径となる。これにより、管状中空体の内周面に段差を設けることができるため、例えば、管状中空体に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
上記の管状中空体において、外層部と、外層部の内層側に積層される内層部と、を備えてもよい。
この管状中空体では、少なくとも外層部と内層部とを備える多層構造となるため、各層の樹脂を互いに異ならせることができる。これにより、各層に様々な性質を持たせることができる。
上記の管状中空体において、管状中空体の軸線に沿って、2以上の屈曲部を備えてもよい。
この管状中空体では、2以上の屈曲部を備えるため、様々な用途及び場所に配置することができる。
本発明の一側面に係る管状中空体成形用型及び管状中空体成形方法によれば、工数の削減を図ることができる。また、本発明の一側面に係る管状中空体によれば、内周面において他部材を係止することができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において同一又は相当する要素については同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
[第一実施形態]
まず、本実施形態に係る管状中空体1について説明する。
図1に示すように、本実施形態に係る管状中空体1は、一端2から他端3にかけて細長い管状に形成された樹脂製の中空体である。管状中空体1の管形状は、特に限定されるものではなく、例えば、外周面4及び内周面5の断面が円形となる円管状とすることができる。なお、本実施形態では、管状中空体1は円管状であるものとして説明する。
管状中空体1は、管状中空体1の軸線L1に沿って、2以上の屈曲部6を備える。なお、本実施形態では、管状中空体1は、管状中空体1の軸線L1に沿って、2つの屈曲部6を備えるものとして説明する。屈曲部6の位置、形状(曲率)、長さ等は特に限定されるものではない。
管状中空体1の外周面4には、管状中空体1をエンジン等の他部材に固定するための固定板部7が設けられている。固定板部7の数、位置、大きさ、形状等は特に限定されるものではない。また、管状中空体1の外周面4には、必ずしも固定板部7が設けられていなくてもよい。
管状中空体1の少なくとも一方の端部の内周面5は、互いに内径の異なる第一内周面部5a及び第二内周面部5bを備える。なお、本実施形態では、第一内周面部5a及び第二内周面部5bは、管状中空体1の他端3側の端部に設けられているものとして説明する。第一内周面部5aは、他端3から離間した領域に形成されている。第二内周面部5bは、第一内周面部5aから他端3に至る領域に形成されている。第二内周面部5bの内径は、第一内周面部5aの内径よりも大径となっている。管状中空体1の軸線L1方向における第二内周面部5bの長さは、特に限定されるものではなく、任意に設定することができる。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形用型10について説明する。
図2に示すように、本実施形態に係る管状中空体成形用型10は、流体アシスト成形により管状中空体1を成形するための金型である。管状中空体成形用型10は、主キャビティ11と、加圧ポート12と、インジェクタ13と、排出口14と、副キャビティ15と、フローティングコア16と、ストッパ17と、を備えている。
主キャビティ11は、管状中空体1の外周面4の形状をなして、樹脂が射出されるキャビティである。加圧ポート12は、主キャビティ11の一端に形成されて、主キャビティ11に加圧流体が圧入されるポートである。インジェクタ13は、加圧ポート12に連通されて加圧流体を噴射する噴射装置である。排出口14は、主キャビティ11の他端に形成されて、主キャビティ11から樹脂を排出する。副キャビティ15は、排出口14に連通されたキャビティであって、排出口14から排出された樹脂を貯留する。
フローティングコア16は、加圧ポート12に着脱可能に設けられている。フローティングコア16は、加圧ポート12から圧入される加圧流体で押圧されるように、加圧ポート12を背にして主キャビティ11内に設けられている。フローティングコア16の最大径は、管状中空体1の内径と略同じであって、主キャビティ11の内径よりも小さい。フローティングコア16の外周面の形状は、特に限定されるものではなく、砲弾形、円錐形、半球型、球形等とすることができる。本実施形態では、フローティングコア16の外周面は、先端が丸められて後端が最大径となる円錐形であるものとして説明する。
ストッパ17は、主キャビティ11の軸線L11を中心軸線とする筒状に形成されている。ストッパ17は、主キャビティ11の軸線L11に沿って排出口14から加圧ポート12側に向けて延びている。そして、排出口14は、ストッパ17の内周面17a側に形成されている。このため、主キャビティ11に射出された樹脂は、ストッパ17の内周面17a側を通ってのみ、排出口14から副キャビティ15に排出される。
ストッパ17の内周面17aは、加圧ポート12に向かうに従い拡径された円錐状(漏斗状)に形成されている。ストッパ17の内周面17aにおける最小内径は、フローティングコア16の最大径よりも小さい。このため、加圧ポート12から加圧流体が圧入されることによりフローティングコア16が主キャビティ11を移動した際に、フローティングコア16がストッパ17の内周面17aに押し付けられる。なお、フローティングコア16は、その全周において、ストッパ17の内周面17aに押し付けられることが好ましい。ストッパ17の内周面17a及びフローティングコア16の外周面が円錐状である場合、ストッパ17の内周面17aの頂角θ2は、フローティングコア16の外周面の頂角θ1と略同じ、又は、フローティングコア16の外周面の頂角θ1よりも僅かに小さいことが好ましい。
ストッパ17の外周面17bは、主キャビティ11の軸線L11方向における全域に亘って同径となっている。ストッパ17の外径は、フローティングコア16の外径よりも大きい。また、ストッパ17の外周面17bは、主キャビティ11の周壁面11aから離間している。このため、主キャビティ11は、主キャビティ11の周壁面11aとストッパ17の外周面17bとの間にも、射出された樹脂が入り込む空間を備えている。なお、主キャビティ11の周壁面11aとは、管状中空体1の外周面4を成形する断面円形の壁面をいう。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形方法について説明する。
