JP6981979B2 - アルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ並びにそれに関する方法および使用 - Google Patents

アルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3−ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ並びにそれに関する方法および使用 Download PDF

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Description

本発明は,野生型3-HBDHに比べて改善した性能を有する変異型3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH),該変異型3-HBDHをコードする核酸,該変異型3-HBDH又は該核酸を含む細胞,試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定する方法,試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するための該変異型3-HBDHの使用,試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するためのデバイスに関する。
ケトン体は,主に脂肪酸の酸化により肝臓で産生され,エネルギー源として使用するために末梢組織に輸出される。それらは,実質的な非グルコース由来のエネルギー源を他に持たない脳にとって特に重要である。2つの主要ケトン体は,3-ヒドロキシ酪酸およびアセト酢酸である。生化学的に,ケトン体代謝の異常は,ケトーシス,低ケトン性低血糖症,および3-ヒドロキシ酪酸/アセト酢酸比の異常の3つのカテゴリーに分類することができる。
3-ヒドロキシ酪酸/アセト酢酸比の異常上昇は,通常,低酸素性虚血又は他の原因に起因する肝細胞ミトコンドリアマトリックスの非酸化状態を示す。
ケトーシスの存在は,通常,脂質エネルギー代謝が活性化され,脂質分解の経路全体が損なわれていないことを示す。まれに,ケトーシスはケトン体を利用できないことを反映する。ケトーシスは,絶食中,長期間の運動後,および高脂肪食が摂取された場合には正常である。ケトーシスは新生児期,幼児期および妊娠期,脂質エネルギー代謝が特に活発な時期に発症しやすい。
ケトーシスの病理学的な要因としては,糖尿病,小児期のケトン性低血糖症,コルチコステロイド又は成長ホルモン欠乏症,アルコール又はサリチル酸塩による中毒症,およびいくつかの先天性代謝異常が挙げられる。
ケトン体の形成は,脂肪分解が増加した場合,例えば,インスリン欠乏(糖尿病,特にI型糖尿病)において,グルカゴン濃度が増加した場合,及び絶食状態にある場合に増加する。そのような場合,7mg/dl未満という正常な生理学的濃度は10倍以上に増加し得る。過去何年にもわたり,3-ヒドロキシ酪酸は,インスリン療法をモニターするための極めて信頼性の高いパラメータであることが証明されている。
低血糖症の患者でケトーシスが存在しないのは異常であり,高インスリン症又は脂肪エネルギー代謝の先天性異常の診断を示唆する。
従って,ケトン体は,特に糖尿病に関し興味深い診断標的である。よって,ケトン体,特に3-ヒドロキシ酪酸のためのロバストで敏感な検査系の必要性が現在も存在している。3-ヒドロキシ酪酸対アセトン又はアセト酢酸との比が通常3:1であるケトアシドーシスでは,この比は6:1〜12:1に増加する。好適な3-HBDHにより,3-ヒドロキシ酪酸の定量検査の開発が可能となるはずである。
驚くべきことに,アルカリゲネス・フェーカリス(Alcaligenes faecalis)由来の3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼの種々の突然変異型は,改善した性能,特に基質及び/又は補因子に対する熱安定性及び/又は親和性の増加を示すことが見出されている。実施例に示すように,野生型酵素と比較して基質及び/又は補因子に対する熱安定性及び/又は親和性を増加させる変異を可能にする多くの部位が野生型酵素に存在する。
現在,性能向上に特に好適であると考えられる部位の1つが配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸(下記参照)である。特に,基質及び/又は補因子(3-ヒドロキシ酪酸及び/又はカルバNAD)に対する親和性,そして場合により熱安定性を増加するために該アミノ酸をIle(253Ile),Ala(253Ala)又はCys(253Cys)に置換してもよい(表1A,1B及び4参照)。
また,配列番号1の位置18,19,33,38,39,62,125,143,148,170,175,187,216,233及び/又は234,特に少なくとも配列番号1の位置62,143,148,233及び/又は234に相当する1つ又は複数の位置における変異もまた好適であることが見出された(表1B,2A〜C及び4を参照)。変異型3-HBDHの性能は,上記の部位における変異を組み合わせることによってさらに改善できた(表2A〜D及び3参照)。これらの変異型の特に好適な例として,以下の変異を有するものが挙げられる(略語の定義は下記参照):
253Ile,233Lys,234Thr;又は,
253Ile,62Val,233Lys,234Thr;又は,
253Ile,62Val,147Arg,233Lys,234Thr;又は,
253Ile,39Gly,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr;又は,
253Ile,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr;又は,
62Val,111Leu,140Met,148Gly
(表2A〜D参照)。
驚くことに,253Ile,233Lys及び234Thrの変異を有する変異型(AFDH3と称する)は,253Ileのみに変異を有する変異型(AFDH2と称する)と比べて熱安定性の劇的な増加を示し(表2D参照),ここで,AFDH2は野生型(AFDH1と称する)と比べて熱安定性の増加を既に有している。更なる変異,つまり,18Arg,18Lys,18Glu,18Pro,19Gly,33Ala,33Leu,33Thr,38Lys,39Gly,62Phe,62Met,62Lys,62Arg,62Leu,62Val,125Gly,143Val,147Arg,148Gly,170Gly,175Thr,175Val,175Ile,187Phe及び216Valも,野生型3-HBDH又はAFDH2に比べて変異型の性能を向上させることが証明された(表2D,3,及び4参照)。
したがって,第1の態様において,本発明は,野生型3-HBDHに比べて改善した性能を有するアルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH)に関する。
3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-Hydroxybutyrate dehydrogenase:3-HBDH)(EC 1.1.1.30)は,オキシドレダクターゼファミリーに属し,具体的には3-ヒドロキシブタノエート(3-hydroxybutanoate)/3-ヒドロキシブチレート(3-hydroxybutyrate)/(R)-3-ヒドロキシブチレート((R)-3-hydroxybutyrate)/3-ヒドロキシ酪酸(3-hydroxybutyric acid:3-HB)から補因子としてのNAD又はその誘導体と共にアセト酢酸への立体特異的酸化を触媒する酵素である。

Figure 0006981979
この酵素クラスの体系的な名称は,(R)-3-ヒドロキシブタノエート:NAD+オキシドレダクターゼ((R)-3-hydroxybutanoate:NAD+ oxidoreductase)である。一般的に使用されている他の名称として,NAD+-beta-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(NAD+-beta-hydroxybutyrate dehydrogenase),ヒドロキシ酪酸オキシドレダクターゼ(hydroxybutyrate oxidoreductase),beta-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(beta-hydroxybutyrate dehydrogenase),D-beta-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(D-beta-hydroxybutyrate dehydrogenase),D-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(D-3-hydroxybutyrate dehydrogenase),D-(-)-3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(D-(-)-3-hydroxybutyrate dehydrogenase),beta-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(beta-hydroxybutyric acid dehydrogenase),3-D-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-D-hydroxybutyrate dehydrogenase),およびbeta-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(beta-hydroxybutyric dehydrogenase)がある。この酵素は,ケトン体およびブタノエート代謝の合成および分解に関与し,血液試料といった試料におけるケトン体を決定するために使用されることもある。
用語「野生型3-HBDH」は,典型的に天然に存在する3-HBDHに関する。グラム陰性菌アルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDHはE. coliにクローニングされ,その上,1996年に記載された(日本公開特許公報(1996)JP08070856A 19960319)。しかし,この酵素は非常に安定性が低い(結果,短い貯蔵寿命をもたらす)という特徴があり,これは生物工学,生物医学および診断用途において不利である。特に,前もって調製済みの酵素の使用が意図される場合,貯蔵寿命が短いことは,酵素の適用性に悪影響を与える。これには,通常,大規模で調製,貯蔵され,次いで例えば小バッチで市販される市販製品,例えば酵素調製物,キット,テストストリップなどが特に含まれる。また,基質および/又は補因子に対する酵素の親和性を高めることは明らかに望ましい。親和性および/又は安定性の増加は,生物工学的用途およびデバイスにおける酵素の性能を向上させる。一般的に受け入れられているアルカリゲネス・フェーカリスの典型的な野生型3-HBDHのアミノ酸配列を以下に配列番号1として示す。
「アルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH)」という用語は,アルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDHのアミノ酸配列,特に配列番号1のアミノ酸が,少なくとも1つの変異,すなわち1つ又は複数のアミノ酸置換,付加,欠失又はそれらの組み合わせ,特に少なくとも1つの置換によって置換されていることにより野生型3-HBDHとは異なっている3-HBDH酵素に関連する。
「野生型3-HBDHに比べて改善した性能を有する」という用語は,変異型酵素の性能がアルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDHと比較して改善されていることを意味する。変異型酵素がより高い性能,例えば,任意の条件において(保存後,特定のpH下,特定の緩衝液を用いる場合,選択された温度下,特定の補因子(例えば,カルバNAD)を用いる場合,特定の基質又は補因子の濃度下,等),3-HBをアセト酢酸に変換する際に活性がより高い場合,性能は改善されている。より高い性能は,特に,安定性(熱安定性など)および/又は1つ又は複数の基質/補因子(例えば,カルバNADおよび/又は3-HB)に対する親和性の増加であってもよい。好ましくは,変異型酵素が,所定の条件(例えば,保存,緩衝液の条件,温度,補因子又は基質の濃度)でストレスを受けた場合,これらの条件下でストレスを受けない活性と比較して,3-HBをアセト酢酸に変換する際により高い相対残存活性がある場合,及び/又は変異型酵素が,例えばより高い相対活性(すなわち,部分飽和濃度(subsaturation concentration)における活性/飽和濃度(saturation concentration)における活性)を有する場合,性能は改善されている。
アルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDHの配列を配列番号1として示す:
配列番号1(アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDH)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NADLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLVASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGGAAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSLDGGWTAR 260
図1は,野生型酵素の種々なドメイン(触媒中心および結合部位)を示す。これらのドメインに従って,この酵素のコア配列を決定することができる。以下に詳述するように,配列番号1の位置253に相当する位置に変異を有する3-HBDH変異型が特に有用である。したがって,当該位置を包含するアルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDHの拡張コア配列が確立され,配列番号2として示す:
配列番号2(アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDHの拡張コア配列(extended core sequence))
ADLSDAQATR DFIAKAAEAL GGLDILVNNA GIQHTAPIEE FPVDKWNAII ALNLSAVFHG 60
TAAALPIMQK QGWGRIINIA SAHGLVASVN KSAYVAAKHG VVGLTKVTAL ENAGKGITCN 120
AICPGWVRTP LVEKQIEAIS QQKGIDIEAA ARELLAEKQP SLQFVTPEQL GGAAVFLSSA 180
AADQMTGTTL SL 192
したがって,天然に存在する野生型3-HBDHの好ましい例は,図1において,そして配列番号1として上述したとおりである。
1つ又は複数の変異が野生型配列,特に配列番号1の配列に導入される場合,変異型3-HBDHが得られる。本発明の変異型3-HBDHに関し,この変異型は機能的に活性であり,野生型3-HBDHと比較して改善された性能を示すことが注目される。これは,この変異型が3-HBのアセトアセテートへと変換する酵素の機能を維持していることを意味する。さらに,好ましくは,基質および/又は補因子に対する安定性および酵素親和性の少なくとも1つが増大する。この変異体は,1つ又は複数のアミノ酸置換,付加および/又は欠失,特に少なくとも1つ以上の置換により,野生型3-HBDHと異なる。
本発明にかかる変異型3-HBDHの配列は,(場合により本明細書で特定される置換に加えて)1つ又は複数のアミノ酸置換,欠失又は付加,特に1つ又は複数の置換,特に1つ又は複数の保存的アミノ酸置換,を含む。
本発明の一実施形態では,本発明にかかる変異型3-HBDHは,1つ又は複数のアミノ酸置換,特に限定された数の置換(例えば,50,40,30,20,特に10アミノ酸以内の置換)を含む。適切な置換は,実施例,特に表に示される。実施例において3-HBDHの性能を向上するのに適切であると同定された全ての置換は,本発明において,単独で又は互いに組み合わせて使用してもよく,および/又は更なる置換,例えば,保存的置換を含んでもよい。「保存的アミノ酸置換」は,類似の側鎖を有するが異なる残基による残基の置換を指し,したがって,典型的には,ポリペプチド中のアミノ酸が同一又は類似と規定されるクラスのアミノ酸による置換を含む。非限定的な例示として,脂肪族側鎖を有するアミノ酸は,アラニン,バリン,ロイシンおよびイソロイシンなどの別の脂肪族アミノ酸で置換され;ヒドロキシル側鎖を有するアミノ酸は,セリンおよびトレオニンなどのヒドロキシル側鎖を有する別のアミノ酸で置換され;芳香族側鎖を有するアミノ酸は,フェニルアラニン,チロシン,トリプトファン,ヒスチジンなどの芳香族側鎖を有する別のアミノ酸で置換され;塩基性側鎖を有するアミノ酸は,リシンおよびアルギニンなどの塩基性側鎖を有する別のアミノ酸で置換され;酸性側鎖を有するアミノ酸は,アスパラギン酸又はグルタミン酸などの酸性側鎖を有する別のアミノ酸で置換され;疎水性又は親水性アミノ酸は,別の疎水性又は親水性アミノ酸でそれぞれ置換される。保存的アミノ酸置換の例は,以下に列挙されるものを含む:
元の残基 保存的置換
Ala,Leu,Val,Ile 別の脂肪族(Ala,Leu,Val,Ile)
別の非極性(Ala,Leu,Val,Ile,Gly,Met)

