JP6987632B2 - 蓄電デバイス電極用樹脂組成物 - Google Patents
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Description
構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
構成単位B:オキシアルキレン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
前記合材層が、活物質、本発明の蓄電デバイス電極用樹脂組成物の固形分を含む、蓄電デバイス電極に関する。
本開示は、一態様において、下記構成単位A、及び下記構成単位Bを含有する重合体を含む蓄電デバイス電極用樹脂組成物(以下、「樹脂組成物」と略称する場合もある。)である。
構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
構成単位B:オキシアルキレン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
本開示によれば、優れた結着性とイオン透過性を有する樹脂組成物を提供できるので、電池特性を向上できる。
本開示に係る樹脂組成物は、バインダーとして機能する重合体が、強固な水素結合による物理架橋を可能とするユニットを含む構成単位Aと、親水性で且つイオン透過性を有するユニットを含む構成単位Bと、を含んでいるので、本開示に係る樹脂組成物を含むペーストを被塗布物に塗布し乾燥させれば、ゴム弾性を呈し、且つ、電解液による処理前後における弾性変化率[(処理後弾性率)/(処理前弾性率)]が所定の重合体を含むことで、バインダーとして良好な結着性を確保しつつ、優れたイオン透過性を有する皮膜を形成できる。故に、本開示に係る樹脂組成物を用いて形成された電極を含む蓄電デバイスにおいて、イオン透過性等の電池特性が向上するものと考えられる。但し、これらは推定であって、本開示はこれらメカニズムに限定して解釈されなくてもよい。
<構成単位A>
(構成単位Aの構造)
構造単位Aは、少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造(以下、「四重水素結合単位」ということがある。)を有する不飽和単量体由来の繰返し単位である。当該四重水素結合単位同士が物理架橋することによりゴム状弾性を有する皮膜を形成でき、皮膜の強度が高く及び電解液中での皮膜の安定性が向上するものと考えられる。前記不飽和単量体由来の繰返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上が混合していてもよい。
A−C−A−C−D−C−D (1)
A−C−D−C−A−C−D (2)
ここで、Aは水素受容部分、Dは水素供与部分、Cは炭素原子を示す。C−D間の結合は単結合、C−A間の結合は二重結合又は単結合を表す。
第二の好ましい実施形態においては、式(3)、式(4)又はこれらの互変異性体に由来する構成単位は、R1及びR2を、結合手及び連結基の少なくとも1つを介して他の構成単位に結合させたものであることが好ましい。
構成単位Aは、下記式(5)で表される不飽和単量体に由来する構成単位であることが好ましい。
R14は、好ましくは水素又はメチル基、より好ましくはメチル基である。
R11は、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基又はR15−O−C(=O)−NH−R16で表される基、より好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基、更に好ましくは炭素数1以上3以下のアルキレン基、より更に好ましくはエチレン基である。
R15、R16は、それぞれ独立に、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基である。
上記式(5)で表される不飽和単量体の好ましい具体例は、次のとおりである。
式(5)で表される不飽和単量体の製造方法は、例えば、少なくとも4つの水素結合の全部又は一部を形成する窒素含有化合物と、少なくとも重合性官能基及び当該窒素含有化合物に結合可能な反応性基を有する重合性化合物と、を反応させることにより、好適に製造することができる。
また、少なくとも2つの重合性官能基を有する重合性化合物としては、好ましくはエチレン性不飽和基及びイソシアネート基の少なくとも2つを有する重合性化合物、より好ましくはエチレン性不飽和基の少なくとも1つ及びイソシアネート基の少なくとも1つを有する重合性化合物、更に好ましくはアルキレン基の両末端のうち一方の末端にエチレン性不飽和基が結合され他方の末端にイソシアネート基が結合されてなる重合性化合物である。
上記エチレン性不飽和基としては、好ましくは(メタ)アクリル基、より好ましくはメタクリル基である。