本実施形態に係る管状中空体成形方法は、管状中空体成形用型10を用いて、管状中空体1を成形する方法である。この管状中空体成形方法は、まず、射出工程を行い、次に、コア移動工程を行い、次に、取出工程を行う。
図3に示すように、射出工程では、油圧シリンダ等により排出口14を閉じて、主キャビティ11に樹脂Rを射出する。主キャビティ11に射出する樹脂Rとしては、例えば、耐熱性、耐薬品性及び強度の高い芳香族ポリアミド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)を用いることができる。管状中空体成形用型10には、主キャビティ11に連通される1又は複数のゲート(不図示)が形成されており、このゲートから主キャビティ11に加熱溶融した樹脂Rを射出する。すると、主キャビティ11に樹脂Rが充填される。このとき、主キャビティ11の周壁面11aとストッパ17との間の空間にも、射出された樹脂Rが入り込む。
コア移動工程では、油圧シリンダ等により排出口14を開く。そして、図4に示すように、加圧ポート12から加圧流体を圧入して、フローティングコア16を加圧ポート12から排出口14側に向けて移動させる。つまり、加圧ポート12から主キャビティ11に加圧流体を圧入すると、加圧ポート12に設けられていたフローティングコア16は、加圧流体に押圧されることで、主キャビティ11の軸線L11に沿って加圧ポート12から排出口14側に向けて移動する。加圧流体としては、射出成形の温度及び圧力下で、樹脂と反応又は相溶しない気体又は液体を用いることができ、具体的には、窒素ガス、炭酸ガス、空気、水、グリセリン、流動パラフィン等を用いることができる。そして、フローティングコア16をこのように移動させることで、排出口14から樹脂Rを排出する。これにより、管状中空体1の内周面5が成形される。また、フローティングコア16をこのように移動させることで、フローティングコア16をストッパ17の内周面17aに押し付ける。すると、主キャビティ11に残った樹脂Rと主キャビティ11から副キャビティ15に排出された樹脂Rとが切断され、又は殆ど切断された状態となる。
取出工程では、油圧アーム等により主キャビティ11から樹脂Rの成形品Mを取り出す。このとき、主キャビティ11に残った樹脂Rと主キャビティ11から副キャビティ15に排出された樹脂Rとが切断され、又は殆ど切断された状態になっている。このため、主キャビティ11から成形品Mを取り出すことで、主キャビティ11から副キャビティ15に排出された部分が除去された成形品、つまり、管状中空体1が得られる。これにより、管状中空体1の成形が終了する。なお、任意のタイミングで、副キャビティ15から副キャビティ15に排出された部分及びフローティングコア16を取り出しておく。
このように、本実施形態に係る管状中空体成形用型10及び管状中空体成形方法では、主キャビティ11に樹脂Rを射出した後に、加圧ポート12から加圧流体を圧入すると、樹脂Rは、排出口14から排出され、フローティングコア16は、主キャビティ11を移動してストッパ17の内周面17aに押し付けられる。これにより、主キャビティ11に残った樹脂Rと主キャビティ11から排出された樹脂Rとが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、主キャビティ11から樹脂Rの成形品Mを取り出すことで、主キャビティ11から排出された部分が除去された成形品M、つまり、管状中空体1を得ることができる。以上より、主キャビティ11から排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
また、ストッパ17の外周面17bが主キャビティ11の周壁面11aから離間しているため、成形品Mの排出口14側の端部は、主キャビティ11の周壁面11aとストッパ17の外周面17bとにより成形される。このため、フローティングコア16とストッパ17との位置関係によらず、成形品Mの排出口14側の端部を高精度に成形することができる。
また、ストッパ17の外径がフローティングコア16の外径よりも大きいため、フローティングコア16をストッパ17の内周面17aに押し付けた後、主キャビティ11から樹脂Rの成形品Mを取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型10により管状中空体1を成形すると、管状中空体1の端部の内周面5は、ストッパ17の外周面17bにより成形され、管状中空体1の残りの部分の内周面5は、フローティングコア16の外周面により成形される。そして、ストッパ17の外径がフローティングコア16の外径よりも大きいため、管状中空体1の端部の内径は、管状中空体1の残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、管状中空体1の内周面5に段差を設けることができるため、管状中空体1に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
本実施形態に係る管状中空体1では、管状中空体1の他端3側の端部の内周面5に第一内周面部5a及び第二内周面部5bが形成されているとともに、第二内周面部5bの内径が第一内周面部5aの内径よりも大径となる。これにより、管状中空体1の内周面5に段差を設けることができるため、管状中空体1に連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
また、2以上の屈曲部6を備えるため、様々な用途及び場所に配置することができる。
[第二実施形態]
次に第二実施形態について説明する。
第二実施形態に係る管状中空体は、基本的に第一実施形態に係る管状中空体1と同様であるが、複数の樹脂層が積層された多層構造となっている点のみ、第一実施形態に係る管状中空体1と相違する。このため、以下では、第一実施形態に係る管状中空体1と相違する事項のみを説明し、第一実施形態に係る管状中空体1と同様の事項の説明を省略する。