Gly,Met 別の非極性(Ala,Leu,Val,Ile,Gly,Met)

Asp,Glu 別の酸性(Asp,Glu)

Lys,Arg 別の塩基性(Lys,Arg)

Asn,Gln,Ser,Thr 別の極性(Asn,Gln,Ser,Thr)

His,Tyr,Trp,Phe 別の芳香族(His,Tyr,Trp,Phe)

Cys,Pro 無し
本発明の一実施形態では,本発明にかかる変異型3-HBDHは,1つ又は複数のアミノ酸付加,特に小さい(例えば,50,40,30,20,特に10アミノ酸以内の置換まで)内部アミノ酸付加を含んでもよい。あるいは,この変異型3-HBDHを組み合わせて,本発明の変異体3-HBDHを含む融合タンパク質にすることによって,付加を達成してもよい。
融合タンパク質は,もともと別個の2つ以上のタンパク質又はペプチドの結合によって生成されるタンパク質である。この手順により,元のタンパク質のそれぞれに由来する機能的特性を有するポリペプチドが得られる。したがって,3-HBDHの意図する用途に応じ,これにさらなるペプチド又はタンパク質を組み合わせて融合タンパク質としてもよい。タンパク質は,リンカー又はスペーサーを介して融合してもよく,これによりタンパク質が独立して折り畳まれ,期待どおりに挙動する可能性が高まる。特に,リンカーがタンパク質の精製を可能にする場合,タンパク質又はペプチド融合物内のリンカーは,2つの別個のタンパク質の遊離を可能にするプロテアーゼ又は化学物質の切断部位を用いて合成してもよい。二量体又は多量体融合タンパク質は,人工タンパク質二量体又は多量体化を誘導するペプチドドメイン(例えば,ストレプトアビジン又はロイシンジッパー)を元のタンパク質に融合する遺伝子操作によって製造することができる。融合タンパク質は,毒素又は抗体を付着させて製造することもできる。他の融合として,例えば脂質化シグナル,配列,分泌シグナル配列,グリコシル化シグナル配列,転座シグナルペプチドといったシグナル配列の付加を加えることが挙げられる。
好ましくは,本発明の融合タンパク質はタグを含む。タグは,様々な目的,例えば,精製を容易にするため,タンパク質の適切な折りたたみを補助するため,タンパク質の沈殿を防止するため,クロマトグラフィー特性を変更するため,タンパク質を修飾するため,又はタンパク質を標識するためにタンパク質に結合される。タグの例として,Argタグ,Hisタグ,Strepタグ,Flagタグ,T7タグ,V5ぺプチドタグ,GSTタグ及びc−Mycタグが挙げられる。
本発明の一実施形態では,本発明にかかる変異型3-HBDHは,1つ又は複数のアミノ酸欠失,特にN−及び/又はC−末端の欠失,特に配列番号2における配列番号1の一部の欠失を含む。欠失は小さく(例えば,50,40,30,20,特に10アミノ酸以内)trもよい。
別の実施形態では,本発明の変異型3-HBDHの配列は,好ましくは,本明細書に特定される置換に加えて,上で定義した1つ又は複数の欠失,置換又は付加の組合せを含んでもよい。
本発明の好ましい実施態様では,変異型3-HBDHは,配列番号1(アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDH;野生型3-HBDH)又は配列番号2のアミノ酸配列(野生型3-HBDHの拡張コア配列)と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を含む。
本明細書で使用する用語「少なくとも80%同一」又は「少なくとも80%の配列同一性」は,本発明にかかる変異型3-HBDHの配列が,100アミノ酸の範囲において,少なくとも80アミノ酸残基が対応する野生型配列の配列と同一であるアミノ酸配列を有することを意味する。他のパーセンテージの配列同一性も同様に定義される。
本発明の配列同一性は,例えば,配列比較形態の配列アラインメントの方法によって決定することができる。配列アライメントの方法は,当該分野で周知であり,例えば,Pearson and Lipman(1988)に記載されている様々なプログラムおよびアライメントアルゴリズムを含む。さらに,NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)は,配列解析プログラムblastp, blastn, blastx, tblastn及びtblastxと関連して使用するために,国立バイオテクノロジー情報センター(NCBI,Bethesda,MD)およびインターネット上のいくつかのソースから入手可能である。配列番号1のアミノ酸配列に対する本発明にかかる変異型の同一性のパーセンテージは,典型的には,標準設定のNCBI Blast blastpを用いて特徴付けられる。あるいは,配列同一性は,標準設定のGENEiousソフトウェアを使用して決定してもよい。アラインメントの結果は,例えば,Software Geneious(バージョンR8)から,アラインメントタイプとしての自由端ギャップを有するグローバルアラインメントプロトコルおよびコストマトリックスとしてのBlosum62を使用して,導き出すことができる。
上で詳述するように,一実施形態における本発明の変異型3-HBDHは,配列番号1又は2のアミノ酸配列と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を含む。好ましい実施態様では,変異型3-HBDHは,配列番号1又は2のアミノ酸配列のいずれかと少なくとも85%,90%,95%,96%,97%,98%,又は99%同一なアミノ酸配列を含むか又はそれから成る。配列同一性は,上記のように決定できる。
別の好ましい実施態様では,本発明の変異型3-HBDHは,野生型3-HBDHに対し少なくとも1つのアミノ酸置換を有し,ここで,配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile),Ala(253Ala)又はCys(253Cys),特にIle(253Ile)に置換されている。実施例において,配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸の置換は安定性,及び/又は基質及び/又は補因子に対する親和性が増大していることが示されている。
さらに,配列番号1の位置253に相当する位置の置換は,酵素をさらに最適化するために様々な他の置換と組み合わせることができることが示された。野生型に対し単一および複数の変異についてのそれぞれ表1A〜Cおよび表2〜4に示されるように,位置253をIleで置換すること(253Ile)が,熱安定性および基質に対する親和性を高めるために特に好適である。様々な温度および異なる条件(緩衝液,pH)でのプレインキュベーション後に性能が改善されることが証明された。野生型(ロイシン)のアミノ酸が非常に類似するアミノ酸(イソロイシン)で置換されていても好ましい効果が出ることは特に驚くべきことである。これらのアミノ酸は互いに立体異性体である。いずれのアミノ酸も非極性かつ疎水性であり,同じ分子量を有する。
配列番号1の位置253に相当する位置のロイシンを非極性のアミノ酸であるアラニン又は非荷電,非酸性,非極性かつ親水性のアミノ酸であるシステインにより置換すると,基質および補因子に対する親和性が非常に増加した(表1B参照)。導入されたアミノ酸AlaとCys間の化学的相違を考えると,この結果も予想外で驚くべきものである。
本発明の非常に好ましい実施態様は,野生型3-HBDHに比べて改善した性能を有するアルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH)に関する,ここで,該変異型は,配列番号1のアミノ酸配列(アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDH;野生型3-HBDH)又は配列番号2のアミノ酸配列(野生型3-HBDHの拡張コア配列)と少なくとも80%同一なアミノ酸配列を含み,かつ
該変異型は,野生型3-HBDHに対し少なくとも3つのアミノ酸置換を有し,ここで,
配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile),Ala(253Ala)又はCys(253Cys)に置換されている,
配列番号1の位置233に相当する位置のアミノ酸がSer(233Ser),Ile(233Ile),Ala(233Ala),Pro(233Pro),Arg(233Arg),Thr(233Thr),Lys(233Lys),又はCys(233Cys)に置換されている,及び
配列番号1の位置234に相当する位置のアミノ酸がThr(234Thr)に置換されている。
より好ましくは,非常に好ましい変異型では,配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile)に置換されている及び/又は配列番号1の位置233に相当する位置のアミノ酸がLys(233Lys)に置換されている,そして,場合により該変異型は,配列番号1の位置18,19,33,38,39,62,125,143,148,170,175,187及び/又は216,特に少なくとも配列番号1の位置62,143及び/又は148に相当する1つ又は複数の位置に少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を有する。
上で詳述したように,酵素の性能を向上させるために,配列番号1における1つ又は複数のさらなる位置のアミノ酸を代替的又は追加的に置換してもよいことが示された。したがって,本発明の更なる実施態様では,本発明の変異型は,配列番号1の位置18,19,33,38,39,62,125,143,148,170,175,187,216,233及び/又は234,少なくとも配列番号1の位置62,143,148,233及び/又は234,特に少なくとも配列番号1の位置62,143,148,233及び234に相当する1つ又は複数の位置に少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を有する。これらの位置の置換は,位置253の置換,特に253Ile,253Ala,253Cys,特に253Ileの置換と組み合わせてもよい(実施例も参照のこと)。
本発明の変異型3-HBDHについて置換の位置並びにそれらの組み合わせとして特に好適な例を以下に挙げる:
配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile),Ala(253Ala)又はCys(253Cys),特にIle(253Ile)に置換されている;
配列番号1の位置18に相当する位置のアミノ酸がArg(18Arg),Lys(18Lys),Glu(18Glu),又はPro(18Pro)に置換されている;
配列番号1の位置19に相当する位置のアミノ酸がGly(19Gly)に置換されている;
配列番号1の位置33に相当する位置のアミノ酸がAla(33Ala),Leu(33Leu),又はThr(33Thr)に置換されている;
配列番号1の位置38に相当する位置のアミノ酸がLys(38Lys)に置換されている;
配列番号1の位置39に相当する位置のアミノ酸がGly(39Gly)に置換されている;
配列番号1の位置62に相当する位置のアミノ酸がPhe(62Phe),Met(62Met),Lys(62Lys),Arg(62Arg),Leu(62Leu),又はVal(62Val),特にVal(62Val)に置換されている;
配列番号1の位置125に相当する位置のアミノ酸がGly(125Gly)に置換されている;
配列番号1の位置143に相当する位置のアミノ酸がVal(143Val)に置換されている;
配列番号1の位置148に相当する位置のアミノ酸がGly(148Gly)に置換されている;
配列番号1の位置170に相当する位置のアミノ酸がGly(170Gly)に置換されている;
配列番号1の位置175に相当する位置のアミノ酸がThr(175Thr),Val(175Val),又はIle(175Ile)に置換されている;
配列番号1の位置187に相当する位置のアミノ酸がPhe(187Phe)に置換されている;
配列番号1の位置216に相当する位置のアミノ酸がVal(216Val)に置換されている;
配列番号1の位置233に相当する位置のアミノ酸がSer(233Ser),Ile(233Ile),Ala(233Ala),Pro(233Pro),Arg(233Arg),Thr(233Thr),Lys(233Lys),又はCys(233Cys),特にLys(233Lys)に置換されている;及び/又は