上記アルキレン基としては、好ましくは炭素数1以上12以下のアルキレン基、より好ましくは炭素数2以上6以下のアルキレン基、更に好ましくは炭素数2以上4以下のアルキレン基、より更に好ましくはエチレン基である。
構成単位Aの含有量は、皮膜の高強度化及び電解液中での皮膜の安定性向上の観点から、重合体中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上である。また、構成単位Aの含有量は、重合容易性及び配合容易性の観点から、重合体中、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である。構成単位Aの含有量は、公知の分析方法又は分析装置によって求めることができる。構成単位Aが2種以上のモノマーA由来の構成単位からなる場合、構成単位Aの含有量はそれらの合計含有量をいう。
構成単位Bは、オキシアルキレン基を有する親水性不飽和単量体由来の繰返し単位である。オキシアルキレン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位は、単一種であってもよいし、2種以上であってもよい。
本開示において、親水性不飽和単量体とは、20℃における水100gに対する溶解量が、1g以上である不飽和単量体のことをいう。当該溶解量は、好ましくは10g以上、より好ましくは20g以上である。
前記重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で、構成単位A及び構成単位B以外の構成単位Cを含有してもよい。構成単位A及び構成単位Bの合計の含有量は、前記重合体中、好ましくは80質量%以上であり、より好ましくは90質量%以上であり、更に好ましくは99質量%以上であり、更により好ましくは実質的に100質量%であり、更により好ましくは100質量%である。なお、実質的に100質量%とは、前記重合体中に構成単位Aおよび構成単位B以外の構成単位が不可避的に混入する場合を含む意味である。
構成単位Cは、イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位、または、非イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位である。イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位は、アニオン性基を有する不飽和単量体に由来する繰返し単位、及びカチオン性基を有する不飽和単量体に由来する繰返し単位のいずれであってもよい。非イオン性基を有する不飽和単量体由来の繰り返し単位は、単官能(メタ)アクリレートに由来する繰り返し単位、単官能(メタ)アクリルアミドに由来する繰り返し単位、スチレン系の単官能モノマーに由来する繰り返し単位、及び窒素含有複素環を有する単官能モノマーのいずれかであってもよいし、2種類以上の組み合わせであってもよい。
アニオン性基を有する不飽和単量体としては、好ましくは不飽和カルボン酸モノマー又はその塩、不飽和スルホン酸モノマー又はその塩、及び不飽和リン酸モノマー又はその塩であり、より好ましくは不飽和カルボン酸モノマー又はその塩である。
前記不飽和カルボン酸モノマー又はその塩の具体例としては、好ましくは(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等又はこれらの塩である。このうち、入手性の観点から、より好ましくは(メタ)アクリル酸及びマレイン酸の少なくとも1種であり、更に好ましくは(メタ)アクリル酸である。
中和に使用する塩基性化合物の具体例としては、例えば、水酸化リチウム、水酸化カリウム、水酸化ナトリウム等のアルカリ金属水酸化物;アンモニア;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン、モルホリン、アミノメチルプロパノール、アミノエチルプロパンジオール等のアミン化合物等がある。不飽和カルボン酸モノマー由来の繰返し単位は、グラフトポリマーのエタノール中での重合体の分散性の観点から、一部又は全部が中和されていることが好ましい。
カチオン性不飽和単量体としては、アミノ基を有する不飽和単量体及び4級アンモニウム塩基を有する不飽和単量体から選ばれる1種以上が挙げられる。
アミノ基を有する不飽和単量体の具体例としては、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド、2−ビニルピリジン、4−ビニルピリジン及びこれらをH+X-で表される酸で中和した構造が挙げられる。
