予想外なことに、前記抽出物は、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物等の所望の活性化合物を保持している。更に驚くべきことに、本発明の方法を適用することによって、好ましくは、環式、好ましくは単環式のジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、より好ましくはセンブラノイドを更に含む抽出物を得ることができることが見出された。
本発明は、本発明の抽出物が、植物の所望の植物二次代謝産物、好ましくは、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物の含量を保持しながら、揮発性のモノテルペノイド又はセスキテルペノイド、例えば、リモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴール、並びにポリフェノール化合物をボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物から排除するか又は低減することができるという予想外の知見に基づいている。トリテルペン酸及びその誘導体の群から選択される化合物に加えて、本発明に係る抽出物は、好ましくは、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは単環式ジテルペノイド、より好ましくは本明細書に定義するセンブラノイドを更に含有する。後者のクラスの化合物がボスウェリア属抽出物の有益な効果に寄与していることが知られている通り、本発明の抽出物中におけるこれら化合物の存在は、医薬又は化粧品の分野における前記抽出物の使用に関して、及び栄養補給剤における前記抽出物の使用に関して重要な利点を表す。本発明以前は、不所望の(揮発性の)化合物は含まないが、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される所望の化合物(典型的には揮発性であるので、蒸発及び/又は蒸留等の精製プロセスにおいて通常失われる)は保持しているボスウェリア属樹脂抽出物を提供できるとは考えられていなかった。まして、更にタンパク質と相互作用するポリフェノールの含量が低減されたかかる抽出物を得ることができるとは考えにくかった。
驚くべきことに、本発明に係る抽出物は、好ましくは、前記抽出物が由来する樹脂中の相対量、即ち、それぞれの含量を反映した相対量で、一方ではトリテルペン酸又はその誘導体、他方では、環式、好ましくは単環式のジテルペノイド、好ましくはセンブラノイド、又はこれらの誘導体を含み得ることが見出された。特に、本発明に係る抽出物は、原材料、即ち、前記抽出物が由来する樹脂中にみられる比を反映した重量比で、トリテルペン酸又はその誘導体と環式ジテルペノイド又はその誘導体とを含み得る。理論に縛られるものではないが、ボスウェリア属の有益な効果は、特にトリテルペン酸又はその誘導体と本明細書に定義する環式ジテルペノイド又はその誘導体とを含む特定の化合物の混合物に少なくとも部分的によるものであると仮定される。本発明に係る抽出物中のトリテルペン酸(及びその誘導体)及び環式ジテルペノイド(及びその誘導体)の相対含量によって、前記抽出物は、本明細書に記載する用途に特に適したものになる。
本発明の抽出物は、医薬及び/又は化粧品用途に特に好適である。これに関連して、特に神経変性疾患における本発明の抽出物の有益な効果は、少なくとも部分的に、前記抽出物の特性の有益な組合せ、特に、抗炎症特性(例えば、炎症性サイトカインのダウンレギュレーションによって示される)、潜在的血管拡張及び神経保護効果(例えば、過酸化水素(H2O2)等の反応性酸素種(ROS)の誘導によって評価される)に起因すると考えられる。H2O2等の反応性酸素種は、脳組織において強力な血管拡張剤として作用することが知られている(例えば、Paravicini T.M.et al.(2004):Increased NADPH−oxidase activity and Nox4 expression during chronic hypertension is associated with enhanced cerebral vasodilation to NADPH in vivo(Stroke 35:584−9)を参照)。更に、反応性酸素種は、神経保護効果を媒介し、多様な急性及び慢性の神経障害において役割を果たすことが示唆されている(例えば、Huang Y.Z. and McNamara J.O.(2012):Neuroprotective effects of reactive oxygen species mediated by BDNF−independent activation of TrkB.J.Neurosci.32(44):15521−15532を参照)。
好ましくは、前記抽出物中のトリテルペン酸及びその誘導体の群から選択される化合物と環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物との重量比は、前記樹脂中のそれぞれの化合物の重量比と50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満異なる。言い換えれば、前記抽出物は、好ましくは、前記樹脂中に存在するのと略同一の又は類似する(相対)含量のそれぞれの化合物を含む。好ましくは、これは、樹脂から抽出されるそれぞれの化合物の総量にも当てはまる。即ち、前記抽出物中のトリテルペン酸及びその誘導体の群の化合物の総量と環式ジテルペノイド又はその誘導体の群の化合物の総量との重量比は、前記樹脂中のそれぞれの化合物クラスのそれぞれの総量の重量比とは50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満異なる。
好ましくは、本発明の抽出物は、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物と、本明細書に定義する環式、好ましくは単環式のジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物とを含む。より好ましくは、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物の含量は、少なくとも4%(w/w)、好ましくは10%(w/w)〜25%(w/w)であり、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物の含量は、少なくとも15%(w/w)、好ましくは20%(w/w)〜40%(w/w)であり、前記含量は、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算される。
本発明の抽出物の好ましい実施形態によれば、前記抽出物中のトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物とジテルペンアルコール又はその誘導体の群から選択される化合物との重量比は、前記樹脂中のそれぞれの化合物の重量比とは50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満異なる。
より好ましくは、本発明の抽出物は、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物であって、センブラノイドの群、好ましくは、セラトール、インセンソール、イソインセンソール、インセンソールオキシド、イソインセンソールオキシド、センブレンA、センブレンC、セラトールアセテート、インセンソールアセテート、イソインセンソールアセテート、インセンソールオキシドアセテート、及びイソインセンソールオキシドアセテートからなる群から選択される化合物と、トリテルペン酸又は誘導体の群から選択される化合物であって、四環式トリテルペン酸若しくはその誘導体又は五環式トリテルペン酸若しくはその誘導体であり、より好ましくは、ボスウェリン酸、ルペオール酸、チルカル酸、又はロブル酸である化合物とを含む。
1つの実施形態によれば、本発明の抽出物は、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物であって、センブラノイドの群、好ましくは、セラトール、インセンソール、イソインセンソール、インセンソールオキシド、イソインセンソールオキシド、センブレンA、センブレンC、セラトールアセテート、インセンソールアセテート、イソインセンソールアセテート、インセンソールオキシドアセテート、及びイソインセンソールオキシドアセテートからなる群から選択される化合物と、トリテルペン酸又は誘導体の群から選択される化合物であって、ボスウェリン酸、ルペオール酸、チルカル酸、又はロブル酸である化合物とを含む。
更に好ましくは、本発明の抽出物は、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物であって、センブラノイドの群、好ましくは、セラトール、インセンソール、イソインセンソール、インセンソールオキシド、イソインセンソールオキシド、センブレンA、センブレンC、セラトールアセテート、インセンソールアセテート、イソインセンソールアセテート、インセンソールオキシドアセテート、及びイソインセンソールオキシドアセテートからなる群から選択される化合物と、トリテルペン酸又は誘導体の群から選択される化合物であって、好ましくはボスウェリン酸である化合物とを含む。
本明細書で使用するとき、用語「抽出物」とは、好適な抽出手順を用いることによってボスウェリア属の植物の樹脂から得られる化合物の混合物を指す。この状況では、前記抽出物は、液体抽出物(例えば、油状抽出物)、半固体抽出物(例えば、ワックス状抽出物)、又は例えば、全ての溶媒及び液体成分が蒸発した場合、乾燥抽出物(例えば、粉末)であってよい。本発明の意味における抽出手順は、特定の化合物、又はより典型的には、植物原材料、より具体的には、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する化合物の混合物を抽出するための、溶媒を使用する任意の手順であってよい。典型的には、機械的手段(例えば、粉砕、撹拌等)及び/又は温度変化(例えば、加熱、凍結融解サイクル)が、抽出中に更に用いられる。本発明の状況では、用語「抽出物」は、典型的には、それぞれ、本発明に係る抽出物又は本発明に係る方法の最終生成物を指す。したがって、用語「抽出物」は、本明細書で使用するとき、特に指定しない限り、典型的には精製抽出物を指す。例えば、用語「抽出物」は、本発明に係る最終行程で得られる生成物に関して本明細書で使用される。中間生成物は、本明細書では、例えば、「未精製抽出物」、「生抽出物」、「ネイティブ抽出物」、「従来の抽出物」、「標準的な抽出物」、又は「標準的なエタノール性液体抽出物」と称する。後者の用語は、本発明の状況において、第1の抽出工程後に得られる抽出溶液に関して使用してよく、前記第1の抽出工程は、典型的には、特定の精製工程を含まない。したがって、用語「未精製抽出物」、「生抽出物」、「ネイティブ抽出物」、「従来の抽出物」、「標準的な抽出物」、又は「標準的なエタノール性液体抽出物」は、本明細書で使用するとき、単一の抽出工程によって得られる液体に関し、前記単一の抽出工程は、樹脂を溶媒、好ましくは有機溶媒と接触させ、(例えば、混合物を撹拌及び加熱することによって)前記樹脂を前記溶媒と共にインキュベートし、好ましくは遠心分離及び濾過からなる群から選択される1以上の分離工程によって抽出溶液から不溶性成分を分離することを含む。したがって、本明細書で使用するとき、「未精製抽出物」は、好ましくは、ボスウェリア属の植物の樹脂の従来の抽出物、例えば、標準的なエタノール性液体抽出物であってよく、これは、好ましくは、例えば、本明細書に記載する実施例1、3、又は6において得られる本発明に係る方法の中間体であり得る。
本発明に係る抽出物は、多くの基準の中でも、リモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールの含量を特徴とする。更に、本発明に係る抽出物は、好ましくは、タンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される化合物の含量を特徴とする。更に、前記抽出物は、好ましくは、本明細書に定義するトリテルペン酸及びその誘導体の群から選択される化合物の含量、及び/又は環式、好ましくは単環式のジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物の含量を特徴とする。
本発明は、好ましくは、典型的には従来の抽出物と比べて少なくとも1つの精油の相対量が少ない抽出物を提供する。好ましくは、本発明の抽出物に含まれる精油の相対量の合計は、従来の抽出物に含まれる精油の相対量の合計に比べて少ない。
好ましい実施形態によれば、精油の相対量は、本発明の抽出物が由来する樹脂に比べて前記抽出物中において低減されている。より好ましくは、本発明の抽出物中の1以上の精油の相対量は、前記抽出物が由来する樹脂に比べて低減されている。好ましくは、本発明の抽出物中に含まれる精油の相対量の合計は、前記抽出物が調製される樹脂に含まれる精油の相対量の合計に比べて低減されている。
好ましい実施形態によれば、本発明は、好ましくは蒸発又は蒸留によって不所望の精油成分から精製された抽出物を提供する。本発明の状況では、用語「精油」とは、典型的には植物の芳香に寄与する揮発性化合物又は揮発性化合物の混合物を指す。また、本明細書で使用するとき、用語「精油」は、植物、好ましくは本明細書に定義するボスウェリア属の植物に由来する揮発性芳香化合物を含有する濃縮疎水性液体の一部である揮発性化合物又は揮発性化合物の混合物を指す。本明細書で使用するとき、「精油」は、植物の芳香のエキスを含有し、その結果、前記精油が由来する植物の特徴的な芳香が前記精油によって決定されるか又は影響を受けるという意味で非常に重要である。精油は、一般的に、蒸発又は蒸留によって、好ましくは蒸気を用いて抽出される。植物原材料、例えば、樹脂から精油を単離するのに好適な他の方法は、圧搾又は溶媒抽出を含む。本発明は、有利なことに、好ましくは抽出物が由来する樹脂中のそれぞれの相対量と比べて少ない相対量の、好ましくは本明細書に定義する1以上の精油を含むことを特徴とする抽出物(及びこの抽出物を調製する方法)を提供する。
特に、本発明の抽出物のリモネン、リナロール、及びツジョンの各含量は、20ppm未満であり、エストラゴールの含量は、100ppm未満であり、前記含量は、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算される。特に好ましい実施形態によれば、本発明は、本明細書に定義する抽出物であって、本発明の抽出物中のリモネン、リナロール、及びツジョンの各含量が20ppm未満であり、エストラゴールの含量が100ppm未満であり、前記含量が、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算され、更に、好ましくは本明細書に定義する1以上の他の精油の相対量、より好ましくは精油の相対量の合計が、従来の抽出物と比べて更に少ない抽出物に関する。好ましくは、少なくとも1つの精油(リモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴール以外)の相対量は、前記抽出物が由来する樹脂中のそれぞれの相対量と比べて低減されている。より好ましくは、前記抽出物中の精油の相対量の合計は、前記抽出物が由来する樹脂中の精油の相対量の合計に比べて低減されている。
本発明の状況では、用語「精油」は、好ましくは、例えば蒸留又は蒸気蒸留によって植物原材料から単離されたモノテルペン化合物、セスキテルペン化合物、若しくはフェニルプロパノイド化合物等の揮発性化合物又は揮発性芳香化合物の混合物を含有する、疎水性液体、より好ましくは濃縮疎水性液体を含む。
好ましい実施形態では、用語「精油」は、本明細書で使用するとき、好ましくは本明細書に定義するモノテルペン化合物、セスキテルペン化合物、又はフェニルプロパノイド化合物に関する。モノテルペン化合物は、本明細書で使用するとき、好ましくは、非環式、単環式、又は二環式のモノテルペン化合物である。この状況では、非環式モノテルペン化合物は、好ましくは、オシメン、ミルセン、ゲラニオール、シトラール、シトロネラール、シトロネロール、リナロール、又はその他から選択される。単環式モノテルペン化合物は、好ましくは、リモネン、フェランドレン、p−シメン、メントール、チモール、カルバクロール、又はその他から選択される。二環式モノテルペン化合物は、好ましくは、カレン、サビネン、カンフェン、ツジェン、ツジョン、カンファー、ボルネロール、又はその他から選択される。セスキテルペン化合物は、本明細書で使用するとき、好ましくは、非環式、単環式、又は多環式の化合物である。好ましい実施形態では、セスキテルペン化合物は、ファルネセン、ファルネソール、フムレン、カリオフィレン、グアイアズレン、ロンギホレン、コパエン、パチョロール、又はその他から選択される。フェニルプロパノイドは、アミノ酸フェニルアラニンから植物によって合成される多様なファミリーの有機化合物である。本発明の状況では、フェニルプロパノイド化合物は、好ましくはコニフェリルアルコール、より好ましくは中間コニフェリルアルコールに由来する。より好ましくは、フェニルプロパノイド化合物は、本明細書で使用するとき、好ましくは、オイゲノール、カビコール、サフロール、エストラゴール、アネトール、アピオール、又はその他から選択される。
本発明に係る抽出物中の前記化合物の含量は、本明細書では、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算されると定義される。言い換えれば、本発明の抽出物中の前記化合物のうちの1以上の含量は、例えば、「ppm」又は「パーセント(w/w)」で求めてよい。この目的のために、当技術分野において公知の1つ又は幾つかの技術を用いることによって(例えば、クロマトグラフィー、MSによって)所与の体積の前記抽出物を分析してよい。次いで、このようにして求められた対象化合物の量を、対応する体積の前記抽出物の乾燥残渣の重量(例えば、蒸発後の固形分含量)に基づいて計算する。したがって、本明細書で使用するとき、「抽出物の乾燥重量」は、本発明に係る抽出物の場合、所望の成分、好ましくは本明細書に定義する所望の化合物をそのまま残しながら、任意の揮発性化合物(特に、有機溶媒又は水等の溶媒)を除去する手順(例えば、蒸発)を用いることによって完全に乾燥した形態を得ることができる形態で前記抽出物が提供される場合に最も容易に得られる。典型的には、抽出物の乾燥重量は、(例えば、蒸発後の)水及び溶媒を完全に含まない前記抽出物の重量である。好ましくは、抽出物の乾燥重量は、抽出物の乾燥残渣であって、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する成分しか本質的に含まない残渣の重量である。
