以下、本発明に係る撮像装置の具体的な実施形態及び実施例を、添付図面を参照して説明する。なお、以下の説明及び図面において、複数の図面に渡って共通の構成については共通の符号を付している。そのため、複数の図面を相互に参照して共通する構成を説明し、共通の符号を付した構成については適宜説明を省略する。
第1の実施形態
図1〜6を参照して、本発明の実施形態による撮像装置であるCMOSイメージセンサの構成、および、その駆動方法について説明する。図1は、本発明の第1の実施形態における撮像装置100の回路構成例である。本実施形態において、撮像装置100は、画素アレイ104、電流源105、アナログデジタル(AD)変換部109、出力部110、垂直走査回路111、水平走査回路112、および、制御部113を含む。画素アレイ104は、複数の画素101、複数の垂直出力線102、および、複数の駆動信号線103を含む。AD変換部109は、変換部106、信号生成部107、および、カウンタ108を含む。
画素101は、画素アレイ104に2次元アレイ状に配され、入射した光を電気信号に変換する。また、画素101は、光電変換された電荷の蓄積を行う。垂直出力線102は、垂直方向(列方向)に並ぶ画素101ごとに接続され、それぞれの画素101から信号が出力される。駆動信号線103は、水平方向(行方向)に並ぶ画素101ごとに接続され、画素101の制御を行う制御パルスが垂直走査回路111から出力される。この構成によって、同一行に配される画素101は、垂直出力線102を介して同時にAD変換部109へ信号をそれぞれ出力する。
変換部106は、画素アレイ104のそれぞれの画素101から出力された信号を、信号生成部107から出力される複数の参照信号のうち比較信号として用いられる参照信号と比較することによって、画素アレイ104の列ごとに並行してAD変換を行う。AD変換は、画素101におけるリセット解除時のリセットレベルに基づく基準信号(N信号)と、画素101の入射光を光電変換した電荷に基づく画素信号(S信号)と、に対して行われる。N信号は、例えば、画素アレイ104に光が照射されない場合の信号でありうる。詳細は後述するが、本実施形態においては、N信号に対して1回、S信号に対して1〜3回のAD変換が行われる。変換部106は、N信号およびS信号から変換されたデジタル信号であるAD変換結果に加えて、S信号に対してAD変換を行った回数である判定回数を出力部110に出力する。
信号生成部107は、複数の参照信号を生成する。参照信号は、時間に依存して電位が変化するランプ信号であるRamp1、Ramp2、および、Ramp3を含む。Ramp1、Ramp2、Ramp3のそれぞれは、同じ電位から電位が変化しうる。Ramp2は、Ramp1の電位の変化の開始から予め設定された時間の遅れをもって電位の変化を開始し、Ramp1に追従するように電位が変化する。同様に、Ramp3は、Ramp2の電位の変化の開始から予め設定された時間の遅れをもって電位の変化を開始し、Ramp2に追従するように電位が変化する。また、Ramp3は、Ramp1の電位の変化の開始から予め設定された時間の遅れをもって電位の変化を開始し、Ramp1に追従するように電位が変化するとも言える。信号生成部107は、それぞれ異なる信号線にRamp1、Ramp2、Ramp3を出力する。カウンタ108は、変換部106がカウントを行うためのカウント値を供給する。変換部106は、N信号またはS信号と比較信号として選択された参照信号との大小関係を比較し、N信号またはS信号と参照信号との大小関係が反転した際のカウント値を保持することによってAD変換を行う。
出力部110は、S信号からAD変換されたデジタル信号である「信号値」からN信号をAD変換したデジタル信号である「基準値」を減算する基準レベル補正を行う。基準レベル補正によって、画素101に蓄積された電荷に基づく信号が算出される。また、出力部110は、基準レベル補正によって算出した信号に対して、変換部106から出力される判定回数に応じて、AD変換の際に比較信号として用いた参照信号に応じたオフセット補正やゲイン補正を行う。補正された信号は、出力部110から撮像装置100の外部に出力される。
垂直走査回路111は、駆動信号線103に駆動パルスを出力する。駆動パルスを出力する駆動信号線103を順に異ならせていくことによって、それぞれの行にある画素101からの信号が、順にAD変換部109へと出力される。水平走査回路112は、AD変換部109に駆動信号を出力し、列ごとに配された変換部106に保持された信号値や基準値などのAD変換結果や判定回数を、順次、出力部110へと出力させる。制御部113は、AD変換部109、出力部110、垂直走査回路111、および、水平走査回路112に対し、それぞれ制御信号を出力し、撮像装置100全体のタイミング制御を行う。電流源105は、垂直出力線102に接続され、画素101から信号を出力する際の負荷として機能する。
図2は、本実施形態の撮像装置100を搭載した撮像システム200(例えば、デジタルカメラ)の構成例である。撮影レンズ201は、被写体の光学像を撮像装置100に結像させる。レンズ駆動部202は、撮影レンズ201を駆動してズーム制御、フォーカス制御、絞り制御などを行う。全体制御演算部203は、撮像装置100から出力される信号の補正や画像の生成などの処理を行う信号処理部として機能し、また、撮像システム200全体の制御を行う。メモリ204は画像データを一時的に記憶するためのメモリとして機能する。表示部205は各種情報や画像を表示するデバイスである。記録部206は、画像データの記録や読み出しを行うための着脱可能な、例えば半導体メモリである。操作部207は、撮像システム200の各種インターフェースであり、操作部207を介したユーザからの指示に従って、全体制御演算部203が、撮像システム200の各構成を制御する。
図3には、撮像装置100の画素アレイ104に配される画素101の回路の構成例が示される。画素101には、光電変換を行う光電変換部が配され、本実施形態においてフォトダイオード(PD)301が用いられる。また、画素101は、転送トランジスタ(TX)302、フローティングディフュージョン(FD)303、リセットトランジスタ(RES)304、増幅トランジスタ(SF)305、選択トランジスタ(SEL)306を含む。TX302には駆動パルスφTXが、RES304には駆動パルスφRESが、SEL306には駆動パルスφSELが、それぞれ垂直走査回路111から駆動信号線103を介して伝送される。
PD301は、画素101に入射した光を電気信号に変換する光電変換部および電荷の蓄積部として機能する。PD301にて電荷に変換された信号は、TX302を介してFD303へと出力される。TX302は、駆動パルスφTXがハイレベルとなることによってオン動作し、PD301に蓄積された電荷をFD303に転送する。FD303では、FD303に接続された寄生容量によって、PD301から転送された電荷が電荷電圧変換される。RES304は、駆動パルスφRESがハイレベルとなることによってオン動作し、FD303に転送された電荷を電源VDDへと流し、FD303の電位をリセットする。SF305はFD303の信号を電流増幅し、FD303の信号を変換部106へと出力する。
SEL306は、駆動パルスφSELがハイレベルとなることによってオン動作し、FD303の電位に応じた信号を垂直出力線102に出力する。SEL306のオン・オフを制御することによって、アレイ状に配された画素101のうち、選択された行の画素101の信号が、垂直出力線102に出力される。画素101から出力される信号は、上述したようにFD303のリセット後、画素アレイに駆動パルスφRESをローレベルにしたリセット解除状態で出力されるN信号と、リセット解除後にPD301で光電変換された信号を転送するS信号と、を含む。
次に、図4を参照して、本実施形態における変換部106について説明する。図4(a)には、撮像装置100の変換部106の回路の構成例が示される。また、図4(b)には、判定回数と比較信号として選択される参照信号との関係がそれぞれ示される。
変換部106は、比較部401、切替部402、判定回数カウンタ403、カウント部404を含む。カウント部404は、N信号用ラッチ405、S信号用ラッチA406、S信号用ラッチB407、S信号用ラッチC408を含む。