単官能(メタ)アクリレートとしては、例えば、エステル(メタ)アクリレートが挙げられ、具体的には、アルキルエステル(メタ)アクリレート、シクロアルキル基含有エステル(メタ)アクリレート、芳香族基含有エステル(メタ)アクリレート、水酸基含有エステル(メタ)アクリレート、及び窒素原子含有エステル(メタ)アクリレートから選ばれる1種又は2種以上の組合せが挙げられ、合成の容易性、親水性、結着性、及びイオン透過性の向上の観点から、上述した単官能(メタ)アクリレートの中でも、アルキルエステル(メタ)アクリレートが好ましく、炭素数1以上8以下のアルキルエステル(メタ)アクリレートがより好ましい。
前記重合体の数平均分子量は、結着性及び電解液中での被膜の安定性の向上の観点から、好ましくは1万以上、より好ましくは1万5千以上、更に好ましくは2万以上であり、そして、合成の容易性、電極ペースト作成時の配合性の観点から、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは150万以下、より更に好ましくは100万以下である。
前記重合体は、例えば、構成単位Aの供給源であるモノマーA及び構成単位Bの供給源であるモノマーB、並びに必要に応じて構成単位Cの供給源であるモノマーCを共重合させることによって製造できる。すなわち、前記重合体の製造方法は、一態様において、モノマーA及びモノマーB、並びに必要に応じてモノマーCを含むモノマー混合物を重合させる重合工程を含む。
重合方法としては、例えば、バルク重合法、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法等を採用しうるが、より均一な組成の重合体を製造するために、溶液重合法が好ましい。前記重合工程では、重合開始剤を用いることができる。重合開始剤としては、重合安定性の観点から、水溶性の重合開始剤が好ましい。水溶性の重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム等が挙げられる。前記重合工程における重合開始剤の使用量は、適宜設定できるが、モノマー全量に対し、0.01質量%以上2質量%以下が好ましい。
本開示に係る樹脂組成物は、水性媒体をさらに含有することができる。水性媒体としては、イオン交換水等が挙げられる。本開示に係る樹脂組成物が水性媒体を含有する場合、本開示に係る樹脂組成物の形態としては、例えば、前記重合体が水性媒体に溶解した重合体溶液が挙げられる。重合体溶液としては、例えば、上述した溶液重合法で得られる重合体を含む混合液をそのまま使用できる。本開示に係る樹脂組成物中の水性媒体の含有量は、前記重合体及び後述するその他の任意成分の残余とすることができる。
本開示に係る樹脂組成物は、本開示の効果を損なわない範囲で、前記重合体及び水性媒体以外に任意成分を含有してもよい。任意成分としては、例えば、界面活性剤、増粘剤、消泡剤、中和剤等が挙げられる。
本開示に係る樹脂組成物は、前記重合体、並びに必要に応じて上述した水性媒体及び任意成分を公知の方法で配合することにより製造できる。すなわち、本開示は、少なくとも重合体を配合する配合工程を含む、樹脂組成物の製造方法(以下、「本開示に係る製造方法」ともいう)に関する。前記配合は、例えば、スターラー、ディスパーサー、ホモミキサー等の公知の混合装置を用いて行うことができる。前記配合工程における各成分の配合量は、上述の樹脂組成物中の各成分の含有量と同様とすることができる。
本開示は、集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス電極であって、前記合材層が、活物質、及び本開示に係る樹脂組成物の固形分、主として前記重合体を含む、蓄電デバイス電極(以下、「本開示に係る電極」ともいう)に関する。
本開示は、本開示に係る電極、及び電解液を含む、蓄電デバイス(以下、「本開示に係る蓄電デバイス」ともいう)に関する。
有機溶媒としては、例えば、エチレンカーボネート(EC)、プロピレンカーボネート、ジエチルカーボネート(DEC)、メチルエチルカーボネート(MEC)、プロピオン酸エチル等のエステル類が挙げられ、これらは単独、又は2種以上を併用してもよい。特に、酸化・還元に対する安定性から、環状炭酸エステルと鎖状炭酸エステルとの混合系電解液が好ましい。
電解質とは、有機溶媒に溶解して電気を伝導する働きを有するイオン性化合物を示す。電解質としては、例えば、LiClO4、LiPF6、LiBF4、LiCF3SO3、LiN(CF3SO2)2、LiCF3CO2、LiCl、LiBr、LiSCN等のリチウム塩を単独でまたは2種以上を混合して使用することができる。中でもLiPF6を用いるのが好ましい。
イオン液体類としては、例えば、ビス(フルオロスルフォニル)アミド(FSA)、ビス(トリフルオロメタンスルフォニル)アミド(TFSA)のアルキル塩;N−メチルプロピルピロリジニウム(P13);ジエチルメチルメトキシエチルアンモニウム(DEME);トリグライム(G3)等が挙げられる。
[1] 下記構成単位A、及び下記構成単位Bを含有する重合体を含む蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