配列番号1の位置234に相当する位置のアミノ酸がThr(234Thr)に置換されている。
本発明の特に好ましい実施態様では,変異型3-HBDHは,少なくとも以下の変異を有するかあるいは以下の変異のみ有する:
253Ile;
253Ile,233Lys,234Thr;
253Ile,62Val,233Lys,234Thr;
253Ile,62Val,147Arg,233Lys,234Thr;
253Ile,39Gly,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr;
253Ile,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr;又は
62Val,111Leu,140Met,148Gly;
特に,ここで,前記変異型3-HBDHは,少なくとも253Ile,62Val,143Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thrの変異を有するかあるいはこれらの変異のみ有し,場合により
19Gly;
170Gly;
125Gly,187Phe;
18Glu,33Leu;
33Leu,125Gly,187Phe;
33Leu,125Gly,187Phe,216Val;
18Glu,187Phe;
33Leu,125Gly,175Val,187Phe;
175Val,216Val;
175Val,187Phe,216Val;
19Gly,125Gly, 187Phe;
125Gly,175Thr,187Phe;
19Gly,33Leu;
19Gly,175Ile;
19Gly,175Thr;
170Gly,175Thr;
18Glu,125Gly,187Phe;
33Leu,125Gly,175Thr,187Phe;
33Leu,125Gly,175Ile,187Phe;
33Leu,125Gly,170Gly,187Phe;
18Glu,175Ile,187Phe;
33Leu,125Gly,175Val,187Phe;
33Leu,125Gly,175Val,187Phe,216Val;
33Leu,125Gly,175Thr,187Phe;又は
33Leu,38Lys,39Gly,125Gly,175Val,187Pheとの組み合わせとして有する。
本発明の好ましい実施態様では,変異型3-HBDHは,配列番号1〜16のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも85%,90%,95%,96%,97%,98%,又は99%同一なアミノ酸配列を含む又はから成り,特に,ここで,前記変異型3-HBDHは,配列番号3〜16からなる群より選択される配列を含む又はから成る。
上記に詳述したように,配列番号1および2の配列は,それぞれ野生型3-HBDHおよびそのフラグメントに関連する。配列番号3〜16の配列は,非常に好ましい変異型の配列である。実施された変異型および置換物の配列は,「配列表」に示されている。配列同一性は,上記のように決定できる。
本発明の好ましい実施態様では,野生型3-HBDHに比べて改善した性能は,
野生型3-HBDHに比べて増加した安定性,特に熱安定性;及び/又は
野生型3-HBDHに比べて増加した基質親和性,特に3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性;及び/又は
野生型3-HBDHに比べて増加した補因子親和性,特にNAD又はその誘導体に対する親和性,ここで特に前記誘導体はカルバNADである。
用語「野生型3-HBDHに比べて増加した安定性,特に熱安定性」は,変異型3-HBDHがある条件,特に高温で(酵素)活性の損失を受けにくいことを意味する。触媒としての完全な能力を実現するための,変性機構の回避を含む酵素の安定化は,バイオテクノロジーにおける重要な目標である。酵素の安定化は,酵素を適用する件数の増加に伴い顕著に重要である。安定性の増加は,持続的なユーザビリティ(例えば,より長い保管時間,より長い時間の使用性など)を可能にする。野生型に対する変異型の安定性の増加は,例えば,一定の条件(高温,乾燥,緩衝液,又は塩等)下で保存又は暴露された後に,両方の酵素(野生型および変異型)の残存活性(絶対的残存活性)を比較することによって決定することができる。あるいは,変異型が野生型と比較して,例えば,3-HBをアセト酢酸に変換する相対的残存活性がより高い場合,安定性が増加される。相対的残存活性は,所与の条件(例えば,保存時間,温度)で保存した後の残存又は残留酸性度を保存前の初期活性と比較することによって決定することができる。
酵素活性という用語およびその測定は,当業者に周知である。酵素活性は,一般に,時間当たりの基質の変換量として定義される。酵素活性のSI単位は,カタール(1カタール=1mol・s-1)である。より実用的かつ一般的に使用される値は,酵素単位(U)=1μmol・min-1である。1Uは16.67ナノカータルに相当し,1分当たりの1マイクロモルの基質の変換を触媒する酵素の量として定義される。酵素の比活性は,総タンパク質1ミリグラムあたりの酵素活性)である(μmol・min-1mg-1で表される)。
酵素活性は,基質又は補因子の消費又は経時的な生成物の形成のいずれかを測定するアッセイにおいて決定してもよい。基質および生成物の濃度を測定する多数の異なる方法が存在し,多くの酵素は,当業者に知られているいくつかの異なる方法でアッセイすることができる。本発明では,問題の3-HBDHは,例えば,3-ヒドロキシ酪酸塩および補因子(例えば,NAD又はその誘導体,例えば,カルバNAD)と共にインキュベートされ,そして補因子の変換(NADからNADH又はカルバNADからカルバNADHへの変換)がモニターされる。モニタリングは,例えば,340nmでの吸光度を測定することによって行うことができる。得られた1分間当たりの吸光度の変化(dE/min)が酵素活性を表す。詳細は実施例2を参照のこと。
本発明の好ましい実施態様では,変異のない3-HBDHに比べて増加した変異型3-HBDHの安定性は,それぞれの野生型3HBDHの半減期(t1/2(野生型))に対する変異型の半減期(t1/2(変異型))の増加として表してもよい。酵素の半減期(t1/2)は,元の活性(t=0での活性)の50%が失われ,残りの活性が50%になる時間の長さを示す。従って,増加した安定性は,それぞれの野生型に比べて増加した変異型の半減期をもたらす。増加した安定性は,t1/2(変異型)/t1/2(野生型)として決定してもよい。半減期のパーセンテージの増加は,[t1/2(変異型)/t1/2(野生型)−1]100として決定してもよい。
本発明の非常に好ましい実施形態では,それぞれの変異のない3-HBDHに比べて増加した変異型3-HBDHの安定性は,ストレスインキュベーション/保存(例えば,64℃で30分間あるいは実施例に記載の他の任意の条件)前の初期活性に対する,ストレスインキュベーション後の残存活性として決定し表すことができる(実施例参照)。このために,酵素反応は,(例えば室温にて340nmで5分間)モニターし,時間当たりの吸光度の変化(例えば,dE/min)を各試料について計算してもよい。ストレスを与えた試料について得られた値は,それぞれのストレスを与えない試料(100%活性として設定された値)と比較し,%活性((dE/min(ストレスを与えた試料)/dE/min(ストレスを与えない試料)100)として計算してもよい。したがって,変異型の値が野生型酵素で得られた値より高い場合,熱安定性の改善を表す。[変異型の%残存活性]-[野生型%残存活性]>0であれば,安定性は増加している。あるいは,変異型の残存活性は活性の百分率としても表してもよく,以下のように計算することができる:[変異型の%残存活性]/[野生型の%残存活性]100%。結果値が>100%である場合,野生型に対する変異型の安定性は増加している。安定性を決定するための特に好適な検査は,実施例2に詳細に記載されている。これに従って,安定性は,残存活性として表してもよく,[dE/min(ストレスを与えた試料)]/dE/min(ストレスを与えない試料)]100)として計算してもよい。更なる詳細は実施例2に記載されている。野生型酵素を用いて得られた値より変異型を用いて得られた値が高い場合,変異型の安定性の増加を表す。
好ましくは,安定性は,少なくとも10%,20%,30%又は40%,好ましくは少なくとも50%,75%又は100%,更により好ましくは少なくとも125%,150%,175%又は200%,特に250%,そして最も好ましくは300%増加する。
また,より高い温度で酵素反応を実施することは商業的に利点がある。したがって,変異型の熱安定性を高めることが好ましい。これは,温度上昇に対する変異型の耐性が野生型に比べて高いことを意味する。熱安定性の増加は,特に実施例3等の実施例に示すように決定してもよい(表2A〜D)。一般に,変異型および野生型酵素は,高温(例えば,64℃又は68℃又は75℃といった50℃より高い温度)で一定の時間(例えば,10分又は30分)プレインキュベートした後,変異型が3-HBをアセト酢酸に変換する残存活性を野生型酵素の残存活性と比較する。変異型の残存活性が野生型よりも高い場合,変異型は増加した熱安定性を有する。
増加した熱安定性を決定するための適切な方法は,実施例に詳述されている。ストレス条件についての例示的な条件では,60〜90℃(例えば,64℃又は68℃又は75℃)で30分プレインキュベートした後,62.22 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 4.15 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9,0又は150 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5を用いて検査する。
用語「野生型3-HBDHに比べて増加した基質親和性,特に3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性」は,アセト酢酸へと変換される基質3-ヒドロキシ酪酸(3-hydroxybutyric acid)/3-ヒドロキシ酪酸(3-hydroxybutyrate)/3-ヒドロキシブタノエート(3-hydroxybutanoate;3-HB)に対する変異型3-HBDHの親和性が増加することを意味する。測定は,酵素反応を(例えば室温にて340nmで5分間)モニターし,各試料についてdE/minを計算してもよい。例えば変異型が基質,特に3-HBに対してより高い絶対的又は相対的な親和性を有するならば,野生型に対する変異型の親和性は増加している。野生型に対する変異型の親和性は,両方の酵素(野生型および変異型)の絶対的親和性を比較すること(絶対値の比較)によって決定することができ,活性の割合((dE/min(変異型)/dE(野生型))100)(%)として計算してもよい。あるいは,野生型に対する変異型の親和性は,両方の酵素(野生型および変異型)の相対的親和性を比較すること(相対値の比較)によって決定することもできる。野生型又は変異型の相対的親和性は,飽和基質濃度における親和性に対する,部分飽和基質濃度における親和性を設定することによって決定してもよい。実施例2〜4で詳述したように,3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性は,1.94 mM 3-ヒドロキシ酪酸(更なる例示的な条件:4.15 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0)又は5 mM 3-ヒドロキシ酪酸(更なる例示的な条件:5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5)を用い,基質の量を減少させた(すなわち,部分飽和濃度における)活性アッセイにおいて決定してもよい。親和性を決定するための特に好適な検査は,実施例2に詳細に記載されている。これに従って,親和性は,相対活性として表してもよく,[dE/min(部分飽和基質濃度)]/[dE/min(飽和基質濃度)]100として計算してもよい。更なる詳細は実施例2に記載されている。野生型酵素を用いて得られた値より変異型を用いて得られた値が高い場合,変異型の親和性の増加を表す。
増加した親和性は,より低いKm値と相関する。ミカエリス定数Kmは,酵素反応速度が最大値の半分になる基質濃度であり,酵素に対する基質の親和性の逆数である。