図5に示すように、本実施形態に係る管状中空体1Aは、複数の樹脂層が積層された多層構造となっている。なお、本実施形態では、管状中空体1Aは、外層部8と、外層部8の内層側に積層される内層部9と、を備えた二層構造であるものとして説明する。外層部8の素材としては、例えば、耐衝撃性、耐食性、耐熱性等に優れる性質を有する樹脂を用いることができる。内層部9の素材としては、例えば、低透過性、耐食性、耐薬品性等に優れる性質を有する樹脂を用いることができる。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形用型20について説明する。
図6に示すように、本実施形態に係る管状中空体成形用型20は、外層部8と外層部8の内層側に積層される内層部9とを備える多層構造の管状中空体1Aを成形するための金型である。また、管状中空体成形用型20は、外層部8を成形した後に内層部9を成形するための金型である。管状中空体成形用型20は、第一実施形態の管状中空体成形用型10と同様の流体アシスト成形により外層部8を成形するための第一型部20aと、第一実施形態の管状中空体成形用型10と同様の流体アシスト成形により内層部9を成形するための第二型部20bと、を備える。なお、本実施形態では、第一型部20aと第二型部20bとは一体に形成されているものとして説明するが、第一型部20aと第二型部20bとは別体に形成されていてもよい。
第一型部20aは、主キャビティ11に対応する第一主キャビティ21と、加圧ポート12に対応する第一加圧ポート22と、インジェクタ13に対応する第一インジェクタ23と、排出口14に対応する第一排出口24と、副キャビティ15に対応する第一副キャビティ25と、フローティングコア16に対応する第一フローティングコア26と、ストッパ17に対応する第一ストッパ27と、を備えている。
第一主キャビティ21は、外層部8の外周面(管状中空体1Aの外周面4)の形状をなして、第一樹脂が射出されるキャビティである。第一加圧ポート22は、第一主キャビティ21の一端に形成されて、第一主キャビティ21に第一加圧流体が圧入されるポートである。第一インジェクタ23は、第一加圧ポート22に連通されて第一加圧流体を噴射する噴射装置である。第一排出口24は、第一主キャビティ21の他端に形成されて、第一主キャビティ21から第一樹脂を排出する。第一副キャビティ25は、第一排出口24に連通されたキャビティであって、第一排出口24から排出された第一樹脂を貯留する。
第一フローティングコア26は、第一加圧ポート22に着脱可能に設けられている。第一フローティングコア26は、第一加圧ポート22から圧入される第一加圧流体で押圧されるように、第一加圧ポート22を背にして第一主キャビティ21内に設けられている。第一フローティングコア26の最大径は、外層部8の内径と略同じであって、第一主キャビティ21の内径よりも小さい。第一フローティングコア26の外周面の形状は、特に限定されるものではなく、砲弾形、円錐形、半球型、球形等とすることができる。本実施形態では、第一フローティングコア26の外周面は、先端が丸められて後端が最大径となる円錐形であるものとして説明する。
第一ストッパ27は、第一主キャビティ21の軸線L21を中心軸線とする筒状に形成されている。第一ストッパ27は、第一主キャビティ21の軸線L21に沿って第一排出口24から第一加圧ポート22側に向けて延びている。そして、第一排出口24は、第一ストッパ27の内周面27a側に形成されている。このため、第一主キャビティ21に射出された第一樹脂は、第一ストッパ27の内周面27a側を通ってのみ、第一排出口24から第一副キャビティ25に排出される。
第一ストッパ27の内周面27aは、第一加圧ポート22に向かうに従い拡径された円錐状(漏斗状)に形成されている。第一ストッパ27の内周面27aにおける最小内径は、第一フローティングコア26の最大径よりも小さい。このため、第一加圧ポート22から第一加圧流体が圧入されることにより第一フローティングコア26が第一主キャビティ21を移動した際に、第一フローティングコア26が第一ストッパ27の内周面27aに押し付けられる。なお、第一フローティングコア26は、その全周において、第一ストッパ27の内周面27aに押し付けられることが好ましい。第一ストッパ27の内周面27a及び第一フローティングコア26の外周面が円錐状である場合、第一ストッパ27の内周面27aの頂角θ4は、第一フローティングコア26の外周面の頂角θ3と略同じ、又は、第一フローティングコア26の外周面の頂角θ3よりも僅かに小さいことが好ましい。
第一ストッパ27の外周面27bは、第一主キャビティ21の軸線L21方向における全域に亘って同径となっている。第一ストッパ27の外径は、第一フローティングコア26の外径よりも大きい。また、第一ストッパ27の外周面27bは、第一主キャビティ21の周壁面21aから離間している。このため、第一主キャビティ21は、第一主キャビティ21の周壁面21aと第一ストッパ27の外周面27bとの間にも、射出された第一樹脂が入り込む空間を備えている。なお、第一主キャビティ21の周壁面21aとは、外層部8の外周面(管状中空体1Aの外周面4)を成形する断面円形の壁面をいう。
第二型部20bは、第二主キャビティ31と、第二加圧ポート32と、第二インジェクタ33と、第二排出口34と、第二副キャビティ35と、第二フローティングコア36と、第二ストッパ37と、を備えている。
第二主キャビティ31は、第一主キャビティ21と同様に外層部8の外周面(管状中空体1Aの外周面4)の形状をなして、第二樹脂が射出されるキャビティである。第二加圧ポート32は、第二主キャビティ31の一端に形成されて、第二主キャビティ31に第二加圧流体が圧入されるポートである。第二インジェクタ33は、第二加圧ポート32に連通されて第二加圧流体を噴射する噴射装置である。第二排出口34は、第二主キャビティ31の他端に形成されて、第二主キャビティ31から第二樹脂を排出する。第二副キャビティ35は、第一排出口24に連通されたキャビティであって、第二排出口34から排出された第二樹脂を貯留する。
第二フローティングコア36は、第二加圧ポート32に着脱可能に設けられている。第二フローティングコア36は、第二加圧ポート32から圧入される第二加圧流体で押圧されるように、第二加圧ポート32を背にして第二主キャビティ31内に設けられている。第二フローティングコア36は、第一フローティングコア26よりも小径に形成されている。第二フローティングコア36の最大径は、内層部9の内径と略同じである。第二フローティングコア36の外周面の形状は、特に限定されるものではなく、砲弾形、円錐形、半球型、球形等とすることができる。なお、本実施形態では、第二フローティングコア36の外周面は、第一フローティングコア26と同様に先端が丸められて後端が最大径となる円錐形であるものとして説明する。