構成単位A:少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
構成単位B:オキシアルキレン基を有する不飽和単量体由来の繰返し単位
[2] 好ましくは、少なくとも4つの水素結合を形成することが可能な構造が、下記式(1)又は下記式(2)で表される構造である、前記[1]に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
A−C−A−C−D−C−D (1)
A−C−D−C−A−C−D (2)
ただし、前記式(1)又は前記式(2)において、Aは水素受容部分、Dは水素供与部分、Cは炭素原子を示す。C−D間の結合は単結合、C−A間の結合は二重結合又は単結合を表す。
[3] 前記式(1)又は(2)において、「C−A−C」は好ましくは「C=N−C」を表し、「C−A」は好ましくは「C=O」を表し、「D−C」は好ましくは「−NH−C」又は「HO−C」を表す、前記[2]に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[4] 前記式(1)において、A−C−A−Cのうちの2つのCは、ピリミジン骨格を構成する炭素原子であって一方の炭素原子は1対の窒素原子の間に在り、D−Cはいずれも、−NH−Cである、前記[2]又は[3]に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[5] 前記構成単位Aの含有量は、前記重合体中、好ましくは10質量%以上、より好ましくは12質量%以上、更に好ましくは15質量%以上であり、そして、好ましくは45質量%以下、より好ましくは40質量%以下、更に好ましくは35質量%以下である、前記[1]から[4]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[6] 前記オキシアルキレン基の炭素数は、好ましくは4以下、より好ましくは3以下、更に好ましくは2以下である、前記[1]から[5]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[7] 前記オキシアルキレン基の平均付加モル数は、好ましくは4以上、より好ましくは6以上であり、そして、好ましくは50以下、より好ましくは30以下である、前記[1]から[6]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[8] 前記構成単位Bは、単官能(メタ)アクリレートのアルキレンオキサイド付加物、及び単官能(メタ)アクリルアミドのアルキレンオキサイド付加物から選ばれる少なくとも1種の単官能モノマー由来の構成単位である、前記[1]から[7]のいずれかにに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[9] 前記オキシアルキレン基を有する不飽和単量体は、好ましくは、ポリエチレングリコールメタクリレート(PEGMA)及びポリエチレングリコールアクリレート(PEGA)からなる群より選ばれる1種以上が好ましく、より好ましくはPEGMAである、前記[1]から[8]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[10] 前記構成単位Bの含有量は、前記重合体中、好ましくは45質量%以上、より好ましくは50質量%以上、更に好ましくは55質量%以上であり、そして、好ましくは85質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは75質量%以下である、前記[1]から[9]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[11] 構成単位Aと構成単位Bのモル比(A/B)が、好ましくは5/95以上、より好ましくは15/85以上、更に好ましくは25/75以上であり、そして、好ましくは70/30以下、より好ましくは60/40以下、更に好ましくは50/50以下である、前記[1]から[10]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[12] 構成単位A及び構成単位Bの合計の含有量は、前記重合体中、好ましくは80質量%以上、より好ましくは90質量%以上、更に好ましくは99質量%以上、更により好まし実質的に100質量%、更により好ましくは100質量%である、前記[1]から[11]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[13] 前記重合体の数平均分子量は、好ましくは1万以上、より好ましくは1万5千以上、更に好ましくは2万以上であり、そして、好ましくは300万以下、より好ましくは200万以下、更に好ましくは150万以下、更により好ましくは100万以下である前記[1]から[12]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[14] 前記構成単位Aが、下記式(5)で表される不飽和単量体由来の構成単位である、前記[1]から[13]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