一部の場合(例えば、疎水性の高い相を含む抽出物又は油相を含む抽出物では)、抽出物の乾燥残渣を得ることは実現不可能な場合があり、少なくとも成分をそのまま残しながらというのは不可能である。それにもかからわず、本発明の状況では、かかる抽出物中の対象化合物(リモネン、リナロール、ツジョン、エストラゴール、ポリフェノール、トリテルペン酸、又はジテルペノイド等)の含量を「抽出物の乾燥重量に基づいて計算される」と指定する場合がある。したがって、公知の分析方法によって前記対象化合物の量(好ましくは、「ppm」又は「%w/w」)を求める。次いで、(例えば、蒸発によって)乾燥重量を得ることができる方法における最後の中間体の乾燥残渣の重量に基づいて、前記対象化合物の含量を計算する。例えば、前記最後の中間体は、精製されたエタノール性液体抽出物であり得る(実施例4、7、又は11を参照)。例えば、本発明の(液体、半固体、又は乾燥)抽出物が、精製されたエタノール性液体抽出物100mLから得られる場合、当業者に公知の方法によって、本発明の抽出物中の前記化合物のうちの1以上の量(即ち、重量)を求める。次いで、本発明に係る抽出物が由来するそれぞれの精製されたエタノール性液体抽出物100mLの乾燥重量に基づいて、本発明の抽出物の含量を計算する。
本発明によれば、前記抽出物は、ボスウェリア属(カンラン科)の植物の樹脂に由来する。典型的には、前記抽出物は、ボスウェリア属の種の樹脂であって、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくはボスウェリン酸又はその誘導体の含量によって特徴付けられる樹脂に由来する。好ましくは、前記植物は、更に、本明細書に記載する環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは単環式ジテルペノイド又はその誘導体も含む。本発明の意味におけるボスウェリア属の植物の例は、ボスウェリア・パピリフェラ(Boswellia papyrifera)、ボスウェリア・セラータ、ボスウェリア・サクラ(Boswellia sacra)、及びボスウェリア・カルテリイを含むが、これらに限定されない。ボスウェリア・サクラという用語は、南アラビアの植物(オマーン、イエメン)を指し、ボスウェリア・カルテリイという用語は、ソマリアの植物を指し、これら2つの種は、時に、分類学的基準に基づいて同種であるとみなされることがある。
好ましくは、「ボスウェリア属の植物」という表現は、本明細書で使用するとき、ボスウェリア・パピリフェラ、ボスウェリア・セラータ、ボスウェリア・サクラ、及びボスウェリア・カルテリイからなる群から選択される植物に関する。より好ましくは、前記表現は、好ましくはボスウェリア・パピリフェラではないボスウェリア属の植物に関する。更に、「ボスウェリア属の植物」という表現は、本発明の状況では、好ましくは、ボスウェリア・セラータに関する。
本発明の状況では、用語「樹脂」とは、ボスウェリア属の植物から滲出物として得られる幾つかの有機化合物の混合物を指す。樹脂は、典型的には、ボスウェリア属の植物の幹又は枝に切り込みを入れることによって得られ、その際傷口から樹脂が漏れ出る。ボスウェリア属の植物の樹脂は、通常、空気に曝露されたときに(多くの要因の中でも特に周囲温度に依存して)固化する、粘性の液体又は半固体である。したがって、前記樹脂は、典型的には、前もって切り込みを入れておいたボスウェリア属の植物の部位から固化した物質を回収することによって収集される。例えば、ボスウェリア属の植物に切り込みを入れた2週間後、例えば、傷口から前記物質を掻きとることによって、固化した樹脂を収集してよい。本発明に係る抽出物を得るために、ボスウェリア属の植物の樹脂を原材料として直接用いてもよい。或いは、前記樹脂は、抽出前に、(例えば、粉砕、凍結乾燥等によって)例えば、機械的、熱的、又は化学的に加工してもよい。したがって、本発明の抽出物が由来する樹脂は、ボスウェリア属の植物の加工樹脂であってもよい。好ましくは、平均粒度が5mm未満、より好ましくは4mm未満、3mm未満、2mm未満、又は1mm未満の樹脂を出発材料として使用する。最も好ましくは、前記樹脂の平均粒度は、2mm未満である。
好ましい実施形態では、本発明に係る抽出物は、好ましくは本発明に定義するボスウェリア属の植物の樹脂に由来する。より好ましくは、前記抽出物は、ボスウェリア・パピリフェラではないボスウェリア属の植物の樹脂に由来する。最も好ましくは、前記抽出物は、ボスウェリア・セラータの樹脂に由来する。
本発明に係るボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物は、同じ樹脂に由来する従来の抽出物と比べて、不所望のテルペン化合物又はその誘導体の量が少ないことを特徴とする。具体的には、リモネン(式Ia、Ibを参照)、リナロール(式IIa、IIbを参照)、ツジョン(式IIIa、IIIbを参照)、及びエストラゴール(式IVを参照)からなる群から選択される少なくとも1つの化合物の量が低減される。本発明の状況では、用語「リモネン」は、本明細書における式Ia又はIbによって表される化合物(1−メチル−4−(1−メチルエテニル)−シクロヘキセン;(R)−(+)−リモネン(式Ia);(S)−(−)−リモネン(式Ib))を指す。用語「リナロール」は、本明細書における式IIa又はIIbによって表される化合物(3,7−ジメチルオクタ−1,6−ジエン−3−オール;(S)−(+)−リナロール(式IIa)及び(R)−(−)−リナロール(式IIb))を指す。用語「ツジョン」は、本明細書における式IIIa又はIIIbによって表される化合物(α:(1S,4R,5R)−4−メチル−1−(プロパン−2−イル)ビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−オン(式IIIa);β:(1S,4S,5R)−4−メチル−1−プロパン−2−イルビシクロ[3.1.0]ヘキサン−3−オン(式IIIb))を指す。用語「エストラゴール」は、本明細書における式IVによって表される化合物(1−アリル−4−メトキシベンゼン;式IV)を指す。更に、用語「リモネン」、「リナロール」、「ツジョン」、及び「エストラゴール」は、それぞれの化合物のエナンチオマーを含むだけでなく、前記化合物の任意の誘導体も更に含む。前記抽出物中のテルペン化合物の存在及びそのそれぞれの量は、当技術分野において公知の方法によって、例えば、質量分析(MS)の読み出し情報と合わせてクロマトグラフィー(例えば、ガスクロマトグラフィー又はHPLC)を用いることによって容易に求められる。
好ましくは、前記抽出物中のこれら化合物の少なくとも1つの含量は、本明細書に定義するのと同じ樹脂に由来する従来の抽出物中の同じ化合物の含量の50%(w/w)未満、より好ましくは40%(w/w)未満、更により好ましくは30%(w/w)未満、最も好ましくは25%(w/w)未満であり、前記含量は、本明細書に記載する前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算される。
特定の実施形態では、前記化合物リモネン(式Ia、Ibを参照)、リナロール(式IIa、IIbを参照)、ツジョン(式IIIa、IIIbを参照)、及びエストラゴール(式IVを参照)の合計含量は、同じ樹脂に由来する従来の抽出物と比べて定義されている。好ましくは、本発明に係る抽出物中のこれら化合物の合計含量は、同じ樹脂に由来する従来の抽出物中の前記化合物の合計含量の50%(w/w)未満、より好ましくは40%(w/w)未満、更により好ましくは30%(w/w)未満、最も好ましくは25%(w/w)未満である。
好ましい実施形態では、リモネン(式Ia、Ibを参照)、リナロール(式IIa、IIbを参照)、ツジョン(式IIIa、IIIbを参照)、及びエストラゴール(式IVを参照)の各含量は、本発明に係る抽出物中で低減されている。好ましくは、前記抽出物中のこれら化合物の各含量は、同じ樹脂に由来する従来の抽出物中のそれぞれの化合物の含量の50%(w/w)未満、より好ましくは40%(w/w)未満、更により好ましくは30%(w/w)未満、最も好ましくは25%(w/w)未満である。
好ましくは、本発明に係る抽出物中のリモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の含量は、100ppm未満、好ましくは90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、又は50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である。より好ましくは、本発明に係る抽出物中のリモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールの各含量は、200ppm未満、好ましくは150ppm未満、100ppm未満、90ppm未満、80ppm未満、70ppm未満、60ppm未満、又は50ppm未満、より好ましくは20ppm未満、最も好ましくは10ppm未満である。更により好ましくは、リモネン、リナロール、ツジョンの各含量は、20ppm未満であり、エストラゴールの量は、100ppm未満であり、前記含量は、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算される。最も好ましくは、リナロールの含量は、20ppm未満であり、リモネン及びツジョンの各含量は、10ppm未満であり、エストラゴールの量は、100ppm未満である。
本発明に係る抽出物は、更に、同じ樹脂に由来する従来の抽出物と比べて少ない量のポリフェノールの群、好ましくは、タンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物を含有することを特徴とする。
用語「ポリフェノール」(又は「ポリフェノール化合物」)は、本明細書で使用するとき、一般的に、複数のフェノール構造単位の存在を特徴とする有機化合物又はかかる化合物の誘導体を指す。本発明の状況では、用語「ポリフェノール」は、更に、Stephane Quideauによって提唱された定義に従って定義される化合物、即ち、シキミ酸/フェニルプロパノイド及び/又はポリケチド経路からのみ誘導され、1超のフェノール単位を特徴とし、窒素に基づく機能を有しない任意の化合物も含む。具体的には、前記用語は、典型的には植物起源の二次代謝産物であり且つボスウェリア属の植物の樹脂中に含有されている、上に定義した化合物を指す。ポリフェノール化合物は、様々な生合成経路から生じ得るより低分子の反復フェノール部分(例えば、ピロカテコール、レゾルシノール、ピロガロール、又はフロログルシノール)を多数含有していることが多い。植物ポリフェノールは、時に、2つの大きな群に分類される。一方はプロアントシアニジン(又は縮合非加水分解性タンニン)及び他方はポリエステル(又は加水分解性タンニン)であり、これらはいずれも本明細書で使用する「ポリフェノール」という用語に包含される。プロアントシアニジンは、典型的には、カテキン単位で構成され、オリゴマー及びポリマーとして存在する20.000Da以下の大きな分子であり、ポリマー長が増大するにつれて可溶性は通常低下する。ポリエステル又は加水分解性タンニンは、通常、没食子酸及び/又はヘキサヒドロキシジフェン酸、並びにこれらの誘導体に基づく3.000Da以下の分子である。ボスウェリア属の植物に由来する樹脂は、通常、本明細書に定義するポリフェノール化合物、例えば、(例えば、カテキン型の)タンニン及び/又はその誘導体(例えば、フロバフェン)の混合物を含有する。ボスウェリア属の植物の樹脂において同定されているポリフェノールの中でも、少なくとも一部は、タンパク質又はペプチドと相互作用することが知られているので、本明細書で使用する句「タンパク質と相互作用するポリフェノール」に含まれる。
本発明の状況では、句「タンパク質と相互作用するポリフェノール」とは、タンパク質、ペプチド、又はタンパク質若しくはペプチド部分と非タンパク質/非ペプチド部分とを含む化合物のタンパク質部分(又はそれぞれ、ペプチド部分)と相互作用する、本明細書に定義するポリフェノールを指す。タンパク質と相互作用するポリフェノールは、典型的には、タンパク質又はペプチド(又はタンパク質若しくはペプチド部分)と複合体を形成する能力を有する。かかるタンパク質−ポリフェノール複合体の形成によって、典型的には、(溶媒に依存して)溶液から前記複合体が沈殿する。1つの仮説によれば、タンパク質と相互作用するポリフェノールは、様々なフェノール基を通してタンパク質上の様々な部位に同時に結合する多座配位性リガンドとして作用する。タンパク質と相互作用するポリフェノールとタンパク質又はペプチドとの間の相互作用は、典型的には、非共有結合性相互作用、例えば、水素結合又は疎水性相互作用に基づく。特定の条件下では、タンパク質と相互作用するポリフェノールとタンパク質又はペプチドとの間に共有結合が確立されることもある。したがって、用語「タンパク質−ポリフェノール複合体」は、本明細書で使用するとき、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される化合物であって、本明細書に定義するタンパク質又はペプチドと相互作用する化合物を指す。
本発明の意味におけるタンパク質と相互作用するポリフェノールは、合成ポリマー、好ましくは、本明細書に定義する不溶性合成ポリマーとも相互作用し得る。したがって、ポリフェノールとタンパク質との間の相互作用に関する上記プロセスと同様に、タンパク質と相互作用するポリフェノールと合成化合物との間の相互作用は、不溶性複合体の形成につながり得る。
タンパク質と相互作用するポリフェノールは、ボスウェリア属の樹脂の夾雑物として重要な役割を果たす。ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する従来の抽出物は、通常、タンパク質と相互作用するポリフェノールをかなりの量含有するが、前記タンパク質と相互作用するポリフェノールは、前記抽出物が被験体によって使用されたとき、前記抽出物の他の成分に干渉し得る(例えば、前記成分を無効化する及び/又は腸管における再吸収を阻害する)か、又は更には不所望の副作用(例えば、胃痛)を引き起こし得るので、不所望の化合物であるとみなされている。特に、タンニン及びその誘導体(例えば、フロバフェン)は、ボスウェリア属の植物の従来の抽出物中で同定されている。
本明細書で使用するとき、用語「タンニン」とは、タンパク質又はペプチドと容易に相互作用するボスウェリア属の植物の樹脂中に含まれる特定の分類のポリフェノール化合物を指す。より具体的には、前記用語は、加水分解性(モノマー:没食子酸又はその誘導体)及び非加水分解性のタンニン(プロアントシアニジン;モノマー:フラボン又はその誘導体、例えば、カテキン)に関する。好ましくは、本発明の意味におけるタンニンは、少なくとも12個のヒドロキシル基及び少なくとも5個のフェニル基を含む。
タンパク質と相互作用するポリフェノールと、タンパク質、ペプチド、又はタンパク質又はペプチド部分と非タンパク質/非ペプチド部分とを含む化合物のタンパク質部分(又は、それぞれ、ペプチド部分)との相互作用によって形成されるタンパク質−ポリフェノール複合体の沈殿に関して、理論的に2つのシナリオを考えることができる。
低(相対)タンパク質又はペプチド濃度では、タンパク質と相互作用するポリフェノールは、タンパク質又はペプチドの表面上の1以上の部位と相互作用して前記タンパク質又はペプチドを取り囲む層を形成し、前記層は、前記タンパク質又はペプチドよりも親水性が低い。条件(特に、溶媒)に応じて、これは、タンパク質−ポリフェノール複合体の沈殿につながる。
高(相対)タンパク質又はペプチド濃度では、1つのタンパク質と相互作用すするポリフェノールが、(タンパク質と相互作用するポリフェノールの様々なフェノール部分と様々なタンパク質又はペプチド分子との相互作用を介して)1超のタンパク質又はペプチド分子と相互作用し得る。これら条件下では、タンパク質と相互作用するポリフェノールは、タンパク質又はペプチド分子との間で「架橋剤」として作用する。タンパク質又はペプチド自体よりも親水性の低い凝集体が形成され、沈殿する。
本発明によれば、ボスウェリア属の樹脂に由来する抽出物であって、前記抽出物中のポリフェノール、好ましくはタンパク質と相互作用するポリフェノールの合計含量が、同じ樹脂に由来する従来の抽出物と比べて少ない抽出物が提供される。好ましくは、前記抽出物中のポリフェノール、好ましくはタンパク質と相互作用するポリフェノールの合計含量は、0.10%(w/w)未満、より好ましくは0.09%(w/w)未満、0.08%(w/w)未満、0.07%(w/w)未満、0.06%(w/w)未満、又は0.05%(w/w)未満である。最も好ましくは、本発明に係る抽出物は、検出可能な量のポリフェノール化合物を含まない。
好ましくは、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物の量は、同じ樹脂に由来する従来の抽出物中の量と比べて少ない。好ましい実施形態では、タンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物は、タンニンであり、これは、好ましくは、加水分解性タンニン及び非加水分解性タンニンから選択される。より好ましくは、本発明に係る抽出物は、従来の抽出物と比べて少ない量のカテキン型のタンニンを含む。
本発明に係る抽出物は、好ましくは、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物を更に含む。
句「トリテルペン酸又はその誘導体」は、本明細書で使用するとき、一般的に、6個のイソプレン単位で構成される、30個のC原子を含む分子骨格を有する化合物を指す。本発明の状況では、前記句は、典型的には1以上のカルボキシル基を有する上に定義したかかる化合物に加えて、その構造誘導体、例えば、トリテルペン酸と別の化合物とのエステルに関する。例えば、トリテルペン酸のカルボキシル基は、エステルを形成するために、アルコールのヒドロキシル基と反応し得る。好ましくは、トリテルペン酸の誘導体は、トリテルペン酸とC1〜C6アルコール、好ましくは、メタノール、エタノール、又はプロパノールとの反応によって形成され得る。より好ましくは、トリテルペン酸のヒドロキシル基は、エステルを形成するために、有機酸のカルボキシル基と反応し得る。好ましくは、トリテルペン酸の誘導体は、トリテルペン酸とギ酸又は酢酸との反応によって形成され得る。
好ましくは、本発明に係る抽出物は、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物であって、五環式トリテルペン酸又はその誘導体、より好ましくは、ボスウェリン酸若しくはその誘導体又はルペオール酸若しくはその誘導体である化合物を含む。特に好ましい実施形態では、本発明に係る抽出物は、ボスウェリン酸、好ましくは、α−ボスウェリン酸、β−ボスウェリン酸、アセチル−ボスウェリン酸、又はケト−ボスウェリン酸を含む。より好ましくは、前記抽出物は、α−ボスウェリン酸、β−ボスウェリン酸、アセチル−α−ボスウェリン酸、アセチル−β−ボスウェリン酸、11−ケト−β−ボスウェリン酸(KBA)、及びアセチル−11−ケト−β−ボスウェリン酸(AKBA)からなる群から選択されるボスウェリン酸を含む。