第二ストッパ37は、第二主キャビティ31の軸線L31を中心軸線とする筒状に形成されている。第二ストッパ37は、第二主キャビティ31の軸線L31に沿って第二排出口34から第二加圧ポート32側に向けて延びている。そして、第二排出口34は、第二ストッパ37の内周面37a側に形成されている。このため、第二主キャビティ31に射出された第二樹脂は、第二ストッパ37の内周面37a側を通ってのみ、第二排出口34から排出される。
第二ストッパ37の内周面37aは、第二加圧ポート32に向かうに従い拡径された円錐状(漏斗状)に形成されている。第二ストッパ37の内周面37aにおける最小内径は、第二フローティングコア36の最大径よりも小さい。このため、第二加圧ポート32から第二加圧流体が圧入されることにより第二フローティングコア36が第二主キャビティ31を移動した際に、第二フローティングコア36が第二ストッパ37の内周面37aに押し付けられる。なお、第二フローティングコア36は、その全周において、第二ストッパ37の内周面37aに押し付けられることが好ましい。第二ストッパ37の内周面37a及び第二フローティングコア36の外周面が円錐状である場合、第二ストッパ37の内周面37aの頂角θ6は、第二フローティングコア36の外周面の頂角θ5と略同じ、又は、第二フローティングコア36の外周面の頂角θ5よりも僅かに小さいことが好ましい。
第二ストッパ37の外周面37bは、第二主キャビティ31の軸線L31方向における全域に亘って同径となっている。第二ストッパ37の外径は、第二フローティングコア36の外径よりも大きい。また、第二ストッパ37の外周面37bは、第二主キャビティ31の周壁面31aから離間している。このため、第二主キャビティ31は、第二主キャビティ31の周壁面31aと第二ストッパ37の外周面37bとの間にも、射出された第二樹脂が入り込む空間を備えている。なお、第二主キャビティ31の周壁面31aとは、外層部8の外周面(管状中空体1Aの外周面4)が当接される断面円形の壁面をいう。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形方法について説明する。
本実施形態に係る管状中空体成形方法は、管状中空体成形用型20を用いて、外層部8と外層部8の内層側に積層される内層部9とを備える多層構造の管状中空体1Aを成形する方法である。この管状中空体成形方法は、外層部8を成形する第一成形工程と、第一成形工程の後、内層部9を成形する第二成形工程と、を備える。
第一成形工程では、まず、第一射出工程を行い、次に、第一コア移動工程を行い、次に、第一取出工程を行う。
図7に示すように、第一射出工程では、油圧シリンダ等により第一排出口24を閉じて、第一主キャビティ21に第一樹脂R1を射出する。第一主キャビティ21に射出する第一樹脂R1としては、例えば、耐熱性、耐薬品性及び強度の高い芳香族ポリアミド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)等を用いることができる。第一型部20aには、第一主キャビティ21に連通される1又は複数のゲート(不図示)が形成されており、このゲートから第一主キャビティ21に加熱溶融した第一樹脂R1を射出する。すると、第一主キャビティ21に第一樹脂R1が充填される。このとき、第一主キャビティ21の周壁面21aと第一ストッパ27との間の空間にも、射出された第一樹脂R1が入り込む。
第一コア移動工程では、油圧シリンダ等により第一排出口24を開く。そして、図8に示すように、第一加圧ポート22から第一加圧流体を圧入して、第一フローティングコア26を第一加圧ポート22から第一排出口24側に向けて移動させる。つまり、第一加圧ポート22から第一主キャビティ21に第一加圧流体を圧入すると、第一加圧ポート22に設けられていた第一フローティングコア26は、第一加圧流体に押圧されることで、第一主キャビティ21の軸線L21に沿って第一加圧ポート22から第一排出口24側に向けて移動する。第一加圧ポート22から圧入する第一加圧流体は、第一実施形態において加圧ポート12から圧入する加圧流体と同じ流体を用いることができる。
そして、第一フローティングコア26をこのように移動させることで、第一排出口24から第一樹脂R1を排出する。これにより、外層部8の内周面が成形される。また、第一フローティングコア26をこのように移動させることで、第一フローティングコア26を第一ストッパ27の内周面27aに押し付ける。すると、第一主キャビティ21に残った第一樹脂R1と第一主キャビティ21から第一副キャビティ25に排出された第一樹脂R1とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。
第一取出工程では、油圧アーム等により第一主キャビティ21から第一樹脂R1の第一成形品M1を取り出す。このとき、第一主キャビティ21に残った第一樹脂R1と第一主キャビティ21から第一副キャビティ25に排出された第一樹脂R1とが切断され、又は殆ど切断された状態になっている。このため、第一主キャビティ21から第一成形品M1を取り出すことで、第一主キャビティ21から第一副キャビティ25に排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部8が得られる。なお、任意のタイミングで、第一副キャビティ25から第一副キャビティ25に排出された部分及び第一フローティングコア26を取り出しておく。
第二成形工程では、まず、設置工程を行い、次に、第二射出工程を行い、次に、第二取出工程を行う。
図9に示すように、設置工程では、第一取出工程で取り出した第一成形品M1を第二主キャビティ31に設置する。第二主キャビティ31は、外層部8の外周面の形状をなしているため、第一成形品M1を第二主キャビティ31に挿入することで、第二主キャビティ31に対する第一成形品M1の設置が終了する。