比較部401は、垂直出力線102を介して入力されるN信号またはS信号と、比較信号とを比較し、その大小関係に応じてハイレベルもしくはローレベルを比較結果信号として出力する。本実施形態において、比較信号に比べS信号の電位が高い場合、ハイレベルを出力する。
切替部402は、信号生成部107から出力される参照信号Ramp1、Ramp2、Ramp3から、比較信号として用いる参照信号を選択する。具体的には、切替部402は、次に述べる判定回数カウンタ403から出力される判定回数に応じて、比較信号として用いる参照信号を切り替える。判定回数と比較信号の関係は図4(b)に示すように、判定回数が0または1の場合Ramp1が、判定回数が2の場合Ramp2が、判定回数が3または4の場合Ramp3が、切替部402によって切り替えられ、それぞれ比較信号として用いられる。
判定回数カウンタ403は、比較結果信号がハイレベルに変化するごとに判定回数を増加させるカウンタとして動作し、そのカウント値を判定回数として出力する。判定回数は、切替部402、カウント部404、および、出力部110へ出力される。
カウント部404は、N信号またはS信号と比較信号との大小関係がAD変換を開始した際の大小関係と反転する比較部401の出力がハイレベルに変化したタイミングで、判定回数に応じたラッチにカウンタ108によってカウントされるカウント値を保持する。判定回数が0回の場合、比較部401の出力がハイレベルに変化すると、カウント部404は、N信号用ラッチ405にN信号をAD変換した基準値としてカウント値を保持する。判定回数が1の場合、つまり、次に比較部401の出力がハイレベルに変化すると、カウント部404は、S信号用ラッチA406にS信号をAD変換した信号値としてカウント値を保持する。その後、カウント部404は、順にS信号用ラッチB407、S信号用ラッチC408にそれぞれ信号値としてカウント値を保持する。判定回数4の場合、本実施形態において、比較部401の出力がハイレベルに遷移することはなく、カウント部は、何れのラッチにカウント値を保持しない。各々のラッチに保持をされた信号値および基準値は、AD変換結果として出力部110に出力される。以下の説明のために、S信号用ラッチA406に保持された信号値をS信号値A、S信号用ラッチB407に保持された信号値をS信号値B、S信号用ラッチC408に保持された信号値をS信号値Cと呼ぶ。同様にN信号用ラッチ405に保持された基準値をN信号値と呼ぶ。
次いで、図5を参照して、本実施形態における撮像装置100の駆動方法について説明する。図5は、撮像装置100の駆動を示すタイミングチャートである。図5は、画素アレイ104に含まれる複数の画素101のうち1行の画素から信号を読み出す読出駆動を示している。この読出駆動を行ごとに繰り返し行うことによって、画素アレイ104に含まれる全ての画素101の信号を撮像装置100の外部へと出力する。
図5において、「φRES」、「φTX」は、読み出しを行う行の画素101に供給される駆動パルスφRES、φTXをそれぞれ表し、ハイレベルまたはローレベルの何れかの状態をとるものとする。「比較信号」は、比較部401に入力される切替部402によって切り替えられる比較信号として用いられる参照信号を表す。「画素出力信号」は比較部401に垂直出力線102を介して入力される画素101から出力されたS信号およびN信号を表す。
「比較結果信号」は、比較部401の出力を示しており、S信号またはN信号が、比較信号よりも高い電位の場合、比較部401の出力がハイレベルとなる。「判定回数」は判定回数カウンタ403の出力であり、判定回数が切り替わる様子を模式的に表している。「カウンタ」は、カウンタ108の出力であるカウント値を表している。比較信号、画素出力信号、比較結果信号、判定回数、および、カウンタは、画素アレイ104の1つの画素101の例を示している。また、図5(a)は、S信号の電位が高い、つまり、S信号の信号レベルが小さい場合の動作を示しており、図5(b)は、S信号の電位が低い、つまり、S信号の信号レベルが大きい場合の動作を示している。
まず、図5(a)に示すようにS信号の信号レベルが小さい場合の動作について説明する。時刻t501で、駆動パルスφRESがハイレベルとなり、FD303の電位がリセットされる。その後、駆動パルスφRESはローレベルとなり、FD303のリセットが終了する。
時刻t502で、光電変換によって蓄積された電荷を転送する前の信号であるN信号のAD変換期間が開始される。判定回数は0であるので、比較信号として参照信号のうちRamp1が、切替部402によって選択され、比較部401に入力される。Ramp1が比較信号として選択された後、N信号のAD変換の開始に応じて、Ramp1の電位は、時間に対して一定の変化率で低下し始める。合わせて、カウンタ108が、カウントアップを開始する。
時刻t503で、N信号と比較信号との大小関係が、N信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。それに応じてN信号用ラッチ405にカウント値が保持され、更に判定回数カウンタ403の出力が1となる。判定回数は1であるので、切替部402は比較信号として用いられる参照信号の切り替えはせずに、比較信号として引き続き参照信号Ramp1が用いられる。
時刻t504で、N信号のAD変換期間が終了し、比較信号である参照信号Ramp1の電位、およびカウンタ108のカウント値が、それぞれリセットされる。
次いで、時刻t505で、駆動パルスφTXがハイレベルとなり、PD301で光電変換され蓄積された電荷がFD303に転送される。これによって、FD303の電位は転送された電荷に応じて低下し、比較部401に入力される画素出力信号のうちS信号もFD303の電位に応じて低下する。
時刻t506で、S信号のAD変換期間が開始される。S信号のAD変換の開始に応じて、Ramp1の電位は、一定の変化率で低下し始める。このとき、比較信号として用いられる参照信号はN信号のAD変換を行った際と同じRamp1であるため、N信号のAD変換を行った際と同じ時間に対する変化率で電位が低下する。合わせて、カウンタ108が、カウントアップを開始する。
また、信号生成部107において、AD変換を開始し、Ramp1の電位が変化し始める時刻t506から予め設定された時間の遅れをもって、Ramp2の電位が、Ramp1に追従するように変化し始める。同様に、Ramp3の電位が、Ramp2の電位が変化し始めてから予め設定された時間の遅れをもって、Ramp2に追従して変化し始める。Ramp1、Ramp2、および、Ramp3の電位は、時間に対して同じ変化率となるように制御されうる。
Ramp1に対してRamp2、および、Ramp2に対してRamp3の電位の変化の開始を遅らせる時間は、比較信号として参照信号を切り替えた際、切り替えられた後の参照信号が画素出力信号(S信号)よりも高い電位になる範囲にする。更に、電位の変化の開始を遅らせる時間は、S信号のAD変換期間(時刻t506〜t510)に対して短く設定される。具体的には、参照信号の切り替え時に確実にS信号より高い電位になる最短時間を求め、その時間としてもよい。また例えば、Ramp1の電位の変化の開始からRamp2の電位の変化の開始までの時間と、Ramp2の電位の変化の開始からRamp3の電位の変化の開始までの時間とが、図5(a)、(b)に示すように、同じであってもよい。
時刻t507で、S信号と比較信号との大小関係が、S信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。これに応じてS信号用ラッチA406にカウント値がS信号値Aとして保持され、更に判定回数カウンタ403の出力が2となる。判定回数が2に変化するのに応じて、切替部402は、比較信号として用いる参照信号をRamp1からRamp2に切り替える。Ramp2の電位は、上述のようにRamp1よりも遅れて変化するため、比較信号は、Ramp1に対してRamp2の電位の変化が遅れた期間にRamp1が変化した電位の分、高い電位に切り替わる。そのため、S信号と比較信号との大小関係はAD変換を開始した際の関係に戻り、比較結果信号はローレベルとなる。