用語「野生型3-HBDHに比べて増加した補因子親和性,特にNAD又はその誘導体に対する親和性,特にここで誘導体はカルバNADである」は,3-HBをアセト酢酸へと変換するのに必要な補因子(NAD又はその誘導体,特にカルバNAD)に対する変異型の親和性が増加することを意味する。実施例2〜4で詳述したように,補因子に対する親和性は,0.032 mM cNAD(更なる例示的な条件:62.22 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0)又は0.5 mM cNAD(更なる例示的な条件:150 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5)を用い,補因子の量を減少させた(すなわち,部分飽和未満)活性アッセイにおいて決定してもよい。基質親和性に関して説明した上記の詳細は,補因子に対する親和性にも同様に当てはまる。親和性を決定するための特に好適な検査は,実施例2に詳細に記載されている。
特に,本発明の変異型3-HBDHは,野生型3-HBDHに比べて少なくとも2倍増加した安定性,好ましくは少なくとも3倍増加した安定性,好ましくは少なくとも4倍増加した安定性,より好ましくは少なくとも5倍増加した安定性を有することを特徴とする;及び/又は該変異型3-HBDHは,野生型3-HBDHに比べて増加した基質及び/又は補因子親和性,特に(i)3-ヒドロキシ酪酸及び/又は(ii)ニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はその機能的に活性な誘導体に対する親和性を有し,並びに/あるいは,ここで特に前記基質及び/又は補因子親和性は,少なくとも5%,とりわけ特に少なくとも10%,さらにとりわけ特に少なくとも15%又は20%増加していることを特徴とする。
別の態様では,本発明は,本発明の変異型3-HBDHをコードする核酸に関する。
本明細書で使用する用語「核酸」は,一般に,本発明の変異型3-HBDHをコードし,可変長であってもよい任意のヌクレオチド分子に関する。本発明の核酸の例としては,プラスミド,ベクター,又は標準的な分子生物学手順(例えば,イオン置換クロマトグラフィーなど,しかしこれに限定されない)によって単離できる任意の種類のDNAおよび/又はRNA断片が挙げられるが,これらに限定されない。本発明の核酸は,特定の細胞又は生物の形質転換又は形質導入のために使用してもよい。
本発明の核酸分子は,クローニング又は化学合成技術によって得られるか又はそれらの組み合わせによって製造されるmRNA又はcRNAのようなRNAの形態であってもよく,あるいは例えばcDNAおよびゲノムDNAを含むDNAの形態であってもよい。DNAは,三本鎖,二本鎖,又は一本鎖であってもよい。一本鎖DNAは,センス鎖としても知られているコード鎖であってもよく,又はアンチセンス鎖とも呼ばれる非コード鎖であってもよい。本明細書で使用される核酸分子は,とりわけ,一本鎖および二本鎖DNA,一本鎖と二本鎖RNAの混合物であるDNA,ならびに一本鎖と二本鎖領域の混合物であるRNA,一本鎖又はより典型的には二本鎖又は三本鎖あるいは一本鎖と二本鎖領域の混合物であり得るDNAおよびRNAを含むハイブリッド分子であってよい。さらに,本明細書で使用される核酸分子は,RNA又はDNAあるいはRNAとDNAの両方を含む三本鎖領域を意味する。
さらに,核酸は,1つ又は複数の修飾された塩基を含んでもよい。また,このような核酸は,生理学的環境におけるそのような分子の安定性および半減期を増加させるために,リボース−リン酸骨格などに修飾を含んでもよい。したがって,安定性又は他の理由のために修飾された骨格を有するDNA又はRNAは,本明細書で意図される特徴の「核酸分子」である。さらに,例を2つだけを挙げると,イノシンのような異常な塩基又はトリチル化塩基のような修飾された塩基を含むDNA又はRNAも,本発明の文脈内の核酸分子である。当業者に知られている多くの有用な目的に役立つ,DNAおよびRNAに対して非常に様々な改変がなされていることが理解されよう。本明細書で使用される核酸分子という用語は,核酸分子の化学的,酵素的又は代謝的に修飾された形態,ならびにとりわけ単純および複雑な細胞を含めウイルスおよび細胞に特徴的なDNAおよびRNAの化学的形態を包含する。
さらに,本発明の変異型3-HBDHをコードする核酸分子は,標準的なクローニング技術のような標準技術を用いて,任意の所望の配列,例えば調節配列,リーダー配列,異種マーカー配列又は異種コード,と機能的に結合して融合タンパク質を作成し得る。
本発明の核酸は,通常,インビトロ又は培養中の細胞中で,エンドヌクレアーゼおよび/又はエキソヌクレアーゼおよび/又はポリメラーゼおよび/又はリガーゼおよび/又はリコンビナーゼによる核酸の操作又は当業者に既知の他の核酸を産生する方法によって形成することができる。
本発明の核酸は,宿主細胞中で核酸の発現を促進することができるプロモーター配列に作動可能に連結されて発現ベクターに含まれていてもよい。
本明細書中で使用される場合,用語「発現ベクター」は,一般に,目的のタンパク質を細胞において発現させるために使用され得る任意の種類の核酸分子を指す(本発明の核酸に関する上述の詳細も参照)。特に,本発明の発現ベクターは,哺乳動物細胞,細菌細胞および酵母細胞を含むがこれらに限定されない特定の宿主細胞においてタンパク質を発現させるのに適する,当業者に公知の任意のプラスミド又はベクターであり得る。また,本発明の発現構築物は,本発明の3-HBDHをコードし,その後発現を確実にするためにそれぞれのベクターにクローニングするために使用される核酸であってもよい。タンパク質発現のためのプラスミドやベクターは,当技術分野において周知であり,Promega(Madison,WI,USA),Qiagen(Hilden,Germany),Invitrogen(Carlsbad,CA,USA),又はMoBiTec(Germany)を含む多様な供給者から商業的に購入することができる。タンパク質発現の方法は,例えば,Sambrook et al.,2000(Molecular Cloning:A laboratory manual,Third Edition)に記載されるように当業者に周知である。
ベクターは,複製起点,1つ又は複数の治療遺伝子および/又は選択マーカー遺伝子,およびコードされるタンパク質の転写,翻訳および/又は分泌を導く制御エレメントなどの当該分野で公知の他の遺伝エレメントなど,宿主細胞における複製を可能にする核酸配列を追加的に含んでもよい。ベクターは,細胞を形質導入,形質転換又は感染させるために使用し,それにより,細胞に当該細胞固有のもの以外の核酸および/又はタンパク質を発現させてもよい。ベクターは,場合により,ウイルス粒子,リポソーム,タンパク質コーティングなどの,核酸の細胞への侵入を助けるための材料を含む。標準的な分子生物学技術によってタンパク質を発現するための多数のタイプの適切な発現ベクターが当技術分野で知られている。そのようなベクターは,昆虫,例えば,バキュロウイルス発現,又は酵母,真菌,細菌又はウイルス発現系を含む従来のベクタータイプの中から選択される。当技術分野において多数のタイプが知られている他の適切な発現ベクターも,この目的のために使用することができる。そのような発現ベクターを得るための方法は周知である(例えば,Sambrook et al.,上記参照)。
上記に詳述したように,本発明の変異型3-HBDHをコードする核酸は,タンパク質の発現を確実にするために,宿主細胞内でタンパク質の発現を駆動するのに適した配列に作動可能に連結される。しかし,請求された発現構築物が,タンパク質の発現を確実にするために適切な発現ベクターにクローニングされる中間産物を表し得ることも本発明の範囲内である。本発明の発現ベクターは,ポリアデニル化シグナル,スプライスドナー及びスプライスアクセプターシグナル,介在配列,転写エンハンサー配列,翻訳エンハンサー配列,薬剤耐性遺伝子又はそれに類するものを含むがこれらに限定されないすべての種類の核酸を更に含んでもよい。場合により,薬剤耐性遺伝子は,細胞周期特異的又は細胞周期非依存性のいずれであってもよい内部リボソーム侵入部位(IRES)に作動可能に連結されてもよい。
本明細書中で使用される用語「作動可能に連結された」とは,一般に,遺伝子エレメントが,意図する目的,例えば,転写がプロモーターによって開始され,本発明のタンパク質をコードするDNA配列が進行すべく,共同的に機能するように配置されることを意味する。すなわち,RNAポリメラーゼは,融合タンパク質をコードする配列をmRNAに転写し,その後mRNAをスプライシングしてタンパク質に翻訳する。
本発明の文脈において使用される用語「プロモーター配列」は,一般に下流のコード配列に作動可能に連結された任意の種類の調節DNA配列,ここで,該プロモーターは,RNAポリメラーゼに結合し,細胞内でコードされたオープンリーディングフレームの転写を開始することにより,当該下流コード配列の発現を促進することが可能であるもの,を指す。本発明のプロモーター配列は,当業者に公知の任意の種類のプロモーター配列であり得て,構成的プロモーター,誘導性プロモーター,細胞周期特異的プロモーター,および細胞型特異的プロモーターを含むが,これらに限定されない。
本発明の別の態様は,本発明の変異型3-HBDH又は本発明の核酸を含む細胞に関する。本発明の一実施形態では,変異型を含む細胞が本発明の文脈で使用される。細胞は,好ましくは宿主細胞である。本発明の「宿主細胞」は,組換えDNA技術における適用に適した任意の種類の生物であってよく,限定されないが,1つ又は複数の組換えタンパク質を発現するのに適したあらゆる種類の細菌および酵母株を含む。宿主細胞の例として,様々なBacillus subtilis又はE. coli株が挙げられる。種々のE. coli細菌宿主細胞は,当業者に公知であり,限定されるものではないが,DH5−alpha,HB101,MV1190,JM109,JM101,又はXL−1 blue等の株が挙げられ,これらは,Stratagene(CA,USA),Promega(WI,USA)又はQiagen(Hilden,Germany)を含む多様な供給元から商業的に購入することができる。特に好適な宿主細胞,つまりE. coli XL-1Blue細胞を実施例に記載する。宿主細胞として使用できるBacillus subtilis株の例として,1012野生株:leuA8 metB5 trpC2 hsdRM1 and 168 Marburg:trpC2(Trp-)株が挙げられ,これらは,例えば,MoBiTec(Germany)から商業的に購入することができる。
本発明による宿主細胞の培養は,当業者に知られている日常的な手順である。すなわち,本発明の変異型3-HBDHをコードする核酸を,適切な宿主細胞に導入して,組換え手段によってそれぞれのタンパク質を産生することができる。これらの宿主細胞は,任意の種類の好適な細胞,好ましくは容易に培養することができるE. coliのような細菌細胞であり得る。第1のステップでは,このアプローチは,適切なプラスミドベクターへそれぞれの遺伝子をクローニングすることを含んでもよい。プラスミドベクターは遺伝子クローニングのために広く使用されており,コンピテントにされた細菌細胞に容易に導入,すなわち形質転換することができる。タンパク質がそれぞれの宿主細胞中で発現された後,細胞を化学的又は機械的細胞溶解のいずれかによって破壊することができることは当業者に周知であり,限定されるものではないが,例えば,低張塩処理,界面活性剤処理,均質化,又は超音波処理が挙げられる。
本発明の別の態様では,試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定する方法であって,
a)3-HBDHの活性を促す条件下で該試料を本発明の変異型3-HBDHに接触させること;
b)3-ヒドロキシ酪酸をニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はその機能的に活性な誘導体と反応させること;および
c)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定すること;
により,前記試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定することを含む,方法に関する。
上記の方法は,以下のスキームによる3-HBからアセトアセト酢酸への変換を触媒するために3-HBDHが使用できるという事実に基づく:

Figure 0006981979
本発明の第1のステップでは,試料を本発明の3-HBDHに接触させる。試料と変異型3-HBDHとの接触は,直接的(例えば,液体アッセイ内)であってもよく、あるいは間接的(例えば,(検体を含む)試料の一部のみが3-HBDHと接触しているセンサ系内)であってもよい。
接触は,3-HBDHの活性を促す条件下,すなわち酵素が3-HBをアセト酢酸への変換を可能にする条件下で実施すべきであることは明らかである。インキュベーションステップは,約5秒〜数時間,好ましくは約10秒〜約10分の間で様々であってもよい。しかし,インキュベーション時間は,アッセイ形式,溶液の容量,濃度などに依存する。通常,アッセイは周囲温度又は他の検査様式に必要な温度(例えば30℃又は37℃といった25℃〜38℃の範囲)で実施されるが,このような温度範囲を超えて,例えば10℃〜40℃の温度で実施してもよい。
場合により,アッセイを容易にするために,酵素は,試料との接触の前に支持層に固定(fix)又は固定化(immobilize)することができる。支持層の例として,例えば,マイクロタイタープレート,ガラス顕微鏡スライド又はカバースリップ,スティック,ビーズ,又はマイクロビーズ,膜(例えば,検査ストリップに使用される)およびバイオセンサのレイヤの形態のガラス又はプラスチックが挙げられる。
試料は,3-HBを含むと考えられる任意の試料,特に,対象由来の試料であってよい。用語「対象由来の試料」は,任意の所与の対象,特にヒトから単離されたあらゆる生物学的流体物,排泄物および組織を含む。本発明の文脈において,そのような試料として,血液,血清,血漿,乳頭吸引液,尿,精液,精液流体物,精漿,前立腺液,排泄物,涙,唾液,汗,生検材料,腹水,脳脊髄液,乳汁,リンパ液,気管支試料および他の洗浄物試料,又は組織抽出試料が挙げられるがそれらに限定されない。好ましくは,対象は(ヒトを含む)動物,より好ましくは哺乳動物,さらにより好ましくはヒトである。好ましくは,試料は体液,特に血液試料又は尿試料である。
典型的には,血液試料は本発明の文脈において使用するのに好ましい検査試料である。このために,血液は通常,肘の内側又は手の甲又は指先の静脈から得られる。特に,幼児又は小児では,皮膚を穿刺して出血させるためにランセットと呼ばれる鋭利な器具を使用してもよい。血液は,例えば,ピペット又はカニューレに,あるいはスライド又はテストストリップ上に採取してもよい。
3-HBの接触および変換の後,存在する場合,3-HBDHによって触媒されるNAD又は誘導体の酸化還元状態の変化を決定し,それにより試料中の3-HBを決定する。明らかに,生成されたNADH又はその誘導体の量および消費されたNAD又はその誘導体の量は,試料中に存在する3-HBの量と相関する。したがって,NADの酸化還元状態の変化には,NADおよび/又はNADHの量又は濃度,ならびにこれらの2つの比の決定が含まれる。同じことがNAD誘導体にも当てはまる。
NADH/NAD又はその誘導体を決定するための様々な方法が当該分野で公知であり,これらのいずれを使用してもよい。
NADH/NAD又はその誘導体を決定するための方法として,例えば,電気化学的な方法(例えば,米国特許第6,541,216号に記載されるような)又は光学的な方法(例えば,340nm又は365nmにおける吸光度によりNAD/NADH変換を測定する,あるいは,ルシフェリンを形成させこれを光学的に定量するレダクターゼに基づくアッセイ)が挙げられる。電気化学的な方法を使用する場合,a)NADH/NAD又はその誘導体を測定電極上で直接反応させる,あるいは,b)第1ステップにおいて,NADH/NAD又はその誘導体を更なるレドックスメディエーター物質と反応させ,その酸化還元状態をNADH/NAD又はその誘導体の酸化還元状態に関する規定の関係に変換し,次のステップでこのレドックスメディエーターを,測定電極上で反応させる。
NADおよびNADPのいずれも,その分解経路が文献に記載されている塩基不安定分子である(例えば,N.J.Oppenheimer in The Pyridine Nucleotide Coenzymes Academic Press, New York, London 1982, J. Everese, B. Anderson,K. Yon,Editors,chapter 3, pages 56-65参照)。したがって,NADH/NADの誘導体は開発され市販されている。いくつかの誘導体はPyridine Nucleotide Coenzymes, Academic Press New York, London 1982, Eds. J. Everese, B. Anderson, K. You,Chapter 4,WO01/94370,WO98/33936 and US5,801,006に記載されている。
好ましくは,カルバNAD(cNAD)をNADの誘導体として使用する。カルバNADでは,リボースが炭素環式糖単位で置換されている。カルバNADは,以下の構造(I)を有する):
Figure 0006981979
当該化合物,その製造および使用は,WO2007/012494,WO2011/012270およびWO2014/195363に詳細に記載されている。本発明の補因子は,好ましくはカルバNADである。本発明の一実施形態では,補因子は,WO2011/012270の式IIIに開示されているようなNADの機能的に活性な誘導体であり,このことは当該文献で明示的に記載されている。本発明の一実施形態では,NADの代わりにNADPが使用される。
本発明の方法は,例えば,キュベットで実施されるいわゆる液体又は湿式検査で実施してもよく,あるいは適当な試薬担体上においていわゆる乾式検査で実施してもよい。存在するあるいは固体担体にある当該検査に必要な検査試薬は,好ましくは吸収剤又は膨潤性材料である。
代替的に又は追加的に,3-HBDHは,センサ,テストストリップ,テストエレメント,テストストリップデバイス,又は液体テストの一部であってもよい。
センサは,物理的/化学的な量を測定し,それを観察者又は器具によって読み取ることができる信号に変換する物体である。本発明において,3-HBDHはセンサの一部であってもよい。センサは,3-HBおよびNAD又はその誘導体をアセト酢酸およびNADH又はその誘導体に変換し,これがさらに,色の変化又はディスプレイ又はモニタに表示される値などの信号に変換される。
一実施形態では,センサは,試料の3-HBを決定するための3-HBDHおよび電流測定装置を含んでもよい。また,電気化学的フローセルに結合された微小透析システムを,試料又は対象における3-HBの連続的なモニタリングに使用することもできる。フローセルの作用電極は,電極表面上のレドックスポリマーフィルム中に固定化された3-HBDHを用いて調製することができる。電気化学的な3-HBセンサを微小透析に直接結合することにより,試料のアリコートをポストカラムオキシダーゼ酵素反応器を有する液体クロマトグラフィーシステムに移す必要がなくなる。微量透析プローブから得た透析液内の3-HBは、他の酸化可能な種からの著しい干渉なしに酵素電極で選択的に検出することができる。さらに,酵素結合型バイオセンサは当該技術分野において記載されている。これに従って,3-HBDHを表面に結合させてもよい(例えば,3-HBDH/グラファイト混合物を電気めっきグラファイトパッド上にプリントすることによって,あるいは炭素粒子,白金処理した炭素粒子,炭素/二酸化マンガン粒子,ガラス状炭素に変異型3-HBDHを吸着又は固定化することによって,あるいは,カーボンペースト電極と混合すること等によって)。
テストストリップ又はテストエレメントは,試料中の標的物質の存在および/又は量を決定するために使用される分析又は診断デバイスである。標準的なテストストリップは,試料と接触したときに反応する(例えば,色が変化する)試薬を含む1つ又は複数の異なる反応ゾーン又はパッドを含みうる。テストストリップは,例えばUS6541216,EP262445およびUS4816224等に記載の多くの実施形態において公知である。決定方法を実施するために必要な1つ又は複数の試薬(例えば,酵素)が固体担体層上又は内部に存在することが一般に知られている。担体層として,分析対象の試料液体によって湿潤される特に好ましい吸収剤および/又は膨潤性材料がある。例として,ゼラチン,セルロースおよび合成繊維フリース層が挙げられる。
本発明の3-HBDHは,液体検査の一部であってもよい。液体検査は,検査成分が液体媒体中で反応する検査である。通常,実験室分析の分野では,液体試薬は水ベース,例えば,関連酵素に活性を与えるための緩衝塩溶液である。液体は,通常,特定の意図する用途に適している。液体検査を実施するためには,すべての検査成分を液体内で溶解し,混合する(又はその逆)。このような検査を実施するための典型的な容器として,バイアル,マルチウェルプレート,キュベット,ベッセル容器,試薬カップ,チューブなどが挙げられる。
本発明の一実施形態では,本発明の3-HBDHを固定化してもよい。固定化の典型的な方法としては,例えば,膜への共有結合,ポリマー内へのカプセル化,支持マトリックスへの架橋,又はゾル−ゲルマトリックス(例えば,シリケートガラスのようなガラス)内への固定化,又は多孔性基材への吸着が挙げられる。この酵素を固定化するのに適した方法は,当該分野で公知である(例えば,Lillis et al., 2000, Sensors and Actuators B 68:109-114参照)。
本発明の好ましい実施態様では,前記方法は,グルコースの量又は濃度を決定することを更に含む。本発明の別の実施態様では,アセトン及び/又はアセト酢酸の量又は濃度を決定することを;及び/又はグルコースの量又は濃度を決定することを含む。これらの化合物の測定は,特に上記の疾患および医学的状態の診断に関連する。これらの化合物を決定するための方法は,当技術分野で周知である。さらに,複数の分析物分析のためのシステムおよび方法は,WO2014/068024より公知である。
追加的に,そして好ましくは,本発明の方法は,以下の特徴を有する:
a)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定することは,(i)NAD又はその誘導体及び/又は(ii)NADH又はその誘導体の濃度を決定することを含む;及び/又は
b)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定することは,電気化学的又は光学的である;及び/又は
c)前記方法は,アセト酢酸及び/又はアセトンの量又は濃度を決定することを更に含む;及び/又は
d)前記方法は,グルコースの量又は濃度を決定することを更に含む;及び/又は
e)前記NADの誘導体はカルバNADである;及び/又は
f)変異型3-HBDHは,センサ,テストストリップ,テストエレメント,テストストリップデバイス,又は液体テストの一部である;及び/又は
g)前記試料は,体液,特に血液試料又は尿試料である。
さらに別の態様では,本発明は,試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するための本発明の変異型3-HBDHの使用に関する。
本発明の使用に関し,本開示の他の態様の文脈において使用される用語,実施例および特定の実施形態は,この態様にも当てはまり,参照される。特に,本発明にかかる変異型3-HBDHは,本発明の方法に関し詳述されるように使用してもよい。
さらに別の態様では,本発明は,本発明の変異型3-HBDHを含む試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するためのデバイスに関する。このデバイスは,場合により前記決定に必要なさらなる成分を含む。
本発明のデバイスに関し,本開示の他の態様の文脈において使用される用語,実施例および特定の実施形態は,この態様にも当てはまり,参照される。特に,本発明にかかる変異型3-HBDHは,上で詳述されるように採用してもよい。
本発明の3-HBDHは,試料における3-HBを決定するためのデバイスの一部であってもよい。このデバイスは,この目的に好適な任意のデバイスであってよい。デバイスは,3-HBを決定するために使用することができる機械又は器具であってもよい。好ましくは,デバイスは,センサ,好ましくは電気化学センサ,又はテストストリップである。例示的なデバイスは,上記および下記に記載されている。
デバイスは,センサ,例えば,生体成分(ここでは本発明に係る3-HBDH)と検出成分,特に物理化学的な検出成分とを組み合わせた分析物の検出のための分析デバイスであるバイオセンサであってもよい。
バイオセンサは,特に血液由来の生体試料由来の様々な検体(3-HBを含む)の濃度を決定するのに特に有用である。電気化学的なテストストリップのフォーマットベースのバイオセンサの例として,US patent NO. 5,413,690; NO. 5,762,770;およびNO. 5,997,817に記載されている。
本発明の(バイオ)センサにおいて,3-HBDHおよびNAD又は誘導体の存在下でアセト酢酸に変換された3-HB,並びにNAD又は誘導体の酸化還元状態の変化は,トランスデューサ又は検出素子によってモニターしてもよい。
特に,3-HBセンサは,例えばグルコース,アセトン,アセト酢酸,コレステロール,トリグリセリド,尿素,血液ガス又は電解質などを測定するために使用される他のセンサと組み合わせられる。明らかに,本発明の変異型3-HBDHは,これらの複数の検体デバイスにおいて使用してもよい。
上で詳述したように,センサは,好ましくは,電気化学的又は光学的センサである。電気化学的センサは,化学的な信号(ここでは3-HBの存在)を電気的な信号(例えば,電流)に変換することに基づく。好適な電極は,電気信号として3-HBによるNADH又はその誘導体の生成物を測定することができる。