図10に示すように、第二射出工程では、油圧シリンダ等により第二排出口34を閉じて、第二主キャビティ31に第二樹脂R2を射出する。第二主キャビティ31に射出する第二樹脂R2としては、例えば、耐熱性及び強度の高いポリアミド(PA)、芳香族ポリアミド樹脂、エチレン−テトラフルオロエチレン共重合体(ETFE)、ポリフェニレンサルファイド(PPS)、ポリプロピレン(PP)等を用いることができる。第二型部20bには、第二主キャビティ31に連通される1又は複数のゲート(不図示)が形成されており、このゲートから第二主キャビティ31に加熱溶融した第二樹脂R2を射出する。このとき、外層部8の外周面は第二主キャビティ31の周壁面31aに接しているため、第二射出固定では、第二樹脂R2を、第二主キャビティ31における外層部8の内周面側の空間に射出する。すると、第二主キャビティ31における外層部8の内周面側の空間に第二樹脂R2が充填される。
第二コア移動工程では、油圧シリンダ等により第二排出口34を開く。そして、図11に示すように、第二加圧ポート32から第二加圧流体を圧入して、第二フローティングコア36を第二加圧ポート32から第二排出口34側に向けて移動させる。つまり、第二加圧ポート32から第二主キャビティ31に第二加圧流体を圧入すると、第二加圧ポート32に設けられていた第二フローティングコア36は、第二加圧流体に押圧されることで、第二主キャビティ31の軸線L31に沿って第二加圧ポート32から第二排出口34側に向けて移動する。第二加圧ポート32から圧入する第二加圧流体は、第一実施形態において加圧ポート12から圧入する加圧流体と同じ流体を用いることができる。そして、第二フローティングコア36をこのように移動させることで、第二排出口34から第二樹脂R2を排出する。これにより、内層部9の内周面が成形される。また、第二フローティングコア36をこのように移動させることで、第二フローティングコア36を第二ストッパ37の内周面37aに押し付ける。すると、第二主キャビティ31に残った第二樹脂R2と第二主キャビティ31から第二副キャビティ35に排出された第二樹脂R2とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。
第二取出工程では、油圧アーム等により第二主キャビティ31から第二樹脂R2の第二成形品M2を取り出す。このとき、第二主キャビティ31に残った第二樹脂R2と第二主キャビティ31から第二副キャビティ35に排出された第二樹脂R2とが切断され、又は殆ど切断された状態になっている。このため、第二主キャビティ31から第二成形品M2を取り出すことで、第二主キャビティ31から第二副キャビティ35に排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部8の内層側に積層された内層部9が得られる。これにより、管状中空体1Aの成形が終了する。
このように、本実施形態に係る管状中空体成形用型20及び管状中空体成形方法では、第一主キャビティ21に第一樹脂R1を射出した後に、第一加圧ポート22から第一加圧流体を圧入すると、第一樹脂R1は、第一排出口24から排出され、第一フローティングコア26は、第一主キャビティ21を移動して第一ストッパ27の内周面27aに押し付けられる。これにより、第一主キャビティ21に残った第一樹脂R1と第一主キャビティ21から排出された第一樹脂R1とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第一主キャビティ21から第一樹脂R1の第一成形品M1を取り出すことで、第一主キャビティ21から排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部8を得ることができる。そして、第一主キャビティ21から取り出した第一成形品M1を第二主キャビティ31に設置して、第二主キャビティ31に第二樹脂R2を射出した後に、第二加圧ポート32から第二加圧流体を圧入すると、第二樹脂R2は、第二排出口34から排出され、第二フローティングコア36は、第二主キャビティ31を移動して第二ストッパ37の内周面37aに押し付けられる。これにより、第二主キャビティ31に残った第二樹脂R2と第二主キャビティ31から排出された第二樹脂R2とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティ31から第二樹脂R2の第二成形品M2を取り出すことで、第二主キャビティ31から排出された部分が除去された成形品、つまり、外層部8の内層側に積層された内層部9を得ることができる。以上より、第一主キャビティ21から排出された部分を切断する工程及び第二主キャビティ31から排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
また、第一ストッパ27の外周面27bが第一主キャビティ21の周壁面21aから離間しているため、外層部8の第一排出口24側の端部は、第一主キャビティ21の周壁面21aと第一ストッパ27の外周面27bとにより成形される。このため、第一フローティングコア26と第一ストッパ27との位置関係によらず、外層部8の第一排出口24側の端部を高精度に成形することができる。同様に、第二ストッパ37の外周面37bが第二主キャビティ31の周壁面31aから離間しているため、内層部9の第二排出口34側の端部は、第二主キャビティ31の周壁面31aと第二ストッパ37の外周面37bとにより成形される。このため、第二フローティングコア36と第二ストッパ37との位置関係によらず、内層部9の第二排出口34側の端部を高精度に成形することができる。
また、第一ストッパ27の外径が第一フローティングコア26の外径よりも大きいため、第一フローティングコア26を第一ストッパ27の内周面27aに押し付けた後、第一主キャビティ21から第一樹脂R1の第一成形品M1を取り出しやすくなる。同様に、第二ストッパ37の外径が第二フローティングコア36の外径よりも大きいため、第二フローティングコア36を第二ストッパ37の内周面37aに押し付けた後、第二主キャビティ31から第二樹脂R2の第二成形品M2を取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型20により管状中空体1Aを成形すると、内層部9の端部の内周面は、第二ストッパ37の外周面により成形され、内層部9の残りの部分の内周面は、第二フローティングコア36の外周面により成形される。そして、第二ストッパ37の外径が第二フローティングコア36の外径よりも大きいため、内層部9の端部の内径は、内層部9の残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、内層部9を管状中空体1Aの最内層とした場合に、管状中空体1Aの内周面5に段差を設けることができるため、管状中空体1Aに連結部材(不図示)を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