R14は、水素又はメチル基であり、
R11は、炭素数1以上12以下のアルキレン基又はR15−O−C(=O)−NH−R16で表される基であり、
R15、R16は、それぞれ独立に、炭素数1以上12以下のアルキレン基である。
[15] 前記構成単位Aが、下記式(6)〜(11)のいずれかによって表される不飽和単量体由来の構成単位である、前記[14]に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
前記樹脂組成物の形態が、前記重合体が前記水性媒体に溶解した重合体溶液である、前記[1]から[15]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
[17] 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス電極であって、
前記合材層が、負極活物質、導電材、及び前記[1]から[16]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物の固形分を含む、蓄電デバイス電極。
[18] 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス電極の製造方法であって、
活物質、導電材、前記[1]から[16]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物、及び溶媒を含む蓄電デバイス電極用スラリーを、集電体に塗布し、塗布した蓄電デバイス電極用スラリー中の溶媒を乾燥除去して、前記合材層を形成する工程を含む、蓄電デバイス電極の製造方法。
[19] 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス電極を含む蓄電デバイスの製造方法であって、
負極活物質、導電材、前記[1]から[16]のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物、及び溶媒を含む蓄電デバイス電極用スラリーを、集電体に塗布し、塗布した蓄電デバイス電極用スラリー中の溶媒を乾燥除去して、前記合材層を形成する工程を含む、蓄電デバイスの製造方法。
表1に示す重合体a〜c,及び樹脂組成物A〜Cの調製は下記のとおり行った。
還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、メタクリル酸イソシアナトエチル(東京化成工業(株))48.81g、メチルイソシトシン(東京化成工業(株))35.79g、ジメチルスルホキシド(和光純薬工業(株))253.00gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、160℃に昇温し、30分撹拌した。反応終了後、室温まで急冷すると、白色固体が析出した。これをメタノールで洗浄し、一晩減圧乾燥を行うことで、上記式(6)で表されるモノマーA(Upy−MA)を得た。
次に、還流冷却器、温度計、窒素導入管、攪拌装置を取り付けたセパラブルフラスコに、前記モノマーA(Upy−MA)を10.48g、PEGMA(新中村化学製:NKエステル−90G、オキシエチレン基の平均付加モル数:9)を26.58g、ジメチルスルホキシドを328.52gを仕込んだ。窒素雰囲気下で、65℃に昇温し、30分撹拌した。ジメチルスルホキシド 5.00gに溶解させたV−65B(2,2'-Azobis(2,4-dimethylvaleronitrile、重合開始剤、和光純薬工業製) 0.022gを投入し、そのままの温度で6時間撹拌した。撹拌終了後、室温まで冷却した。2Lのジエチルエーテルに反応液を全量投入すると、重合体aとして、数平均分子量が11万のポリマーが析出した。これを水に溶解させ実施例1の樹脂組成物A(重合体溶液)を得た。重合体aの調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。実施例1の樹脂組成物Aの各成分の含有量は、前記重合体aが10.0質量%、残余は水である。