好適な光学的センサは,3-HBによるNAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を測定することができる。信号は,NAD/NADHを介した光の吸光度/発光であってもよい。
本発明のデバイスは,本発明の3-HBDHに加えて,前記決定に必要又は有用な他の試薬などの1つ又は複数のさらなる成分を含んでもよい。これらの成分は,本発明の方法およびデバイスの文脈において記載された成分のいずれであってもよい。さらに,これは,取扱説明書,ランセットデバイス,毛細管ピペット,さらなる酵素,基質および/又は対照溶液などを含んでもよい。
好ましくは,本発明のデバイスは,センサ,好ましくは,電気化学センサ又は光学センサ,あるいはテストストリップ,特にテストストリップであるか又は含むことを特徴とする,並びに/あるいは試料におけるグルコースの量又は濃度を決定することを更に可能にする。このことは,本発明のデバイスに関し,上述の用語,実施例および特定の実施形態についてもいえる。
他に定義されない限り,本明細書で使用される全ての技術的および科学的用語および略語は,本発明の当該分野における当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。分子生物学における共通用語の定義は,Benjamin Lewin,Genes V,published by Oxford University Press,1994(ISBN 0-19-854287-9); Kendrew et al.(eds.),The Encyclopedia of Molecular Biology,published by Blackwell Science Ltd.,1994(ISBN 0-632-02182-9); and Robert A. Meyers(ed.),Molecular Biology and Biotechnology:a Comprehensive Desk Reference,published by VCH Publishers,Inc.,1995(ISBN 1 -56081 -569-8)に見ることができる。
本発明の方法論,プロトコル,および試薬は様々であり,本明細書に記載された特定の方法論,プロトコル,および試薬に限定されない。本明細書に記載されたものと類似または均等な任意の方法および材料を本発明の実施において使用できるが,好ましい方法および材料が本明細書に記載されている。さらに,本明細書で使用する用語は,特定の実施形態を説明することのみを目的とするものであり,本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
本明細書および添付の特許請求の範囲で使用されるように,単数形「a」,「an」および「the」は,文脈上他に明確に指示されていない限り,複数形を含む。同様に,「含む(comprise)」,「含有する(contain)」および「包含する(encompass)」という用語は排他的ではなく包括的に解釈されるべきである。同様に,「または」という語は,文脈がそうでないことを明確に示さない限り,「および」を含むことが意図されている。用語「複数」は,2つ以上を指す。
以下の図および実施例は,本発明の様々な実施形態を説明することを意図している。このように,説明された特定の修正は,本発明の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。当業者には,本発明の範囲から逸脱することなく様々な均等物,変更,および修正が可能であることは明らかであり,したがって,そのような均等な実施形態も本明細書に含まれることが理解されるべきである。
図1は,アルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDHのアミノ酸配列およびドメインを示す。
実施例1:3-HBDH変異型のライブラリの確立
アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH)の遺伝子(Database UniProtKB - D0VWQ0)を合成し,ベクターpKKt5にクローニングし,分子生物学の一般的な方法によりE. coli XL-1 Blue株で形質転換した。
酵素の多くのアミノ酸位置に飽和変異誘発(Saturation mutagenesis)を行った。変異誘発は,QuikChange Site-Directed Mutagenesis Kit(Agilent Technologies Cat. 200518)を用いてランダムに合成されたプライマーにより達成された。
変異誘発のために使用された5'および3'プライマーは,互いに相補的であり,アミノ酸置換のためのNNN(ランダムに合成されたヌクレオチド)を中央位置に含んでいた。このランダムに作成されたコドンは,各末端において12〜16ヌクレオチドで隣接していた。これらのヌクレオチドの配列は,cDNA鎖又はアミノ酸置換のためのコドンに隣接する相補的なcDNA鎖と同一であった。変異ライブラリは,E. coli Xl-Blue株の変異遺伝子の形質転換および寒天プレート上での37℃での一晩培養によって作製した。
実施例2 第1ラウンドの変異誘発による3-HBDH変異型の特性の決定(単一のアミノ酸置換による変異型)
実施例1に記載したように製造した3-HBDH変異型のライブラリを,以下の酵素の性質についてスクリーニングした:
熱安定性
3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性
c-NAD(カルバNAD=人工補因子,US20120130062A1参照)に対する親和性
上述の寒天プレート上の変異コロニーを,200μlのLB-アンピシリン-培地/穴を含有するマイクロタイタープレート(microtiter plates :mtp)に拾い,37℃で一晩インキュベートした。これらのプレートをマスタープレートと称した。各アミノ酸位置について,2つのマスタープレートを選択して,全ての可能性のある置換が含まれることを確認した。
各マスタープレートから,40μlの試料/穴を200μl 0.1%Triton X-100;500 mM NaCl; 200 mM Hepes pH 9.0; 2% B-Per/穴(B-PER = Bacterial Protein Extraction Reagent Pierce No.78248)を含むmtpに移し,細胞破壊のために40℃で30分間インキュベートした。このプレートを作業プレートと称した。
作業プレートから,4×20μlの試料/穴を4つの空のmtpsに移した。これらの1つを62.22mMの3-ヒドロキシ酪酸;4.15 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0を用い,室温で検査し,参照測定と称した。他のmtpを異なる条件下で検査し,得られた値を参照プレートと比較してパーセントで表した。
以下のパラメータを測定した:
熱安定性:mtpを64℃で30分間インキュベートし,その後62.22 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 4.15 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0で検査した。
3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性:基質の量を減じた(すなわち,基質飽和未満)活性アッセイは、1.94 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 4.15 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0で測定した。
cNADに対する親和性:補因子の量を減じた(すなわち,飽和未満)活性アッセイは、62.22 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 0.032 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 200 mM Hepes pH 9.0で測定した。
室温にて340nmで5分間酵素反応をモニターし,各作業プレートについてdE/minを計算した。基準測定から得た値を100%活性に設定した。他の3つのプレート(熱安定性,3-ヒドロキシ酪酸またはcNADに対する親和性)で得られた値を参照値と比較し,パーセント活性に計算した((dE/minパラメータ/dE/min参照値)100)。各マスタープレートは,特性の改善または劣化をより良好に評価するために,対照としての変異型野生型酵素の横に並べて含まれていた。
残存活性として表される熱安定性は以下のように計算した:
Figure 0006981979
変異型で得られた値が野生型酵素で得られた値よりも高い場合は,その変異型の熱安定性の増加を表す。
活性比として表される基質親和性は以下のように計算した:
Figure 0006981979
より高い基質親和性を有する変異型は,より低い基質親和性を有する変異型よりも少ない基質(基質飽和未満)で反応しても,より高い活性を示す。変異型で得られた値が野生型酵素で得られた値よりも高い差分は,変異型に対する基質親和性の増加を表す。
したがって,活性比として表される補因子親和性を計算した:
Figure 0006981979
0.001 dE/min未満のデータはゼロに設定され,表1Bおよび1Cのような「ゼロ」値が得られた。
野生型酵素と比較した結果を表1A,1Bおよび1Cにまとめる。
Figure 0006981979
Figure 0006981979
Figure 0006981979
Figure 0006981979
Figure 0006981979
Figure 0006981979
置換L253Iを有する例示的な変異型を,さらに発見された位置を組み合わせることによってさらに最適化するために選択した。
実施例3:第2ラウンドの変異誘発による3-HBDH変異型(アミノ酸置換L253Iおよび場合により更なるアミノ酸置換(複数可)を有する変異型)のスクリーニング
他に示されない限り,実験は実施例2に詳述したように行った。第2ラウンドの変異誘発において,選択した変異を変異型AFDH1+L253Iに導入した。結果を表2Aにまとめる。
Figure 0006981979
例示的な変異型AFDH1+L253I+G233K+A234Tを,さらに発見された位置を組み合わせることによってさらに最適化するために選択した。結果を表2Bにまとめる。
Figure 0006981979
選択した変異型に80℃で30分間ストレスを与えた。結果を表2Cにまとめる。
Figure 0006981979
実施例4:アミノ酸置換A62V+A143V+A148G+G233K+A234T+L253Iおよび場合により更なるアミノ酸置換(複数可)を有する3-HBDH変異型のスクリーニング
実施例3から選択された変異型をpH7.5で測定し,最良の変異型をさらなる変異誘発のために選択した。
他に示されない限り,実験は実施例2に詳述したように行った。発見された変異型を,pH 7.5の異なる溶液を用いること以外は実施例3と同様にしてスクリーニングした。参照mtpは,150 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5を用いて検査した。
以下のパラメータを測定した:
熱安定性についてはmtpを60〜90℃(酵素変異型の安定性による)30分間インキュベートし,その後150 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5で検査した。
β−ヒドロキシ酪酸に対する親和性についてはmtpを5 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5で測定した。
cNADに対する親和性についてはmtpを150 mM 3-ヒドロキシ酪酸; 0.5 mM cNAD; 0.1% Triton X-100; 70 mM Mops pH 7.5で測定した。
Figure 0006981979
AFDH1: 野生型
AFDH2: AFDH1+L253I
AFDH3: AFDH1+G233K+A234T+L253I
AFDH4: AFDH1+A62V+G233K+A234T+L253I
AFDH4+147R: AFDH1+A62V+V147R+G233K+A234T+L253I
AFDH5: AFDH1+P39G+A62R+A143V+A148G+G233K+A234T+L253I
AFDH6: AFDH1+A62V+A143V+A148G+G233K+A234T+L253I
AFDHx: AFDH1+A62V+E111L+I140M+A148G
変異型AFDH6(すなわち,AFDH1プラスA62V+A143V+A148G+G233K+A234T+L253Iの変異)に基づいて,表3に列挙された以下の変異型を用いてさらなるラウンドの変異誘発を行った。
Figure 0006981979
Figure 0006981979
配列
AFDH1:アルカリゲネス・フェーカリス由来の野生型3-HBDH (配列番号1)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NADLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLVASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGGAAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSLDGGWTAR 260