時刻t508で、再びS信号と比較信号との大小関係が、S信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。これに応じてS信号用ラッチB407にカウント値がS信号値Bとして保持され、更に判定回数カウンタ403の出力が3となる。判定回数が3に変化するのに応じて、切替部402は、比較信号として用いる参照信号をRamp2からRamp3に切り替える。Ramp3の電位は、上述のようにRamp2よりも遅れて変化するため、比較信号は、Ramp2に対してRamp3の電位の変化が遅れた期間にRamp2が変化した電位の分、高い電位に切り替わる。そのため、S信号と比較信号との大小関係はAD変換を開始した際の関係に戻り、比較結果信号はローレベルとなる。
時刻t509で、S信号と比較信号の大小関係が、S信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。これに応じてS信号用ラッチC408にカウント値がS信号値Cとして保持され、更に判定回数カウンタ403の出力が4となる。このとき、判定回数は4であるため、比較信号として引き続きRamp3が比較部401に入力される。
時刻t510で、S信号のAD変換期間が終了し、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位、および、カウンタ108のカウント値がリセットされる。
その後、水平走査回路112よって出力される駆動パルスに従い、変換部106のカウント部404に保持されたAD変換結果であるN信号値、S信号値A〜C、および、判定回数カウンタ403の判定回数が、順に出力部110へと出力される。
出力部110は、まず、S信号のAD変換結果である信号値から、N信号のAD変換結果である基準値を減算する基準レベル補正を行う。信号値からの基準値を減算することによって画素101に蓄積された電荷に基づく信号が、算出される。
次いで、比較信号として用いられるRamp1、Ramp2、Ramp3は、電位の低下し始めるタイミングが異なるため、保持されたカウント値とS信号の電位の関係がずれてしまっている。このずれを補正するために、出力部110は、比較信号としてRamp2、Ramp3を用いてAD変換を行ったS信号値BおよびS信号値Cに対して、参照信号の電位の変化の開始を遅らせた時間に進んだカウント値を減算するオフセット補正を行う。具体的には、出力部110は、時刻t506のS信号と比較信号との比較の開始、換言するとS信号のAD変換の開始であるRamp1の電位の変化の開始から、Ramp2の電位が変化を開始するまでの時間に応じてS信号値Bを補正する。同様に、出力部110は、時刻t506のS信号のAD変換の開始(Ramp1の電位の変化の開始)から、Ramp3の電位が変化するまでの遅延時間に応じてS信号値Cを補正する。
更に、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位は、それぞれ時間に対して同じ変化率で変化するように制御されるものの、正確に一致させることは難しい。そこで、その誤差を補正するために、出力部110は、S信号値BおよびS信号値Cに対しゲイン補正を行う。更に、出力部110は、オフセット補正やゲイン補正を行った3つの信号値を平均化し、この結果を当該画素の出力として撮像装置100の外部へと出力する。
次に、図5(b)に示すようにS信号の信号レベルが大きい場合の動作について説明する。ここでは、上述のS信号の信号レベルが小さい場合の動作と異なる点について説明し、N信号のAD変換期間については説明を省略する。
時刻t515で、駆動パルスφTXがハイレベルとなり、PD301で光電変換され蓄積された電荷がFD303に転送される。画素出力信号(S信号)は、信号レベルが小さい場合と比較して、より低い電位まで変化する。
時刻t517で、S信号と比較信号との大小関係が、S信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、S信号用ラッチA406にS信号値Aが保持される。また、判定回数カウンタ403の出力が2となるのに応じて、切替部402は、比較信号として用いる参照信号をRamp1からRamp2に切り替える。S信号とRamp1を用いた比較信号の大小関係が反転するタイミングは、信号レベルが小さい場合と比較して遅くなる。
時刻t518で、再びS信号と比較信号との大小関係が、S信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、S信号用ラッチB407にS信号値Bが保持される。また、判定回数カウンタ403の出力が3となるのに応じて、切替部402は、比較信号として用いる参照電圧をRamp2からRamp3に切り替える。
時刻t519で、S信号のAD変換期間が終了し、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位、および、カウンタ108のカウント値がリセットされる。
その後、水平走査回路112よって出力される駆動パルスに従い、変換部106のカウント部404に保持されたAD変換結果であるN信号値、S信号値A、B、および、判定回数カウンタ403の判定回数が、順に出力部110へと出力される。
次いで、出力部110は、判定回数が、信号レベルが小さい場合の「4」ではなく「3」であるため、S信号値AおよびS信号値Bに対して上述と同様な補正処理および平均化を行う。出力部110は、平均化された信号値を当該画素の出力として撮像装置100の外部へ出力する。
S信号のAD変換を行う回数が最大回数(本実施形態において3回)とならない範囲は、それぞれの参照信号の電位の変化の開始を遅らせた時間に依存するが、遅らせる時間はAD変換期間に対して非常に小さい。このため、多くの信号レベルにおいて最大回数のAD変換を行うことが可能となる。また、本実施形態において、参照信号としてRamp1と、Ramp1に対して電位が遅れて変化する2種類のRamp2およびRamp3と、の3種類の信号を用いたが、これに限られることはない。比較信号として4種類以上の参照信号を比較信号として用いてAD変換を行ってもよい。
また、図5(a)、(b)において、信号レベルが小さい場合と信号レベルが大きい場合との動作を2例、挙げて説明したが、画素アレイ104の列ごとに複数、配される変換部106には、信号レベルの異なる信号がそれぞれ入力されうる。このため、同時にAD変換を行う変換部106のそれぞれにおいて、入力されたS信号の信号レベルのそれぞれに応じて、比較信号として複数の参照信号を切り替えるタイミングが異なりうる。このため、S信号の比較信号としてRamp1を用いる1回目のAD変換が終わった変換部106から、順次、Ramp2、更にRamp3を比較信号として用いたAD変換が行われてもよい。また、S信号の信号レベルの大きさに応じて、複数の参照信号のうち切替部402によって比較信号として用いられる参照信号の数が異なりうる。このため、S信号の信号レベルの大きさに応じて、上述のように、カウント部404によって保持されるS信号値の数(S信号値が保持されるラッチの数)が異なりうる。
次に、図6を参照して、本実施形態における出力部110の補正処理および平均化処理について説明する。図6は、画素アレイ104に含まれる1つの画素101の出力を算出する際の処理を表すフローチャートである。出力部110は、これらの処理を画素アレイ104に含まれる全ての画素101について繰り返し行うことによって、撮像した画像を構成する信号値全体が出力される。
ステップS601で、出力部110は、信号値のうちS信号値Aから基準値であるN信号値を減算する基準レベル補正を行う。これによって、光の照射によって画素101で光電変換され蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。次いで、ステップS602では、判定回数が2であるかどうかの判定が行われ、判定回数が2の場合、ステップS603に、判定回数が2でない場合、ステップS604に移行する。
判定回数が2であった場合、出力部110は、ステップS603において、N信号値を減算したS信号値Aを、画素の出力として撮像装置100の外部へと出力する。判定回数が2の場合、S信号のAD変換は1回のみ行われるため、信号値としてS信号値Aのみが取得され、結果として平均化処理を行う必要はない。