モノマーAとして2-EHA(2エチルへキシルアクリレート、和光純薬工業製) 69g、モノマーBとしてAA(アクリル酸、和光純薬工業製) 3.75g、モノマーCとしてEGDMA(エチレングリコールジメタクリレート、和光純薬工業製) 2.25g、イオン交換水 183g、及び乳化剤(ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム) 1.5gを、内容量1Lのガラス製4つ口セパラブルフラスコに入れ、窒素雰囲気下で一定時間(0.5時間)攪拌した。そして、フラスコ内の反応溶液を70℃付近まで昇温した後、イオン交換水 10gにKPS(過硫酸カリウム) 0.23gを溶解した重合開始剤溶液をフラスコ内に添加し、フラスコ内の反応溶液を60〜65℃付近で6時間保持することで重合・熟成し、重合体粒子分散体を得た。その後、フラスコ内の重合体粒子分散体を室温まで冷却し、10質量%アンモニア水を加えてpH6に調製した後、200メッシュ濾布を用いて凝集物を除去し、濃度が30〜35質量%程度になるまで濃縮し、比較例1の樹脂組成物B(粒子状の重合体bの分散液)を得た。粒子状の重合体bの調製に用いた各成分の量及び種類を表1に示す。比較例1の樹脂組成物Bの各成分の含有量は、粒子状の重合体bが27.9質量%、残余は実質的にイオン交換水である。
粒子状SBRの分散液(日本ゼオン製、BM−400B、モル比(St/BD=27/73)、固形分40質量%)を比較例2の樹脂組成物C(粒子状の重合体cの分散液)とした。分散媒は水である。
重合体a〜cの数平均分子量、弾性率、弾性変化率、電解液に対する溶解度、ガラス転移温度(Tg)、平均粒径、及び電解液吸液量を下記のようにして求めた。そして、これらの各種パラメーターを表2に示す。
重合体の数平均分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)により、下記条件で測定した。
<GPC測定条件>
カラム:α−M(昭和電工(株)製)2つを直列につないで使用
溶離液:50mM LiBr/DMF
流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
検出器:RI
サンプル:5mg/mL、100μL
ポリスチレン換算
樹脂組成物を平板上で乾燥して得られた皮膜状となったポリマー(以下、重合体皮膜) 1gを電解液 100gに浸し、常温(25℃)で72時間放置した。電解液には、EC/DEC混合溶媒(体積比1/1)を用いた。浸漬後の重合体皮膜を取出し、余分な電解液を拭き取った後、1cm角に裁断した。Anton Paar社製レオメーター「MCR302」を用い、測定温度25℃、治具PP08、ノーマルフォース1N、周波数2Hz、ひずみ0.01〜1000%の条件で測定し、角速度0.01(1/s)の貯蔵弾性率を弾性変化率算出に用いた。電解液浸漬前の重合体皮膜についても同様の条件で測定した。
弾性変化率(%)=浸漬後の皮膜の貯蔵弾性率/浸漬前の皮膜の貯蔵弾性率×100
重合体の水系溶媒又は電解液への溶解度は、物質固有の既存の測定テーブルを用いて算出した。混合物の場合は配合割合により按分により算出した。水系溶媒としてイオン交換水(25℃)を用い、電解液には、EC/DEC混合溶媒(体積比1/1)、EC/DEC混合溶媒(体積比3/7)を用いた。
重合体のガラス転移温度(Tg)は、Fox式[T.G.Fox、Bull.Am.Physics Soc.、第1巻、第3号、123ページ(1956)]に従って、重合体を構成する各々のモノマーの単独重合体のTgnより、下記式(I)から計算により求めることができる。
1/Tg=Σ(Wn/Tgn) (I)
式(I)中、Tgnは、各モノマー成分の単独重合体の絶対温度で表したTgを示し、Wnは各モノマー成分の質量分率を示す。
または、重合体のガラス転移温度(Tg)は、以下の装置と測定条件によって測定できる。
高感度型示差走査熱量計DSC7020(エスエスアイアイ・ナノテクノロジー)
試料:重合体
測定温度:−50〜180℃
昇温速度:10℃/min
重合体a,cのTgは、高感度型示差走査熱量計を用いて測定し、重合体bのTgは、Fox式から算出して、各々、表2に示した。
粒子状の重合体の平均粒径は、レーザー回折法の粒径測定器(堀場製作所製LA−920)を用いて、室温下、機器の所定の光量範囲になるまで分散媒(水)で希釈し、測定した。
樹脂組成物を乾燥して得られた重合体皮膜 1gを電解液 300gに浸し、常温(25℃)で72時間放置した。電解液を吸収した重合体皮膜をメンブランフィルターで濾別し、重量を測定し、下記式により吸液量を算出した。電解液には、EC/DEC混合溶媒(体積比1/1)を用いた。
吸液量(%)=[電解液を吸液した重合体皮膜の重量(g)−浸漬前の重合体皮膜の重量(g)]/浸漬前の重合体皮膜の重量(g)×100
[誘導結合プラズマ質量分析計(ICP−MS)を用いた評価]