それに加えて又はそれに代えて、本発明に係る抽出物は、好ましくは、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物であって、四環式トリテルペン酸又はその誘導体、より好ましくは、チルカル酸若しくはその誘導体又はロブル酸若しくはその誘導体である化合物も含む。ここで、チルカル酸は、好ましくは、3−α−アセトキシチルカル−8,24−ジエン−21−酸、3−α−ヒドロキシチルカル−8,24−ジエン−21−酸、3−β−ヒドロキシチルカル−8,24−ジエン−21−酸、3−ケトチルカル−8,24−ジエン−21−酸、及び3−オキソ−チルカル酸からなる群から選択される。
本発明に係る抽出物は、好ましくは、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは、五環式トリテルペン酸又はその誘導体、及び四環式トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物を含み、前記化合物の含量は、少なくとも10%(w/w)、好ましくは少なくとも15%(w/w)、より好ましくは少なくとも20%(w/w)である。或いは、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物の含量は、好ましくは10%(w/w)〜60%(w/w)、より好ましくは15%(w/w)〜50%(w/w)、更により好ましくは20%(w/w)〜40%(w/w)である。
好ましい実施形態では、本発明に係る抽出物は、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。
本発明の状況では、句「環式ジテルペノイド又はその誘導体」は、一般的に、4個のイソプレン単位で構成される、20個のC原子を含む分子骨格を有する環式化合物を指す。本発明の状況では、句「環式ジテルペノイド又はその誘導体」は、単環式ジテルペノイド、特に、単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体を含む。本発明の状況では、単環式ジテルペンアルコールは、少なくとも1つのヒドロキシル基又はその誘導体を含む単環式ジテルペノイドである。用語「環式ジテルペノイド又はその誘導体」は、単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体、例えば、単環式ジテルペンアルコールのアセテートも含む。句「環式ジテルペノイド又はその誘導体」は、本明細書で使用するとき、より具体的には、センブラノイド又はその誘導体を含む。
本発明の状況では、用語「センブラノイド」とは、14個のC原子の環を含む単環式ジテルペノイドを指す。用語「センブラノイド」とは、本明細書で使用するとき、不飽和シクロテトラデカン誘導体を含む。より具体的には、用語「センブラノイド」は、センブレン及びその誘導体、例えば、セラトール、インセンソール、イソインセンソール、インセンソールオキシド、イソインセンソールオキシド、センブレンA及びセンブレンC、セラトールアセテート、インセンソールアセテート、イソインセンソールアセテート、インセンソールオキシドアセテート、及びイソインセンソールオキシドアセテート等も含む。
典型的には、環式ジテルペノイドは、揮発性化合物であるので、蒸発によって抽出物の調製中に失われることが多い。しかし、環式ジテルペノイド及びその誘導体は、有益な効果を有する化合物を含むので、ボスウェリア属樹脂抽出物において所望の化合物であるとみなされる。
好ましくは、本発明に係る抽出物は、単環式ジテルペノイド、好ましくは単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。より好ましくは、前記抽出物は、単環式ジテルペンアルコールのアセテートを含む。
好ましくは、本発明に係る抽出物は、好ましくは本明細書に定義するセンブラノイド又はその誘導体を含む。より好ましくは、前記抽出物は、センブレン又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。より好ましくは、前記抽出物は、センブラノイド又はその誘導体の群から選択される化合物のアセテート、好ましくは、センブレンのアセテートを含む。
特に好ましい実施形態では、本発明に係る抽出物は、環式、好ましくは単環式のジテルペノイドの群から選択される化合物であって、好ましくは、セラトール、インセンソール、イソインセンソール、インセンソールオキシド、イソインセンソールオキシド、センブレンA及びセンブレンC、セラトールアセテート、インセンソールアセテート、イソインセンソールアセテート、インセンソールオキシドアセテート、及びイソインセンソールオキシドアセテートからなる群から選択される化合物を含む。
好ましくは、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは、本明細書に定義する単環式ジテルペノイド又はその誘導体、より好ましくは、本明細書に定義するセンブラノイド又はその誘導体の群の化合物は、少なくとも1%(w/w)、2%(w/w)、3%(w/w)、4%(w/w)、5%(w/w)、6%(w/w)、7%(w/w)、8%(w/w)、9%(w/w)、10%(w/w)、又は15%(w/w)の含量、好ましくは、5%(w/w)〜40%(w/w)、7%(w/w)〜30%(w/w)、又は10%(w/w)〜25%(w/w)の含量で本発明に係る抽出物中に存在する。好ましくは、環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは本明細書に定義する単環式ジテルペノイド又はその誘導体、より好ましくは本明細書に定義するセンブラノイド又はその誘導体の群から選択される化合物は、少なくとも4%(w/w)の含量、好ましくは10%(w/w)〜25%(w/w)の含量で存在する。
好ましい実施形態では、本発明に係る抽出物は、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物と、本明細書に定義する環式ジテルペノイド、好ましくは単環式ジテルペノイド、又はこれらの誘導体の群から選択される化合物とを両方含む。好ましくは、前記化合物は、本明細書に定義する含量で前記抽出物中に存在する。より好ましくは、本発明に係る抽出物は、一方では、トリテルペン酸又はその誘導体、他方では、単環式ジテルペノイド、好ましくは単環式ジテルペンアルコール若しくはセンブラノイド、又はこれらの誘導体を、前記抽出物が由来する樹脂中の相対量を反映した相対量で含む。特に、本発明に係る抽出物は、トリテルペン酸及びその誘導体と、環式、好ましくは単環式のジテルペノイド及びその誘導体とを、原材料、即ち、前記抽出物が由来する樹脂中にみられる重量比を反映した重量比で含んでいてよい。
好ましくは、前記抽出物中のトリテルペン酸及びその誘導体の群から選択される化合物と環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物との重量比は、前記樹脂中のそれぞれの化合物の重量比と50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満異なる。言い換えれば、前記抽出物は、前記樹脂中に存在するのと略同一の又は類似する(相対)量のそれぞれの化合物を含む。好ましくは、これは、それぞれの化合物の総量にも当てはまる。即ち、前記抽出物中のトリテルペン酸及びその誘導体の群の化合物の総量と環式ジテルペノイド又はその誘導体の群の化合物の総量との重量比は、前記樹脂中のそれぞれの化合物クラスの化合物のそれぞれの総量の重量比と50%未満、好ましくは35%未満、より好ましくは25%未満異なる。
好ましくは、本発明に係る抽出物は、少なくとも4%(w/w)、好ましくは10%(w/w)〜25%(w/w)の含量で存在する環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは単環式ジテルペノイド、より好ましくは単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体、更により好ましくは本明細書に定義するセンブラノイドの群の化合物を含み、更に、少なくとも15%(w/w)、好ましくは20%(w/w)〜40%(w/w)の含量で存在するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。
本発明に係る抽出物は、好ましくは、液体又は半固体である。この状況では、用語「液体」とは、容易に、好ましくは、水又はより粘性の高い液体(例えば、油)等の溶媒と同等に流動する抽出物を指す。用語「半固体」とは、固体ではなく非晶質である抽出物を指す。典型的には、本明細書において使用する半固体抽出物は、かなりの程度の粘度を特徴とする抽出物である。好ましくは、前記抽出物は、液体又は半固体であってよい油状抽出物である。好ましくは、本発明に係る抽出物は、(液体抽出物に比べて)自由に流動しないが、固体ではなく、例えば、加圧下でその形状を変化させ得る半固体抽出物である。好ましくは、前記抽出物は、温度に依存してその挙動を変化させる。例えば、前記抽出物は、室温ではワックス状又は半固体の油状の抽出物であり得るが、例えば、37℃では液体抽出物である。前記抽出物は、好ましくは、油状液体抽出物又は油状半固体抽出物である。本発明の状況では、用語「油状抽出物」は、液体又は半固体の抽出物を含む。用語「油状抽出物」は、本明細書で使用するとき、ワックス状抽出物を指すこともある。
本発明の抽出物のpH値は、好ましくは、3〜10、より好ましくは、約3.5〜約8、更により好ましくは、約4〜約7である。好ましい実施形態によれば、本発明の抽出物のpH値は、約7以下である。より好ましくは、本発明の抽出物のpH値は、約5〜約6である。
或いは、本発明に係る抽出物は、固体である。好ましくは、前記抽出物は、粉末又は顆粒、好ましくは、乾燥粉末又は乾燥顆粒の形態で提供される。
好ましくは、脱イオン水で再構成した際の固体又は乾燥抽出物のpH値は、本明細書に記載する通りである。最も好ましくは、脱イオン水で再構成した際の固体又は乾燥抽出物のpH値は、約7以下である。
別の態様では、本発明は、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物を調製する方法を提供する。有利なことに、本発明に係る方法は、ボスウェリア属樹脂抽出物を調製するのに適しており、所望の化合物、例えば、トリテルペン酸若しくはその誘導体の群から選択される化合物及び/又は本明細書に定義する環式、好ましくは単環式のジテルペノイド若しくはその誘導体の群から選択される化合物は単離され、好ましくは、前記抽出物中で濃縮されるが、一方、本明細書に定義する不所望の化合物は、前記抽出物中に存在しないか又は従来の抽出物と比べて少ない量しか存在しない。したがって、本発明に係る方法は、優れた有効性並びに改善された耐容性及び安全性を有するので、医薬又は化粧品組成物に加えて、食品又は栄養補助食品においても用いることができる抽出物を調製するのに特に適している。
より具体的には、本発明は、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物を調製する方法であって、前記抽出物中のリモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の含量及び/又はタンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物の量が、同一の樹脂の従来の抽出物に比べて少なく、
a)前記樹脂を抽出溶媒と接触させて抽出溶液を得る工程であって、前記抽出溶媒が、第1の水混和性有機溶媒、若しくは超臨界流体、又はこれらの混合物を含む工程と、
b)前記抽出溶液から不溶性成分を分離する工程と、
c)蒸発及び/又は蒸留によって前記抽出溶液を濃縮する工程と、
d)任意で、脂質相を添加する工程と、
e)蒸留及び/又は蒸発によって、得られた前記抽出溶液を濃縮する工程と、
f)水を添加し、蒸留し、次いで、蒸発させ、最終的に乾燥抽出物を得るか、又は工程d)で脂質相を添加した場合、液体又は半固体の抽出物を得ることによって、得られた濃縮物を精製する工程と
を含む方法に関する。
ここで、出発材料は、本明細書に記載するボスウェリア属の植物に由来する本明細書に記載する樹脂又は加工樹脂である。好ましくは、前記樹脂は、ボスウェリア・パピリフェラ、ボスウェリア・セラータ、ボスウェリア・サクラ、及びボスウェリア・カルテリイからなる群から選択される植物に由来する。
好ましい実施形態では、前記樹脂は、ボスウェリア・パピリフェラではないボスウェリア属の植物に由来する。最も好ましくは、前記樹脂は、ボスウェリア・セラータに由来する樹脂に由来する。
本発明に係る方法は、抽出溶液を得るために前記樹脂を抽出溶媒と接触させる工程であって、前記抽出溶媒が、第1の水混和性有機溶媒、若しくは超臨界流体、又はこれらの混合物である工程を含む。
ここで、抽出溶媒と接触させる樹脂は、好ましくは、本明細書に記載の通り予め調製又は加工しておく。例えば、前記樹脂は、抽出溶媒と接触させる前に、粉砕したり、篩分したり、洗浄したり、加熱したり、凍結させたり、凍結融解サイクルによって処理したり、加湿したり、水に浸漬させたりしてもよい。出発材料として使用される前記樹脂の粒度は、好ましくは、0.01mm〜8mm、より好ましくは、5mm未満、4mm未満、3mm未満、2mm未満、又は1mm未満である。最も好ましくは、前記樹脂の粒度は、2mm未満である。或いは、更に小さな粒度を有する粉末を使用してもよい。
本発明に係る用語「接触」とは、好ましくは、前記樹脂を抽出溶媒で濡らす、前記樹脂を抽出溶媒中に沈める、前記樹脂を抽出溶媒に浸漬する、又は前記樹脂を抽出溶媒と共に何らかの種類のインキュベーションを行うことを指す。好ましくは、前記方法の工程b)に進む前に樹脂と抽出溶媒との混合物をインキュベートする。前記インキュベーションは、好ましくは、10℃〜90℃、より好ましくは、20℃〜80℃、更により好ましくは、30℃〜70℃、最も好ましくは、40℃〜60℃の温度で実施される。好ましくは、前記方法の工程a)におけるインキュベーションは、少なくとも5分間、15分間、30分間、60分間、又は90分間、より好ましくは、10分間〜90分間、更により好ましくは、30分間〜80分間続ける。インキュベーション中、好ましくは、前記混合物を撹拌し、用語「撹拌」とは、例えば、撹拌棒、撹拌ロッド、又は攪拌機によって、前記混合物中の樹脂材料を機械的に移動、振盪、又は撹拌することを指す。撹拌装置は、当業者に公知であり、商業的供給元から容易に入手することができる。
前記抽出溶媒は、第1の水混和性有機溶媒又は第1の水混和性有機溶媒の混合物を含む。好ましくは、(第1及び/又は第2の)水混和性溶媒は、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、アセトニトリル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、酪酸、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、ギ酸、フルフリルアルコール、グリセロール、メタノール、メチルジエタノールアミン、メチルイソシアニド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−プロパノール、プロパン酸、プロピレングリコール、ピリジン、テトラヒドロフラン、及びトリエチレングリコールからなる群から選択される。本発明に係る方法の好ましい実施形態では、(第1及び/又は第2の)水混和性溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、芳香族アルコールのいずれか、好ましくは、エタノール又はメタノール、最も好ましくは、エタノールである。最も好ましくは、前記抽出溶媒は、水と本明細書に定義する第1の水混和性有機溶媒との混合物、好ましくは、水とアルコールとの混合物、より好ましくは、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、若しくは芳香族アルコールからなる群から選択されるアルコール、より好ましくは、エタノール若しくはメタノールとの混合物、又は水とケトン、好ましくはアセトンとの混合物を含む。好ましくは、前記抽出溶媒は、エタノール/水混合物である。
より好ましい実施形態では、本発明に係る方法における抽出溶媒は、少なくとも約50%(w/w)〜約99.2%(w/w)、50%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約55%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約60%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約65%(w/w)〜約90%(w/w)、又は少なくとも約70%(w/w)〜約85%(w/w)、又は少なくとも約75%(w/w)〜約80%(w/w)、又は少なくとも60%(w/w)、又は少なくとも約65%(w/w)、又は少なくとも約70%(w/w)、又は少なくとも約75%(w/w)、又は少なくとも約80%(w/w)、又は少なくとも約85%(w/w)、又は少なくとも約90%(w/w)、又は少なくとも約95%(w/w)の濃度のアルコール、好ましくはエタノールである。特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法における抽出溶媒は、約92.6%(w/w)の濃度のエタノール、又は水不含エタノール、例えば、無水エタノールである。したがって、本発明の方法の工程(a)の抽出溶媒は、上に定義したいずれかの濃度のエタノールであってもよく、又は前記抽出溶媒は、例えば、無水エタノールであってもよい。無水エタノールは、関連技術において公知の任意の技術によって得ることができ、例えば、分子篩を使用してもよく、又は例えば、合成ゼオライト、若しくはコーンミール、若しくはわら、若しくはおがくずを用いて共沸性エタノール/水混合物中の残留水を除去してもよく、又は例えば、圧力スイング蒸留を用いてもよい。
好ましい実施形態によれば、抽出溶媒、抽出溶液、及び/又は濃縮物は、テトラヒドロフランを含まない。より好ましくは、第1の水混和性有機溶媒及び/又は第2の水混和性有機溶媒は、テトラヒドロフランを含まない。更により好ましくは、本発明の方法は、テトラヒドロフランを使用することなしに実施される。
更により好ましい実施形態によれば、本発明に係る方法における(乾燥)出発材料、即ち、ボスウェリア属の植物の樹脂の抽出溶媒に対する質量(重量)比は、少なくとも約1:5(w/w)〜約1:20(w/w)、又は少なくとも約1:6(w/w)〜約1:15(w/w)、又は少なくとも1:8(w/w)〜約1:12.5(w/w)、又は少なくとも約1:10(w/w)〜約1:20(w/w)、又は少なくとも約1:6(w/w)、又は少なくとも約1:7(w/w)、又は少なくとも約1:8(w/w)、又は少なくとも約1:9(w/w)、又は少なくとも約1:8(w/w)、1:9(w/w)、1:10(w/w)、1:11(w/w)、1:12(w/w)、1:13(w/w)、1:14(w/w)、1:15(w/w)、1:16(w/w)、1:17(w/w)、1:18(w/w)、1:19(w/w)、又は1:20(w/w)、好ましくは約1:10(w/w)である。したがって、本発明に係る方法で用いられるボスウェリア属の樹脂の各質量単位につき、対応する量の上に定義した抽出溶媒を使用する、例えば、ボスウェリア属の樹脂の抽出溶媒に対する比が1:5(w/w)である場合、ボスウェリア属の樹脂100gを抽出溶媒、例えば、無水エタノール500gと接触させてよい。