判定回数が2でなかった場合、ステップS604に進み、出力部110は、S信号値Bのオフセット補正を行う。オフセット補正とは、上述のように電位の低下し始めるタイミングを遅らせた参照信号をAD変換に使用した際、保持されたカウント値とS信号の電位の関係のずれを補正する処理のことである。具体的には、S信号値Bに対して、AD変換の開始(Ramp1の電位の変化の開始)からRamp2の電位が変化を開始するまでの時間に進んだカウント値を減算する。
次いで、ステップS605で、出力部110は、Ramp2を使用した際のゲイン補正を行う。Ramp2の電位の時間に対する変化率は、Ramp1の電位の時間に対する変化率と同等になるように制御されるものの、互いに異なる信号線を用いて信号生成部107から変換部106伝送されるため、正確に一致させることが難しい可能性がある。その誤差を補正する為に、出力部110は、S信号値Bに対しゲイン補正を行う。ゲイン補正を行わない場合、Ramp2を用いたS信号のAD変換とRamp1を用いたN信号のAD変換との間で変換ゲインに誤差が生じてしまい、蓄積された電荷に基づく信号値を正確に算出できない可能性がある。また、S信号のAD変換の回数がS信号の信号レベルによって異なりうるため、ゲイン補正によってAD変換の回数に関わらずAD変換のゲインが一定となるように補正することによって、画素アレイ104の全体に渡り、より正確に信号値を求められる。ゲイン補正は予め出力部110内のメモリに記録された補正値をS信号値Bに適用することによって行う。ゲイン補正は、例えば、S信号値Bに補正値を乗算することによって行ってもよい。補正値は、予め電位の異なる少なくとも2種類の信号を変換部106に入力しAD変換をした際の、S信号値AとS信号値Bのゲイン差から取得されうる。ゲイン補正に用いる補正値は、上述のように出力部110内に記録されていてもよいし、また例えば、図1に示すように補正値記録部114に記録された補正値を出力部110が読み出して用いてもよい。
次に、ステップS606で、出力部110は、オフセット補正およびゲイン補正されたS信号値BからN信号値を減算する基準レベル補正を行う。これによって、比較信号としてRamp1を用いてAD変換をした際と変わらないゲインでAD変換された、画素101に蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。
ステップS607では、判定回数が3であるかどうかの判定が行われ、判定回数が3の場合、ステップS608に、判定回数が3でない、つまり判定回数が4である場合、ステップS610に移行する。
判定回数が3であった場合、出力部110は、ステップS608において、補正されたS信号値AとS信号値Bとを平均化する処理を行う。判定回数が3の場合、S信号のAD変換は2回行われるため、S信号値AとS信号値Bとの信号値が取得され、2つの信号値を平均化する。この平均化によって、ランダム性の回路ノイズの低減効果が得られる。続くステップS609において、出力部110は、平均化された信号値を画素の出力として撮像装置100の外部へと出力する。
判定回数が3でなかった場合、ステップS610に進み、出力部110は、S信号値Cのオフセット補正を行う。S信号値Cに対して、AD変換の開始(Ramp1の電位の変化の開始)からRamp3の電位が変化を開始するまでの時間、進んだカウント値を減算する。
次いで、ステップS611で、出力部110は、Ramp3を使用した際のゲイン補正を行う。ゲイン補正は予め出力部110内のメモリに記録された補正値をS信号値Cに適用することによって行う。ゲイン補正は、例えば、S信号値Cに補正値を乗算することによって行ってもよい。補正値は、予め電位の異なる少なくとも2種類の信号を変換部106に入力しAD変換をした際の、S信号値AとS信号値Cのゲイン差から取得されうる。ゲイン補正に用いる補正値は、上述のように出力部110内に記録されていてもよいし、また例えば、図1に示すように補正値記録部114に記録された補正値を出力部110が読み出して用いてもよい。
次に、ステップS612で、出力部110は、オフセット補正およびゲイン補正されたS信号値CからN信号値を減算する基準レベル補正を行う。これによって、比較信号としてRamp1を用いてAD変換をした際と変わらないゲインでAD変換された、画素101に蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。
ステップS613で、出力部110は、補正されたS信号値AとS信号値BとS信号値Cとを平均化する処理を行う。判定回数が4である場合、S信号のAD変換は3回行われるため、3つの信号値が取得され、出力部110は、これらの信号値を平均化する。この平均化によって回路ノイズの低減効果が得られる。続くステップS614において、出力部110は、平均化された信号値を画素の出力として撮像装置100の外部へと出力する。
本実施形態において、S信号の信号レベルが非常に大きい場合を除き、AD変換の期間を延長することなくS信号に対し複数回のAD変換を行うことが可能となる。複数回のAD変換を行い、出力部110にて取得された信号値を平均化することによって、回路ノイズを低減することが可能となる。
また、本実施形態において、信号生成部107は、S信号のAD変換を開始とともに電位の変化する参照信号のほか、AD変換を開始してから予め設定された時間の遅れをもって電位の変化する参照信号を生成する。これによって、比較信号は、まず、S信号のAD変換の開始に応じて電位の変化を開始する。その後、比較信号は、S信号と比較信号との大小関係が反転するのに応じて、用いる参照信号を切り替えることによって、S信号のAD変換を開始した電位と大小関係が反転した電位との間の電位から再び電位が変化する。このように、AD変換を行う際、比較信号として用いる参照信号を切り替えながら、連続してAD変換を行うことによって、2回目以降のAD変換にかかる時間を短縮することができる。上述のように、本実施形態において、最大回数のAD変換を行うことができないS信号の信号レベルの範囲は、参照信号の電位の変化の開始を遅らせた時間に依存するが、当該時間はAD変換期間に対して非常に小さい。このため、多くの信号レベルの範囲において複数回のAD変換を行うことが可能となる。
また、AD変換中に暗電流などによって、信号レベルが変化してしまう場合がある。この場合、特許文献1に示される駆動方法では、参照信号をAD変換ごとにAD変換を開始した際の電圧からスイープさせるため、AD変換を行う期間の間隔が長くなり、1回目のAD変換と比較して2回目以降のAD変換された信号値の信頼性が低下しうる。一方、本実施形態の撮像装置の構成および駆動方法を用いた場合、2回目以降のAD変換を行うまでの間隔は、それぞれの参照信号の電位の変化の開始を遅らせた時間のみとなる。このため、2回目以降のAD変換によって取得された信号値の信頼性が向上しうる。
また、本実施形態では、信号生成部107が複数の参照信号を生成し、切替部402が参照信号を切り替えることによって比較信号を生成したが、比較信号の生成方法はこれに限られることはない。例えば、信号生成部107が、S信号のAD変換の開始に応じて電位が低下し始め、S信号との大小関係が反転するのに応じて、S信号のAD変換を開始した電位と大小関係が反転した電位との間の電位から再び電位が変化する信号を比較信号として生成してもよい。この場合、信号生成部107と変換部106との間の信号線は1つとなりうるため、上述した出力部110でのゲイン補正は省略してもよい。
第2の実施形態
図7〜9を参照して、本発明の実施形態による撮像装置の構成、および、その駆動方法について説明する。図7は、本発明の第2の実施形態における撮像装置100に含まれる変換部106について説明する図である。図7(a)には、撮像装置100の変換部106の回路の構成例が示される。また、図7(b)には、判定回数と比較信号として選択される参照信号との関係がそれぞれ示される。本実施形態の撮像装置100において、図1に示される回路構成や、図3に示される画素101の回路構成は、上述の第1の実施形態と同様であってもよい。ここでは、上述の第1の実施形態と異なる点を中心に説明する。