AFDH1の拡張コア配列 (配列番号2)
ADLSDAQATR DFIAKAAEAL GGLDILVNNA GIQHTAPIEE FPVDKWNAII ALNLSAVFHG 60
TAAALPIMQK QGWGRIINIA SAHGLVASVN KSAYVAAKHG VVGLTKVTAL ENAGKGITCN 120
AICPGWVRTP LVEKQIEAIS QQKGIDIEAA ARELLAEKQP SLQFVTPEQL GGAAVFLSSA 180
AADQMTGTTL SL 192

AFDH2:AFDH1+L253I (配列番号3)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NADLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLVASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGGAAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH3:AFDH1+G233K+A234T+L253I (配列番号4)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NADLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLVASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH4:AFDH1+A62V+G233K+A234T+L253I (配列番号5)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLVASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH4+147R:AFDH1+A62V+V147R+G233K+A234T+L253I (配列番号6)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASAHGLRASV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH5:AFDH1+P39G+A62R+A143V+A148G+G233K+A234T+L253I(配列番号7)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQGE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NRDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH6:AFDH1+A62V+A143V+A148G+G233K+A234T+L253I(配列番号8)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH A:AFDH6+33L+125G+175V+187F (配列番号9)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVLNGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAVKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH B:AFDH6+125G+175T+187F (配列番号10)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENATKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH C:AFDH6+170G+175T (配列番号11)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAALPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTG LENATKGITC 180
NAICPGWVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH D:AFDH6+18E+125G+187F (配列番号12)
MLKGKKAVVT GSTSGIGEAM ATELAKAGAD VVINGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAGKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH E:AFDH6+33L+125G+175I+187F (配列番号13)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVLNGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAIKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH F:AFDH6+33L+125G+170G+187F (配列番号14)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVLNGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTG LENAGKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH G:AFDH6+33L+125G+175V+187F+216V (配列番号15)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVLNGFGQPE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAVKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELVAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