1つの実施形態では、前記抽出溶媒は、超臨界流体を含む。抽出溶媒として超臨界流体を使用することは、当業者に周知であり、当業者は、任意の好適な超臨界流体及び手順を適宜選択することができる。好ましくは、超臨界流体は、二酸化炭素、プロパン、又はブタンを含む群から選択される。超臨界流体は、好ましくは、当技術分野において公知の任意の適切な標準的技術を用いることによって樹脂に添加される。好ましくは、超臨界流体を、本明細書に定義する第1の水混和性有機溶媒と併用する。
工程a)後、工程b)で、前の工程で得られた抽出溶液から不溶性成分を分離し、工程b)は、好ましくは、濾過又は遠心分離工程を含む。1つの実施形態によれば、工程b)は、好ましくは本明細書に記載する、少なくとも1つの濾過工程を含む。かかる濾過工程は、濾過技術から選択してよく、例えば、単なる例示目的であるが、それぞれ、精密濾過及び/又は限外濾過等である。各濾過工程は、1段階で実施してもよく、必要に応じて、同じ又は異なる濾過技術を組み合わせて2段階以上で実施してもよい。この状況では、除去しなければ限外濾過工程の有効性が損なわれる材料を除去するために、典型的には、精密濾過が適用される。
好ましくは、本発明に係る方法の分離工程b)は、深層濾過、好ましくは、深層セルロールフィルタ(例えば、AF15又はAF50 Filtrox)を使用する濾過を含む。濾過プロセスによって抽出溶液から不溶性材料が除去され、分離される限り、本発明に係る方法の工程b)において任意の種類のセルロールフィルタを使用してよいことは当業者にとって明らかである。
別の実施形態では、本発明の分離工程b)は、遠心分離の工程を含む。或いは、抽出溶液から不溶性成分を分離するために、当技術分野において公知の任意の他の分離方法又は方法の組合せを用いてもよい。
抽出溶液から不溶性成分を分離した後、蒸発及び/又は蒸留によって工程c)で前記抽出溶液を濃縮する。蒸発工程は、好ましくは、例えば、約20℃〜約200℃、好ましくは約20℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約90℃、より好ましくは約50℃〜約80℃、更により好ましくは約40℃〜約70℃、例えば、約55℃〜約65℃の高温で実施される。また、例えば、1mbar〜500mbar、好ましくは10mbar〜400mbar、好ましくは50mbar〜350mbar、より好ましくは100mbar〜300mbarの減圧下で実施すると、蒸発プロセスが容易になり得る。好ましくは、工程c)における蒸発は、5mbar〜300mbarの減圧、及び40℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃、より好ましくは55℃〜65℃の温度で行われる。
蒸発工程に加えて又は代えて、蒸留工程、好ましくは、蒸気蒸留工程が、本発明に係る方法の工程c)に含まれていてもよい。蒸留工程は、好ましくは、抽出溶液を70°〜100℃、好ましくは85°〜95℃の温度に加熱することを含む。好ましくは、蒸留工程は、減圧、例えば、100mbar〜950mbar、より好ましくは450mbar〜650mbarの圧力で実施される。蒸留前に水混和性溶媒、好ましくは水を添加してもよい。
蒸発又は蒸留工程の期間は、前記工程の目的に依存する。抽出溶液の体積を所与の体積(例えば、それぞれ、初期体積、即ち蒸発/蒸留工程の開始前の体積の15%)まで低減する場合、蒸発又は蒸留は、所望の体積に達するまで実施される。好ましくは、蒸発又は蒸留工程は、抽出溶液が揮発性化合物、好ましくは本明細書に定義する不所望の揮発性化合物、より好ましくはリモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールからなる群から選択される化合物を含まないようにするのに(条件に基づいて)必要な特定の時間実施される。蒸発又は蒸留工程の期間は、好ましくは、少なくとも5分間、15分間、20分間、又は30分間、より好ましくは、10分間〜120分間、20分間〜90分間、又は30分間〜60分間である。蒸発工程又は蒸留工程は、前記工程の全期間に亘って一定条件(例えば、温度、圧力)を含んでいてもよく、或いは、蒸発又は蒸留工程は、例えば、温度及び/又は圧力の変動を含んでいてもよい。より好ましくは、蒸発又は蒸留工程は、異なる圧力を特徴とする少なくとも2相を含む。ここで、圧力は、経時的に低下することが好ましく、例えば、第1の相の圧力に比べて第2の相の圧力の方が低い。好ましくは、蒸発又は蒸留工程の第1の相における圧力は、600mbar〜950mbarであるが、蒸発又は蒸留工程の最終相における圧力は、100mbar〜300mbarである。最も好ましくは、初期相の温度に比べて最終相の温度の方が低い。初期相から最終相への移行は、様々な圧力を含む幾つかの中間工程を含んでいてよい。
好ましい実施形態では、前記方法の工程c)の後に追加の精製工程が実施され、前記精製工程は、
c1)第2の水混和性有機溶媒を抽出溶液に添加して、最終濃度を20%(w/w)〜50%(w/w)にし、
タンパク質、好ましくはタンパク質溶液若しくはタンパク質分散液、又はタンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する別の化合物を添加し、
任意で、前記タンパク質の添加の前、後、又は同時に不活性の顆粒又は粉末を添加し、
前記第2の有機溶媒の濃度を75%w/w〜95%w/wに調整することによってタンパク質−ポリフェノール複合体又は合成ポリマー−ポリフェノール複合体を沈殿させることによって、
工程c)で得られた抽出溶液を少なくとも1つの、タンパク質と相互作用するポリフェノールから精製する工程と、
c2)少なくとも1つの濾過工程又は少なくとも1つの遠心分離工程を含む方法によって、工程c1)で得られた沈殿物を分離する工程と
を含む。
工程c1)では、好ましくは、濃縮された抽出溶液が、好ましくは本明細書に定義する、少なくとも1つの、タンパク質と相互作用するポリフェノールから精製される。この目的のために、前記第2の水混和性有機溶媒の最終濃度が、好ましくは、10%(w/w)〜70%(w/w)又は20%(w/w)〜70%(w/w)、より好ましくは、20%(w/w)〜50%(w/w)又は30%(w/w)〜70%(w/w)に達する量で、第2の水混和性有機溶媒(又はその水との混合物)を前記抽出溶液に添加する。最も好ましくは、最終濃度が20%(w/w)〜50%(w/w)に達する量で、第2の水混和性有機溶媒(又はその水との混合物)を前記抽出溶液に添加する。
第2の水混和性有機溶媒は、第1の水混和性有機溶媒に関して本明細書に定義した溶媒である。好ましくは、第2の水混和性有機溶媒は、好ましくはメタノール、エタノール、イソプロパノール、若しくは芳香族アルコールからなる群から選択されるアルコール、より好ましくは、エタノール若しくはメタノール、又はケトン、好ましくはアセトンを含む。したがって、本発明に係る第2の水混和性有機溶媒は、好ましくは、第1の有機溶媒とは独立に、アセトアルデヒド、酢酸、アセトン、アセトニトリル、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2−ブトキシエタノール、酪酸、ジエタノールアミン、ジエチレントリアミン、ジメチルホルムアミド、ジメトキシエタン、ジメチルスルホキシド、1,4−ジオキサン、エタノール、エチルアミン、エチレングリコール、ギ酸、フルフリルアルコール、グリセロール、メタノール、メチルジエタノールアミン、メチルイソシアニド、1−プロパノール、1,3−プロパンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−プロパノール、プロパン酸、プロピレングリコール、ピリジン、テトラヒドロフラン、及びトリエチレングリコールからなる群から選択される。本発明に係る方法の好ましい実施形態では、(第1及び/又は第2の)水混和性溶媒は、アルコール、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、芳香族アルコールのいずれか、好ましくは、エタノール又はメタノール、最も好ましくは、エタノールである。最も好ましくは、水と本明細書に定義する第2の水混和性有機溶媒との混合物、好ましくは、水とアルコールとの混合物、より好ましくは、水とメタノール、エタノール、イソプロパノール、又は芳香族アルコールからなる群から選択されるアルコール、より好ましくは、エタノール又はメタノールとの混合物を、前記方法の工程d)で添加する。最も好ましくは、エタノール/水混合物を、前記方法の工程d)で添加する。本発明の1つの実施形態では、第1及び第2の水混和性有機溶媒は同一である。或いは、第1の水混和性有機溶媒は、第2の水混和性有機溶媒とは異なっていてもよい。
本発明に係る方法の工程c1)は、更に好ましくは、タンパク質、又はタンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマーを抽出溶液に添加することを含む。
作業仮説によれば、添加されたタンパク質又は添加された合成ポリマーは、好ましくは本明細書に記載の通り、ポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物と相互作用する。したがって、好ましくは、一方はポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物、他方は添加されたタンパク質又は合成ポリマーを含む複合体が形成される。好ましくは、添加されたタンパク質分子又は添加された合成ポリマー分子は、ポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物によって架橋される。これらタンパク質−ポリフェノール複合体又は合成ポリマー−ポリフェノール複合体は、それぞれ、好ましくは、添加されたタンパク質又はペプチドよりも親水性が低い。前記タンパク質又は合成ポリマーは、好ましくは0.1%(w/w)〜20%(w/w)又は0.5%(w/w)〜20%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)〜10%(w/w)、更により好ましくは3%(w/w)〜8%(w/w)の最終濃度で、最も好ましくは、少なくとも2%(w/w)、3%(w/w)、又は4%(w/w)の最終濃度になるように添加される。
前記方法の工程c1)は、更に、第2の水混和性有機溶媒の濃度を、少なくとも約50%(w/w)〜約99.2%(w/w)、50%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約55%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約60%(w/w)〜約95%(w/w)、又は少なくとも約65%(w/w)〜約90%(w/w)、又は少なくとも約70%(w/w)〜約85%(w/w)、又は少なくとも約75%(w/w)〜約80%(w/w)、又は少なくとも60%(w/w)、又は少なくとも約65%(w/w)、又は少なくとも約70%(w/w)、又は少なくとも約75%(w/w)、又は少なくとも約80%(w/w)、又は少なくとも約85%(w/w)、又は少なくとも約90%(w/w)、又は少なくとも約95%(w/w)の濃度に調整することによって、本明細書に記載する通り形成されたタンパク質−ポリフェノール複合体又はポリマー−ポリフェノール複合体を沈殿させることを含む。最も好ましくは、第2の水混和性有機溶媒の濃度は、75%(w/w)〜95%(w/w)の濃度に調整される。
本発明に係る方法の好ましい実施形態では、前記方法の工程c1)においてタンパク質又はタンパク質溶液を抽出溶液に添加する。前記タンパク質又はタンパク質溶液は、好ましくは、本明細書に定義するタンパク質又はペプチドであって、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される化合物と相互作用するタンパク質又はペプチドを含む。
本発明に係る方法の工程c1)で添加されるタンパク質は、更に、ペプチド又はタンパク質部分(ペプチド結合によって結合された少なくとも2つのアミノ酸の存在を特徴とする)を有する任意の化合物であって、好ましくは、ポリフェノール化合物、好ましくは、本明細書に定義するポリフェノールの群から選択される化合物、好ましくは、タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用することができる化合物を含む。
好ましい実施形態では、工程c1)において動物起源のタンパク質又はタンパク質混合物を添加する。ここでは、結合組織に由来するタンパク質又はタンパク質混合物、例えば、コラーゲンが特に好ましい。したがって、本発明に係る方法の工程c1)で添加されるタンパク質は、好ましくは、動物組織に由来するタンパク質又はタンパク質混合物であって、高コラーゲン含量を特徴とするタンパク質又はタンパク質混合物である。好ましくは、動物起源のタンパク質混合物、例えば、アイシングラス、乳タンパク質、カゼイン、又はゼラチンが工程c1)で用いられる。
特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法の工程c1)においてゼラチンを添加する。本明細書で使用するとき、用語「ゼラチン」とは、高タンパク質含量を特徴とする、動物起源の化合物の混合物を指す。典型的には、ゼラチンは、コラーゲン、好ましくは、不可逆的に加水分解されたコラーゲンに由来する動物タンパク質の混合物である。ゼラチンは、好ましくは、ゼラチン水溶液、又は水溶液におけるゼラチンの懸濁液若しくは分散液として工程c1)で添加される。ゼラチンの調製は、当技術分野において周知(例えば、欧州薬局方)であり、本発明に係る方法の工程c1)で使用してよい。様々な種類のゼラチンを用いてよい。好ましいゼラチンの種類は、哺乳類(好ましくは、ウシ又はブタ)、鳥類(好ましくは、ニワトリ)、又は魚類起源のゼラチンを含む。用語「ゼラチン」は、本明細書で使用するとき、特定の種類又は等級に限定されない任意の公知の手段、例えば、特定の加水分解手順によって得られたゼラチンも含む。本発明の状況では、その起源及び特定の(例えば、物理的)特性にかかわらず、任意の市販されているゼラチンを用いてよい。好ましくは、食品又は化粧品等級のゼラチンを使用する。尚、本明細書に記載するタンパク質の使用は、関連技術、特に、食品業界における前記タンパク質の使用とは異なる。本発明以前は、親油性抽出物の状況において、タンパク質、特に、ゼラチン、又はその溶液、懸濁液、若しくは分散液を使用することは示唆されていなかった。
好ましい実施形態では、本発明に係る方法の工程c1)において、0.1%(w/w)〜20%(w/w)又は0.5%(w/w)〜20%(w/w)、より好ましくは1%(w/w)〜10%(w/w)、更により好ましくは3%(w/w)〜8%(w/w)の最終濃度、最も好ましくは少なくとも2%(w/w)、3%(w/w)、又は4%(w/w)の最終濃度に達するのに十分な量のゼラチンを添加する。
或いは、植物起源のタンパク質、例えば、果物、野菜、又は植物の任意の他の部分に由来するタンパク質を使用してもよい。好ましくは、本発明に係る方法の工程c1)で添加されるタンパク質は、マメ科(Leguminosae)の植物、より好ましくは、エンドウ、ヒヨコマメ、マメ、又はレンズマメに由来する。更に、数種の植物タンパク質の混合物、例えば、異なる植物由来のタンパク質の混合物を使用してもよい。
好ましい実施形態では、動物起源のタンパク質と植物起源のタンパク質との混合物を工程c1)で使用する。好ましくは、高コラーゲン含量を有する動物起源のタンパク質又はタンパク質混合物を、マメ科の植物に由来する植物タンパク質と併用する。より好ましくは、ゼラチン及びマメ科の植物に由来するタンパク質を使用する。
本発明に係る方法の更に好ましい実施形態では、タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマー又は前記ポリマーの溶液を、前記方法の工程c1)において抽出溶液に添加する。
本発明の状況では、句「タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマー」(又はこの状況で用いられる句「合成ポリマー」)は、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する、任意の合成ポリマー化合物を含む。タンパク質と相互作用するポリフェノールと合成ポリマーとの間の相互作用は、典型的には、本明細書に記載するポリフェノールとタンパク質との相互作用と同様である。前記句は、更に、その構造にかかわらず、タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用することができる任意の合成ポリマーを含む。タンパク質と相互作用するポリフェノールと合成ポリマーとの相互作用は、当業者によって、例えば、公知の濃度のタンパク質と相互作用するポリフェノールを有する溶液に合成ポリマーを添加し、遠心分離後の上清中のタンパク質と相互作用するポリフェノールの量を定量することによって容易に求められる。本発明の状況では、句「合成ポリマー」は、任意の化学的に合成されたポリマー(例えば、ナイロン、ポリビニル、ポリアミド、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリアクリロニトリル、合成ゴム、フェノールホルムアルデヒド樹脂(又はベークライト)、ネオプレン、シリコーン、及びこれらの各誘導体)を含む。更に、句「合成ポリマー」は、化学的に修飾された天然起源の任意の高分子化合物(例えば、ニトロセルロース)を含む。用語「ポリマー」は、この状況で用いられるとき、典型的には、それぞれの単位(モノマー)を含む巨大分子を指す。それぞれの単位は、互いに同一であってもよく(ホモポリマー)又は異なっていてもよい(コポリマー)。その構造に依存して、本発明の意味におけるポリマーは、直鎖状又は分枝鎖状のポリマーであってよい。特に、本発明の意味におけるポリマーは、ポップコーン又はカリフラワー様の外観を特徴とする所謂「ポップコーンポリマー」であってよい。更に、前記ポリマーは、ブロックポリマー又はブロックコポリマーであってよく、それぞれの単位(所謂「ブロック」、ブロックコポリマーのブロックポリマーのポリマーサブユニットを表す)を含む異なるブロックを含んでいてよく、前記ポリマーは、1種のブロック(ブロックポリマー)又は少なくとも2種の異なるブロック(ブロックコポリマー)を含む。
好ましくは、本発明に係る方法の工程c1)において本明細書に定義する合成ポリマーを添加し、前記ポリマーは、任意の溶媒に不溶性である。より好ましくは、前記ポリマーは水に不溶性である。更なる好ましい実施形態では、合成ポリマーは、好ましい安全性及び耐容性プロファイルを有するので、例えば、医薬として、食品として、又は化粧品組成物において前記抽出物を使用するのに適したものになる。