本実施形態の変換部106において、上述の第1の実施形態の変換部106と異なる点は、以下の4点が挙げられる。判定回数カウンタ703が出力する最大の判定回数が、第1の実施形態の「4」と比較して「6」まで増加している。判定回数が、変換部106の外部へ出力されない。切替部702が選択する参照信号と判定回数との関係が、第1の実施形態とは異なる。カウント部704を構成するラッチが、N信号用ラッチA705、N信号用ラッチB706、N信号用ラッチC707、S信号用ラッチA708、S信号用ラッチB709、および、S信号用ラッチC710の合計6つある。これら4点以外は、第1の実施形態の変換部106と同じであってもよい。
第1の実施形態において、N信号に対して1回のAD変換を行い、S信号に対して信号レベルに応じて1〜3回のAD変換を行うことを示した。一方、本実施形態において、N信号に対して3回AD変換を行い、また、S信号に対して常に3回のAD変換を行う。そのため、判定回数を出力部110へ出力する必要がない。また、N信号に対して3回のAD変換を行うために、N信号用のラッチとして、N信号用ラッチA705、N信号用ラッチB706、および、N信号用ラッチC707の合計3つが、カウント部704に配される。また、S信号用のラッチとして、第1の実施形態と同様に、S信号用ラッチA708、S信号用ラッチB709、および、S信号用ラッチC710の合計3つが、カウント部704に配される。N信号用ラッチA705およびS信号用ラッチA708は、比較信号として参照信号のうちRamp1を用いてN信号およびS信号からAD変換された信号値および基準値を保持する。N信号用ラッチB706およびS信号用ラッチB709は、比較信号として参照信号のうちRamp2を用いてN信号およびS信号からAD変換された信号値および基準値を保持する。N信号用ラッチC707およびS信号用ラッチC710は、比較信号として参照信号のうちRamp3を用いてN信号およびS信号からAD変換された信号値および基準値を保持する。
また、切替部702は、参照信号のうち判定回数が0または3の場合Ramp1、判定回数が1または4の場合Ramp2、判定回数が3、5または6の場合Ramp3をそれぞれ比較信号として用いる。以下の説明のために、N信号用ラッチA705に保持された基準値をN信号値A、N信号用ラッチB706に保持された基準値をN信号値B、N信号用ラッチC707に保持された基準値をN信号値Cと呼ぶ。また、第1の実施形態と同様に、S信号用ラッチA708に保持された信号値をS信号値A、S信号用ラッチB709に保持された信号値をS信号値B、S信号用ラッチC710に保持された信号値をS信号値Cと呼ぶ。
次いで、図8を参照して、本実施形態における撮像装置100の駆動方法について説明する。図8は、撮像装置100の駆動を示すタイミングチャートである。図8(a)は、S信号の電位が高い、つまり、S信号の信号レベルの小さい場合の動作を示しており、図8(b)は、S信号の電位が低い、つまり、S信号の信号レベルの大きい場合の動作を示している。
まず、図8(a)に示すようにS信号の信号レベルが小さい場合の動作について説明する。時刻t801では、第1の実施形態と同様に、FD303のリセットが行われる。
次いで、時刻t802で、N信号のAD変換期間が開始される。時刻t802において、判定回数カウンタ703の判定回数は0であるため、Ramp1が、切替部702によって選択され、比較部701に入力される。Ramp1が比較信号として選択された後、N信号のAD変換の開始に応じて、Ramp1の電位は、時間に対して一定の変化率で低下し始める。合わせて、カウンタ108はカウントアップを開始する。
また、信号生成部107において、AD変換を開始し、Ramp1の電位が変化し始める時刻t802から予め設定された時間の遅れをもって、Ramp2の電位が、Ramp1に追従するように変化し始める。同様に、Ramp3の電位が、Ramp2の電位が変化し始めてから予め設定された時間の遅れをもって、Ramp2に追従して変化し始める。Ramp1、Ramp2、および、Ramp3の電位は、時間に対して同じ変化率となるように制御されうる。
時刻t803では、N信号と比較信号との大小関係が、N信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。それに応じてN信号用ラッチA705にカウント値がN信号値Aとして保持され、更に判定回数カウンタ703の出力が1となる。判定回数が1に変化するのに応じて、切替部702は、比較信号として用いる参照信号をRamp1からRamp2に切り替える。Ramp2の電位は、上述のようにRamp1よりも遅れて変化するため、比較信号は、Ramp1に対してRamp2の電位の変化が遅れた期間にRamp1が変化した電位の分、高い電位に切り替わる。そのため、N信号と比較信号との大小関係はAD変換を開始した際の関係に戻り、比較結果信号はローレベルとなる。
時刻t804で、再びN信号と比較信号との大小関係が、N信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。それに応じてN信号用ラッチB706にカウント値がN信号値Bとして保持される。判定回数は2に変化するのに応じて、切替部702は、比較信号として用いる参照信号をRamp2からRamp3に切り替える。Ramp3の電位は、上述のようにRamp2よりも遅れて変化するため、比較信号は、Ramp2に対してRamp3の電位の変化が遅れた期間にRamp2が変化した電位の分、高い電位に切り替わる。そのため、N信号と比較信号との大小関係はAD変換を開始した際の関係に戻り、比較結果信号はローレベルとなる。
時刻t805で再度、N信号と比較信号との大小関係が、N信号のAD変換の開始の際の大小関係から反転し、比較結果信号がハイレベルに変化する。それに応じてN信号用ラッチC707にカウント値がN信号値Cとして保持される。判定回数は3に変化するのに応じて、切替部702は、比較信号として用いる参照信号をRamp3からRamp1に切り替える。
時刻t806で、N信号のAD変換期間が終了し、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位、および、カウンタ108のカウント値がリセットされる。
時刻t807〜t812では、光電変換によってPD301で発生した電荷の転送およびS信号のAD変換が行われる。S信号のAD変換において、AD変換の開始(Ramp1の電位の変化の開始)からRamp2およびRamp3の電位が変化を開始するまでの時間は、N信号のAD変換において、AD変換の開始から遅らせた時間とそれぞれ等しくなるように制御されうる。
本実施形態において、上述の第1の実施形態と異なり、比較信号として用いられるRamp3の電位が、S信号のレベルに関わらず大小関係が反転するまで変化させる。換言すると、AD変換を開始してからRamp3の電位とS信号の最大のレベルとの大小関係が反転するまでの期間が、AD変換の期間となる。これによって、AD変換を行う信号レベルの全領域においてS信号を3回、AD変換することが可能となる。例えば、図8(b)に示すように、S信号の信号レベルが大きい場合であっても、S信号に対して3回のAD変換が行われる。
次に、図9を参照して、本実施形態における出力部110の補正処理および平均化処理について説明する。図9は、画素アレイ104に含まれる1つの画素101の出力を算出する際の処理を表すフローチャートである。出力部110は、これらの処理を画素アレイ104に含まれる全ての画素101について繰り返し行うことによって、撮像した画像を構成する信号値全体が出力される。
ステップS901で、出力部110は、それぞれ比較信号としてRamp1を用いてAD変換されたS信号値AからN信号値Aを減算する基準レベル補正を行う。これによって、画素101で光電変換され蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。
次いで、ステップS902で、出力部110は、それぞれ比較信号としてRamp2を用いてAD変換されたS信号値BからN信号値Bを減算する基準レベル補正を行う。これによって、画素101で光電変換され蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。次にステップS903で、出力部110は、Ramp2を使用した際のゲイン補正を行い、Ramp2のRamp1に対する電位の時間変化率の誤差を補正する。ゲイン補正は予め出力部110に記録された補正値をS信号値Bに適用することによって行う。ゲイン補正は、例えば、S信号値Bに補正値を乗算することによって行ってもよい。補正値は、予め均一輝度面を撮影し、それぞれN信号値AおよびN信号値Bを減算後のS信号値AおよびS信号値Bのゲイン差から取得されうる。ゲイン補正に用いる補正値は、上述のように出力部110内のメモリに記録されていてもよいし、また例えば、図1に示すように補正値記録部114に記録された補正値を出力部110が読み出して用いてもよい。