また、本実施形態に係る管状中空体1Aでは、外層部8と内層部9とを備える多層構造となるため、各層の樹脂を互いに異ならせることができる。これにより、各層に様々な性質を持たせることができる。
[第三実施形態]
次に第三実施形態について説明する。
第三実施形態に係る管状中空体は、基本的に第二実施形態に係る管状中空体1Aと同様であるが、外層部の内周面に凹部が形成されているとともに、内層部の外周面に当該凹部に入り込む凸部が形成されている点のみ、第二実施形態に係る管状中空体1Aと相違する。
図12(a)に示すように、第三実施形態に係る管状中空体成形用型40は、基本的に第二実施形態に係る管状中空体成形用型20と同様であるが、管状中空体成形用型20の第二フローティングコア36に対応する第二フローティングコア46は、外周面から突出する凸部46aを備えている。
図12(a)及び(b)に示すように、凸部46aは、第一コア移動工程において第一主キャビティ21を移動することで、第一成形品M1(外層部8)の内周面に、第一主キャビティ21の軸線L21に沿って延びる溝状の凹部M1aを形成する。なお、凸部46aは、第一成形品M1の内周面に凹部M1aを形成することができれば、その数、形状、配置等は、特に限定されるものではなく、適宜設定することができる。
このように、本実施形態では、第二フローティングコア46の外周面から凸部46aが突出している。このため、図12(a)〜(c)に示すように、外層部8となる第一成形品M1の内周面に、凸部46aに対応する凹部M1aが成形され、第一成形工程に続く第二成形工程で、第二樹脂R2が当該凹部M1aに入り込む。これにより、外層部8と内層部9とは凹凸構造により結合されるため、外層部8と内層部9との結合強度を向上させることができる。
[第四実施形態]
次に第四実施形態について説明する。
第四実施形態に係る管状中空体は、基本的に第二実施形態に係る管状中空体1Aと同様であるが、内層部の外周面に凸部が形成されているとともに、外層部の内周面に当該凹部が入り込む凹部が形成されている点のみ、第二実施形態に係る管状中空体1Aと相違する。このため、以下では、第二実施形態に係る管状中空体1Aと相違する事項のみを説明し、第二実施形態に係る管状中空体1Aと同様の事項の説明を省略する。
図13に示すように、本実施形態に係る管状中空体1Cは、第二実施形態に係る管状中空体1Aと同様に、複数の樹脂層が積層された多層構造となっている。なお、本実施形態では、管状中空体1Cは、外層部8Cと、外層部8Cの内層側に積層される内層部9Cと、を備えた二層構造であるものとして説明する。外層部8Cは、外層部8に対応する層であり、内層部9Cは、外層部8に対応する層である。
内層部9Cは、外周面から突出する凸部9aを備えている。外層部8Cは、内周面から窪んで凸部9aが入り込む凹部8aを備えている。これにより、外層部8Cと内層部9Cとは、凹凸構造により結合されている。
凸部9a及び凹部8aの数、位置、大きさ、形状等は特に限定されるものではない。例えば、図13及び図14(a)〜(d)に示すように、管状中空体1Cの軸線L1方向における複数の断面において、それぞれ複数(図面では3個)の凸部9a及び凹部8aが形成されていてもよい。また、凸部9aは、図14(a)に示すように、断面矩形状であってもよく、図14(b)に示すように、断面逆テーパ状であってもよく、図14(c)及び(d)に示すように、断面テーパ状であってもよい。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形用型50について説明する。
図15に示すように、本実施形態に係る管状中空体成形用型50は、外層部8Cと外層部8Cの内層側に積層される内層部9Cとを備える多層構造の管状中空体1Cを成形するための金型である。また、管状中空体成形用型50は、第二実施形態に係る管状中空体成形用型20とは異なり、内層部9Cを成形した後に外層部8Cを成形するための金型である。管状中空体成形用型50は、射出成形により外層部8Cを成形するための第一型部50aと、第一実施形態の管状中空体成形用型10と同様の流体アシスト成形方法により内層部9Cを成形するための第二型部50bと、を備える。なお、本実施形態では、第一型部50aと第二型部50bとは一体に形成されているものとして説明するが、第一型部50aと第二型部50bとは別体に形成されていてもよい。
第一型部50aは、第一主キャビティ51と、一端側開閉型52と、他端側開閉型53と、を備えている。
第一主キャビティ51は、外層部8Cの外周面(管状中空体1Cの外周面4)の形状をなして、第一樹脂が射出されるキャビティである。一端側開閉型52は、第一主キャビティ51の一端側の端面を開閉する金型である。他端側開閉型53は、第一主キャビティ51の他端側の端面を開閉する金型である。
第二型部50bは、第二主キャビティ61と、第二加圧ポート62と、第二インジェクタ63と、第二排出口64と、第二副キャビティ65と、第二フローティングコア66と、第二ストッパ67と、を備えている。
第二主キャビティ61は、内層部9Cの外周面の形状をなして、第二樹脂が射出されるキャビティである。第二主キャビティ61は、外層部8Cの厚さ分だけ窪んだ凹部61bを備える。凹部61bは、内層部9Cの凸部9aを成形する。このため、凹部61bは、内層部9Cに設けられる凸部9aに対応した位置に形成される。第二加圧ポート62は、第二主キャビティ61の一端に形成されて、第二主キャビティ61に第二加圧流体が圧入されるポートである。第二インジェクタ63は、第二加圧ポート62に連通されて第二加圧流体を噴射する噴射装置である。第二排出口64は、第二主キャビティ61の他端に形成されて、第二主キャビティ61から第二樹脂を排出する。第二副キャビティ65は、第一排出口54に連通されたキャビティであって、第二排出口64から排出された第二樹脂を貯留する。