好ましい実施形態では、工程c1)は、タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用するポップコーンポリマーを添加することを含む。「ポップコーンポリマー」は、本明細書で使用するとき、典型的には、好ましくは水に不溶性である、より好ましくは、アルコール、好ましくはエタノール、又は更により好ましくは任意の溶媒に不溶性である、架橋されたポリマー又はコポリマーである。より具体的には、用語「ポップコーンポリマー」は、本明細書で使用するとき、本明細書に定義する不溶性の架橋されたポリマー又はコポリマーを指し、前記ポリマー又はコポリマーは、好ましくは、ポリビニルポリマーである。更に、前記用語は、不溶性のポリビニルブロックポリマー又はブロックコポリマー(例えば、PVPブロックポリマー又は例えば酢酸ビニルから誘導されるモノマーを含むブロックコポリマー)を含む。本発明の状況では、ポリビニルポリマーは、典型的には、一般式[−CH2−CHR−](式中、Rは、水素ではない)のモノマーを含む。ここで、Rは、好ましくは、2−ピロリドンである。
好ましくは、工程c1)で添加される合成ポリマーは、ポリ(ビニルピロリドン)(Divergan、PVP、ポリビドン、又はポビドンとしても知られている)の架橋形態である。最も好ましくは、クロスポビドン(ポリビニルポリピロリドン、PVPP、クロスポリビドン、又はE1202とも称される)又は関連化合物が使用される。
或いは、工程c1)で添加される合成ポリマーは、ポリアミド、好ましくは、ポリアミド粉末であってもよい。
好ましくは、タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマーは、0.1%(w/w)〜5%(w/w)、より好ましくは0.5%(w/w)〜2%(w/w)の最終濃度で添加される。
本発明に係る方法の特に好ましい実施形態では、工程c1)は、ポリ(ビニルピロリドン)、好ましくはクロスポビドンの架橋形態を、0.1%(w/w)〜5%(w/w)、より好ましくは0.5%(w/w)〜2%(w/w)の最終濃度で添加することを含む。
別の実施形態では、工程c1)は、本明細書に定義するタンパク質と、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマーとを両方添加することを含む。
工程c1)における沈殿の効率を増大させるために、好ましくは、前記タンパク質又は前記合成ポリマーを添加する前、後、又は同時に、不活性の顆粒又は粉末、好ましくはセルロール粉末を添加する。作業仮説によれば、不活性の顆粒又は粉末の添加は分散液の形成につながり、前記不活性の顆粒又は粉末から誘導される粒子は、それぞれ、タンパク質−ポリフェノール複合体又はポリマー−ポリフェノール複合体の吸着剤として作用する。工程c1)で形成される複合体は、好ましくは、不活性の顆粒又は粉末の粒子と相互作用し、第2の水混和性有機溶媒の濃度を増大させると沈殿する。したがって、不活性の顆粒又は粉末は、「フロッキング剤」とも称される。
好ましくは、不活性の顆粒又は粉末は、繊維を含む化合物、好ましくは繊維を含むか又は繊維からなる有機化合物、好ましくは分散可能な有機化合物、より好ましくは繊維構造を有する有機生体分子、更により好ましくは炭水化物から誘導される。好ましくは、不活性の顆粒又は粉末は、不溶性であり、好ましくは膨潤することなしに分散液を形成する。不活性の顆粒又は粉末は、好ましくは、平均粒径が0.01mm〜10mmであることを特徴とする。より好ましくは、工程d)においてセルロース粉末を不活性材料として用いる。或いは、繊維質有機材料(例えば、イヌリン)から誘導される他の粉末を、好ましくは、不活性の顆粒又は粉末として使用する。
本発明の別の好ましい実施形態では、前記方法の工程a)は、(工程c1)に関連して本明細書に定義した)タンパク質と相互作用するポリフェノールと相互作用する合成ポリマーを添加することを含む。好ましくは、ポリ(ビニルピロリドン)、好ましくはクロスポビドンの架橋形態を、工程a)において、0.1%(w/w)〜5%(w/w)、より好ましくは0.5%(w/w)〜2%(w/w)の濃度で添加する。より好ましくは、工程a)は、クロスポビドン又は関連化合物を添加し、更に、好ましくは本明細書に定義する不活性の顆粒粉末を添加することを含む。ここで、不活性の顆粒又は粉末は、好ましくは、0.1%(w/w)〜10%(w/w)、より好ましくは0.5%(w/w)〜4%(w/w)の濃度で添加される。ここでは、好ましくは、不活性材料としてセルロース粉末を用いる。理論に縛られるものではないが、ポリ(ビニルピロリドン)、好ましくはクロスポビドンの架橋形態を添加し、更に(任意で)不活性の顆粒又は粉末、好ましくは、セルロース粉末を添加することによって、前記抽出物中のタンパク質と相互作用するポリフェノールから選択される化合物の濃度が低下すると考えられる。
工程c1)に続いて、工程c2)において、好ましくは、本発明に係る方法の工程b)に関連して本明細書に定義した少なくとも1つの濾過工程又は少なくとも1つの遠心分離工程を含む方法によって、工程c1)で得られた沈殿を抽出溶液から分離する。好ましい実施形態では、工程c2)は、少なくとも2つの濾過工程であって、得られた第1の濾液に珪藻土を添加し、前記珪藻土が、好ましくは、形成されたタンパク質−ポリフェノール複合体若しくは合成ポリマー−ポリフェノール複合体、及び/又は複合体を形成していないタンパク質若しくはポリマーと相互作用する工程を含む。本発明の状況では、用語「珪藻土」とは、典型的には粉末の形態で提供される天然の珪質鉱物を指す。珪藻土は、好ましくは、1μm〜1mm未満、より好ましくは10μm〜200μmの粒度を有する。好ましい珪藻土は、これらに限定されるものではないが、Sanacel、Celite、Perlit、ベントナイト、Bentonit、珪砂、ケイ酸塩、又はケイ酸のゾルを含む。好ましくは、工程c1)で添加される珪藻土は、タンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される化合物によって複合体化されないタンパク質又は合成ポリマー(例えば、過剰のタンパク質、例えば、ゼラチン)と相互作用する。次いで、複合体を形成していないタンパク質又はポリマーは、珪藻土と共にフィルタによって保持される。この手順は、好ましくは、工程c1)で添加されたが、工程c1)では沈殿しなかったタンパク質又は合成ポリマー、好ましくはタンパク質から前記抽出溶液を精製するために用いられる。
工程c)後、又は任意の工程c1)及びc2)を実施した場合は工程c2)後、工程d)において脂質相を前記抽出溶液に添加してもよい。ここで、前記脂質相は、液体溶液の形態、ワックス状形態、油状液体の形態、又は油状半固体の形態で前記抽出溶液に添加される。好ましくは、工程d)で添加される脂質相は、モノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリド、即ち、それぞれ、1本、2本、又は3本の中鎖又は長鎖脂肪酸を含むグリセロールのエステル化から誘導される化合物;少なくとも10℃の融点を有する直鎖状炭化水素;ポリグリセリン脂肪酸エステル、プロピレングリコール脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールポリマー、及び官能化ポリマー;乳化剤(ポリソルベート、PEG−40水素化ヒマシ油、ポリグリセロール−ポリリシノレート);又は共溶媒、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、若しくはエチレングリコールモノエチルエーテルを含む。
好ましい実施形態では、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、又は中鎖トリグリセリドを前記抽出溶液に添加する。本明細書で使用するとき、「中鎖グリセリド」とは、グリセロールがそれぞれ1つ、2つ、又は3つの脂肪酸とエステル化されており、前記脂肪酸が、好ましくは6個〜12個の炭素原子を含むモノグリセリド、ジグリセリド、又はトリグリセリドを指す。好ましくは、中鎖ジグリセリド及び中鎖トリグリセリドは、前記方法の工程f)で、独立して又は混合物として添加される。より好ましくは、中鎖モノグリセリド、中鎖ジグリセリド、及び中鎖トリグリセリドは、独立して又は混合物として添加される。添加される脂質は、好ましくは、Labrafac、Peceol、LabrafacとPeceolとの組合せ、又は同等の化学的及び物理的特性を有する同等の市販されている脂質又は脂質混合物である。
好ましくは、本明細書に定義する脂質又は脂質混合物を、少なくとも0.01%(w/w)、少なくとも0.05%(w/w)、少なくとも0.1%(w/w)、少なくとも1%(w/w)、少なくとも2%(w/w)、少なくとも3%(w/)の最終脂質濃度、又は0.01%(w/w)〜15%(w/w)、好ましくは0.1%(w/w)〜10%(w/w)、より好ましくは0.5%(w/w)〜5%(w/w)の最終濃度になるように添加する。好ましくは、工程d)において任意で添加される脂質相は、前記抽出物のトリテルペン酸及びその誘導体の群から選択される化合物の含量、及び/又は環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは単環式ジテルペノイド、より好ましくは単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体、更により好ましくは、本明細書に定義するセンブラノイド及びその誘導体の群の化合物の含量を更に増大させる。トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物、及び/又は環式ジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物、好ましくは単環式ジテルペノイド、より好ましくは単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体、更により好ましくは本明細書に定義するセンブラノイド及びその誘導体の群の化合物は、好ましくは、工程d)において任意で添加される脂質相に溶解し、それによって、好ましくは、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物及び/又はジテルペンアルコール又はその誘導体の群から選択される化合物が後続の蒸発及び/又は蒸留工程中に失われるのを防いで、前記化合物を前記抽出溶液中に保持する。
本発明に係る方法の後続工程e)では、蒸留、好ましくは蒸気蒸留及び/又は蒸発によって前記抽出溶液を濃縮する。好ましくは、前記濃縮は、工程c)に関連して本明細書に記載した通り蒸発工程及び/又は蒸留工程を含む。より好ましくは、前記抽出溶液は蒸発工程によって濃縮され、前記蒸発工程は、好ましくは100mbar〜300mbarの減圧で、好ましくは少なくとも5分間、15分間、20分間、又は30分間、より好ましくは10分間〜120分間、20分間〜90分間、又は30分間〜60分間の期間、前記抽出溶液を40°〜90℃、好ましくは50°〜80°、より好ましくは55°〜65℃の温度に加熱することを含む。
本発明に係る工程f)では、工程e)で得られた濃縮抽出溶液に好適な量の水を添加し、好ましくは工程c)に関連して本明細書に定義した通り、得られた混合物を蒸留工程に付する。蒸留工程は、好ましくは、前記抽出溶液を70°〜100℃、好ましくは85°〜95℃の温度に加熱することを含む。好ましくは、蒸留工程は、減圧、例えば、100mbar〜950mbar、より好ましくは450mbar〜650mbarの圧力で実施される。蒸留工程の期間は、好ましくは、少なくとも5分間、15分間、20分間、又は30分間、より好ましくは、10分間〜120分間、20分間〜90分間、又は30分間〜60分間である。蒸留工程は、前記工程の全期間に亘って一定条件(例えば、温度、圧力)を含んでいてもよく、或いは、蒸留工程は、例えば、温度及び/又は圧力の変動を含んでいてもよい。より好ましくは、蒸留工程は、異なる圧力を特徴とする少なくとも2相を含む。ここで、圧力は、経時的に低下することが好ましく、例えば、第1の相の圧力に比べて第2の相の圧力の方が低い。好ましくは、蒸留工程の第1の相における圧力は、600mbar〜950mbarであるが、蒸発又は蒸留工程の最終相における圧力は、100mbar〜300mbarである。初期相から最終相への移行は、様々な圧力を含む幾つかの中間工程を含む。例えば、工程f)における蒸留工程は、90℃、900mbarで30分間(第1の相)、90℃、600mbarで30分間(第2の相)、及び90℃、200mbarで20分間(第3の相)実施してよい。
蒸留後、前記抽出溶液を、更に、工程f)において蒸発に付す。蒸発工程は、好ましくは、工程c)に関連して本明細書に記載した通り実施される。好ましくは、蒸発工程は、例えば、約20℃〜約200℃、好ましくは約20℃〜約100℃、好ましくは約40℃〜約90℃、より好ましくは約50℃〜約80℃、更により好ましくは約40℃〜約70℃、例えば約55℃〜約65℃の高温で実施される。また、例えば、1mbar〜500mbar、好ましくは10mbar〜400mbar、好ましくは50mbar〜350mbar、より好ましくは100mbar〜300mbarの減圧下で実施すると、蒸発プロセスが容易になり得る。好ましくは、工程c)の蒸発は、100mbar〜300mbarの減圧、及び40℃〜90℃、好ましくは50℃〜80℃、より好ましくは55℃〜65℃の温度で生じる。最も好ましくは、工程f)における蒸発工程は、55℃〜65℃の温度及び1mbar〜200mbarの圧力で実施される。
工程f)において溶媒を完全に蒸発させた後、精製抽出物、好ましくは無溶媒抽出物が得られる。本発明の1つの実施形態では、前記抽出物は、乾燥抽出物、好ましくは乾燥粉末である。
或いは、工程d)で脂質相を添加した場合(又は水/溶媒の全てが蒸発した訳ではなかった場合)、好ましくは本明細書に定義する液体又は半固体の精製抽出物が得られる。好ましくは、液体又は半固体の抽出物は、油状抽出物であり、これは、好ましくは、単一の脂質相からなる。最も好ましくは、単一の脂質相は、トリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物を含み、好ましくは、環式ジテルペノイド又はその誘導体、好ましくは単環式ジテルペノイド、より好ましくは単環式ジテルペンアルコール又はその誘導体、更により好ましくは本明細書に定義するセンブラノイド及びその誘導体の群から選択される化合物を更に含む。
前記抽出溶媒、前記抽出溶液、及び/又は前記濃縮物のpH値は、好ましくは3〜10、より好ましくは約3.5〜約8、更により好ましくは約4〜約7である。好ましい実施形態によれば、前記抽出溶媒、前記抽出溶液、及び/又は前記濃縮物のpH値は、約7以下である。より好ましくは、前記抽出溶媒、前記抽出溶液、及び/又は前記濃縮物のpH値は、約5〜約6である。好ましい実施形態では、本発明の方法の全ての工程は、約7以下のpHを有する媒体中で行われる。
本発明の特に好ましい実施形態では、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物を調製する方法であって、前記抽出物中のリモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールからなる群から選択される少なくとも1つの化合物の量及び/又はタンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物の量が、同一の樹脂の従来の抽出物に比べて少なく、
a)前記樹脂を抽出溶媒と接触させて抽出溶液を得る工程であって、前記抽出溶媒が、エタノール又はエタノール−水混合物を含む工程と、
任意で、架橋ポリ(ビニルピロリドン)化合物及び不活性の顆粒又は粉末、好ましくはセルロース粉末を添加する工程と、
b)濾過又は遠心分離工程を含む技術によって、前記抽出溶液から不溶性成分を分離する工程と、
c)蒸発及び/又は蒸留、好ましくは蒸気蒸留によって前記抽出溶液を濃縮する工程と、
c1)エタノールを前記抽出溶液に添加して、最終濃度を好ましくは20%(w/w)〜50%(w/w)にし、
タンパク質、好ましくはゼラチン溶液又はゼラチン懸濁液を添加し、
任意で、前記タンパク質の添加の前、後、又は同時に、好ましくは同時に不活性の顆粒又は粉末、好ましくはセルロース粉末を添加し、
前記エタノールの濃度を75%w/w〜95%w/wに調整することによってタンパク質−ポリフェノール複合体を沈殿させることによって、
少なくとも1つの、タンパク質と相互作用するポリフェノールから前記抽出溶液を精製する工程と、
c2)少なくとも2つの濾過工程を含む方法によって、工程c1)で得られた沈殿物を分離する工程であって、第1の濾液に珪藻土を添加する工程と、
d)本明細書に定義する脂質相を添加する工程と、
e)蒸留、好ましくは蒸気蒸留及び/又は蒸発によって、得られた前記抽出溶液を濃縮する工程と、
f)水を添加し、蒸留し、次いで、蒸発させ、最終的に本明細書に定義する液体又は半固体の抽出物を得ることによって、得られた濃縮物を精製する工程と
を含む。
本発明の好ましい態様では、工程f)で得られた精製抽出物は、本発明に係る抽出物に関連して本明細書に定義した特徴によって特徴付けられる。本発明に係る方法の工程f)で得られる抽出物を、例えば、更なる精製工程によって更に加工することも更に包含される。
別の態様では、本発明は、ボスウェリア属の植物の樹脂に由来する抽出物であって、本明細書に記載する方法によって得ることができる抽出物を提供する。
好ましい実施形態では、上記本発明に係る方法によって得られる抽出物は、本発明に係る抽出物に関連して上に記載した特徴によって特徴付けられる抽出物である。
特に好ましい実施形態では、本発明に係る方法によって得ることができる精製抽出物のリモネン、リナロール、ツジョンの各含量は20ppm未満、好ましくは10ppm未満であり、エストラゴールの含量は100ppm未満であり、前記含量は、前記抽出物の乾燥重量に基づいて計算される。好ましくは、前記方法によって得ることができる抽出物のリナロールの含量は20ppm未満であり、リモネン及びツジョンの各含量は10ppm未満であり、エストラゴールの含量は100ppm未満である。より好ましくは、前記抽出物は、更に、タンパク質と相互作用するポリフェノールの群から選択される少なくとも1つの化合物の含量が、前記樹脂の従来の抽出物と比べて少ないことを特徴とする。
好ましくは、本発明に係る方法によって得ることができる精製抽出物は、本明細書に定義するトリテルペン酸又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。より好ましくは、前記抽出物は、本明細書に定義する環式、好ましくは単環式のジテルペノイド又はその誘導体の群から選択される化合物を含む。最も好ましくは、本発明の方法によって得ることができる抽出物は、本発明に係る抽出物に関連して本明細書に定義した前記化合物の具体的な含量及び重量比を更に特徴とする。
別の態様では、本発明は、上に定義したボスウェリア属の植物の樹脂に由来する本発明の抽出物、又は上に定義した本発明の方法によって得ることができる抽出物を含む組成物を提供する。