次に、ステップS904で、出力部110は、それぞれ比較信号としてRamp3を用いてAD変換されたS信号値CからN信号値Cを減算する基準レベル補正を行う。これによって、画素101で光電変換され蓄積された電荷に基づく信号を算出することができる。次いで、ステップS905で、出力部110は、Ramp3を使用した際のゲイン補正を行い、Ramp3のRamp1に対する電位の時間変化率の誤差を補正する。ゲイン補正は予め出力部110に記録された補正値をS信号値Cに適用することによって行う。ゲイン補正は、例えば、S信号値Cに補正値を乗算することによって行ってもよい。補正値は、予め均一輝度面を撮影し、それぞれN信号値AおよびN信号値Cを減算後のS信号値AおよびS信号値Cのゲイン差から取得されうる。
次いで、ステップS906で、出力部110は、補正されたS信号値AとS信号値BとS信号値Cとを平均化する処理を行う。本実施形態において、S信号のAD変換は3回行われるため、3つの信号値が取得され、これらの信号値を平均化する。この平均化によって回路ノイズの低減効果が得られる。続くステップS907において、出力部110は、平均化された信号値を画素の出力として撮像装置100の外部へと出力する。
本実施形態において、S信号の信号レベルの大きさに関わらず、N信号に対して3回、S信号に対して3回、それぞれAD変換を行う。そのため、上述の第1の実施形態と同様に、暗電流などの発生する状況においても、ノイズ低減効果を得ることが可能である。また、N信号に対して複数回のAD変換を行うことによって、第1の実施形態と比較してノイズ低減効果を高めることが可能となる。更に、本実施形態において、基準レベル補正を行う際、S信号値とN信号値とは共通の参照信号を使用してAD変換される。基準となるAD変換の開始(Ramp1からの電位の低下を開始)から、それぞれの参照信号の電位が変化するまでの時間が共通であることから、オフセット補正を行う必要がない。
また、本実施形態においては、S信号値BおよびS信号値Cに対して、それぞれ出力部110においてゲイン補正を行った。しかしながら、基準レベル補正を行う際のS信号値とN信号値は、共通の参照信号を用いてAD変換されるため、時間に依存して電位が変化する変化率が互いに等しい。また、常にAD変換を行う回数が同じことから、ゲイン補正を省略してもよい。
本実施形態において、第1の実施形態と比較して参照信号の電位の変化の開始を遅らせた時間、AD変換期間が延びてしまうものの、電位の変化を遅らせる時間はAD変換期間全体の時間に比べて非常に短くなりうる。このため、AD変換期間の延長の影響は小さい。また、本実施形態において、N信号およびS信号のAD変換をそれぞれ3回ずつ行ったが、2回であってもよいし、4回以上であってもよい。例えば、ランダム性ノイズの低減効果とAD変換の期間との関係を考慮し、AD変換の回数を適宜選択すればよい。
第3の実施形態
図10〜13を参照して、本発明の実施形態による撮像装置の構成、および、その駆動方法について説明する。図10は、本発明の第3の実施形態における撮像装置1100を搭載した撮像システム1000(例えば、デジタルカメラ)の構成例である。本実施形態の撮像システム1000は、上述の図2に示す撮像システム200と比較して、温度センサ1001が配される点で異なる。これ以外の点は、図2に示す撮像システム200と同じであってもよい。
温度センサ1001は、撮像装置1100の温度を検出し、その温度情報を全体制御演算部203に送信する。全体制御演算部203は、温度情報を撮像装置1100に送信する。撮像装置1100は、受信した温度情報に応じて、信号生成部107での参照信号の生成を制御する。
次に、図11を参照して、本実施形態における撮像装置1100の回路構成について説明する。本実施形態の撮像装置1100において、上述の図1に示す撮像装置100と比較して、複数の列アンプ1101を含む増幅部1102が配される。これ以外の点は、図1に示される撮像装置100と同じであってもよい。
増幅部1102のそれぞれの列アンプ1101は、画素アレイ104から信号が出力される垂直出力線102と変換部106との間に配される。増幅部1102のそれぞれの列アンプ1101は、画素101より出力されたN信号、S信号を増幅しAD変換部109へと出力する。それぞれの列アンプ1101は、N信号、S信号を増幅する際の増幅率が変更できるように構成されており、本実施形態において、1倍、2倍、4倍、8倍の増幅率が選択できる。増幅率およびその種類は、これに限られることなく、それぞれの撮像装置によって適宜設定すればよい。
制御部113は、全体制御演算部203から受信した温度情報、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率、参照信号の電位の変化率の3つの画像取得条件に応じて、それぞれタイミングの異なる駆動信号φRAMP_STARTを信号生成部107に出力する。増幅部1102の列アンプ1101の増幅率の設定、および、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位の変化率の設定は、例えば、ユーザが指定し、全体制御演算部203から制御部113に送信される。信号生成部107は、画像取得条件に応じた駆動信号φRAMP_STARTのタイミングに応じて、予め設定された時間の遅れをもって変化をそれぞれ開始するように、参照信号であるRamp1、Ramp2、Ramp3を生成する。また、本実施形態において、信号生成部107は、Ramp1、Ramp2、Ramp3の電位の変化率を変化させることによって、S信号の振幅とAD変換後のデジタル信号との変換ゲインを変えることができる。出力部110は、信号生成部107でのRamp2、Ramp3の電位の変化の開始のタイミングの変更に応じて、オフセット補正に用いられる補正値をそれぞれ適した値に変更する。
図12は、撮像装置1100の駆動を示すタイミングチャートである。図12(a)は、撮像装置1100の温度が20℃、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が4倍、参照信号の電位の変化率が大きい場合の動作を示している。図12(b)は、撮像装置1100の温度が50℃、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が4倍、参照信号の電位の変化率が大きい場合の動作を示している。図12(c)は、撮像装置1100の温度が50℃、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が4倍、参照信号の電位の変化率が小さい場合の動作を示している。画像取得条件と駆動信号φRAMP_STARTのタイミングの関係に関しては、別図を用いて後述する。
図12(a)〜(c)に示すように、信号生成部107は、制御部113から送信される駆動信号φRAMP_STARTのパルスに応じて参照信号であるRamp1、Ramp2、Ramp3の電位の変化を開始させる。信号生成部107は、読出駆動において、1つ目のパルスでRamp1、N信号のAD変換が終わった後に入力される2つ目のパルスでRamp1、3つ目のパルスでRamp2、4つ目のパルスでRamp3の電位の変化を開始させる。制御部113は、駆動信号φRAMP_STARTの制御において、画像取得条件に応じて2つ目のパルスから遅延時間Δt_delayが経った後に3つ目のパルスを出力する。また、制御部113は、駆動信号φRAMP_STARTの制御において、画像取得条件に応じて3つ目のパルスから遅延時間Δt_delayが経った後に4つ目のパルスを出力する。制御部113は、画像取得条件に応じて遅延時間Δt_delayが変化するように、それぞれの駆動信号φRAMP_STARTのパルスを出力する。これに応じて、信号生成部107は、参照信号であるRamp1〜Ramp3において、Ramp1の変化の開始から、画像取得条件に応じて予め設定された時間の遅れをもって変化を開始するようにRamp2を生成する。また、信号生成部107は、Ramp2の変化の開始から、画像取得条件に応じて予め設定された時間の遅れをもって変化を開始するようにRamp3を生成する。このように、画像取得条件に応じて、遅延時間Δt_delayを変化させることで、S信号のAD変換において比較信号として用いる参照信号を切り替える際、先の参照信号の電位と後の参照信号の電位との間の電位差を異なる電位に制御することができる。これによって、比較信号として用いる参照信号を切り替えた場合、切り替わった参照信号が、S信号の電位よりも低い電位から変化する(電位の大小関係が反転しない)ことを抑制する。