第二フローティングコア66は、第二加圧ポート62に着脱可能に設けられている。第二フローティングコア66は、第二加圧ポート62から圧入される第二加圧流体で押圧されるように、第二加圧ポート62を背にして第二主キャビティ61内に設けられている。第二フローティングコア66の最大径は、内層部9Cの内径と略同じである。第二フローティングコア66の外周面の形状は、特に限定されるものではなく、砲弾形、円錐形、半球型、球形等とすることができる。なお、本実施形態では、第二フローティングコア66の外周面は、先端が丸められて後端が最大径となる円錐形であるものとして説明する。
第二ストッパ67は、第二主キャビティ61の軸線L61を中心軸線とする筒状に形成されている。第二ストッパ67は、第二主キャビティ61の軸線L61に沿って第二排出口64から第二加圧ポート62側に向けて延びている。そして、第二排出口64は、第二ストッパ67の内周面67a側に形成されている。このため、第二主キャビティ61に射出された第二樹脂は、第二ストッパ67の内周面67a側を通ってのみ、第二排出口64から排出される。
第二ストッパ67の内周面67aは、第二加圧ポート62に向かうに従い拡径された円錐状(漏斗状)に形成されている。第二ストッパ67の内周面67aにおける最小内径は、第二フローティングコア66の最大径よりも小さい。このため、第二加圧ポート62から第二加圧流体が圧入されることにより第二フローティングコア66が第二主キャビティ61を移動した際に、第二フローティングコア66が第二ストッパ67の内周面67aに押し付けられる。なお、第二フローティングコア66は、その全周において、第二ストッパ67の内周面67aに押し付けられることが好ましい。第二ストッパ67の内周面67a及び第二フローティングコア66の外周面が円錐状である場合、第二ストッパ67の内周面67aの頂角θ8は、第二フローティングコア66の外周面の頂角θ7と略同じ、又は、第二フローティングコア66の外周面の頂角θ7よりも僅かに小さいことが好ましい。
第二ストッパ67の外周面67bは、第二主キャビティ61の軸線L61方向における全域に亘って同径となっている。第二ストッパ67の外径は、第二フローティングコア66の外径よりも大きい。また、第二ストッパ67の外周面67bは、第二主キャビティ61の周壁面61aから離間している。このため、第二主キャビティ61は、第二主キャビティ61の周壁面61aと第二ストッパ67の外周面67bとの間にも、射出された第二樹脂が入り込む空間を備えている。なお、第二主キャビティ61の周壁面61aとは、外層部8Cの外周面が当接される断面円形の壁面をいう。
次に、本実施形態に係る管状中空体成形方法について説明する。
本実施形態に係る管状中空体成形方法は、管状中空体成形用型50を用いて、外層部8Cと外層部8Cの内層側に積層される内層部9Cとを備える多層構造の管状中空体1Cを成形する方法である。
この管状中空体成形方法は、内層部9Cを成形する第二成形工程と、第二成形工程の後、外層部8Cを成形する第一成形工程と、を備える。
第二成形工程では、まず、第二射出工程を行い、次に、第二コア移動工程を行い、次に、第二取出工程を行う。
図16に示すように、第二射出工程では、油圧シリンダ等により第二排出口64を閉じて、第二主キャビティ61に第二樹脂R4を射出する。第二主キャビティ61に射出する第二樹脂R4は、第二実施形態において第二主キャビティ31に射出する第二樹脂R2と同じ樹脂を用いることができる。第二型部50bには、第二主キャビティ61に連通される1又は複数のゲート(不図示)が形成されており、このゲートから第二主キャビティ61に加熱溶融した第二樹脂R4を射出する。すると、第二主キャビティ61に第二樹脂R4が充填される。また、第二主キャビティ61の凹部61bにも第二樹脂R4が充填される。
第二コア移動工程では、油圧シリンダ等により第二排出口64を開く。そして、図17に示すように、第二加圧ポート62から第二加圧流体を圧入して、第二フローティングコア66を第二加圧ポート62から第二排出口64側に向けて移動させる。つまり、第二加圧ポート62から第二主キャビティ61に第二加圧流体を圧入すると、第二加圧ポート62に設けられていた第二フローティングコア66は、第二加圧流体に押圧されることで、第二主キャビティ61の軸線L61に沿って第二加圧ポート62から第二排出口64側に向けて移動する。第二加圧ポート62から圧入する第二加圧流体は、第一実施形態において加圧ポート12から圧入する加圧流体と同じ流体を用いることができる。そして、第二フローティングコア66をこのように移動させることで、第二排出口64から第二樹脂R4を排出する。これにより、内層部9Cの内周面が成形される。また、第二フローティングコア66をこのように移動させることで、第二フローティングコア66を第二ストッパ67の内周面67aに押し付ける。すると、第二主キャビティ61に残った第二樹脂R4と第二主キャビティ61から第二副キャビティ65に排出された第二樹脂R4とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。
第二取出工程では、油圧アーム等により第二主キャビティ61から第二樹脂R4の第二成形品M4を取り出す。このとき、第二主キャビティ61に残った第二樹脂R4と第二主キャビティ61から第二副キャビティ65に排出された第二樹脂R4とが切断され、又は殆ど切断された状態になっている。このため、第二主キャビティ61から第二成形品M4を取り出すことで、第二主キャビティ61から第二副キャビティ65に排出された部分が除去された成形品、つまり、内層部9Cが得られる。なお、任意のタイミングで、第二副キャビティ65から第二副キャビティ65に排出された部分及び第二フローティングコア66を取り出しておく。
第一成形工程では、まず、設置工程を行い、次に、第一射出工程を行い、次に、第一取出工程を行う。