好ましい実施形態では、本発明の抽出物を含む組成物は、医薬組成物であり、これは、少なくとも1つの追加の薬学的に許容し得る賦形剤を更に含む。好ましくは、前記医薬組成物は、活性成分として本発明のボスウェリア属の抽出物を含み、少なくとも1つの他の賦形剤を更に含み、前記医薬組成物は、被験体において薬学的に使用するのに好適である。本発明の状況では、用語「被験体」は、好ましくは、「患者」、「個体」、又は「動物」に関し、この用語は、好ましくは、哺乳類に関する。例えば、本発明の状況において、哺乳類は、ヒト、非ヒト霊長類、飼育動物(例えば、イヌ、ネコ、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ブタ、ウマ等)、実験動物(例えば、マウス、ラット、ウサギ、モルモット等)に加えて、動物園の動物等の捕獲飼育されている動物である。用語「動物」は、本明細書で使用するとき、ヒトも含む。本発明の状況において好ましい「被験体」は、ヒトである。
用語「賦形剤」は、本明細書で使用するとき、薬学的に活性のある成分ではない医薬製剤又は医薬組成物中の全ての物質を示すことを意図し、例えば、担体、結合剤、滑沢剤、増粘剤、崩壊剤、表面活性剤、保存剤、乳化剤、バッファ、芳香剤、着色剤、滑剤、コーティング、又は保護マトリクス等である。用語「薬学的に許容し得る」とは、薬理学的/毒性学的観点から患者にとって許容し得、且つ処方、安定性、患者の許容性、及びバイオアベイラビリティ等の要因に関連する物理的/化学的観点から、製造する薬剤師にとって許容し得る特性及び/又は物質を指す。
本発明に係る医薬組成物は、例えば、意図する投与経路に応じて、当業者に公知の任意の好適な方法で調製してよい。好ましくは、前記組成物は、本発明のボスウェリア属抽出物の成分の親油性に適合する公知の技術及び賦形剤を用いて調製される。
例えば、経口投与又は注射による投与のための本発明に係る医薬組成物の液体形態としては、例えば、水溶液又は水懸濁液、リポソーム製剤、マイクロエマルション又はナノエマルション、アルコール性溶液、任意で着香シロップ、水性、アルコール性、又は油性の懸濁液、及び任意で食用油(例えば、綿実油、ゴマ油、ココヤシ油、又はピーナッツ油等)との着香エマルションが挙げられる。
錠剤等の固体組成物を調製する場合、薬学的に活性のある成分を医薬賦形剤又は担体、例えば、従来の打錠成分(例えば、コーンスターチ、ラクトース、スクロース、ソルビトール、タルク、ステアリン酸、ステアリン酸マグネシウム、リン酸二カルシウム、又はゴム)、及び任意で医薬希釈剤と混合して、本発明に係る化合物の均質な混合物を含有する固体予備処方組成物を形成する。次いで、前記固体予備処方組成物を単位剤形に細分化してよい。錠剤又は丸剤は、例えば、作用の延長又は送達の改善等の利点を付与する剤形を提供するために、コーティング又は他の方法で調合してよい。
医薬組成物は、典型的には、好ましくは経口投与を介して、非経口投与を介して、好ましくは注射を介して、直腸内投与を介して、膣内投与を介して、又は局所投与を介して、本発明のボスウェリア属抽出物を投与するのに適した剤形の形態で提供される。
本発明に係る医薬組成物の特に好ましい剤形は、カプセル剤、好ましくは、軟ゼラチンカプセル剤又は硬カプセル剤;トローチ剤;ロゼンジ剤;水性又は油性の液剤又は懸濁剤;分散可能な散剤又は顆粒剤、好ましくは、溶融押出顆粒剤;乳剤;シロップ剤;錠剤、好ましくは、持続放出性又は即時放出性の錠剤;坐剤;皮膚貼付剤、軟膏剤;ゲル剤;クリーム剤;噴霧剤;又はローション剤からなる群を含むが、これらに限定されない。
好ましい実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、経口投与に好適な経口剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性の懸濁剤若しくは液剤、分散可能な散剤又は顆粒剤、乳剤、硬カプセル剤若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として調製される。かかる組成物は、薬学的にエレガントで味のよい製剤を提供するために、甘味剤、着香剤、着色剤、及び保存剤からなる群から選択される1以上の剤を含有していてよい。経口使用するための錠剤の場合、一般的に用いられる担体としては、ラクトース及びコーンスターチが挙げられる。典型的には、例えば、ステアリン酸マグネシウム等の滑沢剤も添加される。カプセル形態で経口投与する場合、有用な希釈剤としては、ラクトース及び乾燥コーンスターチが挙げられる。経口使用するために水性懸濁液が必要な場合、本明細書に定義する本発明の抽出物を乳化剤及び懸濁剤と合わせてよい。必要に応じて、特定の甘味剤、着香剤、又は着色剤を添加してもよい。錠剤は、典型的には、非毒性の薬学的に許容し得る賦形剤、例えば、不活性希釈剤(例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、又はリン酸ナトリウム);造粒及び崩壊剤(例えば、コーンスターチ又はアルギン酸);結合剤(例えば、デンプン、ゼラチン、又はアラビアゴム);及び滑沢剤(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、又はタルク)と混合された本発明に係る乾燥抽出物を含有する。錠剤は、コーティングされていなくてもよく、又は胃腸管における崩壊及び吸収を遅延させて長時間に亘って作用を持続させるために公知の技術によってコーティングしてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリル又はジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料を使用してよい。また、錠剤は、放出を制御するためにコーティングして浸透性治療用錠剤を形成してもよい。また、経口使用するための製剤は、活性成分を不活性固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、又はカオリンと混合した硬ゼラチンカプセル剤として提示してもよい。
特に好ましい実施形態では、医薬組成物は、活性成分を水又は油媒体(例えば、ピーナッツ油、流動パラフィン、又はオリーブ油)、又はレシチン若しくはレシチンの画分(例えば、Phospholipon 90G(登録商標))、又は他の好適な乳化剤と混合した軟ゼラチンカプセル剤又は軟植物性カプセル剤として提供される。有利なことに、本明細書に定義するタンパク質と相互作用するポリフェノールの濃度が低いと、本発明の抽出物を含むゼラチンカプセル剤、好ましくは、軟ゼラチンカプセル剤の安定性が長続きする。タンパク質と相互作用するポリフェノールをかなりの量有する従来のボスウェリア属抽出物を用いる場合、前記ポリフェノールは、カプセル剤中のゼラチンと相互作用して、安定性を低下させ、貯蔵寿命を短縮させる。本発明の抽出物を使用することによって、前記抽出物中のタンパク質と相互作用するポリフェノールの濃度が低いことに起因して、カプセル剤中のゼラチンとの相互作用が低減される。したがって、本発明の抽出物を使用したとき、ゼラチンカプセル剤、好ましくは、軟ゼラチンカプセル剤の安定性及び/又は貯蔵寿命が増大する。
別の好ましい実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、前記組成物を直腸内投与するために坐剤の形態で提供される。かかる組成物は、常温では固体であるが、直腸温度では液体になるので、直腸内で融解して薬物を放出する好適な非刺激性賦形剤と本明細書に定義する組成物を混合することによって調製することができる。かかる材料は、カカオバター及びポリエチレングリコールである。
本発明の医薬組成物を含む、好ましくは経口投与するため、胃腸管を介して投与するための上記状況における水性懸濁剤は、好適な賦形剤と混合された、上に定義した本発明の組成物を含有し得る。かかる賦形剤は、懸濁化剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、及びアラビアガム;分散剤又は湿潤剤、例えば、天然ホスファチド(例えば、レシチン)、又はアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物(例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン)、又はエチレンオキシドと長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物(例えば、ヘプタデカエチレンオキシセタノール)、又は脂肪酸から誘導される部分エステルを有するエチレンオキシドとヘキシトールとの縮合生成物、例えば、脂肪酸から誘導される部分エステルを有するポリオキシエチレンと無水ヘキシトールとの縮合生成物(例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート)である。また、水性懸濁剤は、1以上の保存剤、例えば、p−ヒドロキシ安息香酸エチル又はn−プロピル、1以上の着色剤、1以上の着香剤、及び1以上の甘味剤、例えば、スクロース又はサッカリンを含有していてもよい。
好ましい実施形態では、医薬組成物は、経皮治療系、例えば、皮膚貼付剤、軟膏剤:ゲル剤:クリーム剤:噴霧剤又はローション剤として提供される。
本発明に係る医薬組成物の投薬単位は、好ましくは、安全且つ有効な量の本発明の抽出物を含む。本明細書で使用するとき、「安全且つ有効な量」は、本明細書に定義する疾患の正の変化を著しく誘導するのに十分な、本明細書に定義する活性成分の量を意味する。しかし、同時に、「安全且つ有効な量」は、重篤な副作用を避け、且つ利益とリスクとの間の合理的な関係を可能にするのに十分な程度少ない。これらの限度の決定は、典型的には、合理的な医学的判断の範囲内である。本発明の医薬組成物、特に、本明細書に定義する組成物の活性成分の「安全且つ有効な量」は、更に、主治医の知識及び経験の範囲内で、治療される具体的な病態に関連して、また、治療される患者の年齢及び健康状態、体重、全体的な健康、性別、食事、投与時間、排泄速度、薬物の組合せ、本明細書に定義する抽出物の活性、病態の重篤度、治療期間、併用療法の性質、用いられる具体的な薬学的に許容し得る担体、及び類似の要因に関連して変動する。したがって、投与される用量は、治療される個体に依存し得る。例えば、マウスが必要とする、体重1kg当たりの本発明の医薬組成物の用量は、ヒトよりも高い場合があり、逆もまた同様である。
最も好ましくは、前記組成物は、前記抽出物を50mg〜5,000mg、好ましくは、200mg〜3,500mg、より好ましくは、300mg〜2,500mg、更により好ましくは400mg〜2,000mg、又は最も好ましくは250mg〜1,500mgを含む投薬単位で提供される。
より好ましい実施形態によれば、上に定義した医薬組成物の投薬単位は、1日間に少なくとも1回、又は毎日1回〜4回、例えば、1日間に1回、2回、3回、又は4回、好ましくは、1日間に3回投与してよい。したがって、上に定義した本発明の医薬組成物は、例えば、1日間当たり1回、2回、3回、又は4回投与してよい。投与は、例えば、患者の食物摂取の前、又は同時、又は後であってよい。投与に最適な時間は、主治医が各症例に基づいて決定すべきである。
好ましい実施形態では、本発明に係る医薬組成物は、第1の活性成分として、本明細書に定義する本発明のボスウェリア属抽出物を含み、更に、第2の活性成分を含む。好ましくは、第2の活性成分は、本明細書に定義する疾患の治療又は予防において有効であることが知られている化合物である。
別の態様では、本発明に係る医薬組成物は、医薬として使用するために提供される。更に、本発明は、医薬の製造における本明細書に定義する抽出物の使用に関する。ここで、前記医薬は、好ましくは、本発明に係る医薬組成物に関連して本明細書に定義する特徴によって特徴付けられる。
好ましい実施形態では、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、疾患の治療及び/又は予防において使用するために提供され、前記疾患は、好ましくは、神経変性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、腫瘍疾患、及び感染性疾患からなる群から選択される。
用語「神経変性疾患」とは、本明細書で使用するとき、アルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、レビー小体病、血管性認知症、プリオン病、運動ニューロン疾患(MND)、脊髄小脳失調症(SCA)、又は脊髄性筋萎縮症(SMA)を含むが、これらに限定されない。
用語「炎症性疾患」とは、本明細書で使用するとき、典型的には、異常な炎症反応に関与する障害を指す。例えば、前記用語は、アテローム性動脈硬化、虚血性心疾患、尋常性座瘡、喘息、自己炎症性疾患、セリアック病、慢性前立腺炎、糸球体腎炎、過敏症、炎症性腸疾患、骨盤内炎症性疾患、再灌流傷害、関節リウマチ、サルコイドーシス、移植片拒絶、血管炎、又は間質性膀胱炎を含むが、これらに限定されない。
「自己免疫疾患」は、本明細書で使用するとき、全身性エリテマトーデス(SLE)、シェーグレン症候群、強皮症、関節リウマチ、及び多発性筋炎を含む全身性症候群、又は内分泌症候群(I型糖尿病(1型真性糖尿病)、橋本甲状腺炎、アディソン病等)、皮膚症候群(尋常性天疱瘡)、血液症候群(自己免疫性貧血)、神経症候群(多発性硬化症)であり得る局所症候群の分類に分けることができるか、或いは、実質的に体組織の任意の取り囲まれた塊を含んでいてもよい。治療される自己免疫疾患は、I型自己免疫疾患又はII型自己免疫疾患又はIII型自己免疫疾患又はIV型自己免疫疾患、例えば、多発性硬化症(MS)、関節リウマチ、糖尿病、I型糖尿病(1型真性糖尿病)、慢性多発性関節炎、バセドー病、自己免疫型の慢性肝炎、潰瘍性大腸炎、I型アレルギー疾患、II型アレルギー疾患、III型アレルギー疾患、IV型アレルギー疾患、線維筋痛症、脱毛、ベヒテレフ病、クローン病、重症筋無力症、神経皮膚炎、リウマチ性多発筋痛症、進行性全身性硬化症(PSS)、ライター症候群、関節リウマチ、乾癬、血管炎、扁平苔癬等、又はII型糖尿病からなる群から選択してよい。
本発明の状況では、癌又は腫瘍疾患は、好ましくは、例えば、神経、間葉、又は上皮起源の固形腫瘍及びその転移、結腸癌、メラノーマ、腎癌、リンパ腫、急性骨髄性白血病(AML)、急性リンパ性白血病(ALL)、慢性骨髄性白血病(CML)、慢性リンパ性白血病(CLL)、胃腸腫瘍、肺癌、神経膠腫、甲状腺腫瘍、乳癌、前立腺腫瘍、肝細胞癌、様々なウイルス誘発腫瘍、例えば、乳頭腫ウイルス誘発癌(例えば、子宮頸癌)、腺癌、ヘルペスウイルス誘発腫瘍(例えば、バーキットリンパ腫、EBV誘発B細胞リンパ腫)、B型肝炎誘発腫瘍(肝細胞癌)、HTLV−1−及びHTLV−2誘発リンパ腫、聴神経腫瘍/神経鞘腫、子宮頸癌、肺癌、咽頭癌、肛門癌、神経膠芽腫、リンパ腫、直腸癌、星状細胞腫、脳腫瘍、胃癌、網膜芽細胞腫、基礎細胞癌、脳転移、髄芽細胞腫、腟癌、膵癌、精巣癌、メラノーマ、甲状腺癌、膀胱癌、ホジキン症候群、髄膜腫、シュネーベルク病、気管支癌、脳下垂体腫瘍、菌状息肉腫、食道癌、乳癌、カルチノイド、神経鞘腫、棘細胞腫、バーキットリンパ腫、喉頭癌、腎癌、胸腺腫、子宮体癌、骨癌、骨肉腫、非ホジキンリンパ腫、尿道癌、CUP症候群、頭頸部腫瘍、乏突起神経膠腫、外陰癌、腸癌、結腸癌、食道癌、いぼ併発、小腸の腫瘍、頭蓋咽頭腫、卵巣癌、軟部腫瘍/肉腫、卵巣癌、肝癌、膵癌、子宮頸癌、子宮内膜癌、肝転移、陰茎癌、舌癌、胆嚢癌、白血病、形質細胞腫、子宮癌、眼瞼腫瘍、前立腺癌等、特に、神経、間葉、又は上皮起源の固形腫瘍及びその転移を含む。
「感染性疾患」は、病原性微生物、例えば、細菌、ウイルス、寄生虫、又は真菌によって引き起こされる。感染性疾患の例は、インフルエンザ、マラリア、SARS、黄熱病、AIDS、ライムボレリア症、リーシュマニア症、炭疽、髄膜炎、ウイルス感染性疾患、例えば、AIDS、尖圭コンジローム、中空のイボ(hollow wart)、デング熱、三日熱、エボラウイルス、感冒、初夏髄膜脳炎(FSME)、流感、帯状疱疹、肝炎、I型単純ヘルペス、II型単純ヘルペス、帯状ヘルペス、インフルエンザ、日本脳炎、ラッサ熱、マールブルグウイルス、麻疹、口蹄疫、単核球症、ムンプス、ノーウォークウイルス感染症、パイファー腺熱、天然痘、ポリオ(小児跛行)、仮性クループ、第五病、狂犬病、イボ、西ナイル熱、水痘、サイトメガロウイルス(CMV);細菌感染性疾患、例えば、流産(前立腺炎症)、炭疽病、虫垂炎、ボレリア症、ボツリヌス中毒、カンピロバクター、クラミジア・トラコマチス(尿道の炎症、結膜炎)、コレラ、ジフテリア、ドノバン症、喉頭蓋炎、発疹チフス、ガス壊疽、淋病、野兎病、ヘリコバクターピロリ、百日咳、鼠径リンパ肉芽腫、骨髄炎、在郷軍人病、ハンセン病、リステリア症、肺炎、髄膜炎、細菌性髄膜炎、炭疽病、中耳炎、マイコプラズマホミニス、新生児敗血症(絨毛羊膜炎)、壊疽性口内炎、パラチフス、ペスト、ライター症候群、ロッキー山紅斑熱、パラチフス菌(salmonella paratyphus)、チフス菌(Salmonella typhus)、猩紅熱、梅毒、破傷風、淋疾、ツツガムシ病、結核、チフス、膣炎(腟炎)、軟性下疳;及び寄生虫、原虫、又は真菌によって引き起こされる感染性疾患、例えば、アメーバ症、ビルハルチア病、シャーガス病、足白癬、酵母菌の斑点(yeast fungus spot)、疥癬、マラリア、オンコセルカ症(河川盲目症);或いは真菌疾患、トキソプラズマ症、トリコモナス症、トリパノソーマ症(睡眠病)、内臓リューシュマニア症、オムツ皮膚炎、住血吸虫症、魚中毒(シガテラ中毒)、カンジダ症、皮膚リューシュマニア症、ランブリア症(ジアルジア症)、又は睡眠病;或いはエキノコックス、魚の条虫、キツネの条虫、イヌの条虫、シラミ、ウシの条虫、ブタの条虫、又は小型条虫によって引き起こされる感染性疾患を含む。
特に好ましい実施形態では、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、クローン病(morbus Crohn)、乾癬、アトピー性皮膚炎、神経膠芽腫、腫瘍周囲浮腫、リウマチ性疾患、呼吸器疾患、及び紅斑性狼瘡からなる群から選択される疾患を治療及び/又は予防するために提供される。
好ましくは、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、それぞれの疾患、好ましくは、本明細書に定義する疾患の従来の治療の前及び/又は同時及び/又は後に投与される。
本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、好ましくは、呼吸管を介して、経口投与を介して投与されるか、又は注射、典型的には非経口注射を介して、好ましくは、皮下、静脈内、筋肉内、関節内、関節滑液嚢内、胸骨内、髄腔内、肝内、病変内、頭蓋内、経皮(例えば、皮膚貼付剤等の経皮治療送達系を介して)、皮内、肺内、腹腔内、心臓内、動脈内、及び舌下注射によって、又は点滴技術を介して投与してもよい。より好ましくは、本発明の医薬組成物の投与は、静脈内、又はより好ましくは筋肉内注射、更により好ましくは呼吸管又は経口投与を介してエアゾール又はマイクロ/ナノエマルションとして吸入器によって行われる。また、前記組成物は、膣内、又は胃腸管系を介して、例えば、直腸内、例えば、坐剤を介して投与してもよい。
最も好ましくは、上に定義した本発明の医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、経口投与を介して、非経口投与を介して、好ましくは、注射を介して、直腸内投与を介して、膣内投与を介して、又は局所投与を介して投与される。