次に、画像取得条件に対する制御部113の制御について説明する。図13は、画像取得条件と駆動信号φRAMP_STARTのタイミングの関係を表した図である。図13(a)は、比較信号として用いる参照信号の電位の変化率が大きい場合における、撮像装置1100の温度と、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率と、に応じた遅延時間Δt_delayの長さを表している。図13(b)は、比較信号として用いる参照信号の電位の変化率が小さい場合における、撮像装置1100の温度と、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率と、に応じた遅延時間Δt_delayの長さを表している。
図13(a)、(b)に示すように、温度センサ1001によって検出される撮像装置1100の温度が高くなるほど、遅延時間Δt_delayが長くなるように、制御部113は、信号生成部107の制御を行う。また、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が大きくなるほど、遅延時間Δt_delayが長くなるように、制御部113は、信号生成部107の制御を行う。また、参照信号の電位の変化率が小さい方が、より低い温度、より小さい増幅率にて遅延時間Δt_delayが長くなるように、制御部113は、信号生成部107の制御を行う。
本実施形態において、撮像装置1100では、AD変換にて比較信号として用いる参照信号を切り替える際、切り替えた後の比較信号が、AD変換を行う信号よりも高い電位である必要がある。そのため、切り替える先の参照信号は、上述のように、切り替わる前の参照信号に対し遅延をかけて変化させる。この際、必要な遅延時間は、AD変換を行うS信号の電位の変化と、参照信号の切り替えにかかかる時間に依存する。AD変換を行うS信号の電位の変化は、画素101の増幅トランジスタ(SF)305や、増幅部1102の列アンプ1101で発生する回路ノイズなどによって発生する。切り替えた後の比較信号は、このS信号の電位の変化の最大振幅以上に高い電位から変化を開始させる必要がある。さらに、参照信号の切り替えにかかかる時間は、変換部106内の比較部401、701の出力が反転する回路遅延に加え、判定回数カウンタ403、703および切替部402、702による回路遅延によって発生しうる。AD変換を行うS信号の電位と先の比較信号の大小関係が反転してから、後の比較信号が切り替わるまでの間にも、後の比較信号として用いる参照信号の電位は変化してしまうため、その変化量も考慮して前後の参照信号の遅延量を設定する必要がある。
ところで、上述の回路ノイズの振幅と比較信号として用いる参照信号の切り替えにかかる時間とは、画像取得条件によって大きく変化しうる。回路ノイズは、撮像装置1100の温度および増幅部1102の列アンプ1101のゲインに応じて大きく変わり、参照信号の切り替えにかかる時間は、撮像装置1100の温度および参照信号の電位の変化率に応じて変わる。そのため、上述の第1および第2の実施形態の撮像装置1100において、撮像装置の温度が高く、かつ、参照信号の電位の変化率が最小となる設定において、切り替える先の参照信号に最大量の遅延時間をかける必要がある。さらに、増幅部1102が配されることを考慮した場合、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が最大となる設定の状態において、切り替える先の参照信号に最大量の遅延時間をかける必要がある。もし、一律の遅延時間をかける場合、このような条件(ここではコーナー条件と呼ぶ。)における最大量の遅延時間を設定する必要があるが、コーナー条件以外の条件で撮像する場合においては、過剰な遅延をかけることになる。過剰な遅延時間を設定することは、最大回数のAD変換を行う信号レベルが小さくなることになり、S信号に対して複数回のAD変換を行うことによって回路ノイズの影響を抑制する効果が低減しうる。
そこで、本実施形態において、画像取得条件に応じて、参照信号が変化を開始するタイミングを異ならせることによって、多くのS信号の信号レベルの範囲において最大回数のAD変換を行うことができる。つまり、コーナー条件以外の画像取得条件下において、最大回数のAD変換を行うことが可能な信号レベルを大きくすることができる。
取得されたS信号値は、上述の第1の実施形態と同様に、出力部110によって補正、平均化の処理がなされる。出力部110は、平均化された信号値を画素の出力として撮像装置1100の外部に出力する。
第4の実施形態
図14〜17を参照して、本発明の実施形態による撮像装置の構成、および、その駆動方法について説明する。図14は、本発明の第4の実施形態における撮像装置1400の回路構成例である。以下、上述の第1〜3の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
本実施形態における撮像装置1400は、図11に示した撮像装置1100と比較して、信号生成部107が参照信号として、Ramp1〜Ramp7の7種類の参照信号を生成する。信号生成部107は、上述の各実施形態と同様に、Ramp1の変化の開始から予め設定された時間の遅れをもって変化をそれぞれ開始するようにRamp2〜Ramp7を生成する。
一方、上述の第1〜3の実施形態ででは、比較信号として、それぞれ順番に電位の変化を開始する参照信号を、変化を開始する順番で用いた。具体的には、比較信号として画素信号の変換の開始に応じて変化を開始するRamp1の次に、Ramp1の変化の開始から予め設定された時間の遅れをもって変化をそれぞれ開始する参照信号群のうち、Ramp1の次に電位の変化を開始するRamp2を用いる。また、比較信号としてRamp2の次に、参照信号群のうち、Ramp2の次に電位の変化を開始するRamp3を用いる。しかし、本実施形態において、制御部113は、画素信号と比較信号との大小関係が反転するごとに、参照信号群のうち画像取得条件に応じた所定の時間の間隔の遅れをもって変化をそれぞれ開始する参照信号を比較信号として変換部106に用いさせる。具体的には、比較信号として、順番に電位の変化を開始する参照信号を、上述の各実施形態と同様に、その順番で用いてもよいし、また、Ramp1、Ramp4、Ramp7のように、飛ばし飛ばしの順番で用いてもよい。そのため、制御部113は、変換部106に対して画像取得条件に応じたモード信号を出力する。
次に、図15を参照して、本実施形態における変換部106について説明する。図15(a)は、撮像装置1400の変換部106の回路の構成例を示す。また、図15(b)には、判定回数と比較信号として選択される参照信号との関係が、それぞれモードごとに示される。本実施形態における変換部106は、第1〜3の実施形態の変換部106と比較して、切替部1502に入力される参照信号が、Ramp1〜Ramp7と増加している。また、S信号用ラッチD1509、S信号用ラッチE1510、S信号用ラッチF1511、S信号用ラッチG1512が、追加されている。また、切替部1502に制御部113からモード信号が、入力される。切替部1502は、図15(b)に示すように、判定回数に応じて、比較信号として選択する参照信号を切り替える。N信号のAD変換に用いる参照信号とS信号の1回目のAD変換に用いられる参照信号はRamp1で変わらないが、2回目以降のAD変換に用いられる比較信号は、制御部113が画像取得条件に応じて出力するモード信号によって、異なる参照信号を選択する。また、モードに応じてAD変換を行う回数が異なり、モード1では、S信号に対し比較信号としてRamp1〜Ramp7を使用し、7回のAD変換が行なわれる。モード2では、S信号に対しRamp1、Ramp3、Ramp5、Ramp7を使用し、4回のAD変換が行われる。モード3では、S信号に対しRamp1、Ramp4、Ramp7を使用し、3回のAD変換が行われる。各々の参照信号を選択する具体的な制御部113による制御に関しては次図を用いて説明するが、画像取得条件に応じて、比較信号として用いる参照信号を異ならせることによって、それぞれの画像取得条件に適した遅延時間を設定することができる。