まず、リチウム(Li)塩を含まないEC/DEC混合溶媒(体積比1/1)Iと、過塩素酸リチウムをEC/DEC混合溶媒(体積比1/1)に溶解させたリチウム含有溶媒II(1mol/L:LiClO4)を準備した。次に、樹脂組成物を、テフロン(登録商標)シートを備えたトレイに、乾燥後の厚みが0.7mmになる量を流し込み、105℃で24時間乾燥を行うことで、重合体皮膜(厚さ:0.7mm)を作製した。そして、重合体皮膜の一方の面にEC/DEC混合溶媒Iを接触させ、他方の面にリチウム含有溶媒IIを接触させた状態で8時間振盪した。その後、EC/DEC混合溶媒I中のLiの有無を誘導結合プラズマ質量分析計ICP−MSで確認した。結果を表2に示す。Liが検出された場合、イオン透過性があると判断し、表2では「A」と表記し、Liが検出されなかった場合、イオン透過性は無いと判断し、表2では「B」と表記した。
<測定用電極の作製>
蓄電デバイス電極用スラリー中の固形分に含まれる重合体の含有量が2質量%となるように、表3に示した割合で、樹脂組成物、負極活物質、負極導電助材、負極増粘剤、水を混合した。得られた、実施例1、比較例1〜2の蓄電デバイス電極用スラリーの組成は、具体的には、負極活物質としてグラファイト(日立化成社製、「SMG」) 94.8質量部、負極導電助材としてアセチレンブラック(デンカ社製、「HS−100」) 1.7質量部、負極増粘剤としてカルボキシメチルセルロースナトリウム(和光純薬工業製) 1.5質量部、重合体 2質量部、水 122質量部である。当該蓄電デバイス電極用スラリーを、厚さ20μmの銅箔上に、塗布し、乾燥、プレスして27μm厚の負極活物質層(合材層)を形成した後、18mmφの大きさに打ち抜いて測定用電極とした。蓄電デバイス電極用スラリーの固形分濃度は、105℃で24時間乾燥し重量減量を測定することにより算出した。蓄電デバイス電極用スラリーの粘度は、B型粘度計(温度25℃、回転速度6rpm、ローターNo.3)を用いて測定した。
3極式セル(東陽テクニカ製「TSB−1」)の作用極に上記測定用電極をセットし、参照極および補助極には金属Liをセットした。そして、非水電解液として濃度1MのLiPF6溶液[溶媒:EC/EMC混合溶媒(体積比3/7)、キシダ化学社製]を注入し、測定セルとした。
ソーラトロン社製のポテンショ・ガルバノスタット「SI 1287」を用いて、25℃で上記参照極に対して、電圧が0.1Vになるまで定電流(0.45mA)で充電した。その後、−10℃までセルを冷却したのち、ソーラトロン社製のインピーダンスゲインアナライザー(FRA)「1260A」を用いて、交流インピーダンス法(10mV、周波数0.05Hz〜100KHz)の測定を行った。得られたコールコールプロットの円弧幅より抵抗値を算出した。測定結果を表3に示す。抵抗値が小さいほど、合材層におけるイオン透過性が良好であると判断でき、電池の内部抵抗が抑制され、入出力特性や電池容量の向上が可能となるものと考えられる。
[負極の作製]
表4に示す組成の、実施例2及び比較例3の蓄電デバイス電極用スラリーを調製し、各蓄電デバイス電極用スラリーを用いて負極を以下のようにして作製した。蓄電デバイス電極用スラリーに用いた材料は以下の通りである。
樹脂組成物:樹脂組成物A又は樹脂組成物C
負極活物質:グラファイト、昭和電工製、「AF−C」
負極導電材:カーボンファイバー、昭和電工製、「VGCF−H」
負極増粘剤:カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、ダイセル製、「#2200」
負極を45mm×45mmに打ち抜き、角と角を合わせて三角形に谷折りにしたのち、指で折り目を付け、再度開いた際に塗膜(負極合材層)の剥がれのないものをA、剥がれが見られるものをBとした。結果を表4に示した。
Claims (7)
- 構成単位Aと構成単位Bのモル比(A/B)が、5/95以上70/30以下である、請求項1に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
- 前記重合体における前記構成単位Aの含有量が、10質量%以上45質量%以下である、請求項1又は2に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
- 前記重合体の数平均分子量が、1万以上300万以下である、請求項1から3のいずれかの項に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。
- 水性媒体をさらに含有し、
前記樹脂組成物の形態が、前記重合体が前記水性媒体に溶解した重合体溶液である、請求項1から4のいずれかに記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物。 - 集電体、及び前記集電体上に形成された合材層を含む蓄電デバイス電極であって、
前記合材層が、活物質、及び請求項1から4のいずれかの項に記載の蓄電デバイス電極用樹脂組成物の固形分を含む、蓄電デバイス電極。 - 請求項6に記載の蓄電デバイス電極を含む蓄電デバイス。
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