図18に示すように、設置工程では、油圧シリンダ等により一端側開閉型52及び他端側開閉型53を開いて、第二取出工程で取り出した第二成形品M4を第一主キャビティ51に設置する。このとき、内層部9Cとなる第二成形品M4の外周面には、外層部8Cの厚さ分だけ突出した凸部9aが成形されているため、第二成形品M4を第二主キャビティ61に挿入すると、凸部9aにより第二主キャビティ61に対する第二成形品M4の位置決めが行わる。なお、凸部9aは、第二主キャビティ61に対して第二成形品M4の位置決めができる程度に、その数、位置、大きさ、形状等を設定しておくことが好ましい。これにより、第二主キャビティ61に対する第二成形品M4の設置が終了する。
図19に示すように、第一射出工程では、油圧シリンダ等により一端側開閉型52及び他端側開閉型53を閉じて、第一主キャビティ51に第一樹脂R3を射出する。第一主キャビティ51に射出する第一樹脂R3は、第二実施形態において第一主キャビティ21に射出する第一樹脂R1と同じ樹脂を用いることができる。第一型部50aには、第一主キャビティ51に連通される1又は複数のゲート(不図示)が形成されており、このゲートから第一主キャビティ51に加熱溶融した第一樹脂R3を射出する。このとき、第一樹脂R3を、第一主キャビティ51における内層部9Cの外周面側の空間に射出する。すると、第一樹脂R3は、第一主キャビティ51における内層部9Cの外周面側の空間に充填されるとともに、内層部9Cの凸部9aを取り囲む。
第一取出工程では、油圧アーム等により一端側開閉型52及び他端側開閉型53を開く。そして、油圧アーム等により第一主キャビティ51から第一樹脂R3の第一成形品M3を取り出す。これにより、内層部9Cの外周面側に積層された外層部8Cが得られる。これにより、管状中空体1Cの成形が終了する。
このように、本実施形態に係る管状中空体成形用型50及び管状中空体成形方法では、第二主キャビティ61に第二樹脂R4を射出した後に、第二加圧ポート62から第二加圧流体を圧入すると、第二樹脂R4は、第二排出口64から排出され、第二フローティングコア66は、第二主キャビティ61を移動して第二ストッパ67の内周面67aに押し付けられる。これにより、第二主キャビティ61に残った第二樹脂R4と第二主キャビティ61から排出された第二樹脂R4とが切断され、又は殆ど切断された状態となる。このため、第二主キャビティ61から第二樹脂R4の第二成形品M4を取り出すことで、第二主キャビティ61から排出された部分が除去された成形品、つまり、内層部9Cを得ることができる。そして、第二主キャビティ61から取り出した第二成形品M4を第一主キャビティ51に設置し、第一主キャビティ51に第一樹脂R3を射出し、第一主キャビティ51から第一樹脂R3の第一成形品M3を取り出すことで、外層部8Cの内層側に積層された内層部9Cを得ることができる。以上より、第二主キャビティ61から排出された部分を切断する工程を別途に設けなくてよいため、工数の削減を図ることができる。
また、第二ストッパ67の外周面67bが第二主キャビティ61の周壁面61aから離間しているため、内層部9Cの第二排出口64側の端部は、第二主キャビティ61の周壁面61aと第二ストッパ67の外周面67bとにより成形される。このため、第二フローティングコア66と第二ストッパ67との位置関係によらず、内層部9Cの第二排出口64側の端部を高精度に成形することができる。
また、第二ストッパ67の外径が第二フローティングコア66の外径よりも大きいため、第二フローティングコア66を第二ストッパ67の内周面67aに押し付けた後、第二主キャビティ61から第二樹脂R4の第二成形品M4を取り出しやすくなる。
ところで、この管状中空体成形用型50により管状中空体1Cを成形すると、内層部9Cの端部の内周面は、第二ストッパ67の外周面67bにより成形され、内層部9Cの残りの部分の内周面は、第二フローティングコア66の外周面により成形される。そして、第二ストッパ67の外径が第二フローティングコア66の外径よりも大きいため、内層部9Cの端部の内径は、内層部9Cの残りの部分の内径よりも大径となる。これにより、内層部9Cを管状中空体の最内層とした場合に、管状中空体1Cの内周面5に段差を設けることができるため、管状中空体1Cに連結部材を挿入する場合に、連結部材を高精度に位置決めすることができる。
また、第二主キャビティ61に凹部61bが形成されているため、内層部9Cとなる第二成形品M4の外周面に、凹部61bに対応する凸部9aが形成され、第二成形工程に続く第一成形工程で、第一樹脂R3が凸部9aを取り囲む。これにより、外層部8Cと内層部9Cとは凹凸構造により結合されるため、外層部8Cと内層部9Cとの結合強度を向上させることができる。
しかも、凹部61bは、外層部8Cの厚さ分だけ窪んでいるため、内層部9Cの外周面に成形された凸部により、内層部9Cを第一主キャビティ51に設置した際の内層部9Cの位置決めを行うことができる。
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
例えば、上記実施形態では、各ストッパの外周面が各主キャビティの周壁面から離間しているものとして説明したが、各成形品の端部の成形精度が問題なければ、各ストッパの外周面が各主キャビティの周壁面に当接していてもよい。
また、上記実施形態では、各ストッパの外径が各フローティングコアの外径よりも大きいものとして説明したが、管状中空体の内周面に段差を形成しなくてもよい場合は、両外径を同じにしてもよい。
また、上記実施形態では、各管状中空体、各主キャビティ、各フローティングコア、及び各ストッパの断面形状は、円形であるものとして説明したが、これらの断面形状は、円形に限定されるものではなく、例えば、楕円、多角形等としてもよい。
また、第二〜第四実施形態では、管状中空体の全域において多層構造であるものとして説明したが、多層構造の管状中空体の一部を単層構造としてもよい。例えば、図20に示すように、外層部71の内層側に内層部72が積層された多層構造の管状中空体1Dにおいて、連結部材などの他部材と連結される一方の連結端部73及び他方の連結端部74は、内層部72のみの単層構造であってもよい。
また、第四実施形態では、第二主キャビティ61に凹部61bを形成することで、内層部9Cに凸部9aを成形するものとして説明したが、外層部8Cと内層部9Cとの結合強度を確保することができるとともに、第一主キャビティ51に他部材を配置する等して第一主キャビティ51に対する内層部9Cの位置決めを行うことができれば、第二主キャビティ61に凹部61bを形成しなくてもよく、また、内層部9Cに凸部9aを成形しなくてもよい。