次いで、図16を参照して、本実施形態における撮像装置1400の駆動方法について説明する。図16は、撮像装置1400の駆動を示すタイミングチャートである。図16(a)は、モード1での動作を示しており、図16(b)はモード2での動作を示しており、図16(c)はモード3での動作を示している。画像取得条件とモードとの関係は、後述する。
図16(a)〜(c)に示すように信号生成部107は、S信号のAD変換を行う時刻t1606〜1614、t1620〜1625、t1631〜1635において、Ramp1からRamp7の順に、電位の変化が開始するように、各参照信号を生成する。制御部113は、図16(a)に示すように、モード1では、S信号のAD変換において比較信号として選択する参照信号を、Ramp1〜Ramp7の順に変換部106に用いさせる。また、制御部113は、図16(b)に示すように、モード2では、S信号のAD変換において比較信号として選択する参照信号を、Ramp1、Ramp3、Ramp5、Ramp7の順に変換部106に用いさせる。また、制御部113は、図16(c)に示すように、モード3では、S信号のAD変換において比較信号として選択する参照信号を、Ramp1、Ramp4、Ramp7の順に変換部106に用いさせる。これによって、制御部113は、画像取得条件に応じてモードを変更し、切り替える前の参照信号と切り替えた後の参照信号との変化開始の遅延時間Δt_delayを異ならせると共に、S信号に対しAD変換を行う回数を異ならせる。
図17は、画像取得条件と制御部113が出力するモード信号との関係を表した図である。図17に示すように、撮像装置1400の温度が高く、かつ、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が高い場合、遅延時間Δt_delayが最も長くなるモード3が選択される。また、撮像装置1400の温度が低く、かつ、増幅部1102の列アンプ1101の増幅率が低い場合、遅延時間Δt_delayが最も短くなるモード1が選択される。
本実施形態において、画像取得条件に応じて、比較信号として選択される参照信号を異ならせる。つまり、画像取得条件に応じて、遅延時間Δt_delayを変化させ、S信号のAD変換において比較信号として用いる参照信号を切り替える際の、先の参照信号の電位と後の参照信号の電位との間の電位差を異なる電位に制御することができる。結果として、画像取得条件に応じて、比較信号として用いる参照信号の遅延時間を適切に制御できる。これによって、上述の第3の実施形態と同様に必要以上に遅延時間を長く設定することを防ぎ、コーナー条件を除く画像取得条件において、より信号レベルの大きな信号に対しても複数回のAD変換を行うことが可能になる。また、参照信号の数を増加させ、S信号の信号レベルに応じて、AD変換の回数を増やすことによって、コーナー条件を除く画像取得条件において、回路ノイズを低減する効果を高めることが可能となる。
第5の実施形態
図18、図19を参照して、本発明の実施形態による撮像装置の構成、および、その駆動方法について説明する。図18は、本発明の第5の実施形態における撮像装置の変換部106の回路の構成例を示す図である。変換部106以外の撮像装置の構成は、上述の第4の実施形態の図14に示す撮像装置1400と同様であってもよい。以下、上述の第1〜4の実施形態と異なる点を中心に説明を行う。
図18(a)は、本実施形態の変換部106の構成例を示す。また、図18(b)には、それぞれS信号の信号レベルに応じた、判定回数と比較信号として選択される参照信号との関係が示される。
本実施形態における変換部106は、第4の実施形態の変換部106に対し、カウント部1804からS信号の1回目のAD変換結果であるS信号値Aが、切替部1802に入力される点が異なっている。切替部1802は、S信号値Aの信号レベルに応じて2回目以降のAD変換に比較信号として用いる参照信号を選択する。つまり、本実施形態において、画素信号と比較信号との大小関係が反転するごとに、参照信号群のうちS信号の信号レベルに応じた所定の時間の間隔の遅れをもって変化をそれぞれ開始する参照信号を比較信号として選択する。
図18(b)に示すように、切替部1802は、S信号値Aの信号レベルを第1の閾値、第2の閾値と比較し、その大小に応じて判定回数2以降に比較信号として選択する参照信号を切り替える。ここで、第1の閾値は、第2の閾値よりも信号レベルが小さい。また、S信号値Aの信号レベルに応じてAD変換を行う回数が異なる。まず、N信号をAD変換する判定回数0、および、最初にS信号をAD変換する判定回数1に対しては、S信号値Aがまだ確定していないため、S信号値Aに係らず、判定回数0、1ではRamp1を選択する。次いで、判定回数2以降は、S信号値Aの信号レベルに応じて、異なる参照信号を比較信号として選択する。判定回数2を切替部1802に出力する際、判定回数カウンタ1803は、切替部1802がS信号値Aの大小判定が終わった後に判定回数が切り替わるように遅延をかけてもよい。
次いで、図19を参照して、本実施形態における撮像装置の駆動方法について説明する。図19は、本実施形態の撮像装置の駆動を示すタイミングチャートである。図19(a)は、S信号値Aの信号レベルが第1の閾値未満となる場合の動作を示している。図19(b)は、S信号値Aの信号レベルが第1の閾値以上第2の閾値未満となる場合の動作を示してうる。図19(c)は、S信号値Aの信号レベルが第2の閾値以上となる場合の動作を示している。
図19(a)〜(c)に示すように、S信号値Aの信号レベルが大きいほど、切り替える前の参照信号と切り替える先の参照信号との変化開始の遅延時間Δt_delayが長くなるように制御される。つまり、電荷転送後の増幅部1102の列アンプ1101の出力する信号レベルが大きいほど遅延時間が長くなるように制御される。本実施形態において、上述の第1〜4の実施形態と異なり、それぞれの変換部106によってS信号の2回目以降のAD変換に用いられる参照信号が異なると共に、AD変換を行う回数が異なる場合がありうる。
信号レベルの大きい信号は、リセットトランジスタにかかる電位差が大きくなることからリーク電流が増加し、図19(c)に示すように、電位の経時的な変化が大きく、参照信号の遅延時間を長くする必要がありうる。このことから、第1の閾値および第2の閾値は、信号レベルに対するリーク電流の変化量から、参照信号の切り替え時に比較信号が確実にS信号よりも高い電位に切り替わるような遅延量を満たす必要がある。そこで信号レベルに応じて、比較信号として選択される参照信号の遅延時間Δt_delayを変化させ、S信号のAD変換において比較信号として用いる参照信号を切り替える際の先の参照信号の電位と後の参照信号の電位との間の電位差を異なる電位に制御する。これによって、参照信号を切り替える際、比較信号として選択された参照信号が、S信号よりも高い電位に切り替わるようにする。
本実施形態では、S信号の信号レベルに応じて、比較信号として先に選択されていた参照信号と、後に選択される参照信号との電位が変化を開始する遅延時間Δt_delayを異ならせるように制御を行う。これによって、信号レベルの小さいS信号に対し、より早く複数回のAD変換を終わらせることが可能なため、AD変換を行う信号の経時的な変化の影響を低減することができる。信号レベルの小さい信号は、わずかな信号レベルの変化が画像上で視認されやすいため、経時的な変化による画質の劣化を効果的に防ぐことが可能である。
以上、本発明に係る実施形態を示したが、本発明はこれらの実施形態に限定されないことはいうまでもなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で、上述した実施形態は適宜変更、組み合わせが可能である。