好ましくは、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、1日間に少なくとも1回又は1日間に1回〜4回、好ましくは、1日間に1回、2回、3回、又は4回投与される。
好ましい実施形態によれば、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬は、少なくとも約10mg/kg(体重)〜約200mg/kg(体重)、又は少なくとも10mg/kg(体重)〜約200mg/kg(体重)、又は少なくとも12.5mg/kg(体重)〜約190mg/kg(体重)、又は少なくとも約15mg/kg(体重)〜約190mg/kg(体重)、又は少なくとも約20mg/kg(体重)〜約180mg/kg(体重)、又は少なくとも約25mg/kg(体重)〜約170mg/kg(体重)、又は少なくとも約30mg/kg(体重)〜約160mg/kg(体重)、又は少なくとも約35mg/kg(体重)〜約160mg/kg(体重)、又は少なくとも約40mg/kg(体重)〜約150mg/kg(体重)、又は少なくとも約45mg/kg(体重)〜約140mg/kg(体重)、又は少なくとも約50mg/kg(体重)〜約130mg/kg(体重)、又は少なくとも約55mg/kg(体重)〜約120mg/kg(体重)、又は少なくとも約60mg/kg(体重)〜約110mg/kg(体重)、又は少なくとも約65mg/kg(体重)〜約100mg/kg(体重)、又は少なくとも約70mg/kg(体重)〜約90mg/kg(体重)、又は少なくとも約75mg/kg(体重)〜約85mg/kg(体重)、好ましくは、約10mg/kg(体重)〜200mg/kg(体重)、又は約25mg/kg(体重)〜約190mg/kg(体重)、又は約30mg/kg(体重)〜約180mg/kg(体重)、又は約10mg/kg(体重)、又は約12.5mg/kg(体重)、又は約15mg/kg(体重)、又は約17.5mg/kg(体重)、又は約20mg/kg(体重)、又は約22.5mg/kg(体重)、又は約24mg/kg(体重)、又は約25mg/kg(体重)、又は約27.5mg/kg(体重)、又は約30mg/kg(体重)、又は約32.5mg/kg(体重)、又は約35mg/kg(体重)、又は約37.5mg/kg(体重)、又は約40mg/kg(体重)、又は約45mg/kg(体重)、又は約50mg/kg(体重)、又は約55mg/kg(体重)、又は約60mg/kg(体重)、又は約65mg/kg(体重)、又は約70mg/kg(体重)、又は約80mg/kg(体重)、又は約85mg/kg(体重)、又は約90mg/kg(体重)、又は約95mg/kg(体重)、又は約100mg/kg(体重)、又は約110mg/kg(体重)、又は約115mg/kg(体重)、又は約120mg/kg(体重)、又は約125mg/kg(体重)、又は約130mg/kg(体重)、又は約135mg/kg(体重)、又は約140mg/kg(体重)、又は約145mg/kg(体重)、又は約150mg/kg(体重)、又は約155mg/kg(体重)、又は約160mg/kg(体重)、又は約、又は約165mg/kg(体重)、170mg/kg(体重)、又は約175mg/kg(体重)、又は約180mg/kg(体重)、又は約190mg/kg(体重)、又は約200mg/kg(体重)の用量で投与してよい。
最も好ましくは、本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬の投薬単位は、前記抽出物を50mg〜5,000mg、好ましくは200mg〜3,500mg、より好ましくは300mg〜2,500mg、更により好ましくは400mg〜2,000mg、又は最も好ましくは250mg〜1,500mg含み、好ましくは、1日間に少なくとも1回又は1日間に1回〜4回、好ましくは、1日間に1回、2回、3回、又は4回投与される。
本発明は、更に、疾患を治療及び/又は予防する方法であって、それを必要としている被験体に、治療的に有効な量の本明細書に定義する医薬組成物又は本明細書に定義する抽出物を含む医薬を投与することを含む方法に関する。
好ましくは、本明細書に定義する疾患を治療及び/又は予防する方法は、神経変性疾患、炎症性疾患、自己免疫疾患、腫瘍疾患、及び原虫感染性疾患からなる群から選択される疾患を治療及び/又は予防する方法である。より好ましくは、本発明に係る治療及び/又は予防方法は、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症、クローン病、乾癬、アトピー性皮膚炎、扁平苔癬、神経膠芽腫、腫瘍周囲浮腫、リウマチ性疾患、呼吸器疾患、又は紅斑性狼瘡を治療及び/又は予防する方法である。
本発明に係る疾患を治療及び/又は予防する方法は、好ましくは、前記医薬組成物及び本発明の抽出物を含む医薬の使用に関連して記載した特徴によって特徴付けられる。
更なる態様では、本発明は、本発明に係る抽出物を含む化粧品組成物を提供する。更に、本発明は、化粧品組成物における本発明の抽出物の使用に関する。本発明に係る化粧品組成物は、本発明の抽出物と、化粧品用途に好適な少なくとも1つの追加成分とを含む。好ましくは、前記追加成分は、乳化剤、界面活性剤、保存剤、抗酸化剤、増粘剤、香料、又は色素からなる群から選択される。
本発明に係る化粧品組成物(或いは、本明細書に定義する医薬組成物)は、好ましくは、刺激又はストレスを受けた皮膚の美容治療のために用いられる。ここで、前記化粧品組成物は、好ましくは、皮膚の刺激を軽減し、それぞれの皮膚を鎮静させ、及び/又は皮膚を再び活性化する。本発明に係る化粧品組成物は、好ましくは、局所投与に好適な形態、好ましくは、水性又は油性の液剤若しくは懸濁剤;リポソーム製剤;乳剤;皮膚貼付剤;軟膏剤;クリーム剤;ゲル剤;又はローション剤として提供される。前記化粧品組成物は、好ましくは、ローション剤、クリーム剤、ゲル剤、シャンプー、石鹸、皮膚貼付剤、マスク、防臭剤、アフターシェーブローション等として使用するのに好適である。好ましい実施形態では、前記化粧品組成物は、好ましくは本発明の抽出物と少なくとも1つの脂質化粧品用賦形剤とを含む親油性組成物である。好ましくは、前記化粧品組成物は、リポソーム組成物(例えば、水相中のリポソーム懸濁液)として製剤化される。
別の態様では、本発明は、本発明に係るボスウェリア属抽出物を含む栄養補助食品に関する。本明細書で使用するとき、用語「栄養補助食品」は、広い意味で、個体の通常の食事を補うことができる任意の摂取可能な食品製品として理解すべきである。例えば、本発明に係る栄養補助食品は、Commission Directive 1999/21/ECに提供されている「特殊な医療目的のための食品(dietary foods for special medical purposes)」の分類を含んでいてもよい。したがって、栄養補助食品は、経口投与に好適な経口剤形、例えば、カプセル剤、好ましくはゼラチンカプセル剤、より好ましくは軟ゼラチンカプセル剤、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性の懸濁剤又は液剤、分散可能な散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として提供されてよく、これらは、更に、1以上の添加剤、例えば、着香剤又は甘味剤、例えば、サッカリン若しくはソルビトール、又は抗酸化剤を含んでいてもよい。上に定義した栄養補助食品は、任意の量、例えば、上に定義した任意の量で投与してよい。
更なる態様では、本発明は、栄養補給剤を提供する。栄養補給剤は、固体又は液体の形態、例えば、散剤、カプセル剤、好ましくはゼラチンカプセル剤、より好ましくは軟ゼラチンカプセル剤、液剤若しくはゲル剤、又は任意の他の好適な形態で提供され得、これらは、更に、1以上の添加剤、例えば、着香剤又は甘味剤、例えば、サッカリン若しくはソルビトールを含んでいてもよい。本発明に係る栄養補給剤は、広範な食料品に添加してよいが、食料品の味、匂い、及び/又は稠度を著しく変化させることはない。用語「食料品」とは、本発明の状況で使用するとき、食品又は飲料、例えば、炭酸飲料、水、例えば、ボトルドウォーター、ミネラルウォーター、炭酸水、水道水等、フルーツジュース、野菜ジュース、牛乳、スポーツドリンク、調理油、サラダドレッシング、調味料、スープ、グラノーラ、又はエネルギーバーを指すために用いてよい。したがって、食料品は、流体形態であってもよく、又はより固体の形態であってもよい。また、本発明の栄養補給剤は、任意の量、例えば、上に記載した量で、経口投与に好適な経口剤形、例えば、カプセル剤、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性の懸濁剤若しくは液剤、分散可能な散剤若しくは顆粒剤、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤、又はシロップ剤若しくはエリキシル剤として提供されてもよい。
別の態様では、本発明は、本発明に係るボスウェリア属抽出物を含む食品又は飲料を提供する。本明細書で使用するとき、用語「食品」及び「飲料」は、固体、液体、又は半液体/半固体の形態の任意の摂取可能な食品製品を指す。本発明に係る抽出物は、典型的には、食品若しくは飲料の製造過程において混合されるか、又は最終的な食品若しくは飲料の製品に添加される。
以下の実施例は、本発明を更に説明することを意図する。実施例は、本発明の発明主題を限定することを意図するものではない。
本明細書に提供される実施例及び結果は、オリバナム・インディカム(Olibanum indicum)についてのESCOPモノグラフに定義されている通り、抽出溶媒としてエタノール/水を用いて調製した樹脂抽出物(オリバナム・インディカム)を用いて得られたデータに基づいている。インド(Boswellia serrata Roxb.ex Colebr.、実施例3及び10)、ソマリア(Boswellia carteri syn.sacra Birdwood、実施例6)、オマーン(Boswellia sacra syn.carteri Birdwood、実施例1)に由来する樹脂が、出発材料として機能した。得られた標準的なエタノール性液体抽出物(実施例1、3、6、及び10)を、不所望の化合物の含量、並びにボスウェリン酸及びセンブレンの含量について分析した。また、実施例10の抽出物を最新の手法を用いて加工して、標準的な無溶媒乾燥粉末抽出物(実施例14)又は標準的な無溶媒油状抽出物(実施例15)を得た。更に、この抽出物、並びに実施例1、3、及び6の抽出物を本発明の方法に従って精製して、新規抽出物組成物を得た。
簡潔に述べると、標準的なエタノール性液体抽出物を調製し(実施例1、3、6、及び10)、これを蒸発工程に付し、次いで、得られた濃縮物のエタノール含量を20%(w/w)〜50%(w/w)エタノールのエタノール濃度に調整した(このプロセス工程によって、不所望の揮発性油化合物が最初に低減された)。ゼラチンの水溶液を添加することによって、タンパク質と相互作用するポリフェノールから得られた懸濁液を精製し(タンニン−ゼラチン架橋反応、硬化とも呼ばれる)、次いで、タンパク質−ポリフェノール複合体に結合して微細分散液を形成するセルロース粉末を添加した(懸濁したセルロース粒子は、水和し、ゼラチン及びポリフェノールで架橋されたゼラチンと小さな顆粒を形成して、微細分散親水性吸着質が生じる)。以下では、80%(w/w)〜90%(w/w)の濃度に達するまでエタノールを添加した(エタノールの添加によって、一方では顆粒の脱水及び沈殿が生じ、他方では、親油性抽出物が溶解する)。沈殿物及び透明な上清が得られ、後者は、精製された抽出溶液を表す。プロセス中間体としての透明な精製エタノール性液体抽出物(実施例2、4、7、及び11)を得るために、濾過によって前記沈殿物から上清を分離した。典型的には、濾過は、透明な液体を得るための第1の濾過、及び残存している微量の未沈殿ゼラチンに結合し得る珪藻土(Celite(登録商標))と前記抽出溶液を混合した後の第2の濾過の2段階で行った。前記抽出溶液を初期蒸発工程に付し、次いで、水を添加した後、90℃〜100℃で水蒸気蒸留に付した。幾つかの例では、蒸気蒸留中の蒸発から環式ジテルペノイド、即ち単環式ジテルペノイド、例えばセンブラノイドは保護するが、不所望のモノテルペン及びセスキテルペンは保護しない、追加的に添加された脂質相の存在下でこのプロセスを実施した。前記プロセス工程中、不所望の蒸気揮発性化合物(モノテルペン及びセスキテルペン)の残渣は水蒸気と共に蒸発したので、抽出溶液から除去された。最後に、残りの溶液を、溶媒がなくなるまで40℃〜70℃で蒸発させた。次いで、精製無溶媒油状液体抽出物(実施例5、8、及び12)又は精製無溶媒乾燥粉末抽出物(実施例9及び13)を得た。
材料及び方法
以下の実施例は、本発明を説明するものである。抽出及び精製手順、並びにこれらの収率についての詳細な記載に加えて、得られた中間抽出物及び最終抽出物を、リモネン、リナロール、ツジョン、及びエストラゴールの含量、セラトール、インセンソール、及びインセンソールアセテートの含量、並びにボスウェリン酸について分析した(表1を参照)。中間生成物は、更に、ポリフェノール化合物の含量についても分析した。モノテルペン及びセスキテルペンの分析は、MSの読み出し情報と合わせてガスクロマトグラフィーを用いてLabor Veritas(Engimattstrasse,Zuerich,Switzerland)によって実施し(Labor Veritas GC−Reports No214−0721)、一方、五環式トリテルペン酸ボスウェリン酸(個々に測定され、更に以下の実施例では「トリテルペン酸」と呼ばれる11−ケト−β−ボスウェリン酸(KBA)、アセチル−11−ケト−β−ボスウェリン酸(AKBA)、β−ボスウェリン酸、アセチル−β−ボスウェリン酸、α−ボスウェリン酸、及びアセチル−α−ボスウェリン酸)及びセンブレン(個々に測定され、更に以下の実施例では「センブレン」と呼ばれるセラトール、インセンソール、及びインセンソールアセテート)の分析は、高圧液体クロマトグラフィー(Method/Top Alpinia No.TOP−215:報告書番号SR−2029)によって社内で実施し、ポリフェノールの分析は、欧州薬局方7.0/2.08.14.00.、社内報告書番号:AR−1131の方法に従ってUV/VIS分光法によって社内で実施した。以下の樹脂を実験に用いた:実施例1及び2 OBM001(ボスウェリア・サクラ、オマーン);実施例3、4、及び5 OBN001(ボスウェリア・セラータ、インド)、実施例6、7、8、9 BAX019(ボスウェリア・カルテリイ、ソマリア)、並びに実施例10、11、12、13、14、及び15 BSR037(ボスウェリア・セラータ、インド)。これらは、社内公開文書AR−1065.01、1037.01、1097.01、1096.01、1128.01、及び1091.01として文書化されている。特に指定しない限り、実施例に示す百分率は、重量パーセント(%w/w)を指す。
実施例1(標準的なエタノール性液体抽出物OBM001:LN00226の調製)
250rpm、50℃で60分間撹拌しながら、500mL三角フラスコ内にて粉砕樹脂(粒度<2mm)20.0gを80%w/wエタノール200.01gで抽出した。次いで、調製物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)6.54%の透明な琥珀色の液体抽出物184.54gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例1で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:138.2ppm;リナロール:98.1ppm;リモネン:12.6ppm;ツジョン:34.8ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:21.49%(HPLC);センブレン:4.18%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.19%(分光光度法)。
実施例2(精製エタノール性液体抽出物OBM001:LN00227の調製)
実施例1から得られた液体抽出物(OBM001:LN00226)50.1gを250mLガラスフラスコに移し、残留懸濁液が15%〜25%(出発量に対して計算)に達するまで、150mbar、100rpm、及び60℃で溶媒の75%〜85%を蒸発させた。前記フラスコを秤に移し、合計充填重量が25gに達するまで40%w/wエタノールを添加した。透明な琥珀色の液体が得られた。次いで、セルロース粉末(Sanacel(登録商標))5.2g及びゼラチン溶液(gelatin 欧州薬局方:10%w/w水溶液)6.7gを添加し、60℃及び100rpmで45分間回転させた。前記時間後、無水エタノール(欧州薬局方)110gを添加し、100rpm、20℃〜30℃で15分間回転させた。混合物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過し、透明な黄色がかった液体抽出物を得た(117.5g)。前記抽出物を250mLガラスフラスコに移し、珪藻土(Celite(登録商標))2.0gを添加した。この懸濁液を20℃〜30℃で10分間回転させ、次いで、深層セルロースフィルタ(AF50 Filtrox(登録商標))で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)2.49%の透明な黄色がかった液体抽出物106.8gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例2で得られた抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:103.8ppm;リナロール:179.6ppm;リモネン:<10.0ppm;ツジョン:33.3ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:23.90%(HPLC);センブレン:4.63%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.00%(分光光度法)。標準的な抽出物と比較して、111%のトリテルペン酸及び111%のセンブレンが得られた。
実施例3(標準的なエタノール性液体抽出物OBN001:LN00228の調製)
250rpm、50℃で60分間撹拌しながら、500mL三角フラスコ内にて粉砕樹脂(粒度<2mm)20.03gを80%w/wエタノール200.01gで抽出した。次いで、調製物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)6.31%の透明な琥珀色の液体抽出物191.41gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例3で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:7,388.6ppm;リナロール:481.3ppm;リモネン:<5.0ppm;ツジョン:14.5ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:27.46%(HPLC);センブレン:8.62%(HPLC).