AFDH H:AFDH6+33l+38K+39G+125G+175V+187F(配列番号16)
MLKGKKAVVT GSTSGIGLAM ATELAKAGAD VVLNGFGKGE DIERERSTLE SKFGVKAYYL 60
NVDLSDAQAT RDFIAKAAEA LGGLDILVNN AGIQHTAPIE EFPVDKWNAI IALNLSAVFH 120
GTAAGLPIMQ KQGWGRIINI ASVHGLVGSV NKSAYVAAKH GVVGLTKVTA LENAVKGITC 180
NAICPGFVRT PLVEKQIEAI SQQKGIDIEA AARELLAEKQ PSLQFVTPEQ LGKTAVFLSS 240
AAADQMTGTT LSIDGGWTAR 260

Claims (16)

  1. 野生型3-HBDHに比べて改善した性能を有するアルカリゲネス・フェーカリス由来の変異型3-ヒドロキシ酪酸デヒドロゲナーゼ(3-HBDH)であって,
    該変異型は,配列番号1のアミノ酸配列(アルカリゲネス・フェーカリス由来の3-HBDH;野生型3-HBDH)又は配列番号2のアミノ酸配列(野生型3-HBDHの拡張コア配列)と少なくとも90%同一なアミノ酸配列を含み,かつ
    該変異型は,野生型3-HBDHに対し少なくとも3つのアミノ酸置換を有し,ここで,
    配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile),Ala(253Ala)又はCys(253Cys)に置換されており,
    配列番号1の位置233に相当する位置のアミノ酸がSer(233Ser),Ile (233Ile),Ala(233Ala),Pro(233Pro),Arg(233Arg),Thr(233Thr),Lys(233Lys),又はCys(233Cys)に置換されており,かつ
    配列番号1の位置234に相当する位置のアミノ酸がThr(234Thr)に置換されており、
    ここで、野生型3-HBDHに比べて改善した性能は,
    野生型3-HBDHに比べて増加した熱安定性;及び/又は
    野生型3-HBDHに比べて増加した基質3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性;及び/又は
    野生型3-HBDHに比べて増加した補因子カルバNADに対する親和性である,前記変異型3-HBDH。
  2. 配列番号1の位置253に相当する位置のアミノ酸がIle(253Ile)に置換されている,請求項1に記載の変異型3-HBDH。
  3. 配列番号1の位置233に相当する位置のアミノ酸がLys(233Lys)に置換されている,請求項1又は2に記載の変異型3-HBDH。
  4. 配列番号1の位置18,19,33,38,39,62,125,143,148,170,175,187及び/又は216,特に少なくとも配列番号1の位置62,143及び/又は148に相当する1つ又は複数の位置に少なくとも1つの更なるアミノ酸置換を有する,請求項1〜3のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH。
  5. 配列番号1の位置18に相当する位置のアミノ酸がArg(18Arg),Lys(18Lys),Glu(18Glu),又はPro(18Pro)に置換されている;
    配列番号1の位置19に相当する位置のアミノ酸がGly(19Gly)に置換されている;
    配列番号1の位置33に相当する位置のアミノ酸がAla(33Ala),Leu(33Leu),又はThr(33Thr)に置換されている;
    配列番号1の位置38に相当する位置のアミノ酸がLys(38Lys)に置換されている;
    配列番号1の位置39に相当する位置のアミノ酸がGly(39Gly)に置換されている;
    配列番号1の位置62に相当する位置のアミノ酸がPhe(62Phe),Met(62Met),Lys(62Lys),Arg(62Arg),Leu(62Leu),又はVal(62Val),特にVal(62Val)に置換されている;
    配列番号1の位置125に相当する位置のアミノ酸がGly(125Gly)に置換されている;
    配列番号1の位置143に相当する位置のアミノ酸がVal(143Val)に置換されている;
    配列番号1の位置148に相当する位置のアミノ酸がGly(148Gly)に置換されている;
    配列番号1の位置170に相当する位置のアミノ酸がGly(170Gly)に置換されている;
    配列番号1の位置175に相当する位置のアミノ酸がThr(175Thr),Val(175Val),又はIle(175Ile)に置換されている;
    配列番号1の位置187に相当する位置のアミノ酸がPhe(187Phe)に置換されている;及び/又は
    配列番号1の位置216に相当する位置のアミノ酸がVal(216Val)に置換されている,
    請求項1〜4のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH。
  6. 前記変異型3-HBDHは,配列番号1の位置に相当する各位置に,少なくとも以下の変異を有する:
    253Ile,233Lys,234Thr;
    253Ile,62Val,233Lys,234Thr;
    253Ile,62Val,147Arg,233Lys,234Thr;
    253Ile,39Gly,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr;又は
    253Ile,62Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thr,
    特に,ここで,前記変異型3-HBDHは,少なくとも253Ile,62Val,143Val,143Val,148Gly,233Lys,234Thrの変異を有し,場合により
    19Gly;
    170Gly;
    125Gly,187Phe;
    18Glu,33Leu;
    33Leu,125Gly,187Phe;
    33Leu,125Gly,187Phe,216Val;
    18Glu,187Phe;
    33Leu,125Gly,175Val,187Phe;
    175Val,216Val;
    175Val,187Phe,216Val;
    19Gly,125Gly,187Phe;
    125Gly,175Thr,187Phe;
    19Gly,33Leu;
    19Gly,175Ile;
    19Gly,175Thr;
    170Gly,175Thr;
    18Glu,125Gly,187Phe;
    33Leu,125Gly,175Thr,187Phe;
    33Leu,125Gly,175Ile,187Phe;
    33Leu,125Gly,170Gly,187Phe;
    18Glu,175Ile,187Phe;
    33Leu,125Gly,175Val,187Phe;
    33Leu,125Gly,175Val,187Phe,216Val;
    33Leu,125Gly,175Thr,187Phe;又は
    33Leu,38Lys,39Gly,125Gly,175Val,187Pheとの組み合わせとして有する,請求項1〜5のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH。
  7. 前記変異型3-HBDHは,配列番号1〜16のいずれかのアミノ酸配列と少なくとも90%,95%,96%,97%,98%,又は99%同一なアミノ酸配列を含む又はから成る,
    特に,ここで,前記変異型3-HBDHは,配列番号4〜16からなる群より選択される配列を含む又はから成る,請求項1〜6のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH。
  8. 前記変異型3-HBDHは,野生型3-HBDHに比べて少なくとも2倍増加した安定性,好ましくは少なくとも3倍増加した安定性,好ましくは少なくとも4倍増加した安定性,より好ましくは少なくとも5倍増加した安定性を有することを特徴とする;並びに/あるいは
    前記変異型3-HBDHは,野生型3-HBDHに比べて増加した基質3-ヒドロキシ酪酸に対する親和性及び/又は野生型3-HBDHに比べて増加した補因子カルバNADに対する親和性が,少なくとも5%,とりわけ特に少なくとも10%,さらにとりわけ特に少なくとも15%又は20%増加していることを特徴とする,請求項1〜7のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH。
  9. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型3-HBDHをコードする核酸。
  10. 請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH又は請求項9に記載の核酸を含む細胞。
  11. 試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定する方法であって,
    a)3-HBDHの活性を促す条件下で該試料を請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型3-HBDHに接触させること;
    b)3-ヒドロキシ酪酸をニコチンアミドアデニンジヌクレオチド(NAD)又はその機能的に活性な誘導体と反応させること;および
    c)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定すること;
    により,前記試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定することを含む,方法。
  12. a)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定することは,(i)NAD又はその誘導体及び/又は(ii)NADH又はその誘導体の濃度を決定することを含む;及び/又は
    b)前記NAD又はその誘導体の酸化還元状態の変化を決定することは,電気化学的又は光学的である;及び/又は
    c)前記方法は,アセト酢酸及び/又はアセトンの量又は濃度を決定することを更に含む;及び/又は
    d)前記方法は,グルコースの量又は濃度を決定することを更に含む;及び/又は
    e)前記NADの機能的に活性な誘導体はカルバNADである;及び/又は
    f)変異型3-HBDHは,センサ,テストストリップ,テストエレメント,テストストリップデバイス,又は液体テストの一部である;及び/又は
    g)前記試料は,体液,特に血液試料又は尿試料である,
    請求項11に記載の方法。
  13. 試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するための請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型3-HBDHの使用。
  14. 試料における3-ヒドロキシ酪酸の量又は濃度を決定するためのデバイスであって、
    請求項1〜8のいずれか1項に記載の変異型3-HBDH,そして場合により前記決定に必要なさらなる成分を含む,前記デバイス。
  15. 前記デバイスは,センサ,好ましくは,電気化学センサ又は光学センサ,あるいはテストストリップ,特にテストストリップであるか又は含むことを特徴とする,請求項14に記載のデバイス。
  16. 前記デバイスは,更に試料におけるグルコースの量又は濃度を決定することを可能にする,請求項14又は15に記載のデバイス。
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