実施例4(精製エタノール性液体抽出物OBN001:LN00228.1の調製)
実施例3から得られた液体抽出物(OBN001:LN00228)50.1gを250mLガラスフラスコに移し、残留懸濁液が15%〜25%(出発量に対して計算)に達するまで、150mbar、100rpm、及び60℃で溶媒の75%〜85%を蒸発させた。前記フラスコを秤に移し、合計充填重量が25gに達するまで40%w/wエタノールを添加した。透明な琥珀色の液体が得られた。次いで、セルロース粉末(Sanacel(登録商標)、沈殿ゼラチンと顆粒を形成)5.2gを前記液体に懸濁させ、次いで、ゼラチン溶液(ゼラチン(欧州薬局方):10%w/w水溶液)6.7gを溶解させ、60℃及び100rpmで45分間回転させた。前記時間後、無水エタノール(欧州薬局方)110gを添加し、前記混合物を100rpm、20℃〜30℃で15分間回転させて、微細な分散沈殿物及び透明な上清を得た。混合物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過し、透明な黄色がかった液体抽出物を得た(117.5g)。前記抽出物を250mLガラスフラスコに移し、珪藻土(Celite(登録商標)、微量の残留ゼラチンに結合)2.0gを添加した。この懸濁液を20℃〜30℃で10分間回転させ、次いで、深層セルロースフィルタ(AF50 Filtrox(登録商標))で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)2.44%の透明な黄色がかった液体抽出物110.2gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例4で得られた抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:3,218.3ppm;リナロール:391.3ppm;リモネン:<10.0ppm;ツジョン:<10.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:27.77%(HPLC);センブレン:8.76%(HPLC)。標準的な抽出物と比較して、101%のトリテルペン酸及び102%のセンブレンが得られた。
実施例5(精製無溶媒油状液体抽出物OBN001:LN002211.2の調製)
実施例4から得られた精製エタノール性液体抽出物(OBN001:LN0228)75.0gを250mLのガラスフラスコに移し、中鎖トリグリセリド(Labrafac(登録商標)、抽出物を溶解させ、ジテルペノイドの蒸発を防ぐ)1.68g、並びに中鎖モノ及びジグリセリド(Peceol(登録商標)抽出物を溶解させ、ジテルペノイドの蒸発を防ぐ)0.545gを添加した。混合物を200mbarの減圧下、250rpm及び55℃で20分間蒸発させた。次いで、蒸留水(モノテルペン及びセスキテルペンの蒸気蒸留)60.0gを添加し、600mbar、90℃で30分間の蒸留を開始した。次いで、真空を200mbarまで低下させ、更に30分間蒸発を実施した。次いで、浴温度を50℃まで低下させ、残留溶媒を更に60分間150−5mbarで蒸発させた。
結果:粘性の透明な琥珀色の液体抽出物4.05gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例4で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、75.0g×0.0244=1.83g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:76.7ppm;リナロール:15.0ppm;リモネン:<5.0ppm;ツジョン:<5.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:27.13%(HPLC);センブレン:10.62%(HPLC)。実施例3の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、99%のトリテルペン酸及び123%のセンブレンが得られた。
実施例6(標準的なエタノール性液体抽出物BAX019:LN0017127の調製)
250rpm、50℃で90分間撹拌しながら、2,000mL三角フラスコ内にて粉砕樹脂(粒度<1mm)100.20gを80%w/wエタノール1,001.14gで抽出した。次いで、クロスポビドン(欧州薬局方)8.0g及びSanacel(登録商標)17.14gを添加した後、調製物を深層セルロースフィルタ(Beco(登録商標)Filter CPKS)で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)5.57%の透明な琥珀色の液体抽出物974.31gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例6で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:36.0ppm;リナロール:40.2ppm;リモネン:<12.0ppm;ツジョン:60.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:21.06%(HPLC);センブレン:21.14%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.41%(分光光度法)。
実施例7(精製エタノール性液体抽出物BAX019:LN0017128の調製)
実施例6から得られた液体抽出物(BAX019:LN0017127)500.24gを2,000mLガラスフラスコに移し、残留懸濁液が15%〜25%(出発量に対して計算)に達するまで、150mbar、100rpm、及び60℃で溶媒の75%〜85%を蒸発させた。前記フラスコを秤に移し、合計充填重量が250gに達するまで40%(w/w)エタノールを添加した。透明な琥珀色の液体が得られた。次いで、セルロース粉末(Sanacel(登録商標))50.31g及びゼラチン溶液(ゼラチン(欧州薬局方):20%w/w水溶液)67.10gを添加し、60℃及び100rpmで30分間回転させた。前記時間後、無水エタノール(欧州薬局方)1,108.38gを添加し、100rpm、20℃〜30℃で15分間回転させた。混合物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過し、透明な黄色がかった液体抽出物を得た。前記抽出物を2,000mLガラスフラスコに移し、珪藻土(Celite(登録商標))20.6gを添加した。この懸濁液を20℃〜30℃で10分間回転させ、次いで、深層セルロースフィルタ(AF50 Filtrox(登録商標))で濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)1.91%の透明な黄色がかった液体抽出物1,090.97gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例7で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:36.0ppm;リナロール:52.8ppm;リモネン:<12.0ppm;ツジョン:<12.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:22.57%(HPLC);センブレン:22.75%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.08%(分光光度法)。実施例6の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、107%のトリテルペン酸及び108%のセンブレンが得られた。
実施例8(精製無溶媒油状液体抽出物BAX019:LN0017132の調製)
実施例7から得られた精製エタノール性液体抽出物(BAX019:LN0017128)200.03gを500mLのガラスフラスコに移し、中鎖トリグリセリド(Labrafac(登録商標))0.97g、並びに中鎖モノ及びジグリセリド(Peceol(登録商標))0.97gを添加した。混合物を200mbarの減圧下、250rpm及び60℃で30分間蒸発させた。次いで、蒸留水45.0gを添加し、900mbarで30分間、次いで、600mbar、90℃で30分間の蒸留を開始した。次いで、真空を200mbarまで低下させ、更に20分間蒸発を実施した。次いで、浴温度を60℃まで低下させ、残留溶媒を更に60分間150−5mbarで蒸発させた。
結果:粘性の透明な琥珀色の液体抽出物5.89gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例7で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、200.03g×0.0191=3.82g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:11.6ppm;リナロール:<5.0ppm;リモネン:<5.0ppm;ツジョン:<5.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:20.33%(HPLC);センブレン:19.44%(HPLC)。実施例6の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、97%のトリテルペン酸及び92%のセンブレンが得られた。前記抽出物を実施例7で得られた抽出物から調製したとき、実施例8の抽出物のポリフェノール含量は0.08%である。
実施例9(精製無溶媒乾燥粉末抽出物BAX019:LN0017130の調製)
実施例7から得られた精製エタノール性液体抽出物(BAX019:LN0017128)200.09gを250mLのガラスフラスコに移した。抽出溶液を200mbarの減圧下、250rpm及び60℃で60分間蒸発させた。次いで、蒸留水45.0gを添加し、900mbarで30分間、次いで、600mbar、90℃で30分間の蒸留を開始した。次いで、真空を200mbarまで低下させ、更に20分間蒸発を実施した。次いで、浴温度を60℃まで低下させ、残留溶媒を更に60分間150−5mbarで蒸発させた。
結果:黄色の粉末4.31gが得られた。前記抽出粉末のサンプルを分析し、以下の含量(実施例7で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、200.09g×0.0191=3.82g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:17.8ppm;リナロール:<11.5ppm;リモネン:<5.0ppm;ツジョン:17.1ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:18.92%(HPLC);センブレン:18.45%(HPLC)。実施例6の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、90%のトリテルペン酸及び87%のセンブレンが得られた。
実施例10(標準的なエタノール性液体抽出物BSR037:LN0017121の調製)
250rpm、50℃で90分間撹拌しながら、2,000mL三角フラスコ内にて粉砕樹脂(粒度<1mm)100.87gを80%w/wエタノール1,000.14gで抽出した。次いで、クロスポビドン(欧州薬局方)8.02g及びSanacel(登録商標)17.02gを添加した後、調製物を深層セルロースフィルタ(Beco(登録商標)Filter CPKS)で2回濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)5.98%の透明な琥珀色の液体抽出物962.09gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例10で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:3,987.3ppm;リナロール:367.0ppm;リモネン:11.9ppm;ツジョン:86.7ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:24.02%(HPLC);センブレン:9.16%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.05%(分光光度法)。
実施例11(精製エタノール性液体抽出物BSR037:LN0017122の調製)
実施例10から得られた液体抽出物(BSR037:LN0017121)500.10gを2,000mLガラスフラスコに移し、残留懸濁液が15%〜25%(出発量に対して計算)に達するまで、150mbar、100rpm、及び60℃で溶媒の75%〜85%を蒸発させた。前記フラスコを秤に移し、合計充填重量が250gに達するまで40%(w/w)エタノールを添加した。透明な琥珀色の液体が得られた。次いで、セルロース粉末(Sanacel(登録商標))50.3g及びゼラチン溶液(ゼラチン(欧州薬局方):10%w/w水溶液)67.2gを添加し、60℃及び100rpmで30分間回転させた。前記時間後、無水エタノール(欧州薬局方)1,100.8gを添加し、100rpm、30℃で30分間回転させた。混合物を深層セルロースフィルタ(AF15 Filtrox(登録商標))で2回濾過し、透明な黄色がかった液体抽出物を得た。前記抽出物を2,000mLガラスフラスコに移し、珪藻土(Celite(登録商標))20.0gを添加した。この懸濁液を20℃〜30℃で10分間回転させ、次いで、深層セルロースフィルタ(AF50 Filtrox(登録商標))で濾過した。
結果:固形分含量(蒸発後の抽出物の乾燥重量)1.84%の透明な黄色がかった液体抽出物931.55gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例11で得られた抽出物の乾燥重量に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:2,482.2ppm;リナロール:281.1ppm;リモネン:<13.0ppm;ツジョン:27.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:26.37%(HPLC);センブレン:9.05%(HPLC)、及びポリフェノール(欧州薬局方):0.00%(分光光度法)。実施例10の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、110%のトリテルペン酸及び99%のセンブレンが得られた。
実施例12(精製無溶媒油状液体抽出物BSR037:LN0017125の調製)
実施例11から得られた精製エタノール性液体抽出物(BSR037:LN0017122)200.02gを500mLのガラスフラスコに移し、中鎖トリグリセリド(Labrafac(登録商標))0.96g、並びに中鎖モノ及びジグリセリド(Peceol(登録商標))0.96gを添加した。混合物を200mbarの減圧下、250rpm及び60℃で30分間蒸発させた。次いで、蒸留水45.0gを添加し、900mbar、90℃で30分間、次いで、600mbar、90℃で30分間の蒸留を開始した。次いで、真空を200mbarまで低下させ、更に20分間蒸発を実施した。次いで、浴温度を60℃まで低下させ、残留溶媒を更に60分間150−5mbarで蒸発させた。
結果:粘性の透明な琥珀色の液体抽出物6.10gが得られた。前記抽出物のサンプルを分析したところ、以下の含量(実施例11で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、200.02g×0.0184=3.68g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:65.1ppm;リナロール:12.6ppm;リモネン:<5.0ppm;ツジョン:9.5ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:24.10%(HPLC);センブレン:9.02%(HPLC)。実施例10の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、100%のトリテルペン酸及び98%のセンブレンが得られた。前記抽出物を実施例11で得られた抽出物から調製したとき、実施例12の抽出物のポリフェノール含量は0%である。
実施例13(精製無溶媒乾燥粉末抽出物BSR037:LN0017124の調製)
実施例11から得られた精製エタノール性液体抽出物(BSR037:LN0017122)200.04gを500mLのガラスフラスコに移した。抽出溶液を200mbarの減圧下、250rpm及び60℃で60分間蒸発させた。次いで、蒸留水45.0gを添加し、900mbar、90℃で30分間、次いで、600mbar、90℃で30分間の蒸留を開始した。次いで、真空を200mbarまで低下させ、更に20分間蒸発を実施した。次いで、浴温度を60℃まで低下させ、残留溶媒を更に60分間150−5mbarで蒸発させた。
結果:黄色の乾燥粉末3.95gが得られた。前記抽出粉末のサンプルを分析し、以下の含量(実施例11で得られた精製エタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、200.04g×0.0184=3.68g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:281.1ppm;リナロール:96.2ppm;リモネン:<10.0ppm;ツジョン:17.1ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:22.20%(HPLC);センブレン:8.41%(HPLC)。実施例10の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、92%のトリテルペン酸及び92%のセンブレンが得られた。
実施例14(標準的な無溶媒乾燥粉末抽出物BSR037:LN0017123の調製)
実施例10から得られた標準的なエタノール性液体抽出物(BSR037:LN0017121)109.10gを250mLのガラスフラスコに移した。抽出溶液を200mbarの減圧下、250rpm及び60℃で60分間蒸発させた。次いで、真空を150mbarまで低下させ、更に60分間蒸発を実施した。
結果:黄色の粉末6.05gが得られた。前記抽出粉末のサンプルを分析し、以下の含量(実施例10で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、109.10g×0.0598=6.52g)に基づいて計算)が得られた:エストラゴール:2,777.2ppm;リナロール:325.1ppm;リモネン:18.0ppm;ツジョン:27.0ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:22.29%(HPLC);センブレン:8.40%(HPLC)。実施例10の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、93%のトリテルペン酸及び92%のセンブレンが得られた。
実施例15(標準的な無溶媒油状抽出物BSR037:LN0017126の調製)
実施例10から得られた標準的なエタノール性液体抽出物(BSR037:LN0017121)100.00gを250mLのガラスフラスコに移し、中鎖トリグリセリド(Labrafac(登録商標))1.49g、並びに中鎖モノ及びジグリセリド(Peceol(登録商標))1.49gを添加した。混合物を600mbarの減圧下、250rpm及び60℃で蒸発させ、次いで、50分間かけて真空を10mbarまで低下させ、60℃及び250rpmで15分間、最後の真空を維持した。
結果:粘性の透明な琥珀色の液体抽出物9.27gが得られた。前記抽出粉末のサンプルを分析し、以下の含量(実施例10で得られた標準的なエタノール性液体抽出物の乾燥重量(即ち、100.00g×0.0598=5.98g)に基づいて計算(100.00g×0.0598=5.98g))が得られた:エストラゴール:1,156.6ppm;リナロール:176.7ppm;リモネン:<10.0ppm;ツジョン:15.7ppm(ガスクロマトグラフィー);トリテルペン酸:22.83%(HPLC);センブレン:8.69%(HPLC)。実施例10の標準的なエタノール性液体抽出物と比較して、95%のトリテルペン酸及び95%のセンブレンが得られた。
結論
技術的実施例2、4、7、及び11の新規精製加工法によって加工されたボスウェリア属抽出物に示されている通り、以前の精製液体抽出物(加工の中間工程)は、リモネン、リナロール、及びツジョンに加えてエストラゴールの減少を示し、また、実施例1、3、6、及び10の標準的な抽出物のポリフェノールの様々な初期負荷に対して正規化したとき、タンパク質と相互作用するポリフェノールが非常に低レベルであるか又は更には存在しないことを示す。更に、本発明の方法に従って調製された最終抽出物(油状抽出物実施例5、8、及び12)は、20ppm未満のリモネン、リナロール、及びツジョン、並びに100ppm未満のエストラゴールを含有する。また、精製乾燥粉末抽出物(実施例9及び13)は、不所望の化合物を標準的な抽出物よりも著しく少ない量しか含有しない。また、精製された抽出物は、非常に低レベルのタンパク質と相互作用するポリフェノールを示し、重要なことに、標準的な抽出物におけるポリフェノールの初期負荷とは独立して、様々な実施例間で多少の偏差が存在する。他方、本発明の方法は、最終的な油状抽出物(実施例5、8、及び12)に至るまでの抽出物及び精製乾燥粉末抽出物(実施例9及び13、トリテルペン酸の回収率は少なくとも87%)において、オリバナムの所望の植物二次代謝産物、即ち、トリテルペン酸、及びセンブレン等の環式ジテルペノイド(標準的な抽出物の含量の>90%w/w)を保持している。これら結果は、不所望の化合物を含まないか又は実質的に含まない新規ボスウェリア属抽出物の生成に関して、本発明の方法の頑強性及び妥当性を反映している。したがって、本発明に係る方法は、ボスウェリア属の種の樹脂に由来する抽出物であって、オリバナムの所望の植物二次代謝産物、即ち、トリテルペン酸及びセンブレンの群等の環式ジテルペノイドを保持しながら、不所望の揮発性モノテルペン及びセスキテルペン並びにポリフェノール化合物が低減又は排除された抽出物を提供する。
実施例16(リポ多糖によって刺激したTHP−1細胞におけるサイトカイン分析)
THP−1細胞をリポ多糖(LPS)で刺激し、ボスウェリア属抽出物BSR037:LN00125(実施例12)又はボスウェリア属抽出物BSR037:LN00126(実施例15)と共にインキュベートした後、サイトカインレベルを測定した。
ヒト単球細胞株(急性単球性白血病由来)であるTHP−1細胞(ATCC(登録商標)TIB202(商標))を、10%ウシ胎児血清(Life Technologies)、0.05mMの2−メルカプトエタノール(Life Technologies)、4.5g/Lのグルコース(Sigma)、10mMのHEPES(Sigma)、及び1mMのピルビン酸ナトリウム(Sigma)を添加したRPMI−1640培地(Lonza)で培養した。
96ウェル丸底プレート(細胞培養処理)に、7×105個/ウェルのTHP−1細胞を180μL/ウェルのTHP−1培地にプレーティングした。抽出物の希釈物の準備が整うまで、37℃及び5%CO2で1時間〜2時間細胞をインキュベートした。抽出物の希釈物及びエタノール(溶媒コントロールとして、Fluka)をリン酸緩衝生理食塩水(Ca++及びMg++無し、BioConcept)を用いて調製した。
それぞれ、20μL/ウェルの抽出物希釈物及びコントロールを二連でウェルに添加した。溶媒コントロールとして最終濃度が0.2%になるようにエタノールを添加した。5%CO2のインキュベータ内にて37℃で1時間細胞をインキュベートした。
リポ多糖原液を調製した(Sigma、E.coli 055:B5由来のLPS、超純水中10mg/mL)。使用直前に、前記原液を2分間超音波処理した。LPSを最終濃度10g/mLになるように添加し、37℃及び5%CO2で24時間インキュベートした。2つのウェルを除いて全てのサンプルウェルにLPSを添加した。これらウェルは、未刺激コントロールであった。
24時間後、サイトカイン分析のためにTHP−1細胞培養上清を回収した。ウェル内のサンプルを混合した。プレートを遠心分離して細胞をペレット化した。無細胞上清(140μL/ウェル)を除去し、新たな丸底96ウェルプレートに移した。プレートを密閉し、上清を測定まで−80℃で保管した。
DuoSet ELISA(R&D Systems)によってTHP−1上清中のサイトカインを測定した。IL6(図1)、TNF−α(図2)、及びIL1−β(図3)のレベルを測定した。
その結果、ボスウェリア属抽出物BSR037:LN00125(実施例12)及びBSR037:LN00126(実施例15)は、IL6、IL1−β、及びTNF−αの用量依存的低減によって示される通り、抗炎症性サイトカインパターンを示した。BSR037:LN00126(実施例15)と比べて、抽出物BSR037:LN00125(実施例12)は、特に、IL1−β及びTNF−αサイトカインレベルの低減に関して、より顕著な抗炎症性パターンを示した。
実施例17(HepG2指標細胞における反応性酸素種(ROS)の測定
ボスウェリア属抽出物BSR037:LN00125(実施例12)及びボスウェリア属抽出物BSR037:LN00126(実施例15)の反応性酸素種(ROS)を誘導する能力について試験した。効果を、ポジティブコントロールであるメナジオン及び2つの溶媒エタノールに曝露したときのROSの発生と比較した。この目的のために、様々な濃度のそれぞれのボスウェリア属抽出物の存在下でHepG2細胞を2時間インキュベートした。ROS−Gloシステム(Promega)を用いることによってROSレベルを測定した。
10,000細胞/ウェル、100μL/ウェルの密度で296ウェル平底黒色マイクロタイタープレートにHepG2細胞を播種し、24時間プレートに付着させた。
試験品の希釈物を別々のプレートで調製した。最高濃度は、培地による1:100希釈物(最終溶媒濃度:1%エタノール)であり、次いで、1%エタノールを含有する培地によって1:3段階希釈した。ポジティブコントロール化合物メナジオンを500μMの最高濃度で使用し、次いで、1:2段階希釈した。1%エタノールを含有する培地に曝露した細胞は、未処理コントロールとして機能した。
一晩付着させた後、真空吸引によって細胞から培地を完全に除去し、化合物希釈物、ポジティブコントロール、及びネガティブコントロール80μLを細胞に添加した。試験品を濃度当たり2つの複製物(A及びB)において試験した。独立した実験において、それぞれ、2時間インキュベートした後(図4A〜Dを参照)又は4時間インキュベートした後(図5A〜Dを参照)にROSレベルを測定した。
その結果、ポジティブコントロールであるメナジオン並びにボスウェリア属抽出物BSR037:LN00125(実施例12)及びBSR037:LN00126(実施例15)についてROSの誘導を検出したところ、BSR037:LS00125(実施例12)は、高いROS誘導能を示した。